孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

ロシア  地下鉄爆破テロが暴く“プーチンの嘘”か? それとも、陰り始めた求心力回復か?

2010-03-31 20:41:53 | 世相

(ルビャンカ駅で犠牲者に花を捧げるモスクワ市民 “flickr”より By enot_female
http://www.flickr.com/photos/ekaterina_photos/4477312798/)

【「黒い未亡人」】
“ロシアのドミトリー・メドベージェフ大統領は29日、同日朝に通勤時の地下鉄で起きた連続自爆攻撃で38人が死亡した事件の現場の1つとなったモスクワのルビャンカ駅を訪れ、プラットフォームで犠牲者に花輪を捧げた。メドベージェフ大統領は、爆破攻撃の犯人らを「けだもの」と呼び、「必ず首謀者らを捜しだし、せん滅する」と言明した。(中略)
ロシア当局は2件の爆発は爆発ベルトを身に着けた女2人による自爆攻撃と断定した。モスクワでは10年ほど前にも、夫をロシア軍に殺害されたチェチェン共和国などの女性らによる報復の自爆攻撃が相次いだ時期がある。こうした自爆犯らは「黒い未亡人」と呼ばれた。
”【3月30日 AFP】

【国際的なテロネットワーク】
犯行組織については、北カフカスを拠点とする武装勢力が疑われており、3月初めにロシア連邦保安局(FSB)の特殊作戦で北カフカスの武装勢力の精神的支柱とされるチホミロフ指導者が殺害されたことへの報復ではないかと、地元メディアでは報じられています。
また、このテロ組織と国際テロ組織「アルカイダ」とのつながりも指摘されています。

****北カフカス武装勢力の関与浮上 モスクワ地下鉄テロ****
モスクワの地下鉄で起きた爆発テロ事件の背後に、ロシア南部の北カフカスを拠点とする武装勢力が浮上している。1990年代にチェチェン戦争で戦った後、チェチェンを逃れた人物が率いる組織で、2007年に反ロシアや反米英を掲げて「聖戦」を呼びかけている。国際的なテロネットワークとつながっている可能性も指摘され、主要国(G8)外相会合が29日に国際的な対テロ結束を確認する声明を出すなど、国際社会もテロの連鎖に懸念を強めている。
ロシアでの報道などによると、犯行動機で有力視されているのは、3月初めにロシア連邦保安局(FSB)の特殊作戦で北カフカスの武装勢力の精神的支柱とされるチホミロフ指導者が殺害されたことへの報復だ。同指導者はかつてエジプトなどでイスラム教を学んだ人物。(中略)
チホミロフ指導者が精神的支柱であったのに対し、実動の武装組織を率いるのがウマロフという指導者で、今回の地下鉄テロの背後にいるとの見方が出ている。チェチェンを安定化させた親ロシアのカドイロフ現政権とは敵対関係にあり、チェチェンを逃れて北カフカスの不安定化を狙っているとみられている。

この組織がかつてのチェチェン独立派と違うのは、国際テロ組織「アルカイダ」とのつながりを示唆する点だ。ウマロフ指導者は、07年に発表したビデオ声明で、「我々の兄弟がアフガニスタン、イラク、ソマリア、パレスチナで戦っている」と述べた。
組織の実態は不明な点が多いが、ロシア治安筋は「いずれにしても、今回のテロは始まりに過ぎない」と語る。
G8外相会合のためカナダを訪れたロシアのラブロフ外相は29日、今回のテロについて「アフガニスタンとパキスタン国境には地下テロ組織に占領された『誰のものでもない領域』がある。多くのテロが計画されているアフガン周辺とカフカスとのルートはつながっている」と述べた。
また、米国務省高官が「ワシントンは今回の犯行の解明に全力を尽くす」と述べたほか、サルコジ仏大統領がテロを非難してロシアと連帯を表明。バローゾ欧州委員長もロシアのテロとの戦いに支持を表明した。このように欧米諸国が即座に反応を見せたのも、ウマロフ指導者の組織が国際的なテロネットワークと関連している、との見方が広がっているからとみられる。
米ロ首脳がテロ後に電話会談した際、テロとの戦いは核軍縮問題と並ぶ最重要の協力分野と位置づけており、国際的なテロの連鎖を防ごうとの機運が高まっている。【3月31日 朝日】
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【“プーチンの嘘”】
今回テロは、改めて北カフカス情勢の不安定さを明示することで、ロシア当局の「チェチェン紛争は制圧され、プーチン首相が指名したチェチェン人武装勢力出身のラムザン・カディロフ大統領の恐怖政治のおかげで、テロ攻撃は永久に過去のものとなった」という“嘘”をあらわにしたとの指摘があります。

*****モスクワのテロで露呈したプーチンの嘘******
・・・・だがこの1年間、ロシアメディアは手に負えない状態に陥っていた北カフカスでの暴力行為を軽視してきた。モスクワでテロが起きたのは確かに5年ぶりだが、南ロシアでは昨年来、15件の自爆テロが発生している。昨年8月にはダゲスタンの警察庁舎に爆弾を積んだトラックが突っ込み、20人が死亡した。イスラム過激派との長期戦を展開しているイングーシの警察当局は2月に、カバルディノ=バルカリア共和国の武装組織の指導者アンゾル・アステミロフなど20人の反体制派を殺害。今回の爆破テロはその報復ではないかという憶測も流れている。
プーチンがカフカスに平和をもたらしたというプロパガンダを信じていたモスクワ市民が、今回の地下鉄テロで受けた衝撃は計り知れない。テロ現場から逃げ去る人々は一様に、二度と地下鉄には乗らないと話していた。【3月30日 Newsweek】
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ロシア政府は、財政的な事情もあって、09年4月16日、カフカス地方のチェチェン共和国で第2次チェチェン紛争(99年~00年)以降に敷かれていた「対テロ作戦体制」の解除を決定、これにともない、チェチェン共和国側へ治安維持などの権限の委譲、チェチェン駐留軍の中心的な役割を担う2万人のテロ対策部隊が撤収しています
しかし、北カフカス地方の不安定な情勢は09年8月26日ブログ「ロシア南部・カフカス地方(チェチェン、イングーシ、ダゲスタン)で続く混乱」(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20090826)でも取り上げたところです。今回モスクワのテロに呼応するように、31日、ダゲスタン共和国でも自爆攻撃を含む連続2回の爆発があり、警察官ら9人が死亡する爆弾テロが発生しています。

【政治的弾圧を正当化】
前出【3月30日 Newsweek】が指摘するもう一点は、今回テロが、反政府活動に対する政治的弾圧を強める口実に使われるのでは・・・との危惧です。

****テロを口実に政治的弾圧を強める?*****
反体制派の活動家たちが恐れるのは、今回のテロが、ドミトリー・メドベージェフ大統領の推進する政治的雪解けムードを抑えつける格好の口実に使われることだ。「ロシア当局は国内の自由化運動を封じ込めるためにあらゆる理由をこじつけるだろう」と、ヒューマン・ライツ・ウォッチのユリア・ラティニナは言う。「3月31日に予定されている反対派のデモが、警察や(政府寄りの若者集団)ナシに妨害される事態を懸念している」
実際、ロシア政府は過去にも、テロの脅威を利用して政治的弾圧を正当化してきた。テロが相次いだ04年には、プーチンは安全保障の強化を口実にして州知事選をキャンセルし、大統領による知事の指名制を導入した。(中略) プーチン自身は爆破テロ当日に怒りに燃えた様子でテレビに登場し、容疑者を裁きにかけ、テロを撲滅すると誓った。もっともプーチンは、99年にモスクワなどで起きた連続アパート爆破事件(300人以上が死亡)の際にも同じような約束をし、翌年大統領に就任している。【3月30日 Newsweek】
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【ほころび始めた「疑似民主主義」】
ロシアではこのところ、小規模ながら反政権のデモが頻発しており、プーチン支配体制の綻びも垣間見える事態となっていました。政権側はこうした動きに過剰とも思えるような反応を示しています。
****疑似民主主義に限界 露全土でデモ プーチン退陣、公然と要求*****
ロシア各地で今年に入り、反政権派のデモが頻発している。20日には全土の50都市以上で抗議行動があり、その規模も最大で2千人にのぼった。金融危機以降の経済低迷を受けてデモの波が地方に広がっている上、住民らがプーチン首相(前大統領)や地方政権の退陣を公然と要求し始めたのが特徴だ。政権はこれに対し、「過剰」ともいえる反応を見せて反政権派の排除に躍起となっている。

デモが頻発している直接の契機は、物価や失業率の上昇に加え、各地で今年から公共料金が大幅に値上げされたことだ。相次ぐ警察不祥事や官僚の汚職体質にも庶民の不満は鬱積(うっせき)。西部の飛び地、カリーニングラード州では1月のデモ参加者が1万人に達した。
こうした街頭行動が政権転覆や大きな社会運動につながる兆候は今のところない。20日に約70人の拘束者が出たモスクワでのデモ参加者は200~300人にとどまる。警察はデモ予定場所の広場を数十台の警察車両と何百人もの警官隊で事前に封鎖。デモ隊は広場にすら入れず、周辺の路上で「プーチンは退陣せよ」などと叫んで次々と連行されていったのが実情だ。

政権がデモに過敏に反応するのは、プーチン前政権が築いた「疑似民主主義」(反政権派)がほころびを見せている焦りからだ。
プーチン氏は2000年の大統領就任以降、主要テレビ局を政権の支配下に置くなど報道・言論を統制。政治制度の面でも、下院選を比例代表に一本化して議席獲得のための得票率制限を引き上げ、地方知事の選挙も廃止してリベラル政党を徹底的に排除した。
中央・地方の議会ではプーチン氏の与党「統一ロシア」以外に3つの親政権政党が議席を持つものの、クレムリンはそれらを「システム内反対派」と称する。この政治構造は「垂直の権力」と呼ばれ、反政権派や住民が意思を表明できる機会が極端に乏しい。
近隣国では03~04年、街頭行動から親欧米政権が誕生しており、この国の指導部にはデモへの恐怖心が非常に強い。昨年の国内総生産(GDP)が前年比8%も落ち込んだ経済不振がそれに拍車をかける。リベラル派のメドベージェフ大統領は硬直化した制度を改善、「システム外反対派」と対話する必要性は表明しているが、就任から約2年が経っても本格的な政治改革には乗り出せていない。【3月22日 産経】
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【求心力回復か?】
今回のモスクワでの地下鉄爆破がどのような意図で行われたのかはわかりませんが、結果的に一番得をするのは、陰りの見え始めた求心力を、“テロ撲滅”を掲げることでとりもどすことができる現支配体制ではないでしょうか。今回テロの最大の影響は、この点のように思われます。
プーチン首相が権力基盤を築いたのは、99年にモスクワなどで起きた連続アパート爆破事件を契機にした一連のチェチェン強硬策であり、この連続アパート爆破事件にはプーチン首相の出身母体である連邦保安局(FSB)がチェチェン進攻の口実を作るために事件を起こしたのでは・・・との憶測が根強くあります。
今回も・・・とまでは言いませんが、同様の効果を結果としてもたらすのでは?

