孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

ウガンダ  「反LGBT法」などムセベニ大統領の超長期支配 難民対策では高い評価も

2024-11-20 23:32:40 | アフリカ

(ウガンダの難民【国連NHCR協会】)

【先進的な難民政策は国際社会から「ウガンダモデル」として評価される】
南スーダンやコンゴに隣接するアフリカ中部の内陸国ウガンダ・・・・周囲に紛争国があるため難民の流入が多く、受け入れている難民は10月末現在、172万人でアフリカ最多となっています。

出身国別では、北隣の南スーダン96万人▽西隣のコンゴ民主共和国55万人▽スーダン6万人――などと紛争が激化する周辺国から集まっています。

後述のようにウガンダに関する情報と言えばLGBTに対する厳しい政策や38年に及ぶムセベニ大統領の超長期支配みたいなもので、そうしたイメージからは非常に意外な感がありますが、難民に関しては移動の自由や就労の権利を認めるほか、居住・耕作用の土地を提供するなど先進的な政策ををとっているそうです。ただ、資金や要員の不足が課題となっているとも。【11月20日 毎日より】

****なぜ難民たちが集まる? 「アフリカの真珠」ウガンダはどんな国****
戦争、迫害、災害、貧困といった窮状にひんして、故郷を追われる人々は世界中で絶えません。アフリカ最大の難民受け入れ国でありながら、ウクライナや中東の紛争のはざまで光の当たらない国があります。ウガンダです。一体どのような国で、なぜ難民たちが集まってくるのでしょうか。

 Q ウガンダってどんな国なの?
 A アフリカ東部の内陸に位置し、面積は本州とほぼ同じ約24・1万平方キロ、人口は約5000万人です。赤道直下ですが、平均海抜は約1200メートルと高く、年間の全国平均気温は24度と快適です。英国のチャーチル元首相は植民地省高官時代にウガンダを訪問した際、豊かな自然を評して「アフリカの真珠」と呼びました。

 Q どんな歴史を持っているの?
 A 19世紀末に英国の保護領となり、1962年に独立しました。その後、クーデターが繰り返され、政情不安が続きました。ゲリラ闘争を率い86年に当時の政権を倒して大統領に就いたムセベニ氏が38年にわたり実権を握り続けています。

 Q アフリカ最大の難民受け入れ国らしいけど、どれぐらいの人が集まっているの?
 A 国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)によると、10月末時点で172万人に上ります。出身国別では、最多が北隣の南スーダンで96万人。次いで、西隣のコンゴ民主共和国55万人▽スーダン6万人――などとなっています。

 南スーダンでは2013年以降、政府軍と反体制勢力が内戦状態に陥り、数十万人が死亡したとされています。南スーダンからの大規模な難民の流入が受け入れ急増の背景にあります。

また、コンゴ民主共和国では産出される鉱物資源を巡り武装勢力による紛争が激化し、食糧不足や感染症など人道危機が深刻化しています。

 Q 難民はどんな生活を送っているの?
 A 大半は、政府が国内に設けた難民居住区と呼ばれる地域で暮らします。公式の認定数としては国内に13カ所あります。居住区は、難民が現地の人たち(ホストコミュニティー)と同じエリアで共生するのが特徴で、政府からは居住と耕作のための土地が提供されます。

原則的に自由な出入りが認められていない難民キャンプとは違い、移動の自由や就労の権利が認められています。居住区に設置された学校や医療施設を利用することもできます。先進的な難民政策は国際社会から「ウガンダモデル」として評価されています。

 Q 課題はないの?
 A 国際社会からの人道支援が減っていることが大きなネックになっています。難民政策を担当するウガンダ政府当局者によると、18年には海外から国連を通じて4億6000万ドルの人道支援が集まっていましたが、直近では1億8000万ドルにまで減少しています。

国際社会が関心を寄せるウクライナや中東での紛争の陰に隠れていることが背景にあるようです。また、大量の難民に比べて、受け入れ側の態勢が追いつかず、十分な支援が行き届きづらくなっていると指摘されています。

 Q 私たちにも何かできることはないかな。
 A ウガンダ首相府難民局のパトリック・オケロ局長は取材に「日本政府と指導者の継続的な支援と、難民に適切に対応するための多くの投資に対して敬意を表したい」と感謝を述べました。その上で「ウガンダのように多くの難民を受け入れている国々への支援を優先してほしい」と訴えています。
回答・郡悠介(社会部大阪グループ)【11月20日 毎日】
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“先進的な難民政策は国際社会から「ウガンダモデル」として評価されています”・・・始めて知りました。

多くの国で、移動や就労を認めない閉鎖的な難民キャンプとなっているのは、それなりの理由があってことです。

難民の出入りを自由にすれば、出身国に対する抵抗運動を行う勢力が国内で活動し、ひいては自国の政府に対する抵抗運動などとも連動しかねないといった、治安や政治問題があります。

また就労を認めると、地域住民の「仕事を難民に奪われる」「難民と就労を競争するため、賃金が低く抑えられる」といった不満を惹起しトラブルを起こすことも。

「ウガンダモデル」がそのあたりの問題をどのようにクリアしているのか知りたいところですが、今のところ情報がありません。

【「反LGBT法」で欧米と対立】
冒頭にも書いたようにウガンダと言えば、38年に及ぶムセベニ大統領の超長期支配です。
強権的支配というのはウガンダだけの話でもなく、むしろ欧米以外では一般的な政治形態かも。アフリカ国々はどこもそうした傾向があります。

そうした中でも近年注目されたのが「反LGBT法」

****ウガンダ、性的少数者の制限法 「重度の同性愛」最高で死刑も****
アフリカ東部ウガンダで、LGBTQ(性的少数者)の行動を大幅に制限する法律が成立した。大統領報道官の29日の発表をロイター通信が伝えた。

エイズウイルス(HIV)感染者の同性と関係を結ぶなどの「重度の同性愛」に対しては最高で死刑を科すなど厳しい内容。

議会が3月に可決した法案にあった、個人がLGBTQと自認すること自体を犯罪とする文言はなくなったが、多くは法案の内容がそのまま残った。同性愛の「促進」行為は禁錮20年と規定。LGBTQの支援団体の活動が取り締まりを受ける恐れがある。

ムセベニ大統領が29日までに法案に署名した。【2023年5月29日 共同】
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法律は実際に運用されています。23年8月には“同性と繰り返し性的関係を結ぶような「重度の同性愛」に当たる行為をしたとして、検察当局が20歳の男性を訴追した”【2023年8月29日 共同】といったニュースも

こうした「反LGBT法」に関して、LGBTの権利を擁護する欧米から強い批判があります。一方ウガンダも「欧米諸国がアフリカに同性愛を受け入れるよう強要している」と激しく反発しています。

****欧米、アフリカに同性愛受け入れ「強要」 ウガンダ****
米国が厳格な反同性愛法を理由にウガンダの政府当局者へのビザ発給を停止したのを受け、ウガンダ政府は6日、欧米諸国がアフリカに同性愛を受け入れるよう強要していると非難した。

米政府は4日、反同性愛法がウガンダの「民主化プロセスを損ない」、LGBTQ(性的少数者)コミュニティーを含む国民の人権を侵害しているとして、ウガンダの政府当局者へのビザ発給を停止した。

ウガンダのヘンリー・オリエム・オケロ外務副大臣は6日、「米国と欧州の一部の国々がアフリカ、特にウガンダに対して援助や融資と引き換えに、同性愛を受け入れるよう強要する間違った試みを行っている」とAFPに語った。

米国はウガンダで新たな同性愛法が成立した直後の6月、同国の政府高官に対するビザ発給制限の第1弾を開始。先月には、ウガンダについて、2024年1月からアフリカ成長機会法に基づく優遇措置の対象から除外すると発表した。

だが、オリエム氏は「議会と大統領の指示に従うまでで、援助がなくともわが国の開発計画は変わらない」とし、ウガンダは外国から援助を受けることなく独立したと主張。「渡航や貿易関係について条件を課すことなく、わが国の開発課題を尊重してくれる国際パートナーや国は他にもある」と述べた。

