(ロシア治安当局が、自爆テロを行うリスクが高いとして公開した「黒い未亡人」と呼ばれる女性4人のひとり、ルザンナ・イブラギモワ 彼女たちを自爆テロに駆り立てているのは、ロシア治安当局がこれまで行ってきたイスラム反政府勢力対策への怒りと復讐です。 “flickr”より By Boaz Guttman http://www.flickr.com/photos/32368051@N08/12060644636/in/photolist-jnKXsU-jvJ1z1-jtAFad-jniocB-jxAYiQ-jyB7zH-jxQc53-jhpaQk-jhr1X5-jhqJrZ-jhD113-jC1Uhj-jyGBgE-jqiEm3-jqVxsk-jr5R9d-jqn1dE-jxxHHx-jAVoe8-jqu54d-jqsCuC-jqu4XG-jqqE8x-jqu5s9-jqseUr-jqu5rC-jqsdqe-jqqE7R-jqqE2a-jqLUqw-jqKvjS-joP3BQ-jqsnEQ-jqqW5S-jqqx9F-jjyWW1-jjx7GP-jrZ8GR-jpW8eq-jpTJmn-jpSjXH-jpUbVL-jxSmZk-jxVzYw-jzHYVe-jzL77d-jAvTcC-jAuZX2-jAw3Na-jAwWQE-jwmaYN)
【雪不足に腐敗・汚職】
2月7日の開幕が目前とに迫ったソチ冬季五輪ですが、肝心の雪が足りない状況のようです。
もともと、夏の保養地として知られたソチを大改造して冬季五輪を開催するということで、雪不足の心配は開催決定当時からありました。
更に、“標高の低いソチ市内では、平年を10度上回る16度を記録するなど暖かい日が続いています。”【1月30日 テレ朝ニュース】という最近の気象条件もあって、人工降雪機で作った雪を重機で運ぶなどの対応がとられているようです。
****ソチ五輪まで1週間 雪不足が大きな問題となっています。*****
ソチオリンピックの開幕まで、あと1週間。競技施設は、ほぼ完成したと言われる一方で、雪不足が大きな問題となっています。
ロシア・ソチは、プーチン大統領お気に入りの保養地だが、最大の理由は、政治的なもくろみ。
「偉大なるロシアの復活」を掲げるプーチン大統領は、国際会議やスポーツ大会などを招致して、社会的なインフラを整備し、大都市との格差に対する地方の不満を解消して、これを自らの支持基盤を確かなものにすることに利用している。
しかし、ソチオリンピックでは、総額およそ5兆円にのぼる開催経費の、実に3分の2が、横領や賄賂といった不正に消えたとみられていて、近代化を図ろうとしたことで、皮肉にも、旧態依然としたロシアの負の部分を世界に露呈させたことになる。
また、オリンピックを妨害しようというテロも、プーチン大統領にとって重大な懸念材料。2013年の末、南部のボルゴグラードで連続自爆テロが起きたが、ソチが位置する北カフカス地方は、歴史的な経緯から、イスラム教徒が多く、ロシアからの独立を主張する過激派勢力の拠点となっている。
捜査当局は、29日に容疑者の男2人を逮捕したが、ほかに共犯者がいるとみて、厳戒態勢を敷いている。
こうした中、観戦チケットを持っていないと、オリンピックパーク内の散歩すらかなわないなど、「参加させる大会」ではなく、むしろ「排除する大会」になっていて、プーチン大統領以外に、いったい誰のためのオリンピックなのか、疑問すら感じる。【1月31日 FNN】
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雪の方は今後の天気次第ですが、一晩の降雪で事情は一変する可能性があります。
全く変わらないのはロシア社会の不正・汚職体質のようです。
それにしても、“(五輪史上最高額となる約5兆円という開催経費の)3分の2が、横領や賄賂といった不正に消えた”というのはとんでもない額ですが、そこまでわかっているなら、どうして放置されているのか?プーチン大統領の逆鱗に触れないのか?という疑問もあります。
単なる都市伝説的な噂にすぎないのか、プーチン大統領周辺の懐に入っているのか、ロシアの不正・汚職体質によって見逃されているのか・・・。
“3分の2”が本当かどうかはともかく、相当の不正・汚職が横行したことは想像に難くありません。
【「あらゆる手段でソチ五輪を粉砕する」「我々からプレゼントを受け取ることになる」】
雪は天候次第、汚職体質はすぐにはどうにもならない問題ですが、プーチン政権として何とか無事にマネジメントしたいのは3番目の“テロ”の問題です。
“テロ”の問題も、ソチが北カフカス地方にあり、イスラム反政府勢力の代名詞的なチェチェンや最近もテロが頻発しているダゲスタンなどにも近いことから、開催決定当初から懸念されていることで、今さら・・・の感もあります。