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アフガニスタン うごめく関係国(パキスタン・米・インド・イラン)の思惑 

2010-03-30 22:31:24 | 国際情勢

一昨日(3月28日)、アフガニスタンを急きょ訪問したオバマ大統領 会談したカルザイ大統領も訪問を知らされたのは1時間前だったとか。テロ対策とは言え、突然来られるカルザイ大統領も大変でしょう。“flickr”より U.S. Department of Defense Current Photos
http://www.flickr.com/photos/39955793@N07/4474911982/)

【「偶然だった」】
パキスタン陸軍は2月17日、タリバンのナンバー2とされるアブドル・ガニ・バラダル師の身柄を拘束したと発表しました。
タリバンとの結び付きが常々指摘されるパキスタン政府は、自国領から作戦を行ってきたタリバン指導者らに対し行動をとるよう求めるアメリカ政府にこれまで反発してきた経緯があり、オマル師側近のナンバー2拘束は、パキスタン政府の方針転換を示すものかとも注目を集めました。

ただ、パキスタン軍はバラダル師の拘束を「偶然だった」とも説明しており、バラダル師を狙って拘束したわけではないとあえて主張するその真意にも関心が集まりました。

【カルザイ大統領激怒、国連も批判】
その後、拘束されたバラダル師が、アフガニスタンのカルザイ大統領と秘密交渉中だったこと、そしてこの交渉を破談にする拘束にカルザイ大統領が激怒していることが報じられました。
****拘束タリバーン、実は秘密交渉相手 カルザイ大統領激怒*****
パキスタン南部で先月、拘束された隣国アフガニスタンの反政府武装勢力タリバーンのナンバー2、アブドル・ガニ・バラダル師が拘束前、アフガンのカルザイ政権と和平について秘密裏に交渉していたことをアフガン政府高官が17日、朝日新聞に明らかにした。カルザイ大統領は拘束の報に激怒したという。
バラダル師はタリバーンの最高指導者オマール師に次ぐ幹部で、拘束は米国などにとって大きな成果とされているが、タリバーンとの和平を目指すカルザイ政権は逆に不信感を募らせており、米国との溝があらわになりつつある。
カルザイ大統領とバラダル師はアフガン南部の同じ部族の出身。高官によると、部族の長老の仲介で大統領の使者とバラダル師が数回、接触した。バラダル師は政権との交渉に前向きで、和平の条件などについて話し合ったという。高官は「バラダル師は他のタリバーン幹部には相談せず、独自の考えで我々と接触していたようだ」と話す。
ところがバラダル師はこの交渉の最中に、パキスタンのカラチ郊外を車で移動中にパキスタン情報機関に捕まった。交渉を妨害された形のカルザイ氏は、パキスタンに対する怒りをぶちまけたという。
パキスタンとアフガン両国はバラダル師の身柄をアフガンへ引き渡す方向で合意しているが、高官は「我々は米国とパキスタンによってタリバーンとの交渉から遠ざけられていると感じている。パキスタンは引き渡しを引き延ばすのでは」と疑念を募らせている。【3月18日 朝日】
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パキスタンには、アフガン南部ヘルマンド州などパキスタンとの国境沿いで軍事作戦を強化するアメリカへの強い不信感があります。アメリカも強く求めていたバラダル師のアフガニスタンへの身柄引き渡しについては、ラホール高等裁判所が2月26日、パキスタン政府に対して国外移送を禁じる命令を出しています。

タリバンとの秘密交渉については、国連もこれを明らかにしており、やはりパキスタンのタリバン幹部拘束を交渉を妨害したとして批判しています。
****国連前代表、パキスタンを批判「秘密和平交渉が中断」*****
国連アフガニスタン支援団のカイ・エイダ前代表が今月、英BBCのインタビューで、アフガンの反政府武装勢力タリバーンの幹部らと秘密裏に和平交渉を始めていたことを明らかにし、隣国パキスタンが先月、幹部らを拘束したことに対し「交渉が中断された」と強く非難した。
国連関係者がタリバーンとの交渉を公にするのは初めて。アフガン政府高官も朝日新聞の取材に対して交渉を認めており、和平を模索する国連、アフガンと、消極的な米国などとの不一致が鮮明になった形だ。
今月、2年間の任期を終えたエイダ氏は、昨春ごろからタリバーンの高級幹部らと直接会ったと語り、この接触について「(タリバーンの最高指導者オマール師の)了承があったとしか考えられない」と述べた。交渉は、タリバーンのナンバー2、アブドル・ガニ・バラダル師らがパキスタンで拘束された先月ごろまで続いていたという。
エイダ氏はパキスタンを「自国が果たすべき役割を理解していない」と強く批判した。タリバーンとの交渉についてゲーツ米国防長官は「時期尚早」と否定的な考えを示し、パキスタンによるバラダル師らの拘束を支持している。【3月29日 朝日】
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国連の交渉が、アフガニスタン・カルザイ大統領の進めていたタリバンとの交渉と同じものを指すのか、それら交渉がオマル師の意向を反映したものか・・・よくわかりませんが、それ以上に、タリバンとの交渉を望むアフガニスタン・国連、それを妨害する形になっているパキスタン、また、タリバンとの繋がりが強くアメリカへの反発も強いパキスタン、タリバンとの対決姿勢を崩さないアメリカ・・・など、関係国のそれぞれが違う方向を向いて行動しているようにも思えます。

【代理戦争】
更に、対立するパキスタンとインドの思惑もアフガニスタンで渦巻いています。
****インド:パキスタンと対立 アフガン巡り「代理戦争」にも*****
アフガニスタンを巡り、インドとパキスタンが影響力の確保を狙って暗闘を繰り広げている。現地勢力を使ってテロ攻撃を仕掛け合う「代理戦争」への懸念も指摘され始めた。米国は来年7月の軍部隊撤退開始をにらんだ大規模軍事作戦に乗り出したが、過去に3度の全面戦争をした印パ両国の確執が深まれば、米国のアフガン安定化策にも深刻な影を落としそうだ。
アフガンの首都カブールで先月下旬、ホテルなどが襲撃され、17人が死亡する事件が起きた。直後に旧支配勢力タリバンが犯行を認めた。
これを受け、インド外務省が「インド人9人が殺された」と非難すると、アフガンのカルザイ大統領はインドのシン首相に電話し、「犯人を必ず突き止める」と約束した。
タリバンが犯行を認めていながら、こうした言葉を口にしたことで、タリバンの背後に見え隠れするパキスタン軍情報機関(ISI)の関与を示唆した格好となった。

南部カンダハルでは4日、道路建設現場に向かう途中の乗用車が武装集団に襲われ、パキスタン人労働者5人が殺された。パキスタン外務省広報官は「インドはアフガンを利用してパキスタンの不安定化を画策している」とけん制した。
パキスタンは、自国へのインドの軍事侵攻を防ぐため、後背地のアフガンに影響力を確保する政策を取る。タリバンとの関係維持もその文脈にあるとされ、現在、アフガン側にタリバンとの「和解の仲介役」を申し出ている。
一方のインドは、パキスタンの強大化と過激主義の台頭を防ぐため、タリバン政権当時、内戦相手の軍閥集団(北部同盟)を支援。北部同盟が母体となったカルザイ政権に対しても、国会議事堂建設など約130億ドルの支援を行っている。
また、今年に入りインドがアフガン治安部隊の訓練教官らを派遣すると、パキスタンも2月、軍部による訓練をアフガン政府に打診。アフガン軍や警察への影響力を確保するための主導権争いの様相を示している。
こうした印パ両国の動きについて、アフガン情勢に詳しいパキスタン人ジャーナリストのラヒムラ・ユスフザイ氏は地元紙に「両国は一種の代理戦争に突入した」と懸念を示した。【3月8日 毎日】
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【独自支援】
もうひとつの関係国、イランも独自の思惑で動いています。
****イラン大統領:アフガン大統領と会談 「独自支援」伝える*****
イランのアフマディネジャド大統領は10日、昨年6月の再選以来初めてアフガニスタンの首都カブールを訪れ、カルザイ大統領と会談した。欧米主導のアフガン復興に異議を唱え、隣国として独自に強く支援する意向を伝えた。イランは核開発問題で米欧と対立する一方、アフガンへの影響力を強め、「地域大国」としての存在感を誇示したい考えだ。(中略)
「結婚式場を空爆し、無実の多くの女性や子供を殺害した。米国のやり方は民主主義とはいえないし、『テロとの戦い』でもない」。会談後の記者会見でアフマディネジャド大統領は、混迷を深めるアフガン情勢に触れ、米軍の責任を厳しく追及。そのうえで、言語や文化面で近い隣国のパートナーとしての役割を強調し、アフガンへの継続的な支援を約束した。カルザイ大統領も「両国の良好な関係を今後も続けたい」と応じた。
イランは約100万人のアフガン難民を受け入れ、アフガンから大量に流れ込む麻薬への対応にも苦慮。アフガンの治安回復、経済復興はイランにとって喫緊の課題だ。
イランは今年1月末のロンドンでのアフガン復興支援会議を欠席するなど、欧米主導のアフガン復興に反発する一方で、これまでアフガンに2億8000万ドルを供与。幅広い分野での投資、貿易の促進もはかる。
イランは昨年5月、パキスタンを含めた3カ国首脳会議をテヘランで開催。今月16日にはイスラマバードで、3カ国内相会議が開かれる。イランはアフガン復興を通じて周辺3カ国の枠組み強化を進め、地域のリーダーとしての地位を確立したい意向だ。【3月10日 毎日】
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パキスタンとアメリカ、パキスタンとインド、イランとアメリカ・・・そうした対立国が、アフガニスタンを舞台にそれぞれの思惑でうごめいているようで、複雑怪奇な様相です。

【「学校だけでも紛争のない平和な場所に」】
よくわからない話ばかりなので、明るい話題をひとつ。
****「閉鎖の440校、今年再開」 アフガン教育相が見通し******
来日中のアフガニスタンのファルーク・ワルダック教育相が26日、都内で朝日新聞と会見し、反政府武装勢力タリバーンなどによる攻撃で閉鎖を余儀なくされている約440の学校を、今年中に再開できるとの見通しを示した。反政府勢力に影響力がある各地の有力者を通じ、学校教育の重要性を訴える運動を展開してきた結果だとしている。
ワルダック氏によると、アフガンでは2008年、パキスタンとの国境周辺の南部を中心に673校が反政府勢力の攻撃を受け、閉鎖に追い込まれた。教育省は学校の再開を最優先課題とし、反政府勢力への説得が期待できる地域の有力者や宗教指導者に「学校だけでも紛争のない平和な場所に」と訴えてきた。 その結果、これまでに230校が再開にこぎつけたという。残る約440校の再開についても「簡単ではないが、可能だ」と述べ、今年中の再開に自信を示した。 また、男女別学を重んじる伝統を尊重し、世界銀行など国際社会の協力を得ながら地方への女性教員の増員などを進めているとした。
ただ、学校の再建や教員の養成には国際社会からのさらなる支援が必要だとし、「これまでの日本の支援にはとても感謝している。さらに大きな役割を期待している」と述べた。 教育支援は、アフガンに対する日本の民生支援の柱の一つ。日本はこれまで約550の学校の建設・修復や、約1万人の教師への研修などで支援してきた。 【3月27日 朝日】
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タリバンの攻勢が伝えられて久しいなか、閉鎖学校の開校が進んでいるとは意外な感がします。
支援国日本に対するリップサービスでなければ、非常に喜ばしニュースです。

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ミャンマー  最大野党NLDは総選挙不参加を決定 民主化を求める新たな政党結成の動きも

2010-03-29 21:56:31 | 国際情勢

(マレーシアで活動するNLDの青年メンバー “flickr”より By kokophoto
http://www.flickr.com/photos/25599354@N08/2416732311/)

【踏み絵を迫られたNLD、不参加を決定】
ミャンマーの民政移管を目指す20年ぶりの総選挙については、軍事政権が定めた政党登録法によると、有罪判決を受けたり服役中の人物は、選挙に参加する政党の党員になれないことになっており、民主化運動指導者アウン・サン・スー・チーさんが書記長を務める最大野党・国民民主連盟(NLD)が選挙に参加するためには、米国人自宅侵入事件で有罪判決を受け自宅軟禁中のスー・チーさんや拘束中の多くの党関係者を排除して、5月上旬までに政党登録する必要があります。
一方で、これを拒んで選挙に出なければ、政党として存続できない規定となっています。

