ロイター通信などによりますと、リビア東部のデルナで18日、洪水のきっかけとなったとされるダムの決壊は事前の警告を放置した行政の怠慢だとして、市民らが抗議デモを行いました。
市民らはリビア東部を拠点とする「東部政府」の議会議長の解任などを求めています。 また、デモの参加者の一部は暴徒化し、市長の自宅が放火される事態に発展したということです。
国連機関の発表ではデルナを中心に少なくとも3958人が死亡し、9000人以上が行方不明となっています。【2023年9月20日 テレ朝news】
(イエメン首都サヌア北西のアブスで太陽光発電所を運営するイマン・ハディさん率いる女性グループ(2021年3月9日撮影) 【4月25日 AFP】)
【多難な暫定統一政府】
内戦が続くリビアでは、対立してきた東西両勢力の合意のもと、デイバ暫定首相率いる暫定統一政府が3月中旬に成立しています。
暫定首相は西から、暫定統一政府を監督する執行評議会議長は東からという権力分担のようです。
しかし、西を支援するトルコ、東を支援するロシアによるそれぞれの傭兵が残存しており、いつ戦闘が再燃してもおかしくない状況でもあります。
****内戦終結なるか? リビアでデイバ暫定統一政府が始動****
内戦が続くリビアで、対立してきた東西両勢力が認めるデイバ暫定首相率いる暫定統一政府が3月中旬に始動した。任期は12月に予定される大統領選、議会選までとなる。
一部の戦争捕虜が解放されたほか、これまで別々の勢力を支援してきた地域大国のトルコとエジプトの間では関係改善の動きもあり、何度も頓挫してきた内戦の終結に結びつくかが注目される。
北アフリカ随一の石油大国リビアでは2011年のカダフィ独裁政権崩壊後、複数の武装勢力が割拠。15年以降は西部のシラージュ暫定政権と東部を拠点とする民兵組織「リビア国民軍」(LNA)の勢力争いが続き、20年前半には西部の首都トリポリを巡る攻防戦が一時激化した。
しかし20年10月に停戦合意が結ばれ、国連が仲介する対話が進展。21年2月にはリビア西部・東部・南部の代表75人がスイスで会合を開き、暫定統一政府メンバーが投票で選出された。
デイバ暫定首相は西部ミスラタ出身で、暫定統一政府を監督する執行評議会は東部トブルク出身のメンフィ議長が率いるなど、地域間のバランスも考慮されている。西部勢力は3月、和解の意思表示として東部LNAの捕虜100人以上を解放した。
こうした中、西部勢力を軍事支援してきたトルコと東部LNAを支えてきたエジプトには接近の動きもある。エジプト外交団は20年12月にトリポリを訪問し、トルコが支援する西部陣営幹部らと会談した。
イスラム組織「ムスリム同胞団」と近いトルコのエルドアン政権は、エジプトで同胞団系のモルシ大統領(当時)が13年に軍の介入で失権させられて以降、エジプトと対立。これがリビアにも飛び火し、東西対立を助長する一因となってきた。
だがトルコは近年、東地中海での資源開発を巡る周辺国との摩擦などによって孤立し始めており、外交方針の転換を模索しているとみられる。
ただ、リビアでの内戦終結には懸案も残る。停戦合意には「外国戦闘員の排除」が盛り込まれたが、西部にはトルコ軍、東部にはロシアの民間軍事会社「ワグネル」の部隊などが駐留を続けている。
エジプトのリビア専門家、アブデル・サッター・ヘテイタ氏は「トルコとエジプトの主導権争いは続いており、民兵組織や外国部隊の存在も危険要素だ」と指摘。「暫定統一政府が12月の選挙を実施し、新たな政府と議会を誕生させることが危機を終わらせる最初のステップとなる」と分析している。【4月6日 毎日】
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でもって、最近の状況は・・・あまり順調に機能しているようにも思えません。
****相も変らぬリビア情勢****
リビアでは新しい統一政府ができ、12月には大統領と議会の選挙の実施が合意される等、リビア問題の政治的解決に向けて重要な動きがあったように見えますが、その後はシルトでの停戦も必ずしも安定していない等、その実情は相変わらずのようで、アラビア語メディアから見る限り、問題は軍閥の長たるhaftar将軍と議会議長にあるように見えますが、複雑すぎて、何が実相かよくわかりません
