孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

アメリカ  不法移民強制送還で受入国への「脅迫外交」が奏功 長期的には南米の中国傾斜加速も

2025-01-28 22:16:08 | アメリカ

(【1月25日 TBS NEWS DIG】)

【トランプ大統領 不法移民、1日1500人を逮捕するよう指示】
アメリカではトランプ大統領が公約した「米史上最大の不法移民の強制送還作戦」が始まっています。

“連日行われている不法移民の摘発。これまでに2300人以上が逮捕されているといいますが、トランプ氏はその数に不服だそうで、1日1500人を逮捕するよう指示を出したと報じられています。”【1月28日 テレ朝news】

****トランプ大統領の不法移民対策で「教会」「学校」なども摘発対象に…移民多いシカゴで反発広がる****
アメリカのトランプ大統領が不法移民対策で「教会」なども摘発対象と認めていることから、移民の多いイリノイ州シカゴで反発が広がっています。

ICE=移民・関税施行局が重点的に摘発に乗り出すとされるシカゴには、メキシコなどからの不法移民を支援してきたリンカーン・メソジスト教会があります。

トランプ大統領は、これまで摘発対象外とされていた「教会」や「学校」などについても一転、摘発対象にできるとしました。

教会のエマ・ロサーノ牧師は撤回を求めています。
「教会は人々が神を崇拝するために集まる場所です。学校は子供たちが学び、病院は病気になったら行く場所です。特に教会は怖がる場所になってはならないのに、この判断は非常に残念です。この過ちは撤回すべきです。」摘発から不法移民の信者を守るため、ここ4回は「バーチャル」で礼拝に参加できるようにしているといいます。」

ロサーノ牧師はまた、「彼らはアメリカの文化や経済に貢献してきました。いきなり何百万人も強制退去させることは労働力を失うことになり、国力を弱めます」と指摘しました。

こうした中、トランプ大統領は「不法移民が違法薬物を持ち込んでいる」と取り締まり強化の根拠にする一方で、違法薬物の売買などに使われた闇サイト「シルクロード」の創設者で、終身刑を受け、服役していたロス・ウルブリヒト氏に恩赦を与えました。

これについてロサーノ牧師は「私は牧師ですが、事実は事実として言わなければなりません」とした上で、「非常に偽善的です。そういう犯罪者に恩赦を与える一方で、罪を犯していない者を摘発対象にするなんて」と非難しました。(後略)【1月23日 FNNプライムオンライン】
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アメリカ国内では混乱も報告されています。
“(移民に寛容的とされる「聖域都市」のひとつニュージャージー州ニューアークの)ラス・バラカ市長は、ICEの捜査官が令状を提示せず不法滞在者と市民も拘束したと非難した。拘束者の中には、軍の文書の正当性を疑われた退役軍人もいたという。”【1月24日 ロイター】

“不法移民の一斉検挙で、先住民のナバホ族らが誤って拘束される事例が報告されている。先住民は一般的な身分証を持たないケースがあるほか、肌の色など身体的特徴から中南米系と混同されやすい。”【1月28日 時事】

家族離散など懸念される国内の混乱が拡大するのは今後でしょう。長期的には労働力の逼迫、物価上昇への悪影響なども。

それらについては後日別機会に取り上げるとして、今回は強制送還される不法移民の受入国とアメリカの間の問題。

【「見せしめ」として狙い撃ちにされたコロンビア トランプ大統領の「脅迫外交」が奏功】
南米などの受入国側は今回のトランプ大統領の措置に不満を抱えていますが、受入れを拒めば高い関税を課すというトランプ大統領の「脅迫外交」とも言える強い姿勢に従わざるを得ないという状況です。

南米コロンビアも一時は報復関税で対抗する姿勢も見せましたが、結局アメリカ側の要求をのむ形で結着しています。

不満はメキシコやブラジルからも上がっていますが、先ずは“親米路線から(左派政権に)転換したコロンビアを「見せしめ」として狙い撃ちにした。”とも。

****トランプ氏の「脅迫外交」が奏功 コロンビアが最初の「標的」に****
トランプ米大統領は26日、南米コロンビアが軍用機による不法移民の強制送還を拒否したとして、25%の制裁関税を課すと表明した。

約9時間後にコロンビアが送還の無条件受け入れに同意したと発表して撤回したが、トランプ氏は他国にも関税引き上げを武器とした「脅迫外交」で譲歩を迫る構えで、貿易戦争の激化も懸念されている。

「緊急的に断固とした報復措置をとるよう指示した」。トランプ氏は26日、自身のソーシャルメディアへの投稿で、突如としてコロンビアに制裁関税を課すと表明した。米国に不法滞在していたコロンビア人を乗せた米軍機の着陸を拒んだというのが理由だった。

トランプ氏は当面の措置として、コロンビアからの全ての輸入品に25%の緊急関税▽1週間後に関税を50%に引き上げ▽コロンビア政府当局者に対する入国禁止とビザ(査証)取り消し▽コロンビア人や貨物の入国審査・税関手続き強化――を列挙。「こうした措置は始まりに過ぎない」と強硬姿勢を見せた。

ロイター通信によると、コロンビアのペトロ大統領もX(ツイッター)への投稿で、米軍機を使った送還措置について「コロンビアからの移民を犯罪者のように扱うべきではない」と批判。対抗措置として米国製品に25%の輸入関税をかける方針を明かし、「貿易戦争」に発展する構図になりかけた。

しかし、トランプ氏の当初の投稿から約9時間後、ホワイトハウスは声明で「コロンビア政府が軍用機による送還も含め、米国から送還するコロンビア人の不法移民を制限なく受け入れることに同意した」として制裁関税の見送りを表明。

ビザ規制や税関手続きの強化は、航空機によるコロンビア人の強制送還が再開された後に解除するとした。ただし、コロンビアが合意に反した場合、制裁関税の導入も示唆した。

ロイターによると、コロンビアの外相も「米国との難局は克服された」と述べ、コロンビア人の輸送のために大統領専用機を派遣する用意があるとした。

トランプ政権は20日の発足直後に不法移民の大規模な国外追放に着手した。通常使う民間機に加え、米軍機も投入して移送を進めていたが、中南米諸国からは不満も出ていた。

ロイターによると、メキシコも米軍機の着陸を拒否。米国への移民希望者に、亡命申請手続きが終わるまでメキシコにとどまるよう求める政策にも不満を示した。ブラジルも送還された自国民が手錠をかけられるなど「恥ずべき扱いを受けた」と非難していた。

これに対し、トランプ政権は2022年に左派政権が誕生し、親米路線から転換したコロンビアを「見せしめ」として狙い撃ちにした。

貿易戦争は双方に痛みを伴うが、巨大市場を持つ米国への輸出のハードルが上がるのは各国にとって痛手だ。トランプ政権は脅迫が効いたことについて「米国が再び尊敬されるようになったことを世界に明確に示した」と誇った。

トランプ氏は、不法移民や合成麻薬の米国流入を防ぐための対応が不十分として、2月1日にもカナダとメキシコに25%、中国に10%の追加関税を課す構えを見せている。

日本や欧州連合(EU)などに対しては、多額の貿易赤字を批判。対立国、友好国を問わず高関税政策を導入する考えも示しており、各国との摩擦が懸念されている。【1月27日 毎日】
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メキシコ・シェインバウム大統領はメキシコ以外の他国籍の強制送還者の受け入れには同意していないとしていましたが、こちらもトランプ政権に押し切られた形。コロンビアへの「見せしめ」が奏功したようです。

****メキシコ、他国出身の不法移民も受け入れ トランプ氏「脅迫」で一転****
メキシコのシェインバウム大統領は27日、隣国の米国が国外追放する不法移民に関して、メキシコ人以外も受け入れていると明らかにした。ロイター通信が報じた。

外国人の受け入れには難色を示していたが、トランプ米大統領が26日に制裁関税を振りかざしてコロンビアに不法移民対策への協力をのませたことを受けて、発言のトーンを一転させた。

報道によると、シェインバウム氏はトランプ米政権が発足した20日以降、米国から追放された4000人以上を受け入れたと説明。大多数はメキシコ人だが、第三国の出身者も交じっているという。

トランプ政権は南部からの越境を図る不法移民に関して、亡命申請が承認されるまでメキシコにとどまるよう求める政策をとった。従来は亡命申請の手続き中は、米国内で仮放免されることがあった。

トランプ政権による政策変更に対して、シェインバウム氏は「同意していない」と不満を表明。不法移民を移送する米軍機の着陸を拒否したとも報じられていた。

トランプ氏は不法移民や合成麻薬の密輸に関するメキシコの対応に不満を表し、2月1日に25%の制裁関税を導入すると脅している。シェインバウム氏は「移民問題などに関して両国間で協議を続けている」としている。【1月28日 毎日】
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ブラジル外務省は不法移民強制送還時の「屈辱的な扱い」について、アメリカ上級外交官を呼び出し「協議」【1月28日 ロイター】したとも。

****米国防総省、不法移民“強制送還”の映像公開 手錠、腰や足にチェーン…ブラジル政府などが抗議****
アメリカ国防総省は27日、不法移民を強制送還させた際の映像を公開しました。移民とみられる人には手錠がかけられ、腰や足はチェーンでつながれていてブラジル政府などが抗議しています。

アメリカ国防総省は27日、不法移民を強制送還した際の映像を公開しました。移民とみられる人々には手錠がかけられ、腰と足にもチェーンが巻かれています。

こうした移民の扱いについてコロンビアのペトロ大統領は「尊厳を持って帰還させるべきだ」と改善を求めたほか、ロイター通信によりますとブラジル政府も「屈辱的な扱い」についてアメリカ側に説明を求める方針だということです。

ブラジルに到着した移民らは、手錠をかけられた状態で帰国し、飛行機の中では身体的虐待やトイレの使用禁止など不当な扱いを受けたと話しているということです。【1月28日 日テレNEWS】
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【長期的には中南米諸国のアメリカ離れ、中国への傾斜を強めることにも】
これまでのところトランプ大統領の圧倒的「力」を背景にした「脅迫外交」が奏功しています。
アメリカ・ホワイトハウス報道官は「今日の出来事はアメリカが再び尊敬される国であることを世界に示し、トランプ大統領はすべての国が不法移民の強制送還に協力することを期待している」と勝ち誇っています。

ただ、これがアメリカにとって国益となるかは別問題。

中南米諸国はこれまでの歴史的経緯からアメリカの「裏庭」での身勝手な力の行使に強い不満を持っています。また、近年は中国との関係を強化しています。

今回のような「脅迫外交」は中南米諸国を更にアメリカから遠ざけ、中国との関係強化に向かわせることも考えられます。

****【トランプ“強硬”外交が南米の中国寄り転換に】着実に低下する「存在感」、アメリカは鞭でなくニンジンを与えられるか****
米外交問題評議会ラテンアメリカ研究フェローのウィル・フリーマンが、1月3日付けフィナンシャル・タイムズ紙掲載の論説‘A new Monroe doctrine is unlikely to work for the US in South America’で、「トランプは、『モンロー・ドクトリン』(米国は地政学的な敵対勢力を西半球から締め出すという考え方)を繰り返し述べているが、米国は、中米諸国およびカリブ諸国には影響力を維持しているものの、今や南米の主要諸国にとって最大の貿易相手国、主要投資国は中国であり、米国が強硬策を取れば、一層中国寄りになる可能性がある」と警告している。要旨は次の通り。

トランプは、ラテンアメリカで増大する中国の影響力を後退させたいと考えている。そのためには強硬手段も辞さないだろう。

しかし、圧力をかけて、ラテンアメリカ全体が同じような反応を示すことはない。イデオロギーよりも地理により分断され、北半分は米国との結びつきが強いが、南半分は圧力が強まれば中国に傾く可能性があることに備えておく必要がある。

多くの人は、「米国が中国に対抗するためには、『鞭』ではなく、米国市場へのアクセス拡大やより豊富な開発資金といった『ニンジン』が必要」と考えている。彼らは正しい。

米国の影響力はこの地域に均等に及んでいるわけではない。メキシコ、中米、カリブ海諸国では、米国は依然として強みを有している。例えば、メキシコの輸出の80%は米国向けである。

しかし、南米に目を向ければ、状況は一変する。中国は南米大陸の最大の貿易相手国であり、ラテンアメリカ諸国のうち中国に最も債務を負っている国は5カ国ある。5カ国の内4カ国は南米にあり、中国の直接投資を最も多く受け入れている。南米の指導者たちは、米国に簡単におだてられ、丸め込まれるわけではない。

南米の主要経済国は、米中どちらかの側を選ぶことに抵抗するだろう。圧力が強まっても、彼らが中国から距離を置くとは考えにくい。米国の圧力が裏目に出て、南米がさらに東方に振れれば、太平洋における安全保障、重要な鉱物やレアアースのサプライチェーンなどに影響が及ぶだろう。

米国からの最大援助受け取り国の一つであったコロンビアは、圧力が裏目に出る危険性が最も高い国である。左派ペトロ大統領は、「一帯一路」やBRICS銀行へコロンビアを参加させると期待されている。任期はあと2年あり、内部制約もほとんどないがゆえに、米国からの強い圧力に反応して、ペトロの中国傾斜がさらに進み、米国は最も近い地域の同盟国を失う可能性がある。

トランプと共和党の指導者たちは、「モンロー・ドクトリン」(米国は地政学的な敵対勢力を西半球から締め出すという考え方)について繰り返し語ってきた。しかし中国は、「ドクトリン」の最後のターゲットであったソ連とは違う。特に、南米における中国の存在感は、ソ連よりもはるかに大きい。

中国は別の意味でもソ連とは異なる。中国は戦略的優位性に焦点を当て、体制にとらわれず、誰とでも喜んで協力する。「彼らは何も要求しない」とアルゼンチンのミレイ大統領は中国について、好意的に語っている。

ラテンアメリカにとって最も深刻なリスクは、米国が対中競争に勝利するために見当違いの努力をして、中国と同じ態度をとることである。つまり中国に熱烈に対抗し、民主主義や「法の支配」はどうでもよくなることである。

トランプは、彼が計画している強硬策がうまくいくかどうか、そしてそれが裏目に出る可能性について心配すべきである。
*   *   *
ラテンアメリカ政策を強化するトランプ
論説が指摘するように、米国は、政治経済両面で「裏庭」と言われた中南米地域に、30年以上の間、十分な時間もエネルギーも注力してこなかった結果、その「存在感」は低下している。

この間、中国は南米諸国(特にブラジル、チリ、アルゼンチン、ペルー、ウルグアイ等の資源・食料輸出国)との関係強化に努め、中国への経済依存度を高めてきた。

また、中国は、政治的スタンスを差別せず、キューバやベネズエラ、ニカラグアのような「権威主義的国家」や人権侵害で国際的に非難されている国とも「絆」を強化してきている。

さらに、2017年以降、パナマ、ドミニカ共和国、エルサルバドル、ニカラグア、ホンジュラスの中米・カリブ海5カ国は、台湾との外交関係を絶ち、中国との国交樹立を選んだ。中国とラテンアメリカ諸国は、「共存の時代」に入っているとも言える。

トランプ大統領は「モンロー主義」に言及し、国務長官にキューバ系のマルコ・ルビオ上院議員を指名する等、ラテンアメリカ政策を強化すると予想されている。実際、ルビオ氏は、左派への潮流(ブラジル、メキシコ、コロンビア等)に対抗するため、保守的な指導者達(アルゼンチン、パラグアイ、エクアドル、エルサルバドル、コスタリカ、ガイアナ等)との連合を提唱している。

その一方で、プーチンや金正恩のような独裁者に対するトランプの「友好的姿勢」は、ワシントンの道徳的権威を損なうかもしれないし、ベネズエラやキューバの独裁者への支援を正当化するための口実を、メキシコのような国々に提供することが懸念される。

さらに、論説が指摘しているように「米国が中国に対抗するためには、『鞭』だけではなくではなく、米国市場へのアクセス拡大やより豊富な開発資金といった『ニンジン』が必要」であるが、何を具体的に提供できるかは、市場経済の米国にとって容易でない課題であろう。

中国は「信頼」されているのか
中南米における中国の今後の影響力に関連して、2点指摘しておきたい。
 第一に、昨年より一層顕著になりつつある中国の経済的困難と社会不安の増大、トランプ就任後の米中貿易争い激化に起因する「外需減少」が及ぼす中国国内経済への影響、大豆やトウモロコシの国内生産増と「輸入減」は、中長期的に中南米諸国における中国の存在感低下につながると思われる。

第二は、日本の外務省が23年11月~12月にかけて、アルゼンチン、ブラジル、コロンビア、メキシコ、ボリビア、ウルグアイ、トリニダードトバゴで実施したアンケート調査(18~65歳、各国300~400人)の結果である。「現在重要なパートナーはどこか」との質問に対し、ウルグアイおよびボリビアでは、中国が米国より重要と答えた人が多かった。他の国においては、米国重視の人が多数であったものの、中国をあげる人も多くいた。

それと比較し、「もっとも信頼できる国はどこか(一つ選ぶ)」との質問に対しては、全ての国で米国が圧倒的に一番であり、中国は10%台ないし一桁台であった。中国は多くの国において経済的存在感は増したが、国としての「信頼」を勝ち得ていないことは明白である。【1月28日 WEDGE】
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【トランプ大統領の「アメリカ第一主義」は米外交基本のモンロー主義への回帰】
モンロー主義は「アメリカはヨーロッパ諸国に干渉しないが、同時にアメリカ大陸全域に対するヨーロッパ諸国の干渉にも反対する」という思想で、アメリカ外交の基本路線であった孤立主義を示すものですが、アメリカ勢力圏のアメリカ大陸においてはアメリカの意に沿わない国々への武力行使も是認する「棍棒主義」の側面も。

長らくアメリカは1823年のモンロー大統領以来の「モンロー主義」を基本としていましたが、第一次大戦後の国際連盟、第二大戦後の国際連合設立、その後の「世界の警察官」といった形で「モンロー主義」から決別することに。

しかし今はトランプ大統領の「アメリカ第一主義」・・・トランプ大統領の異質性をのぞけば、伝統的「モンロー主義」への回帰とも理解できます。

なお中国は、“中国は27日、トランプ米大統領が米国からの移民送還に非協力的な国に関税や制裁を科すと警告したことを受け、中国の国籍を持つと確認された者について米国からの送還に応じる意向を示した。”【1月28日 ロイター】と、今はトランプ大統領との無用の争いは避ける構えです。
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アメリカ  トランプ大統領のパリ協定再離脱 同盟国の脱炭素にも横ヤリ 米国内石油・ガス業界は反対

2025-01-23 22:58:06 | アメリカ

(【1月21日 NHK】)

【パリ協定再離脱 「掘って掘って掘りまくれ」】
予想されていたことではありますが、トランプ大統領は就任と同時に地球温暖化の国際枠組み「パリ協定」から再び離脱する大統領令に署名し、また、就任演説では「国家エネルギー緊急事態を宣言する」と述べ、「掘って掘って、掘りまくれ」と化石燃料の生産を推進する意向を示しました。

****トランプ政権、パリ協定再離脱を表明 風力発電向け土地貸与も禁止へ****
米トランプ政権は20日、地球温暖化の国際枠組み「パリ協定」から再び離脱すると表明した。トランプ大統領の就任直後にホワイトハウスが発表した。

「バイデン政権の急進的な気候変動政策を終わらせる」とし、化石燃料や鉱物などの開発をめぐる規制緩和を進める。また、風力発電のために連邦政府が管理する土地の貸与を停止する。世界一の経済大国で脱炭素推進に大きなブレーキがかかりそうだ。

トランプ氏は就任演説で「国家エネルギー緊急事態」を宣言。石油や天然ガスの増産を通じて、エネルギー価格を大幅に引き下げ、物価上昇(インフレ)を抑える考えを示した。

暗に批判の声も
パリ協定は、世界の平均気温の上昇を2度より十分低く、できれば1・5度に抑える目標を掲げ、すべての参加国に温室効果ガスの排出削減を求める。トランプ氏は政権1期目にも「米国にとって不利」だとしてパリ協定を離脱し、バイデン前大統領が就任初日に復帰した経緯がある。

国連気候変動枠組み条約のスティル事務局長は声明で、クリーンエネルギーへの投資は世界各国で急成長し、大きな利益や雇用をもたらしていると強調。「これを無視すれば、莫大な富が競合国経済に流れるだけだ」として、気候変動対策に背を向ける米国の再離脱を暗に非難した。

世界気象機関(WMO)によると、2024年の世界平均気温は観測史上最も暑く、産業革命前の水準と比べて1・55度上回った。【1月21日 毎日】
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****トランプ大統領「掘って掘って掘りまくれ」…「エネルギー緊急事態」を宣言、化石燃料増産へ****
米国のトランプ大統領は20日、温暖化対策の国際的枠組み「パリ協定」から再び離脱する内容の大統領令に署名した。就任演説では「国家エネルギー緊急事態を宣言する」と述べ、再生可能エネルギーの導入に前向きだったバイデン前政権の政策を転換し、化石燃料の生産を推進する意向を示した。(中略)

