孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

トランプ大統領  ガザ住民の完全移住、アメリカによるガザ再開発を公の場で表明 トランプ流の取引?

2025-02-05 23:39:39 | パレスチナ

(会談する米国のトランプ大統領(右)とイスラエルのネタニヤフ首相=米ホワイトハウスで2025年2月4日、AP【2月5日 毎日】 自身の“壮大な提案”をまくしたてるトランプ大統領の傍らで、笑いをかみ殺したようなネタニヤフ首相・・・そんな印象も)

【ガザを「中東のリビエラ」に】
トランプ大統領のパレスチナ・ガザ地区から住民を全員ヨルダン・エジプトなどに移住させ、ガザは再開発するという発想は、1月26日ブログ“トランプ大統領  ガザ住民をヨルダン・エジプトに「一掃」する「ガザ再建案」”でも取り上げました。

その時点では、トランプ大統領が大統領専用機「エアフォースワン」の機内で記者団へ語った話ということで、「どこまで本気かね・・・」という感もありましたが、再び、今度はイスラエル・ネタニヤフ首相との会談後、首相が同席する場での発言ということで、アメリカの正式な提案という形になってきています。

もちろん、後述のように、トランプ流ディールの一環という側面もあるでしょうが。

いずれにしても、公の場に持ち出したことで、トランプ提案をめぐってイスラエルや中東諸国なども反応を示し、提案が現実のものとして動き始めています。

ガザをアメリカが「所有」し、米軍派遣の可能性も視野に入れて再開発を行うとも。

****トランプ氏、アメリカの「ガザ所有」を主張 住民の「再定住」も提案****
「世界中の人に住んでもらう」アメリカのトランプ大統領がパレスチナ自治区ガザの住民「全員」を移住させたうえで、アメリカがガザを所有すると主張しました。

4日、イスラエルのネタニヤフ首相と会談したトランプ大統領。その後の会見で飛び出した発言が…

トランプ大統領
「我々がガザを所有する。破壊された建物を取り除いて、限りない雇用と住居を生み出す経済開発を行う。『中東のリビエラ』これはとても素晴らしい場所になる」

パレスチナ自治区ガザをフランス・イタリアのリゾートになぞらえ、イスラエル軍によって破壊されたガザをアメリカが経済的に発展させる計画を提案しました。記者から「アメリカ軍の兵士を送るか」と問われると…

トランプ大統領
「(Q.ガザの治安確保のために米軍部隊を派遣しますか?)もし必要ならそうする。我々がガザを引き継いで開発する」 と、派遣の可能性を否定しませんでした。

ガザには、イスラエル軍とイスラム組織ハマスの停戦合意を受けて避難先から自分たちの土地に戻る多くの住民がいます。トランプ大統領は会談で、ガザ住民は全員ガザを去り、周辺国など別の場所に「再定住」すべきだとし、こう主張しました。

トランプ大統領
「人々はガザに戻るべきではない。パレスチナ人がガザに戻りたがるのは、代わりに住む場所がないからだ。代わりの場所があればガザに戻りたいと思わないし、安全で美しいその場所に住みたがるだろう」

一連の発言は、パレスチナ国家樹立による「2国家共存」という、これまでのアメリカの中東政策をひっくり返しかねないもので、パレスチナ人の強制移住は「民族浄化」との批判もあがっています。

イスラエル ネタニヤフ首相
「あなたは歴代大統領のなかでイスラエルの最高の友人だ」

ネタニヤフ首相はトランプ大統領をこう持ち上げましたが、中東で影響力を持つサウジアラビアの外務省は、トランプ氏の会見後「パレスチナ人をその土地から追い出そうとする試みなど、パレスチナ人の正当な権利に対する、いかなる侵害も完全に拒否する」との声明を出しています。【2月5日 TBS NEWS DIG】
*****************

確かにガザの復興は困難を極める問題です。
“先月発表された国連の被害評価報告書によると、イスラエルの爆撃による5000万トン超のがれきの撤去には21年かかり、費用は最大12億ドルに上る可能性があるとみられる。”【2月5日 ロイター】

効率性の観点で言えば、トランプ大統領の構想には一理あります。しかしながら・・・

“トランプ氏はガザについて「何十年にもわたって死と破壊の象徴だった」と語り、住民全員が域外への再定住を希望していると一方的に主張した。「彼らは地獄のような暮らしをしてきた。ガザは人が住む場所ではない。彼らが戻りたい唯一の理由は他に選択肢がないからだ」と指摘した。”【2月5日 読売】

“180万人のガザ市民は立ち去らなければならない。そして、その費用は裕福な周辺国家が負担する。”【2月5日 FNNプライムオンライン】とも

「中東のリビエラ」・・・・前回(1月26日ブログ)でも指摘したように、地上げを行って再開発・・・という不動産業者の発想です。

ガザに済むかどうかは第一義的にはガザ住民が決める話で、“ガザは人が住む場所ではない。 彼らが戻りたい唯一の理由は他に選択肢がないからだ”という決めつけには閉口します。

【米国が主導してきた第二次大戦後の世界秩序を自らの手で突き崩すトランプ大統領】
これまでのパレスチナ国家建設による「二国家共存」「二国家解決」という(イスラエルを除き)国際的に認知された枠組みを根底から覆す破壊的構想ですが、当然ながら、占領地からの住民の強制移住は国際法違反です。

ヨルダン・エジプトなど周辺国はガザ住民移住を拒否していますが、飾住民・周辺国を力でねじ伏せて強行するなら、それはロシアのウクライナ侵攻などと同様に、日本政府が否定する「力による現状変更」です。

***トランプ氏「ガザ所有」案の衝撃 和平プロセス崩壊させる破壊力、国際規範軽視際立つ****
トランプ米大統領は4日、パレスチナ自治区ガザの戦後処理を巡り、米国がガザを「所有」するとの構想を明らかにした。第2次政権発足時に表明した「領土拡大」に沿った内容だ。

一方で同構想は、米国をはじめとする国際社会が目指してきたイスラエルとパレスチナ国家による「2国家共存」に向けた和平プロセスを土台から崩すものだといえ、米国の中東外交を根本から作り替える破壊力を持つ。

トランプ氏の構想の前提となっているのは、ガザから「すべてのパレスチナ人」をエジプトやヨルダンなどの第三国へ強制移住させるとの案だ。実質的にガザを無人にし、米国が開発事業に責任を負うとする。

トランプ氏は4日の記者会見で、地中海北岸の欧州の高級保養地になぞらえ、ガザは「中東のリビエラ」になると豪語した。

同時にトランプ氏は、ガザ住民にとってはガザの域外に出ることが「幸せだ」としつつ、将来的な帰還には否定的な姿勢をみせた。

1993年のオスロ合意を起点とする中東和平プロセスは、パレスチナがヨルダン川西岸とガザを領土とする独立国家を樹立し、イスラエルとの共存を図るとの発想に基づいて積み上げられてきたものだ。歴代の米政権はこれを主導し、プロセス前進を目指してきた。

「2国家共存」支持明言せず
しかし、トランプ氏は会見で「何度も失敗してきたことを繰り返すのか」とし、「2国家共存」への支持を明言しなかった。

同氏は第1次政権の2020年にも、国際法に違反する西岸や東エルサレムのユダヤ人入植地の多くに、イスラエルの主権を認めるなどとする独自の「中東和平案」を公表している。今回浮上した米国による「ガザ所有」構想は、従来のイスラエル寄りの立場に、商業的利益を重視する自身の「米国第一」主義を加味したものだ。

トランプ氏は第2次政権で、デンマーク自治領グリーンランドやパナマ運河、カナダへの領土的野心を公言し、軍事力行使も排除しないとしてきた。ガザに対しても米軍派遣を否定はしていない。

透けてみえるのは、武力などによって当事者を無視した領土変更は認めないとする国際規範の軽視だ。トランプ氏は、米国が主導してきた第二次大戦後の世界秩序を自らの手で突き崩している。【2月5日 産経】
******************

【狂喜するイスラエル 反発するハマス・アラブ諸国 自分の力に酔うトランプ大統領】
前回ブログでも触れたように、今回トランプ構想と似たような、ガザの住民をエジプトのシナイ半島に強制的に移住させるという発想もあったイスラエルは、今回提案を大歓迎しています。

****「歴史的な朝」イスラエル閣僚、トランプ氏の「ガザ所有」発言を歓迎****
トランプ米大統領がパレスチナ自治区ガザ地区を「米国が所有」すると発言したことを受け、イスラエル国内では歓迎の声が上がっている。米軍が駐留してガザを支配すれば、イスラム組織ハマスによる越境攻撃やロケット弾攻撃などの脅威が取り除かれると考えているためだ。ただ、ハマスやアラブ諸国の反発は必至で、奇抜な案の実現は未知数だ。

「歴史的な朝だ」「共に世界を素晴らしくしよう」――。イスラエルメディアによると、ネタニヤフ政権の閣僚からは、トランプ氏の発言に喜びの声が相次いだ。ネタニヤフ首相の政敵のガンツ元国防相も声明で「トランプ氏は独創的かつ興味深い考えを披露した」と前向きな見方を示した。

ハマスによるガザの実効支配が始まった2007年以降、イスラエルは5回にわたって大規模な戦闘を繰り返してきた。いずれもハマスによるロケット弾攻撃などを抑止する狙いがあったが、これまで「テロ攻撃」を根絶できてはいない。

仮に同盟国の米国がガザを事実上占領すれば、イスラエルの安全保障環境は劇的に向上することになる。ネタニヤフ氏はトランプ氏との共同記者会見で、「トランプ氏は違う未来を見ている」と述べ、「注意を払う価値のあるアイデアだ」と称賛した。【2月5日 毎日】
*********************

当然ながらハマスはもちろん、アラブ諸国は反発しています。

****「火に油注ぐ」と強く非難 トランプ大統領「ガザ所有」構想で周辺国反発****
アメリカのトランプ大統領が戦闘で荒廃したパレスチナガザ地区を所有し、経済開発をする意向を示したことを受け、イスラム組織「ハマス」や周辺国から反発が相次いでいます。

ハマスは声明で、トランプ大統領の構想は「地域の安定に役立たず火に油を注ぐだけだ」と非難しました。そのうえで「これらの無責任な発言を撤回するよう求める」としています。

1月19日から始まったガザ地区の停戦は第2段階への移行に向けて協議が始まっていますが、交渉に影響が出る恐れもあります。

イスラエルとパレスチナの「2国家解決」を支持するサウジアラビアの外務省も声明を出しました。

東エルサレムを首都とするパレスチナの独立国家樹立の立場は変わらないとして、「パレスチナ人の正当な権利に対するいかなる侵害も明確に拒否する」と強調しています。

ガザ地区の隣国でトランプ大統領がパレスチナ人の移住受け入れを要請したエジプトでは5日、外相がパレスチナ自治政府の首相と会談しました。

両者はパレスチナ人がガザを離れることなく、早期復興計画を進めることの重要性を確認したということです。【2月5日 テレ朝news】
**********************

しかし、南米諸国に不法移民送還を受入れさせ、カナダ・メキシコに譲歩を迫ったように、トランプ大統領はアメリカの“力”を持ってすれば中東諸国に同意させるのはたやすいと考えているのでしょう。

イスラエルとの関係正常化を促したい中東の地域大国サウジアラビアが「アラブの大義」を掲げて強硬姿勢を崩していないのは、トランプ氏にとってはやや厄介でしょうが。サウジアラビアとしても「アラブの盟主」を自任するためには、ここで折れる訳にはいかないところ。ただ、ヨルダン・エジプトが賛成に転じれば、話も違ってくるかも。

【ガザ住民にとっては「第2のナクバ」 ガザに希望を持てない若者には朗報かも】
肝心のガザ住民は・・・・意見を代表する政治システムが今は存在しないので、その声を集約することはできませんが、多くのガザ住民にとっては「第2のナクバ」でしょう。(ナクバ・・・イスラエル建国時に、75万人のパレスチナ人をその土地から追い出した、パレスチナ人にとっての大惨事・大破局)

ただ、ガザに希望が持てない若者は外に移住するかも・・・という見方も。

****ガザ住民、不安と反発 第2のナクバ(大惨事)が始まる****
トランプ米大統領が4日、米国がパレスチナ自治区ガザを所有し、住民を域外に移住させるべきだと提案したことに、ガザ住民からは不安と反発の声が上がった。

1948年のイスラエル建国で約70万人のパレスチナ人が難民となった「ナクバ(大惨事)」に重ねた住民は「第2のナクバが今始まる」と嘆いた。

「パレスチナ国家樹立の可能性をなくそうとしている」。南部ハンユニスで避難生活を送るマスリーさん(54)が電話取材に応じた。

マスリーさんは「(ガザに)戻ることができないのならガザを離れない」と話す。一方で「若者にとってガザの状況は壊滅的だ。仕事はないし、多くは完全に希望を失っている」と認め、ガザから出ることを多数が受け入れるかもしれないと語った。

ハンユニスに避難するバシーティーさん(19)は、トランプ氏やイスラエルのネタニヤフ首相が「ガザ住民を自分たちの土地に住む権利を持つ人間だとみていない。殺害するか強制退去させるべき犯罪者だと考えている」と批判した。【2月5日 共同】
********************

【トランプ流ディールの落としどころは?】
「これは途方もなく素晴らしい考えで、最高レベルの指導者たちから称賛されている。」(トランプ大統領)【2月5日 FNNプライムオンライン】・・・トランプ大統領は自身の提案に酔っているようにも見受けられますが、問題は今後どこまで事を進める考えなのか?というあたり。

トランプ流の「ディール(取引)」では、先ずしょっぱな強烈な提案を行い、そこから相手の譲歩を引き出すというのが常套手段。今回も、国際法違反にも問われる200万人のガザ住民強制移住がすんなりと進むとは思っていないでしょう・・・多分。

では、どのあたりを「落としどころ」に考えているのか?(それとも、本当に自分に酔っているだけで何も考えていないのか)

少なくとも、この話を進めるとハマスは強く反発し、ガザ停戦合意の第2段階(イスラエルの完全撤退とハマスの人質全員解放)は難しくなります。

********************
トランプ氏は会見で、停戦に関し、「どうなるか分からないが、継続されることを望む」と述べた。

ただ、ネタニヤフ氏はこれまで「戦闘再開」の可能性に言及してきた。戦闘再開を主張する閣内の極右勢力の更なる離脱を防ぐ目的があるとの指摘がある。

米ニュースサイト「アクシオス」は、ネタニヤフ氏がトランプ氏に対して、「第2段階」の実施を強制しないよう説得する意向だと報じていた。【2月5日 毎日】
*********************

今回のトランプ提案は、停戦合意の第2段階に進まず、戦闘再開したいネタニヤフ首相へのトランプ大統領の援護射撃でしょうか?

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

パレスチナ・ガザ地区 イスラエルのUNRWA活動禁止法でガザ支援は著しく困難に

2025-02-04 23:33:05 | パレスチナ

(UNRWAが届けた食糧を運ぶパレスチナの人々(1月29日、ガザ地区)【2月3日 Newsweek】)

【ガザ停戦は続いているものの先は見通せない状況】
アメリカの圧倒的力を背景に関税という棍棒を振り回すトランプ大統領がもたらす世界への影響、アメリカ国内で急速に進むトランプ革命、そこで絶大な影響力を発揮して連邦政府解体を進める大富豪マスク氏・・・そうしたことに世界の注目は集まっていますが、パレスチナではイスラエルとハマスの停戦合意が何とか持続しているものの、先はまったく見通せない状況です。

****ハマスが人質3人を解放…イスラエルは183人を釈放し、ラファ検問所も開放****
イスラム主義組織ハマスは1日、イスラエルとの停戦合意に基づき、人質の男性3人を解放した。ロイター通信によると、イスラエルはパレスチナ人収監者ら183人を釈放した。

停戦合意に基づく身柄交換は今回で4回目。ハマスはパレスチナ自治区ガザ南部ハンユニスでイスラエルとフランスの二重国籍の1人を含む2人、北部ガザ市でイスラエルと米国の二重国籍の1人を、赤十字国際委員会を通じてイスラエル側に引き渡した。

1月30日の3回目の人質の解放は、大勢の戦闘員や観衆が人質を取り囲み、騒然とするなかで引き渡しが実施され、これにイスラエルが反発した。今回は、安全確保の求めを受けて仲介国が調整に入り、戦闘員や観衆が人質と距離を置く中で引き渡された。

エジプトとの境界にあるガザ南部のラファ検問所は1日、域外での治療を受けるガザのパレスチナ人負傷者らのため開放された。負傷者らのエジプトへの通行は、昨年5月にイスラエル軍が検問所を制圧して以来だ。

1月19日に始まった42日間(6週間)の停戦第1段階はおおむね合意が履行されており、数日内に第2段階以降の実施に向けた協議が始まる見込みだ。【2月1日 読売】
***********************

恒久停戦の実現を念頭に置いた第2段階の措置には、ハマスが拘束中の人質全員の解放やイスラエル軍のガザ完全撤退が含まれます。これは第1段階(6週間の停戦 一部の人質交換)より遥かに困難。

現在訪米中のイスラエルのネタニヤフ首相は4日、トランプ大統領と会談するとされていますので、そこでイスラエル側のシナリオ、トランプ大統領の計画が議論されるのでしょう。

ただ、ネタニヤフ首相とトランプ大統領主導で進むと、1月26日ブログ“トランプ大統領  ガザ住民をヨルダン・エジプトに「一掃」する「ガザ再建案」”で取り上げたパレスチナ住民のガザからの追放みたいな、国際常識的には受け入れがたい話に突き進む危険も。

****ガザ復興に「15年」=米特使、居住不可能と強調****
中東問題を担当するウィトコフ米特使は30日、パレスチナ自治区ガザの現状について「居住不可能だ」と述べ、復興に10〜15年を要するとの見方を示した。米ネットメディア「アクシオス」が同氏とのインタビュー内容を伝えた。

ウィトコフ氏は29日、ガザを訪問し、イスラエルとイスラム組織ハマスの停戦状況を視察していた。
 ウィトコフ氏は、イスラエルの攻撃により「ガザにはほとんど何も残っていない」と強調。「不発弾が多くあり、とても危険だ」と指摘した。

その上で、損傷を受けた建物やがれきの撤去に5年、ハマスの地下トンネルが張り巡らされたガザの地盤調査に数年、建物の再建に数年かかるとの見解を明らかにした。【1月31日 時事】
*******************

一方、ヨルダン川西岸ではイスラエル軍の攻撃が続いており、不安定な状況です。

****イスラエル軍がヨルダン川西岸で軍事作戦…50人以上を殺害、100人以上を拘束****
イスラエル軍は2日、パレスチナ自治区ヨルダン川西岸の北部ジェニンや周辺で軍事作戦を行ったと発表した。発表によると、これまでに50人以上の武装勢力を殺害し、100人以上を拘束した。作戦は今後少なくとも数週間続くと見込んでいる。
 
