孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

関東大震災から100年 朝鮮人虐殺事件

2023-09-01 23:16:57 | 災害

(朝鮮の人々を保護するため、旧田島町の神社境内に設けられた小屋=「大正12年9月1日大震災記念写真帳」より(川崎市立中原図書館所蔵) 

“朝鮮人労働者を雇い、工員を派遣していた親方が暴徒から朝鮮人たちをかくまったり、旧田島町の助役が新田神社(川崎区渡田)に小屋を設け、約百八十人の朝鮮人を保護し、自警団が押しかけても守った記録もあった。”【2020年8月31日 東京】

当時まだ人口の少ない田舎だった川崎でも、朝鮮人殺害の記録の一方で、上記のような保護の動きもあったようです。

「日ごろから朝鮮人と付き合いがあった人たちは、簡単にデマを信じることなく、加害者にもならずにすんだ。犯罪をあおるヘイトスピーチと対峙していくヒントがある」【同上】)

【デマを信じて虐殺へ 背景には差別意識と独立運動への警戒感】
今日9月1日で、1923年9月1日11時58分に起きた関東大震災から丁度100年が経過しました。

絶え間なく地震災害に襲われている日本にあっては、特に、地震調査研究推進本部(文部科学省研究開発局地震・防災研究課)によると、甚大な被害が予想される南海地震の発生確率が今後30年以内で70~80%程度、50年以内は90%程度にも及んでいるとされるなかで、災害対策を改めて考える日でもありました。

(上記の発生確率を考えると、本来なら目の色を変えて対策に取り組むべきところでしょうが、政府にも、自分を含めた国民にもそうした緊張感がまったく見られないというあたりが・・・人間というのはそういうものなのでしょう)

100年前の関東大震災では、地震・火災・津波の被害だけでなく、不安で動揺する人々の間で「朝鮮人や共産主義者が井戸に毒を入れた」といった類のデマが流れ、それを信じた官憲や自警団などが多数の朝鮮人や共産主義者を虐殺するという二次的事件も発生しました。

この種の出来事によくあるように正確な犠牲者数は不明で、論者の立場によりその数は異なりますが、推定犠牲者数は数百名~約6000名とされています。【ウィキペディアより】

事件が起きた背景については、民族的な差別意識が当たり前のこととされるような社会にあって、当局側に朝鮮・台湾の独立運動への警戒感があったことも影響したようです。

なお、現代では少なくとも表向きは差別はよくないとされていますが、私の親世代、更に震災を経験したその上の世代にあっては、差別は極めて当然の感情であり、それを抑制するという意識はほとんどないように思われます。
そいう風潮の社会で流言飛語が流れたら・・・結果は想像に難くないようにも。

****震災時の背景****
当時の日本政府は地震発生前に発生した朝鮮の三・一運動や台湾の大規模デモを流血鎮圧した経験から、これら統治領の独立運動を行う一部の民衆の抵抗に警戒感を抱いていた。

当時の朝鮮人への無理解と民族的な差別意識も背景として考えられる。

日本国内では大正デモクラシーによって労働運動・民権運動・女性運動など支配権力に対する社会主義者らの抵抗・権利拡大運動の活性化と、それに対抗する保守的勢力の急伸、首相暗殺や恐慌による政治経済への不安から社会体制が揺らいでいた。

また、国外でもイギリス・アメリカとの対立、シベリア出兵の大失敗などから国際的な孤立化を深めつつあり、関東大震災はいわば内憂外患の状態に追い打ちをかけるように起こった大災害だった。

山本内閣は9月7日に治安維持令を公布した。この戒厳令が解除された11月15日までの東京・神奈川・埼玉・千葉の被災地1府3県民の市民的・政治的自由が停止した状態の中で、大震災発生直後の9月1日午後3時以降、東京や横浜などで「社会主義者及び鮮人の放火多し」「不逞鮮人暴動」といったデマが発生していったが、デマの中には警察や軍が流したものもあった。

これらの報道や伝聞による噂に接し不安を煽られた各地の民衆や有志によって自警団が結成されたが、中には地域の管轄警察の主導・指導で組織された自警団もあった。

これら自警団の一部によって朝鮮人・日本人・中国人らが虐殺されていった。

陸軍や警察はこの混乱を奇貨として社会主義者や労働運動家らの抹殺を画策し、10名が軍隊に虐殺された亀戸事件および無政府主義者が憲兵大尉らに殺害された甘粕事件が実行されたが、こうした「白色テロ」に対する責任追及や批判は低調だった。

当時の社会にとっては治安維持と被災者救援活動の一環であり、軍や政府や警察が威信を取り戻したとして歓迎される状況になっていた。【ウィキペディア】
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【民団主催式典 初めて日韓国会議員が参列】
東京では在日本大韓民国民団(民団)による朝鮮人虐殺の犠牲者を追悼する「殉難者追念式」が催されました。

****関東大震災の朝鮮人虐殺 東京で追悼式典開催=韓日国会議員ら出席****
在日本大韓民国民団(民団)東京本部は1日、東京都内で関東大震災当時に起きた朝鮮人虐殺の犠牲者を追悼する「殉難者追念式」を開催した。

関東大震災から100年を迎え、在日韓国大使館と在外同胞庁が後援した今年の式典には初めて韓日の政治家が出席し、例年に比べ大きな規模で開かれた。

朝鮮人虐殺を公式に認めていない日本政府の関係者の姿はなかった。

韓国からは超党派の国会議員でつくる「韓日議員連盟」の会長を務める与党「国民の力」の鄭鎮碩(チョン・ジンソク)議員と幹事長である最大野党「共に民主党」の尹昊重(ユン・ホジュン)議員、幹事である国民の力の裵賢鎮(ペ・ヒョンジン)議員が出席した。

日本からは鳩山由紀夫元首相、山口那津男・公明党代表、福島瑞穂・社民党党首、逢坂誠二・立憲民主党代表代行、額賀福志郎・日韓議員連盟前会長、武田良太・日韓議員連盟幹事長らが会場を訪れた。

献花台の両側には、日韓議員連盟会長を務める菅義偉元首相と韓悳洙(ハン・ドクス)首相からの花輪が並べられた。

民団は「関東大震災当時の韓国人に対する大量虐殺の悲劇は天災であると同時に人災だった」と指摘。数千人の韓国人が虐殺されたが、国を奪われた状態だったため抗議はもちろん調査を要求することもできなかったと強調した。

民団東京本部の李寿源(イ・スウォン)団長は「悲惨な受難の歴史は絶対に忘れてはならない」として犠牲者に哀悼の意を表した。

また、日本政府の中央防災会議が作成した関東大震災の報告書に「過去の反省と民族差別の解消の努力が必要なのは改めて確認しておく」と明記されているとして、韓日両国の平和と共存に希望を示した。

尹徳敏(ユン・ドクミン)駐日大使は、犠牲になった韓国人の正確な数は確認されていないとしながら「数字を問わず、関東大震災当時に韓国人が無念に犠牲となった事実は誰も否定できない歴史だ」と述べた。

続けて、不幸な歴史は二度と繰り返されてはならないとし、「ありのままの歴史を直視すれば、韓国と日本は真のパートナーとして未来志向的協力を持続し、世界平和と繁栄に共に寄与できるだろう」との考えを示した。

一方、尹大使と李団長は約6000人が命を奪われたと推算される朝鮮人虐殺を認めない日本政府に明確に真相究明を求めることはせず、犠牲者の追悼と両国の相互理解を強調した。

鳩山元首相は追悼式に出席後、記者団に対して日本は朝鮮人虐殺をきちんと調査し、過去の過ちに対して謝罪の気持ちを持たなければならないと述べた。【聯合ニュース】 
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“今回は、初めて日本と韓国の国会議員が参列した”というのは、韓国・伊政権のもとで進む日韓関係改善を反映したものでしょう。

【松野官房長官「政府内において事実関係を把握する記録が見当たらない」】
歴史の「常識」とも思われる朝鮮人虐殺事件ですが、日本政府は“朝鮮人虐殺を公式に認めていない”ということで、松野博一官房長官は「政府内において事実関係を把握する記録が見当たらない」と述べています。

****関東大震災での朝鮮人虐殺「記録ない」と発言 日本に対し「必要な措置検討」=韓国政府****
韓国外交部の任洙ソク(イム・スソク)報道官は31日の定例会見で、日本政府が1923年の関東大震災当時に起きた朝鮮人虐殺について「記録が見当たらない」としたことについて、「韓国政府はこれまでさまざまな機会に日本に対して過去を直視するよう促した」として、政府として必要な措置を引き続き検討するとの立場を示した。

また、政府は関東大震災に関して日本側に真相調査の必要性を提起し、真相究明のための資料提供を要請したと説明した。

日本の松野博一官房長官は30日の記者会見で、朝鮮人虐殺について「政府内において事実関係を把握する記録が見当たらない」と述べた。また、災害の発生時に国籍を問わず全ての被災者の安全と安心を確保するために努力することが非常に重要な課題だと認識していると述べたが、反省や教訓という言葉はなかった。【8月31日 聯合ニュース】
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“論者の立場により認識が異なる”この種の問題ではありますが、被害者とされる側からすれば「記録が見当たらない」で済まされると納得がいかないところでしょう。
北朝鮮の拉致問題で、同様の対応に日本人がどのように感じるか・・・。

日本との関係重視に力点を移している伊政権は上記のような対応ですんでいますが、反日傾向が強い野党は反発を強めています。

****日本責任逃れ、韓国政府は無関心 関東大震災直後の朝鮮人虐殺****
韓国国会で関東大震災直後に起きた朝鮮人虐殺の真相を究明するための特別法制定を目指す最大野党「共に民主党」の柳基洪議員らが1日、ソウルで記者会見し「日本政府の責任逃れと韓国政府の無関心」を批判した。柳氏らは「100年の無責任に終止符を打つべきだ」として早期の可決、成立を訴えた。

法案は、首相直属の調査委員会を設置し、「朝鮮人が井戸に毒を入れた」といった流言飛語がもとで殺された被害者の名誉回復などが柱。与野党議員100人の連名で3月に提出された。

市民団体幹部は「政府と国会は今まで何をしてきたのか」と批判。「真実が分からなければ(日韓の)和解と許しに至らない」と話した。【9月1日 共同】
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犠牲者数について多くの幅のある考え方があるということと、そういうことがあったのかどうかという認識は別物のように思えるのですが。

最近観たTV番組だったかどうか忘れましたが、出演者が「歴史とは自国の失敗を学ぶことだ。どうして間違えたのか。再び繰り返さないためにはどうすればいいのか・・・」といった趣旨のことを述べていました。

日本に限らず、どの国も自国の過去の過ちに向き合うのは非常に困難なことです。ただ、「なかったこと」にしてしまっては、同じ過ちを繰り返すことになります。

SNSが発達した今日、流言飛語・デマ・フェイクが飛び交う環境は、以前にもまして危険なものになっています。

混乱時における集団の“狂気”は、多くの悲劇を産みます。なかには朝鮮人と疑われて殺害された日本人も。
8月30日のNHKクローズアップ現代は、そうした「福田村事件」を取り上げていました。

****福田村事件とは****
内閣府中央防災会議の専門調査会の報告書によると、当時、関東地方各地では「朝鮮人が井戸に毒を入れた」「火をつけた」などの流言(デマ)が広がり、多くの朝鮮人や中国人が民衆や軍、警察によって殺傷されました。

関東大震災から5日後の大正12年9月6日、甚大な被害が出た都心部からおよそ30キロ離れた千葉県福田村。香川県から来ていた薬売りの行商の一行が神社で休憩していたところ、地元の自警団に言葉や持ち物などから、「朝鮮人ではないか」と疑われ、幼い子どもや妊婦を含む9人が命を落としました。

事件後、殺害を主導した自警団の8人が有罪判決を受けたものの、その後、大正天皇の崩御に伴う恩赦で釈放されています。【NHK】
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朝鮮人と疑われた日本人ですら犠牲になるような当時の空気ですから、実際の朝鮮人がどういう状況に置かれていたかは・・・・。

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パキスタン洪水  気候変動も関与した世界的危機 国連事務総長「これほどの気候被害は目にしたことがない」

2022-09-13 22:29:22 | 災害
(【8月28日 BBC】)

【国土の3分の1が冠水】
8月末から報じられているパキスタンの洪水は甚大な被害をもたらしています。

****パキスタン、洪水で国土の3分の1冠水 死者1100人超・人口の15%被災****
パキスタンのレーマン気候変動相は、モンスーン期の豪雨と大規模な洪水によって、国土の3分の1が冠水したと明らかにした。死者はこれまでに1100人を超え、シャリフ首相によると、子ども380人が含まれる。

6─8月の降雨量は30年間平均を約190%上回り、全人口の15%に当たる3300万人が被災した。

国連は「前例のない気候の大惨事」とし、グテレス事務総長はビデオメッセージで1億6000万ドルの支援を各国に呼びかけた。報道官によると、グテレス事務総長は来週被災地を訪問するという。【8月31日 ロイター】
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国土の3分の1が冠水・・・・俄かには信じがたい数字です。
日本で言えば、北海道と九州の全域が冠水したような数字で、ほとんど「日本沈没」クラスの災害です。
人的被害の1100人(続報では1290人とも)は、災害規模を考慮すれば、よくぞそのレベルにとどまっているという感も。
経済的被害は・・・想像できません。

****パキスタン洪水、雨量は平年の10倍 インダス川が「湖」に****
パキスタンで深刻な被害をもたらしている洪水について、欧州宇宙機関は1日、平年の10倍の降雨量が原因となったとの見解を示すとともに、インダス川の氾濫によって生じた広大な「湖」の衛星画像を公開した。
 
同国では、6月から続くモンスーン(雨期)の豪雨が引き起こした洪水で、これまでに少なくとも1190人が死亡。広範囲の農地が水没し、家屋100万戸以上が損壊した。
 
ESAは、救助活動を支援するため、地球環境モニタリング計画「コペルニクス」の衛星データを使用して宇宙から洪水の規模を測定したと発表。6月中旬以降の降雨量は「通常の10倍」であり、これが国土の3分の1を水没させる洪水を引き起こしたと説明した。
 
