今日は水曜日で鹿児島大学総合研究博物館の魚類ボランティア(魚ボラ)の日である。魚ボラでは主に標本登録作業を行うが、今では学生の作業レベルがアップしており、私はもう手を出す事が出来ないので採集に専念している。なので最近の大学訪問はあえてこの日とは限らず、直ぐに標本登録が必要な魚を得た時や家の冷凍庫が保存標本で一杯になった時に訪れている。そのような状況の中、今日はまだお会いした事のないボランティアさんに会う為、久し振りに魚ボラの作業中に顔を出す。一応、冷凍庫も一杯になったので冷凍標本も持ち込む。教室に入ると既に作業中で、標本の展鰭作業や写真の撮影などが所狭しと行われている。最近は学生の数も増え、作業は教室内だけでは収まり切れず、教室外でも行われている。見ているだけでとても頼もしく、今後も突然標本を持ち込んでも対応してくれそうで有難い。今回も学生の作業を見ていると突然小さな子が教室に入ってくる。学生に聞くと、この子も標本の展鰭作業を勉強しに来ているとの事。聞くと大学の近所に住む小学5年生である。最近は大人顔負けの専門的な知識を得た子供達が各分野で活躍している。魚類分野でも各地に小学生などのお魚博士が活躍している。子供の好きな事に対しての知識の吸収力は凄まじい。この子もいずれはお魚博士になって行くのだろう。と思ったら、将来は獣医師を目指すそうでちょっと拍子抜け。でも、魚ボラに毎回参加していれば、獣医師よりも魚の魅了に取りつかれるのではないだろうか。
今年の初め、魚類学者の方からメールを頂いた。面識のない方だが有名な方なので私は一方的に存じており、鹿大で日本生態学会が行われた時にお見掛けしたこともある。その方がウシサワラの情報を求め、私のブログ(ブログ2020 11.27)を見つけたそうで、魚ボラの先生伝で私に問い合わせが来る。その有名な方に私のブログを見て頂けた事やメールを頂いた事だけでとても嬉しい。その魚類学者の方が釣り雑誌で「珍魚ファイル」なる連載枠を担当しており、そこでウシサワラを取り上げるとの事でブログの写真の借用依頼である。「つり情報」という関東ローカルの隔週刊誌である。ウシサワラは確かに珍魚であり、一般の人どころか釣り人、市場関係者でさえ出会う機会は非常に少ないと思う。そのような魚を釣り雑誌で紹介して頂けるなんて本当に有難く、より多くの方に知って頂ければと思う次第である。今回のブログに掲載した写真は体側の斑紋が薄く特徴がよく現れていなかった為、今まで撮り溜めたウシサワラの写真を見てもらい、そこから選んで頂いた。そして今日、5月1日号(4月15日発売)が送られて来る。カラーページで見栄え良くウシサワラが載っており、それだけで感無量である。その解説の中で小型個体についての疑問が記載されている。標本用に確保するには小さな個体でなければ厳しいのだが、国内で再生産している可能性は低く、標本確保は夢物語となってしまうのだろうか。
今日の定置網漁でまたトビウオの幼魚を発見し、タモ網で掬い確保する。先月、急にトビウオ幼魚の入網があり、ブログ記事にもした(ブログ2021 3.23)が、今年は出て来るのが早いなと思ったが、それからはまだ消えてしまっていた。そして、今日再び入網するが、今回は1個体のみしか確認出来ず。トビウオの幼魚は普通は数個体まとまって泳いでいるものであるが、1個体のみとはちょっと珍しい。数個体入網していたが、次から次へと捕食されてしまったのだろうか。流れ藻など隠れる場所でもあれば1個体でも残ることが出来るかもしれないが、今はそのようなものはなく、他の魚に捕食されずに泳いでいたことが不思議である。家に持ち帰り写真を撮り、またひとつデータとして保存する。
