昨夜の世界卓球団体戦女子決勝は、すごかった。興奮した。
なにしろ絶対無敵の中国相手に、日本女子チームが3時間半を超える大熱戦を演じ、あと一歩まで追いつめたのだから。
結果的には、3-2で中国の勝ち、というのは順当に見える。
でも、中国の出場選手は、世界1位、2位、3位の3人の選手を起用していた。
世界ランクでは及ばない日本が、2位と3位の選手を倒して、先に2点を先取したのだから、すごいとしか言いようがなかった。
第1試合、世界ランク1位の孫穎莎に、日本は15歳の張本美和をぶつけた。
去年の試合で、張本は孫からゲームを奪い接戦に持ち込んで敗れていた。
だから期待したが、女王に隙はなかった。
必死に食らいつこうとする張本に対し、孫は5本、8本、4本と各ゲームとも接戦にすることなく、圧倒した。
第2試合は、日本のエース早田。
世界ランクは5位の早田に対し、相手の陳夢は現在世界ランクこそ3位だが、3年前の東京五輪の金メダリスト。
予選から準決勝まで全勝の早田だが、今まで陳夢との対戦で勝ったことがなかった。
第1ゲームは、6本しか奪えず、あっさり取られた。
日本女子は、ここまで対戦した国とはすべて3-0で連戦連勝してきたが、さすがにまだ中国には歯が立たないのか、と思った。
だが、第2ゲーム以降の早田は違った。
フォアハンド、バックハンド両方を使うラリーが続くこともあったが粘り、接戦となったが要所で得点して、好試合を演じた。
相手からすごいボールが返ってきても、むしろ笑顔になる早田は、この接戦を心から楽しんでいるように見えた。
第2ゲーム11-8、第3ゲーム11-9と、特に後半に貴重な得点を重ねて逆転。
第4ゲームは、マッチポイントを握ったものの、追い上げられて10-9の1点差となった。
ここで、ボールに対する前向きな気持ちが勝利を呼び込んだのだろう、ボールがネットインとなり、大切な1点が早田にもたらされた。
第2試合は、3-1で早田が勝ち、日本は1-1の同点に追いついた。
第3試合は、ここまで負けがない平野美宇と、世界ランク2位の王芸迪。
平野は、数年前のアジア大会で中国選手3人を撃破して優勝したことがあった。
両ハンドの高速卓球で相手を攻めて勝つから、ついたニックネームが「ハリケーン平野」。
だが、その後中国から研究されるとともに、中国は平野以上の高速卓球を自国の選手たちに身につけさせ、強くしてきた。
ようやく昨年から再び中国選手たちに善戦できるようになった平野は、去年1度だけだがこの王に勝ったことがあった。
それが自信となっているのか、早田の勝利が刺激となったのか、同じ戦型の王に対しひけをとらず、第1ゲームを8本で先取。
第2ゲームは、8-10とゲームポイントを握られたが、そこをしのいでジュースに持ち込み、13-11でもぎ取った。
この試合を見ていて思った。
10代の頃から世界相手に戦ってきた平野、強くなったり通じなくなったりして、またこの舞台でこんなキリキリする雰囲気の中で試合をしている。
平野も伊藤美誠も早田も、皆まだ23歳なのに、世界で戦うことを選んで、子ども時代からここまで長い年月を自らを追い込むことに使っているのだなあ…と。
それが、どれだけシビアなものなのか、想像するだけでも胸が熱くなった。
平野は、第3ゲームも3-7の劣勢から追いつき、9-10からジュースに持ち込んで12-10で奪取し、日本に貴重な2点目をもたらした。
これで、日本2-1中国。
なんとあと1勝で優勝だ。
第2試合で陳夢に勝った早田に大いに期待した。
だが、そこは中国。追い込まれた王者の孫穎莎の強さは形容しがたいほど絶対的なものだった。
早田が何をしようと、ものすごく威力のあるボールで早田を右に左に振り回し、圧倒した。
今までこんなに早田が弱く見えたことはない。
それほど孫の強さは際立っていた。
ゲームが進むほど、早田の表情から笑顔が消えていった。
3ゲームで、2本、7本、6本と合計15本しか早田に与えず、日本を応援する人たちの期待を一掃する強さを見せた。
これで、日本2-2中国。
最終第5ゲームは、日本15歳中学生の張本対中国30歳元王者の陳夢。
こんな場面で弱冠15歳に勝敗をゆだねるなんて、なんて酷なこと。
何事も経験だ、張本。
こんな試合を伊藤も、平野も、若いうちからやってきたのだ。
今度は、君の番だ。
伸び伸びと戦って、世界との、いや中国との差を実感して今後につなげてほしい。
そんな思いで見守っていたら、両ハンドをビシバシ決めた張本が、なんと11-4で第1ゲームを奪ってしまった。
おいおい、あと2ゲーム取れば、日本が勝てるよ!
行け、張本、この調子だ。
その期待を裏切らない張本は、どんなにすごいボールを打ち込まれてもあきらめない。
第2ゲームを7本で失うが、第3ゲームは追い上げ8-9でタイムアウト。
張本を迎える日本ベンチの伊藤、早田、平野、木原らは、皆笑顔だった。
予想以上に、自分の力を出して食いついていく張本のプレーぶりに、皆感心しながら応援していたのだった。
そこに、張本が自信をもって力を出し切れるよう、明るくアドバイスする先輩女子選手たちの映像に、日本の一体感を感じた。
結局第3ゲームも8-11で失い、ついに日本は追い込まれた。
第4ゲームは、開始から3本連取された張本だったが、一時は逆転して7-5とした。
その後、フォア前の小さいサーブのレシーブがやや甘いところを見透かされてそこを攻められたこともあって、7-11で敗れた。
敗れたとはいえ、堂々たる戦いぶりだった。
中国3-2日本。
まだ中国に勝てるまでにはいかなかった日本だが、この53年間中国をここまで追いつめたことはなかった。
それが、決勝戦でほぼ互角の戦いができるまでになってきた。
負けた張本は、「力が足りなかった。悔しい」と言っていた。
女子のエース早田は、敗れた張本をずっと気づかっていた。
悔しさをばねにして、中国に勝つことを目標にしてここまで力を高めてきた日本の各選手。
これからも、厳しいこの世界で生きていくのだろう。
打倒中国。それは、並大抵の努力ではかなえられないだろう。
でも、互角に近いところまできた。
それを自信にして、勝利という目標を叶える日が来ることを信じたい。
試合後のインタビューに明るく応じる日本の女子選手たちの姿に、未来への希望が輝いていた。
お疲れさまでした。
よくがんばりました。
本当にいい試合を見せてもらいました。
ありがとうございました。
これからも、明るく伸び伸びとプレーする姿に期待し、応援していきます q(^o^)p
それにしても、試合終了が午後11時40分を回っていた。
最近は夜中の12時時に寝るなんて、なかった。
朝6時起床と決めている私、今日は完全に寝不足となってしまったのでありました。