最近は定置網でマルアジの漁獲が増えて来ている。そんな中、今日は市場で水揚げするマルアジを1尾ずつ秤に乗せて選別していると、魚を掴んだ時に違和感を感じる個体に出くわす。何かと思ってそのマルアジを見てみると体表がシワシワになっている。見た感じでは弱っているようには見えず、痩せている訳でもなく、ただ普通の個体だけど体表全体にシワが入っているだけのようである。このような個体の魚に出会うのは初めてである。人間ならば歳を老いてくればシワが増えてくるだろうが、魚は老成魚になっても体表にシワは表れない。このシワの原因が気になる。
今日は定置網でバショウカジキの幼魚が入網。この長い吻から尾鰭までの全長で30センチ程である。例年だとこの時期にこのサイズの個体がたくさん入網するのだが、今年はこれが初物である。更に以前は手のひらサイズから入網し、水族館へも搬出していたのだが、近年はその小さな個体も見掛けなくなっている。年々大きなバショウカジキの漁獲も減ってきているのでその表れだろうか。今回は泳いでいる時に逃げられてしまい採集出来ず、他の魚に揉まれた状態で見つける。その為、体表がスレてしまい、シンボルの大きく広い背鰭も切れてしまい状態は良くない。本来ならこの状態では標本には諦めるのだが、数が減って来ていると思われるので確保する。
今日は定置網漁を終え、市場で水揚げしていると、隣で別の定置網が水揚げしており、売れそうになく1尾だけ取り残されている魚がある。見るとナガテングハギモドキである。ナガテングハギモドキは今までに定置網で獲れた事はなく、ここの市場でも見た事はない。その網元に尋ね、この個体を譲ってもらう。これでナガテングハギモドキを初確保となる。この仲間は最近次々と日本記録種が見つかっており、要注意種である。だが、検索図鑑やネットで調べたが、ナガテングハギモドキに間違えなさそうである。
今日は定置網漁でまたサクラテンジクダイが浮いてくるのを見つけ、急いで確保する。今回は生きた状態で確保。今月初めにもサクラテンジクダイが獲れ(ブログ2016 6.3)、傷付かないように直ぐに氷水に浸け冷蔵したのだが、透き通った体は白く濁ってしまった為、撮影をせずに標本として確保しただけで終わらせていた。今回は前回のリベンジという事で生きた状態で持ち帰り撮影に挑む。直ぐに撮影できるように撮影準備をしてから展鰭する。いつもは生きた状態の場合、氷水に浸けてから鰭立てするのだが、魚を冷やさないように薬品を使い〆てから展鰭する。鰭が固定されるのを待っていると徐々に体が白く濁って来る。急いで鰭に刺してあるピンを外し撮影に取り掛かる。黒バックの上に魚を置くと体の白さが更に際立って見える。急いで撮影を終え、撮った写真を見るとやはり白く濁ってしまっている。更に鰭の固定も急いだ為しっかりと固定されてなく閉じ気味。今回も透明感のある写真とはならず、更に鰭も閉じ気味で今回も失敗である。失敗ではあるが、写真をよく見ると鰓蓋はまだ透明でその下に鰓の一部が確認できる。これだけでも収穫としないと救われない思いである。
今日は定置網漁を終え帰港すると、お隣の定置網の人に珍しい魚が獲れたから名前を教えてほしいと聞かれる。水族館用に生かしてあるというので見に行く。すると驚きのクサビフグである。しかも綺麗な状態で泳いでいる。クサビフグは獲れる事自体珍しく、今までにまだ数個体しか獲れた事が無い。うちの定置網でも以前に獲れた個体を水族館用に生かした事があるが、壁に直ぐに当たってしまい底に横たわり生かすことはできなかった。今回はサイズが小さく体に傷も無く壁に当たらずに綺麗に泳いでいる。以前にネットでクサビフグが泳いでいるところを見た事があるが、それと同じで鰭を素早く動かし俊敏に泳いでいる。名前を教え直ぐに水族館に連絡し、水族館へと旅立つ。写真は撮ったものの、水族館へ運ばれた後で写真よりも泳ぐ姿を動画で撮影すれば良かったと後悔する。泳いでいる姿の写真も貴重だが、やはり想像とかけ離れた泳ぐ姿が大変に貴重である。
今日は夜に自分が所属しているグループの総会があり帰りが遅くなるので夜間採集は諦めていた。だが、最近天気が悪く夜間採集を行っていなかった。という事で採集にいつもの港へ行く事に。久し振りなので魚に変化ないか期待する。すると何か動くものを見つけ採集してみる。見ると透明な魚である。これはクロハギ属の幼魚で以前に採集したこともあり、定置網でも獲れた事がある。だが、種まではわからないので一応生かして持ち帰る事に。そのほかスズキの幼魚があちこちにいるのが確認でき、成長過程をみる為に1個体だけ採集。またヒメジ属幼魚やチョウチョウウオ属の稚魚(トリクチス期幼生)などが獲れるものの、いつもの顔ぶれである。家に帰り撮影。すると撮影した写真を拡大するとスズキと思っていた幼魚が背鰭軟条数からヒラスズキの幼魚とわかる。今回たくさんいたスズキの幼魚が全てヒラスズキだったのかが気になる。
クロハギ属幼魚
ヒラスズキ幼魚
チョウチョウウオ属の稚魚(トリクチス期幼生)
