孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

ドイツ  ウクライナへの武器供与、「良心的兵役拒否」ロシア人・ウクライナ難民受入れ、「脱原発」延期

2022-09-30 23:06:53 | 欧州情勢
(停止期限が延長される見通しのドイツ南部イザール2原発【9月28日 ロイター】)

【ウクライナ外相「ベルリンには兵器の壁のようなものがあるようだ」】
ウクライナへのロシア軍侵攻は世界の政治・経済・社会に大きな影響を与えていますが、やはり遠く離れた日本と隣接する欧州ではその影響の程度も比較にならないほどに異なります。

なかでもドイツはその影響で大きく揺れています。

武器支援に関してはドイツは第2次大戦の経緯から、日本とも似たような慎重さがありましたが、ロシア軍侵攻という状況で従来の方針を転換し、武器供与を実施しています。

それでも、ウクライナ側は欧米の武器支援に不満があり、ドイツはその矢面に立っているようにも。

****ウクライナ、戦車供与しないドイツを批判「ベルリンに兵器の壁」****
ウクライナのドミトロ・クレバ外相は16日に公開されたインタビューで、戦車を供与しないドイツを改めて批判し、ドイツには「兵器の壁」のようなものがあるとの見方を示した。

ドイツは15日、ウクライナに多連装ロケットシステム「マース2」2基とロケット弾200発、装甲車「ディンゴ」50台を追加供与するが、ウクライナが求めている戦車は供与しないと明らかにした。

クレバ氏は独日刊紙フランクフルター・アルゲマイネのインタビューで、「われわれは『レオパルト』戦車と『マルダー(歩兵戦闘車)』を求めているが、ドイツが供与するのはディンゴ装甲車だ」と述べた。

「感謝はしているが、われわれが戦闘で最も必要としているものではない。何が問題なのか。なぜ、われわれが必要としていてドイツが所有しているものが手に入らないのか」として、「ベルリンには兵器の壁のようなものがあるようだ。独首相がこの壁を崩すべき時が来ていると思う」と訴えた。

ロシアが2月にウクライナに侵攻して以降、ドイツはウクライナにさまざまな兵器を供与してきたが、ウクライナ側からの再三の要請にもかかわらず、レオパルト戦車とマルダー歩兵戦闘車の供与は拒んでいる。 【9月17日 AFP】
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侵攻直前の時期、ドイツが武器支援にかえてヘルメットを送り、ウクライナで批判・失望が高まったことも話題になりました。

しかし、ロシア軍が首都キエフへの攻勢を強める中、方針を転換。ショルツ独首相は「ウクライナを全力で支援することが我々の義務だ」と強調し、武器供与に踏み切ることにしましたが、ウクライナの戦局に大きく影響すると思われるレオパルト戦車などは拒否しています。

こうした対応はドイツだけでなく、アメリカ・フランス・イギリスも同様です。
もし高性能の「攻撃用兵器」である戦車や戦闘機・爆撃機を供与した場合、ロシアとの関係で「交戦国」とみなされる可能性があることを危惧してのことです。

なお、ウクライナへの武器支援・資金援助に関しては欧米側には“本来の目的に使用されるのか”やや疑念もあるのも事実です。汚職・無駄使いに消えたり、テロリストや敵対国に横流しされる・・・・危険も。
“「汚職大国」ウクライナに供与された支援金と武器、無駄遣いで「消失」する危険”【9月29日 Newsweek】
そのあたりの話は今回はパスします。

【ドイツ法相「プーチンのやり方を嫌い、自由民主主義を愛する人たちはドイツで歓迎する」】
ここ数日大きな話題になっているロシアからの徴兵を忌避して脱出するロシア人への対応では、先日も取り上げたように、受入れに否定的なバルト三国やフィンランド、ポーランドなどに対し、ドイツは受入れを表明しています。

****ドイツ、「良心的兵役拒否」求めるロシア人受け入れに前向き****
ロシアのプーチン大統領がウクライナ侵攻のために出した部分的動員令から逃れようとするロシア人の続出を受け、ドイツが「良心的兵役拒否」を求めるロシア人を一定の条件下で受け入れることに前向きな姿勢を示している。

欧州連合(EU)で協調して対応する考えだが、欧州には反対意見も根強く、実現するかは見通せない。

西ドイツと統一後のドイツは第二次大戦後、長年徴兵制を敷いてきた(現在は停止)が、ナチズムの克服が戦後の課題となったことから基本法(憲法)で良心に基づく兵役拒否を人権として認めてきた。

へベシュトライト政府報道官は23日、多くのロシア人男性がウクライナでの兵役を逃れようとしている事実を「良い兆候」と評価した上で、良心的兵役拒否を求める人々に対し、EUレベルで「実行可能な解決策」を見つけることが重要との見解を表し、受け入れを示唆した。

これに先立つ22日、フェーザー内務・国家相(社会民主党)はツイッターで「原則として、厳しい弾圧を受ける恐れのある脱走兵はドイツで国際的な保護を受ける」と投稿し、政治的迫害を理由にドイツで亡命申請が可能だとの認識を示した。

フェーザー氏は亡命が許可されるかは個々の事情に即して対応するとし、手続きの際にはセキュリティーチェックも行われると付け加えた。ブッシュマン法相(自由民主党)も21日、「プーチンのやり方を嫌い、自由民主主義を愛する人たちはドイツで歓迎する」とツイートした。

ただ、EU内にはウクライナ侵攻を支持してきたロシア人が動員逃れを理由に国境をまたぐことへの不信感も根強い。ロシアに強い警戒感を抱くバルト3国やチェコは22日までに、動員を逃れるロシア人を難民として受け入れない方針を表明した。

欧州議会議員のリホ・テラス元エストニア軍司令官は22日付のバルティック・タイムズ紙(電子版)で「欧州諸国は、何万人ものロシア人男性が欧州連合に無秩序に押し寄せるような状況を作り出してはならない。メルケル前独首相がすべての難民をドイツに招待した2015年の難民危機の何倍もひどいことになるだろう」と警告した。【9月24日 毎日】
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【かつてメルケル氏が率いた「キリスト教民主同盟」党首がウクライナ難民受入れを批判】
またドイツは、ウクライナからの難民に関してもこれを受け入れる姿勢を示してきており、これまでに約100万人のウクライナ難民を受け入れてきたとされています。

以前、中東・アフリカからの大量難民受入れに批判が高まったこともありますが、ウクライナ難民については同じ欧州人ということで抵抗は比較的小さいながらも、やはり国内には難民受入れに対する批判もあるようです。

****ウクライナ難民は「社会保障目的の移民」 独野党党首の発言に非難殺到****
ドイツ野党の中道右派、キリスト教民主同盟」のフリードリヒ・メルツ党首は27日、ウクライナ難民が「ウエルフェア・ツーリズム(社会保障目的の移民)」を行っていると非難したことを謝罪した。

メルツ氏は今年、アンゲラ・メルケル前首相からCDU党首を引き継いだ。

メルツ氏は独紙ビルト系列のテレビ局のインタビューで26日夜、ウクライナ難民に対する特別待遇が「無視できないゆがみ」を生んでいると指摘。「ウクライナ難民の間で、ドイツに行ってはウクライナに戻る、ドイツに行ってはウクライナに戻るという、ウエルフェア・ツーリズムが行われている」「大勢が制度を悪用している」と主張した。

この発言に非難が殺到したことを受け、メルツ氏は27日、ツイッターで謝罪文を発表。「厳しい運命に直面しているウクライナ難民を非難するつもりは毛頭ない。私が選んだ言葉で気分を害されたなら、心から謝罪する」として、「ウエルフェア・ツーリズム」という言葉を使ったことを後悔しているとした。

メルツ氏の発言をめぐっては、ナンシー・フェーザー内務・国家相が「(ロシアのウラジーミル・)プーチン大統領の爆弾や戦車から逃れてきたウクライナの女性や子どもを政治的主張に利用するとは恥ずべきことだ」とツイッターで非難した。(中略)

ロシアが2月にウクライナに対する軍事侵攻を開始して以来、ドイツは約100万人のウクライナ難民を受け入れてきた。ドイツで難民として登録されると、社会保障や医療、住居提供、定住支援などを受けることができる。 【9月28日 AFP】AFPBB News
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最近台頭している極右勢力の発言ではなく、難民受け入れに寛容だったメルケル前首相が率いていた「キリスト教民主同盟」党首の発言というところが注目される点です。

【かつてないエネルギー苦境 緑の党も「脱原発延期」を容認】
政治・社会への影響も大きいですが、何と言っても経済への影響でしょう。特に天然ガスのエネルギー問題。

“ドイツを襲うロシアの天然ガス供給中止 広がる企業倒産の波”【9月26日 Newsweek】

1973年10月6日に第四次中東戦争が勃発したことを契機に世界・日本を襲ったオイルショック・石油価格上昇はエネルギー源を中東の石油に依存してきた先進工業国の経済を脅かしました。
日本では「狂乱物価」と呼ばれる社会的パニックも起きましたが、当時に匹敵するような深刻な経済・エネルギー事情が今の欧州・ドイツではないでしょうか。

****ドイツ、エネルギー高騰対策に28兆円投入****
ドイツのショルツ政権は29日、ロシア産天然ガスの不足によるエネルギー価格の高騰対策として最大2000億ユーロ(約28兆円)を投じる方針を明らかにした。ガス料金に上限を設ける仕組みを導入し、10月から施行予定だった消費者が負担する賦課金制度は取りやめる。

ショルツ首相らが29日の記者会見で明らかにした。政府が経済安定化基金に2000億ユーロを拠出する。詳細な制度設計は明らかになっていないが、高騰するガス料金に上限を設けることで家庭や企業の負担を軽減するという。

政府は当初、経営難に陥ったエネルギー企業の救済策として、消費者が賦課金を負担する制度を導入する方針を決めた。代わりに低所得者層の救済策を中心とする650億ユーロ規模のインフレ対策を9月上旬に打ち出していた。

その後、エネルギー大手ユニパーを公的資金の投入によって国有化することが決まったため、賦課金制導入には正当性が認められないなどと批判が出ていた。【9月30日 毎日】
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ドイツ政府は休止中だった石炭火力発電所の稼働を再開したり、年内に稼働をやめるはずだった南部の原発の稼働延長を検討したりといった施策を講じていいます。

ロシア以外からのガスの調達を確保するため、北部の海上では液化天然ガス(LNG)の受け入れ基地を建設中。洋上風力発電の拡充も急いでいます。

中でも原発の問題は、現在のショルツ連立政権に原発停止を求めてきた緑の党が参加しているだけに苦渋の決断となっています。

****エネルギー危機:ドイツ「脱原発延期」に滲む「緑の党」の苦悩****
最後の原発3基廃止を延期した。9月5日に3基中の2基を発電停止状態で「リザーブ電源」化する方針を発表したことに続き、同27日には来年4月半ばまで運転し続ける第2のオプションも提示。電力・ガス会社ユニパーの国有化が決まるなどエネルギー危機が深まる中、緑の党は「全原子炉の廃止」という悲願達成を目前にして歴史的な妥協を余儀なくされた。

特に電力不足が懸念される南部
ドイツ政府は脱原子力政策の変更について、2つのオプションを提示した。
1つ目のオプションは、9月5日に連邦経済・気候保護省のロベルト・ハーベック大臣(緑の党)が発表した。彼は苦虫を嚙み潰したような表情で、今年12月31日に廃止が予定されていた3基の原子炉のうち、同国南部のイザール2号機とネッカーヴェストハイム2号機の廃止を3カ月半延期することを発表した。

このオプションによると、政府は12月31日に、これらの2基の原子炉の発電を停止させる。しかし真冬の電力不足に備えて、来年4月半ばまでは「リザーブ電源」として温存する。電力会社は運転員を待機させ、政府が必要と判断した場合には、発電を再開させなくてはならない。ただし、新しい核燃料は装荷しない。もう1基のエムスランド原子炉は、予定通り12月31日に廃止される。(中略)

しかしこのオプションについては、イザール2号機を運転する電力会社プロイセン・エレクトラが「原子炉のリザーブ電源化は例がない。いちど運転を止めた原子炉を、政府の指示で短期間に再稼働することは、技術的に難しい」と難色を示した。機動性の高い天然ガス火力発電所と異なり、原子炉は一度発電を止めた後、すぐに発電を再開するのが困難なのだ。

さらにドイツ政府の諮問機関である「経済専門家評議会」も、「2基の原子炉の発電をやめてリザーブ電源化しても、ガスの節約や電力料金の安定化には貢献しない。原子炉をスタンバイ・モードにすることで、不必要なコストも生じる」として反対した。同会に属する経済学者たちは、「現在のエネルギー危機は2024年の夏まで続く。少なくともそれまでは、原子炉の運転を続けるべきだ」と主張している。

このためハーベック大臣は、9月27日に第2のオプションを提示した。大臣は、「フランスでは機器の不具合のために、56基の原子炉の内32基が運転を止めている。したがって、冬期にドイツで電力需給が逼迫しても、フランスから電力の融通を受けられない可能性がある」と指摘。

大臣は、「フランスの状況が改善しない場合には、イザール2号機とネッカーヴェストハイム2号機を、2023年1月1日から4月15日まで運転し続ける可能性もある」と述べた。

これまで運転継続を拒否してきたハーベック大臣が、2基の原子炉の運転継続の可能性を打ち出したのは、初めてである。

第1のオプションと第2のオプションの内のどちらを採用するかは、今年12月上旬に政府が決定する。だがハーベック大臣は9月27日の記者会見で、「フランスの原子炉をめぐる状況が厳しいので、12月31日に運転をやめずに、来年4月15日まで運転し続ける可能性が高い」という見方を示した。

これらの決定は緑の党にとって、苦渋の決断だ。全原子炉の廃止は、1980年の結党以来の悲願だったからだ。緑の党は、悲願の達成を目前にして、2基の原子炉の廃止延期を受け入れた。正に歴史的な妥協である。ハーベックが厳しい表情を見せたのは、そのためだ。

半年前の方針を180度転換
ハーベック大臣が浮かない表情を見せたもう一つの理由は、彼が今から半年前に全く逆の結論を公表していたからだ。2月24日にロシアがウクライナに対する侵略戦争を開始した直後に、ドイツではエネルギー源についての議論が高まり、保守政党、一部の州政府首相、学界から「3基の原子炉の運転期間を延ばすべきだ」という意見が出された。

このためハーベック大臣と連邦環境・消費者保護省のシュテフィ・レムケ大臣(緑の党)は、電力会社も交えて対策を協議した。その結果、両大臣は3月8日に、「3基の原子炉の運転を続けても、次の冬にエネルギー危機を大きく緩和することはできない」として、予定通り12月31日に3基の原子炉を廃止すると発表した。(中略)

ストレステストで電力不足の可能性が浮上
ではなぜハーベック大臣は、6カ月前に行った決定を部分的に覆さざるを得なかったのか。その理由は、ロシア・ウクライナ戦争によってエネルギー市場の状況が日に日に厳しさを増していることだ。

さらに気候変動の影響など今年3月には想定していなかった悪条件も加わり、今年冬に電力不足が生じる危険が浮上したからである。(中略)

世論調査の回答者の8割が運転継続を希望
さらに国民の間でも、原子炉の運転継続を求める声が強まっている。ドイツの保守系日刊紙フランクフルター・アルゲマイネ(FAZ)が今年4月13日に公表した世論調査の結果によると、「3基の原子炉を来年1月1日以降も運転するべきだ」と答えた回答者の比率は、ロシア・ウクライナ戦争が始まる前の今年2月上旬には35%だったが、ロシア・ウクライナ戦争勃発後の今年3月には、57%に増えた。

またドイツ公共放送連盟(ARD)が8月4日に公表した世論調査結果によると、回答者の実に82%が3基の原子炉の運転継続を希望した。「3基の原子炉を予定通り今年末に廃止するべきだ」と答えた回答者の比率は、15%に留まった。

2011年の福島原発事故直後のドイツでの世論調査では、7割を超える回答者が脱原子力政策を支持していた。だがロシア・ウクライナ戦争がもたらしたエネルギー危機に対する不安感は、市民の原子力に対する意識を大きく変えたのだ。

製造業界も原子炉の運転継続を希望した。(中略) 連立与党内部でも、企業経営者を最重要の支持基盤とする自由民主党(FDP)のクリスティアン・リントナー財務大臣が、「原子炉の運転継続については、イデオロギーにとらわれずに議論してほしい」と述べて緑の党に対する牽制球を送り、ガスを節約するために原子炉を使い続けるべきだという態度を打ち出した。

このためハーベック大臣は、3月に公表した結論を修正し、冬に電力需給が逼迫すると予想される場合には、2023年1月1日以降3カ月半にわたり、2基の原子炉を運転する可能性を打ち出したのだ。

ドイツ企業や市民の間では、「秋以降ガスや電力料金がこれまでの2〜3倍になる」という懸念が強まっている。私の知り合いのドイツ人は、ガス会社から「今年10月1日からガス代を60%引き上げる」という通知を受け取った。市民の3分の1がガス代を払えなくなる可能性も指摘されている。

製造業界では、すでにエネルギー危機の「被害者」が現れている。9月6日には大手靴メーカー・ゲルツ社、9日にはトイレットペーパーで知られる製紙企業ハクレ社が、エネルギー費用の高騰などのために倒産した。(中略)

私はドイツに32年間住んでいるが、同国のエネルギー業界と製造業界が現在ほど深刻な危機にさらされているのを見たことは、一度もない。

この危機がさらにエスカレートした場合、ハーベック大臣が2基の原子炉を来年4月15日に廃止できるかどうかは、未知数だ。緑の党の苦悩は、まだ当分続きそうだ。【9月30日 Foresight】
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ドイツ経済・エネルギーがこれほどの苦境に追い込まれているのは、これまでエネルギーをロシアに大きく依存してきたからですが、では「なぜドイツはロシアに頼ってきたのか?」という話にもなります。

****「ロシア・ファースト」続けたドイツ 信じた「相互依存」の効果****
(中略)ドイツには、「確かに我々はロシアに依存している。しかしロシア国営ガス大手ガスプロムも我々に依存している」という「相互依存」の考え方があったからです。(中略)

ドイツはこうした事情も計算に入れて、相手(ロシア)も経済合理性に基づいて行動するだろうと見ていたのです。(中略)

ロシアにとっては結局、強大なロシア「帝国」の復活を目指す「帝国主義」のほうが、経済合理性より重要だったのです。

ドイツ政府はロシアの「帝国主義」志向を過小評価しました。その結果、ドイツにも今、安全保障上のリスクが生じました。「相互依存による安全保障」は失敗したと言えるでしょう。【9月30日 毎日】
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イラン抗議デモ  鎮圧姿勢強めるライシ大統領の気になる経歴 イラク・クルド人拠点への攻撃も

2022-09-29 22:13:59 | イラン
(イランの首都テヘランで行われたデモで、髪を覆うスカーフを燃やす人々。(2022年9月22日撮影)【9月27日 AFP】)

【スカーフ女性死亡への抗議デモは、政権への不満、支配聖職者層の解体を求める声にも拡大】
9月22日ブログ“イラン スカーフをめぐる女性死亡で広がる抗議デモで混乱 瀬戸際の核合意再建問題”でも取り上げたように、イランでは今月16日、スカーフのかぶり方が不適切だとして逮捕された22歳の女性が死亡したことをめぐり、警察が心臓発作が原因だと説明しているのに対し、警察官による暴行が原因だとして抗議するデモが各地で起きましたが、未だ収束していないようです。

長引く背景には、単に女性のスカーフの問題だけでなく、保守強硬派政権下での宗教的価値観強要による自由の制約、更には長引く制裁で改善しない経済苦境への市民の不満などが抗議行動の根底にあるように思えます。

そうした不満は「独裁者に死を」といった声にも。

****イランでデモ隊と治安部隊が衝突、「独裁者に死を」唱える動画も****
イランでは女性の頭髪を覆うスカーフの着用が不適切だったとして拘束された女性が死亡したことへの抗議活動が激化しており、国営メディアやソーシャルメディアによると27日、数十の都市で機動隊・治安部隊とデモ隊が衝突した。