軍は2日、ジェニン難民キャンプで建物23棟を爆破した。建物は「テロリストの施設」だと主張した。作戦で数十個の武器を押収し、数百の爆発物を破壊したと説明している。
 
パレスチナ通信によると、ジェニン難民キャンプや周辺では住民約1万5000人が避難を強いられた。水道管が破壊され、病院では水不足が深刻化している。
 
パレスチナ自治区ガザで停戦が1月19日に始まった後、イスラエル軍は同21日から西岸のジェニンやトゥルカレムなどで「対テロ対策」を名目に作戦を続けている。【2月3日 読売】
******************

【“今”の生活に困窮するガザ住民】
そうした“先”の話はまったく目途がたっていませんが、ガザ住民は“今”をどう生きるかで精一杯でしょう。
トランプ大統領に「パレスチナ人を混乱や革命、暴力のない地域に住まわせたい」と言われようが、「居住不能」と言われようが、今まで暮らしてきた土地で命と生活をつないでいくしかありません。

しかし、救援はあまりにも少なく、遅い。

****「一体どこへ戻れば?」「新しいテントに?」ガザ地区の避難民、廃墟と化した故郷へ****
パレスチナ自治区ガザ地区にある海岸沿いの道路。1月29日、これまで避難していたパレスチナ人の帰還が始まった。戦争で荒廃した自宅へ向かうパレスチナ人は、3日連続で数千人に上るという。

数カ月にわたるイスラエルによる集中的な砲撃や銃撃戦によって、ガザ北部は廃墟と化した。帰る人の表情も冴えない。「私たちの苦しみは大変なものです。誰にも想像がつかない」(パレスチナ人、以下同)

砲撃を受けてガザを脱出した後、彼女は家族と一緒に安全を追い求め、北から南まであちこちを移動し続けたという。

「停戦の日に、自分の家が破壊されたことを知りました。私は一体どこへ戻ればいいのでしょう? テントからテントに……さらに新しいテントにですか?」(『ABEMAヒルズ』より)【1月31日 ABEMA Times】
*********************

【イスラエルのUNRWA活動禁止法でガザ支援は著しく困難に】
そうしたガザ住民支援の中核を担うのが国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA アンルワ)ですが、ハマスと通じているとしてイスラエルが国内での活動を禁止したことで、ガザ地区での支援活動が極めて困難になっています。

****イスラエル、UNRWA禁止法施行へ 国連に48時間以内の退去要求****
イスラエルのダノン国連大使は28日、イスラエルは48時間以内に国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)との協力や接触を断つと発表した。ニューヨークの国連本部で記者団に語った。

30日に施行を控えるイスラエル国内でのUNRWAの活動を禁じる新法をふまえた措置。パレスチナ自治区ガザ地区やヨルダン川西岸でUNRWAの活動は大幅に制限され、国連は他の専門機関の活動拡大など対応を迫られる。

ダノン氏は「政治的な決定ではなく、単に必要な決定だ」と語り、「(イスラム組織)ハマスやその他のテロ組織が、UNRWAに広く浸透している問題に目を背けてきたことが原因だ」と従来からの主張を繰り返した。

ガザにおける人道支援については「UNRWAの汚職とは無縁である他の国連機関と協力する用意がある」と述べ、UNRWAにはイスラエルで運営する施設から30日までに退去するよう求めた。

UNRWAのラザリーニ事務局長は28日の国連安全保障理事会に出席し、イスラエル新法の完全実施は「ガザ地区に悲惨な結果をもたらす」と指摘。「人道支援を大幅に拡大しなければならない時期に、国連の能力を低下させることは、既に壊滅的な状況にあるパレスチナの人々の生活をさらに悪化させる」と警告した。【1月29日 毎日】
*****************

グテレス国連事務総長がイスラエルに撤回を要請していますが、もちろんイスラエルには聞く耳はありません。

イスラエルのUNRWA活動禁止法は、イスラエル国内での活動を禁じたものですが、実質的にはガザ・ヨルダン川西岸での活動を著しく阻害します。ガザへの支援物資の搬入にはイスラエル側との調整が必要で、新しい法律はUNRWAとイスラエル当局の接触を禁じています。UNRWAが物資を届けることは、これまでよりはるかに困難になります。

****UNRWA活動禁止法、イスラエルで施行…ガザやヨルダン川西岸で物資配布や医療に影響必至****
イスラエルで30日、国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)の活動を禁止する新法が施行された。イスラエルは支援に向けた代替案を示しておらず、パレスチナ自治区ガザやヨルダン川西岸で人道物資の配布や医療に影響が出るのは必至だ。

UNRWAによると、30日朝もガザや西岸、東エルサレムでの診療所や学校は通常通り運営を始めた。ただ、東エルサレムではイスラエル当局の妨害を懸念し、出勤しない職員もいた。西岸の職員は「どんな制約が出るのか」と気をもんだ。

東エルサレムのUNRWA本部に勤務する日本人2人を含む国際職員の約30人は、イスラエルが滞在ビザを29日までしか認めなかったため国外へ退去した。

本部前には30日、新法の施行を祝う極右の支持者数十人が集まり、看板に落書きした。その一人、シャイ・グリック氏(38)は「UNRWAはテロを支援してきた。この土地はイスラエルに戻すべきだ」と主張した。

イスラエル国会が昨年10月に可決した法律は、2023年のイスラム主義組織ハマスによるイスラエル奇襲で職員9人の関与が判明したUNRWAに対し、イスラエルでの活動を禁止する内容だ。

ガザや西岸での物資搬入に際し調整が不可欠となるイスラエル当局との接触も禁じる。住民への支援は困難になるとみられる。イスラエル外務省の報道官は30日、取材に「UNRWAはハマスと同様の組織であり、イスラエルは接触を持たない」と述べた。

UNRWAによると、ガザでの食料や医薬品などの支援物資は当面、備蓄で賄う予定。その後は他の関係機関を通じて物資を搬入し、活動の継続を模索する。

現在、ガザでは職員約1万3000人が働き、診療所で約1500人が治療にあたる。職員の雇用は維持する方針だ。清田せいた明宏保健局長は取材に「UNRWAに代わる組織はない。活動継続の道を探りたい」と強調した。

UNRWAのフィリップ・ラザリーニ事務局長は28日の国連安全保障理事会で「法の施行は、パレスチナ人の生活状況をさらに悪化させるだけだ」と訴えた。

◆UNRWA=1948年のイスラエル建国とその後の戦争などで故郷を追われたパレスチナ難民への支援のために49年に設立された。ガザやヨルダン川西岸のほか、ヨルダン、レバノン、シリアで約590万人に教育や医療の支援を行っている。ガザと西岸で運営する難民キャンプは27か所、学校は384校、診療所は65か所に上る。【1月30日 読売】
***********************

パレスチナ難民への支援という事業の性格上、職員になかにハマスと心情を同じくする者が入り込むことは十分に想像できますが、「UNRWAはハマスと同様の組織」として禁止するというのもバランスを欠いているように思えます。

****UNRWA活動是非で応酬=イスラエルとパレスチナの駐日大使****
現在停戦下にあるパレスチナ自治区ガザで人道支援を行う国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)による今後の活動継続の是非を巡り、イスラエルとパレスチナの駐日大使が31日、東京都内で相次いで記者会見し、主張の応酬を繰り広げた。

2023年10月のイスラム組織ハマスによるイスラエル奇襲にUNRWA職員が参加したというのがイスラエル政府の見解。

コーヘン駐日大使は「UNRWAは信頼を裏切った」と述べ、「他の国際機関で代替可能だ」と訴えた。日本政府に対しては「ハマスが支配しないガザ」の実現に向けた関与を呼び掛けた。

これに対し、駐日パレスチナ常駐総代表部のシアム大使は「UNRWAは難民の生命線だ」と語り、日本に財政支援継続を要望。「問題の核心は、イスラエルが継続する軍事占領だ」と主張し、同国による長年にわたるパレスチナ人抑圧がハマスによる奇襲の背景にあるという認識を示した。

(中略)また、トランプ米大統領が荒廃したガザの住民をヨルダンやエジプトに移住させる提案を行ったことに関し、シアム氏は「パレスチナ人はゲームの駒ではない」と批判。コーヘン氏は「米側が答える質問だ」と明言を避けた。【1月31日 時事】 
*********************

今のところはUNRWAの活動は続いているようですが・・・・

****UNRWA、ガザ支援活動継続 イスラエルの活動禁止法施行後も*****
国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)の広報担当者は31日、ジュネーブで記者会見し、イスラエルによるUNRWAの国内活動を禁止する新法が施行された30日以降も「われわれは引き続き活動を継続している。(パレスチナ自治区)ガザでの国際人道支援の要となっている」と述べた。

新法は2024年10月に可決され、今月30日からはUNRWAはイスラエル当局との接触が禁止され、活動に制限を受けることになった。UNRWAの広報担当者は「われわれは引き続きスタッフをガザに派遣し、必需物資を積んだトラックを運び込んでいる。物資の搬入と配布の継続が認められなければ、脆弱な停戦が危険にさらされる」と強調した。

ヨルダン川西岸地区と東エルサレムのパレスチナ人スタッフが投石や検問所での妨害など困難に直面していると言及。「UNRWAにまつわる誤情報が流布されており、敵対的な環境に直面している。厳しい状況に置かれており、スタッフは保護されていない」とも指摘した。

英国、フランス、ドイツは31日、新法の施行への懸念を改めて表明した。複数の人道支援組織は、物資やスタッフはイスラエルを経由するため、荒廃したガザ地区への新法の影響は大きいと指摘している。

イスラエル占領下の東エルサレムに暮らすパレスチナ難民も、UNRWAから教育、医療などのサービスを受けている。

イスラエルのサール外相は、ガザ地区への人道支援に尽力していると主張。支援は他の国際機関や非政府組織(NGO)を通じて行われるべきだと述べた。イスラエルは、UNRWAスタッフが2023年10月のイスラム組織ハマスによる奇襲攻撃に関与したとしている。【2月1日 ロイター】
*********************

****「UNRWA(アンルワ)」とは何か?...イスラエルによる追放で新たな危機が始まる****
<パレスチナ人にとって重要な命綱となっている国際組織をイスラエルが活動禁止にしたが、代替組織はあるのか?>

イスラエル国内で国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)の活動を禁止する法律が1月30日に施行された。
イスラエルとイスラム組織ハマスの脆弱な停戦合意が1月19日に発効したばかりの今、既に不安定な状況をさらに不安定にする恐れがある。

■UNRWAとは?
パレスチナ自治区ガザ、ヨルダン川西岸のイスラエル占領地域、東エルサレム、レバノン、ヨルダン、シリアに暮らす数百万人のパレスチナ人に食糧、教育、医療、住居などあらゆる支援を提供している。

1948年の第1次中東戦争により故郷を追われたパレスチナ難民を支援するために、49年に設立された。

ガザでは現在約1万3000人が働いている。フィリップ・ラザリーニ事務局長によると、2023年10月のイスラエルとハマスの戦闘開始以降にガザの食糧支援の約3分の2を、停戦以降も食糧支援の約60%を担っており、パレスチナ人にとって重要な命綱と見なされている。

■なぜ活動禁止に?
国連と長年、対立してきたイスラエルは、UNRWAにハマスの関係者が数多く潜入していると非難。昨年10月に今回の法律を可決した。

イスラエルはハマスが主導した23年10月の襲撃にもUNRWAの職員12人が加担したと主張。国連の調査で9人が関わった可能性があるとされ解雇された。

■今後はどうなる?
イスラエルはUNRWAに対し、占領下の東エルサレムにある全ての施設を明け渡し活動を停止するように命じた。ビザの取得や延長が困難になり、一部の外国人職員は退去を余儀なくされている。

ただし、具体的にどのような措置が取られるかについては不透明な部分が多い。
「東エルサレムを含む占領下のヨルダン川西岸地区では私たちの診療所は開いている。ガザでの人道的活動は継続中だ」と、UNRWAは1月29日にX(旧ツイッター)に投稿した。「私たちはとどまって支援を続けると約束する」

同日にイスラエルの最高裁は、活動禁止に異議を唱えたパレスチナの人権団体の申し立てを却下。「イスラエル国家の主権地域でのみUNRWAの活動を禁止する」もので、ガザやヨルダン川西岸地区では禁止していないと指摘した。

ただし、ガザへの支援物資の搬入にはイスラエル側との調整が必要で、新しい法律はUNRWAとイスラエル当局の接触を禁じている。UNRWAが物資を届けることは、これまでよりはるかに困難になりそうだ。

イスラエル外務省の報道官は、「国連機関、国際NGO、諸外国など、UNRWAの代わりとなる複数の組織が既にガザで人道支援活動を進めるために活動している」と述べている。

これに対し、その任務の範囲と、UNRWAが命を救う人道支援を日々提供し、ガザのパレスチナ人への医療と教育の主な提供者であることを考えれば、「国連のシステム内を含め、他の機関や組織がUNRWAの代替として機能できるというのは完全に間違っている」と、有力シンクタンク、国際危機グループの上級アナリスト、ダニエル・フォルティは言う。
「その空白を迅速かつ持続的に埋める組織があるとは、到底考えられない」【2月3日 Newsweek】
**********************

“トランプ大統領は、国連人権理事会へのアメリカの関与を断ち切り、パレスチナ難民のための国連機関、UNRWAへの資金提供禁止を延長する計画だと、匿名のホワイトハウス高官がアメリカ・マスコミに語った。
(中略)
米国はUNRWAの最大の寄付国であり、年間3億ドルから4億ドルを提供していたが、2023年10月7日のハマスによるイスラエルへの致命的な攻撃に12人のUNRWA職員が参加したとイスラエルが根拠のない非難をした後、バイデンは2024年1月に資金提供を一時停止した。”【2月4日 アルジャジーラ】
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

トランプ大統領  ガザ住民をヨルダン・エジプトに「一掃」する「ガザ再建案」

2025-01-26 21:48:57 | パレスチナ

(破壊された街並み=パレスチナ自治区ガザ地区北部ジャバリアで2025年1月21日、ロイター)

【イスラエル 60日の停戦期限も、レバノン南部から軍撤退せず】
昨日に続き中東情勢で「またか」と言われそうですが、昨日ブログで取り上げたレバノンについては、やはりイスラエル軍はレバノン側の停戦合意履行が不十分として期限までには撤退しないようです。

****イスラエルとヒズボラ60日の停戦期限も軍撤退せず…レバノン南部に帰還の住民3人死亡****
イスラム教シーア派組織「ヒズボラ」との間で停戦合意したイスラエルが撤収の期限を過ぎてもレバノン南部に軍を駐留させ、住民を攻撃しています。

レバノン保健省は26日、南部の地域に戻ろうとした住民がイスラエル軍の攻撃を受け、これまでに3人が死亡し、44人がけがをしたと明らかにしました。

イスラエル軍の報道官は、レバノン南部の住民に対して「通知があるまでは自宅に戻ることを禁止する」と警告しています。

去年11月から始まったイスラエルとヒズボラの60日間の停戦を巡っては、1月26日までに双方がレバノン南部から撤退し、代わりにレバノン軍が監視にあたることになっていました。

イスラエルはレバノン政府が合意の内容を実行していないと主張し、交渉を仲介するアメリカに30日間の猶予期間を設けるよう求めていました。【1月26日 テレ朝news】
************************

【イスラエル支持を鮮明にするトランプ大統領 2000ポンド爆弾のイスラエル供与停止を解除】
30日間の猶予期間を要請されたトランプ大統領がどのように答えたのかは知りませんが、かねてより、また1期目でもイスラエル支持の立場のトランプ大統領は、2期目でもイスラエル支持を鮮明にしています。

****トランプ政権 イスラエルへの大型爆弾供与停止措置を解除 米メディア報道、バイデン政権から方針転換*****
アメリカのトランプ政権がイスラエルに対する大型の爆弾の供与停止措置を解除したと報じられました。バイデン政権からの方針転換です。

アメリカのニュースサイト「アクシオス」は25日、トランプ政権がイスラエルに対する大型で威力の強い「2000ポンド爆弾」の供与停止措置を解除したと伝えました。

この爆弾は前のバイデン政権が去年5月、イスラエルによるパレスチナ自治区ガザ南部・ラファへの侵攻に反対姿勢を示すため、供与を停止していましたが、イスラエル寄りのトランプ政権の誕生で方針転換となります。

「アクシオス」はアメリカで保管されている「2000ポンド爆弾」1800発が近く、イスラエルに船で運ばれる予定だと伝えています。【1月26日 TBS NEWS DIG】
*********************

イスラエル軍はこれまでもガザ地区の病院周辺で2000ポンド(約900kg)爆弾を使用していると報じられています。「直接病院を攻撃したわけではない」という弁解のためでしょうか。

****ガザ攻撃のイスラエル軍、ほぼ全病院の至近距離に2000ポンド爆弾投下 米研究****
イスラエル軍がパレスチナ自治区ガザ地区で戦争を始めてからの数週間で、強い破壊力をもつ2000ポンド(約900キロ)爆弾をほぼ全病院の至近距離に投下していたという検証結果が9日、査読付きの学術誌に発表された。

米ハーバード大学などの研究チームが爆発の衝撃でできたクレーターを分析した結果、2023年10月7日から11月17日にかけ、イスラエル軍がガザにある全病院の25%で「殺傷範囲」に2000ポンド爆弾を配備していたことが分かった。

さらに、ガザの36病院のうち83%にあたる30病院では、施設の損壊やけが人が発生する範囲内で、爆弾クレーターが見つかった。

検証結果は学術誌プロス・グローバル・パブリック・ヘルスに発表された。イスラエル軍は今もガザ北部の三つの病院に避難命令を出し、軍事作戦を再開している。ガザ保健省は全ての医療機関の保護を訴えている。

論文を発表したハーバード大学のデータアナリスト、デニス・クニチョフ氏は、病院の至近距離で2000ポンド爆弾が使用されたことについて「米国の供与したツールを使った明らかな国際人道法違反」と指摘した。

同氏は2000ポンド爆弾について、「地面に着弾すると、約1000ポンド(約450キロ)の破片をとてつもないスピードで放つ」「その威力と破片で数百メートル離れた人々を殺し、コンクリートを破壊できる」と話している。

これに対してイスラエル国防軍は、「前例のない努力を行って軍事施設や目標、工作員を正確に攻撃している」と述べ、国際法に従って「民間施設や民間人は標的としていない」と強調した。【2024年10月10日 CNN】
**********************

今後の使い道としては、後述のようにガザ地区から住民を退去させ、残ったハマス戦闘員と推定去れる者を一網打尽にするため、あるいは、地下のトンネルや軍事利用可能な施設を破壊するため・・・・でしょうか。

【多大な時間を要するガザ復興】
ガザ地区はまだ瓦礫の中からの遺体捜索が行われている状況ですが、ほぼ全ての住民の住宅が破壊されたという状態で、今後の復興が大きな難題となっています。

