私の恩師は水族館を辞め、同じ町で漁師をしている。昨日、その恩師が漁をしてアカハタやカサゴなど活魚を水揚げに来る。その中にまだ標本用に確保していないユカタハタがいた。標本用に欲しいところではあったが、やはりハタの仲間は高値の魚であり躊躇する。するともっと小さなユカタハタも獲れ、小さなものは逃がして来るとの事である。そして、標本に欲しいのであれば水揚げしない小さな個体を持って来てくれる事になる。アカハタやオオモンハタは近年多くなったが、ユカタハタは滅多に水揚げされないのでいつになるだろうかと思っていた。すると今朝、その恩師がまた水揚げに来て、ユカタハタの小さな個体が獲れたと持って来てくれた。しかも2個体も。昨日頼んでこんなに早くユカタハタの標本が手に入るとは思ってもなく、本当に有難い。これで標本未確保のハタ類がひとつ減ったが、サイズや高値で入手困難なハタ類の標本収集はまだまだ続くのである。
今日も土曜日という事でいつもの港へ夜間採集へ行く。今回も今の時期に2年続けて出現したメバル属の幼魚を求めて行う。現場は風も無く水中の様子がよく観察できる。だが、今回もメバル属幼魚の姿を確認することはできない。それどころか魚の姿が非常に少ない。そんな中、水面に光を当てると魚の姿が現れ、急いで掬う。見ると以前にも採集した事のある仔魚である。腹部に腹腔色素斑が6個確認できるのでオキエソの仔魚となる。この場所で何度も採集したことがあるが、その全てが腹腔色素斑が6個あるオキエソである。この港はうちの定置網から近い場所にある。この辺りは広く砂地であり、エソ類が非常に多い場所である。定置網ではオキエソも獲れるのだが非常に少なく、逆に他のエソの仲間が非常に多い。だが、他のエソ類の仔魚は獲れた事が無くどこにいるのか非常に気になる。
オキエソ仔魚
今年も生物や環境を含めた鹿児島県の自然に関する研究成果や地域活動を掲載した鹿児島県自然環境保全協会の会誌「Nature of Kagosima vol.43」が届く。毎年魚類関係の報告とページ数が増え続け、どこまで行くのだろうかと思っていたが、今年は昨年よりも50ページ減ですが、それでも500ページと年会誌としてはかなりの厚みがある。今年も全76報告のうち48報告が魚類関係と6割を超えている。今回は自分が第一著者としての報告は出さなかったが、学生の報告を見ているとまた機会を見てチャレンジしたいところである。鹿児島県の自然誌ですが、最近は会誌の知名度が上がり、県外の会員が全体の35%を占めている。興味のある方は県内外問わず会員になられてみては如何でしょうか。
今日は定置網で2年振りにウシサワラが獲れる。ウシサワラと言えば2年前は10年振りに獲れた為、今度獲れるのはまた10年後くらいかと思っていた。それ位今では稀種となっている為に、これほど直ぐに出会えるとはラッキーである。だが、やはり稀種という事で標本用に確保したいところではあるが、今回も11キロもある大型魚である。更に高値が付く魚なので当然手が出ない。更にどこからか情報が行ったらしく、魚ボラの学生からも問い合わせがあった。だが、サイズを伝えたら学生も確保できないことに納得せざる負えない感じであった。今まで獲れたウシサワラは全て10キロクラスのサイズである為、今後も小さいサイズの標本を狙っていても確保することは出来そうにない感じである。
今日は定置網漁を終え帰港すると漁協職員から魚の名前を教えてくれと言われる。赤と白の縞々な魚と言われセンネンダイかなと思う。活魚水槽を覗くと思った通りセンネンダイの若魚である。センネンダイはここでは珍しく、2~3年に一度見るくらいであり、うちの定置網では一度しか獲れたことがない。また、成長につれ体色の白いストライプは赤みを増してくるのだが、ここではこの色鮮やかなで綺麗な縞々の状態の個体しか見たことがない。今回の個体は今まで見た中でも一番最小なサイズである。これぞ標本サイズと言わんばかりであるが、今日はタイミングが悪く標本用に確保するのを諦める。次回、このサイズのセンネンダイと会う事が出来るのは何時だろうか。