とりあえずアラビア語メディアから
・内戦開始から初めて、リビア政府の会合がベンガジ(東部リビアの中心都市でリビア議会議長やhaftar将軍等の本拠地)で26日開催されることとなり、統一政府首相がこれまた内戦後初めてベンガジに入ることとなった
・然るhaftar 指揮下のリビア民兵が、25日、dabiba首相を暗殺すると警告した。
・政府のベンガジ開催については、その準備にあたる関係者が空路到着したが、このような状況を受けて26日に予定されていたベンガジでの閣議は延期された
・他方米国の新政権誕生を受け、これまでリビア問題に消極的であった米国がその政治的解決に熱心となり、中リビア米大使が議会議長と接触する等動き出した。
その背景は一つにはリビア議会議長が、政府の提出した新しい予算案の審議を拒否していることにある【4月26日 「中東の窓」】
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暫定首相を暗殺云々、予想された暫定統一政府と執行評議会の対立・・・12月に大統領と議会の選挙が行えるかどうか、日本の東京五輪と同程度でしょうか。
【市民による起業の取り組みも 塩セラピーに水耕栽培】
今日書きたかったのはそういう話ではなく、リビアというと内戦・東西対立のこと、難民の悲惨な境遇などがいつも話題になりますが、(もちろん、それらは極めて重要な視点ですが)そういう状況下でも、市民の新しい生活を求める動きもあるということです。
****塩セラピーのスパ、リビア革命の聖地を癒やす新ビジネス****
反カダフィ革命の聖地として知られる、リビア東部の主要都市ベンガジ。戦火で引き裂かれたこの国で思いもよらなかった癒やしのビジネスが、この地に登場した。
10年前、独裁者ムアマル・カダフィ大佐の打倒を目指して市民が立ち上がった港湾都市に昨年10月、リビア初の塩セラピーのスパがオープンした。
2人の女性起業家が立ち上げたスパの名前は「オパール」。静かな音楽と控え目な照明に包まれた瞑想(めいそう)的な雰囲気の中で、心地よい施術が行われる。それぞれの部屋は、塩でできた人工洞穴のようだ。
「塩の粒子を吸い込むことで呼吸器が浄化され、肌にも良い効果がある」と説明するのは、共同設立者で代替医療の専門家イマン・ブガイギスさんだ。
彼女はシャベルを使って、30代の男性客の両脚を塩に埋める。客は目を閉じ、塩の塊を両手で握り、ゆっくり呼吸を続けた。
別の部屋には、ヨウ素が添加された塩の粒子を散布している装置があった。
1回の施術は45分ほどで、料金は80〜120リビア・ディナール(約1900〜2900円)。効果を得るには数回通う必要があるとブガイギスさんは述べた。
■「痛みが和らいだ」
ベンガジの流行地区の真ん中にあるオパールが提供する塩セラピーは、ぜんそくなど呼吸器系の症状や湿疹・乾癬(かんせん)を含む皮膚疾患の治療に有望だという。
この都市は内戦中、東部勢力のハリファ・ハフタル司令官の牙城だったため、爆発の跡や破壊されたビルが目立つ。
(中略)ブガイギスさんは他のアラブ諸国を旅行中に、塩を使う治療法を知ったという。その後、隣国チュニジアで代替医療を学んだ。
慢性病に対する塩セラピーの効能を確信したブガイギスさんは、帰国すると知人のザイナブ・アル・ワルファリさんとともに新ビジネスを立ち上げた。
■平穏な日常
オパールの開業はちょうど昨年10月、東部勢力と首都トリポリの国民統一政府の間で停戦合意が結ばれた時期と重なった。新たな暫定統治評議会が2月に発足し、12月の国政選挙に向けて体制を整えている。長年不安定な状態にあるリビアでは、ビジネスの見通しはつけにくい。
ワルファリさんは、塩セラピーの考え方をまずベンガジ市内の医療関係者に広めるところから始めるつもりだ。「そうすれば一般の人々にもできる限り行き渡る」と考えている。オパールでは、あらゆる年齢の患者を診る用意ができている。
