孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

ソチ五輪  「プーチン大会」でのテロ防止に厳戒態勢

2014-01-31 22:21:10 | ロシア

(ロシア治安当局が、自爆テロを行うリスクが高いとして公開した「黒い未亡人」と呼ばれる女性4人のひとり、ルザンナ・イブラギモワ  彼女たちを自爆テロに駆り立てているのは、ロシア治安当局がこれまで行ってきたイスラム反政府勢力対策への怒りと復讐です。 “flickr”より By Boaz Guttman http://www.flickr.com/photos/32368051@N08/12060644636/in/photolist-jnKXsU-jvJ1z1-jtAFad-jniocB-jxAYiQ-jyB7zH-jxQc53-jhpaQk-jhr1X5-jhqJrZ-jhD113-jC1Uhj-jyGBgE-jqiEm3-jqVxsk-jr5R9d-jqn1dE-jxxHHx-jAVoe8-jqu54d-jqsCuC-jqu4XG-jqqE8x-jqu5s9-jqseUr-jqu5rC-jqsdqe-jqqE7R-jqqE2a-jqLUqw-jqKvjS-joP3BQ-jqsnEQ-jqqW5S-jqqx9F-jjyWW1-jjx7GP-jrZ8GR-jpW8eq-jpTJmn-jpSjXH-jpUbVL-jxSmZk-jxVzYw-jzHYVe-jzL77d-jAvTcC-jAuZX2-jAw3Na-jAwWQE-jwmaYN)

雪不足に腐敗・汚職
2月7日の開幕が目前とに迫ったソチ冬季五輪ですが、肝心の雪が足りない状況のようです。
もともと、夏の保養地として知られたソチを大改造して冬季五輪を開催するということで、雪不足の心配は開催決定当時からありました。

更に、“標高の低いソチ市内では、平年を10度上回る16度を記録するなど暖かい日が続いています。”【1月30日 テレ朝ニュース】という最近の気象条件もあって、人工降雪機で作った雪を重機で運ぶなどの対応がとられているようです。

****ソチ五輪まで1週間 雪不足が大きな問題となっています*****
ソチオリンピックの開幕まで、あと1週間。競技施設は、ほぼ完成したと言われる一方で、雪不足が大きな問題となっています。

ロシア・ソチは、プーチン大統領お気に入りの保養地だが、最大の理由は、政治的なもくろみ。
「偉大なるロシアの復活」を掲げるプーチン大統領は、国際会議やスポーツ大会などを招致して、社会的なインフラを整備し、大都市との格差に対する地方の不満を解消して、これを自らの支持基盤を確かなものにすることに利用している。

しかし、ソチオリンピックでは、総額およそ5兆円にのぼる開催経費の、実に3分の2が、横領や賄賂といった不正に消えたとみられていて、近代化を図ろうとしたことで、皮肉にも、旧態依然としたロシアの負の部分を世界に露呈させたことになる。

また、オリンピックを妨害しようというテロも、プーチン大統領にとって重大な懸念材料。2013年の末、南部のボルゴグラードで連続自爆テロが起きたが、ソチが位置する北カフカス地方は、歴史的な経緯から、イスラム教徒が多く、ロシアからの独立を主張する過激派勢力の拠点となっている。
捜査当局は、29日に容疑者の男2人を逮捕したが、ほかに共犯者がいるとみて、厳戒態勢を敷いている。

こうした中、観戦チケットを持っていないと、オリンピックパーク内の散歩すらかなわないなど、「参加させる大会」ではなく、むしろ「排除する大会」になっていて、プーチン大統領以外に、いったい誰のためのオリンピックなのか、疑問すら感じる。【1月31日 FNN】
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雪の方は今後の天気次第ですが、一晩の降雪で事情は一変する可能性があります。
全く変わらないのはロシア社会の不正・汚職体質のようです。

それにしても、“(五輪史上最高額となる約5兆円という開催経費の)3分の2が、横領や賄賂といった不正に消えた”というのはとんでもない額ですが、そこまでわかっているなら、どうして放置されているのか?プーチン大統領の逆鱗に触れないのか?という疑問もあります。

単なる都市伝説的な噂にすぎないのか、プーチン大統領周辺の懐に入っているのか、ロシアの不正・汚職体質によって見逃されているのか・・・。
“3分の2”が本当かどうかはともかく、相当の不正・汚職が横行したことは想像に難くありません。

【「あらゆる手段でソチ五輪を粉砕する」「我々からプレゼントを受け取ることになる」】
雪は天候次第、汚職体質はすぐにはどうにもならない問題ですが、プーチン政権として何とか無事にマネジメントしたいのは3番目の“テロ”の問題です。

“テロ”の問題も、ソチが北カフカス地方にあり、イスラム反政府勢力の代名詞的なチェチェンや最近もテロが頻発しているダゲスタンなどにも近いことから、開催決定当初から懸念されていることで、今さら・・・の感もあります。

イスラム反政府勢力の立場からすれば、ロシア・プーチンの威信をかけて目と鼻の先で行われるソチ五輪を見逃すことは常識的には考えられません。
プーチン大統領がソチ五輪成功にその威信をかけているのと同様に、彼らとしてもその勢力の“威信”が問われる問題でしょう。

****ロシア南部のイスラム過激派、ソチ五輪攻撃予告****
ロシア南部ダゲスタン共和国を拠点とするイスラム過激派が、昨年12月末にボルゴグラードで起きた連続自爆テロへの関与を認め、ソチ五輪をテロ攻撃すると予告した動画を、インターネット上に流した。
イスラム過激派が犯行を認めたのは初めて。

19日にネットに公開された約50分に及ぶ動画では、2人の男が自爆テロを実行すると予告している。
画面には、計34人が死亡したボルゴグラードでの連続自爆テロについて、「ビラヤト・ダゲスタン」という組織を代表して、スレイマン、アブドゥルラフマンという2人の男が実行したという説明文が現れる。

実行犯とみられる2人の男は、プーチン大統領に向け、「ソチ五輪を開けば我々からプレゼントを受け取ることになる」と述べている。【1月21日 読売】
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前出FNN記事にあるように、ボルゴグラードでの連続自爆テロ実行犯は逮捕されたようですが、事態には何の変りもありません。

また、反政府テロ活動の首謀者ながら、10年前からほとんど目撃されていないことから、「ロシアのウサマ・ビンラディン」とも呼ばれるウマロフ司令官の死亡も報じられています。

ただ、彼の死亡説はこれまでも8回ほど流れていることから、その真偽は定かではありませんし、仮に彼が死亡していたとしても、これまたテロの懸念される事態にはほとんど変りありません。

****ロシア:武装勢力指導者、死亡か…ソチ五輪テロ予告****
ロシア南部・北カフカス地域を拠点とするイスラム武装勢力「カフカス首長国」指導者で、来月7日に開幕するソチ冬季五輪を狙ったテロ予告をしているドク・ウマロフ司令官(49)の死亡説が浮上し、波紋を広げている。

死亡が事実とすれば五輪成功を最重要課題とするプーチン政権にとって“得点”となるが、情報は錯綜(さくそう)しており、テロの脅威が取り除かれたとはいえないのが現状だ。(中略)

ウマロフ司令官はチェチェン共和国出身で、昨年7月には「あらゆる手段でソチ五輪を粉砕する」とする声明を出している。北カフカスでのイスラム教国の建設を掲げ2007年に創設されたイスラム武装勢力「カフカス首長国」は、10年のモスクワ地下鉄爆破や11年のモスクワ近郊ドモジェドボ国際空港爆破など多くのテロに関与した。

昨年末に南部ボルゴグラードで起きた連続爆破テロでは今のところ犯行声明は出ていないが、ソチ五輪が間近に迫るなか、プーチン政権はテロ阻止のため国内に厳戒態勢を敷いている。【1月17日 毎日】
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【「臨戦態勢」】
テロの脅威に対し、当然ながらプーチン大統領はかつてない厳重警備でこのソチ五輪に望んでいます。
ただ、五輪開催中のソチでの政治的デモ禁止は、国際的な批判から緩和しています。

ロシアでは昨年6月、未成年者に同性愛を宣伝することを禁止する法律が成立しましたが、欧米諸国からは人権侵害だとする批判が続出。ソチ五輪への出席を見送る首脳も出てきているという思わぬ展開のなかで、プーチン大統領としては国際的な体面も考慮しなければなりません。

****ロシア、五輪史上最大の警備態勢へ ソチ開幕まで1か月****
ソチ冬季五輪の開幕まで1か月となった7日、ロシアは開催地の同国南部ソチ(Sochi)で、五輪史上最大規模となる警備態勢を開始する。ロシア南部では昨年末に連続自爆事件が起きており、五輪を前に新たな攻撃が懸念されている。

2月7~23日の日程で開催されるこのスポーツの祭典により、同国で14年にわたり続くウラジーミル・プーチン体制に世界の注目が集まることとなる。その警備には、3万7000人余りの分遣隊に加え、装甲車に乗った陸軍兵士らや、黒海を巡回する海軍兵士らが当たる予定だ。

500億ドル(約5兆2200億円)の予算が投入され、しばしば「プーチン大会」とも呼ばれるソチ冬季五輪プロジェクトだが、すでに同性愛者らに対する露政府の差別的対応や、その他多くの人権侵害の疑惑により、欧米各国首脳からは冷ややかな対応を受けている。

先月には同国南部ボルゴグラードの鉄道駅で計34人が死亡する連続自爆事件が起きたばかりで、隣接する北カフカスのイスラム武装勢力が、世界の注目を集める五輪を狙った攻撃を画策しているとの懸念が再浮上した。

一方、プーチン大統領は各国からの反発をうけて前週末、五輪開催中のソチでの政治的デモを全面的に禁ずるとした規則を緩和した。

そして、テロへの懸念に対する答えは、ロシア連邦保安局(FSB)が警備全般を引き受ける7日に明らかになり、警備体制は2008年の北京五輪よりも厳重なものになる見込みだ。

ウラジーミル・プチコフ非常事態相によると、1月7日から五輪観戦者らの安全を担う全部署が「臨戦態勢」に入るほか、全ての五輪施設が警備監視下に置かれ、衛星監視システムも作動を開始する。

さらに、FSBが携帯電話の通話や電子メール通信を監視する予定で、海外からの訪問者は全てオンライン登録が義務付けられる。【1月7日 AFP】
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****ソチ警備「臨戦態勢」 五輪へ、おびえるテロの影 人工衛星で監視/車の出入り制限***
来月7日開幕するロシアのソチ冬季五輪まで1カ月を切り、一帯に厳戒態勢が敷かれている。

出入りは厳しくチェックされ「ソチは閉鎖都市となった」と報じるメディアもあるほど。テロの脅威と共に、ロシアで成立した反同性愛法への反発も影を落としている。

ロシアのプチコフ緊急事態相は「1月7日をもって、安全に携わる全ての組織が臨戦態勢に入る」と宣言。「人工衛星による監視も導入する」と強調した。

地元ナンバー以外の自動車は、ソチ周辺への乗り入れを禁止。五輪会場に近い鉄道駅では、到着客全員が金属探知機で空港並みの安全検査を受けている。ロシア各地から4万人近い警官が動員されているという。

氷上競技の会場の五輪公園は、監視カメラ付きの高いフェンスに囲まれ、チケットを持つ観客と競技関係者以外の立ち入りは認められない。

報道関係者の取材も厳しく規制されている。五輪公園に隣接するホテルの出入りも許可証が必要。公園内のプレスセンターでは入念な手荷物検査があり、競技場の取材は警備体制が整うまで禁止された。

こうした措置は五輪後のパラリンピックが終わる3月21日まで続く。(後略)【1月11日 朝日】
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厳重監視体制のもとで、ピリピリした雰囲気の「平和の祭典」となりそうです。
いくら警備を厳重にしても、命を懸けた自爆テロを完全に防ぐことは困難です。

さすがにこれだけの警備体制が敷かれたソチでのテロは難しいのでは・・・とも見られていますが、ソチに警備が集中して手薄になったソチ以外が狙われるのでは・・・との観測もあります。

もっとも、テロ組織としてはソチで騒ぎを起こしてプーチン大統領のメンツを潰し、世界にその存在をアピールしたいところでしょう。

現地で警備を担当するロシア連邦保安庁の責任者が30日に記者会見し、「アメリカや中国などおよそ80か国と情報面などで協力している。ソチでは現在、完全な警備が行われ、テロに関わる人物が潜伏しているという情報も一切ない。十分な態勢を敷いており、不安はない」「ダゲスタン共和国はソチから遠く離れているうえ、警備も強化されている。ソチでは選手団や観客に対する危険はない」と、警備への自信を示しています。

米仏:艦船や特殊部隊の派遣も
しかし、アメリカなどにはロシアへの不信感もあるようです。

****米、ソチ五輪警備で協力を再度申し出****
米国防総省は29日、開幕が目前に迫ったソチ冬季五輪について、米軍が警備面で支援する準備があることを、改めてロシア側に伝えたと発表した。
ただし、ロシア政府には米国の申し出を受ける様子はなかったという。

同省のジョン・カービー報道官(海軍少将)によると、チャック・ヘーゲル国防長官は29日朝、ロシアのセルゲイ・ショイグ国防相と電話会談した。両者は、五輪期間中に米露の軍高官が定期的に情報交換し、必要なら対応を協議できるような仕組みを構築する方針で合意したという。

ただヘーゲル長官から明確な提案はなく、ショイグ国防相からも具体的な協力要請はなかったといい、ヘーゲル長官の目的は「米国が真剣に協力を申し出ていることをショイグ国防相に確信してもらうこと」だったとカービー報道官は述べている。

一方のショイグ国防相は、警備体制は万全だと示唆したという。
米当局や米議員は、2月7日~23日に開催されるソチ五輪の警備をめぐり、ロシア側が米国との脅威情報の共有に非協力的だと不満を表明している。
だが、セルゲイ・キスリャク駐米ロシア大使は26日、露情報機関は「十分な」情報を米国に提供しており、露政府は状況をしっかりコントロールしていると述べている。 【1月30日 AFP】
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アメリカは、ソチに近い黒海に海軍の艦船2隻を派遣し、テロなどが起きた際の選手団の救出に備えるという異例の対応を取ることにしています。

また、フランス政府は、選手団の警護のため対テロの特殊部隊を派遣することを決めています。【1月31日 NHK】
ロシアがそんな特殊部隊の入国を認めるのでしょうか?

