「ホーム、強いっすねえー。」
J2の昨季、ホーム戦10連勝したときに、毎試合入れ替わるように出現したヒーローの選手誰もが口にしたのが、この言葉だった。
この言葉の言い出しっぺは、伊藤涼太郎だった。
その伊藤涼太郎が、今日の試合でもこの言葉を叫んだ。
去年に比べて、この言葉はさらに心地よく響く。
なぜなら、この試合は、アルビレックス新潟がJ1に復帰してホームでの2試合目であり、前節のホーム初戦が引き分けだったから、ホームで初勝利だったのだ。
しかも、今日の対戦相手は、ここ数年J1優勝など上位に君臨してきたフロンターレ川崎。
このチームに勝てたら強さは本物だろう。
面白い試合にはなるかもしれないけれど。
でも、そう簡単に川崎には勝てないさ。
アルビレックス新潟をよく知らないJ1通は、戦前からそんな論調だった。
だが、伊藤涼太郎のゴールが決勝点となり、新潟が川崎を1-0で破ったのだ。
そこで、冒頭の言葉を、今年も涼太郎が叫んだというわけだ。
いまだ負けていないとはいえ、前節は札幌に,前々節は広島に、ボール支配率では上回られた新潟。
今日も、試合のスタッツを見ると、川崎の方が上だ。
しかし、シュートの本数が示すように、得点シーンに近づいたのは新潟の方が多かった。
太田、三戸、涼太郎、…その他、あのシュートが入っていれば…というのが数多くあった。
最少得点にとどまったが、それだけチャンスを多く作れたのは、チーム全体での守備もしっかりできていたからだ。
最後のところでは、GK小島がすばらしいセービングを見せてくれたし、どの選手も積極的にボールを奪いに走り、相手の好きなようにさせなかった。
その走るさまは、まさにアルビマグロサンクスデーにふさわしい姿。
よく泳ぐマグロのようによく走った選手が多かった。
そのよく走ったMOM…マン・オブ・ザ・マグロに選ばれたのは、チーム内で1・2番の走行距離を誇った伊藤涼太郎と高宇洋だった。
マン・オブ・ザ・マッチにも選ばれた涼太郎は、言った。
「2023年初の、ホーム強いっすねー。今日も最高の元気を届けていただき、ありがとうございます。」
「ここに立っているのは自分自身ですけど、今日は自分たちのディフェンスの選手たちが体を張って、無失点で抑えてくれたからです。なので、このハッピーターンとマグロは、ディフェンスの選手にもおすそ分けしようと思います。」
涼太郎がこんなことを言うようになったか、…ちょっと感激した。
どちらかというと、「オレがオレが」というタイプのようだった彼がこんな発言をするようになったか、という変容がうれしかった。
サッカーは、11人でプレーするが、特定の個人の力だけで勝てるわけではない。
個々の力を合わせたチーム力で勝負する競技なのだ。
去年、今年とアルビレックス新潟に所属し、そのことをよく理解した涼太郎だからこそ、今J1で誰もが驚く活躍ができているのだと思う。
松橋監督は、試合後、インタビュアーの質問に答えて涼太郎のプレーについてこう語っていた。
「非常に素晴らしいところもありますし、もちろん改善点もあります。そこはまた日ごろの練習の中で彼とコミュニケーションをとりながら、少しでも彼が本当に行きたいところに行けるようにしっかりとトレーニングを積んでいきたいと思っています。」
ん?彼が本当に行きたいところに行けるように…!?
まさかこんなに早く移籍容認発言じゃないよね?
なんて思って心配してしまった。
それにしても、4試合戦って、新潟のすべての得点に絡んでいる涼太郎。
きっと開幕から4週連続の週間ベスト11間違いなし、だな。
ケガだけはしないように気をつけて、ますます世間の注目を集める活躍をしてほしいなあ。
この勝利で、今日試合をした新潟は、J1暫定2位だ。
Visca Albirex !!!