(14日、集会で支持者に応える「新未来党」のタナトーン党首【12月14日 共同】)
【「ボーイズラブ(BL)」 「酔ったらゆっくり運転」】
タイに関する最近見た面白い記事2本。
「タイではもう、男性同士の恋愛ドラマは『サブカル』ではなく、メインストリーム」だそうで、その背景には日本の「やおい」(何のことかわからない方は下記記事を 私も知りませんでした)があるとか。
****おっさんずラブの次は タイBLドラマ、アジアで大旋風****
男性同士の恋愛を描き、「ボーイズラブ(BL)」と呼ばれるジャンルのテレビドラマが、東南アジアのタイでキラーコンテンツ化している。
日本ではドラマ「おっさんずラブ」が映画化もされて人気だが、タイでは女性を中心とした熱狂的ファンが周辺の国や地域に広がっており、韓流もののような世界的流行になるとの見方も。人気の背景をさぐると、意外な事実も見えてきた。
10月7日、タイのツイッターのトレンドで一時、「ターン・タイプ」という言葉が1位になった。この日にテレビで放送が始まったBLドラマのタイトルだ。主人公の男子2人がキスすると、女性ファンらのつぶやきがネットを駆け巡った。
東南アジアや中華圏では、2000年ごろからずっと、Kポップをはじめとする韓国文化が人気の中心にありつづけてきた。
そんななか、タイでは5年ほど前から、テレビなどでBLドラマが放送されるようになった。今年は少なくとも17作品が公開され、すでに来年に放映される複数のBLドラマも明らかになっている。
ドラマだけではない。17年のリップクリームのテレビCMでは、教室で同級生にキスしようとした男子高校生が「寸止め」して、相手の唇の乾燥を指摘してリップクリームを渡す場面が話題になった。
「KポップよりTウィンド(タイの風)」。近年はそんな評価がされるようになり、BLドラマを核とするタイ文化はタイを越えて各地へ広がっている。
人気BLドラマを連発しているプロデューサー、ジャルポーン・カントーンオップクンさんは言う。
「タイではもう、男性同士の恋愛ドラマは『サブカル』ではなく、メインストリーム。タイがBLドラマの世界の中心地になる」
この流れはどこから来たのか?
その答えは、タイでBLを指す言葉として使われる「Y(ワイ)」にある。これ、なんと日本でBLと同義語とされる「やおい」の頭文字なのだ。
「やおい」は「やまなし、おちなし、いみなし」を意味する造語。漫画ファンらが自ら同人誌に描いたBL作品を自嘲して、そう呼ぶようになったとされる。
その日本の「やおい」漫画が、タイで海賊版でじわじわと人気となり、今の大流行の下地を作った。いまや、タイのBLドラマは字幕をつけてくれる有志ファンのおかげで日本に還流し、日本のファンの間で「激おすすめ」されるようにまでなっている。【12月20日 朝日】
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次は、「タイらしい」と言えば、いかにもそんな話題。笑えます、しかしねえ・・・・。
****「酔ったらゆっくり運転」 タイ東北の交通標語が物議****
24日のタイのテレビ報道によると、タイ東北部ナコンラチャシマ県ニコムサーントンエーン地区の道路沿いに「酔ったらゆっくり運転」と書かれた標語の看板が設置され、物議を醸している。
タイでは飲酒運転が横行しているが、法律上は禁止され、「飲んだら運転するな」が標語だ。「酔ったらゆっくり運転」の看板についてニコムサーントンエーン地区行政機構は「年末年始はほとんどの人が飲酒しているから」で、「飲酒運転を推奨しているわけではない」と弁明した。
一方、プラユット首相は24日、バンコクのタイ首相府で年末年始の安全運転を呼びかけるイベントに参加した。首相は「飲んだら運転するな。無事に家に帰ろう」と書かれたポスターの前で、「交通事故の多くは飲酒運転が原因」と指摘し、交通法規を守り安全運転を心がけるよう呼びかけた。
世界保健機関(WHO)によると、タイは2016年の人口10万人当たりの交通事故死者数が32.7人(WHO推計値)で、中国(18.2人)、インドネシア(12.2人)、日本(4.1人)などを大きく上回り、アジア最悪だった。
タイ当局は事故の削減に向け、バスやバンの車両点検、運転手の管理などを強化しているが、2018年の調査(タイ健康増進財団事務局調べ)でも、人口10万人当たりの交通事故死者数は29.9人と高止まりしている。【12月25日 newsclip.be】