競技場での熱い戦い以外でも目が離せないソチ五輪です。
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中央アフリカ  止まない暴力の応酬 滞る難民支援

2014-01-30 22:38:28 | アフリカ

(写真は【2月4日号 newsweek日本版】より 正確なところはわかりませんが、記事本文との関係からすれば、イスラム教徒住民への報復行為に走っているキリスト教系の武装勢力ではないでしょうか。

中央人物が手にしている“ナタ”・・・・アフリカの住民虐殺で頻繁に使用されるものですが、個人的には“ナタ”で切り刻まれるぐらいなら、銃で撃ち殺してほしい・・・と思います。怖いです。

画像が不鮮明ですが、写真左の人物が手にしているのは“弓”・・・これもアフリカの住民レベルの衝突ではよく使用されるようです。)

止まない暴力の応酬
中央アフリカ共和国では、再三取り上げているように、イスラム教系武装勢力「セレカ」が権力奪取し、その指導者ジョトディア氏が暫定大統領に就任するも混乱を収めきれず、周辺国の圧力もあって辞任。
1月20日には、キリスト教徒である首都バンギの女性市長カトリーヌ・サンバパンザ氏(59)が新たに暫定大統領に選出されました。
(1月22日ブログ「混乱が続く中央アフリカと南スーダン」http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20140122

昨年来の一連の混乱で、殺りくやレイプ、略奪行為が横行し、人口約460万人の約2割が国内避難民や難民となっていると言われています。

今年に入っても、統制を失ったイスラム教系武装勢力「セレカ」兵士による暴力行為、キリスト教系武装組織との抗争、キリスト教系住民によるイスラム系住民への報復行為・・・・宗教間対立の様相を呈した住民同士の暴力は収まっていません。

現地を訪れた国連人道問題調整事務所(OCHA)のジョン・ギング氏は1月16日、「ルワンダやボスニアなどで見られたあらゆる要素が備わっている。ジェノサイドの要素があることに疑いはない」と警告。残虐行為が日常化し、全国民に恐怖がまん延していると訴えています。

****女性大統領と止まらない殺戮*****
未曽有の人道危機が行している中央アフリカ共和国で先週、首都バンギの女性市長カトリーヌ・サンバパンザが暫定大統領に就任した。この国では初の女性大統領だ。

中央アフリカでは、昨年3月のクーデターでイスラム教徒の民兵組織「セレカ」の最高指導者ミシェル・ジョトディアが大統領に就任。

その後、イスラム教徒と人目の半数以上を占めるキリスト教徒との間で対立が激化した。ジョトディアは宗教対立を鎮めることができず、今月10日に辞任して、国を去った。

対立の激しさを見れば、新大統領の前途は多難だ。バンギでは昨年12月だけで1000人以上が死亡し、100万人近くが家を追われて避難生活を余儀なくされている。

サンバパンザは選出後すぐに両勢力に武器を手放すよう求めたが、その直後にナタなどで武装したキリスト教徒の武装組織「反バラカ」がバンギのイスラム教徒居住地域を襲撃。女性や子供を含む数百人が放火や略奪を行った。

アフリカ連合と旧宗主国フランスは部隊派遣で沈静化を目指すが、暴力の応酬はやむ気配がない。
サンバパンザはさらなる外国部隊の介入を求めているが、両勢力の憎悪は既に手を付けられないレベルに達している。【2月4日号 newsweek日本版】
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また、アフリカの紛争でしばしば見られるように、中央アフリカでも少年兵が問題となっています。

****中央アフリカに少年兵6000人=「前例のない残虐さ」―国連代表****
子供と武力紛争に関する国連特使を務めるゼルーギ事務総長特別代表は22日、宗教間の武力抗争が続く中央アフリカ共和国情勢について安保理で報告し、最大で推定約6000人の子供が兵士として駆り出されていると明らかにし、「紛争は前例のない残虐さを伴っており、子供に与える影響は著しい」と指摘した。

中央アフリカでは、少数派イスラム教徒主体の武装勢力「セレカ」の旧戦闘員と、多数派キリスト教徒中心の民兵の抗争が激化の一途をたどっている。特別代表は「子供が宗教に沿って分断され、それぞれの武装勢力に操られている」と述べた。子供を標的にした攻撃、殺害も起きているという。【1月23日 時事】 
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国際社会の関与
これまで旧宗主国フランスが兵士1600人を派遣してAU(アフリカ連合)部隊を支援して治安維持にあたっていますが、直接介入には消極的だったEUも500人規模の部隊派遣を決め、その武力行使について国連安保理が容認する決定を下しています。

****安保理、EU部隊の武力行使容認 中央アフリカ情勢****
無政府状態が続くアフリカ中部の中央アフリカ情勢で、国連の安全保障理事会は30日までに、平和維持部隊の活動継続と共に欧州連合(EU)派遣の部隊に武力行使を認める決議を全会一致で採択した。

国連は報道発表文で、同国における暴力と報復の循環が増大し、治安状況が悪化の一途をたどっていると指摘。
決議で、国連の平和維持活動は来年1月31日まで継続されるとし、一部の紛争当事者の渡航禁止や資産凍結、武器禁輸の継続も盛り込んだ。

中央アフリカでは現在、アフリカ連合(AU)主導の平和維持部隊約4000人が活動。EUでは、同国の旧宗主国フランスが1600人を派遣してAU部隊を支援などしている。(後略)【1月30日 CNN】
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“内向き”の姿勢を強めているアメリカは、このところアフリカへの直接関与は控えているように見えます

****中央アフリカの抗争で制裁も=米****
ケリー米国務長官は26日、声明を出し、中央アフリカ共和国で続く宗教抗争に対して「米国は深く懸念している」と表明した。

その上で、情勢を一段と不安定化させたり、自己の目的のために暴力を増長させたりする者への制裁を検討していると述べた。【1月27日 時事】 
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滞る難民支援
治安が改善しない状況で、国連WFPなどによる難民への食糧支援も滞っています。
下記は、 国連世界食糧計(WFP)による報告です。

****中央アフリカ共和国 食糧輸送ルートの安全確保が問題****
紛争が続く中央アフリカ共和国では治安悪化のため物資の供給が滞り、支援用の食糧が枯渇寸前となっていました。

が、27日、アフリカ主導中央アフリカ国際支援ミッション(MISCA)が護衛する中、カメルーンとの国境で止まってしまっていたトラック60台が支援物資等を載せ、武装勢力の検問所を越えて600キロの道のりを首都バンギまでやってきました。
うち10台は国連WFPの食糧を積んだトラックで、250トンの米とトウモロコシ粉が到着しました。

しかし、増え続ける避難民に対して命綱である食糧支援を続けるには輸送ルートの安全確保が喫緊の問題となっています。
デニス・ブラウン国連WFP西アフリカ局長は、「中央アフリカ支援ミッションおよびカメルーン・中央アフリカ政府担当者の良好な協力関係により、備蓄食糧が枯渇する前に貴重な食糧がとどきました。しかし、今回届いた食糧は中央アフリカで1ヶ月に必要となる支援用穀物の5パーセントに過ぎず、輸送に当たっては引き続き護衛が必要です。」と述べました。

カメルーンとの国境にはまだ国連WFPの支援用穀物を積んだトラック41台が止まったままです。他にも国境には数百台の車両が止まっています。
首都バンギまで護衛をするという申し出はあるものの、運転手たちは国境を越えることに不安を感じています。

同国への食糧供給は大きく停滞しています。ブラウン国連WFP西アフリカ局長は、「紛争で避難を余儀なくされている人たちは食糧支援に頼っています。そんな中で食糧の供給を止めることはできません。国連WFPは国境で止まってしまっている物資が流れるようすべての勢力と協力すると同時に、最後の手段としてはカメルーンからの食糧の空輸も視野に入れています。しかし、空輸はコストが大変高くつくことになります」と話しています。

国連WFPはまず、バンギ国際空港に避難している人たちに対する食糧支援を優先的に行うとともに、北西部の街ボサンゴア付近で4万人への食糧配布を始めました。
バンギへの安全な物資輸送が確立されるまで、他の地域への食糧支援は実行できません。すべての勢力に対し、人道支援関係者および物資が安全かつ自由に通行し、困っている人々に支援を届けられるよう求めています。

今年初めから今までに国連WFPはバンギや北西部の町ボサンゴアおよびボアで19万3千人に食糧を届けました。この中には、バンギ国際空港に避難している5万人も含まれているほか、首都各所にある小規模の避難民キャンプでも2万5千人に食糧を配りました。

国連WFPは今後6ヶ月間で中央アフリカの125万人に食糧支援を行うため、1億700万ドルを必要としています。
12月末にバンギおよびボサンゴアの86ヶ所で行った調査では、260万人が人道支援を必要としており、特に女性は保護と食糧を必要としているという結果が出ています。【1月29日 PR TIMES】
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政府軍がどうなったのか定かではありませんが、おそらく機能しない状況でしょう。
暴力の応酬を止めるには国際社会の直接的な介入を拡大するしかないでしょう。
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チュニジア  政治混乱を乗り越えて、国民融和に向けて新憲法制定 

2014-01-29 22:36:50 | 北アフリカ


(チュニジア 圧倒的多数で新憲法を承認し、議場で喜び合う議員 “flickr”より By Tunisia Live http://www.flickr.com/photos/77178345@N05/12171982163/in/photolist-jxAAer-jzqNzX-jxBARh-jxBHVN-jxD2zq-jxzrSR-jxAzTX-jxzsCD-jxzroK-jxCJz3-jxzrwF-dBb8RE-dBb9d7-dB5EPp-dB5F4n-dBb8oS-dBb97C-dB5FoR-dB5FdR-dB5DSF-bw7zeY-bhX6yM-boiExf-axEDf4-axEDtn-axEDqB-axHmN7-dQ3jv7-dQ3k4U-dPWKdc-dQ3pUj-dPWFdF-dQ3kBG-dQ3m1o-dPWMmp-dQ3mvw-dQ3oiS-dPWJNc-dQ3nYC-dQ3mNC-dPWFH8-dQ3hV7-b8qMxp-bowTzd-cHmBey-cHn42u-cHn9wQ-cHmd3Y-cHmTSw-cHmvtS-cHmiDd)

チュニジア:混迷を深める「アラブの春」経験国のなかで“希望の光”】
いまや死後となった「アラブの春」の発端となったチュニジアでは、その後の政治混乱を乗り越えて“アラブ世界で最も進歩的な憲法の1つとみなされる”新憲法が3年越しで成立しました。

新憲法では、思想・信教の自由や男女平等、汚職の撲滅などが明記され、国防・外交は大統領、行政全般は首相が担うなど権力を分散されています。【1月27日 毎日より】

****暫定大統領らチュニジア新憲法に署名 、「アラブの春」から3年****
チュニジアの指導者らは27日、制憲議会が前日に承認した新憲法に署名した。「アラブの春」の発端となった同国の革命の鍵となる目標の1つが、3年越しでようやく達成された。

同国の制憲議会で開かれた式典の中で、近く退任するイスラム系のアリ・ラアレイエド首相、ムスタファ・ベン・ジャーファル議長、そしてモンセフ・マルズーキ暫定大統領の3人が、アラブ世界で最も進歩的な憲法の1つとみなされるこの歴史的な文書に署名した。

マルズーキ暫定大統領は署名に先立って議会に対し、「この文書の誕生により、独裁に対するわれわれの勝利を確認する」と語った。

起草に2年以上費やされたこの憲法は、官報での発表を経て、今年中に実施予定の議会と大統領の選挙の前に段階的に発効する。同国で有力なイスラム系政党「アンナハダ」は、両選挙が10月に行われるとの見通しを持っている。

憲法が26日、賛成200票、反対わずか12票という圧倒的多数で承認されると、議員らは抱き合ったり国旗を振ったり、国歌を歌ったりして議場は祝賀ムードに包まれた。

同国ではここ数か月間、政局の危機にイスラム勢力が関与しているとされる暴力行為、社会不安が続いてきたが、この日の憲法承認で2011年1月にジン・アビディン・ベンアリ元大統領の独裁政権を崩壊に導いた民衆蜂起が目指したものの少なくとも一部は実現の目途が立ったことになる。

この動きについては他国首脳らも、同じく「アラブの春」を経験したリビアやエジプトといった国々が政情不安に直面している中で、チュニジアは希望の光だと歓迎する姿勢を示している。【1月28日 AFP】
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チュニジアの後に続いたリビア・エジプトなどでは政治混乱が拡大しており、シリアに至っては内戦の泥沼状態から抜け出せない状況・・・というなかにあっては、イスラム主義・世俗主義の対立を超えた幅広い国民の合意によるチュニジアの新憲法制定はまさに“希望の光”と言えます。

ここに至るまでは、チュニジアにおいてもイスラム主義政党とそれに反発する勢力の間で、厳しい対立がありました。
昨年には、世俗派の野党指導者が相次いで暗殺され、大規模な反政権デモに発展しました。

下記は昨年10月段階での混迷を伝えるものです。

****チュニジア政治混迷 相次ぐ暗殺、進まぬ憲法制定****
「アラブの春」の先駆けとなったチュニジアで、政治の混乱が続く。

革命後、イスラム系政党が政権を主導するが、リベラル派などの野党は民主化の遅れや治安悪化を批判し、デモが続発。野党党首の暗殺事件も混迷に拍車をかけ、新しい国の基盤となる憲法制定が進んでいない。

7月25日朝、チュニス郊外の住宅地に銃声が響いた。世俗派野党党首のムハンマド・ブラヒミ議員が自宅を出たところで襲われ、銃弾11発を浴びて死亡した。2人組の男がバイクで近づき射殺するという手口は、2月上旬に別の野党党首が暗殺された事件と同じだった。被害者が最大与党のイスラム穏健派「ナハダ」を批判する急先鋒(きゅうせんぽう)だったことも共通している。

野党支持者らは「ナハダが黒幕だ」として一斉に反発。以来、最大労組のチュニジア労働総同盟(UGTT)などの呼びかけで、全国的に数千人規模のデモやストが相次いだ。

チュニジアは、革命後の民主国家の基盤となる新憲法を起草する段階にある。与野党でほぼ合意にこぎつけていたが、7月の暗殺事件をきっかけに制憲議会で野党の50人以上が欠席し、議長が議会を停止。9月中旬に再開したが、野党の欠席は続き、新憲法制定に向けた動きが止まっている。