トランプ氏は、石油や天然ガスなど化石燃料の増産によってエネルギー価格を引き下げ、インフレ(物価上昇)の抑制につなげる狙いだ。演説では「インフレの危機は、過剰な支出とエネルギー価格の高騰によって引き起こされた」との見方を示し、「(化石燃料を)掘って掘って、掘りまくれ」と呼びかけた。

演説では、バイデン前政権が気候変動対策の一環として進めた電気自動車(EV)の普及策の撤回を表明した。トランプ氏は「(環境分野に大規模投資する)グリーン・ニューディール政策は終了し、EVの義務化は取り消される。自動車産業を救う」と主張した。【1月21日 読売】
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【日本など同盟国にも米国産石油・ガスの購入を求める動き 欧州に対して「買わなければ関税」】
「掘って掘って、掘りまくった」石油・ガスで国内インフレを抑制し、更にその石油・ガスを同盟国に供給することでロシア・中国に対抗する「エネルギー・ドミナンス(支配)」戦略とのことのようですが・・・

****トランプ大統領「再エネ」撤回、石破政権に〝踏み絵〟か すでに他国の「脱炭素」に横ヤリ 化石燃料を同盟国に供給し中露に対抗****
(中略)トランプ氏はすでに他国の脱炭素政策にも横ヤリを入れている。再エネの導入や二酸化炭素(CO2)削減に意欲を示す石破茂政権も政策変更を突き付けられる恐れもある。
トランプ氏は大統領就任演説で「米国はどの国よりも大量の石油と天然ガスを持っている。ドリル・ベイビー・ドリル(資源を掘りまくる)」と強調した。

エネルギー非常事態宣言で、国家・経済安全保障のために、西海岸や北東部、アラスカでのエネルギー供給などの促進に利用可能な全ての合法的な緊急権限を使用するとした。

同日に署名した大統領令では、連邦政府の管理下にある大西洋や太平洋などの海域で原油や天然ガスの新たな掘削を禁止した前政権の覚書も取り下げた。

トランプ政権は次期エネルギー長官に石油や天然ガスの採掘会社を経営するクリス・ライト氏を起用した。化石燃料の増産を主導する役割を担うとみられている。

エネルギー政策に詳しいキヤノングローバル戦略研究所の杉山大志研究主幹は「トランプ氏は1期目は必ずしも思い通りにできず、閣僚にも反対する人がいた。2期目は次を考える必要もないので、やりたいことをやるだろう」とみる。

また、電気自動車(EV)普及策を撤回し「自動車産業を救う」とも主張した。「数年前には夢にも思わなかったペースで、再び米国で自動車を生産する」と話した。豊富な資源を後ろ盾に競争力を高めて「再び製造業の国になる」とも語った。

トランプ政権のエネルギー政策をめぐっては、安価で安定したエネルギー供給によって敵対国に対する優勢を築く「エネルギー・ドミナンス(支配)」戦略を打ち出している。

杉山氏は「化石燃料を掘削し同盟国に供給することで、米国経済も発展し、ロシア、中国に負けないようにするという狙いだろう。原子力も推進するはずだ。トランプ氏は再エネがあまり好きではなく、風力もコストが高くなるため嫌っている。EVに関しても、国家レベルでの補助金を大幅に削減する方向性になる」と予測する。

バイデン政権時に復帰した気候変動対策の国際枠組み「パリ協定」を再び離脱する大統領令にも署名したが、さらに踏み込んでくる可能性があるという。

杉山氏は「パリ協定の元になる国連気候変動枠組み条約自体から離脱し、二度と戻れなくする可能性もある。仮に次の政権が民主党になっても、条約への復帰は共和党が多数を占める議会の承認が必要となる」と語る。一度条約から離脱すると復帰は難しいというわけだ。

問題は日本だ。菅義偉政権以来のグリーントランスフォーメーション(GX)政策は岐路に立たされる。
石破首相は6日の年頭記者会見で、再エネや原子力など「脱炭素電源」に言及し、「『地方創生2・0』の重要な柱」と明言した。原子力はともかく、再エネについてはトランプ路線と逆方向だ。

杉山大志氏「安全保障で日本にメリットも」
杉山氏は「トランプ氏は日本に政策転換を求めてくるかもしれない。日本側は、米国に油田の掘削や炭鉱の投資など官民一体で取り組むと告げるのも一手だろう。先進7カ国(G7)で米国が孤立しないよう歩調を合わせたり、再エネの大量導入や、CO2排出量取引制度、再エネ賦課金をやめることもできなくはない」と強調する。

トランプ氏はX(旧ツイッター)で英政府に北海の石油・ガス田を「開放」し、風力発電施設を撤去するよう要求するなど海外のエネルギー政策にも干渉している。

日本にも要求を突き付けてくる可能性があるが、必ずしも悪いことばかりではないようだ。
杉山氏は「石油やシェールガス、石炭などを購入するよう日本に求めてくるだろう。米国が化石燃料を世界に供給することで、資源国のロシアを締め付ける効果も見込まれる。中東に依存する日本にとっては安定供給になるし、『台湾有事』の際に中国が日本のシーレーン(海上交通路)を封鎖しようとしても、米国の船舶なら攻撃できない。安全保障の観点からもメリットになる」と指摘した。【1月22日 夕刊フジ】
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トランプ政権の脱“脱炭素”が世界の地球温暖化対策の足を引っ張るという本筋の問題はいったん棚に置くにしても、“石油・ガスを同盟国に供給し・・・”ということの現実は“無理やり買わせる”に近いもので、日本を含む同盟国のエネルギー政策の転換を求めるという類のものです。

実際に欧州に対しては「なぜアメリカの石油・ガスを買わないのだ!買わなきゃ関税をかけるぞ!」との対応を示しています。

****トランプ氏 EUに“米の石油天然ガス購入しなければ 関税課す”****
アメリカのトランプ次期大統領は、EU=ヨーロッパ連合に対して、アメリカ産の石油と天然ガスを大量に購入しなければ、輸入品に関税を課す考えを示しました。トランプ氏は、アメリカのEUに対する貿易赤字を問題視してきていて、来月、大統領に就任するのを前に、EUに圧力をかけました。

アメリカのトランプ次期大統領は20日、SNSへの投稿で「EUに対して、われわれの石油と天然ガスを大量に購入することでアメリカとの巨額の貿易赤字を解消するよう伝えた」と明らかにしました。

そのうえで、EUが応じなければ「ずっと関税を課す」として、アメリカ産の石油などを大量に購入しなければ、EUからの輸入品に関税を課す考えを示しました。

トランプ氏はこれまで、アメリカのEUに対する貿易赤字を問題視してきていて、来月、大統領に就任するのを前に、EUに対して赤字削減に向けて圧力をかけました。

EUのフォンデアライエン委員長は、先月、トランプ氏と電話で会談し、ロシアから輸入しているLNG=液化天然ガスをアメリカ産に切り替えることを検討する考えを示していました。

今回の投稿は、トランプ氏がアメリカのエネルギー資源を武器に、各国に貿易赤字の削減を迫る考えがあることを、改めて明確にしています。【1月21日 NHK】
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トランプ大統領の「守ってやるからカネを出せ」という考えは、価値観の絆で結ばれた同盟国というより“用心棒”の発想に近いと以前から思っていましたが、更に「アメリカの石油・ガスを買え!さもないと・・・」と迫る様は、みかじめ料をとってる飲食店に自分のところが卸すおしぼりの購入を迫る暴力団のやり口のようにも見えます。要するに「アメリカ第一」に他の国も従えということのようですが、どうして?

もっとも、トランプ大統領の施策にもかかわらず、当面はバイデン政権時代の措置によってアメリカの温室効果ガス排出量は抑制されるようです。

ただ、アメリカが今後の世界の気候変動問題対策を牽引することは出来ませんので、その役割を果たすのは・・・中国でしょうか?

****トランプ政権でも温室効果ガスは減少へ―気候変動問題、米のパリ協定離脱で中国はどう動く?****
(中略)これまで多国間での温暖化対策を主導していた米国の退場に伴い、世界最大の温室効果ガス排出国である中国にリード役を期待する声も出ているようだが、果たして…。

バイデン政権の遺産が効果発揮
世界最大の経済大国である米国は、温室効果ガスの排出量も中国に次いで世界第2位。トランプ氏は「(石油や天然ガスを)掘って掘って掘りまくれ!」と檄を飛ばすなど化石燃料を積極活用する姿勢を見せており、パリ協定離脱と相まって米国の排出量が増加に転じるのではないかと不安視されている。

ただ、上野貴弘著「グリーン戦争」(2024年中公新書)などによると、前政権の遺産というべき「インフレ抑制法(IRA)」の効果で、温室効果ガスの減少傾向は維持される見通しだ。

IRAは、名称だけ見れば気候変動対策とは無縁の経済政策のようだが、実際はインフレを抑制しつつ再生エネルギーや電気自動車(EV)などの脱炭素技術を減税により後押しする制度。バイデン前政権は2050年までに温室効果ガスのネットゼロ排出を達成するとの目標を掲げたが、IRAがその実現に向けた政策の柱となる。

前政権の政策を180度転換しようとしているトランプ氏が、IRAの廃止または修正に動く可能性はある。しかし同書によると、IRAの恩恵を受けているのは、バイデン氏の民主党ではなく、与党共和党が強い地域が多いという。

連邦議会は上院、下院とも共和党が多数派を握っているが、民主党との差はわずか。このため、トランプ政権がIRAの廃止をもくろんだとしても、共和党から造反者が出て、阻止される可能性が高い。

また、米国の地方政府・議会や民間企業、NGOなどの間には、連邦政府の意向にかかわらず、パリ協定の精神を尊重して行動しようとするグループがあり、彼らは政権交代後も温暖化対策を強力に推進する方針を表明している。こうしたことから、ペースは落ちるかもしれないが、米国の温室効果ガス削減の流れは今後も続くと予想される。

国際的なけん引役不在に
ただ政権交代により、気候変動対策における米国の国際的なリーダーシップが大幅に後退、もしくは事実上消滅する可能性がある。

バイデン政権は発足3カ月後の2021年4月に気候変動サミットを開催し、それに合わせて各国がこれまでより踏み込んだ削減目標を提示した。米国が気候変動対策のけん引役を担った格好だ。しかしトランプ政権には、そうした対応はまず期待できないだろう。

では、誰がけん引役を務めるのか。このほど日本記者クラブで記者会見した地球環境戦略研究機関の田村堅太郎上席研究員は、欧州連合(EU)と英国は「(リーダーシップをとる)意欲はあるものの、力不足」と指摘。そうなると、中国に注目が集まる。

なにしろ中国の二酸化炭素排出量は全世界の32.0%を占め、米国の13.7%を大きく上回って断トツの首位(2021年実績)。1人当たり排出量も年間7.5トンで、日本やドイツとほぼ同水準だ。もはや、ある時は超大国として傲慢にふるまい、ある時は開発途上国の一員として先進国より甘い削減目標を要求するような使い分けは許されず、最大の排出国として責任ある行動が求められる。

しかし田村氏は、「中国が開発途上国をクリーンエネルギーの導入で支援する、いわば『クリーン一帯一路』に乗り出す可能性はある」としながらも、他国に削減目標の引き上げを働きかけるようなことはしないのではないかと予測。

米国がパリ協定から抜けた後の多国間の取り組みは、けん引役不在の状況下、多元的で多様な主体が参加する「多中心的なガバナンス」で推進されるとの見通しを示した。(後略)【1月22日 レコードチャイナ】
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中国が実際にどこまで気候変動対策のけん引役を果たす意思があるかは疑問ですが、少なくとも国際会議などの表舞台ではアメリカに代わって中国が世界をリードする姿勢を強め、その存在感が高まるでしょう。

****トランプ氏の「パリ協定離脱」大統領令署名に中国が批判****
アメリカ大統領に就任したトランプ氏がパリ協定を離脱する大統領令に署名したことを受け、中国外務省の報道官は「どの国も独りよがりになることはできない」と批判しました。

中国外務省の報道官は21日、「アメリカがパリ協定から離脱することに中国は懸念を示す」と述べたうえで、「気候変動は全人類が直面する共通の試練であり、どの国も独りよがりになることはできない」と批判しました。(後略)【1月21日 テレ朝news】
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実際、近年の中国の再生可能エネルギー分野における実績、脱炭素の動きは注目に値するものです。

****中国の太陽光・風力発電の新規導入容量、24年も記録更新****
中国国家能源局が21日発表した統計によると、2024年は国内に新たに設置された風力および太陽光発電設備容量が23年に続き、過去最高を更新した。中国は30年までに炭素排出量のピークアウトを目指している。

24年の太陽光・風力発電設備の新規導入容量はそれぞれ45.2%と18%増加。太陽光の容量は現在、886.67ギガワットになった。

トランプ米大統領が2度目のパリ協定離脱を発表する中、中国は7月に30年の目標を6年前倒しで達成したことになり、クリーンエネルギーへの移行の速さが目立った。(中略)

環境保護団体グリーンピースのアナリストらは、25年には再生可能エネルギーが中国の新規電力需要を全て満たす可能性があると予想。北京に拠点を置くグリーンピース・東アジア支部のプロジェクトリーダーは「中国の電力業界に25年までに排出量のピークアウトを達成する道が開かれる」と述べた。【1月22日 ロイター】
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【意外にも、アメリカ国内の石油・ガス業界はパリ協定再離脱に反対】
トランプ大統領のパリ協定再離脱「掘って掘って掘りまくれ」は国際的には懸念されるものであっても、国内石油・ガス業界は大喜びだろう・・・と考えていたのですが、そうでもないようです。

*****パリ協定再離脱、米石油・ガス業界は反対 トランプ政権と異例の不協和音****
米国が気候変動対策の国際的枠組み「パリ協定」から再離脱することを巡り、国内の石油・ガス業界が反対の声を上げている。

トランプ大統領は就任初日にパリ協定の再離脱を指示する大統領令に署名し、パリ協定を中国との競争で米国を不利な立場に追いやる取り決めだと切り捨てた。

しかし石油・ガス業界からは、再離脱によって投資計画にマイナスの影響が出るなどの異論が噴出。これまで最も有力な支持基盤とみなされてきた同業界とトランプ政権の間で異例の不協和音が醸し出されている。

ロイターが取材した業界幹部の話では、大手石油各社は再離脱について、世界的なエネルギー移行の動きに対する米国の影響力を限定してしまうほか、業界が米国と他の地域で整合性の取れない規制環境に置かれかねないとの懸念を持っているようだ。

米商工会議所傘下のエネルギー業界団体トップ、マーティー・ダービン氏は、加盟企業はトランプ氏がパリ協定にとどまるのを望んでいると明かした上で「民間セクターは気候問題を解決しながら世界経済を成長させるためのエネルギー需要を満たすのに必要な解決策を打ち出すことを強く決意している」と述べた。

エクソンモービルやシェブロンが加盟する米国石油協会(API)の広報担当者は、APIとしてはパリ協定の目標をずっと支持してきたと説明した。

エクソンをはじめとする大手石油各社は現在、新たな石油・ガス探査方針を決めつつも、グリーン水素や二酸化炭素貯留・回収といった気候変動対応の技術に長期的な投資を計画しているところだ。

独立系掘削事業者の団体AXPCのアンヌ・ブラッドベリー最高経営責任者(CEO)は「いかなる気候変動対策に関する話し合いも本質的に世界全体でなければならず、米国はエネルギー生産と排出量削減の両面で世界のリーダーと認識するのが大事だ」と訴えた。【1月23日 ロイター】
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すでに世界が脱炭素の流れにあり、企業もその流れに適応しようとしているなかで、アメリカだけ「掘って掘って掘りまくれ」と言われても世界の流れから取り残されてしまう、企業としても身動きがとれなくなってしまう・・・という不満のようです。 これは意外でした。
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アメリカ  トランプ新大統領の不法移民「史上最大の強制送還」 広がる不安 世論の支持は高い

2025-01-21 23:16:32 | アメリカ

(【1月16日 NHK】)

【「トランプ劇場」全開 大統領令大量発令】
トランプ大統領は就任初日から支持者の熱狂の中で40本以上の大統領令・覚書に署名しているとのことで、「トランプ劇場」全開の様子は多く報じられているとおり。

****トランプ氏、就任直後から大統領令など40本以上署名 バイデン政権から大幅転換アピール****
トランプ米大統領(共和党)は20日の就任式後、地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」からの再離脱や世界保健機関(WHO)脱退など、40本以上の大統領令や大統領覚書に署名した。

昨年11月の大統領選で訴えてきた公約などを就任初日から実行し、バイデン前政権(民主党)からの大幅な政策転換をアピールした。

パリ協定に関する大統領令は、離脱を国連に通知するよう指示する内容。産業活動を重視するトランプ氏は第1次政権でパリ協定を離脱していたが、環境対策を重視するバイデン前政権が復帰し今回、2度目の離脱を図った。

人工知能(AI)について、リスクを懸念したバイデン前政権が導入した規制を撤回する大統領令も出した。共和党が綱領で掲げていた。

中国系動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」の米国内での利用を実質的に禁止する法律が19日に発効したことに関しては、サービスの禁止を75日間猶予する大統領令に署名した。(中略)

また、米国で生まれた子供に国籍を自動的に与える「出生地主義」制度を見直す大統領令を出した。不法移民対策の一環として以前から主張していた。

バイデン前政権が取り組んだ多様性・公平性・包括性(DEI)に関する政策を撤回する大統領令にも署名し、政策転換を図った。【1月21日 産経】
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他にも、WHO脱退、議会襲撃事件服役囚への恩赦、対外開発援助90日間停止、不法移民「キャッチ・アンド・リリース」の慣行廃止・・・等々。

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トランプ氏はステージの上で、支持者の歓声を浴びながら次々と大統領令に署名する異例の演出を見せました。

司会 「次は気候変動のパリ協定からの離脱です」
トランプ新大統領 「バイデンがこんなことをやると思える?思えないでしょう?」
大統領令に署名したペンをステージから支持者に投げ入れ、会場を沸かせる場面も見られました。

大統領令の発令はホワイトハウスに入ってからも続きました。

トランプ新大統領 「これは?」
スタッフ 「世界保健機関からの脱退です」
トランプ新大統領 「おー、これは大きいね」【1月21日 TBS NEWS DIG】
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【大統領令とは?】
いくらアメリカにおいては大統領権限が強いとは言え、そんなに何でも大統領が勝手に決められるのか? 議会や司法との関係は?

****大統領令とは何か? 覆されることはあるのか、何でも命令できるのか【トランプ2.0】****
<ニュースでよく聞く「大統領令」。なぜ米大統領はこんな命令を出せる?>

(中略)大統領令とは何か? なぜ三権分立制を敷く民主主義国のアメリカで、大統領がそのような命令を出すことができるのか?