ESAはさらに、南部ラルカナとデラムラードジャマリの間で、氾濫したインダス川が「幅数十キロの長い湖を事実上形成」している地域の衛星写真を公開した。
 
パキスタン当局によると、同国の7人に1人に当たる3300万人以上が被災しており、復興には100億ドル(約1兆4000億円)以上を要する見通し。

国連のアントニオ・グテレス事務総長は「気候大災害」だとして、1億6000万ドル(約224億円)の緊急支援を各国に呼び掛けている。 【9月2日 AFP】AFPBB News
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パキスタンのレーマン気候変動担当大臣は「モンスーンは毎年来るが、こんな“怪物”は見たことない」と。
また、同氏は北部の氷河が解けているとする専門家の見解に言及し、洪水の主な原因は「気候変動だ」とも述べています。

【気候変動との関連】
そのたりの気候変動との関連について、気象予報士の千種ゆり子氏は以下のようにも。

****【解説】パキスタンの洪水被害。地球温暖化の影響は?2つのポイントから分析****
(中略)
1300人近くが亡くなったとされるパキスタンの洪水被害は、過去最悪と言われた2010年の洪水に迫る被害となってきています。パキスタンのシェリー・レーマン気候変動相によれば、国土の1/3が冠水したといいます。

地球温暖化が進むと極端な気象が増えると言われている中で、今回のパキスタンの洪水と地球温暖化はどのように関係しているのでしょうか。ポイントとなる降水量や、春先の熱波による氷河の融解から考えます。

一年で降る雨がわずか一日で…
まずは、降水量を見てみましょう。
被害の大きかった地区の一つ、シンド州の都市ナワーブシャー。年間の降水量は約150mmですが、今年の8月24日には、たった一日で222mmの雨が降りました。
平年であれば一年で降る量の雨が、わずか一日で降ってしまったことになります。18日、25日にも似たような大雨が降っていたのですから、レーマン気候変動相が「モンスターモンスーン」と表現していたのも頷けます。

パキスタンは「水不足」が深刻な社会問題になることもある、雨の少ない国です。大雨に慣れていない土地柄であるために、被害が拡大したと思われます。

温暖化の影響は?2つのポイントから分析
今回の洪水被害に関して、地球温暖化による影響は、いくつかに分けて論じることができます。
1.地球温暖化が、今回の降水量に与えた影響。
2.地球温暖化が、氷河の融解に与えた影響。

1.大雨そのものに地球温暖化が与えた影響
現在地球は、産業革命前に比べて、約1℃気温が上昇しています。気温が1℃上がると空気が含むことが出来る水蒸気量は7%増えます。

今回の場合は水蒸気量がどれくらい増えていたのか、詳しい分析は研究者による解析を待つ必要がありますが、日本を対象にした研究では、1℃気温が上昇した時の水蒸気量の増加率は、7%をはるかに上回り、11~14%にものぼることがわかっています。

一般的には、空気中の水蒸気量が多くなると、積乱雲がより発達しやすくなり、雨が降る所ではより顕著な大雨になりやすい傾向が存在していて、これは「Wet-gets-wetter,dry-gets-drier」メカニズムとして広く受け入れられています。

雨のもととなる水蒸気量が増えているわけですから、地球温暖化の影響を受けて多少なりとも降水量が増えている可能性は高いと思います。

2.氷河の融解に地球温暖化が与えた影響
今回の洪水について、パキスタンのレーマン気候変動相は「4~5月の熱波で氷河が融解しインダス川の水量が多くなっていた所に大雨が降ったため洪水の被害が拡大した」と、専門家の見解を引用しながら述べています。

パキスタンに貴重な水資源を供給しているのが、パキスタンの北にあるカラコルム山脈やヒマラヤ山脈の積雪・氷河です。

実際にインダス川の流量がどれだけ増えていたかはわかりませんが、4~5月にパキスタンが異常高温だったことは確かで、パキスタンの月平均気温は、4月としては1961年以降で最も高かったと報告されています(パキスタン気象局)。

世界気象機関は、今年の春先の熱波についても、地球温暖化の影響で、1℃分の底上げ効果があったとの発表をしています。

ヒマラヤやカラコルム山脈をはじめとするアジアの氷河の融解がすでに進んでいることは、IPCCによって2019年に発表された海洋・雪氷圏特別報告書でも「確信度が非常に高い」と結論づけられています。
地球温暖化の影響で、インダス川の流量が増えていた可能性は高いと思います。

気象災害とSDGsを繋げて考えてみよう
被害をさらに大きくする要因が「貧困」です。

地球温暖化が進むと気象現象が極端になると言われますが、気象災害はどうしても、貧しい人が一番被害を受けやすくなる傾向にあります。

インフラの整備で防げる被害も、貧しければ防げません。被害を受けた後の復興にも時間がかかります。気象災害によって職を失い、さらに貧困が加速する、という負の循環もあります。

パキスタンのシャバズ・シャリフ首相はパキスタンが出している二酸化炭素は全体の1%以下だとTwitterで述べています。つまり、ほとんど温室効果ガスを出していないのに、地球温暖化によって激甚化した災害の被害を受けてしまったのだ、不公平である、ということで、「気候正義」という概念を念頭に発言したものと思われます。

地球の気温は産業革命前に比べて約1.1℃上昇しており、この上昇のほとんどが、人間活動による温室効果ガスの影響であることに疑う余地がないということは、すでにIPCCで報告されています。この温室効果ガスの多くを排出したのは、先進国です。これまで豊かさを享受した先進国は、その責任を果たすべきだ、という考え方が、気候正義です。

「持続可能な開発目標」、いわゆるSDGsでは17の項目があげられていますが、項目1であげられている「貧困をなくそう」は、気候変動による被害を小さくすることにも繋がります。今回の洪水で被害を受けたパキスタンの方々が一日も早く平穏な暮らしを取り戻せるように、日本からは何ができるのか、SDGsの視点も含めて、考えるべきです。

もちろん、今回の洪水被害に対して募金をする、というのも1つの選択肢。カーボンニュートラルを一刻も早く実現するために行動することは、今後の被害を減らすという観点での、1つの選択肢になると思います。【9月6日 気象予報士・千種ゆり子氏 HUFFPOST】
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【貧困者にとりわけ重い負担】
災害の犠牲者の悲しみ・痛みは、パキスタンでも日本でも、また、洪水でも地震・台風でも同じです痛ましいものがあります。

上記記事にもあるように、その悲しみは貧困者に襲い掛かります。

****パキスタン、洪水で1290人死亡 「国土の3分の1」が浸水****
(中略)
被害が大きかった地域の一つの北西部カイバル・パクトゥンクワ州のカブール川近くの集落を毎日新聞助手が9月2日に訪ねた。多くの家屋が損傷し、水圧によって壁にヒビが入った家も多く見られた。

住民によると、8月末に近くの川のダムが決壊し、決壊から約1週間がたった今も一部の家や集落を通る道は冠水したままだという。住民のアルシャドさん(35)は「夜、寝ているうちに川が決壊して水が家の中まで入ってきた。避難して自分の命は助かったが、家財道具はすべて失ってしまった」と途方に暮れていた。

パキスタンでは、かねて食料品などの物価上昇が深刻で、洪水被害は庶民の生活苦に追い打ちをかけている。
政府が用意した避難所に身を寄せるタジーム・ビビさん(36)は「借金をして2カ月前に牛を買って牛乳を売って生活していたのに、牛は洪水で流され、家も損壊した。どうやって家を修理しろと言うのでしょうか」と訴えた。

同じく避難中のディルシャド・ベグムさん(70)も「私たちは貧しく、家を建て直すお金はありません。政府に被害を補償してほしい」と語った。

パキスタン災害当局によると、6月中旬以降に住宅約146万軒が全壊または部分的に損傷した。また、国連人道問題調整事務所は、5000キロ以上の道路と243の橋が被害を受けたとしている。

国連のグテレス事務総長は9月9日にパキスタンの首都イスラマバードに到着した後、被災地を訪ねる予定で、ビデオメッセージで「(現地の)ニーズの規模は洪水のように拡大している」と支援を呼びかけた。【9月4日 毎日】
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****コツコツためた持参金が洪水で駄目に…結婚も中止 パキスタン****
パキスタンのトラック運転手で、7人の子どもがいるムリード・フセインさんは、10月に娘を結婚させようとしていた。しかし、自宅が洪水の被害に遭い、後ろ側の壁だけではなくコツコツ貯めた娘のための持参金「ダウリ」も流されてしまった。
 
フセインさんは、4部屋の家に兄弟家族と住んでいる。「娘の持参金は3年近くかけて準備していた」とAFPに語った。
 
パキスタンでは6月以降、記録的なモンスーン(雨期)による洪水が全土で発生。これまでに1200人以上が亡くなった。国土のほぼ3分の1が水に漬かり、3300万人の生活に影響が出ている。
 
最も影響を受けているのは農村部の貧困層だ。家屋や所持品、これまでにためてきた資産、穀物が押し流された。
 フセインさんが住むパンジャブ州の村もひどい状況になっている。洪水により倒壊したり、破損したりした建物も多い。
 
フセインさんの娘ノウシーンさんの結婚も流れてしまった。
 
フセインさんは、トラック運転手として稼ぐ月収1万7000パキスタン・ルピー(約1万1000円)から、毎月数千ルピーを娘のダウリー用にためていた。
 
家父長制のパキスタンでは、娘が結婚する際に多大な持参金を持たせる習慣がある。多くの地域で、親は娘が生まれたその日から持参金をためることになっている。多額の持参金を要求することは法律で禁止されているものの、未だこの習慣を行っている人は多い。
 
新郎の家族は将来の花嫁の家を頻繁に訪れ、家具や家電、衣料品などほしいものが書かれた膨大なリストを渡す。裕福な家庭は、自動車や住宅を要求することさえある。
 
リストに上げられたものを用意できないことは恥だとされ、十分な持参金を渡せない場合には、娘が義理の家族からひどい扱いを受けることも多い。
 
フセインさんは「ノウシーンの後に、娘2人と残っている息子1人を結婚させたかった」と語った。「少しずつためればできると思っていた」
 
自宅が洪水になると、フセインさんは、妻と子どもたちと一緒に、高台にある近所の駅に避難した。
一家は2日前、泥をかき分けながら自宅に戻った。家のひどいありさまを見て、妻と娘は泣き出したという。
 
フセインさんの妻スグラ・ビービーさんは、家の状態と娘の持参金のことを思うと涙が出てくる。
長い年月をかけて特注のベッドセット、鏡台、ジューサー、洗濯機、アイロン、シーツ、キルトなどを買い集めてきた。しかし、すべてが洪水で駄目になってしまった。

「汚れてしまった。これを見たらみんな、私たちが娘に中古品を持たせたと思うだろう」とスグラさん。
 
結婚は中止になったが、ノウシーンさんは気丈に振る舞っている。
「家族にとって幸せな時となるはずだった、私もとても楽しみにしていた」とノウシーンさんはAFPに語った。
「私のために持参金をためるのがどんなに大変だったか、両親の苦労を目にしてきた。父と母はこれを一からやり直さなければならないなんて」
 
フセインさんは「自宅を再建すべきか、小麦をまくべきか、子どもたちを結婚させるべきか? 私たちにとっては、どれもとても重要なことだ」と述べた。 【9月12日 毎日】
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【国連事務総長「明日はあなたの国かもしれない」】
洪水自体の復旧には長い時間が必要とされるようです。その後の被災者の生活再建となると・・・

****冠水解消まで半年も パキスタン洪水で州首相****
大雨による洪水の被害が深刻化しているパキスタン南部シンド州のアリシャー州首相は、被災地で冠水が解消するまでに「3カ月から半年かかる」との見方を示した。地元メディアが13日までに報じた。
 
シンド州では、国内最大級のマンチャール湖の氾濫で近くの人口密集地が洪水に遭うのを避けようと、当局が堤防を一部破壊して人口が少ない地域に水を流した。このため周辺の村で新たに冠水が広がっている。
 
アリシャー氏は、冠水が深さ3メートルに及ぶ場所もあると指摘。「水が引いている場所でも、住民が戻れる状況ではない」と説明した。排水設備の整備を急いでいるという。【9月13日 共同】
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各記事にもあるように国連も支援に動いています。

****パキスタン洪水、国連総長が国際支援呼びかけ 「世界的危機」****
国連のグテレス事務総長は10日、大規模な洪水被害に見舞われたパキスタンの被災地を視察し、国際社会に資金援助の強化を呼びかけた。

モンスーンによる豪雨や北部山岳地帯の氷河溶解を受けた今回の洪水では1391人以上が死亡、住宅や道路、橋、家畜などが流され、パキスタンは被害額を300億ドルと試算している。

グテレス氏は記者会見で「きょうはパキスタンだが、明日はあなたの国かもしれない。これは世界的な危機であり、世界的な対応が必要だ」と述べた。

また「世界中で多くの災害を見てきたが、これほどの気候被害は目にしたことがない」とし、国際社会は気候変動の影響が最も深刻な国々への支援を強化する必要があると訴えた。

具体的には、復興や気候変動への適応を支援する資金提供に加え、20カ国・地域(G20)各国は自国の排出削減目標を毎年引き上げるべきだと指摘。

また、パキスタンのように気候変動の影響を受けやすい国に対する新たな債務救済の仕組みが必要だとし、債務国が対外債務の返済を続ける代わりに自国の気候プロジェクトに資金を振り向ける債務交換を提案した。【9月12日 ロイター】
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こうした災害を教訓として、今まで以上の取り組みが・・・ということであれば、唯一の救いにもなりますが、残念ながらそうしたこともないようです。

今後、現地では感染症拡大の心配もありますし、食料品価格高騰は必至でしょう。

貧しい国が裕福な国の工業化の影響を受けて気候変動災害に苦しむことについて“ラホール経営科学大学の社会学教授であるニダ・キルマニ氏は、「洪水に関するいかなる救済も『援助』としてではなく、過去数世紀にわたって蓄積された不正に対する賠償としてとらえられるべきである」と述べている”【8月31日 東洋経済ONLINE】
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中国でも、ドイツでも記録的な豪雨災害 気候変動の影響は?

