(前編からの続き)
3
翌朝は、熱湯風呂のショックと蚊による寝不足が大きかったせいか、体に変調が起こっていた。
なんと、お通じが通じなくて困ったのだ。
「門」の近くまで来ていて出したくてたまらないのだが、そこを突破できないのだ。
そこでたまっていて痛くて苦しくて困ってしまった。
でも、出発しなくてはいけない時間になったので、仕方なくお通じできないまま、宿から出発。
熱湯風呂に、相次ぐ蚊の襲来と、熱烈歓迎していただいた、思い出深い宿になった。
おまけに、今度は自分の体に変調が起きるとは…。
向かった先が袋田の滝。
そこでは、光のトンネルや大きな滝など素晴らしかったから、下の痛みも少し軽減していた。
見終わった後、苦しくなったので、公衆トイレでまたがんばってみたけど、ダメ。
やっぱり苦しい。
約2時間の車運転の後、また別の公衆トイレでがんばったが、ダメ。
持ち合わせていた胃薬を飲んでみたが、改善の気配はなかった。
苦しい、苦しい。
この後、親類宅を訪問した。
懐かしいいとこや、伯母に会えてうれしかった。
伯母は90代だが、はきはきしていて元気な口調なのがうれしかった。
訪問中は、幸いトイレに行きたいとは思わなかった。
そこを辞して、あとは新潟に帰ることにした。
高速道路に乗って、サービスエリアで小休止。
当然のように、トイ活(トイレ活動)をした。
努力を重ねたせいか、昼に飲んだ胃薬が少しは効いたのか、ずっと塞がっていた一部が「開門」。
すっきりとまではいかなかったが、一部出たことによって、ようやく苦しみから解放された。
7時間も、この苦しみと戦っていたので、解放された喜びは大きかった。
ああ、完全じゃないけど、やっと楽になったぞ!
うれしいなあ。
…3つ目の災いは、この開門しない苦しみであった。
あとは、気持ちよく運転して帰るだけだと思ったのに、まさかこのサービスエリアのトイ活が、もう一つの悲劇を生むことになるとは思わなかった。
4
3時間高速を走って、下道に降りると、目の前はゆっくりと乗用車が走っていた。
多少イライラしそうになりながら、私の車の後ろにも何台も車がつながっているのが確認できた。
可能なら抜きたいのだけど、すでに日は暮れているし、道も広くなく危ないから、ずうっと30分以上、後ろを付いていった。
やっと前のゆっくりな車と別れることができ、イライラから解放され、10分ほど走って、ようやく家に着いた。
いろいろあったけど、やっとわが家に着いたよ。
さて、荷物を下ろそう。
その前に、運転の邪魔だからと外しておいたウエストポーチを持って、…と。
…ない!ない!?ない!!??
え~!!?そんなバカな!!
ウエストポーチがない!!
ウエストポーチには、財布も入っていた。
現金だけでなく、キャッシュカードやポイントカードなども、たくさん入っている。
うわあ~、どうしよう!!!?
どこでなくした?
そうか、サービスエリアのトイレだ。
思い出した。
用を足すために外して、棚のようなところに上げて置いたのだった。
なのに、「開通の喜び」が大きかったものだから、それに紛れて、ウエストポーチをとり忘れてしまったのだ。
なんてこった!!!
心臓バクバク、冷や汗ダラダラ。
あれからたくさんの時間がたっている。
悪い人に拾われていたら、もう返ってこない。
カードを悪用されたらどうしよう?…⤵
それでも、まずはサービスエリアに電話だ。
スマホで検索するにも、もどかしくて時間がかかった。
やがて、電話がつながると、「ありますよ」という話。
すぐには信じられなかったが、トイレ掃除の作業員の方が見つけて、届けてくれたのだそうだ。
入っている物を確認すると、何も取られてはいなかったことが分かった。
ホッとした。
着払いで荷物を送ってくれるように頼んで、住所や名前などを告げた。
2日後、小さな段ボール箱が届いた。
丁寧に梱包材でくるんであった。
開けてみると、アルビ選手のキーホルダーがついた黒いウエストポーチ。
まぎれもなく私が置き去りにしてしまったウエストポーチだった。
さっそくサービスエリアに電話をして、大きな感謝の気持ちを伝えた私であった。
…熱湯、蚊、閉門、置き忘れ。
わが身が招いたものもあるけれど、24時間の間に4つも災厄に見舞われた私だったのである。
なんだかね~…(タメイキ)。
でもね、4番目の、置き忘れたウエストポーチが手元に返ってきたということは、幸運だったのだから、これからいいことが続くと思いたいね。