昨日市場で見つけたホシヒレグロハタ。分布域が西表島・台湾南部となっており鹿児島では珍しい種のようである。体には刺し網によるスレ傷があるものの、少しでも綺麗な標本写真を残す為にも冷凍せず、今日のうちに鹿児島大学へ持ち込み、標本登録をする。この前のクロダイ属の魚を持ち込んだのが今年最後の大学訪問だろうと思っていましたが、まだまだ今年は終わりませんでした。また、その謎のクロダイ属は日本初記録種である事が判明しました。この年末に来て本当に面白いお魚三昧生活を送っています。年が明けてもこの状況が続く事を願います。
今日は水揚げ後、市場を散策すると見た事の無いハタの仲間が揚っている。見ると網に刺したスレ傷があるので刺し網で漁獲されたもののようである。この市場に揚るハタの仲間は非常に種類が少なく、馴染みの無いハタは自分も知らないのでこの場では魚種がわからない。特にこのように小黒点が散在する種は多く、ハタの仲間の中でも特に厄介である。いつもの事だがハタの仲間は高値の魚であり、いつも標本用に確保する事に迷う魚である。更に年末という事で値段が高騰する可能性もある。だが、最近は潮の影響か面白い魚が揚っているので、このハタの仲間も珍しい可能性もある。また、以前にモヨウハタをスルーしてしまった経緯もある。幸い魚体が小さいので高値になったとしても驚く程にはならないだろうと思い、標本用に確保する。持ち帰り検索図鑑で調べるとヤイトハタに落ちてしまう。ヤイトハタはこの市場にも揚るハタであるが、いつも10キロ以上ある大物ばかりであり、このような小さなサイズは見た事が無い。でも、この個体を見てヤイトハタと言われても何だか違和感がある。わからないのでネット上にアップするとハタ類をよく知る人からホシヒレグロハタではないかと言われる。ホシヒレグロハタには体の背縁にいくつか黒斑がある。しかし、この個体にその黒斑は確認できない。だが、この黒斑は不明瞭の場合もあるという事である。この黒斑が不明瞭という事であれば、検索図鑑でもホシヒレグロハタに落ち、違和感が無くなる。ホシヒレグロハタの分布域は西表島、台湾南部となっており珍しい種と思われる。分布域からこれも黒潮の影響だろうか。今年の年末は本当に面白い。
今年も残り僅かとなり、今日はクリスマスイブ。だからといって我が家では息子も大きくなりイベント的なものはもう無い。今年は土曜日なので、イブの夜はサンタクロースになることなく、いつものように港へ夜間採集に行く。サンタさんからのプレゼントとして何か面白い魚を期待する。現場に着き海の中を覗くが全く魚の気配が無く、普段見る魚すらいない感じである。そんな中、大きめのハゼを見つけ採集。見るとドロメのようである。ドロメはこの夜間採集では毎年3月くらいから稚魚が出て来るが成魚を見るのは初めてである。そんな初めてのドロメの成魚であるが、その後も更にもう1個体採集。ドロメは良く知る普通種であるが、夜間採集としては収穫となる。
今日は定置網漁で小さなカライワシが1個体獲れる。普段定置網で獲れるカライワシはメートル級の大きな個体ばかりである。それが3年前に小さなカライワシが獲れ、ブログでも紹介した。その時、標本用には確保したものの、小さいとは言え、家の撮影用の水槽には入らず写真に収めずにいた。だが、後から水槽に入れず普通に撮影しておけば良かったと後悔し、次の機会を待つことにした。あれから3年も経ち、本日ようやく小さなカライワシの標本を確保し、撮影する。南の方では頻繁にカライワシの小さな個体が出ているみたいなので、こちらでもこれからこのサイズが増えて来るだろうと思っていたが、あれから実に3年も経ってしまったのである。
先月からヒシカイワリ、ヨロイアジと南方系の珍しいアジ類が出ている。このチャンスを見逃さない為にも、毎日特にヒラアジ類をチェックしている。そして今日の定置網漁でまたヨロイアジを1個体見つける。これでヨロイアジは2個体目の入網である。市場に水揚げされているところを未だに見た事無いので、うちの定置網のみでの出現となる。ヨロイアジの標本は前回の1個体のみなので、今回の個体も標本用に確保する。今年も残り僅かとなり、前回の謎のクロダイ属で今年を締め括ったつもりでいたが、まだまだチャンスはあり、今年はまだまだ終わらない。