****ガザ230万人のほぼ全員が家を失った 21歳女性「何もかも足りない。教育を受けることだけが支え」****
爆弾の雨が降り、パレスチナ自治区ガザの街並みは荒廃した。シェイマ・アブアラッタさん(21)にとって、15カ月続いた攻撃のトラウマを乗り越える唯一の手段は、「教育を受ける」ことだった。

コンピューターサイエンスとコンピューターエンジニアリングを学ぶアブアラッタさんは、得た知識をガザの復興に役立てたいと考えている。基本的なライフラインさえ途絶えたガザで、人々はあらゆるものが不足する中で生活している。

「私はこの国に、自分が今いる場所に留まりたい。親族や愛する人と一緒にいたい」とアブアラッタさんは言う。
綱渡りのような停戦が実現した今、パレスチナの人々は恐る恐る復興を見据え始めた。230万人の住民全体が家を失い、複数回にわたり避難を強いられただけに、一筋縄ではいかない大仕事だ。

ガザ侵攻の間、アブアラッタさんにとって唯一自分でコントロールできたのは勉強を続けることだった。攻撃開始後の最初の3カ月は何もできず、ようやくノートパソコンを開いたとき、感極まって涙がこぼれた。

北部への空爆から逃れ、ガザ中心部で電話インタビューに応じたアブアラッタさんは、「何かを達成できる機会があるというのは、これほどにも恵まれたことなのか、と感じた」と話す。

イスラエル軍の作戦でガザの大半が瓦礫の山となり、ガザ医療当局によれば、少なくとも4万7000人が命を落とした。ガザ医療当局は、がれきの下にはまだ多くの遺体が埋まっている可能性が高いとしている。

停戦合意では、ハマスに拘束されたイスラエル人と外国人98人のうち33人を解放することが決まっている。また、イスラエルは毎日600台のトラックによる支援物資の搬入を6週間許可するという。
アブアラッタさんは「国境を制限なしに開放する必要がある。何もかもが足りない」と言う。

彼女にとって懸案の1つは「電気の確保」だ。毎日テントから充電拠点まで歩き、ネットに接続する。戦火が止めば、この地域にも太陽光発電パネルが増えることを期待している。

「がれきを片付け、その上にテントを張らなければならない」と彼女は言う。「テント生活から始め、ゆっくりと発展させていく」。だが、口で言うほど簡単ではない。

<「想像を絶する」規模の人道危機>
慈善団体「セーブ・ザ・チルドレン」のアレクサンドラ・サイエ氏はトムソン・ロイター財団の取材に対し、人道上の危機は、「およそ想像を絶する」と語った。「複数の差し迫った危機が進行していて、それぞれがお互いに深く絡み合っている」

セーブ・ザ・チルドレンは、子どものための食料と水、医薬品を送ることが優先だとする。
「飢餓の影が忍び寄る中で、空腹と病気に直面している子どもたちを一刻も早く救わなくてはいけない」とサイエ氏は言う。

国連では、4200万トンに及ぶガザのがれきを撤去するには、10年以上の時間と12億ドル(1872億円)の費用がかかるだろうと述べている。

また、支援団体「アクション・アゲインスト・ハンガー」の運営トップを務めるビンセント・ステーリ氏は、淡水化プラントを動かすための燃料も不可欠だと指摘する。上水道網を修復するには金属製パイプなどの物資が必要になるが、イスラエルは今のところ、こうした品目のガザ搬入を禁止している。

「がれきの撤去を10-15年も待っていられない」とステーリ氏は言う。「復興を始め、重要な施設の復旧に着手する必要がある」

アブアラッタさんも同意する。彼女はガザを本拠とする大学がオンライン講義を中断したため、学費無料の「ユニバーシティ・オブ・ピープル(UoPeople)」でコンピューターサイエンスを学び始めた。来年には卒業できると考えている。

UoPeopleのシャイ・レシェフ総長はトムソン・ロイター財団に対し、ガザの学生への奨学金支給のために30万ドルを集めたと語った。「さらに募金が集まったとしても、ガザの学生のために、できるだけ多くの資金を集めたい」と総長は言う。

しかし、学校や大学が再建されるのを待っていては、学生たちの教育には間に合わない。
「今の子どもたち、学生たちはどうする。オンラインで教えるしかない」【1月26日 Newsweek】
**********************

【トランプ大統領 ガザ住民をヨルダン・エジプトへ「一掃」する再建案 新たな「ナクバ」と混乱を生む懸念】
今後のパレスチナ統治については、(イスラエル・トランプ政権意外の)国際的にはパレスチナを国家承認してイスラエルとパレスチナ国家が共存する「二国家共存」「二国家解決」しかないと考えられています。

しかし、トランプ大統領は「全く異なる方法」でのガザ再建(?)を考えているようです。
現在のガザ住民(210万人とも150万人とも)をヨルダンやエジプトに移し、ガザ地区はイスラエル支配下の入植地にするというもののようです。

****トランプ氏、ガザ「一掃」計画提示 周辺国はパレスチナ人受け入れを****
ドナルド・トランプ米大統領は25日、パレスチナ自治区ガザ地区を「一掃する」計画を提案し、中東和平を実現するためにエジプトとヨルダンにガザのパレスチナ人を受け入れるよう呼び掛けた。

トランプ氏は現在のガザを「解体現場」と表現。この問題についてヨルダンのアブドラ国王と話し合ったとし、26日にはエジプトの大統領と協議する予定だと述べた。 

トランプ氏は大統領専用機「エアフォースワン」の機内で記者団に、「エジプトに(ガザの)人々を受け入れてほしい。ヨルダンにも受け入れてほしい」「(ガザには)おそらく150万人ほどがいるが、われわれはそのすべてを一掃する。その場所は何世紀にもわたって多くの紛争を抱えてきた。そして何かが起こらなければならない」と語った。 

ガザの人口240万人の大多数は、2023年10月7日のイスラム組織ハマスの対イスラエル越境攻撃を発端とした戦闘により、繰り返し避難を余儀なくされている。 

トランプ氏は、ガザの住民を移動させることは「一時的かもしれないし、長期的かもしれない」と述べた。 

その上で、「そこは今、文字通り解体現場だ。ほとんどすべてが破壊され、人々がそこで死んでいる」「だから、いくつかのアラブ諸国と協力して、彼らが平和に暮らせるかもしれない別の場所に住宅を建てる方がいい」と語った。 

イスラエルの報復攻撃により、ガザの大部分は廃虚と化した。インフラが破壊され、国連(UN)は、再建に何年もかかるとみている。【1月26日 AFP】 AFPBB News
******************

不動産業者的な再開発の発想でしょうか。 確かに、現地で再建するより「効率」はいいかも。
 
しかし、ずいぶんとイスラエル・アメリカに都合のいいような「再建」のようにも思えます。

ヨルダン・エジプトには「力」と「カネ」でガザ住民受入れ要求をのませるのでしょうか。
ガザ住民は? 自分たちが破壊しておいて、「平和に暮らせるかもしれない別の場所に住宅を建てる方がいい」と言われても・・・

そもそも現在のパレスチナの混乱は、1948年のイスラエル建国時にパレスチナ住民75万人を故郷から追い払ったことから起きています。パレスチナ側ではこれを「ナクバ(大惨事・大破局)」と呼んでいます。

あらたなヨルダン・エジプトへの強制移住はその「ナクバ」の拡大版再現であり、さらなる混乱を惹起するようにも思えるのですが。

似たような発想は以前からイスラエルにもあります。

****イスラエル、ガザ住民をシナイ半島に強制移住 文書流出****
イスラエルの情報省がパレスチナ自治区ガザの住民をエジプトのシナイ半島に強制的に移住させる計画案を作成していたことが判明し、物議を醸している。1948年のイスラエル建国と第1次中東戦争によってパレスチナ難民が生まれたことを想起させるためだ。

ガザには200万人以上のパレスチナ人が居住している。移住案はパレスチナ人やアラブ諸国の強い反発を呼ぶ可能性がある。(後略)【2023年10月31日 日経】
*****************

なお、トランプ大統領は大統領令で、イスラエル占領下のヨルダン川西岸でのパレスチナ人に対する暴力に関与したユダヤ人至上主義者入植者やシオニスト団体に対する制裁を停止しました。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

パレスチナ  停戦発効 帰還を始める住民 イスラエル右派は戦闘継続要求 西岸地区では攻撃開始

2025-01-22 23:17:14 | パレスチナ

(がれきの街と化したガザ北部ジャバリアには、住民らが戻って来ている。

パレスチナ・ガザ地区の住民らは、停戦が実施されると、通りに出て喜びを表現した。しかし、自宅のあった場所に戻り、破壊の厳しい現実を目の当たりにする人が増えるにつれ、その喜びは薄れている。【1月20日 BBC】)

【組織大打撃、多大な住民犠牲も“抵抗の勝利”と主張するハマス ハマス壊滅を求め、停戦不承知のイスラエル右派 ガザ住民は?】
アメリカでのトランプ大統領就任のニュースの影に隠れた形になっていますが、パレスチナ・ガザ地区ではイスラエルとイスラム主義組織ハマスが合意し42日間(6週間)の停戦が、ハマスが解放する人質リストの提出が遅れた影響で停戦開始は当初予定から約3時間ずれ込んだものの、19日午前11時15分に始まりました。

イスラエル軍はこの遅れの間にもガザ北部などを空爆し、ロイター通信によると少なくとも13人(BBC報道では19人)が死亡したとされます。

****ガザ停戦、ハマスが人質3人解放 イスラエルも90人釈放へ****
パレスチナ自治区ガザでのイスラエルとイスラム組織ハマスの停戦が19日に発効し、ハマスに拘束されている人質のうちイスラエル人の女性3人が解放され家族と再会した。

ガザでは通りに出て停戦を祝うパレスチナ人の姿が見られた。住民らは攻撃でがれきと化した自宅に戻り始めた。

イスラエル軍が公開したビデオでは解放された3人の健康状態は良好に見えた。

イスラエル占領下のヨルダン川西岸では、イスラエルの収容施設から釈放されるパレスチナ人を待つバスが待機していた。ハマスによると、人質と引き換えに釈放される最初のグループには、69人の女性と21人の10代の少年が含まれている。

停戦は19日、予定より3時間近く遅れて発効した。

バイデン米大統領は「ガザの銃声が鳴りやんだ」と述べ、停戦を歓迎。「長い道のりだった。しかし、イスラエルが米国の支援を受け、ハマスに圧力をかけたおかげで、今日ここに到達することができた」と語った。

停戦はトランプ次期米大統領の就任前日に発効した。トランプ氏が国家安全保障担当の大統領補佐官に起用するマイク・ウォルツ氏は、ハマスが合意を破れば、米国はイスラエルが「やるべきことをやる」のを支援すると述べた。

「ハマスがガザを統治することはない。それは完全に受け入れられない」と語った。【1月20日 ロイター】
**********************

双方の合意では、停戦の第1段階でハマスが女性や高齢者、病人ら人質33人を解放し、引き換えにイスラエルが収監しているパレスチナ人を釈放することになっており、仲介国エジプトによると、釈放者は1890人以上に上るとされています。

ガザではこの停戦を歓迎しており、帰還の準備も始まっています。

****響く祝砲と歌声=帰還準備始まる―ガザ****
パレスチナ自治区ガザでは19日の停戦発効を受け、市街地に祝砲が響いた。路上に出た住民はパレスチナの曲を歌い、「神は偉大だ」と叫んで喜びを分かち合った。

現地の住民によると、停戦発効に先立ち避難先で暮らしていた人々は自宅に帰還するため荷造りを始め、避難しなかった住民らも壊れた建物の修理に取りかかった。

午前11時15分に停戦が正式に発効すると、中部ブレイジの難民キャンプでは、イスラム組織ハマスの戦闘員が小規模な行進を行った。(後略)【1月19日 時事】
********************

2023年10月以来の戦闘の印象としては、ハマスは壊滅的・・・に近いような大きな打撃を被り、イスラエルは多大な民間人犠牲を出しながらハマスを徹底的に叩いた・・・・というものですが、少なくとも表向きの当事者の主張はそうした印象とは異なるものもあります。

TVニュースで見ると、ハマス構成員は自分たちの抵抗がついに勝利した・・・と総括しています。上記記事の“ハマスの戦闘員が小規模な行進”というのもそうした主張のあらわれでしょう。

一方、多大な犠牲を強いられたガザ住民がどのように考えているのか・・・以前からハマスの支持率はガザ地区ではヨルダン川西岸地区より低いといったこともありますが、TVニュースでの住民インタビューではハマス支持の声もあります。

日本的な感覚では、これだけの犠牲を出したことの批判がなぜハマスに向かわないのか不思議でもありますが、そこは長年のイスラエルによって強いられてきた苦難もあっての話でしょうから、なかなか外部の人間には難しいところでもあります。

もう少し時間がたてば、ガザ住民のハマスへの「評価」も明らかになってくると思われます。

イスラエルにあっても、人質の家族、ハマス奇襲犠牲者の遺族など、立場によって今回停戦への評価は異なりますが、国内右派にはハマスを根絶やしにすることなく停戦に応じたことへの批判が強く、極右政党「ユダヤの力」を率いるベングビール氏は「ハマスへの降伏」と評し、政権を離脱しています。(ネタニヤフ政権の崩壊には至っていません)

****プラカードには「大虐殺」…道路に座り込み 停戦合意反対デモ エルサレム****
エルサレム中心部。座り込んで道路をふさぐ若者たちを警官隊が抱えて運び出す。

イスラエルとイスラム組織「ハマス」が停戦合意したことに対し抗議するため、若者を中心におよそ300人が集結した。

掲げるプラカードには「テロリストの解放 大虐殺」と書かれている。停戦合意にはハマスの人質解放と引き換えにイスラエルが拘束しているパレスチナ人の釈放が含まれている。【1月18日 ABEMA Times】
******************

****ガザ「6週間の停戦合意」歓喜の中、右派や遺族は屈服同然と抗議****
<イスラエルとイスラム組織ハマスが停戦で合意した。人質解放に各地で人々が歓喜に沸くなか、エルサレムでは右派や犠牲者遺族、残る人質の家族らが抗議活動を展開>

(中略)ガザとイスラエル各地で人々が歓喜に沸くなか、エルサレムでは右派や犠牲者遺族、残る人質の家族らが「屈服同然」「犠牲者の命を軽んじるな」と抗議し、警察に取り押さえられる場面も。【1月20日 Newsweek】
*********************

****イスラエル極右閣僚、停戦合意発効前に辞任 残りの人質の解放は「武力」で****
イスラエルとイスラム組織ハマスとの間で成立したパレスチナ自治区ガザ地区に拘束されている人質の解放と停戦をめぐり、イスラエルのベングビール国家安全保障相は19日、停戦合意が発効する直前に辞任を表明した。

ベングビール氏は残りの人質について「武力行使」によって解放すべきだと述べた。 ベングビール氏はイスラエル人3人の解放を歓迎しつつ、人質の解放につながった取引を「降伏」に例えた。 

ベングビール氏はX(旧ツイッター)への投稿で、イスラエル人3人の解放を喜びつつ、「我々は降伏ではなく、武力行使や燃料供給の停止、人道援助の停止によって、残りの人質が戻ってくることを期待する」と述べた。 

ネタニヤフ政権からはベングビール氏のほかにも2人の閣僚が離脱した。こうした動きは、ネタニヤフ首相の連立政権を著しく弱体化させるとみられるが、必ずしも政権崩壊につながるわけではない。 

これとは別に、やはり極右のスモトリッチ財務相は、人質解放と停戦をめぐる合意には反対する姿勢を示してきたものの、人質3人の帰還については「喜びでいっぱいだ」と述べた。 

スモトリッチ氏は辞任していないものの、停戦合意の第1段階が終わった後に戦闘を再開しない場合には辞任すると強硬な姿勢を維持している。【1月20日 CNN】
**********************

アメリカ・トランプ大統領は就任前からイスラエルに停戦を求めていましたが、停戦でパレスチナを安定させ、そのうえでイスラエルとサウジアラビアの関係を正常化させ、対イランの戦線を強化する・・・という目論みでしょう。

ネタニヤフ首相は、停戦を求めるアメリカのトランプ大統領と、反発する政権内の極右勢力との板挟みになり、苦しい状況が続きます・・・その停戦後のパレスチナ情勢の不安定さについては、1月16日ブログ“パレスチナ  19日から6週間の停戦合意 今後については不透明”でも取り上げたところです。

“ネタニヤフ氏は治安閣議で、安全保障の要求が満たされず、第2段階の交渉が決裂した場合、米国の協力の下で戦闘を再開できると述べた。”(米ニュースサイト「アクシオス」報道)【1月18日 毎日】

【救援物資搬入が本格化 遺体捜索もこれから】
とりあえず現状ではガザ救援が本格化しています。

****「ガザを助けろ」 トラック数百台、イスラエルとハマスの停戦合意で支援物資搬入が本格化****
イスラエルとイスラム原理主義組織ハマスの停戦合意が発効した19日、パレスチナ自治区ガザに人道支援物資を搬入する動きが本格化した。ガザとエジプトの境界にあるラファ検問所には物資を積んだトラックが長蛇の列を作った。運転手らは「早くガザの人々に届けたい」などと、入域許可を待ちきれない様子で話した。

産経新聞助手が19日、エジプト政府主催のプレスツアーに参加してラファ検問所を訪れ、取材した。

首都カイロからバスで8時間超走り、検問所の前に到着した。ゲートの前には確認できただけでも150台以上のトラックが並び、みな燃料や毛布、食料、おむつなどを満載していた。

「エジプトの非政府組織(NGO)による支援物資の小麦粉40トンを積んで、10日前から待っている」。検問所の近くで会った運転手のアハメドさん(26)はそう話し、「1年以上も流血の侵略に苦しめられ、困窮しているパレスチナ人に必要な物資を運べることを、エジプト人として誇りに思う」と続けた。

ガザと境界を接するエジプトはイスラム教スンニ派が人口の9割を占め、ガザの人々への同胞意識が強い。イスラエルのガザ攻撃を受け、米国企業の製品に対する不買運動も起きた。

エジプト政府によると、この日は330台のトラックが、ラファからイスラエルの管理するケレムシャローム検問所に向かった。ロイター通信によると、バイデン米大統領は「トラック数百台が市民を助けるためにガザに入った」と述べた。

ガザの人口は推定220万人。報道によると、戦闘期間中には10日間でトラック9台しか入域できないときもあった。国連は一時、必要な物資の9%しか届いていないと推計した。

ガザに向かった運転手は電話取材に、「イスラエルは以前、車体や積載物資をすべて検査していたが、きょうは簡易になっている」と話した。

負傷してエジプトの病院で治療を受けていたというガザ出身のカメラマン、アリさん(30)は「両親と2人の兄弟はイスラエル軍に爆撃されて死亡した。ハマスは今もガザでは人気がある。ハマスに拘束されていた人質の居場所を住民が漏らさなかったことが、それを証明している」と話した。【1月20日 産経】
*******************

