昨日の準決勝といい、今日の決勝といい、すばらしい試合をした。
もちろん、これはWBCの準決勝メキシコ戦、決勝のアメリカ戦のことである。
昨日の準決勝メキシコ戦では、序盤に1発で3点を失い、そのまま後半の7回を迎えたから、もう負けるのかと思ったよ。
しかも、2死ランナーなしになってからだった。
近藤がライト前ヒットで出ると、大谷も四球を選んで、2死一、二塁のチャンスを作った。
この時、私は車で移動中。
「次の吉田がホームランを打てば同点じゃないか」なんて思ったが、いくら吉田が当たっているとはいえ、そう甘いもんじゃないことはよく知っていた。
ところが、本当にホームランを打つのだから、すごい。
映像は見られないが、声だけで同点ホームランが生まれたことを知って、驚いた。
しかも、あとで映像を見たら、難しいコスのボールをほとんど片手で打った、技術の高いホームランだった。
直後の8回に2点をリードされても1点を返し、1点のビハインドで最終回を迎えた。
その9回裏の先頭バッターの大谷が、右中間に2塁打を放ち、ベース上で仲間を鼓舞する姿に感動した。
その姿は、吉田四球で無死1,2塁のチャンスにつながったが、迎えた打者は3三振4打数無安打の村上。
その村上が、右中間フェンス直撃の逆転サヨナラタイムリーを打つのだから、劇的だった。
不振の村上に託した栗山采配は、信頼感が感じられすごいと思った。
それに応える一撃を見せた村上、本当によかった。
すごい采配といえば、一塁ランナーを吉田に代えて快足の周東を起用したこと。
だからこそ、一塁走者がホームインでき、勝利できたのだった。
こんなスリリングな、鮮やかな逆転勝利を見ることができるなんて、なかなかない。
監督と選手、選手間の信頼感やチームワークのよさを感じることができた。
その信頼感やチームワークは今日の決勝のアメリカ戦でも十分に発揮された。
先発の今永がターナーに一発を食らうと、その直後に村上が一振りで同点に追いつくホームラン。
それをきっかけに、一死満塁からヌートバーの内野ゴロで逆転。
7回まで今永→戸郷→高橋→伊藤→大勢と、短いイニングで投手をつないでいく日本。
その投手たちの年齢は若い。
だが、多少のピンチを迎えても周囲からの激励を受けて、強打者ぞろいのアメリカに得点を許さないのがすばらしい。
8回には、ここまで投手陣を中心にチームを引っ張ってきたダルビッシュが登板。
ホームランを打たれて1点差になってしまい、見ているこちらはドキドキし始めた。
だけど、何とか抑えたのはさすがメジャーで長く投げているだけあった。
最後には、大谷を抑えに起用する栗山監督。
集中しきった大谷の表情には、怖さすら感じた。
その怖さが力みにつながったか、最初の打者を四球で出してしまった。
もう一人後にトラウトがいるから、逆転ホームランを打たれそうな予感すらした。
だが、大谷はその前に次打者を併殺打に打ち取り、トラウトの前にランナーを残さず最後の勝負をすることができた。
エンゼルスの盟友大谷とトラウトの対決は、フルカウントから大きなスライダーで空振りに打ち取った大谷が勝利した。
こんな最後に、二刀流の大谷のすごさを見せる展開になるなんて、なんという決勝戦だったことだろう。
もっとも、ダルビッシュにしても大谷にしても、自分から投げたいと主張していたのだそうだ。
そのメジャーリーガー2人が、「勝ちたい」「みんなの力を合わせて勝ちたい」という雰囲気を醸成していた。
それだけでなく、自分のもっている技術を伝えたり、チームメートを和ませたりということをすることにより、「野球を通じての強い仲間意識」を作っていった。
力が上の人たちが、自ら下りてきての働きかけは、強いまとまりを生んだ。
今日の試合前の大谷の言葉は、「今日一日はメジャーリーガーたちへの憧れを捨てて勝とう」と呼び掛けてもいた。
「憧れていたら、超えられない」
「今日は自分たちが、超えていくのだ」
と訴え、全員の気持ちを日本チームの力を勝利するための方向に向けていた。
それによって、日本の若手選手たちが委縮せずに自分の力を十分に発揮できていた。
信頼感に基づく、強固なチーム力。
それが、予選リーグの戦い以来一度も負けずに勝ち続け、日本代表に世界一のタイトルをもたらした。
3度目の栄冠といえど、過去2回以上にすばらしい戦いを見せてくれた。
日本代表の選手、監督やコーチ、チームスタッフ等関係者の皆さん、本当にありがとうございました。
そして、なにより優勝おめでとうございました!