スー・チーさん自身は23日、「個人的な意見」と断ったものの、「不当な法の下での(総選挙参加のための)政党登録は、受け入れられない」と、総選挙への参加に反対の意向を表明していました。

このような形で、政党として存続するためにはスー・チーさんの排除という“踏み絵”を迫られていたNLDですが、党としても総選挙不参加を決定したことが報じられています。
****ミャンマー総選挙に不参加 スー・チーさんの政党NLD****
ミャンマー(ビルマ)の民主化運動指導者アウン・サン・スー・チーさんが書記長を務める国民民主連盟(NLD)は29日、ヤンゴンの党本部で中央執行委員会を開き、軍事政権が年内に予定している総選挙は「公正さを欠く」などとして、参加しないことを決めた。最大の民主化勢力の不参加で、軍政主導の「民主化プロセス」に対する国際社会の非難が高まるのは必至だ。【3月29日 朝日】
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“国際社会の非難が高まるのは必至”ではありますが、これまでの経緯を見ると、そうした国際社会の批判でたじろぐような軍事政権ではないでしょう。
軍事政権としてもNLD参加で国際社会の承認を得たい意向はあるようですが、NLD側がボイコットするなら、それはそれで・・・といったところではないでしょうか。

【指導力欠如のNLD】
国民の意思を政治に反映していくためには、軍事政権への全面降伏と揶揄されようとも、新たな政治枠組みのなかで一定の勢力を維持していく必要があり、総選挙には参加していくべきと思われます。
スー・チーさんの処遇や、90年選挙、新憲法の不当性にとらわれる限り、何もできない現実があります。
政党としての資格を失った場合、NLDにどのような活動ができるのでしょうか?
指導層の高齢化が進むNLDには、こうした逆境を乗り越えて現実に対応していくだけの力が残っていなかった・・・とも思われます。

****ミャンマー野党NLDの落日*****
 ≪絶縁迫る軍政≫
ミャンマーの軍事政権は年内の総選挙を前に、民主化運動の旗手アウン・サン・スー・チーさん率いる野党・国民民主連盟(NLD)に新たな攻勢に出た。自宅軟禁が続くスー・チーさんとの絶縁を迫る選挙法を発表したのだ。踏み絵を突きつけられたNLDはしかし、軍政の大弾圧や指導部の高齢化ですでに瀕死(ひんし)の状態である。(中略)
「国の問題の根は2つの金」という言葉がこの国では流布している。ビルマ語で金は「シュエ」という。軍政の最高指導者、タン・シュエ議長とNLDのアウン・シュエ議長の2人をあてこすった言葉だ。軍政の不人気は明らかだが、高齢化が進み指導力を発揮できないNLD首脳陣への幻滅も広がっている。
NLDの最高機関である中央執行委員会はこの1月に増員されるまで11人で構成されていたが、平均年齢は82歳だった。最年少はスー・チーさんの64歳で、アウン・シュエ議長に至っては今年93歳だ。増員で新たに9人が加わったが、いずれも60歳以上で、アウン・シュエ議長ら首脳陣は留任した。
「新しい血は入れたが、脳は相変わらずだ」とこの人事を揶揄(やゆ)する声がNLD内部からも漏れる。「党の重鎮たちはスー・チーさんが党務に復帰するまでの留守番役という意識だ」と解説する事情通もいる。
 ≪指導力の欠如明白≫
NLDの指導力の欠如は、市民や僧侶らによる2007年の大規模な反政府デモの際に明らかになった。NLD指導部は拱手(きょうしゅ)傍観の姿勢を貫き、いつもはNLDに好意的な在外亡命組織からも批判された。08年にはNLD青年部の100人以上が離党するという事態も起きている。
しかし、NLDの漂流の責任をすべて指導部に帰すのは酷だろう。1990年の総選挙でNLDは圧勝したが、軍政はその結果を認めず、NLDに大弾圧を加えた。多くの幹部や活動家が逮捕され、獄死した者も少なくない。当局の圧力下での離党や国外亡命も相次ぎ、組織は弱体化した。
軟禁中のスー・チーさんと他のNLD首脳との面会は2、3年に1度しか許されず、NLDの全国規模の会議も当局の妨害のため結党後、3回しか開いていない。これでは政策や人事で党の総意を臨機応変に集約するのは不可能に近い。
軍政が今月発表した選挙法はNLDへのとどめの一撃になるかもしれない。その規定によると、スー・チーさんのような受刑者は政党に参加できない。政党登録に際してはNLDが「非民主的」と拒否している新憲法の受け入れも誓約する必要がある。NLDが政党として存続するためにはスー・チーさんを排除し、軍政に全面降伏するしかない。
スー・チーさんは結党後、20年あまりのうち15年を拘束下に置かれてきた。いつか軟禁を解かれたときにスー・チーさんが目にするのは形骸(けいがい)だけになった党だろうか、それとも党の墓碑だろうか。【3月25日 産経】
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【「今回の選挙は民主主義を育てる過程のほんの始まりにすぎない」】
健康不安説も流れていた軍事政権のタン・シュエ国家平和発展評議会(SPDC)議長は、すこぶる意気軒昂で、「必要あらばいつでも国政にかかわる」と軍事式典で公言し、総選挙後も軍が政治主導権を握る構えを強調しています。

****ミャンマー 選挙後も影響力保持 国軍記念式典 軍政、野党を牽制*****
ミャンマー軍事政権は27日、首都ネピドーで国軍記念日の式典を開いた。軍政トップのタン・シュエ国家平和発展評議会(SPDC)議長は演説で、「かつて独立のために政治家が、軍の指揮官となった。われわれは必要があれば、いつでも国政に参加し奉仕する」と述べ、軍政が進める「民主化」で文民による政府が発足した後も、政治に対する軍の影響力を保持する考えを強調した。
タン・シュエ議長はさらに、年内に行われる総選挙について「今回の選挙は民主主義を育てる過程のほんの始まりにすぎない。各政党は民主主義がまだ成熟していない時には忍耐が必要だ」と述べ、一定の制限はやむを得ないとの認識を表明。さらに、「自らの党の勝利のために他政党や政治家を誹謗(ひぼう)するような不適切な選挙キャンペーンは避けるべきだ」として、軍政批判を続ける野党勢力を牽制(けんせい)した。そのうえで、「どのようなシステムが行われようとも、主目標は平和と国家の繁栄だ。政府と国民、軍はともに働くべきだ」と述べ、国民に協力を呼びかけた。
新政権発足後は引退するとされるタン・シュエ議長にとって、今回が自ら主催する最後の式典となる。同議長は全国から集めた1万3000人余りの兵士を前に約10分間、演説したあと、オープンカーに乗って巡察。さらに各部隊の行進を約30分間、演台から立ったまま閲兵した。
また、今回は2007年以来3年ぶりに外国メディアの直接取材が認められた。総選挙を前に、内外に軍の影響力を誇示するねらいがあるとみられる。【3月28日 産経】
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民主主義が成熟したら、憲法を改正して軍の政治への影響力を抑制していくのでしょうか?

【新政党「民主化実現の目的は同じ」】
一方、こうした情勢で、総選挙に向けて新たな民主化運動の政党結成が報じられています。
****ミャンマーに反軍政新党、幹部に元首相の娘******
ミャンマーで年内に行われる総選挙に向け、軍主導の民主化の動きに対抗する「ミャンマー民主党」が結成され、今週中に政党登録することを決めた。
党首のトゥ・ウェイ氏(78)らがヤンゴンの党本部で本紙の取材に応じ、明らかにした。1990年の前回総選挙でも政党を組織して臨んだウェイ氏は、「軍政は国民の側に立った政治を行っていない。すべての選挙区で候補者を出したい」と意気込みを語った。
新党の幹部には、1948年の独立後の初代首相ウ・ヌー氏の娘や、2代首相バ・スエ氏の娘が名を連ねており、反軍系政党の一翼として今後の動向が注目される。ウェイ氏は、アウン・サン・スー・チーさん率いる国民民主連盟(NLD)との関係については「民主化実現の目的は同じ」と述べたが、現時点では総選挙での連携は模索しない方針だ。NLDは、29日に中央執行委員会を開いて総選挙参加の是非を決める。【3月29日 読売】
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この「ミャンマー民主党」については、国内では上記記事しか情報がありませんので、どういう性格の政党か定かではありません。
記事のとおりであれば、“落日のNLD”に代わってミャンマー民主化運動を担っていく存在になるようにも見えますが・・・。それとも、裏で軍政と何らかの関係のある“官製野党”なのでしょうか?
NLDが総選挙不参加を決めましたので、軍政と一線を画した民主化を望む声の受け皿になることが期待されます。


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中国  都市・農村格差を固定する戸籍制度改革への動き

2010-03-28 14:11:34 | 世相

(上海駅前の流入農民 中国の経済発展を支えてきたのはこうした農村から流入する農民工と呼ばれる労働力ですが、その生活環境は都市住民との間で大きな格差があります。“flickr”より By joeywan
http://www.flickr.com/photos/joeywan/185358853/

【うっ積する民衆の不満】
中国製ギョーザ中毒事件の容疑者は、特に日本を意識したものではなく、「給与や待遇」への不満があったと供述したとされています。

****中国で増える「憂さ晴らし」犯罪 貧富格差など背景*****
殺虫剤「メタミドホス」が混入された中国製ギョーザ中毒事件で、拘束された容疑者は27日までの当局の調べに、「給与や待遇」への不満があったと供述したとされる。中国では貧富の格差拡大や就職難の深刻化を背景に「憂さ晴らし型」事件が増え、23日には福建省の小学校で男がなたで児童を無差別に襲い9人が死亡した。男は結婚や再就職ができず「生きていても面白くないと思った」と供述。【3月27日 共同】
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急速な経済発展によって生じた貧富格差など社会矛盾への不満が、中国国内の社会不安を拡大させていることは周知のところであり、国家指導層が最も懸念する問題ともなっています。
****09年に起きた暴動の多くはうっ積した民衆の不満が原因―中国*****
2009年12月21日、中国社会科学院が発表した2010年「中国社会青書」によると、09年に発生した、群衆によるデモや抗議暴動などの件数は依然として多いが、急速な経済発展と社会状況の変化から生じる問題の蓄積によって、民衆の不満がうっ積しているのがその原因だとみられている。中国網が伝えた。

特に、今年6月に湖北省石首市で、24歳のホテル従業員が飛び降り自殺したとされた「石首事件」は、08年6月に貴州省甕安(ウォンアン)県で15歳の女子中学生が溺死したとされた「甕安事件」の再現だと同記事は指摘。(中略)これらの暴動は、直接的な利害関係で結ばれていない群集による突発性の事件だと同記事は分析している。被害者とは直接的には何の利害関係もないが、中国経済の発展の陰に存在する社会的矛盾に対して不満をいだく人々が、そのはけ口を求めていることも背景にあるとした。
企業体制の改編、住宅立ち退き、土地の強制徴用、住民からの資金調達などによって生じた住民の経済的不利益に対する保障が放置され、当局に対する怨念にも似た不満がうっ積していることも、暴動の原因となっているという。【09年12月22日 Record China】
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【拡大する格差】
社会矛盾でも最大の問題は、都市と農村、沿海部と内陸部の所得格差です。
*****都市と農村の所得格差、3.3対1と過去30年で最大に―中国******
2010年3月2日、中国の英字紙・チャイナデイリーが報道した中国国家統計局のデータから、09年の中国では、都市部住民の1人当たり平均年収は1万7175元(約22万3800円)だが、農村部住民では5153元(約6万7000円)と、格差が拡大していることがわかった。英公共放送・BBCの電子版(中国語サイト)が伝えた。