大統領令とは、行政の長である大統領が連邦政府機関に対して出す命令のこと。議会における法律制定のプロセスを経ずに、法律と同等の法的拘束力を持つ直接的な指示を出せる。

一般には議会が制定した法律の範囲内でその執行を指示するのが大統領令だが、現実には議会の意図に反するものも多い。議会の承認を必要とせず、大統領の独断で迅速に発効させることができるため、新政権の政策を方向付けるべく、就任直後に出されることがある。

なんでも命令できる?
もちろん、「どんな命令でもOK」というわけではない。憲法や議会が制定した法律に反する場合、無効となる場合もある。議会が大統領令を無効とする新たな法律を定めたり、最高裁判所が違憲判決を出したりする仕組みも用意されている。

また、新政権が前政権の大統領令を覆すことも頻繁に行われている。(中略)

いつ始まった?
大統領令を初めて出したのは、実は初代大統領ジョージ・ワシントン(任期1789~1797年)だ。ただし、当初は明確に文書化されたものではなかったとされる。

1900年代に入って、国務省が大統領令に通し番号を振るようになった。その際、エイブラハム・リンカーン(任期1861~1865年)まで遡って番号が付けられた。

大統領令の有名な例としては、リンカーンの奴隷解放宣言(1863年)、第2次大戦中に日系アメリカ人を強制収容所に送ったフランクリン・D・ルーズベルトの大統領令9066号(1942年)などがある。現在はその数、1万4000近い。(後略)【1月20日 Newsweek】
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【トランプ2.0の目玉施策 不法移民「史上最大の強制送還」】
トランプ2.0の目玉施策として各国が注目する関税については、就任演説では「アメリカ国民を富ませるために外国に関税をかけ、課税する」と述べるにとどめ具体的な言及はなかったようです。
カナダやメキシコ、中国やその他の国々の様子を見ながら。有利な「ディール」に持ち込む構えでしょう。

トランプ新大統領が打ち出した施策はどれも人々の生活に大きな影響をもたらすものばかりですが、なかでも移民対策は関税と並ぶもう一つの目玉施策で、アメリカに1100万人とも2000万人以上いるともされる不法移民にとっては国外退去など生活を根底から覆すものとなります。

トランプ新大統領は、不法移民政策でメキシコ国境に非常事態宣言を出しました。新たな流入を防ぐと同時に、すでに国内に存在する不法移民の大量強制送還を実施する構えです。

****強制送還「何百万人も送り返す」 米政権、入国手続き打ち切り****
トランプ米大統領は20日、強硬な不法移民対策を相次ぎ発表した。不法移民の入国阻止に乗り出すと表明し、目玉となる大規模強制送還については「何百万人もの外国人犯罪者を送り返す」と主張。

メキシコ北部ではバイデン前政権下で導入された制度に基づいて米入国を目指していた人々が、政権交代した途端に手続きを打ち切られ、絶望が広がった。

トランプ氏は演説で「不法入国した危険な犯罪者」がこれまで政府の政策によって保護されてきたと強調。米国に難民申請する人々をメキシコに待機させる政策を復活させ、不法移民を拘束後に裁判手続きまで釈放する「キャッチ・アンド・リリース」の慣行を廃止する大統領令に署名した。

メキシコから米国を目指す人々の多くは前政権下の制度に基づき、難民申請のための手続きを入国前に申し込んで待機していた。この制度は20日、トランプ氏の大統領令を根拠に打ち切られた。手続きの進展を待っていたホンジュラス人のカルロス・エルナンデスさん(21)は「言葉がない」。涙を流す女性もいた。【1月21日 共同】
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ただ、「人々は危険なルートを選んででも入国をするようになる。砂漠や危険な場所を通ったとしても安全を求めてアメリカに来ようとする」(移民支援ボランティア)【1月21日 FNNプライムオンライン】
“しびれを切らした移民希望者が、不法入国のアテンド役“コヨーテ”に頼る可能性がかなり増えてきそうです。実際、大統領選挙の後、依頼料は高騰しているということです。”【1月21日 テレ朝news】といったことも。

****トランプ氏、不法移民対策で軍動員 「史上最大の送還作戦」開始―米新政権****
トランプ米大統領は20日の就任直後から、不法移民対策に着手した。対メキシコ国境に国家非常事態を宣言し、軍の動員も決定。昨年の大統領選で最優先課題に掲げた不法移民の排除に向け、いくつもの大統領令で「米史上最大の強制送還作戦」をスタートさせた。

「政府は外国の国境を守るために際限なく資金を投じながら、米国の国境とさらに重要な自国民を守ろうとしなかった」。トランプ氏は就任演説で、ロシアの侵攻を受けるウクライナに多額の支援を行いながら、不法移民の流入を許したバイデン前大統領を声高に非難した。

その上で、不法入国を食い止め取り締まりを強化するため、軍を国境近くに配置すると表明。さらに、亡命や難民を申請する移民を審査終了まで米国内に滞在させる政策を廃止し、メキシコ側にとどめるとも述べた。

政権1期目で進めた「国境の壁」建設を再開する意向も示した。南米ベネズエラで誕生し、西部コロラド州などで犯罪に関与するギャング組織「トレン・デ・アラグア」や麻薬カルテルなどを「外国テロ組織」に指定することも決めた。

また、1798年制定の「敵性外国人法」を適用し、罪を犯した不法移民を強制退去させる計画。米国の市民や法執行機関当局者を殺害した不法移民に対し、死刑を求めることも司法省に指示した。

米国で生まれた子供へ自動的に米国籍を与える出生地主義を見直す大統領令に署名し、不法移民の子供に「米国民」としての地位を認めない姿勢も示した。ただ、出生地主義は合衆国憲法に明記されており、訴訟の対象となる可能性がある。【1月21日 時事】
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強制送還の実施は、進歩的な都市として知られるシカゴを皮切りに、ボストン、マイアミ、ニューヨークの名が挙がっている

****トランプ氏不法移民「史上最大の強制送還」進歩的シカゴ標的と米紙報道 国境非常事態宣言****
(中略)
「聖域都市」を標的
(中略)米ウォールストリート・ジャーナルは17日、トランプ氏が就任翌日の21日にもシカゴで大規模な不法移民取り締まりを始める計画だと報じた。同紙によると、移民・税関捜査局(ICE)がシカゴへ捜査官100〜200人を送り、1週間ほどかけて不法移民を摘発する。

シカゴは移民に寛容な政策を行う「聖域都市」の一つとされ、同紙は、トランプ陣営とシカゴのジョンソン市長が敵対していることが、取り締まりをシカゴから始める背景にあると解説した。

同紙は19日にも「進歩的なシカゴはトランプ氏の長年の標的」との見出しで続報を掲載した。シカゴのほか、摘発対象の都市としてボストン、マイアミ、ニューヨークの名を挙げた。

南部国境は「戦場」
一方、不法移民の「国境の壁」の建設が進むメキシコとの南部国境を巡っては、次期政権の国土安全保障長官候補のノーム・サウスダコタ州知事が17日、上院委員会の公聴会で犯罪歴がある不法移民の摘発と強制送還に「即座に取り組む」と証言した。南部国境を「戦場」と表現し、国境警備を強化すると言及している。(後略)【1月20日 産経】
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【関係住民に広がる不安と緊張 家族がバラバラに】
シカゴから・・・という話については、情報がリークされたことで、再検討しているという報道も。
関係する住民の間では不安と緊張が広がっています。

****“史上最大の強制送還”掲げるトランプ次期大統領におびえる移民たち「家族がバラバラになってしまう」【現場から、】****
まもなく政権に返り咲くトランプ氏ですが、不法移民の強制送還を最重要公約の1つとして掲げています。移民たちは「家族がバラバラになってしまう」とおびえています。

目の前で父親が拘束され、当時13歳だった娘が泣き声をあげています。父親は不法移民でした。これは2017年、第1次トランプ政権が誕生した直後に撮影された映像です。

アメリカ トランプ次期大統領(去年9月)「私はわが国、史上最大の強制送還を行います」

第2次政権では、第1次を超える「史上最大の強制送還」を掲げています。

記者「こちらでは不法移民であっても認められている権利についての講義が行われています。皆さん、真剣な表情で話を聞いています」

移民が多い西部カリフォルニア州では、不法移民に向けた講義が行われ、黙秘権があることや所持品検査を拒否できることなどが伝えられました。

人権団体 担当者
「不法移民だけでなく、市民権を持っている人からの相談もあります。コミュニティ全体に不安が広がっています」

ロサンゼルス近郊に住むエリックさん一家。

メキシコ出身 エリックさん(29)「妹はアメリカで生まれた、アメリカ国籍です。母親と父親は現在、正規の在留資格がありません」

エリックさんはメキシコ出身で、7歳の時に両親に連れられて不法に国境を渡りました。現在、エリックさん自身は2年ごとに更新が必要な在留資格を得ていますが、両親は不法移民のままです。

このように家族の中で異なる在留資格が混在するケースは珍しくなく、国境沿いのカリフォルニア州などでは全世帯の1割に上ります。

こうした家族が離れ離れになる恐れがあるのが、強制送還です。しかし、トランプ氏は「家族を引き離さないためには、全員を送還しなければならない」と意に介さない考えです。

在留資格が無い エリックさんの母親(47)「私の夢は、子どもたちが立派な職業についてくれることです。強制送還にその夢を壊されてしまわないか心配です」

アメリカ国籍を持つ エリックさんの妹(14)「家族と1か月以上離れたことがありません。全てを捨てて、また1から始めることを選ぶと思います」

メキシコ出身 エリックさん「これが現実に起きているなんて信じられません。移民問題が単なるモノだとみられています。人が密接に関係している複雑な問題であることを理解していないのです」

アメリカに1100万人いると言われる不法移民。「史上最大の強制送還」の中身が注目されます。【1月20日 TBS NEWS DIG】
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本人は市民権があっても両親が・・・という者は多いようです。

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不法移民に対する一斉摘発が近くシカゴで行われるとの見方が広がっていることから、普段は50人以上の客でにぎわうというこちらのお店も、ご覧の通りです。

シカゴ市の「リトル・ビレッジ」地区ではトランプ政権が発足し、強硬な不法移民対策でICE=移民・関税執行局がすぐに取り締まりに乗り出すのではと市民の間に緊張が走っています。

1973年から営業しているメキシコ料理タコスを提供するレストランも、前日から客足が鈍く、従業員の出社にも影響が出ています。

レストランの人は「16歳〜18歳の従業員が『(不法移民の)両親がどうなるかわからず、自宅で一緒にいてあげる必要があるため、仕事にいけない』と」「みんな怖がっている」と話します。【1月21日 FNNプライムオンライン】
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オバマ政権時代の「DACA」と呼ばれる移民政策で、親に連れてこられた子供たちに対する強制退去処分は延期され、今も2年ごとの更新で、就労許可も与えられていますが、トランプ新大統領がどのように判断するのか?という問題も。

【簡単ではない「史上最大の強制送還 世論全体の期待は高い施策】
もっとも、「史上最大の強制送還」といっても簡単ではありません。

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おそらく現在2000万人以上の不法移民が米国内にいると思われます。彼らを公約どおり国外退去させることは並大抵の事ではありません。

最初は「犯罪歴のあるものから国外追放する」といった段階的な手段をとるでしょうが、それでも大きな混乱を生むでしょう。

国外追放の危機を感じた不法移民が結束してテロ集団と化すかもしれません。

またニューヨーク、シカゴ、サンフランシスコ、ロサンゼルスといった主要都市は民主党の強いサンクチュアリ(聖域)都市です。反トランプで不法移民を保護する政策をとっています。その地域の警察の協力は期待できません。

トランプの看板政策だけに絶対にうやむやにできません。治安を維持したまま、不法移民を国外退去させる方法があるのでしょうか?【1月21日 大澤裕氏 MAG2NEWS】
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また“トランプ氏は不法移民の大量強制送還に軍投入を辞さない構えを見せている。米軍は原則として国内での法執行を禁じられており、強行すれば軍に混乱を招く事態も予想される。”【1月20日 読売】といった事情も。

世論全体で見ると、「トランプは嫌いだけど、政策は支持する」という向きも多いようです。特に、不法移民対策は世論全体では評価されています。

“1月に行われた現地メディアの世論調査でトランプ氏の支持率は51%でしたが、政策別にみると、不法移民の国外追放やアメリカ第一の国内政策に力を入れてくれるとの期待が6割以上に上っています。”【1月21日 FNNプライムオンライン】

それだけに、トランプ大統領としても多少の無理・トラブルは覚悟で実施するでしょう。

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トランプ氏  就任前から繰り出す“ありのままを口に出すという新しい外交言語”

2024-12-27 23:21:57 | アメリカ

(パナマ運河を航行するコンテナ船。8月撮影【12月25日 ロイター】)

【過激・露骨な発言の支持者受けがいいことを承知の上で、敢えて発言 そこに危うさも】
トランプ氏の暴言・過激発言は今更取り上げる必要もないのかもしれませんが、そうした発言が「トランプだから・・・」で問題にもされず、むしろ“飾らない、率直なもの言い”として大衆受けする風潮というのは、やはり発言する方にも、それを歓迎する方にも、危険なものを感じます

****「死刑囚よ地獄に行け!」 トランプ氏Xマスに投稿****
トランプ次期米大統領は25日、バイデン大統領が仮釈放のない終身刑に減刑した死刑囚37人について「メリークリスマスと言うのを拒否する。代わりにこう言ってやる。地獄に行け!」と自身の交流サイト(SNS)に投稿した。
 
民主党のバイデン氏は23日の声明で犯罪被害者や遺族を思い、心を痛めているとした一方で「連邦レベルでの死刑執行を停止しなければならないと確信している」として減刑を発表していた。
 
共和党のトランプ氏は投稿で「殺人や強姦を犯し、略奪した最も暴力的な犯罪者37人を寝ぼけたバイデン氏が恩赦した」と批判した。
 
一方、トランプ氏は民主党関係者が民主主義の根幹を揺るがせたと非難している2021年1月の議会襲撃事件で訴追された支持者らを、来年1月の就任初日に恩赦する考えを示している。【12月26日 共同】
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日本では法的にも、また世論の大勢も死刑賛成であるように、死刑に対する考え方は議論が分かれる問題です。
ですから、トランプ氏が死刑囚への減刑に反対であること自体は何の問題もありません。
私自身も死刑制度に反対とか、違和感を感じるとかいうものでもありません。(さほど真剣に考えたことがない・・・というのが本当のところ)

ただ、「死刑囚よ地獄に行け!」という表現が人間としてどうなのか? という話です。まるで西部劇の「あいつらを吊るせ!」と叫ぶようなシーンを彷彿とさせ、そうした発言を歓迎する風潮も怖い・・・。

おそらくトランプ氏は、この種の発言の受けがいいことを承知の上で、敢えて発言しているのでしょうが、そういう政治スタイルは危険でもあります。

【露骨なカナダいびり 外交に「信頼」は不要 弱者は強者の言うことをきけばいい・・・ということか】
最近目立つのは外交面での度を越した問題発言。カナダ・トルドー首相へのを関税が嫌なら「アメリカの51番目の州」になればいい云々の“悪い冗談”は以前にも取り上げましたが、相変わらず連発しています。

****「51番目の州になることを望んでいる」米トランプ氏、カナダを改めて挑発****
アメリカのトランプ氏が「カナダ人の多くがアメリカの51番目の州になることを望んでいる」と改めて挑発しました。トランプ氏は大統領就任初日にカナダとメキシコからの輸入品に25%の関税を課す考えを示しています。

トランプ氏は18日、自身のSNSに「多くのカナダ人がアメリカの51番目の州になることを望んでいる。そうすれば税金を大幅に節約でき、軍事的な保護も受けられる。素晴らしい考えだ」と投稿しました。

カナダでは、フリーランド副首相兼財務相が16日、トランプ氏による関税の脅威をめぐってトルドー首相と対立し辞任するなど、政治的な混乱が生じています。【12月19日 ABEMA Times】
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自身の圧力でカナダ政治が混乱し、トルドー首相の退陣も濃厚になっている状況を楽しんでいるのでしょうが・・・
更には下記のような話も。ここまでくるともはや“介入”レベルです。

****元NHL英雄にカナダ首相を打診 トランプ氏「すぐ知事に」****
トランプ次期米大統領は25日、北米プロアイスホッケーNHLで活躍したカナダの英雄ウェイン・グレツキーさんと会い、カナダの首相になるため出馬するよう打診したと明らかにした。同盟国カナダの選挙に口出しし、見下す姿勢が先鋭化している。

トランプ氏は、カナダが米国の51番目の州になるべきだと主張している。「すぐカナダ知事として知られるようになる。楽勝だ。選挙運動の必要もない」と呼びかけたと自身の交流サイトに投稿した。

トランプ氏によると、グレツキーさんは出馬に全く関心を示さなかった。 グレツキーさんはNHLで歴代最多894ゴールを上げ「ザ・グレート・ワン」と呼ばれた。【12月27日 共同】
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日本も長年日米関係を維持していく上で、アメリカ側の“無理難題”には苦慮してきましたが、トランプ氏の弱い立場の国をいたぶって楽しむようにも見える対応・発言には苛立つものがあります。

そこがトランプ氏の狙いなのでしょうが、そんなことをしていたら一時的なディールでは有利に立てても、長期の信頼関係は崩れるばかりです。「そんな信頼など要らない、弱い者は強い者の言うことをきけばいいのだ」・・・というのがトランプ流なのでしょうが。

【「アメリカにとってグリーンランドが必要、だから売れ!」という論理を喜ぶロシア 米ロ中による世界分割統治期待も】
カナダいびりに加えて、最近御執心なのはグリーンランドとパナマ運河。

トランプ氏がグリーンランド(デンマーク領)を購入したいと言うのは第1次政権のときからのものですが、再び就任前から。

****トランプ氏、グリーンランド購入に改めて意欲 「安全保障に必要」****
米国のトランプ次期大統領は22日、自身のソーシャルメディアへの投稿で、デンマーク領グリーンランドの購入に改めて意欲を示した。第1次政権時にも提案したが、デンマークに即座に拒否された。実現性は低いとみられるが、俎上(そじょう)に載せることで今後の交渉材料の一つにしたい考えとみられる。

今回の投稿は、次期駐デンマーク大使の指名を発表するもので、その中で「(米国の)国家安全保障や世界の自由のために、米国はグリーンランドを所有し、管理することが絶対に必要だ」などと訴えた。

ロイター通信によると、グリーンランド自治政府のエーエデ首相は23日「グリーンランドは売り物ではなく、今後も決して売り物にならない」と言明したという。

グリーンランドは北極海と北大西洋の間に位置する世界最大の島だ。米国は現地に宇宙軍基地(旧空軍基地)を置くなど、その安全保障上の高い重要性を認識する。ロシアによるウクライナ侵略もあり、その重要性は一段と高まっている。また、天然資源の豊富さでも知られる。

トランプ氏は1期目当時の2019年にも、「戦略上魅力的だ」としてグリーンランドの購入に意欲を示した。しかし、デンマーク首相が「ばかげている」と拒否。トランプ氏は「極めて非礼な言葉を使った」と怒り、予定していたデンマーク訪問を取りやめるなど両国関係が冷え込んだ。【12月24日 毎日】
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トランプ氏がグリーンランドを欲しがるのは、理由のない話ではありません。

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グリーンランドが近年注目される背景には、その地政学的な重要性がある。米ニュースサイト「ポリティコ」によると、仮にロシアが米側に向けて核を搭載した長距離弾道ミサイルを発射した場合、グリーンランド上空を通る可能性が高いという。グリーンランド北部には米軍の宇宙軍基地(旧空軍基地)もあるが、視界の悪い北極圏上空では十分に対抗できない懸念もあるとされる。

近年は北極圏でロシアが軍備を増強させているほか、中国も資源開発を進めている。トランプ氏はこうした状況を念頭に「米国はグリーンランドを所有し、管理することが絶対に必要だ」と訴えた。【12月26日 毎日】
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しかし、「アメリカにとって必要だから売れ!」と迫るのは、ウクライナに侵攻したロシアと同じ発想でもあります。

****トランプのグリーンランド購入案にロシアが喝采を送る理由****
<戦略的な理由からグリーンランドを買いたいとするトランプの考えにロシア国営放送が初めて沈黙を破り、恐ろしい反応を示した>

グリーンランド購入に意欲を見せて論争を蒸し返したドナルド・トランプ次期米大統領に、ロシア国営放送の人気司会者ウラジーミル・ソロヴィヨフや出演者が反応した。大喜びでトランプの考えを支持したのだ。

ロシアのプーチン支持者たちが、トランプのグリーンランド購入を支持するのは意味深な話だ。トランプが他国に領土的野心を見せるなら、ウクライナを侵攻中のロシアの領土的野心に文句が言えなくなると考えたのだ。

ロシア政府はこれまでグリーンランド問題に沈黙を守ってきたが、ロシア国営放送の出演者たちは、トランプの考えは間近に迫った「勢力圏ごとの世界分割統治」実現へのシグナルと見ている。

(中略)出演者の一人で評論家セルゲイ・ミヘーエフは、トランプの提案は、前任者たちが隠そうとしていた「いかにも米国的な覇権主義」の表れに他ならないと語った。

「『我々はすべてであり、君たちは無である』。トランプはただストレートにそう言っているだけだ」とミヘーエフは述べた。

グリーンランド問題の素晴らしい点は、とミヘーエフは言う。「米国と欧州との間にくさびを打ち込み、世界の構造を弱体化させることによって、ロシアの外交政策にある種のチャンスをもたらす点だ」
「トランプが本当に第三次世界大戦を止めたいのであれば、その方法は簡単だ。勢力圏ごとに世界を分けることだ」と付け加えた。

サンクトペテルブルク国立大学の研究者スタニスラフ・トカチェンコもまた、グリーンランドを購入するというトランプの議論を支持し、「我々は、ありのままを口に出すという新しい外交言語を教えてくれたドナルド・トランプに感謝すべきだ」と述べた。

「我々には世界をリンゴのように切り分けることはできないが、地域ごとの輪郭を描くことはできる。つまり、利害が一致する範囲の輪郭のことだ」(中略)

トランプがグリーンランドを購入できるかどうかは別として、彼のレトリックは、他の主要なグローバル大国の地政学的な意思決定や領土的野心に影響する可能性がある。旧ソ連諸国や旧東欧諸国に対するロシアの拡張主義的野心をさらに刺激することは間違いない。【12月25日 Newsweek】
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「勢力圏ごとの世界分割統治」・・・2015年5月、中国の習近平国家主席はアメリカのケリー国務長官に「広い太平洋は中国と米国の両国を受け入れる十分な空間がある」と語ったとか・・・西半分はアメリカが、日本を含む東半分は中国が統治するという発想でしょう。おそらく、中国に対し関税で強硬姿勢を見せているトランプ氏は、中国の人権問題・民主化などには関心はありませんので、このあたりの発想の延長線で中国とウィンウィンの合意に至るのではないでしょうか。