ソーシャルメディアに投稿された動画には、テヘランなどで治安部隊と衝突しながら支配聖職者層の解体を求めるデモ隊の姿が映し出されている。ツイッターの動画では、最高指導者ハメネイ師を指して「独裁者に死を」と唱えている様子も見られた。

国際人権団体アムネスティ・インターナショナルはツイッターで、イランの治安部隊がデモ隊に実弾などを使用、「数十人が死亡、数百人が負傷」と指摘した。

一方、国営メディアは、デモ参加者を「偽善者、暴徒、凶悪犯、扇動者」と表現。国営テレビはいくつかの都市で警察が「暴徒」と衝突したと報じた。

インターネット遮断監視組織NetBlocksによると、デモ参加者がソーシャルメディアに動画を投稿することを困難にするため、当局はいくつかの州でネットアクセスを制限している。【9月28日 ロイター】
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【「暴動は許さない」と鎮圧に向けた姿勢を強めるライシ大統領の不穏な経歴】
国営メディアによれば治安当局との衝突などでこれまでに41人が死亡する事態となり(人権団体「イラン・ヒューマン・ライツ(IHR)」によると、抗議デモが続く11日間で、少なくとも76人の抗議者がイラン治安部隊によって殺されたとも)、国内外で当局対応への非難の声が高まるとともに、政権側としてはこれ以上の混乱は体制を揺るがすものとして容認できないところに来ているようにも見えます。

****イラン大統領“暴動はレッドライン” 女性死亡の抗議デモで****
イランでスカーフのかぶり方をめぐり逮捕された女性が死亡したことに抗議するデモが続いていることについてライシ大統領は、レッドラインを越えて暴動に発展しているとして取締りを徹底する姿勢を強調しました。混乱の収束に向けて、デモへの参加を思いとどまらせるねらいがあるとみられます。

(中略)ライシ大統領は28日、国営テレビのインタビューに答える形で、女性の死因に関する調査結果が数日以内に公表される予定だと明らかにしました。

その一方で「デモと暴動は違う。社会の治安を乱すことは許されず、暴動はレッドラインを越えている。人々の命と財産を傷つける者には裁きを受けさせる」と述べ、取締りを徹底する姿勢を強調しました。

(中略)ライシ大統領としては混乱の収束に向けて、デモへの参加を思いとどまらせるねらいがあるとみられます。(後略)【9月29日 NHK】
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2019年11月、ガソリン価格高騰から抗議デモが激化した際には、当局の弾圧によって死者は1000人を超えたとのアメリカ側の観測もあります。(1500人以上との指摘もあります)
ただ、イラン政府は死傷者数などデモの詳細を明らかにしていませんので、真相は不明です。

今回もそうした大規模な犠牲者が懸念されますが、その懸念を膨らませるのはライシ大統領の経歴です。
最高指導者ハメネイ師に近い保守強硬派のライシ大統領は、「イスラム法学者」「司法府でキャリアを積んだ」などと説明されていますが、別の顔もあります。

****「死の委員会」の一員だったライシ氏****
ライシ氏は2019年からイランの法相を務めているが、何よりも若い頃から長年にわたり、検察官として反体制派の弾圧、処刑に関与してきたことで知られる。

特に1988年、当時の最高指導者ホメイニ師の勅命によって実行された反体制派大弾圧の責任者の1人とされていることは重要だ。

ホメイニ師は1988年にいわゆる「死の委員会」を設立、政治犯として拘束されていた反体制派モジャヘディン・ハルク機構(PMOI)の支持者らを直ちに処刑するよう命じた。ライシ氏はその「死の委員会」の一員だった。

数千人から数万人にのぼるとされる犠牲者の遺族を代表するNGO「1988年イラン大虐殺の犠牲者のための正義(JVMI)」は、家族には事前に何も知らされぬまま処刑は秘密裏に行われたため、最後のお別れをする機会もなかった、彼らは6人ずつクレーンに吊るされて処刑され、遺体には消毒液がかけられ、夜のうちに集団墓地に密かに埋められた、としている。

しかしイラン当局は、今もその事実を認めていない。

2021年5月には150人以上の元国連職員や人権専門家が、この1988年イラン大虐殺について調査を行うよう要求する書簡を国連に提出、これを受け取ったミシェル・バチェレ国連人権高等弁務官は「人道に対する罪」に相当する可能性に言及した。(後略)【2021年6月1日 FNNプライムオンライン イスラム思想研究者 飯山陽氏「イラン次期大統領最有力候補の血塗られた過去」】
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ホメイニ時代の数千人から数万人にのぼるとされる反体制派大弾圧の責任者の1人・・・その経歴が今また繰り返されることがなければいいのですが。
情報が統制された国家ですので、仮に大弾圧が行われても、イラン国外にはその情報はなかなか伝わってきません。

【イラク・クルド自治区のクルド人勢力拠点への越境攻撃も】
前回9月22日ブログでも触れたように、死亡した女性がクルド系だったことで、混乱は国境を超えて、隣国イラクのクルド自治区にある反政府活動を続けるクルド人勢力の拠点への攻撃という形にも拡大しています。

****イランがイラク北部のクルド自治区攻撃、13人死亡 国内騒乱巡り****
イランの革命防衛隊は28日、隣国イラク北部のクルド人地域の武装勢力を標的にミサイルと無人機で攻撃を行ったと明らかにした。当局によると、13人が死亡した。

イランでは今月、クルド系女性がを理由に警察に拘束され死亡したことを巡り、大規模な抗議デモが発生。イラン当局はクルド勢力が関与していると非難している。

イラクの国営通信社は、この攻撃でクルド人自治区のアルビルとスレイマニヤ近郊で13人が死亡し、58人が負傷したと、クルド人当局の話として伝えた。

イラクのクルド関係筋によると、28日朝に行われた攻撃はスレイマニヤ近郊のクルド側拠点の少なくとも10カ所が対象だったという。

米中央軍は、アルビルに向かうイラン無人機を撃墜したと明かし、「空爆による米軍の負傷者や死者はなく、装備に被害はない」と声明を発表した。

イラン革命防衛隊は攻撃後、テロ勢力と見なす同地域のクルド人への攻撃を続けると表明した。【9月29日 ロイター】
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イラン革命防衛隊は、イラクのクルド人勢力が「北西部からイランを攻撃して同国に侵入し、不安と暴動を扇動して混乱を広げている」と非難し、攻撃を正当化しています。

“イラク政府はイラン大使を呼び出し抗議。国連イラク支援ミッションはツイッターへの投稿で、「ミサイル外交は壊滅的な結果をもたらす無謀な行為だ」と非難した。米国も、攻撃を「強く非難する」と表明し、さらなる攻撃を行わないようイランに警告した。”【9月29日 AFP】

イラクではシーア派内部の反イラン派と親イラン派の対立から政治混乱が続いていますが、イランの今回のようなイラク主権を無視した越境攻撃のような行動が、イラク国内の対立を激化させているのでしょう。(もっとも、イラク主権無視はトルコもアメリカ・・・といったところでしょうが)

【東隣アフガニスタンではイラン抗議デモに連帯する女性も】
上記イラクはイランの西隣ですが、イランの東隣はタリバン支配のアフガニスタン。
「不適切な服装」云々で言うなら、アフガニスタンではイラン以上に厳しい制約があります。そのことへの女性たちの不満も。

****「イラン抗議運動」支持の女性集会を強制解散 タリバンが空砲で****
アフガニスタンの女性たちが29日、首都カブールで、隣国イランで服装規定違反を理由に「道徳警察」に逮捕された女性の死をめぐって広がった抗議運動を支持するデモを行ったが、イスラム主義組織タリバンにより強制的に解散させられた。

AFP特派員によると、イラン大使館の前に約25人の女性が集まり、イランでの抗議運動で用いられたスローガン「女性、命、自由!」を叫んだ。これに対し、タリバン兵は空砲を撃つなどして集会を中止させた。

女性たちが手にした紙には、「イランは立ち上がった。今度は私たちの番だ!」「カブールからイランへ、独裁にノーと言おう!」などと書かれていた。タリバン兵はこれらの紙を素早く奪い取り、デモ隊の前で破り捨てた。【翻訳編集】
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タリバン復権をあっけなく許したアフガニスタン男性でしたが、アフガニスタン女性は粘り強く勇敢なようです。

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ノルドストリームガス漏れ、ザポリージャ原発攻撃 誰が何のために?

2022-09-28 22:37:37 | 欧州情勢
(【9月28日 NHK】)

【ノルドストリームガス漏れ 「破壊工作」が強く疑われるが、誰が?】
よくわからない話。

ロシアから欧州に天然ガスを送る海底パイプライン「ノルドストリーム1」と「ノルドストリーム2」の計3か所で発生。2カ所がデンマーク海域、もう1カ所はスウェーデン海域内。

同時に3か所が破損・・・自然現象や消耗はかなか考えにくい事態で、「破壊工作」が強く疑われています。

****ノルドストリームガス漏れ、破壊工作か 欧州が原因究明急ぐ****
ロシアから欧州に天然ガスを送る海底パイプライン「ノルドストリーム1」と「ノルドストリーム2」で発見されたガス漏れについて、ドイツ、デンマーク、スウェーデンは27日、破壊された可能性に言及した。ただ、不明な点が多く、欧州は原因究明を急いでいる。

ドイツのハーベック経済相は、ガス漏れはガス管を狙った攻撃によるもので自然現象や消耗が原因ではないことは確かだと述べた。

デンマークのフレデリクセン首相とスウェーデンのアンデション首相は意図的な行為によるもので、恐らく破壊工作との認識を示した。ポーランドのモラウィエツキ首相は、証拠を示さずに破壊工作と断言した。

ロシアはウクライナ侵攻を巡る西側諸国の制裁に反発し、ノルドストリーム経由のガス輸出を削減してきた。両パイプラインは現在稼働していないが、冬が到来する前にノルドストリーム1が欧州へのガス供給を再開するとの期待は失われるとみられる。

ロシアも破壊工作の可能性があるとの見方を表明し、ガス漏れで欧州のエネルギー安全保障が損なわれたと指摘した。

ウクライナ政府の高官は欧州の不安定化を狙ったロシアの攻撃と主張したが、根拠は示さなかった。

モラウィエツキ首相はポーランド・ノルウェー間の新たなパイプライン開通のイベントで「われわれにはこれが破壊工作であることは明確で、ウクライナ情勢緊迫化の次のステップに関係している」と語った。

アンデション首相はガス漏れに絡み2回の衝撃が観測されており、スウェーデンへの攻撃ではないが、NATO(北大西洋条約機構)やデンマーク、ドイツなどの近隣諸国と緊密に連絡を取り合っていると述べた。

デンマークとスウェーデンの地震学者らは、ガス漏れの現場近くで26日に2件の強い爆発音を観測したと発表。

デンマーク・グリーンランド地質調査所(GEUS)は地震とは異なる活動が検知され、爆発で通常記録される活動に類似していると分析した。

スウェーデンのウプサラ大学国立地震学センター(SNSN)は、2回目の大きな爆発が「100キログラム以上のダイナマイトに相当する」とし、爆発は海底下ではなく水中で起きたと説明した。

デンマーク軍によると、最も大きな漏えいがある場所では、直径1キロメートル以上の泡が海面が発生したという。

<ガス漏れが爆発引き起こすリスク>
スウェーデン海事局(SMA)によると、ノルドストリーム 1の漏えいはスウェーデンの経済水域とデンマークの経済水域でそれぞれ1カ所見つかり、どちらもバルト海のデンマーク領ボーンホルム島の北東に位置する。船舶が現場に接近しないよう監視しているとした。

運営会社ノルドストリームは、パイプラインが「前例のない」損傷を受けたと発表した。

デンマーク・エネルギー庁のベッツァウ長官は、パイプラインの穴は非常に大きく、ノルドストリーム2からのガス漏れが止まるまでおそらく1週間かかると述べた。「海面にはメタンが充満しており、この海域では爆発の危険性が高まっている」と警告した。【9月28日 ロイター】
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EUは「深い懸念」を表明。NATOも「破壊工作」との見方。

****バルト海のガス漏れ NATO「破壊工作」の見方****
ロシアとドイツを結ぶ天然ガスパイプラインでガス漏れが起きた事件で、欧州連合(EU)は28日、声明で「深い懸念」を表明し、EUが真相解明のための捜査に協力すると明記した。北大西洋条約機構(NATO)のストルテンベルグ事務総長は28日、「破壊工作」との見方を示した。(中略)

EUの声明は「すべての状況は、人為的な行為の結果だと示している。欧州のエネルギー施設を故意に損傷するのは許せない」として、EUが結束して強い対応をとると明記した。

ストルテンベルグ氏は28日、ブリュッセルのNATO本部でデンマークのボドスコフ国防相と会談。声明で「パイプラインの破壊工作について話し合った。われわれは、NATO加盟国の重要なインフラの保護に取り組む」と表明した。北海油田を抱えるノルウェー政府は事件発覚後、近海施設の監視を強化する構えを示している。(後略)【9月28日 産経】
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アメリカはまだ「破壊工作」とは断言していません。

****米国務長官「破壊工作ならば誰の利益にもならず」 ノルドストリームガス漏れで****
ロシアとドイツを結ぶ天然ガスのパイプラインでガス漏れが発生したことについて、アメリカのブリンケン国務長官は「仮に攻撃や破壊工作だったとして、誰の利益にもならないのは明らかだ」と指摘しました。

アメリカ ブリンケン国務長官
「ガス漏れについては現在、調査中だ。最初の報道では、攻撃か破壊工作の結果かもしれないとのことだが、我々はまだ確認していない」(後略)【9月28日 TBS NEWS DIG】
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「ノルドストリーム1」は、ロシア側が欧州から受けている制裁により部品交換ができないなどと主張し、8月末から供給が止まっています。「ノルドストリーム2」は事業開始前にドイツが承認を停止しています。

ということで、いずれも欧州側への供給がなされていない状態ですので、現時点でのガス供給への影響はないと思われます。

しかし、「破壊工作」としたら誰が?
目下の状況ではロシアか、あるいは反ロシアのウクライナがすぐに思い浮かびますが、一体何のために?

ロシア、ウクライナ双方とも「破壊工作」に言及しながらも、当然ながら自分ではないとしています。

もし「破壊工作」だとしたら、「誰の利益にもならないのは明らかだ」とは言いつつも、大きな利益があるからわざわざリスクを犯して「破壊工作」を行うのでしょう。

もし、ロシアによるものとしたら、冬に向けての欧州へのエネルギー供給を不安定化させ、揺さぶりをかけるため?
しかし、ロシアにとっても「ノルドストリーム」は貴重な資産です。

ウクライナはもともと、自国をスルーしてロシアから直接にガス輸送する「ノルドストリーム」については反対していましたが、今この時期に「破壊工作」といったリスクを犯すのか? もし、判明したら欧米の支持を一気に失う死活問題です。 また、(失礼ながら)ウクライナに海中での破壊工作を行うような技術力があるのか?

よくわからない話です。

【執拗に続くザポリージャ原発攻撃 ウクライナ軍の「火遊び」?】
似たような「よくわからない話」は欧州最大級のザポリージャ原発も同じ。
同原発付近への危険な攻撃は執拗に続いています。

****ザポリージャ原発付近で砲撃と爆発 タービン建屋の窓ガラス割れる****
IAEA=国際原子力機関のグロッシ事務局長は、26日と27日にウクライナ南部ザポリージャ原発付近で砲撃や爆発があり、タービン建屋の窓ガラスが割れたと明らかにしました。

IAEAのグロッシ事務局長の声明によりますと、現地時間の26日夕方に施設から数百メートル離れた場所で砲撃があり、さらに離れた場所でも爆発音が聞こえたということです。翌日の27日朝には冷却システムのために貯水池から水を運ぶ水路の近くで2回爆発が起き、タービン建屋の窓が割れたということです。爆発の原因はわかっておらず、調査中としています。

グロッシ事務局長は以前から原発の安全区域の設置を求めていて、「重大事故のリスクを軽減するために、即時の行動が必要だ」と訴えました。【9月28日 TBS NEWS DIG】
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ロシアは同原発を軍事要塞化し、原発を盾にした攻撃を行っています。併せて。「電力確保」も狙っているとも。

****世界が注視するザポリージャ原発とは?何が起きている?****
(中略)
これまで何が起きた?
ロシア軍がザポリージャ原発を掌握したのは3月4日。当時、攻撃を受けた原発の敷地では火災が発生し、さらには戦車などがバリケードを破って侵入しました。

それ以降もロシア軍による掌握が続いていましたが、特に8月に入ってからは攻撃が相次いでいて、ウクライナとロシア側が互いに、相手による攻撃だと主張しています。

こうした中、8月25日には原子炉の冷却などに必要な外部電源が一時的に失われる事態になりました。
エネルゴアトムは、ロシア側の行動で生じた火災によって、4系統ある送電線のうち無事に残っていた1系統が切断されたことが原因だとしています。

ゼレンスキー大統領は、この際は非常用ディーゼル発電機が直ちに稼働したため、原子炉の冷却機能がかろうじて維持できたとしています。

ただ、「再び送電網が切断されるなどの事態になれば危険にさらされる」と述べ、ロシア軍が原発から撤退しない限りは、危険が去る訳ではないと訴えました。

なぜ原発を占拠?
ロシア軍はなぜ、原発を占拠してるのか。ウクライナや欧米側は、主に2つの理由を挙げています。

①「原発を盾に攻撃か」
エネルゴアトムのコティン総裁は、NHKの取材に対し、ロシア軍が原発の敷地にミサイル発射装置などを持ち込み、原発を盾にして、ウクライナの町を攻撃していると訴えました。
これに先だってエネルゴアトムは、原発の敷地内には500人以上のロシア軍兵士や軍用車両が配置されているとも指摘。

ロイター通信が配信した、ザポリージャ原発の建物で撮影されたとする映像でも、ロシアの軍事侵攻のシンボルとなっている「Z」の文字が書かれた、ロシア側のものとみられる車両が確認できます。

また、アメリカのシンクタンク「戦争研究所」は、「ロシア軍は『核の盾』として原発を利用している。原子力事故に対する欧米の恐怖心をあおり、ウクライナへの軍事支援を行う意欲を低下させようとしている」とも指摘しています。

原発を盾として利用することで、ロシア軍は軍事侵攻を優位に進めようとしているのではないかと批判されています。

②「送電網の掌握狙う?」
もう1つ指摘されている理由が「電力の確保」です。
IAEAなどによりますと、ザポリージャ原発は、それだけでウクライナの総電力の2割をまかなうことができる大規模な原発です。

エネルゴアトムのコティン総裁は、ロシア軍が現在のウクライナの送電網を遮断し、ロシアが一方的に併合した南部クリミアへの電力の供給を計画しているという見方を示しました。

また、アメリカの有力紙ウォール・ストリート・ジャーナルは8月14日付けの電子版の記事で、ザポリージャ原発の職員の話として「ロシア国営の原子力企業ロスアトムの技術者が、電力を占領した地域に回すことについて議論していた」という証言を伝えています。(後略)【9月2日 NHK】
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こちらもウクライナとロシア側が互いに、相手による攻撃だと主張していますが、1回、2回の攻撃なら何らかのアピールを狙ったものとも思えますが、これだけ執拗に続くと「一体誰が、何のために?」とよくわかりません。

特に、ロシアの場合、自軍が占拠している原発を危険にさらして何の得があるのか?
ウクライナについては、もしウクライナが欧米支援の兵器による精密な攻撃に自信を持てば・・・という疑念も。下記はそうした考えからのもの。

****ウクライナで繰り広げられる醜悪な「欺瞞の戦争」****
ザポリージャ原発をロシアとウクライナが戦争の宣伝扇動に利用している。国際社会までもがそのような宣伝扇動によって陣営論理で分裂すれば、核災害や第3次世界大戦に飛び火しないなどと誰が断言できるのだろうか。