カダフィ大佐殺害から10年、繰り返された戦闘を経て、リビアの人々は平穏な日常を取り戻そうとしている。 【3月13日 AFP】
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東部勢力のハフタル司令官の牙城ベンガジで塩セラピーのスパ、しかも立ち上げたのは女性起業家・・・内戦や難民だけでなく、こういう動きもあるのかと驚いたのですが、驚く方が物事の一面しか見ていないということなのでしょう。
次は首都トリポリでの水耕栽培事業。
****国土9割が砂漠のリビアで「緑のパラダイス」 食料自給率向上に奮闘****
黄色い防水シートに覆われたトンネル形の温室で、シラジュ・ベチアさんとパートナーのムニルさんは水耕栽培のレタスの出来を調べていた。国土の9割が砂漠で、伝統的な農業が困難なリビアでは先駆者だ。
この「グリーンパラダイス」で貴重な作物を支えているのは、プラスチックのカップに穴を開けた鉢と、ホームセンターで購入した合成樹脂管、結束バンド。間に合わせの園芸用品ではあるが、作物はぐんぐん成長し続け、栄養分と酸素濃度の高い水を送り込まれたレタスが白い根を長く伸ばしている。
ベチアさんとムニルさんは首都トリポリの東40キロの小さな町で何か月もこのプロジェクトに打ち込んでいる。
ベチアさんはAFPに、水量が少なくて済み、農薬も要らない水耕栽培を広めていくのが願いだと語った。
国土の大半を不毛な砂漠が占めるリビアで、水耕栽培は食料の自給自足率を高めることにつながるというのがベチアさんの考えだ。
アフリカ最大の原油埋蔵量を誇るリビアでは、経済は炭化水素関連の分野を中心に回っており、農業は脇に追いやられている。耕作に適した土地は国土のせいぜい3%しかなく、地中海沿岸の肥沃(ひよく)な土地にも都市化が急速に広がっていることから、残されたわずかな土地もこの先どうなるか分からない。
農業をさらに難しくしているのが、農作業に最も必要な水が不足していることだ。
南部の地下水面からくみ上げられた飲料水は、リビアの大規模なパイプラインを通じて国民の大半が暮らす北部の各都市に運ばれている。だが、水資源には限りがあり、この供給網も、独裁者だった故ムアマル・カダフィ大佐の失脚以来10年間続いた内戦による損壊が激しい。
■「リビアの消費者は有機野菜を求めるようになった」
水耕栽培は、理論上は従来の農法に比べると収穫量も収益も多い。従来の農法は、天候や水不足の影響を受ける一方で、野放図な農薬散布による汚染のリスクもある。
ベチアさんは、「リビアの消費者は農薬まみれの野菜にそっぽを向き、有機野菜を求めるようになった」と指摘する。
水耕栽培の野菜は農薬まみれではないにしても、味が水っぽいとけなされることもある。また一般的には有機野菜には分類されないが、専門家は、リビアの水不足を補う新たな農法として、水耕栽培に期待を寄せている。
とはいえ、普及するにはまだ多くの障害がある。手間がかかり、リビアで必要な材料を調達するには費用がかかり過ぎると専門家は指摘する。
それでもベチアさんはくじけない。「根気強く続けて、信念を貫くしかありません」 【4月24日 AFP】
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おそらく一般庶民向けではない、高級食材でしょう、今は。
それでも、リビアの土地・水資源を考えると、将来が期待されます。
【内戦のイエメンでも女性起業家による太陽光発電事業】
一方、4月18日ブログ“サウジアラビア イランとの直接対話 アメリカの戦略変更、軍事・財政事情でイエメン停戦を協議か”でも取り上げたイエメン。
内戦の状況については新たな情報を見ていませんが、リビア同様、内戦に負けない市民の新たな動きも。
****女性だけの太陽光発電所 イエメン内戦に苦しむ家々に光****
イエメンで10人の女性が、周囲から冷ややかな目で見られながら、ひるむことなく地元の村に電気をもたらすという先駆的な取り組みを実現した。