2021-07-21 21:04:54 | 災害
(中国河南省鄭州市で20日、大雨の影響で浸水した地下鉄の車内を撮影したとされる動画の一場面。中国のSNSで拡散している【7月21日 朝日】
地下鉄車内で肩まで水位が上がってくる・・・まるでパニック映画のシーンみたいに怖いです。乗客が冷静に見えるのが不思議なぐらい)

【限定的な気象改変技術の効果】
式典などが行われる特定の日時を晴天にする・・・といった技術はときおり耳にしますが、中国ではその種の天候コントロール技術が進んでおり、実用に供されているようです。

*****共産党結党100年式典は人工晴天、翌日から関東・東海では豪雨*****
雨や雪を意のままに降らせ、特定の地域・日時を晴天にする――。近年の中国の気象改変技術の躍進は目覚ましいが、同時に近隣国・地域への気象や環境への影響の有無も懸念されている。

中国国務院は2020年12月、各省庁と地方政府に対し、人工降雨などの気象改変プログラムの実施対象地域を2025年までに550万平方キロメートルに拡大するという政策方針を示した。これは中国全土の57%に相当し、インドの総面積の1.5倍以上に相当する広大さで世界最大規模だ。

だが、これによる地球規模の気象、環境に対する影響について日本社会の関心は低く、関係省庁での研究も進んでいない。2008年の北京五輪開会式当日を、事前の人工降雨で晴天にしたことで知られる中国に対し、東京五輪開会式や開会期間中の荒天に対する日本の備えは果たして万全だろうか。

7月1日式典は「人工晴天」
中国共産党100周年記念式典が開かれた今年7月1日の北京・天安門広場。この日は降雨が予想されていたことから、中国当局は式前夜と、当日早朝、上空の積乱雲に向けて数百発の降雨ロケットを打ち上げたという。降雨を早めることによって、式典開会中の降雨を避けるのが狙いで、実際に式典の最後のころには晴れ間も広がっていった。

13年前の北京五輪開会式の際と同様、国家の威信をかけた重要行事で、自国の気象改変技術の高さを内外に誇ったことになる。弱い毒性を持ヨウ化銀だが、中国当局は「使用量はわずか」だとして人体への害も否定しているという。

一方、日本の東海から関東の太平洋側では、翌7月2日夜から発生した記録的な豪雨により、3日午前には静岡県熱海市で大規模な土石流が発生。多くの人命が失われた。

ただし、この2つの出来事の関連の有無は不明だ。(後略)【7月21日 吉村 剛史氏 JBpress】
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数百発の降雨ロケット・・・・中国はやることの桁が違います。
そうした行為が自然をかく乱し、別の災害発生などに影響する可能性は・・・そのあたりは全くわかりませんし、上記記事も、そこまで関連付けている訳でもありません。疑問は投げかけていますが。

【全体的には、自然に人間が翻弄される自然災害が多発】
ただ、言えることは、干ばつや洪水などに対処するためとして、中国は巨額の資金を投じ、気象改変研究を継続しているようですが、実際に天候をコントロールできるのは極めて限定的な地域・時間での話であり、全体的には、逆に自然に人間が翻弄される災害が多発しているということです。

今月はじめには四川省での大規模な豪雨被害が報じられています。

****四川省で豪雨被害、経済損失360億円か****
中国南西部の四川省で、豪雨による大規模な浸水被害が発生し、72万人あまりが被害を受けています。 増水した河川に押し流される白いボートや大量のガレキが、そのまま濁流にのみ込まれていく様子が確認できます。 

中国・四川省では9日から激しい雨が降り続け、広い範囲で大規模な浸水被害が発生しました。地元メディアによりますと、これまでに31の地区で72万人あまりが被災し、およそ11万人が避難したということです。

 死者や行方不明者の情報は入っていませんが、1300軒あまりの家屋が倒壊または浸水し、経済損失は360億円にのぼるとみられています。 

中国では11日夜から北京市や天津市などでも激しい雨が降り続いていて、気象当局は13日朝まで雷や強風を伴う強い雨のおそれがあるとして警報を出しています。【日テレNEWS24】
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そして今度は中国中部の河南省で17日から大雨が続き、省都・鄭州市の気象局は20日夜(日本時間同)、「千年に一度」の大雨との見解を示し、警戒を呼び掛けました。

****中国・河南省で記録的豪雨 12人死亡、1万人以上が避難*****
中国中部・河南省は、今月16日から続く記録的豪雨で、深刻な洪水被害に見舞われている。駅や道路が冠水し、住民1万人以上が避難を余儀なくされている。

当局によると、鄭州市でこれまでに少なくとも12人が死亡した。
また、主要道路が閉鎖され、空の便が欠航するなど、10都市以上に被害の影響が出ている。

人口約9400万人の河南省には最高レベルの気象警報が発令されている。
洪水発生の原因は複合的だが、気候変動による気温上昇は激しい降雨のきっかけになる。

ダム決壊の恐れも
ソーシャルメディアでは、道路全体が水没している様子が画像から確認できる。水の流れは速く、車やがれきが漂流しているのがわかる。

こうした中、河南省のダムが決壊する恐れが出ている。
当局によると、洛陽市のダムに20メートルほどの亀裂が生じている。同地域には兵士が配備され、軍は声明で「いつ決壊してもおかしくない」と警告した。

ツイッターには、鄭州市で浸水した地下鉄の車両に乗っていた乗客が、肩のあたりまで水に浸かっている映像が投稿されている。現実の状況を撮影したものなのかは不明。

救助隊がロープを使って人々を安全な場所に引き上げる様子や、列車の座席に立って水に浸からないようにする人の姿などが確認できる。

車両内に何人が閉じ込められているのかは不明だが、これまでに数百人が救助されたとの報告がある。

シャオペイと名乗る人物は、中国のソーシャルメディア「微博(ウェイボ)」に助けを求めるメッセージを投稿した。「車両内の水が自分の胸にまで達している。もう声も出ません」。
消防局はその後、この人物が救助されたと明らかにした。(後略)【7月21日BBC】
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“鄭州では20日午後4時から同5時までの1時間雨量が200ミリを超え、観測史上最大を記録。17日からの3日間でほぼ1年分の雨が降った計算になるという。”【7月21日 時事】 
1時間に200ミリというのは、想像を絶する降雨です。

衝撃的だったのは、浸水する地下鉄の様子

****地下鉄に閉じ込められた客「水位が徐々に」 河南省洪水****
中国河南省鄭州市の豪雨による洪水で20日、地下鉄が浸水し車両内に閉じ込められた乗客ら12人が死亡した。当時の車内の状況を、救出された乗客らが中国メディアに語った。

地下鉄浸水12人死亡 中国・河南「千年に1度の暴雨」
「今でも思い出すと胸がどきどきする」。浸水した車両に約2時間にわたって閉じ込められた女性は、当時の恐怖を振り返った。
 
女性は20日午後6時半ごろ、帰宅するために地下鉄に乗車した。走り始めて20分ほど後、地下鉄は急に運行を停止した。すると車内に水が入って、水位が徐々に上がっていった。乗客は全員、座席の上に避難。車内の乗客たちに緊張が走った。
 
午後7時20分ごろには、身長が低い乗客は首まで水につかるようになっていた。別の車両から移動してきた乗客もおり、車内の空気が薄くなっているように感じた。携帯電話で車内の動画を撮影して救助を求める乗客もいた。

午後8時10分ごろ、到着した救急隊員が車両の上部に穴を開けて乗客の救助を始めた。女性も午後8時50分ごろに救助されたという。
 
一方、救出された男性乗客は上半身裸の姿で中国中央テレビの取材に応じ、「水の流れがあまりに強かったので、(耐えるために)上着やカバンなど捨てられるものは全部捨てた」と話した。

肩まで達した水が勢いよく流れたが、近くのパイプにしがみついて耐えた。「何かをつかまなければ流されるほどの水流だった。もう少しで諦めそうになった」と振り返った。【7月21日 朝日】
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豪雨災害は中国だけでなくドイツ・ベルギーでも。

****洪水の死者200人超に=依然不明者も多数―独・ベルギー****
欧州西部を先週襲った豪雨による洪水の死者が20日、200人を超えた。これまでにドイツで170人、ベルギーで31人の犠牲が確認された。電話など通信手段の途絶も重なってまだ多くの安否不明者が残っており、「100年に1度」とも言われる災害の全容は把握しきれない状況だ。

ドイツでは特に被害の大きかった西部アールワイラー郡で155人の行方が分からないまま。ベルギーにもいまだ53人の安否不明者がおり、捜索が続いている。【7月21日 時事】
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【否定もできない気候変動との関連】
こうした災害は、普段に世界各地で起きている・・・と言えばそうなんでしょうが、災害報道が重なると、「やっぱり気候変動の関係だろうか・・・・」という印象も。

****ドイツの壊滅的な洪水、忍び寄る気候変動の影響****
ドイツをはじめ、ベルギーやオランダ、ルクセンブルクの一部で、数日にわたる豪雨が発生し、壊滅的な洪水をもたらした。死者は180人に上っている。

今回の豪雨と気候変動との関係について、科学者らはまだ明らかでないとしているが、気候変動がどんな暴風雨をもたらすかはわかったと言う。すなわち、より多くの雨が、より長く降り続くということだ。

洪水の大半が発生したドイツのライン川流域では、降雨量が記録を更新した。家屋は浸水し、ボートで道を渡らなければならなくなったほか、流域に建つ城の一部が流された。

「異常気象が増えることは気候モデルから予測されており、さほど驚くことではありません」と、ドイツのポツダム気候影響研究所の気候学者、ディーター・ゲルテン氏は述べている。それでも、今回の洪水の規模と激しさにはショックを受けたと言う。ゲルテン氏の生まれ故郷であるドイツ、オーバーカイルでも洪水があった。

「今回の出来事は、ドイツのような裕福な国であっても、厳しい気候の影響からは逃れられないことを示しています」と、米コロンビア大学の気候物理学者、カイ・コーンフーバー氏も言う。

気候変動で雨はどう変化するか
世界中の天気予報を提供するAccuWeatherによると、西ヨーロッパでは7月中旬から、動きの遅い低気圧のために激しい雨が降り続いていた。ドイツの一部では、1日の降水量が例年の1カ月分を超えた。この低気圧は、7月12日にロンドン各地で洪水を引き起こした後、南ヨーロッパに向かって移動していた。

気候変動は、今回の洪水に二つの点で影響を与えたと、科学者らは考えている。降雨量の増加と、暴風雨の動きの遅さだ。

「21世紀の気候のせいで、今回のような強い雨が起きる可能性が高まっているのか」との問いに、ゲルテン氏はそれはあり得ると答えている。

気温が上昇すると、空気中に蓄えられる水蒸気の量が増える。科学者らの見積もりによると、気温が1℃上昇するごとに、大気中に蓄えられる水分量は約7%増加する。大気中の水分量が増えれば、ヨーロッパを覆う低気圧や大西洋のハリケーンなどによる降雨量も増える。

洪水が発生するかどうかは、降雨量や都市開発の状況、地形(盆地か否か)などさまざまな要因に左右される。だが、今回の洪水がこれほど大規模になったのは、降雨量の多さが原因ではないかとゲルテン氏は言う。

6月30日付けで学術誌「Geophysical Research Letters」に発表された論文によると、大量の雨を降らせる雨雲がよりゆっくり動くことで、ヨーロッパでは今後、今回のような豪雨の頻度が高まるという。

「北極での温暖化増幅により、一般にこのような嵐の移動は、夏や秋にはさらに遅くなっていくと思われます」と、論文の著者の一人である英ニューカッスル大学の水文気候学者、ヘイラー・ファウラー氏は述べている。

北極や南極では、世界の他の地域に比べて2〜3倍のスピードで温暖化が進んでいる。その結果、北半球ではジェット気流が不安定になっていると、科学者らは考える。

両極地方と赤道地方の温度差が大きいときには、強く一定のジェット気流が吹くが、両極地方の温暖化が進むと温度差が縮まり、ジェット気流の速度が低下する。結果、低気圧や高気圧が停滞する期間が長くなるのだとゲルテン氏は説明する。

「気象は3日から7日ごとに変化するものですが、現在では数週間も同じ気象パターンが続くようになっています」(後略)【7月21日 ナショナル ジオグラフィック日本版】
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何か自然災害がおきると短絡的にすぐに気候変動に結びつけるのは非科学的ではありますが、気候変動の影響を無視するのもまた同様でしょう。慎重に検討すべき問題です。

私が住んでいる地域もつい先日線状降水帯の発生で川が溢れて浸水する家屋も出る被害がありました。
そういうこともあって、中国・ドイツの豪雨被害が気になった次第です。

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東アフリカ  拡大するバッタの「蝗害」 食糧難に拍車

2020-02-10 22:50:47 | 災害

(ケニア・アーチャーズポスト近郊の村に襲来したバッタの大群の中を駆け抜ける少女たち(2020年1月21日撮影)【2月10日 AFP】 
写真では、まだ青空がしっかり見えていますが、更にバッタの数が増えると、空を暗く覆いつくすようにもなるようです。完全なホラー状態です)

【国家の脆弱な食糧安全保障にとって大きな脅威】
今世界中で大騒ぎになっている新型コロナウイルス肺炎のような疫病のほか、世の中には様々な災害があります。
その一つが「蝗害(こうがい)」 “トノサマバッタなど相変異を起こす一部のバッタ類の大量発生による災害”【ウィキペディア】です。

古くは、モーセが虐げられていたユダヤ人を率いてエジプトから脱出する物語を中心に描かれ旧約聖書「出エジプト記」にも出てきます。

“モーセはエジプトのファラオに(ユダヤ)民族の解放を要求しますが、ファラオは認めませんせん。それどころか、労役をますます過酷にしました。そこで、神はモーセやアロンを通じて、災い(天災や災害など)をエジプトに下し、ファラオを懲らしめ、屈服させ、民族を解放するよう摂理されました。”【「聖書と歴史の学習館」】

その災いの8番目に起きるのが「蝗害」です。

その蝗害が今、東アフリカで進行しています。

****バッタ襲来で国家非常事態宣言 ソマリア、食糧難の恐れ****
アフリカ東部で過去数十年で最大規模のサバクトビバッタの群れが襲来している問題を受けて、ソマリア政府は2日、「国家の脆弱(ぜいじゃく)な食糧安全保障にとって大きな脅威」として、国家非常事態を宣言し、対策に乗り出すと表明した。
 
国連食糧農業機関(FAO)によると、年明け以降、アフリカ東部を中心に数億匹のバッタが発生。人口約1500万人のソマリアを襲っている群れの規模は過去25年で最大で、隣国のケニアでは過去70年で最大。

各国は上空から殺虫剤をまくなどして対応しているが、FAOは、このまま放置すれば「6月までにバッタの数が500倍になる」と警告している。
 
イスラム過激派による襲撃事件が相次ぐソマリアでは、4月が農作物の収穫時期にあたる。現地の農業・灌漑(かんがい)省は「いま行動しなければ、深刻な食糧難に陥る危険性がある」との声明を出し、国際社会への支援も求めた。
 