政治空白は2月の暗殺事件後にも生じていた。与野党対立で政局が混乱し、ジェバリ前首相が辞職。ラアレイエド現内閣の発足に約1カ月かかった。

政府は野党に配慮し、ナハダに近いとされるイスラム厳格派の取り締まりを強める姿勢に転換。9月中旬から暗殺の再発防止に向け、野党関係者十数人に護衛をつけた。

ナハダと野党側は今月5日、今後3週間かけて協議し、その後に内閣が辞職することで合意。後継内閣が1カ月以内に憲法起草を終え、大統領選と議会選挙の日程も確定させるという。

 ■国民の政争疲れに危機感も
野党の反発は、暗殺事件や過激派対策の遅れだけにとどまらない。報道関係者の逮捕など言論弾圧に危機感を持ち、女性の権利を否定する動きが強まることも警戒する。

経済の低迷も政権批判に拍車をかける。国立統計局などによると、昨年の失業率は革命前の10年と比べ、約4ポイント高い16・7%だった。4月にナハダを離れ、新党結成を進めるマノール・ムハンマド・ダカンダローニ氏は「ナハダは(旧ベンアリ政権下の)亡命者やかつての政治犯の集まりで、国民の日常生活が分かっていない」と批判する。

ただ、民間調査機関が9月中旬に発表した世論調査では、内閣総辞職に反対は29%で、賛成の23%を上回った。議会の解散にも48%が反対と答えた。

連立与党の左派「エタカトル」のロブナ・ジビリ議員は「本当の危機は暗殺ではなく、議会が憲法制定という任務を2年も果たせていないことだ。国民は政争に疲れている。一刻も早く新憲法を制定するべきだ」と訴える。

チュニジアは、内戦となったリビアやシリア、デモ制圧で大量の死者が出たエジプトと違い、比較的穏やかな民主化のプロセスを歩む。多数派のイスラム勢力が世俗・リベラル派と協力する形で、民主化のモデルになれるか注目される。

政治アナリストのサラヘディン・ジョルシ氏は「ナハダは民主主義を知らないが、それは野党も同じ。時間をかけることで、議論が深まっているとも言える。憲法改正を急いで軍のクーデターが起きたエジプトのようにはならない」と話している。【10月17日 朝日】
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チュニジアの第1党である穏健なイスラム系政党「ナハダ」は、エジプトのムスリム同胞団を母体とする組織ですが、エジプトのムスリム同胞団・モルシ政権が世俗主義を含めた国民統治に失敗したのとは異なり、新憲法制定に向けて踏みとどまったと言えます。

ただ、「ナハダ」の中にもいろんな立場がありますので、一概にその性格を論じることもできません。
“「ナフダはテレビでは「ソフト」なようだが、モスクでは完全に違う。彼らの中にはジハードを求める声もある。」”【ウィキペディア】

チュニジアが「アラブの春」の先駆けとなったのは、アラブ世界では比較的民主主義的な土壌があり、政府批判弾圧もその他の国に比べれば穏やかだったという事情があったと思われますが、ジャスミン革命後の混乱を踏みとどまって新憲法制定に漕ぎつけられたのも、そうした政治的な土壌があってのことではないでしょうか。

エジプト:「国民の支持と軍による負託」か、「独裁政権時代への逆戻り」か
一方のエジプトでは軍政回帰とも言える現象が加速しています。

エジプトでは今月の国民投票で、暫定政権主導で起草された改憲案が約98%の賛成で承認されました。
暫定政権側の支持者らは、これを軍主導の政治に対する信任と受けとめ、軍部と暫定政権の最高実力者であるシシ第1副首相兼国防相の出馬を強く求めていました。

こうした“国民の要望”を受ける形で、シシ氏の大統領選出馬が明らかになっています。

****エジプト:シシ国防相 春の大統領選に立候補へ****
複数のエジプトメディアによると、シシ国防相(59)は27日、今春実施の大統領選に立候補する意向を固めた。

シシ氏は昨年7月のクーデターを主導し、当時のモルシ大統領を追放した。世俗リベラル派を中心に人気は絶大で、当選が有力視される。

ただ、モルシ氏の出身母体・イスラム組織ムスリム同胞団は「反逆者」と批判。国民の愛憎半ばするシシ氏が大統領に就任した場合、国民融和はより困難になるとみられる。

27日に開かれた軍最高評議会で軍幹部らから出馬を求められた。シシ氏は「国民の支持と軍による負託」を立候補の条件に挙げていたが、1月中旬の国民投票で自身が推進した憲法改正が圧倒的多数で承認されたため、国民の支持も得られたと判断した模様だ。大統領選は4月までに実施される。

エジプトでは2011年の革命以前は4代続けて軍出身の大統領が続いた。クーデター後は治安機関などが反政権運動を厳しく取り締まっており、シシ氏の出馬で「独裁政権時代への逆戻り」という批判も強まりそうだ。【1月27日 毎日】
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今月承認された現憲法は軍人は大統領になれないと規定、一方で国防相ポストに就けるのは現役武官に限られるとされており、シシ氏が大統領に立候補するためには国防相を辞任する必要がありますが、エジプトの軍最高評議会(議長・マンスール暫定大統領)は27日、シシの国防相辞任・大統領選出馬を了承しました。

混乱に疲れ、安定を求める国民の支持を受けて、シシ氏の大統領選挙での当選はまず間違いないところですが、ムスリム同胞団の反発は必至で、“国民融和はより困難になる”【前出 毎日】と見られます。

また、軍部の権限が強化された新憲法において、自由がどこまで保障されるのか、「独裁政権時代への逆戻り」となるのか・・・懸念されています。


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欧州議会選挙(5月)で反EU極右政党台頭か? 各国欧州懐疑派連携も

2014-01-28 22:51:29 | アフリカ

(フランスの極右政党、国民戦線(FN)の党集会に出席するマリーヌ・ル・ペン氏(2011年1月15日撮影) この党大会で彼女は父親から党首の座を引き継ぎました。(c)AFP/MIGUEL MEDINA 【2011年01月17日 AFP】http://www.afpbb.com/articles/-/2782485?pid=6670882

フランス:国民戦線が支持率でトップ
ドイツの一人勝ち状態の欧州経済にあって、フランス経済の停滞が続いています。

****仏失業者、過去最悪更新=改善目標達成できず****
フランス労働省は27日、海外県・海外領土を除く本土の求職者のうち過去1カ月間に全く仕事をしなかった完全失業者が、2013年12月末時点で前月比1万200人(0.3%)増の330万3200人に上ったと発表した。2カ月連続の増加で、過去最悪だった13年9月末の329万5700人を更新した。

オランド大統領はかねて、13年中に失業増加傾向を反転させる意向を示していた。訪問先のトルコで27日、失業増に関し「落ち着いてきたが、まだ十分ではない」と論評。雇用改善が政府の目標通りに進んでいないことを認めた。【1月28日 時事】 
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国民の批判は事態を改善できないオランド大統領に向かっており、大統領の支持率が過去最低を記録していることは1月17日ブログ“フランス オランド大統領の「ファーストレディ」騒動 「結局、サルコジ前右派政権とどう違うのか」”(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20140117)でも触れたところです。

もっとも、「ファーストレディ」(すでに“前”になってしまったようですが)である事実婚相手、トリルベレールさんの人気があまり芳しくなかったこともあってか、20日に発表された世論調査によれば、この騒動が報道されてから大統領の支持率は4ポイント回復して31%に回復したそうです。
依然、低い水準にあることは変わりありませんが。

大統領が不人気な一方で、高い支持を維持しているのがマリーヌ・ル・ペン氏率いる極右政党「国民戦線(FN)」のようです。

****極右、支持率トップ維持=欧州議会選で台風の目―フランス調査****
フランス紙ジュルナル・デュ・ディマンシュ(電子版)は25日、5月の欧州議会選に向けた世論調査で、極右・国民戦線(FN)が支持率トップを維持したとする結果を掲載した。

景気や雇用の本格的回復が遅れる中、欧州統合に反対する極右への支持が根強いことを示した。

世論調査会社IFOPが今月14~17日、1894人を対象に行った調査によると、FNに投票するとの回答は23%で、2013年10月調査から1ポイント低下したものの首位を維持。右派の国民運動連合(UMP)が21%で2位、オランド政権を支える社会党は18%で3位にとどまった。

FNは13年11月、オランダの極右政党・自由党と欧州議会選での共闘を発表。各国の欧州懐疑派と連携する方針で、選挙では台風の目になると見込まれている。【1月26日 時事】 
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欧州議会選挙は、EUとの距離感が問題となりますので、国内選挙に比べて反EUを掲げる極右が支持を伸ばしやすいという事情はありますが、左派・社会党、右派・国民運動連合(UMP)を抑えての第1位の支持というのは、注目に値します。

欧州の反体制派政党と米国のティーパーティー:どちらも現状に怒りを抱き、今より単純だった時代を懐かしんでいる
経済的に苦境が続き、また、移民の増加で軋轢も増している欧州にあって、反EU・ユーロと反移民を掲げる反体制・極右政党が支持を拡大していることはこれまでも取り上げてきたところです。
また、ギリシャの急進左派連合(SYRIZA)やイタリアの5つ星運動などの左派系反体制勢力も大きな支持を集めています。

*****政治的反乱:欧州版ティーパーティーの台頭****
2014年には、各国の反体制派政党が、第2次世界大戦以降で最も勢力を伸ばす可能性が高い。

2010年頃から、米共和党内の反体制派であるティーパーティーが、米国の政治をかき乱してきた。
ティーパーティーは寄せ集めの集団だが、そのメンバーのほとんどに共通する3つの信念がある。

第1に、支配層のエリートは、米国の建国の理念を見失ってしまったという信念。
第2に、連邦政府は肥大化し、それ自体のためにのみ機能する巨大な怪獣になってしまったという信念。
そして第3に、不法移民は社会秩序に対する脅威であるという信念だ。

このティーパーティー運動が核となり、米国の政治を二分する対立を引き起こし、予算と移民法の改革を難しいものにしてきた。

今、これと似たようなことが欧州で起こっている。反体制派の政党が台頭しているのだ。彼らの台頭を懸念する主流派の政党と有権者にとって、ティーパーティーに対応してきた米国の経験は、有益な教訓を与えてくれる。

搾取され、怒りを抱く中間層
ティーパーティーと欧州の反体制派政党の間には、大きな違いがいくつか存在する。
ティーパーティーの各派閥は、米国の主流政党の内部で活動し、小さな政府を求める保守主義という昔ながらの伝統にルーツを有するのに対し、欧州の反体制派政党はそれぞれが小さく、反抗的な集団で、一部は極右を母体とする。

欧州の人々は、米国人よりもずっと多様だ。
例えばノルウェーの進歩党は、ハンガリーの暴力的なヨッビクとは大きく異なる。
英国の独立党のナイジェル・ファラージ氏とパブの特別室にたむろする退屈な人々は、ドーバー海峡を挟んだ隣国フランスのマリーヌ・ル・ペン氏と国民戦線(FN)を疑いの目で見ている。

しかし、欧州の反体制派政党と米国のティーパーティーの間には共通点もある。どちらも現状に怒りを抱き、今より単純だった時代を懐かしんでいる。
また、双方とも移民に懸念を抱いている。

彼らは搾り取られている中間層の中から生じてくる。この層は、社会の頂点に立つエリートと底辺にいるたかり屋が、一般労働者の負担でおいしい思いをしていると感じている。

そしてどちらも、権力の中枢――ワシントンやブリュッセル―――が官僚で膨れ上がり、その官僚たちが人々の人生を管理する仕組みを作ろうとしていると信じているのだ。

欧州の主流派の政治家は、反体制派政党を、抑制の利かない人種差別主義者やファシストと描写することによって、卑小化しようとしてきた。
しかし、それはうまくいっていない。理由の1つは、反主流政党の多くが尊敬に値する存在になろうと、強い決意で努力しているからだ。

英独立党と仏FN、そしてオランダの自由党(PVV)は、5月の欧州議会選挙で、それぞれの国の最多得票を獲得する可能性がある。
フランスでは、学生の55%がFNへの投票を考えると述べている。ノルウェーの進歩党は、連立政権に加わった。スロバキアには、極右の知事が誕生した。

ギリシャの急進左派連合(SYRIZA)やイタリアの5つ星運動など、左翼の反体制派政党も数に入れると、欧州の主流政党は第2次世界大戦以降で最も弱体化していると言える。

反体制派政党が勢力を伸ばしている理由の1つは、主流政党が政策を大きく誤ったからだ。各国政府は消費者に借金を奨励し、銀行にしたい放題させ、欧州プロジェクトの頂点としてユーロを設計した。過去5年の間、一般国民が、増税、失業、社会給付削減、給与凍結などの形で、これらの愚行の対価を支払ってきた。

本誌(英エコノミスト)は、ティーパーティーの洞察に共感を覚えている。現代の国家は、本来国家が尽くすべき国民ではなく、国家そのものの面倒を見るよう作られていると思えることが多いという洞察である。

確かに欧州連合(EU)は、多くの国で一部の有権者がEUに正当性がないと感じているという問題に対して、答えを持っていない。これはユーロに迫り来る脅威だ。しかし、欧州の反体制派政党の脅威は、それだけにとどまらない。

オランダのPVV党首、ヘルト・ウィルダース氏は、コーランを「ファシストの書」、イスラム教を「全体主義の宗教」と呼んだが、これは不寛容を是認するということだ。

仏FNのル・ペン氏は、フランス企業を外国企業との競争から保護することを求めるが、これは同胞の能力を衰えさせかねない要求だ。

英独立党は英国人に、EUには属さず、独自に考案した自由貿易圏の中で繁栄できると約束する。これは幻想を売り込んでいるに等しい。

不平等の拡大と移民の増加は、技術的進歩と経済的自由には必ず付随するものだ。しかしこうした進歩や自由を喜んで手放そうとする人はほとんどいないだろう。

このような細かい点で、ル・ペン氏がひるむことはない。ル・ペン氏は、売り出し中の政治家特有の傲慢な態度で、自分は10年以内に大統領官邸に入るだろうと予言する。

それはまずあり得ない。1つには、国政選挙は欧州議会選挙ほど抗議票に左右されないからであり、1つには、欧州のティーパーティー政党が権力に近づけば、ほとんどすべての政党がその無能さと派閥主義をさらけ出す可能性が高いからだ。

しかし、反体制派の政党は選挙で勝利しなくても、主導権を握ったり、改革を妨げたりすることができる。だからこそ、欧州の人々は反体制派政党を追い払う必要がある。

何もかも正直に
反体制派政党をファシストと攻撃することは、ヒトラーの記憶が新しかった時代には有効だったが、今日の有権者の多くが正しくも見抜いているように、それは恐怖心をあおるデマ戦術と言ってよい。