イスラム反政府勢力の立場からすれば、ロシア・プーチンの威信をかけて目と鼻の先で行われるソチ五輪を見逃すことは常識的には考えられません。
プーチン大統領がソチ五輪成功にその威信をかけているのと同様に、彼らとしてもその勢力の“威信”が問われる問題でしょう。
****ロシア南部のイスラム過激派、ソチ五輪攻撃予告****
ロシア南部ダゲスタン共和国を拠点とするイスラム過激派が、昨年12月末にボルゴグラードで起きた連続自爆テロへの関与を認め、ソチ五輪をテロ攻撃すると予告した動画を、インターネット上に流した。
イスラム過激派が犯行を認めたのは初めて。
19日にネットに公開された約50分に及ぶ動画では、2人の男が自爆テロを実行すると予告している。
画面には、計34人が死亡したボルゴグラードでの連続自爆テロについて、「ビラヤト・ダゲスタン」という組織を代表して、スレイマン、アブドゥルラフマンという2人の男が実行したという説明文が現れる。
実行犯とみられる2人の男は、プーチン大統領に向け、「ソチ五輪を開けば我々からプレゼントを受け取ることになる」と述べている。【1月21日 読売】
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前出FNN記事にあるように、ボルゴグラードでの連続自爆テロ実行犯は逮捕されたようですが、事態には何の変りもありません。
また、反政府テロ活動の首謀者ながら、10年前からほとんど目撃されていないことから、「ロシアのウサマ・ビンラディン」とも呼ばれるウマロフ司令官の死亡も報じられています。
ただ、彼の死亡説はこれまでも8回ほど流れていることから、その真偽は定かではありませんし、仮に彼が死亡していたとしても、これまたテロの懸念される事態にはほとんど変りありません。
****ロシア:武装勢力指導者、死亡か…ソチ五輪テロ予告****
ロシア南部・北カフカス地域を拠点とするイスラム武装勢力「カフカス首長国」指導者で、来月7日に開幕するソチ冬季五輪を狙ったテロ予告をしているドク・ウマロフ司令官(49)の死亡説が浮上し、波紋を広げている。
死亡が事実とすれば五輪成功を最重要課題とするプーチン政権にとって“得点”となるが、情報は錯綜(さくそう)しており、テロの脅威が取り除かれたとはいえないのが現状だ。(中略)
ウマロフ司令官はチェチェン共和国出身で、昨年7月には「あらゆる手段でソチ五輪を粉砕する」とする声明を出している。北カフカスでのイスラム教国の建設を掲げ2007年に創設されたイスラム武装勢力「カフカス首長国」は、10年のモスクワ地下鉄爆破や11年のモスクワ近郊ドモジェドボ国際空港爆破など多くのテロに関与した。
昨年末に南部ボルゴグラードで起きた連続爆破テロでは今のところ犯行声明は出ていないが、ソチ五輪が間近に迫るなか、プーチン政権はテロ阻止のため国内に厳戒態勢を敷いている。【1月17日 毎日】
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【「臨戦態勢」】
テロの脅威に対し、当然ながらプーチン大統領はかつてない厳重警備でこのソチ五輪に望んでいます。
ただ、五輪開催中のソチでの政治的デモ禁止は、国際的な批判から緩和しています。
ロシアでは昨年6月、未成年者に同性愛を宣伝することを禁止する法律が成立しましたが、欧米諸国からは人権侵害だとする批判が続出。ソチ五輪への出席を見送る首脳も出てきているという思わぬ展開のなかで、プーチン大統領としては国際的な体面も考慮しなければなりません。
****ロシア、五輪史上最大の警備態勢へ ソチ開幕まで1か月****
ソチ冬季五輪の開幕まで1か月となった7日、ロシアは開催地の同国南部ソチ(Sochi)で、五輪史上最大規模となる警備態勢を開始する。ロシア南部では昨年末に連続自爆事件が起きており、五輪を前に新たな攻撃が懸念されている。
2月7~23日の日程で開催されるこのスポーツの祭典により、同国で14年にわたり続くウラジーミル・プーチン体制に世界の注目が集まることとなる。その警備には、3万7000人余りの分遣隊に加え、装甲車に乗った陸軍兵士らや、黒海を巡回する海軍兵士らが当たる予定だ。
500億ドル(約5兆2200億円)の予算が投入され、しばしば「プーチン大会」とも呼ばれるソチ冬季五輪プロジェクトだが、すでに同性愛者らに対する露政府の差別的対応や、その他多くの人権侵害の疑惑により、欧米各国首脳からは冷ややかな対応を受けている。
先月には同国南部ボルゴグラードの鉄道駅で計34人が死亡する連続自爆事件が起きたばかりで、隣接する北カフカスのイスラム武装勢力が、世界の注目を集める五輪を狙った攻撃を画策しているとの懸念が再浮上した。
一方、プーチン大統領は各国からの反発をうけて前週末、五輪開催中のソチでの政治的デモを全面的に禁ずるとした規則を緩和した。
そして、テロへの懸念に対する答えは、ロシア連邦保安局(FSB)が警備全般を引き受ける7日に明らかになり、警備体制は2008年の北京五輪よりも厳重なものになる見込みだ。