ウガンダで5月に成立した反同性愛法では、「加重同性愛」の刑罰として死刑が定められている。また、合意の上での同性愛行為にも終身刑が科される可能性がある。

米国のジョー・バイデン大統領や欧州連合、国連のアントニオ・グテレス事務総長は、同法を非難。廃止されない限り、外国からウガンダへの援助や投資が引き揚げられる可能性があると警告している。

だが保守色の濃いウガンダで同法は幅広い支持を得ており、議員らは欧米的な不道徳に対する防波堤として必要な措置だと主張している。 【2023年12月7日 AFP】
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欧米主導の世界銀行も“(2023年8月)8日、多くの国や国連から非難されているウガンダの「反LGBTQ(性的少数者)法」が世銀の価値観に反するとして、ウガンダ政府への新規融資を停止すると発表した。”【2023年8月9日 ロイター】とのこと。

LGBTの権利擁護が、“世銀の価値観”と言えるほど普遍的なものかどうかは疑問ですが。

私の世代がウガンダに関してネガティブあるいは暗いイメージを持ちがちなのは、ムセベニ大統領以前の時代のことではありますが、強烈なカリスマ性と、「人食い大統領」と呼ばれた凶暴さを併せもっていたウガンダの独裁者アミン元大統領(法学博士の肩書も持つ。身長193cmの巨漢で、東アフリカのボクシングヘビー級チャンピオンになったこともある)の影響もあるのかも。

“「虐殺した政敵の肉を食べた」などの噂を立てられた結果、「人食い大統領」というニックネームもつけられたが、実際のアミンは菜食主義者で、肉は鶏肉しか口にしたことがなかったといわれている”【ウィキペディア】

【ウガンダで暮らすスーダン難民】
話をウガンダで暮らす難民に戻すと、前述のように紛争が続くスーダンからの難民も多くいます。
その一人がネイマットさん(31)

****「強く生きられる気がする」難民172万人 受け入れ国ウガンダで今****
(戦争、迫害、災害、貧困などを理由に故郷を追われる人々は世界中で絶えない。アフリカ最大の難民受け入れ国でありながら、ウクライナや中東の紛争のはざまで光の当たらないウガンダから、難民のいまを報告する。

スーダン「忘れられた紛争」
赤茶けた大地が見渡す限り広がり、居住用の小さなテントが点在する。アフリカ東部の内陸国・ウガンダには、紛争などで周辺の国々を追われた人たちが大量に流入している。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)によると、10月末時点で172万人。アフリカ最大、世界有数の難民受け入れ国として知られる。

10月下旬、ウガンダ中西部のキリヤンドンゴ難民居住区で、スーダンから逃れてきたネイマットさん(31)が沈痛な表情を浮かべた。「あの出来事を思い出すだけでひどく胸が痛む」

ウガンダの北にあるスーダンでは2023年4月、政府軍と、政府系の準軍事組織「即応支援部隊(RSF)」による内戦が勃発。一般国民を巻き込み、UNHCRによると、人口約4600万人中、約1100万人が家を追われた。紛争地のデータ収集を行う米NPO「ACLED」は2万7000人以上が犠牲になったとしている。しかし、ウクライナや中東での戦争に埋もれ、「忘れられた紛争」と呼ばれる。

突然の襲撃 面前で夫殺され
平穏な一家の日常は突然の襲撃で断ち切られた。アフリカ北東部スーダンでは2023年4月に始まった軍事衝突が何ら罪のない一般国民に悲劇をもたらしている。

「親戚と連絡さえ取れず、誰も頼ることができない」。祖国スーダンを逃れ、ウガンダに身を寄せるネイマットさん(31)は嘆く。

10年ごろ、幼なじみでいとこのアダムさんと結婚。誠実で優しく、信心深い性格を愛し、けんかをしたこともなかった。2男2女に恵まれ、夫が営む食料品の小売店は経営が上向き、首都ハルツーム近郊で充実した日々を送っていた。

スーダンでは23年4月15日、政府系の準軍事組織「即応支援部隊(RSF)」が反乱を起こした。RSFは00年代に地方の反政府勢力を攻撃するために作られた民兵組織に由来する。要員や装備を強化して政府軍に準じる役割を任されていたが、近年、政府軍への編入を巡って権力争いが激化していた。

戦闘開始から間もなく、家族での夕食後に突然外から男性の怒声と大勢の足音が聞こえてきた。「アダム、これがお前の最後の日だ」。銃を携えた覆面姿の男たち約20人が敷地の塀を乗り越え押し入ってきた。

アダムさんは両脚を銃で撃ち抜かれ、ネイマットさんは銃で腹部などを激しく殴られた。「なぜそんなことをするんだ」。アダムさんはそう叫んだ瞬間、家族の面前でナイフで首を切られ、大量に出血して絶命した。「彼らには慈悲がなく、神さえ恐れない。人間ではない」と怒りを込める。

「家にある全財産を渡せ」。脅されたネイマットさんは家にある金銭や販売用の商品、身につけていた結婚祝いのネックレスなどをかき集めて渡した。「これで何とか解放される」

しかし、蛮行は終わらず、鎖で手脚を縛られて全裸で寝室に監禁された。飲食物は与えられず、10人を超える男たちに連日暴行を受けた。数日後、意識を失い、気付いた時には病院のベッドの上だった。「ショックで全身の感覚が失われ、声すら出ず、自分が自分でないようだった」と嘆く。

ネイマットさんが後に長男ファリスさん(12)から聞いた話によると、自宅は約20日間占拠された後、男たちが気絶したネイマットさんと、監禁されていた子どもたち、そしてアダムさんの遺体を車で遠く離れた路上に運び、放置したという。ネイマットさんは残虐な手口から男たちがRSF以外にないと考えている。

次男フォウジさん(10)は父親が面前で殺されたショックで家の裏口から飛び出し、今も行方が分からない。ネイマットさんは「あの子のことを考えない日はなく、胸が張り裂けそう。でも今の私にはどうすることもできない」と涙を浮かべる。

絶望の淵で描く夢
安全のため2〜12歳の子ども3人を連れて隣国・南スーダンに逃れた。避難生活を送る中で、「ウガンダなら難民でも安心して暮らせる」といううわさが耳に入った。貨物バスの隙間(すきま)に少額の代金で乗せてもらうなどして、24年7月、ウガンダ中西部のキリヤンドンゴ難民居住区にたどり着いた。

居住区は難民がウガンダの人たち(ホストコミュニティー)と同じ地域で共生できるよう政府が国内各地に設置しており、居住・耕作用の土地が提供される。キリヤンドンゴは地元民約73万人と難民約13万人が暮らす。

「やっと人生をやり直せる」。しかし、翌8月、子どもたちと就寝中、何者かに住まいのテントを切り裂かれた。身の危険を感じて今は隣人のテントの一角で寝泊まりをさせてもらっているが、肩身は狭い。

スーダンの自宅での襲撃の際、銃で殴打された後遺症か、腹部は大きく膨れ上がっている。少し重い物を持つと激痛が走り、水をくんで運ぶこともできない。居住区の医療施設には検査機器がなく、設備の整った私設病院に行こうにも交通費や治療費が払えない。

そんな絶望の淵にあっても、一つの夢がある。少しずつお金をためて食料品の売店を開くことだ。生計を立てる以外に大切な理由があるという。「食料品店は夫がスーダンで営んでいた。夫の思いを継ぐことで、残された子どもたちと、夫を思い出しながら強く生きていける気がするから」【11月20日 毎日】
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【進まない国際社会の停戦に向けての取組】
スーダンでの準軍事組織「即応支援部隊(RSF)」と政府軍の戦闘は今も続いています。国際社会の停戦に向けての取組もままならないようです。

****ロシアが拒否権行使、スーダン内戦の停戦決議案を否決 国連安保理*****
国連安全保障理事会で18日、スーダン内戦における民間人の保護と敵対行為の停止を呼びかける決議案の採決があり、ロシアの拒否権行使で否決された。ロシアは内戦当事者双方と関係を持つ。全15理事国のうち米中を含む14カ国は決議案に賛成していた。