【トランプ氏の“ありのままを口に出すという新しい外交言語”に対し、中国は“いかにも中国的な以前からの外交言語”で「正義の味方」演出】
****パナマ運河の「返還」要求示唆=トランプ氏、通航料にもけち****
トランプ次期米大統領は21日のSNSへの投稿で、中米にあるパナマ運河について、「もし道徳的、法的な原則が守られないのなら、パナマ運河をわれわれに全面返還することを求めるだろう」とパナマ政府に警告した。同時に、米企業に対する運河通航料が高過ぎるとけちをつけた。

パナマ運河は太平洋と大西洋を結ぶ世界の物流の要衝。米国の支援で1914年に開通し、米国による管理が長く続いたが、99年にパナマに全面返還された。通航する船舶の70%以上が米国の港の利用便で、中国、日本が続いている。

パナマは近年中国との経済協力を強化しており、一部の港の管理を中国系企業が担っている。トランプ氏はこれに不満を募らせている可能性がある。【12月22日 時事】
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****「中国の闘士が違法に運営」=トランプ氏、パナマ運河に執心****
トランプ次期米大統領は25日、SNSに「パナマ運河を違法に運営する素晴らしい中国の闘士たちよ、メリークリスマス」と投稿した。

ここ数日、通航料引き下げや「全面返還」の要求を持ち出すなど、同運河に執心を示すトランプ氏。パナマなど中米で拡大する「中国の影響力を断つ」(ワシントン・ポスト紙)ことが狙いと指摘されている。

パナマ運河を巡っては、近接する一部港の管理を中国系企業が担う。トランプ氏は投稿で、建設に当たり多くの米関係者が亡くなった上、今も米国が修復費用を払わされていると不満を表明した。

トランプ氏は同日、駐パナマ大使に、2020年以来トランプ氏の選挙を支援してきた南部フロリダ州のケビン・マリノ・カブレラ氏を充てる人事も発表。同氏はトランプ氏の意をくみ、パナマ側に強硬な姿勢で臨むとみられる。【12月26日 時事】
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パナマ運河の管理権はアメリカとパナマの合意で1999年に完全にパナマへ移譲されています。

****そもそも、パナマ運河とは? 誰が管理? 年1万隻が通る海上の要衝****
パナマ運河は、南北アメリカ大陸をつなぐパナマ地峡に位置する。太平洋と、大西洋につながるカリブ海を結ぶ全長約80キロの水門式の運河だ。

大回りして南米のマゼラン海峡やドレーク海峡を航行することなく二つの大洋を行き来できることから、航行する船舶は大幅に時間を短縮でき、安全性も向上する。エジプトのスエズ運河と並び、海上交通の世界的な要衝だ。

パナマ運河は、フランス企業が1881年に着工したが、その後、米国が建設を引き継ぐ形となった。

パナマは1903年に米国の支援を受けてコロンビアから独立。運河は、そのパナマと条約を結んで運河一帯の永久租借権などを獲得した米国が14年に開通させ、管理した。

やがてパナマ国内で不満が高まり、50年代以降は運河の国有化を求める動きが高まった。77年に就任したカーター米大統領は、パナマのトリホス将軍との間で返還に向けた二つの新条約に署名。これに基づき、運河の管理権は99年に完全にパナマへ移譲された。

現在はパナマ運河庁が管理しており、年間1万隻超の船舶が運河を通過している。【12月27日 毎日】
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中南米においては、これまで「力」にもの言わせて「裏庭」化してきたアメリカへの強い反感があります。
トランプ氏のこの種の発言は、そうした反米意識を煽ることにもなります。

“「パナマ運河はパナマ人のもの」、トランプ氏の発言受けメキシコ大統領”【12月24日 ロイター】

ジャイアンのように力を誇示するトランプ氏に対し、「道理をわきまえた正義の味方」中国が登場。

****パナマの運河主権を尊重 トランプ氏発言で中国外交部****
中国外交部の毛寧(もう・ねい)報道官は23日の記者会見で、パナマ運河の返還を求めるとしたトランプ米次期大統領の発言に関し、中国は運河に対するパナマの主権をこれまで通り尊重していくと強調した。

毛氏は次のように述べた。われわれはパナマのムリノ大統領が、パナマ運河と隣接地域は一寸の土地であれ、全てパナマのもので、主権と独立に交渉の余地はないとした上で、運河の通航料は勝手に決められるものでないと指摘し、運河はいかなる大国の直接的、間接的支配も受けないと強調したことに留意している。

パナマ運河はパナマの人々の偉大な創造物であり、世界各国の相互接続を促す「黄金の水路」でもある。中国はパナマの人々による運河の主権を守る正義の闘いを一貫して支持し、1960年代には運河の主権回復を目指すパナマの人々を支援する大規模なデモが中国各地で行われた。

中国は運河に対するパナマの主権をこれまで通り尊重し、運河が恒久的に中立な国際航路であることに同意する。パナマ運河がパナマの効果的な管理の下で各国の人々の交流を促し、人類の福祉の増進のために絶えず新たな貢献をすると信じている。【12月23日 新華社】
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トランプ氏の“ありのままを口に出すという新しい外交言語”【前出 Newsweek】に対し、中国は“いかにも中国的な以前からの外交言語”

グリーンランドにしても、パナマ運河にしても、トランプ氏とて相手が応じるとは思っていないでしょうが、圧力をかけることで起きる何らかの反応を計算している・・・というのが半分。

残り半分は、思いついたことを抑制できなくなっているということかも。
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アメリカ  「影の大統領」? 異例の権限のマスク氏、移民排斥の欧州政党を支持 対中国は?

2024-12-24 22:47:28 | アメリカ

(大統領選の集会に参加し、トランプ氏と握手するマスク氏(右)=2024年10月、米ペンシルベニア(AFP時事)【12月23日 時事】 たまたまカメラアングルのせいですが、目つき悪すぎ)

【「つなぎ予算案」審議で見せつけた「影の大統領」マスク氏の力】
アメリカ議会における「つなぎ予算案」をめぐる混乱、トランプ氏最側近の地位を固めたイーロン・マスク氏の影響力の強さは周知のところ。

トランプ氏にしても、マスク氏にしても、いささか「付き合いきれないね・・・」って感じはありますが、最終的には日本を含めた世界全体に影響を及ぼす二人ですから、呆れているばかりでもすまないので・・・

結局、「つなぎ予算案」はトランプ氏が望んだ“来年1月までと決まっている政府の借入金の限度を定めた「債務上限」の適用停止措置を延期”は共和党の財政規律重視派の反対もあって今回案には含まれませんでしたが、マスク氏が望んだように大幅削減となり、マスク氏はご満悦とか。

「債務上限」の問題はバイデン政権にしろトランプ次期政権にしろ、政策遂行の足かせになりますので、政権側はこれを撤廃あるいは適用停止したがり、野党側は財政規律を盾に政権を揺さぶるという構図がしばしば見られます。 一般に共和党側には財政規律を重視する立場の議員が多いのですが、その点ではトランプ氏の間に意見の相違があるようです。

でもってマスク氏。

****“影の大統領”マスク氏が介入で混乱 つなぎ予算案「無駄が多い」 大幅カットで可決****
(中略)マスク氏は18日、Xで「無駄な支出が多い」として、バイデン政権が主導する来年3月までのつなぎ予算に反対を表明しました。

つなぎ予算が成立しないと、政府職員の給与が支払われなくなり、例えば管制官や保安職員などが無給となります。観光客にも影響が出かねません。

■マスク氏ご満悦「みんなの勝利だ!」
それでもマスク氏は「この予算案は可決されるべきではない」という投稿を皮切りに、1時間のうちに予算案への反対を呼び掛ける投稿を続々と発信しました。

マスク氏のXから 
「法外な予算案に賛成する議員は2年後に落選すべき」「今すぐ当選した議員に電話して意見を言おう」「トランプ次期大統領が就任するまでにいかなる法案も可決されるべきではない。一切だめだ」

こうした投稿を受けてか、与野党で合意していた当初の予算案は否決され、白紙に戻りました。

民主党 下院議員 「議会は実態を知らない億万長者に屈してはいけない」

削減された予算案
CBSによると、予算の項目はどんどん削られ、1500ページ以上あった予算案は10分の1以下の100ページほどになり、ようやく可決されました。

CNNによると、カットされたのは議員の給与引き上げや中国への投資を制限する案などです。「中国に巨額の投資をするマスク氏に有利な形となった」と話す議員もいます。

ご満悦
こうした指摘も何のその。マスク氏はご満悦です。
マスク氏 「みんなの声が議員に届き、ひどい予算案は葬れた。みんなの勝利だ!」【12月23日 テレ朝news】
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こうした状況に、民主党サイドからは「影の大統領」といった声も。“マスク氏の存在感を際立たせることで、「他人が目立つこと」を嫌うトランプ氏との離間を図ろうとする政治的意図”もあるとか。

****米民主党、マスク氏を「影の大統領」指摘 トランプ氏との離間狙いか****
米連邦議会の民主党が、実業家のイーロン・マスク氏による法案審議への「SNS(ネット交流サービス)介入」に批判を強めている。共和党のトランプ次期大統領に代わる「影の大統領」だと指摘。マスク氏の存在感を際立たせることで、「他人が目立つこと」を嫌うトランプ氏との離間を図ろうとする政治的意図も透けて見える。

マスク氏への批判は、当面の政府運営資金を確保するための「つなぎ予算案」に反対したことを契機に強まった。民主、共和両党の上下両院指導部が17日に合意案を発表したが、マスク氏は18日未明にXへの投稿で「この法案は可決すべきではない」と訴えたのを皮切りに「法案は犯罪的だ」「今すぐ議員事務所に電話して、この脅威を止めてくれ」と半日にわたって投稿を繰り返した。

共和党内には元々、「つなぎ予算案」に付随して他の政策が法案に盛り込まれていることへの不満が高まっていた。ただ、11月の議会選に基づいて共和党が上下両院で多数派になるのは2025年1月からで、年内は上院で優勢な民主党にも配慮しないと法案は通らない。

つなぎ予算が20日までに成立しなければ、政府機関が一部閉鎖に追い込まれる。ジョンソン下院議長は党内の説得を試みたが、マスク氏が反対論をあおり、18日午後にはトランプ氏も反対を表明。法案可決の見通しが立たなくなり、審議は頓挫した。

一連の経緯について、民主党は「選挙で選ばれていない大金持ちが超党派の合意をつぶした」とマスク氏に批判の矛先を集中させた。

急進左派のサンダース上院議員(民主党系無所属)は「(当初のつなぎ予算案は)地球上で最も金持ちのイーロン・マスク大統領のお気に召さなかった」と指摘。マーフィー上院議員(民主党)は流動的な議会審議の状況について「大金持ちの意見が大事だ。15分後にはマスク氏のXへの投稿で状況は変わり得る」と形容した。

さらに共和党内でマスク氏を来月から始まる新会期の下院議長に推す声が出たことで、批判の声が高まった。下院議長は憲法の規定では現職議員である必要はなく、理論上はマスク氏も就任可能だ。ラスキン下院議員(民主党)は「既に(立法、司法、行政と並ぶ)第4の権力なのだから、下院議長なら降格だ」と皮肉った。

民主党がマスク氏を標的にするのは、11月の大統領選で勝利したばかりのトランプ氏よりも批判しやすいからだ。マスク氏は「世界一の富豪」だが、民意の後ろ盾はない。さらにマスク氏を「実質的な大統領」と言い続ければ、トランプ氏が不快感を示し、両者の不和を誘える可能性もある。

マスク氏もこうした政治的意図は意識しているとみられる。19日に共和党が示したつなぎ予算の代替案について、民主党が「マスク・ジョンソン提案」とレッテルを貼ったのに対して、「立案者は私ではない。トランプ氏、バンス氏(次期副大統領)、ジョンソン議長の功績だ」とトランプ氏を立てる姿勢を見せた。

自身への批判を強める民主党左派を念頭に、次の民主党予備選で「より穏健な候補を資金面で支援する」との考えも示し、民主党をけん制している。

マスク氏は11月の大統領選で、少なくとも2億6200万ドル(約409億円)を投じてトランプ氏を支援。次期政権では政府外助言機関「政府効率化省(DOGE=ドージ)」を率いて、歳出削減や規制緩和に取り組む見通しだ。【12月21日 毎日】
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“トランプとマスクはいずれも注目と権力を欲しがる強烈な個性の大富豪同士であるため、両者の間に緊張が生じる可能性は少なくないと専門家は指摘する。
同時に、マスク氏の莫大な富と、それを政治的な力として使う意思は、トランプと共和党に恩恵を与え、二人は良いコンビになる可能性もあるかもしれないが。”【12月24日 Newsweek】

【移民排斥を主張する独AfD、英「リフォームUK」を支持】
マスク氏の“言いたい放題”は内政だけでなく、外交面でも。

****マスク氏、ドイツ右派支持表明 ショルツ首相を「ばか」と批判****
米実業家イーロン・マスク氏は20日、X(旧ツイッター)で、排外主義を掲げて支持を拡大するドイツの右派政党、ドイツのための選択肢(AfD)への支持を表明した。ドイツのショルツ首相を「無能なばかだ」と批判し、辞任すべきだと投稿した。

ドイツは来年2月に下院選を実施する。マスク氏は2億人以上のフォロワーを持つ自身のアカウントで「AfDだけがドイツを救える」と述べた。

最大野党で支持率首位のキリスト教民主・社会同盟がマスク氏のように政府業務の効率化を進めようとしておらず、AfDとの連携も拒否しているとの女性インフルエンサーの投稿を転載し、コメントした。【12月21日 共同】
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更にマスク氏は「ドイツ極右政党AfDはオバマ政権と同じ」とも。その意味するところはよくわかりませんが。

****イーロン・マスク氏「ドイツ極右政党AfDはオバマ政権と同じ」と主張。物議を醸す****
「極右政党・ドイツのための選択肢(AfD)はオバマ氏が就任した時の米民主党と全く同じ」というイーロン・マスク氏の主張が批判を招いている。(中略)

マスク氏は12月20日、このAfDだけが「ドイツを救える」とXに投稿。
これに対し、米民主党のクリス・マーフィー上院議員は「AfDは本質的にドイツのネオナチ政党で、ナチスのイメージを回復しようとしている。ドイツで生まれていない人々を排除するという危険な考えを持っている」とCNNで異議を唱えた。

マスク氏はこのマーフィー議員の意見に反論し「なんという大嘘つき。AfDの政策は、オバマ就任時のアメリカ民主党の政策と完全に同じだ!何一つ変わらない」という主張をX上で展開した。

しかし、ドイツの極右政党をオバマ政権と同一視する考えは、様々な人たちから批判されている。
実業家でビリオネアのマーク・キューバン氏は、「最もAfDと近いアメリカの政党は」とxAI社の対話型AI・Grokに質問したところ「アメリカ共和党、特に現在の右寄りから極右に最も近い」と回答したとXに書き込んだ。

アメリカの政治学者イアン・ブレマー氏は、AfDと民主党オバマ政権を同じだとするのは「なかなかの見解」だとマスク氏に返信する形で投稿。AfDは気候変動や移民などの様々な問題で「はるかに『ドイツ第一主義的』である」と述べた。

また、ドイツ社会民主党(SPD)のショルツ首相は、マスク氏の「ドイツを救えるのはAfDだけ」という発言について「言論の自由というのは、彼のような大富豪が正しくない、もしくは良い政治的アドバイスを含まない発言ができるということでもある」と記者会見で述べた。

ショルツ首相は11月に、自由民主党(FDP)の党首のクリスティアン・リントナー財務相を解任して三党連立政権の崩壊を招いた。その後、12月16日には議会で信任投票が否決され、2025年初めに解散総選挙が行われる。
世論調査によると、AfDはドイツキリスト教民主同盟(CDU)に次ぐ支持率を得ている。

AfDは9月にテューリンゲン州議会選挙で勝利して第1党になった。ドイツで極右政党が州議会選挙で勝利したのは第二次世界大戦以降初めてだ。

しかしテューリンゲン州のAfDトップであるビョルン・ヘッケ氏は、政治集会でナチスのスローガンを故意に使用した罪で有罪となり、罰金を科されている。(後略)【12月23日 HUFFPOST】
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“AfDはオバマ氏が就任した時の米民主党と全く同じ”云々の真意はよくわかりませんが、よくわかったのはマスク氏が移民排斥的な極右主張と波長がよく合うようだ・・・ということ。

移民排斥的極右ポピュリストは欧州各国で台頭していますが、イギリスではファラージ党首率いる「リフォームUK」。
マスク氏はこの「リフォームUK」に数百万ドルを寄付するとか。

****マスク氏、次は英国政界を席巻か 米国に続き****
ドナルド・トランプ次期米大統領のホワイトハウス復帰を支えたイーロン・マスク氏が、次は英首相の官邸があるダウニング街10番地にも政治的変動をもたらす可能性がある。

マスク氏は、キア・スターマー英首相を厳しく批判してきた。ポピュリスト政党の「リフォームUK」に数百万ドルを寄付し、変革をもたらすことも考えられるとして、英政界では危機感が高まっている。

英政府は外国人による巨額の政治献金を防ぐため、法改正を望んでいるとすでに表明している。

トランプ氏の支持者として知られるリフォームUKのナイジェル・ファラージ党首は、最近になりマスク氏と会談。反移民を掲げて急成長する同党に対し、世界一の富豪が寄付を検討していると述べている。これを受けてリフォームUKの支持率が急上昇することも考えられる。(後略)【12月23日 WSJ】
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【上海に巨大工場を持ち中国政府に従順なマスク氏と対中国強硬論をウリにするトランプ氏はどのように折り合いをつけているのか?】
このあたりがマスク氏とトランプ氏の波長が合う理由のひとつでもあるのでしょうが、よくわからないのはトランプ氏が高率の追加関税という対中国強硬策を主張し、同様の対中国強硬論者が多い次期トランプ政権にあって、マスク氏のテスラは中国に大規模工場を持ち(テスラ社のEV生産台数の半分は上海のギガファクトリーが担っている)、中国に対しては協調的な姿勢であることです。

****対中強硬派ぞろいのトランプ政権に紛れ込んだ「親中」イーロン・マスクはどう動く****
<米中国交正常化の仲介役となったキッシンジャーのような役割を期待する声もあるが、実業家として利益だけが目当てと思われる節もある>

アメリカのジョー・バイデン大統領と中国の習近平国家主席は11月16日、アジア太平洋経済フォーラム(APEC)首脳会議に出席するため訪問中のペルーの首都リマで首脳会談を行った。バイデンと習の直接対談はこれが最後となるとみられる。

ドナルド・トランプ次期大統領が実業家のイーロン・マスクを閣僚に指名したことで、次期政権は複雑な「事情」を抱えることとなった。今後の米中関係も見通しにくい状況だ。

習は慎重な言葉選びで、トランプにはあえて言及せずに外交の継続性を求める中国政府の希望を強調した。「中国はアメリカの新政権と協力して対話を維持し、協力を拡大し、違いに対処し、両国民の利益のための中米関係の堅実な移行に向けた努力を行う用意がある」と、習は通訳を通して述べた。

電気自動車大手テスラのCEOであり、トランプの選挙運動に数千万ドルの寄付を行ったマスクは、実業家のビベック・ラマスワミとともに新設される予定の「政府効率化省」を率いることになっている。

新政権の内部では、対中政策に関して意見の激しい相違が見られる。トランプは対中タカ派のマルコ・ルビオ上院議員とマイク・ウォルツ下院議員を、それぞれ国務長官と大統領補佐官(国家安全保障担当)に指名した。トランプは中国からの輸入品に60%の関税をかけ、メキシコで製造された中国メーカーの電気自動車に制裁措置を取ると主張。

9月には8000億ドルの対中貿易赤字に触れ、「関税は最も偉大な発明品だ」と述べてもいる。

一方でテスラにとって、上海のギガファクトリーは生産台数の半分を担うドル箱であり、マスクの対中姿勢はトランプとは大きく異なる。

「テスラとしても私としても、こうした関税を求めたことはない」と、マスクはパリで行われた技術系イベントで述べた。「通商の自由を阻害、もしくは市場をゆがめるものはよくない。テスラは中国市場における競争で、関税や政府の支援がなくともおおいに善戦している。私は関税なしを支持する」

マスクは以前から、中国政府との友好的な関係を維持してきた。2020年にポッドキャストで「中国はすばらしい」とほめたたえ、中国共産党の創立100周年を祝って以降、彼は一貫して中国当局に従順な態度を示している。

2021年に中国当局がテスラに対し、28万5000台の自動車のリコールを求めた時も素直に応じたし、2022年に新型コロナウイルスのパンデミックでテスラの上海工場が閉鎖された際もおとなしく従った。カリフォルニア州で同じような流行対策が採られた際に「ファシスト」的だと激しく非難したのとは対照的だ。

