孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

2030年には6億人が飢餓状態に 国際支援をカットするトランプ次期政権 責任を果たさない中印

2025-01-04 23:39:32 | 食糧・飢餓

(ベネズエラのマラカイボでスープを飲む子ども。2024年6月12日撮影 【2024年7月29日 ロイター】)

【2030年の時点で6億人近い人々が飢餓状態に陥る】
国連は2030年までの飢餓撲滅を目標としていますが、「達成の道筋から外れている」(FAO報告書)状況にあり、改善が進んでいません。

****国連報告、栄養失調は7億人超 コロナ収束も高止まり****
国連食糧農業機関(FAO)などは24日、2023年に世界の最大7億5700万人が栄養失調状態だったと推定する報告書を公表した。

21年以降ほぼ横ばいの状態。新型コロナウイルスの世界的大流行(パンデミック)が収束に向かった後も高止まりが続いている。特にアフリカでは右肩上がりに増加し、人口の2割が栄養失調状態にある。
 
国連は30年までの飢餓撲滅を目標としているが、報告書は「達成の道筋から外れている」と指摘。紛争や気候変動、経済の悪化といった要因が同時発生することで「飢餓が増加している」とし、農業・食料システムの変革に向けた資金援助の必要性を訴えた。【2024年7月24日 共同】
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今後の予測に関しても、国連の国際農業開発基金(IFAD)のアルバロ・ラリオ総裁は、気候変動による影響と金融・政治双方の怠慢のために、2030年の時点で6億人近い人々が飢餓状態に陥るとの見方を示しています。

なお、上記の国連食糧農業機関(FAO)、下記の国際農業開発基金(IFAD)、そして国連世界食糧計画(WFP)は共同で世界食料安全保障委員会(CFS)事務局を運営していますが、上記記事の“国連食糧農業機関(FAO)など”の報告書と、下記記事のIFAD報告書の関係は知りません。

また、“栄養失調”“飢餓”の定義は各機関・報告書によって異なるところもあるようです。

****2030年には6億人が飢餓状態に、国連機関トップが警告****
国連の国際農業開発基金(IFAD)のアルバロ・ラリオ総裁は、気候変動による影響と金融・政治双方の怠慢のために、2030年の時点で6億人近い人々が飢餓状態に陥るとの見方を示した。

ラリオ総裁は、世界の飢餓・栄養状態に関するIFAD報告書の発表を前にトムソン・ロイター財団のインタビューに応じ、国連が持続可能な開発目標(SDGs)に掲げた2030年までの飢餓克服が未達成に終われば、アフリカのような人口増加地域を中心に、やむをえぬ移民の増加、新規雇用の減少、資源をめぐる紛争の深刻化が生じるだろうと述べた。

IFADの報告では、2022年の時点で世界人口の3分の1以上に当たる約28億人が健康的な食生活を送れていないとしている。 また、そのうちの70%以上は低所得諸国の住民だ。

報告書は、食糧安全保障が改善されておらず、健康的な食事へのアクセスに格差があるせいで、2020年代末の時点で5億8200万人が慢性的な栄養失調に陥る可能性があり、その半数以上がアフリカの人々だと指摘している。

ラリオ総裁は「2030年の時点で約6億人が慢性的栄養失調に陥るという事態を真剣に避けたいのであれば、一刻も早い措置が必要になる」と述べ、「やるべきことは分かっている。要するに政治的な意志があるかないかという話だ」と続けた。

IFAD報告が示した結論は、現在ブラジルで行われているG20閣僚会議における飢餓・貧困問題をめぐる議論の叩き台となるだろう。

<主要因としての気候変動>
ラリオ総裁はトムソン・ロイター財団に対し、気候変動を背景とする洪水や干ばつ、酷暑が世界中で飢餓と栄養失調を深刻化させつつあると語った。

また、気候変動の影響に対応するためのインフラの不足、過大な債務を抱えた各国財政、食糧の生産・貯蔵・流通分野に向けた気候ファイナンスの大幅な不足も原因になっていると指摘した。

これは、昨年(2023年)COP28で示された国連の新たな計画にとって障害になりかねない。この計画では、地球温暖化を摂氏1.5度以内に抑えこむというパリ協定の目標を守りつつ飢餓と栄養失調に終止符を打つことを目指している。

栽培手法や肥料、貯蔵、輸送、廃棄物処理を含む食糧関連部門は、世界の温室効果ガス排出量の約3分の1を占めている。

昨年のCOP28では、国連の計画としては初めて食糧の生産・消費による温室効果ガス排出が取り上げられた。

それに伴い、農業における「公正な移行」という概念、そして気候変動を悪化させない食糧生産方式への移行に向けた農家支援に対する関心が高まった。

小規模生産者は、世界人口の70%以上に対する食糧を生産しているにもかかわらず、農地や資源に占める割合は3分の1にも満たない。

「こうした何億人もの小規模農家のなかには、生計を維持していくのがやっとという例も多い。そういう農家に特定の農業手法への移行をお願いするというのは負担が大きい」とラリオ総裁は語った。

さらに、こうした小規模生産者が「豊かな生活を送れるような」適切な生態系を生み出すべく、融資やインフラ、そして国の政策による支援を提供することが決定的に重要だと説明した。

だが、こうした課題に対処するニーズが高まっているにもかかわらず、食糧安全保障と栄養改善に向けた資金確保が追いついていないという。

「貧しい農村地域に住む小規模生産者に対する資金供給は、気候ファイナンスのフロー全体と比較すると、実際には以前より減少している」

米国の気候政策イニシアティブ(CPI)が昨年行った調査では、気候変動適応に向けた投資のうち、小規模農家の食糧安全保障に関連したものに注目した。

ラリオ総裁が注目しているのは、同調査において、こうした小規模農家への資金供給が世界全体の気候ファイナンス総額に占める比率が2018年の1.7%から2020年には0.8%に低下している点だ。

総裁は、生産だけでなく、食糧の供給や貯蔵、市場アクセス、品質保証に対する投資も急務だと指摘する。「こうしたバリューチェーンのあらゆる領域において、実際に多くの雇用が生まれる可能性がある」

だがラリオ総裁の指摘によれば、資金供給のギャップはかなり大きい。

総裁が引用した世界銀行の試算では、グローバルな食糧システムをもっと持続可能で包摂性の高い(インクルーシブな)ものにするには、年間3500−4000億ドルが必要とされている。

「だが、この問題を解決すべき理由を考えてみてほしい。何しろ肥満や栄養不良の治療費は約6兆ドル、こうしたシステムの気候変動・環境問題による被害は3兆ドルにも達するのだから」【2024年7月29日 ロイター】
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“気候変動を悪化させない食糧生産方式への移行”・・・いろんなものがあるのでしょうが、真っ先に思い浮かべるのは焼畑農業からの移行でしょうか。焼畑農業は草木を焼き払うことから、大量の二酸化炭素を放出します。 また、二酸化炭素を吸収する森林も失われることがあり、地球温暖化に拍車をかけていると言われています。また甚大な環境汚染・健康被害も惹起しています。

【富裕国が人道支援のために拠出する金額は減少 流れを決定づけるトランプ政権の国際支援カット 「大国」の責任を果たさない中国・インド・ロシア】
いずれにしても、こまかい数字は別として、世界の食糧事情は依然として厳しいものがあり、国際社会の一致した協力・支援を必要としている状況にあります。

しかしながら、支援が期待される富裕国や「大国」の資金提供は満足できる状態にありません。世界中で飢餓などに苦しむ人々の数が増加している一方で、最も富裕な国々が人道支援のために拠出する金額は減少しているのが現実です。

****深刻化する世界の飢餓、支援責任果たさぬ大国に不満も****
これは単純だが残酷な方程式だ。世界中で飢餓などに苦しむ人々の数が増加している一方で、最も富裕な国々が人道支援のために拠出する金額は減少している。

結果として、2025年は人道支援を必要とする3億700万人のうち、60%程度を支援できる資金しか調達できないと国連は予想している。つまり少なくとも1億1700万人が食糧その他の支援を受けられないということだ。