都市と農村での収入格差は3.33:1で、これは1978年以来最大の格差だろうと記事は指摘。さらに、多くのシンクタンクも都市部と農村部、沿海部と内陸部の収入格差拡大に警告を発している。

9億人が暮らす農村の発展支援と都市部との経済格差解消は、社会を安定させるためにも重要な要素。また、そのためにも現行の戸籍制度を見直す必要がある (編集部注:中国では農村部と都市部間で戸籍を移動することができず、都市部に出稼ぎに出た農村出身者が失業保険や医療、教育を満足に受けられない現状がある)。今月1日、国内の13メディアは異例の共同社説を発表し、「戸籍制度改革は急務」として、今月3日から開催されている「両会」(国会にあたる全国人民代表大会と全国政治協商会議)に呼びかけた。【3月3日 Record China】
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【労働市場の需給調整】
沿海部と内陸部の所得格差は、一部“労働市場”における需給バランスによって平準化の方向は出ているようです。
****中国内陸部栄え 沿海部は出稼ぎ労働者が不足*****
中国沿海部で出稼ぎ労働者の不足が深刻化し始めている。政府による景気対策などで内陸部の賃金が上昇し、地方に戻って働く人たちが増えているからだ。「世界の工場」を支えてきた労働力をつなぎ留めようと、広東省政府は、法定の最低賃金を2割引き上げる方針を固めた。現地の日系企業などにも影響が出ている。 (中略)
労働者不足は昨秋ごろ顕在化し、広州や深センなど同省南部の珠江デルタ地区のほか、浙江省など沿海部の都市にも広がっている。地元紙は、珠江デルタ地区全体で旧正月直後に約200万人分の労働力不足が起きたと報じた。
広東省政府は「待遇が改善されれば労働者不足も緩和される」(同省幹部)として、最低賃金を5月から平均21%引き上げる方針を決定した。
背景には、中国政府が世界金融危機への対応として打ち出した4兆元(約53兆円)超の内需拡大策がある。これで地方のインフラ整備工事などが大幅に増え、働き口も急増した。地方の経済発展や農民に対する税の優遇措置などもあり、物価が高く生活費もかかる沿海部に働きに出る利点が薄れてきている。(中略)
東莞市人力資源局の黄慧屏・副局長は「改革開放から30年、潤沢で安い労働力の恩恵を受けてきた珠江デルタ地区も変わらざるを得ない。企業は新たな成長戦略を求められる」と話している。【3月22日 朝日】
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【迫られる所得分配制度改革】
しかし、こうした“市場”の動きだけでは早急には解消されない格差への対応を政府当局は迫られています。
先の全人代でも、重要課題として「所得分配制度の改革」が盛り込まれています。
****貧富格差の是正へ、所得分配制度改革を加速―中国******
2010年3月25日、中国国家発展改革委員会(発改委)は所得分配制度の改革を一段と加速させる方針を明らかにした。上海証券報が伝えた。
中国は高い経済成長率を維持する一方で、貧富の差も広がっており、社会不安を増長させている。今月初めに開かれた全国人民代表大会(全人代)では、重要課題として「所得分配制度の改革」が盛り込まれた。
記事によると、発改委の関係者は、内需拡大の重要な突破口として所得分配制度の改革について迅速に研究・調整をしている最中であることを明かした。特に低所得層の消費能力を高めることに力を注ぐという。だが、今のところ「指導意見」など具体的な形で発表できるかどうかは決まっていないとした。政府の方針を受け、北京市、上海市、広東省、浙江省などではすでに最低給与額の見直しが行われている。特に広東省では平均20%ほど引き上げられる見通しだという。【3月28日 Record China】
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【戸籍制度改革】
特に、都市・農村間の格差を固定し、また、農村から都市へ流入する低所得層の生活環境を劣悪な水準に固定している制度的要因に、前出【3月3日 Record China】にも指摘されている中国の戸籍制度があります。

中国ではこれまで農業戸籍と非農業戸籍に分けられ、運用面では一定の緩和はあったものの、基本的には厳格に区分管理されてきました。
農業戸籍に生まれた者は、都市部への移住を一生許されず、運よく都市部で就業できたとしても、戸籍がないため、医療・年金・住宅取得・就職などの面で都市住民と同じ社会保障が受けられず、差別を強いられてきました。

1958年1月全国人民代表大会常務委員会で採択された「中華人民共和国戸口登記条例」は、「公民が農村から都市に移るには、都市労働部門の採用証明書、学校の採用証明書、もしくは都市の戸籍登録機関が移入許可証明書を持って、常住地の戸籍登録機関に出向いて移出手続処理を申請しなければならない」と規定しています。

中国の戸籍制度とは、日本の感覚で言えば国籍のような存在に近いとよく説明されています。
つまり中国の「農村国」の人間は原則的に一生農村以外で生活することはできず、都市で働くには「都市国」に申請し、「労働ビザ」を取得して期限付きで就労しなくてはならない・・・という制度です。

こうした制度は、生産力が乏しく、モノやサービスは極端な供給不足し、都市機能も貧弱だったため、人口の自由な移動を許すと国の基盤が崩壊しかねないという当時の社会状況を反映したものでしたが、その後の経済発展とともに社会実情に合わず、都市・農村の貧富格差を固定化する要因として機能するようになっています。

このような戸籍制度の改革の動きがこれまでなされていなかった訳ではありません。
****13省で「農業戸籍」を撤廃、進む戸籍制度改革―中国****
2008年12月9日、中国公安部はウェブサイトで、これまで農業戸籍と非農業戸籍に分けられていた戸籍制度を撤廃し、統一した戸籍制度を導入した省レベルの自治体は河北省、遼寧省など13の省・自治区・直轄市に及ぶと発表した。中国新聞網が伝えた。
中国はこれまで農業戸籍と非農業戸籍に分けられ、厳格に管理されてきた。農業戸籍に生まれた者は、都市部への移住を一生許されない。運よく都市部で就業できたとしても、戸籍がないため都市住民と同じ社会保障が受けられず、差別を強いられてきた。政府はこうした格差をなくそうと戸籍制度の改革を推進。現在までに13の省・自治区・直轄市に及んだ。
公安部はこのほか、不動産を購入した都市への戸籍移転を認めるなど7項目の改革措置を徐々に追加し、流動人口に対する治安管理や権利保護などを強化する方針を示した。【08年12月10日 Record China】
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【異例の共同社説】
しかし、大枠として依然残存する差別的な戸籍制度に対し、その早急な改善を求める声が高まっています。
前出【3月3日 Record China】にもあるように、3月2日、中国各地の新聞13紙が、異例の共同社説を一斉に掲載し、全国人民代表大会と全国政治協商会議(両会)の代議員に対し、戸籍改革のタイムスケジュールを出すよう職権を行使して戸籍制度改革を迅速に実現するよう呼び掛けました。
この共同社説は、「経済観察報」から始まり、11の省・自治区・直轄市で順次転載されました。新聞13紙の他、新浪網、鳳凰網、経済観察網などネットメディアも転載しています。

温家宝首相も、「戸籍制度の改革を推し進め、都市部で長く暮らし働き、一定の条件を満たした農村からの労働者を都市部が受け入れ、都市部人口と同じように福利を享受できるようにしなければならない」との考えを示していましたので、この共同社説は政府当局の意向を反映したものと思っていましたが、そうでもなかったようです。

****戸籍制度批判の共同社説で解任-中国紙の編集幹部*****
中国の地方紙13紙が、都市部と農村部を区別している中国の戸籍制度の改革を呼び掛けた共同社説を掲載した問題で、同社説の共同執筆者の1人である北京の有力紙、経済観察報の編集幹部が解任されたことが分かった。
この社説は、全国人民代表大会(全人代、国会に相当)開幕の前日の1日に経済観察報などに掲載されたもので、現在の戸籍制度は農村部の住民を差別しており憲法違反と主張、全人代の代議員らに対し改革の促進を訴えた。全人代開幕前日という政治的に微妙なタイミングで政府の政策に対する批判を、しかも一斉掲載したのは極めて異例のこと。
関係者によると、解任されたのは経済観察報ウェブサイトのチャン・ホン(Zhang Hong)副編集長で、同紙の編集長らも中国共産党宣伝部から警告処分を受けたという。中国政府が全人代で情報公開の促進を呼び掛けているのとは裏腹に、表現の自由を厳しく規制している実態が浮き彫りになった。中国のメディア専門家は、政治的に微妙な問題で多数のメディアが共同記事を掲載した前例は思い浮かばないと話している。【3月10日 JST】
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いずれにしても、中国政府にとって、戸籍制度改革は避けて通れない課題となっています。

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ウクライナ  ロシアとガス値下げ交渉 “ナブッコ”、そして“ノルドストリーム”の動き

2010-03-27 20:57:53 | 国際情勢

(本分とは関係ありませんが、トレードマークの三つ編みを巻いた髪型を解いてリラックスしたティモシェンコ前首相 彼女の登場機会が減るのは残念です。
“flickr”より By BeSun4myHeart
http://www.flickr.com/photos/42622030@N05/3938154133/)

【悪魔祓い】
ティモシェンコ前首相との激戦を制し、ロシアと敵対したユーシェンコ前大統領に代わって親露派のヤヌコビッチ大統領が誕生したウクライナ。
新首相に就任したアザロフ氏は首相官邸に神父を呼び、いまだに徘徊するティモシェンコ前首相の霊を追い払う儀式をとりおこなったとか。記者団に対し「呼吸が苦しかった」「エクソシズム(悪魔祓い)をしてもらい、ようやく呼吸も楽になった」と語ったそうです。【3月20日 AFP】
また、新内閣に女性閣僚がいないことについて「今日、我が国は困難な状況にある。1日16~18時間働いて改革を遂行できる人々を選んだのだ。これは女性の仕事ではない」とも語っています。

【プーチン首相、関係改善に柔軟姿勢】
欧州全体にかかわる話題としては、ロシアとの天然ガス問題。
これまでもたびたび、ロシア・ウクライナ間のトラブルで、パイプラインの川下にあたる欧州全体に供給が止まるなどの大きな影響が出ていました。
親露派政権ということで、ロシア・プーチン首相も柔軟姿勢を見せています。

****ロシア首相:ウクライナ首相と会談 ガス値下げ交渉に同意*****
ロシアのプーチン首相は25日、同国を訪れたウクライナのアザロフ首相と会談し、ウクライナが求める天然ガス価格の値下げ交渉に応じる用意があることを表明した。アザロフ首相は就任後、初めての訪露。交渉は難航が予想されるが、ヤヌコビッチ大統領と同首相の親露派政権に代わったウクライナとの関係改善に向け、プーチン首相が柔軟さを見せた形だ。
インタファクス通信によると、プーチン首相は会談後、あらゆる問題を協議する用意があると表明、ガス価格の交渉についても「行うだろう」と述べた。

ロシアと敵対したユーシェンコ前政権は、ガス代金の未払いで頻繁にロシアにクレームをつけられ、06年と昨年にはガス供給停止で欧州への供給にも影響が出た。ティモシェンコ前首相は昨年、プーチン首相とガス価格交渉で合意して危機を乗り切ったが、新政権はこの合意に不満で価格設定の見直しを求めている。【3月26日 毎日】
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また、ヤヌコビッチ大統領は英BBCとのインタビューで、ロシアから欧州へのガス輸送を年間2千億立法メートルへと倍増させるため、ロシア・欧州・ウクライナの3者による輸送施設の共同運用を提案しています。
この発言は、ウクラウナを通過する既存のパイプラインルートを前提とするもので、ロシアが進めるウクライナを回避する新パイプライン“サウスストリーム”には否定的な考えを示しています。【3月24日 朝日より】