最後の話は、ハマスを支援しているからか、ハマスの報復が怖いためかはわかりません。

停戦合意では1日当たりトラック600台分の支援物資を搬入するとされていますが、ロイター通信は21日、19日からの3日間で人道支援物資を積んだ2400台以上のトラックが入ったと伝えています。

食糧に加え、住宅、医療、インフラ・・・問題は山積です。そもそも、遺体の捜索すらこれからです。

一連の戦闘で約4万7000人が死亡したとされていますが、停戦が成立して捜索が始まれば数字は更に増えると予想されます。

****ガザ、約4万7000人死亡 2092世帯が家族全員殺害 現地当局****
パレスチナ自治区ガザ地区の広報当局は21日、2023年10月に始まった一連の戦闘での被害をまとめた統計を発表し、約4万7000人が死亡したほか、約1万4000人が行方不明だと明らかにした。犠牲者の7割は女性と子供で、2092世帯は家族全員が殺害されたとしている。

発表によると、戦闘が始まってから生まれた子供のうち214人が死亡した。栄養失調では子供44人が死亡したほか、3500人の子供が今後、死亡する恐れがある。また、子供7人を含む計8人が凍死した。両親もしくは片親がいない子供は3万8495人に上るという。

死者のうち1155人は医療関係者で、報道関係者も205人に上った。ガザ地区の88%が破壊され、被害額は380億ドル(約6兆円)以上と推定している。

ガザ地区では19日、42日間の停戦が始まり、がれきに埋もれた行方不明者の捜索も始まっている。戦闘継続中は探せなかった遺体が続々と見つかっており、死者数は今後も増える可能性が高い。(後略)【1月22日 毎日】
********************

【イスラエル軍、ヨルダン西岸地区での攻撃開始】
ここにきて「事態の不安定さ」が露見しているのが、ヨルダン川西岸地区です。

****イスラエル軍がヨルダン川西岸で「大規模作戦」50人近く死傷 西岸での軍事作戦激化か****
イスラエル軍は、パレスチナ自治区ヨルダン川西岸で大規模な軍事作戦を行い、これまでに少なくとも9人が死亡しました。イスラエル軍は今後、ヨルダン川西岸での軍事行動を強めるとの見方も上がっています。

イスラエルの首相府は21日声明を出し、「テロ撲滅のため」としてパレスチナ自治区ヨルダン川西岸のジェニンで「大規模かつ重要な軍事作戦を開始した」と発表しました。

中東アルジャジーラによりますと、これまでに少なくとも9人が死亡、40人がけがをしたということです。

ジェニンには、イスラム組織ハマスやイスラム聖戦などの拠点があるとみられ、イスラエル軍は今後、こうした拠点の掃討に向けて軍事行動を強める可能性が指摘されています。

イスラエル軍はこれまでも占領するヨルダン川西岸全域で軍事作戦を行っていて、おととし10月のハマスによる奇襲攻撃以降、800人以上のパレスチナ人が死亡したとみられています。【1月22日 TBS NEWS DIG】
********************

“西岸での作戦開始に際し、イスラエルのネタニヤフ首相は各地の親イラン勢力に対し、「組織的に断固として立ち向かう」と述べた。ハマスは西岸にも戦闘員を有しているとされ、西岸でのイスラエルとの闘争拡大を呼びかけた。(後略)”【1月22日 産経】

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

パレスチナ  19日から6週間の停戦合意 今後については不透明

2025-01-16 23:01:47 | パレスチナ

(イスラエルとハマスがガザ停戦で合意したとの知らせに歓喜するガザの人々(15日)【1月16日 BBC】)

【不透明な今後】
国際面で今日一番のニュースと言えば、当然、パレスチナ・ガザ地区の戦闘に関するイスラエルとハマスの6週間の停戦及び人質一部解放の合意(発効は1月19日)でしょう。

ここ数日“合意間近”と言われていましたので意外感はありませんが、2023年10月のハマスによる対イスラエル大規模奇襲から約1年3カ月に及び、ガザで4万6000人以上の死者を出したイスラエルの軍事作戦・ハマスの抵抗がとりあえず停止することは、まずは非常に喜ばしいニュース。

この件に関しては多くの報道がなされていますので、改めてここで取り上げる必要もないですが、一応ひとつの区切りということで簡単に。

まず、合意成立と報道はされていますが、イスラエルが正式承認したわけでもないようで、ネタニヤフ首相は「ハマスが合意の一部に異論を唱えている」【後出 産経】として“見送り”も示唆しています。

****イスラエル首相「ハマスが停戦合意を破っている」 承認見送りを示唆****
15日に発表されたパレスチナ自治区ガザ地区の停戦合意を巡り、イスラエルのネタニヤフ首相は16日、対立するガザのイスラム組織ハマスが合意を破っていると非難する声明を出した。

ハマスが合意の全てを受け入れたと通知されるまで、合意承認の閣議を招集しないと主張した。停戦が19日に予定通り発効するか注目される。

イスラエルは停戦に合意しているが、最終的に合意を閣議で承認する必要がある。一方、ハマスは声明を発表し、停戦合意を守っていると主張した。【1月16日 毎日】
*******************

ただ、ここまで“合意”が国内外に広く報じられ、アメリカ新旧大統領が「自分の手柄だ」と言い立てているような既成事実となった状況で、今更のちゃぶ台返しはさすがのネタニヤフ首相も難しいところですので、おそらくこのまま正式に閣議承認となるのでしょう。

しかし、停戦が維持され、第2段階、第3段階と進めるかどうかは極めて不透明です。そもそも、ガザを今後誰がどのように統治するのかという大問題については何も決まっていません。

****脆弱なガザ停戦合意、難航課題は持ち越し 根深い相互不信…「戦闘終結」などハードル高く****
イスラエルとイスラム原理主義ハマスが15日にこぎつけた停戦合意は、互いに拘束する収監者と人質の身柄交換を先に進め、難航が予想される課題を後で協議する仕組みだ。恒久停戦とガザ再建の実現に向けたハードルは高く、相互不信が根深い中で、脆弱さをはらんでいる。

戦闘再燃の懸念
イスラエルのネタニヤフ首相は停戦合意を受け、米国のバイデン大統領とトランプ次期大統領に電話で謝意を伝えた。一方のハマスも、「勇敢な抵抗の成果」だと声明で合意到達を自賛した。

だが、ネタニヤフ氏は16日、ハマスが合意の一部に異論を唱えていると早くも主張。ハマスが完全に受け入れるまで治安閣議などによる合意の正式承認はできないと述べた。

合意内容に双方ともが満足しているとは言いがたい。ハマスはイスラエル軍のガザ完全撤収による「戦闘終結」を停戦の条件としてきたが、この問題は第2段階の協議に持ち越された。

米国から合意への圧力を受けたネタニヤフ政権は目標である「ハマスの壊滅」を果たせないままだ。

一部報道によると、イスラエル軍はガザとエジプトの境界地帯などで一定期間、駐留を継続する可能性がある。ガザでは今月も仕掛け爆弾や銃撃戦でイスラエル軍兵士が死傷しており、戦闘が再燃して停戦合意が崩壊する懸念は拭えない。

ガザの戦後統治見通せず
「戦闘終結」を巡る協議は、合意の枠組み全体の成否を左右する一つの焦点となる。ネタニヤフ氏はこれまで、停戦は一時的なものにとどめると繰り返し強調してきた。国内の治安のほか、連立政権に加わる極右政党や世論の反発を考慮すれば、軍の完全撤収に応じるのは容易ではない。

ハマスもイスラエルの出方を不安視している。米CNNテレビ(電子版)によると、仲介国が「戦闘終結」を受け入れるよう「イスラエルに圧力をかける」とハマスを説得したが、口頭での約束だ。

停戦合意は、長期的に最大の課題となるガザの戦後統治の具体像には触れていない。

ブリンケン米国務長官は14日、戦後統治の担い手としてパレスチナ自治政府の名前を挙げたが、統治能力を疑問視する向きは少なくない。今後、国際社会を巻き込んだ議論になる可能性もある。

停戦合意を発表したカタールのムハンマド首相兼外相は声明で、今後も米国やエジプトと緊密に協力して仲介を続けると強調。合意履行の厳しさをうかがわせた。【1月16日 産経】
****************

今回“合意”は、「第1段階」として6週間の停戦期間を設け、その間に人質の解放などを進めるとともに、「第2段階」となるイスラエル軍のガザからの完全撤退や、「第3段階」のガザ再建に向けた交渉を行うという内容。

*****************
第1段階の停戦は6週間で、ハマスはガザで拘束する人質33人を解放し、イスラエル側は収監するパレスチナ人990〜1650人を釈放する。

イスラエル軍はガザから徐々に撤収し、ガザ住民の北部への帰還が始まる。1日当たりトラック600台分の支援物資がガザに搬入される。

改めて停戦の第2段階に向けた協議を行い、イスラエル軍のガザ完全撤退やさらなる人質解放について話し合われる見通しだ。【1月16日 時事】
******************

イスラエル軍完全撤退を含む第2段階以降は更に厳しくなります。
希望的観測としては、ハマスもいったん停戦した以上、6週間後に改めて戦闘再開というのは「そこまでの力が残っているだろうか?」といったところでしょう。

【合意の背景にハマスの孤立化】
今回の合意成立もハマスの孤立化があります。

**********************
難航していた停戦交渉が前進したのは、イスラエルとレバノンの親イラン民兵組織ヒズボラの停戦が発効した昨年11月27日以降のことだ。交渉過程に詳しい米政府高官は記者団に、それまでのハマスは「騎兵隊が助けに来てくれると信じていた」と語る。イランやその支援を受ける勢力からの援護で状況が好転することに期待をかけていた、との意味だ。

しかし、ハマスと連動してイスラエルの北部境界を脅かしていたヒズボラの大幅な戦闘力喪失がはっきりし、ハマス側の抗戦心理は揺らいだ。12月8日にはヒズボラとともに親イラン陣営を形成してきたシリアのアサド政権が崩壊。イランの弱体化でハマスはさらに域内での孤立を深めた。【1月16日 産経】
*********************

【米現・次政権の「合作」】
そうした中東情勢の変化に、“バイデン米政権の長期に渡る仲介外交と、今月20日の発足を前に中東の不安定要因を除去したいトランプ次期政権の思惑が複合的に作用した結果”【同上】が今回合意です。

****ガザ停戦、現・次期政権の「合作」 激変した中東パワーバランス***
パレスチナ自治区ガザを巡るイスラエルとイスラム原理主義組織ハマスの停戦合意は、バイデン米政権の長期に渡る仲介外交と、今月20日の発足を前に中東の不安定要因を除去したいトランプ次期政権の思惑が複合的に作用した結果だ。中東各地に飛び火した戦闘による域内のパワーバランスの変化も交渉前進の要因となった。(中略)

こうした中(前出の“ハマス孤立化”)で、サリバン大統領補佐官(国家安全保障問題担当)、バーンズ中央情報局(CIA)長官、マクガーク中東政策調整官らを中心とするバイデン政権の交渉チームは、カタール、エジプトとともにイスラエル、ハマス双方への働きかけを加速。

ハマスはなおも解放対象の人質リストを巡って明確な返答を拒むなど煮え切らない態度を続けたが、米側がいったん交渉を打ち切る姿勢をみせると一転して歩み寄りをみせたという。

交渉チームにはトランプ次期政権で中東問題担当特使に起用されるスティーブン・ウィトコフ氏も参加した。同高官によれば、カタール首都ドーハでの詰めの協議でイスラエル側の確約が必要な場面では、マクガーク氏らが交渉を続ける間にウィトコフ氏が同国へ飛び、ネタニヤフ首相と面会してすぐにドーハへ戻るといった「連係プレー」も展開された。

バイデン政権は2023年10月にガザでの戦闘が発生して以降、人質となった米国籍保有者の解放と紛争の政治的解決を目指してきた。

一方、自身が当選すれば「戦闘はすぐに終わる」と豪語してきたトランプ次期大統領にとり、ガザ戦闘の早期終結は政治的な利益だ。ハマスの完全壊滅を掲げるネタニヤフ氏も、トランプ氏との親密な関係を維持するには停戦合意は不可欠と判断した可能性が高い。

米政権の移行期という外交的には宙ぶらりんな時期ながら、現・次期両政権の思惑が一致したことが、約15カ月に及ぶ戦闘の終結に向けた突破口を生んだ。【同上】
*****************

バイデン大統領は、自分が提案した停戦案を外交努力で実現させたと、トランプ次期大統領は、「私が歴史的な勝利を収めたからこそ実現した」と、それぞれ“手柄”を自慢しています。

【イスラエル極右閣僚は反対】
イスラエルでは極右閣僚が反対していますが、政権を崩壊させるには至らないのではと見られています。

****極右のイスラエル国家治安相、ガザ停戦同意なら辞任と警告****
イスラエルの極右政党「ユダヤの力」を率いるベングビール国家治安相は14日、カタールで交渉が行われているパレスチナ自治区ガザ停戦と人質解放協定にネタニヤフ首相が同意した場合は辞任すると警告した。

停戦はパレスチナのイスラム組織ハマスへの危険な降伏だとし、スモトリッチ財務相に停戦協定阻止に向けた最後の試みに加わるよう要請していた。

ベングビール氏は「イスラエル国防軍(IDF)隊員の死を無駄にしないためにも、この措置は(協定の)発効を阻止し、ハマスへの降伏を回避する唯一のチャンスだ」とXに投稿した。

スモトリッチ氏は13日、合意には反対と述べる一方で、ネタニヤフ連立政権からの離脱は示唆しなかった。

停戦合意には戦闘停止と人質解放が盛り込まれ、閣僚の過半数が支持するとみられている。【1月15日 ロイター】
*******************

とにもかくにも、ガザへの物資搬入が速やかに増強され、人道危機の状況が一日も早く緩和されることを期待します。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

イスラエル  人道支援を止め、過激派排除のために住民犠牲を厭わない論理

2024-12-14 22:26:50 | パレスチナ

(パレスチナ自治区ガザ南部ハンユニスで、食料配給を待つ市民ら=11月29日【11月30日 産経】)

【ネタニヤフ首相とトランプ氏の「力によるハマス屈服」が奏功 ハマスも停戦に向けた動き】
パレスチナ・ガザ地区からは連日のように痛ましいニュースが伝えられていますが。人質と民間人を盾にしてここまで抵抗を続けてきたハマスも、ヒスボラも大きく損傷を受け、イランも支援を期待できない、シリア・アサド政権も崩壊と孤立を深めるなかで、また、アメリカ・次期トランプ政権が更にイスラエル支援をつよめることも予想される状況で、これ以上の事態好転は見込めず(一時的な)停戦に向けた動きも出てきているようです。

****ガザ停戦、年内の合意に意欲 ハマスも譲歩か 交渉仲介の米高官****
パレスチナ自治区ガザ地区の停戦交渉を仲介する米国のサリバン大統領補佐官(国家安全保障問題担当)は12日、訪問先のイスラエルでネタニヤフ首相と会談した。

会談後の記者会見で、イスラエルとイスラム主義組織ハマスとの停戦交渉について、「ネタニヤフ氏は合意する準備ができていると感じた」と述べ、年内の合意成立に意欲を示した。

また米紙ウォール・ストリート・ジャーナルは12日、ハマスが交渉で、ガザ地区でのイスラエル軍の一時的な駐留を初めて認めたと報道。これまでは撤退を主張しており、譲歩した格好だ。

停戦に向けて動いているトランプ次期米大統領も停戦の成立に楽観的な見方を示しており、ここに来て動きが加速している。

報道によると、イスラエルとハマスの間では、60日間の停戦のほか、ハマスが拘束する人質のうち最大30人を解放することなどが検討されている。米メディアによると、ハマスは人質100人ほどを拘束しているとみられ、イスラエルの情報機関はこのうち約半分が生存していると考えているという。

米ニュースサイト「アクシオス」によると、ネタニヤフ氏は会談でサリバン氏に、「ハマスが青信号を出せば、すぐに取引を実行する用意がある」と強調したという。

サリバン氏は記者会見で、これまで強硬だったハマスの交渉姿勢に変化がみられるとし、「合意は実現しないかもしれないが、両者に政治的な意思があれば合意は可能だと信じている」と説明。一方、ネタニヤフ氏が合意の成立の時期をトランプ政権が発足する来年1月20日まで遅らせるとの見方は否定した。

またトランプ氏は12日に公表されたタイム誌のインタビューで、「中東の問題はロシアとウクライナで起きていることよりも対処しやすい。非常に建設的なことが起きていて、解決に向かっていると思う」と語った。

一方、ロイター通信は西側諸国の外交官の話として、「合意は具体化しているが、一握りの人質の解放と一時的な敵対行為の停止にとどまるだろう」との見方を伝えた。【12月13日 毎日】
**********************

****米高官「ハマスは孤立」 ガザ停戦に期待、アサド政権崩壊が後押しか****
カービー米大統領補佐官は10日、シリアのアサド政権が崩壊したことで、同じくイランから支援を受けてきたパレスチナ自治区ガザ地区のイスラム組織ハマスが孤立を深めているとの認識を示した。

ハマスについて「誰も支援には来ない。取引に応じるべきだ」と述べ、ハマスに対する停戦の圧力につながるとの期待を示した。
 
ハマスは、イスラエルと対立するイランや、レバノンの親イランのイスラム教シーア派組織ヒズボラの支援を受けてきた。だが、ヒズボラはイスラエルとの一連の交戦で大きな打撃を受けた。

アサド政権はイランやヒズボラのほか、ウクライナとの戦闘に注力するロシアから十分な支援を受けられず、崩壊につながったと指摘される。さらにアサド政権が崩壊したことで、イランからヒズボラへの「補給路」も断たれることになった。

カービー氏は記者団に「ハマスがどう動くかはまだ分からないが、絶対に取引すべきだ。なぜなら、イランやヒズボラはもうあてにできないのだから」と述べた。

バイデン大統領は5月末に停戦案を発表するなど、イスラエルとハマスの仲介に動いてきたが、停戦は実現していない。強硬な姿勢を崩さないイスラエルと、ハマスの隔たりが埋まらないためだ。(後略)【12月11日 毎日】
*******************

****トランプ氏がハマスに警告 就任までに人質解放しなければ「最も激しい打撃を与える」****
アメリカのトランプ次期大統領は2日、イスラム組織ハマスに対し、自らの大統領就任までに人質を解放しなければ「最も激しい打撃を与える」と警告しました。

トランプ次期大統領は2日、パレスチナ自治区ガザ地区で人質を拘束しているハマスに対し、「直ちに人質を解放しろ」と迫りました。また、来月20日の大統領就任までに人質を解放しなければ、「アメリカの歴史上、最も激しい打撃を与える」と警告しました。

ハマスは先月、イスラエル系アメリカ人男性の人質の映像を公開。この中で男性はトランプ氏に助けを求めていて、これに応じたかたちです。(後略)【12月3日 日テレNEWS】
*********************