国連は24年、全世界の人道支援のために調達を目指している496億ドルのうち、約46%しか集められそうにないとの見通しを示している。達成率が半分以下にとどまるのは2年連続だ。人道支援機関は苦渋の決断を迫られ、飢餓に苦しむ人々への配給を削減したり、支援の受給資格者を減らしたりしている。

例えばシリアで国連世界食糧計画(WFP)は、かつて600万人に食糧を供給していたが、24年初めの寄付額予測を踏まえて支援対象者を約100万人にまで削減した。WFPのパートナーシップおよび資源動員担当副事務局長であるラニア・ダガッシュカマラ氏が明らかにした。

一部の富裕国は財政逼迫と政治情勢の変化を背景に、支援の規模と対象を見直している。国連への寄付額が最大規模のドイツは既に、財政緊縮の一環として23年から24年にかけて人道支援を5億ドル削減。内閣は25年について、さらに10億ドルの削減を勧告している。

人道支援組織は、トランプ次期米大統領が人道支援についてどのような提案を行うかも注視している。トランプ氏は1期目に米国の資金援助を大幅に削減しようとしていた。

米国は、世界中で飢餓の防止と対策において主導的な役割を果たしており、過去5年間で645億ドルの人道支援を提供した。これは、国連が記録した同種の拠出総額の少なくとも38%に相当する。

<分担に大きな差>
人道支援資金の大半は、米国とドイツ、欧州連合(EU)欧州委員会という富裕な国と組織が拠出している。国連の記録では、20年から24年の危機支援額1700億ドルの58%を、これら3主体が占めた。

ロイターが国連の拠出金データを調査したところ、やはり大国である中国、ロシア、インドによる拠出額は、同期間の人道支援額の1%にも満たない。

この差が縮まらないことが、世界的な飢餓支援制度が窮状にある主因の一つだ。23年には59の国と地域において、約2億8200万人が深刻な食糧不足に直面した。

トランプ氏は、主要な国々が応分の負担を引き受けていないとの不満を繰り返し訴えてきた。トランプ氏の支持者らが2期目に向けてまとめた政策提言「プロジェクト2025」は、人道支援機関に対して他の国々からの資金調達に一層努力するよう求め、それを米国による追加支援の条件にすべきだとしている。

プロジェクト2025はまた、ほとんどの飢餓危機の原因である紛争について特別な言及を行っている。いわく「人道支援は戦争経済を支え、戦闘を続けるための財政的インセンティブを生み出し、政府の改革を妨げ、悪政を支えている」。そして「悪の勢力」が支配する地域で支援プログラムを中止し、国際的な支援を大幅に削減するよう求めている。

トランプ氏が新組織「政府効率化省」のトップに指名した実業家イーロン・マスク氏は今月Xで、同省が海外援助を検証すると表明した。

<五輪と宇宙船>
多くの地域で大規模な飢餓が長引くにつれ、寄付国の間に支援疲れが広がっていると人道支援機関は指摘している。 自国が支援できる額には限界があるだけに、十分な責任を担っていないとみられる大国に対する不満が募っているという。

ノルウェー難民評議会の代表であるヤン・エーゲランド氏は、ノルウェーのような小国が人道支援の拠出国上位に位置するのは「異常」だと話す。ロイターが国連の支援データを調査したところ、23年の国民総所得(GNI)が米国の2%にも満たないノルウェーは同年、国連に10億ドル余りを拠出し、世界7位の寄付国だった。

これに対し、GNI世界2位の中国による人道支援は1150万ドルで32位、GNI世界5位のインドは640万ドルで35位にとどまった。

エーゲランド氏は、中国とインドは世界的な注目を集める取り組みにはるかに多くの投資を行っていると指摘する。中国は22年の冬季五輪開催に数十億ドルを費やし、インドは23年に7500万ドルを投じて月面に無人探査機を着陸させた。

「世界の飢えに苦しむ子どもたちを助けることに、なぜこれほど関心が薄いのか」とエーゲランド氏。「これら(の国々)はもはや発展途上国ではない。五輪を開催し、他の多くの支援国が夢にも思わない宇宙船を所有しているのだ」と憤る。

駐米中国大使館の報道官は、中国は常にWFPを支援してきたと主張。また、中国国内で14億人に食糧を供給していると指摘した上で「それ自体が世界の食糧安全保障に対する大きな貢献だ」と述べた。

インドの国連大使および外務省は質問に回答しなかった。

14年当時、国連難民高等弁務官だったグテレス現国連事務総長は、国連加盟国による人道支援資金の拠出方式を抜本的に変え、加盟国に手数料を課す制度にするよう提言した。国連の報告書によると、翌年に国連はグテレス氏の案を検討したが、支援側の加盟国が、ケースバイケースで拠出を決める現行制度の継続を選択した。

国連人道問題調整事務所の報道官、レンズ・ラーケ氏は、国連は寄付ベースの多様化に取り組んでいると説明。「お馴染みの寄付国クラブに頼るだけではいけない」と認めた。【1月4日 ロイター】
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世の中は「自国第一主義」に傾いていますので、今後国際支援は大きく減少すること、つまり、食糧支援を受けられず飢餓に苦しむ人々が増加することが予想されます。

その流れを決定づけるのがアメリカのトランプ政権であり、マスク氏率いる新組織「政府効率化省」でしょう。
プロジェクト2025の「人道支援は戦争経済を支え・・・」云々からすれば、国際支援は大幅にカットされるでしょう。

それにしても中国は“中国国内で14億人に食糧を供給していると指摘した上で「それ自体が世界の食糧安全保障に対する大きな貢献だ」”・・・面白い言い訳をするものです。

中国は「一帯一路」事業などで海外支援・投資は行っていますが、「大国」を自任するのであれば、中国国旗がはためくもの、「中国支援」のプレートが大きく表示されたものだけでなく、こうした国連を通した支援責任を果たしてもらいたいものです。

【スーダン 人口の半数に当たる約2460万人が深刻な食料不足】
あまた存在する飢餓の具体事例をひとつだけ。「忘れられた紛争」スーダン。

飢餓の状況を監視する国連組織(国連の「総合的食料安全保障レベル分類(IPC)」の飢饉評価委員会)は12月24日、スーダンで飢饉が5つの地域に拡大し、5月までにさらに他の5つの地域に拡大する恐れがあると報告しています。スーダンの現状は現代で最悪の食糧危機の一つとされていますが、内戦当事者が支援を妨害し続けていると指摘されています。

****内戦のスーダン、飢饉が拡大 人口の半数が深刻な食料不足****
複数の国連機関や人道支援団体などの連合体「IPC」は24日、国軍と準軍事組織「即応支援部隊」の内戦が続くアフリカ北東部スーダンで飢饉が拡大、少なくとも五つの地域で確認されたとする報告書を公表した。

人口の半数に当たる約2460万人が深刻な食料不足に陥っているとし、飢饉はさらに拡大する恐れがあると警告した。

8月の報告書では北ダルフール州にある一部の難民キャンプで飢饉を確認。その後も支援が進まず、同州の別の難民キャンプやスーダン南部の一部に広がったという。

IPCは、特定地域の人口の少なくとも2割が極度の食料不足に直面するなど三つの基準を満たした場合に飢饉と判断する。【12月25日 共同】
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“スーダン政府が今年に入ってからIPCの活動を妨害し、ザムザム避難民キャンプにおける飢饉認定を数カ月遅らせていることが明らかになった。同キャンプでは、避難民が生き延びるために木の葉を食べる状況に追い込まれている。”【12月29日 ロイター】

