今日は夜間採集の日。明日は朝からイベントがあるので、今夜は早めに港へ行く。最近は海水温が異常なくらい低く、定置網でも魚種漁獲共に少なく夜間採集も期待できない感じ。現場へ行き海の中を覗くとプランクトンは多いものの魚の姿が無い。海水温の低下で魚の活性も低いものと思われ、泳いでいる魚よりも岸壁や物陰でジッとしている魚を探す。すると岸壁にへばり付いている魚を見つけタモ網で掬う。いつものカサゴだろうと思い掬った魚を見るとイソカサゴである。イソカサゴは珍しい魚ではなく、潜ればいつでも見る事ができる。岩陰を覗くと見れる魚であり、素潜り採集では何度も採集しているが、港内で見るのは初めてである。当然この夜間採集では初採集となる。
私が担当する集落イベント開催の為、年明けから忙しい日々が続いている。ようやくイベントも無事に終了し時間が取れ、今日が今年初の魚ボラ参加となる。だが、今日は魚ボラと言っても自分の事で訪れたようなもの。昨年うちの定置網で獲れたヤリテングが鹿児島県初記録という事で、Nature of Kagoshimaに投稿する報告書を作成する為である。ど素人の自分一人では報告書の作成は無理なので、同じく著者となる研究者の方に教えて貰いながら作業を進める。ヤリテングは日本では稀種な為、国内の文献は殆ど無く、参考文献は全て英文である。更にヤリテングは魚の形にはほど遠く、始める前から困難な作業となる事は察していた。標本を手に取り、鰭など各部位を調べて行くが、その各部位が普通の魚には該当しないものがいくつかある。その部位を文献には英語で示されているが、それは専門用語であり日本語ではどのように示すのかわからない。当然辞書に載っている訳ではない。早くも壁にぶち当たり、今後作業を進めて行くうえで更に不安が募るばかりである。
今日は夜間採集を行う土曜日であるが、風が強く時化なので採集は昨日行った。だが、風は吹いているものの、ひょっとして採集できるのではと二夜続けて港へ向かう。現場に着くとやはり風の影響を受け、水中を確認することができない。水面に浮いている魚を探すがボラの稚魚しか見つからず諦める。このまま帰るのもと思い、別の港へ移動。風の影響を受けてはいるが港の端に水中まで見渡せる場所を発見し、そこで採集を試みる。魚影が見えタモで掬うと大小のオヤビッチャである。夜なので魚の色彩も夜バージョンな感じ。大きなオヤビッチャはまだ写真に収めていないので確保。比較用に2個体共持ち帰る。結局、今日の採集はこの2個体のみで終了。
港での夜間採集は仕事が休みの前日夜の土曜日に行っている。今日は金曜日であるが、明日土曜日が時化予報で定置網漁の操業ができないと判断され仕事が休みになる。仕事が休みになったうえ、明日は時化で夜間採集は出来ない恐れがあるので、今日夜間採集に行く。港に着くともう既に風が吹いて来ている。海面を見るとプランクトンが沸いていて状態は良いが、水中を覗くのに時より風が邪魔をする。そんな中、水面に浮遊している小さなヨウジウオの仲間を見つけ採集する。だが、それ以降は海中が見難い為採集を諦め帰宅する。今回の採集は収穫が無くブログネタにもできないと諦めていた。一応採集した小さなヨウジウオを撮影。撮影した画像を見ながら検索図鑑で同定を試みるとホシヨウジとなる。ホシヨウジはまだ未採集である。さらに聞くと鹿児島県では採集記録が無いらしい。この同じ港で以前に夜間採集しで得られたウミヤッコも鹿児島県初記録であり報告書も出した事もある。今回は収穫が無くブログネタにもならないかと思っていたら、思わぬ収穫となる。
今日は定置網で久しぶりに大きなクエが獲れる。クエはここ九州地方ではアラと呼ばれ、うちの漁協でもアラと呼ばれていた。ところが最近ではアラではなく「本アラ」と呼ばれている。これは本当のアラという意味である。何故このように呼ばれるようになったかというと、最近漁獲される大型のハタ類はクエではなくチャイロマルハタかヤイトハタである。特にチャイロマルハタは急激に漁獲量が増えている。その為、このチャイロマルハタとヤイトハタの事を胡麻模様のあるアラという事で「ごまアラ」と呼ぶ。それに対して本来の本当のアラという事で「本アラ」と呼ぶようになる。昔ながらの本アラのクエは、ごまアラ2種に比べると値段が高値である。ところが今回期待した値段ではなくごまアラと同じような値段で落札されてしまう。だが、よくよく考えると最近はごまアラの値段が上がってきている。これはごまアラの品質の良さが認知されてきている証である。という事はごまアラの値段が本アラの値段に近づいて来たという事である。でも、自分としてはやはりこの本アラのクエは王者であり、ごまアラ2種と同じように扱ってもらいたくはない。
今日は定置網漁の水揚げを終えてから市場内を散策する。すると、水揚げされているマルヒラアジの中に1個体だけヒシヨロイアジが混ざっているのを見つける。ヒシヨロイアジはここでは珍しく、稀に揚るくらいだが、その殆どがサイズが大きい為、マルヒラアジに混ざっていても目立つので直ぐに気付く。ところが今回はサイズ的にはマルヒラアジと同じであり、よく探さないと見落としてしまいそうである。今回の個体は今まで見た中では一番小さいサイズである。確保したいところではあるが、既に入札は終わっており、手にすることはできない。これからも注意して観察せねばならない。
写真上:マルヒラアジ 写真下:ヒシヨロイアジ