米中間の問題は貿易に留まらない。アメリカの情報当局は、ウクライナ侵攻を続けるロシアにとって必要なハイテク製品について、中国からの輸入が増えているとの報告書を出している。

FBIは先ごろ、アメリカ政府やアメリカの政治家に対して中国が行っている「幅広く大規模な」サイバースパイ行為に関する詳細を明らかにした。

昨年、中国の偵察用気球がアメリカ領内で撃ち落とされた一件で、両国の緊張はさらに高まった。

一部の専門家からは、マスクがかつてのヘンリー・キッシンジャー国務長官に似た外交における仲介者の役割を果たす可能性があると指摘する声も出ている。

今年4月、マスクは中国の李強首相と会談。李はテスラを、米中の通商協力の成功例だと持ち上げた。(後略)【11月18日 Newsweek】
****************

マスク氏はトランプ氏支持を明確にするにあたり、当然に看板政策でもある対中国問題について意見のすり合わせを行っているはずです。

どういう話になっているかは知る由もありませんが、結局のところトランプ氏の対中国強硬姿勢は「ディール」のうえでのパフォーマンスであり、最終的にはウィンウィンの合意で結着をつける・・・そうしたトランプ氏の説明をマスク氏が了解したということでしょうか? 全くの想像ですが。

あるいはテスラを切り捨てても、トランプ政権のもと、宇宙起業スペースXなどでもっと稼げると踏んだのか?
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アメリカ  新たな権力者へすり寄るテック業界大物たち 司法の場の流れも手繰り寄せるトランプ氏

2024-12-17 23:29:24 | アメリカ

(【12月16日 Newsweek】)

【トランプ氏への寄付金相次ぐテック業界大物 “絶好の機会”と見なしている】
権力者に企業経営者がすり寄るというのは「当たり前」かも。それをとやかく言うのは、すりよる術さえない貧乏人のひがみか。

ただ、連日のようにそうした動きが報じられると「なんだかな・・・」という感も。

****米メタがトランプ次期大統領の就任式に100万ドルを寄付 米報道****
フェイスブックなどを運営するアメリカIT大手のメタが、1月20日に行われるトランプ次期大統領の就任式に100万ドル(日本円でおよそ1億5000万円)を寄付したと、アメリカメディアが伝えました。 これはアメリカの有力紙「ウォール・ストリート・ジャーナル」が11日に伝えたものです。 

メタのザッカーバーグCEOとトランプ氏は11月末、フロリダ州にあるトランプ氏の私邸「マール・ア・ラーゴ」で会食したことがわかっていて、この場でメタ側が就任式に寄付する考えを伝えたということです。 

また、ザッカーバーグ氏がメタが開発する最新のスマートグラスのデモンストレーションを行い、トランプ氏にプレゼントしたとも伝えられています。 

トランプ氏は2020年の大統領選挙で、ザッカーバーグ氏がフェイスブックを操り、陰謀を企てたと主張していて、今年9月に発売された自身の著書の中では「今回、彼が違法行為をすれば、残りの人生を刑務所で過ごすことになる」などと圧力をかけていました。 

メタは過去2回の就任式でいずれも寄付をしていないということで、ウォール・ストリート・ジャーナルはメタによる寄付について、「険悪だった次期大統領との関係改善に向けた動き」と伝えています。【12月12日 TBS NEWS DIG】
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****米アマゾン、トランプ氏の就任基金に100万ドル寄付へ-メタに続き****
米アマゾン・ドット・コムは、トランプ次期米大統領の就任基金に100万ドル(約1億5300万円)を寄付すると、アマゾンの広報担当者が述べた。米メタ・プラットフォームズによる寄付に続くもので、テクノロジー大手は次期政権と良好な関係を築こうとしている。

トランプ氏は12日、CNBCとのインタビューで、アマゾン創業者のジェフ・ベゾス氏とも来週会談すると述べた。

アマゾンの広報担当者によると、直接的な寄付に加え、100万ドル相当の現物寄付として就任式をストリーミング配信するという。また寄付は会社の資金から出す予定でベゾス氏が拠出するわけではないとした。(中略)

ベゾス氏は今月、米紙ニューヨーク・タイムズ(NYT)主催のディールブック・サミットで、トランプ政権2期目について「非常に楽観的で、期待している」とし、「トランプ氏は規制緩和に多くのエネルギーを注ぎ込むようだし、私にその手助けができるのなら手助けするつもりだ」と語っていた。【12月13日 Bloomberg】
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*****米オープンAIのCEO、トランプ次期大統領の就任に100万ドル寄付を計画****
(中略)アメリカメディアは13日、オープンAIのサム・アルトマンCEOがトランプ次期大統領の就任式に向けた資金として100万ドル、日本円で1億5000万円あまりの寄付を計画していると報じました。 

アルトマンCEOは「トランプ氏がAI時代へとアメリカを導く。アメリカが優位に立ち続けるため、その取り組みを支援したい」としています。 

た、アマゾン・ドット・コムも同額の100万ドルの寄付を計画しているほか、フェイスブックのメタは既に100万ドルを寄付しています。 イーロン・マスク氏がトランプ氏の側近として影響力を強める中、IT大手各社がトランプ氏との関係改善を図ろうとしているものとみられています。【日テレNEWS】
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権力に近いとどんないいことがあるのか・・・イーロン・マスク氏の下記ケースなど見ると、100万ドルぐらい“安いもの”かも。

****「自動運転の事故報告義務」撤廃を提言 マスク氏経営のテスラにメリットか****
トランプ次期政権の移行チームは、自動運転車の事故の報告義務を撤廃するよう提言しました。トランプ政権で影響力を持つイーロン・マスク氏が経営する電気自動車大手テスラは、この報告義務に反対しています。

アメリカ道路交通安全局は、自動運転システムなどを搭載した車両の安全性の調査のため、事故の報告を義務付けています。

この報告義務についてトランプ次期政権の移行チームは、過剰なデータ収集だとして撤廃を提言したと、ロイター通信が報じました。

テスラはトランプ政権で影響力を持つイーロン・マスク氏が経営しています。
ロイターの分析では死亡事故45件のうち40件がテスラの車両だということです。 報告義務が撤廃されればテスラにメリットがあるとみられています。(中略)

トランプ氏の就任に際し、SNS大手のメタはすでに100万ドルを寄付し、オープンAIも100万ドルの寄付を表明するなど、IT各社が次期政権にすり寄る構図になっています。【12月14日 テレ朝news】
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まだまだ続きます。金融界からも。

****BofAとゴールドマン、トランプ氏就任委に寄付へ 金額未定****
米第2位の金融機関バンク・オブ・アメリカ(BofA)と投資銀行ゴールドマン・サックスは、トランプ次期米大統領の就任委員会に寄付する予定だと、各行の広報担当者が13日明らかにした。金額についてはまだ決まっていないとしている。

BofAと米金融大手JPモルガン・チェースは、トランプ氏の2017年の大統領就任に伴い寄付を行っている。JPモルガンはコメントを控えた。

連邦選挙委員会によると、就任委は開会式やパレード、舞踏会などの関連行事を企画し資金を出すが、宣誓式自体は対象外という。

BofAは、17年のトランプ氏および21年のバイデン氏の就任基金にそれぞれ100万ドルを寄付。JPモルガンは17年のトランプ氏就任時に50万ドルを寄付した。【12月16日 ロイター】
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こうなると寄付しないと「何か因縁つけられるかも」って不安になるかも・・・ヤクザのみかじめ料みたいなものか。

しかし、不安になるならまだしも、「億万長者たちが恐れているとは思えない。彼らはこれを絶好の機会と見なしていると思う」とも。

こうした動きに「節操がない」と眉をひそめる向きも。

****アルトマン、サッカーバーグ、ベゾス......テック界の富豪が次々と節操なきトランプ献金****
<テック業界の大物たちが次々にトランプの基金への高額寄付を表明。二期目のトランプの大胆な動きを見越して、チャンスに賭けているようだ>

テック業界の億万長者たちは列をなして、ドナルド・トランプ次期大統領の就任式関連の基金に寄付を表明している。ここ1年、テック業界を脅かしてきた人物に、すでに3人の大物が100万ドルずつの寄付を表明した。

「アメリカ人はトランプに投票した。彼を支持することは危険だという認識は......なかったようだ」と、モントリオール大学ビジネススクールのグウィネス・エドワーズ准教授(戦略経営学)は本誌に語った。

「億万長者たちが恐れているとは思えない。彼らはこれを絶好の機会と見なしていると思う」と、彼女は言う。

AI開発企業オープンAIのサム・アルトマンは13日、トランプ大の大統領就任式基金に100万ドルの寄付をすると発表した。メタの創設者兼CEOのマーク・ザッカーバーグ、アマゾンのジェフ・ベゾス会長も同じ約束をしている。

オープンAIの広報担当者は本誌に対し、基金への寄付はアルトマンの「個人的な寄付」であることを確認した。アルトマンは声明の中でこう付け加えた。「トランプ大統領はわが国をAIの時代へと導く。私はアメリカが一歩先を行くための彼の努力を応援したい」

トランプは、テスラ創業者でXのオーナーであるイーロン・マスクとのパートナーシップを通じてテック業界とのつながりを築いているが、その絆はこうした寄付によってさらに強固なものになるだろう。マスクは実業家のビベック・ラマスワミとともにトランプ政権で政府効率化省(DOGE)を率いることになっている。

寄付を発表した最初のテック・リーダーはザッカーバーグだったが、その決断に一部のリベラル派と保守派のコメンテーターから怒りの声が上がった。

ザッカーバーグはトランプと揉めた過去がある。新型コロナのパンデミックの際に、妻とともに選挙インフラを支援するために約4億ドルを寄付したが、一部の共和党員から、それはジョー・バイデンが2020年の大統領選挙で勝利するための裏工作だと非難された。

だが、今回のザッカーバーグの発表の次の日に、ベゾスが寄付を発表した。政治雑誌ニュー・リパブリックはこの動きを事実上、トランプに「膝を屈する」決断と呼んでいる。

ベゾスはまた、今年の大統領選において、特定の大統領候補への支持表明は「偏見の認識」を生むと主張。自分が所有するワシントン・ポストがカマラ・ハリス候補を推薦する動きを阻止する決定を下し、おおいに批判された。

ベゾスは自身の決断を説明する論説の中で、「支持候補の表明をやめることは、原則に基づく決断であり、正しい決断だ」と書いている。ポスト紙の元編集長を含むトランプ批判派は、この選択を「臆病」、「憂慮すべき」、「意気地なし」と呼んだ。

セールスフォースのマーク・ベニオフCEOなど、他のテック業界のリーダーたちも選挙中からトランプを支持しており、就任式に向けて同様の資金援助を表明する可能性がある。

サンフランシスコ・クロニクル紙とのインタビューで、ベニオフはトランプの当選を「新たな序章へのチャンス」と呼んだ。「大統領の成功を願うのは当然のことだと思う」

エドワーズは、テック業界のリーダーたちは、トランプの大統領就任を前に、ある選択を迫られていると主張した。「多数派に従ってゲームに参加し、何かを得られることを期待するか、それとも静観するか」という選択だ。

「トランプに反対する立場を取ることは、常にリスクを伴う。選挙の勝利が、トランプをつけあがらせている」と、エドワーズは説明した。「彼は自分のレガシーを重視し、自分の名声を強固なものにするために大胆な動きをする可能性が高い」

エドワーズはトランプを「使命に燃える男」と評し、「テック業界の億万長者にとってはトランプ列車に飛び乗ったとして、失うものは何もない」と述べた。【12月16日 Newsweek】
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ついでに言えばソフトバンク・孫正義CEOも。こちらは寄付ではなく投資ですから「同列に扱うな」と怒られそうですが。

****ソフトバンク孫正義CEO トランプ次期大統領と会談へ 米国内への1000億ドル=15兆円投資と10万人の雇用創出を表明か****
アメリカ・CNBCによりますと、トランプ次期大統領と会談するソフトバンクの孫正義CEOが、▼アメリカに1000億ドルをソフトバンクが投資することや、▼AIの関連分野で10万人の雇用創出を表明する見通しであることがわかりました。

孫CEOは、16日にフロリダ州のトランプ氏の邸宅で会談する予定です。【12月17日 TBS NEWS DIG】
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【司法の場の流れもトランプ氏へ】
権力にすり寄るのは億万長者だけではないようで、すべてがトランプ氏を軸に、かれにとっては都合のよい形で回り始めたようにも。司法の場での流れも変わったようです。

****トランプ氏とABCニュース和解 名誉毀損で「異例の勝利」****
アメリカのトランプ次期大統領が名誉を毀損(きそん)されたとしてABCニュースを相手取り起こした訴訟で、ABC側が23億円余りを寄付する形で和解が成立したことが分かりました。

ABCニュースの司会者ステファノプロス氏が、3月に放送された番組で「トランプ氏は女性作家をレイプした責任がある」と言及したことを受けて、トランプ氏側は名誉を毀損されたとして提訴していました。

トランプ氏が、女性作家に性的暴行を行ったなどとして損害賠償の支払いを命じられた民事訴訟では、レイプについては証拠の裏付けが不十分だと判断されています。

フロリダ州の裁判所に提出された和解文書によりますと、トランプ氏が今後設立する財団と博物館にABC側が1500万ドル=23億円余りを寄付することなどを条件に和解が成立したということです。

トランプ氏はこれまでにも自身に批判的なメディアを標的に複数の訴訟を起こし、いずれも敗訴していましたが、ニューヨークタイムズはトランプ氏の「異例の勝利」だと伝えています。
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トランプ氏に関する起訴についても、トランプ氏側の時間稼ぎ戦術がまんまと奏功し、大統領当選をもってほとんどが雲散霧消したみたい。

****検察がトランプ氏への起訴取り下げ求める 議会乱入事件など****
アメリカ司法省の特別検察官は、およそ4年前の連邦議会乱入事件についてトランプ次期大統領に対する起訴の取り下げを求める書面を裁判所に提出し、認められました。特別検察官は大統領の在任中の訴追、起訴は行わないとする司法省の立場に沿った判断だと説明しています。

アメリカ司法省の特別検察官は25日、2021年1月の連邦議会乱入事件をめぐってトランプ次期大統領が国家を欺こうとした罪などに問われた事件について、起訴の取り下げを求める書面を連邦地方裁判所に提出し、裁判所はこれを認めました。

また、大統領退任後に最高機密を含む文書を不正に自宅で保管していたとされる事件についても控訴を取り下げるよう、連邦控訴裁判所に書面で申請しました。

書面の中で、特別検察官はいずれの事件についても「訴追した判断に変わりはない」などとしながらも「憲法により大統領の在任中の訴追、起訴は禁じられている」とする従来の司法省の立場から、トランプ氏の2025年1月の就任前に起訴の取り下げが必要だと判断したと説明しています。

書面には大統領の任務の遂行は妨げられてはならないという憲法上の要請と「何人も法を超越しない」という法の支配の原則が相反するものになったとも記されていて、難しい判断だったことをにじませています。

一方で、トランプ氏が次の任期を終えた後、起訴する権利を妨げないことを裁判所に求めました。

事件の捜査を担当するスミス特別検察官は、トランプ氏の大統領就任の前に辞任する意向を示していると報じられています。

トランプ次期大統領「勝利した」
特別検察官が2つの事件で自身に対する起訴の取り下げを裁判所に申請したことについてトランプ次期大統領はSNSに投稿しました。

この中でトランプ氏は「これらの裁判は私がこれまで経験してきたほかの裁判と同じように中身のない、法に基づかないもので、決して起こされるべきではなかった。民主党が私という政治的な対立相手と闘うために1億ドルを超える納税者の資金がむだになった」と批判しています。

その上で「これは政治的なハイジャックでわが国の歴史における最悪の事態だ。それでも私は粘り強く闘い、あらゆる逆境に負けず、そして勝利した」としています。

トランプ次期大統領をめぐるほかの刑事裁判は
トランプ次期大統領が、不倫の口止め料をめぐって有罪の評決を受けたニューヨーク州の裁判については、裁判所が26日に予定していた量刑の言い渡しを延期しています。

来月以降、裁判所が検察・弁護側双方の意見などを踏まえ、量刑の言い渡しをトランプ次期大統領の4年の任期の終了後までさらに延期する可能性や、裁判手続きを取りやめる可能性があります。

このほかトランプ次期大統領は2020年の大統領選挙で敗れた際に、南部ジョージア州の州政府に圧力をかけて結果を覆そうとした罪に問われていますが、手続き上の理由で審理は進んでいません。【11月26日 NHK】
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 議会乱入事件は本来、民主主義国における大統領の資格の有無に直結する裁判ですから、大統領選挙に入る前に白黒つけておくべき類の話だったと思いますが・・・

政治的意味合いは比較的薄い不倫口止め裁判については、かろうじて評決を破棄するよう求めたトランプ側の申し立てが棄却されたとか。

****トランプ氏不倫口止め裁判 判事が大統領免責特権を認めず申し立て棄却****
アメリカのトランプ次期大統領が有罪評決を受けた不倫口止め裁判を巡って、ニューヨーク州の判事は、評決を破棄するよう求めたトランプ側の申し立てを棄却しました。

大統領経験者として初めて有罪評決を受けたトランプ氏の不倫口止めを巡る裁判は量刑の言い渡しが延期されていますが、トランプ氏側は今月、ニューヨーク州の裁判所に対し、「大統領職に混乱が生じる」として評決を破棄するよう求めていました。

これに対してニューヨーク州の判事は16日、大統領の免責特権を認めずトランプ氏側の申し立てを棄却し、有罪評決は有効だとする判断を示しました。

量刑が言い渡されるべきかどうかなど、今後の裁判の進行については言及していません。【12月17日 テレ朝news】
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テック業界の億万長者にしろ、司法の場の流れにしろ、トランプ氏に草木もなびく昨今のようです。日本流に言えば「選挙でみそぎを済ませた」ということか。あるいは「勝てば官軍」といったところか。


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アメリカ  トランプ氏復権 大統領の専制独断を誰が抑止できるのか? 各国の反応

2024-11-06 23:19:29 | アメリカ

(6日、集会会場に登場したトランプ前大統領(中央)ら=米南部フロリダ州【11月6日 産経】)

【大統領経験者が返り咲きを果たすのは132年ぶり】
今日はこのニュースしかないので・・・個人的には忸怩たるものがありますが。

****トランプ氏の当選確実 132年ぶりの米大統領「返り咲き」へ****
米大統領選(5日投開票)は6日、共和党のドナルド・トランプ前大統領(78)の当選が確実になった。米メディアが報じた。大統領経験者が返り咲きを果たすのは132年ぶり。

刑事事件の被告が、大統領選で勝利する異例の事態となった。トランプ氏は2025年1月20日に第47代大統領の就任式を迎える。

トランプ氏は選挙戦で「衰退した米国を再び偉大にする」と訴え、過去4年間に進んだインフレ(物価高)、不法移民の増加など、社会や政治の現状への不満に訴えかける戦略を取った。

23年3〜8月には計四つの刑事事件で起訴され、24年5月には不倫関係を主張する女性への口止め料支払いを巡って親族企業の業務記録を改ざんした罪で有罪評決を受けた。しかし、トランプ氏は「政治的な迫害だ」と主張することで、保守層を中心に支持を伸ばした。

民主党は当初、ジョー・バイデン大統領(81)が再選を狙ったが、24年6月の討論会で高齢不安を露呈。党内の圧力を受けて、7月に選挙戦から撤退した。女性初の大統領を目指すカマラ・ハリス副大統領(60)が8月に党候補に指名され、党内の活気は戻ったが、政策の具体化が遅れた。

トランプ氏は内政、外交ともバイデン政権からの政策転換を進める考えだ。不法越境対策として「国境の壁」の建設を再開し、不法移民の国外追放も進める。石油や天然ガスの増産を促し、実業家のイーロン・マスク氏も起用して「連邦政府の効率化」を推進する。

外国製品には10〜20%、中国製品には60%の一律関税を課す。日本には一層の市場開放や防衛費の負担増を求める可能性がある。ロシアのウクライナ侵攻を巡っては、対ウクライナ支援を見直し、早期の和平仲介を目指す姿勢だ。【11月6日 毎日】
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トランプ復権で外交政策は大きく変わります。

****トランプ氏、中露北首脳とディール重視 不透明感も IPEF破棄 有言実行か****
米大統領選で勝利宣言したトランプ前大統領は、再選した場合にバイデン政権の政策を覆すだけでなく、プーチン露大統領や中国の習近平国家主席らとディール(取引)することに意欲を示してきた。地域情勢や世界経済を巡る不透明感が増す可能性がある。

戦争終結を重視
トランプ氏はロシアのウクライナ侵略に関し、就任前にプーチン氏らとの交渉などを通じて「戦争を終わらせる」考えを強調。バイデン政権が日欧などと行ってきたウクライナ支援より、戦争終結を重視している。