主流政党は、反体制派政党を貶めながら、一方で、反移民、反グローバル金融、反EUといった政策を薄めて採用することで、彼らにおもねってもいるのだ。

しかし、主流政党は、可能なことを見極める感覚と、合法性をわきまえる理解とによって、行動に歯止めが掛けられている。その結果、何かを修正する必要があるという考えを褒めそやしていても、何かを成し遂げようとする勇気に欠けると思われてしまうのだ。

欧州の政治家が米国から学ぶべきことは、反体制派政党に主導権を握られたくないのなら、相手の主張を論駁する必要があるということだ。

共和党の指導者たちが、ティーパーティーの要求に応じて(例えば連邦機関を閉鎖したように)政府が機能することよりも主張の純粋性を優先させている間、共和党に対する国民の評価は下がってきた。

共和党の候補者の強硬姿勢は、党の忠実な支持者は満足させるが、態度を決めかねている有権者の票を逃がす。最近の選挙で共和党が上院の議席を失ったのも、恐らく2012年の大統領選で敗北したのも、そのせいだ。

政治家は、難しい選択について国民に説明し、誤解を解いていく必要がある。
欧州の単一市場は繁栄の源なのだから、これを拡大しよう。東欧出身の労働者は、国庫から受け取る金額より多くを国庫に支払っているのだから、東欧出身者を歓迎しよう。

率直に語る覚悟を持っている政治家は、ほとんどの国民が真実に立ち向かえることに気づくはずだ。

最後は有権者の判断
しかし、最終的な選択を行うのは有権者自身だ。ティーパーティーが米国で勢力を拡大した理由の1つは、ごく少数の有権者が、特に特定の主張に有利に改変された選挙区で予備選を支配することにある。

欧州議会選挙では、多くの有権者が単純に選挙に足を運ぼうとしない。それが反体制派政党にとってありがたい条件となっている。

欧州の人々が反体制派政党の勝利を望まないのであれば、投票に行かなければならない。【英エコノミスト誌 2014年1月4日号】
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正直に話して理解が得られるかどうかは分かりませんが、それでも国民が独断的で過激な主張を支持するのであれば、その先に起こることを含めて、選択した国民の自業自得というべきでしょう。

【“外国嫌い”の極右勢力が連携できるか?】
極右政党の台頭が予測されている欧州議会の権限は最近強まる傾向にあるようです。

“折から欧州議会は権限を強めている。過去には「無用の長物」と嘲笑されたが、EUがリスボン条約の下で「欧州連邦」色を強める中で、EUの閣僚である欧州委員や、EU予算の承認も権限に加わった。EUが域外の国と結ぶ条約も、自由貿易協定(FTA)を含め、発効には議会の承認が必要だ。

「欧州委員は、各国政界の『上がり』の政治家たちに割り振られてきたが、評判の悪い人物には、議会が『ダメ出し』をするようになって、欧州委員承認のハードルが高くなった」とEU外交筋は言う。”【選択 2013年11月号】

台頭する極右勢力の中心にいるマリーヌ・ル・ペン氏は昨年の大統領選で17.9%を得票して、極右の大物である父親の2002年の得票率さえ上回って、過去最高を記録しています。

【1月26日 時事】にもあるように、マリーヌ・ル・ペン氏が最近親交を深めているのがオランダ自由党(PVV)のヘルト・ウィルダース党首ということで、この両者が欧州議会選挙の“台風の目”になると見られています。

もっとも、極右勢力は基本的に“外国嫌い”という性格がありますので、各国の欧州懐疑派連携がどこまで進むかは疑問視する見方もあるようです。
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フィリピン・ミンダナオ島  最終的な和平協定に向けて前進

2014-01-27 21:28:36 | 東南アジア

(マレーシアの首都クアラルンプールのホテルで行われた記者会見の席上、合意文書を交換するフィリピン政府のミリアム・コーネル・フェレール主席交渉官(左)とイスラム武装勢力「モロ・イスラム解放戦線(MILF)」のモハグハ・イクバル交渉団長(2014年1月25日撮影)。(c)AFP/KAMAL SELLEHUDDIN 【1月26日 AFP】http://www.afpbb.com/articles/-/3007284?pid=12999393)

政府側交渉官:2月か3月にも「包括合意文書」に調印できるとの見通し
40年以上にわたって続いているフィリピン南部ミンダナオ島のイスラム系住民の反政府闘争について、フィリピン政府とミンダナオ島を拠点とする反政府武装勢力「モロ・イスラム解放戦線」(MILF)は、2012年10月7日、既存の「ムスリム・ミンダナオ自治区」(ARMM)の領域拡大を認め、2016年までに新自治政府へ移行し、「移行委員会」を設置して新自治政府の統治機構と「基本法」を策定することが柱とする、和平の枠組みに合意しました。
(2012年10月8日ブログ「フィリピ ミンダナオ島反政府勢力との和平枠組み合意が成立」http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20121008

当初は2013年3月にも包括合意が・・・との見通しもありましたが、その後の具体的な交渉は難航しました。
そして2013年7月13日に、資源利権の配分を巡って、税収や鉱物などの資源は75%を新自治政府に配分、石油などエネルギー資源は50%ずつ分け合うことで合意しました。

しかし、2013年9月には、政府とMILFの和平交渉に反対する反政府勢力「モロ民族解放戦線(MNLF)」の指導者ヌル・ミスアリ氏を支持するグループがミンダナオ島にある商業都市サンボアンガを襲うという事件も起きました。
(2013年9月9日ブログ「フィリピン・ミンダナオ島  和平交渉進展を妨害する襲撃事件」http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20130909

こうした紆余曲折はあったものの、フィリピン政府と「モロ・イスラム解放戦線」(MILF)は、最後の障害となっていた武装解除問題についてもようやく合意に至り、包括合意に向けて動き出しています。

****比政府とモロ・イスラム解放戦線、武装解除で合意****
フィリピン政府と同国南部のミンダナオ島を拠点とする主要反政府勢力「モロ・イスラム解放戦線(MILF)」は26日、1996年から継続してきた和平交渉で最後の障害となっていたMILFの武装解除に関する問題で合意に達したことから、向こう数週間以内に最終的な和平協定に調印できる見通しになったと明らかにした。

政府のミリアム・コーネル・フェレール首席交渉官は、2月か3月にも「包括合意文書」に調印できるとの見通しを示した。
双方はこの前日の25日、MILFの武装解除やミンダナオ島内に作られる予定の新しいイスラム自治区の治安部隊創設に関する詳細を定めた「正常化」協定に合意したと発表していた。

すでに双方は、自治区における権限の分担や税制、統治について合意し、協定に調印している。しかしMILFは、同国南部のMILF以外の反政府勢力が武装解除されないかぎり、武装解除には応じないと主張してきたことから、この問題は慎重な対応を必要とする最後の問題となっていた。

包括合意が調印されれば、ベニグノ・アキノ大統領はイスラム教徒による新自治区の創設に向けた基本法案に署名し、この法案は議会に送付された後に国民投票にかけられることになる。大統領は6年間の任期が終わる2016年までに新自治区の実現にこぎ着けたい考えだ。

総勢約1万2000人のMILFはフィリピン政府との間で、ミンダナオ地域における紛争の終結を目指して和平交渉を続けてきた。同地域で1970年代から続いた紛争による死者は、合わせて15万人に上ったとみられている。

武装勢力の長年にわたる反政府活動により、この地域では不安定な情勢が続いてきたため、無許可の小火器が政府との和平協議に反対している国際テロ組織アルカイダ(Al-Qaeda)系の過激派や、武装勢力の分派の間に広がっている。

フェレール氏は、武装勢力による攻撃の可能性を排除するため、新自治区創設までの移行期間中はMILFの戦闘員と政府の治安要員から成る合同治安組織に治安維持にあたらせる方針だと述べた。【1月26日 AFP】
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今回の合意の背景としては、“ミンダナオ島ではMILF以外のイスラム系武装勢力や私兵集団の活動が依然として活発で、安全保障の観点から、武装解除の交渉は難航するとみられていた。しかし、16年に任期を終えるアキノ政権の期間内に自治政府設立を間に合わせるため、MILFも折り合いを付けたとみられる。”【1月25日 時事】と報じられています。

合意に反対する武装勢力の存在
今後は自治基本法の制定などのプロセスが控えていますが、反対勢力の妨害も予想されています。

反対勢力のひとつは、MILF以外の政府との合意に反対する武装勢力です。
自治・独立に関する理念の問題もあるでしょうが、枠組みから排除され権益・権限を主張・行使できなくなるという現実的利害の問題もあるでしょう。

****比国軍と解放戦線分派、ミンダナオ島で戦闘****
フィリピン国軍によると、同国南部ミンダナオ島で27日、国軍とイスラム武装勢力「バンサモロ・イスラム自由戦士」の間で戦闘が発生した。

この武装勢力は、25日にフィリピン政府との間で武装解除に合意した「モロ・イスラム解放戦線」の分派で、政府との和平に反対する強硬派とされる。

国軍報道官によると、国軍と国家警察は27日朝、住民の殺害を繰り返したなどとして、「自由戦士」幹部25人の逮捕に乗り出した。「自由戦士」がこれに反発、戦闘が起こった可能性がある。双方に死傷者が出ているかどうかは不明。

同報道官は、「モロ・イスラム解放戦線」が国軍を支援し、戦闘地域で住民保護にあたっていると話した。【1月27日 読売】
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今のところは、政府・国軍とMILFは協調行動をとっているようです。

既得権益層の反対 憲法問題も
想定される反対勢力のもうひとつは、キリスト教勢力を含めた既得権益を持つ有力氏族や反大統領勢力です。

****反対勢力の妨害も=自治基本法制定が焦点―ミンダナオ和平****
・・・・今後は双方で設置した移行委員会が「3~4月に基本法案をまとめ、遅くても5月までに議会提出」(外交筋)を目指す運びだが、同筋は法案審議をめぐり「キリスト教勢力を含めた既得権益を持ち、和平を好まない勢力の立法府、司法を巻き込んだ妨害が必ずある」と指摘する。

実際にアロヨ前政権とMILFは08年に自治権拡大などで大筋合意したが、反発するキリスト教徒らの提訴を受け、最高裁が和平合意を違憲と判断、紛争が再燃したことがある。【1月25日 時事】
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憲法判断をクリアするためには最終的には改憲が必要ではないかと見られていますが、そのあたりの段取り・見通しは政府側にもないようです。

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・・・・前アロヨ政権時代に一度は認めた自治政府設立がその後の最高裁で現行憲法に『違反』するとの判決が下された経緯があって、MILFの望むような形では、再び最高裁による違憲判決が出る可能性がある。

改憲に対しては根強い反対論が議会、カトリック宗教界、世論の中にあって1992年~1998年のラモス政権以来、議論は止まったままである。

これに対してアキノ政権は柔軟に対応すれば改憲をしなくても合意履行は可能と当てのない楽観論を展開するのみで実現性の薄さに危惧を持たれている。・・・・【2012年11月12日 フィリピン・インサイドニュース】
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アキノ大統領も同じ失敗を繰り返すつもりもないとは思いますが・・・・どうでしょうか。

いずれにせよ、15万人とも言われる犠牲者を出している紛争に出口が提示されたことは、歓迎すべきことです。
あのシリアですら、3年というミンダナオに比べたら短期間ではありますが、その犠牲者は13万人と言われていますので、ミンダナオにおける犠牲者の多さがわかります。

世界にはこうした国際的にはあまり目立たない紛争、“忘れられた紛争”が多く存在するのでしょう。
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中国  「新公民運動」弾圧  進む習近平国家主席への権限集中

2014-01-26 21:14:57 | 中国

(1月23日 許志永氏の無罪を求める人々 ただ、こうした動きが社会を動かすほどの大きなものになっていないのも現実です。 “flickr”より By Ji Ruan http://www.flickr.com/photos/29720519@N03/12100007596/in/photolist-jreGGC-fqwzia-83MXSG-fU57Rz-iEwzhF-fp92hG-fQQAnn)

【「あなたたち(共産党)は、公民の存在と成長を『異端』とみて怖がっている」】
中国で憲法が定める権利の実現を目指す市民運動「新公民運動」の中心メンバーの許志永氏(40)に対して、中国司法は公共の秩序を乱した罪で懲役4年という重い判決を下しています。
当然ながら、この判決は単なる司法判断ではなく、中国共産党の「新公民運動」を容認しないという厳しい姿勢を示したものです。

****新公民運動」活動家に懲役4年=公共秩序騒乱罪―中国****
中国で民主や法治の実現を目指す「新公民運動」の中心人物で、公共秩序騒乱罪で起訴された著名人権活動家の許志永氏(40)に対する判決公判が26日午前、北京市第1中級人民法院(地裁)で開かれ、懲役4年の実刑判決が言い渡された。同法院が発表した。同罪で最高の量刑は懲役5年。

許氏は、地方出身の子供に不利な教育制度の是正や、幹部の資産公開を求める活動を展開。検察当局は「公共の場所で横断幕を掲げたり、ビラをまいたり、国家機関前に人を集めて騒ぎを起こしたりして違法犯罪活動を組織・計画・実施した」と認定した。

許氏は理性的かつ穏健に行動を進めており、一貫して「憲法が規定した『言論の自由』の範囲内」と無罪を主張。22日の初公判では裁判所の不公正な手続きに抗議し、「黙秘」を貫いた。最後に「自由や公益のため、また中国の美しい未来のため一切の代償を背負いたい」などと訴える最終陳述を行う準備を進めていたが、書面を読み始めたところで裁判長が遮り、陳述を認めなかった。【1月26日 時事】
******************

裁判では、許志永氏が最終陳述を述べることも裁判長に遮られ認められませんでした。

****未来のため代償負う」=中国、新公民運動活動家、幻の「最終陳述」―許志永氏****
中国で理性的かつ温和な要求で民主や法治の実現を目指す「新公民運動」の中心人物で、公共秩序騒乱罪で起訴された著名人権活動家の許志永氏(40)は、22日の初公判で「私は自由、公益、愛のため、また中国の美しい未来のため一切の代償を背負いたい。この光栄を冷静に受け入れる」と記した最終陳述を用意していた。