バッタの大群は、昨年末の大雨などの天候不順が続いたアフリカ東部を中心に発生している。【2月3日 朝日】
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ソマリアなど東アフリカはもともと食糧難にあえぐ、飢餓の危機にさらされてきた地域だけに、その上に「蝗害」となると、その影響は深刻、もっとはっきり言えば飢餓に直結します。

最初にエチオピア東部で発生したもののようですが、バッタは移動しますので、被害はケニア・ソマリアからウガンダにも及んでいます。

****バッタの大群、ウガンダに襲来 FAOは「蝗害」を警告****
「アフリカの角」と呼ばれるアフリカ北東部で猛威を振るっているバッタの大群が9日、ウガンダに襲来し、政府は緊急閣議を開いて対応を協議した。
 
北東部カラモジャ地方の担当相によると、9日にケニアからバッタが襲来したのを確認したという。
 
大発生しているのはサバクトビバッタで、通常は群れをつくらない。だが、幾つかの条件が重なると大量繁殖して巨大な群れとなり、農作物を荒らし、飢饉の原因になる。
 
今回の大発生では既にケニア、エチオピア、ソマリアで食料難が起きており、ソマリアは今月、農作物が壊滅したとして国家非常事態を宣言した。国連食糧農業機関は、過去25年で最悪の状況だと指摘している。
 
バッタの群れは、エチオピア東部で発生し、ソマリア北部を通ってウガンダに襲来した。FAOは、現時点では地域全体に影響を及ぼす「大発生」レベルだが、状況がさらに悪化し1年以上にわたって被害の拡大を食い止められなければ、「蝗害(こうがい)」になると警鐘を鳴らしている。
 
これまでにサバクトビバッタによる「蝗害」は20世紀に6回あったことが記録されており、前回は1987〜89年。「大発生」は2003〜05年以来となる。 【2月10日 AFP】AFPBB News
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バッタというと、飛ぶというより数mジャンプする・・・といったイメージがあります。
しかし、“2007年、エチオピアで発生したサバクトビバッタが北ソマリア経由でインド洋を飛び越え、パキスタン、インドにまで到達したことが報告されている”【ウィキペディア】とのことで、風に乗るとはるか海を越えるほどに飛翔するようです。

【更に今後増加する恐れも】
現在大量発生しているバッタが産卵し、6月までに500倍にも増大する・・・・との可能性も指摘されています。
原因については、やはり昨今の異常気象が関係しているとも。

また、蝗害は東アフリカだけでなく、中東・インド・パキスタンでも発生しているようです。

****【アフリカ】東部でバッタ蝗害が大規模化。史上最大の被害。1200万人が飢餓。FAOが緊急支援要請****
国連食糧農業機関(FAO)は1月30日、アフリカ東部で大量発生しているサバクトビバッタによる蝗害が周辺地域に波及し人道危機をもたらしており、関係各者に対して緊急援助を要請した。被害は過去最大となっている。
 
蝗害は、イナゴやバッタが大量発生し、草本類を食べ尽くしてしまう現象。穀物や野菜にも被害をもたらし食糧危機を発生させる、蝗害そのものはそれほど珍しくはないが、問題なのはその規模。蝗害では、1km2のバッタが、毎日35,000万人分の食を奪う。

ケニアだけで、サバクトビバッタの大群は、縦60km、横40kmという広範囲となっており、風に乗り北側のエチオピアやソマリアにも侵食。
さらにジブチやエリトリアにも侵食。南スーダンやウガンダにも波及するおそれが出ている。

ケニアでは過去70年間で最大の規模。エチオピアとソマリアでも過去25年間で最大の規模。ウガンダと南スーダンに広がると1961年以来の蝗害発生となる。
 
2019年から大規模な蝗害が発生している原因について、FAOは異常気象の多雨により、バッタが繁殖しやすい状況になったとみている。ケニア、エチオピア、ソマリア、ジブチ、エリトリアの5ヵ国は、FAOに対し7,600万米ドル(約83億円)の資金援助を要請。FAOは、すでに1,540万米ドル(約17億円)の資金援助に応じた。FAOの加盟国非公式会合でも、専門家や物資を緊急支援することも決定している。
 
FAOの発表では、至急の食糧援助が必要となっている人口は1,200万人。サバクトビバッタの異常繁殖はまだ続いており、被害が拡大するおそれがある。

FAOの分析では、次の大量繁殖は2月が中心で、植付シーズンの4月に孵化するおそれ。6月までに現在よりもサバクトビバッタの数が500倍に増えるというFAOの試算もある。
 
蝗害は、エジプト、スーダン、イエメン、サウジアラビア、インド、イラン、パキスタンでも蝗害が深刻化している。【2月2日 Sustainable Japan】
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【日本ではほとんど見られない本格的な「蝗害」】
なお、「蝗害」は古来、中国でも頻発していますが、日本ではバッタによる本格的な「蝗害」はないようです。
そのため、「蝗害」の怖さがイマイチわからないところも。

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日本ではバッタ科のバッタによる蝗害がほとんど起こらなかったため、中国渡来の文献に書かれている「蝗害」を、昆虫による大規模な農被害全般を指す語だと誤解した。

日本の古文献に書かれている「蝗害」のほとんどは、イナゴ(イナゴ科)、ウンカ、メイチュウによるものである。

被害の様相はバッタによる真の蝗害とは著しく異なるが、やはり真の蝗害の実体験に乏しい日本では、このウンカによる被害に対しても、蝗害の漢語が当てられることとなった。

今日ではウンカも群生相を示すことが知られているが、被害は飛蝗に比べればはるかに小さい。【ウィキペディア】
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どうして日本ではバッタによる本格的な「蝗害」が起きないのか?ということについては、下記のようなネット情報もあります。

****日本には砂地の様な背の高い草が少ない貧弱な土壌が少ないからです****

バッタ科の雌は、産卵管を使って土や砂地の地下数センチメートルに産卵します。背の高い草が密集している場所ではあまり産卵をしません。

その為、大量に産卵が行われるには砂地が必要です。中国は万里の長城の外側は乾燥地帯です。その為、中国やアフリカなど乾燥地帯が多い場所では蝗害が頻繁に起こります。

反対にヨーロッパや日本では蝗害はあまり起こりません。
https://realestate.yahoo.co.jp/knowledge/chiebukuro/detail/12212797582/
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異例の台風・ハリケーンラッシュ ハワイ、フィリピン、アメリカ東部

2018-09-12 22:43:19 | 災害

(ひしめきあう台風・ハリケーン【9月11日 森さやか氏 YAHOO!ニュースより】

ひしめく台風・ハリケーン
今年は台風の当たり年のようで、日本でも先日の21号によって関空が水没し、連絡橋も破損するといった大きな被害が出ています。

世界的に見ると、今現在は台風・ハリケーンが“ひしめいている”状態で、しかも、これまでハリケーンの直撃がほとんどなかったなかったハワイが、トロピカルストーム(熱帯性低気圧)の規模ながらも直撃を受けそうなこと、フィリピン及びアメリカ東部に猛烈な強さの台風・ハリケーンが迫っていることなど、異例の状況となっています。

****台風、ハリケーン続々発生 アメリカ本土・ハワイ・フィリピン直撃へ****
いま北半球の海では、多数の雲の渦がひしめいています。台風、ハリケーンといった熱帯性擾乱の年間平均発生数は80個といわれていますが、日本時間11日(火)現在、同時に6個も発生しているのです。

そのうち2つの渦はアメリカ本土とハワイに、1つはフィリピンに上陸するおそれがあります。

【ハリケーン・フローレンス】
上品な名前とは裏腹に、フローレンスはアメリカ史上最悪のハリケーンの一つとして記録に残る可能性があります。

フローレンスは日本時間11日(火)正午時点で、ハリケーンの階級では上から2番目に強い「カテゴリー4」の勢力です。このまま勢力を保ちながら、日本時間14日(金)にはサウスカロライナ州からメリーランド州のいずれかの場所に上陸する見込みです。猛烈な風に加え、最大雨量は1200ミリにも達するとの予想も出ています。

もし予想通り、この地域に「カテゴリー4」の勢力で上陸をすれば1989年ヒューゴ(Hugo)以来のこととなります。

【トロピカルストーム・オリビア】
一方、オリビアは日本時間13日(木)にハワイを直撃する見込みです。上陸時の勢力はトロピカルストームでハリケーンよりもやや弱いものの、嵐に慣れていないハワイでは大きな被害をもたらすおそれがあります。

1950年以降ハリケーンまたはトロピカルストームがハワイに上陸したのは1959年、1992年と2014年の3回しかありません。オリビアはマウイ島やオアフ島に上陸する可能性が高まっていますが、もしこれらの島に上陸をすれば観測史上初のことです。

ハワイ知事は緊急宣言を発令し、警戒を呼び掛けています。

【台風22号(マンクット)】
果実マンゴスチンを意味するマンクット。22号はかわいい名前を持つ一方で、今年世界最強の勢力となる可能性があります。すでに台風の階級では最強の「猛烈」な勢力ですが、日本時間13日(木)には中心気圧905hPaまで発達し、15日(土)にフィリピンのルソン島に上陸する可能性があります。

もしさらに発達して中心気圧800hPa台でフィリピンに上陸すれば、2013年に壊滅的な被害を出した台風30号(ハイエン)以来のこととなります。

統計的に秋の台風やハリケーンは一年で最も被害が大きいため、これからの時期、より一層の注意が必要です。【9月11日 森さやか氏 YAHOO!ニュース】
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一般的には直撃はまれなハワイで、今年二つ目
ハワイに接近している「トロピカルストーム・オリビア」については、アメリカ国立気象局は9月11日(火) 11時時点(ハワイ時間)の情報として“最大風速60マイル/時(約96.5km/時)でハワイ諸島へ接近”としています。

96.5km/時ということは秒速で27mぐらいですから、風速としては弱い台風レベルです。

一般的にハワイは、ハリケーンの直撃が少ないことで知られています。それが、今年は・・・。

****ハワイには今年2つ目****
ハワイは先月ハリケーン・レイン(Lane)の接近により被害が出たばかりです。

レインはハワイ本島に直撃はしなかったものの、8月23日にハワイ島に最接近し、4日間で1,300ミリ以上の大雨を降らせました。これはハリケーンによる雨量としては、全米史上2番目の記録です。(中略)

オリビアはレインよりも弱い勢力でハワイに近づくことが予想されていますが、それでも直撃のおそれがある分、大きな被害が心配されます。

いつもはハリケーンが少ないのに…
一般的にハワイは、ハリケーンの直撃が少ないことで知られています。
観測開始以来ハワイ本島に上陸したトロピカルストームとハリケーンは1959年ドット、1992年イニキ(ともにハリケーン)、そして2014年イセル(トロピカルストーム)の3個しかありません。

ハワイにハリケーンが少ない理由の一つは、ハワイ周辺の海水温が低いことが挙げられます。

しかし今夏は、ハワイ近海を含めた北東太平洋の海水温が例年よりも高くなっており、8月だけで5つのハリケーンが発生しました(年平均8-9個)。

さらにコロラド州立大学のKlotzbach博士によると、先月はハリケーンの発生期間、総エネルギー共に、これまでの記録を更新したということです。【9月10日 森さやか氏 YAHOO!ニュース】
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海水温の状態などは、たまたま今年だけの現象なのでしょうか?それとも、世界的な気候変動のひとつなのでしょうか?

フィリピン 大被害をもたらした2013年30号や2016年22号と同レベルの強さに
フィリピンへ接近している「台風22号(マンクット)」、こちらは猛烈な強さです。
日本気象庁の台風情報では、ルソン島北東部に接近する15日3時の予測として中心気圧900hPa、最大風速60m、瞬間最大風速85mという数字も示されていました。

*****猛烈な台風22号、フィリピン・ルソン島方面へ移動****

猛烈な台風22号(マンクット)が太平洋上を移動し、フィリピン・ルソン島へ向かっている。米領グアムではすでに洪水や停電などの被害が出ている。CNNの気象専門家によれば、今後24時間から48時間にかけて勢力を強める見通し。

専門家からは、ルソン島北部で大雨や洪水を引き起こす可能性があるとの警告が出ている。地元当局は救援物資の準備を進めており、治安部隊も警戒態勢に入っている。

世界災害警報提携システム(GDACS)によれば、フィリピンや中国南部に住む最大4330万人に影響が出る恐れがある。

ルソン島では2016年、台風ハイマーに襲われ、1万4000軒の家屋が破壊されたほか、損傷した家屋は5万軒にのぼった。

同様の被害が出る可能性は小さいものの、フィリピン当局は米などの農作物に2億5000万ドル(約278億円)規模の被害が出る可能性があると警告している。

台風22号が現在の進路を進むと、ルソン海峡を抜け、香港やマカオに到達するとみられている。【9月11日 CNN】
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2016年の台風22号(ハイマー)も同程度の強さだったようですが、フィリピンを襲った“スーパー台風”として印象に残っているのは2013年の台風30号(ハイエン)です。

2013年の台風30号(ハイエン)については、“Weather Underground社によると、昭和54年台風第20号(Tip)の世界最低気圧870hPaを超す、860hPaを観測していたことが発表された”“(サマール島に上陸した11月)8日朝の時点での勢力について合同台風警報センターは最大風速87.5メートル、最大瞬間風速105メートルとしている”【ウィキペディア】とも。

個人的な印象としては、中心気圧が900hPa前後という“異常事態”に対し、情報伝達・理解が十分でなく、“台風慣れ”した住民は単に“強い台風”というぐらいの認識しかなかったことが、死者6,201人という大きな被害につながったのでは・・・・とも。

今回も、“異常な強さ”であることを周知徹底して、被害を少なくする対応をとってもらいたいものです。

万全の対応を指示するトランプ氏 昨年プエルトリコを襲った「マリア」への対応を自賛する異様な感覚
同様に、“異常な強さ”に発達してアメリカ東部に接近している「ハリケーン・フローレンス」

トランプ大統領は「費用はいくらかかろうとも支払うつもりだ」と、徹底した対応をとるように指示しています。

****ハリケーン「フローレンス」対策、出費惜しまず=トランプ米大統領****
トランプ米大統領は11日、大型ハリケーン「フローレンス」への対策に出費を惜しまない考えを示した。フローレンスは14日、サウスカロライナ州境に近いノースカロライナ州に上陸する見通し。


トランプ大統領はホワイトハウスで主任補佐官や連邦政府の防災担当者らと会い、会見で「費用はいくらかかろうとも支払うつもりだ」と述べた。

さらに、被害が予想される地域の住民に対しては、今回のハリケーンが東海岸で数十年ぶりの規模になるとの専門家の予測を示した上で、「恐らく全員が避難すべきだ」と述べ、「沿岸部は非常に、非常に悪い状態になるだろう」と付け加えた。