今日は定置網漁の水揚げ後、本船にちょっとしたトラブルがあり、いつも修理をお願いしている鉄工所へ電話する。だが、電話が繋がらない。そこで鉄工所まで行ってみると、丁度船がドックするところで、その作業にあたっていて電話に出る事が出来なかった模様。その作業が終わるのを見届け、うちの船の作業を依頼する。船に戻ると市場に珍しいサメが揚がったよと言われ、見に行く。すると既にサメは解体され、ブツ切り状態でタンクの中に入っていた。ブツ切りであるがその体の模様を見て驚く。もしやと思い頭部を探すが、頭部は既にこのサメを獲られた方が捨てる為に持ち帰ったとの事で確認できないが、鰓孔が残っていた。その数を数えると7枚ある。これでエビスザメであることが確定する。エビスザメは以前に漁協の定置網にも1度だけ入網したことがあり、その時は水族館へと搬出され、ブログでも紹介している(ブログ2015 2.24)。その時も魚ボラの標本用と考えたが水族館に持って行かれてしまった。今回も既にブツ切り状態で頭部も無い状態なので標本としての確保は諦める。家に帰りエビスザメの大学での標本登録状況を調べるとまだ未登録となっている。大学にもまだ標本が無いとなると、今回の出来事は本当に惜しい。もしも鉄工所への電話が繋がっていたら、話は電話で済み、市場にサメが揚がった時は自分もその場に立ち会え、ブツ切りにされる前に標本用に確保出来たかもしれない。本当に今回は運が悪かったとしか思えず悔しい思いである。今度エビスザメに出会えるのは何時になるだろうか。そして標本登録まで漕ぎ着けるだろうか。
ブツ切りにされたエビスザメ
年々数が減って来ているシッポウフグであるが、先月の終わりから立て続けに姿を見せ、活魚として5個体確保する。うち1個体は胸鰭がスレており状態が良くないが、4個体は見た目にも綺麗な状態で泳いでいる。と言う事で、しものせき水族館海響館に連絡する。すると欲しいという事で今日引き取りに来る。だが、昨日更に1個体死んでおり、その個体は胸鰭がスレていた個体ではないので、これで3個体となってしまう。小さなフグ3個体ではあるが、4トン活魚車の新車で遠く下関から来るという事で恐縮してしまう。大きな活魚車で来るので何かほかに積んで帰る魚がいないか今朝の定置網漁で探そうと思っていたのだが、生憎時化で出漁出来ず。結局小さなフグ3個体を4トンの活魚車で運ぶことになる。水族館が到着し、活魚車にシッポウフグを積み込む。気を使ってくれたのか、海水も下関から積んで来たそうで益々恐縮。せめて来る時くらいは空にして少しでも軽い状態で走って来てくれれば良かったのだが。職員の方に聞くと朝3時に出発して来たという事で片道6時間掛ったそうである。滞在時間30分程で再び下関へ6時間。シッポウフグ3個体に対して往復12時間以上も掛けるので、それなりの成果があって欲しい。
シッポウフグ
今日は夜間採集の日。今日は干潮時となり干上がった港の中を歩いて散策する事になる。港に着き、岸壁から干上がった港の底に降りると直ぐに、またアナゴの仲間が砂から出て横たわっている。最近は何度となくこの光景を目にするが、何故砂から出てしまうのかが本当に不思議である。昼間の干潮時もこの様に出てしまうのだろうかと考えるが、昼間なら直ぐに鳥に見つかり餌食になってしまうと思われるので、夜間のみの行動であろう。今日はトータルして5個体確認するが、標本は確保済みなので確保せず写真のみ撮る。そのほかトカゲゴチやヒメハゼなどいつものメンバーである。港内を一周して岸壁に上がる。すると水中に綺麗な模様を発見。小さなホウボウが胸鰭を広げている。タモ網で掬い採り、あっさりと確保。綺麗で目立つ胸鰭を広げていたので直ぐに見つけられたものの、帰り際だったので広げていなかったら見過ごしていたかもしれないのでラッキーであった。アナゴ類といい、ホウボウといい、外敵から目立つような状態にしているのも、夜と言う事でちょっと解放的になっているのだろうか。解放的は魚を見つけるのも夜間採集の魅力の一部であろう。
砂の上に出ているオオシロアナゴ?