“政府と対立するRSFは、通常の商取引や人道支援によって供給される食料を略奪し、農作業を妨害。一部の地域を包囲している。このため食料の取引コストが上昇し、食品価格は法外なレベルに達している。一方でスーダン政府も、複数の地域で人道支援団体のアクセスを妨げている。”【同上】

“スーダン政府による支援関係者へのビザ発給は時間がかかり、多くの国際NGOが影響を受ける。特に、飢饉の影響が深刻なダルフール地域での活動について、政府は難色を示しているという。この地域は主にRSFの支配下にある。 匿名を条件に取材に応じた支援団体の幹部は、スーダン政府が「ダルフールには活動を正当化するほどのニーズがない」とし、活動を続ける場合はビザ発給を期待しないようにと警告したと述べている。”【同上】

住民の生活困窮に関心がない点では、政府もRSFも同じです。
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ドイツ 2月総選挙で政権交代の予想 注目される年末のクリスマスマーケット襲撃事件の影響

2025-01-03 23:27:08 | 欧州情勢

(【12月27日 Bloomgerg】 右肩上がりの白が最大野党の保守、キリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)、赤が与党・中道左派の社会民主党(SPD) 青が極右・ドイツのための選択肢(AfD)) AfDの伸びは昨年中はストップしたようです。)

【最大野党の保守、キリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)は支持率トップも、単独過半数には届かない見込みで、連立交渉か】
ドイツでは異例の議会解散による総選挙が2月23日に行われます。

ショルツ首相率いる中道左派の社会民主党(SPD)と環境派の「緑の党」、そして中道の自由民主党(FDP)による3党連立政権は昨年11月、経済や財政政策の対立から自由民主党(FDP)が連立を離脱して少数政権となり政権運営に行き詰まりました。

ドイツは議会解散の頻発がナチス台頭をもたらした反省から、基本法(憲法)で解散を厳しく制限しているため、ショルツ首相が要請した信任投票が予定どおり反対多数で否決されて不信任となるという形を受け、ショルツ首相がシュタインマイヤー大統領に議会の解散を求め、大統領が議会を解散する・・・という流れになっています。

上記事情からドイツでは解散総選挙は異例で、2005年のシュレーダー政権以来となります。

****ドイツ大統領、連邦議会を解散 来年2月23日総選挙へ****
ドイツのシュタインマイヤー大統領は27日、連邦議会(下院)で信任投票が否決されたショルツ首相の提案を受け、下院を解散した。来年2月23日に総選挙を実施することも正式に発表した。解散総選挙は2005年以来、19年ぶり。
 
争点は経済問題や移民・難民政策、ウクライナ支援など。

世論調査では最大野党の保守、キリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)が支持率で首位を走り、排外主義の右派、ドイツのための選択肢(AfD)が2位。与党のショルツ氏の中道左派、社会民主党(SPD)と環境派の「緑の党」は低迷している。
 
21年12月に発足した3党連立政権は今年11月に崩壊した。【12月27日 共同】
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支持率ではトップの最大野党の保守、キリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)も単独過半数には届かない見込みで、連立政権が現実的と考えられていますが、その連立交渉は難しそう。

****ドイツ総選挙、世論調査トップは中道右派 首相、信任案提出へ****
(中略)公共放送ZDFが12月6日に発表した世論調査によると、支持率が最も高いのは、メルケル前政権で与党だった中道右派の統一会派CDU・CSUで33%。次いで、地方選挙で躍進が続く排外主義的な右派、ドイツのための選択肢(AfD)が17%と続き、ショルツ氏が率いる社民党は15%にとどまる。緑の党は14%、自民党は4%だった。

現時点で次期首相に最も近い立場にいるCDUのメルツ党首は、社会福祉の削減や難民規制の強化など保守的な政策を打ち出し、厳しすぎる気候変動対策にも懐疑的とされる。メルツ氏が政権を率いることになれば、リベラル色の強かったショルツ政権からの方針転換となりそうだ。

ただ、現状では総選挙でCDU・CSUは単独過半数には届かない情勢だ。メルツ氏はAfDとの連立を否定しており、社民党か緑の党との連立が現実的となる。

メルツ氏は今月3日、独大衆紙ビルトに対し「外交と安全保障政策では緑の党と共通点が多い」と述べ、同党との連立交渉の可能性をにおわせた。

緑の党は、ショルツ氏が拒否する長距離巡航ミサイル「タウルス」の供与を含む積極的なウクライナ支援を主張しており、メルツ氏の考えと近い。ただ、両党はその他の政策では相いれず、CDUの姉妹政党であるCSUのゼーダー党首は両党の連立に反対している。

一方、社民党と組めば、メルケル前政権以来となる2大政党による「大連立」となる。だがCDU・CSUは政治の混乱を招いたとして、ショルツ氏を厳しく批判してきた。「ショルツ氏なしの社民党ならチャンスがある」(ゼーダー氏)との声が上がるほどで、連立交渉は容易ではなさそうだ。

21年の前回の総選挙では、支持率トップだったCDUのラシェット党首(当時)が災害現場で笑ったことを批判され、社民党が10ポイント以上開けられていた差を逆転してショルツ政権発足につながった。今後の動きや出来事次第で、選挙情勢は大きく変わる可能性もある。【12月10日 毎日】
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【総選挙の争点の一つが移民・難民対策 注目される年末に起きたクリスマスマーケット襲撃事件の影響】
“今後の動きや出来事次第で、選挙情勢は大きく変わる”ということでは、東部マグデブルクで12月20日、サウジアラビア出身の医師がクリスマスマーケットに車で突っ込み、子供を含む5人が死亡、負傷者は200人を超えるという事件の移民・難民対策が争点となっている選挙への影響、特に支持率2位につけている移民排斥的なドイツのための選択肢(AfD)にどう影響するのかが注目されます。

****ドイツの車暴走、容疑者は「反イスラム」主義者…移民に対する憎悪に拍車の恐れ****
ドイツ東部マグデブルクで20日にクリスマスマーケットを襲撃した容疑者の男は、サウジアラビア出身の医師で、特異な経歴から動機に注目が集まっている。

来年2月に予定される独連邦議会選挙に向け、移民排斥を訴える右派政党「ドイツのための選択肢(AfD)」が今回の事件を支持拡大に利用し、移民に対する憎悪をあおる可能性がある。

ドイツに2006年亡命
地元メディアによると、男は母国サウジでの迫害を理由に2006年にドイツに亡命した。更生施設で精神科医として働いていたが、最近「就労不適格」とされた。サウジ女性の国外亡命を長年支援していたという。

警察当局は20日夜、容疑者の取り調べを始めた。独紙ウェルトは、男が反イスラム主義の活動家で、寛容な移民政策を進めたドイツの「イスラム化」を懸念していたと報じた。男は今年5月、自身のSNSでイスラム教徒の入国を制限するべきだと主張し、AfDに共鳴していたという。

社会の分断、一層進む恐れ
AfDのアリス・ワイデル共同党首は20日、「衝撃的だ。この狂気はいつ終わるのか」とX(旧ツイッター)に投稿し、事件を非難した。

事件現場があるザクセン・アンハルト州を含む旧東独地域は、AfDの地盤でもある。今年6月に行われた同州の地方選挙で、AfDは州全体で最多の票を得るなど着実に支持を伸ばしている。シリアのアサド政権崩壊を受け、「もはや逃げる理由がない」(ワイデル氏)としてシリア人の早期帰還を求めるなどイスラム系住民への圧力を再び強め始めている。

今回の事件も含め、選挙戦では移民や難民を巡る議論も争点になると予想され、社会の分断が一層進む恐れがある。【12月22日 読売】
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****車突入事件の直後から移民・難民排斥デモ***
2015〜16年にやってきたシリア難民は100万人を超え、現在も大部分がドイツにとどまっている。

10年前は「シリア難民は人手不足に悩むドイツ経済の救世主となる」との期待があったが、肩すかしに終わってしまった。それどころか、「彼らのせいで国内の治安が悪化している」との非難が噴出している。