約6時間にわたる審理で、不公正な審理に抗議するため一貫して「黙秘」。最後に発言しようとしたが、読み上げ始めると、裁判長がさえぎり、陳述を認めなかった。

関係者が「自由、公益、愛のために」と題した全文を公表した。許氏は、地方出身者に不利な教育制度の是正、幹部の資産公開などの実現に向け、署名活動を行ったり、横断幕を掲げたりしたことが罪に問われた。北京市第1中級人民法院(地裁)で結審した審理で許氏は無罪を主張した。

「幻」の最終陳述によると、許氏は「あなたたち(共産党)は、公民の存在と成長を『異端』とみて怖がっている」と指摘。それに対して「われわれは平和的に改革を促す手法で国家と社会の進歩を推し進める」とした上で「われわれは新時代の公民であり、国家に責任を負う公民だ。われわれは中国を愛している」と訴え、一人一人の中国人が責任を持って民主や自由、法治などを推し進める重要性を訴えた。【1月23日 時事】 
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憲法が定める権利の実現するための署名活動や横断幕すら公共の秩序を乱す行為として許さないという共産党の姿勢は、今さらコメントすることは何もありません。

この頑なさの裏にあるのは、許志永氏が「あなたたち(共産党)は、公民の存在と成長を『異端』とみて怖がっている」という、一党支配体制を揺るがしかねない市民の声が大きくなることに対する“怖れ”でしょう。
それは怖れるだけの理由・現実があるからに他なりません。

****許氏判決」ニュースを遮断=中国****
中国で26日、「新公民運動」を推進した著名人権活動家・許志永氏が懲役4年の判決を受けたことを伝えていたNHKの海外テレビ放送のニュース番組が突然、視聴できなくなった。

画面が真っ黒になったが、許氏に関するニュースが終わると元に戻った。中国当局が放映を一時遮断したとみられる。【1月26日 時事】 
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海外“隠し資産”報道
許志永氏が求めていた“幹部の資産公開”に関連して、習近平国家主席の親族の“隠し資産”が海外で報じられています。

****カリブに“隠し資産” 習近平氏・温家宝氏の親族ら 国際報道機関****
中国の習近平国家主席の親族らがカリブ海にある英領バージン諸島などの租税回避地(タックスヘイブン)で“隠し資産”を管理していると、約60カ国のジャーナリストでつくる国際的な調査報道機関ICIJ(本部ワシントン)が21日発表した。

ICIJが250万件に及ぶ関連文書を入手し分析した。ICIJによると、習主席の義理の兄弟や温家宝前首相の息子らが、バージン諸島などに資産管理会社などを設立したという。温氏の息子の場合、欧州の金融大手が温氏の首相在任中、バージン諸島で会社設立を支援したとしている。

ICIJはまた、租税回避地を利用する中国本土・香港居住者は、富豪や国有企業幹部を含む約2万2千人に上り、2000年以降に中国から流出した資産総額は1兆~4兆ドル(約104兆~約417兆円)と推計している。

ICIJによると、中国本土の報道機関もICIJに参加していたが、昨年11月、中国当局の警告を受けて脱退したとしている。【1月23日 産経】
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中国当局はこうした資産報道に、「背後の意図を疑わざるを得ない」と反論しています。

****資産報道「背後に意図」=中国****
中国外務省の秦剛報道局長は22日の会見で、習近平国家主席ら中国指導者らの親族による租税回避地を通じた資産運用に関する報道について、「具体的な状況は分からないが、記事の論理は納得し難く、背後の意図を疑わざるを得ない」と反論した。

報告書を発表した「国際調査ジャーナリスト・コンソーシアム」(ICIJ)に協力する英紙ガーディアンなど一部メディアのサイトには資産問題の報道後、中国からアクセスできなくなった。中国当局が遮断したとみられる。

これに関して、秦局長は「関連部門が法規に基づいてインターネットを管理している」と述べるにとどめた。【1月22日 時事】 
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習氏の集権体制が一段と強化
日本や欧米の価値観からすれば許容できない政治姿勢ではありますが、残念ながらこれが現実であり、直ちにこの政治システムが大きく揺らぐこともないでしょう。
習近平国家主席は周永康前党中央政法委員会書記を排除し、着実に権力基盤を固めているようにも見えます。

****公安・司法系統を掌握=習総書記、周永康追及決意か―「集団の害排除」・中国****
9日付の中国共産党機関紙・人民日報によると、公安・司法系統の最高会議である「中央政法工作会議」が7~8日に開催され、習近平総書記(国家主席)が演説、「断固たる意思と行動で、腐敗現象を取り除き、集団に害を及ぼす者は断固排除しなければならない」と強調した。

公安・司法分野で絶大な権限を誇った周永康前党中央政法委員会書記を汚職容疑で追及するとともに、周氏の「牙城」だった政法委を自ら掌握する決意表明との見方が強い。【1月9日 時事】
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****国家安全委」トップに習主席=治安統括の巨大権力機関―集権体制を強化・中国****
新華社電によると、中国共産党中央は24日、政治局会議を開き、内外の治安強化に向けた「中央国家安全委員会」の新設と、そのトップである主席に習近平総書記(国家主席)の就任を決定した。副主席には李克強首相と張徳江全国人民代表大会(全人代)常務委員長が決まった。

国家安全委は昨年11月の党第18期中央委員会第3回総会(3中総会)で創設が決定。同総会で同様に新設が決まった改革の司令塔「中央改革全面深化指導小組」でも習氏がトップの組長に就任しており、習氏の集権体制が一段と強化された形となった。

国家安全委は、「中国版NSC(国家安全保障会議)」と指摘され、外交・安全保障の司令塔になる。新疆・チベット問題などで主権を脅かすテロのほか、共産党一党支配を揺さぶる反体制活動、サイバー攻撃などにも対応し、内外の治安を統括する超巨大権力機関になる見込み。

このため冷戦時代に情報機関・秘密警察として恐れられた旧ソ連の「国家保安委員会(KGB)」に近いとの見方が強い。公安省や国家安全省などを指導する党中央政法委員会のほか、外務省、軍・国防省などに分散していた情報や戦略などを国家安全委の下に集約し、習氏が統一して判断し、指導する体制を構築する。【1月24日 時事】 
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アルゼンチン・ペソ急落 新興国経済への不安

2014-01-25 22:03:12 | ラテンアメリカ

(1月22日 6週間ぶりに姿を現わしたフェルナンデス大統領(60)ですが、大波がアルゼンチン経済を襲っています。【1月24日 SANKEI EXPRESS】http://www.sankeibiz.jp/express/news/140124/exd1401241321002-n1.htm

【「私がもう終わりだと国民に印象づけたかったようだが、そうはいかない」】
南米アルゼンチンの通貨混乱が報じられていますが、その話に入る前に、アルゼンチンに関して「あの話はどうなったのだろうか?」と気になっていたことがありました。

昨年10月8日ブログでも取り上げた健康問題を抱えるフェルナンデス大統領が、年末からほぼ1カ月、公の場に姿を見せていないということでした。

****アルゼンチン大統領、1カ月姿見せず 健康不安説も****
アルゼンチンのフェルナンデス大統領がほぼ1カ月、公の場に姿を現さず、健康問題や所在について憶測が飛び交っている。

フェルナンデス大統領は昨年10月、脳の表面にできた血腫を除去する手術を受けた。11月に公務に復帰し、12月には複数の行事に出席したが、その後は公の場に姿を見せていない。

手術前、フェルナンデス大統領は国営テレビを通して情熱的に政策を語ったり、インターネットで自らの仕事について矢継ぎ早に投稿したりしていた。だがツイッターへの最後の投稿からすでに33日が経過している。

国営テラム通信によれば、カピタニチ官房長官は今月初め、「大統領は毎日出勤して、われわれとともに働いている」と記者団に述べた。だが一部からは「政府は誰の下で運営されているのか」と批判の声も上がっている。

「数カ月前の病気の件がなければ問題にもならなかっただろう。だが噂は広まり、理由が分からないことによる不安感が生じている」と、ベルグラノ大学(ブエノスアイレス)世論センターのオルランド・ダダモ所長は言う。

「政治的戦術なのか? 来年の大統領選の候補のために活動の場を作っているのか? 政府がかかえる難局に向き合いたくないのか? 国民には分からない」

一方で、健康に配慮して十分な休養を取っているとの見方もある。前大統領で夫のネストル・キチルネル氏は10年に心臓発作で死亡した。「同じような状況になりたくないのだろう」と、政治評論家のエンリケ・スレタは言う。【1月17日 CNN】
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そのフェルナンデス大統領が、1月22日、ようやく姿を現しました。

****アルゼンチン大統領 6週間ぶり姿****
昨年(2013年)12月10日を最後に公の場に姿を見せていなかったアルゼンチンのクリスティーナ・フェルナンデス大統領(60)が1月22日、6週間ぶりに姿を現わし、大統領府で支持者の歓声に笑顔で応えた。

大統領は昨年(2013年)10月8日に脳内出血の除去手術を受け、11月18日に公務に復帰したが、健康不安説が絶えなかった。

(1月)22日のテレビ演説で大統領は「いくらか(健康に)問題があっただけ。野党勢力や一部メディアは、私がもう終わりだと国民に印象づけたかったようだが、そうはいかない」と語った。【1月24日 SANKEI EXPRESS】
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ペソの年初からの下落率は20%を超え、この1年で外貨準備高は約30%減
大統領が姿を見せた翌日の23日、これまで通通貨ペソをなんとか買い支えてきた中央銀行が外貨準備減少のためこれ以上買い支え切れない事態となり、ペソが急落しました。

****アルゼンチンペソ急落 中銀の姿勢に懐疑的見方広がる ****
23日のブエノスアイレス市場で南米アルゼンチンの通貨ペソが急落し、前日と比べて12%ペソ安・ドル高の1ドル=8ペソで取引を終えた。

外貨準備の減少を背景に、中央銀行のペソ安阻止の姿勢に懐疑的な見方が広がっていることがペソ売り材料となった。ロイター通信によると、1日の下落率としては、債務危機が起きていた2002年以来の大きさだ。

ペソは前日も下落していたが、中銀は介入をしなかった。外貨準備高の減少を懸念する中銀が、ペソ買い・ドル売りの為替介入の姿勢を和らげるとの観測が広がり、23日のペソ急落を招いた。この日は一時、1ドル=8.5ペソで取引される場面もあった。ペソの年初からの下落率は20%を超えた。

アルゼンチンの外貨準備高は13年末時点で305億ドル(約3兆1500億円)と、この1年で約30%減った。政府・中銀はさらに減少することに神経をとがらせる。

急激なインフレもペソ売りの要因になっている。政府は消費者物価の上昇率が13年に10.9%だったと公表したが、エコノミストらは実際の物価上昇率は25~30%程度に上ったとみている。【1月23日 日経】
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中央銀行の方針は当然に大統領に事前に報告されていたと思われますので、22日に大統領が姿を見せたのは、その後の経済混乱を予測して、これ以上の政治空白は許されないとの判断から健康状態を押して姿を見せた・・・ということでしょうか?

あるいは、今日の経済混乱を招いたひとつの要因に、大統領不在の政治空白があった・・・とも考えられます。

24日のペソは、中央銀行がペソ買い・ドル売りの為替介入を再開したため、前日比でほぼ横ばいと、ひとまず下げ止まった格好にはなっています。【1月25日 日経より】


アルゼンチンペソ急落の国際経済的背景としては、アメリカの量的緩和縮小により新興国からの資金流失が挙げられています。

アルゼンチンで明らかになった新興国の通貨不安は、世界経済をけん引してきた中国経済の停滞感もあって、先進国を含む世界経済に株安などの影響を与えています。

****新興国、マネー変調 米の緩和縮小、アルゼンチン通貨急落****
新興国の景気減速への不安が広がっている。世界経済を引っ張る中国の成長率が鈍り、アルゼンチンで通貨が急落するなど異変が出始めた。米国の金融緩和の縮小が背景にあるとみられ、先進国でも軒並み株安になった。東京市場では日経平均株価が一時400円超下がり、円高が進んだ。

きっかけは中国だった。英金融大手が23日発表した中国の製造業の景況感を示す指数が、1月は景気判断の分かれ目の「50」を半年ぶりに下回った。

中国では、10~12月期の成長率が前年比7・7%と、7~9月期から0・1ポイント悪化した。政府の景気対策が息切れ気味で、今後の景気減速への不安が強まり、欧米の株価が下がる原因になった。

米国の量的金融緩和の縮小が響いている。米連邦準備制度理事会(FRB)は今月から、市場に流すお金の量を減らし始めた。新興国へ投資していたファンドなどが資金を引き揚げているとみられ、インドやブラジルで通貨安が続く。投資の減少と通貨安による物価高などで、景気をさらに悪くするおそれがある。

経済力が弱い国ほど緩和縮小の影響は大きくなる。23日の海外市場では、アルゼンチンの通貨「ペソ」が一時1ドル=8・2ペソと、15%も下がった。米メディアによると、アルゼンチン政府が国の借金を返せなくなる「債務不履行(デフォルト)」に事実上陥った2002年以来の下げという。

経常赤字に苦しむアルゼンチンでは、ドルなど外貨の蓄えがこの3年で4割も減っている。中央銀行がペソの急落を防ぐために市場で外貨を売ってペソを買う「為替介入」ができなくなるとの見方が強まり、「弱み」を突かれたペソは一気に売られた。

新興国では昨夏も「米国が緩和縮小を始める」という予想が増え、各国の通貨が急落した。第一生命経済研究所の西浜徹氏は「アルゼンチンの通貨急落で『新興国経済は大丈夫か』という不安が広がった」と話す。【1月25日 朝日】
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脆弱なアルゼンチン経済 政治の無策
アルゼンチンが市場に狙われたのは、基本的にアルゼンチン経済がインフレーションという問題を抱えているからです。

2001年にデフォルト(債務不履行)を経験し、未だにその影響が残るアルゼンチン経済については、
2012年12月12日ブログ「アルゼンチン 景気悪化とインフレーション インフレ率操作の疑惑も」(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20121212)や、
2012年5月29日ブログ「アルゼンチンに見るデフォルトの後遺症」(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20120529)でも取り上げてきました。

このところのアルゼンチン国内では、物価高騰や1週間にわたる停電、略奪行為など、経済混乱が拡大していたようです。

****アルゼンチンで国債デフォルト懸念が再燃-停電頻発し略奪横行****
アルゼンチンの首都ブエノスアイレスの商業地区で食料品店を営むドミンガ・カナサさんが神経をすり減らしているのは、物価高騰や1週間にわたる停電、略奪行為の全てが重なったからだ。