ヒメハゼ
トカゲゴチ
ヒラメ幼魚(撮影後放流)
カエルアンコウ幼魚
ホウボウ若魚
2月の終わりの夜間採集でミミズハゼを採集した(ブログ2021 2.27)。その時の標本を魚ボラのミミズハゼのプロの学生が見てくれて、全てミミズハゼと同定してもらう。その事をメールで教えて頂いたのだが、そのメールに普通のミミズハゼは海域で出るのは少し珍しいとの事。場所的には川が無い海岸であるが、確か海水に浸からない場所であるものの石の下は湿っていたなと思い、ブログにもそう書いている。夜間採集日の前日は雨が降っており、山からの水が伏流水の様に流れていたのかもしれないが、普段は水があるのだろうかと気になる。そこで今日、仕事が終わってからその場所を改めて訪れる。ここ数日は天気が良く、雨は降っていない。だが、その場所へ行くとやはり石の下は湿っている。水を舐めてみるとしょっぱくはなく真水である。その湿っている状況を辿って行くと土の中から水が出ている場所を見つける。やはり常に伏流水が流れている場所である。ミミズハゼを探すと海側から陸側へ移動するにつれ、個体数も増えていき、海水を嫌っている感じがする。網など何も持って来ていないが、折角なのでミミズハゼを採集し、落ちているペットボトルを拾い、そこに入れる。今回は小さな稚魚も確認できたが、小さ過ぎて採集は出来なかった。こんな小さな水源をよく見つけ、生息しているミミズハゼ達。本当に面白く、ミミズハゼの魅力にハマって行きそうである。また、真っ暗な海岸でこの局地の水源にたどり着き、ミミズハゼを見つけた自分の嗅覚も改めて褒めたい。
先月、タカノハダイの成長過程を作りアップ(ブログ2021 3.6)したが、最初の幼魚がタカノハダイではなくミギマキであることが指摘され判明。ミギマキ幼魚をタカノハダイ幼魚と誤同定するとは、自分ではまだタカノハダイ科3種の幼魚がよく分かっていないという事である。と言う事で今一度今まで撮った写真を再度確認する。するとタカノハダイ幼魚と思っていた幼魚の写真もユウダチタカノハの幼魚である事が判明。これでユウダチタカノハも幼魚から成魚までの写真が揃い、成長過程の写真が完成してしまう。だが、これにより、タカノハダイ幼魚の写真が無くなり、再度標本を探さなければならなくなる。でも、その幼魚の時期は終えたばかりである。タカノハダイの成長過程を作るには来年へ持ち越しの課題となってしまう。
先月、タカノハダイの幼魚から成魚までの成長過程を作り、ブログにアップ(ブログ2021 3.6)したが、あとで指摘され、最初の幼魚の写真がミギマキだったことが判明。だが、これで探していたミギマキの幼魚の写真が自分では知らないうちに勝手に手に入り、ようやくミギマキの成長過程の写真を作ることが出来た。
今日は定置網漁を終え、市場で水揚げ作業が終わるとお隣の定置網が漁を終え水揚げに港へと入ってくる。すると、この前トビハタの幼魚を確保して来てくれた方がまた獲れたと標本を頂く。見ると2個体あり、大きな方はこの前と同じくらいのサイズであり、もう1個体は小さく、体色もちょっと薄い感じ。別種かなとも思いながら有難く標本用に頂く。家に帰り小さな個体を撮影し、調べる。展鰭すると腹鰭がオレンジ色であり、トビハタではないのかと思うも、ネット上で検索すると同じく腹鰭がオレンジ色のトビハタの稚魚の論文が見つかる。この個体も幼魚というより稚魚の要素をまだ備えている。腹鰭の他、ハタ類(ハタ亜科)の稚魚は背鰭第2棘、腹鰭棘がカギ状で著しく伸長するが、この個体も同じくその要素を持っている。トビハタというと成魚はハタ科というよりメジナなどに似ておりハタ科のイメージがあまり無いのだが、稚魚を見ればハタ科の特徴を持っており、ハタ科であることを証明している。トビハタが改めてハタ科であることを実感する事が出来、自分として収穫のある稚魚であった。
今朝は風が吹いており、うちの定置網は出漁を断念。すると出漁したお隣の定置網の方から電話があり、標本用の魚を確保しているとの事。再び港へ行くと真っ黒な小さい魚を頂く。この幼魚は見覚えがある。以前にも同じような幼魚が見つかり、魚ボラでトビハタの幼魚と同定された魚である。以外だったのでよく覚えている。今までに数個体確保しており、撮影後、以前の写真と見比べ同じ種である事を確認する。それにしても、この真っ黒で小さく目立たない幼魚を沢山の魚の中から見つけてくれた事に驚き、更に確保して来てくれた事にとても感謝したい。