生活が厳しくなったドイツ人が最も怒っているのは、移民がドイツの社会福祉制度に依存していることだろう。独連邦雇用庁が昨年9月に発表したデータによれば、「市民金(生活保護と失業手当をひとまとめにしたもの)」の受給者の3分の2が移民の背景がある人たちだ。シリア難民の受給者は約50万人に上っている。

移民への風当たりが強まっている矢先に恐れていた事件が起きた。(中略)犯行直後からドイツ各地で「移民・難民の国外追放」を訴えるデモが相次いでいる。【12月26日 藤和彦氏 デイリー新潮】
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サウジアラビア出身の医師(2006年にドイツに移り住み、永住権を取得 「元イスラム教徒」を自称する反イスラム主義活動家)による凶行と言う点では、移民・難民に厳しい目を向け始めている世論の反移民感情を加速させ、AfDも最大限に事件を活用するでしょう。

ただ、微妙なのは一部メディアが容疑者は移民排斥を掲げる極右政党「AfD」を支持していたと報じていること。

****5人死亡のクリスマスマーケット襲撃 極右政党「AfD」は関係を否定 サウジ出身の男が「支持していた」と地元メディア報じる****
ドイツのクリスマスマーケットに車が突っ込み5人が死亡した事件で、容疑者の男が支持していたと報じられた極右政党の地元幹部がJNNの取材に応じ、「支持者ではない」と話しました。

この事件で拘束されたサウジアラビア出身の男について、一部メディアは移民排斥を掲げる極右政党「AfD」を支持していたと報じています。

こうしたなか、AfDの地元幹部がJNNの取材に応じ、この報道を否定しました。

極右政党「AfD」 マクデブルク市議団団長
「男が(SNSで)ある種の投稿や共有をしたというのが理由にされています。しかし、本当のAfD支持者は、決して襲撃事件を起こしたりしません」(後略)【12月23日 TBS NEWS DIG】
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【主要政党の経済対策 「もっと大規模なものが求められる」との指摘も 軍需期待も】
2年連続でマイナス成長という状況で、経済対策では財政規律が争点になっています。

****独主要政党、2月総選挙控え公約発表 最大の争点は経済対策****
来年2月23日に総選挙が実施されるドイツで17日、主要政党が選挙公約を相次いで発表した。

最大の争点は低迷する経済への対策だ。ドイツの成長率は2年連続でマイナスに陥ろうとしており、自動車大手フォルクスワーゲン(VW)は外国メーカーとの厳しい競争に直面するなど課題は山積している。この日公表されたIFO経済研究所の12月業況指数も、市場予想を下回った。

こうした中で世論調査の支持率が最も高く、政権奪取が見込まれている保守のキリスト教民主同盟(CDU)は、所得税と法人税の減税や電気料金引き下げを通じて経済のてこ入れを図る方針を打ち出した。

これらの措置には財源の裏付けが不明確だとの批判もあるが、CDUは成長ペース加速による歳入増加や社会福祉予算を一定程度削減することで賄えると見積もっている。

一方、CDU党首で次期首相が最有力視されるフリードリヒ・メルツ氏はこれまでのところ、財政運営と歳出に一定の規律を持たせるために憲法が定めた「債務ブレーキ」を維持する意向を示している。

これに対してショルツ首相が率いる中道左派、社会民主党(SPD)や、SPDと連立を組む環境保護政党、緑の党は債務ブレーキを修正したい考え。

緑の党のハーベック経済相は、メルツ氏はドイツが突き付けられている現実に正面から向き合おうとしていないと批判。「われわれはインフラを根本から立て直さなければならない。老朽化したインフラの全面的な改修には今後10年で推定数千億ユーロかかり、債務ブレーキの改革が必要になってくる」と訴えた。

ショルツ氏は、SPDが掲げる政策の目玉に雇用を挙げている。「最優先かつ最も大事なのは既存の雇用を守り、新規雇用創出の道を確保することだ」と強調した。

SPDは、特に国内生産とインフラ近代化に向けた民間投資にインセンティブを導入することも提案している。

ただ一部のエコノミストからは、こうした主要政党の政策でドイツ経済の大幅な変革が可能かどうかは疑問だとの声が聞かれた。

ハンブルク商業銀行のチーフエコノミスト、サイルス・デラルビア氏は「小粒の対策では効果がない。もっと大規模なものが求められる。(しかし)大半の選挙公約にそうした内容は見つけ出せない」と語った。【12月18日 ロイター】
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経済対策としては、「有事への備え」・軍拡の流れを受けての「軍需」という要素も。

****ドイツで「シェルター計画」と「新たな兵役モデル」 「2年連続マイナス成長」深刻な不景気への特効薬は軍拡なのか*****
(中略)
新たな地下壕計画、兵役モデルの施行
移民問題に加え、「有事への備え」もドイツ政治の中心テーマとなった感がある。

ドイツ政府は11月下旬、ロシアからの核攻撃に対処するため、避難シェルター(バンカー)のリスト化や設置の奨励などを含む新たなバンカー計画に取り組んでいる。ドイツにはかつて約2000カ所のシェルターがあったが、現在使えるのは579カ所のみ。約8400万人の人口に対し、48万人分に過ぎない。

ドイツ政府は軍の規模拡大に踏み切る構えもみせている。ピストリウス国防相は18日、兵士を現在の約18万人から最大23万人にまで増員する可能性があると明らかにした。北大西洋条約機構(NATO)の戦力増強の取り組みが背景にある。

だが、徴兵制が2011年に停止された後、軍は人員の確保に苦労しており、現時点では目標を約2万人下回っている。

ショルツ政権は6日、兵員確保に資する新たな兵役モデルを閣議決定し、来年5月の施行を目指している。新たなモデルでは、アンケートを元に4〜5万人を徴兵検査に呼び、そのうち5000人に少なくとも6カ月の基礎的な軍事訓練に従事するよう促す。参加者には最大で月額2000ユーロ(約32万6000円)を支給する予定だ。

自動車から防衛へ“鞍替え”も
政府の軍拡にドイツ産業界も反応し始めている。

電気自動車(EV)の需要低迷と、中国との競争激化で苦戦を強いられるドイツ自動車業界には、リストラの波が押し寄せている。そこに、特需に沸く防衛産業から救いの手が差し伸べられた。

例えば、ミュンヘンに拠点を置くレーダー・光電子工学メーカーのヘンゾルトは、軍事関連の受注急増に対応するため自動車部品企業2社からチームを丸ごと雇い入れる交渉を進めている(12月14日付ブルームバーグ)。

深刻な不景気への特効薬は軍需しかないのもしれない。(後略)【12月26日 藤和彦氏 デイリー新潮】
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【欧州政治にも関与(介入?)するイーロン・マスク氏】
上記のようなドイツ総選挙をめぐる状況に“参入”(介入?)しているのが極右AfDを支持するマスク氏。

****独政府、マスク氏の極右政党支持を非難 「選挙介入にあたる」****
ドイツ政府は30日、米起業家のイーロン・マスク氏が来年2月に行われるドイツの総選挙に影響を及ぼそうとしていると非難した。

マスク氏はトランプ次期米政権で要職に就く見通し。自身のソーシャルメディアXに「ドイツを救えるのは極右政党『ドイツのための選択肢(AfD)』だけだ」と投稿したほか、独紙ウェルト・アム・ゾンターク紙への寄稿でもAfDへの支持を改めて表明した。

独政府報道官はマスク氏のAfDへの支持について「国内情報機関が右翼過激主義の疑いで監視し、一部がすでに右翼過激主義と認定されている政党への投票を勧めるものだ」と指摘。「マスク氏がXへの投稿や寄稿を通して連邦選挙に影響を及ぼそうとしているのは事実だ」と述べた。

