迦陵頻伽──ことだまのこゑ

手猿樂師•嵐悳江が見た浮世を気ままに語る。

在京色彩旅行。 

2021-09-15 20:32:00 | 浮世見聞記
晴天の昼間はまだ日差しが強いが、それでも湿度がだいぶ下がったので、外出中の不快な汗からは解放されていと嬉し。

さうなると遠くへ旅行したくなるが、しかしいまそれを實行することは、偉大なる愚かモノでしかない。

為政者ごときに云はれるまでもなく、私はいまは、“東京圏”を越えての行動は控へることに決めてゐる。


ちなみに“東京圏”とは、



私はJR東日本が發賣してゐる「休日お出かけパス」の有効区間内をさすと、自分のなかで定義してゐる。


さりながら、東京都大田區の大田區立郷土博物館で開催されてゐる「川瀬巴水」展の後期展示、“旅先の風景編”を巡れば、



日本各地、それも現在では逢へない色彩美豊かな原風景の數々を、東京にゐながらにして旅することが叶ふ。

なにしろ、足をほんの數歩橫へ運ぶだけで、日本各地をあっと云ふ間に移動出来るのだから!

能樂で、ワキの旅僧などが“道行”を謠ひながら數足(歩)進むだけで國内を移動する、あの感覺に近いものがある。


併せて展示されてゐる古冩真がまさに示す如く、白黒画面でしか見られない昔日の眺めを、色のある景色でたくさん巡ることが出来るのだから、こんな贅澤な旅もないだらう。


そして私は海を越えて、李王朝時代の雰囲気が色濃く残る朝鮮をも旅する。

いつか人災疫病禍が終熄したらこの目で見に行きたいと思ってゐる大韓民國を、とりあへず一足先に見られたやうな得した氣分を味はひ、この特別展における一番の収穫となる。




博物館から十分ちょっと歩ひた環七に掛かる馬込橋には、川瀬巴水の複製版画が數點掲げられてゐて、



徒らにせはしい現代風景との、面白い對比を為してゐる。



しかし、

橋下を騒々しく流れるヒトとモノの流れに、

そのおかげで現在(いま)の自分も保たれてゐる事實だけは、

しっかりと認めねばならぬ。






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