今年の箱根駅伝、青学大が強さを発揮して2連覇を果たした。
特に、今季は、出雲駅伝、全日本大学駅伝と、國学院大が2連勝していた。
それだけに昨年に続く優勝は難しいと思っていた。
それなのに、しっかりと優勝を果たした。
どうしてこんなに強いのだろう?
やはり、そこは指導者、原晋氏の存在に行き当たる。
原晋監督は、どんな考えをもって、どんな指導法を展開しているのだろうか?
今までも何冊か著書を読んだことはあるが、改めてそんなことを知りたくなった。
そんなことを思っていたら、図書館で、読んでみたくなる本を見つけた。
それが、本書「最前線からの箱根駅伝論」(ビジネス社)だ。
副題が、「監督就任20年の集大成」と書いてあった。
本書が出たのは、「2023年11月10日第1刷発行」とあった。
というと、前回と今回の2連覇が始まる直前であった。
このときは、駒澤大の強さが際立っていたときだったはず。
でも、箱根駅伝では、絶対王者と思われていた駒澤大を破り優勝し、今年も同大や國学院大を退けて優勝したのだった。
本書の前書きでは、氏は、「駅伝こそが日本の長距離を強くするための本丸である」との考えを主張している。
タイム以外に現れる真の実力を見極めるのが監督の選手の決め方だという。
タイムトライアルの結果を見てみるとき、「タイムだけでなく、選手の表情や仕草、ゴール後の余裕度まで、よく目を凝らして見ておく必要がある」という。
細かい目の配り方に注意しているのだ。
また、指導者は、その時々の速さではなく、選手が持っている〝絶対値″の見極めが大きな手腕だという。
つまり、もし、この選手が100%の力を発揮したら、どれくらいのレベルで走るのか。
また、その100%の力をどのタイミングで出せるのか。10回に1回なのか、それとも3回に1回程度は出してくれるのか。
ということの見極めだ。
また、寮での暮らしにおける生活態度なども判断材料のひとつとなる。
普段のちょっとした雑用でも何でも、最後まできちんとやり通す選手が、やはり走りにおいてもその力を遺憾なく発揮する傾向が強いのです。
そう語るところに、監督の見る目の鋭さを感じた。
そして、原監督は、あくまでも大学という教育の場における指導者、つまり教育者であるという立場に立って選手たちを指導している。
勝利至上主義ではなく、人間の育成を目指しているのだということが伝わってきた。
そして、選手たちを信頼して、「フィードフォワード」で育てていく。
「フィードバック」という反省で育てるのではなく、前向きに考えてやっていくことを促し、自ら実践している。
なるほどなあ、と思った。
一人一人にきちんと向き合って人を育てているから、選手が力を伸ばすことができるわけだ。
そして、視野の広さがあり、自分の言うことを聞いていればいい、という姿勢でないところは、信頼するに足るすぐれたリーダーだと思う。
覚悟を持って前向きに生きているから、説得力がある。
本書全体から、原監督の陸上競技への熱い思いが伝わってきた。
だから、後半には関東学連や日本陸連の問題も提起している。
新たな発想をもって改革に取り組む人だから、責任の所在が不明確な関東学連や旧態依然とした日本陸連に対する批判や提言もなかなか強烈だ。
その辺の細かいことは省略するが、自らの実践で変革を起こし、実績を残している。
こういう人が叫ばないと、何も変化は起こらないのだろうと思う。
人間の育成を基本に、真摯に陸上競技の未来について考えていることがよく伝わってきた。
いずれにしても、原監督の文章には強い説得力があった。
それが押しつけではないからこそ、皆で強くなろうとする強いチームが出来上がるのだろうな。
本書が出版されて以降、2大会連続して青学大が箱根駅伝で優勝しているわけがだいぶ分かった気がする1冊だった。