台風22号が通過し今日から定置網漁も再開。台風の置き土産を期待したが漁模様は面白い魚は無く、平凡なものであった。ところが帰港すると市場には大きなヒラアジ類がたくさん揚がっている。漁協やうちのお隣の定置網で獲れた模様。見た感じでは体高が低く吻背縁の角度が浅いのでオニヒラアジに見えるのだが、各部位をよく見るとオニヒラアジにしては口が大きく尾鰭の色が上葉下葉共に同じく暗色である。体高を除けばロウニンアジのようにも思える。イトウオニヒラアジは大きなサイズを見たこと無いが、ネット上に上がっている個体を見ると幼魚の時よりも特徴が良く出ており、尾鰭上葉先端の黒色がハッキリと表れているので違う感じである。仲買人からもこの魚は何かと聞かれるが、結局答えは出ず。今日は台風明けという事で魚も多くて水揚げも忙しく、水揚げ作業が終了した時には既に入札も終わり沢山揚がっていたこの魚も運ばれてしまっており、小さなひとタンクが残っているだけである。標本用に確保して精査したいところではあるが大きいうえ高値がついてしまう。唯一の救いは、ひとタンクだけ残っていたので簡単ではあるが写真に収める事が出来た事である。だが、写真に収めた事でやはりこの魚に対して疑問が残り、悩み、確保できなかった事を悔やむことになる。
今日はもう一種、同じく定置網漁での選別作業中にナンヨウツバメウオの若魚も見つける。ナンヨウツバメウオは漁港内などで枯葉のような赤茶色の幼魚を見つけることがあり、採集もしている。ところがその成魚をまだ見たことが無い。それとは逆にミカヅキツバメウオは定置網で成魚は獲れるが、その幼魚を見たことが無い。普通のツバメウオは幼魚から成魚まで見ることが出来るものの、ナンヨウツバメウオは幼魚のみ、ミカヅキツバメウオは成魚のみしか今までに見たことが無く、生息生育の違いがあるものと思われる。今回、現場では気付かなかったが、ナンヨウツバメウオは枯葉のような幼魚を港で採集したことはあるが、その幼魚は定置網には入らない。という事は定置網で獲れたこの個体は今回が初入網となるのではないだろうか。ちょっと見慣れた感じの魚であり、危うく初入網に気付かないところであった。
今日は定置網漁を終え、選別作業をしていると、いつも見ているものよりもスジの数が多いテンジクダイ科の魚を見つける。家に持ち帰り検索図鑑で調べるとスダレヤライイシモチである。ヤライイシモチ属では13年前に一度だけリュウキュウヤライイシモチが獲れた事があるが、スダレヤライイシモチは今回初入網となる。勿論標本用に確保する。当然家には写真がまだ無いので標本写真を撮りたいところではあるが、この個体は鱗が殆ど剥がれており、更に尾鰭などもスレており状態が良くない。という事で残念ではあるが写真撮影は断念し、この次の個体を探すことにする。
今日は定置網漁を終え帰港すると、他の定置網の人に市場に揚っている魚の種名が知りたいと言われる。その魚を見に行くとよく肥えている大きなハタの仲間である。体側に斑点が散在し、よく水揚げされているオオモンハタに似ている。だが、サイズ的にオオモンハタではなく、何だかその場ではわからない。家に持ち帰り調べたいところではあるが、サイズも大きくよく肥えており高値である事は間違いなく、とてもじゃないけど確保することはできない。という事で魚種名だけでも調べられるように各部位を写真に収める。尾鰭を写真に撮ろうとすると上部のみに斑点がある。この尾鰭の特徴はキテンハタである。キテンハタは今までにうちの定置網や市場で見たことがあるが、この個体のように肥えたものではなかったので見た目で様相が違い、キテンハタを疑わなかった。だが、これで現場で魚種名も判明。まだ標本用として確保していない魚種であり、滅多に見る事はできないが、はやり確保するのを諦めるしかない。
今日はもう1種、市場でオオカマスを見つける。オオカマスはうちの定置網でも何度か獲れており、市場でも何度か見掛けたことがあるが一応は稀である。今回は本当に久し振りのご対面となる。標本用に確保しているかどうかが自分の記憶では微妙である。でもカマスの仲間でグラム数も掛からないので値段的にも安いと思い、漁協職員に相談し標本用に確保する。家に帰り調べると、今までに3個体だけ標本用に確保し登録してある。まだまだ標本が少ないので確保して良かった。残すは最近全く見なくなったホソカマスである。
今日は市場で久し振りにカスリハタが揚っているのを見つける。しかもサイズも小さく標本用に適したサイズである。カスリハタは珍しく、更に見つけてもサイズが大きいうえ高値である。今回はサイズが小さく標本用に適しているものの刺し網で漁獲されたもので体にスレ傷があり、体色も何だか汚れた感じに見える。一応、今までに2個体は標本用に確保しているので、今回は諦める。
今日は定置網漁を終え、市場で水揚げ作業をしていると、いつも標本提供してくれる漁師さんが綺麗な魚が獲れたと魚を持って来る。見るとここでは初めて見る魚である。だが、その場では魚種名は出て来ないが他県ではよく獲られている魚でその存在だけは知っている。調べれば直ぐに魚種名はわかりそうで珍しい魚ではない。でも、ここでは未記録種であるので標本用に頂く。家に帰り調べると直ぐにベニテグリとわかる。氷水に浸けて持ち帰ったが、現場で見た時よりも体色が薄くなった感じであるので、色が変わらないうちにと直ぐに標本写真の撮影をする。展鰭すると背鰭・尾鰭が大きく色も黄色で体色も赤くとても優雅で綺麗な魚である。だが、撮った標本写真を見ると、やはり体色が受け取った時よりも薄くなってしまっている。本来はもっと鮮やかで綺麗な魚なのでちょっと残念である。