トランプ大統領は、2017年に米自治領プエルトリコで死者3000人を出したとみられるハリケーン「マリア」への対応を批判された経緯があり、今回は「完全に準備ができている」と主張した。

予報によると、上陸時のハリケーンは時速215キロメートルに達する見込み。すでに100万人が避難を指示されている。(後略)【9月12日 ロイター】
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風速“時速215キロメートル”は、秒速60mに相当します。
トランプ大統領が周囲にはっぱをかけているのは、中間選挙を控えているためで、1800人以上の死者を出した2005年の「カトリーナ」対応に失敗したブッシュ前大統領の轍を踏みたくないためです。

それにしても、2017年に米自治領プエルトリコを襲った「ハリケーン・マリア」に関するトランプ大統領の認識と地元の評価は全く異なります。

アメリカ政府の発表した死者数は64人ですが、実際は1400人以上とも、2975人とも、あるいは4645人(ハーバード大学の研究チーム調査)とも言われています。

数字は、停電や道路の分断・浸水による治療の中断が原因で死亡した者など、どこまでを含めるかによって大きく異なりますが、少なくとも「素晴らしかった」と言えるような事態ではありません。

しかも、(直接の被害は、避難態勢の問題は別にして、ある意味では“自然の猛威”のなせる業でもありますが)インフラ破壊による治療の中断で多く人々が亡くなったというのであれば、そしてそれを放置したということであれば、それはまさに大統領の政治責任です。

****トランプ氏、プエルトリコ対応を自画自賛 被災者約3千人死亡の地元は怒り****
昨年9月にカリブ海を襲ったハリケーン・マリアで2975人が死亡した米自治領プエルトリコへの政府対応を、ドナルド・トランプ米大統領が「素晴らしかった」と称賛したため、住民は強く反発している。

プエルトリコでは被災から11カ月たった先月になって、電力がようやく完全復旧した。

大型ハリケーン・フローレンスが米南部に接近する中、ハリケーン・マリアの教訓を質問されたトランプ氏は11日、プエルトリコが「島なので(マリアは)今のところ一番厳しかった」ものの、「こういうことについては今までで最高の対応だったと思う」と答えた。

大統領はさらに、「FEMA(連邦緊急事態管理庁)と捜査当局とみんなが、プエルトリコの知事と一緒になってやった仕事は、素晴らしかったと思う。プエルトリコ(対応)は見事な、あまり話題にならない大成功だったと思う」と続けた。

被災当初からトランプ政権の対応を厳しく非難してきた中央都市サンフアンのカルメン・ユーリン・クルス市長は、「死者3000人が成功だったと思うなら、どうしようもない。神様、助けてください」とツイートし、今回の大統領発言は「泣きっ面に蜂」だと批判した。

クルス市長は先月末、プエルトリコ自治政府が公式死者数をそれまでの50倍にあたる2975人に修正して発表した際、トランプ政権のお粗末な救援対応は「政権にとって汚点」だと強く非難していた。

自治政府のリカルド・ロッセロ知事は11日夜に声明で、マリアは「現代のプエルトリコにとって史上最悪の自然災害だった。基本インフラが壊滅し、数千人が死亡し、多くが今も苦しんでいる」と述べた。

さらに、「植民地と連邦政府の関係が『成功』していると呼べるなど、あり得ない。合衆国の米国人が享受する不可譲な権利の一部が、プエルトリコ人には認められていないからだ」と反発した。【9月12日 BBC】
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現地では前々から激しい大統領批判がありますが、それでも平気で「素晴らしかった」と言う感覚が、常人とは異なります。

おそらく大統領やその岩盤支持層にとっては、プエルトリコなどは“本当のアメリカ・アメリカ人”とは認識されておらず、どんな被害があろうがほとんど気にならないのでしょう。

しかし、ノースカロライナ州などアメリカ本土東部で被害が出れば、プエリトルコのようにはいきませんので、「費用はいくらかかろうとも支払うつもりだ」といった反応にもなるのでしょう。
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南海トラフ巨大地震  発生確率「今後30年に70~80%」 「備えを進めてほしい」でいいのか?

2018-02-10 22:39:42 | 災害

(【気象庁HP】 津波については“関東地方から九州地方にかけての太平洋沿岸の広い地域に10mを超える大津波の来襲が想定されています”とも。まあ、原発を抱える私の住むところは震度5弱ですむようですし、東シナ海側ですから津波もそう大きくないと思いますので、いいと言えばいいのですが・・・)

地球温暖化のリスクから目をそむけるトランプ大統領
将来起こるかもしれない大災害について、「神のお告げ」ぐらいにしか頼れなかった時代は、あれこれ悩む必要がなかった分、物事は簡単でもありました。実際、災害が起きて被害が出ても、“神の思し召し”ということで、人間の責任が問われることもありません。

現在は科学の発達によって、“ある程度”は予測することが可能なものも増えてきました。

ただ、この“ある程度”というのが厄介で、そのリスクをどのように評価して、どのような対策をとるのか・・・立場・見解によって大きな差異があり、決定に悩むことにもなります。

とるべき対応・対策をとらずに被害が拡大すれば、“人災”として政治の責任を問われることにもなりますが、不確実な予測に基づいて、現在の生活基盤を大きく変えるような対応を住民に求めることは、現実問題としては非常な困難を伴います。

地球規模での将来的大災害ということでは、いわゆる地球温暖化の問題があります。

その危険性、早急な対応の必要性を訴える一般的流れ・科学的知見に抗して、アメリカ・トランプ大統領は温暖化の可能性・リスクを重視せず、パリ協定については、石炭や石油などに恵まれるアメリカのビジネスチャンスを奪う「米国にとって不公平な、ひどい取り決めだ」として離脱を表明しているのは周知のところです。

もっとも、すべてが“取引”の対象であるトランプ大統領が、今後どのようにしたいのか・・・よくわからない部分もあります。

****トランプ大統領 「パリ協定に復帰したい」 ただし大幅修正が条件****
ドナルド・トランプ米大統領は、自身が昨年6月に離脱を表明した地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」について、大幅な修正が加えられれば復帰したいとの意向を示した。28日放送予定の英テレビ局ITVのインタビューで述べたもの。
 
放映前に公開されたインタビューの抜粋によると、トランプ大統領は「パリ協定はわれわれ(米国)にとって大災難となりかねないものだった」「良い取り決めがなされればわれわれが復帰する可能性は常にある」と語ったうえで、現状のパリ協定については、米国にとって「とんでもない」取り決めであり内容も「不公平」だと主張。

「もし(米国に)パリ協定に復帰しろと言うなら、それはまったく異なった取り決めでなければならないだろう」と述べる一方、「(パリ協定に)復帰したいかって?ああ、復帰したいね。ぜひそうしたい」とも語った。
 
トランプ大統領は今月10日にも米国のパリ協定復帰はあり得ると言明しており、昨年に同協定からの離脱姿勢を示していたのは米国の排出削減目標の緩和を狙った「狂言」だったのではとの臆測を呼んでいた。【1月28日 AFP】
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地球規模のリスクを“取引”で弄ばれるのは困ったものだ・・・と思いますが、その件は今日はパスします。

【「日本の火山全体で1万年に1回程度」のリスクを重視する原発稼働に関する司法判断
一方、将来の危険性を“過度”に強調しても、一般生活者の常識とかけ離れてきます。

昨年12月13日、四国電力伊方原発3号機(愛媛県伊方町)をめぐり、住民が求めた運転差し止め仮処分の抗告審で、広島高裁は広島地裁の決定を覆し、運転を禁じる決定をしました。阿蘇山が過去最大規模の噴火をした場合、火砕流の影響を受けないとはいえないと判断したことが主な理由とされています。

阿蘇山噴火(時折起こる小規模噴火ではなく、周辺百数十kmにまで火砕流が及ぶ大規模噴火)のリスクをどのように評価するかはいろいろあるところでしょうが、個人的には、「そんなことを言ったら、原発云々ではなく、そもそも(私を含めて)九州に生活している者はどうしろと言うのか?」という常識的・素朴な疑問を禁じえませんでした。

この点では、珍しく【産経】と意見が一致したようです。

****伊方停止の決定 阿蘇の大噴火が理由とは****
(中略)同高裁は、運転を認めない理由として、伊方原発から130キロの位置にある阿蘇山の巨大噴火を挙げた。
 
9万年前の破局的噴火の規模なら、火砕流が到達する可能性は否定できないとした。
 
あまりに極端だ。そうした噴火が起きれば、原発以前に九州全体が灰燼(かいじん)に帰するではないか。
 
高裁は、逆転決定の理由の中で、想定したレベルの破局的噴火の発生確率が「日本の火山全体で1万年に1回程度」であることを認めている。
 
また、その種のリスクを、無視し得るものとして容認するという社会通念が、国内に定着しているという常識論も述べている。
 
その一方で、原子力規制委員会が策定した火山事象の安全審査の内規に、破局的噴火の火砕流が含まれていることを、運転差し止めの根拠とした。
 
全体に強引さと言い訳めいた論理展開が目立ち、説得力の乏しい決定といえる。
 
しかも、広島地裁で審理中の本訴訟の行方をながめ、異なる判断がなされる可能性もあるとして、運転停止期間を「来年9月30日まで」と限定する自信のなさだ。(後略)【2017年12月14日 産経】
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そこまでリスクを重視するのであれば、運転差し止めより先に、阿蘇カルデラ内に暮らす多くの人々の強制移住を直ちに行うよう政府に勧告すべきところでしょう。

私の住む鹿児島でも、頻繁に噴火を続ける桜島のふもとに大勢が暮らしていますが、これが論外であることはもとより、中規模噴火でも噴石が飛んでくる対岸の鹿児島市(人口約60万人)も、大規模噴火を想定すれば強制移住が必要でしょう。(小規模噴火でも被害が及ぶ桜島のふもとで暮らしているのは、非常に非合理でリスキーだとは私も思います。)

あえて原発をつくることと、普段に生活していることは別もの・・・という話かもしれませんが、「日本の火山全体で1万年に1回程度」の危険性を持ち出すことへの違和感をぬぐえません。

南海トラフ巨大地震 最悪で32万人超が死亡
こんな将来リスクの評価に関する話をしているのは、南海トラフ巨大地震が今後30年以内に発生する確率が、これまで「70%程度」から「70%から80%」に引き上げられた・・・というニュースを目にしたからです。

****南海トラフと根室沖の巨大地震 発生確率80%に引き上げ****
(中略)政府の地震調査委員会は、日本周辺の海底や全国の活断層で想定される地震の発生確率について、毎年、1月1日の時点で計算し公表しています。

このうち、南海トラフで想定されるマグニチュード8から9の巨大地震については、今後30年以内に発生する確率は、これまで「70%程度」でしたが今回の公表で「70%から80%」に引き上げられました。

また、北海道沖の千島海溝沿いの根室沖で想定されるマグニチュード7.8から8.5程度の巨大地震も、今後30年以内の発生確率がこれまでの「70%程度」から「80%程度」に引き上げられました。

マグニチュード8以上の巨大地震の今後30年以内の発生確率は、これまで「70%程度」が最大で、「80%」が示されたのは、今回が初めてです。

地震調査委員会の委員長で東京大学地震研究所の平田直教授は「いずれも非常に高い確率であり、巨大地震が必ず起きることを示している。地震の発生が近づいていることを決して忘れず、備えを進めてほしい」と話していました。

M8の巨大地震で確率80%は初めて
政府の地震調査委員会が公表している今後30年以内の発生確率のうち、最も確率が高いのは、茨城県沖のプレート境界で想定されるマグニチュード6.7から7.2の地震で「90%程度以上」、次いで、三陸沖北部で想定されるマグニチュード7.1から7.6の地震と、北海道の千島海溝沿いの色丹島沖および択捉島沖で想定されるマグニチュード7.5程度の地震で、いずれも「90%程度」などとなっています。

しかし、いずれもマグニチュードが7程度の大地震で、マグニチュード8以上の巨大地震について「80%」の発生確率が示されたのは、今回の南海トラフと根室沖が初めてです。

一方、地震が起きない限り、時間の経過とともに発生確率はさらに上がるため、南海トラフ巨大地震は、今後40年以内で「80%から90%」、今後50年以内で「90%程度もしくはそれ以上」と想定されているほか、根室沖の巨大地震の確率も今後40年以内に「90%程度」、今後50年以内は「90%程度以上」となっています。

このため地震調査委員会は、巨大地震の発生が近づいているとして、住宅の耐震補強や家具の固定などの対策を進めるよう呼びかけています。

南海トラフの巨大地震とは
南海トラフは、静岡県の駿河湾から九州の日向灘にかけての海底で、海側のプレートが陸側のプレートの下に沈み込んでいる領域です。

プレートは年間数センチの速さで沈み込み、その境界には、時間の経過とともに少しずつひずみがたまって、限界に達すると、一気にずれ動いて巨大地震が発生します。

南海トラフでは、およそ100年から200年の間隔で、マグニチュード8クラスの巨大地震が繰り返し発生していて最後に起きたのは、昭和21年に四国など広い範囲に大きな被害をもたらしたマグニチュード8.0の「昭和南海地震」でした。

この地震からおよそ70年が経過していることなどから、政府の地震調査委員会は、これまで今後30年以内の発生確率を「70%程度」としてきましたが、今回、「70%から80%」に見直しました。

国の被害想定によりますと、津波と建物の倒壊、火災などで、最悪の場合、全国でおよそ32万3000人が死亡し、238万棟余りの建物が全壊や焼失するおそれがあるほか、避難者の数は、地震発生から1週間で最大950万人に上るなど影響が長期化するとしています。

また、去年11月からは、気象庁が南海トラフ全域を対象に巨大地震発生の可能性を評価する新たな情報の運用を行っています。【2月9日 NHK】
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南海トラフにおける海溝型地震は、一定の間隔で起こる「周期性」と同時に起こる「連動性」が大きな特徴となっています。

****南海トラフ巨大地震****
南海トラフの地震は、約90 - 150年(中世以前の発生記録では200年以上)の間隔で発生し、東海地震、東南海地震、南海地震の震源域が毎回数時間から数年の期間をおいてあるいは時間を置かずに同時に3つの地震が連動していること(連動型地震)が定説とされてきた。