ウラジーミル・プチコフ非常事態相によると、1月7日から五輪観戦者らの安全を担う全部署が「臨戦態勢」に入るほか、全ての五輪施設が警備監視下に置かれ、衛星監視システムも作動を開始する。
さらに、FSBが携帯電話の通話や電子メール通信を監視する予定で、海外からの訪問者は全てオンライン登録が義務付けられる。【1月7日 AFP】
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****ソチ警備「臨戦態勢」 五輪へ、おびえるテロの影 人工衛星で監視/車の出入り制限***
来月7日開幕するロシアのソチ冬季五輪まで1カ月を切り、一帯に厳戒態勢が敷かれている。
出入りは厳しくチェックされ「ソチは閉鎖都市となった」と報じるメディアもあるほど。テロの脅威と共に、ロシアで成立した反同性愛法への反発も影を落としている。
ロシアのプチコフ緊急事態相は「1月7日をもって、安全に携わる全ての組織が臨戦態勢に入る」と宣言。「人工衛星による監視も導入する」と強調した。
地元ナンバー以外の自動車は、ソチ周辺への乗り入れを禁止。五輪会場に近い鉄道駅では、到着客全員が金属探知機で空港並みの安全検査を受けている。ロシア各地から4万人近い警官が動員されているという。
氷上競技の会場の五輪公園は、監視カメラ付きの高いフェンスに囲まれ、チケットを持つ観客と競技関係者以外の立ち入りは認められない。
報道関係者の取材も厳しく規制されている。五輪公園に隣接するホテルの出入りも許可証が必要。公園内のプレスセンターでは入念な手荷物検査があり、競技場の取材は警備体制が整うまで禁止された。
こうした措置は五輪後のパラリンピックが終わる3月21日まで続く。(後略)【1月11日 朝日】
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厳重監視体制のもとで、ピリピリした雰囲気の「平和の祭典」となりそうです。
いくら警備を厳重にしても、命を懸けた自爆テロを完全に防ぐことは困難です。
さすがにこれだけの警備体制が敷かれたソチでのテロは難しいのでは・・・とも見られていますが、ソチに警備が集中して手薄になったソチ以外が狙われるのでは・・・との観測もあります。
もっとも、テロ組織としてはソチで騒ぎを起こしてプーチン大統領のメンツを潰し、世界にその存在をアピールしたいところでしょう。
現地で警備を担当するロシア連邦保安庁の責任者が30日に記者会見し、「アメリカや中国などおよそ80か国と情報面などで協力している。ソチでは現在、完全な警備が行われ、テロに関わる人物が潜伏しているという情報も一切ない。十分な態勢を敷いており、不安はない」「ダゲスタン共和国はソチから遠く離れているうえ、警備も強化されている。ソチでは選手団や観客に対する危険はない」と、警備への自信を示しています。
【米仏:艦船や特殊部隊の派遣も】
しかし、アメリカなどにはロシアへの不信感もあるようです。
****米、ソチ五輪警備で協力を再度申し出****
米国防総省は29日、開幕が目前に迫ったソチ冬季五輪について、米軍が警備面で支援する準備があることを、改めてロシア側に伝えたと発表した。
ただし、ロシア政府には米国の申し出を受ける様子はなかったという。
同省のジョン・カービー報道官(海軍少将)によると、チャック・ヘーゲル国防長官は29日朝、ロシアのセルゲイ・ショイグ国防相と電話会談した。両者は、五輪期間中に米露の軍高官が定期的に情報交換し、必要なら対応を協議できるような仕組みを構築する方針で合意したという。
ただヘーゲル長官から明確な提案はなく、ショイグ国防相からも具体的な協力要請はなかったといい、ヘーゲル長官の目的は「米国が真剣に協力を申し出ていることをショイグ国防相に確信してもらうこと」だったとカービー報道官は述べている。
一方のショイグ国防相は、警備体制は万全だと示唆したという。
米当局や米議員は、2月7日~23日に開催されるソチ五輪の警備をめぐり、ロシア側が米国との脅威情報の共有に非協力的だと不満を表明している。
だが、セルゲイ・キスリャク駐米ロシア大使は26日、露情報機関は「十分な」情報を米国に提供しており、露政府は状況をしっかりコントロールしていると述べている。 【1月30日 AFP】
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アメリカは、ソチに近い黒海に海軍の艦船2隻を派遣し、テロなどが起きた際の選手団の救出に備えるという異例の対応を取ることにしています。
また、フランス政府は、選手団の警護のため対テロの特殊部隊を派遣することを決めています。【1月31日 NHK】
ロシアがそんな特殊部隊の入国を認めるのでしょうか?
競技場での熱い戦い以外でも目が離せないソチ五輪です。