北アフリカのスーダンでは、2023年春から国軍と準軍事組織「即応支援部隊(RSF)」の内戦が続く。国連によると、人口の3割近くにあたる1400万人超が国内外に避難した。全土で人道危機が深刻化し、性暴力などの被害も数多く報告されている。

RSFは、露政府傘下の民間軍事会社ワグネルの支援を受けてきたとされる。露政府は同時に、紅海での軍事拠点確保などを目的として、武器支援を通じてスーダン国軍への影響力も強めている。

今回の決議案は、双方に敵対行為の停止や人道支援の実施へ向けた対話を呼びかける内容で、英国とシエラレオネが提案した。

否決を受けて、議長を務めたラミー英外相は「グローバルサウス(新興・途上国)のパートナーであるかのように振る舞うプーチン(露大統領)は恥を知れ」と非難し、「どれだけのスーダン人が殺され、女性がレイプされ、子どもが飢えなければならないのか」と言葉を強めた。

ロシアのポリャンスキー国連次席大使は会合で「個々の理事国の意見を安保理の決定を通じて押しつけるべきではない」と拒否権行使を正当化した。ロイター通信によると、スーダン外務省はロシアの対応を歓迎する声明を発表した。【11月19日 毎日】
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“スーダン外務省はロシアの対応を歓迎する声明を発表した”・・・このあたりの事情は良く知りません。国際社会による停戦の押しつけには反対するということでしょうか。
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南アフリカ  失業や犯罪の原因として暴力の対象となる近隣諸国からの移民

2024-11-04 23:15:32 | アフリカ

(2017年2月24日、南アフリカのプレトリアで、さまざまな地域の南アフリカ人が不法移民に対して抗議活動を行ったフォーリン・マーチで、デモ参加者と警察が衝突。警察は状況を鎮圧するためにゴム弾とスタン手榴弾を発砲した。【2017年3月20日 HUFFPOST】 

写真は不法移民抗議者と警官の衝突場面ですが、2017年という日時からわかるように、不法移民へ抗議・・・ときに嫌悪・・・ときに暴力は今に始まった話ではありません。)

【違法採掘移民への「兵糧攻め」】
つい先ほど目にしたニュース。

****金やダイヤモンドなど違法採掘する「ザマザマ」、南ア警察が「兵糧攻め」で565人拘束****
南アフリカの警察は3日、金鉱山などの廃坑を乗っ取って違法採掘する移民「ザマザマ」の取り締まりを行い、565人を拘束したと発表した。廃坑の出入り口を封鎖して水や食料の供給を妨げ、脱水症状や飢餓で地上に出てきたところを拘束したという。
 
警察は北東部オークニーの廃坑で数日間かけて取り締まりを行った。坑道に1000人近くがこもっているとみられ、地下生活を1年以上続けている人もいるという。昨年12月以降のザマザマ対策では、1万3600人以上が拘束され、3200万ランド(約2億7700万円)相当の未加工ダイヤモンドを押収した。

南アでは国内総生産(GDP)の2割超を占めていた鉱業が1980年代以降に衰退し、ザマザマが廃坑で違法に採掘するようになった。隣国モザンビークやジンバブエからの不法移民が多く、危険な労働環境で極貧の生活を強いられている。

ザマザマとはズールー語で「幸運への挑戦者」を意味する。治安悪化の要因とされ、今年5月の総選挙ではザマザマ対策が争点となった。

採掘された金の多くは、国際犯罪組織を通じて中東ドバイなどに送られているという。【11月4日 読売】
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違法採掘の問題はさておき、「兵糧攻め」と言えば多少聞こえはいいですが、“廃坑の出入り口を封鎖して水や食料の供給を妨げ、脱水症状や飢餓で地上に出てきたところを拘束”という場合によっては命の危険もある手段です。

こうした方法が許されるのは、一般的に南アフリカの治安は世界的にも極めて悪く、生ぬるいことはやっていられないということもありますが、特に対象がモザンビークやジンバブエからの不法移民が多いとなると、容赦なくなるのかも・・・・想像ですが。

【貧困に苦しむ黒人若者】
南アフリカでは、10月28日ブログ“南アフリカ  総選挙で想定以上に大敗した与党ANCは白人政党と統一政府  根深い人種間の分断も”でも取り上げたように、人種問題が当然ありますが、人種問題は底辺で暮らす黒人の生活が極めて苦しいという問題でもあります。

****「朝起きて盗んでの繰り返し」抜け出せない貧しさに若者が吐き出す怒り 南アフリカ総選挙 政治不信強まる“ボーン・フリー世代”が鍵****
シリーズ「現場から、」です。BRICS=新興5か国の一角として世界から注目される南アフリカで、きょう総選挙が行われます。今回、結果を左右するとされているのが、その多くが格差に苦しめられている若い世代です。

アフリカ有数の経済大国、南アフリカ。ところが、今も国民の6割が貧困ライン以下で暮らしています。

記者  「駅なんですが、数年前まで電車が運行していたんですけれども、レールや電線が盗まれる被害が相次ぎ、今は電車が運行できなくなっています」
新型コロナ以降、貧しさに追い打ちをかけられた市民による略奪が横行しました。

さらに、街を歩くと…
「(Q.何しているの?)食べ物を買うために、お金を稼ごうと思って」
まさに今、建物から鉄を剝がし、盗んできたという集団がいました。

「朝起きてはここに来て、盗んでの繰り返しです。仕事がないから」 「働いたことがないです。(Q.仕事を探そうとはした?)はい。でも見つからなかった」 「(Q.どうやって生計を立てている?)盗みです」

南アフリカの失業率は30%あまり。全員働き盛りの20代にもかかわらず、仕事がなく犯罪を重ねていると自白します。

南アフリカでは30年前、白人が黒人を差別し統治した「アパルトヘイト=人種隔離政策」が撤廃され、マンデラ大統領率いる初の黒人政権が誕生しました。

以来、与党ANCは国民の絶対的な支持のもと、政権を維持してきました。ところが、30年経った今も人口の1割が富の7割を独占するなど格差は解消されないまま。

国民の支持は失われ、今回の選挙でANCは初めて過半数割れする見通しが強まっています。

特にアパルトヘイト撤廃後に生まれた若い世代は、政治的に自由な「ボーン・フリー世代」と呼ばれ人口の半分にのぼりますが、マンデラ氏やANCに恩義を感じたことがなく、政治不信を強めています。

こうした世代から支持を集めるのが、黒人によるポピュリズム政党「経済的解放の闘士」。

経済的解放の闘士 ンドロジ議員 「EFFは抑圧に耐えてきた人たちの味方です」
白人の土地の強制収用など過激な公約を掲げ、世論調査では支持率は最大野党「民主同盟」に続きます。

今回、初めて投票するという若者に話を聞くと…

初めて投票する人 「多くの人が仕事に就けず、寝る場所や食べるものすらない状況です。そんなのはもう終わるべきなんです。(Q.ANCには投票しない?)投票しないです」 「絶対にありえません」

希望の選挙から30年。若者の選択が注目されます。【5月29日 TBS NEWS DIG】
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【失業・犯罪の原因として暴力の対象となる近隣国からの移民】
南アフリカに限った話ではありませんが、こういう“寝る場所や食べるものすらない”という苦境は移民への攻撃になりがちです。「あいつらがいるせいだ」と。

南アでは、人種問題で苦しむ一方で、同じアフリカの外国人に対する嫌悪が非常に強い国です。

*****外国人嫌悪で南アのミスコン辞退、ナイジェリアで再挑戦の大学生****
南アフリカで激しい外国人嫌悪と中傷によってミスコンテストの出場辞退を余儀なくされた女性が今週、ミス・ユニバースのナイジェリア代表に選ばれるかもしれない。

大学で法学を学ぶチディマ・アデッチーナさんは、南アフリカの最大都市ヨハネスブルク郊外のソウェトで、ナイジェリア人の父のもとに生まれた。

だが、アデッチーナさんがミスコンテストに出場すると、インターネットを中心に反外国人感情が露呈。閣僚さえもが騒動に加わり、アデッチーナさんの母親が素性を偽った可能性があるとする政府調査の結果まで発表された。アデッチーナさんは「家族の安全のため」に辞退することになった。