マスク氏には自身の意見を表明する自由があるとしながらも、表現の自由には「最大のナンセンス」も含まれるとした。

野党・キリスト教民主同盟(CDU)のメルツ党首は独紙フンケに対し、マスク氏のコメントは「押し付けがましく、傲慢(ごうまん)だ」と語った。メルツ氏は次期首相として有力視されている。【12月31日 ロイター】
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マスク氏の欧州選挙への参入はイギリスでも。

****マスク氏の極右支持が波紋 「選挙介入」、分断の火種に―独****
(中略)
マスク氏は独紙ウェルト日曜版にも寄稿し、AfDが掲げる規制緩和や反移民、原発再稼働などの方針を評価し、「政治的な現実主義だ。既存体制に無視されたと感じる人々の共感を呼んでいる」と称賛した。

マスク氏はベルリン近郊に巨大工場を持つ電気自動車(EV)大手テスラの最高経営責任者(CEO)。自社の利益の追求がAfDを支持する理由の一つとみられ、同党のワイデル共同党首の周辺と「定期的な連絡」(独メディア)を交わしているとされる。

AfDは反国家的活動家との近さから公安当局の監視下にあり、政界で異端視されている。排外主義や欧州連合(EU)からの離脱も辞さない姿勢は、産業界と相いれないとの見方が一般的。しかし、世界トップの実業家による「お墨付き」は追い風となっている。

総選挙に向けて劣勢を強いられている中道左派与党、社会民主党(SPD)のショルツ首相は、新年の国民向け演説で「ドイツのことを決めるのは国民だ。ソーシャルメディアのオーナーではない」とXを傘下に持つマスク氏への不快感をあらわにした。保守系野党キリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)を率い、次期首相の座に最も近いメルツCDU党首は「友好国に対するこのような選挙介入は記憶にない」と批判した。

マスク氏はドイツ以外の欧州の右派政治家とも交流を深めている。イタリアの極右政党「イタリアの同胞」党首のメローニ首相と密接な関係を構築。英国の右派ポピュリスト政党「リフォームUK」に巨額献金を行うとの見方も強まっている。

トランプ次期米大統領の盟友であり、莫大(ばくだい)な資金を持つマスク氏の動向は今後、欧州政界で注目を集めそうだ。【1月2日 時事】
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“米電気自動車(EV)メーカー、テスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)は英議会を解散し総選挙を実施するべきだと呼び掛けた。トランプ次期米政権がスターマー英政権に与える悩みの種が、また一つ増えた格好。”【1月3日 Bloomgerg】

実際に欧州政治にどれだけの影響力を持っているかは定かではありませんが、“影響力を持つ人物”というイメージを作り上げることでは成功しているようです。
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ロシア産ガスのウクライナ経由供給が停止 電力不足のモルドバ ウクライへの反発強めるスロバキア

2025-01-02 21:57:50 | 欧州情勢

(スロバキアのフィツォ首相(写真左)とロシアのプーチン大統領。12月22日、モスクワで代表撮影【12月30日 ロイター】)

【全欧州的なガス供給不足や著しいガス価格暴騰につながるリスクは小さいものの、中東欧諸国へ影響】
昨年12月13日ブログ“モルドバ 大統領選挙は親欧米派現職勝利も、エネルギーのロシア依存で揺れる”でも取り上げた、ロシアからのウクライナ経由の欧州への天然ガス供給が今年1月1日から、ロシア・ウクライナ間の契約が更新されないことによりストップしました。

****ウクライナ、自国経由するロシア産天然ガスの欧州輸送を停止 契約失効****
ロシア産の天然ガスをウクライナ経由で欧州にパイプライン輸送する契約が1日、失効した。これより前にウクライナは国家安全保障の観点からロシアとの契約を更新しない姿勢を示していた。

ベルギーのシンクタンク、ブリューゲルによると、ウクライナ経由は欧州連合(EU)の天然ガス輸入全体の約5%を占め、主にオーストリア、ハンガリー、スロバキアに供給されていた。今後ロシア産を欧州に送るパイプラインはトルコ経由のみとなる。

米調査会社ユーラシア・グループのエネルギー担当責任者によると、契約の失効でガス価格の上昇が予想されるという。

ただ、欧州は備えを進めてきており、加えて今冬の寒さがこれまでのところ厳しくないこともあり、以前ロシアが供給を削減した時のような値上がりにはならないと見ている。

ロイター通信が報じたところによると、ウクライナ経由で天然ガスを輸出していたロシア国営ガスプロムは昨年、欧州への輸出減が響き、69億ドル(約1兆800億円)の赤字を計上した。ウクライナは今回の契約失効で年約8億ドルの収入を、ガスプロムは50億ドル近くの売上を失うという。

オーストリアのエネルギー相は1日、契約の失効に入念に備えてきたことを明らかにし、エネルギー企業がロシア以外の国からの供給を模索してきたとも述べた。

だがスロバキアのフィツォ首相はウクライナ経由の輸入停止はロシアではなくEUに「極めて大きな」影響を及ぼすと述べたとロイターは報じた。

EUの行政執行機関である欧州委員会(EC)によると、欧州のロシア産天然ガスへの依存度は下がっており、パイプラインでの輸入は2021年に全体の40%超だったのが23年には約8%になった。【1月2日 CNN】
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以前よりウクライナは、ロシアの収入源を減らす必要があるとして、今年1月以降、自国を通過させるロシアとの契約を延長しない方針を示してきました。

ロシアからの欧州へのガス供給パイプラインで稼働しているのは、今回措置によりトルコ経由のみになります。
“ロシア産ガスを輸送するパイプラインで稼働しているのは、黒海を横断してトルコに至るトルコ・ストリームのみとなる。ベラルーシを経由するヤマル・ヨーロッパ・ストリームは停止しており、バルト海を経てドイツに至るノルド・ストリームは22年に破壊された。”【1月1日 ロイター】

上記記事にもあるように、欧州のロシア産天然ガスへの依存度はすでに下がっていること、ロシア以外からの調達に切り替える準備も行われてきたことなどで、今回措置が全欧州的なガス供給不足や著しいガス価格暴騰につながるリスクは小さいとみられていますが、ハンガリー、スロバキア、モルドバなど中東欧諸国ではガス供給の縮小や、価格上昇の影響が予想されています。

【「沿ドニエストル」地域ではガス供給停止 今後、モルドバの電力不足が懸念される】
最も影響が大きいとされているのがモルドバ。
モルドバでは、親ロシア系住民の分離独立派が支配する「沿ドニエストル」地域の住宅で1月1日から暖房が止まり、お茶も湧かせない事態になっています。

モルドバ政府の支配地域は、ガスに関しては主にルーマニアからガス供給を受けて現時点では問題ないとみられていますが、問題は電力。「沿ドニエストル」地域では、ロシアから送られた安価なガスを利用して発電、その電力がモルドバに送られるというエネルギー事情にあるため、今後はモルドバにおける電力不足が懸念されています。

ロシアからのガス供給は代替ルートでの供給も可能ですが、ロシア側はモルドバのガス料金支払いが滞り、7億9千万ドル(約1250億円)の債務があると主張し、ルート変更前の支払いを求めています。

****ロシア、来年初からモルドバ向けガス供給停止 深刻な電力不足懸念****
ロシア政府系天然ガス企業ガスプロムは28日、モルドバに対するガス供給を来年1月1日から停止すると発表した。未払い債務の存在を理由に挙げており、モルドバは深刻な電力不足に陥ることになる。

ガスプロムは、モルドバへのガス供給契約破棄も含めたいかなる手段を行使する権利を留保すると強気の姿勢だ。

ロシアはモルドバに年間約20億立方メートルのガスを供給。ウクライナを経由し、モルドバから事実上分離独立した「沿ドニエストル共和国」の火力発電所を通じて電力としてモルドバに送られてきた。

ウクライナ経由のガス供給はモルドバとロシアの通過契約が年末で期限を迎え、スロバキアやオーストリア、ハンガリー、イタリアなども影響を受けるが、モルドバの打撃が最も大きい。