戦争が広がれば、真実は消え、ただ勝とうとする宣伝扇動ばかりが幅を利かせる。ウクライナ戦争におけるザポリージャ原発への砲撃などの交戦状況が典型的だ。

核災害への懸念が国際社会に広がっているが、ロシアとウクライナの双方が互いに砲撃の責任転嫁をしているという程度しか伝えられていない。ロシアが、自国軍が占領し駐留しているザポリージャ原発に対して砲撃を加えているということなのか。ウクライナが、自国の住民が最も被害を受けることになるザポリージャ原発への攻撃を敢行しているのか。

先月29日、米国国防総省の記者会見で匿名を要求した「軍高官」は、この状況について「ウクライナが、その近隣に砲撃を加えなかったとは言いたくない」とし、「彼らが行った可能性は十分にあると思われる。ほとんどの場合は、そこから砲撃するロシアに対する応戦の砲撃だ」と述べた。

彼の話は、ロシアがザポリージャ原発施設を人質にし、そこからウクライナを攻撃しているというこれまでの西側の主張の延長ではあるが、ウクライナも原発に砲撃を加えたことを初めて認めたのだ。

7月22日、ウクライナ国防省の国防情報局はツイッターに、ザポリージャ原発に駐留していたロシア軍のテントがドローンで攻撃される動画を投稿した。テントの横で爆発が起きて燃え、ロシア軍兵士たちが驚いて逃げる場面だった。当時ウクライナ国防省は、自殺ドローン攻撃でロシア軍兵士3人が死亡し、12人が負傷したと明らかにした。

核問題を監視する「憂慮する科学者同盟」原発安全局長のエドウィン・ライマン氏は、米国公営放送「NPR」で、ウクライナが自身の攻撃の精密性に自信を持っているようだと述べ、「火遊びが明らかに始まった」と懸念した。

ウクライナ戦争の戦況をメディアに毎日提供する米国の「戦争研究所」は、ザポリージャ原発をめぐる核災害への緊張は、米国がこの夏、ウクライナに高機動ロケット砲システム(HIMARS)や攻撃用ドローンなどの精密で強力な兵器を提供した時期に一致すると分析した。

これらの兵器を用いてヘルソンなど南部地域の奪還を試みる反撃を進めているウクライナがザポリージャ原発に手を出したことは、ウクライナ戦争が抱える矛盾と欺瞞を示している。

欧州最大のザポリージャ原発は、ウクライナの電力の20%を担うだけでなく、ロシアの同盟国であるベラルーシなど旧ソ連の共和国の国々に電力を供給している。ロイター通信の報道によれば、ウクライナは戦争が始まると、ベラルーシなどに送られる原発の電力を切り、今後は欧州連合(EU)加盟国に回すと明らかにした。侵攻したロシアが3月にザポリージャ原発を占領したが、その運営は今もなおウクライナの企業と技術スタッフが行っている。電力の配分もそのまま維持された。

しかし、ウクライナは7月、原発の電力をルーマニア経由でEUに輸出し始めた。ウォロディミル・ゼレンスキー大統領はこれについて、欧州の同盟国がロシアの石油とガスに対する依存を減らすことへの助けになる過程の始まりだと述べたと、同通信は報じた。

ロシア軍が電力網の変更を防ごうとして職員と衝突したためか、職員がロシア軍に殴打などにより虐げられているという報道も出てきた。ロシアはザポリージャ原発をウクライナの電力網から完全に切り離して自国の電力網につなぐ計画を推進し始めた。

この時期にザポリージャ原発をめぐる砲撃戦が始まった。ウクライナは戦争中にも電力を近隣諸国に売ろうとし、ロシアは危険を冒して原発の電力網の交替を試みたことで起こったのが、ザポリージャ原発事態だといえる。
 
ウクライナは消費するガスの約30%を欧州から輸入している。ところがそのガスは、実はロシアがウクライナを通過するパイプラインを通じて欧州に輸出したものだ。正確に表現すると、欧州に輸出するロシアのガスを途中で供給されるものだ。

ウクライナはパイプラインの通行料を今もなお徴集している。そうしておきながら、ウクライナは、欧州各国にロシアからのガスなどのエネルギー輸入を中断するよう求めている。

ロシアも、ドイツに向かうノルドストリームのパイプラインは閉鎖しながらも、本来の交戦国であるウクライナを通過するパイプラインは閉じずにいる。

戦争をしていても生きていかなければならないので、ロシアとウクライナが相互に絡みあう電気やガスの問題について、欺瞞や偽善を使うことは理解する。彼らが戦争を行うためにその問題を用いて宣伝扇動に利用することも仕方ない。

しかし、そのような戦争の宣伝扇動によって、国際社会全体が陣営論理で分裂している。核災害を引き起こす事態や第3次世界大戦には飛び火しないなどと、誰が自信を持って言えるだろうか。【9月6日 ハンギョレ】
****************

上記はザポリージャ原発への攻撃をウクライナ軍によるものとしていますが、(ロシアによる攻撃と考えるよりわかりやすい話ですが)実際そうなのかは知りません。
ただ、戦争の宣伝扇動がとんでもない事態に・・・というのは、あり得る指摘でしょう。
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中国  返済困難国の債務問題解決への協力を求められる 「一帯一路」見直しで“バージョン2”も

2022-09-27 23:04:45 | 中国
(中国資金によるスリランカ・コロンボのロータス・タワー 「無用の長物」との批判も 画像は【ウィキペディア】)

【スリランカの債務問題の今後は中国の対応次第】
中国の「一帯一路」による経済合理性・返済能力を無視した途上国への巨額の融資の返済が滞り、結局融資案件の運用権などが中国の手に渡ってしまう・・・といった、いわゆる「債務の罠」の話で必ず真っ先にあげられる事例がスリランカ南部ハンバントタ港です。

そのスリランカは外貨不足で返済不能に陥り、ガソリン輸入も途絶え経済は大混乱、電力も停止して市民生活はマヒ・・・縁故政治でスリランカ政治を支配していたラジャパクサ一族が権力の座を追われる事態になったことは周知のところです。

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国連食糧農業機関(FAO)の調べによると、スリランカでは約620万人が食料不足に陥っている。食品インフレが激しく、8月は93.7%に達したからだ。

スリランカ国民約2200万人はここ数カ月、停電、高インフレ、通貨ルピーの急落、外貨不足に苦しみ、食品、燃料、医薬品の輸入代金を払うのが困難になっている。【9月23日 ロイター】
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スリランカでの中国の融資案件のひとつが、コロンボに建設された巨大電波塔「ロータス・タワー」

****中国資金で建設の電波塔、開業へ 「無用の長物」批判も スリランカ****
スリランカ・コロンボで今週、中国から融資を受け建設された巨大電波塔「ロータス・タワー」が一般公開される。運営会社が12日、発表した。

紫・緑2色の塔の高さは350メートルで、総工費は推定1億1300万ドル(約160億円)。2012年にマヒンダ・ラジャパクサ元大統領の肝いりで着工。以来、汚職疑惑もくすぶっていた。

マヒンダ氏は、経済危機への抗議デモを受けて今年7月に辞任したゴタバヤ・ラジャパクサ前大統領の兄。ロータス・タワーは、マヒンダ・ラジャパクサ政権下で中国からの借り入れで建設が決定された、「無用の長物」と批判されるプロジェクトの一つだ。

国営運営会社コロンボ・ロータス・タワー・マネジメントは、15日から展望台をオープンし、チケットの販売収入で債務の一部を埋め合わせる考え。
コロンボの街全体とインド洋が見渡せる展望台のすぐ下には、回転レストランもある。

地元メディアは、ロータス・タワーはスリランカ島全体をカバーできないなど、電波塔としては無意味だと批判している。 【9月13日 AFP】
***********************

話の腰を折るようですが、私個人としては、スリランカの経済混乱が収まって観光できるようになったら、是非この「ロータス・タワー」の回転レストランで食事をしてみたいものだと思いました。電波塔としてはともかく、観光資源としては役立つかも。

閑話休題。 スリランカは事態打開のためにIMFからの支援を中心に据えています。

****スリランカ、IMF金融支援の年内最終決定目指す=関係筋****
スリランカ中央銀行の当局者は23日の債権者向けプレゼンテーションで、国際通貨基金(IMF)理事会が年末までに29億ドルの同国向け金融支援を承認するとの見通しを示した。プレゼンに参加した関係筋が明らかにした。

IMF理事会は12月半ばまでに金融支援を承認する見込みで、スリランカは11月半ばまでに公的部門、民間部門双方の債権者から債務整理に向けた保証を取り付けたい考え。

プレゼンに出席した関係筋によると、スリランカは今年第4・四半期から2023年第2・四半期までの期間に全ての債権者と基本合意することを目標としている。

ある債権者は「合意は非常に難しいだろう。しかし、基本的に中国、つまり1つの債権国に依存している部分が多いので、もしかしたら実現できるかもしれない」と述べた。(後略)【9月26日 ロイター】
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IMF支援が順調にいくためには、債権国である中国・インド・日本の協力・債務再編が必要になります。
債務再編とは返済が困難になった債権について、支払期限の延長や元本金額の削減、利率の引き下げなど返済条件を緩和すること。

“スリランカは中国から少なくとも50億ドルを借り入れており、一部の見積もりでは債務額はその2倍前後に達する。また国際通貨基金(IMF)によると、インドが38億ドル、日本が少なくとも35億ドル、その他先進各国が計10億ドルをスリランカに貸し付けている。”【7月15日 ロイター】

インド・日本は債務再編に前向き姿勢です。
“インドがスリランカと債務再編協議開始”【9月21日 ロイター】
“日本、スリランカの債務再編交渉を支援へ=日本大使”【9月24日 ロイター】

しかし、対応が不透明なのが中国。

中国の融資については、契約内容も明らかにされず、中国への返済を最優先することが義務付けられているともいわれます。また返済が困難になった際の国際協力についても消極姿勢が目だっていました。

そうした中国の対応を受けて、上記記事にもあるように“基本的に中国、つまり1つの債権国に依存している”という状況にもなっています。

【アメリカ 債務再編への中国の参加を促す】
アメリカのイエレン米財務長官は中国に債務再編に協力するように呼び掛けています。

****スリランカ債務再編への関与、中国にも利益=米財務長官****
イエレン米財務長官は14日、中国はスリランカの「重要な債権者」であり、スリランカの債務再編に関与すれば双方のためになると強調した。15日にインドネシア・バリ島で開幕の20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議を前に現地で会見した。

イエレン氏は、スリランカを含めた途上国の債務再編を巡り、他のG20メンバーにも中国の協力取り付けを働きかけてもらう考えを示した。(中略)

イエレン氏は「スリランカがこの借金を返済できないのは明白で、中国がスリランカの債務再編で積極的に各国に力を合わせてほしいというのが私の希望だ」と語った。

G20とパリクラブ(主要債権国会議)は2020年10月、多額の債務を抱えた途上国が新型コロナウイルスのパンデミックを乗り切れるように、債務救済に向けた「共通枠組み」を採択し、既にザンビア、エチオピア、チャドがこの枠組みに基づく支援を要請している。

ただ、世界最大の債権国である中国のほか民間債権者らが関与を渋っていることから、支援の動きがその後は進展していない。

イエレン氏は、ロシアのウクライナ侵攻以降に世界経済が悪化して多くの途上国がより厳しい経済状況に追い込まれている点を指摘した上で、「最も脆弱な国を助けるためにまだ多くの行動が必要になる。これが今回のG20会議で私が強調しようとしている重要なメッセージの1つだ」と発言。(後略)【7月15日 ロイター】
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こうした構図は中国と最も緊密な関係にあるパキスタンでも見られます。中国からの支援でインフラ整備を進めてきたパキスタンは国土の3分の1が水没する水害で、債務返済も困難な状況となっています。

パキスタンのミフタ・イスマイル財務相は18日、洪水が壊滅的な被害をもたらしているものの、同国が債務不履行(デフォルト)に陥る可能性は「絶対にない」と表明。経済安定化に向けた改革は軌道に乗っていると説明してはいますが・・・

****洪水被害のパキスタン、中国に債務軽減要請を 米国務長官****
米国のアントニー・ブリンケン国務長官は26日、洪水で壊滅的な被害を受けたパキスタンに対し、同国とパートナー関係にある中国に債務軽減を求めるよう呼び掛けた。

ブリンケン氏は米首都ワシントンでパキスタンのビラーワル・ブットー・ザルダリ外相と会談し、強力に支援すると約束。

一方で、「債務軽減・再編に向けた重要課題に中国も関与するようパキスタン側から働き掛けるよう求めた。それが実現すれば、洪水からの復興を早められるだろう」と述べた。

パキスタンにとって中国は経済・政治分野における重要パートナー。両国は、中国とインド洋を結ぶ540億ドル(約7兆8000億円)規模のインフラ整備事業「中国パキスタン経済回廊(CPEC)」を進めている。ただ、同事業は国内の反政府武装組織の攻撃対象となっている。

CPECを通じて中国は利益を得るのに対し、パキスタンは持続不可能な水準の債務を抱えることになると米国は繰り返し警告。しかし、パキスタンは耳を傾けてこなかった。

パキスタンでは先月、豪雨による洪水が発生し、国土の3分の1が水没した。死者は約1600人に上り、うち3分の1が子どもだった。700万人以上が避難を余儀なくされた。

米国は5600万ドル(約80億円)の人道支援のほか、航空機17機分の物資、長期支援の提供を表明している。 【9月27日 AFP】AFPBB News
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【中国 「一帯一路」を見直し、“バージョン2”へ】
ここのところ中国の金融機関は、「一帯一路」による融資の返済が滞る事例が相次ぐ状況で、新規の融資に慎重になる姿勢が見られていましたが、ここにきて国の政策としてもこれまでの「一帯一路」を見直す、“バージョン2”とも言える動きが出ています。

****中国に「一帯一路2.0」構想、問題噴出で方針転換****
融資慣行は「債務のワナ外交」との批判

中国が巨大経済圏構想「一帯一路」の見直しに着手した。影響力の拡大を狙い、アジアやアフリカ、中南米諸国に多額の資金を投じてきたが、ここにきて債務国の返済が行き詰まっており、軌道修正を余儀なくされている。政策運営に関与している複数の関係者が明らかにした。

世界経済の減速や金利上昇、インフレ高騰が足かせとなって、借り手の国家財政は急速に悪化。巨額の融資返済が滞っているほか、多数の開発案件が凍結に追い込まれている。

中国の融資慣行を巡ってはかねて「債務のワナ外交」との批判も上がっており、スリランカやザンビアなどの債務危機を助長しているとの指摘は絶えない。

こうした中、中国当局内では新規プロジェクトへの融資審査を一段と厳格化する「一帯一路2.0」構想が浮上した。またかたくなに拒否していた不良債権の計上や債務再編に対しても、幾分許容する方向へと傾いているという。関係筋が明らかにした。

習近平国家主席はかつて、一帯一路を「世紀のプロジェクト」と呼んではばからなかった。しかし、見直しを迫られている現状は、世界の秩序を塗り替えるという習氏が描くビジョンの限界を露呈させた。

習氏は昨年11月に開いた高官との協議で、一帯一路を取り巻く外部環境は「ますます複雑さを増している」との認識を表明。リスク管理の強化と他国との協力拡大が必要だと強調した。国営メディアが報じた。

中国の銀行はすでに、低所得国の新規案件に対する融資を大きく減らし、既存融資の対応に注力している。(中略)

途上国の債務問題解決のため、中国は先進国で構成する「パリクラブ(主要債権国会議)」といった多国間制度についても、長年の拒否姿勢を撤回する方向にかじを切った。足元では途上国の債務負担軽減に向けて20カ国・地域(G20)と協力している。

中国はこの過程で、国内銀行に対し、損失の受け入れを強要する可能性がある。中国は長年、債務元本の減免ではなく、返済期限を延長することで融資の焦げ付きに対応してきた。問題を「見て見ぬふり」する戦略だとされ、借り手の債務危機をむしろ長引かせる恐れがあると言われている。

中国国営メディアも、一帯一路に対する論調を落としている。かつては中国の融資によって借り手が受ける経済的恩恵を誇示していたが、足元ではリスク管理や国際社会との協力改善といった面を強調している。(中略)

習氏は12年に実権を握ると、中国の影響力を拡大するとともに、国産品を販売する市場を構築するため、自身の看板政策として一帯一路を推進し始めた。

15年に中国株急落で内需が低迷すると、中国は一帯一路を使って、鉄鋼や繊維など国内で過剰供給にあった製品の輸出拡大にまい進。中国輸出入銀行や国家開発銀行(CDB)は往々にして、中国サプライヤーからの調達を途上国向け融資の条件としていた。

中国外務省によると、中国はたった10年で、エクアドルやアンゴラなど約150カ国の開発プロジェクトに融資などを通じて約1兆ドル(約145兆円)を拠出。これにより、中国は初めて、世界最大の債権国に浮上した。

これに対し、途上国向けの融資や助成金で、米政府や政府系機関が占める割合は中国の半分にも満たない。ウィリアム・アンド・メアリー大学傘下の研究所エイドデータが分析した。2013年までの約10年は、米中はほぼ肩を並べていたという。

エイドデータの責任者、ブラッド・パークス氏は、対外融資のほぼすべてを支援として実施する米国とは対照的に、中国は「銀行」のように振る舞う傾向があると指摘する。例えば、エイドデータの分析によると、中低所得国対する支援1ドルにつき、中国は9ドルを融資として提供している。米国はそのまさに反対で、少なくとも支援9ドルに対して融資1ドルの割合だという。

17年頃までには、中国銀行業界の幹部の間で、回収の見込みがない案件への融資を強要されているとして政府への不満が高まっていた。内情を知る業界幹部らが明らかにした。

デフォルト(債務不履行)に陥った際に責任を問われないよう、「政策の指示の下で」行われた融資だと規制当局が明言しない限り、一部プロジェクトに対する支援を停止する構えを見せる銀行も出てきたという。

新型コロナウイルス禍がさらに借り手の圧力となっていた20年11月、中国はG20が支援する債務救済の国際的な取り組みである「共通枠組み」に加わることで合意した。

共通枠組みはパリクラブが準拠する原則の下に構築された。中国はパリクラブに参加するよう度重なる働きかけを受けてきたが、かたくなに拒否してきた経緯がある。

中国の銀行は借り手に対して、パリクラブが行うような他の債権者との債務再編の手続きから、自国の融資を除外するよう強く主張していた。デフォルトになった場合に、返済順位で中国を最優先の扱いにする狙いがあるとみられている。エイド・データのパークス氏によると、中国の融資契約の約75%にこうした「ノー・パリクラブ」条項が含まれている。

20年夏にはG20、パリクラブ、中国との間で昼夜問わず6週間に及ぶ協議が行われ、中国が共通枠組みに参加することで原則合意に達した。協議に詳しい関係者が明らかにした。習氏が正式に署名するのにさらに数週間を要したという。

それによると、中国が参加を決めた背景には、他の債権者と連携して取り組むのであれば、中国の銀行が自らの利益を守るよう主張した方が望ましいとの見方があった。

また中国の政府内では、共通枠組みに参加することで、面目をつぶすことなく、パリクラブを拒否してきた従来の姿勢から移行できるとの読みも働いているようだ。

ただ、国家開発銀行など国内大手銀行の株式を保有する財政省は、銀行による損失計上に警戒を解いていない。不動産市況の冷え込みで、銀行が多大な圧力にさらされていることで懸念が深まっているためだ。

一方、人民銀は新興国が金融危機を回避するために、中国は債務再編協議に一段と柔軟な姿勢で臨む必要があるとの立場を唱えている。関係筋が明らかにした。

人民銀内からは、米連邦準備制度理事会(FRB)による急ピッチの利上げを理由に、中国は行動すべきだとの指摘が上がっている。背景には、FRBの利上げでドルが独歩高の様相を強め、途上国の債務返済コストが上がっていることがある。

中国はチャド、エチオピア、ザンビアで債権者との交渉を進めており、一帯一路の新たなアプローチに対する試金石になるとみられている。

とはいえ、一帯一路が全面的に撤回される可能性は低い。来月の共産党大会で3期目続投を目指す習氏は、国際社会における中国の役割を拡大することが重要だとの考えを堅持している。政策運営に詳しい関係筋への取材や、習氏の最近の演説要旨から分かった。