そうした中、ミス・ユニバースのナイジェリア代表選考会の主催者が救いの手を差し伸べた。
ミス・ユニバース・ナイジェリア創設者のガイ・マレーブルース氏はAFPに対し、「世界は人種差別に満ちあふれている」「私たちは互いに争うべきではない。私はアフリカ、黒い大陸の団結を望んでいる」と語った。(後略)【8月28日 AFP】
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ミスコンテストの出場辞退ならまだいいですが、もっとむき出しの暴力も。

****南アフリカ:襲撃に怯えるジンバブエ移民ら****
4月上旬、南アフリカのヨハネスブルグ北部、ディープスルートで自警団による移民襲撃が繰り返され、ジンバブエ人1人が死亡した。当局は、自警団の暴力から移民を保護する対策を強化しなければならない。

数人の移民がアムネスティに語ったところでは、今、多発する犯罪や増加する失業が移民のせいにされており、移民を敵視する自警団にいつ襲われるかもしれない恐怖の中で生活しているという。

自警団は、「移民の排除は地域社会から犯罪をなくすため」と主張する。当局によれば、3つの自警団によって少なくとも7人が殺された。

シリル・ラマポーザ南アフリカ大統領は、移民、特にジンバブエ人が、自警団の襲撃対象になっているという認識を示している。実際、自警団による移民襲撃は、ディープスルートだけでなく、南アフリカ全体に広がりつつある。

ここ数カ月、ヨハネスブルグのソウェトやヒルブロウでも移民を狙った極めて組織的な襲撃事件が起こっている。

襲撃が続いていることは、警察当局の無策と、襲撃に対する政府内の問題意識の欠如を浮き彫りにしている。いずれの事件も、未然に防止することはできたはずだ。

殺害
ヨハネスブルグで7人が殺害された複数の襲撃がきっかけに、反移民の自警団に対する抗議が始まった。

社会不安が広がる最中、ジンバブエの男性が、自警団から要求された身分証明書を見せることができなかったため、焼き殺された。この殺害をめぐり、犯人が逮捕されたかは明らかになっていない。

その後、ラマポーザ大統領は、相次ぐ襲撃事件の対応に警察力を増強すると約束し、また、外国籍の人たちへの暴力や脅しをやめるよう市民に呼びかけた。

「もはや安心して暮らせない」
ジンバブエやモザンビークから来た人たちは、アムネスティに「大変な恐怖の中で暮らしている」と話す。警察や自警団に、理由や権限もなく身分証明書の提示を要求され、日常的に身の危険を感じているという。(中略)

襲撃の被害者を含む移民の人たちは、昨年末に特別在留許可の期限が切れた後、大統領に「身の安全を保障し、ちゃんとした身分証明書を出してほしい」と訴えてきた。

またモザンビークからの移民は、「自警団に犯罪者扱いされるのが辛い。家族のために働いているだけ。祖国を出たのは、国内の状況が厳しかったから」と話す。

移民への襲撃が始まったのは2008年だが、その年だけで60人以上の移民が犠牲になった。以来、移民襲撃は毎年発生してきた。アムネスティは、南アフリカ政府に対し移民への暴力追放に向けた政策を立て、加害者が罪を問われない状況に終止符を打つことを繰り返し求めてきた。

今回、ラマポーザ大統領が、昨今の襲撃殺害事件を強く非難したことは評価したい。今こそ大統領は、自警団の暴力から移民を保護する具体的な対策を実行し、この憎むべき犯罪を起こした者が必ず法の裁きを受けるようにしなければならない。

背景情報
ジンバブエからの移民は、特別在留許可を発給された上で南アフリカに長年暮らし、働いてきた。だが、反移民感情の圧力に屈した政府は昨年末、在留許可の更新を突然取りやめたため、移民は不法滞在の状況に陥った。

移民排除で組織化する自警団は、#PutSouthAfricaFirst(南アフリカ人第一)などのハッシュタグを使い、ジンバブエや他の国から来た人たちで昨年末に特別在留許可の期限が切れた人たちを標的に襲撃してきた。

その後、政府は方針を転換し、ビザ申請により在留資格を取得できるようにするため、今年末までの在留を認めた。とはいえ、正規の身分がないことに変わりなく、移民は襲撃を受けやすくなっている。

今年2月、ヨハネスブルグの南の町ソウェトと、ビジネスの中心地ヒルブローでも襲撃事件があったが、警察はその場にいたにもかかわらず、取るべき対応を取らなかった。【2022年4月22日 アムネスティ国際ニュース】
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外国人襲撃の加害者は、刃物や棒など身の回りの品を凶器に集団で暴力を行使するようです。一方、標的となるのはモザンビーク、マラウイ、ジンバブエなど近隣国出身の人々である場合が多く、更に西アフリカからやってきたナイジェリア人も襲撃対象にされることが増えています。

世界銀行の2018年の統計によると、南アフリカの移民数は現在約404万人と推定され、総人口約5800万人の7%近くに達しています。国別ではモザンビーク約68万人、ジンバブエ約36万人、レソト約31万人など近隣国出身者が多数を占めており、その多くが鉱山、プランテーション農場、飲食店、建設現場で働いており、富裕層家庭の庭師やメイドとして働いている人も多くいます。

【自らの失政の責任を移民になすりつける政府・政治家】
移民など外国人への暴力は単に自警団や貧困層によるものではなく、「外国人が仕事を奪っている」などと、そうした外国人嫌悪を煽っている政治家の責任もあります。政府・政治家が自分たちの失政を外国人のせいにしている側面も。

****南アフリカ:外国人嫌悪を助長する政府****
南アフリカではこの数週間、移民、難民、庇護希望者への暴力が多発し、外国人が経営する店舗や事務所が略奪や放火される事態が続いている。

特にヨハネスブルグとプレトリアの2都市では、ナイジェリア人をはじめとする外国籍の人たちが経営する複数の事業所が狙われ、在庫や備品類など数百万ドル(数億円)相当が灰になった。

この1週間では、ヨハネスブルグなど各都市で地元住民と移民らの衝突で、確認されただけでも5人が死亡した。
当局は、こうした事態を予測できなかったわけではない。

移民、難民、庇護希望者は、何年にもわたり「外国人」として敵視されてきた。その背景には、恥知らずな政治家たちが、「外国人が仕事を奪っている」などの悪質な強弁を繰り返し、社会問題を取り上げてはその原因を移民らに転嫁し、移民らを格好のスケープゴートに仕立て上げてきたことがある。

2016年、ヨハネスブルグ市長は、「外国人が町を乗っ取り、犯罪を増やしている」と移民らを犯罪者呼ばわりしたし、昨年には、内務大臣が、医療費の負担増の矛先を移民らに向けた。

2008年、市民と移民らの衝突で、60人余りが亡くなった。移民らに対する大規模な排斥の始まりだった。政府がこの時、憎悪問題の根絶に向けて、加害者を処罰するなど適切な対応を取っていれば、事態は変わっていたはずである。

今日の事態は、移民、難民、庇護希望者に対する犯罪に手を打ってこなかった結果である。犯罪を放置してきたことで、移民ら弱者が、ますます無防備な状況に置かれている。

さらに、政治家らが、犯罪の増加、社会保障費の負担増、違法ビジネスの横行などの原因を移民らに転嫁したことで、外国人嫌悪は深まり、衝突が激化した。

事態の収束に向けて、政治家や関係当局は、政治的理由で問題の矛先を移民らに向け、彼らの排撃に油を注ぐのはやめ、人権と法の支配が根付く国家を目指すべきである。

また、難民、庇護希望者、移民らの安全を保障する政策を実施し、襲撃問題に終止符を打たなければならない。そのためにはまず、過去の憎悪犯罪の容疑者を処罰し、再犯への道を断つことである。【2019年9月11日 アムネスティ国際ニュース】
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南アフリカ  総選挙で想定以上に大敗した与党ANCは白人政党と統一政府  根深い人種間の分断も