モルドバで親欧米の立場を取るレチャン首相は、ロシアがエネルギーを政治的武器として利用していると非難。一方ロシア側はモルドバには7億0900万ドルの債務があると主張し、ガスプロムは代替ルートで供給する前にこの債務を支払うよう求めている。

ガス供給が止まれば、モルドバと沿ドニエストル共和国では大規模な停電が発生する恐れが出ている。【12月30日 ロイター】
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親欧米政権のモルドバ側は、ロシア側が主張する約7億900万ドル(約1100億円)の債務は存在しないと主張しています。これまでロシア、モルドバ、親ロシア「沿ドニエストル」の間の微妙な政治事情で曖昧に処理されてきたのでしょう。

【スロバキア・フィツォ首相とウクライナ・ゼレンスキー大統領のロシアをめぐる対立、改めて表面化】
一方、対ロシア姿勢の違いから政治問題化しているのがスロバキア。
かねてよりスロバキアのフィツォ首相は、左派民族主義の立場から、ハンガリーのオルバン首相同様にロシア、更には中国と接近し、反EU・ウクライナ的な姿勢をとってきました。

****スロバキア首相、ロシアのテレビに出演 ウクライナ巡りEU批判****
中欧スロバキアのフィツォ首相は30日、ロシア国営テレビ「ロシア1」に出演し、第二次世界大戦で旧ソビエトがナチス・ドイツに勝利したことを祝う「戦勝記念日」に当たる来年5月9日にモスクワを訪問したいと語り、ウクライナ戦争への欧州連合(EU)のアプローチを批判した。これを受け、国内の野党から批判の声が上がった。

スロバキアのメディアによると、EU加盟国の首脳がロシアのテレビに出演するのは2022年2月のロシアによるウクライナ侵攻以降初めて。

フィツォ氏率いる左派の民族主義政権は1年前の発足直後にウクライナへの軍事物資の供給を停止し、武器の供給が紛争を長引かせていると主張してきた。

フィツォ氏はロシア大統領府支持派のテレビ解説者オルガ・スカベエワ氏とのインタビューで、来年の戦勝記念日に訪問したいと述べた。

また、ウクライナの和平計画はもはや実行不可能だとし、ロシア語に翻訳されたコメントで、「これはもう和平策ではなく、突然、勝利計画と呼ばれるようになった」などと指摘した。

最大野党のシメツカ党首は「国内でフィツォ氏のつぎはぎ行政は崩壊しつつある。医療は首相にとって議題ではないが、首相はロシアのプーチン大統領に奉仕する時間は見つけるだろう」と批判した。【2024年10月31日 ロイター】
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“中国、スロバキアとの緊密関係確認 EUと貿易対立下で”【2024年11月2日 ロイター】

こうした政治姿勢の違いから、今回のロシア産ガス供給停止問題でも、スロバキア・フィツォ首相とウクライナ・ゼレンスキー大統領の対立が表面化しています。

****スロバキア、ガス輸送巡り対抗措置警告 ウクライナ反発****
ウクライナのゼレンスキー大統領は28日、スロバキアのフィツォ首相がロシアの命令でウクライナに対し「第二のエネルギー戦線」を開いていると批判した。

スロバキアなど欧州数カ国はウクライナ経由でロシア産天然ガスの供給を受けているが、ウクライナはロシアの侵攻前に結んだ既存の輸送契約が今年末に期限切れとなった後は輸送を停止する見通しだ。

ロシアのプーチン大統領とモスクワで今月会談したフィツォ氏は(12月)27日、ウクライナが来年1月1日からガス輸送を停止した場合、スロバキアはウクライナに対し、予備電力の供給停止など対抗措置を検討すると述べた。

ゼレンスキー氏はこれについて「プーチンはスロバキア国民の利益を犠牲にしてウクライナに対し第二のエネルギー戦線を開くようフィツォ氏に命じたようだ」とXに書き込んだ。

ウクライナは電力網がロシアの攻撃の標的となる中、周辺国からの電力輸入を余儀なくされている。

ゼレンスキー氏はスロバキアが現在、ウクライナ電力輸入の19%を占めていると指摘。その上で、欧州連合(EU)と協力して供給強化に取り組んでいるとし、「スロバキアは欧州単一エネルギー市場の一部であり、フィツォ氏は欧州共通のルールを尊重しなければならない」と強調した。【12月30日 ロイター】
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ウクライナ・ゼレンスキー大統領からすれば、ロシア軍侵攻後もロシア産ガス依存姿勢を変えないスロバキアに問題があるという話にもなります。

****ゼレンスキー大統領、スロバキア首相のロシア産ガス依存姿勢を非難****
ウクライナのゼレンスキー大統領は23日、スロバキアのフィツォ首相がロシア産ガスへの依存を減らすことに消極的だと非難し、欧州にとって大きな安全保障の問題だと指摘した。

フィツォ氏は22日、ロシアのプーチン大統領と会談した。スロバキアはウクライナを経由して輸送される欧州向けロシア産ガスに依存しており、年末に期限が切れる輸送契約の延長を拒否したとしてゼレンスキー氏を批判する一方で、供給継続に向けた取り組みを強化している。

ゼレンスキー氏は、ウクライナがスロバキアの損失を補うための補償や代替のガス供給ルートを提供すると提案したにもかかわらず、フィツォ氏はそれを望まなかったと指摘した。

フィツォ氏がロシアとの関係を重視していると批判し、これがスロバキアと欧州全体の安全保障に関わる問題であると述べた。【12月24日 ロイター】
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“スロバキアは、代替輸送ルートを利用すればコストが大幅に増え、同国の輸送事業にも打撃となり、5億ユーロの損失を被ることになるとしている。”【12月30日 ロイター】

上記のような需要国にも大きな影響がでますが、供給国ロシアとしても、天然ガスという石油と並ぶ主要財源へのダメージが、欧米による制裁下でさらに加速することになります。
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中国  政治体制などネガティブな面はともかく、新技術の開発・利用は貪欲なまでに加速

2025-01-01 23:45:42 | 中国


(【1月1日 新華社】中国山東省にある泰山の山道で12月30日 物資輸送やごみ収集・運搬について行われた、ロボット犬を使った2回目のテスト 真ん中が産業用 両脇の赤い小さいものが消費者向け 頭なしは不気味なので、かわいい頭をつけたら?)

【社会不安の拡散に神経をつかう中国当局】
中国では昨年、無差別に市民らを殺傷する事件が相次いで発生しました。
その中には6月に中国東部 江蘇省の蘇州で起きた、日本人学校のスクールバスが刃物を持った男に襲われた事件、9月に南部の深センで日本人学校に通う男子児童が男に刃物で襲われ死亡した事件も含まれています。

それらの背景については、単に反日感情というだけでなく、経済不調や政治的閉塞感による社会不安などもあげられていますが、そういう話に繋がっていくと社会の安定を第一とする政権にとっては由々しき事態でもあり、当局は影響が拡散しないように幕引きを急いでいます。

****また“スピード判決” 中国・広東省珠海市で先月発生した35人死亡の暴走事件 男に死刑判決****
中国南部の広東省珠海市で先月、運動中の市民らに車が突っ込み35人が死亡した事件で、中国の裁判所は運転していた男に死刑を言い渡しました。

先月11日、広東省珠海市の体育施設の周辺で、車が運動中の市民らを次々とはね、35人が死亡、43人が負傷し、運転していた樊維秋被告が、その場で身柄を拘束されました。

中国の国営メディアによりますと、裁判所は動機について、樊被告が離婚による財産分与の結果に不満を抱いたことだと認定。「残忍な犯行で深刻な結果をもたらし、社会に及ぼした危害も大きい」として死刑を言い渡しました。