一時的とは言え、かりに“60日間の停戦”となれば、2か月後に戦闘を再開する余力はないでしょう。
ネタニヤフ首相とトランプ氏の「力によるハマス屈服」が奏功した形です。

【パンを求めて殺到する群衆で子供・女性3人が圧死】
ただ、ここに至るまでにガザ地区住民が払った犠牲はあまりにも大きなものでした。

イスラエル軍が人道支援すらも厳しく制限し、略奪行為で国際支援も滞る状況で、「このままでは爆弾を受けなくても多くの住民が飢えで死ぬだろう。特に子供やお年寄りの飢えは深刻だ」(食料配給所運営者)という住民は飢えに直面しています。

****肉を見たのは3か月前、主食も2週間食べずガザ住民「冬越せない」…支援物資滞り深刻な飢餓止まらず****
パレスチナ自治区ガザへの支援物資の搬入が滞り、飢餓の深刻化が止まらない。イスラエル当局が円滑な物資の搬入を阻止しているのに加え、ガザ住民の略奪で国連などが搬入を停止したためだ。昨年10月にガザで戦闘が始まってから2度目の冬季を迎え、住民からは「このままでは冬を越せない」との悲痛な声が漏れる。

ガザ南部ハンユニスで、外国や国連機関の支援を受けて民間団体が運営する無料の食料配給所には4日、鍋を持った人々が殺到していた。子供の姿が目立つ群衆は「先に入れてくれ」と殺気立って叫んでいた。

ガザ最南端ラファからハンユニスに避難し、妻や子供3人とテントで暮らすファディ・モフセンさん(47)も配給を待つ列に並んだ。モフセンさんには手持ちの現金がない。現金があったとしても近くのパン店はイスラエル軍の空爆で破壊された。市場でも食料が高騰し、手を出せない。

モフセンさんは午前8時から列に並び、昼頃にようやく薄い豆スープを鍋に入れてもらった。モフセンさんは「妻子に食べさせる唯一の方法は、ここに数時間並んで食べ物を恵んでもらうことだけだ」と本紙通信員に悲壮な表情で語った。

イスラエル当局はガザを封鎖し、必要とされる物資の搬入を認めていないことから、ガザは深刻な食料不足に陥った。国連人道問題調整事務所(OCHA)によると、11月は578回の搬入申請のうち35%の204回分は拒否された。16%にあたる93回分は手続きが遅れた。
 
搬入が許可されたトラックからの略奪も相次ぎ、国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)は12月1日、物資搬入の中止を発表した。

米民間団体「ワールド・セントラル・キッチン」は11月30日、スタッフ3人がイスラエル軍の空爆で殺害されたことを受け、活動を停止した。

中部ディール・アルバラハでは11月29日、女性3人がパン店の前で殺気立った群衆に押しつぶされて死亡した。

ラファからハンユニスに避難中のオマル・バルハムさん(32)には、身ごもった妻と2人の子供がいるが、主食のパンを2週間食べておらず、肉を最後に見たのは3か月前だ。「お金がないので、食料配給だけが頼みの綱だ」。バルハムさんは力なく語った。

外国などの支援を受け昨年10月から食料配給所を運営するハニ・カーシムさん(39)によると、UNRWAの物資搬入中止などで1週間前から群衆が殺到するようになった。カーシムさんは「このままでは爆弾を受けなくても多くの住民が飢えで死ぬだろう。特に子供やお年寄りの飢えは深刻だ」と訴えた。国連は「戦闘が終結せず、支援物資が届かなければ、この冬ガザ全体で飢餓の恐れが続く」と警告している。【12月12日 読売】
*********************

痛ましかったのは、上記記事にもある11月29日のパンを求めて集まった群衆に押しつぶされ、子どもを含む3人が死亡した事故。

****パンを求めて集まった群衆に押しつぶされ…子ども含む3人死亡 ガザ地区****
食料危機が深刻化するパレスチナ自治区ガザ地区で29日、パンを求めて集まった群衆に押しつぶされ、子どもを含む3人が死亡しました。

ガザ地区では、イスラエル軍とイスラム組織ハマスによる戦闘の影響で深刻な食料危機に陥っていて、AP通信によりますと、29日、大勢の人がパンを求めて店に殺到し、押しつぶされた3人が死亡したということです。

死亡したのは、13歳と17歳の少女2人と50歳の女性で、死因はいずれも窒息死でした。

過去2か月間でガザ地区に搬入された食料は、去年10月に戦闘が始まって以来、ほぼ最低水準まで落ち込み、1日1食しか食事を確保できない家族も多いということです。

こうした中、ロイター通信はハマス幹部の話として、ハマス代表団が停戦交渉に向け、30日にも仲介国のエジプトを訪問すると伝えました。ただ、イスラエル軍は29日も攻撃を続けていて、先行きは不透明です。【11月30日 日テレNEWS】
*******************

みんな生き残るために必死です。

【「イスラム聖戦」の幹部1人を排除するため30人が死亡、50人が負傷】
イスラエルの空爆も熾烈を極めています。

****ガザの郵便局攻撃で30人死亡、イスラエル軍「人間の盾」と非難****
イスラエル軍が12日夜、パレスチナ自治区ガザ中部ヌセイラートの難民キャンプにある郵便局を攻撃し、少なくとも30人が死亡、50人が負傷した。医療関係者が明らかにした。

郵便局にはガザの避難民が身を寄せていた。

イスラエル軍は13日、パレスチナ過激派組織「イスラム聖戦」の幹部1人が標的だったと表明。イスラム聖戦が民間人を「人間の盾」として利用していると非難した。

医療関係者によると、この攻撃でガザ地区の12日の死者は66人に上った。【12月13日 ロイター】
*************************

いつも言うように、住民を人間の盾とするイスラム過激派も卑劣ですが、その「人間の盾」をものともせず住民ごと吹き飛ばすイスラエル軍の攻撃も非情です。

「イスラム聖戦」の幹部1人を排除するためには、“30人が死亡、50人が負傷”という住民犠牲もやむを得ないという考えでしょうか。賛同できません。

【シオニズム 先住民をその土地から排除する論理で必然的に暴力を伴う】
イスラエルにすれば、テロ攻撃をしかけたのも、人質をとっているのはハマスやイスラム聖戦の側であり、また「やられたらやり返す」のが世の常とは言え、イスラエル側の力の行使があまりにも過大であり、バランスを書いているとの指摘は以前からのものですが、ここにきて「対テロ作戦」「人質救出」という名目のもとで、その暴力に歯止めがかからなくなっているように思えます。

****なぜイスラエルは苛烈な暴力をいとわない国家になったのか? 長く迫害されたユダヤ人の矛盾、イスラエル人歴史家に聞いた****
2023年10月7日のイスラム組織ハマスの奇襲後、イスラエル軍はパレスチナ自治区ガザへの攻撃を始め、これまでに4万人以上が死亡した。イスラエルが占領するヨルダン川西岸でも、軍は「対テロ作戦」と称してパレスチナ武装勢力を攻撃し市民が巻き添えに。ユダヤ人入植者によるパレスチナ人への暴力も急増している。

約2000年前に世界に離散したユダヤ人は欧州で長い間迫害され、ナチス・ドイツのホロコースト(ユダヤ人大量虐殺)で約600万人が殺害された。

差別に苦しんできたユダヤ人が建国したイスラエルがなぜ暴力をいとわない国家になったのか。イスラエルが建国された1948年の政府や軍の公文書を分析したイスラエル人歴史家で、英エクセター大のイラン・パペ教授に話を聞いた。

 ▽パレスチナ人が排除される論理。シオニズム運動とはなんですか
―イスラエルは、ユダヤ人の国家建設を目指すシオニズム運動が主導して建国された。その思想的背景は。
「シオニズム運動は一種の植民地主義に基づいています。ただ大英帝国によるインド支配のような、先住民搾取が目的の植民地主義とは異なり、(米国のように)先住民をその土地から排除することが目的で、歴史家の間では「入植者植民地主義」と呼ばれています。

シオニズム運動の担い手は欧州の反ユダヤ主義の暴力から逃れたユダヤ人たちで、パレスチナという土地にユダヤ人国家をつくるためには先住民のパレスチナ人を排除する必要がありました。それには必然的に暴力が伴います。

シオニズム運動の目的は可能な限り多くの土地を入手し、可能な限り多くのパレスチナ人を追い出すことでした。当然、パレスチナ人は抵抗します。その抵抗はシオニズム運動を展開するユダヤ人(シオニスト)にとっては、さらなる暴力行使の正当化の根拠になりました。

建国運動の過程で村落を焼き払い、家屋を破壊し、住民追放や民間人虐殺もしました。まさに「民族浄化」です。それは今日にまで至っています。

先住民のパレスチナ人が自らの土地を簡単に明け渡すはずはなく、パレスチナの土地にユダヤ人だけの民族国家を建設したいと考えても、不可能なのです」

 ▽ユダヤ教の役割とは
 ―ユダヤ教はシオニズムとどう関係しているのか。
「あらゆる宗教は暴力の正当化に利用されます。当初のシオニストたちは世俗的なユダヤ人でした。彼らは宗教書であるユダヤ教の聖書を起きた事実に基づく歴史書とみなし、さらに法律書のように振りかざして、そこにある記述を基にパレスチナでの居住権を主張しました。最初から政治目的で宗教を利用したと言えます。
シオニズムに反対するユダヤ人もいますが、問題はそうした反シオニストがイスラエルでは少数派ということです。イスラエル国内でシオニズムに反対するのは非常に難しいですが、世界を見渡すと、シオニストではないユダヤ人のほうが多数派だと思います」(中略)

 ―米国に求めることは何か。
「一部のイスラエル国民は『欧米は、イスラエルが人種差別しようとしまいが支持してくれる』と考えているようです。

加えて『パレスチナ人が暴力的だ』という政府のプロパガンダを信じていると、パレスチナ人を理解しようとする余地がなくなります。若者は多感な18〜21歳ごろに徴兵され、軍での教育を通してパレスチナ人への暴力は許容されるとの考え方に簡単に感化されてしまいます。イスラエルの右傾化は、国の内側から変えることはできないと言えるでしょう。

中東地域全体がイスラエルを疎外し、世界でも支持しない人が増えていくと思います。イスラエルロビーが活動を続けても各国政府はイスラエル支持が国益にかなうのか考え直さざるを得なくなるでしょう。
資金面の問題もあります。現在、ガザやレバノンでの戦闘で、戦費の多くは米国からの支援に頼っており、米国の納税者が負担しています。戦争が続けば親イスラエルの米国人でも限度を感じる瞬間が来ると思います。(中略)

 ▽イスラエル社会の分断とは
パペ氏によると、イスラエル社会は現在、ユダヤ教に国家基盤を求めるグループと民主主義や人権を重視するグループに分断されている。前者はイスラエル軍、治安機関の上層部に影響を与えているほか、ネタニヤフ首相の支持基盤で、国内で支持は高まっている。
前者はイスラム組織ハマスとの戦闘継続を求める一方、後者のリベラルなグループは人質解放を求めてハマスと交渉すべきだ主張することが多く、さまざまな論点で対立する。【12月14日 47NEWS】
******************

【「勝てば勝つほど」に世界的に共感を失う】
たしかに今はハマスを壊滅寸前まで追い詰め、ヒズボラには数年は立ち直れないほどの打撃を与え、イラン本土を攻撃し、シリアでは緩衝地帯に進軍・・・とネタニヤフ首相の進める、またその支持基盤が求める「力の行使」でパレスチナ人を排除し、ユダヤ人国家「イスラエルの安全保障上必要なものは何でも行う、ある意味「やりたい放題」の状況はイスラエルにとって大きな軍事的成果をもたらしています。

しかし、そうした形で「勝てば勝つほど」に(利害損得を考えてのイスラエル・サウジの関係改善みたなものはあったにしても)世界的に共感を失い、安全保障の最も根幹部分で危うさをましていくようにも見えます。

*********************
ガザでの戦闘を巡りネタニヤフ首相らに戦争犯罪の疑いがあるとして逮捕状を発行した国際刑事裁判所(ICC)や、イスラエルのパレスチナ占領政策が国際法違反だとした国際司法裁判所(ICJ)の判断に見るように、イスラエルは国際社会から孤立しつつあります。世界では、イスラエルの製品や企業をボイコットする運動が広がり、若いユダヤ人もイスラエルから距離を置きつつあります。

国家としてのイスラエルの将来像を描けず、安全に不安を抱く国民が増えています。イスラエル国民としての自信の喪失は前例のないレベルになったと言っていいでしょう。社会の結束が大きく揺らいでいるのです。
 
パレスチナという土地にユダヤ人国家を押し付けるという入植者植民地主義のシオニズム計画に基づくイスラエル国家は崩壊に向かっています。私の考えでは10〜15年で没落するでしょう」【同上】
*******************

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ガザ地区の飢餓状況を悪化させる支援物資略奪 それを黙認、あるいは保護するイスラエル軍

2024-11-26 23:13:59 | パレスチナ
(イスラエルは、再び解放された西エレズ検問所から運び込まれる分を含め、ガザに入る支援物資の量が大幅に増えたとしている【11月13日 BBC】)

【人道支援活動が妨げられ飢餓状態に】
イスラエルによる激しい攻撃にさらされているパレスチナ・ガザ地区では“ガザ地区の死者数だけとってみても、ガザ保健当局の発表では約4万4000人となっているが、イギリス・ガーディアン紙の推計によると死者は既に約33万5000人に上るとされる。”【11月24日 TBSNEWSDIG】という多くの犠牲者が出ており、今も増加しつつあります。

そうした空爆などによる直接の攻撃に加えて、生きている厳しい状況に置かれ、飢餓に苦しんでいます。
背景には、人道支援活動が阻害されている現状があります。

****ガザ、飢餓のリスク続く 「最悪のシナリオ」懸念=国連IPC分析****
国連の「総合的食料安全保障レベル分類(IPC)」は17日、イスラエルとイスラム組織ハマスとの戦闘が続くパレスチナ自治区ガザでは地区全体が依然として飢餓の危機にさらされ、緊急レベルにあるとの分析結果を公表した。

イスラエル軍の激しい軍事作戦が懸念を強め、人道支援活動が妨げられていることが要因にある。

ガザ地区約230万人の住民の184万人が深刻な食料不安に直面し、そのうち13万3000人が最も深刻な「壊滅的」レベルにあるとした。

6月の報告からは減少したものの、今後数カ月の間に倍増するとみられている。5月以降、ガザ地区への食料の流入が増えたが、9月に人道支援が再び縮小し始めたと指摘した。

IPCは「ガザ地区全体で飢餓のリスクが続いている。最近の敵対行為の高まりを踏まえると、最悪のシナリオが現実となるのではないかという懸念が高まっている」と記した。

IPCによると、イスラエルがこのほど出したガザ地区からの退去命令で人道支援活動が中断され、度重なる避難によって食料や水、医薬品へのアクセスや対応が悪化している。24年9月─25年8月に小児の急性栄養失調が6万件発生すると推定されている。【10月18日 ロイター】
**********************

イスラエルを支援するアメリカも、イスラエルに対し事態の改善を求めてはいますが改善されていません。
しかし、それをもって、アメリカがイスラエルへの武器支援を止めるとか、そういった行動はとられておらず、工連安保理でも依然としてただ1国、イスラエルを支援し続けています。

****イスラエル、ガザへの支援物資増の米要求を満たさず 国連現地機関が指摘****
パレスチナ・ガザ地区で活動する国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)は12日、アメリカがイスラエルに求めたガザへの支援物資の搬入の増加を、期限までにイスラエルが実行しなかったと説明した。アメリカは要求が満たされなければ、イスラエルへの軍事支援を減らすとしていた。

アメリカはアントニー・ブリンケン国務長官の10月13日付の書簡で、イスラエルに対して11月12日までに、毎日最低350台のトラックがガザに入るのを許可するよう求めていた。

これに関し、ガザ中部に拠点を置くUNRWAのルイーズ・ウォータリッジ上級緊急調整官は12日、イスラエルが期限までに十分なことをしたのかと問われると、単刀直入に「ノー」と答えた。

そして、「ここでは支援が足りない。物資が足りない」、「地域によっては、大勢が飢えている。みんなとてもお腹を空かせている。小麦粉の袋をめぐって争いが起きている。ともかく物資が足りない」とBBCに話した。

国連によると、ガザに運び込まれる支援物資の量は現在、ここ1年で最低レベルに減っている。国連が支援した調査の報告書はこのほど、ガザ北部に過去1カ月、物資がほとんど搬入されておらず、飢餓の恐れが迫っていると警告している。

国連人道問題調整事務所(OCHA)は、過去1カ月間にガザに入ったトラックの台数を、1日平均40台強としている。

イスラエルは大幅増と主張
これに対しイスラエルは、ガザに運び込まれる支援物資の量を大幅に増やしたと主張している。
また、OCHAによるトラック台数のデータは不正確だとして、物資が搬入されても十分に配布されていないと国連機関を非難している。

イスラエルはさらに、同国とガザの境界のガザ側には、支援物資の荷物が何百ケースも滞留し、支援機関による引き取りを待っている状態だと主張。

支援物資を運ぶトラックの一部は、武装した人々に略奪されているとしている。

しかし、国連はこれを否定。ガザにおける支援物資の安全で円滑な運搬は、ガザを占領しているイスラエルが責任をもつべきだとしている。また、イスラエルの軍事行動によって状況が危険すぎるなら、支援物資の配布はできないとしている。

イスラエルは1年以上にわたり、アメリカが設定する「一線」のほとんどを越えてきた。(中略)

アメリカは、イスラム組織ハマスと戦うイスラエルを支援するため、武器を供与している。ガザでの死や破壊の多くは、そうしたアメリカ製の武器によって引き起こされてきた。

BBCのガザ特派員を2009~2013年に務めたジョン・ドニソン記者は、ジョー・バイデン米大統領の任期が残り少なくなり、パレスチナ人4万3000人以上の命が失われた現在の状況で、米政府がイスラエルへの武器の供給を打ち切ることはないだろうとみている。【11月13日 BBC】
*********************

“(11月20日)国連の安全保障理事会で、ガザ地区での戦闘をめぐり、無条件での即時停戦と人質全員の解放を求める決議案を、日本を含む非常任理事国10か国が提出しましたが、アメリカによる拒否権で否決されました。”【11月21日 NHK】

特に北部での状況が懸念されています。

****ガザ一帯で攻撃続く 国連「北部に40日支援届かず」 米特使がイスラエル入り****
イスラエル軍は21日、パレスチナ自治区ガザ北部のベイトラヒヤ地区など人口密集地を爆撃し、ロイター通信はイスラム原理主義組織ハマスの系列メディアの情報として57人が死亡したと伝えた。20日には住民の避難先になっているガザ中部の学校や、「人道エリア」に指定された南部の一角も攻撃されたもようだ。