ヒメジ属幼魚
最近は定置網にキタマクラの幼魚がたくさん入る。定置網で獲れる小さなアジやイワシなどの雑魚は養殖魚の餌として水揚げされる。だが、それには今混獲する小さなキタマクラを取り除かなければならない。今日も主な魚を水揚げした後に雑魚を選別台に広げ、キタマクラを取り除く作業をする。するとキタマクラに似た魚を見つける。ノコギリハギである。ノコギリハギは素潜り採集で既に採集済みであるが、定置網では初めて獲れ、初入網となる。一応初入網という事で魚ボラの標本用に確保する。ノコギリハギはフグ目ではあるがカワハギ科の魚である。だが、フグ科のシマキンチャクフグによく似ており、毒を持つフグに擬態しているとも言われている。今回は幸いキタマクラを探していたので違いがわかり直ぐに気付いたが、これがシマキンチャクフグの中からとなると見つけられただろうか。まぁ、ここではシマキンチャクフグも珍しい部類に入るので心配は無いだろう。
今日は定置網でモンガラカワハギ科の幼魚を2個体見つける。黄色っぽい方は見て直ぐにゴマモンガラかキヘリモンガラのどちらかだろうと思うが、もう一方の個体が何だかわからない。家に帰り図鑑やネットでいろいろと調べると科博のデータベースによく似た標本写真を見つける。メガネハギである。メガネハギは定置網では獲れないものの、素潜り採集の時によく見る魚である。よく見るメガネハギの幼魚は様相がまったく違うが、この個体が成長して次のステージが良く知るメガネハギの幼魚になるのだろう。黄色い方は調べるとゴマモンガラの幼魚となる。
ゴマモンガラ幼魚
メガネハギ幼魚
今日は定置網漁操業中にジンベエザメがいるとの声が聞こえてくる。網の中を見ていると、こちらへも泳いで来て確認する。見た感じ5メートルはありそうで、水族館へは不向きだろうと思う。更に、かごしま水族館へはまだ新しい個体を入れて期間が経っていないので注文も無く、小さな個体だったとしてもまたタイミングが悪くどちらにしても無理なので連絡もせずに逃がすことに。網を絞り上げると普通はジンベエザメが逃げようと暴れて網を乗り越えて行くのだが、今回の個体はとてもおとなしく網の外へ出て行こうとしない。結局ジンベエザメが乗っている網をクレーンで持ち上げ、ようやく網の外へ逃がすのに成功する。暴れ捲るのも大変だが、おとなし過ぎるのもこれまた大変であった。そんな中、ジンベエザメに吸着していたコバンザメの仲間が気になり採集する。ナガコバンである。ジンベエザメに吸着している時は体色が茶色であったが、捕まえると白っぽくなる。採集したもののサイズが大き過ぎ、冷凍庫に入りそうもないので結局放流し、手のひらサイズの小さな個体だけ標本用に確保する。
ナガコバン
今日は定置網でトビウオの幼魚が水面を泳いでいる中、1個体だけちょっと大きめなものを見つける。タモ網で掬い見てみるとサヨリトビウオである。サヨリトビウオは昔1日だけ一度に3個体獲れたことがあり、それが初入網でもあった。だが、それからはまったく獲れず、他の定置網の漁獲物からも見つけることはできないでいた。そして今日、久しぶりの対面となる。もちろん魚ボラの標本用に確保する。家に帰り昔獲れたサヨリトビウオの写真のデータを見ると実に9年も前である。となると、また今度出会うのは忘れた頃だろうか。最近は何だか何年振りに獲れたというブログネタが多いような気がする。海の様子が昔に戻って来ているのだろうか。
今日は定置網でもう1種、セミホウボウと思われる幼魚を見つける。毎年今の時期に獲れるのだが、まだ幼魚は写真を撮っていないので確保し持ち帰る。ここではセミホウボウよりもその仲間のオキセミホウボウの方が多く獲れる。この幼魚は見た目ではまだどちらだかわからないサイズである。同定を試みると臀鰭軟条数からオキセミホウボウの幼魚と思われる。
今日は定置網で網を絞ると小さく真っ赤で綺麗な魚が目に付き、急いで救い取る。見るとサクラテンジクダイである。サクラテンジクダイは6年前に同じく定置網で一度獲れ(ブログ2010 5.21)、それが初入網であった。ということで今回の個体が2個体目である。綺麗な標本写真を撮る為に鱗が剥げないように丁寧に扱う。傷まないように仕事が終わるまでいつものように漁協の冷蔵庫で保管する。仕事が終わり標本を取りに行く。状態を見てみると透き通っていた体が白くなってしまっている。冷やしたことにより白くなってしまったのだろうか。それとも同じくテンジクダイ科のスカシテンジクダイも体が透き通っているが死んでしまうと体が白くなってしまうので、その状態と同じなのだろうか。今回は撮影は諦め、標本として確保するだけにする。
今日は定置網で見覚えのある魚を見つける。カモハラギンポである。カモハラギンポはこの辺りを素潜りすれば、よく見掛ける魚である。素潜り採集では何度も採集したことがある魚ではあるが、定置網ではこれが初入網となる。標本用に既に確保済みであるが、定置網では初物なので標本用に確保する。