問題の多い一帯一路だが、過去10年に多数の国々を中国の勢力圏に引き入れたことも事実だ。国連の採決では、借り手の多くが中国の意向に合わせて票を投じるようになった。中国が融資への消極姿勢を強めれば、一部の国にとっては中国マネーの魅力が薄れ、国際社会の意志決定において中国の影響力が後退することもあり得る。

米外交評議会(CFR)の上級研究員で、ソブリン債務専門家のブラッド・セッツァー氏は「中国が影響力を拡大する上で、一帯一路が重要な存在であり続けるには、新たな方策を見いだす必要があるかもしれない」と述べる。具体的には融資ではなく、助成金などの支援を拡大するといった措置が挙げられるという。

内情に詳しい関係筋によると、中国当局者はリスク軽減に向けた官民パートナーシップの構築、市場水準を下回る優遇金利での融資といった手段を通じて、一帯一路を持続可能な軌道に乗せる方策も探っている。さらに中国当局は、新規案件の融資でアフリカ開発銀行のような多国間機関との協力拡大にも、前向きな姿勢をにじませ始めているという。【9月27日 WSJ】
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イタリア総選挙  「極右」とも評されるメローニ氏が予想どおり勝利 EUにとって新たな火種

2022-09-26 23:02:06 | 欧州情勢
(26日、ローマで勝利宣言するメローニ氏【9月26日 読売】)

【EUに新たな不安の種】
予想されていたように、イタリア総選挙で旧ファシスト党の流れをくむ極右野党「イタリアの同胞」が上下両院で第1党となることが確実となり、同党の党首メローニ氏がサルヴィーニ氏の右派「同盟」とベルルスコーニ元首相率いる中道右派政党などとの右派連立で首相に就任すると思われます。

****イタリア極右野党「同胞」の第1党確実、ベルルスコーニ氏らとの右派連立政権誕生へ****
イタリア総選挙が25日、投開票された。旧ファシスト党の流れをくむ極右野党「イタリアの同胞」が上下両院で第1党となることが確実となった。右派の主要3党を中心とする連立政権が誕生する見通しで、「同胞」の女性党首が初の女性首相に就任する公算が大きい。

内務省の発表(開票率99%)によると、同胞の得票率は約26%。右派「同盟」とシルビオ・ベルルスコーニ元首相率いる中道右派政党などと合わせて、上下両院で過半数の議席を獲得することが確実な情勢となった。

「同胞」と両党の連立交渉が順調に進めば、セルジオ・マッタレッラ大統領がジョルジャ・メローニ党首(45)を首相候補に指名し、10月15日までに招集される新議会で首相に選出される見通しだ。

選挙は、前欧州中央銀行(ECB)総裁のマリオ・ドラギ首相の辞任に伴い行われた。「同胞」は、ムソリーニの支持者らが戦後に結党したネオファシズム政党「イタリア社会運動(MSI)」の流れをくみ、国益最優先を掲げる。

連立を組む見通しの2党はプーチン露大統領との関係が指摘され、対露を巡る欧州連合(EU)の結束が乱れかねないと懸念されている。【9月26日 読売】
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かつての弱小政党「同胞」メローニ氏が一躍トップに躍り出てきた理由は、大連立の前政権に参加しなかったことで不満を募らせた有権者の受け皿になったこと。

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21年に発足したドラギ政権は、同盟、フォルツァ・イタリア、民主党、五つ星などを糾合した大連立政権だが、「イタリアの同胞」の人気は、大連立に参加しない「唯一の野党」という立場を維持する戦略が奏功した。

左右の政策の違いを超えて団結した与党に対し、保守政党の「一貫性」を強調。18年総選挙で得票率は4%程度だったが、トップだった五つ星や、同3位だった同盟などポピュリズム(大衆迎合主義)色の強い政党の支持層を取り込んでいるとみられる。【8月1日 毎日】
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右派連合には、コンテ政権で副首相兼内務大臣として国政を左右した移民排斥の右派ポピュリストと評される「同盟」サルヴィーニ氏、かつて数々の女性スキャンダルを垂れ流し、一時は「過去の人」になったような感もあったプーチン大統領とも親しいベルルスコーニ元首相など“ユニーク”な面子が揃っていますが、「同胞」メローニ氏は旧ファシスト党の流れをくむ極右政党で、過去にはムッソリーニを称賛する発言もしているということで、欧州内にとどまらず世界的にも注目されています。

単に、党の出自や本人の経歴だけでなく、移民政策などでEUに対し批判的で「イタリア優先」を掲げるメローニ氏、ロシア・プーチン大統領とも親しい政治家が多い右派連合の登場で、対ロシア・ウクライナや移民対策などでEUの結束が維持できるのかが危ぶまれています。

****“親プーチン政権”誕生か イタリアで鍵握る女性****
EU(ヨーロッパ連合)の主要国でG7(先進7カ国)の一角でもあるイタリアが今、分岐点に立っている。その理由は、次の日曜日に行われる総選挙で、右派連合が勝利すると予想されている。

その中心にいるのが、ジョルジャ・メローニ氏。イタリア第一主義を掲げている。

イタリアの同胞 ジョルジャ・メローニ党首
「『メローニが首相になったらどうなるか』と、ヨーロッパでは心配しているようです。どうなるか? お楽しみは終わりです。イタリアはこれから国益を優先します」

イタリア初の女性の首相が有力視される時の人だが、考え方は極右。過去には、第2次世界大戦の独裁者・ムッソリーニを称賛する発言もしている。

さらに、選挙のあとに心配されているのが、ロシアとの関係。
2008年に史上最年少で閣僚に起用された、メローニ氏。この時の首相・ベルルスコーニ氏は、今回もメローニ氏と連合を組んでいて、ロシアのプーチン大統領とも親しい間柄。

右派連合には親ロシア派も少なくないため、国の政策がロシア寄りに傾くことが心配されている。EUに対しても、批判的な立場をとってきたメローニ氏。

結束してウクライナへの侵攻に反対していたEUに、新たな不安の種となるのだろうか。【9月22日 FNNプライムオンライン】
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ロシア・プーチン大統領との関係では、ベルルスコーニ元首相が“お友達”であるだけでなく、「同盟」サルビーニ氏も、過去にEU議会でプーチン大統領の顔をプリントしたTシャツを着てプーチン大統領を称賛したことも。

【「ファシズムとは決別した」と穏健発言で安全運転のメローニ氏 問題は「それは本心か?」】
なお、メローニ氏本人は「ファシズムとは決別した」と公言しています。

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(一党独裁を敷いたムソリーニの墓の炎を表現し、解党したネオファシスト政党と同じデザインのロゴマーク使用について)「イタリア右派の歴史的シンボルであって、ファシズムとはもはや何の関係もない」として、取り合っていない。

公約では子育て支援やインフレ対策のための減税などを打ち出している。本人はファシズムとは決別したと公言しているが、過去には欧州連合(EU)に懐疑的な姿勢を示したり、ロシアのプーチン大統領を称賛したりした。LGBTなど性的少数者や移民に対する排他的な主張から、EU内ではメローニ氏を「極右」とする見方が強い。【9月24日 日系メディア】
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メローニ氏は選挙中はEUとの協調、ウクライナ支持などで“穏健”な発言を行っていますが、多くが懸念するのは“これが本心ではないかもしれないという点”

****イタリア「新首相」メローニと右派三党連立政権の行方****
(中略)フィナンシャル・タイムズ紙のベン・ホールは、8月18日付け同紙掲載の論説‘The new face of Europe’s radical right is on display in Italy’で、メローニは欧州連合(EU)、大西洋同盟、ロシアと戦うウクライナへの支持を誓っているが、彼女の右派三党連立政権は欧州の懸念を招かざるを得ない、と指摘している。要旨は次の通りである。

・FdI(「イタリアの同胞」)に対する支持は2018年の選挙では4%に過ぎなかったが、以来、ドラギの政権に参加した他の右派政党の犠牲において6倍になった。

メローニの選挙戦の目的は、彼女は過激主義者ではなく、彼女はイタリアの安定と欧州におけるイタリアの地位を保護するだろうと、有権者とイタリアのエスタブリッシュメントを安心させることにある。

メローニは、FdIは英国の保守党、米国の共和党、あるいはイスラエルのリクードに近いと断言する英語、仏語、西語のビデオを公開した。右派連合の共通政策は大雑把であるが、EU、大西洋同盟、ロシアの侵略に対するウクライナの抵抗への支持を誓っている。

・FdIがファシスト政党であるというのは言い過ぎだが、同党にはファシストがいる。若き日のメローニがムッソリーニは優れた政治家だと称賛している映像もSNSに流れている。

・イタリアには大統領、中央銀行、財務省のような強力な独立した機関があり、ポピュリストの政治家に対するテクノクラートのガードレールとして機能している。

しかし、行政権に対する最も重要なチェック機能を果たす大統領は脅威に晒されている。右派連合は憲法を改正し、フランスに類似の大統領の直接選挙制とすることを欲している。

・ムッソリーニを称賛する人物がイタリアの首相に選ばれることはEU各国に深い懸念を生むであろう。大規模な財源の裏付けのない減税、EUの復興基金によるイタリアの2000億ユーロの復興計画の「修正」は更なる懸念の材料である。

メローニは規律があり分別があると自身を売り込んでいる。イタリアと欧州にとっては、三人のポピュリストの指導者から成る政府はそのようには思えないであろう。

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メローニのFdIは傍流の政党だった。選挙に勝って首相に就任する見通しとなるに及んで、彼女は自らの政党を伝統的な保守の政党に衣替えし、その政治的立場に対する国際的な懸念を払拭することに努力している様子である。

8月11日に公開されたビデオ(彼女は仏語、英語、西語を流暢に話している)で、彼女は次の諸点を述べている。

*ファシズムについて:「イタリアの右派は既に数十年の間ファシズムは歴史に手渡してしまっており、民主主義の抑圧と恥ずべき反ユダヤ法を紛れもなく糾弾している」。われわれは確固たる言葉をもって反民主主義的な如何なる漂流にも強烈に反対している。

*EUについて:右派の勝利は惨事であり権威主義への転向、ユーロからの離脱に至る、あるいはその他のナンセンスが言われている。どれも真実ではない。ドラギ政権によって敷かれたEU復興基金へのアクセスのロードマップを危険に晒すことはしない。

*ウクライナについて:「西側陣営におけるわれわれの立場には一点の曇りもない。われわれはウクライナに対するロシアの残忍な侵略を、何の躊躇もなく、糾弾し、欧州および国際場裏におけるイタリアの立場の強化を野党の立場から助けて来た」。

*政治的立場について:「私は欧州議会の欧州保守改革党を率いて来たが、この党は英国の保守党、米国の共和党、イスラエルのリクードと価値観を共有している」。

これらは、いずれも結構である。しかし、問題は、これが本心ではないかもしれないという点だ。

8月11日に公表された右派三党の共通政策も欧州統合の支持、北大西洋条約機構(NATO)のコミットメントの尊重、ウクライナ支持を謳っているが、同盟のサルヴィーニがユーロからの離脱を主張し、プーチンを称賛し、ウクライナへの武器支援に反対したばかりだ。【9月9日 WEDGE】
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対中国に関しては、メローニ氏は従来政権の親中国姿勢からの脱却を掲げています。

****伊・メローニ党首、台湾支持 「親中」脱却の構え****
イタリア総選挙で強硬右派「イタリアの同胞」を勝利に導いた女性のメローニ党首(45)は、「ファシストの末裔(まつえい)」と異端視された党のイメージを和らげ、支持拡大に成功した。外交では、北大西洋条約機構(NATO)を軸とした西側の結束を主張し、親中国姿勢からの脱却を掲げている。

中国の威嚇非難
メローニ氏は総選挙の直前、台湾の中央通信社のインタビューで、右派政権が実現すれば「台湾に強い関心を向けることになる」と述べ、台湾支持を明言した。中国による台湾への軍事威嚇を非難し、欧州連合(EU)が対中圧力を強化すべきだと訴えた。

イタリアは2019年、当時のコンテ政権が先進7カ国(G7)で唯一、中国と巨大経済圏構想「一帯一路」の覚書を結んだが、メローニ氏は、覚書の更新について「明日署名が必要だとすれば、そんな政治的状況ではない」と否定的な立場を示した。

同党のクロセット元党首は本紙に、「わが党は英国の保守党、安倍晋三首相時代の自民党に近い立場だ」と述べている。(後略)【9月26日 産経】
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【対ロシア制裁で苦境の欧州経済】
メローニ氏が掲げる“従来とは異なる政治”が有権者受けするのは、イタリアの厳しい経済事情、それに対し既存政治が有効に対応できなかったことがあります。

****ガス代が前年の8倍の1億円超に…  ウクライナ侵攻でイタリアでエネルギー価格が高騰****
長期化するロシアによるウクライナ侵攻。その影響でヨーロッパはエネルギー価格の高騰に直面しています。間もなく行われるイタリア総選挙にも影響を与えそうです。(中略)

対ロシア制裁の影響でヨーロッパではガスの使用制限などによりエネルギー価格が高騰。市民生活を直撃しています。

イタリアのナポリ。窯から取り出された熱々のピザにはトマトソースがふんだんに使われていますが…
レストランオーナー 「原材料が値上がりしています。特にたくさん使用するトマトですね、ピザに必要ですから」

イタリア料理に欠かせないトマト。日本など45か国に製品を輸出しているこちらの加工工場では、夏の太陽をたっぷり浴びた大量のトマトを7月中旬から2か月ほどかけて、一気に瓶詰や缶詰にしていきます。トマトを茹でる際に必要なのがガスですが…

トマト加工・販売会社社長 「ガス代が去年7月の12万ユーロ(約1670万円)から今年7月は97万8000ユーロ(約1億3600万円)になりました。8倍以上ですよ、とても失望しました」

消費量が去年より10%増えたのに対し、ガス代はなんと8倍!日本円で月額1億円を超えたのです。その影響もあり、こちらのトマトピューレは60%以上、値上げされました。

また、一般家庭でもこの秋・冬はガス代がおよそ30%、電気代が40%上昇の見込みです。街中では…

記者 「こちらのたばこ店のレジの前には、こんな表示が置かれています。去年7月の電気代が600ユーロ(約8万6000円)。今年は1500ユーロ(約21万5000円)と、2.5倍になったと窮状を訴えています」

そんななか、イタリアでは25日、注目の総選挙が実施されます。最新の世論調査では、「イタリア優先」を掲げ、本人はタカ派とされるメローニ氏ら、中道右派連合が優勢で、ドラギ現首相を支持してきた中道左派などを引き離しています。

国民が政府に最も求めることは、「インフレ対策」と「エネルギー危機」への対応で、その背景にあるロシアへの経済制裁については、世論が分かれています。

また、ウクライナへの「支援疲れ」が、国民の選択により影響を与える可能性も指摘されていて、右派政権誕生後のイタリアの立ち位置が注目されています。(後略)【9月23日 TBS NEWS DIG】
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このあたりの経済苦境は他の欧州諸国も同様です。

****ドイツを襲うロシアの天然ガス供給中止 広がる企業倒産の波****
ドイツのデュッセルドルフを拠点にトイレットペーパーを製造するハクレは1928年創業の老舗企業だ。それが今年夏のガス料金高騰で、あっさり倒産してしまった。

ロシアが欧州への天然ガス供給を中止したことで、ハクレのようなエネルギー集約型産業は特に大打撃を被っている。

「あっという間の出来事だった。電気とガスの料金が爆発的に上昇し、とてもではないが顧客に転嫁するのが追い付かなかった」とハクレのマーケティング責任者、カレン・ユング氏はロイターに語った。

8月以降、同社のように債務超過に陥る企業が急増し、欧州一の経済大国ドイツを倒産の大波が襲うのではないかとの恐れが広がっている。

ガス料金の高騰、数十年ぶりのインフレ、リセッション(景気後退)の恐れ、冬の燃料不足といったリスクから国民を守ろうと尽力するショルツ政権に、企業倒産という重圧が加わった格好だ。

ドイツの8月のエネルギー価格は前年同月比139%上昇した。
ハーベック副首相兼経済・気候保護相は今月のテレビインタビューで、生活に苦しむ顧客が商品を買わなくなったからといって企業が必ずしも倒産するわけではない、と発言して炎上した。

政府は企業支援策に数百億ユーロを投じており、国内最大のロシア産ガス輸入企業であるウニパーについては救済に乗り出した。

しかしハクレは、自社のような「ミッテルシュタント」への保護拡大を訴える。ミッテルシュタントは多くが家族経営の中小企業で、ドイツ経済のエンジン役を果たしてきた。

「システム全体に影響を与える巨大企業を見守り、解決策を探すことはもちろん重要だ」とハクレのユング氏。「しかしドイツの雇用の大部分をミッテルシュタントが担っているのも事実であり、そのわれわれが真に解決策を必要としている。ミッテルシュタントが未来もこのドイツで生き残れるように」と語った。

こうした懸念に応え、ハーベック経済相は中小企業への支援拡大を約束。ブッシュマン法相はエネルギー高に苦しむ企業を支えるため、債務超過基準の緩和を計画している。(後略)【9月26日 Newsweek】
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【民主主義は正しく機能しているのか?】
なお、既存政党が極右政党に敗れるというのは、北欧スウェーデンでも見られた現象です。

****スウェーデンで右派過半数に 総選挙で敗北の首相辞意****
北欧スウェーデンのアンデション首相は14日、辞意を表明した。11日に実施された議会(一院制、定数349)総選挙で反移民を掲げる極右の野党、民主党を含む右派勢力の過半数獲得が確実となり、自身が率いる与党、社会民主労働党を中心とする中道左派勢力の敗北を認めた。

ロシアのウクライナ侵攻を受け、5月に申請した北大西洋条約機構(NATO)加盟は大半の政党が支持しており、政権が変わっても方針転換はないとみられる。(後略)【9月15日 共同】
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現代民主主義においては、既存政治を激しく攻撃し、明快・過激な政策を掲げる政党が有権者の注目を集めやすいという流れがあるようにも。それは民主主義の本来の姿なのか、「失敗」なのか?
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ロシア  部分的動員令で急増する出国者  受入れ対応にEU内で差異 独は受入れ表明

2022-09-25 21:34:36 | 欧州情勢
(ロシアの首都モスクワで、ウラジーミル・プーチン大統領が発表した部分的動員令に反対するデモに参加し、警察に拘束される人(2022年9月21日撮影)【9月23日 AFP】)

【「動員令」以前から欧州で問題となっていたロシアからの入国者の扱い】
ロシアの動員令によって、徴兵を忌避してロシアから出国する者が急増していることに関して、多くの報道がなされていますが、「動員令」以前からロシア人の欧州への入国についてはEU内で問題となっていました。

安全保障上のリスクに加え、まるでウクライナで戦争が起きていないかのように、観光や買い物のために旅行する裕福なロシア人が多く見られるようになっていることへの反発・批判からのことです。

特に陸路の玄関口となるバルト三国のエストニアや北欧フィンランドには強い批判があり、独自の対応もとられました。

****エストニア、一般のロシア人のビザ取り消しへ EU渡航困難に****
エストニアはこれまでにビザを取得した5万人以上のロシア人に対し、週内に国境を閉鎖する。こうした措置を取るのは欧州連合(EU)加盟国としては初めて。これにより一般のロシア人がエストニアからEU域内に入るのが難しくなる。

エストニアのレインサル外相はロイターに対し、政府は全てのロシア人に対し国境を完全に閉鎖することを検討していると述べた。エストニア政府報道官によると、過去に発行されたビザでの渡航を禁止するのはEU加盟国ではエストニアが初めて。

毎日約2500人のロシア人がエストニアに入国しており、その約半数が欧州域内をビザやパスポートなしで自由に行き来できる「シェンゲン協定」に基づくビザを取得しているという。

ウクライナのゼレンスキー大統領は4日前、EU加盟国に対しロシア人に対するビザ発行を禁止するよう呼びかけていた。【8月17日 ロイター】
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****フィンランド、ロシア人向けビザ発給制限へ 9月1日から****
フィンランドは16日、9月1日からロシア人へのビザ発給数を削減すると発表した。フィンランドに陸路で入国し、その後フィンランドのヘルシンキ・ヴァンター国際空港から欧州諸国に向かうロシア人観光客が急増している状況を踏まえた措置という。

フィンランド外務省によると、ロシアでのビザ申請予約を1日当たり1000件から500件に半減し、観光ビザも100件に限定する。(中略)

ウクライナのゼレンスキー大統領は12日、EU諸国に対し、EUが誰でも入れる「スーパーマーケット」にならないよう、ロシア人のビザ取得を禁止するようあらためて呼びかけた。【8月17日 ロイター】
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理念の問題で言えば、EUが批判しているのはプーチン政権であり、ロシア人一般ではないということもありますし、プーチン政権の圧力・弾圧を逃れてくるロシア人への対応もあります。

一方、一部の国が先行する状況でEUとしても統一的な対応に迫られ、ロシア人へのビザ発給を厳格化することとしました。

ただし、ウクライナやバルト3国のほか、ポーランドやフィンランドなどが主張していたロシア人向けのビザ発給の全面禁止については合意できませんでした。

****EU、ロシアとのビザ発給円滑化を完全停止 ウクライナが求めた全面禁止は合意できず****
欧州連合(EU)の外相に当たるボレル外交安全保障上級代表は31日、EUがロシアと合意していたビザ(査証)発給円滑化措置を完全に停止することで合意したと明らかにした。ただ、ウクライナのほか、一部EU加盟国が求めていた全面的なビザ発給の禁止については合意に至らなかった。

EUはプラハで2日間にわたり外相会議を開催。ボレル上級代表は同会議後の記者会見で「ロシアとのビザ発給円滑化協定の完全停止で合意した」とし、「これにより、EU加盟国が新たに発給するビザの数は大幅に減少する」と述べた。

バルト3国のほか、ポーランドやフィンランドなどが主張していたロシア人向けのビザ発給の全面禁止については、加盟国間の見解の相違が大きすぎたことで合意に至らなかった。ただ、ボレル上級代表は、ビザ発給円滑化の停止自体で実質的な影響を及ぼすことができるとの見方を示した。

ボレル氏によると、7月中旬以降、ロシアから近隣諸国との国境を通過する人が大幅に増加。「近隣諸国にとって安全保障上のリスクとなっている」とし、「これに加え、ウクライナで戦争が起きていないかのように、観光や買い物のために旅行するロシア人が多く見られるようになっている」と述べた。

欧州対外国境管理協力機関(フロンテックス)によると、ロシアによるウクライナ侵攻開始以降、100万人を超えるロシア人が陸路で国境を越えた。大部分がフィンランドとエストニアを経由してEU域内に入ったという。【9月1日 Newsweek】
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****EU、ロシア人のビザ厳格化=優遇措置の停止承認****
欧州連合(EU)は9日、ブリュッセルで開催した臨時の閣僚理事会で、ロシア人によるビザ取得を厳格化する提案を承認した。ウクライナ侵攻を続けるロシアに対する圧力を強めるのが狙い。これに伴い、ロシア人によるEU域内への渡航は12日から事実上制限される見通し。

ロシア側は反発しており、ロイター通信によると、報復措置を講じる考えを示した。

提案によると、EUはロシアと2007年に結んだビザ申請に関する優遇措置を停止する。ビザ取得費用が従来の2倍以上になり、手続きも煩雑になる。【9月9日 時事】
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【「動員令」で急増したロシア出国者 バルト三国・フィンランドは入国禁止の方向】
そこへもってきての「動員令」でした。

****フィンランド、ロシアからの入国制限へ 「動員令」後に倍増****
フィンランドの国境警備当局は23日、ウクライナに侵攻するロシアが部分的動員令を出して以降、フィンランドに入国するロシア人の数が倍増しているとAFPに明らかにした。フィンランド首相は、ロシア人の入国者数を制限する構えを示している。

同当局によると、陸路で国境を越えてフィンランド入りしたロシア人は、今週初めには3100人だったのに対し、22日には6470人に上った。ただし、新型コロナウイルスの流行以前に比べると少ないという。

サンナ・マリン首相は22日、「ロシア人の観光と移動は、フィンランドの通過のみの場合も含めて、中止させなければならない」と述べていた。

首相は、ロシアが部分的動員令を発表した後に「他の国々、例えばバルト諸国やポーランドは、安全保障上のリスクを外国人の入国阻止の論拠としている」とし、ロシア人旅行者がもたらす安保上のリスクを「再評価」する必要があると述べた。

フィンランドは9月、ロシア人向けの観光ビザ(査証)の発給を大幅に制限。だが欧州諸国間で出入国審査なしに国境を越えることを認めるシェンゲン協定の加盟諸国が発給したビザを持つロシア人は、引き続きフィンランドに入国している。【9月23日 AFP】
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****ロシア部分動員令受け出国者急増、フィンランドは入国禁止検討*****
ロシアのプーチン大統領が21日にウクライナでの戦闘継続のために部分的な動員令に署名したことを受け、招集される可能性のある男性の出国が増加している。フィンランドは22日、大部分のロシア人の入国禁止を検討していると発表した。

フィンランドはロシアと1300キロにわたって国境を接している。ロシア第2の都市サンクトペテルブルクから車で約3時間の距離にあるバーリマーの境検問所にはフィンランドに入国しようとする車が押し寄せ、国境当局によると、3車線ある道路で最大400メートルにわたり渋滞が発生した。

ジョージアへの出国も増えており、ロシアとジョージアとの間の国境検問所沿いでも渋滞が発生している。(中略)

フィンランドと同様に欧州連合(EU)加盟国でロシアと国境を接するエストニア、ラトビア、リトアニア、ポーランドは19日からロシア人の入国を禁止。バルト3国は21日、部分動員令による招集を逃れるロシア人に保護は提供しないと表明した。【9月23日 ロイター】
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【ロシア国内の抵抗運動と当局の弾圧】
ただ、ロシア国内では動員令に対する激しい抵抗が起きており、一方でロシア当局は抗議デモ参加者を狙い撃ちして徴兵することで弾圧しています。

****ロシア、部分動員令への抗議デモ続く 拘束者2000人超える****
ロシアでは、プーチン大統領がウクライナ侵攻を巡り21日に出した部分動員令への抗議デモが全土で続き、治安当局による拘束者は2000人を越えた。招集兵の戦地派遣が始まる中、状況を悲観した国民がフィンランドやジョージアなどを目指す動きも見られる。

独立監視団体OVDインフォによると、24日には33の町で計798人が拘束された。

政府系メディアからも批判的な声が上がる。国営放送RTのある編集者は、招集令状が対象条件と合致しない男性に送られるといった問題が「人々を激怒させている」と指摘した。

ロシア国防省は23日、「特定のハイテク産業や金融システムの稼働を保証する」ため、重要産業で働く人の招集を免除すると表明。IT、電気通信、金融のほか、「システム上重要な」報道機関などが対象とされている。

ニューヨークで開催された国連総会に出席しているラブロフ外相は24日の会見で、なぜこれほど多くのロシア人が出国しているのかと質問され、移動の自由があると指摘した。【9月25日 ロイター】
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“プーチン氏演説の数時間後に訪問…対象外の大学生に令状、糖尿病の63歳も招集”【9月25日 読売】

動員規模についても、セルゲイ・ショイグ国防相が21日に言及した30万人にとどまらず、100万人規模との報道が相次ぎ、国民の不満は高まっています。

****「戦争に行くか、投獄か」 ロシア、逮捕のデモ参加者に選択強要****
ロシアの予備役動員令に抗議するデモに参加したミハイル・スエチンさんは、拘束されることは予測していたが、まさか自分が反対している軍への入隊を命じられるとは思いもしなかった。

ウラジーミル・プーチン大統領が21日、国民に向けたテレビ演説で、第2次世界大戦以来となる動員令を発表すると、国内では抗議が巻き起こった。

首都モスクワでこれまでにも反政権デモに参加してきたスエチンさんはAFPの電話取材に、「いつものように逮捕され、警察に連行され、出廷させられることは覚悟していた。ところが、『お前はあす戦争に行く』と言われ驚いた」と語った。

独立系人権団体「OVDインフォ」によると、21日に国内各地で行われたデモでは、1300人以上が逮捕された。モスクワの少なくとも15か所の警察署では、拘束された男性が徴兵用紙を手渡されたという。

大統領府のドミトリー・ペスコフ報道官は翌朝の記者会見で、こうした手続きは「法律違反ではない」と擁護した。

動員令発表の前日には、招集令状を拒否した人や脱走兵への処罰を強化する法案がロシア議会を通過。まだ新法として成立はしていないが、違反者に5〜15年の懲役刑を科す内容となっている。

■「戦争に行くか、10年間投獄か」
警察署に連行されたスエチンさんは一人で部屋に連れて行かれ、翌日に徴兵事務所に出頭することを求める令状に署名するよう圧力をかけられた。警察官は、「これに署名してあす戦争に行くか、10年間投獄されるかのどちらかだ」と脅したという。

スエチンさんは弁護士の助言に従い、署名を拒否。翌朝5時ごろに釈放された。だが警察は、重大事件を担当するロシア連邦捜査委員会に対し本件を通知するとし、スエチンさんは「非常にまずい」状況に置かれると警告した。

だが、招集に応じた人の未来がこれよりも明るいわけではない。
先週18歳になったばかりの大学生アンドレイさんは、モスクワでのデモで拘束された後、軍に招集された。

アンドレイさんはAFPに対し、警察署では署名を拒否する人々が警官から「脅迫」を受けていたと証言。「自分が逃げられないのは明らかだった」ことから、徴兵事務所への出頭を誓約する文書に署名してしまったと語った。

■両親には伝えず
ロシアのセルゲイ・ショイグ国防相は21日、学生は動員しないと約束しており、大学に入学したばかりのアンドレイさんは招集されないはずだった。「ロシアは無限の可能性を秘めた国だとは良く言ったものだ」とアンドレイさんは皮肉った。

22日の徴兵事務所への出頭には応じないことにしたが、今は弁護士を探しているところで、今後どうするかは分からないという。

 親には、心配をかけたくないとの理由でまだ打ち明けていない。「自分がどうなるのかがより見えてきたら、言うと思う」 【9月24日 AFP】
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****「死にたくない」 ロシア人男性、動員令逃れ次々出国****
母国に妻子を残し、小さなかばん一つでアルメニアに到着したドミトリーさんは、ウクライナ侵攻への従軍を避けるためにロシアを出国した多数の人々の一人だ。

ドミトリーさんはAFPに「戦争には行きたくない」と吐露。「こんな無意味な戦争で死にたくはない。これは同胞殺しの戦争だ」と訴えた。

ウラジーミル・プーチン大統領が今週、30万人の予備兵動員を決定したことで、同国では国民の国外脱出が相次いでいる。

17歳の息子と共にアルメニアの空港に到着したセルゲイさんは、途方に暮れて疲れ果てた様子で「ロシアでは誰もが国を離れたくなるような状況だ」と証言。自身が「動員を理由に」逃れてきたことを認めたが、名字は明かさなかった。

アレクセイさんは「控えめに言っても、21世紀に戦争に行くなんて間違っている」と主張。将来、帰国できるかどうかは「状況次第だ」とした。

モスクワ発の便でアルメニアの首都エレバンに到着した人々の大半は、兵役対象年齢の男性で、多くの人は取材に消極的だった。

安全上の理由から匿名を希望した男性は、動員令に「ショックを受けた」と説明。「この戦争を支持している人はほとんどいない」とし、「とても痛ましい。すぐに全部終わってほしい」と語った。

■ロシアは「偽情報」と否定
ロシア大統領府は22日、招集対象の国民が出国を急いでいるとの報道を「偽情報」と否定。だが、ロシアからアルメニア、アゼルバイジャン、ジョージア、カザフスタン、キルギス、タジキスタンといった近隣の旧ソ連諸国に向かう空の便は、向こう1週間にわたりほぼ満席となっている。

ロシアと国境を接するフィンランドの入管当局は22日、動員令の発表後にロシアからの入国者が増えたことを認めたが、その数は比較的低い水準を保っていると強調した。

フィンランド・バーリマーのロシア国境検問所では同日午後、入国待ちの車が150メートルの列をつくっていた。モスクワから到着した男性はAFPに対し、自身は招集対象だと説明。もともと10月までにロシアを出国する計画だったが、動員令を受けて予定を早めたと語った。【9月23日 AFP】
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抗議デモを行っているロシア若者に敢えて苦言を呈すれば、これまで地方や少数民族から徴兵され、モスクワなど大都市からの徴兵が控えられてきたなかで、「自分たちには関係ない」と無関心を装ってきたことのツケが回ってきたとも言えます。「無関心」は将来自分の首を締めることになります。

【ドイツは受入れ表明】
こうした状況を受けて、欧州側にもドイツのようにロシア脱出者受入れを表明する国も

****ドイツ、ロシア脱出者の受け入れ表明****
ロシアで、ウラジーミル・プーチン大統領が出した部分的動員令から逃れるため国外へ脱出する人が相次いでいると伝えられたことを受け、ドイツの閣僚2人は22日、ロシアの脱走者を受け入れる用意があると表明した。

日刊紙フランクフルター・アルゲマイネが公開したインタビューの抜粋によると、ナンシー・フェーザー内相は「深刻な弾圧を受ける恐れがある脱走者は原則、ドイツで国際保護を受けることができる」と説明。「プーチン政権に勇敢に立ち向かい、そのために大きな危険にさらされる人は誰でも、政治的迫害を理由に亡命を申請することができる」と述べた。

またマルコ・ブッシュマン法相はツイッターに、「部分的動員」というハッシュタグを添え、「多くのロシア人が祖国を離れているようだ。プーチン氏の路線を嫌い、自由民主主義を愛する人は誰でもドイツで歓迎される」と投稿した。

ドイツは、ロシアによる侵攻を逃れたウクライナ人約100万人に加え、ロシアの反体制派も受け入れている。フェーザー氏によると、これまでに多数のジャーナリストを含む反体制派438人が、迅速化された保護申請手続きを利用した。【9月23日 AFP】
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「動員令」以前から、プーチン政権の弾圧を逃れてくるロシア人を拒否していいのか・・・という議論がありましたが、「動員令」によってその問題が表面化しています。

“バルト3国は21日、部分動員令による招集を逃れるロシア人に保護は提供しないと表明”
一方、ドイツ法相は「プーチン氏の路線を嫌い、自由民主主義を愛する人は誰でもドイツで歓迎される」と。

これまでのロシアとの距離感、ロシアの脅威の切実さなども反映した差異です。
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日中国交正常化50周年 今のナーバスな状況 時代を動かした熱意 中国残留孤児の問題

2022-09-24 22:27:54 | 日本
(日中国交正常化交渉に臨む田中角栄首相と周恩来首相【2015年7月29日 DIAMONDonline】)

【政治情勢とコロナでナーバスな雰囲気のなか、50周年記念イベント開催】
今月29日に日中国交正常化から50周年を迎えるということで、その関連ニュースがいくつか報じられています。

****日中行事ウルトラマンショー中止 コロナ対策が困難と説明****
北京のショッピングモールで24日に始まった日中国交正常化50周年の記念イベントで、在中国の日系企業が中心となり計画していたウルトラマンのショーが中止となった。中国側が求める新型コロナウイルス対策への対応が難しいためだと説明している。

当初は、ウルトラマンと怪獣がメインステージで約10分のパフォーマンスを繰り広げる計画で、24日に2回、25日に1回予定していた。イベント関係者はショーが「争いを想起させる」ため中止になったと話していたが、説明を変えた。
 
イベントの実行委員会は、ウルトラマンのグッズをプレゼントする抽選会に変更した。【9月24日 共同】
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記事にあるように、当初は中止理由として「争いを想起させる」と説明されていました。
なぜ理由が変わったのか・・・よくわかりませんが、別報道によれば、音楽パフォーマンスで予定していた「剣の舞」のビデオ上映も「争いを想起させる」という理由で変更が求められたとか。

少なくとも、50周年を迎えて“お祭りムード”と言うことではなく、台湾問題で日米と中国の対立が強く意識される雰囲気のもとで、ナーバスな感じがうかがえます。

微妙な政治情勢で、中国当局の開催許可が出たのは今月に入ってからのこととか。
“8月下旬、新型コロナに感染した岸田文雄首相に習近平国家主席が見舞いの電報を送ったことで、「日中関係を落ち着かせ、コントロールしようとする中国指導部のシグナル」(日中外交筋)との受け止めが広がった。”【日系メディア】とのこと。 岸田首相のコロナ感染も無駄ではなかったようです。

上記のように“ナーバス”な雰囲気ではありますが、10年前は尖閣国有化に反発する反日デモで記念行事どころではなかっただけに、今回記念イベント開催が実現しただけでも素直に喜びたい・・・という関係者の本音も。

****在中日系企業団体が北京で日中50年記念イベント****
在中国の日系企業などは24日、北京市中心部のショッピングモールで日中国交正常化50年の記念イベントを開いた。

現地の中国人に日本文化に興味を持ってもらうことを狙っており、垂秀夫(たるみ・ひでお)駐中国日本大使は開幕式で「時間がかかっても、国民レベルでの相互理解を通じて信頼を醸成していくことが、日中関係打開の王道であると信じている」と強調した。

中国に進出する日系企業の団体である中国日本商会などがつくる「日中国交正常化50周年記念事業在中国実行委員会」と、中国外務省傘下の中国公共外交協会が共催した。開催に当たっては、中国で事業を行う日系を中心とした企業から協賛金を募って約600万元(約1億2千万円)が集まった。

開幕式で、中国日本商会の池添洋一会長は「新型コロナウイルスの影響などでイベントの準備は困難に直面したが、日中双方の関係者が協力することで困難を克服して開幕を迎えることができた」とあいさつした。

開幕式には、中国側から中国外務省の劉勁松(りゅう・けいしょう)アジア局長や、中日友好協会常務副会長の程永華(てい・えいか)前駐日大使らが出席した。

イベントは25日までの2日間。会場には、ホンダの電気自動車(EV)など日本の商品を展示しているほか、日中両国の料理を組み合わせた創作料理の紹介なども実施。

24日には会場前に行列ができ、モールの上階から会場を興味深そうにのぞき込む親子連れらの姿も目立った。同日午前には会場で安全検査を実施していたが、午後には検査をなくして自由に入場できるようにした。

イベント開催にあたっては、日中関係の難しさが影を落とした面がある。中国公共外交協会との共催は、今月に入りようやく決まったという。また、音楽のパフォーマンスで予定していた「剣の舞」のビデオ上映は中国側に変更を求められた。「争いを想起させる」という理由だったといい、関係者は「コロナ対策と政治的な要素に関して、中国側はかなり神経をとがらせている」と指摘する。

垂大使は24日、産経新聞などの取材に対し、日中関係に関して「民間による役割は非常に重要で大きい」と指摘。その上で「中国にいれば『両国関係の基礎は民間にある』とよく耳にするが、そのことを実感するのは難しい。両国の政治関係が悪化した場合、真っ先に影響を受けるのは民間の往来や交流、活動だ」と懸念した。【9月24日 産経】
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【李克強首相 日本の経団連の会長らとオンライン会談】
50周年を前に、李克強首相は日本の経団連の会長らとオンラインで会談し、関係拡大を訴えています。

****中国首相 経団連と会談 日中関係の発展と中国への投資拡大訴え****
中国の李克強首相は日本の経団連の会長らとオンラインで会談し、両国関係の長期的な発展や中国への投資の拡大などを訴えました。

国営の中央テレビによりますと、22日に経団連の十倉会長らとオンラインで会談した中国の李克強首相は、「あと数日で国交正常化50周年を迎える。中日は互いの発展を客観的かつ理性的に見つめ、中日関係が長く安定的に続くよう推進しなければならない」と訴えました。

その上で、「互いに尊重して相違点を適切に処理し、平和な外部環境と安定した周辺環境を守り、中日と地域国家が共に発展することを望む」と述べました。

また、新型コロナの感染拡大やウクライナ情勢などを念頭に、「今年は予想を上回る要因の影響で中国経済の下押し圧力が強まっているが全体的には回復基調だ」と強調。

「市場化、法治化された国際ビジネス環境を構築して透明で予測可能な監督管理ルールを明確にし、知的財産権を厳格に保護する」として、中国市場に積極的に投資するよう呼びかけました。

さらに李首相は、両国の協力関係拡大のため、RCEPの有効活用や適切な新型コロナ対策を行うという前提のもと、日本との直行便を増やす考えも示しました。【9月22日 TBS NEWS DIG】
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【お膳立てがない異例の交渉 政治家の熱意が時代を動かす】
日中国交正常化当時のエピソードで、久しぶりに田中眞紀子氏もメディア登場。

****50年前の日中国交正常化 田中角栄・周恩来会談 娘の眞紀子氏が披露****
毒を盛られるかもしれないから、眞紀子は連れて行けない。50年前に日中国交正常化を実現させた田中角栄元総理。当時の“命がけの覚悟”のエピソードを、娘の眞紀子氏が披露しました。

田中角栄元総理の長女・眞紀子氏は、22日に都内で開かれた日中国交正常化50周年を祝うレセプションであいさつ。東西冷戦の真最中に中国へと渡った父親の思いを紹介しました。

「夢は眞紀子を連れて世界の要人に会わせることだ」と語っていた角栄氏。ただこの時は、「中国は駄目だ」と言われたといいます。「あれ、約束が違う」と思う眞紀子氏に、角栄氏は。

「これは命がけだ。相手があるし、中国は数千万の人たちが日本によって殺されている。お父さんが行って、毒を盛られるかも、切られるかもしれない。お父さんは議員なんか辞めても死ぬ覚悟で本当に行くんだ。誰かがやらなきゃいけないんだ。眞紀子は一人っ子だから、2人で殺されたり毒を盛られたら、ご先祖に申し訳ない。将来、お前たちの社会が自由に笑顔で交流できる時代を作るためだ」と語ったといいます。

また、角栄氏は交渉相手だった当時の中国の首相・周恩来氏を高く評価していたといいます。

「世界の要人、あらゆる国の人と会ったけれど、周恩来は最高だったと。素晴らしかったと言っていました。私は2人とも本当に英明な政治家であったと思うし、肝胆相照らす(関係だった)」

眞紀子氏は、角栄氏から聞いた首脳会談のエピソードも披露。

周恩来氏は角栄氏に対し、「あなたが命をかけて来てくれたのはわかっているけれど、何千万の中国国民のほとんどは、あなたの訪中を歓迎していませんよと。その前提で交渉しましょう」と切り出したということです。そんな周恩来氏について、角栄氏は「あれだけのこと、事実をスパッと言うんだと、気に入ったね」と振り返っていたといいます。

この日行われた国交正常化50周年のレセプションには、中国の孔鉉佑大使ら300人以上が出席したということです。

孔大使は「歴史のバトンはわれわれの手に渡され、中日関係の今後の発展の重任は我々の肩にかかっています」と強調。両国が交わした政治文書の精神を堅持し、「一層成熟し安定した、健全かつ強靱な姿で、中日関係の次の50年を迎えるようにしなければなりません」と訴えました。

福田康夫元総理は、国交正常化50周年の機会に、先人の思いを思い出し、実現するためにどうしたらいいか、相談し合いながら順調な歩みを続けたい、とあいさつ。「これからの中国は、国際社会の中で安定した平和な勢力であるということ。これを私はこの際お願い申し上げたい」と呼びかけました。
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当時、中国側は毛沢東主席と周恩来首相 日本側は田中角栄首相と大平正芳外相。

“毒を盛られるかも、切られるか”はともかく、田中・大平の日本外交には台本のない交渉に政治生命をかけてガチで臨み、相手との信頼関係を築き、将来に向けて時代を動かそうという“熱意”が感じられました。
昨今の日本外交、あるいは日本の政治家の言動からはあまり感じられないものです。

****中国の覇権主義、大平外相が予言 「低姿勢、50年後変わる」―日中国交正常化****
1972年9月29日、日本と中国は国交正常化を果たした。日本側は首相の田中角栄と外相の大平正芳が主導。日中共同声明をめぐる交渉は一時難航したものの、中国側は総じて融和的な姿勢を取った。だが、その中でも大平は、覇権主義的な動きを強める現在の中国の姿を予言していた。(肩書は当時、敬称略)

◇見切り発車
「中国は低姿勢だったが、50年たったら態度はガラッと変わる。大きく経済発展して日本を見下すようになるよ」。9月29日の共同声明調印式を終え、中国から帰国する日本航空特別機の中で、大平は娘婿でもある秘書官の森田一(88、後に運輸相)にこう語り掛けた。

日本は52年に中華民国(台湾)と日華平和条約を締結して以降、台湾と良好な関係を維持してきた。しかし、71年7月に米大統領ニクソンが自身の訪中計画を電撃的に発表した「ニクソン・ショック」を契機に、中国との国交正常化へ大きくかじを切る。

72年7月の自民党総裁選を制した田中は、首相就任後初の記者会見で「日中関係正常化の機は熟した」と宣言。中国首相の周恩来からは直後に訪中招請が届いた。だが、「決断と実行」の田中がこの時ばかりは「これで失敗したら辞任だ」と迷いを見せたという。

当時、自民党内には親台派の議員も多かった。当初は外務省も法眼晋作事務次官をはじめ日中交渉に反対していた。

田中の長女真紀子(78、元外相)によると、「(中国から)戦争の損害賠償を言われたら日本の財政なんて吹っ飛ぶぞ」と懸念していた田中は、中国側の賠償放棄の意向が漏れ伝わると、「これだ」と腹を決めた。「誰かがやらなきゃ片付かない問題だ。見切り発車するしかない」。

◇「大学出が考えろ」
田中と大平は9月25日に北京に乗り込み、周らとの会談に臨んだ。外交当局のお膳立てがない異例の交渉。森田によれば、最も難航したのは戦争の終結をめぐる書きぶりだった。

日中共同声明調印をもって戦争状態終結だと主張する中国側。日華条約締結時に終結したとしている日本の立場とは相いれなかった。

交渉が行き詰まった26日夜。先行きを悲観する訪中団の重苦しい雰囲気を変えたのは、高等小学校卒を売りにしていた田中の一言だった。

「お前ら大学出は全然だめだなあ」。「じゃあ、どうすりゃいいんですか」と尋ねる大平に、「大学出たやつらが考えるんだ」。これで場は和み、大平は「戦争終結は表現の問題で解決できる」とひらめいたという。

結局、戦争終結の時期は明確にせず、日中の「不正常な状態」は「共同声明が発出される日に終了する」と表現することで決着。北京入りから5日目、調印にこぎつけた。

◇超大国の影
一連の交渉を間近で見た森田の脳裏には、中国側の腰の低さが焼き付いていた。周は戦争の損害賠償放棄を宣言し、日米安全保障条約を事実上容認。「経済力で中国は20世紀末になっても日本のレベルに到達できない」と持ち上げた。

中国側は事前に田中の食の好みを調べ上げ、訪中団をもてなした。真紀子は後に、周夫人のトウ穎超から、夜型だった周が田中の首相就任後、田中に合わせて朝型の生活習慣に変えたと聞かされた。「中国はそれほど真剣だった」と振り返る。

森田も当時、「なぜ中国はこんなに譲るのか」と疑問に思っていた。背景にあったのは、当時の超大国ソ連と中国の対立激化。大きく譲歩してでも対日関係を早期に正常化させた方が得策だという「高度な判断」があったと回想する。

「軍事大国には決してなりたくない」「私たちが台湾を武力で解放することはない」。周は田中との会談でこう語っていた。

それから半世紀。中国は日本を抜いて世界第2の経済大国となり、軍事面でも台頭した。今や米国と世界規模で覇権を争い、東アジアは「発火点」となる危険をはらむ。

そんな中国に今後どう向き合うべきか、森田に尋ねた。「だんだん中国との付き合いは難しくなるよと、当時、大平と話した。大平もどうしたらいいか答えが出ないまま、死んじゃった」。【9月24日 時事】
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【中国と日本の狭間で翻弄されてきた中国残留孤児】
50年を経過した日中関係では、政治・経済・文化以外にも多くの側面が。なかには取り残されたような“陰”の面も。

****日中国交正常化50年 “認定”されず中国に…「自分は一体何者」 2世は支援受けられず 残留孤児…それぞれの今****
29日、日中国交正常化から50年を迎えます。中国と日本の狭間で翻弄されてきた中国残留孤児の今を取材しました。

中国東北部・ハルビンで妻と暮らす白凱躍(はくがいやく)さん。白さんは、残留孤児の認定をめぐり翻弄される人生を送ってきました。

白さん「実の親すらも知らない。無駄に人生を生きてしまった」
中国残留孤児は戦後、旧満州などに取り残された日本人の子どものことで、日中国交正常化を機に本格的な調査が始まりました。

これまでに残留孤児と認定されたのは2818人。しかし、白さんは、「証拠が足りない」との理由から、認定されていません。

白さんが出生を知ったのは35歳で養父の仕事を継ごうとしたときでした。
白さん「養父から“君は私が拾った 日本人の残された子どもだ。将来日本に帰るかもしれないから 仕事を継がせても無駄になるかも”と」

白さん「(事実を知ったとき)農場で号泣したよ」
このとき、養父から渡されたのは1歳ほどで拾われたときに自分がくるまれていた服です。実の両親との唯一のつながり。内側に記された「日本語」が、両親が日本人である“証し”ではないかと寝るときも枕元に置いています。

白さん「日本は自分が日本人だと認めてくれない。中国も中国人だと扱ってくれない。自分は一体何者なんだ」

一方で、日本に帰国しても苦しむ人々がいます。
岐阜県に住む佐藤龍雄さん。親が残留孤児と認定され、1984年に帰国した“残留孤児2世”です。

68歳になった今でも日本での生活になじめず生活相談などを受けています。自宅での妻との会話は「中国語」。今も中国での生活に思いを馳せるといいます。

佐藤さん「(最初は)私は日本に戻りたくなかった。でも父が家族バラバラではだめだと」
職を転々とした佐藤さん。去年、体調を崩して仕事を辞め、今は、貯金をとり崩して生活しています。

佐藤さん「1984年のときは日本語の勉強の制度もなくて、国から(支援も)なくて」
残留孤児1世に対しては年金の支給などはありますが、佐藤さんのような2世への国の支援はありません。
佐藤さん「2世の人はみんな困っている。みんな苦しい」

国交正常化を機に調査が始まった中国残留孤児。50年がたった今もそれぞれがもがき続けています。【9月24日 日テレNEWS】
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新型コロナでも明らかになった日本社会の自己保身、思考停止

2022-09-23 22:33:37 | 日本
(3年ぶりに屋外の演舞場に観客を入れて開催された「阿波おどり」の総踊り=8月12日、徳島市【9月22日 共同】参加した踊り手らのほぼ4人に1人に当たる819人が新型コロナウイルスに感染したことが22日、主催した実行委員会のアンケートで分かったそうですが、「それがどうした?」というか、あまり大きく問題視されないように日本社会の意識も少しずつ変わってきた・・・のでしょうか)

【感染者数「日本が世界最多」??】
日本の新型コロナ新規感染者数は8月頃のピーク時に比べるとだいぶ減少していますが、単純に数字だけでみると世界的には「最多」レベルにあるとか。

****日本、9週連続で世界最多 コロナ感染者****
世界保健機関(WHO)の新型コロナウイルス感染症の集計で、12〜18日の週間感染者数は日本は前週比13%増の60万5919人で、9週連続で世界最多だった。39万人の米国、38万人の韓国、37万人のロシアと比べ、大幅に多い状態が続いている。

同期間の死者数は米国が2601人で最多。前週比31%減の1162人の日本が2番目に多い。
 
世界全体では、週間感染者数は前週比2%減の323万人、死者数は同17%減の9862人。減少傾向が続いている。【9月22日 共同】
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ただ、死者数のレベルで見ても明らかなように、「日本がアメリカより新規感染者が多い」というのはあり得ない話です。

要するにアメリカも、東アジア以外の他の国々の多くも、もはや新型コロナの新感染者数を厳密に数えることをしなくなっている一方で、日本は全数調査で厳密にカウントしているので比較的大きな数字が出るというだけの話でしょう。

****欧米とアジアで大きく異なる「ウィズコロナ」 全数把握、海外では****
(中略)
◇感染者数「日本が世界最多」は誤り?
海外では全数把握を実質的に取りやめたり、隔離期間を大幅に短縮したりする国が増えている。
米国では医療機関などで実施するPCR検査については、検査機関を通じて、判定結果や患者の年齢、性別、人種などの報告が義務づけられている。

だが2021年後半以降、自宅で使える簡易検査キットが徐々に普及し、22年1月からは政府が計5億回分を無償配布。簡易検査の陽性者が受診せずに自宅療養するケースが増加し、感染者数の全容を把握できなくなった。

経済・社会活動を本格化させるため、感染者や濃厚接触者の隔離期間も大幅に短縮した。米疾病対策センター(CDC)は21年12月の指針改定で、感染者の症状の改善ぶりに応じて、発症後の隔離期間を10日間から最短5日間に短縮した。

濃厚接触者の隔離も最大14日間から5日間とし、3回目のワクチン接種を済ませていれば隔離は不要となった。22年8月には濃厚接触者の隔離を不要とし、代わりに高性能マスクの10日間着用などを推奨している。
 
英国は今年2月、「新型コロナをインフルエンザなど他の感染症と同様に扱う」として、人口の8割超を占めるイングランドの在住者を対象に、陽性者の自主隔離などの行動規制を撤廃した。陽性でも自主隔離しなくていいため、検査の必要性がなく、当局は感染者の実数を把握していない。
 
世界保健機関(WHO)の集計によると、1週間あたりのコロナ感染者は、9月11日まで8週連続で日本が世界最多となった。全数把握を続けているために他の国より感染者数が多くなるのはやむを得ない部分もあり、実際には日本が世界最多ではない可能性がある。

◇厳しい「ゼロコロナ」続ける中国
一方、北東アジアでは厳格な対策を続ける傾向がある。
 
韓国では今も全数把握を続けている。PCR検査の負担を軽減するため、今年3月からは医師らが実施した抗原検査で陽性が出た場合も感染者とみなす方針をとる。また感染者数の増加に対応するため1月以降、感染者の隔離期間を10日間から7日間に短縮した。

ただ、8月に1日あたりの新規感染者数が18万人を超えるなど再流行が本格化したことなどから、韓国政府は現時点では、隔離期間のさらなる短縮には慎重だ。

感染拡大を徹底的に封じ込める「ゼロコロナ」政策を取ってきた台湾の当局は今年4月、オミクロン株の急拡大を受けて、感染抑制と社会の経済活動を両立させると表明。実質的な「ウィズコロナ」に転換した。ただ、全数把握は継続しており、感染者は無症状も含めて8日間の隔離が義務づけられる。
 
一方、中国はあまりにも厳しいゼロコロナ政策を堅持。感染者や濃厚接触者は軒並み隔離し、経済への悪影響を顧みずに都市封鎖(ロックダウン)を断行するなど、強硬措置を続けている。【9月22日 毎日】
***********************

【誰もが「セルフデシジョン(自己決定)」することをやめ、自己保身、思考停止に陥っている日本】
中国がゼロコロナにこだわるのは、中国製ワクチンの効能に対する疑問、高齢者のワクチン接種率の低さ、医療資源が不十分で感染者が増大すると医療崩壊をきたす等々の問題があり、医学的にも、党大会を控えて政治的にも、今規制を緩める訳にはいかないという事情があるとも言われています。

そのように各国にはそれぞれの事情がありますが、日本の場合は過度にリスクを警戒するメンタリティーの問題があるように思えます。そのあたりの“日本の内向き特殊性”を指摘する意見は、特に世界が「アフターコロナ」に向かい始めた頃から多々見られましたが、とりあえず一つだけ。

****新型コロナが日本の劣化を助長した理由****
シンガポールから日本に帰国できずに2週間もホテルで待機させられたことは前回のコラムに書いた通りだ。『日本人コロナ難民が足止めされているシンガポール』。

足止めさせられた理由は日本大使館の領事部からの帰国許可が下りなかったからである。PCR検査では遺伝子配列の関係から完全な陰性になることはなく、いわゆる「疑似陽性」の形で結果が出てくるので、抗原検査と合わせて実際には回復してる途中だと判断するのが国際常識である。

しかし、日本の場合だけはその常識が通用しないのだ。つまり行政が一度決めた方針が明らかに間違っていても、指摘する人材がいないのである。

ところが、政府は突如8月24日の通達で72時間以内の陰性証明の提出を免除することを決定した。今までのルールは何だったのかと言いたい。あれだけ領事部に抗議しても政府の方針だからとの理由で受け付けなかったルールが説明なしにあっさり変更されたのだ。ただし9月7日からの実行である。なぜか2週間以降となった。
 
この猶予期間に何の意味があるのか分からない。説明のないこの実行の遅れは何だろう? 一時が万事で誰も責任を取りたくないので岸田文雄首相が緩和方針を伝えるまでは誰も言及しないのである。水際作戦に従事している専門家ですら自己の意見は出さずに保身に努めているように見える。
 
何を決定するのも風見鶏体質だから保身が優先されるのがもどかしい。非合理的な判断からくる経済的損失や多大なる無駄を決められたこととして疑問視する人はいないのである。普通に考えれば当たり前のことが日本という国では判断しない方が賢いとされているようにさえ見える。

メディアが大袈裟にコロナ禍の危険性を騒ぎ、日本中がワクチンの重要性に耳を傾ける毎日が2年半も続いた。有識者と呼ばれる人がTVに出ない日はなく、大騒ぎをしていることも気になった。

政府は根拠の乏しい自粛生活を強要した。日本人は実に従順にお上の要請に従った。マスクを忘れると非国民扱いされ、外出すらできない沈鬱な2年半を過ごした。なぜか、われわれ日本国民は世間体を気にして意味のない同調圧力に屈してしまうのだ。

既得権益に挑戦しない日本人
政治も行政も、そして国民も、誰も責任を取りたくない。つまり、誰もが「セルフデシジョン(自己決定)」することをやめ、自己保身、思考停止に陥っているのが日本の現状なのかもしれない。

そのような視点から日本の国際ランキングを調べてみた。海外との比較をすれば日本の実態がはっきりするからだ。例えば、以下が最下位だという。
企業活動指数 教育への公的支出 大学教育レベル 労働生産性 平均睡眠時間
社員のやる気 仕事へのやりがい 仕事への満足度

どのような調査をしたのかは定かではないが、私は概ね当たっているのではないかと思う。よく話題にのぼる世界の幸福指数ランキングでも日本は決して高くはない。各国の幸福度は主に「主観的な幸福度」によって決定される。2022年度の日本のランキングは世界156カ国中58位だという。

一方で、3年ぶり訪れたシンガポールのランキングを見て驚いた。
2015年の幸福度は148位だったのに、一昨年21年は32位で、22年には27位まで改善していた。一方の日本は2015年に46位だったのに、昨年の21年は54位で完全にシンガポールに逆転されていたのだ。さらに22年は56位まで下落の一途である。

その内訳で日本の劣化が目立つのが、「社会の自由度と寛容度」と「国家への信頼度」の低下傾向である。
逆にシンガポールは、どの要素も日本を追い抜いている。日本との地位が逆転したのだ。

それは、既得権の維持ではなく、激しい競争環境の中で、「自分にもチャンスがある」と、シンガポール国民が思えるようになったからではないか。

異端者が窒息する日本の組織
①中国、シンガポールに勝る、日本の組織の既得権益  
中国でも既得権益はあるが日本のように、ずっと見直しが行われないことはない。なぜ、専制国家である中国でそのようなことが起きるのか? 

それは、異端に対して寛容だったり、異端であったりすることを物ともしない強い個性があるからだ。  

シンガポールでは高級官僚が民間大手の社長になったり、大学教授に転身したりする。ある意味で、既得権益は温存されるが、ポジションが代わることで風通しはよくなる。 

②組織の権力者が一旦権力を握ると離さない。  
中国の共産党でも独裁者は最強であるが、常に権力闘争に晒されているから自律的な見直しは必然的に行われる。これに対して、日本の官僚組織や大企業組織では、誰も変えようとしないから、ぬるま湯状態となる。 

③哲学のない人物が権力を握る  
組織が停滞してしまうと類は友を呼び、イエスマンだらけになってしまう。誰も非難をしないからこれほど楽なことはない。一方、中国は世界一の競争社会だから、現状維持で生き残ることはできない。  

保身ばかり考えるタイプが出世するから、それを見ている若者たちもそれが当たり前と思い、保身に走る社員ばかりになる。逆に男気を出して改革をする人物は干される構造になりやすいから、組織がさらに腐ってしまう。  

このような組織のなかでは、異端者は、窒息死してしまう。あるいは、圏外に飛ばされてしまう。そして、それが変だと気づいていても、多くは黙って従っていく。  

結果として、新規の提案や変革はできる限り潰す方向になり、発案者よりも管理者がはびこる構造になっていく。経営者や管理者たちは身を守る為ために責任回避して下請けに仕事をやらせて単に取り次ぎをするだけの仕事をするようになり、生産性は下がる一方だ。

組織の停滞を正すのは異端者だ
「統治客体意識の訣別を目指した20年前の構造改革とはなんだったのか」などと、言う人がいる。統治客体意識とは国家への依存体質のことだ。この体質は、コロナ禍でも発揮された。  

国が「要請」であり「自粛」であるとすると、その損失分を補償する必要もなく責任を取る必要はない。一方の国民は、お上が負担してくれるなら貰えるものは何でも欲しいという。  

過去20年は世界第2位の経済大国が1人当たりGDPで見ると、今や日本は世界第24位。10年前と比べてさえ、順位が大きく下がってしまった。  

コロナ禍を盲信する日本人の姿と一国平和主義を盲信する日本人の姿にはたった一つの共通点がある。「われわれ自分の頭で考えなくなってしまった」ということだ。何でも既得権に守られたお上(統治者)の言われるままになってしまった。  

コロナ時代を経験して見えてきたことがはっきりしてきた。アフターコロナになって炙り出されてきた問題が既得権益の暗闇であった。実は日本中が既得権益に守られている産官学医の世界はオワコン化しているのだ。【9月10日 WEDGE】
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私個人は、“政治も行政も、そして国民も、誰も責任を取りたくない。つまり、誰もが「セルフデシジョン(自己決定)」することをやめ、自己保身、思考停止に陥っている”日本の現状は、単にコロナ対応でのガラパゴス化だけでなく、「失われた20年、あるいは30年」といった日本経済・社会の沈下現象をもたらしている元凶だと考えています。

マスクひとつとっても、自分の頭で判断できない。周囲が着けているので自分も・・・
今月トルコを観光してきましたが、現地の人も、外国人観光客も誰もマスクしていないなかで、36℃の炎天下屋外でもほぼ全員がマスク着用する日本人ツアーは奇妙な光景でした。

日本国内でも、危険性はほとんどない屋外でマスクをはずしているのは未だにごくわずか。「一体どうして?」と不思議です。(顔を隠すマスクというのは、ある意味、安心感を与えるのでしょう。でも、その匿名性に隠れてしまうメンタリティーは大問題だと思えます)

【日本をはじめアジア各国でも緩和策相次ぐ】
さすがに日本政府の水際対策も徐々に緩和されてきており、上記記事にもあるように9月7日から日本入国時の陰性証明が不要になりました。私のトルコから帰国が9月8日ということで、さっそくこの緩和の恩恵に。おかげで予定していたトルコ国内での帰国前検査をしなくてすみました。(検査して陽性だったら一人隔離されて帰国できません)

更に、10月11日からはもう1段階緩和されます。

****日本がビザ免除・個人旅行解禁へ 訪日旅行予約急増の見通し=韓国****
日本が10月11日から1日当たり5万人とする入国者数の上限撤廃や短期滞在ビザの取得免除、個人旅行の受け入れ解禁の方針を表明したことを受け、韓国で日本旅行の予約が急増する見通しだ。

韓国の旅行業界は、日本政府が添乗員を伴わないツアーを認めるなど今月上旬から新型コロナウイルスの水際対策を緩和後、急激に高まった日本旅行の需要がさらに高まると期待している。

旅行会社ベリーグッドツアーのシン・ソルギョン日本チーム課長は、日本旅行は新型コロナ流行よりも前の2019年から日本製品不買運動の影響を受けたため、ペントアップ需要(抑えられていた需要)があるとし、「短期滞在ビザの取得免除で全ての障害が取り除かれ、第2の日本旅行好況期を迎える」との見通しを示した。

実際、同社は日本へのビザなし渡航解禁の可能性がメディアで報じられた今月14日以降、期待感が反映され、日本旅行の予約者が1日平均500人にまで増加したという。これは日本製品不買運動以前の水準で、コロナ禍の予約者数の50倍を超える。

旅行大手のモドゥツアーも今月14〜22日の日本旅行の予約件数が今月5〜13日に比べ140%増加した。
同社関係者は「需要急増が予想されるため、座席確保に向け航空会社との協議を進めている」と説明した。

ほかの旅行会社も似たような状況だ。
旅行大手ハナツアーの日本旅行予約は、今月1〜22日の1日平均が先月1〜22日に比べ776.6%増加した。
旅行会社の「黄色い風船」は、今月1〜20日の2泊3日大阪ツアー商品の予約率が先月1〜20日に比べ1200%増加した。2泊3日の九州紅葉ツアー商品の予約率は前年比600%、2泊3日の東京ツアー商品の予約率は同115%、それぞれ増加した。【9月23日 聯合ニュース】
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アジア各国、特にこれまで日本同様に厳しい規制をおこなってきた台湾や韓国、香港でも相次いで緩和策が報じられています。
“台湾 外国人旅行者の受け入れを29日から再開へ”【9月23日 日テレNEWS】
“韓国・屋外マスク義務を全面解除 入国後PCR検査は“維持””【9月23日 日テレNEWS】
“香港が水際対策を緩和 海外からの渡航者への“隔離”を撤廃へ”【9月23日 日テレNEWS】
“非常事態宣言、2年半ぶり解除=タイ、コロナ感染者の入国禁止措置も廃止”【9月23日 時事】

【やや勇み足のアメリカ・バイデン大統領】
依然として1日に400人近くがコロナで死亡しているアメリカではバイデン大統領がコロナパンデミック終息の見解をインタビューで披露
「コロナの問題はまだ残っており、対応が続いているが、パンデミックは終わった。(会場では)マスクをしている人はおらず、誰もが健康そうだ。状況は変わっている」“新型コロナのパンデミック「終わった」、バイデン米大統領が見解”【9月19日 ロイター】

さすがに、ちょっと勇み足か。おそらく中間選挙対策で状況好転をアピールしたかったのでしょう。
先週「終わりが視野に入ってきた」と語っていたWHO事務局長も「まだトンネルの中」とバイデン発言を否定

****パンデミックは終わっていない WHO事務局長「まだトンネルの中」****
世界保健機関のテドロス・アダノム・ゲブレイェスス事務局長は22日、新型コロナウイルス感染症のパンデミック(世界的な大流行)について、収束宣言は「まだ遠い」との見方を示した。

パンデミックについて、テドロス氏は先週、「終わらせる上でこれまでで最も有利な状況にある」「終わりが視野に入ってきた」と述べた。米国のジョー・バイデン大統領は18日に放映されたインタビューでさらに踏み込み、米国では「終わった」と述べていた。

しかし、テドロス氏は22日、米ニューヨークで国連総会に合わせて開いた記者会見で、「終わりが視野に入ったのであって、終わりに到達したわけではない」と述べた。

続けて「私たちは長く暗いトンネルの中で2年半過ごしてきたが、ようやく終わりにある光がかすかに見えるようになってきたところだ」として、「しかし先はまだ長く、トンネルはまだ暗い。注意しなければつまずきかねない障害物も多い」「われわれはまだトンネルの中にいる」と強調した。

テドロス氏は世界がパンデミックを終わらせる上で絶好の状況にあるのに変わりはないと強調した上で、世界の1週間当たりの死者数は減少し続けており、ピークだった2021年1月の10%となっていると説明した。 【9月23日 AFP】
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イラン  スカーフをめぐる女性死亡で広がる抗議デモで混乱 瀬戸際の核合意再建問題

2022-09-22 22:35:47 | イラン
(テヘランで通りに繰り出したイランのデモ隊=AFP通信が21日入手【9月22日 時事】)

【「スカーフで髪を隠さなかったら拷問死か!」 拡散する抗議デモ 増える犠牲者】
イランでは、2019年にガソリン価格高騰に不満を抱く市民が行った抗議デモなど、しばしば国民の大規模な抗議行動が起きますが、今回イランを揺るがしているのはイスラム女性が義務付けられているスカーフの問題。

「スカーフを被る」と言っても、その対応は個人差があります。
宗教的価値観を重視する女性は髪の毛全体を隠す形できちんと。
逆に、そうした宗教的価値観の強制を嫌う女性は、前髪を大きく出す形で。

現在は保守強硬派のライシ大統領のもとで、スカーフについても厳しくチェックされる状況にあります。
今回問題となった女性は、スカーフのかぶり方が不適切だとして警察に拘束され、死亡しました。

SNSで女性が病院のベッドで治療を受けているとされる写真が拡散。頭部付近に血痕のようなものが見えるため、警察官の暴行を疑う声が強まり、頭を殴打されたとも報じられました。

17日に女性の地元で営まれた葬儀には数千人が参列し、その一部が当局の対応を批判し、最高指導者ハメネイ師も非難する抗議行動に発展、治安部隊と衝突する事態に。

その後も抗議行動は拡散し、死者がでる事態に。

****スカーフ着用めぐり逮捕の女性死亡 抗議で死者3人 イラン****
イランで、頭髪を覆うスカーフの着用方法をめぐり警察に逮捕された女性が死亡したことを受け、抗議デモが広まっている。女性の出身地である西部クルディスタン州のイスマイル・ザレイ・クーシャ知事は20日、同州のデモで3人が死亡したことを明らかにした。

マフサ・アミニさんは、家族と訪れていた首都テヘランで13日、服装規定などを取り締まる「道徳警察」に逮捕され、警察署に連行された。

その後、昏睡(こんすい)状態に陥り病院に搬送され、16日に死亡。警察署で何が起きたのかははっきりしないが、アミニさんの頭部には打撲傷があったとされる。

報道によると、同州では18日、約500人がデモを行い、参加者の一部が車の窓を割り、ごみに放火。警察が参加者を逮捕したり、催涙ガスを使用したりした。テヘランでも19日、デモ隊に対し警察が警棒や催涙ガスを使用した。

同国のファルス通信によると、知事は同州のデモでの死者3人について、死亡日時は明らかにしなかったものの、「敵の企て」により「不審な」死を遂げたと説明。

ディバンダーレで「治安当局が使用していない種類の武器」で1人が殺害され、サケズでは1人の遺体が病院の近くの車の中に置き去りにされた状態で見つかったとした。3人目の死者については詳細に触れなかった。 【9月21日 AFP】
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警察当局はアミニさんが意識を失った理由を「心臓発作」と説明。19日にも改めて暴行を否定し、アミニさんには「5歳の時に脳の手術を受け、以前から身体的な問題を抱えていた」と説明。「警察の対応に問題はなかった」と主張しています。

しかし、アミニさんの父親は19日までに地元メディアに対し、彼女に病歴はなく、逮捕前まで健康上の問題は一切なかったと語っています。

全国各地で数十~数百人規模の抗議集会が開かれ、一部は暴徒化して投石やタイヤの放火に及び、警察車両の窓ガラスが割られることも。
抗議デモは21日も続き、死者も増えています。

****イランの抗議デモ、死者6人に スカーフ巡り女性死亡で****
イランメディアは21日、イランで女性が髪を隠すスカーフのかぶり方が不適切だとして警察に拘束され、死亡したことに対する20日の抗議デモについて、警察関係者1人が南部シラーズで、市民2人が西部ケルマンシャーで死亡したと報じた。一連の抗議デモでの死者は計6人になった。

シラーズでは警察官4人が負傷し、デモ参加者15人が逮捕された。ケルマンシャーでは市民や治安当局者ら計25人がけがをした。

17日から始まった抗議デモはイラン各地に拡大。21日も首都テヘランで市民が抗議活動をし、デモは5日連続となった。【9月21日 共同】
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【大統領・最高指導者は亡くなった女性に寄り添う姿勢を見せて、抗議デモ鎮静化を図る】
ライシ大統領は16日、内務省に徹底した捜査を指示。18日には遺族に電話し、「あなたの娘は私の娘のような存在だ」と哀悼の意を伝え、「何が起きたのかは明らかにされる」と捜査の徹底を約束しています。

最高指導者ハメネイ師の代理人も19日に遺族宅を訪れ、「ハメネイ師も心を痛めている。侵害された権利の擁護のため、すべての機関が行動を取る」と伝えたそうです。

このあたりが、イランに対する欧米の宗教独裁国家イメージとはやや異なるところかも。

確かにイランは最高指導者を頂点とする宗教的権威が最重視される政治であり、今回事件のような宗教的価値観の強制もある社会ですが、一方で、そうした政治体制に批判的で自由を求める国民も多く、保守派とされる指導層も国民からの批判を強く警戒しています。

少なくとも大統領は選挙で選ばれるシステムですから(選挙への体制側の介入はありますが)、国民の批判が拡大すると政治システムが維持できなくなります。その点で、いわゆる民意が重視される民主主義的側面もあります。単なる宗教独裁国家ではありません。

死者は12人なったとの報道も。イランの情報は不透明で何が起きているかよくわからい部分がありますので、実際はもっと多いのかも。「宗教的価値観押しつけからの自由」「警察の横暴・人権無視」に加えて、下記記事が指摘するようにクルド問題が絡んでくると話は更に厄介にも。

****デモ衝突の死者12人 イランの混乱やまず―人権団体****
警察の拘束下での女性死亡を発端とする抗議デモがイラン各地で続き、人権団体によると、治安部隊との衝突などによるクルド人地域での死者は、21日時点で少なくとも12人となった。ロイター通信が報じた。

インターネット上には自動車を燃やすなどして抵抗するデモ隊の動画が相次いで投稿され、混乱がやむ気配は見られない。

女性は少数派クルド人が暮らす西部コルデスタン州出身。頭部を覆うスカーフを適切に着用していなかったことを理由に13日警察に逮捕され、16日に死亡が発表された。

クルド系の人権団体ヘンガウは、コルデスタン州では女性への連帯の意を示すデモに治安部隊が発砲するなどし、死傷者が出る事例が相次いでいると報告している。【9月22日 時事】
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「国家を持たない最大民族」クルド人はトルコやイラクでよく問題になりますが、イランにも多くが暮らしており、その政治行動はイラン当局と対立しています。

【国連総会 イランは欧米側の人権に関する「二重基準」を批判】
折しも開催されている国連総会で、アメリカとイランが核合意再建問題の他、女性の死を受けて人権問題でも批判を応酬する形にもなっています。

****イランと米国、核合意再建・人権問題巡り国連で対立****
米国とイランは21日、国連総会で安全保障や人権問題を巡り対立した。イランのライシ大統領は2015年の核合意への復帰を確約するよう米国に要求。バイデン米大統領はイランに決して核兵器を持たせないと表明した。

ライシ氏は人権分野における一部政府の「二重基準」が人権侵害の 慣行化につながっていると非難。カナダで発見された先住民の墓標のない墓やパレスチナの人々の苦悩、米国で収容された移民の子どもなどに言及した。

イランでは最近、髪を覆うスカーフの着用が不適切として拘束された女性が死亡した事件を受け抗議デモが広がっており、批判をかわす狙いがあるとみられる。

ライシ氏はまた「(15年の核)合意復活に向け、全ての問題を解決しようという偉大で真剣な意志がある」と述べ、「われわれが望むのはただ一つ、約束の順守だ」と指摘。米国が核合意から離脱したことに触れ、「恒久的な合意」を保証する重要性を訴えた。

バイデン氏は核合意復帰への意欲を改めて表明した上で「イランが核兵器を持つことを容認しない」と強調。また、イランのデモ参加者らに同調し、「われわれは基本的権利を守るためにデモに参加しているイランの勇敢な市民、女性たちとともにある」と語った。【9月22日 ロイター】
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【もはや“後がない”核合意再建問題】
一方の、核合意再建問題の方は、一時は“交渉も大詰め”と見られていましたが、結果を出すには至らず、行き詰まりも。

****イランと欧米、核合意巡り平行線 米「国連総会で突破口見えず」****
イランにある3カ所の未申告施設でウランが検出された問題に関する国際原子力機関(IAEA)の調査を巡り、イランと欧米諸国は20日も対立を続けた。

米国のサリバン大統領補佐官(国家安全保障担当)は、今週の国連総会で2015年の核合意再建に向けた突破口が開かれるとは期待していないと述べた上で、米国は合意再建を望んでいると改めて表明した。

フランスのマクロン大統領はこの日、イランのライシ大統領と会談。マクロン氏は会談後、「欧米が正式に設定した条件を受け入れるかどうかイランが回答する番だ」と記者団に述べた。

イランは、核合意再建に向けた提案内容を完全に実行する前に、検出されたウランの痕跡に関するIAEAの調査終了を約束するよう米国に要求している。

欧米諸国はこの要求を拒否し、イランがIAEAに満足のいく回答をしたときにのみ調査は終了すると主張している。

マクロン氏は20日、欧米がIAEAに調査終了を迫ることはないと述べた。

一方、ライシ氏は、イランはIAEAが調査を終了し、2018年に核合意を放棄した米国が再び放棄した場合の影響を制限するための保証を引き続き要求していると語った。

イラン政府によると、ライシ氏はマクロン氏に対し「保証の要求は完全に合理的で論理的な要求だ」と述べ、IAEAが調査を終了することなくイランが合意することは不可能だとの見解を示した。【9月21日 ロイター】
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イラン側は、イランだけが不公平な扱いを受けていると主張しています。
IAEAの調査が続くのは、それだけイランに不審な行動があるためでもありますが。

****核兵器の意図、改めて否定=査察は「不公平」―イラン大統領****
イランのライシ大統領は21日、国連総会で演説し、核開発について「イランは核兵器を製造したり保持したりするつもりはなく、(核兵器は)防衛政策上も存在しない」と表明した。

イランはこれまでも兵器化の意図は繰り返し否定しており、米欧との核合意再建交渉が難航する中、改めてイランの立場を強調して国際社会に理解を求めた。

また、ライシ大統領は国際原子力機関(IAEA)による査察をめぐり「イランで行われている核活動は世界のわずか2%なのに対し、査察の35%がイランで行われている」と主張した。

再建交渉をめぐっては、イランによるIAEAの査察拒否が妥結の障害となっており、「不公平」と訴えることで対応の正当性をアピールした。【9月22日 時事】 
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イランが求めている「保証」は、アメリカで共和党が復権すれば、トランプ前大統領のときと同じように、また合意から離脱し、制裁が復活するという懸念によるもので、それはイランからすれば当然でしょう。

****イラン核兵器保有の土俵際にある核合意再開交渉****
クインシー研究所のパリシイ副所長が、Foreign Affairs誌ウェブサイトに8月26日付けで掲載された論説‘Last Chance For America and Iran’で、現在交渉されているイラン核合意再開交渉で合意すべきであり、米共和党が政権を奪還したら、再開された核合意を廃棄すると公約しているが、そうさせないためには合意の内容をより野心的にする必要がある、と書いている。主要点は次の通り。

・合意への反対者は、新たな核合意はより短期間かつ弱いものだと批判している。確かにイランが核爆弾を製造のために必要な濃縮ウランを得られる期間(ブレイク・アウト・タイム)が当初の合意では12カ月であったが、現在の合意案では6カ月から9カ月に短縮されている。しかし、現時点でイランは数日で必要量の濃縮ウランを手に入れることが可能なので半年というのは遙かにましだ。

・バイデンは2020年の大統領選挙でバイデン候補は、速やかに復帰する旨を公約に掲げていたので、イラン側は米国の核合意復帰を期待していたが、バイデン大統領は核合意復帰を急がず、貴重な数カ月間を、核合意に強く反対しているイスラエル、アラブ首長国連邦、サウジアラビアとの協議に費やす一方、イランとの信頼醸成については気にしなかった。

・イラン政府関係者は、バイデン大統領が、交渉の代わりに対イラン制裁を継続することによって、より厳しい条件をイランに課そうとしていると考え、対抗措置としてウランの濃縮計画を急速に拡大した。21年6月に核合意再開交渉が始まった時には、既に交渉の雰囲気は最悪であった。

・21年8月に就任した保守派のライシ新大統領は、核合意は優先的な課題では無いとして、過去の核合意について見直しを続け、その間もウラン濃縮のための遠心分離機を増設して濃縮ウランの備蓄を増やし続けた。米国側は、イランが事実上の核兵器保有国になるための時間稼ぎをしているとの疑いを強めた。

・米共和党が24年に政権を奪還すれば、再開された核合意を廃棄すると公約しているが、そうさせないためには合意の内容をより野心的にする必要がある。米国が再開された核合意から離脱しない件については、引き続き協議することとし、(米国を含む)全ての合意の当事者が、仮に合意に違反すれば、その対価を払うようにするべきである。

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イランの核合意再開問題は、ボレル欧州連合(EU)外交安全保障政策上級代表が、「最終合意案」を提示したが、案の定、イラン側は、色々とコメントを付けており、交渉を再開して時間稼ぎをしようとしているように見える。交渉が続いている限り、イランは核開発を継続出来る。

更に、問題なのは、8月29日、イランのライシ大統領が、未申告の核物質問題を止めなければ合意再開は難しいと発言したことである。未申告の核物質問題とは、イランが金属ウランを製造していたことついての国際原子力機構(IAEA)の調査の件であるが、金属ウランは、核爆弾の製造に必要不可欠な技術だ。

イラン側は、繰り返し核兵器の保有を否定しているが、核爆弾製造に必要な量の濃縮ウランを備蓄し、IAEAの調査の中止を要求していることは、イランが核兵器を開発しようとしていることを強く疑わせる。

政権交代懸念の米国への対策は
他方、共和党は、24年に政権を奪回すれば、核合意が再開していても廃棄すると公約している由だが、極めて党派的、かつ、無責任と言わざるを得ない。

トランプ政権以来、「過去に例の無い制裁」をイランに課しているが効果を上げていない以上、後は軍事オプションしか残されない様に思われるが、共和党はイランと戦争を行う覚悟があるのだろうか。

上記の記事は、このままでは、たとえ核合意が再開しても2年間しか継続出来ないので、合意を永続的とするために、
(1)米国が再度核合意から離脱する場合に米国にペナルティを科す。
(2)米国・イラン間の経済関係を再開し、米国の経済界にイランとの関係を維持するためのインセンティブを持たせる。
(3)イランと敵対するサウジアラビア等との間に対話を通じて信頼醸成、緊張緩和を進める。
と提言するが、いずれも非現実的と言わざるを得ない。

イランは、既に核爆弾1個を製造に必要な濃縮ウランを備蓄し、半年以内にさらに2個分の備蓄が可能と言われている。

恐らく、濃縮ウランから核爆弾を製造するために必要な金属ウラン製造技術を開発しており、起爆装置の研究も行っている可能性がある。

他方、イスラエルのF-35戦闘機がイランの領空侵犯を繰り返しているという報道があったが、イランの核問題は、いよいよ土俵際に来ているように思われる。【9月21日 WEDGE】
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8月段階の「大詰め」の雰囲気もまた最後を詰め切れずに決裂する可能性が大きくなっていますが、今回決裂すれば、アメリカ・イスラエルにとっては、あとは実力でイランの核開発を阻止するという選択肢しか残らないことにも。世界は新たな厄介の火種を抱えることにもなります。
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ミャンマーで弾圧を受けるロヒンギャの現状 ミャンマー国内では民主派・国軍戦闘で市民に犠牲も

2022-09-21 23:14:00 | ミャンマー
(空爆で破壊された学校とみられる映像(ロイター)【9月20日 読売】)

【将来の夢も希望も持てないロヒンギャの現状】
ウクライナ情勢に国際社会の目が行く一方で(ウクライナ問題についても、“支援疲れ”等の慢性化現象はありますが)、その他の問題が忘れられる危険も。

ミャンマー国軍の民族浄化的な殺戮・暴力・放火・レイプなどでミャンマーを追われたイスラム系少数民族ロヒンギャの問題もそのひとつ。

****八方ふさがりのロヒンギャ難民 弾圧による大量避難から5年*****
バングラデシュにあるロヒンギャ難民キャンプの学校で、モハマド・ユスフさんは毎朝、ミャンマー国歌を歌っている。

仏教徒が多数を占めるミャンマーで国軍が少数派イスラム教徒ロヒンギャを迫害し、大規模な難民流出が始まってから8月25日で5年を迎えた。少なくとも数千人が軍に殺害されたとみられ、ユスフさん一家をはじめ、74万人以上がバングラデシュに逃れた。

不衛生なキャンプで暮らすユスフさんら大多数のロヒンギャの子どもは、教育を受ける機会をほとんど与えられてこなかった。子どもたちに教育を受けさせれば、帰還がすぐには実現しそうにないと認めることになりかねないとバングラデシュ政府が懸念したためだ。

昨年のミャンマーの軍事クーデターによって、ロヒンギャ帰還の見通しはいっそう遠のいたとみられており、バングラデシュ政府は今年7月にようやく、国連児童基金(ユニセフ)に対し、ロヒンギャの子ども13万人に教育を受けさせる計画を許可した。いずれは難民キャンプにいる子ども全員に教育の機会が提供される見込みだ。

だが、バングラデシュ政府は今なお、ロヒンギャ難民の帰還を望んでいる。そのため授業はミャンマーのカリキュラムに沿ってビルマ語で行われ、さらに毎日始業の際にミャンマーの国歌を子どもたちに歌わせている。

オランダ・ハーグの国際司法裁判所では、ミャンマー国軍のロヒンギャへの弾圧がジェノサイド(集団殺害)に当たるかどうかを審理する裁判が行われている。

だが、ユスフさんはミャンマー国歌を大事にしていると言う。
「ミャンマーは私の祖国です」とユスフさん。「この国にひどい目に遭わされたわけじゃない。ひどいことをしたのは、権力を持った人たちです」 妹はミャンマーで亡くなり、同胞は虐殺されたと話す。「それでも、自分の国なのです」と続けた。 夢は航空関係のエンジニアかパイロットになることだ。「いつか世界中を飛び回りたい」と話した。

■「時限爆弾」
キャンプでは計100万人近いロヒンギャ難民が暮らしており、約半数は18歳未満だ。

バングラデシュ軍の元将軍マフズル・ラフマン氏は、同国政府が長期的な計画の必要性に「気付いた」のは、教育を受けていない若者がキャンプにいるリスクに着目したためだと指摘する。

キャンプの中では薬物を密売するギャングがうろつき、治安はすでに深刻な問題になっている。この5年間に起きた殺人事件は100件以上。武装勢力や犯罪集団は、キャンプ生活にうんざりしている若者の勧誘にも力を入れている。

ラフマン氏は、すべての子どもが「時限爆弾になりかねない」とAFPに語る。「教育も受けられず、夢も希望もないキャンプで育つと、どんな怪物になってしまうのか見当もつかない」

■ミャンマーにとどまったロヒンギャの苦難
一方、5年前にバングラデシュに逃れる道を選ばなかった人もいる。母親からミャンマーにとどまるよう懇願されたマウンソウナインさん(仮名)もその一人だ。

故郷と呼ぶ場所に今も住んでいるが、将来の計画を立てることはすっかり諦めたと話す。また弾圧で破壊されるかもしれないからと、雨期ごとの家の修理はやめてしまったため、自宅は荒れるがままになっている。

ミャンマーに残る約60万人のロヒンギャは、キャンプに収容されているか、あるいは村にとどまっている場合もミャンマー軍や国境警備隊に翻弄され、いつまた生活が一変するか分からない。

大半は市民権を与えられず、移動や医療、教育に関して制限を受けている。国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウオッチはロヒンギャに対するこうした処遇を、かつての南アフリカのアパルトヘイト(人種隔離政策)になぞらえて非難している。

ロヒンギャの人々は「常にこの国から出ていくことを考えています」とマウンソウナインさん。「でも、出ていくことも許されません。拘束され、移動も止められてしまうからです」

■「夢も希望も持てない」
ヒューマン・ライツ・ウォッチによると、昨年のクーデター以降、「無許可での移動」を理由に身柄を拘束されたロヒンギャは、子ども数百人を含め、約2000人に上る。

イスラム教徒が大多数を占めるマレーシアも、ロヒンギャ難民の主要な逃避先となっている。密航業者に命を預けて一か八かで危険な旅に出る人も多い。今年5月には、ミャンマー南西部の海岸に14人の遺体が打ち上げられた。国連難民高等弁務官事務所は、ロヒンギャ難民との見方を示している。

昨年、国軍が再び権力を握ったことで、ロヒンギャの人々が市民権を取得し、制限が緩和される希望はさらに薄れた。

国際医療援助団体「国境なき医師団」に所属し、ミャンマーでの活動の代表を務めているマルヤン・ベサイェン氏は、キャンプで暮らしている人々にとっては家に帰ることすらかなわないだろうと話す。
「たとえ移動できたとしても、彼らがかつて住んでいた多くの村やコミュニティーは、もはや存在しません」

マウンソウナインさんは「この国では、私たちロヒンギャへの人種的憎悪が根強いのです」と述べ、「将来の夢も希望も持てません」と訴える。「私たちはただ、尊厳を持って人並みの生活を送りたいだけです」 【9月3日 AFP】
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問題の根底には、ミャンマー国軍だけでなく、一般的ミャンマー国民の間で“ロヒンギャへの人種的憎悪が根強い”ことがあります。

【ミャンマー国内の国軍と民主派武装勢力の戦闘 空爆で子供11人死亡】
一方、ミャンマー国内にあっては、軍事政権は民主派や、その象徴としてのスー・チー氏への弾圧を強めています。

****スー・チー氏に新たに禁錮3年判決、刑期計20年に…重労働3年も言い渡す****
ミャンマー国軍が首都ネピドーに設置した特別法廷は2日、国軍による拘束が続く国民民主連盟(NLD)のトップ、アウン・サン・スー・チー氏(77)に、2020年の総選挙で不当に影響力を行使したとして禁錮3年の有罪判決を言い渡した。これまでの判決を合わせると、禁錮刑の刑期は計20年となる。法廷は、今回の刑期3年間の重労働も言い渡した。(後略)。【9月2日 読売】
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民主派武装勢力は国軍に抵抗する少数民族武装勢力と連携して、軍事政権への武力闘争を続けています。
こうした抵抗勢力に国軍は激しい攻撃をしかけており、その過程で痛ましい事件も。

****ミャンマー軍政、学校をヘリから空爆 児童11人殺害し証拠隠滅のため遺体火葬****
<1度の攻撃による子供の犠牲としては過去最悪の事態に──>

ミャンマーの北西部ザガイン地方域にある村の僧院学校が軍のヘリコプターから空爆を受けて児童11人が死亡した。一度の戦闘で子供が11人死亡したケースは2021年2月1日の軍によるクーデター以降初めてとみられ、民主派勢力は怒りをつのらせている。

9月16日午後1時ごろ、ザガイン地方域タバイン郡区レット・エット・コネ村にある仏教の僧院学校が、上空のMi35ヘリコプター2機から空爆を受け、僧院学校で学ぶ児童ら7人が即死し、教師3人と児童14人が負傷した。

その後、輸送ヘリから降り立った約80人の兵士が僧院学校を包囲して攻撃を続けた結果、さらに児童2人が死亡した。兵士は児童の遺体や負傷者約20人を民間人から強制的に奪ったトラックで約11キロ離れたエ・ウーにある伝統医学病院に搬送した。同病院はこの地域の軍の拠点となっていた。

軍に徴用されたトラックの運転手は「遺体は兵士と思っていたが、中を見るとみんな子供だったので大きなショックを受けた」と話しているという。

同病院で治療中に死亡したとみられる児童2人が確認され、これで児童の犠牲は11人となった。さらに負傷した児童には手足を攻撃で吹き飛ばされた重傷者も含まれているという。

児童の遺体を火葬、証拠隠滅か
(中略)軍は死者と負傷者を運んだ伝統医学病院で襲撃の翌日にあたる9月17日の午後4時ごろ、犠牲となった児童11人の遺体を全て火葬に付して病院敷地内の墓地に埋葬したという。

子供が行方不明になった両親が攻撃された僧院学校を訪れたが、残されていたのは子供の衣服だけだったため「もし死んだとしても葬儀も行えない」と悲しみに暮れていたという。

「イラワジ」は「火葬は軍による証拠隠滅の可能性が高く、多くの児童が犠牲になった攻撃は許されるものではない」と報じて軍政への反発を強めている。

国連児童基金(ユニセフ)のミャンマー事務所は9月19日、この事件の詳細はまだ不明としながらも児童11人が死亡し、15人が行方不明であることを明らかにしており、今後犠牲者が増加する可能性がある。

これに対し軍政は「武装抵抗勢力が僧院学校に潜伏しており、児童らを人間の盾として利用していた」との声明を発表し、攻撃や児童殺害を正当化した。

軍政は声明の中で、僧院学校には武装市民組織「国民防衛軍(PDF)」のメンバーや、軍との戦闘を繰り返している隣接するカチン州を活動拠点とする少数民族武装勢力「カチン独立軍(KIA)」の兵士らが潜んでいたとしている。

これに対して地元のPDFは「空爆当時、僧院学校にはPDFやKIAのメンバーは誰一人としていなかった。軍は嘘をついている」と反論している。

ASEANの方針転換にも影響か
ニューヨークでの国連総会に出席しているマレーシアのサイフディン・アブドラ外相は、9月19日に記者会見でミャンマーの反軍政組織として抵抗を続けている「国民統一政府(NUG)」と接触したことを明らかにした。東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟国がNUGメンバーと接触するのは初。同外相は今後ASEANとしてミャンマー問題への取り組みを見直す方針を示した。

この会見でサイフディン外相は16日に起きた軍による僧院学校襲撃で多数の児童が不犠牲になったことが伝えられるなか、NUGとの面談に臨んだことを明らかにしている。

こうした軍による民間人、特に子供や女性への無差別攻撃や虐殺、レイプは重大な人権侵害であるとして国際的な人権団体などから軍政とその指導者であるミン・アウン・フライン国軍司令官に対する厳しい非難が浴びせられている。

ミャンマーの人権団体「政治犯支援協会(AAPP)」によると2021年2月1日のクーデター以降、9月19日までの軍による民間人の殺害は2299人にのぼり、逮捕者は1万5571人に達しているという。

出口の見えないミャンマー問題は、ASEANによる和解調停努力にも関わらず、ますます混迷の度を深めている。【9月21日 大塚智彦氏 Newsweek】 
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【ミャンマーへの対応を硬化させるASEAN 「五項目の合意」見直しの検討も】
上記記事にもあるマレーシアのサイフディン・アブドラ外相は、ASEANとしてのミャンマー軍事政権への対応を見直すことにも言及しています。

****ASEANのミャンマー和平計画、見直し必要=マレーシア外相*****
マレーシアのサイフディン外相は19日、東南アジア諸国連合(ASEAN)がミャンマーの和平実現に向けて国軍と合意した5項目について、11月のASEAN首脳会議までに見直す必要があるとの考えを示した。

ASEANは、昨年2月のクーデター後、ミャンマーの和平に向けた取り組みを主導しているが、国軍はASEANと合意した暴力の即時停止など5項目について大半を履行していない。

国連総会に参加するためニューヨークを訪問中のサイフディン氏は記者団に対して「11月のASEAN首脳会議までに5項目の合意事項が依然として妥当かどうか、より良いものに置き換える必要があるかどうかを見直す必要がある」とし、「11月までに答えを見つけなければならない」と語った。【9月20日 ロイター】
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ASEANはミャンマー軍事政権への対応を硬化させていますが、事態改善の方策はないようにも。

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7月、国民統一民主党(NUD)と共謀して軍政に対するテロを主導したなどとして、民主活動家チョーミンユおよび国民民主連盟(NLD)の元議員ピョーゼヤートーら計4人の死刑が執行された。

東南アジア諸国連合(ASEAN)の議長国カンボジアのフン・センが6月に死刑執行の停止を求める書簡をミン・アウン・フライン(国軍総司令官)に送った経緯があるが、ASEANは「死刑執行を含む長期化する政治危機への懸念」を表明し、ASEANが求める「五項目の合意」の履行が進まないことに「深い失望」を表明している。

ミャンマーに関与し情勢を打破する能力がASEANにないことが改めて明らかになっている。【9月15日 WEDGE】
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【民主派「影の政府」の承認の是非】
一方、Economist誌8月22日号は、ミャンマーの軍事政権に抵抗して奮闘する国民統一政府(NUG)は資金の支援を必要としているとして、アメリカがNUGを正統な政府として承認し、もって凍結したミャンマーの資産を彼等に使わせることを示唆する社説を掲げています。社説は次のように主張しています。

****忘れてはならないミャンマー情勢と必要な“奥の手”****
(中略)
NLDの議員は「影の政府」(国民統一政府:NUG)を組織している。

ビルマ族の排外主義との評にかかわらず、彼らは少数民族の代表を迎え入れた。彼らはロヒンギャの待遇を改善するとも約束した。NUGは殆どの抵抗勢力を含めビルマ族の大多数の支持を獲得している。幾つかの地域では、地方の行政組織を形成し、学校と診療所を運営している。

一方、軍は反乱勢力を打倒する能力がないことを証明した。

しかし、NUGは絶望的に資金が不足している。彼等は西側から資金の支援を必要としている。もし、米国がNUGを正統な政府を承認すれば、NUGは、クーデタの後に米国が凍結した10億ドルのミャンマーの資金の所有権を主張出来るであろう。そのようなジェスチャーには、外部世界は軍の残虐行為を不作為によって黙認する積りはないことを示す利点もあるであろう。

勿論、それは軍事政権の終焉を保証はしない。軍事政権は資金と火力において圧倒的な優位性を維持している。中国という強力な同盟国もある。しかし、抵抗運動は18カ月間不利な条件を克服してきた。この条件を有利な方向に動かすのに多くは要しないであろう。【9月15日 WEDGE】
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この考えに対し、WEDGEはやや現実性を欠くとの見方です。

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(中略)しかし、NUDは地下組織である。彼等の奮闘ぶりは讃えられるべきであるが、政府とは到底言い得まい。彼等は過激化しており、一般市民に職場放棄などを含め軍事政権との関係を一切断つよう要求し、軍事政権に協力していると見做される市民を殺害する。軍よりも抵抗勢力を怖れる市民もあると報じられている。

軍事政権の転覆も全土掌握も進まず
外交情報サイトThe DiplomatはNUDのドゥワラシラー大統領代行(彼はカチン族である)とのインタビュー記事(7月19日付)を掲載しているが、彼は抵抗勢力が国土の50%以上を支配し、数十の町に自治組織を作っているなどと述べ、いずれは真の連邦国家を作る目標を語っている。

しかし、これは割引いて聞く必要があろう。  都市と資源を支配しているのは軍事政権である。抵抗勢力は寄せ集めの勢力であり、武器に事欠く状況である。一定地域を支配していると言っても、それは軍が攻勢に出れば引き、軍が引けば出るといった類のことに違いない。

エコノミスト誌は5月21日号で、(地方メディアは威勢の良いニュースを流しているが)「抵抗勢力は自身のプロパガンダを信じるリスクを冒している」と書いたことがある。  

抵抗勢力に軍事政権を転覆する力はないが、軍事政権による全土掌握も進んでいない。ミャンマーの憲法によれば非常事態宣言の期間は1年だが、半年ずつ2回まで延長可能であり、7月31日、2回目の延長(23年2月まで)が決定された。  

憲法はその後6カ月以内に選挙を行うことを規定しており、軍事政権は23年8月までに選挙を行うとしている。軍事政権は選挙までに全土掌握を目指すであろうが、そのことは必然的に更なる流血を招くであろう。
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未だ出口が見えないミャンマー情勢です。
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