2024-10-28 22:42:15 | アフリカ

(アパルトヘイト(人種隔離)の歴史を抱える南アで人種間融和の象徴と目されていたコリシ選手(右)とレイチェルさん=2020年2月 【10月28日 共同】)

【人種間対立が根強い南アで人々の希望を集めてきた夫婦が離婚】
“ゴシップネタ”ではありますが、南アフリカにおける根深い人種問題も絡んで“ゴシップ”で終わらないところもある話題が下記。

****南アフリカ黒人主将、離婚に衝撃 ラグビー強豪、人種融和の象徴****
ラグビーの強豪・南アフリカ代表で主将を務める黒人のシヤ・コリシ選手(33)が28日までに、白人の妻との離婚を発表し、同国に衝撃が広がっている。2人はアパルトヘイト(人種隔離)の歴史を抱える南アで人種間融和の象徴と目されていたためだ。

英BBC放送などによると、2人は2016年に結婚した。コリシ選手は長年白人が主体だった代表チームで黒人として初の主将となったトッププレーヤー。南アが19年のワールドカップ(W杯)日本大会で優勝した時も主将だった。

妻のレイチェルさん(34)は女性の活躍や人権問題に取り組む活動家で、2人の間には子どもと養子計4人がいる。

2人は人種隔離撤廃を成し遂げた故マンデラ元大統領が夢見た多人種共存の「虹の国」を体現する存在として、民主化から30年たっても人種間対立が根強い南アで人々の希望を集めてきた。

22日、SNSに連名で「熟考を重ね、結婚生活に終止符を打つことを決めた」と投稿。悲嘆に暮れる一部の国民が離婚阻止の署名活動を訴える事態となった。【10月28日 共同】
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離婚阻止の署名活動・・・・それも無理な話ですが、それだけ“民主化から30年たっても人種間対立が根強い南アで人々の希望を集めてきた”ということでしょう。

【総選挙で想定以上に大敗した黒人主導の政治をリードしてきた与党ANCと白人主体のDAが国民統一政府(GNU)を樹立】
上記は黒人と白人の夫婦ですが、政治で世界でも従前は想像できなかた連立も生まれています。

昨日の日本の総選挙では、選挙前から自民党はある程度の負けは想定されていましたが、その想定を越えて、第1党は維持したものの、自公の与党で過半数を大きく下回る“大敗”となりました。

同様に、ある程度の負けは予想されていたものの、想定以上に負け、過半数を大きく下回ったのが、5月29日に行われた南アフリカ総選挙におけるアフリカ民族会議(ANC)でした。

与党アフリカ民族会議(ANC)は、かつてネルソン・マンデラ氏が率いた名門政党で、アパルトヘイトを終わらせた南アフリカの政治を長年牽引してきました。白人支配を終わらせ、黒人主導の政治を実践してきた政党でもあります。

しかし、長年の“政権与党”の座が腐敗を蔓延させ、貧困・治安は改善されず、ジリジリと国民の信頼を失い、5月末の過半数割れという結果に至っています。

過半数を大きく割ったANCにとっては、5月末の総選挙で台頭した同じく黒人層を基盤とする急進的ポピュリズム政党と組むのか、あるいは、穏健な経済政策をとるものの支持基盤が全く異なる白人政党と組むのか・・・という二つの選択肢がありましたが、ラマポーザ大統領は白人主体で親欧米の野党民主同盟(DA)を含む全10党で構成される国民統一政府(GNU、Government of National Unity)を樹立しました。

****国民統一政府(GNU)への期待と不安****
南アフリカ共和国新政権の展望(1)

南アフリカ共和国では、5月29日に、アパルトヘイト(人種隔離政策)終了後、初の全人種参加による民主的選挙が1994年に行われて以来、7回目となる総選挙(国民議会・州議会選挙)が行われた。

これまで長きにわたって単独政権を担ってきたアフリカ民族会議(ANC)が初めて過半数を割り込み、しかも予想以上に低い得票率にとどまったことで、新政権がどのように樹立されるのか内外の注目を集めた。

このような中、シリル・ラマポーザ大統領は国民統一政府(GNU、Government of National Unity)の樹立を宣言、ANCを含めた全10政党(注)からなる新内閣を発足させた。(中略)

ANCの大敗とGNUの成立
5月29日の総選挙をめぐっては、ANCの過半数割れが予想されたが、得票率は45~50%弱という小幅な負けとの見方が多かった。

しかしふたを開けてみると、ANCの得票率は40.2%にとどまり、最大得票政党は維持したものの予想以上の大敗であった。

前回2019年総選挙で獲得した57.5%からも大きく支持を減らし、国民議会議席数では230議席から71議席を失い、159議席となった。

その他、民主同盟(DA)が得票率21.8%で2位、民族の槍(やり)(M.K.)が14.6%で3位、経済的解放の闘士(EFF)が9.5%で4位、などの順であった。

注目を集めたのは一気に第3政党に躍り出たM.K.で、ジェイコブ・ズマ元大統領が率いる左翼ポピュリスト的とされる政党だ。ズマ氏自身の支持基盤であるクワズールナタール州、ズールー族が支持層として重なり、同州での得票率は過半数に迫る45.9%となった。

ANCの負けが小幅だった場合、ANCは過半数を維持するために、自政党と政策が近く、しかしキャスティングボートを握られないで済む少数政党と連立を組むことが予想された。

しかしこの選挙結果を受け、過半数維持に向けては得票率約10%分を埋めなくてはならなくなり、少数政党の寄せ集めでは困難な状況となる。

ここに至り、ANCがポピュリスト色の強いM.K.やEFFと組み、南ア新政権が市場からの信認を失うのか、それとも経済政策を重視し、主として白人やカラード(混血)が支持母体であるDAと、歴史的な禍根を乗り越えてパートナーシップを組むことができるのかが注目された。

識者や調査会社専門家などの間でも多様な見方が示されたが、ANCという政党の成り立ちや南ア民主化の歴史的経緯に鑑みると、(白人主体の)DAと組むことはハードルが高いとの見方が強かった。

こうした中で、ラマポーザ大統領は6月6日、GNUの発足を目指すと発表、一部政党と議論を開始していることを明らかにした。

個別の政党と政策協定を結ぶ形での連立政権よりもやや緩やかに、GNUの意図表明・原則を確認することを前提に、幅広く政権参加政党を募ることとしたのだ。

どの政党にもGNUへの門戸は閉ざさないとしたものの、ここでも各政党が掲げた公約や主張の違い、これまでの経緯などから、ANCが組むことができる政党は限られるとの向きが多かった。

そうした中の6月14日、ANCとDAがGNU樹立に向けて合意したとの電撃的発表を行う。これにより、同日開幕する総選挙後の第1回国民議会でラマポーザ氏が大統領に選出されることが事実上固まり、続投が決まった。GNUはANC、DAを含む全10党で構成される。(後略)【10月24日 JETRO】
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黒人主体の政治を牽引してきたANCと白人主体のDAが組むことも画期的でですが、問題はその政権がうまく機能するのかというところ。

ANCとDAを含む国民統一政府(GNU)の発足後の評価についてはほとんど情報を持っていませんが、やや相反するような下記の報道も。

****南アの「挙国一致」政府に広がる楽観論 連立内に火種も****
南アフリカのラマポーザ大統領は9月に国連総会で演説し、先ごろ発足した「挙国一致政府(GNU)」を南アの「第2の奇跡」と位置付け、異例の連立が長期政権を維持できるという強気の姿勢が広がっていることをうかがわせた。
同氏は大連立を発足させた政治取引について大風呂敷を広げた格好だ。(後略)【10月21日 日経】
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****見えてきた「ラマポーザ政権の南アフリカ」のアイデンティティと国際社会での行動原理****
南アフリカ(南ア)では今年5月末の総選挙(国民議会選挙・400議席)で与党アフリカ民族会議(ANC)の議席が1994年の民主化後初めて過半数を下回り、 シリル・ラマポーザ大統領 はANCを軸に10政党から成る国民統一政府(GNU)を樹立した。