一方で、慶長地震は南海トラフを震源とすることに異論が出されており、南海トラフの地震は200年程度の間隔で発生すると考えるのが自然な姿であるという見解も存在する。【ウィキペディア】
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最悪で32万人もが死亡するような巨大地震が今後30年以内に発生する確率が「70%から80%」・・・・それって、大変な話じゃないの! 何もしなくていいの? 北朝鮮からのミサイル攻撃などより確度が高く、被害も大きいんじゃないの?・・・というのが率直な印象です。

もちろん、政府も何もしていない訳でもありません。

*****南海トラフ地震対策 予知前提の防災見直し 最終報告書****
中央防災会議の有識者会議は26日、東海地震の予知を前提とした大規模地震対策特別措置法(大震法)に基づく防災対応を見直し、南海トラフ巨大地震の対策強化を求める最終報告書をまとめた。

先月25日に示した報告書案に沿った内容で、国は予知を前提とした防災情報の発信のあり方などを見直す方針。モデル地区(団体)として、国は静岡、高知両県と中部経済界を選び、具体的な防災対策を議論するしていく。
 
最終報告書は大震法の見直しまでは言及しなかったが、現在の科学的知見では「確度の高い地震の予測はできない」とし、予知を前提とした防災対応は改めるべきだと指摘した。
 
その上で、大規模地震発生が懸念される四つのケースを想定。(1)南海トラフ巨大地震の震源域の東側で大規模地震が発生(2)同震源域でマグニチュード(M)7程度の地震が発生(3)東日本大震災前と同様、地震回数が減少するなどの変化を観測(4)東海地震の前兆とされる「プレートのすべり」などを観測--の場合だ。
 
(1)と(2)は、地震が連続して起きる確率が高まっており、住民の事前避難などの検討が必要とした。また、(3)は「大規模地震の発生につながるとは判断できない」として、事前の対策はできないと判断した。
 
一方、(4)はこれまで、大震法に基づき首相が警戒宣言を出し、住民の事前避難や公共交通機関の停止などを行う「東海地震予知」のケースだった。しかし最終報告書では、地震発生の可能性がどの程度高まっているか判断できないと指摘。行政機関は「警戒態勢を取る必要がある」としたが、住民の事前避難などを求めることは難しいとした。
 
最終報告書の提出を受けて菅義偉官房長官は26日、「新たな防災対応の構築を急ぐ」と表明。(1)、(2)、(4)のケースで防災対応を改める。

モデル地区に選ばれた自治体などについては、事前避難の対象となる住民や避難日数、避難場所などを議論する。その結果を踏まえ、自治体が防災対応を個別に定めるためのガイドラインを策定する。

現在は気象庁が「東海地震予知情報」などを発表して警戒を呼びかける態勢だが、南海トラフ全域を対象とした防災情報発信のあり方などを検討する。【2017年9月26日 毎日】
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“現在の科学的知見では「確度の高い地震の予測はできない」”ということで、住民の事前避難などはかなり限られた場合になるようです。

なお、KDDIと海上保安庁による「携帯電話基地局の船上開設に向けた実証実験」とか、資源エネルギー庁と防衛省による自衛隊へのスムーズな石油供給などを図るための合同実働訓練等々、いろいろ動きはあるようです。

人間のリスク管理に関する限界か
ただ、「1万年に1回程度」という話ではなく、「今後30年に70~80%」という大災害予測です。
避難等が可能な事前に確度の高い予兆が必ずあるものなのでしょうか?

もし巨大津波が襲ったらひとたまりもないような海岸沿いの都市・集落は西日本太平洋側に多数存在しているでしょう。それらについて、何か確度が高い予兆が起きたら住民避難を検討する・・・・ということでいいのだろうか?という印象も。

そもそも「南海トラフ地震」という呼称も、(意図的なのか)被害対象が判然としない感も。「東日本大震災を超え、国難ともいえる巨大災害」(中央防災会議の「南海トラフ巨大地震対策検討ワーキンググループ」による2012年中間報告)というのであれば「西日本大震災」といった呼称で国民の関心を高める方がいいように思います。

もちろん、独裁国家でもない民主国家日本にあって、確度の高い予兆がない段階で住民生活を変えるような措置はできない、住民生活・経済へどれほどの大影響があると思うのか・・という現実論はわかりますが、はたしてそれがリスクに照らした場合、“合理的判断”なのか?

ただ、こうした巨大地震・火山噴火のリスクを考えていくと、そもそもプレート境界にある日本列島に住むこと自体が“合理的判断”と言えるのか?という話にもなってきます。この“危険な”列島に暮らす日本国民が甘受すべき“運命”でしょうか?

結局は、巨大災害が実際に起きるまでは抜本的対策はとられず、実際被害が起きてから「現代の科学には限界があり・・・・」と弁解するのが人間のリスク管理に関する限界でしょうか。そこに踏み込むのが政治の役割だと思うのですが。
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東日本大震災から1年  支援国への感謝メッセージ、中国との信頼醸成、「絆」への疑問提示も

2012-03-11 23:10:24 | 災害

(3月11日 パリ在住邦人によって主催された、エッフェル塔に望むトロカデロ広場での黙祷と献花の儀式 “flickr”より By Passion Leica http://www.flickr.com/photos/passionleica/6825998062/

【「みなさんと手を携え共に前へ進んでいきたい」】
3.11の東日本大震災から1年、国内では多くの追悼式も行われましたが、復興はまだまだこれからという段階です。
韓国や台湾では、被災当時に支援の手を差し伸べてくれたこれら国々への日本からのお礼のメッセージが出されています。

****在韓日本大使館:「震災支援、忘れない」韓国紙に広告****
「みなさんの温かな支援の手を永遠に忘れません」--。東日本大震災から1年を迎えるのを前に在韓国日本大使館(武藤正敏大使)は9日付の朝鮮日報、中央日報、東亜日報の朝刊3紙に日本の感謝のメッセージを伝える意見広告を出した。

広告はカラーで、子供たちの写真などを配し「日本を訪ねて活気あふれる姿を確認して」と呼びかけ、「みなさんと手を携え共に前へ進んでいきたい」と結んでいる。

韓国では昨年3月11日の地震発生直後に李明博(イ・ミョンバク)大統領が関係閣僚を集め「日本の被害復旧や救助活動の支援に最善を尽くすように」と指示。12日に各国の先陣を切って救援隊を日本に送り込んだ。【3月9日 毎日】
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****ありがとう、台湾」=被災者がテレビCMでメッセージ****
台湾のみなさん、ありがとう―。東日本大震災の被災者に多額の義援金を寄せてくれた台湾の人々に感謝するため、震災発生から丸1年となる11日から、被災者本人の出演するテレビCMが地元主要局で1週間放映される。企画した日本の対台湾窓口交流機関、交流協会台北事務所(大使館に相当)によると、こうしたCMを放映するのは世界でも台湾だけという。

CMには、震災当日に生まれた乳児と両親、漁師、木工職人といった被災者が出演。復興しつつある自身の生活を紹介するとともに、「台湾のみなさんのおかげで元気になれた。支援をありがとう」などとするメッセージを伝える。CMはテレビのほか、インターネットの動画投稿サイト「ユーチューブ」や屋外モニター、地下鉄でも放映される。【3月10日 時事】
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従軍慰安婦問題を抱える韓国など、周辺国との関係は必ずしも穏やかとばかりも言えませんし、こうした感謝メッセージでそうした関係が急に好転する訳でもありませんが、それはそれとして、感謝のメッセージをきちんと伝えることは重要なことでしょう。

震災対策を明治以来の対中政策の転換点に
韓国や台湾だけでなく、中国も温家宝が被災地を慰問するなど、支援に尽力しました。
中国人研修生20人を避難させ、自身は亡くなった宮城県女川町の水産加工会社専務、佐藤充さんのこともあって、震災後日本への好感度は大きく改善されたようですが、日本側の中国への好感度は厳しい数字となっています。

****中国、支援評価されず不満…トモダチ作戦の陰で****
中国では東日本大震災後、中国人研修生20人を避難させ、自身は亡くなった宮城県女川町の水産加工会社専務、佐藤充さん(当時55歳)が「英雄」として報じられたことなどで、日本に対する好感度が高まった。
読売新聞が中国誌「瞭望東方週刊」と昨年10月に行った日中共同世論調査では、中国側で日本を「信頼できる」と回答した人が55%に達し、2010年の15%から大幅に改善された。

だが、日本人で中国を「信頼できる」と回答した人は11%にとどまり、「信頼できない」は実に79%に達した。中国は震災後、ポンプ車を無償提供し、温家宝首相も被災地を慰問に訪れたが、米国のトモダチ作戦の陰に隠れて十分に評価されていないことに対し、特に知日派の間に強い不満が生まれた。

中国国際問題研究所の姜躍春教授は「日中間には歴史認識や領土問題などの解きほぐし難いわだかまりがある。一つの事件で一気に改善できるものではない」と指摘する。【3月10日 読売】
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ただ、この数字は、震災当時の支援体制やアメリカの「トモダチ作戦」の影響云々というよりは、08年の冷凍ギョーザの事件などによる中国への不信感や、尖閣諸島や南シナ海問題などにおける中国の強硬な姿勢への反発などの結果でしょう。
台頭する中国への脅威も日本側にはあります。

日本は今後、除染作業など復興に向けてなすべき仕事は山積しています。費用的にも膨大なものがあります。
現在だけでなく、明治以来、東アジアにおいて中国と日本はライバル的な立場に立つことが多くあり、戦争を含め多く出来事があり、結果として、南京虐殺問題なども最近また表面化しています。

しかし、隣国がいたずらに競い合うだけでは愚かしいとも言えます。安全保障的にも大きな火種となります。
この際、過去のいきさつやプライドなどは封印して、復興への協力支援を中国に求めるのはどうでしょうか?
共同の作業のなかで信頼関係も醸成され、信頼が生まれれば、膠着した歴史的問題にも対応の道筋が生まれるのではないでしょうか。

【「トモダチ作戦」で同盟関係の深さ確認
一方、アメリカの「トモダチ作戦」は、世論調査で“「成果を上げた」は79.2%で、「成果を上げなかった」の15.5%”【3月10日 時事】と好印象を得ているようです。
オバマ大統領はじめ米政府要人も、震災復興支援によって両国の同盟関係が深められたとの評価をしています。

****悲劇でさらに絆深まった」米要人が相次ぎ声明*****
オバマ大統領はじめ米政府要人は9日、東日本大震災から1年となるのを前に相次ぎ声明を発表し、犠牲者を改めて悼むとともに、日本との同盟関係の深さが震災の試練を通じて確かめられたことの意義を強調していた。

パネッタ国防長官は、震災直後に米軍と自衛隊が共同で行った復興支援の「トモダチ作戦」が「日米同盟の強さを証明した」と指摘した。長官は「米軍と自衛隊の間にある友情の絆に感銘を受けた。(震災の)悲劇によりその絆はさらに深まった」と述べた。

トモダチ作戦で米軍は、兵員2万4000人と航空機190機、艦船24隻を投入した。太平洋岸で行方不明者の捜索を行ったほか、津波被害を受けた仙台空港の復旧支援、気仙沼市大島などでのがれき除去といった活動にあたった。【3月11日 読売】
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アメリカのメディアは10~11日、主要紙が追悼や復興をテーマに1面に大きな写真を掲載、テレビも時間を割いて報じるなど、東日本大震災1年関連のニュースを大きく扱ったそうです。【3月11日 毎日より】
市民レベルでもアメリカ各地で追悼行事が催されています。

****あなたたちを忘れない」=米国各地で追悼行事―大震災1年****
東日本大震災から1年を迎え、米国では10日、日本人が多く住む大都市を中心に各地で追悼行事が催された。ニューヨークでは、日本の復興を支援する約100の団体が協力して追悼式典を開催。被災者への励ましの声が相次いだ。

式典には広木重之ニューヨーク総領事ら約1100人が出席。黙とうの後にスピーチした市内の医師、カマール・ラマニさんは、震災直後に宮城県南三陸町でボランティアとして医療活動に当たった。その後も心療クリニックの立ち上げなどで支援を続けており、「私たちはあなたたちのことを忘れない」と強調した。
また、福島県相馬市のみなと保育園からのビデオ・メッセージで、「(ニューヨークからの支援に)感謝の気持ちでいっぱいです。頑張ります」と元気に語る園児らが映し出されると、会場から歓声が上がった。

一方、ロサンゼルスではマンガ、アニメなどの日本文化を紹介するイベントが開かれ、震災発生時刻に合わせた午後9時46分(日本時間11日午後2時46分)には多数の参加者がろうそくを手に犠牲者の鎮魂と復興に祈りをささげた。【3月11日 時事】
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【「絆と言ってもそんなものだ」】
しかし、日本の現状に対する厳しい指摘もあります。

****絆」の精神喪失=日本在住の元Wポスト紙記者****
米紙ワシントン・ポスト(電子版)は10日、東日本大震災から1年を迎えるに当たり、同紙東京支局の元特派員で、現在は家族と神奈川県鎌倉市で暮らすポール・ブルスタイン氏の「日本は悲劇を経ても停滞から脱せず」と題する寄稿文を掲載した。この中で同氏は「絆」という言葉で象徴される震災直後の団結の精神が失われていると警告した。

寄稿文で同氏は、放射性物質が検出されていなくても自治体ががれきの受け入れを拒否していることに触れ、「絆と言ってもそんなものだ」と失望を表明。消費増税をめぐる政治混乱にも落胆を示した。一方、現在の停滞打破には女性の就業機会の拡大などが必要だとしている。【3月11日 時事】
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「がれきの受け入れ」問題も指摘のとおりですし、先日の沖縄での雪遊びイベント中止の件なども、今後の全国的な復興支援体制を考えるとき、冷静さを欠いているように憂慮されます。

****雪遊びイベント中止に=「放射性物質心配」の声―青森の630キロ無駄に・沖縄****
那覇市と海上自衛隊第5航空群(同市)は21日、23日に予定していた子ども向け雪遊びのイベントを中止すると発表した。雪は同航空群が青森県十和田市から搬送したが、沖縄県に自主避難している父母らから、「放射性物質が含まれているのでは」と懸念する声が相次いだためという。イベントは2004年度から続く恒例行事で、中止は初めてという。

イベント用の雪は約630キロ。八戸航空基地(青森県八戸市)の訓練に参加した隊員らが16日、十和田市内で集めてP3C哨戒機で運んだ。搬送時と到着時の2回、放射線量を計測した結果、過去の平常値と同じ水準だったという。