北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党総書記への対応では「私が(ホワイトハウスに)戻れば、彼とうまくやる」と述べ、1期目に直接会談したという自信をのぞかせる。「彼も私の復帰を望んでいる」と語り、ディールへの秋波を送っている。

中国に対しては、台湾に侵攻すれば「150〜200%」の関税を課すと米紙に述べている。これもディールの一環とみられる。台湾有事の際に軍事力を行使する可能性を問われ、「必要ないだろう。習氏は私を尊敬し、私が何をしでかすか分からないことも知っている」と説明。米国の軍事力をちらつかせて台湾侵攻を牽制した。

中国製品には60%の高関税も
中国製品にも60%の高関税を課す考えを示すなど強気の姿勢だ。実際、大統領1期目は対中貿易赤字を問題視して中国製品へ制裁関税を発動し、貿易戦争を繰り広げた。

米製造業を活性化させるため、各国からの輸入品に10〜20%の関税を課すともしている。日本製鉄による米鉄鋼大手USスチールの買収計画には強く反対し、買収阻止に動く可能性がある。

バイデン政権が主導した新経済圏構想「インド太平洋経済枠組み(IPEF)」を破棄する意向も示している。1期目には就任前に掲げていた環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)の離脱を就任直後に実行した。IPEF破棄は有言実行を再び国内外に示すことができる政策だ。【11月6日 産経】
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【トランプ氏を抑止する者はないという状況にも】
更に、上下両院も共和党が押さえて「トリプルレッド」の可能性も。トランプ大統領は非常にやりやすくなります。おさえが効かなくなる・・・とも。

****米共和党、4年ぶりに上院奪還 「トリプルレッド」の可能性****
米連邦議会選の投開票が5日、大統領選と同時に実施された。米主要メディアによると、共和党は上院で非改選議席を含めて過半数の51議席を確保し、4年ぶりの多数派奪還を決めた。

トランプ前大統領も勝ち、接戦の下院を押さえれば、赤をシンボルカラーとする共和党がホワイトハウスと上下両院を独占する「トリプルレッド」となる。
 
米国では議会に立法権と予算編成権があり、上院は閣僚や大使、連邦最高裁判事の人事承認権を握る。

トリプルレッドが実現すれば、トランプ氏は選挙戦で訴えた国境警備強化や減税を実現しやすくなる。一方、チェック機能は弱まり、同氏による大統領権限強化が進む恐れもある。【共11月6日 共同】
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トランプ氏は議会だけでなく、すでに最高裁も前回大統領時に押さえています。さらに今回選挙戦で、これまで民主党候補支持を打ち出していたメディアが、トランプ復権後の報復を恐れて支持を明確にしないといった現象にみられるようにジャーナリズムもトランプ復権に萎縮しているように見えます。

もはや、議会も、司法も、そしてジャーナリズムもさえぎらないとなったとき、トランプ政治はどうなるのか?憂慮すべきことだと考えています。

【戦々恐々のウクライナ 余裕のロシア】
大きく変わる外交政策に関し、現段階で報じられている各国の反応は以下のとおり。

ウクライナ・ゼレンスキー大統領はトランプ氏がウクライナに不利な形での停戦に走ることを警戒しています。

****ウクライナのゼレンスキー大統領、トランプ氏勝利を祝福も「独断専攻」警戒か 米大統領選****
ロシアの侵略を受けるウクライナのゼレンスキー大統領は6日、米大統領選で勝利を宣言した共和党のトランプ前大統領を祝福する声明をX(旧ツイッター)に投稿した。

ゼレンスキー氏は9月の訪米時にトランプ氏とロシアの侵略を終結させる方法などを協議したと指摘。トランプ氏が国際情勢で「力による平和」を追求すると約束したことに感謝するとし、「それこそがウクライナに早期に平和をもたらす原理だ」と述べた。その上で、ウクライナと米国が今後、そうした政策を共同で進めることを期待していると表明した。

ウクライナ国内では、トランプ氏が米大統領に返り咲いた場合、ウクライナへの軍事支援を停止したり、ウクライナ抜きでロシアと交渉を試みたりする可能性があるとの懸念が強い。ゼレンスキー氏はトランプ氏がそうした独断専行に出ないよう暗にくぎを刺したものとみられる。【11月6日 産経】
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実際のところは、トランプ氏が提示する停戦に応じない場合、軍事支援が停止される事態になることに戦々恐々といったところも。

****戦々恐々のウクライナ、「トランプ政権発足で切り捨てられるのでは?」―仏メディア****
(中略)大統領選に関連する主張でとりわけ注目されたものの一つに、長期化したロシア・ウクライナ戦争について「私だったら24時間以内に終わらせる」としたトランプ氏による2023年5月の発言だ。

そのためウクライナ政府では、トランプ政権が誕生したら「切り捨てられるのでは」という深刻な懸念が発生しているという。フランスメディアのRFIが伝えた。

ウクライナの元駐米大使であるオレフ・シャムシュル氏は、「トランプ氏が勝利すれば深刻なリスクをもたらす」と述べた。シャムシュル氏はさらに、トランプ氏と彼のチームは「ウクライナが勝つとは考えていない」「中国との対決に集中するために、あらゆる代償を惜しまずに(ロシアとウクライナの)衝突を終わらせたいと考えている」と述べた。

西側メディアの報道によると、トランプ氏の計画はロシアにとって極めて有利だ。まずウクライナには、現状でロシア軍に占領されている地域、すなわち領土の20%の支配を断念させて非軍事化する。ウクライナにはさらに、念願だったNATO加盟も断念させる。

シャムシュル氏は同計画について「(ウクライナにとって)潰滅的だ」と表現し、「ロシアは軍隊を再建し、後日再び攻撃してウクライナを完全に抹殺することができる」と指摘した。

ただし、ウクライナ大統領府のある高官は匿名を条件に、9月にウクライナのゼレンスキー大統領が訪米してトランプ氏と会談した時の状況は「非常に良好だった」と説明し、トランプ氏の心情について「米国がプーチンに敗北する原因になった人物にはなりたくないだろう」と分析した。

同高官によると、ウクライナは米大統領選のハリス氏とトランプ氏の両候補と良好な関係を保つよう「努力している」という。【11月5日 レコードチャイナ】
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一方のプーチン大統領とトランプ氏は考え方がよく合うとされるロシアは余裕の静観の構え。

各国政府が続々とトランプ氏への祝意を伝えるなかで、ロシアの大統領報道官は「プーチン大統領が祝意を伝える計画は把握していない」と述べました。

****ロシア大統領府報道官「1月に何が起きるか見てみよう」…トランプ氏「勝利宣言」に反応****
タス通信によると、ロシアのドミトリー・ペスコフ大統領府報道官は6日、米大統領選でドナルド・トランプ前大統領が勝利宣言したことに関して、米国が「我が国に対する戦争に直接・間接に関与する非友好国であることを忘れてはならない」と指摘した上で、「(トランプ氏が大統領に就任する)1月に何が起きるか見てみよう」と述べた。トランプ氏の今後の発言に注目する考えを示した。

ロシア国旗=ロイター ペスコフ氏は記者団に対し、プーチン政権が「建設的な対話には前向きだ」と改めて主張。米露関係は史上最悪だとして「この先どうなるかは、次の指導者次第だ」と述べた。

選挙期間中の発言と大統領就任後の発言は変化しうるとも指摘し、トランプ氏の言動を注視する考えを強調した。
プーチン大統領が、トランプ氏に祝福のコメントを出すかどうかは「分からない」と述べるにとどめた。ロシアが米大統領選に介入したと批判されていることに関しては、「我々は強く否定する」と語った。【11月6日 読売】
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****トランプ氏勝利宣言でロシア・報道官「米は国内問題に対処を」****
アメリカ大統領選挙でトランプ氏が事実上の勝利宣言をしたことに対し、ロシア外務省のザハロワ報道官はアメリカは国内問題に対処する必要があると述べました。

ザハロワ報道官は6日、国営メディアのインタビューで今回の大統領選を通じてアメリカは深刻な二極化に陥っていると指摘。他国の問題よりも自国の問題に対処するべきだと述べました。

ロシアのウクライナ侵攻を巡り、戦争を一日で終わらせるとするトランプ氏の公約については具体的な行動が必要だと述べ、懐疑的な姿勢を示しました。【11月6日 KHB】
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【盟友復活を喜ぶイスラエル・ネタニヤフ首相】
イスラエル・ネタニヤフ首相は盟友トランプ氏復活をもろ手をあげて歓迎。

****ネタニヤフ首相トランプ氏祝福「歴史上最高のカムバック」一方ハマスは****
アメリカ大統領選挙でトランプ氏が勝利したことを受け、イスラエルのネタニヤフ首相は「歴史上、最高のカムバック」と称賛しました。

ネタニヤフ首相は6日、自身のSNSにトランプ氏と妻メラニア氏に宛てて「歴史上、最高のカムバック。おめでとう」と祝福のメッセージを投稿しました。

そのうえで「あなたのホワイトハウスへの復帰はアメリカにとって新たな始まりであり、イスラエルとの偉大な同盟関係を力強く再確認する意味を持つ」と強調しました。

トランプ氏は前回の任期中に国際的に認められていないエルサレムを首都と認定してアメリカ大使館を移すなど極端な親イスラエル政策を取ってきました。

ガザ地区やレバノンで戦闘を続けるネタニヤフ首相にとっては望んでいた形になったといえます。

一方、ロイター通信の取材に対し、イスラム組織「ハマス」はトランプ氏の勝利演説に触れ、「戦闘を数時間以内に止められると言う彼の発言がどう結果に結び付くかが試される」と述べました。

また、「バイデンの失敗から学ぶように求める」とも訴えました。【11月6日 テレ朝news】
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ガザ地区住民のなかには、トランプ氏のイスラエル支援で戦闘が長引くことへの懸念も。

****ガザ住民「悪夢続く」と落胆 イスラエル首相は祝意*****
「戦闘はすぐに終わらない。悪夢が続く」。米大統領選でトランプ前大統領が勝利したことに、戦闘が長引くパレスチナ自治区ガザでは6日、住民から落胆や懸念の声が上がった。

トランプ氏は勝利演説で「戦争を終わらせる」と宣言したが、これまでの姿勢はイスラエル寄りが鮮明。ネタニヤフ首相は「歴史的に最も偉大な(大統領への)復帰だ」と祝意を示した。

ガザ中部で避難生活を送る無職ファリダ・アルグルさん(27)は電話取材に「トランプ氏はイスラエルを熱狂的に支持している。戦闘はすぐには終わらず、それどころか激化するだろう」と声を落とした。

イスラエルの後ろ盾でガザの停戦交渉を仲介する米国の大統領選は、戦闘の行方も左右するとして結果を気にしていたという。

理学療法士ファトマ・ムサさん(23)は「米国はいつもイスラエルを擁護している。大統領が新しくなっても何も期待することはない」と言い切った。無職のヘシャム・アドナンさん(37)は「2人の子どもを抱え、米国の選挙を気にしている場合ではない」と嘆いた。【11月6日 共同】
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トランプ復権でネタニヤフ首相が更に強気になると思われますが、それに対しハマス・ヒズボラがどのように反応するのか・・・場合によっては停戦が早まることも。

【イランの改革派ペゼシュキアン大統領はアメリカの強力が得られず国内的に苦しい立場に】
イランは表向きは「アメリカの大統領選はイランとは無関係」といった姿勢を見せてはいますが、改革派ペゼシュキアン大統領はトランプ氏相手では核合意復活もならず、制裁解除も引き出せない、その事態に国内保守強硬派から批判される・・・と苦しい立場になると予想されます。

かつて改革派のハタミ大統領はアメリカとの関係改善を梃子にした低迷するイラン経済の活性化を目論みましたが、アメリカがこれに応じなかったことで、国内保守強硬からの突き上げを受け弱体化して、国内の改革も頓挫しました。

****イラン政府の広報官「誰が大統領でもイランの政策変わらない」 米大統領選の結果受け****
アメリカ大統領選挙でトランプ氏が勝利を確実にしたことについて、イラン政府の広報官は「誰が大統領になっても政策は変わらない」と述べました。

イラン国営通信は5日、政府の広報官が「アメリカの大統領選はイランとは無関係で、心配することはない」とコメントしたと報じました。

さらに「アメリカとイランの一般的な外交政策は誰が大統領になるかでは変わらない」とも述べたということです。

ハマスやヒズボラなどのイスラム武装組織を支援しているイランとイスラエルの後ろ盾になっているアメリカとの関係は悪化の一途をたどっています。

2018年には当時のトランプ大統領がイランの核開発を制限する「イラン合意」からの離脱を宣言し、経済制裁を再開したため、反発したイランも核開発を再開したとみられています。【11月6日 テレ朝news】
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【現在は対中国強硬姿勢をみせるトランプ氏に中国は警戒 しかし、「取引」がうまくいけば台湾も手に入る?】
中国への強硬姿勢を示すトランプ氏の復権に中国は当然警戒はしていますが、トランプ氏相手なら「取引」でなんとでもなるという思いもあるのでは? 台湾についても。

****中国はトランプ氏の“勝利宣言”をどう受け止める?注目は「関税」と「台湾」****
中国はトランプ氏の“勝利宣言”をどのように受け止めるでしょうか?中継です。

中国が最も警戒しているのは、トランプ氏が「関税」を武器に中国に再び貿易戦争を仕掛けるのでは、ということです。習近平国家主席はトランプ氏が大統領時代、何度も会談しており、ある意味、よく知っている仲と言えるでしょう。

しかし、トランプ氏は予測不能なところがあり、やりにくいと思っているようです。

トランプ氏の再登場で中国が警戒すること。それは「関税」と「台湾」です。

前回、トランプ政権は中国に対し関税措置を発動し、中国もこれに報復するなど、激しい貿易戦争を繰り広げました。それが再び起きるのではないか。中国は非常に警戒していると言えるでしょう。

もう一つは台湾です。先日、トランプ氏が「中国が台湾に侵攻すれば、最大200%の関税を課す」と発言したことに対し、中国政府はさっそく反応しましたが、どのような台湾政策をとるのか、注視しているものとみられます。【11月6日 TBS NEWS DIG】
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上記の事柄はトランプ氏の当選が確実になって数時間の間の話ですので、これから続々といろんな動きがあるでしょう。

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日米関係  トランプ氏復権でアメリカが変質するなら再考の余地も

2024-10-23 19:32:13 | アメリカ
(大統領選の結果に憤慨して連邦議会議事堂周辺に集まったトランプ支持者(2021年1月6日) 【10月22日 Newsweek】)

【「トランプ優勢」の気配が濃厚に】
注目のアメリカ大統領選挙は「トランプ優勢」の気配が濃厚になっています。候補者に名乗り出た当時勢いのあったハリス氏ですが、このところは「失速」気味で、全米ではハリス氏がまだわずかにリードしているものの、肝心の激戦州でトランプ氏の優位が強まっているためです。

****米大統領選挙:ハリス氏が失速!? 「今日」投開票ならトランプ氏勝利?****
以下は、16日までの報道や世論調査結果を基にした、あくまで「現時点」での評価です。投開票日までの3週間弱の間に状況は大きく変化するかもしれません。

トランプ氏が優勢に!?
11月5日に投開票を迎える米大統領選において、民主党ハリス氏の勢いに衰えが見え始めています。

RealClearPolitics(以下、RCP)によれば、全国の世論調査でハリス氏は8月以降に終始、共和党トランプ氏をリードしてきました。ただ、両者の差はわずか(いうなれば誤差の範囲内)。10月上旬に2.2ポイントあった差は15日時点で1.7ポイントに縮小しています(直近、11の世論調査の平均)。

ハリス氏にとって深刻なのは、大統領選の帰趨を決しうるスウィングステート(接戦州)でトランプ氏のリードが目立つことです。同じくRCPによれば、7州のうち6つでトランプ氏がリード。ハリス氏が唯一リードするウィスコンシンでの差はわずかに0.3ポイントです。

RCPによれば、以上から現時点で投票が行われたら、獲得選挙人数236対302でトランプ氏勝利との結果になるようです。(後略)【10月17日 マネースクエア】
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獲得選挙人数236対302・・・・全米での得票数でハリス氏に劣ったにしても、トランプ氏の圧勝です。

こうした状況を踏まえて、シビアな「賭け」の世界でもトランプ氏勝利に傾いています。

****米大統領選、予測市場でトランプ氏勝利の賭け金が膨らむ****
ブロックチェーンベースの予測市場「ポリマーケット」のトラッカーによると、11月の米大統領選で共和党候補のトランプ前大統領が勝利することへの賭けが今月21日午前時点で総額4300万ドル弱となり、18日時点の総額3000万ドルから大きく膨らんだ。(中略)

大統領選に関する世論調査ではトランプ氏と民主党候補のハリス副大統領が拮抗しているのに対し、ポリマーケットではトランプ氏の勝率が63%に急上昇し、ハリス氏の37%に水をあけている。

このためソーシャルメディアの利用者らと予測市場の専門家らは、大口の賭けが予測市場を揺さぶっているのか、それとも予測市場の方が先行指標として優れているのかで疑問を呈している。【10月22日 ロイター】
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認めたくない予測ですが、これが現実です。

【民主主義と相容れないトランプ氏、彼を熱烈支援する宗教右派の異様さ】
いつも言うように私はトランプ氏をまったく評価していません。それは政策以前の問題であり、彼の人間性、民主主義と相容れない、強権支配を好むような性向によるものですが、そのあたりは蹴り返しになりますし、(支持・不支持とは関係なく)皆が承知しているところですから、今回は省きます。

そのトランプ氏を熱烈に支持する宗教右派の存在も、個人的には異様に思えます。

****真の狙いは「世界支配」...トランプを「神に選ばれし者」と信じるキリスト教右派の集会を覗いてみたら【潜入ルポ】****
<トランプ暗殺未遂事件は「予言されていた」──なぜ福音派の人々は、3回の結婚歴があり女癖も悪い億万長者を崇め始めたのか>

ミトンの形をしたアメリカ・ミシガン州の親指部分で、ある蒸し暑い夕方、預言者を名乗る人物が白いテントの下で700人のキリスト教徒に保証した。あなた方は死を逃れられる、と。
どうやって? 米大統領選の激戦州であるこの州で、共和党の大統領候補ドナルド・トランプ前大統領を勝たせることで、だ。

理由は単純明快。ここに集まったキリスト教徒は全員、このテントから出る頃にはトランプ陣営の選挙戦を手伝うことを自らの使命とするようになる。その任務に取り組んでいる間は死ぬ心配はない。神は自らが与えた使命を果たすまで、そのしもべを天に召すことはないからだ。

「死が迎えに来たら、自分にはまだ果たすべき使命があると言えばいい」──自称預言者のランス・ウォルナウは聴衆にそう教えた。

11月の大統領選本選を控え、激戦州を回って宗教イベントを催す「勇気のツアー」。ここミシガン州ハウエル郊外は3つ目の巡回先だ。

ツアーを主催するウォルナウはテキサス州在住の60代。セールストークが得意なキリスト教福音派の伝道師だ。3日間にわたるイベントは、戦いへの呼びかけであり、選挙戦略会議であり、そして何より古風なペンテコステ派のテント集会である。

このイベントはまた、アメリカのキリスト教徒の間で急速に勢力を拡大しつつある好戦的な宗教右派のパワーを見せつける場ともなった。

トランプはアメリカの宗教改革に重要な役割を果たし、来るべき「大覚醒(信仰の復興)」のカタリスト(触媒)となる運命にある──そう信じて疑わない信徒たちがここに集まっている。

彼らに言わせれば、トランプは現代版のキュロス2世だ。そう、強大な帝国を打ち立て、ユダヤ人を「バビロンの捕囚」から解放して約束の地に帰還させたアケメネス朝ペルシャの開祖──無信仰でありながら、旧約聖書にその名を残した偉大な帝王の再来だというのである。

今年7月に起きた暗殺未遂事件で、トランプが血を流しながらこぶしを突き上げ、無事をアピールしたことで、そうした見方がますます強まった。今ではここに集まった信徒たちは、トランプの行く手を阻む者がいれば、それが何者であっても、「撃破すべき邪悪な勢力」と見なす。

福音派になじみがないアメリカ人は、こうした宗教右派の運動がこの国のキリスト教信仰の在り方を急速に変えつつあることに気付いていないだろう。政治とは、邪悪な勢力と神の軍隊との戦いにほかならない。今やそう信じてトランプを全力で推すキリスト教徒が大勢いるのだ。(後略)【10月22日 Newsweek】
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長い記事で、その内容についていけず、途中で読むのやめました。

“トランプの行く手を阻む者がいれば、それが何者であっても、「撃破すべき邪悪な勢力」と見なす。”・・・これはもはや民主主主義でも何でもありません。

もし、そうした価値観に基づく政権が成立したら、「侍女の物語」が描くような宗教右派による強権支配体制、支配層・その支持者の価値観から外れる者の人権ははく奪される世界・・・そうしたディストピアも現実味を増すでしょう。