だが、GNU発足からわずか3カ月にして、教育政策を巡ってGNU内の政党間対立が先鋭化し、政権は不安定化している。(後略)【10月18日 新潮社Foresight】
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異なる政党ですから対立・不協和音があるのは当然ですが、それを乗り越えて有効な政策を実行できるのかが問われています。

当然ながら、フォーマルな世界での差別がなくなっても、人の心の中にある差別意識はそうそう簡単にはかわりません。

【人種間の緊張を高める事件】
いささかスキャンダラスですが、下記のような事件も。

****白人男性農場主が黒人女性を殺害、豚に食べさせた疑い 南アフリカで怒り渦巻く****
南アフリカで、白人男性農場主らが黒人女性2人を銃で殺害し、豚に食べさせたとみられる事件があり、怒りの声が噴出している。

殺害されたとされるのは、マリア・マクガトさん(45)とルシア・ンドロヴさん(34)。 南アフリカ北部リンポポ州の都市ポロクワネに近い農場で今年8月、食べ物を探していたところ、銃で撃たれたとされる。

その後、2人の遺体は証拠隠滅のため、豚に与えられたとみられている。

この事件で、農場主のザカリア・ヨハネス・オリヴィエ被告(60)、従業員のエイドリアン・デ・ウェット被告(19)、ウィリアム・ムソラ被告(50)の3人の男性が逮捕・起訴された。(中略)

マクガトさんのきょうだいのウォルター・マトホールさんは、この事件で、南アフリカの黒人と白人の間にある人種的な緊張が一段と悪化したとBBCに話した。

南アでは人種差別制度のアパルトヘイト(人種隔離)が30年前に撤廃されたが、人種間の緊張は特に農村部で広く残っている。

女性の夫が逃げ延び通報
事件は8月17日夜に発生した。人々が集団で、農場で売られている作物の中から賞味期限が切れたか、もうすぐ切れるものを手に入れようと、今回の現場に行ったとされる。販売されている農作物で残ったものは、豚に与えられることもあったとされる。

現場の農場には当時、ンドロブさんの夫マブト・ンクベさんもいた。一団は銃撃され、ンクベさんは、はって逃げ出した。その後、どうにか医者に助けを求めたという。

ンクベさんは警察にも通報。数日後、警官が豚舎で、ンドロブさんとマクガトさんの腐敗した遺体を発見したという。

警官が豚舎に入った際には、マクガトさんのきょうだいのマトホールさんも同行。マクガトさんの遺体の一部が豚によって食べられていたのを見たという。

被告3人は殺人に加え、ンクベさんに対する殺人未遂、銃器の無免許所持の罪にも問われている。(中略)

野党「経済的解放の闘士」(EFF)は、この農場の閉鎖を要求。「この農場で生産された製品が販売され続けるのを黙って見ていることはできない。消費者に危険をもたらしている」と主張した。

南アフリカ人権委員会は、この事件を非難するとともに、影響を受けたコミュニティーの間で反人種差別的な対話を行うよう呼びかけている。

農家(多くは白人)を代表する団体は、犯罪率が高い南アにおいて、農業コミュニティーに属する人々は自分たちが狙われていると感じている、と主張している。

ただ、農家がそれ以外の人たちより高いリスクに直面していることを示す証拠はない。

南アで人種間の緊張を高める事件は、最近も2件起きている。

東部ムプマランガ州では8月、農家と警備員が、男性2人を殺害した容疑で逮捕された。羊を盗んだとされる男性2人の遺体は、誰なのか判別できないほど焼かれていた。現在、遺灰のDNA鑑定が進められている。

別の事件では、70歳の白人農家が、自分の農場からオレンジ1個を盗んだとして6歳の少年を車でひき、両足を骨折させた疑いがかけられている。

この農家は殺人未遂2件と危険運転の罪で起訴され、現在、裁判所で保釈の審理が続いている。 これまでの審理では、少年が母親と一緒に食料品を買いに町へ向かう途中、農場の前を通りかかり、地面に落ちていたオレンジを拾ったとの説明がされた。母親は息子が農家に車でひかれるのを、恐怖にかられながら見ていたとされる。【10月12日 BBC】
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【遠い「虹の国」の理想 「国民のために奉仕する政府がいれば、この国はもっと豊かになれる」】
南アフリカにおける「虹の国」の現実については、以下のようにも。

****“自慢の姉”が南アフリカの大女優になっていた アパルトヘイト撤廃から30年 マンデラが掲げた「虹の国」の理想は遠く****
(中略)
今年は、南アフリカにとって初の民主的な選挙が行われてからちょうど30年の節目の年だった。30年間、この国では、マンデラ元大統領が率いた与党ANC(アフリカ民族会議)が、国民の圧倒的な支持のもと政権を維持し続けていた。

ところが長期政権となったANCの内部では汚職が蔓延し、一向に縮まらない経済格差、世界最悪レベルの失業率、国家的災害とも言われる電力危機などから、国民の心はANCから離れつつあった。

5月に行われた総選挙では、与党ANCが初めて過半数を割り、白人主体で親欧米の野党DA(民主同盟)らとの連立政権が発足した。

揺らぐことのなかったマンデラの党・ANCの時代は、一つの終わりを迎えた。
ソウェトで生まれた一人の黒人少女は、差別が撤廃されてからの30年あまりをどう見てきたのか。

「確かに私たちは民主主義を手に入れ、自由になった。投票権を得て、市民として認められるようになった。だけど、今の南アフリカでは毎日のように計画停電が行われ、生活に必要な電気すら手に入らない。政治家や警察は汚職にまみれ、信じることができない。そんな国が、果たして本当に“自由”だと言えるでしょうか?

アパルトヘイトは撤廃され、肌の色による差別はなくなった。でも、この国には“経済的な不平等”が今も根強く残っています」

白人の失業率が9%であるのに対し、黒人は37%。 世界銀行の調査では、いまも人口の1割が富の7割を支配する、「世界で最も不平等な国」だといわれている。

実際に選挙前の取材では、白人排斥をも辞さない過激な主張を行う急進左派政党(EFF=経済的解放の闘士)が若者の熱狂的な支持を集めていた。

縮まらない経済格差から、人種間の分断は再び深まっているように感じられた。 マンデラが掲げた「虹の国」の理念は、失われてしまったのだろうか。

「すべてがダメなわけじゃない。ここからきっと良くしていける。上手くいかなかったのは、いつしか政治家が国民のためではなく私利私欲のために動くようになってしまったから。恵まれない人にチャンスを与え、国民のために奉仕する政府がいれば、この国はもっと豊かになれる」。(後略)【9月29日 TBS NEWS DIG】
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西アフリカ  武装集団襲撃で600人死亡 国際的にあまり注目されることもない虐殺の現実

2024-10-05 22:38:07 | アフリカ

(マリ 武装組織空港襲撃 大統領専用機燃やす【9月18日 ABEMA】)

【米仏が撤退し、ロシアが勢力拡大という話はよく聞くが・・・】
マリ、ブルキナファソ、ニジェールの西アフリカが国際的に国際関係の面で語られるのは、この地域では軍事クーデターが起き、軍事政権と対立するフランス・アメリカが撤退し、民間軍事会社ワグネルを先陣とするロシアが影響力を拡大しているという話。

****アフリカ・サヘルの政情不安****
アフリカ大陸の北部サハラ砂漠の南で、半乾燥地域のことをサヘルというが、そこにはセネガル、モーリタニア、マリ、ブルキナファソ、ニジェール、ナイジェリア、チャド、スーダン、南スーダン、エリトリアという国々がある。(中略)