カナサさん(37)は先月のうだるような暑さの日に、店の金属製シャッターを全開するのをためらい、通行人にソーダを販売できる程度しか開けなかった。「怖かったからだ」とカナサさんは言う。

隣接するコルドバ州で、賃上げを求める警官のストライキで警備が手薄になった隙をみて略奪が始まり、ブエノスアイレスの郊外にも波及。

カナサさんの店の近隣でも動揺が広がった。こうした無秩序な状況は2001年の950億ドル(現在のレートで約9兆8200億円)のアルゼンチン国債デフォルト(債務不履行)後の暴動以来経験したことのない規模だとカナサさんは話す。

国債デフォルトから13年が経過した中、フェルナンデス大統領には新たな危機を回避する時間はなくなりつつある。政府統計では昨年のインフレ率は11%弱だったが、大統領による圧力で政府統計と相反する内容の物価統計について沈黙させられているエコノミストの予想を明らかにしている野党議員によると、28%に達したという。

ペソは過去2日間で13%下落し、過去最安値1ドル=7.8825ペソを付けた。アルゼンチンの中央銀行はペソ相場の下支え策を縮小しており、過去1年間では35%余り値下がりした。

国債デフォルト後の通貨切り下げ以来最大の急落で、世界でこれを超える通貨下落に見舞われたのは戦争で疲弊したシリアとイランだけだ。

フェルナンデス大統領にとって最大の金融問題は外貨準備の減少。外貨準備 は過去3年間で44%減少し295億ドルに落ち込んだ。

国際資本市場から依然締め出されたまま、ヘッジファンド運用者ポール・シンガー氏とのデフォルト債をめぐる訴訟が続くアルゼンチンにとって、外貨準備は債務再編に応じた300億ドル相当の国債の保有者への支払いの主要財源。他の外貨債務を合わせると、債務は500億ドルに膨らむ。

投資家はデフォルト再発の可能性に備えている。同国のドル建て債の平均利回りは12.4%で、主要新興国ではベネズエラに次ぐ高い水準。アルゼンチン債のデフォルトに備えるクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)の取引は、向こう5年で同国の支払いが79%の確率で滞るとの見方を反映した動きとなっている。【1月24日 bloomberg】
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2001年のデフォルトの清算が済んでいないため、外からの資金調達が難しく、巨額のマネーが動く市場にアルゼンチン一国のわずかな外貨準備で立ち向かわねばならない状況です。
24日のペソは下げ止まったようですが、巨額の市場マネーと脆弱な外貨準備では勝負にならないような気がします。

この事態は、国内経済の問題を、統計数字の操作などで隠蔽し、フォークランドなどの外交問題を煽ることで国民の目をそらそうとしてきたフェルナンデス政権の無策の結果とも言えます。

日本経済への影響も
24日のニューヨーク株式市場のダウ工業株30種平均は、、前日終値より318・24ドル下げています。昨年12月17日以来約1カ月ぶりの安値で、下げ幅は昨年6月20日(353・87ドル安)以来、約7カ月ぶりの大きさです。

日経平均も一時、前日より400円超下げ、終値も304円33銭(1・94%)安の1万5391円56銭と、今年の最安値をつけています。

アルゼンチン通貨の混乱を受けて、その影響は新興国通貨、更に日本円にも及んでいます。

****新興国通貨全面安 アルゼンチン暴落が引き金 円買い加速****
週末24日の外国為替市場で、トルコ・リラが過去最安値となり、南アフリカ・ランドも5年3カ月ぶりの安値を更新するなど、新興国の通貨が全面安となった。

アルゼンチン・ペソの暴落をきっかけに、新興国経済への警戒感が広がり、新興国通貨の売り圧力が強まった。
米国の量的金融緩和の縮小や、中国経済の減速への懸念も浮上、世界の金融市場全体に悪影響が及ぶ懸念が出てきた。

ロンドン時間午前10時30分現在、ランドが1ドル=11・1ランド台と前日終盤から1・4%下落、リラも同2・31リラ台と1%安だった。メキシコ・ペソも同13・5ペソ台、ロシア・ルーブルも同34・4ルーブル台とともに1%前後下落した。今年に入ってからの下落率はトルコ・リラで7・6%、南ア・ランドで6・1%になっている。

円相場も、新興国通貨の急落を背景とするリスク回避に伴い円買いが加速、一時1ドル=102円近辺と昨年12月6日以来約1カ月半ぶりの高値まで上昇した。【1月25日 msn産経】
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円高が進むのは、新興国の景気減速が世界経済全体に波及するとの見方から、各国への投資を引き揚げた投資家たちが「安全資産」とされる円を買い、日本に一時待機させる動きが強まっているためです。
円高・株安の流れが、業績改善・景気回復の足を引っ張る懸念が指摘されています。
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インド  伝統社会の壁 突き破れる政治指導者は?

2014-01-24 22:04:39 | 南アジア(インド)

(集団レイプ事件が起きた少数民族サンタールの伝統舞踊  その伝統文化には興味深いものがありますが・・・・ “flickr”より By Shibaditya Ray http://www.flickr.com/photos/64191350@N07/7719075150/in/photolist-cL7h7A-a9g49V-jinEFH-dgoayn-8eEYjx-j7fu5p-dHZ6u8-cZusWm-8xtwb5-jiqhK5-d1WdBu-8GBKue-8TzGBp-hoeTA3-dQbQiZ-bnzZ3K-c9vqM1-b6wPAz-8tRT9f)

【“変わらぬインド”】
新興国インド社会に根深く存在する因習の弊害については、
年末12月28日ブログ「“変わるインド” “変わらぬインド”」(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20131228
2013年9月22日ブログ「インド社会の負の側面 「名誉殺人」、カースト制、そしてレイプ犯罪」(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20130922
など、しばしば取り上げていますが、最近もこの種の話題をよく目にします。

****汚物を素手で清掃=カースト呪縛、130万世帯―禁止法にも抜け道・インド****
ラジュ・ラジョリアさん(45)は「私の手は汚れている」とつぶやいた。

インド古来の身分制度カースト制の底辺「不可触民」出身で、父も祖父も代々、くみ取り式トイレや下水管を素手で清掃する仕事が生業だった。1日の稼ぎは200ルピー(約320円)程度。ヒンズー教の神々の像に手を触れることすら許されず、貧困と差別にまみれて生きてきた。

カースト制のどの階級からもはじき出された不可触民はインドの全人口12億人のうち約2億人とされる。身分差別廃止を定めた憲法施行から64年が過ぎた今も、その大半が過去の呪縛に縛られている。

 ◇「地獄」の悪臭
「この地獄から抜け出したい」。午前7時、首都ニューデリー南部にある高級住宅地の大家から仕事の依頼が入る。ラジョリアさんの仕事道具は長さ約1.5メートルの鉄製の棒だけ。下水管の中で四つんばいになり、詰まりの原因になった汚物を取り除く。

体に染みついた悪臭をぬぐい去ることはできず、仕事後は食事も喉を通らない。25年間、非衛生的な環境で働き続けたせいか「慢性的に体調が優れず、せきが止まらない」。仕事を終えてもコップ1杯の水すらもらえず、追い払われるように次の仕事場へ向かう。

生活は苦しい。4人の子供には「公務員になってほしい」と願っていたが、次女(16)と次男(14)は、家計を助けるために同じ仕事を始めた。「これ以外ならどんな仕事でもしたいが、『汚れた者』にそんな機会はほとんどない」。ラジョリアさんは肩を落とす。

 ◇「写真撮らないで
インド国会は2013年9月、手作業によるトイレ・下水管清掃業の禁止と、それによって失業する職人の社会復帰を定めた法律を成立させた。同法はこうした職業を「非人道的」と断じ、「個人が尊厳を持って生活できるよう保証する」と規定した。

ただ、「『防護装備』を提供した場合は規制の対象外」とも記している。専門家は「マスクや手袋など簡易装備を与えるだけで合法と認められる恐れがある」と批判する。

11年の国勢調査によれば、代々手作業でトイレなどの清掃をしてきた職人の家庭は75万世帯。市民団体は、実際にはその数はもっと多く、130万世帯に上るとみている。

ラジョリアさんは法律施行後もマスクや手袋なしで排せつ物を処理し続ける。「写真だけは撮らないでほしい」。自らを恥じるように丸めた背に、いまだ解けぬカーストの呪縛が見えた。【1月19日 時事】 
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一体いつの時代の話かと、耳を疑うような集団レイプ事件も報じられています。

****集団レイプの刑を命じたインドの村、自治組織「パンチャヤット」とは****
インド東部の西ベンガル州で、別の村の男性と一緒にいた未婚女性(20)が村の長老会議の命令で罰として集団レイプされた事件で、地元警察当局は23日、告訴された男13人全員を逮捕したと発表した。レイプを命じた長老会議の議長も、女性をレイプした容疑者に含まれているという。

被害女性はテレビの取材に顔をスカーフで隠して応じ、「父と同じくらいの年齢の男たちにレイプされた」と訴えた。
事件は西ベンガル州の州都コルカタから約240キロ西方にある少数民族サンタールの村、スバルプルで起きた。

被害者の女性は、別の村出身のイスラム教徒の男性と関係を持ったとして、村の長老たちで構成された自治組織から2万5000ルピー(約4万円)の罰金を支払うよう命じられた。しかし女性の家は貧しく、両親が罰金を支払うことはできないと述べたところ、長老会議の議長がレイプを命じたという。

女性の母親によると、長老らは警察に訴え出ないよう女性の家族を脅し、さらに当初は女性を病院に連れていくことも認めなかった。母親はインド紙タイムズ・オブ・インディア に対し「犯罪を犯したのは同じ村の人々だ。彼らは私の娘をなぶり、深夜に家に放り込んでいった」と非難した。

逮捕された13人の男は、女性が名指ししたという。

■村を支配する「パンチャヤット」
インドでは北部を中心に、部族やカーストに基づく年配男性らによる合議制の自治機関「カップ・パンチャヤット」が村人の生活に強い影響力を持っており、非道徳的な行いなど地域社会において違反とみなされる行為に制裁を下すことも多い。

インドPTI通信によれば、西ベンガル州の村では4年前にも、10代の少女が男性との恋愛を理由に裸で村内を引き回される事件があった。

だが、インドにおける女性の権利向上を目指して活動する「全インド進歩的女性協会(AIPWA)」のカビタ・クリシュナン氏は、地方の村だけの問題ではないと指摘する。「同様の精神構造は首都デリーのような都会にも存在する。インド社会とカースト制度に深く根付いた問題だ」

国際人権団体アムネスティ・インターナショナルの上級研究員ディビヤ・アイヤー氏は、村の長老会議による制裁は非合法にも関わらず続けられていると指摘。
「カップ・パンチャヤットは、女性に対して法の範囲を逸脱した非人間的で性暴力的な罰を命じることで悪名高い。『名誉殺人』もその1つだ」と声明で批判した。【1月24日 AFP】
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“インドの地方では、部族や出身地が異なる男女の結婚を認めないところが多く、おきて破りの男女が罰として裸で村を歩かされたり、殺害されたりするケースが相次いでいる。集団レイプの罰は極めて異例。

インドでは2012年に首都ニューデリーで起きた集団レイプ事件(女子学生が死亡)以降、レイプ根絶の声が高まったが、今月、首都中心部でデンマーク人女性観光客(51)が集団レイプの被害に遭うなど、レイプ事件が後を絶たない。”【1月23日 毎日】

【“やりすぎ”“暴走”か、変革か?】
こうした“変わらぬインド”に風穴を開ける可能性として、1月10日ブログ「インド政治に風穴をあけられるか・・・新党「一般人党」のケジリワル党首の挑戦」(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20140110)では、二大政党を押しのけてデリー首都圏(州)政府首相に就任した新党「一般人党」(AAP)のアービンド・ケジリワル党首(45)を取り上げました。

SNSを活用し、ボランティアに支えられたその活動は、これまでのインド政治にない新しさを感じさせます。
ただ、ケジリワル州政府首相の行動には、やや暴走気味というか、ポピュリスト的な危うさもつきまといます。

****インド:デリー州政府首相「私は無政府主義者」警察と対峙****
インド・デリー首都圏(州)のケジリワル州政府首相が、デリー警察を管轄する中央政府と対立している問題で、ケジリワル氏は20日、中央政府に抗議する無期限デモに入った。警察の管轄権が州政府に移行されるまで続けるという。

ケジリワル氏は首都ニューデリー中心部の鉄道省前に支持者約500人と共に居座り、20日は路上で毛布にくるまって夜を明かした。内務省はデモの広がりを防ぐため、警察官4000人を配備して周辺一帯を封鎖、地下鉄4駅を閉鎖して対抗している。現場では、21日もデモ隊と警察隊がにらみ合いを続けた。

首都行政トップの州政府首相がデモを率いて中央政府と対峙(たいじ)する異例の事態に、民放各局は「無政府状態」「やりすぎ」など批判的に報じた。これまで社会活動家として、政府の腐敗を批判するデモなどを繰り返してきたケジリワル氏は「私は無政府主義者」と開き直った。

ケジリワル氏は、新党・一般人党を率いて昨年12月のデリー首都圏議会選に初出馬して当選し、州政府首相に就任した。それ以来、公約に掲げた電気・水道料金の大幅値下げ、外国小売り大手のインド進出のための規制緩和撤回などを次々と打ち出した。

警察改革も主張しており「麻薬販売人や売春婦を即時逮捕せよ」と命じたところ、警察側から「令状なしにはできない」と拒否され、今回の対立にエスカレートした。

首都中心部では26日に「共和国記念日」の軍事パレードなどの式典が開かれる。それまでに中央政府がデモの強制排除に動く可能性がある。共和国記念日式典は毎年、外国の首脳を迎えて開かれ、今年の主賓は安倍晋三首相。【1月21日 毎日】
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原因や背景、もたらす影響、手続きなどを考慮せず、一般国民にアピールする目に見える結果だけを即時に求める・・・といった風にも見えます。
現実社会の壁に風穴をあけるためには、そのぐらいの荒療治的な手法が必要なのかもしれませんが。

****インド:無期限デモ終了、ケジリワル州首相が「勝利」宣言****
インド・デリー首都圏(州)のケジリワル州政府首相が、デリー警察を管轄する中央政府と対立している問題で20日から中央政府に抗議する無期限デモを続けていたケジリワル氏は、中央政府側が21日、妥協姿勢を見せたため、2日間でデモを終結させた。

