(10月24日 爆発炎上するスーダン・ハルツームの軍需工場 イスラエルの空爆とも言われています。 “flickr”より By Pan-African News Wire File Photos http://www.flickr.com/photos/53911892@N00/8121186325/)
【「われわれはイスラエルが空爆したと考えている」】
今月24日、スーダンの首都ハルツームにある軍需工場が爆発・炎上した事件について、スーダン政府はイスラエルの空爆と非難しています。
****「軍需工場爆発はイスラエルによる空爆」、報復辞さない構え スーダン ****
スーダン政府は24日、首都ハルツームのヤルムク軍需工場で起きた爆発・火災について、イスラエルの空爆によるものという見方を示した。スーダンのアフメド・ビラル・オスマン文化・情報相は記者会見で「われわれはイスラエルが空爆したと考えている」「時と場所を選んで報復する権利を留保する」と述べた。
文化・情報相によると、24日午前0時(日本時間同6時)ごろ、レーダーに探知されにくい航空機4機が軍需工場を爆撃した。爆発物の残骸からイスラエルの関与を示す証拠が見つかったという。
イスラエルの軍部と外務省はコメントを出していない。イスラエルは、パレスチナのイスラム原理主義組織ハマスの戦闘員に活動拠点を提供しているとしてスーダンを非難してきた。
スーダンは、2011年4月に同国南部のポート・スーダンで、イスラエルの攻撃ヘリコプターがミサイルと機関銃で車を攻撃した証拠を持っているとしている。
イスラエルはこの件についてコメントを拒否したが、イスラエル当局者はスーダンを経由した武器密輸への懸念を示していた。
2009年1月にも、スーダン東部で武器を積んでいたとされるトラックの車列が外国の航空機によって同様の攻撃を受けたことがある。【10月25日 AFP】
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【イラン空爆の予行演習?】
これでもイスラエルはイラクやシリアの原子力施設を空爆したことがありますので、「さもありなん・・・」という感があります。
「さもありなん・・・」というだけでなく、何故今スーダンなのか?と考えると、イスラエルからすれば距離的にスーダン・ハルツームはイラン中部と同じぐらいの位置にありますので、素人考えでも「かねてよりイスラエルが標的としているイラン核施設を狙う作戦の予行演習ではないだろうか・・・」という印象がありました。
実際、そのような「予行演習」説の報道もなされています。
また、スーダンの軍需工場ではイランの指導でガザ地区ハマス向けの弾道ミサイル・シャハブが製造されていたとも報じてします。
イランの中距離弾道ミサイル・シャハブは北朝鮮のミサイル・ノドンがベースになっており、イランからイスラエル全土を射程距離に収めることができると言われています。
至近距離のガザ地区からイスラエルを狙うのであれば、そんな足の長いものは必要ないようにも思えますが(殆んど真上に打ち上げるのでしょうか?発射のための人員や装置も必要なのでは?)、手作りロケット弾でも苛立っているイスラエルにとっては、中距離弾道ミサイルなんてとんでもない話・・・ともなるでしょう。
現在イスラエルは周辺国からのミサイル攻撃に備えた防衛体制として、迎撃ミサイル・パトリオットの他、アメリカの援助で開発したアロー2ミサイル、更に、ミサイルだけでなくロケット弾をも撃ち落とせるというアイアンドームなどを配備していますが、相当の費用もかかっています。
****イスラエル:スーダン空爆は予行演習…対イラン想定 英紙****
スーダンの首都ハルツーム南部の軍需工場が爆撃された事件で英紙サンデー・タイムズは28日、西側軍事筋などの話として、作戦はイスラエル空軍がイランへの核施設攻撃の予行演習を兼ねて空爆したと報じた。
同紙によると、爆撃作戦は24日未明、イスラエル軍のF15戦闘機8機で行われた。うち4機が1トン爆弾を2発搭載、他の4機は護衛役だった。また、墜落など不測の事態に備えて、救出部隊としてイスラエル軍のCH53ヘリコプター2機が事前にスーダンの現場周辺で待機。そのほかスーダン防空レーダーに対し妨害電波を出すため空軍機1機、紅海上で燃料を供給するための給油機1機が作戦に加わった。
イスラエル南部の基地から出撃した戦闘機は、紅海を南下してエジプトの防空システムをすり抜ける形でスーダン領空に侵入し、ハルツーム南部に到達した。往復約3860キロ、計4時間の飛行だった。
この軍需工場では、イランが指導する形で、イランの弾道ミサイル・シャハブが製造され、パレスチナ自治区ガザに密輸される予定だったという。今回の作戦はガザへの武器密輸阻止のほか、将来、イランの核兵器開発が明確になった場合、イラン国内の核施設を空爆する電撃作戦の予行演習も兼ねていたと西側軍事筋は明かしている。イスラエルからイラン中部までの直線距離は、イスラエルからハルツームまでの距離とほぼ同じ。