この事件をうけ、習近平国家主席は事件の真相を解明するとともに、犯人を厳しく処罰するよう「重要指示」を出していました。

中国では無差別に市民らを殺傷する事件が相次いで発生しましたが、先月19日に湖南省で車が児童らをはねた事件も、発生からわずか1か月程度で執行猶予付きの死刑判決が言い渡されています。【12月27日 TBS NEWS DIG】
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人が多く集まる正月のイベントにも異変が。

****中国各地で相次いで年末年始イベントが中止に 無差別襲撃事件の再発警戒か****
中国各地で大勢の人が集まる年末年始のイベントなどが相次いで中止されている。中国当局が、各地で頻発している無差別襲撃事件を警戒し、再発を防ごうと躍起になっているとみられる。

中国南部、広東省広州市の地元当局は今月24日、人気観光地の広州タワーなどの公共の場で、クリスマスや年越しの際に人が集まるイベントを開催しないと通知した。理由は明らかにしていないが、11月に同省珠海市で35人が死亡した自動車暴走事件が起きている。

珠海市では来年1月に開催予定だったマラソン大会の中止が12月24日に決まった。元々は8日に開催予定だったが、事件後に1月12日に延期されていた。

江蘇省南京市や湖南省長沙市でも年越しカウントダウンイベントを行わないことが決まった。11月に江蘇省無錫市の専門学校で8人が死亡した切り付け事件が、湖南省常徳市の小学校前で多数の児童らがはねられて負傷した事件が起きた。

中国国営新華社通信は25日、中国共産党と政府が2025年の元日と春節(旧正月)に関する通知で、繁華街や観光地、公共交通機関などで安全対策を強化し、「極端な事件の発生を厳重に防ぐ」ことなどを求めたと伝えた。【12月30日 産経】
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「心の相談ホットライン」の整備拡充といったものも。

****中国、全国統一の心の相談ホットライン開設へ****
中国国家衛生健康委員会は25日、心の問題や悩みがある時にメンタルヘルスに関する相談ができるホットラインの開設を発表した。全国統一の電話番号は12356。2025年5月1日午前0時までに各地の既存ホットラインを一本化する。【12月26日 新華社】
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中国のような政治体制の国で、悩み事を相談して個人情報が保護されるのか・・・個人的には懸念されますが。

【驚異的な新技術の進歩 今後様変わりする世界最大の温室効果ガス排出国】
中国の政治において民主化を求める人々への過酷な人権侵害があること、経済は相変わらず不安要素を抱えており、今年のトランプ大統領の対応次第では大荒れになることも予想されること、社会・人心にも上記のような不安定さが漂っていること・・・等々、中国のネガティブな面をあげればきりがありません。

しかし、今回取り上げたかったのはそういう話ではなく、新たな技術への対応といった面では貪欲なまでに先へ先へと進もうとしていること、停滞感が強い日本からすると驚異的にも思えるといったあたりの話です。(極めてスピード感が強い社会なので、その進展から取り残された人々では不安感も・・・と言う話もあるのかも)

従来から中国は石炭火力が多く世界最大の温室効果ガス排出国として批判もされていますが、一方で、再生可能エネルギー分野でも世界トップの変化を続けています。

****中国、再生可能エネルギー利用が急拡大 2050年には88%に****
温室効果ガス(GHG)を世界で最も排出しているのは中国(33%)で、次いで米国(15%)だ。ほんの数年前には、中国の温室効果ガス排出量が増え続け、さらには多くの石炭火力発電所を新設する計画であるのに、米国が自国の排出量を数%削減したところで何になるのかという議論があった。中国がまず自国の排出量を減らすべきではないか。

そうした主張に対して中国は、温室効果ガス排出は産業の成長によるもので、米国に追いつこうとしていただけと答えていた。そして、温室効果ガス排出を正味ゼロにする取り組みについて、2015年のパリ協定に基づいて多くの国々が2050年までの達成を約束したが、中国は2060年としたことに対して西側諸国から批判があった。

まるで中国が取り組みを先延ばししているかのようだった。だが今、状況は急速に変わりつつある。

中国は180度転換し始めている。国際エネルギーコンサルのDNVは中国のエネルギー転換計画を分析している。それによると、DNVは中国の発電総量における再生可能エネルギー電力の割合は現在の30%から2035年までに55%、2050年には88%に拡大すると予測。

2022年に世界で設置された太陽光と風力の発電施設の約40%が中国のものだった。中国では2050年まで再エネ施設設置の動きが続くとDNVは見込んでいる。

電源構成に関する中国の計画と進捗には大きな変化が見られる。中国の一次エネルギー供給は、2030年から2050年にかけて太陽光と風力の割合が7%から41%へと大幅に増える。同期間に化石燃料は83%から44%へとほぼ半減する。

2030年には発電総量の51%強と見込まれる再生可能エネルギーによる電力は、2050年には78%に跳ね上がる。同期間に、化石燃料による電力は46%から24%へとこちらも半減する。電源構成と電力どちらでも石炭と石油は激減するが、天然ガスはほぼ変わらない。

これは米国に影響を及ぼす。米国は電気自動車(EV)の浸透で予想される原油の減少を相殺するのに、中国への輸出に期待することはできない。

中国のエネルギー供給量は2030年がピーク
DNVは2030年から2050年にかけて中国のエネルギー供給は20%減少すると予測している。これはまったく予想されていなかったことだ。

DNVの見立てでは、この減少は脱炭素化が飛躍的に進展し、エネルギー効率も改善、そして人口が1億人減少するためだ。2050年までに中国は世界で最も電化が進んだ国のひとつになると見込まれている。(後略)【2024年5月1日 Forbes】
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****中国の太陽光と風力建設、圧倒的1位…世界の容量の3分の2****
全世界で進められている太陽光発電や風力発電の設備の建設の3分の2近くが、中国で作られたものだ。
 
米国のシンクタンク「グローバル・エナジー・モニター(GEM)」が11日に公開した中国に関する報告書によると、中国は先月の時点で太陽光180ギガワット(GW)、風力159ギガワットの計339ギガワットの発電設備を建設中だ。

これは全世界の太陽光発電と風力発電の設備建設総量(約530ギガワット)の64%に達する規模だ。世界2位の米国(40ギガワット)の8倍以上で、3位のブラジル(13ギガワット)、4位の英国(10ギガワット)、5位のスペイン(9ギガワット)などを圧倒する。(後略)【2024年7月13日 ハンギョレ】
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CO2排出量実質ゼロを目指すうえで、水素エネルギーの最も理想的な応用形態とされる「グリーン水素」に関しても、進展が加速しています。

****中国の「グリーン水素」産業、発展加速****
再生可能エネルギーを使って水を電気分解して生産し、全過程で二酸化炭素(CO2)を排出しない「グリーン水素」は、水素エネルギーの最も理想的な応用形態とされる。

グリーン水素はCO2排出量実質ゼロの実現に向けた将来のエネルギーシステムの重要な柱となり、中国でここ数年、発展が加速している。

統計によると、中国で現在、建設計画中のグリーン水素事業は400件を超え、計画生産能力は年間800万トン以上に上る。水素エネルギー企業は資金調達を加速させ、水素生産装置のコストは低下しつつあり、水素エネルギーの応用シーンも拡大している。

世界で開発計画中のグリーン水素生産能力のうち、約3分の1は過去1年の増加分である。中国が投資を決定したグリーン水素事業の生産能力は、世界全体の計画生産能力の40%以上を占める。国際エネルギー機関(IEA)は今年10月に発表した報告書で、クリーンエネルギー生産装置の大規模製造で強みを持つ中国は、世界の水電解装置の生産能力のうち、60%を保有していると指摘した。(後略)【12月26日 新華社】
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宇宙開発においても、ロケット打ち上げ失敗が目立った日本に対し、中国はこの分野でも将来的な月面基地建も視野に、開発を加速させています。