【供給源が決まらない“ナブッコ”】
ウクライナにとって、ロシアから欧州へのパイプラインは、欧州・ロシアに対して自国の重要性を認知させるものですから、その安定運用・拡大のアピールは当然のところでしょう。
ただ、これまでさんざん振り回されてきた感もあるロシアは、ウクライナ経由の既存ルートではなく、ウクライナを回避するルートを計画しており、そのひとつの南ルートが“サウスストリーム”。
一方、欧州も、ロシア依存度を下げるため供給源の多角化を計画しており、上記“サウスストリーム”と競合する形で進めているのが“ナブッコ”。

“ナブッコ”は、エネルギー供給における欧州のロシアに対する依存を減らす目的で、総工費79億ユーロ(約1兆50億円)をかけて建設、2014年に開通予定で、1日当たり310億平方メートルの天然ガスを、カスピ海からトルコ、バルカン半島を経由し、オーストリアから欧州各国に供給する計画です。
昨年の09年7月13日には、EU加盟4か国とトルコの5か国首相が建設の政府間協定に調印しました。
しかし、その後の話を最近聞きません。

“ナブッコ”の最大の課題は、どこからガスを供給するのかという問題です。
“供給源としてアゼルバイジャンが有力視されているが、同国は2010年からロシアにガスを輸出する合意に調印したばかりで、欧州とロシアをてんびんにかけている。トルクメニスタンのベルドイムハメドフ大統領は10日、ガス提供の用意を示唆したが、カザフスタン、ウズベキスタンなどの動向は不明だ。
このため、ナブッコ関係国はイラクやエジプトなど中東のガスを運ぶ可能性も視野に入れている。トルコのエルドアン首相は13日、イラン産ガスを輸送したい考えを表明したが、米国は、核問題を抱え断交中のイランの参加に反対している。”【09年7月13日 毎日】
トルクメニスタンには、すでに中国がパイプラインを建設しています。
最も実現性が高いと見られていたアゼルバイジャンについても、領土紛争で対立するアルメニアに、トルコが昨年9月頃から急接近したことで消極姿勢になったも言われています。
トルコの動き自体について、“ナブッコ”潰しのためにロシアが仕掛けた・・・との憶測も欧米業界筋にはあるとか。

【“ナブッコ”と“サウスストリーム”の“合体”案】
供給源が決まらないまま計画が進むというのは、素人には理解できないところですが、ロシア産の天然ガスを加えて事業の実現を目指す案も昨年から公表されています。
“ロシアに対する依存を減らす”という目的からすると奇妙なことではありますが、事業を実現させるためには一定割合ロシア産をとりこんでも・・・というところのようです。

これによって欧米の進める“ナブッコ”とロシアの進める“サウスストリーム”の、“無意味な競合”も避けられることになります。
この考えを更に進め、“ナブッコ”と“サウスストリーム”の“合体”を求める声も出てきています。

“サウスストリーム”をロシアのガスプロムとともに進めるイタリアのガス企業「ENI」のスカロニ社長は今月半ば、“ナブッコ”と“サウスストリーム”の“合体”を提案。
もともと両ルートはブルガリアで交差したのちともにオーストリアに向かうため、「経費節約にもなり効果的」とのこと。
“ナブッコ”にとっては、供給源が確保できます。“サウスストリーム”にとっては欧州から“公認”を受けられます。
しかし、ロシアはこの提案に「検討の余地はない」と反発しています。
供給源を持つロシアろしては、“ナブッコ”に先立つ運用開始で市場を押さえられるとの“勝算”があるとか。【3月24日 朝日より】

【ロシアの本命“ノルドストリーム”】
もっとも、ロシアの“サウスストリーム”については、「ナブッコを狙った当て馬」(業界筋)との見方もあるようです。
ロシアの本命は、北ルート(バルト海経由でロシアから欧州に天然ガスを運ぶパイプライン)の“ノルドストリーム”だとか。

EU 諸国の天然ガス需要は、2005 年から20 年間で16%(約1,950 億m3)増加すると見られていますが、 容量年間550 億立法メートル の“ノルドストリーム”はこの3 割弱を担います。
“ノルドストリーム”が稼働すると、ロシアからEU への輸出の約1/4 を担い、これまでロシアからEUへの
ガス輸出の2/3 を占めていたウクライナ・ルートが1/2 まで劇的に低下すします。
このことはEU への供給
の安定化を意味すると同時に、パイプライン通過国であるウクライナの影響力は低下します。

しかも、“ノルドストリーム”は確実に実現に向けて進展しています。
****バルト海経由送ガス管、4月着工へ=沿岸5カ国が建設許可*****
バルト海経由でロシアから欧州に天然ガスを運ぶパイプライン「ノルドストリーム」計画について、フィンランド当局は12日、同国の排他的経済水域での建設を許可したと発表した。これに伴い、沿岸5カ国の許可がすべて出そろい、同パイプラインは4月に着工される見通しになった。
計画によると、総延長1223キロの海底パイプラインを建設し、合計で年間550億立方メートルのガスをドイツやフランス、オランダ、英国などに供給する。建設費は74億ユーロ(約9030億円)。沿岸5カ国のうち、スウェーデン、デンマーク、ドイツ、ロシアが建設を許可し、フィンランドが最後まで残っていた。【2月12日 時事ドットコム】
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住友商事などの企業連合が総額10億ユーロ相当のパイプ供給契約を受注したことも報じられており、着工に向けて動いています。

“ノルドストリーム”が稼働すると、プーチン首相のウクライナに対する笑顔も若干変わってくるかも・・・・。

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フィリピン  5月10日大統領選挙 下院出馬で権力維持を狙う?アロヨ大統領

2010-03-26 20:16:16 | 世相

(フィリピンのアロヨ大統領(左女性) 小柄で愛嬌のある外見からは、そんなに権力欲が強いようにも見えませんが・・・・ 腕を取るのは今回選挙にも立候補しているエストラダ元大統領 こちらは汚職で有罪になったのち、アロヨ大統領との政治的取引もあって恩赦で自由の身になった人物です。再選禁止規定にも関わらず「任期途中の2年半しか職を務めておらず、立候補の資格はある」と主張しています。選挙管理委員会は立候補を認めましたが、最高裁判断はまだ出ていないと思います。
昨年8月頃の写真のようですが、エストラダ元大統領は死去したアキノ元大統領とともに、アロヨ批判の先頭に立っていたはずですが・・・  “flickr”より By themanilamail
http://www.flickr.com/photos/manilamaildc/3831829752/)

【本人のほか、親族・側近も】
フィリピンでは、5月10日に大統領選と上下院選挙が同時に行われます。
現職アロヨ大統領は再選が禁じられているため大統領選挙には出馬できませんが、アロヨ大統領自身のほか、長男や夫の兄妹など4人、側近の官房長官ら前閣僚6人が下院選に立候補します。
この動きは、汚職疑惑の絶えない大統領が刑事訴追を避けるため、退任後の権力維持を狙っているとの見方が多く、野党勢力は反発を強めているようです。

以前は、“アロヨ大統領は改憲で議院内閣制を導入し、首相として権力を維持しようとしている・・・”とも批判されていました。さすがに、そこまではやりませんでしたが、今回の親族・側近らの大量立候補をみると、やはりどうしても権力から離れる訳にはいかない事情があるようにも邪推されます。

【大統領選挙無効になれば・・・】
今回の選挙では初めて電子投票システムが導入されますが、これがどうも不調のようです。
それに絡めたアロヨ大統領の狙いについて、“下院議長となって、もし大統領選挙が無効になれば下院議長が大統領代行になる”という、非常に面白いうがった見方もあります。

****フィリピン大統領:権力維持狙う…親族とともに下院選出馬*****
フィリピンで5月の大統領選と同時に行われる下院選の選挙運動が26日に始まる。下院選には、任期切れで退任するアロヨ大統領やその親族らが多数出馬し、アロヨ派は下院を制することで権力維持を画策しているとの見方が強い。これに対し、反アロヨ陣営は反発を強め、大規模な抗議行動も辞さない構えを見せている。
 ◇議長就任の観測
287議席を争う下院選には、任期(1期6年)満了で退任するアロヨ大統領のほか、長男や夫の兄妹など4人、側近の官房長官ら前閣僚6人が立候補する。現下院は269議席中、アロヨ氏の与党が過半数の144議席を占める。アロヨ派は選挙で勢力をさらに拡大させたい考えで、アロヨ氏が下院議長のポストに就くのでは、との観測もある。
今回の選挙では、初めて電子投票システムが導入されるが、テストのたびにトラブルに見舞われており、多くの地域で選挙が不成立となる懸念がある。一部地域で選挙が無効となった場合、正副大統領や同時に選挙が行われる上院議員が選出されない可能性がある。憲法では、正副大統領、上院議長が不在の場合、下院議長が大統領代行に就任すると規定されており、アロヨ氏が大統領代行に就任する可能性もある。

また、アロヨ氏の権力維持の布石と指摘されているのが、軍や司法機関への腹心の起用だ。アロヨ氏は今月、国軍の参謀総長に腹心で元大統領警護隊長を、国軍士官学校の卒業年次の序列を無視して抜てき。国軍の主要ポストにも次々と腹心を送り込んでいる。大統領府の副報道官は19日、「選挙が不成立の場合は暫定軍事政権も考えられる」とコメントし、不測の事態が現実味を帯びてきている。

一方、反アロヨを掲げて大統領選に出馬しているアキノ元大統領の長男、アキノ上院議員は遊説先で、「(選挙の不成立による)権力の空白は許されない」と話し、マルコス独裁政権を倒した、ピープルパワーによる民衆の抗議活動の可能性に言及。国民に影響力を持つカトリック司教協議会幹部も、ピープルパワーを示唆する発言をしている。
アキノ候補を支援する非政府組織(NGO)幹部は「アロヨ氏の思惑通りになっても、民衆が許さない。一部地域で選挙が不成立となっても、次点に大きな差をつければ、選挙は成立する」と話している。【3月25日 毎日】
****************************
そうそう“ピープルパワー”では、フィリピンの民主主義の信頼が揺らぎます。

【電波障害を起こす機器???】
問題の電子投票システムについては、電波障害を起こす機器が大量に輸入され、選挙妨害用ではないかとの憶測も報じられていました。
****フィリピン:大統領選 電子投票システム導入も不具合多発******
フィリピンは5月10日に行われる正副大統領と上下両院の選挙で初めて電子投票システムを導入する。不正防止と開票作業のスピードアップが狙いだが、テストでトラブルが相次ぎ、実施まで3カ月を切った選挙の不安材料となっている。
フィリピンでは過去の選挙で投票箱の略奪や不正集計などがたびたび問題となっていた。選挙管理委員会は「電子投票により不正行為を防げる」と強調。また04年の前回選挙で約40日かかった当選者の公式発表までの期間を、36時間以内に短縮できるとしている。
電子投票はマークシート式で、投票所で機械に用紙を読み込ませる。システムはベネズエラの国民投票などで実績があるオランダ企業と比企業の連合体が約140億円で受注した。データは投票終了後、各投票所から無線LANなどインターネットや衛星電話で中央に送信される。
しかし、予行演習では、ネット回線が不安定で送信できないトラブルが多発。1枚の投票用紙には大統領候補10人、上院議員候補61人ら多数の名前が印刷され、長さが約64センチに達する。このため、データがうまく読み込めないとの見方もある。