イマン・ハディさんと仲間の女性たちは今、戦禍で荒廃した国内各地に太陽光発電を利用したマイクログリッド(小規模発電網)を拡大する夢を抱いている。
イエメンは、壊滅的な内戦によって大半のインフラが破壊され、国民は飢えと貧困に苦しんでいる。
ハディさんは2019年から、首都サヌア北西に位置し、反政府武装勢力が掌握するアブスで「フレンズ・オブ・エンバイロメント発電所」を女性のみで運営している。太陽光パネル6基を備えたこの発電所は、村の数十世帯にとっては唯一の電力供給源だ。
事業のアイデアは、アラビア半島の最貧国イエメンで、戦争の影響を少しでも和らげるために自分たちで何かできないかと模索した時に生まれたとハディさんは言う。
■地元への融資で市民を援助
イエメンでは、2014年以降、紛争による死者は数万人に上る。同国では、イランから支援を受けた反政府武装勢力フーシ派と、国際社会が支持し、サウジアラビア主導の連合軍が援助する政府が内戦を続けている。
紛争前に公共電力供給網を利用していたのは、国民の約3分の2だけだったが、内戦によって発電所をはじめ、病院や事業所も破壊されるか休業に追い込まれた。深刻な燃料不足もあり、多くの市民がろうそくの火を頼りに働くことを余儀なくされている。
絶望の底にあるイエメンで希望の光となっているのは、都市部や農村の住宅の屋上に設置され始めた太陽光パネルだ。
ハディさんの発電所は、国連や欧州連合に資金と研修を受けて運営されているが、こうした事業は市民が収入を得る一助にもなっている。
ハディさんは毎月約2000ドル(約22万円)の純利益から小口融資を行い、地元の人々が食料品店やパン店などの小規模事業を始める援助をしている。
■以前はばかにされ、今は尊敬されるように
とはいえ、起業家としてのハディさんの道のりは険しいものだった。
コンクリートの壁に囲まれた小さな発電所が位置するのは、反政府勢力と政府軍との戦闘がたびたび発生する前線地域だ。しかも、農村社会では女性が家庭の外で働くことが受け入れられていない。
「試練はたくさんありました。この種の仕事は男性がやるものと思い込んでいる家族や地元の社会からは笑われ、反対されました」とハディさんは言う。「でも私たちはこうした困難に粘り強く対処してきました。ばかにされていましたが、今では女性たちは感謝され、尊敬されるようになりました」
ハディさんの事業は、気候変動と闘う人々をたたえる「アシュデン賞」(人道支援のためのエネルギー部門)を獲得している。国連開発計画は、同事業を現3か所から全国100か所に拡大する取り組みを行っている。ハディさんは、英BBCによる2020年の「世界で最も影響力のある女性100人」の一人にも選ばれている。
ハディさんの長期計画は、地元地域の3060全世帯に太陽光発電の供給を広げることだ。「この国の全ての女性に対する私のメッセージは、立ち上がり外に出て、自分の夢を実現しようということです」とハディさんは語った。 【4月25日 AFP】
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全くの素人感想ですが、イエメンなど大規模発電のインフラが不十分な地域では、太陽光発電というのは有効活用ができるツールなのでは。
そういう視点での資金的・技術的サポートがもっと望まれます。
リビアの塩セラピー同様、こちらも女性による起業。
リビアにしろイエメンにしろ、内戦状況という厳しい環境に加え、女性の社会進出に厚い壁のあるイスラム社会での女性起業家の奮闘、なんとか今後も頑張って「新しい社会」の1ページを作って欲しいものです。
(スエズ運河で座礁したコンテナ船「エバーギブン」を捉えた衛星写真【3月26日 AFP】 見事に塞いでいますね・・・)
【世界貿易量の12%がストップ】
エジプトは2015年に並行新水路建設と既存水路拡張を含む「新スエズ運河」の運用を開始しています。
****新スエズ運河****
地中海と紅海を結ぶ既存のスエズ運河を拡張する水路である。運河をくぐる6本の新しいトンネルの建設と、両岸の76,000平方キロメートルの土地を国際物流・商業・工業拠点とする計画と同時に打ち出された、当局が100万人の雇用を生み出すと見込んだ計画である。
