(北朝鮮西部の南浦の孤児院 窓にはガラスもありませんが、孤児院に入れる子供はまだ幸せかも “flickr”より By Good Neighbors
http://www.flickr.com/photos/gnusa/2888900868/in/set-72157607499848283/)
北朝鮮は、拉致問題を含め、いろんな意味で良くも悪くも日本と関係が深い国ですが、殆どはっきりしたことがわからない国のため、こういう場でも扱いにくい国です。
核開発をめぐるアメリカとの交渉、韓国李明博政権との関係悪化については、メジャーなメディアでも連日取り上げられているところですので、それ以外の部分で、最近目にした記事をランダムにピックアップしてみました。
今月初旬、北朝鮮で食糧危機が深刻化しているとの報道が流れました。
****エリート層への配給も半年間停止か=食糧不足の北朝鮮*****
韓国の対北朝鮮人道支援団体「良き友達」は3日発行のニュースレターで、北朝鮮の食糧不足が悪化し、首都・平壌に居住を許されているエリート層に対しても、食糧配給が今月から半年間にわたり停止されたと伝えた
地方も米の価格が上昇し、肥料不足などで農民が田植えの準備ができないため、状況は一層深刻。北朝鮮国内では、今月中に平壌や他の都市で餓死者が出始め、5月には飢餓のため多数が死亡するのではとのうわさが広まっているという。【4月3日 時事】
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このニュースのもとになっている“韓国の対北朝鮮人道支援団体「良き友達」(グッドフレンズ)”は、これまでも再三北朝鮮での危機を主張している団体ですので、今回どこまで深刻な状況なのか・・・よくわかりません。
この食糧危機に関連して、北朝鮮は対立を深める韓国ではなく、中国に援助を求める方針とか。
*****韓国と対立する北朝鮮、中国に支援要請*********
韓国との緊張が高まるなか、北朝鮮は中国に大規模な食料支援を求めているという。4日、韓国のハンギョレ新聞が報じた。
外交関係者は「北朝鮮は当面韓国に食料支援を求めてこないだろう」とし「中国は(北朝鮮の要請に)まだ応じていない」と述べたという。北朝鮮問題の専門家は「4月18、19日の米韓首脳会談後に金正日総書記が中国を訪問する可能性が高い。『兄弟のような隣人』としての伝統的な同盟関係を強化し大規模食料支援を求めるだろう」という。食糧難にあえぐ北朝鮮は「太陽政策」を掲げる韓国から毎年およそコメ40万トンや肥料30万トンなど総額数十億ドルにも上る経済支援を受けてきたが、李明博新政権が経済支援の見返りに非核化作業の進展を求めてきたことに反発を強めている。【4月5日 AFP】
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頼られる中国は恐らく苦々しい気分では。
中国にとって北朝鮮の存在は『兄弟のような隣人』ではなく、アメリカ等の対立する勢力が国境まで北上しないようにする“緩衝地帯”の役割であり、また、北朝鮮の混乱は中国領内の朝鮮族の動きに影響を与える・・・そういう意味で“北朝鮮の存在・現状維持”に配慮しているということはよく言われるところです。
首脳間の関係も決して良くないとも伝えられますが、金正日総書記はそのような自国の立場を逆手にとって中国に援助を迫るのでしょう。
北朝鮮と中国の関係についてはこんな記事も。
*****中朝国境に鉄条網じわり 密輸や脱北防止を強化*******
中国が中朝国境の図們江(豆満江)沿いの一部で鉄条網の設置を進めている。関係者によると、中国側は北朝鮮側にも鉄条網設置の材料を提供し、国境警備を強化。中朝間の密輸や脱北者防止の措置を強めている。
鉄条網設置が進むのは中国延辺朝鮮族自治州図們市の図們江沿いの一部。住民の話では、昨年末から設置工事が始まった。中朝国境では、南部の鴨緑江沿いでも一昨年から中朝双方による鉄条網の設置が進んでいた。
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なお、北朝鮮の食糧事情については国連機関からは次のように報じられています。
****北朝鮮、166万トンの食糧不足=コメ価格は2倍に******
国連食糧農業機関(FAO)は11日、昨年水害に見舞われた北朝鮮が今年も深刻な食糧不足に直面すると予測した。世界の穀物需給に関する報告で明らかにしたもので、2007年11月~08年10月の食糧不足量を166万トンと推計。平壌ではコメと小麦粉の市場価格が07年初めに比べ2倍に上昇しているとした。
FAOによると、北朝鮮の07年の穀物生産量は300万トン前後で、06年の400万トンから大きく落ち込んだ。特に、とうもろこしの生産量が06年に比べ33%減ったほか、コメの生産量も25%減少したという。【4月11日 時事】
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“価格が2倍”というのは昨今の世界的食料価格高騰のなかでは、さほど突出したものでもありませんが、国内生産が落ち込んでいるのは事実のようです。
特に世界的食料価格高騰により、各国が食料の囲い込みに奔走する状況にあっては、外国からの購入・援助も難しくなるかも。
中国も国内の食料価格安定が何より優先で、輸出にブレーキをかけている状況ですから、どこまで支援に応じるのか?