ケジリワル氏は警察の管轄権が州政府に移行されるまで続けると訴えていた。デリー州政府のジャング副総督が21日、ケジリワル氏が「命令を聞かない」として問題視していた警察官2人に休暇を取らせ、事実上の停職処分にしたため、ケジリワル氏は「我々の勝利だ」としてデモを終結させた。副総督はインド大統領が任命し、デリー州政府で中央政府を代表する人物。

首都行政トップの州政府首相がデモを率いて中央政府と対峙(たいじ)する異例の事態に、民放各局は「無政府状態」「やりすぎ」などと批判的に報じた。これまで社会活動家として、政府の腐敗を批判するデモなどを繰り返してきたケジリワル氏は、「私は無政府主義者」と開き直ったが、デモ参加者が1000人を超えなかったことや、世論の批判が高まったこともあり、中央政府側の妥協策に乗ったとみられる。

ケジリワル氏は、新党・一般人党を率いて昨年12月のデリー首都圏議会選に初出馬して当選し、州政府首相に就任した。【1月22日 毎日】
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ケジリワル州政府首相は「我々の勝利だ」としてしていますが、今回の件では世論の支持は得られなかったようです。

5月に予定されている総選挙及びその後の新首相については、地元州の経済成長を牽引した手腕が評価される一方で、原理主義者ともいわれ、過去のイスラム教徒虐殺問題との関係も指摘されるインド人民党(BJP)のモディ氏が本命とされていますが、劣勢と見られる国民会議派は名門ガンジー家の「プリンス」、ラルフ・ガンジー副総裁を温存するようです。

****ラフル・ガンジー氏、首相候補とせず****
PTI通信がインド最大与党、国民会議派筋の話として伝えたところによると、同党は16日に開いた会合で、今年5月までに行われる総選挙はラフル・ガンジー副総裁(43)を首相候補とせずに戦うことを決めた。

ガンジー氏が選挙戦を主導することは決まったものの、母親のソニア・ガンジー総裁は会合で「投票前に首相候補を指名するという伝統はない」と述べたという。

汚職問題や景気減速により現時点で劣勢とされる会議派がこのまま総選挙で負ければ、ラフル氏を首相候補にしたことで「ラフル・ブランド」を傷つけるとの見方が出ていた。

優勢が伝えられる最大野党、インド人民党(BJP)は、グジャラート州首相のナレンドラ・モディ氏を総選挙で首相候補に据えている。【1月17日 産経】
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負けそうだから・・・ということで、母親の指示で首相候補に立たないというのは、いかにも虚弱な印象があります。
負け戦の傷は政治家の勲章というぐらいの気概がなければ、インド社会の現実はとうてい変えられそうにないようにも思えます。
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世界の貧困に関する3つの誤解―ビル&メリンダ・ゲイツ夫妻

2014-01-23 21:43:06 | 国際情勢

(“flickr”より By Gates Foundation http://www.flickr.com/photos/48639212@N02/5794388155/in/photolist-9Q2KJ4-9th1QW-9wcc7X-9wfdCC-birv92-birv6v-aACSR6-9hcomw-ap5nVF-9EDWAN-8zD3AP-admXJp-9EAXRD-9EAX5H-9EDU3E-br47MB-9EAZNt-9EEcmN-9h9fdv-cva69J-92sEDW-bxzPR4-9EB1He-8LvrmY-8LsnrX-bjzNzr-8JAyyq-8HcJ5Y-8HcJ5E-9JkVjY-9EDULb-9EBhXD-9EDSko-9EEdbN-dejDLP-9EEcpE-9EAWFk-dUAbp7-9EBhVF-dWBSAr-9EViSi-dzAS3y-bvNTfg-8JAyeW-8Lsnrc-9kP8EE-8LsnrF-8H9AnX-9EBh4F-8HcJ6E-8H9Aoc)

貧しい国々はそうあり続ける運命にある?】
マイクロソフト会長のビル・ゲイツ及び妻メリンダが出資して2000年に創設した「ビル&メリンダ・ゲイツ財団」は、その後、ゲイツに次いで世界第3位の富豪であったウォーレン・バフェットも出資し、世界最大の慈善基金団体として、世界における病気・貧困をなくす活動を行っています。

「ビル&メリンダ・ゲイツ財団」については、都市伝説的な奇妙な噂もあるようですが、そのことは別にして、下記記事はビル&メリンダ・ゲイツ夫妻が世界の貧困に関する人々の誤解を指摘したものです。

夫妻は3点を指摘しています。長い記事ですので、それぞれに区切って紹介していきます。

****世界の貧困に関する3つの誤解―ビル&メリンダ・ゲイツ夫妻****
ほぼどんな基準に照らしても、世界の人々の暮らしぶりはかつてないほど良くなっている。過去25年間で極度の貧困は半減し、乳幼児死亡率は大きく低下。長く外国の援助に依存してきた多くの国々は今や自立している。それでも、状況が悪化していると考えている人はかなり多いようだ。その理由の大部分は、あまりにも多くの人々が世界の貧困と発展に関する3つの誤った通念にとらわれているからである。そうしたものにだまされてはいけない。

誤った通念その1:貧しい国々はそうあり続ける運命にある
実際にはそんなことはない。所得や全般的な福祉の水準は、アフリカを含むほぼすべての地域で向上している。
たとえばメキシコシティーについて考えてみよう。

1987年に私たちが最初にそこを訪れたとき、大半の世帯には水道が引かれておらず、水瓶を持った人々が徒歩で水を汲みに行くのをよく見かけた。それはアフリカの田舎のような光景だった。マイクロソフトのメキシコシティー支社の責任者は、健康診断のために自分の子供たちをよく米国に帰国させた。スモッグによる健康被害がないか確かめるためだった。

今日のメキシコシティーはショッキングなほど当時と異なっている。高層ビルがそびえ、空気は澄み、新しい道路や現代的な橋が建設されている。

貧困もまだ一部に残っているが、「すごい、ほとんどの人々が中流層になっている。なんという奇跡だろうか」と思ってしまう。同じような変貌ぶりはナイロビ、ニューデリー、上海をはじめとする世界中の多くの都市でも見られる。

私たちが生まれてからのわずかな期間で、世界の貧困地図は完全に塗り変えられた。トルコやチリの1人当たり所得は、1960年の米国と同じ水準に達した。マレーシアやガボンもそれに近づいている。

1960年以来、中国の1人当たり実質所得は8倍に拡大している。インドは4倍、ブラジルは5倍近く、そして鉱物資源をうまく管理した小国ボツワナは30倍にもなった。50年前にはほとんど存在していなかった新たな中所得諸国には、世界の人口の半分以上が暮らしている。

しかも、これはアフリカにも当てはまる。アフリカの1人当たり所得は、1998年以降、3分の2ほど増加している。当時は1300ドル強だった所得が、現在では2200ドル近くになっている。過去5年間の経済成長率では、上位10カ国のうち7カ国がアフリカ諸国である。

私たちは次のように予測している。2035年には、世界に貧困国はほとんど残っていないだろう。確かに、戦争、政治情勢(北朝鮮など)、地理的条件(中央アフリカ地域の内陸諸国など)によって開発が進まない不幸な国もいくつかあるだろう。

それでも、南米、アジア、中米(ハイチは除くべきかもしれない)のすべての国々、アフリカの沿岸諸国のほぼすべてが中所得国になるだろう。70%以上の国々の1人当たり所得は、今日の中国を上回るはずだ。【1月22日 WSJ】
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確かに、世界各国の所得水準が年々向上しているのは事実であり、貧困や飢餓に関する報道から定着しがちなネガティブなイメージを払しょくし、“世界は変わる、前進する”というポジティブな考えに立つことが重要でしょう。

ただ、“2035年には、世界に貧困国はほとんど残っていないだろう”というのはどうでしょうか?
貧困国の定義にもよりますが、かなり楽観的な予測にも思えます。

問題のひとつは、“戦争、政治情勢(北朝鮮など)、地理的条件(中央アフリカ地域の内陸諸国など)によって開発が進まない不幸な国”の存在です。

昨日の中央アフリカた南スーダンを取り上げたブログでも書いたように、政治が混乱し、武力で政治的対立を解決しようという風潮が残存する限り、経済的な成長は期待できません。
残念なことは、そうした“不幸な国”が少なからず存在することです。

もうひとつの問題は、全体としての所得水準が向上しても、その過程で貧富の差が拡大する現象が往々にして見られ、マクロ的な数字が人々の生活実感を必ずしも反映していないことが多いことです。

安倍首相が基調演説を行った「ダボス会議」が開催されていますが、会議に向けてローマ法王は、貧困がなかなか解消されないことに関する政財界エリートの努力を促しています。怠慢への叱責と言ってもいいでしょう。

****ダボス会議のエリートへ「その力量を貧困層のために」ローマ法王****
ローマ・カトリック教会のフランシスコ法王は21日、世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)に出席する政財界エリートへ向けて、その起業家精神を、世界の強烈な貧困を緩和するために用いるべきだと呼び掛けた。

スイス・ダボスの開会式で読み上げられたメッセージの中で、フランシスコ法王は「イノベーティブな存在たる才能を示し、創意工夫と専門知識によって多くの人々の生活を向上させる能力を示してきた者はそのスキルを、今も極貧に暮らす人々のために生かすことでさらに貢献ができる」と述べた。

また大量の食料が無駄になっているにもかかわらず、世界にいまだ飢餓がはびこっているのは「容認できない」ことだとも述べた。

25日までの日程で開催されるダボス会議に先駆け、国際NGOのオックスファム(Oxfam)は、世界の経済格差は制御できる範囲を超えており、世界で最も裕福な85人の資産は、世界人口の半分の資産合計に匹敵すると指摘する報告書を発表している。

フランシスコ法王はこの報告書についても「私たちの時代の大多数の男女が、いまだ日常的に生活不安を体験しており、大抵は悲劇的な結果に至っている」と発言した。

今年のダボス会議には、世界中から40人の元首と閣僚や産業界のリーダーなど政財界の有力者の他、ノーベル賞受賞者やアーティスト、著名人ら2500人が出席する。【1月22日 AFP】
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「ビル&メリンダ・ゲイツ財団」は、まさに世界でも最も裕福な個人が、国家に期待せず、個人として世界の貧困に立ち向かっている活動です。

対外援助は大きな無駄である?】
夫妻が指摘している二つ目の“誤解”は、援助が現地の汚職などで無駄になっているという通念です。

****誤った通念その2:対外援助は大きな無駄である*****
実際は素晴らしい投資である。海外からの援助は人々の命を救うばかりか、長期にわたって継続する経済発展の下地も作る。

多くの人々は富裕国の予算に占める対外援助の割合を大きいと考えている。世論調査会社が米国民に予算のどれぐらいが援助に割かれているかと質問すると、「25%」が最も一般的な回答だという。ところが、実際には1%にも満たない(世界で最も気前の良い国、ノルウェーでさえ3%未満である)。米国政府は海外への医療支援予算の倍額以上を農業助成金に費やしている。防衛費にはその60倍以上を注ぎ込んでいる。

対外援助に関するよくある不満の1つに、その一部が汚職のせいで無駄になるという議論がある。もちろんそうだろう。ところが、われわれがよく耳にするひどい話――援助は独裁者が新しい宮殿を建てる資金の足しになるだけ――のほとんどは、人々の生活を改善するための援助ではなく、冷戦時代に同盟関係を築くために行われた援助に関するものだ。

今日、そうした問題はかなり小さくなっている。政府高官が出張費を水増し請求するといった小規模な腐敗は援助に課される非効率な税金なのだ。それを減らす努力はすべきだが、それを完全になくすことはできない。

すべての政府プログラム、さらに言えばすべての企業から無駄をなくせないのと同じである。仮に1人の命を救うのに、小規模な腐敗の税金が2%かかるとしよう。われわれはその税金を撤廃しようとすべきだが、撤廃できないからといって救命活動をあきらめるべきだろうか。

1ドルでも腐敗が見つかると、多くの人々が援助プログラムの停止を声高に求めてきた。だが、それは理にかなっていない。過去7人のイリノイ州知事のうち4人が汚職で有罪になったが、イリノイ州の学校や幹線道路の閉鎖を要求する人などいないではないか。

対外援助を受ける国々は外国の好意に依存し続けてしまうという不満を口にする人々もいる。
しかしこれは、今も自立できずに苦しんでいる最も困難な国々のみに当てはまる主張だ。

ブラジル、メキシコ、チリ、コスタリカ、ペルー、タイ、モーリシャス、ボツワナ、モロッコ、シンガポール、マレーシアなどはかつて巨額の援助を受けていたが、その後に急成長を遂げ、今ではほとんど援助を必要としていない。

対外援助は長期的な成長と強い相関関係がある医療、農業、インフラの改善も促進する。
1960年に生まれた赤ん坊が5歳の誕生日までに死ぬ確率は18%だった。今日ではその確率が5%未満になっている。2035年には1.6%になるだろう。対外援助が無駄だというのはとんでもない話である。【1月22日 WSJ】
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これも、かなり楽観的な見方ではありますが、程度問題、ケース・バイ・ケースの問題でもあります。

予算に占める援助割合に関するアメリカ国民の「25%」という回答は、アメリカ国民の国際社会に対する無知と無関心を示すものでしょう。
日本や欧州にあっては、そこまでひどくないのでは・・・とも思われます。

“小規模な腐敗は援助に課される非効率な税金なのだ。それを減らす努力はすべきだが、それを完全になくすことはできない”というのは、現実的な発想です。

多少の腐敗があるからと言って、援助による救命をあきらめるべきでない・・・・そのとおりです。

ただ、現実世界には“見過ごせない”ような腐敗の横行があるのも事実です。
アフガニスタンへの巨額の援助が一体どこへ消えているのか?
一向に改善しない国民生活の一方で、政治指導者などが巨額の蓄財をするという現実もあります。

南スーダンやハイチなど、“援助慣れ”して、一向に自立できない国もあります。

援助に群がるNGOにも怪しいものが多くあるようです。

ゲイツ夫妻とは比べ物にもならないわずかな収入から拠出される税金が、砂地に水を撒くような感じで消えていくことに関しては、援助国納税者には抵抗感があります。

多少の腐敗はつきもの、それでも援助をあきらめるべきでない・・・そのとおりですが、腐敗をより少なくする努力・工夫が今以上に求められます。

日本について言えば、日本のODA拠出額は、政府予算のわずか1%に過ぎず、1997年をピークに過去14年間、右肩下がりを続けています。
その額は、年間約1.3兆円(158億ドル)。国民総所得との比率では、主要先進国23カ国中、第21位にまで落ち込んでいるという現状があります。