プロジェクトには、既存の全長164キロメートルの運河に並行する新しい35キロメートルの運河と、既存の運河のうち37キロメートルに渡る区間の掘削と拡張が含まれる。
運河の拡張により、運河の大半の区間で船が同時に双方向に航行することができるようになる。【ウィキペディア】
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正栄汽船(愛媛県今治市)所有の大型コンテナ船がスエズ運河で座礁した事故は、水路が1本しかない箇所で起こったようです。
“座礁した船は正栄汽船が台湾の海運大手、長栄海運に貸し出し中の「エバーギブン」で、正栄汽船によると、満載に近い約1万8千個(20フィート換算)のコンテナを積んでいた。積み荷の総重量は約16万7600トンに達するという。”【3月26日 朝日】 オランダのロッテルダムへ向かう途中でした。
原因については、強風と砂嵐により視界不良となったこと、あおられてまっすぐな針路を保てなくなったことが主因とのこと。
****スエズ運河、コンテナ船座礁の経緯と離礁作業****
エジプト北東部のスエズ運河で巨大コンテナ船が座礁し、往来を遮断している。スエズ運河は世界で最も交通の激しい運河のひとつで、欧州とアジアを最短距離で結ぶ航路だ。
◎座礁の経緯
全長400メートルのコンテナ船「エバーギブン」は23日午前に座礁した。紅海から地中海へと北上する途上で方向がねじれ、運河の両岸の間を斜めにふさぐ形で動けなくなった。
スエズ運河庁によると、強風と砂嵐により視界不良となったこと、あおられてまっすぐな針路を保てなくなったことが主因とみられる。座礁当時、エジプトは強風に見舞われており、地中海と紅海で複数の港が閉鎖に追い込まれていた。
船舶はスエズ運河に入ると、通常は船団を組んで進む。航行は1、2隻のタグボートに補助される形になる。時に座礁が起こるが、通常はすぐに離礁し、他の船舶の運航にはほとんど影響を及ぼさない。
◎往来が遮断された理由
エバーギブンは、水路が1本しかない運河最南端部分をふさいだ。このため、他の船舶は一切通行できない。
エジプトは2015年、35キロメートル区間で第2水路を開通し、双方向の同時通行ができるようにした。ただこの対象区域は、グレートビター湖以北の、湖にかけて河幅が広がる区間。
運河庁は24日、エバーギブンがすぐに離礁すると見込んで運河北端のポート・サイドから船団が運河に入るのを許した。しかし、こうした船舶はグレートビター湖の待機水域で足止めとなり、いかりを下ろしている。
◎離礁のための作業
少なくともタグボート8隻が船を岸から引き離すためのけん引などを試みてきた。エバーギブンのウインチ(巻き揚げ機)も動かしている。このほか掘削機が、運河東岸にめりこんでいる船首付近の土の除去を行っている。運河庁は海底の土砂を浚渫(しゅんせつ)する船を2隻差し向けた。
船を浮かせようと、複数の地元海事当局筋によれば、船体を安定させる目的で積まれている「バラスト水」を抜く作業も行われた。
◎その他の選択肢
エバーギブンの船主会社は日本サルヴェージ社とオランダのシュミット・サルベージ社から2つの専門チームを呼んでいる。船体を浮かせるための「より有効な計画の立案」を仰ぐためだ。
シュミット・サルベージの親会社Boskalisの広報担当者は、タグボートに加えて複数の船舶を使う可能性があるが、コンテナ船にダメージを与えずにどれほどの力をかけられるかについては計算が必要だと述べた。
この他の選択肢としては、船底の下の海底から砂をすくい出すことや、貨物を降ろして重量を軽くすることが考えられる。ただ複数の海運筋は、コンテナ船の規模と位置を考えると、貨物を降ろすのは長期的かつ複雑な作業になる可能性があると話している。【3月26日 ロイター】