今、このサヘルで旧宗主国のフランスやアメリカに代わって、ロシアがプレゼンスを高めている。

この地域では、国際テロ組織のアルカイダや過激派組織「イスラム国(IS)」などが活動しており、新型コロナウイルス流行で職を失った若者をリクルートして、勢力を拡大してきた。

そのために治安が悪化し、国民の不満が高まったが、民主派政権は過激派テロ組織の鎮圧に失敗し、統治能力の欠如を示した。そこで、軍部がクーデターを起こしたのである。

マリでは2020年8月に軍部が反乱し、民主的に選ばれたケイタ大統領を追放し、ゴイタ大佐が2021年5月に大統領に就任した。ブルキナファソでは、2022年1月に軍事クーデターでカボレ大統領が失脚した。

ニジェールでは、2023年7月、軍部がクーデターを起こした。首謀者のアブドゥハーマン・チアニ大統領警護隊長は、親欧米派のモハメド・バズム大統領を追放し、憲法を停止し、自ら国のトップに就任した。

これらの軍事クーデターの背後には、ワグネルを軍事政権の傭兵として活動させるロシアの存在がある。ニジェールはウランの有数な産出国であり、EUのウラン輸入の約24%を占める最大の供給国である。また、マリもブルキナファッソも金を産出するなど、資源に恵まれている。ロシアは、その資源も自由に入手する。

これらの国々では、旧宗主国のフランスへの反感が強く、駐留フランス軍の安全が確保できなくなった。そこで、マクロン大統領は、ニジェールから約1500人の仏軍を昨年12月に撤退させた。今年の4月には、約1000人の米軍も全てニジェールから撤退した。米仏に代わってロシアが居座っているのである。(後略)
【8月15日 現代ビジネス 舛添要一“「ゼレンスキーは《最悪の選択》をした」ロシア越境攻撃を仕掛けたウクライナが、「アメリカ・フランスに見放される」運命にある理由】
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【国際的にあまり注目されることもない虐殺の現実】
“国際テロ組織のアルカイダや過激派組織「イスラム国(IS)」などが活動しており、新型コロナウイルス流行で職を失った若者をリクルートして、勢力を拡大してきた”・・・その現実は“勢力を拡大”と簡単に片づけるにはあまりしも悲惨です。

住民を襲う虐殺・暴力はイスラム系過激派のテロだけでなく、少数民族をテロ組織と同一視する政府軍やロシア兵による攻撃もあります。

ウクライナやパレスチナでの犠牲には多くの目が向けられますが、西アフリカにおけるイスラム過激派のテロや政府軍・ロシア兵による攻撃の具体事例はあまり語られることはありません。

****「ウクライナやガザと同じことが…マリの実態知って、虐殺止めて」現地ジャーナリストが国際社会にSOS****
軍事政権下にある西アフリカのマリで、十数万人の少数民族らが隣国モーリタニアに逃れ、過酷な難民生活を送っている。背景にはロシアの民間軍事会社「ワグネル」の進出に伴う紛争激化がある。長年、現地の少数民族トゥアレグを取材してきたジャーナリスト、デコート豊崎アリサさん(53)に現状を聞いた。(太田理英子)

◆国際機関の支援なし、気温50度近い砂漠で
フランス人と日本人の両親を持つデコートさんは、1997年に初めてアフリカ大陸北部のサハラ砂漠を訪れて以来、砂漠を拠点にするトゥアレグのキャラバンのドキュメンタリー撮影や取材活動をしてきた。「今、民族浄化の危機が迫っている」と訴える。

今年7月には国境近くに点在する難民キャンプを取材。木の棒と布で作ったテントの下に人々は身を寄せていた。昨年10月以降、北部から約12万人が逃げてきたといい、多くはトゥアレグを中心とした少数民族。8割は女性と子どもだ。

国境なき医師団を除き、国際機関の支援は見られない。砂漠地帯で気温は50度近い。「衛生環境が悪く感染病も広がっている」

◆ワグネルの進出で事態がさらに悪化
トゥアレグは、マリやニジェールをまたぐサハラ砂漠の遊牧民だったが、1950~60年代にマリや周辺国が独立。マリでは政府の弾圧に対し、トゥアレグの組織が自治を求め反乱を繰り返した。2012年に独立を宣言したが、混乱に乗じてイスラム過激派組織も勢力を広げ、紛争の様相は複雑化した。

事態がさらに悪化したのは、2021年の軍事政権樹立。駐留仏軍が撤退し、代わってマリ政府に接近したのがロシアだった。ワグネルが進出し、軍事支援や情報工作を展開。

2023年にはマリ軍とワグネルが「反テロ対策」としてトゥアレグの組織の拠点地域に侵攻。交戦が続き、トゥアレグや別の少数民族プルの人々も隣国に逃れたという。

◆ロシアがアフリカに近づく狙いは
ワグネルは2017年ごろからアフリカ諸国で現地政府への軍事協力、選挙介入や鉱物採掘などの活動を展開したが、2023年に実質解体された。

ロシアの準軍事組織「アフリカ部隊」などに吸収され、従来の活動はロシア政府主導で強化。現在マリ軍と活動しているのもアフリカ部隊とみられる。

ロシアがウクライナ侵攻で欧米と対立する中、アフリカに近づく狙いは何か。
日本エネルギー経済研究所中東研究センターの小林周主任研究員は「ワグネルが築いた現地政府との関係や開発利権を生かして収益源にすると同時に、国連や欧米の影響力、存在感を低下させている」とみる。

◆かつてないほど残酷な虐殺が
政府軍とアフリカ部隊による攻撃に加え、過激派組織のテロなど、住民への脅威は増大している。

デコートさんは「かつてないほど残酷な手段で虐殺が起きている」と話す。キャンプにいた50代女性は、親族が切り刻まれたほか、生きた状態で井戸に投げ込まれた人もいたと証言。「マリ軍などは国境付近に集中し、逃げることさえ危険」と語ったという。

現地に入る報道機関はなく、デコートさんは国際社会に現状が伝わらないことに危機感を募らせる。「ウクライナやパレスチナ自治区ガザと同じことが起きている。マリの実態を知ってもらい、無差別な虐殺を許さない世論を広げたい」【8月25日 東京】
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そのマリでは9月、首都マリがイスラム過激派の攻撃を受けています。

*****西アフリカのマリ、首都攻撃され70人死亡 アルカイダ系武装組織 数百人死傷の情報も****
ロイター通信は19日、西アフリカ・マリで17日に国際テロ組織アルカイダ系武装組織が首都バマコの空港や警察学校を攻撃し、約70人を殺害したと報じた。外交筋の話としている。

イスラム系などの武装勢力に悩まされるマリの軍事政権はロシアと協力して対策を進めているが、首都を攻撃される異例の事態となった。

ロイターによると、軍政は被害の詳細を明らかにしていない。数百人が死傷したとの情報もある。ゴイタ暫定大統領は攻撃の数日前、ロシアの支援で武装勢力を弱体化させたと主張したばかりだった。

マリでは2020年以降に2度クーデターが起き、権力を掌握した軍政はテロ対策で駐留していたフランスの部隊を撤退に追い込んだ。ロシアとの連携に転換したが、7月下旬には北部でロシアの民間軍事会社ワグネルの戦闘員多数が遊牧民トゥアレグの反政府勢力に殺害された。(共同)【9月20日 産経】
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“数百人が死傷したとの情報も”・・・・欧米はもちろん、ウクライナやパレスチナでも大事件ですが、マリの場合は“数百人が死傷したとの情報も”で片づけられてしまします。

ブルキナファソでは

****ブルキナファソの虐殺、死者600人に 仏当局の評価で当初推計から倍増****
西アフリカ・ブルキナファソにある町を国際テロ組織アルカイダとつながる武装グループが8月に襲撃した際、数時間で最大600人が射殺されていたことが分かった。フランス政府による安全保障関連の評価から明らかになった。

当初の報道で引用された死者数から2倍近く増加した。 更新された死者数は、当該の襲撃がこの数十年にアフリカで発生した単独の襲撃事件として最悪の部類に入ることを意味する。 