また、主要先進国ではODA全体の約15%を「保健医療」分野に投資している一方、日本ではわずか2%しか投資していない・・・という援助内容の問題もあります。
【ツタグラ「日本のODAはこれでいいのか?!」http://www.tsutagra.go.jp/blog/oda/ より】

命を救うことは人口過剰につながる?】
夫妻が指摘している三つ目の“誤解”は、いわゆる“マルサスの悪魔”的な発想です。

****誤った通念その3:命を救うことは人口過剰につながる****
人々は少なくともトーマス・マルサスが『人口論』を著した1798年から、食糧供給が人口増加に追いつかなくなるという世界滅亡のシナリオを心配してきた。

こうした考え方は世界に多大な迷惑をもたらした。世界の人口規模に関する心配には、それを構成する人間に対する心配よりもはるかに大きなものになるという危険な傾向がある。

あとで飢えることがないように、子供たちを今死なしてしまえという考え方は冷酷なだけではない。ありがたいことに、そううまくはいかない。

これは直観に反することかもしれないが、世界で最も多くの人が死ぬ国は、人口が最も急速に増加する国の1つでもある。そうした国の女性たちは最も多くの子供を生む傾向があるからだ。

より多くの子供が生き残れば、両親は多くの子供を産もうとはしない。タイはその好例である。
同国の乳幼児死亡率が低下し始めたのは1960年ごろだった。政府が家族計画政策を強力に推進した後の1970年前後、出生率が低下し始めた。その後わずか20年の間に、タイ女性の1人当たりの出産率は6人から2人に低下した。

今日、タイの乳幼児死亡率は米国のそれに近い低さで、タイ女性1人当たりの出産率は1.6人となっている。死亡率の低下に続いて出生率の低下が起こるというこのパターンは、世界の大多数の国にも当てはまる。

命を救うことは人口過剰につながらない。むしろその逆である。持続可能な世界を実現するには、人々が基本的な健康、それなりの豊かさ、基本的平等、避妊具へのアクセスを享受する社会を作り上げるしかない。

より多くの人々、特に政治リーダーらがこうした誤った通念の背後にある思い違いについて認識する必要がある。この問題を個人として見ても、政府として見ても、国際的に健康や開発を促進させるための貢献が驚くべきリターンをもたらすのは事実である。極度の貧困が普通ではなく例外である世界を作るチャンスはわれわれ全員が手にしている。
(本稿は近く発表されるビル&メリンダ・ゲイツ財団の年次レターから抜粋した。ビル・ゲイツ氏はマイクロソフトの会長)【1月22日 WSJ】
******************

“あとで飢えることがないように、子供たちを今死なしてしまえ”・・・そこまで冷酷な議論を表立って見ることはありません。

ただ、内戦・飢餓などによる多大な犠牲者について、「そういう国は放置するといたずらに人口が増えるので、内戦・飢餓は一種の人口調整メカニズムではないか・・・」というような本音を、個人的に聞くことはあります。

乳児死亡率を下げれば出生率も下がるという指摘(政府による家族計画政策も必要でしょうが)は、結果的に人口爆発(この言葉自体が“マルサスの悪魔”的なニュアンスがありますが)を抑制できる・・・という指摘はまっとうな考えでしょう。

“タイ女性1人当たりの出産率は1.6人となっている”といったタイの事例は知りませんでした。
ちょっと驚きです。

以上のゲイツ夫妻の指摘は、かなり楽観的な感もありますが、おおむね妥当なものでもあり、そうしたポジティブな信を持って貧困問題に立ち向かう必要があるということでしょう。
ネガティブな発想で何もしないのでは、世界はいつまでたっても変わりませんから。
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混乱が続く中央アフリカと南スーダン

2014-01-22 22:31:15 | アフリカ

(中央アフリカの新たな暫定大統領に選出されたカトリーヌ・サンバパンザ氏 “flickr”より By Abayomi Azikiwe http://www.flickr.com/photos/53911892@N00/12064986894/in/photolist-jo9dgq)

中央アフリカ:女性暫定大統領誕生 「誰も排除しない、あらゆる国民の大統領」】
その行方が国際的にも懸念されているアフリカの内戦・混乱・・・中央アフリカと南スーダンの近況について。

イスラム教系武装勢力「セレカ」が引き起こした混乱により、中央アフリカでは、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)による1月3日発表では、総人口(約450万人)の5分の1が避難民となったとされ、また、首都バンギでは、人口の半数以上に相当する51万人が避難生活を余儀なくされている状況です。

こうした混乱のなかで、1月12日ブログ「中央アフリカ  暫定大統領、周辺国の圧力で辞任 混乱は未だ収まらず」(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20140112)でも扱ったように、イスラム武装勢力「セレカ」の指導者で、ボジゼ大統領を国外に追い出して暫定大統領の地位についたジョトディア氏が、周辺国の圧力もあって辞任しています。

また、12日には、対立するイスラム教系とキリスト教系の武装勢力の代表者らが停戦に合意しています。

しかし、いまだ多数派キリスト教徒住民と少数派イスラム教徒住民の衝突は続いており、ジェノサイドも危惧される危険な状況にあることが指摘されています。

****中央アフリカに「大量虐殺の恐れ」、国連が警告****
国連は16日、イスラム教徒とキリスト教徒の宗教間対立が深刻化している中央アフリカ情勢について、ジェノサイド(大量虐殺)に発展する恐れがあると警鐘を鳴らした。

同国では、反体制勢力の指導者から大統領に転じたミシェル・ジョトディア暫定大統領が辞任し、暫定議会に相当する国家移行評議会(CNT)が新大統領を20日に選出する準備に着手しているが、国内では暴力行為が治まらずにいる。

こうした中、中央アフリカを5日間にわたって訪問した国連人道問題調整事務所(OCHA)のジョン・ギング氏は16日、スイス・ジュネーブで記者会見し、中央アフリカ情勢には「ルワンダやボスニアなどで見られたあらゆる要素が備わっている。ジェノサイドの要素があることに疑いはない」と警告。残虐行為が日常化し、全国民に恐怖がまん延していると訴えた。

中央アフリカでは、昨年3月にイスラム教系の武装勢力連合「セレカ(Seleka)」がクーデターで政権を掌握した後、宗教間の衝突が激化し混乱が広がっている。米仏や中央アフリカ支援国際ミッション参加国の部隊が治安回復に努めているが、フランス軍が展開する北部の首都バンギでは緊張が高まっており、巡回中の仏軍兵士が市民に発砲したとの苦情も住民から出ている。

恐慌状態に陥ったイスラム系住民たちは、隣国チャドに脱出しようと北部の国境に殺到している。現地で取材するAFP記者も、避難民を乗せMISCAに参加するチャド軍に護衛された大型トラック数十台を目撃した。

ギング氏は、「この国(中央アフリカ)は政治的に崩壊している。公共サービスも、医療から教育、社会福祉まで何もかもが破綻状態だ」と指摘。現状では、長く共存してきたイスラム教系とキリスト教系の住民同士の衝突は宗教間紛争にまで至ってはいないが、「その可能性はある」と警告した。

国連によると、中央アフリカでは殺りくやレイプ、略奪行為が横行し、人口約460万人の約2割が国内避難民や難民となっている。【1月17日 AFP】
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キリスト教徒民兵の報復を恐れたイスラム教徒がカトリック教会に逃げ込む・・・というようなことも起きています。

****カトリック教会に逃げ込むイスラム教徒、中央アフリカ****
イスラム教徒とキリスト教徒の宗教間対立が深刻化している中央アフリカで、首都バンギの北方約100キロの都市ボアリにあるカトリック教会に女性と子どもを中心とする約700人のイスラム教徒が避難している。
避難民たちが二晩を過ごした教会の周りは約70人のフランス軍部隊が警護している。【1月20日 AFP】
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中央アフリカは、国家としてのまともな統治機構が独立以来存在していなかった“幽霊国家”とも言われますが、まずはジョトディア暫定大統領に代わる新大統領の選出が統治機構を確立していくうえでの第1歩となります。

****中央アフリカの暫定大統領に首都市長、同国初の女性大統領****
激しい戦闘が続いている中央アフリカの暫定議会は20日、首都バンギの女性市長カトリーヌ・サンバパンザ氏(59)を暫定大統領に選出した。同国で女性が大統領に就任するのはこれが初めて。

サンバパンザ氏は「闘士」と評されることもある実業家で、昨年から同市市長を務めていた。同日暫定議会の決選投票で大統領に選出された同氏は今後、情勢不安が慢性的に続く同国に平和を回復するという極めて困難な責務を担うことになる。

同国の元大統領の息子であるデジレ・コリンバ氏を75対53の得票数で破ったサンバパンザ氏は勝利演説の中で、イスラム教徒が大半を占めていた反政府武装勢力の連合体セレカの元戦闘員と、アンチバラカと呼ばれるキリスト教徒の民兵との衝突を終結させるよう呼び掛けた。

またサンバパンザ氏は自身を「誰も排除しない、あらゆる国民の大統領」と呼び、「人々の苦しみを終わらせ、全土で治安と国家権力を回復すること」を最優先事項に掲げた。【1月21日 AFP】
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混乱収束のために軍事介入している旧宗主国フランスの働きかけで、介入に腰が重いEUも500人規模の治安維持部隊を派遣することで合意しています。ただ兵員の確保も定かではなく、派兵もしばらく時間がかかりそうです。

****中央アフリカ:EUが派兵合意 来月までに500人****
欧州連合(EU)の外相会議は20日、無政府状態で大量の避難民が出ているアフリカ中部・中央アフリカ共和国に向け、治安維持部隊を派遣することで合意した。

500人程度で、来月末までに派遣を開始、首都周辺の治安確保にあたり、4〜6カ月駐留する見通し。外相会議は国連安保理に決議で派遣を認めるよう求めた。

危険度の高い任務になるため、英独伊などは地上軍の派遣を見送る方針を示している。スウェーデン、ポーランド、ベルギーなどが派遣を検討しているが、兵員の確保に困難が伴いそうだ。【1月21日 毎日】
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新大統領選出によって、ジェノサイドが防止されることを願います。

停戦合意が近いとも言われるなかで、政府軍が攻勢
一方、南スーダンでは、マシャール前副大統領率いる反政府軍とキール大統領の政府軍の戦闘が続いていますが、両者の出身部族間の対立の様相も呈しています。

両者の和平交渉は始まっていますが、双方とも交渉を有利に運ぶために、戦闘は激しさを増している状況です。
昨年12月15日に始まった一連の戦闘による避難者は40万人を超えたとみられています。

****住民の避難加速、1カ月で41万人余 内戦危機の南スーダン****
政権軍と反乱軍の交戦が続くアフリカ中部、南スーダン情勢で国連は15日、過去1カ月間の衝突で住民ら計約41万3000人が自宅などを捨てて避難したと報告した。避難者は過去1週間に激増したとしている。

両派の和平交渉は隣国エチオピアの首都アディスアベバで開かれたが、戦闘終結につながる成果は生まれていない。
国際医療組織「国境なき医師団」によると、南スーダンの上ナイル州などでの激戦で過去数日間、数百人が負傷、数千人が避難した。

国連によると、この戦闘で約7万8000人が近隣国へ避難。南スーダンの国内避難者は数十万規模に達している。女性や子どもが多い。約6万5000人が同国内の国連基地に保護を求めた。

国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)によると、隣国ウガンダのウエストナイル地方へ逃れたのは4万2000人以上。エチオピアには約1万8600人が退避した。ケニアには約6800人、推定1万人がスーダンの西コルドファン、南コルドファン両州に難を逃れた。

UNHCRは14日の時点で、南スーダンの中部ジョングレイ州や上ナイル州など同国の一部地域で戦闘が続いたと報告していた。

南スーダンの内戦の危機は、キール大統領とクーデターを主導したとされるマシャル前副大統領との確執が原因。昨年12月5日以降、両派間の戦闘が激化した。【1月16日 CNN】
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双方が“停戦に大筋合意”したとも報じられているなかで、ウガンダ軍の介入に支援された政府軍が最近になって攻勢に転じ、10日に油田が多い北部ユニティ州の州都ベンチウを奪還、18日にはジョングレイ州の州都ボルの奪還を宣言しています。

****南スーダン政府軍、次々拠点奪回=反乱軍は地方に潜伏―戦闘終結予断許さず****
内戦が続く南スーダンで、政府軍は反乱軍に奪われていた拠点都市を次々と奪回している。
20日には産油地帯もある北部の上ナイル州の州都マラカルを奪い返したと発表。これで反乱軍は掌握していた3州都を全て失った。
戦況は政府軍に有利に傾いているが、戦闘が終息に向かうかは予断を許さない。

近隣国で構成する「政府間開発機構(IGAD)」は1月に入り仲介を本格化させ、エチオピアの首都アディスアベバで和平交渉が始まった。

その一方で政府軍は攻勢を強め、10日には産油地帯を含む北部ユニティ州の州都ベンティウから反乱軍を駆逐した。
首都ジュバの北方200キロにあるジョングレイ州の州都ボルは、内戦の行方を決する要衝と位置付けられ、ウガンダ軍の支援を得た政府軍は猛攻を仕掛けた。

廃虚となったボルからは20日、戦乱の中で民兵が病院から患者を引きずり出して処刑し、食料を奪った様子も報じられた。病院の外の道路には遺体が放置されているという。

政府軍は19日、「ジュバとボルを結ぶ幹線道路は安全」と宣言した。しかし「ボルの解放は州全体の解放とは違う」と認めた。ジョングレイ州だけで日本の国土の3分の1に近い12万平方キロの広大な面積を持ち、地方に潜む反乱軍の掃討は容易ではない。【1月21日 時事】 
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南スーダンの独立後の道のりが平坦ではないことは当初から予想はされていましたが、最悪のシナリオに沿って現実は進行しています。

アフリカも内戦・武力衝突、貧困、飢餓・・・といったネガティブな側面だけでなく、過去5年間の経済成長率では、上位10カ国のうち7カ国がアフリカ諸国であるというように、経済的に躍進を遂げている側面もあります。

ただ、そうした経済成長は政治・社会の安定があって初めて可能になるものであり、中央アフリカや南スーダンにおける混乱収束・安定確立が1日も早く達成されることを望みます。

そのために国際社会も支援していく必要がありますが、政治的対立を武力で解決しようという風潮を、これらの国々の指導者・国民自身が捨てることが先ず必要とされます。
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