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まあ、標識を目にしている時点ですでに運転している訳で、「飲んだら運転するな」と言っても意味がないということで、「現実的」対応ということでしょう。
信号があまりないタイですから、日本からの観光客は道路横断時には十分に気をつけて。
【注目される年明けの憲法裁判所判断】
でもって、政治の話題。
民政移管したとは言え、実質的には軍政を引き継ぐプラユット政権は、タクシン派に続き、先の総選挙で若者らの熱い支持を集めた反軍政党「新未来党」及びタナトーン党首を標的として潰しにかかっています。
****野党党首の議員資格剥奪=反軍象徴、選挙で躍進―タイ憲法裁****
3月に行われたタイの民政移管に向けた総選挙で、反軍事政権を掲げて第3党に躍進した野党・新未来党のタナトーン党首(40)に選挙違反の疑いが浮上した問題で、憲法裁判所は20日、憲法に違反したと認定し、当選を無効として議員資格を剥奪する判断を下した。反軍勢力の象徴としてタナトーン氏を支持する若者らの反発を招くのは必至だ。
選挙管理委員会は新未来党の比例代表名簿1位だったタナトーン氏について、メディア関連企業株を所有したままの出馬を認めない憲法に違反したとして、憲法裁に審理を要請。タナトーン氏は審理開始に伴い、議員資格を停止されていた。
タナトーン氏は、株は出馬前に手放しており、違法ではないと反論したが、憲法裁は株を売却したのは新未来党が比例代表名簿を届け出た後だったと判断した。
タナトーン氏は判決後、「政治的動機に基づいた判決だ」と非難。党首にとどまり、憲法改正など民主化に取り組む考えを示した。【11月20日 時事】
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****タイ憲法裁、反軍野党の解党判断へ=立憲君主制転覆の疑い****
タイ憲法裁判所は25日、3月の総選挙で当時の軍事政権を批判して躍進した野党・新未来党について、立憲君主制の転覆を試みた疑いがあるとして、解党を命じるかどうかの判断を来年1月21日に下す方針を決めた。
新未来党は軍の政治への影響力維持に反発する若者に広く支持されており、解党されれば抗議行動が拡大する可能性もある。新未来党に対しては、弁護士が立憲君主制を否定し、憲法に違反していると訴えていた。【12月25日 時事】
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タナトーン氏側は強く反発しています。
****タイ首都で抗議集会、14年のクーデター以降で最大規模****
タイの首都バンコクで14日、2014年のプラユット陸軍司令官(当時)によるクーデター以降で最大の抗議集会が開かれた。選挙管理委員会が野党「新未来党」に政党法違反があったとして、解党を申し立てたのを受け、タナトーン党首(41)が前日にデモを呼び掛けた。
当局はデモの阻止に動かなかった。
資産家のタナトーン氏は、バンコクのオフィス街の中心にある大型ショッピングモール「MBKセンター」の周辺に集まった群衆に対し「これは始まりに過ぎない」と強調。「今後、さらに多くの人が加われるよう、強さを誇示する狙いがある。プラユット氏が恐れるのはまだ早い。本当のデモは来月行われる」と述べた。
3月の総選挙後にプラユット新政権が発足して以来、タナトーン氏は政権批判の急先鋒となった。野党は選挙結果について、軍に有利な方法で議席が配分されたと批判している。(中略)
新未来党の広報官は、この日のデモに1万人以上が集まったと述べた。当局は推定人数を明らかにしていない。
来年1月12日にも「独裁反対」のデモが計画されている。
タナトーン氏は14日、野党連合の6つの政党と、選挙前に軍政が策定した憲法の改正を推進するための協定に署名。タクシン元首相派政党「タイ貢献党」を含む6党はこの日のデモにも支持を表明した。【12月16日 ロイター】
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こうしたタイの政治状況について、以下のようにも。
****タイ軍政続く強権 しぼむ民主主義の期待、王室との関係にも不安要素 ****
5年半に及ぶ事実上のタイの「軍政」の先行きを、懸念する声が広がっている。