****中国、無人補給線「天舟8号」の打ち上げとドッキングに成功***** 
中国航天科技集団有限公司(CASC)は日本時間2024年11月16日に、長征7号ロケットによる無人補給船「天舟8号」の打ち上げを実施しました。CASCは天舟8号が予定の軌道へ投入した後、中国宇宙ステーション「天宮」へのドッキングに成功したことを報告しています。

CASCによると、天舟8号は4つの貯蔵タンクを持つ改良型の全密封構造を採用しており、軌道上での滞在に必要な消耗品、推進剤、実験装置、祝日を祝うアイテムなど、約6トンの物資を搭載したといいます。

また、月の土壌(レゴリス)を再現したレンガのサンプルも搭載されており、軌道上での船外曝露実験を実施する予定となっています。この実験データは、将来予定されている月面基地建設に役立てられるとのことです。【2024年11月16日 sorae】
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【停滞感が強い日本に比べ、進展が加速する中国技術】
人類の将来を大きく左右するとされるAI。問題も多い技術ですが、日本では例によって議論ばかりで、実際の取組がほとんど進みませんが、まずはやってみよう・・・というのが中国流。

****中国各地でAIの応用加速、スマート教育市場を活性化****
中国では教育分野における人工知能(AI)の応用が加速している。

中国の音声認識大手、科大訊飛(アイフライテック)の周佳峰(しゅう・かほう)副総裁はこのほどインタビューに応じ、同社の大規模AIモデルはすでに5万校以上の学校で試験的に導入され、スマート教育プラットフォーム「智慧課堂(スマート教室)」の利用者は全国1400万人の教師と学生に及ぶと明らかにした。
 
地方各地も教育分野におけるAIの応用を積極的に推進している。北京市は先ごろ、「北京市教育分野のAI応用活動プラン」を発表し、2025年までに100校をAI応用シーンのベンチマーク校とする目標を打ち出した。

河南省も「河南省『AI+(プラス)』推進行動計画」で、医療、教育など重点業界のAI応用の実証事業を行い、スマート化教育、スマート教育管理、スマート教育評価などの応用シーンを重点的に発展する方針を示した。 

政策が追い風となる中、AIと教育の融合は発展の勢いが盛んになりつつある。(後略)【12月9日 新華社】

かつては、ロボットと言えば日本のお家芸みたいなところもありましたが・・・・

****次のデブリ採取着手は2025年春 アーム使用見送りで「釣り竿」ロボット使用<福島第一原発>****
福島第一原子力発電所2号機での燃料デブリの試験的取り出しをめぐり、国と東京電力は12月26日、「2025年春頃に、前回と同じ釣り竿型ロボットで2回目の採取に着手する方針」と説明した。

福島第一原発2号機では11月7日、事故後初めてとなる燃料デブリの試験的取り出しが完了し、現在、茨城県の研究施設でX線などを使った分析が行われている。

試験的取り出しには、比較的狭い空間を通過できる「釣り竿型」のロボットが使用されたが、東京電力はこれまで、それよりも大型の「ロボットアーム」での採取に着手したい考えも示していた。

一方、ロボットアームについて東京電力は、経年劣化で一部のケーブルが断線しそれを交換したことを明らかにしていて、点検や修復の時間が今後の計画に与える影響は見通せていない。

1回目の採取を終えた段階で、原子力規制委員会などからは「釣り竿型」での採取継続を提案されていて、東京電力は「ロボットアームの前に釣り竿での採取を継続する可能性もある」としていた。

さらに12月20日、原発近隣の市町村や有識者で構成される「福島県原子力発電所の廃炉に関する安全監視協議会」にて、市町村の担当者などに対し、「釣り竿型での2回目の採取も念頭に置いて計画を立てているところ」と説明した。

有識者からは「ロボットアームの計画が見えない中で、釣り竿型で少しでも状況がつかめるのであれば効果的に進めてほしい」などと声が上がっていた。【12月26日 福島テレビ】
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11月7日、事故後初めてとなる燃料デブリの試験的取り出しが完了・・・とは言っても、総量で880トンにのぼると推定される核燃料デブリのうち取り出せたのは大きさ5ミリ以下の数グラム程度。

すでに事故から13年以上が経過しています。
素人には理解できない困難な作業なんでしょうが、それにしても「遅い」というのが正直な感想。

****中国ロボット産業、政策と市場の「両輪駆動」で規模拡大進む*****
中国の地方各地でロボット産業の発展に関する政策が相次いで打ち出され、ロボットの応用が加速している。

浙江省杭州市はこのほど、「杭州市人型ロボット産業発展計画(2024〜29年)」を発表した。重慶市、江蘇省南京市、四川省天府新区などもロボット産業の発展促進に関する政策を発表し、それぞれの地域の産業発展の現状と優位性を踏まえ、ロボット産業のさらなる発展を推進している。

中国の市場調査会社、賽迪顧問(CCIDコンサルティング)の先進製造業研究センターの高超(こう・ちょう)副総経理は、第15次5カ年規画(十五五、2026〜30年)期間中、中国ロボット産業の規模が4千億元(1元=約22円)前後にまで拡大するとの見通しを示した。中でも産業用ロボットの普及率は大きく向上し、30年には市場規模が1052億6千万元に上ると予測した。

高氏によると、中国ロボット産業の企業数は23年時点で8万社近くに上り、うち上場会社は100社以上、ハイテク企業は4千社を超える。今後の展望としては、ロボット技術と人工知能(AI)、新素材、新型センサーなど最先端技術の融合が一層進むとみられる。【12月26日 新華社】
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下記の記事の動画などは笑えます。笑えますが、こういう試みの積み重ねで“ロボット技術と人工知能(AI)、新素材、新型センサーなど最先端技術の融合”が進んでいくのでしょう。

****中国・泰山でロボット犬のテスト再び 新たな実用例を探求****
中国山東省泰安市にある泰山の中天門付近の山道で12月30日、山内の施設管理を担う泰山文旅集団物業管理が物資輸送やごみ収集・運搬について、ロボット犬を使った2回目のテストを行った。

研究開発部門は昨年10月に行ったテスト結果をもとに、ロボット犬の知覚と運動制御のアルゴリズムを改良し、積載能力をさらに向上させた。

今回のテスト期間は3カ月。より長いサイクル、さまざまな気温と環境変化の下で多くのデータを収集し、ロボット犬の機能の改善につなげる。

前回のテストに使用された産業用のロボット犬B2に加え、今回は消費者向けロボット犬Go2も2匹導入された。2匹は環境保護に配慮した観光や安全な山巡りのための音声ガイドを流すだけでなく、観光客とさまざまな交流ができる。同社は2匹の投入で、文化観光分野におけるロボット技術の多様な実用例を探求するとしている。

泰山には毎年、国内外から100万人に上る観光客が訪れており、ごみの量も増加しつつある。泰山のごみ収集・運搬を担う泰山文旅集団物業は、科学技術を駆使した環境衛生業務の在り方を積極的に模索し、ロボット犬の運用により山岳型風景区のごみ収集・運搬という難題の新たな解決策を見出そうとしている。【1月1日 新華社】
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福島のデブリ取り出しと全くレベルが異なるにしても、両国の勢いの違いを感じます。

この手の話題は、他にも枚挙にいとまがありません。
“夜間運行の自動運転ミニバス路線が開通 中国・広州市”【12月30日 新華社】
“高速鉄道、時速400キロ営業へ 中国、世界最速車両を公開”【12月30日 時事】

中国の政治体制には全く同意しません・・・・が、その技術進展は目を見張るものがあります。
おそらく、アメリカを抜いて、世界を技術的にリードする立場にもなるのでは。そしてその技術は軍事面でも活用されるでしょう。

日本もそのことを充分に認識しておく必要があります。政治的に日中が相容れないということを前提にしたうえで、互いにメリットが大きい“付き合い方”もあるのでは。

新年早々、中国嫌いの人たちから反感を買う話だったかな・・・。
コメント
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