迦陵頻伽──ことだまのこゑ

手猿樂師•嵐悳江が見た浮世を気ままに語る。

いつか見上げた旅空。

2020-06-23 18:33:00 | 浮世見聞記
いつもの古道を散歩してゐて、はや夏の表情を見せる空に、ふと足をとめる。



綿を放ったやうな雲も、すっかり夏の表情(いろ)。


しばし夏の旅行に出た氣分を味はふ。



どんなに浮世が煽らうと、私は人体實験に協カするつもりは全く無い以上、今夏の旅行は計画しない。


すべては、確實な安心安全のもとで、手猿樂を演じられる日を迎へんがため。


ただ、その一点に尽きる。



有象無象が致死病菌に狎れて無自覺症状を発症し、奇妙に浮かれてゐる今こそ、“夏の後”の備へに努める絶好の機會なり。



旅行は、なにも距離ばかりではない。




手許や足許の景色から、想ひを馳せることもまた旅なり。






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