ブログ雑記

感じることを、そのままに・・・

ターくんしゃべるスマホ

2014-11-28 21:39:46 | Weblog
 スマートホンが欲しい老人の見た夢
おやつを食べて冷蔵庫のヨーグルトをコップに注いでこっそり飲もうとそっと忍び足で踏み出した時、
ボクはお母さんの呼ぶ声にビックリしてテーブルに置いたスマホにペチャットこぼしてしまった。
 大変だ。中へ染み込んで使えなくなってしまう。慌てて布巾で拭き取った。それでも気掛りで、もう一度手に取って目に近づけて
よく調べた。汚れは見当たらなかった。ようやく安心した。スマホは今ボクの一番大切な宝物だから。
 宿題をすませてマーちゃんと電話でカブトムシの自慢話をした。認めてはくれないけれど絶対僕の方が大きい。
マーちゃんもきっと同じように思っているはずだ。まあどちらが大きくてもいい。ぼくとマーちゃんは一番の仲良しだ。
 朝はスマホがボクの目覚ましだ。いつも大声で、「起きろ、起きろ、時間だ」と叫ぶ。
三度ほど繰り返されるといくら寝坊のボクでも目が覚める。
スマホがなかった頃はお母さんの「ター君時間ですよ、起きなさい」の一声で、ベツトを起きだしていた。
スマホはお母さんと違って、ボクを怒ったりしない。友達と同じだ。
台所でお母さんの「お早う」の挨拶を聞くとボクの眠気は吹っ飛んでしまう。その言葉は、かけっこの号砲と同じで、ダッシュしなければ
学校におくれてしまう。朝食もそこそこに飛び出して何とか始業時間に間にあう毎日だ。
 放課後マー君との帰り道音楽を聴きたくなってカバンに手を突っ込んでスマホをいくら探しても無かった。
ビックリして、記憶をたどってみた。落とした形跡はなかった。朝お母さんに急かされてテーブルの上に置き忘れてきたのを思い出した。
すると今度は心配になった。お母さんはどこかへ隠してしまって、スマホなんて知らないよ、としらばくれるに違いない。
でも、どうしてもありかを聞き出さなければならない。スマホはボクの一番大切な宝物なのだから。
 急いで家に帰って、お母さんの顔を見るなり「ボクのスマホ、どこにある」と尋ねた。「テーブルの上にあるよ」と返事して、ボクの
あわてた様子に少し驚いた素振りを見せた。
 全くの取り越し苦労だった。顔には出さなかったが心の底では「やったー」と、思わず叫んでいた。しかし落着て来ると、お母さんは
ボクの気持ちを見すかしていたのがよくわかった。
お母さんの言う事は、はい、と言って聞かなければいけない。とても勝てる相手ではないと思った。
 次の朝スマホの目覚ましの声にボクはビックリして飛び起きた。
「起きろ、起きろ、時間だ」と呼びかける声がお母さんの声に変わっていた。
スマホを手に取って画面を見ると、見た事も無い顔のアイコンが笑っていた。思わず画面を叩くと、笑顔になった。
すると口がパクパクと動き、しゃべり始めた。「わたしは昨日スマホにこぼれたヨーグルト菌です。一晩でスマホの中の仕組みやアプリを
学びました。何でも尋ねて下さい。情報を世界中駆け巡って探し出しますよ」と言って丸顔の大きな目玉のアイコンは目を閉じて眠ってしまった。朝はそれを考えているひまはない。大急ぎでパンと目玉焼きを口に頬張りながら牛乳を飲んでカバンを抱えて飛び出した。
 今日は忘れずスマホをカバンのポケットへ入れてきた。でも学校の規則は使用禁止だ。学校では使わない事が、お母さんとの約束だ。
それを破れば、スマホを取り上げられてしまって、友達とのおしゃべりもゲームも、わからない事も調べられなくなってしまう。
今のボクの楽しみもなくなる。子供は外でサッカーや野球をしていればスマホなんていらないと大人は思うかも知れないけれど、スポーツと同じようにボクの生活には欠かせないものになっている。お父さんもお母さんもボクがスマホにこだわっているのがどうしてなのか本当にわかっていないようだ。スマホなんて無駄な機能が付いた電話に過ぎない、と思っている。
大人になるにつれて子供の頃の楽しかった記憶はだんだんとうすれて消えてしまうのだろうか。悲しくなる、と独り言をいった。
そのとき「どうしの、何を考えているの」と聞き覚えのない声がカバンの中から聞こえた。一瞬ドキッとしたが直ぐ今朝ボクのスマホに住み着いていたヨーグルト菌の声だと気付いた。
「君だってその内しゃべるスマホの事など忘れてしまうさ、大人になる事は本当に大変な事なのだ」「そんなことはないよ、喋るスマホを持っているなんて、世界で初めてのことだと思うし、ボクは絶対君を手放さないからね」というと「ヨーグルト菌の寿命は一週間です、
それまで仲良くしましょう、何でも尋ねてみて下さい、インターネットの波に乗って世界の果てまで答えを探しに行ってきますよ」でも何も思い浮かばなかった。
 ただマー君にお喋りヨーグルト菌の不思議な出来事をスマホで知らせたかった。するとマー君の声が突然聞こえてきた。「ター君」