一方、那覇市には2月中旬ごろから、東日本大震災後に自主避難してきた人たちから、会場となる児童館や市に対し、中止を求める声が10件程度寄せられた。市は20日、児童館で説明会を開催。集まった約20人の父母らに対し、放射線量の測定結果を伝え、危険性はないとして開催への理解を求めた。
しかし、参加者からは「雪に含まれた放射能が溶けて空気中に拡散するのでは」「放射能汚染を避けるため沖縄に避難している。少しでも放射能が測定されているなら中止してほしい」などの声が上がった。【2月21日 時事】 
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なお、那覇市宇栄原(うえばる)の学童保育では、青森から運ばれた約250キロの雪がプレゼントされ、小学生60人が歓声をあげたとのことで、ややほっとする思いでした。【2月29日 朝日より】

チェルノブイリ、そしてフクシマ
話を海外の反応に戻すと、旧ソ連チェルノブイリ原発事故に見舞われたウクライナの首都キエフでも追悼行事が行われています。

****福島に思い重ね、早朝の祈り=チェルノブイリ事故のウクライナ****
東日本大震災から1年の11日、約26年前に旧ソ連チェルノブイリ原発事故に見舞われたウクライナの首都キエフでは、地震発生時刻に市民らが犠牲者を悼んでキャンドルに献灯。故郷を離れざるを得なかった福島などの被災者と自国民の境遇を重ね合わせ、希望の日が訪れるよう祈りをささげた。

市中心部のウクライナ国立歌劇場前の広場には100人以上が集まり、午前7時46分(日本時間午後2時46分)に黙とう。画家のマリヤさん(26)は雪に負けない梅の花を手に「悲劇が二度と起こらないよう願った」。【3月11日 時事】
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チェルノブイリ事故から25年 “25年後のフクシマを、現在のチェルノブイリのような状況にしてはならない”

2011-04-19 20:55:23 | 災害

(チェルノブイリ:半径30kmの入域制限地域の検問所 “flickr”より By Wolfhowl http://www.flickr.com/photos/ashenwolf/5595853993/

【「レベル7」の衝撃
日本の原子力安全・保安院と原子力安全委員会は12日、福島第1原発事故の「国際原子力事象評価尺度(INES)」を放射性物質の放出量を踏まえて「レベル5」から2段階引き上げ最悪の「レベル7」にしたと発表しました。これにより、欧州全土に大量の放射性物質をまき散らし、数十人の死者を出し、その後多数のがん患者を出したチェルノブイリ事故と同じくらい深刻と判定されたことになります。

この判断については賛否両論ありますが、原子力利用を推進しようという立場の国からは、日本の過剰反応との不満も出ています。

“国際原子力機関(IAEA)は、チェルノブイリとの違いを強調するなど警戒感をあらわにした。ロシアやフランスなど原発大国からは日本の「過剰評価だ」と指摘する声も相次いだ。背景には、国際的な原発推進路線の「後退」への危機感の強さが読み取れる。”【4月13日 毎日】

チェルノブイリ事故から25周年
そのウクライナのチェルノブイリ事故(86年4月26日発生)から25年が経過しようとしていますが、19日から首都キエフで原子力関連の国際会議が開催されます。

****チェルノブイリから25周年 キエフで各国首脳級会合へ*****
旧ソ連・ウクライナのチェルノブイリ原発事故から25周年となる26日を前に、各国首脳級の原子力安全サミットなど一連の国際会議が19日から首都キエフで開かれる。福島第一原発事故が進行中で、原発の安全性に改めて注目が集まるタイミングの開催となる。

原子力安全サミットは今回の最大の焦点となり、原子力安全や技術向上の国際協力について議論する。
約50カ国が参加。フランスのフィヨン首相、ロシアのメドベージェフ大統領ら首脳級が顔をそろえる。潘基文(パン・ギムン)国連事務総長や、国際原子力機関(IAEA)の天野之弥(ゆきや)事務局長も出席。日本からは高橋千秋外務副大臣が出席し、福島第一原発の現状や事故の経緯などについて報告する。

これに先立ち、チェルノブイリ原発事故の今後の長期的対策を主要8カ国(G8)がウクライナと話し合う支援国会合も19日にある。25年前に原子炉からの放射能を封じ込めたコンクリート製「石棺」の老朽化対策が急がれており、財政的な手立てを模索する。
20~22日にも国際会議が開かれ、事故の教訓や、環境や社会への影響などについて討議する。(後略)【4月19日 朝日】
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【「観光というより、教育的な観点から事故の教訓を学び取ってほしい」】
チェルノブイリ原発から半径30キロ圏内では、現在でも居住などが禁止されていますが、一方、観光ツアーとして公開されるなどの動きも出ています。

***大竹剛のロンドン万華鏡 今のチェルノブイリを歩いてみた “レベル7”から25年、観光地化した惨劇の地****
観光バスで行くチェルノブイリツアー
ウクライナの首都キエフを訪れる観光客の間で、ここ数年、ちょっとした人気を集めている観光ツアーがある。チェルノブイリ原発の事故現場を訪れる日帰りツアーだ。キエフからバスに揺られること約2時間半。原発施設内の食堂で食べるランチ込みで150~160ドルという手軽さが受けている。(中略)

キエフ市内を出発してから約2時間、4号炉から30キロメートルの地点に到着した。ここから先は現在も立ち入り禁止区域に指定され、一般市民の居住は許されていない。つまり、先に進むには政府の許可が必要だ。といっても複雑な手続きは必要なく、事前に旅行会社に伝えておいたパスポート情報と照らして、本人確認を受けるだけで済む。
昨年12月、政府はこうした観光ツアーを正式に許可した。それまでは、研究者やジャーナリスト、カメラマンなどにしか許可を与えていなかったが、既になし崩し的に観光ツアーが組まれるようになっており、事実上、政府が追認した格好だ。(中略)

そして爆発を起こした4号炉。防護服を着ることもなくバスを降りて、普段着のままカメラ片手に、事故現場から約300メートルの地点まで近づくことができる。ガイガーカウンターの数値を確認すると、300メートル地点で毎時3.5マイクロシーベルトだった。
現在、4号炉は放射線を遮蔽するために、コンクリートなどを使った「石棺」と呼ばれるシェルターで覆われている。この石棺は老朽化しており、ウクライナ政府は100年耐え得る巨大なシェルターを新たに建設する予定で、既に基礎工事を始めている。

廃墟の学校に散乱する子供用ガスマスク
4号炉を後にして3キロメートルほど離れたところにある町を訪れた。「ゴーストタウン」とも呼ばれ、事故発生から48時間以内に約5万人の住人が避難して廃墟となったプリピャチである。石棺に覆われ記念碑も立つ4号炉より、むしろ、当時の生活が思い起こされるこの町の方が、残酷な事故の記憶を残していた。
中央広場の周りには、旧ソ連時代に典型的だった画一的な団地が立ち並んでいた。窓ガラスは割れ、壁は朽ち果てている。小学校に足を踏み入れると、破れた教科書や壊れたピアノが残されたままだ。放射能から生徒を守るために持ち込まれたものであろう、教室の片隅に散乱している大量の子供用ガスマスクが、事故の悪夢を今に伝えている。(中略)

ウクライナ非常事態省のボブロー副局長は、「観光というより、教育的な観点から事故の教訓を学び取ってほしい」と話す。
実は、事故を起こした4号炉で建設が始まっている新たなシェルターには、16億ユーロ(約1950億円)の資金が必要となる。だが、いまだに6億ユーロ(約730億円)が不足している。
ウクライナ政府は4月19日からキエフで開催する事故後25周年を記念する国際会議で、欧州諸国を中心に国際社会から足りない資金を募る計画だ。事故現場への観光を許可する背景には、チェルノブイリの悲劇が忘れ去られないように、国際社会にアピールし続けたいという思惑もあるのだろう。

25年後のフクシマは……
だが、大惨事となった原発事故の現場に観光ツアーが行くことについては、否定的な意見も多い。
従妹を白血病で亡くしたある女性は、「ウクライナ人の心情として、観光でチェルノブイリに行くことはあり得ない」と話す。彼女は、従妹の死は放射能と関係があるのではないかと考えている。(中略)
チェルノブイリ原発事故では、25年を経た今でも、市民の不安は解消されていない。それでも政府は、事故現場を観光地化してまで、負の遺産の処理に取り組まなければならない。それは、チェルノブイリ原発事故、言い換えれば「レベル7」という事態の深刻さを物語るものだ。
25年後のフクシマを、現在のチェルノブイリのような状況にしてはならない。【4月19日 日経ビジネス】
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事故の後遺症はまだウクライナ経済の重荷となっている
老朽化が進む“石棺”を覆う新しいアーチ状の格納施設建設については、上記リポートにもあるように資金が不足しており、その調達が今回キエフで開催される国際会議の主要目的のひとつとなっています。

****チェルノブイリは、いま  チェルノブイリ、25年後の現実****
・・・焼け落ちた原子炉を封じ込めるため、一時しのぎの策として造られた“石棺”は腐食が進む。
「石棺はこれほど長期間使われるはずではなかった」。同原発の現場監督、アレクサンドル・スクリポフ氏は呼吸マスク越しに、くぐもった声で語る。その背後に立つ1986年4月の爆発事故後に急ごしらえで造られた石棺は、壁の崩壊を防ぐために支柱で支えられている状態だ。(中略)

欧州連合(EU)及び米国の当局は、チェルノブイリ原子炉の恒久的な格納施設を建設する費用の調達に今も苦労している。各国とも世界金融危機で膨大な債務を抱えただけに、税金による支出には及び腰だ。昨年、国際通貨基金(IMF)から156億ドルの緊急支援を受けたウクライナは、単独ではとても費用を賄い切れないとしている。(中略)

欧州復興開発銀行(EBRD)と欧州委員会は4月20日から22日にかけてウクライナの首都キエフで、新しい格納施設の建設費用として各国政府から6億ユーロ(約8億3400万ドル)以上の寄付を募る予定だ。高さ110mのアーチ型の格納施設の建設費用は総額15億5000万ユーロになる見込みだが、EBRDがこれまでに調達した資金は10億ユーロにとどまる。
チェルノブイリ原発のイホール・フラモトキン所長は、原子炉の閉鎖には20億~25億ドルという新規建設と同じくらいの費用がかかると話す。2000年12月にやっと稼働を終了した同原発では、今も3473人が働く。(中略)

スリーマイル島原発の事故では、冷却システムの不具合によって部分的に炉心溶融が起きた。だが死傷者は出なかった。チェルノブイリでは事故後86年7月までに、原発作業員や消防隊員など少なくとも31人が死亡した。
チェルノブイリには4つの原子炉があり、1号炉が稼働したのは77年だ。EBRDによると、事故は83年12月に試運転を終えたばかりの4号炉の過熱が原因で起きた。
爆発によって建屋の屋根が崩れ落ち、燃料棒の一部を含む放射性を帯びた破片類が屋外に放出され、近隣の森林を破壊した。EBRDによると、事故後の86年10月には同原発の別の原子炉での発電が再開され、2000年末まで続いた。事故の後遺症はまだウクライナ経済の重荷となっている。

ウクライナ緊急事態省のホームページによると、現在もまだ215万人が放射能で汚染された土地に住んでおり、30km圏内の立ち入り禁止区域は今も有効だ。検問所では放射能検出器を使い、過剰な放射線を浴びた可能性がある訪問者がいないか確認している。
同省によると、事故当時に旧ソ連の一部だったウクライナは、今年も原発の安全性を維持するために7億2890万フリブナ(約9200万ドル)を支出する。それに加えて、同国政府は2009年に被害者への手当てとして20億フリブナを支払った。事故で障害を負ったとして登録されている人の数は、2010年初めの時点で11万827人に上る。(中略)
「放射線量の高い地点は非常に多く、現在の石棺を解体し、すべての放射性廃棄物を除去する作業がまだ必要だ。それを完了して初めて、チェルノブイリの問題が解決し、人々と環境への危険性はなくなったと言えるのだ」とスクリポフ氏は語る。 【3月31日 日経ビジネスONLINE】
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【「25年を経て制限区域の汚染は本質的に減った」】
資金だけでなく、放射線汚染自体が未だ残存していることが最大の問題ですが、ウクライナ当局は立ち入りが制限された区域の縮小を検討していることが報じられています。

****チェルノブイリ原発:入域制限区域の縮小を検討****
ウクライナのバロガ非常事態相らは18日、同国北部のチェルノブイリ原発で記者会見し、25年前の事故以来、放射性物質に汚染され、立ち入りが制限された区域の一部は既に安全だとして、同区域を縮小し、経済活動の再開などを検討していることを明らかにした。

事故時のソ連政府は、原発から半径30キロの地域から居住者を立ち退かせ、入域を制限。ウクライナ政府もこの措置を継続しており、制限区域が縮小されれば事故後初となる。
バロガ氏は「25年を経て制限区域の汚染は本質的に減った。土地の大部分はおそらく生活や経済活動に使用できる」と強調。「数百ヘクタールが雇用創出や投資のための経済活動の場に戻せるかもしれない」と述べた。制限区域では事故前、主に農業や畜産業が行われていた。
同区域を管理する政府機関の当局者は、首都キエフ寄りの制限区域の南側は比較的安全になっており、「制限を設けずに居住することも可能だろう」と説明。現在、制限解除に向けて事務作業が行われていると述べた。【4月19日 毎日】
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“25年後のフクシマを、現在のチェルノブイリのような状況にしてはならない”・・・本当にそのように思います。

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福島第1原発事故  海外に広がる影響 一部に過剰反応も 論議を呼ぶ“低濃度の汚染水の海への放出”

2011-04-07 21:57:39 | 災害

(東日本大震災の被災地支援のため三陸沖で活動していた米原子力空母「ロナルド・レーガン」の、特殊薬剤による放射能汚染洗浄作業の様子のようです。“flickr”より By U.S. Pacific Fleet http://www.flickr.com/photos/compacflt/5553730162/in/photostream/ )

【「休校にしてくれ。わが子が心配でたまらない、夜も眠れない」】
福島第1原発事故の市民生活・経済・政治への影響は国内だけでなく、広く海外に及んでいます。
放射能の危険については素人にはわかりづらいことから、特に海外の場合、正確な日本の情報が伝わりにくいこともあって、やや過剰とも思える反応も見受けられます。
そうした反応の一因には、人々の不安感を煽るメディアの姿勢もあります。

