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(金融安定化法案、米下院否決を伝えるワシントンポストのサイト 株価折れ線は投稿者による合成です。“flickr”より By MotherPie
http://www.flickr.com/photos/myeye/2900540902/)
【米下院 公的資金大量投入を躊躇う】
金融危機を収束するための金融安定化法案が米下院で否決され、世界中に動揺が広まっています。
28日段階では、政府が金融機関から最大7千億ドル(約75兆円)の不良資産を買い取る制度の創設を柱とする金融安定化法案について、政府と米議会と大筋で合意したことを、ポールソン財務長官やペロシ下院議長(民主)ら議会指導者が記者会見して明らかにしていました。
しかし、ふたを開けると賛成205、反対228の反対多数。
国民の間には、「高い給与をもらってきた大手金融機関が破綻するからと言って、税金を使って救済するのはおかしい」との感情が根強く残っており、11月に上下両院の議員を控え、そうした国民世論を意識して、特に共和党内での反発が強いようです。
オバマ、マケイン両大統領候補とも、慎重な姿勢ながらも大筋で法案を了解していました。
法案否決について、マケイン氏の陣営は、指導力を発揮できなかったとしてオバマ氏を批判していますが、指導力を発揮できなかったのは共和党(賛成65、反対133)をまとめきれなかったブッシュ大統領でしょう。
【ヨーロッパで“ドミノ倒し”】
イギリス政府は29日、経営難に陥っていた英中堅銀行ブラッドフォード・アンド・ビングレー(B&B)を一時国有化すると発表、オランダ・ベルギー金融大手のフォルティスが公的管理化に置かれ、ドイツ政府も不動産が中心の中堅銀行、ハイポ・リアルエステートへの緊急支援を発表、アイスランド政府も大手グリトニル銀行の一時国有化を発表、またフランスとベルギー両政府も29日、地方公共団体向け融資で世界最大のフランス・ベルギー金融大手デクシアの公的支援の検討に入る・・・と、アメリカの金融不安はすでにヨーロッパに飛び火し、「ドミノ倒しの様相」(欧州系銀行)をみせています。
震源地アメリカでのこの時期の躊躇は、世界経済への大きな影響があります。
すでにアジア各国の株式市場も大幅下げの動揺を見せています。
一刻も早い、修正案による仕切りなおしが求められていますが、ペロシ下院議長は再採決について「超党派で行動する必要がある」と述べただけで時期については明言を避けており、下院での採決見通しは立っていない状況だそうです。困ったものです。
【ファイナンスを基礎にしたビジネスモデルの限界】
“今までアメリカは、ファイナンスビジネスによって得た儲けによって、世界中からものを買い集め、国民の高い生活水準を維持してきた。今回の金融危機は、そうしたアメリカのファイナンスを基礎にしたビジネスモデルの限界をさらけ出したのである。従来の米国のビジネスモデルが崩れつつあることも確かである。”との指摘があります。
(「戦後最大の危機到来」で賛否分かれるポールソン財務長官の“実力” 真壁昭夫 DIAMOND online 9月30日)
「“モノ作り”には向かない」、「最終的に農業と軍需産業と金融だけの国になる」と言われていたアメリカが活路を求めたのがファイナンスで、真壁氏によると、“ファイナンス部門は、典型的な知識集約性の高い分野だ。有体に言えば、「頭が良く知識を持っている人が、合法的に、知識の少ない人から収益を得ることが許される分野」ということができる。”とのこと。
また、同氏は“問題は、覇権国である米国の最も得意な金融で、米国自身がこけてしまったことだ。今後、米国は厳しい時期を迎えることになるだろう。長い目で見ると、米国の優位性が失われ、覇権国としての力を遺失する過程が始まったとも考えられる。”とも指摘しています。
【最後の貸し手】
日本の“モノ作り”衰退もよく言われていますが、その“モノ作り”を一手に引き受けているのが中国。
最近ではベトナムなどアジア新興国も活発化しています。
しかし、中国がカバーしているのは“モノ作り”だけではないようです。
*****「最後の貸し手」は中国*****
米財務省統計から推計すると、中国政府はこの6月末時点で約6500億ドルの両住宅金融2社関連を中心とする米政府機関債を保有し、第2位の日本2600億ドルを大きく上回っている。豊富な石油収入を持つ中東産油国でも240億ドルに過ぎない。(中略)
米ウォールストリート・ジャーナル紙は「(アメリカの公的資金による金融)救済の成否は中国と中東次第」と報じた。財源不足の米国は国債を発行し、外国に買ってもらうしかないからだ。しかし、産油国の政府系ファンドは高利回りでなければ買わない。残るは半年間で2800億ドルを積み上げ、この6月末で1兆8088億ドルの外貨準備を持つ中国しかない。
金融恐慌研究で知られる故キンドルバーガー教授は「1929年の大恐慌は最後の貸し手がいなかったために起きた」と断じている。中国共産党という異質で巨大な政治機構を「最後の貸し手」として頼まなければならないという現実が大統領選挙にまで影を落とし始めた。【9月30日 産経】
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中国に借りをつくりたくない・・・ということになると、“頼り”にされるのは日本政府かも。