(煙が上がるミャンマー西部ラカイン州の国軍の西部軍管区司令部とみられる建物【12月21日 日テレNEWS】)
【中国 少数民族武装勢力に国軍との停戦を求める】
ミャンマー情勢については、かねてより国軍・少数民族武装勢力双方とつながりのある中国が、少数民族武装勢力に対し国軍との和平交渉に入るように介入を本格化し、少数民族武装勢力側からもこれに応じる旨の表明がなされている・・・という報道を、12月5日ブログ“中国 ミャンマーの少数民族側に国軍と停戦するように圧力 軍事政権支持を明確化”で取り上げました。
****中国がミャンマー情勢に本格介入か 少数民族“軍との和平交渉”に協力表明相次ぐ****
2021年のクーデター以降、内戦状態が続くミャンマーで、軍事政権の打倒を掲げ戦っていた少数民族武装勢力の一部が軍との和平交渉に応じる態度を相次いで表明しました。
ミャンマー北東部シャン州では去年10月以降、3つの少数民族武装勢力が共闘作戦を展開し、ミャンマー軍の拠点を次々と占拠するなど、攻勢を強めていました。
こうしたなか、共闘作戦に加わっていた武装勢力のMNDAA=ミャンマー民族民主同盟軍は3日、「ただちに戦闘を停止し、中国による和平の仲介に積極的に協力する」との声明を出しました。
先月、MNDAAの指導者が中国で拘束されたと、一部の独立系メディアなどで報道され、中国が停戦を迫っているとの観測が広がっていました。
また、MNDAAと共闘していたTNLA=タアン民族解放軍も先月25日、中国の仲介によるミャンマー軍との和平交渉に参加する意向を表明しています。
中国政府は投資や貿易といった利害関係を背景に、ミャンマー軍トップを中国に招待するなど、軍政支援を鮮明に打ち出していて、敵対勢力への圧力を本格化させているとみられます。
イギリスBBCなどによりますと、中国当局とミャンマー軍は、「共同警備会社」を設立する計画があるということで、中国から部隊が派遣されるような事態になれば、情勢のさらなる混乱が予想されます。【12月4日 TBS NEWS DIG】
ミャンマー北東部シャン州では去年10月以降、3つの少数民族武装勢力が共闘作戦を展開し、ミャンマー軍の拠点を次々と占拠するなど、攻勢を強めていました。
こうしたなか、共闘作戦に加わっていた武装勢力のMNDAA=ミャンマー民族民主同盟軍は3日、「ただちに戦闘を停止し、中国による和平の仲介に積極的に協力する」との声明を出しました。
先月、MNDAAの指導者が中国で拘束されたと、一部の独立系メディアなどで報道され、中国が停戦を迫っているとの観測が広がっていました。
また、MNDAAと共闘していたTNLA=タアン民族解放軍も先月25日、中国の仲介によるミャンマー軍との和平交渉に参加する意向を表明しています。
中国政府は投資や貿易といった利害関係を背景に、ミャンマー軍トップを中国に招待するなど、軍政支援を鮮明に打ち出していて、敵対勢力への圧力を本格化させているとみられます。
イギリスBBCなどによりますと、中国当局とミャンマー軍は、「共同警備会社」を設立する計画があるということで、中国から部隊が派遣されるような事態になれば、情勢のさらなる混乱が予想されます。【12月4日 TBS NEWS DIG】
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この動きが本格化すれば、これまでの少数民族武装勢力及び民主派武装組織と国軍との内戦状況が一変することにもなります。
ただ、少数民族武装勢力とは言っても、中国との関係に濃淡はあるでしょう。
上記記事で声明が紹介されているMNDAA=ミャンマー民族民主同盟軍はコーカン族で、コーカン族は中国から移住した漢族とされていますから、中国との関係は極めて密接です。
そのMNDAAの声明内容及び「指導者が中国で拘束された」云々については、以下のようにも。
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9月4日、MNDAAは(1)MNDAAは独立国家を追求するのではなく、自治区を維持する意向である(2)MNDAAはNUG(民主派武装組織)とのいかなる連携も否定し、マンダレー、タウンジーへの攻撃を行わない(3)中国政府の和平イニシアティブに従い、政治的手段で問題を解決するという内容の声明を発表した。件の声明は即日削除されたが、その後、19日に再発表した[。
11月中旬、10月末に雲南省昆明を訪れたMNDAAのリーダー・彭徳仁が中国当局に身柄を拘束され、ラーショーからの撤退を迫られていると報道される。