【同盟関係から用心棒に変わるアメリカとの関係】
そこまで突き進むことがないにせよ、国内だけでなく国際関係も大きく変わってきます。

「守ってほしけりゃ金払え」というのは、かねてよりのトランプ氏の持論です。

****日本も無関係ではない。トランプの「守ってほしけりゃ金払え」を警戒せよ*****
止まないトランプ砲:守って欲しければカネ払え!
ぶっちゃけ、本音でしゃべるのが持ち味で、絶大な人気の源なのでしょうが、そこには品性のかけらも感じられないのがトランプ前大統領です。(中略)

在韓米軍兵士は4万人ほどですが、更なる増員や装備の拡充を進めています。その状況を「待ってたぜ!俺に任せろ」とばかり、口先介入してきたのがトランプ氏です。

これまで金正恩氏とは「ラブレターを交換するほど親しい」と言いたい放題だったトランプ氏ですが、「北朝鮮は何をしでかすか分からない。危険な兆候がある。北は大量の核兵器を保有してるからな」と述べ、「アメリカが手助けしてやるから、カネを払えよ」と言い出しました。

しかも、その金額が半端ありません。
「在韓米軍の駐留維持費として年間100億ドルは最低限払ってもらう」。

実は、2週間前、韓国とアメリカは2026年の在韓米軍の駐留経費を11億3000万ドルと設定し、韓国政府が負担することで合意したばかりでした。トランプ氏は何とその10倍ものカネを韓国に請求すると言うのです。

曰く「韓国は豊かになった。アメリカのお陰だ。韓国人は喜んでいる。その幸せを北朝鮮が潰しに来るかもしれない。だったら100億ドルくらいは安いもんさ」。

不動産王として経験を活かし、北朝鮮にもリゾート開発計画を売り込んでいるトランプ氏ですが、「取れるところから目いっぱい分捕る」というのがトランプ流なのでしょう。

要は、トランプ氏にとっては、敵も味方も関係ありません。在日米軍の駐留経費についても、トランプ氏は少な過ぎる、日本はもっと払えると主張。ぶっちゃけ、日米地位協定の見直しを画策している石破新首相にとっては手強い相手になるはずです。【10月21日 浜田和幸氏 MAG2NEWS】
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【ASEAN 同盟相手としてアメリカを中国が上回る トランプ復権でアメリカが変質するなら日本も再考の余地あり】
いつも言うように、「守ってほしけりゃ金払え」というのは価値観の共有をベースにした同盟国の発想ではなく、「用心棒」の発想です。

戦後、日本は民主主義という価値観を共有するアメリカとの同盟関係を基軸としてきましたが、アメリカが民主主義を捨て、用心棒となるのであれば、日本の外交姿勢の基軸も再考する必要があります。

東南アジア・ASEANN 諸国にあっても、アメリカと中国のどちらとの関係を重視すべきか、対応が分かれています。

****米中対立の影響で揺れるASEAN 一体性失われ、親米・親中・非同盟の3つのベクトルが共存する現実****
米中対立や台湾情勢、ウクライナ侵攻など世界の分断はいっそう顕著になり、国連安全保障理事会の機能麻痺は既に回復不能なところまで来ている。

ウクライナ問題で決議を通そうとしても、それにはロシアが拒否権を行使し、紛争が激化する中東でも、イスラエルを非難するような決議でさえも米国はそれを通すことを許さず、世界の安全と平和に対する役割を安保理に託した国連憲章の権威もどこかへ消え去ってしまったかのうようだ。 

そして、世界の分断という問題はASEANでも顕在化している。ASEANというと地域的協調・協力、地域的一体性というイメージが先行するが、米中対立やウクライナ侵攻などの影響を受ける形で、各国によって独自の路線を突き進み、ASEANで1つの答えを見出すということが難しくなってきている。

例えば、フィリピンは新米路線に舵を切っている。(南シナ海での中国との衝突頻発を受けて)マルコス大統領は安全保障面で米国との関係を強化するなど、米国寄りの姿勢を鮮明にしている。

反対に、ラオスやカンボジアとったASEAN加盟国は、中国寄りの姿勢に徹している。ラオスは長年中国から多額の財政支援を受け、経済発展やインフラ整備などを強化し、近年では首都ビエンチャンと中国南部・昆明を結ぶ高速鉄道が中国の資金によって完成した。

今日、ラオスはASEANの中でも最も中国からの影響を強く受け、その外交姿勢も当然ながら親中的であり、昨年7月には米国にいる家族に会うために中国を出国した人権派の弁護士が経由地のラオスで現地警察に拘束されたが、拘束理由は明らかになっていない。

カンボジアも同様に中国による一帯一路プロジェクトの影響を受け、湾岸施設や交通インフラなどの建設などを強化し、多くの中国企業がカンボジアに進出している。

首都プノンペンを通る環状道路は習近平国家主席の名前を冠した習近平大通りと命名され、カンボジアの学校では英語より中国語が重視されるケースも珍しくなく、フィリピンとは全く異なる外交姿勢がそこにはある。

一方、ASEANを含むグローバルサウス諸国の間では、米中対立やウクライナ戦争など大国絡みの争いへの不満や懐疑心が拡大している。

ASEANで最大の人口を有するインドネシアの政府高官らは、米中はASEANを新たな冷戦の主戦場にするべきではないなどと大国に不満を断続的に示しており、それとは距離を置く姿勢に徹している。

インドネシアでは10月20日、ジョコ前政権で国防大臣を務めたプラボウォ氏が新大統領が就任したが、プラボウォ大統領は如何なる軍事同盟にも参加せず、どの国とも友好な関係を保ついというジョコ前政権の全方位外交(非同盟外交)を継続する考えを示した。

インドネシアは国益を第一に大国間対立とは一線を画し、中国に寄り過ぎない、米国にも寄り過ぎないという、フィリピン、カンボジア、ラオスとは異なる第3の選択肢に徹することだろう。

今後各国でどういった政権が誕生するかによっても、中国との距離感、米国との距離感に変化が出てくると思われるが、今日のASEANは一体性溢れるものではなく、親米、親中、非同盟という3つのベクトルが内在する状態と言えよう。【10月22日 治安太郎氏 まいどなニュース】
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“ASEANというと地域的協調・協力、地域的一体性というイメージが先行するが”とありますが、ASEANの分断、そして統一的対応がとれないことは以前からの話です。

それより注目されるのは、下記の数字。

****ASEAN、同盟組むなら「中国選ぶ」が5割超 初めて「米国」上回る 識者ら調査****
東南アジア諸国連合(ASEAN)の10加盟国の識者らを対象にした年次調査で、対立する米国と中国のいずれかと同盟を結ぶことをASEANが迫られた場合、中国を選ぶべきだとの回答が2020年の質問設定以来初めて、米国を上回った。

調査はシンガポールのシンクタンク「ISEASユソフ・イシャク研究所」が今年1〜2月、研究者や市民団体代表、政府関係者ら約2千人を対象に実施した
調査の結果、中国との同盟を選んだ回答は過半数の50・5%を占めた。米国は49・5%だった。23年の前回調査では、米国が61・1%、中国が38・9%だった。

今回の調査ではマレーシア、インドネシア、ラオス、ブルネイの各国で中国の支持が顕著に増加し、7割を超えた。各国とも巨大経済圏構想「一帯一路」などで中国による貿易、投資が拡大している。

一方、中国と南シナ海で領有権争いを抱えるフィリピンは8割超が米国を支持し、ベトナム、シンガポールなども過半数が米国を選択。各国で判断が割れた。

また、中国の経済的影響力の拡大には全体の6割超が「懸念する」と答え、警戒感も浮かび上がった。

米中対立のリスク回避のために信頼できる戦略的パートナーとしては、欧州連合(EU)が37・2%でトップ、次いで日本(27・7%)が選ばれ、インドやオーストラリア、英国、韓国を上回った。【10月22日 産経】
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前述のように、アメリカが第2次トランプ政権で変質を加速するのであれば、日本もパートナーについて再考する必要があります。

もちろん中国とは価値観が相容れませんが(中国からすれば歴史認識で日本の立場を受け入れがたいという面もあるでしょう)、互いにそうした違いがあることを前提にしたうえでの、現在・将来の経済的関係、過去の文化的つながり、地理的近さ等々を勘案した関係もあり得るのかも・・・・。あくまでも、「選択肢のひとつ」という話ですが。
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アメリカ  災害対策、支持率の男女差から見た大統領選挙

2024-10-08 22:11:23 | アメリカ

(被災地を視察するハリス副大統領とトランプ前大統領【10月4日 日テレNEWS】)

【接戦 虚偽情報など過激さに拍車をかけるトランプ氏】
11月5日の投票日まであとひと月を切ったアメリカ大統領選挙は、依然としてどちらに転ぶか分からない接戦となっています。

支持率の世論調査はいろいろありますが、今日目にしたものが↓。

****ハリス氏のリード、3ポイントに縮小 経済でトランプ氏優位=調査****
ロイター/イプソスが実施した11月の米大統領選に関する最新世論調査によると、民主党候補のハリス副大統領の支持率が46%で、共和党候補のトランプ前大統領の43%をわずかに3ポイント上回った。

調査は今月7日までの4日間に実施した。先月20─23日の調査ではハリス氏がトランプ氏を6ポイントリードしていた。

経済問題でトランプ氏を支持する声が多かったほか、不法移民が犯罪を犯しやすいとのトランプ氏の主張に一部の有権者が共鳴した可能性がある。多くの専門家は同氏の主張に根拠はないと指摘している。

調査の誤差は約3ポイント。

有権者が最大の課題として挙げたのは経済で、44%が「生活費」への取り組みでトランプ氏が優れていると答えた。ハリス氏が優れているとの回答は38%だった。

次期大統領が取り組むべき経済問題については、生活費が最重要との回答が全体の約70%を占め、「雇用」「税金」「暮らしの向上」との回答はごくわずかだった。いずれの課題でもハリス氏よりトランプ氏を支持する声が多かったが、富裕層と一般市民の格差解消については、42%対35%でハリス氏の支持がトランプ氏を上回った。

移民問題に対する懸念も、トランプ氏の支持拡大につながっているとみられる。有権者の53%は「不法入国した移民は公共の安全にとって危険だ」との意見に賛成。反対は41%だった。

一方、知性の鋭さについてはハリス氏を支持する有権者が多く、「ハリス氏は知的な鋭敏さがあり、課題に対処できる」との意見に同意するとの回答は55%、トランプ氏については46%だった。

激戦州での支持率は互角で、多くが誤差の範囲内だった。調査は登録有権者1076人を含む全米の成人1272人を対象にオンラインで実施した。【10月8日 ロイター】
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上記調査結果はひとつの事例であり、また、アメリカ大統領選挙においては全国支持率より激戦州の動向が結果を左右するということもあります。

その前提で見ても、互いに相手を引き離せない接戦が続いているのは間違いないでしょう。

“不法移民が犯罪を犯しやすいとのトランプ氏の主張”については、「ハイチ移民がペットの犬・猫を食べている」といった発言の他、最近では「移民が“悪い遺伝子”を持ち込んでいる」といった根拠のない発言も。

この種の発言は、根拠があろうがなかろうが、不法移民への嫌悪感・不安を抱える者には肯定的に受け入れやすく、そこがトランプ氏の狙い目でしょう。

バイデン政権の災害対応を不法移民問題と結びつけて、虚偽の情報を広める主張も。

****トランプ氏、接戦にいら立ち 中傷、虚偽情報など過激さに拍車****
11月5日の米大統領選まで1カ月を切る中、共和党のドナルド・トランプ前大統領(78)の過激な言動に拍車がかかっている。

「政策論争に集中してほしい」という共和党や陣営幹部の願い通りには動かず、対抗馬である民主党のカマラ・ハリス副大統領(59)を中傷。バイデン政権の災害対応を不法移民問題と結びつけて、虚偽の情報を広めている。世論調査で接戦が続く中、思うように運ばない選挙戦へのいら立ちも透けて見える。

「ハリスとバイデン(大統領)は、連邦緊急事態管理局(FEMA)のほとんど全ての予算を不法移民に与えた」。トランプ氏は7日に自身のソーシャルメディアへの投稿でこう主張した。9月下旬に米南部で200人以上の死者が出たハリケーン「へリーン」への政府の対応を批判する文脈だが、主張内容には根拠がない。

トランプ氏は10月上旬から「FEMAの災害対応の予算が、不法移民のための住宅整備に転用された」と虚偽の内容を主張している。FEMAは税関・国境警備局(CBP)に協力して移民向けのシェルターを運営しているが、事業にはCBPの予算があてられており、FEMAの災害対応の予算とは別枠だ。

FEMAは、この主張は「虚偽だ」と反論したが、トランプ氏は「10億ドル(約1480億円)がFEMAから盗まれ、不法移民に使われた」と言動を過激化させている。

トランプ氏には、災害対応への批判を不法移民の問題と結びつけることで、バイデン政権のナンバー2であるハリス氏へのダメージを増幅させたい思惑がある。

被害が大きかった南部ノースカロライナ、ジョージア両州は、大統領選の勝敗を左右する接戦州でもあり、有権者の不満をたきつける効果も狙っているとみられる。南部には別のハリケーン「ミルトン」が接近中で、トランプ氏がさらに批判を強める可能性がある。

しかし、虚偽や誇張を避けて「自然災害に対応すべきFEMAが、不法移民の支援に関わっていることを、国民は不満に思っている」(共和党のジョンソン連邦下院議長)などと正面から批判することも可能で、トランプ氏の言動の過激さは際立っている。

トランプ氏は9月下旬以降、ハリス氏への個人攻撃も強めている。自身の言動を棚に上げて、ハリス氏を「ウソつき」と批判し、「生来の精神障害がある」とまで中傷した。陣営や共和党内には「過激な言動は、まだ投票先を決めていない無党派層や穏健派に忌避される」との懸念があるが、トランプ氏本人はどこ吹く風だ。【10月8日 毎日】
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【大統領選挙に大きく影響する災害対応】
大統領選挙終盤でのハリケーン災害は、単に自然災害というだけでなく大統領選挙に大きな影響を与えます。

2005年の「カトリーナ」の際には、当時のブッシュ政権の対応が後手にまわり批判を浴びました。それが、2006年の中間選挙での共和党の惨敗に影響を与えた可能性があります。他方で、2012年の大統領選直前のハリケーン「サンディ」の場合には、オバマ大統領の対応が評価され、同年の再選の一因になったともいわれています。【10月4日 NRIより】

ハリケーン「ヘリーン」は9月26日夜、勢力が5段階で2番目に強い「カテゴリー4」のハリケーンとしてフロリダ州北西部に上陸、その後は熱帯低気圧に弱まったものの、洪水や建物の倒壊など甚大な被害を引き起こしました。

10月4日時点の報道では死者が200人を超え、行方不明者が数百人いる可能性が報じられており、2005年に米南部を襲った「カトリーナ」以来の犠牲者数になる模様です。被害の中心はノースカロライナ州です。

上記のような災害対策と大統領選挙の関係を踏まえて、トランプ氏はバイデン政権の対応を批判しています。

*****ハリケーン「ヘリーン」死者、118人に トランプ氏が対応批判****
米南東部を襲ったハリケーン「ヘリーン」による死者は、9月30日時点で118人に達した。ハリケーン被害をめぐってはドナルド・トランプ前大統領が政府の対応が遅いと批判しているのに対し、ホワイトハウスが反論するなど、大統領選を控え論点の一つとなっている。

南東部の複数の州では依然、数百人の安否が確認されておらず、救急隊による懸命な捜索活動が続けられている。ジョー・バイデン大統領は、大きな被害を受けたノースカロライナ州を2日に訪れて救援活動を視察すると発表した。

トランプ氏は9月30日に激戦州のジョージアを訪問。大量の救援物資を届けると約束した。一方で、バイデン氏はハリケーン被害に対処せず、週末はデラウェア州の自宅で「寝ていた」と批判した。

バイデン氏は大統領執務室で記者会見し、週末は自宅で「ずっと働いていた」と反論した。またトランプ氏について、連邦政府がハリケーンによる被害を無視し、同氏の支持者を支援していないという根拠のない主張をしているとし、「彼はうそをついている」と非難。(後略) 【10月1日 AFP】
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一方、ハリス米副大統領は5日、ハリケーン「ヘリーン」の襲来で大規模な被害を受けたノースカロライナ州を訪問し、救援活動担当者やボランティアらと面会した。米大統領選挙の激戦州である同州でヘリーンの被災者を支援する姿勢をアピールしています。

共和党で大統領候補を争い、次期も期待されるフロリダ州デサンティス州知事とのバトルも。

****ハリス氏、電話拒否に「無責任」 災害対応で、フロリダ知事に不満****
米大統領選の民主党候補ハリス副大統領は7日、ハリケーン「ヘリーン」による被害を受けた南部フロリダ州の被災地対応を話し合おうと共和党のデサンティス州知事に電話したが、会話を拒否されたとして「全く無責任だ」と不満をあらわにした。記者団に語った。

これに先立ち、NBCテレビはデサンティス氏がハリス氏からの電話について「政治的だ」として拒否したと報じていた。党派対立が被災地支援にも影響を与えかねない状況になっている。

ハリス氏はデサンティス氏の対応について「危機的な状況にもかかわらず政治的な駆け引きをするのは自分勝手だ」と反発した。【10月8日 共同】
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こうした人間界の「政治ゲーム」を知ってか知らずか、そのフロリダに再び強力ハリケーン「ミルトン」が襲来します。

****アメリカ南部 “最強”ハリケーンが再び上陸の恐れ フロリダ半島を横断か****
ハリケーンで甚大な被害を受けたばかりのアメリカ南部では、最強レベルの勢力にまで発達した新たなハリケーンが再び上陸する恐れが出てきました。

アメリカの国立ハリケーンセンターは7日、メキシコ湾にあるハリケーン「ミルトン」が5段階で勢力が最も強い「カテゴリー5」になったと発表しました。「ミルトン」は9日にも上陸して、フロリダ半島を西から東へ横断するとみられ、大規模な高潮や強風へ警戒するよう呼びかけられています。

フロリダ州には9月、ハリケーン「へリーン」が上陸し甚大な被害が出たばかりで、バイデン大統領はフロリダ州に非常事態宣言を出しました。すでに高速道路では避難する住民の車で渋滞が発生しています。(中略)

ハリス副大統領も住民に対して、「避難命令が出た場合は必ず従ってほしい」と呼びかけました。【10月8日 ANNニュース)
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【「男性VS女性」の様相も】
両候補の支持率を左右する要素としは、経済対策、移民問題、中絶問題、外交政策等々いろいろありますが、興味深いのは男女の支持率の差が今回はこれまで以上に明瞭になっていることです。

****米大統領選はまさに「男性VS女性」、広がる男女間の支持率−女性支持伸ばすハリスと挽回へ奔走するトランプ****
男性優位のトランプ候補VS女性の支持広げるハリス候補――。投票日まで1カ月を切った米大統領選では、両候補をめぐる男女間の得票差が勝敗の決め手となる可能性が高まってきた。米メディアは「史上かつてない男女間の戦いの様相」とまで評している。

男性支持伸ばすトランプ、女性支持伸ばすハリス
米NBCテレビが去る9月22日発表した有権者動向調査結果によると、女性有権者層での支持率ではハリス候補が58%、トランプ候補が37%と、ハリス候補が21%の大差をつけている。

しかし逆に、男性支持率ではトランプ候補52%に対し、ハリス候補は40%にとどまり、トランプ氏が12%リードしている。

ABCテレビが去る9月4日、公表した調査結果では、女性支持率でハリス候補が13%、男性支持率でトランプ候補が5%それぞれ相手候補を上回っており、その後3週間でともにその差がさらに大きく開いた可能性がある。

男女間での両候補支持率は、各テレビ局調査によって多少のばらつきがあるものの、どの調査にも共通する傾向として、①ハリス、トランプ両候補ともに、民主、共和それぞれの党大会で候補指名獲得後、有権者全体の支持率に大きな変化はない、②しかし、ハリス候補はその後、女性支持率で大きく伸ばし、逆にトランプ候補の男性支持率も8%前後も高くなった――ことが指摘されるという。

男女間の支持率ギャップについて、2020年大統領選を振り返ると、バイデン氏は女性獲得票でトランプ氏を13%上回り、男性票では両者ほぼ互角だった。また、16年選挙では、トランプ氏が男性獲得票で12%の差をつけ勝利したものの、女性獲得票では、ヒラリー・クリントン候補に同じ12%のリードを許した。

しかし、今回は、ハリス候補が女性有権者間でトランプ候補を21%引き離す一方、男性間ではトランプ氏がハリス氏に12%の差をつける構図となっている。まさに「男性対女性の大統領選挙(boys versus girls election)」(ABCテレビ・ニュース解説者)といわれるゆえんだ。

とりわけ今回は、女性層のハリス傾斜が目立つ。女性候補だけに、ある程度、女性支持が高まるのは、16年大統領選でのクリントン候補の場合を見ても当然と言える。だが、今年の場合、ハリス氏に対する女性票がかつてなく集まりつつ背景として、以下のような点が指摘されている