国連によると、イスラエル軍は10月6日にガザ北部の一部を包囲して攻撃を強化して以来、申請した支援案件の大半を承認していない。40日以上にわたりベイトラヒヤなどの住民6万5千人以上に支援が届かない状況が続いている。(後略)【11月21日 産経】
********************

【国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)の活動禁止で更に悪化が】
こうした状況を更に悪化させる事態も。
イスラエルは、ガザ地区における支援活動を担っている国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)の活動をハマスとの関連を理由に禁止することに。

****イスラエル、UNRWAとの協定破棄を国連に通告 活動禁止法案巡り****
イスラエルのカッツ外相は4日、国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)の活動を認める協定の破棄を正式に国連に通告したと明らかにした。

UNRWAはイスラエル軍の戦闘が続くパレスチナ自治区ガザ地区で避難民に人道支援を提供しているが、イスラエル政府の協力がなければ支援が続けられなくなるとみられ、人道危機に拍車がかかるのは必至だ。
 
イスラエルはガザ地区のイスラム組織ハマスの戦闘員がUNRWAに雇用され、昨年10月のハマスの越境攻撃にも参加していたと主張してきた。

イスラエル議会は10月28日、UNRWAの活動を禁ずる法案を可決。3カ月後に発効する予定で、完全に履行されれば、UNRWAは「いかなる活動」もできなくなる。【11月5日 毎日】
********************

【イスラエル極右 ガザ地区の住民200万人を飢えさせるのは「公正で道徳的な行為かもしれない」】
もともと、イスラエルの極右勢力はガザ住民を飢えさせることを「道徳的」とも主張しています。

****イスラエル閣僚、ガザ200万人を飢えさせるのは「道徳的」 ただし「世界の誰も許さず」****
イスラエルのスモトリッチ財務相はこのほど、イスラエル人の人質が帰還するまでパレスチナ自治区ガザ地区の住民200万人を飢えさせるのは「公正で道徳的な行為かもしれない」が、「世界の誰も我々にそれを許さないだろう」との認識を示した。

極右閣僚のスモトリッチ氏は5日、イスラエル中部の町の会合で行った演説で、イスラエルがガザ地区内の支援物資の配給をコントロールすべきだと言及。地区内の配給ルートはハマスによって支配されていると主張した。

さらに「今日の世界の現実では戦争遂行は不可能。市民200万人を飢えと渇きに追い込むことは世界の誰も許さないだろう。ただ、彼らが人質を解放するまでは、それが公正で道徳的な行為なのかもしれない」と述べ、ハマスではなくイスラエルが支援の配給をコントロールしていれば戦争は既に終わり、人質も帰還しているはずだと付け加えた。【8月7日 CNN】
**********************

イスラエル人の根底にこういう認識がありますので、ガザ地区の窮状への対応も“それなり”のものになり、ときに窮状を悪化させることを厭わないことも。

【支援物資を略奪するギャングを黙認する、あるいは保護するイスラエル軍】
人道支援を阻害し、ガザ地区の状況を悪化させている要因の一つが支援物資を狙い、これを略奪するギャングの存在です。

****ガザで食料援助トラック強奪被害、100台近く 国連機関が明らかに****
パレスチナ人向けの食料を積んだ100台近いトラックが、16日にパレスチナ自治区ガザに入った後に強奪被害に遭っていたことが分かった。国連機関が18日、ロイターに明らかにした。戦争開始から1年1カ月経過したガザでは飢餓が悪化しており、最悪の援助物資被害の一つとなった。

国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)と国連世界食糧計画(WFP)から提供された食料を輸送していた車列は、ケレムシャローム検問所から不慣れなルートで急遽出発するようイスラエルから指示されたという。

UNRWAのシニア・エマージェンシー・オフィサー、ルイーズ・ウォータリッジ氏によると、トラック109台のうち98台が襲撃され、何人かの輸送員が負傷した。

同氏は「援助物資をガザ南部・中部に運ぶことの難しさを浮き彫りにした。早急な介入がなければ、深刻な食料不足はさらに悪化し、生きるため人道援助に頼っている200万人以上の命がより危険にさらされることになる」と述べた。

イスラム組織ハマスのTVチャンネル「アルアクサ」はガザのハマス内務省筋の話として、援助トラック略奪に関与した20人以上のギャングメンバーが、ハマス治安部隊が部族委員会と連携して実施した作戦で殺害されたと伝えた。

また、このような略奪行為に手を貸した者が捕まった場合は「鉄拳」で処分するとしている。

WFPの広報官は略奪を確認し、ガザの多くのルートは現在、治安上の問題で通行不可能になっていると明らかにした。【11月19日 ロイター】
**************************

こうした支援物資を略奪するギャングはハマスではなく別の勢力で、イスラエル軍はこうした略奪行為を黙認しているとの指摘もあります。

****戦争犯罪で逮捕状が出たICCのネタニヤフの誤算、「トランプ復権」でおののくイラン、混迷の中東情勢の行方は?****
イスラエル軍の無差別攻撃が激化するガザで、武装集団が国連などの人道支援トラックへの襲撃を繰り返し、食料や水を強奪する事件が相次いでいる。

同軍が犯行を黙認しているもようで、パレスチナ住民は深刻な飢餓に直面している。しかし、国際刑事裁判所(ICC)から戦争犯罪で逮捕状を出されたイスラエルのネタニヤフ首相にガザの治安悪化を止める考えは全くない。

国連援助の半分奪われる
国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)によると、ガザで11月16日、食料を運んでいたトラック109台が武装集団の襲撃を受け、98台が強奪された。この事件をはじめ、10月初めにはトラック100台が襲われ、80台が奪われた。この際、運転手4人が射殺されるなど犯行の凶悪ぶりがエスカレートしている。
 
犯行の多くはガザへの支援物資の搬入口であるケレムシャローム検問所から約3キロ付近で行われ、武装集団が道路を封鎖して待ち伏せしている場合がほとんどだ。

国連によると、夏以降に強奪された物資は2550万ドル、日本円にして約40億円にも上っており、「世界国連食糧計画」が南部から搬入した食料支援の半分が盗まれたという。
 
ガザの政情はイスラエル軍の攻撃激化で、治安を維持してきたハマスの警察力が弱体化、2月ごろから急速に悪化した。

支援トラックへの襲撃は当初、飢えに苦しむ住民らの犯行が多かったが、次第に組織的な犯罪集団によるものに変わった。特にイスラエル軍が南部ラファの検問所を閉鎖し、搬入口をケレムシャロームのみに限定したころから武装集団の強奪が横行するようになった。
 
武装集団の狙いは支援物資の缶詰などに隠されてエジプトから密輸されるタバコだった。タバコはガザの住民にとっては現金にも匹敵するような貴重品。現在は20本入り一箱で1000ドル(15万円)近くにまでは跳ね上がっているという。

当初ギャング団はタバコ以外の食料などについては、そのまま放置していたが、トラックごと強奪し、闇市場で売却を始めた。

イスラエル軍は黙認
米ワシントン・ポストによると、ギャング団の黒幕はガザ南部やエジプトのシナイ半島に根を張るベドウィンの「タラビン部族」のヤセル・アブシャバブ一家。約100人の配下がいる。アブシャバブは襲撃を認めたものの、食料強奪は否定している。ハマスには長年抑えられてきた関係だ。

襲撃が行われたのはイスラエル軍の支配地域だが、問題は同軍が強奪を目撃しながら事実上黙認していることだろう。

トラック輸送の安全を確保するよう求めた国連からの要請も無視したとされる。イスラエルはハマスに食料などが渡ることを恐れて支援物資のガザ搬入を渋ってきた経緯がある。

国連はイスラエル軍が武装集団の活動を“保護”していると疑っている。武装集団がハマスの復活を阻む勢力になることを期待する思惑があるようだ。

物資強奪の横行はガザの食料不足にとって最大の障害になっているが、人道支援関係者は「ガザはもはや無法地帯。特に北部の飢餓は深刻だ」と指摘している。ガザではイスラエル軍の攻撃で住民の犠牲は4万4000人を超えた。(後略)【11月26日 WEDGE】 
*************************


支援物資の半分がギャングによって略奪され、こうした略奪をイスラエル軍は黙認している、あるいは保護している・・・民間人犠牲を厭わない爆撃にくわえて、ネタニヤフ首相への国際刑事裁判所(ICC)の逮捕状を正当化するものでしょう。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ガザ地区  アメリカのイスラエルへの人道状況改善要請 その不合理な顛末

2024-11-13 23:43:40 | パレスチナ
(パレスチナ・ガザ北部で飢餓が差し迫っていると、国連が支援した調査が指摘している【11月13日 BBC】)

【アメリカ ガザ地区の人道状況を30日以内に改善させるイスラエルに要請 出来ない場合は一部武器支援停止も】
パレスチナ・ガザ地区の惨状は周知のところですが、アメリカがイスラエルに10月13日付けで書簡を送り、イスラエルが30日以内にガザの人道状況を改善させなければ、アメリカは対イスラエル軍事支援の一部を打ち切る可能性があると伝えていたことが10月15日に明らかになりました。

****アメリカ、イスラエルにガザ人道状況の改善要求 「30日以内」に対応なければ軍事支援停止も****
イスラエルとイスラム組織ハマスの戦闘が続くパレスチナのガザ地区の人道状況をめぐり、アメリカがイスラエルに書簡を送り、同国が30日以内に改善させなければ、アメリカは対イスラエル軍事支援の一部を打ち切る可能性があると伝えていたことが15日、明らかになった。

13日付のこの書簡は、アメリカが同盟国のイスラエルに出した警告文としては最も強力なもの。イスラエルがガザ北部で新たな攻撃を開始し、多数の民間人が死傷していると報じられている中で出された。

書簡にはアメリカがガザの人道状況の悪化に深い懸念を抱いていると書かれている。また、イスラエルが先月ガザ北部と南部の間で、人道的な移動の90%近くを拒否または妨害したとしている。

イスラエルは書簡について検討中だとされる。同国はガザ北部での攻撃はハマス工作員を標的にしたもので、人道支援物資の流入を阻止してはいないとしている。

ガザ境界の検問所を運営するイスラエルの占領地政府活動調整官組織(COGAT)は14日、国連の世界食糧計画(WFP)からの援助物資を積んだトラック30台がエレズ検問所からガザ北部へ入ったと発表した。

国連によると、ガザ北部に食料援助が届けられず、40万人のパレスチナ人の生存に不可欠な物資が底を尽きつつあった。こうした状況は2週間続いたが、エレズ検問所経由の物資搬入でそれを脱した。

アメリカはイスラエルにとって最大の武器供給源。イスラエル軍はこの1年、ガザでのハマスとの戦闘をめぐり、アメリカから供給された航空機や誘導爆弾、ミサイル、砲弾に大きく依存してきた。

書簡の内容
アメリカがイスラエル政府に宛てた書簡の内容は、米ニュースサイト「アクシオス」が最初に報じた。その後、米国務省も書簡の存在を認めた。書簡にはアントニー・ブリンケン国務長官とロイド・オースティン国防長官が署名している。

書簡には、「ガザにおける人道状況の悪化に対して米政府が深い懸念を抱いていることを強調し、この軌道を方向転換させるために今月中にイスラエル政府が緊急かつ持続可能な行動を取ることを求めるため、この書簡を記す」とある。

また、イスラエルの避難命令を受け、イスラエル軍が人道地区に指定しているガザ南部アル・マワシ地区には170万人のパレスチナ人が密集していると指摘。この狭い地区は極度の過密状態にあり、致死的な感染症が広まる危険性が高まっているとしている。さらに、人道支援団体はこうした避難民が生き延びるためのニーズに応えられていないと報告していると書いてある。

「我々はイスラエル政府による最近の行動を特に懸念している。商業的な搬入の停止、9月にガザ北部と南部の間で人道的な移動の90%近くを拒否または妨害、民生と軍事の両方に活用できるデュアルユースに対する過重な制限の継続、人道スタッフや輸送品に対する新たな審査・重い責任・税関要件の設定は、不法行為や略奪の増加とともに、ガザの状況を加速度的に悪化させ続けている」

書簡は、イスラエルはガザへの援助物資の供給を促進するための一連の具体的な措置を「今すぐ、30日以内に開始しなければならない」、そうでなければ「アメリカの政策に影響を与えることになりかねない」としている。
書簡には、アメリカの人道援助物資の提供を妨げる国に軍事支援を禁止する、アメリカの法律が引用されている。

アメリカ側は、イスラエルは冬の到来までに「ガザ全域であらゆるかたちの人道支援を急増」させなければならないとしている。これには1日あたり最低350台のトラックが四つの主要検問所と五つ目の新たな検問所を通過し、アル・マワシ地区にいる人々が内陸に移動できるようにすることが含まれる。

ガザ北部から南部への「民間人の強制避難がイスラエル政府の政策に含まれない」ことを再確認し、「ガザ北部の孤立」を終わらせることも求めている。【10月16日 BBC】
*************************

アメリカはこの書簡を公表するつもりはなかったとしています。当時最終盤を迎えていた大統領選挙を考えると、イスラエルに対し軍事支援の一部停止も辞さないような内容は不都合と考えたのでしょうか。
期間の設定も投開票日をまたぐ形になったのも大統領選挙への影響を考慮してのことでしょうか。

ただ、本気で非公表にするつもりなら、すぐに一部報道機関に内容が漏れるというのも・・・どうでしょうか。

***************************
(上記【BBC】の続き)
米国務省のマシュー・ミラー報道官は15日、米ワシントンでの記者会見で、当該書簡は「非公開の外交的コミュニケーションであり、公表するつもりはなかった」と語った。

「(ブリンケン)長官はオースティン長官とともに、ガザへの援助レベルを回復させるために再び変更を加える必要があるとイスラエル政府に明確にすることが適切だと考えた」

イスラエル側が人道援助へのアクセスを改善しなかった場合にどのような結果が起こりうるかについては、ミラー報道官は推測を避けた。

「米軍の援助を受ける側が恣意(しい)的にアメリカによる人道援助の提供を拒否あるいは妨げるようなことはない。このことは法律で定められており、我々は当然、法律に従う。しかし我々が望むのは、我々が示したような変更をイスラエルが行うことだ」

30日間という期限については、11月5日に控える米大統領選とは関係がないとし、「異なる問題に取り組むための時間を与えるのがふさわしい」やり方だと述べた。

イスラエルは以前から、ガザへ届けられる援助物資や人道支援の量を制限してはいないと主張しており、それらが供給されていないのは国連機関に問題があるからだとしている。また、ハマスが援助物資を盗んでいるとも非難している。ハマス側はこれを否定している。

5月にイスラエルがガザ南部ラファで地上攻撃を開始する前、ジョー・バイデン米大統領は2000ポンド爆弾と500ポンド爆弾の輸送を初めて停止し、イスラエルに全面攻撃を思いとどまらせようとした。

しかし、バイデン氏は直後に、米議会共和党やイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相からの反発に直面した。
この停止措置は7月に部分的に解除され、その後は実施されていない。(後略)【10月16日 BBC】
************************

これに関し、EUの外相にあたるボレル外交安全保障上級代表は17日、「今のペースで死者が出れば、1カ月の間にあまりにも多くの人々が死亡することになる」として、アメリカが1か月の猶予を設けていることを批判しています。【10月17日 ロイターより】

【改善の様子なく、悪化するガザ地区の状況】
10月13日付けの書簡でしたが、その後もガザの状況が改善したという情報は目にしていません。むしろその惨状を伝えるものだけです。

****ガザ、飢餓のリスク続く 「最悪のシナリオ」懸念=国連IPC分析****
国連の「総合的食料安全保障レベル分類(IPC)」は17日、イスラエルとイスラム組織ハマスとの戦闘が続くパレスチナ自治区ガザでは地区全体が依然として飢餓の危機にさらされ、緊急レベルにあるとの分析結果を公表した。イスラエル軍の激しい軍事作戦が懸念を強め、人道支援活動が妨げられていることが要因にある。

ガザ地区約230万人の住民の184万人が深刻な食料不安に直面し、そのうち13万3000人が最も深刻な「壊滅的」レベルにあるとした。6月の報告からは減少したものの、今後数カ月の間に倍増するとみられている。5月以降、ガザ地区への食料の流入が増えたが、9月に人道支援が再び縮小し始めたと指摘した。

IPCは「ガザ地区全体で飢餓のリスクが続いている。最近の敵対行為の高まりを踏まえると、最悪のシナリオが現実となるのではないかという懸念が高まっている」と記した。

IPCによると、イスラエルがこのほど出したガザ地区からの退去命令で人道支援活動が中断され、度重なる避難によって食料や水、医薬品へのアクセスや対応が悪化している。24年9月─25年8月に小児の急性栄養失調が6万件発生すると推定されている。

今回の報告は9月30日─10月4日の分析に基づいており、足元で起きている最新状況を反映していない。

国連の人道支援機関は、10月2日─15日までにガザ北部には食料援助はほとんど入らず、配布できる食料は枯渇寸前だと指摘。燃料不足も深刻化しており、大半のパン屋は数日で閉店を余儀なくされる恐れがあるとしている。【10月18日 ロイター】
***********************

****イスラエル、ガザ物資輸送路遮断 食料搬入手続きを停止=関係筋****
イスラエルは、パレスチナ自治区ガザへの食料搬入を行う業者による要請の処理を停止した。これによりガザ地区の食糧の大半を過去6カ月間にわたり供給してきた輸送経路が遮断されることになる。複数の情報筋が明らかにした。

イスラエルの公式データをロイターが分析したところ、今回の決定により、ガザ地区への物資の搬入量は戦争開始以来最低水準となっていることが分かった。

イスラエルの占領地政府活動調整官組織(COGAT)は、十分な支援物資がガザ沿岸地区に届き、イスラエルが人道援助の流入を阻止しないよう全力を尽くしていると説明。イスラエルが物資供給を妨害しているとの主張を否定している。

COGATの統計によると、10月1─16日にガザ地区への援助物資と商業物資を含む物資輸送量は、1日平均トラック29台分にまで減少している。

食糧供給に携わる2人の関係者によると、商業輸送を停止した理由は、イスラム組織ハマスが輸入品から収入を得ていることをイスラエルが懸念しているたためという。

ハマスの報道官は、同組織が食料を盗んだりそれを収入源にしたりすることはないとし、ガザ地区に援助物資を確実に配給しようと努めていると言明した。【10月18日 ロイター】
**********************

かりに“ハマスが輸入品から収入を得ている”ということであったにしても、商業輸送を停止してガザ住民の飢餓状況を更に悪化させることが許されるのか?

イスラエルにとって「人命」というのはイスラエルユダヤ人のものだけであり、パレスチナ人の命はその範疇に入らないのか?