中国当局は病気治療のための滞在だとこの報道を否定。その後、MNDAAは停戦合意に向けた国軍との交渉に応じるとの声明を発表した。【ウィキペディア】
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よくわかりませんが、背後に中国の強い力を感じます。
【ラカイン州ではアラカン軍が戦闘継続 国軍の管区司令部を制圧】
一方、MNDAA、タアン民族解放軍(TNLA)とともに2023年10月下旬にシャン州内で国軍に対し一斉蜂起したアラカン軍(AA)は国軍との戦闘を継続しており、国軍の西部軍管区司令部を完全に制圧したことが報じられています。
ミャンマー国内に14ある軍の管区司令部が制圧されるのは、今年8月の北東軍管区司令部に続いて2か所目です。
そもそもアラカン軍(AA)は西部のラカイン州を本拠地とするラカイン族の勢力で、中国・雲南省と接するシャン州とは全く反対側に位置しています。どういう経緯でそのアラカン軍がMNDAA、TNLAともにシャン州で蜂起したのかは知りません。
いずれにしても、アラカン軍(AA)は本拠地ラカイン州で国軍との戦闘を続けており、ラカイン州に居住するロヒンギャがAAと国軍の間で再び困難な状況に追い込まれているという話は、これまでも取り上げてきました。
(多数派ビルマ族から差別されるラカイン族、そのラカイン族に差別されるイスラム教徒ロヒンギャという差別の重層構造があり、これを利用する国軍がロヒンギャを徴用してAAとの戦闘の「盾」に使っているとも)
****ミャンマー西部の少数民族武装勢力「軍の司令部を占拠」 軍司令部の陥落は国内2か所目****
2021年の軍事クーデター以降、内戦状態が続くミャンマーで、西部ラカイン州の少数民族武装勢力は20日、ミャンマー軍の司令部を占拠したと宣言しました。
ミャンマー西部ラカイン州に拠点を置く少数民族武装勢力の「アラカン軍」は20日、国の実権を握っているミャンマー軍のラカイン州にある西部の管区司令部を占拠したとの声明を出しました。
「軍の司令官らを拘束した」と主張していて、多数の軍の兵士らが投降する映像などを公開しています。
国内に14か所にあるミャンマー軍の管区司令部が抵抗勢力側に制圧されるのは、今年8月に陥落した北東部シャン州の司令部に続き2か所目です。
ただ、北東部では中国政府がミャンマー軍の後ろ盾として和平協議の仲介に動いていて、少数民族側に圧力をかけるなど介入を強めています。【12月22日 TBS NEWS DIG】
ミャンマー西部ラカイン州に拠点を置く少数民族武装勢力の「アラカン軍」は20日、国の実権を握っているミャンマー軍のラカイン州にある西部の管区司令部を占拠したとの声明を出しました。
「軍の司令官らを拘束した」と主張していて、多数の軍の兵士らが投降する映像などを公開しています。
国内に14か所にあるミャンマー軍の管区司令部が抵抗勢力側に制圧されるのは、今年8月に陥落した北東部シャン州の司令部に続き2か所目です。
ただ、北東部では中国政府がミャンマー軍の後ろ盾として和平協議の仲介に動いていて、少数民族側に圧力をかけるなど介入を強めています。【12月22日 TBS NEWS DIG】
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中国の介入に協力するとするMNDAA、タアン民族解放軍(TNLA)、国軍の司令部を陥落させたアラカン軍、異なる流れが同時進行しているように見えます。今後、どういう流れに向かうのか・・・よくわかりません。
【軍事政権 来年総選挙に向けて準備 関係国に状況説明】
一方、軍事政権は来年に総選挙実施を目指しています。スー・チー氏らを拘束したまま、民主派を排除した形だけの選挙で政権の正統化を目論んでいると思われますが、内戦の状況下での実施を疑問視する向きも。
中国・ロシアはこの総選挙を支持しています。
19日にはタイ・バンコクで軍事政権と周辺5カ国の外相級会合が開催され、軍事政権は総選挙実施に向けた準備状況などを説明したようです。
****ミャンマー軍政に対話促す=周辺5カ国と初会合****
クーデター後の内戦が続くミャンマー情勢を巡り、同国の軍事政権と周辺5カ国の外相級会合が19日、タイの首都バンコクで初めて開催された。周辺国からは抵抗勢力との対話を促す発言があり、軍政側は「政治的な対話の扉は開かれている」と応じた。
ミャンマーからはタンスエ副首相兼外相が出席した。中国は外務省の孫衛東次官を派遣し、タイ、ラオス、インド、バングラデシュの外相や高官も参加した。【12月19日 時事】