政権基盤に揺らぎがあるというのではない。時に独善的とも受け取れる強権的な政治手法に対し、国の内外から疑義の指摘が広がっているのだ。
そもそも議会制民主主義とはそりの合わない軍支配ゆえに神経質になっているとの見方もあるが、それだけにはとどまりそうにない。それは何か、権力を手放したときに起こりうる軍そのものの地位転落を恐れているようにも見える。
怒れる800万人の若者
タクシン派と反タクシン派との政治対立に介入し、2014年5月に軍がクーデターに打って出たのは、機能しない警察力では対応しきれない国内の治安を維持・回復するためであった。それだけ当時の反タクシン派の街頭活動は破滅的であり、秩序や常軌を全く欠いたものであった。
権力を奪取したプラユット首相は当初、両派の和解を呼びかけたが、それが非現実的と分かると一気にタクシン派の排除に軸足を移した。
その後は、振り上げた拳をどこに下ろすかに腐心。国内外から軍支配への批判の声が上がると、正当化するための「民政復帰」に目標を変更した。
その後は既報の通りである。選挙に強いタクシン派が二度と政権を取らぬよう、周到な選挙制度を盛り込んだ新憲法を成立。三権分立をしのぐ強い権限を持った憲法裁判所や独立機関を整備した。
国民からの関心を失わないよう、経済回廊、鉄道、空港、港湾の各種開発など巨大利権を生むインフラの整備を国王の勅令にも相当する「平和秩序維持団布告」で進めた。
だが、そのような軍でも一筋縄にはいかないものがあった。一つは、無党派層から生まれた新党「新未来党」に象徴される、選挙権を持ったばかりの怒れる若者たちだった。
タイの自動車部品大手タイ・サミット・グループの創業家出身の御曹司、タナトーン氏が設立した新未来党は3月の総選挙で81議席を確保、第三党に躍り出た。
もっとも、財源を党首個人に頼ったことや功労者や年配者を顧みないスタンドプレー的な政治手法から信頼を落とし、かつての勢いは失われた。
タナトーン氏は憲法裁から議員資格剥奪の判決を受け、党も資金の出所を問題とされて解党手続きが進行中だ。
くすぶり続ける火種
そして、もう一つがこの間に逝去したプミポン前国王の後を受け即位したワチラロンコン国王並びに王室との関係だった。
現国王が暫定議会から即位の要請を受けた際に喪に服したいと回答を一時留保したことや、新憲法案に国王の権限強化を盛り込むよう求めたのは他ならぬワチラロンコン国王自身。軍はこれらを、強権に対する強い歩み寄りのサインと見るべきだった。(中略)
こうして迎えた19年の年末。タイの政治は、外に民主主義への期待と、内に不安要素を抱えて暮れようとしている。今のところ事実上の軍政に強権を改める気配はない。火種はくすぶり続けたままだ。【12月31日 SankeiBiz】
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ワチラロンコン国王が現在の軍部主流派とそりが合わないこと、以前からタクシン元首相と親しいことは周知のところですが、今後国王が政治的にどのように動くのか・・・よくわかりません。(大きなリスクを冒してまで軍・政権と対峙するようでもなさそうですし・・・)
タナトーン氏については、“財源を党首個人に頼ったことや功労者や年配者を顧みないスタンドプレー的な政治手法から信頼を落とし、かつての勢いは失われた”とのことですが、そのあたりの話はよく知りません。
以下のような記事で見ると(下記の調査の数字の信頼性はともかく)、相当に大きな支持を集めているようにも見えます。
****人気政治家トップ、失職したタナートーン氏がトップ****
世論調査NIDAポールが今月18~20日に18歳以上の有権者を対象に行った人気政治家に関する調査で、1位は反軍政派のタナートーン氏が31.42%となった。
タイ地元紙によると、2位はプラユット現首相が23.75%、3位はタクシン派プアタイ党スダーラット党首が11.95%となった。17.32%が特にいないと回答した。
支持政党トップは反軍政派アナーコットマイ党(新未来党)の30.27%。以下プアタイ党の19.95%、タイ軍派パランプラチャーラット党の16.69%と続いた。【12月30日 Thai News】
来年1月21日に下される予定の、新未来党の解党を命じるかどうかのタイ憲法裁判所の判断が注目されます。
軍政時代からタイ司法は政権とベッタリですから、その点では解党命令が出ることが予想されますが、混乱を懸念するプラユット首相側の意向などがあるのか、ないのか・・・。