【「将軍たちの計画」】
この間、イスラエルはガザ北部への攻撃を強めています。
“ガザ北部で病院攻撃、イスラエル「テロ標的」 全域で72人死亡”【10月26日 ロイター】

このガザ北部への攻撃は、住民を強制退去させ、残った者はハマス及びその関係者として殺害し、北部へのイスラエル軍常駐を目指す・・・・という計画ではないかとも見られています。退役したイスラエル軍司令官らが提案した計画で「将軍たちの計画」と呼ばれていますが、イスラエル政府はそうした計画の実行を否定しています。

アメリカの要請については“イスラエル政府は半ば無視”とも。どうせイスラエル全面支持のトランプ氏が勝つので、バイデン政権の要請など無意味・・・ということでしょうか。

****ガザ北部再攻撃、死者千人 包囲1カ月、軍駐留視野か****
イスラエル軍がパレスチナ自治区ガザ北部を再び集中攻撃している。北部ジャバリヤ周辺を1カ月以上、地上部隊で包囲し、支援物資の搬入を遮断。千人以上が死亡したとみられ、住民多数が避難を強いられている。今後のイスラエル軍の駐留も視野に、住民を強制的に退去させているとの見方も出ている。

米国は10月中旬、ガザの人道状況改善措置を30日以内に取るよう求めたが、イスラエル政府は半ば無視。危機的状況だ。

イスラエル軍は昨年10月の戦闘開始以降、ガザ北部で地上作戦を繰り返してきた。今回の作戦は今年10月6日に始め、ジャバリヤや北方ベイトラヒヤも包囲。10月中旬にイスラム組織ハマスの最高指導者シンワール氏を殺害後も攻撃の手を緩めず、国連によると約10万人がジャバリヤ周辺から南方のガザ市に逃れた。

イスラエル軍はガザ市以北への物資搬入を認めず、ロイター通信はジャバリヤ周辺に1カ月以上、物資が届いていないとする住民の話を伝えた。【11月8日 共同】
*********************

****ガザ人道支援、北部住民に届いてないと米政府 包囲をけん制****
米国務省のミラー報道官は28日、パレスチナ自治区ガザ北部ジャバリアで人道支援が必要な人に届いていないとし、受け入れられない状況との見方を示した。

「ジャバリアの人々に必要な食料や水、医薬品が届いていない」とし、「状況が変わることを望む」と述べた。

パレスチナの緊急当局によると、ジャバリア、ベイトラヒヤ、ベイトハヌーンでは約10万人が医療や食料供給を受けられずに孤立している。3週間にわたるイスラエル軍のガザ北部攻撃で緊急サービスの活動が停止しているという。

ミラー氏はガザ北部を包囲したり、民間人を飢餓に陥れたり、ガザ全体から北部を切り離したりするようないかなる試みも明確に拒否すると断じた。

ブリンケン米国務長官は ガザ北部から避難するよう民間人に指示した上で、同地域を閉鎖された軍事区域に指定するという、退役したイスラエル軍司令官らが提案した計画について、イスラエルとの協議で問題提起した。ミラー氏によると、イスラエルはそうした計画は実施していないと述べたという。

ただ、米当局者によると、ブリンケン氏は米国がガザの人道状況改善に向けた措置を30日以内に講じるよう求めた先の書簡で示した条件をイスラエルが全て満たすには至っていないと警告したという。【10月29日 ロイター】
******************:

【国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)のイスラエル国内での活動禁止】
イスラエル議会は、ガザで人道支援を行っている国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)についてハマスと関連があるとして国内での活動を禁じる法案を可決。これによりイスラエルと調整ができなくなり、事実上ガザへの物資支援がストップします。

*****ガザの人道危機、さらに深まる恐れ…イスラエルがUNRWAの活動禁じる法案可決****
イスラエル国会は28日、国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)の国内での活動を禁じる法案を賛成92、反対10の賛成多数で可決した。90日以内に施行される。

UNRWAは、戦闘が続くパレスチナ自治区ガザで人道支援を行っている。支援にはイスラエル側との調整が欠かせず、活動禁止でガザの人道危機がさらに深まる恐れがある。

イスラエルは、昨年10月のイスラム主義組織ハマスによる越境攻撃にUNRWAの職員が関わっていたとして解体を求めていた。ベンヤミン・ネタニヤフ首相は「テロ活動に関与した職員は責任を負わなければならない」とX(旧ツイッター)に投稿し、活動禁止の正当性を強調した。

UNRWAが陸路でガザに物資を搬入する際には、隣接するイスラエル当局との調整が必要となる。イスラエルでUNRWAの活動が禁じられると事実上、物資支援が困難になる。イスラエル当局とUNRWA職員の接触も禁じられた。

UNRWAのフィリップ・ラザリーニ事務局長は「法案はガザの人々の苦しみを深めるだけだ」とXで非難した。【10月30日 読売】
********************

この法案については、国連安保理の全15理事国が法案の可決に懸念や非難を表明しています。
国連で中東和平を担うトル・ウェネスランド特別調整官は国連総会の決議に基づきUNRWAが設置されたことを踏まえ、イスラエルによる「一方的措置は国連を弱体化させ、国際法を後退させる恐れがある」と非難し、撤回を求めました。

アメリカはUNRWAとハマスの関与に関するイスラエルの判断を擁護しつつ、、「UNRWAは重要な使命を果たしている」として法案可決に懸念を示しました。【10月30日 読売より】

11月12日には、ガザ北部でイスラエルによる攻撃の激化により人道危機が深刻化している状況を受け、国連安全保障理事会が緊急会合を開催。イスラエル軍の妨害で救援物資が届けられず、「(飢餓より深刻な状況になる)飢饉が差し迫っている可能性が高い」と報告されました。イスラエルは「ガザに飢餓はない」と否定しています。

アルジェリアのベンジャマ国連大使は「文字通り人々を飢え死にさせている。餓死させることを戦争の手段として明確に用いており、戦争犯罪に値する」と糾弾。

イスラエルのダノン国連大使は、「飢饉が迫っている根拠はない。唯一あるのは政治的偏見だ」と述べ、イスラエルへの中傷だと反論しました。ガザには支援物資を積んだ数十台のトラックの運搬を日々許可していると強調。人々に物資が行き渡らないのはハマスなどが略奪しているためだとこれまで通りの主張を繰り返しています。

【アメリカ 状況は限定的ながら改善 武器供与もこれまで通り継続】
そして、猶予期間1か月が経過して・・・

****バイデン政権は最後に飢餓直前のガザを見捨て、人道支援よりイスラエルへの武器輸出を優先した****
(中略)
バイデン政権は11月12日、イスラエルがガザへの人道援助活動を許可したため、状況は限定的ながら改善したと発表した。状況が改善しなければ削減すると言っていたイスラエルへの武器供与も、これまで通り継続することにした。

一方、人道支援団体からの最新の報告書によれば、ガザの状況は、13カ月に及ぶ紛争のどの時点よりも悲惨なことになっている。

米国務省のベダント・パテル副報道官は記者団に対し、人道支援に対するイスラエルの姿勢は最近になって最近になって改善したとはいえまだ十分ではないし、継続しなければならないが、アメリカは「イスラエルがアメリカの法律に違反しているとは考えていない」と述べた。

「私たちはイスラエルに合格点を与えているわけではない」とパテルは述べた。「私たちは人道的状況の全面的な改善を望んでいる。こうした措置によって、今後も改善が進み続けることが可能になると考えている」

アメリカはイスラエルにとって最大の同盟国であり、最大の軍事援助国だ。国際人道支援団体がイスラエルはガザでの人道的アクセスの拡大を求めるアメリカの要求に完全に応えていないと述べているにもかかわらず、アメリカは武器輸出継続の決定を下した。

専門家は、ガザ北部の一部はすでに飢餓状態に直面している可能性がある、と警告している。(BBCの報道によれば、イスラエル軍が包囲するガザ地区で1日にトラック350台分が必要とされる支援物資も、まだ1日平均40台分ほどしか入っていない)。

バイデン政権は10月、ガザのイスラム組織ハマスとレバノンのイスラム過激派組織ヒズボラに対する攻撃を実施するイスラエルに対して、ガザへの食糧と緊急支援物資の輸送を大幅に増加させなければ、軍事援助を削減する可能性があると伝え、その期限を11月12日としていた。(中略)

オックスファム、ノルウェー難民評議会、セーブ・ザ・チルドレンなど8つの人道支援団体が11月11日に発表した報告書によると、イスラエルはアメリカが求めた基準を満たしていなかった。【11月13日 Newsweek】
*****************

イスラエルは、ガザに運び込まれる支援物資の量を大幅に増やしたと主張しており、“1日平均40台分”云々の数字は不正確だとしています。また、支援物資の搬入が進まないのは武装組織が略奪しているためだとも。

“BBCのガザ特派員を2009~2013年に務めたジョン・ドニソン記者は、ジョー・バイデン米大統領の任期が残り少なくなり、パレスチナ人4万3000人以上の命が失われた現在の状況で、米政府がイスラエルへの武器の供給を打ち切ることはないだろうとみている。”【11月13日 BBC】

アメリカの要請は何だったのか? 大統領選挙におけるアラブ系有権者を意識したものだったのでしょうか? ハリス氏が勝っていたら、イスラエルへの対応も変化した?・・・それも民主党のイスラエル支持を考えるとありそうにないですが。

【トランプ2.0ではイスラエル全面支援 国際法より聖書が優先】
いずれにしても、今後のトランプ2.0の対応はバイデン政権に比べ“すっきり・明確”になります。イスラエル完全支持という形で。

****トランプ氏、駐イスラエル大使にハッカビー氏 ヨルダン川西岸入植を擁護****
トランプ次期米大統領は12日、マイク・ハッカビー元アーカンソー州知事を駐イスラエル大使に選出したことを明らかにした。

トランプ氏は声明で「マイクは長年にわたる偉大な公僕、知事であり、信仰の指導者でもある。彼はイスラエルとイスラエル国民を愛し、イスラエル国民も同様に彼を愛している。中東に和平をもたらすため、精力的に取り組むだろう」と述べた。

現アーカンソー州知事のハッカビー氏の娘、サラ・ハッカビー・サンダース氏は第1次トランプ政権で大統領報道官を務めた。

ハッカビー氏はキャリアを通じてイスラエルを強く擁護しており、ヨルダン川西岸地区に対するイスラエルの主張についても認める姿勢を示している。

イスラエルのネタニヤフ首相は長年、米国の福音派キリスト教徒との関係強化に努めてきた。ハッカビー氏の起用はそうした取り組みの歓迎すべき集大成になる。

ハッカビー氏はヨルダン川西岸へのイスラエルの入植を支持しており、2017年には、ヨルダン川西岸のエルサレム東郊にあるイスラエル最大規模の入植地で定礎式を行ったこともある。

当時、ハッカビー氏はCNNの取材に、「入植」という言葉の使用を拒絶する考えを表明。ヨルダン川西岸を示す聖書の言葉を使い、「ユダヤ・サマリア地区に対するイスラエルの権利は証明されていると思う」「ヨルダン川西岸地区などというものは存在しない。ユダヤ・サマリア地区だ。入植地も存在しない。これはコミュニティーであり、地域であり、街だ。占領などというものは存在しない」と述べていた。【11月13日 CNN】
******************

21世紀の国際関係において、最も影響力が大きい国家アメリカが、イスラエルの入植を違法とする国際司法裁判所の判断、それに基づく国連決議よりも、聖書の記述を重視するとは・・・・頭がクラクラする感も。

キリスト教福音派など宗教保守派が動かすアメリカ政治の在り様を見る思いも。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ガザでの戦闘開始から明日で1年 拡大する戦火 イスラエルに対し国際社会の意思を行動で示すべき

2024-10-06 22:34:33 | パレスチナ

(イスラエルによる攻撃が激化し、ガザ地区ジャバリヤから避難する人たち=6日【10月6日 共同】)

【ガザでの戦闘開始から1年 拡大する戦火 増え続ける犠牲者】
パレスチナ自治区ガザでイスラエル軍とイスラム組織ハマスの戦闘が始まってから7日で1年になりますが、戦闘は止まず、レバノンへの地上侵攻及び大規模空爆、更にはイランへの報復をめぐる緊張と戦火は拡大の様相を呈しており、それにともなって犠牲者も増加の一途をたどっています。

****ガザ戦闘1年、死者4万人 レバノンも侵攻、戦火拡大****
パレスチナ自治区ガザでイスラエル軍とイスラム組織ハマスの戦闘が始まってから7日で1年。ガザ保健当局によるとガザ側死者は1年間で4万1800人を超え、ガザ人口の9割に当たる190万人以上が避難生活を続ける。

停戦交渉が難航する中、イスラエルは9月30日、ハマスと共闘する親イラン民兵組織ヒズボラ掃討を掲げ隣国レバノンに地上侵攻。

イランはイスラエルをミサイル攻撃するなど戦火は中東各地に拡大し、出口は見えない状態だ。

ガザ戦闘は昨年10月7日、ハマスによる奇襲で始まった。イスラエル側死者は約1200人。ネタニヤフ政権は直ちにガザ空爆を開始。昨年10月下旬、イスラエル軍はガザ北部から地上侵攻して徐々に南下し、今夏までにほぼ全域を掌握した。

女性や子どもも含めた犠牲者はガザ人口の約2%に当たり、国際社会から非難の声が高まった。

ガザは境界封鎖によって食料不足が深刻化し、餓死者も出た。感染症も広がった。軍は「人道地区」を設定して住民に退避要求したが、人道地区への攻撃も相次ぐ。【10月6日 共同】
*************************

*****ガザ建物59%損壊、農地も激減 「生き地獄」と国連総長*****
イスラエル軍とイスラム組織ハマスの戦闘は7日で1年。軍はガザ全域をほぼ掌握した。9月下旬時点での衛星画像のデータ分析では、建物の59%が損壊され、農地も68%が被害に遭った。

食料不足で餓死者も出ており、国連のグテレス事務総長は「住民が生き地獄にいる」と警鐘を鳴らす。

米オレゴン州立大のジャモン・バンデンホーク氏らが地球観測衛星の画像データで建物被害を分析した。軍は昨年10月下旬に地上侵攻を始め、北部から徐々に南下。ガザ地区の約28万7千棟のうち59%が破壊され、北部ガザ市に限ると損壊された建物は74%に上る。最南部ラファも47%。【10月6日 共同】
***********************

【攻撃の手を緩めないイスラエル・ネタニヤフ首相】
こうした状況でもイスラエルは攻撃の手を緩めていません。

****ベイルート、一晩に25回空爆 イスラエル軍、人口密集地を攻撃*****
イスラエル軍は5日深夜から6日にかけ、レバノンの首都ベイルート南部を約25回にわたり空爆した。レバノン国営通信が伝えた。空港近くの医療用倉庫やガソリンスタンドなどに大きな被害が出た。

軍は住宅の地下に親イラン民兵組織ヒズボラの武器製造施設や武器庫があるとして、人口密集地への攻撃を正当化した。

レバノン当局によると、5日は23人が死亡、90人以上が負傷した。1年間の死者は2千人以上になった。

イスラエル軍は5日、レバノン南部の病院に隣接したモスク内にあるヒズボラの拠点も空爆したと表明した。軍報道官はレバノンに地上侵攻した9月30日以降、ヒズボラ戦闘員ら約440人を殺害したと述べた。

イスラエルのネタニヤフ首相は5日の声明で、イランによる1日の弾道ミサイル攻撃に対し「イスラエルには自衛や反撃の義務と権利があり、われわれは実行する」と宣言した。軍は「深刻で重大」な対応を検討中と表明。

米中央軍のクリラ司令官が5日イスラエル入りし、軍幹部らと攻撃先を協議したもようだ。【10月6日 共同】
***********************

****イスラエル首相がイランに“報復宣言” レバノンへの攻撃も続く 中東全域が緊迫化****
イスラエルのネタニヤフ首相がイランへの報復を改めて明言しました、イスラエルはレバノンへの攻撃も続けています。

ネタニヤフ首相は、5日、イランから受けた攻撃について、「史上最大の弾道ミサイル攻撃で、このような攻撃を容認できる国はない」とした上で「自国を防衛し、これらの攻撃に対応する義務と権利がある」と述べ、報復を明言しました。

地元メディアは、アメリカ軍の幹部がイスラエルを訪問し、イランへの報復攻撃について協議したと伝えています。(後略)【10月6日 TBS NEWS DIG】
************************

アメリカではトランプ前大統領がイラン核施設攻撃を主張してイスラエルの攻撃を煽っています。

****米トランプ前大統領、イランの核施設「攻撃すべき」 バイデン大統領はイラン石油施設の攻撃に否定的****
アメリカのバイデン大統領は、イスラエルがイランへの報復措置として石油施設を攻撃することについて否定的な考えを示しました。一方、トランプ前大統領は4日、イランの核施設への攻撃に反対したバイデン氏の考えを否定しました。

バイデン大統領「イスラエルはイランをどのように攻撃するか、まだ結論を出していない。議論中だ。私なら油田への攻撃よりも、他の選択肢を考えるだろう」

バイデン大統領は4日、イスラエルはイランからのミサイル攻撃に対する報復措置について、まだ結論は出していないとした上で、石油施設への攻撃に否定的な考えを示しました。バイデン氏は2日には、イランの核施設を攻撃することにも反対だと明言しています。

トランプ前大統領「彼(バイデン大統領)はイランについて聞かれたときに、まず核施設を攻撃し、その他のことは後で考えると答えるべきだった」

一方、トランプ前大統領は4日、選挙集会の中で「核兵器は最大のリスクだ」とした上で、「まず核施設を攻撃し、その他のことは後で考えると答えるべきだった」と述べ、核施設への攻撃に反対したバイデン氏の考えを否定しました。【10月5日 日テレNEWS】
*********************

核施設はもちろん、国家収入の根幹の石油施設攻撃もイランとの全面戦争の引き金を引きかねないということでバイデン大統領はこれに反対はしていますが、イスラエル支持の立場は変えず、武器支援も続ける構えです。

【フランス・マクロン大統領 ガザで使用される武器についてイスラエルへの輸出を停止を提唱】
こうしたなかでフランス・マクロン大統領がガザで使用される武器についてイスラエルへの輸出を停止すべきとの考えを示しています。

****仏大統領、ガザで使用の武器禁輸呼びかけ イスラエル反発****
フランスのマクロン大統領は5日、パレスチナ自治区ガザで使用される武器について、紛争の政治的解決に向けた取り組みの一環として、イスラエルへの輸出を停止すべきとの考えを示した。

イスラエルのネタニヤフ首相は強く反発し、マクロン氏やイスラエルへの武器禁輸を求める他の西側首脳は「恥ずべきだ」と非難。「イスラエルは彼らの支援があろうとなかろうと勝利する」と述べた。

マクロン氏は仏ラジオで、優先事項は「政治的解決に戻り、ガザでの戦闘に使用される武器を停止することだ。フランスは出荷していない」と発言。

また「紛争拡大の回避がわれわれの優先事項だ。レバノンの人々が犠牲になってはならない。レバノンがもう一つのガザになってはならない」と述べた。【10月6日 ロイター】
*********************

****ネタニヤフ首相、マクロン仏大統領を「恥知らず」と非難…軍事支援なくても戦闘継続を強調****
イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は5日の声明で、イスラエルへの武器供与停止を呼びかけたマクロン仏大統領を名指しして、「恥知らずめ」と非難した。