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“スエズ運河は世界の貿易量の12%が通過するとされ、1日に扱う貨物の総額は約100億ドル(約1兆1000億円)に上るという。”【3月26日 CNN】ということで、たった1隻のコンテナ船が世界貿易の12%を止めてしまったという、とんでもなく甚大な影響をもたらしています。
****スエズ運河の座礁、五輪プール最大8杯分の砂の除去必要****
世界の海上交通の要衝、エジプトのスエズ運河で大型のコンテナ船が座礁して運河をふさぎ、船舶が通行できなくなっている問題で、運河当局はコンテナ船を離礁させるのに最大で2万立方メートルの砂を除去する必要があると明らかにした。(中略)
運河当局が25日に発表したところによると、これらの浚渫船は1万5000〜2万立方メートルの泥や砂を除去し、12〜16メートルの深さを確保する必要がある。そうすれば船を離礁させることができる。オリンピックで使用する競泳プールの約8杯分の砂を除去する計算だ。
エバーギブンの船舶管理会社は声明で、すでに作業中の浚渫船に加え、特殊なポンプ浚渫船1隻も現場に到着し、間もなく作業を開始すると説明した。この浚渫船は1時間に2000立方メートルの砂や泥を除去できるという。
運河当局の関係者は24日、CNNの取材に対し、大型コンテナ船を再浮上させることは「技術的に非常に困難」で、数日かかる可能性があると述べた。
エバーギブンを運航する長栄海運によると、日本やオランダのサルベージ会社に所属する経験豊かな専門チームも支援に加わることになっている。
ただ航路再開まで日数がかかれば、貿易を止められる企業や国がその分損失を被ることになる。スエズ運河は世界の貿易量の12%が通過するとされ、1日に扱う貨物の総額は約100億ドル(約1兆1000億円)に上るという。
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一体この巨額の損失を誰が負担するのでしょうか?保険でしょうか?
****「賠償責任は船主に」 コンテナ船運航の台湾企業―スエズ運河座礁****
エジプトのスエズ運河で大型コンテナ船が座礁している問題で、この船を運航する台湾の長栄海運は25日、座礁により発生が予想される賠償責任は、船のオーナーが負うなどとする見解を表明した。
コンテナ船は愛媛県今治市の正栄汽船が所有しており、長栄海運は声明で「船の復旧作業や第三者に対する(賠償)責任に関する費用、船体の損傷などの責任は船主が負う」と強調した。【3月25日 時事】
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所有者の正栄汽船は記者会見で“世界の交通の要衝である運河の遮断で、船主が巨額の賠償責任を負う可能性については「国際法とエジプトの国内法の問題となる。法律にのっとって対応する」と答えた。”【3月26日 朝日】
下落傾向にあった原油先物価格にも影響が出ていますが、コロナ禍の需要減少で需給が軟弱なために、すぐに価格が暴騰するという状況でもないようです。
****原油先物は反発、スエズ運河遮断の長期化懸念で****
アジア時間の原油先物は反発している。世界の海上輸送の要衝であるエジプトのスエズ運河で座礁し、船舶の航行を妨げている大型コンテナ船の移動作業が数週間続き、供給を圧迫する可能性があるとの見方が出ていることが背景。(中略)
日産証券のアナリストは「スエズ運河の航行遮断が数週間続く可能性があるとの見方から、原油市場で供給逼迫懸念が高まっている」と指摘。その上で、「欧州などでのロックダウン(都市封鎖)により、燃料需要の回復が鈍化するとの懸念が残っており、上値は抑制される見込みだ」と語った。
欧州諸国では新型コロナウイルスの感染拡大を抑制するための規制を延長する動きが出ており、燃料需要の低下につながるとみられる。【3月26日 ロイター】
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【27日の大潮が離礁のチャンス 長期化の可能性も】
いずれにしても、回復が1日遅れるごとに損失・影響は増え続けます。