ハルツームでの爆発では2人が死亡。スーダン政府は「イスラエル軍が実行した」と主張しているが、イスラエル軍はコメントしていない。【10月29日 毎日】
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スーダン空爆の報道で、“隣国エジプトはこの攻撃を知っていたのだろうか?ムバラク政権崩壊後、イスラエルとの距離をとりつつあるエジプト・モルシ政権が領空通過を認めるはずもないだろう・・・”とも思いましたが、“紅海を南下してエジプトの防空システムをすり抜ける形”をとったとのことです。
なお、イスラエルは南部港湾都市エイラートが唯一わずかに紅海・アカバ湾に臨んでいますから、エジプト・ヨルダン領空を通過せずに紅海に出ることが可能です。
それにしても、用意周到なイスラエルの作戦行動です。さすがと言うか、何と言うか・・・。
【イラン:スーダンへの軍艦派遣でイスラエルを牽制】
一方、10月6日にはレバノンのイスラム武装勢力ヒズボラがイスラエル内部まで無人機を侵入させることに成功した事件がありました。
“無人機はレーダーを逃れてイスラエル領空に約50キロ侵入し、イスラエル空軍が撃墜した。レバノンのシーア派組織ヒズボラの指導者ナスララ師は11日、無人機を飛ばしたことを認め「イランから部品を調達し、レバノンで組み立てた」と語っていた”【10月15日 毎日】
イランは、このときの無人機がイスラエルの核施設を撮影したと発表しています
****イランの無人機「イスラエル核施設の撮影成功」*****
イラン政府は29日、同国が開発した無人機が、イスラエルの核施設の撮影に成功したと発表した。
イラン国会の国家安全保障・外交委員会によると、写真は、今月6日にイスラエル領空で撃墜されたレバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラの無人機「アイユーブ」が撮影。
アイユーブを開発したとするイランに、オンラインでデータが送付されていたという。写真は未公表だが、ヒズボラは「無人機は(イスラエル南部の)ディモナ核施設まで到達した」と主張していた。イスラエルは撮影を否定している。
イラン軍は昨年12月、米軍の最新鋭無人偵察機「RQ170」を撃墜し、製造情報の解析を進めていたとされる。今年9月には、2000キロの飛行能力を持つ国産無人偵察機「シャヘド129」の配備を発表。
11月1日には、ミサイル搭載が可能な武装型無人機の公表を予定している。
イランのバヒディ国防相は29日、「イランはあらゆる作戦を遂行できる無人機の保有に成功した」と語った。【10月30日 読売】
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更に、イラン海軍の艦船がスーダンに入港したとのことで、イランはイスラエル牽制を強めています。
****スーダン:イラン海軍の軍艦が入港 イスラエルをけん制か****
イラン海軍の軍艦2隻が29日、スーダン東部のポートスーダンに入港した。
スーダンでは24日未明、イランの関与が疑われる首都ハルツーム南部の軍需工場が爆撃を受け、イスラエルが空爆を実行したとの見方が広がっている。イランは軍艦派遣を通じてイスラエルをけん制する狙いがあるとみられ、スーダンを舞台に、両国が神経戦を繰り広げている。
イラン国営通信などによると、軍艦2隻は9月にイラン南部バンダルアバスを出発。入港目的について、イラン海軍は「近隣国として平和と友好のメッセージを伝えるため」などとし、爆撃との関連には触れていない。
爆撃事件では2人が死亡し、スーダン政府は事件直後からイスラエルを非難、国連安全保障理事会で取り上げるよう要請した。イラン政府も「空爆の実行犯はシオニスト政権(イスラエル)だ」と強く非難しているが、イスラエル政府は沈黙している。
イランとスーダンは近年、急速に関係を強化。イスラエルは、イランがスーダンを通じ、パレスチナ自治区ガザ地区に武器を提供しているとみている。
イスラエルはイランの核兵器開発を疑い、核施設への単独での攻撃も辞さないとしている。スーダン空爆も「イラン攻撃に向けた予行演習」との見方が出ており、イランが対抗姿勢を強めている。【10月30日 毎日】
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一時は、イスラエルはオバマ政権が反対しにくいアメリカ大統領選挙前にイラン攻撃にでるのでは・・・とのうわさもありましたが、どうやらそれはなさそうです。まだわかりませんが。
ただ、一触即発の緊張が続いているのは間違いないようです。