先月には電波障害を起こす機器約5000台が輸入されたことが判明。だれが、何の目的で輸入したのかは不明だが、投票結果のデータ送信の妨害を狙った可能性も指摘されている。
マルコス独裁政権崩壊で大きな役割を果たし、独自の開票作業を行う民間団体「自由選挙のための国民運動(ナムフレル)」のエリック事務局長は「電子投票の信頼性と透明性が保証されておらず、さまざまな問題がある。失敗すれば、国際社会の信用を失いかねない」と懸念する。【2月13日 毎日】
*************************

ただでさえ多くの国で選挙後、不正が行われたとして混乱が生じていますが、フィリピンの場合もなかなかすんなりいかない可能性もあるようです。
しかし、大統領選挙が無効だから下院議長に就任したアロヨ氏が大統領代行に・・・というのは、いくらなんでも・・・というところです。


【アキノ氏を追い上げるビリヤール氏】
その大統領選挙の情勢は、母親の“コリー”ことアキノ元大統領の死去によって、一躍大統領選挙本命に躍り出たベニグノ・アキノ上院議員でしたが、最近では野党国民党のビリヤール上院議員の追い上げが報じられています。
やや古い記事になりますが、2月10日時点では下記のように報じられていました。

****比大統領選 5月投票へ選挙戦スタート アキノ氏を3氏追撃*****
フィリピンのアロヨ大統領の任期満了に伴う大統領選は9日、各候補による選挙運動が解禁され、5月10日の投票日に向け3カ月間の選挙戦がスタートした。直近の各種世論調査では、故アキノ元大統領の長男、ベニグノ・アキノ上院議員(50)が依然トップ。ただ、野党国民党のビリヤール上院議員(60)が追い上げ、エストラダ前大統領(72)、与党候補のチョドロ前国防相(45)も支持を伸ばしている。

世論調査会社のストラトポール社が1月下旬に行った調査では、アキノ氏が36%と昨年9月の調査と同じ支持率だったのに対し、ビリヤール氏が26%と前回より6ポイント増。また、エストラダ氏15%(同4ポイント増)、チョドロ氏11%(同6ポイント増)と追い上げている。チョドロ氏は当初、アロヨ大統領の不人気もあって苦戦したが、ここに来て大きく支持を伸ばしているのが目立つ。
ストラトポール社の調査では、大統領を選ぶ基準として、「信念を持った人物であるべき」とする答えが62%と最も多く、「国民に人気がある人」とした20%を上回った。「元大統領の後継者」と答えた人は4%に過ぎなかった。アキノ氏については、国民の人気は高いが、政治家としての実績が乏しいとの批判が多い。今後の選挙戦でどこまでリードを保てるか注目される。【2月10日 産経】
*******************************

“(アキノ氏の)世襲に対する批判も強まっている。これに対し、国内有数の資産家で知られるビリヤール氏は、既にアキノ氏の10倍近い広告費を投じたとされ、「貧困層の味方」を演出する戦略が奏功している。”【2月9日 読売】とも。
5月10日の投票日までまだ1月半ありますので、まだまだ事態は動きそうです。

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米ロ START1後継条約でほぼ合意 近日中には米国のNPR報告書も発表

2010-03-25 22:29:10 | 国際情勢

(昨年4月5日 プラハで「核兵器なき世界」について演説を行ったオバマ大統領 今回このプラハでSTART1後継条約署名を行う予定とか “flickr”より By Adam j r
http://www.flickr.com/photos/adamj/3436835790/)

【MDで土壇場の足踏み】
第1次戦略兵器削減条約(START1)の後継条約をめぐるアメリカとロシアの交渉がようやくまとまったようです。

昨年7月の首脳会談で、戦略核の弾頭数を1675~1500発、大陸間弾道ミサイルなどの運搬手段を1100~500に減らすことで大枠合意しました。しかし、核弾頭削減の検証方法や運搬手段の上限数を巡る溝が埋まらず、START1が失効した昨年12月までの署名には至りませんでした。
その後、今年2月にジュネーブで交渉担当者による協議を再開し、核弾頭や運搬手段の上限数、相互検証の方法などについて最終的な合意を目指していましたが、最終段階でアメリカのミサイル防衛(MD)計画に歯止めをかけたいロシア側の抵抗があって足踏みしていました。

米ロ関係を「新冷戦」といわれるほど悪化させたMD計画について、オバマ政権は昨年9月、計画の棚上げを発表。代わりに「パトリオット」をポーランドやルーマニアに配備することを検討し、ブルガリアでの配備も浮上しています。
これに対し、ロシアのセルジュコフ国防相は3月19日、ロシアへの脅威が欧州で発生した場合、欧州にあるロシアの飛び地・カリーニングラード州に新型ミサイルシステム「イスカンデル」を配備すると述べ、アメリカの動きを牽制しています。

“オバマ米大統領が昨年9月に発表したMD計画の見直しについて、ロシアでは直接の脅威はないとの見方が主流だ。だが、軍関係者らから懸念の声もあり、ラブロフ外相も米国に「明確な説明」を求めていた。背景にはSTART1を「不平等条約」とみて、今回の交渉で戦略戦力均衡の回復を目指すロシアの思惑が指摘されていた。”【3月25日 毎日】

このMD問題の処理がどのようになされたのかは不明ですが、“「条約でMDとの関連を明記すれば米上院が批准しないことは明白だ」とし、米露ともに国内を説得できる「付属文書」のようなものを出すことで決着したとみる。”【同上】とか、条約前文で法的拘束力のない文言で触れるとか言われています。

【署名は4月8日 プラハで】
「すべての書類に関して、合意に達した」とするロシア側と、「合意間近だ」とするアメリカ側の表現に若干の差異はありますが、アメリカ側からも、チェコ・プラハでの署名といった話が出ていますので、ほぼ合意の路線にあるのでしょう。
もともと米ロ双方とも核弾頭大幅削減については依存のないところで、交渉は当初から楽観視されていましたが、やはりそれなりの時間は要しました。(それでも、異例の早さであることには違いはありませんが)

****ロシアがSTART1後継条約で米と合意と表明、米は合意間近との認識*****
ロシア政府は24日、米露2カ国が交渉を続けてきた第1次戦略兵器削減条約(START1)の後継条約について、両国が合意に達したと明らかにした。一方、米政府は一部の問題については、解決する必要があるとの見解を示した。
ロシア政府高官は「STARTの署名に向けたすべての書類に関して、合意に達した」と指摘。ロシアのメドベージェフ大統領とオバマ米大統領が署名の時期を決定すると述べた。
一方、ギブズ米大統領報道官は定例会見で「われわれはSTART条約について合意間近だ。ただ、メドベージェフ大統領とオバマ大統領が再び協議するまでは合意には至らない」と指摘。「いくつか解決しなければならない点がある」として、両首脳は数日中にも協議を行うとの見方を示した。
匿名のロシア政府高官は、ギブズ報道官の発言について「米露は大枠では合意しているが、引き続き解決が必要な技術的な詳細事項がある」と述べた。

米上院外交委員会のルーガー委員(共和党)は、米政府は4月8日にオバマ大統領が昨年4月5日に「核兵器なき世界」について演説を行ったチェコの首都プラハでの署名を望んでいると指摘。「大統領は署名に向けて前進していると確信している」と述べた。
また委員自身は、批准に向け議会で支援することができるとの認識を示した。条約の批准には、上院の3分の2の承認が必要となる。【3月25日 ロイター】
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オバマ米大統領が昨年4月、「核兵器なき世界」について演説したプラハでの署名によって核軍縮交渉の成果をアピールし、4月12~13日に米ワシントンで開かれる核安保サミット、更に、5月に行われる5年に1度の核不拡散条約(NPT)再検討会議に向けて、核不拡散や核テロ対策の動きにはずみをつけようとするアメリカ側の狙いと見られています。

【カットオフ条約交渉、進展なし】
核軍縮については、核兵器用の高濃縮ウラン、プルトニウムなどの生産を禁止する兵器用核分裂物質生産禁止(カットオフ)条約交渉の早期開始を目指す協議がジュネーブ軍縮会議で行われていましたが、こちらは進展がありませんでした。
****核カットオフ条約交渉、軍縮会議の協議打ち切り*****
ジュネーブ軍縮会議(加盟65か国)は23日、今年の第1会期の協議を終了した。
日本や欧米など先進国は、5月に米ニューヨークで開かれる核拡散防止条約(NPT)再検討会議前に、兵器用核分裂物質生産禁止(カットオフ)条約交渉の道筋をつけようとしたが、パキスタンの反対で、交渉を行う作業部会の設置を盛り込んだ年間作業計画案を採択できる見通しが立たず、この日で協議を打ち切った。第2会期は、再検討会議終了後の5月31日から。
この日の会合では、カナダの大使が、「軍縮会議以外の場で交渉を行うことも模索しなければならない」と述べ、国連総会の下に条約交渉のための特別委員会を設置する可能性に言及するなど、全会一致が原則の軍縮会議では、カットオフ条約交渉は困難という認識が広がっている。【3月24日 毎日】
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【NPR 核兵器の役割低下の方向】
オバマ大統領は1カ月以内には、アメリカの核政策の指針となる核態勢見直し(NPR)報告書を発表するとされています。
オバマ米大統領は3月5日の声明で、NPRで「核兵器の数を削減し、国家安全保障戦略における役割を低下させる」ことを宣言すると述べています。

昨年中、その後、今月1日に予定されていたNPR発表が遅れた背景には、「核兵器のない世界」をめざすオバマ大統領の意向をどこまで取り込むか、政権内での激しい論争があったようです。

****米国:核態勢見直し…報告書の策定作業が難航*****
1日に発表する予定だった米国の核政策の指針となる核態勢見直し(NPR)報告書の策定作業が難航し、今月下旬以降に遅れる見通しが強まっている。核兵器の役割の一部を通常兵器に担わせ、核兵器の役割を低下させる方向性では一致しているものの、核攻撃の対象をどこまで絞り込めるかを巡って政権内で激しい論争となっている模様だ。「核兵器のない世界」をめざすオバマ大統領の指導力が問われる局面に入りつつある。

米政府高官は「従来のNPRの枠を超え、今回は核不拡散や核安全保障にまで触れる広範な内容になる。通常兵器による抑止能力を拡大する方針を示すことになるだろう」と今回のNPRの意義を強調する。
すでに高官の発言を通じて、一部の方針は示されている。
バイデン副大統領は2月18日の国防大学の演説で「技術の進化により、核兵器と同じ目的が通常兵器で達成可能になった」と表明した。通常弾頭を搭載した長距離ミサイルで核ミサイルの役割を代替させるという、米戦略軍の構想を念頭に置いた発言だった。
計画を継続するか議論になっていた信頼性が高い新型核弾頭(RRW)計画については、タウシャー国務次官が同月17日の講演で「死んだものでよみがえらない」と明言した。
また、核弾頭の削減については、米露間で第1次戦略兵器削減条約(START1)の後継条約の交渉中で、昨年7月の米露首脳会談で1500~1675個まで減らすことで合意済み。今回は、このレベル以下の「劇的な削減」(米政府高官)という方針が盛り込まれる予定だ。

一方、最も難航しているのが、核以外の大量破壊兵器を持つ敵に対して「核攻撃はしない」と宣言するかという点。前向きな文言を入れる方向で調整しているが、「同盟国の懸念」などを理由に反対意見も根強い。
また、相手が核兵器で攻撃してこない限り核攻撃しないと宣言する「先制不使用」については、複数の政府高官が「現実的ではない」などと反対の意向を表明しており、見送られる方針だ。
このため、伝統的な抑止力重視の考えから脱却できておらず、不十分な内容だという批判も出ている。憂慮する科学者同盟(UCS)のスティーブン・ヤング上級研究員は「オバマ大統領が(昨年4月の)プラハ演説で掲げた革新的な考え方は米政権内では共有されなかった。アフガニスタン、イラク戦争など課題を多く抱え、大統領自身が十分に時間を割けなかったというのが実態だ」と語る。
NPRは当初、昨年内の取りまとめを目指していたが、3月1日まで延期すると発表されていた。米露の核軍縮交渉が難航したうえ、米政府内で、抑止力の維持と削減可能な核兵器のバランスを巡る議論が予想以上に長期化した。NPRは、今回が3回目。【3月2日 毎日】
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【「先制不使用」と日本核武装】
なお、「先制不使用」については、アメリカの「核の傘」に頼る日本など同盟国の反応が懸念されています。
****日本の核武装「懸念なし」 米科学者、先制不使用でも*****
米科学者らで組織する「憂慮する科学者同盟」は23日、オバマ米政権が策定中の新核戦略指針「核体制の見直し(NPR)」で「核の先制不使用」を宣言した場合も、米保守派が懸念する日本の核武装はあり得ないとする報告書を発表した。NPRでは見送られる公算が大きいが、報告書は日本政府当局者とのインタビューなどから「日本は先制不使用を支持する」と分析、宣言に踏み切るよう促している。【3月24日 共同】
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日本の核武装は国内では殆ど議論されることはないですが、海外ではそれなりに懸念されているようです。
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ミャンマー  スー・チーさん「政党登録は、受け入れられない」 しかし、それでどうするのか?

