今朝、何時ものように地元新聞を見ると、与論島で見つかった日本初記録種トビイシハナダイの記事が載っている。ハタ科イズハナダイ属で体長が4センチと小さな魚である。与論島といえば3年前に鹿大と科博で発行された図鑑「与論島の魚類」でも同じくイズハナダイ属の魚が日本初記録種としてフジナハナダイと提唱されている。この魚は釣獲されたヤマブキハタの口腔内より摘出され、体長は5センチと同じく小さい。与論の海など潜った事は無いが、色とりどりの魚達がサンゴ礁や岩礁で群れているイメージである。そのような場所で生息する魚種を全て探すのは至難の業である。その中でこのように更に新しい魚種を見つけるのはとても大変そうではあるが面白いだろう。与論はサンゴの間や岩礁の陰などにまだ見つかっていない魚種がいくらでもいそうな感じがして、自分も機会があれば宝探しに同行してみたい思いである。
今日は土曜日ということで、いつのもように夜間採集へと港へ向かう。天候や用事の為に最近は夜間採集に来れなく、2ヶ月振りとなる。昨年は5月からメバル属の幼魚の姿を確認できたので、今年はどうかと探すが見つからない。それどころか魚の姿が非常に少ない。そんな中、何年か振りにカエルアンコウを見つけ採集する。餌となる魚が少ないから出て来たのだろうか?何年か前は毎週カエルアンコウを採集し、家の水槽内で産卵行動も見ることができた。現在は家の水槽は全て淡水としてしまったので持ち帰っても飼育することはできない。今回は標本も集まっているので再放流する。
カエルアンコウ
タカノハダイ幼魚
今日は定置網漁を終え、帰港すると鹿大ではなく宮崎大学の学生が来ている。4年前に宮崎で開催された魚類学会年会でお会いした学生である。調査の為来ると連絡を受けていた。そしてもう一人同じく宮崎大の初めて会う学生も来る。自分の水揚げを済ませ、一緒に来ていた初めて会う学生と話をすると、市場に水揚げされている魚を確保することが出来ないかと尋ねられる。何か面白い魚でもいたのかなと思い聞くと体のスレた小さなタチウオが揚っており、そのタチウオを指さす。なんでこんなタチウオをと思うもよく見ると顔付が違う。頭部の形状が平たく長い。ひょっとしてと思い尾を見ると普通のタチウオと同じく尾鰭が無い。するとその学生からカンムリダチだと指摘され、更に尾はタチウオと同じ形状と教えられる。タチウオ科の中でタチウオ属以外は皆尾鰭があるものと思っていた。カンムリダチは市場だけでなく漁獲もしたことが無く初めて出会う魚である。自分では市場に揚っている魚をサッと見るだけで普通のタチウオだろうと思ってスルーしていたと思われる。宮崎大学の学生に感謝である。漁協の職員に話をして標本用に確保する。だが、見つけたのは宮崎大である。確保した標本を宮崎大に取られてしまうのかと思うが、標本はこれから鹿大へ行き、鹿大総合研究博物館に登録してくれるというので喜んで標本を渡す。自分で確保するとなると小さいタチウオとはいえ、冷凍保存となると結構なスペースが必要であり大変である。宮崎大学の学生さんのお陰で魚も見つけられ、更には鹿大に標本登録までしてくれるとは本当に助かり、ありがたい。今回は宮崎大学のお陰で新しい魚を確保することができ良かった。
今日は水揚げ後、市場内を散策していると大きめなヨコスジフエダイが並んでいる。見るとヨコスジフエダイの特徴である体側にある黒色斑が確認できない。ただ、この黒色斑は不明瞭な場合がある。ところがヨコスジフエダイは2個体並んでおり、共に黒色斑が確認できない。という事は探しているタテフエダイではないだろうか。タテフエダイの分布域は沖縄以南の琉球列島の他に三浦半島、和歌山県串本となっている。三浦半島、串本で確認されたのは黒潮の影響と思われ、黒潮の影響を受ける我が海域でも見つかる可能性があり探していた。だが、探してはいたがこの2種の違いはこの黒色斑しか頭に入ってない。ハッキリとこの魚がタテフエダイとはわからないので今回は標本用に確保はせず、その場で写真だけ撮る。家に帰りこの2種の違いを検索図鑑で調べると、黒色斑の他に前鰓蓋骨後部下縁に小鱗があるかないかかである。撮った写真を拡大してこの箇所を見ると鱗は確認できない。となるとやはり普通に揚がるヨコスジフエダイである。タテフエダイではなく残念であったが、今回の事でこの2種の違いも頭に入り、これで今度見つけた時は判断できそうなので良い勉強になった。
ここに小鱗があればタテフエダイ
今日は日曜日で通常なら市場は休みであるが、ゴールデンウィークの連休明けで今日から仕事。今日は漁を終え市場で水揚げしていると他の定置網の人から標本用に魚を頂く。カガミダイの幼魚である。カガミダイは深いところに生息していて成魚は定置網では獲れないのだが、幼魚に限って稀に獲れる事がある。カガミダイは成魚では生きた状態で確保することはできないが、幼魚だと生きて綺麗に泳いでいる状態で確保することができ、今までに水族館へ何度か搬出している。最近地元かごしま水族館が一部リニューアルされ、深海魚のコーナーができた。今回のこの個体がもしも生きていれば水族館へ行ってしまうところであるが、生きた状態で確保できなかったので、遠慮無く標本用に頂く。
今日はお隣の定置網の雑魚の選別作業でもう1種懐かしい魚を見つける。ヒメタカサゴである。ヒメタカサゴは記録を見ると9年前にうちの定置網で獲れたのを最後に見ていない。タカサゴやニセタカサゴ、ササムロなどこの魚の仲間は年々増加しているように思え、ヒメタカサゴも直ぐにまた出会えるかと思っていた。ところがあれから9年である。更に今日はたまたま選別作業を手伝ったから見つけたものの、うちの定置網ではあれから未だに見つからない状態である。珍しい魚ではないが今度出会えるのはいつになるのだろうか?
今日は仕事を終え市場へ行くと、お隣の漁協の定置網の雑魚を漁協職員が選別していた。養殖魚の餌にするそうだが、餌に混ぜてはいけない魚が多々入っていてそれを取り除いている。私も一緒に手伝う。隣の漁協の定置網という事で設置場所がだいぶ違う為、雑魚の魚種も結構違い選別していると面白い。選別作業をしているとニシキカワハギの幼魚を見つける。これは久しぶりのご対面である。以前にうちの定置網と夜間採集でこのニシキカワハギの幼魚を見つけたが、その時は魚種がわからく未記録種もしくは未記載種を期待しワクワクしていた。その後、生きた状態で確保することが出来、家の水槽で成長過程を観察する(ブログ2010 6.17)。すると成長に伴い鰓孔の周辺に暗色斑が現れニシキカワハギの幼魚とわかった次第である(ブログ2010 7.10)。だが、その後死んでしまったうえ見つけた時はボロボロな状態だった為、その個体を標本用に確保することが出来なかった。今度はその特徴の現れた状態の幼魚を確保したいところである。