明日27日が大潮で離礁のチャンスとか。
****巨船の離礁「緻密な計算の作業」 27日が大潮、荷のバランスも鍵****
エジプト・スエズ運河の航路をふさいだコンテナ船座礁は、400メートルある船の全長が運河の横幅を上回り、離礁を難しくさせている。当局は発生から3日となる26日も作業を継続。スエズ運河庁の元高官は地元メディアに「潮位や積み荷のバランスの緻密な計算が必要だ」と指摘した。(中略)
船舶ブローカーのアナリストは「現場は27日が大潮で、離礁の最大チャンス。航路を正常化できなければ長期化する」と予測した。【3月26日 共同】
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【ロシア 迂回ルートとして北極海航路をPR】
もっとも、離礁してすぐに正常復帰ということでもないようです。
****コンテナ船「27日離礁目指す」=運航正常化には時間か―スエズ運河****
エジプトのスエズ運河で起きた大型コンテナ船の座礁事故で、船を所有する正栄汽船(愛媛県今治市)は26日、「日本時間27日夜の離礁」を目指して作業を続けていることを明らかにした。
ただ、離礁後も船のえい航や航行に手間取る恐れがあり、全面的な運航正常化にはさらに時間を要する恐れがある。
当局は運河の通航を一時中断して再開を急いでいる。だが、一部の船舶は事態長期化を見越し、スエズ通航を断念してアフリカ南端の喜望峰を経由する迂回(うかい)ルートを取り始めたもようで、輸送網の混乱が広がっている。(後略)【3月26日 時事】
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面白いと言ったら怒られますが、喜望峰を経由する迂回ルートの他にも別ルートが。
****スエズ運河の「代替ルート」 ロシア、北極海航路をPR****
ロシアは25日、エジプトのスエズ運河で大型コンテナ船が座礁し、航路がふさがれている機会を捉えて、「代替ルート」として北極海航路をアピールした。
日本企業が所有するパナマ船籍のコンテナ船「エバーギブン」は23日、スエズ運河で砂嵐に巻き込まれて座礁。地中海と紅海を結び、世界の海上貿易の10%以上を占める航路が遮断された。
ロシア国営エネルギー企業ロスアトムは25日、スエズ運河航路の代替ルートとして北極海航路を検討すべきだと主張した。
ロシアは、北極海航路の開発に多額の投資を行ってきた。同航路を利用すれば、アジアまでの航海日数を従来のスエズ運河航路よりも短縮できる。
気候変動による氷の減少を受けて、ロシア政府は北極海航路を使って石油やガスの輸出を計画している。
ロシアの気象当局は25日、北極海航路の2020年の海氷量は「過去最低水準」だったと発表した。夏の終わりには海氷がほぼなくなる年もあるという。 【3月26日 AFP】AFPBB News
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そういう手もありましたね。
ただ、気を付けないと、北極海航路は氷に閉じ込められる危険もあるのでは。温暖化で利用が可能になったとは言え、北極海航路は原子力砕氷船に先導されて航行する必要があり、砕氷船なしでの航行は試験的でニュースになるほどでした。その分コストもかかります。
“コペンハーゲン・ビジネス・スクールが2016年に発表した報告によると、現状と同じ速度で北極海の氷が解けていけば、北極海航路は2040年ごろに経済的に利用可能となる。”【2018年8月23日 BBC】
現状はどんな具合なんでしょうか?
そう言えば、スエズ運河と並ぶ大動脈のパナマ運河に対抗して、ニカラグアが中国資本によって新運河を建設するという話もありましたが・・・
2018年には資金不足で中止になったとか、2019年にはアメリカの外国資産管理局(OFAC)が運河計画に関わったニカラグア企業3社を、ニカラグア・オルテガ政権のマネーロンダリングと認定し経済制裁を行った・・・といった話も。
“ほとんど建設されぬまま計画は事実上放棄されている”【ウィキペディア】とも。