2010-03-24 22:25:32 | 世相

(スー・チー ミャンマー民主化運動の象徴ではありますが・・・ “flickr”より By vincentdewolf
http://www.flickr.com/photos/vincentdewolf/4356985772/

【除籍か解党か】
ミャンマー軍事政権が11日発表し政党登録法では、有罪判決を受けた人物及び拘束中の人物は政党メンバーになることはできず、この規定に従わない政党は解散とすると定められています。
これにより、民主化運動指導者アウン・サン・スー・チーさん率いる国民民主連盟NLDは、スー・チーさんを党から除名するか、解党するかの二者択一を迫られる事態となっています。
しかも、総選挙に参加するためには、政党登録法が成立した今月8日から60日以内に登録を行うことが必要となるため、NLDは今月29日に中央執行委員会を開いて決定することとしています。

このスー・チーさんの除籍か解党かをタイムリミット付きで迫る軍事政権側の強硬な姿勢は、スー・チーさんや、彼女を支援してきたアメリカの期待を裏切る厳しいものでした。
発表直後には、弁護士との会談で、「動揺はしていないが、このような弾圧的な法律になるとは思わなかった」と述べていました。【3月12日 読売より】

【「受け入れられない」】
NLD幹部は、この後の対応について、「白黒つきかねている」と困惑の状態です。
そんななかの23日、スー・チーさん個人の意見としてですが、「不当な法の下での(総選挙参加のための)政党登録は、受け入れられない」という明確な拒絶の意向が伝えられています。

*****ミャンマー:スーチーさん、NLDの総選挙参加に反対*****
ミャンマー民主化運動指導者、アウンサンスーチーさん(64)は23日、書記長を務める最大野党「国民民主連盟」(NLD)の総選挙への参加に反対の意向を表明した。この日スーチーさんと面会した弁護士が、AP通信などに明らかにした。「個人的な意見」と断ったものの、スーチーさんがNLDの選挙参加について自身の意向を示すのは初めてで、NLDの意思決定に強い影響を与える可能性がある。
弁護士によるとスーチーさんは「不当な法の下での(総選挙参加のための)政党登録は、受け入れられない」と述べ、軍事政権が今月制定した選挙関連各法の下でのNLDの選挙参加はあり得ないとの考えを示した。一方で「NLDに指図しているわけではない」と強調。「NLDは民主的に(選挙参加の是非を)決定すべきだ」と語ったという。

制定された政党登録法によると、有罪判決を受けたり服役中の人物は、選挙に参加する政党の党員になれない。NLDが選挙に参加するためには、米国人自宅侵入事件で有罪判決を受け自宅軟禁中のスーチーさんを排除して、5月上旬までに政党登録する必要がある。一方で、これを拒んで選挙に出なければ、政党として存続できない規定だ。
米国など国際社会は「公平、公正で誰もが参加する」選挙と認める条件として、最低でも前回90年の総選挙で圧勝したNLDの選挙参加を求めている。軍事政権は政党法で「スーチーさん抜きでのNLDの選挙参加」を狙ったとみられる。

民主化運動のシンボルのスーチーさんは、NLDの事実上の最高指導者。国の独立の父アウンサン将軍の娘として国民の人気も高く、スーチーさん抜きでNLDがどこまで選挙戦を戦えるかは未知数だ。政党法の規定でNLDの選挙参加は「困難になった」との見方が強まっている。
一方で、選挙に参加しなければ軍部主導とはいえ、その後の「民主化プロセス」に政党として一切関与できない。NLDはあえてスーチーさんを「切って」でも選挙に出ざるを得ないとの観測もある。
NLDは15日、中央執行委員会を開いて選挙参加の是非を協議したが結論が出ず、29日に再び会合を開いて最終的に態度を決定する予定だ。【3月23日 毎日】
*******************************

朝日記事では、スー・チーさんの発言は「不当な法律下での(総選挙に向けた)政党登録は考えることすらできない」と報じられており、彼女の怒りが伝わってきます。
いくら「個人的な意見」「NLDに指図しているわけではない」とはいっても、文字通りNLDを率いるカリスマである彼女の意見ですから、NLDの意思決定に強く影響することは間違いありません。

【「スー・チーさん抜き」で闘うしかないのでは?】
しかし、スー・チーさんを“切らない”ことが、総選挙への不参加、NLDの解党になるのであれば、ミャンマー民主化の今後について、スー・チーさんやNLD幹部はどういう展望を持っているのでしょうか。
非合法活動を許すような国家ではありません。

たとえ、軍事政権を実質的に維持するための“民政移管”であったとしても、議会において一定の数を得て発言権を確保していく以外に道があるのでしょうか?
もちろん、いくら議会で発言しても認められない・・・という事態は容易に想像されますが、そうした事態を国内・国際社会にアピールしていくしかないのではないでしょうか?

ミャンマー民主化の運動はスー・チーさんのためにあるのではなく、ミャンマー国民のためにあることは言うまでもないことです。
これまでがそうであったように、スー・チーさんの問題にこだわる限り、今の状況では民主化運動自体が一歩も先に進めません。

軍事政権は、03年にスー・チーさんを拘束した際に閉鎖を命じた地方支部の再開を許可しています。
この措置はNLDの参加を促す狙いがあると言われています。
軍事政権側も、NLD参加によって“民主選挙”の体裁を整えようとしています。

選挙に出たくてもいろんな制約で選挙に出られない政党は世界中にたくさんあります。
NLD参加を促す軍事政権側の意向を逆手にとるぐらいの気概で、ここは、スー・チーさんを「切って」でも選挙に打って出て、「スー・チーさん抜き」で闘う姿勢をNLDに見せてもらいたいものです。
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イエメン  早婚を禁止する法改正に女性たちが抗議集会

2010-03-23 20:32:54 | 世相

(イエメンの首都サヌアで、早婚を禁じる法案に抗議する女性たち 3月22日AFPより
http://www.afpbb.com/article/life-culture/religion/2712046/5523840

【「口減らし」や金品目当てに、幼い娘を強制結婚させる風習】
イエメンの児童強制結婚については、2008年11月14日ブログ「イエメンの児童強制結婚 日本女性の社会的地位」(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20081114)で取り上げたことがありますが、このときの主人公ナジュード・ムハンマド・アリさん(ちゃん?)の話題が先月また報じられていました。
記事によって年齢が微妙に異なりますが、08年当時のAFP記事では、“8歳のとき28歳男性と強制結婚させられ、10歳で離婚を勝ち取った”とされていました。
この少女が話題になったのは、8歳で結婚させられたからではなく(このこと事態はさほどまれではないようです)、離婚が困難なイエメンで、10歳の少女が離婚を裁判で勝ち取ったからです。

****イエメン、幼妻の悲劇…慣習の若年結婚で論議*****
国際テロ組織アル・カーイダの拠点となるなど政情不安が続く中東のイエメンで、8歳の少女の離婚訴訟を発端に、古くからの慣習だった女性の若年結婚に関する議論が高まっている。
弁護士など若いインテリ層は、身体に危険を及ぼすなどとして反対の声を強める一方、慣習に固執する保守層の声も根強く、結婚年齢を制限する法律は宙に浮いたままだ。

「毎日、暴行され、地獄の日々だった」――。2008年4月に裁判所から8歳で離婚が認められたナジュード・ムハンマドさん(9)は首都サヌア東部の自宅で目に涙を浮かべて振り返った。
同年2月、父親に連れて行かれたサヌア北方約100キロ・メートルのハッジャ県。段々畑が広がる山間の寒村に着くと、結婚式が準備されていた。「だれの結婚式なの」といぶかしげに思っていると、運送業の男(30)と自分の結婚式だった。
通例は身体的に成長するまでは、結婚後も別居するなど一定の配慮が行われるが、ナジュードさんの夫は「結婚の日から性的暴行を加え、従わないと殴った」。2か月後に家から逃げ、裁判所に駆け込んだ。
イエメンでは結婚年齢を定めた法律がなく、貧困な家庭では「口減らし」や夫側からの金品目当てに、幼い娘を強制結婚させる風習が広く残っている。
推計約25%の少女が15歳以下で結婚する同国で、ナジュードさんの結婚の形式は珍しくなかったが、耳目を集めたのは、離婚がまれな同国で、しかも8歳の少女が離婚したという異例の事例だったためだ。
ナジュードさんの訴訟を引き受けた人権派の女性弁護士シャダ・ナセルさん(45)は、報道各社に実態を知らせ、「若年結婚の悲惨な実態を掘り起こすきっかけとなった」。

国連児童基金(ユニセフ)は、若年結婚は少女の教育の機会を奪う上、身体に危険を及ぼす妊娠を招き、貧困層の拡大にもつながると批判している。海外事情を知る知識層の中に若年結婚をやめるべきだという見方が広がりつつあるのも議論沸騰の背景だ。
若年結婚を問題視する声を受け、国会は昨年2月、結婚の最低年齢を17歳に制限する法案を通過させた。しかし、イスラム教の預言者ムハンマドが8歳のアーイシャと結婚したとされることから、保守的なイスラム主義者らが反発。法案は憲法調査委員会に回され、1年後の今年2月になってもたなざらしのままだ。
被害者を保護するシェルターはなく、両親や元夫を罰する法律もないのも問題視されている。「大人になったら結婚したいか」と問われたナジュードさんは、首を横に強く振った。【2月16日 読売】
*****************************

内容的には08年当時の記事と特段の差異はありませんが、この記事を再度取り上げたのは、下記の記事を見たからです。

【「アラーが許したことを禁ずるな」】
****早婚を禁じる法案に反対するイエメン女性たち******
イエメンの首都サヌアで21日、全身を覆う黒いベールのアバヤ姿の女性たちが議会前に集結し、17歳未満の女性の結婚を禁じる法案に抗議した。
女性たちは、法案に反対するイスラム教聖職者の呼びかけに応じて、バスに乗って集団でやってきた。AFP記者によると、「アラーが許したことを禁ずるな」、「人権や自由をたてにシャリア(イスラム法)を侵害することは止めろ」などと書かれた横断幕をかかげていたという。 