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****来年ミャンマーで実施予定の総選挙 タン・スエ氏、各国からの選挙監視団を受け入れる考え表明****
ミャンマー軍が外相に任命したタン・スエ氏は19日、中国やタイなど周辺国との会合で、来年ミャンマーで実施する予定の総選挙に各国からの選挙監視団を受け入れる考えを表明しました。(中略)
会議には、ミャンマー軍が外相に任命したタン・スエ氏や、タイ、中国、ラオスなど周辺5か国から外相や高官が出席し、国境警備や違法薬物対策などを協議しました。
タイ外務省によりますと、ミャンマーのタン・スエ氏は会議の中で、来年実施するとしている総選挙に向けた国勢調査や政党登録の状況など、準備の進ちょくについて説明したということです。
また、タン・スエ氏は総選挙の際、近隣諸国から選挙監視団を招待する意向も示したということです。
バンコクでは20日、ミャンマー情勢を話し合うASEAN=東南アジア諸国連合による外相会議も予定されています。【12月19日 日テレNEWS】
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【ASEAN “全ての利害関係者の参加”を求める】
20日のASEAN外相会議では、ASEANは全ての利害関係者の参加を望んでいることを軍政側に伝えたとのことです。
****ASEAN、ミャンマー選挙に全関係者の参加望む=タイ外相****
タイのマーリット外相は20日、ミャンマー軍事政権が来年計画している選挙について、東南アジア諸国連合(ASEAN)が全ての利害関係者の参加を望んでいることを軍政側に伝えたと明らかにした。
ASEAN関連会合後のインタビューで、「選挙が行われる場合、ASEANは全関係者が参加する包括的なプロセスを望む」と述べた。
タイは今週、 ミャンマー情勢に関する2つの地域会議を主催した。19日の会合でミャンマー外相は、軍政による政治ロードマップの概要と選挙実施に向けた進捗状況について説明した。
マーリット氏によると、関係各国はミャンマー外相に対し、解決策を見出す上で同国を支持するが、選挙は国内のさまざまな利害関係者を包含するものでなければならないと強調した。同氏はまた、ミャンマーに対して助言はするが干渉はしないと述べた。
中国外務省が20日明らかにしたところによると、孫衛東外務次官は19日にバンコクで行われた会議で、ミャンマーの和平・和解プロセスの前進に向けて、全ての関係者が支援すべきだと呼びかけた。また、ミャンマーの全当事者が対話と協議を通じて相違を解決すべきだと訴えた。【12月20日 ロイター】
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ASEANの言う“全ての利害関係者の参加”・・・・軍政側に配慮して名指しはされていませんが、スー・チー氏らの国民民主連盟(NLD)を含むものと思われます。(中国の言う“ミャンマーの全当事者”にNLDも含まれるのかどうかは定かではありませんが)
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2023年1月に国軍が政党の登録に関する新たな法律を施行し、同年3月28日を再登録の申請期限としていたが、これに反発したNLDは政党登録の手続きを拒否する方針を決定したほか、国軍主導の総選挙に参加しない意向を示したため、期限日の3月28日に連邦選挙管理委員会はNLDを含む反軍政の姿勢を取る40政党の解散(政党としての資格喪失)を発表したが、NLDは3月29日に発表した声明で、「国軍に正統性がないことは明らかだ。ミャンマー国民がいる限り党は存在する」として、政党としての資格を喪失した後も活動を継続する姿勢を示した。【ウィキペディア】
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ただ、軍事政権にとってスー・チー氏は犯罪者であり、NLDを選挙に参加させたら間違いなくNLDが圧勝します。そういうことを軍事政権が了承するとは思えません。
来年実施なら、残された時間はあまりありません。
形だけの選挙を限られた地域で行い、中国・ロシアがその結果を了承する・・・という形になるのか、時期を延期して軍事政権からの政権移譲も視野に入れて、より中身のある総選挙を実施するのか・・・
軍事政権外相のタンスエ氏は「解決のための扉は開かれている」と発言したそうですが、扉を開ける覚悟を決めるのは軍事政権の側でしょう。
内戦の戦局も絡んできますが、中国の介入による和平交渉の流れと、戦闘継続の流れが同時並行している状況で、どちらに流れが傾くのか・・・そこらも影響してきます。