〈黒人女性支持層のうねり〉
非営利研究機関「Highland Project」が最近、黒人女性有権者を対象に実施した調査結果によると、ハリス候補について65%が「絶対支持」、16%が「一定支持」、合わせて81%が好意的に受け止めていることが明らかになった。これに対し、トランプ候補についての支持はわずか3%にとどまった。

ハリス候補を支持する理由として、トランプ大統領になった場合、「米国民主主義が脅威にさらされる」「人種差別が拡大する」「生活が脅かされる」などの点を挙げている。(中略)

〈白人女性動向の変化〉
米有権者を男女、人種別にグループ化した場合、「白人女性」は全体の40%を占め、最大票田となっており、その投票動向はこれまでの大統領選においても特に重視されてきた。

16年大統領選では、クリントン候補が女性全体では54%得票したのに対し、トランプ候補は42%にとどまった。しかし、白人女性得票率では、逆にトランプ候補が52%、クリントン候補43%となり、トランプ候補が9%上回った。

米政治評論家たちの当時の解説によると、クリントン候補の最大の敗因が「白人女性の間での支持が広がらなかったため」とされた。(中略)

しかし、今回選挙では、そのカギとなる白人女性の投票動向に微妙な変化が見られる。その一例として、米メディアが大きく報じたのが、銃砲規制強化を求める全米組織「Moms Demand Action(ママたち、立ち上がれ!)」など、いくつかの白人女性グループによるハリス候補支持呼びかけの動きだ。

同組織は去る7月26日、米大統領選で急遽、ハリス氏がバイデン大統領に代わり民主党候補に躍り出た機会をとらえ、オンラインの「ズーム」で会員たちに「トランプ絶対阻止」「ハリス支持」を呼びかけたところ、1夜のうちに、全米各州から16万4000人が賛同、1日だけでハリス選挙組織向け政治献金も850万ドルの巨額に達した。

その後も、230人以上に上る退役エリート将校たちが、あいついで「民主主義ルール侵犯」などを理由に「トランプ不支持」「ハリス支持」声明を出したのに合わせ、夫人たちの間でも同様の動きが伝えられており、白人女性全体としてのトランプ支持率は16年選挙と比較しても、今後さらに低下の可能性が大きい。

〈ヤング女性層の圧倒的支持〉
今回、女性支持率でハリス候補がトランプ候補を大きく引き離し始めた最大要因は、ヤング世代の動向だ。
米ハーバード大学政治大学院は、18~29歳の有権者を対象に去る9月4~16日にかけて実施した支持率調査結果を発表した。それによると、男性ではハリス候補53%に対しトランプ候補36%と、ハリス候補が17%差をつけている。しかしそれ以上に、注目されるのが同じ年齢層の女性の動向だ。

ハリス支持は70%にも達する一方、トランプ支持は23%と低迷、その差は47%と、男性間ギャップの2倍以上となっている。(中略)

固い男性支持を見せるトランプ
他方、ジェンダー・ギャップのもう一方の男性支持では、今のところ、トランプ候補がハリス候補に一定の差を保っている。 その最大要因は、男性有権者間での「女性候補」に対する根強い抵抗感だ。

20年大統領選での男性得票率を見ると、トランプ候補(49%)、バイデン候補(48%)と、ほぼ互角だった。しかし、16年選挙の男性得票率では、トランプ候補(53%)が女性のクリントン候補(41%)に大差をつけ、結局、この差が勝利につながった。

今回も、トランプ候補が多くのスキャンダルを抱えながらも、男性支持率でハリス候補を上回っているのは、共和党男性支持者層の間で、“女性アレルギー”が根強く存在していることを物語っている。(中略)

女性支持率の大きなギャップをいかに埋めるかがトランプ陣営にとって、焦眉の急となってきた。 議会共和党幹部の間では、「このまま女性有権者の支持離れが続けば命取りになる」と危機感を強め、トランプ氏に対し、これまでの女性蔑視発言の自制などを求める動きが目立ち始めている。

トランプ候補は窮余の一策として、去る1日、女性有権者の最大関心事のひとつとなっている人工中絶問題に関連し、大統領に返り咲いた場合、全米での中絶禁止措置に対する「拒否権発動」の意向を表明した。

トランプ氏はこれまで、全米での中絶禁止措置についてはあいまいな態度をとり続け、去る8月下旬、J.D. バンス共和党副大統領候補が「トランプ氏は(大統領として)全米中絶禁止には拒否権を発動するだろう」と語った際にも、「そんな話はしていない」としてバンス氏を批判していた。

それが、投票日が迫りつつあることを念頭に、トランプ氏が中絶容認を求める女性層向けに一定の譲歩を示したと受け止められている。

支持基盤である超保守派とのジレンマ
ただその一方で、トランプ氏の重要な支持基盤である南部諸州の超保守派は、女性層に関心の高い中絶問題や銃砲所持規制などでの妥協には断固反対の態度をとり続けているため、トランプ陣営としてもここにきて、あからさま軌道修正に踏み切れない事情もある。(後略)【10月8日 WEDGE】
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男性票・保守票の離反のリスクをどこまでおかして、女性票獲得にどこまでウィングをのばすか・・・選対関係者を悩ます問題です。
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アメリカ  「移民がペットを捕まえて食べている」 偽情報拡散の構図

2024-09-23 23:08:50 | アメリカ

(Xでは「ペットを救おう」などと猫やアヒルとトランプ氏をあしらった画像が多く投稿され、討論会の直前にはトランプ氏自身がSNSの「トゥルース・ソーシャル」に、生成AIで作ったとみられる、猫に囲まれた自らの画像を掲載しました。【9月21日 NHK】)

【トランプ氏 司会者の警告をさえぎって「移民がペットを捕まえて食べている」と主張】
アメリカ大統領選のテレビ討論会で、トランプ前大統領が「移民がペットを捕まえて食べている」という“デマ情報”と一般的には見られている内容を、司会者の警告にもかかわらず主張し、注目されました。

****「移民はペットを食べている」? 米大統領選討論会、両候補の発言ファクトチェック****
米大統領選挙の共和党候補ドナルド・トランプ前大統領は10日夜、民主党候補のカマラ・ハリス副大統領との初のテレビ討論会で、移民による犯罪、インフレ、後期妊娠中絶について複数の虚偽発言を繰りかえした。

一方、ハリス副大統領も、トランプ政権下での雇用喪失について誇張された主張を行ったとしてファクトチェック警告を受けた。 

CNNのファクトチェック担当記者ダニエル・デールによると、討論会の中でトランプは少なくとも33回にわたり虚偽の主張を行い、そのうちいくつかは壇上でABCテレビの司会者によって誤りを正された。 

ハイチ移民がペットを食べている? 
トランプ氏は、オハイオ州スプリングフィールドでは移民が「犬を食べている。猫を食べている。連中が食べているのは、そこに住んでいる人々のペットだ」と発言した。

これは、共和党の副大統領候補J.D.ヴァンスと複数の右派議員や右派コメンテーターが広めた虚偽の主張だ。 スプリングフィールドの警察当局はこの主張をはっきりと否定しており、フォーブスの取材にも「移民によってペットが傷つけられたり、けがをしたり、虐待されたりしたという信憑性のある報告や具体的な訴えはない」と答えている。 

トランプの発言を受け、司会者のデービッド・ミュアーがスプリングフィールド当局者の話を引き合いに出してただちに事実確認を行ったが、トランプは「テレビで」「私の犬が連れ去られ、食用にされた」と言っている人々の声を聞いたと改めて主張した。 

トランプはまた、民主党が大統領選で不法移民に投票させようとしているという根拠のない主張を繰りかえした。この点について専門家は、保守系シンクタンクのヘリテージ財団を含むさまざまな情報源のデータを引用し、米国の選挙で外国人(外国籍者)が投票する事例は「非常にまれ」であり、不法移民が投票することは「さらにまれ」だと指摘している。 

米国のインフレ率についても、トランプは「おそらく米国史上最悪だ。(中略)21%だった」と述べたが、これは事実と異なる。インフレ率は2022年半ばに9.1%と40年ぶりの高水準まで上昇したが、1980年代には14%、1974年には11.1%を記録している。 

妊娠中絶問題 
妊娠中絶の問題では、トランプは民主党を「急進派」として印象づけようと試み、ハリスの副大統領候補ティム・ウォルツが「妊娠9カ月での中絶はまったく問題ないと言っている」「出生後に殺してもOKだと言っている」などと虚偽の主張をした。即座に司会者のリンジー・デービスが「生まれた赤ちゃんを殺すことが合法な州は米国にはない」と訂正した。(中略)

ハリスの主張にも虚偽の指摘 
一方のハリスは、トランプが「大恐慌以来最悪の失業率を残した」と誤った主張をした。米国の失業率はトランプ政権下で新型コロナウイルス感染症のパンデミックが始まった直後、1930年代の世界恐慌以降で最悪の14.8%に上昇した。しかし、トランプの任期中に失業率は低下し、ジョー・バイデン大統領が就任した際には6.4%だった。 

ハリスはまた、水圧破砕法を使ったシェールガス・石油の開発(フラッキング)について、自身の考えを「2020年に明言した」と述べたが、これは完全には正しくない。(後略)【9月12日 Forbes】
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【情報拡散の発端となった女性「こんなことになるとは思ってもみなかった」】
この種の根拠のないデマはどのようにして広がったのか?

****“移民がペットを食べている””根拠ない情報はどう広がったか****
(中略)
情報の発端は
否定されたにも関わらず、「移民がペットを食べている」とする主張はいまも広がり続けています。この根拠のない情報はどこから来たのか。

最初に広がったのはアメリカの右翼団体などが多く使うとされるSNS「Gab」だったとみられています。

7月下旬に画像掲示板サイトに投稿された、黒人の男性がガチョウの死体を運んでいる画像に、「ハイチ人は公園のガチョウやアヒルを無料の食事だと思っている」とする情報が書き込まれて投稿されました。
この画像はスプリングフィールドで撮影されたものではなく、さらに男性がハイチからの移民だという情報はありません。

また、スプリングフィールドの警察も、この時点でアメリカの公共ラジオNPRの取材に対して、「『ハイチからの移民が公園でアヒルを殺している』といった報告を受けているが、そのようなものは現認していない」と否定しています。

舞台となった”スプリングフィールド”とは
 オハイオ州のスプリングフィールドは人口6万人近く。生活費が安く、工場などでの労働者が足りず仕事が得やすいという情報がハイチ人コミュニティーに広がったことで、ここ数年ハイチなどからの移民が急増し、その数は周辺を含めて1万5000人ほどとされています。

ハイチの人たちは、ハイチで不安定な情勢が続き、安全が確保されていないとして、アメリカ政府が滞在を認める措置をとっていて、スプリングフィールド市はハイチからの移民は不法滞在ではないと説明しています。

近所の人の友人が…
スプリングフィールドでは、8月27日にもインフルエンサーを名乗る住民が市の委員会で「ハイチ人が公園でアヒルを切りつけて食べている」と根拠不明の主張を行いました。

さらに9月上旬には地元住民のフェイスブックのグループに、「近所に住む人から聞いた話です。その人の娘の友人の猫がいなくなり、彼女はハイチ人の家でつるされているのを見た。ハイチ人は猫を食べるために切り刻んだ」といううわさ話が書き込まれました。
この投稿はXで拡散し、さらに最初に広がった「ガチョウの死体を持つ黒人男性」の画像をつけたものも広がりました。

しかし、投稿を書き込んだ女性はロイター通信の取材に対し、「近所の人から聞いた」と答え、その「近所の人」も「友人が友人から聞いた」と明かしています。 もとの投稿自体、「誰かに聞いた」という伝聞で根拠が不明な情報でした。(中略)

副大統領候補も イーロン・マスク氏も
この情報は根拠不明にもかかわらず、多くのフォロワーを持つ政治家なども加わって、さらに拡散されました。

9月9日には共和党の副大統領候補、バンス上院議員がXに「報告によると、この国にいるべきではない人々にペットが誘拐され食べられた」などと投稿、9月20日正午までで1100万回以上閲覧されました。

さらにトランプ氏に近い極右のインフルエンサー、ローラ・ルーマー氏や実業家のイーロン・マスク氏らも同様の情報を投稿し、なかには5000万回以上閲覧されたものもありました。

地元の当局が重ねて否定しても拡散は収まらず、バンス氏は「これらのうわさがすべて嘘であることが判明する可能性もあります」としながら、猫についての話を広げるよう呼び掛けました。

イーロン・マスク氏の投稿それを受けて、Xでは「ペットを救おう」などと猫やアヒルとトランプ氏をあしらった画像が多く投稿され、討論会の直前にはトランプ氏自身がSNSの「トゥルース・ソーシャル」に、生成AIで作ったとみられる、猫に囲まれた自らの画像を掲載しました。

地元当局 “必要ない恐怖や分断が”
そして、9月10日に開かれた大統領候補の討論会での発言を受けて、この情報はさらに拡散することになりました。

地元スプリングフィールド市の当局者は、NHKの取材に対して「移民の人たちがペットに危害を加えたといった確たる情報はない」としています。

スプリングフィールド市内の小学校市内では、ハイチ出身の人たちの子どもも通う学校などに爆破予告の脅迫もありました。それにも触れて、次のようにコメントしています。

「誤った情報が拡散し、私たちのコミュニティーに大きな影響を与え、必要のない恐怖や分断をもたらしていることを深く懸念している。私たちは言論の自由を支持するが、事実にもとづかない言葉は深刻な影響を伴う可能性がある。すべての人に対し、情報を共有するにあたっては十分に注意し、責任を持って対応することを求める」

否定されても拡散
地元の警察やオハイオ州知事も発言を否定しましたが、拡散は収まる気配がなく、討論会後の9月14日には「移民が実際にオハイオ州で猫を食べている」とする動画が拡散し、2600万回以上再生されました。

投稿した人物は、スプリングフィールドから40キロほど離れたオハイオ州デイトンでコンゴからの移民を撮影したと主張しています。

デイトンの警察は「移民コミュニティーを含むいかなるグループもペットを食べる行為に関与していることを示す証拠はまったくありません」とする声明を発表しました。

なぜここまでの拡散が?
アメリカ政治や政治のコミュニケーションに詳しい慶応大学の烏谷昌幸教授に聞きました。

烏谷教授 「反トランプやリベラル系の人たちからは、『また非常識なことを言っている』と見えるが、支持者の側から見ると不法移民がアメリカの小さな町を乗っ取ってしまうという、彼らが一番恐れていることを非常に生々しく伝えるエピソードになっている」

「トランプ氏が話題を設定していて、うそか本当かということが必然的に二の次になるようなものなのだと思う。ただ、今回も市の施設に爆破予告がされるなど暴力的な行動を結びつきやすくなっていて本当に深刻な問題だ」(後略)【9月21日 NHK】
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上記記事にもある「近所に住む人から聞いた話です。その人の娘の友人の猫がいなくなり、彼女はハイチ人の家でつるされているのを見た。ハイチ人は猫を食べるために切り刻んだ」と9月上旬に地元住民のフェイスブックのグループに書き込んだ女性は・・・

*****「まさかこんなことになるとは…」トランプ氏の虚偽発言、発端はある女性の投稿か。後悔を口に****
(中略)Facebookに投稿した女性本人は、 NBCニュース の取材に対し「こんなことになるとは思ってもみなかった」と語った。

「ハイチ系住民のコミュニティに同情します。もし私がハイチ出身だったら、たしかに怖いです」
「彼らが愛しているものを傷つけていると思われても仕方がない。でも私が意図していたこととはまったく違うんです」

女性の発言は、NBCの番組内でも紹介された。女性は「私が間違っていた」と後悔と謝罪の言葉を口にしている。
SNSでは女性に対し、「自分の発言に責任を持ってほしい」と厳しい意見が上がっている。【9月22日 BuzzFeed】
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【支持者の不安を具現する「情報」 候補者は意図的に拡散】
ただ、烏谷教授が指摘しているように、トランプ支持者にとっては心中の不安を的確に示した情報であり、非常に安易に飛びついてしまうことになります。

****「移民がペット捕食」 トランプ氏支持者の過半数が陰謀論信じる****
米中西部オハイオ州スプリングフィールドでハイチからの移民が「ペットの犬や猫をさらって食べている」との陰謀論について、共和党のトランプ前大統領の支持者の計52%が「間違いなく本当」「おそらく本当」とユーガブ社の世論調査に回答した。

この陰謀論は今月に入ってソーシャルメディアで徐々に広がり、共和党副大統領候補のバンス連邦上院議員が9日にX(ツイッター)で言及したことで拡散。トランプ氏が10日の討論会で言及したことで波紋がさらに広がった。

11〜12日のユーガブ社の調査では、9%が「間違いなく本当」、17%が「おそらく本当」と回答。11月の大統領選で「トランプ氏に投票する」と答えた人に限定すると、22%が「間違いなく本当」、30%が「おそらく本当」と回答した。

スプリングフィールドでは過去数年間にハイチからの移民が集住するようになり、学校や病院などの対応が困難になっていた。しかし、「ペットをさらっている」との情報は確認されておらず、移民に対する差別感情をあおっている。

米メディアによると、討論会後には爆破予告が相次ぎ、市庁舎や学校が閉鎖を余儀なくされた。学校は再開に当たって警備を強化した。マヨルカス国土安全保障長官は17日、「爆破や暴力の脅迫があり、コミュニティーは非常に脅威を感じている」と懸念を示した。【9月18日 毎日】
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一方、候補者側からすれば、事実であろうがなかろうが、これほど支持者にアピールする話もないので、意図的に流布することにもなりがちです。

****ヴァンス氏、ハイチ移民が「HIVなどの感染症を増やしている」新たな差別的主張****
(中略)トランプ氏やヴァンス氏は発言を撤回、謝罪することはなく、むしろ新たな差別的虚偽情報を拡散させている。

ヴァンス氏は9月、ハイチ移民のせいで、スプリングフィールドではHIVや結核などの伝染病が増加している主張を繰り返しXに投稿した。

この主張に対し、州保健局のブルース・バンダーホフ局長は、州内で「重大あるいは認識できるような病気の増加は見られない」と否定している。 また、保健局は州内の感染症などのデータをウェブサイトに掲載しているが、目立った増加は見られない。

開発途上国では感染症が発生・流行する割合が高い。それは十分な医療環境が整っていないためであり、一定の国の人が病気を感染させやすいわけではない。

ヴァンス氏の「ハイチ移民が感染症を増やしている」という主張は、社会的に最も弱い立場の人たちを利用して支持を集めようとするだけではなく、世界の暗い歴史を繰り返す行為だ。

ドイツ・ナチス政権は「ユダヤ人がチフスを流行させている」という主張をプロパガンダとして使用し、医師らも加担した。(後略)【9月19日 HUFFPOST】
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【選挙戦術的に見て、デマ情報拡散がプラスになるのか、マイナスになるのか  極めて微妙な選挙戦状況】
選挙戦術的に見て、このようなデマ情報拡散がプラスになるのか、マイナスになるのか・・・よくわかりません。
コアな支持者に強烈にアピールするのは間違いないですが、中間的な立場の人々にあっては、眉をひそめる者も少なくないでしょう。

今回大統領選挙はどちらが勝利するのかわからない極めて微妙な戦いとなっています。

トランプ前大統領はネブラスカ州の選挙人5人の配分を巡り、一部を下院選挙区ごとに割り当てる現行方式から州全体の勝者総取りに変えるよう求めています。

ほとんどの州は“勝者総取り”ですが、ネブラスカ州は例外。現行方式ならハリス氏が選挙人を1名獲得する可能性がありますが、勝者総取りになればすべてトランプ氏が獲得すると見られています。

僅か選挙人1名ではありますが、“ハリス氏が優勢な州・首都の選挙人は225人。激戦7州のうちペンシルベニア、ミシガン、ウィスコンシン各州の計44人を抑え、ネブラスカ州の1人を獲得すれば、ちょうど勝利に必要となる270人に達する。”【9月23日 読売】ということで、もし勝者総取りになればハリス氏は更にもう1州で勝利することが必要になり、選挙戦略が変わってきます。

変更を決定する州議会では共和党が決定に必要な3分の2を占めているということで、その対応が注目されています。

また、民主党でも共和党でもない“第3の候補”として、ハーバード大を首席で卒業した元医師の環境活動家、スタイン氏の存在が注目されています。イスラエルを批判し、気候危機対策で急進的な政策を標ぼうしています。

同氏の得票自体は極めて僅かで勝利は望めませんが、その支持層は民主党左派に重なります。もし1ポイントでもハリス氏からスタイン氏に票が流れると、選挙戦の結果を左右しかねません。

このように選挙人1名、得票率1ポイントはが勝敗を分けるかも・・・という微妙な選挙戦にあって、デマ情報拡散がどのような影響を与えるのか?

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