土
金子みすゞ
こッつん こッつん
打(ぶ)たれる土は
よい畠になって
よい麦生むよ。
朝から晩まで
踏まれる土は
よい路(みち)になって
車を通すよ。
打たれぬ土は
踏まれぬ土は
要らない土か。
いえいえそれは
名のない草の
お宿をするよ。
かたくなった畑の土を、鍬で懸命に耕していたら、金子みすゞの詩に「土」というのがあったことを思い出した。
「 こッつん こッつん」という表現自体が畑を耕すオノマトペとしては珍しい。
この詩は、4連まであるが、「起・承・転・結」の4コママンガのような構成になっている。
2連までは、打たれたり踏まれたりだから、土の身になってみると、つらさがあっても役に立てると言いたいのかな?と思ったりした。
だが、3連になると、打たれたり踏まれたりしなければ役に立たない、要らない土なのかと問いかける。
そして、4連では、そうでなくても大丈夫だよ、と優しくなぐさめてくれている。
「名のない草のお宿をする」という役の立ち方は、なかなか思いつかない。
土を人として、この詩を読んでみると、なんだか癒やされる。
1連2連では、つらい目にあっても、人の役に立っているよ、後でいいことあるよ、と。
3連4連では、そうでなくても、あなたにはなんらかのいいところがあるんだよ、と。
そんなメッセージを受けることもできるからだ。
この詩を思い出しながら、こッつんこッつん、畑の土を耕していた。
良い土になってくれよ。