本当に餓死者がでるような飢餓状態になった場合、拉致問題を抱える日本ではありますが、隣国として“人道的対応”が求められます。
実態が隠され続ければどうしようもありませんが。
金正日総書記の後継者問題、健康状況はいつも話題になりますが、わからないことばかりです。
*****北朝鮮:異変?国家的行事見送り…背後に後継者問題か******
故金日成国家主席の誕生日(15日)にあわせて毎年、平壌で開かれてきた国家的行事「4月の春 親善芸術祭典」が突如、隔年開催となり、この春は見送られた。体制アピールのため、北朝鮮が威信をかけて世界各国から音楽家らを招待してきた。そんな一大イベントが縮小された理由は?
韓国の情報筋は「招待する資金が不足したから。苦肉の策として思いついたのでは」と推測。また別の情報筋は「2月26日にニューヨークフィルの平壌公演があったばかり。比べて見劣りするならやめるべきだとなったのでは」と読む。いずれも判断を下したのは金総書記という点では一致する。
キーパーソンは「ポスト金正日」の有力候補、次男の金正哲(キムジョンチョル)氏ではとの観測も出てきた。
「正哲氏がイギリスのロック歌手、エリック・クラプトンの熱烈ファンで、その実現のため、幹部らは奔走している。祭典に手が回らなかったのでは」(日朝関係筋)【4月11日 毎日】
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“ファンのエリック・クプトン招待のために故金日成国家主席の誕生日行事を縮小”なんて、本当にあるのでしょうか?
あるとしたら、金正哲という人物はこれまた“ユニーク”な性格・思考かも。
****平壌に心臓治療機、続々 総書記ファミリー用か 独製高額品が北京経由で*****
北朝鮮の平壌に先月下旬から今月初旬までの間、高額なドイツ製心臓治療機器や心臓病関連の研究書などが集中して搬入されていたことが11日、わかった。
金正日総書記(66)を含む最高幹部の治療に使われるのではないかとの観測が出ている
金総書記の親族では、実妹の金敬姫(キムギョンヒ)(61)も心臓病を患っているとの説がある。【4月12日 毎日】
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その他、公務員給与が抑えこまれている経済の内情を示唆するものとして、「大卒の女性医師や教員も生活苦のため、本業を捨て露天商などの自営業へ走っている」【4月23日 毎日】という記事もありました。
今後、大きな問題になりそうなのは、韓国との水資源争い。
****北朝鮮、国境付近に大型ダム建設 韓国は水不足を懸念*****
北朝鮮が国境付近に2002年から建設中の大型のダム、黄江ダムをほぼ完成し、韓国国内で水不足の懸念が高まりつつある。
黄江ダムは、韓国の首都ソウル北方50キロの漣川を横切る軍事境界線から北方40キロの位置、両国をまたがって流れる臨津江の上流に建設されている。
韓国統一省報道官は「北朝鮮は、農業用水と飲料水確保のためにダムが必要だとの主張を繰り返すばかりで、対話を通じた解決を何度も要請したにもかかわらずこれを無視した」と憤りをあらわにしている。【4月23日 AFP】********************************
朝鮮半島だけに限らず、砂漠化が進展するなかで、人々の生存に不可欠な“水”を求める争いは今後世界中で頻発することが懸念されます。