今日の定置網漁で獲れ、標本用に確保した魚がナンヨウチヌの可能性があるので、綺麗な写真を残す為にも鹿児島大学へと走る。大学に着くとメンバーは出張中で数人しか残っていないと言われていたが、鹿大出身の魚ボラのメンバーで現在高知大でポスドクしている方が運良く来ている。ナンヨウチヌを図鑑や論文、所蔵の標本等で調べてもらう。だが、この持ち込んだこの個体の顔つきや体型が一致しない。写真を撮り、標本登録をした後、撮った写真を見ながらみんなで色々と議論するが、結局結果は出なく、後日各部計測を行い判断となる。それでも同定結果がでなくても、DNA解析もしてくれるというので、いずれは結果が出るだろう。ブログ10周年を迎えても、まだまだわからない魚は多く、これからも楽しい日々を過ごせそう。今年を締めくく面白い魚を確保することが出来てうれしい限りである。
*後日、魚ボラで日本未記録種Acanthopagrus taiwanensis Iwatsuki and Carpenter, 2006と同定され、2017年12月に標準和名イワツキクロダイと提唱されました。
(ブログ2017 12.8「日本初記録種 新称イワツキクロダイ」)
*後日、魚ボラで日本未記録種Acanthopagrus taiwanensis Iwatsuki and Carpenter, 2006と同定され、2017年12月に標準和名イワツキクロダイと提唱されました。
(ブログ2017 12.8「日本初記録種 新称イワツキクロダイ」)
鹿大総合研究博物館に所蔵されている海外産のナンヨウチヌの標本
今日は定置網漁を終え、市場でサワラの選別作業に追われていた。私の隣ではサワラ以外の魚を漁協職員が選別してくれていた。すると、漁協職員がこのチヌ(クロダイ)何だか変だねと言う。その魚を見てみると明らかにクロダイとは違う魚だと一目でわかる。クロダイと並べてみると顔付や鱗の大きさが違い、別種である事がわかったものの魚種がわからない。クロダイ属は数種いるので、その中のどれかだろうが私はよく知らない。とにかく初入網であることは間違いないので標本用に確保する。家に帰り検索図鑑やネットで色々と調べてみるとナンヨウチヌが一番近い感じである。沖縄にいたポスドクの方が現在鹿大にいるのでメールで画像を送って見てもらうと、ナンヨウチヌかもしれないという答え。更にナンヨウチヌなら北限更新だろうと。今日は予定が無いうえ、この魚が珍しいみたいなので綺麗な写真を残すためにも鹿大へ走る。
*後日、魚ボラで日本未記録種Acanthopagrus taiwanensis Iwatsuki and Carpenter, 2006と同定され、2017年12月に標準和名イワツキクロダイと提唱されました。
(ブログ2017 12.8「日本初記録種 新称イワツキクロダイ」)
*後日、魚ボラで日本未記録種Acanthopagrus taiwanensis Iwatsuki and Carpenter, 2006と同定され、2017年12月に標準和名イワツキクロダイと提唱されました。
(ブログ2017 12.8「日本初記録種 新称イワツキクロダイ」)
上:問題の魚 下:クロダイ
今日は水揚げ作業を終え、市場内を散策するとまたヒシカイワリを1個体発見。既に水揚げされているので、今回もお世話になっている仲買さんに渡すためにヒシカイワリが揚っていることを知らせる。入札が終了し再び市場へ見に行くとヒシカイワリには別の仲買の札が貼ってある。関係のない別の仲買人が高値を付け、競り落とした模様。この日はヒラアジ類ではこのヒシカイワリとマルヒラアジの2個体だけがズバ抜けて大きな個体であった。当然仲買もその2個体を狙って札を入れる形となり、高値がついた模様である。競り落とした仲買人はこの魚がヒシカイワリであることも知らず、普通にヒラアジとして扱うと思うと勿体無い気がして、高値でも先取りしておけば良かったかとちょっと後悔する。これからは周りの状況もよく読まなければいけないとつくづく感じた今日の出来事である。
上:ヒシカイワリ 下:マルヒラアジ