****海外の大衆紙、恐怖心あおる誇張報道*****
海外の大衆紙などでは、福島第一原発から漏れ出した放射能の危険を実態以上に誇張し、恐怖心をあおるような報道ぶりも目立つ。
3月15日付の英大衆紙サンは1面トップ記事で「数千人が放射能漏れを恐れ、東京から脱出を開始」と仰々しく伝えた。
別の英大衆紙デイリー・メールの3月16日付1面の見出しは「核パニックにとらわれた国」。「日本の核危機は制御不能」などと書き立て、白いマスクをつけて涙を浮かべる女性の写真を添えた。日本で花粉症対策のマスクは珍しくないが、あたかもマスクで放射能汚染をしのいでいるかのような印象だ。
低濃度の汚染水が海に放出されたことを伝えた今月6日付独大衆紙「ビルト」は、見出しで「日本人は太平洋全部を汚染するのか?」と憤りを示した。読者はこの見出しを見ただけで、とめどない汚染の拡大を連想してしまう。【4月7日 読売】
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“低濃度の汚染水の海への放出”を問題視することが過剰反応かどうかは、異論もあるところでしょうが、広く話題にあがっているのは韓国の反応です。

****韓国首都圏で休校相次ぐ、雨に含まれる放射線を懸念****
韓国首都圏の京畿道で7日、雨に放射性物質が含まれている恐れがあるとして、幼稚園・小学校130校以上が臨時休校したり、雨が降ってきた時点で授業を途中で切り上げたりした。道教育庁の勧告によるという。
ある当局者は「生徒の安全のための予防的措置」だと説明した。
道教育庁は6日、「被ばくの危険に関する情報が錯綜しており、生徒や保護者の間に不安が広がっている」ことを理由に、休校や授業の短縮を各校に勧告していた。とくに市街地から離れた学校では、登校距離が長いことから休校措置を奨励。休校しない場合でも、屋外活動は中止するよう呼び掛けていた。

ソウル市教育当局は休校措置を取らず冷静な対応を呼び掛けたが、市のウェブサイトには「休校にしてくれ。わが子が心配でたまらない、夜も眠れない」などと、保護者からの苦情が殺到している。
京畿道の南に位置する忠清北道当局は、サッカーや野球などスポーツイベントの開催を延期した。

韓国では4日、日本の東京電力福島第1原子力発電所から漏れた放射性物質が、風に乗って朝鮮半島に到達する可能性があると気象当局が発表したことから、懸念が広がっている。青瓦台(大統領府)は6日、雨に含まれる放射性物質はごくわずかで健康被害の心配はないと指摘し、教育当局に「両親を不安にさせたりしないように」と呼び掛けていた。【4月7日 AFP】
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韓国で大騒ぎするなら、日本に住んでいる私たちはどうなるのだ・・・とも言いたくもなりますが、身近なだけに日常性に埋もれて我々の感覚がマヒしているということも多少あるのかもしれません。
今や外国人にとって日本は不安な地となったようで、日本を訪れる外国人観光客の数が3分の1程度に落ち込んでいることが6日、入国管理局の調べで明らかになってもいます。
外国観光地で事件・災害が起きると日本からの観光客が激減することもよくある話ですから、あまりとやかく言えるものでもありません。地元の人間からすれば「全土がそんなに危険な訳でもないのに・・・」というところでしょう。

その他、インドは日本からの食品輸入を今後3カ月間全面的に停止するとか、台湾で魚が売れないといったことも報じられています。
****日本の食品 インド、3カ月輸入停止****
インド保健省は5日、福島第1原発事故によって日本国内の農産物に放射能被害が出ていることを受け、日本からの食品輸入を今後3カ月間、全面的に停止すると発表した。ロイター通信によると、日本からの食品輸入を全面的に停止するのはインドが初めてという。
停止措置の適用期間について、保健省は「放射性物質のレベルが許容範囲まで低下したという信頼できる情報が得られるまで」としている。対象となるのは加工食品や野菜、果物など。(後略)【4月7日 産経】
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****台湾、魚が売れない 放射性物質は未検出****
福島第一原発の事故が台湾での魚介類の売れ行きに影響を与えている。今のところ放射性物質は検出されていないが、当局は懸命に「安心」を強調している。
台湾で日本に最も近い北端に位置する基隆市の碧砂漁港に一般客向けの魚市場がある。近海でとれたアジ、サバなどが並んでいるが、ここ2週間は客が3割減った。特に大ぶりな魚は日本寄りの遠洋産と疑われ、全く売れない。(後略)【4月7日 朝日】
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ドイツでは政局にも影響を与えています。
****ドイツ:緑の党の支持率28%に 議会第1党に迫る勢い****
ドイツで初の州首相選出を確実にした緑の党が、6日に公表された世論調査で、メルケル首相が率いる連邦議会第1党のキリスト教民主・社会同盟(30%)に迫る史上最高の支持率28%を記録した。
世論調査機関「フォルザ」によると、調査は2505人を対象に3月28日から4月1日に実施。緑の党は前週調査より7ポイント上積みし、議会第2勢力の社会民主党(23%)も抜き去った。
地球温暖化問題への関心の高まりから緑の党の躍進は予想されていたが、日本の原発事故がこの流れを一気に後押しした格好だ。緑の党は議会に所属する5党で唯一、支持率が上昇傾向にあり、次期2013年の総選挙で台風の目になる可能性が強い。【4月7日 毎日】
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【「低濃度」の放射能汚染水を海洋大量放出
“放射能雨”(以前日本でも、海外の核実験の際に、雨に濡れると頭が禿げてしまう・・・といった類の噂がありました)や農産物・魚に対する過剰な反応はともかく、冒頭記事にもある“低濃度の汚染水の海への放出”となると、私自身も本当に大丈夫なのだろうか・・・という感はあります。

東京電力は、1万1千トン以上の「低濃度」の放射能汚染水を海洋に流すという決定を下し、即日実行に移しました。「低濃度」とは言っても、通常の環境基準の100倍以上、普通であれば「高濃度」な汚染水です。
国内漁業関係者からも強い批判が出ていますが、世界の専門家の間でも論議を呼んでいます。

****汚染水放出に各国懸念…原子力再検討会議****
ウィーンで開会中の原子力安全条約再検討会議は3日目の6日、日本の同条約履行状況を検討する分科会が開かれた。
各国からは、本来の議題から離れ、福島第一原発で低濃度の放射性物質を含む汚染水を放出した問題で懸念が表明されるなど、同原発の事故に絡む質問が相次いだ。日本の関係機関による情報伝達の遅れへの各国の不満を背景に、日本に注がれる厳しい視線を浮き彫りにした形だ。

分科会は報道陣に非公開で開かれ、詳細なやりとりは不明。会議終了後に日本メディアに対して記者会見した経済産業省原子力安全・保安院の中村幸一郎審議官によると、分科会では同審議官が、日本の原子力安全規制状況や、福島第一原発事故を受けた日本の他の原発での緊急時対策の強化などを説明した。放射性物質を含む汚染水の放出問題については、日本側が取り上げなかったものの、出席国から「懸念を持っている」との声が上がったという。【4月7日 読売】
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近隣国の懸念
中国や韓国も公式に政府レベルで懸念を表明しています。
****日本の放射能汚染水放出、韓国政府が公式懸念通達*****
韓国政府は6日、東京電力が福島第1原子力発電所から放射性物質を含む水を海に放出したことに対する懸念を日本に公式に伝えた。
外交通商部東北アジア局の張元三(チャン・ウォンサム)局長は同日夕、外交通商部庁舎に兼原信克駐韓公使を呼び、日本の放射能汚染水海洋放出行為に対する韓国内の不安と懸念を伝えた。同部関係者が明らかにした。
同日午前には在日韓国大使館の参事官が外務省経済局の政策課長を訪問し懸念を伝えているが、これより1段階進んだ外交的対応措置を取ったことになる。

この席で張局長は、汚染水の海洋放出は日本だけの問題ではなく、近隣国にも影響し国民に心理的不安を与える事案だとし、事前に通達すべきだったのではないかと指摘した。そのうえで、今後こうした問題があった場合は事前に通達し、十分な情報を適時に提供してほしいと要請した。
また、必要に応じ日本を支援し協力するという次元から、モニタリング分野で韓日が協力する道がないか検討することを提案した。

これに対し兼原公使は、地理的に日本と最も近い韓国国民の懸念は十分に承知、理解していると述べた。汚染水の放出は避けられないものだと説明しながら、韓国を安心させられるよう、情報提供などさまざまな措置を取り、緊密に協力していくと述べた。韓国政府のモニタリング協力提案には、危険な地域への訪問は受け入れられないが、一般的次元の協力ならば本部に建議すると答えた。【4月7日 聯合ニュース】
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中国外務省の洪磊(こうらい)副報道局長は7日の定例会見で、福島第1原発から放射性物質を含む汚染水が海に放出されている問題について、迅速かつ正確な情報の提供を日本側に求めています。
“中国政府は、震災支援を通じて日中双方の国民感情の改善を目指していることもあり、原発事故の影響について抑制的な対応が目立っている”【4月7日 毎日】とも。

恐らく中国や韓国で同様のことが行われれば、日本政府も同様の措置をとることは間違いないことです。
批判に国内世論は沸騰するでしょう。
今回の場合、事前の情報提供に問題があった面は否めません。

【「海洋汚染テロ国家」の批判も
この件にかんしては、“日本を「海洋汚染テロ国家」にした”との厳しい指摘もあります。

****日本が「海洋汚染テロ国家」になる日――放射能汚染水の海洋投棄に向けられる世界の厳しい視線【週刊 上杉隆*****
自由報道協会はきょう(4月6日)、元佐賀大学学長の上原春男氏の共同インタビューを主催した。上原氏は福島第一原子力発電所3号炉(もしくは5 号炉)の設計にかかわり、外部循環式冷却装置の開発者でもある。
震災直後から複数回にわたり、菅直人首相はじめ政府、統合本部、東京電力などから助言を求められている。事故後メディアの前に姿を現すのは今回が初めてであった。

その上原氏は、放射能汚染水を海洋に流し続けるという決定を下したばかりの政府に対して、繰り返し嘆いた。
「なんで、あんなことをしたのか。海洋に放射能汚染水を流すなんて信じられませんよ。誰がそんなバカなことを決めたのか。これで日本は世界中を敵に回した。恥ずかしい。せっかく信頼のある国だったのに、本当になんてことをしてくれたんだ」
いまや政府と東京電力による愚かな決定の数々は、日本を「海洋汚染テロ国家」に仕立て上げようとしている。(後略)【4月7日 DAIMOND online】
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東日本大震災  海外からの支援に、日本の感謝の気持ちを

2011-04-05 19:37:55 | 災害

(4日夜、日の丸をイメージした白と赤のイルミネーションに染められたエンパイアステートビル “flickr”より By NYC♥NYC http://www.flickr.com/photos/nyclovesnyc/5590681117/

エンパイアステートビルも日の丸に
東日本大震災に対する海外からの支援については、国家レベルの援助・支援の提供、多くの人々からの義援金など、連日報じられています。
震災は大きな不幸ではありますが、国内・国外における人のつながりを再認識させるところもあります。

4日夜には、ニューヨークのエンパイアステートビル、ソウルのNソウルタワーなど、世界7か国の九つのビルやタワーが東日本大震災に見舞われた日本国民との結束を示すため、日の丸色にライトアップされたそうです。

****世界が応援、日の丸染めてライトアップ****
ソウル中心部・南山の頂上に立つ「Nソウルタワー」(236・7メートル)が4日夜、日の丸をイメージした赤のイルミネーションに染められた。
東日本大震災の被災者を応援しようと、米ニューヨークの象徴、エンパイアステートビルの管理会社が発案した。

ソウルのほか、中国・マカオのマカオタワー、マレーシア・クアラルンプールのメナラKL、ニュージーランド・オークランドのスカイタワー、カナダ・トロントのCNタワーなど世界7か国の九つのビルやタワーが賛同した。現地時間の4日夜から5日未明にかけて、ライトアップされる。【4月5日 読売】
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日本との関係も深いタイからは、電力不足に陥っている東京電力に、ガスタービン発電機2基を付属設備を含めて施設丸ごと無料で貸し出すことが報じられています。

****東電に発電施設丸ごと貸し出し タイから船で運搬****
タイ政府は29日、東日本大震災による福島第一原発などの事故で電力不足に陥っている東京電力に、ガスタービン発電機2基を付属設備を含めて施設丸ごと無料で貸し出すと発表した。1基で約450トン。2基で計24万4千キロワットを供給する能力があり、船で運んで8月中の稼働を目指す。

東京電力は今夏ピーク時の電力不足を総需要の2割弱の850万~900万キロワットと見積もっており、余剰設備がないかを国内外に打診。タイ政府がほぼ休眠状態だった非常時用のガスタービン発電機2基を貸し出すと申し出た。
1995年稼働開始の三菱重工製。貸出期間は3~5年で、吸気フィルターや排気ダクトなど付属設備も運ぶ。全体の設置面積は1基約1700平方メートル。設置場所は検討中という。施設の分解と輸送、再組み立てなどを経て稼働は8月ごろになる。

輸送作業を担当する三菱重工によると、発電機だけを運んで日本で付属設備をそろえるより短期間で稼働できる。これだけの規模の海外移送は「世界的にも聞いたことがない」(担当者)という。
ワナラット・チャーンヌクン・エネルギー大臣は記者会見で「日本とタイは120年に及ぶ協力関係にあり、電力についても40年間にわたり提携してきた」と述べた。【3月29日 朝日】
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バンコクの日本大使館が感謝広告
こうした支援には救われる感じがありますが、その感謝の気持ちははっきりとした形で出すのがいいでしょう。
タイ・バンコク大使館は3月31日付の地元紙に感謝を表す広告を出しています。

****タイ国民に「ありがとう」=震災支援に日本大使館が感謝広告****
タイ国民から日本の大震災被災者に多くの義援金や支援が寄せられたことを受け、バンコクの日本大使館は31日付の地元紙に感謝を表す広告を出した。半ページを占める扱いだが、新聞社側の意向により無料で掲載された。
広告は日本とタイの国旗をあしらい、タイ語、英語、日本語で「ご支援・ご声援ありがとうございます」と記している。この日は英字紙ネーションなど2紙だけだが、1日以降少なくともあと2紙が掲載の予定。どの新聞社も「広告料は不要」と伝えてきたという。

大使館前にも同様のメッセージを書いた横断幕を掲げている。大使館員有志が約5万バーツ(14万円)を出し合って作成した。業者は「料金は要らない」と言っているというが、大使館側は「これは払わせてもらうつもり」と話している。【3月31日 時事】
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他の国にでも行っているのかは知りませんが、まだ行っていないなら、日本の感謝の気持ちを伝えるべく、是非取り組んでもらいたい試みです。

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