2009年8月に提出された婚姻法の修正案は、17歳未満の女性、18歳未満の男性の結婚を禁止する内容だが、反対派の激しい抗議にあい、棚上げ状態となっている。
中東の貧困国イエメンでは、農村地域を中心に子どもの結婚は珍しいことではない。両親が極貧なため8歳の女児が嫁に出される例もある。
前年に12歳の既婚少女が出産時に母子ともに死亡した事件は、海外でも報じられ衝撃を与えた。

婚姻修正法案の抗議運動に参加した女性の1人は、イエメンの人権団体に属する女性の多くが40歳以上で結婚もしていないと皮肉る。氏族社会の慣習が根強いイエメンでは、一定の年齢を過ぎた独身女性を見下す傾向がある。この女性は、「大学に通う女性にも結婚できない者は多い」と主張する。
この日、議会前には修正案を支持する人権団体の女性グループもいたが、反対派の女性グループの圧倒的な多さに退散を余儀なくされた。
イエメンの女性権利団体「Women National Committee」のHouriya Mashhour副委員長は、「8歳や9歳の少女たちを結婚させるのは理不尽で、イエメンの重要な問題だ」とため息をついた。【3月22日 AFP】
******************************

Houriya Mashhour氏ならずとも、思わずため息をついてしまう記事です。
口にすべきではない暴言を吐きそうにもなりますが、宗教・伝統が絡むと、部外者には理解できない結論になってしまうのでしょう。
そうしたことは、別にイエメンの女性だけのことではありません。
アフガニスタン・タリバンの女性の権利を無視した対応、東エルサレムの“聖地”をめぐる争いなどもその一例ですし、世の中に掃いて捨てるほどある宗教対立を背景にした残忍な殺し合いなどもそうした類です。

“アラーが許したこと”というのは、“イスラム教の預言者ムハンマドが8歳のアーイシャと結婚したとされること”を指すのでしょうが、こうした児童強制結婚が女性を傷つけることも少なくないはずなのに・・・、当の女性がそれを支持するのは・・・と、つい考えてしまいます。

もちろん、軽々しく欧米や日本の価値観で判断するのではなく、現地の文化・歴史・社会環境などを考慮して考えるべきことなのでしょうが・・・。
女性たちが自分で考えてそう判断するのならまだしも、おそらくこうした運動の背後に、彼女らを扇動する宗教的保守派の男性が存在するであろうことを考えると、やり場のない憤りを感じてしまいます。

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拡大するパレスチナの混乱 オバマ大統領、訪米イスラエル首相に会談要請

2010-03-22 13:47:49 | 国際情勢

(パレスチナ側が“怒りの日”と名付けて行った3月16日のイスラエル警官との衝突後、Vサインを掲げる東エルサレムの少年 “flickr”より By activestills
http://www.flickr.com/photos/activestills/4438343911/in/set-72157600268131839/

【“殉教”を口にする少年】
たまたま、今朝TVで放映していたドキュメンタリー「ガザに死す~英国人カメラマン 最後の映像~」を観ました。エミー賞も受賞したイギリスの名カメラマン ジェームズ・ミラーが2003年、パレスチナ・ガザ地区でパレスチナの子供たちの、死と隣り合わせの日常を撮影したものです。
この撮影の途中でミラーはイスラエル軍の銃撃を受けて死亡します。その銃撃の場面も映像に含まれています。

イスラエル軍戦車や民家を壊すブルドーザーへの子供たちの投石、それに対するイスラエル側の威嚇射撃も想像を超えた日常風景ですが、何より衝撃的だったのは、パレスチナの少年たちが“殉教”へのあこがれみたいなものを口にすることでした。
模型の銃などをつかったパレスチナ・イスラエルの間の戦いを模した“戦争ごっこ”は異様にリアルですが、その遊びでは“殉教”して死ぬ者が勝者となるとか・・・。

パレスチナ側武装勢力が夜間の活動の際に、“協力してくれる少年”を先に立たせて、路地の安全を確認しながら移動する場面もありました。
イスラエル軍は3月11日、09年1月のガザへの大規模攻撃において、ガザ市南部のビル内を捜索中、仕掛け爆弾が入っている疑いのあるバッグ数個を現地の9歳の少年に開けるよう命令したとして、兵士2人を軍事法廷に起訴しました。(このとき、バッグに爆弾は入っていなかったそうです)
どうしても殺し合いをやるのなら、自分達だけでやってもらいたいものです。

【少年2人を含むパレスチナ人計4人が死亡】
イスラエルの発表した東エルサレムへの新規住宅建設承認を契機とする衝突がパレスチナで広がっています。
ヨルダン川西岸や東エルサレムでは住民の抗議運動での衝突で子供を含む犠牲者が出ており、更なる拡大が懸念されています。
ガザ地区では、武装勢力のロケット弾発射に対するイスラエル側の報復空爆が行われています。

****イスラエル軍と衝突 発砲されパレスチナ人4人死亡*****
ヨルダン川西岸のパレスチナ自治区ナブルス近郊で20日から21日にかけて、パレスチナ人住民とイスラエル軍が衝突し、少年2人を含むパレスチナ人計4人が死亡した。
イスラエルが占領する西岸や東エルサレムでは、同国政府の入植住宅建設計画などに反発するパレスチナ人とイスラエル治安部隊の衝突が相次いでいる。死者が出たことで騒動が広がる恐れがあり、米仲介のパレスチナ和平交渉に影響が出る可能性もある。

20日午後、ユダヤ人入植地に反対するパレスチナ人と同軍が衝突し10代の少年2人が死亡。2人が搬送された病院の医師によると、1人は胸部を撃たれ、もう1人は頭部に銃弾が残っていたという。21日には、パレスチナ人2人がイスラエル兵に射殺された。
イスラエル軍は20日の衝突について、「暴動を鎮圧するためにゴム弾を使用した」とする声明を発表し、実弾の使用を否定した。ただ、衝突時の状況を調査するとしている。21日の事件は「パトロール中の兵士をパレスチナ人が刺そうとしたので発砲した」と説明した。

アッバス・パレスチナ自治政府議長は市民に自制を促しているが、西岸や東エルサレムだけでなく自治区ガザの武装勢力も動き出している。パレスチナ解放機構(PLO)の幹部の一人は、「イスラエルの挑発行為が続けば、インティファーダ(対イスラエル民衆蜂起)につながる恐れがある」と指摘する。
パレスチナ和平を促すため西岸を訪問した潘基文(パン・ギムン)国連事務総長は20日、自治区ラマラで会見し、「占領地での入植活動は違法」と指摘して、イスラエル政府に入植を停止するよう訴えた。【3月22日 朝日】
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****イスラエル軍が再度のガザ空爆、11人負傷*****
イスラエル軍は19日夜、パレスチナ自治区ガザ南部の空港(閉鎖中)を空爆、AFP通信によると、近くにいた11人が負傷した。
イスラエル軍は、空港敷地内にあったテロ活動拠点を攻撃したと説明している。
18、19の両日、ガザからロケット弾5発が発射されたことへの報復攻撃で、イスラエル軍は19日未明にもガザを空爆している。【3月20日 読売】
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【「テルアビブで住宅を建てるのと変わらない」】
こうした中、アメリカを訪問するイスラエルのネタニヤフ首相に対し、オバマ米大統領が会談を要請しています。
医療保険制度改革案の正念場を迎えて、外国訪問を延期するなど国内問題で頭の中はいっぱいではないかとも思われるオバマ大統領ですが、パレスチナは捨てて置かれない情勢ですから当然の措置でしょう。
それにしても、いくつもの重大で待ったなしの問題によく同時に対処できるものだと感心してしまいます。
(今しがたのTVニュースで、医療保険制度改革案が下院で可決されたことを報じていました。「オバマ大統領は、民主党長年の悲願だった最重要課題をクリアして、山積する国内・国外問題に果敢に取り組み、低迷する支持率アップをはかっていく考え」・・・とのことです。)

ただ、ネタニヤフ首相は21日、住宅建設について「歴代政権の政策と変わりはない。我々の見解では、首都(エルサレム)での住宅建設は、テルアビブで住宅を建てるのと変わらない」と述べ、占領地東エルサレムでの入植住宅建設を今後も続ける方針をクリントン米国務長官に書簡で伝えたことを明らかにしています。

****オバマ米大統領、イスラエル首相に会談要請 和平交渉について協議へ*****
バラク・オバマ米大統領は21日、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相に対し、23日に米ホワイトハウスで会談を行うことを要請した。会談では中東和平について協議される見込みだが、ネタニヤフ首相は、東エルサレムでのユダヤ人入植者住宅の建設中止を求めた米国の要請を拒否する姿勢を示している。(中略)

パレスチナ自治政府のマフムード・アッバス議長はネタニヤフ首相の発言について、協議再開につながるものではないと批判。パレスチナ自治区ヨルダン川西岸でイスラエル軍によりパレスチナ人4人が殺害されたことも厳しく非難した。
ネタニヤフ首相はまた、同地を訪問中の潘基文(パン・キムン)国連事務総長とも会談。事務総長は、アラブ諸国に対し間接交渉を支持するよう求めると語った。
2日間の滞在中に、事務総長はガザ地区も訪れ、同地の境界封鎖は「受け入れがたい苦しみ」を引き起こしているとしてイスラエルを非難した。【3月22日 AFP】
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和平協議に消極的だったネタニヤフ首相は、将来のパレスチナ国家との国境画定問題などを協議することで同意する意向をアメリカ政府に伝えており、若干の譲歩姿勢は示していますが、東エルサレム入植問題では強硬な姿勢を崩していません。

【イラン問題にリンクするパレスチナ情勢】
アメリカ側は、イスラエルに敵対する武装勢力ハマスの関連組織に対してアメリカ国内資産凍結などの厳しい制裁措置を行うことで、イスラエル側の譲歩を引き出そうとしているとも報じられています。
しかし、この程度ではネタニヤフ首相も、国内の強行論を抑えて国際世論に譲歩することは難しいようにも思えます。

イスラエル・ネタニヤフ首相がもしパレスチナで譲歩するとしたら、それはイラン問題でアメリカがより強力な制裁措置を約束したときぐらいではないでしょうか。
イスラエルにとって、実際上の脅威はもはやパレスチナではなく、核保有に走るイランであるとも言われていますので、イスラエルが希望しているイラン核施設攻撃にアメリカがゴーサインでも出せば、パレスチナでの大幅譲歩にも応じるかも。
もちろん、それはまた別の大きな問題を引き起こしますので、アメリカとしてのおいそれと乗れる話ではありませんが。

【影が薄い潘基文事務総長とアッバス議長】
国連の潘基文(パン・ギムン)事務総長は、19日モスクワで、中東和平を巡る米国、ロシア、国連、欧州連合(EU)の4者協議(カルテット)を行い、記者会見では、イスラエルによる入植活動凍結を呼び掛け、24カ月以内のパレスチナ建国を支持する4者の声明を発表しています。
この声明は、9日にイスラエル政府が承認した東エルサレムでの新たな住宅建設計画を非難。イスラエルにあらゆる入植活動の停止を求めています。
また前出記事にもあるように、パレスチナ・ガザ地区も訪れ、同地の境界封鎖は「受け入れがたい苦しみ」を引き起こしているとしてイスラエルを非難しています。
しかし、その影響力が現実打開にほとんど及んでいないことは残念なことです。

同様に、パレスチナ自治政府のアッバス議長の影が薄いことも気になりますが、これは昨今のパレスチナ情勢停滞・混乱の背景でもあり、また、結果でもあります。

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