各国からの軍事支援がなくても、戦闘を続ける方針を強調した。

AFP通信によると、マクロン氏は5日、仏ラジオのインタビューで、「政治的解決に戻るため、パレスチナ自治区ガザで使われる武器の提供をやめるべきだ」と発言した。ネタニヤフ氏はこれを非難し、「支援がなくても我々は勝利する」と述べ、戦闘を継続する姿勢を鮮明にした。【10月6日 読売】
***********************

ネタニヤフ首相は「自国を防衛し、これらの攻撃に対応する義務と権利がある」という立場で、ガザそしてレバノンを攻撃し、イランとも対峙していますが、「自国を防衛し、これらの攻撃に対応する義務と権利」があるとしても、そのために、逃げまどう住民を、避難先に身を寄せる避難民を、現状に何もかかわっていない子供たちを爆弾で吹き飛ばしていい権利はありません。

イスラエル国民の命が重いのと同じように、パレスチナ住民やレバノン住民の命も重いものです。

もしイスラエル国民を守るためなら、ハマスやヒズボラ攻撃のためには、パレスチナ住民やレバノン住民を吹き飛ばしてかまわないと考えるなら、それはパレスチナ住民やレバノン住民の命を軽視するものであり、かつてユダヤ人が経験したジェノサイドにも通じる考えです。

復讐の炎に焼かれるとき人の理性は失われます。

本来であれば同盟国アメリカのバイデン大統領がネタニヤフ首相の頬をひっぱたいても、その目をさまさせるべきところですが、大統領選挙におけるユダヤ社会からの支持を失いたくないという事情で、それはできない模様。

であれば、マクロン大統領が言うように、アメリカ抜きでも国際社会の意思をネタニヤフ首相とイスラエル国民に、厳しい具体的行動をもって、はっきりと伝えるべきでしょう。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

イスラエル  人質6人の遺体発見で強まる停戦・人質解放に向けた国内外の圧力

2024-09-07 23:48:21 | パレスチナ

(イスラエル最大の労組「労働総同盟(ヒスタドルート)」が2日、ゼネストを開始した。人質殺害に反発し停戦合意を求めるデモ、テルアビブで1日撮影。【9月2日 ロイター】)

【人質6人の遺体発見でイスラエル国内の怒りの矛先は・・・】
パレスチナ・ガザ地区で人質6人の遺体が発見されたとのニュースを見たとき、正直なところ、この件がガザ情勢に大きく影響してくるとは思いませんでした。

****ガザで人質6人の遺体発見 イスラエル軍****
イスラエル軍は1日、パレスチナ自治区ガザ地区(Gaza Strip)で人質6人の遺体を発見したと発表した。

軍の声明によると、遺体は8月31日に南部ラファ(Rafah)の地下トンネルで見つかり、収容された。イスラエルに搬送され、身元が正式に確認された。

6人のうち1人は、イスラエル系米国人のハーシュ・ゴールドバーグポリンさんだった。
ジョー・バイデン(Joe Biden)米大統領は、人質の死亡に「打ちのめされ、憤っている」と述べた。

昨年10月7日のイスラム組織ハマス(Hamas)によるイスラエル南部への越境攻撃では、251人が人質となった。約100人が依然拘束されており、イスラエル軍はそのうち数十人が死亡したとみている。【9月1日 AFP】
****************

人質遺体発見は、その死亡がハマスによるものか、イスラエル軍の空爆によるものか判然としないものを含めて、これまでもときどき報じられていますので、ハマスによる米国人を含む6人の人質殺害ということで、イスラエル・ネタニヤフ政権は国内世論のハマスへの怒りを背景にガザ攻撃を強化するのだろう・・・イスラエルを支援するアメリカの動きも強まるのだろうな・・・ぐらいに漠然と思っていました。

しかし、イスラエル国内の批判の矛先はハマスよりむしろ人質救出よりハマス壊滅を優先するネタニヤフ首相に向けられました。

****イスラエルで30万人規模のデモ 人質6遺体発見で政府に抗議****
パレスチナ自治区ガザ地区での戦闘を巡り、イスラエル国内で1日、イスラム組織ハマスとの停戦合意や拉致された人質の解放を求める大規模デモがあった。8月31日にガザで人質6人が遺体で見つかり、イスラエル国内ではネタニヤフ首相の停戦交渉の進め方に不満が高まっている。

地元メディアによるとデモには約30万人が参加。イスラエル最大の労働組合のトップは2日、ストライキを呼びかけ、反発は大きなうねりとなっている。

「戦争をやめろ」「(救えなかった)私たちを許してほしい」。1日、商都テルアビブの中心部には約30万人が集まり、人質の早期解放を求めた。

夫が人質で、自身もハマスに一時拘束されたアビバ・シーゲルさん(63)は「ネタニヤフ氏が人質を見殺しにした」。ITエンジニアのオル・セラさん(46)は「最も大切なのは人質の生還だ。ネタニヤフ氏は選挙で負けることを恐れて戦争を続けている」と非難した。

今回、遺体で見つかったのは、20〜40代の男女6人。イスラエル軍が発見する直前に殺害されたとみられる。イスラエル紙ハーレツによると、6人のうち3人は、今回、停戦が成立すれば第1段階で解放される予定だった。

反発の背景にはネタニヤフ政権が8月29日の閣議で、ガザとエジプトとの境界地帯に軍の駐留継続を決めたことがある。武器の密輸を防ぐ目的とされたが、ハマスは猛反発し、停戦交渉が停滞する原因になってきた。

一方、ガラント国防相は「人質の命を犠牲にしてまで、駐留を優先させることは道義的に恥ずべきことだ」として、政権内で唯一決定に反対。人質の遺体発見後には「今すぐ、境界地帯の駐留の決定を撤回すべきだ」とX(ツイッター)に投稿した。

これに対して、ネタニヤフ氏は「ハマスは交渉成立を望んでいない。ハマスを追いかけ、決着をつける」との声明を出し、ハマスの「壊滅」を優先させることを強調した。

国民の間ではハマスとの戦闘より、人質交渉を優先すべきだという声が多数派になっている。地元民放が7月上旬に公表した世論調査では、ガザでの紛争において「最も重要なことは何か」との問いに対して、67%が人質の解放と答え、戦闘の継続は26%にとどまった。

ただ今回の遺体発見前まで、ネタニヤフ氏の支持率は回復傾向にあった。イスラエル紙マーリブが8月9日に公表した世論調査では、政敵のガンツ前国防相とネタニヤフ氏の「どちらが首相に適任か」との問いに、ネタニヤフ氏が42%、ガンツ氏が40%で、昨年10月の戦闘開始後、初めてガンツ氏を上回った。

30日公表の調査では再びガンツ氏が上回ったものの、ハマスの最高指導者がイランで暗殺され、イランが報復を宣言する中、安全保障上の緊張が追い風になった可能性がある。【9月2日 毎日】
*****************

停戦が成立すれば第1段階で解放される予定だった人質が、停戦交渉の停滞のために殺害される結果となったことが、ネタニヤフ首相の停戦交渉に消極的な対応への批判として高まったようです。

デモには約30万人が参加・・・イスラエルの人口は955万人程度ですので、そのことを考えると相当規模のデモです。
一時はゼネスト状態に。

****イスラエルでゼネスト開始、交通網・港湾など混乱 経営者も支持****
イスラエル最大の労組「労働総同盟(ヒスタドルート)」が2日、ゼネストを開始した。

パレスチナ自治区ガザでイスラム組織ハマスに拘束されていた人質6人が遺体で見つかったことを受けて、ネタニヤフ首相に人質解放に向けた合意を結ぶよう圧力をかけることが狙い。1日にゼネストの実施を呼びかけていた。

スモトリッチ財務相はゼネストを許可しないよう労働裁判所に求めており、現地時間午前に審理が始まる予定だが、すでにさまざまな産業でストの影響が出ており、製造・ハイテク業界など多くの経営者団体もゼネストを支持している。

空輸ハブであるベングリオン空港が一部のサービスを中止しているほか、多くの地域でバスや路面電車の運行が停止・縮小されている。主要商業港のハイファ港でも労働者がストを実施。病院も業務を縮小し、銀行の業務は停止されている。

多くの民間企業は営業しているものの、経営者は従業員がストに参加することを認めており、さまざまなサービスで混乱が生じている。【9月2日 ロイター】
********************

ストの方は、裁判所の違法判断ですぐに中止されましたが、国を揺さぶる大きなうねりとなりました。

ネタニヤフ首相の政敵でもあるガンツ前国防相は、ネタニヤフ首相のガザ・エジプト境界地帯(フィラデルフィ回廊)への軍駐留に固執する姿勢を批判。

****ガザ境界の軍駐留必要なし、停戦交渉反対理由にならず=ガンツ前国防相****
イスラエル戦時内閣を6月に離脱したガンツ前国防相は3日、パレスチナ自治区ガザの停戦交渉で最大の争点となっているガザ・エジプト境界地帯(フィラデルフィ回廊)への軍駐留について、駐留継続の必要はなく、人質解放に向けた停戦合意の反対理由にすべきでないとの考えを示した。

ネタニヤフ首相は2日の会見で、フィラデルフィ回廊への軍駐留は不可欠だとの見解を改めて強調している。

しかしガンツ氏は、イスラエルにとって一番の脅威はフィラデルフィ回廊ではなくイランだと指摘。回廊はイスラム組織ハマスやその他のパレスチナ武装勢力がガザに武器を密輸するのを防ぐ上で確かに重要だが、軍駐留によって完全に止めることはできないと付け加えた。

またネタニヤフ氏がいったん回廊から撤退すれば、国際的な圧力で再駐留が難しくなると訴えたことについても「必要ならばフィラデルフィ回廊に戻ることはできる」と反論した。

その上でガンツ氏は、ネタニヤフ氏が国際的な圧力に耐えて再駐留に動けるほどの強さがないのであれば、野に下ってもらわなければならないと述べ、総選挙の実施を求めた。

ガザ停戦交渉を巡るネタニヤフ氏の姿勢には、米国などから不満が強まっている。

ガンツ氏は「この話はフィラデルフィ回廊ではなく、本当の戦略的判断が欠如しているということだ」と語り、ネタニヤフ氏の対応を批判した。【9月4日 ロイター】
********************

【バイデン米大統領はネタニヤフ首相に不満表明 英も武器輸出を一部停止】
国際的にも、イスラエルの後ろ盾となっているアメリカ・バイデン大統領がネタニヤフ首相の交渉への姿勢に不満を明らかにしており、ネタニヤフ首相との溝が深くなっています。

****バイデン氏「イスラエルの取り組み不十分」、ネタニヤフ氏は反発****
バイデン米大統領は2日、パレスチナ自治区ガザでイスラム組織ハマスに拘束されている人質の解放に向けた合意の最終案をまもなく提示すると述べた。同時に、イスラエルのネタニヤフ首相は合意確保に向け十分に取り組んでいないとの考えを示した。

バイデン氏は、ネタニヤフ首相は人質解放に向けに十分な努力をしているかとの記者団の質問に対し、「ノー」と回答。ただ、詳細については語らなかった。

また、イスラエルとハマスの双方に最終的な合意案を提示するかとの質問に対し、まもなく提示すると答えた。

交渉が成功するかどうかとの質問に対しては「希望が尽きることはない」とした。

イスラエル軍は1日、ガザ最南部ラファの地下トンネルで人質6人の遺体を収容したと発表。発見される直前に殺害されたという。人質のうち1人は米国人男性だった。

ホワイトハウスによると、バイデン大統領とハリス副大統領は米国の人質交渉チームとも会談。その中で大統領は人質殺害に対する「衝撃と憤り」を表明し、残りの人質解放に向けた次のステップについて話し合ったという。

一方、ネタニヤフ首相は、圧力をかけるべきはイスラエルではなくハマスだと反発。記者会見で、「今、われわれは真剣さを見せろと要求されているのか、譲歩を要求されているのか。これはハマスにどんなメッセージを送っているのか。もっと人質を殺せと言っているのだ」と反発した。

また、バイデン氏を始め真剣に和平実現に取り組む人物がイスラエルにさらなる譲歩を求めるとは考えておらず、むしろそうする必要があるのはハマスだと述べた。

イスラエルの関係筋も、バイデン氏が人質交渉を巡りハマスのヤヒヤ・シンワル指導者ではなくネタニヤフ氏に圧力をかけたことは「留意すべき」と語った。

バイデン氏が、ネタニヤフ氏の対応が不十分と発言したことも、ハマスが人質6人を殺害した直後に出されたというタイミングからみて危険な見解だとした。

こうしたイスラエルのコメントに対し、米国当局者は、バイデン大統領は人質死亡についてハマスに責任があると明言していると反論。「行方不明の人質の解放を急ぐよう、イスラエル政府に求めている」と述べた。【9月3日 ロイター】
******************

アメリカと並んでイスラエルに武器支援を行っているイギリスも武器輸出の許可を一部停止すると発表。イスラエル支持の外交姿勢に変化が出ているとも見られています。

****英、イスラエルへの武器輸出を一部停止 外交シフト示唆****
英国は2日、イスラエルに対する武器輸出の許可を一部停止すると発表した。固い絆で結ばれた西側同盟国でさえ、イスラエルから自国防衛に必要な武器を奪うことなく、パレスチナ自治区ガザの戦争終結に向けて圧力をかける方法を模索している様子を示している。

英政府は、イスラエルへの約350件の武器輸出許可のうち、30件を禁止すると発表した。F16戦闘機やドローン(無人機)の部品も含まれている。一部の武器が国際人道法に違反して使用される「明確なリスク」があると説明した。

ただ、英国からイスラエルへの武器輸出は比較的少なく、今回の停止措置は概して象徴的なものだ。

だがアナリストらは、イスラエルにとって後方支援や軍事支援よりも重要な、英国の外交的な後ろ盾の変化を示すものだと指摘する。また、他の同盟国も追随する外交的な余地をもたらし、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相にとって頭痛の種となる可能性がある。【9月4日 WSJ】
*******************

【強気姿勢は変えないネタニヤフ首相だが、停戦・人質解放を求める内外の声は強まる】
こうした国内外の圧力の中でもそれに屈しないのが強気ネタニヤフ首相の真骨頂・・・・というか、屈して停戦となれば、国内的には総選挙要求が強まり、総選挙となれば自身の政治生命が終わるため、どうしても後に引けないとも言えますが。

人質6人の遺体が見つかったことを謝罪しつつも、ハマスとの停戦交渉での「譲歩」を拒否する姿勢を重ねて強調しています。

****イスラエル軍の駐留を主張…ネタニヤフ首相「圧力に屈しない」****
イスラエルのネタニヤフ首相は「圧力には屈しない」として、エジプトとパレスチナ自治区ガザ地区の国境沿いにイスラエル軍を駐留させ続けることをあらためて主張しました。

エジプトとガザ地区の境界は「フィラデルフィア回廊」と呼ばれ、戦略上、重要であることからイスラム組織ハマスとの主な対立点となっています。

人質解放と停戦をめざす交渉は、イスラエル側が「フィラデルフィア回廊」への駐留継続を要求したことで再び停滞しています。

ネタニヤフ首相は2日、「圧力には屈しない」として「フィラデルフィア回廊」にイスラエル軍を駐留させ続けることをあらためて主張しました。

イスラエルでは6人の人質が遺体で見つかったことを受け、大規模な抗議デモがおこなわれていて、即時停戦を求める声が強まっています。こうした中、アメリカのバイデン大統領は人質解放をめぐり、ネタニヤフ首相の努力が不十分だとの認識を示しました。

──ネタニヤフ首相は(人質解放) 問題についてもっとやるべき?十分に行動している?
アメリカ バイデン大統領「ノー」

また、今週中に人質解放に向けた合意案をイスラエルとハマス双方に提示するかと問われ、「非常に近づいている」と述べました。【9月3日 日テレNEWS】
********************

強気姿勢を続けるネタニヤフ首相ですが、アメリカ・バイデン政権の停戦交渉に向けた切迫感は強まっています。

****ガザ停戦に向けた米国の仲介、人質殺害で切迫感強まる****
米国系イスラエル人など人質6人が処刑されたことを受け停戦合意の実現が急がれる

パレスチナ自治区ガザで人質となっていた米国系イスラエル人が殺害されたことを受け、米政府は、イスラエルとイスラム組織ハマスとの停戦合意に向けた新たな案を早急に取りまとめる必要に迫られている。

だが政府当局者らは、ハマスが拘束している人質には7人の米国市民も含まれていることから、新たな案が最終案とはならない可能性もあると認めている。

ハマスはカリフォルニア生まれのハーシュ・ゴールドバーグポリン氏(23)を含む6人の人質を処刑した。これによりジョー・バイデン米大統領やイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相には、停戦とハマスによる人質解放実現に向けた圧力がさらに高まった。人質の殺害は、米政府が週内にも各当事者に示す予定だった合意案の文章を巡り、中東の仲介国と調整を続けている中で起きた。

米当局者らは、数週間にわたる交渉で最終枠組みに少し近づいたとし、新たな案は、8月に示された「橋渡し案」より踏み込んだ内容になると述べた。

新たな案は、ハマスに拘束されている人質とイスラエルで収監されているパレスチナ人囚人の交換を具体的にどう行うか、ガザとエジプトの境界地帯「フィラデルフィ回廊」でいつまでイスラエル軍の駐留が認められるか、などの詳細が含まれる見込み。

米国家安全保障会議(NSC)のジョン・カービー戦略広報調整官は3日、新たな合意案は、戦闘を停止して「残りの人質の解放を確実にする」ものであり、「ガザ住民に対して大規模な支援が直ちに届けられる」ことにつながる内容だと記者団に述べた。

またカービー氏によれば、バイデン氏も2日、交渉状況についてブリーフィングを受けるためシチュエーションルーム(危機管理室)入りするなど、今回の動きに個人としてもかなり力を入れている。
カービー氏は「週末の殺害を受け、この件を終結させるために必要な切迫感はさらに強くなった」とも述べた。【9月4日 WSJ】
*********************

なお、イスラエル国内では人質解放のためには「フィラデルフィ回廊」駐留を諦めなければならないとする声が反対派より多い状況になっています。

****ガザ境界駐留、半数否定的 人質解放を重視、世論調査*****
イスラエル紙マーリブは6日、世論調査の結果を公表し、パレスチナ自治区ガザの停戦交渉で最大の争点となっているガザ・エジプト境界でのイスラエル軍駐留に関し「人質解放のために諦めなければならない」と回答した人が48%に上った。

ネタニヤフ首相は安全保障上の理由から駐留継続を主張しているが、人質解放を重視する国民との間で認識の差があることが明らかになった。

マーリブ紙は4〜5日、約500人を対象に調査を実施。「人質が解放されなくても駐留を諦めてはならない」との回答は37%、「分からない」が15%だった。【9月7日 共同】
*********************
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする