(【10月1日 BBC】 児童婚の離婚を認める裁判所判決をタリバンによって無効にされた女性 本文参照)
【アフガン女性よりも「リスの方が多くの権利を持っている」 過去の裁判所判決も無効】
女性の中等教育以上を禁止するなど女性の権利を大きく制約しているアフガニスタンのタリバン暫定政権が8月、女性に対して公の場で全身や顔を布で覆うことを義務づけ、大きな声で話したり歌ったりすることなども禁じる法律を施行したことは、9月15日ブログ“アフガニスタン 女性抑圧を法制化 女子教育にインターネットや衛星放送を利用する国外取組も”でも取り上げました。
こうしたタリバンの女性の人権に対する侵害については欧米社会からは批判があがっており、米俳優メリル・ストリープさんも。
****メリル・ストリープさん「アフガンでは少女よりもリスの方が権利ある」****
米俳優メリル・ストリープさんは23日、アフガニスタンでは少女よりも「リスの方が多くの権利を持っている」と述べた。イスラム主義組織タリバン政権による女性や少女の権利制限の撤廃を求める同国女性の声に賛同するもの。
タリバンは2021年8月に政権を掌握して以降、イスラム法の厳格な解釈を適用。女性や少女に対し、公園への立ち入りや大学への通学、公共の場での歌唱などを禁止しており、国連は「ジェンダー・アパルトヘイト」だと批判している。
ストリープさんは米ニューヨークで国連総会に合わせて行われた会合で「きょうのアフガンでは、少女よりもリスの方が多くの権利を持っている。タリバンが女性や少女の公園の利用を禁じているからだ」「(アフガンの首都)カブールで鳥は歌うことができるが、少女や女性は公共の場でそれができない」と主張。
「国際社会が一丸となれば、アフガンに変化をもたらし、同国人口の半分(を占める女性)の緩慢な窒息を阻止することができると感じている」と述べた。 【9月25日 AFP】
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タリバンは、すでに判決が出ている多くの案件について、イスラム法(シャリア)に沿っていないとして、それらを無効しています。
****児童婚の女性、裁判で離婚を勝ち取るもタリバンが無効に アフガニスタンの司法の今****
交通量の多い道路に挟まれた木の下に、書類の山を胸に抱えた若い女性がいる。
ビビ・ナズダナさんにとって、これらの書類は世界中の何よりも大切なものだ。2年間の法廷闘争の末、児童婚による結婚生活から自由になるために勝ち取った離婚の証明書だ。
しかし、現在アフガニスタンを実質統治している武装勢力「タリバン」の法廷は、この書類を無効化した。タリバンによるシャリア(イスラム法)の強硬な解釈によって、アフガニスタンの女性は事実上、司法システムで沈黙を強いられている。
ナズダナさんの離婚は、2021年9月にタリバンがアフガニスタンを支配して以来、取り消された何万件もの判決の一つだ。
ナズダナさんが7歳のときに結婚の約束をさせられた男性は、タリバンが首都カブールに押し寄せると、そのわずか10日後に裁判所に対し、ナズダナさんが懸命に争って手にした離婚判決を覆すよう求めたのだった。
現在20代で、農業を営むヘクマットゥラさんがナズダナさんとの結婚を要求してきたのは、彼女が15歳のときだった。ナズダナさんの父親が、一家の「敵」を 「味方」に変えるための、いわゆる「悪い結婚」に同意してから8年がたっていた。
ナズダナさんはすぐに裁判所に駆け込み、ヘクマットゥラさんとは結婚できないと何度も伝え、離縁を求めた。当時の裁判所は、アメリカが支援していたアフガニスタン政府が運営していた。裁判は2年かかったが、最終的にはナズダナさんに有利な判決が出た。「裁判所は私を祝福し、『これであなたは離別し、誰とでも自由に結婚できる』と言ってくれた」と、ナズダナさんは語った。
しかし、2021年にヘクマトゥッラさんが控訴。ナズダナさんは自分の裁判で直接陳述することは許されないと告げられた。
「法廷でタリバンは、シャリアに反するから法廷に戻るべきではないと言った。兄が私の代理を務めるべきだと」と、ナズダナさんは話した。
ナズダナさんの兄のシャムスさん(28)は、「もしこれに応じなければ、妹を力ずくで彼(ヘクマトゥッラさん)に引き渡すと言われた」と続けた。
この裁判では、元夫で、現在は新たにタリバンに入隊したヘクマトゥッラさんが勝訴した。シャムスさんは故郷のウルズガン州の裁判所に、ナズダナさんの命が危険にさらされていると説明しようとしたが、誰も耳を貸さなかったという。
その結果、シャムスさんとナズダナさんは逃げるしかないと決断した。
3年前に政権に復帰した際、タリバンは過去の腐敗をなくし、イスラム法の一種であるシャリアの下で「正義」を実現すると約束した。
それ以来、タリバンは約35万5000件の事件を精査したという。
そのほとんどは刑事事件で、うち40%は土地をめぐる紛争、さらに30%は、ナズダナさんのケースのような離婚を含む家族問題だと推定されている。(中略)
ナズダナさんの離婚判決は、BBCが首都カブールにある最高裁判所のバックオフィスに特別に立ち入りを許された際に発見された。
アフガニスタン最高裁のアブドゥルワヒド・ハカニ報道官は、ナズダナさんの離婚判決について、裁判にヘクマトゥッラさんが「出席していなかった」ため無効だと述べ、ヘクマトゥッラさんに有利な判決が出されたことを認めた。
「腐敗した前政権による、ヘクマトゥッラとナズダナの結婚を取り消した決定は、シャリアと結婚のルールに反するものだった」と、ハカニ報道官は説明した。
しかし、タリバンによる司法制度改革の約束は、単に解決済みの事件の見直しにとどまらない。
タリバンは、男女を問わずすべての裁判官を組織的に解任し、自分たちの強硬な視点を支持する人々と入れ替えた。
女性はさらに、司法制度に参加する資格がないとされた。
タリバンの最高裁判所の対外関係・コミュニケーション部のアブドゥルラヒム・ラシッド部長は、「女性には裁く資格も能力もない。我々のシャリアの原則では、司法の仕事には高い知性を持つ人が必要とされているからだ」と説明した。
司法の場で働いていた女性たちにとってこの喪失感は大きい。また、その影響は本人たちだけにとどまらない。
元最高裁判事のファウジア・アミニさんは、法廷に女性がいなければ、法の下で女性の保護が改善される望みはほとんどないと話す。アミニさんはタリバンの復権後、国外に逃亡している。(中略)
20歳になったばかりのナズダナさんは、離婚書類を握りしめ、誰かが助けてくれることを願いながら、1年間ここにいる。
「国連を含め、多くのドアを叩いて助けを求めたが、誰も私の声を聞いてくれなかった」
「どこに支援があるのか。私には女性としての自由を得る資格がないのか」(後略)【10月1日 BBC】
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女性を教育から排除しておきながら、「女性には裁く資格も能力もない」と女性を司法から排除、更には女性は法廷に出席して権利を主張することもできない・・・ため息の出る状況です。
【最高指導者が女性の教育に反対?】
タリバン内部にも女性の教育を認めるべきだと考える者もいるようですが、「最高指導者のハイバトラー・アクンザダ師が女性教育に強く反対しているようだ」との見方も。
****「ネコやリスは外で遊べるが女性はできない」 権利制限続くアフガン、じわり狭まる国際的包囲網****
イスラム原理主義勢力タリバン支配下のアフガニスタンで女性の教育が制限されるなど抑圧が続く中、国際社会で反発が広がりつつある。
米人気女優のメリル・ストリープさんは9月、国連関連会合に出席し、人権状況の改善を求めて異例の声を上げた。欧米4カ国も同月、アフガンでの女性政策が「女子差別撤廃条約(CEDAW)」に違反していると強く批判。実権を握っって3年以上が経過したタリバンだが、包囲網はじわり狭まっている。
法律で全身や顔を覆うことを義務化
「首都カブールでネコは外に出て、顔に注ぐ陽光を感じ取ることができる。リスはネコとじゃれ合って公園に入ることができる。鳥も歌を歌うことができる。しかし、女性たちは、そうはできない。これは常軌を逸している」
社会派女優として知られるストリープさんは9月23日、米ニューヨークで開催された国連総会関連の女性会合で、タリバン政権の女性政策を痛烈に批判した。
アフガンでは2021年8月にタリバンが政権を奪取。中学生以上の女子教育が停止され、女性の就労も制限された。今年8月には、女性が公の場で全身や顔を覆うことなどを義務付けた法律も発表された。「誘惑」を避けるのが目的といい、近親者の男性を伴わない女性の交通機関利用も禁止されている。
アフガンでは、人権状況担当のベネット国連特別報告者の入国も同月20日までに禁止されたと報じられるなど、国連との摩擦も強まっている。
在カブール日本大使館はこれを受け、X(旧ツイッター)でタリバン政権に「深い懸念」を表明。ドイツ、オーストラリア、カナダ、オランダの4カ国も9月25日、アフガン女性の人権状況がCEDAWに抵触すると非難した。
豪州のウォン外相は「アフガンの少女ら女性たちは公共での生活を制限されている。独加蘭3カ国との共同歩調は、前例のない行動だ」とタリバン政権に圧力をかけた。
タリバン内部で「女性教育必要」の声も…
アフガンを昨年末に訪問し、女性教育など諸問題を巡り、タリバン政権要人らと会談した山本忠通・元国連事務総長特別代表(事務次長)兼国連アフガン支援団(UNAMA)代表は産経新聞の取材に対し、「タリバンの中でも、国際関係に携わった人々や、実際に行政に携わっている人たちは女性教育が必要だとはっきり認めている。正確なところは不明ながら、最高指導者のハイバトラー・アクンザダ師が女性教育に強く反対しているようだ」と話す。
アフガンでは、最高権力者が発言する内容は絶対で、異論を唱えられないのが実情。山本氏は「(現状の改善は)統治の構造自体と同師に挑戦することになり、困難が生じていると思われる。同師を説得する必要があるようだ」と語る。
実はアフガンでは22年3月、女性に中等教育を始めるとの決定が一時的になされたことがあった。しかし、生徒が学校に登校すると突如、下校を命じられた。その伏線は前日、南部カンダハルで行われた指導者たちの会議だったともいわれる。
山本氏は「アクンザダ師がその場で反対せず中等教育が始まると誰もが思ったが、会議終了1時間半後に変更の指示があり、ダメとなった。政権側はあわてて方針を撤回しようと思ったが、時遅く、子女の登校前に間に合わなかった、と関係者から聞いた」と話す。
アクンザダ師の真意について、21年に崩壊したガニ政権で財務相を務めたザヒルワル氏は「(同師は)まだ自分の権力に確信を持てず、規律を隅々に行き渡らせる必要から、この問題への反対を守らせることで自分の権威(忠誠)を確認しているのではないか」と山本氏に語ったという。
「心の記憶に残る」五輪失格
タリバンの女性抑圧は、今夏に開催されたパリ五輪の舞台でも、大きな話題となった。
紛争や迫害によって故郷を追われたアスリートで構成される難民選手団の一員、マニジャ・タラシュさん(アフガン出身)は「アフガン女性を解放せよ」と書かれたマントを着用し、ブレイキン(ブレイクダンス)に出場した。政治的行為とみなされ、失格となったが、「人々の心の記憶に残るため」マントを着用したと強調。その上で、「どうか(政権に)屈しないで」とアフガン女性たちに涙ながらに訴えた。
また、タリバン政権から「アフガン代表」と正式認定されないまま、国際オリンピック委員会(IOC)の出場依頼に応じたキミア・ユソフィさんは陸上女子100メートル予選を終えた後、「教育」「スポーツ」「私たちの権利」と書いたゼッケンを報道陣にかざしてみせた。
彼女が口にした言葉は重みを持つ。「私は人間だ。自分が何をするかは、私が決める」。【10月14日 産経】
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【“包囲網はじわり狭まっている”とは言い難い現状】
“「国際社会が一丸となれば、アフガンに変化をもたらし・・・・」”(メリル・ストリープさん) “実権を握っって3年以上が経過したタリバンだが、包囲網はじわり狭まっている”(上記【産経】)・・・・そうだろうか?
私には現実は逆のように思えます。
昨年には中国がタリバン暫定政権の大使を受入れ、国家承認にも前向きと報じられていました。
その中国に対しては、国内女性には厳しい“シャリア遵守”も随分寛容にもなるみたい。
****外国人女性と銃構え物議 タリバン兵、女性抑圧下で―アフガン****
(アフガニスタンで撮影されたとみられるイスラム主義組織タリバンの兵士(左)と外国人女性とされる画像(SNSより・時事)
アフガニスタンで、イスラム主義組織タリバンの兵士が外国人女性と一緒に銃を構えたり、親密に寄り添ったりしているとされる画像がネット上で拡散され、物議を醸している。タリバン暫定政権はアフガン女性の行動を厳しく抑圧しているだけに、SNSでは「明白な矛盾」と非難する声が上がっている。
地元メディアによると、画像に写る複数の女性は中国人旅行者。詳しい撮影時期や場所は不明だが、今週に入って拡散された。屋外にいながら、頭部を覆うイスラム教徒のスカーフ「ヒジャブ」を着用していない女性も写っている。
暫定政権は極端なイスラム法解釈に基づき、教育や就労から女性排除を進めてきた。女性には近親男性の付き添いなしの遠出を許さず、8月には公共の場で歌ったり大声を出したりすることも禁じた。
SNS上では「アフガン女性は沈黙しているのに、中国女性は銃を構えて自由にポーズを取るなど偽善の極みだ」との投稿も。中国が最近、アフガン国内の開発を目的に暫定政権との関係強化に動いていることが撮影を許した背景にあるとの指摘もある。暫定政権は今回の件にコメントしていない。【10月10日 時事】
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そしてロシアも。
****ロシア タリバンの「テロ組織」指定を近く解除の見通し****
ロシアは、アフガニスタンで実権を握るイスラム主義組織タリバンについて、テロ組織の指定を近く、解除する見通しです。
ロシアメディアによりますと、アフガニスタン問題を担当するカブロフ大統領特使は4日、タリバンのテロ組織としての指定解除について、「最高レベルですでに決定が下された」と明らかにしました。法的な手続きを経て、正式に指定が解除されるとし、「近く発表される」との見通しを示しています。
ロシアは2003年からタリバンをテロ組織に指定していますが、2021年にタリバンがアフガニスタンでの実権を掌握して以降、関係構築を進め、今年6月にサンクトペテルブルクで開かれた国際経済フォーラムに招待するなどしています。【10月5日 TBS NEWS DIG】
ロシアメディアによりますと、アフガニスタン問題を担当するカブロフ大統領特使は4日、タリバンのテロ組織としての指定解除について、「最高レベルですでに決定が下された」と明らかにしました。法的な手続きを経て、正式に指定が解除されるとし、「近く発表される」との見通しを示しています。
ロシアは2003年からタリバンをテロ組織に指定していますが、2021年にタリバンがアフガニスタンでの実権を掌握して以降、関係構築を進め、今年6月にサンクトペテルブルクで開かれた国際経済フォーラムに招待するなどしています。【10月5日 TBS NEWS DIG】
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タリバン暫定政権は今月下旬開催のBRICS首脳会議への参加を議長国ロシアに要請しています。
****BRICS会議参加に意欲=議長国ロシアに要請―タリバン****
アフガニスタンのイスラム主義組織タリバン暫定政権は26日までに、今年ロシアが議長国を務める新興国グループ「BRICS」関連会議への出席を同国に要請したと明らかにした。中国など加盟国の一部は近年、アフガンへの投資に積極的な姿勢を示しており、経済協力を強化したい考え。
BRICS首脳会議は10月下旬にロシア中部カザンで開かれる。(中略)出席要請に対するロシア側の反応は明らかになっていない。【9月26日 時事】
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【欧米・西側の考えだけで動いてはいない今の世界 イスラム世界に仲介を依頼するのは?】
現在の世界は欧米・西側の考えだけで動いてはいません。中国・ロシアは欧米・西側に反発し、グローバルサウスは独自の対応をしています。
タリバン暫定政権に影響力を発揮しようと思えば、単に欧米・西側だけで批判するのではなく、裾野を広げて行く必要がります。
個人的に思うのは、その点で一番有効なのはアラブ・イランやアジアのイスラム国などイスラム世界ではないでしょうか。タリバンはシャリアを前面に出していますが、同じイスラムを掲げる国でタリバンのような厳しい女性差別をしている国はありません。(もっと緩やかな女性差別なら多々ありますが)
タリバンへの働きかけを行うように日本や欧米がイスラム世界に働きかける・・・そんな動きがあっても良さそうですが・・・。