襲撃に関与したのは、サハラ砂漠南部のサヘル地域を拠点とするアルカイダ系の「イスラム・ムスリムの支援団」(JNIM)。

ソーシャルメディア上にあるJNIM支持のアカウントに投稿された複数の動画によると、8月24日に発生した襲撃では、JNIM所属の戦闘員らがオートバイに乗って同国のバルサロゴ郊外に進入。住民に対し組織的な銃撃を始めた。 

死者の多くは女性と子どもで、動画からは自動小銃の銃声と犠牲者らの叫び声が聞こえる。犠牲者らは、死体のふりをしているところを撃たれているようだ。 

サヘル地域では米軍とフランス軍が主導して治安の確保に取り組んでいるものの、イスラム武装勢力の進入にはなかなか歯止めがかからない。マリ、ブルキナファソ、ニジェールではクーデターが相次ぎ、フランスと米国の軍隊は撤退を余儀なくされた。 

各国の軍事政権はロシアの傭兵(ようへい)を集め支配力強化を図るが、逆に権力の空白地帯が生まれ、イスラム武装勢力の台頭につながっている。

CNNがフランスの安全保障当局者から入手した前出の評価で明らかになった。 国連は当初、バルサロゴでの襲撃の死者数を200人と推計。JNIMは300人近くを殺害したと発表していた。

ロイター通信が引用した米SITEインテリジェンス・グループの翻訳によると、JNIMは軍とつながる民兵組織の構成員を標的とした襲撃であり、市民を狙ったわけではないと主張した。 

フランスの当局者はCNNの取材に答え、ブルキナファソの治安が著しく悪化していると指摘。治安部隊が対処できないため、武装したテロリスト集団がますます自由に振る舞う状況になっているとした。 

今回の報告によれば、バルサロゴでの襲撃の15日前にはタウォリという村で軍の車列が襲われ、兵士150人がイスラム武装勢力に殺害された。 9月17日には隣国マリの首都バマコでも、JNIMの襲撃が発生。空港やその他の重要な建物が狙われ、70人以上が死亡した。【10月4日 CNN】
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映画などのドラマでは、オートバイに乗った武装勢力が村を襲撃して住民を虐殺・・・という場面を見ますが、それはドラマ上の話ではなく、西アフリカの現実です。

アルカイダ系の「イスラム・ムスリムの支援団」(JNIM)は“市民を狙ったわけではないと主張した”とのことですが、死者600人・・・・皆殺しの意図を持ってやらなければあり得ない数字です。

“軍が集落を防衛しようと住民に塹壕を掘らせていた際に襲撃を受けたが、住民を守る措置を取っていなかったため被害が拡大したとの見方がある。報告書は「軍政にテロ対策を担う力はない」と結論付けたという。”【10月5日 産経】

政府軍に加担する村や町はこうなるぞ・・・という見せしめなのでしょう。
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アフリカ  中国をはじめ多くの国から“求愛”を受けながらも貧困から脱却できない事情

2024-09-18 22:56:19 | アフリカ

(6日、アンゴラ・ルアンダで中国海軍病院船「平和の方舟」の中国人医師の診察を待つ患者ら。【9月14日 新華社】)

【習近平主席 「中国とアフリカの関係は新時代の『全天候型運命共同体』にレベルアップする」】
9月3日ブログ“中国 中国・アフリカ協力フォーラムサミット開催 変化するアフリカ向け融資”でも取り上げたように、中国の対アフリカ支援に近年“バラマキ”から“収益性重視”という変化が見られます。

****中国、「ばらまき」から収益性重視か-曲がり角の対アフリカ融資****
中国は10年以上にわたり「一帯一路」構想を通じ1200億ドルを支援
「債務のわな」や搾取、汚職といった批判がつきまとう

中国の習近平国家主席がアフリカ各国の首脳を北京に今週迎える際、習氏はアフリカ側への貸し付け規模を縮小し、中国が引き換えに何を求めているのかをより明確に示すとみられる。つまり、リターンの向上とトラブルの減少だ。(後略)【9月3日 Bloomberg】
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****中国の対アフリカ開発融資、最盛期の6分の1 撤退した分野とは?****
中国が2023年にアフリカ諸国向けに決定した開発融資は総額約46億ドル(約6700億円)で、最盛期のおよそ6分の1だった。米ボストン大グローバル開発政策センターの集計で判明した。経済が停滞した新型コロナ禍以降では初めて上昇に転じたが、中国がある分野からは手を引いたことがうかがえるという。

中国は00年代以降、巨大経済圏構想「一帯一路」に沿って、豊富な天然資源を有するアフリカへの進出を強化してきた。エネルギー・資源開発や、道路や空港・港湾といった輸送インフラ整備、防衛、農業など分野は多岐にわたり、ピークの16年には計288億ドル(約4兆2300億円)に達した。

ただコロナ禍では、経済基盤が弱いアフリカ諸国の国家財政は大きな打撃を受け、対外債務の返済が厳しくなるケースが続出。中国も不良債権化を恐れて新規融資を抑えるようになり、22年には融資総額が10億ドル(約1470億円)にまで落ち込んだ。

23年にはこういったコロナ禍のダメージからの回復傾向が見られる。同センターによると中国は23年、ナイジェリアでの鉄道網整備▽マダガスカルでの水力発電所の建設▽アンゴラでのインターネット網整備――など8カ国と13件の融資契約を結んだ。

一方、中国が最近アフリカで融資を行っていないのが、石炭火力発電所計画だ。習近平国家主席は地球規模の気候変動対策の一環として、21年9月の国連総会で「石炭火力発電所の新たな輸出はしない」と発言した。同センターの集計でも、19年以降は新規の石炭火力発電所融資は確認されていない。中国がアフリカでも「脱炭素」にかじを切っていることが読み取れる。

中国の海外開発融資は「外交機密」を理由に詳細が公表されないケースがある。また中国の企業や人材を利用することが前提の「ひも付き」の融資が大半だ。支援を受ける側が返済に窮し、資産などを差し押さえられてしまう「債務のわな」に陥るリスクが高いと国際的に批判されてきた。

同センターによると、中国は近年、アフリカ輸出入銀行(エジプト・カイロ)やアフリカ金融公社(ナイジェリア・ラゴス)といった国際的な開発金融機関を通じた融資にも力を入れている。中国政府が前面に出ることがないため、融資に伴うリスクや批判を回避できるメリットがある。

中国が00〜23年に行ったアフリカ向け融資は、49カ国と七つの開発金融機関などに対して計約1823億ドル(約27兆円)だった。中国は今後、従来の「重厚長大」から「量より質」を重視する路線にかじを切りつつ、アフリカへの影響力を維持・拡大していく狙いとみられる。【平野光芳】
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そうした支援・融資の質・量の変化はあるものの、中国は毛沢東時代から一貫して対アフリカ外交を重視しており、そのことは今も変わりません。

****中国が6年ぶりにアフリカ諸国と首脳会合 グローバルサウスを取り込みへ 北京で6日まで****
中国とアフリカ諸国が参加する「中国アフリカ協力フォーラム」の首脳会合が4日、北京で開幕。2018年以来6年ぶりの開催となる。

習近平国家主席は会合出席のため訪中した各国首脳と相次いで会談し、グローバルサウス(南半球を中心とした新興・途上国)の取り込みを図った。

2000年に発足した同フォーラムには50カ国以上が参加している。6日まで開かれる今回の首脳会合について、中国メディアは「中国が近年主催した外交行事中で最大規模」と強調する。(中略)

習氏は4日までに20カ国以上の首脳と個別に会談し、南アフリカやナイジェリアなどと2国間関係の格上げを宣言した。ロイター通信によると、4日にはタンザニアとザンビアを結ぶ鉄道の改修に向けた合意文書の署名に習氏も立ち会った。

中国としては、米欧との対立激化も念頭にグローバルサウスとの関係強化を進める狙いとみられる。習氏は2日に行った南アフリカのラマポーザ大統領との会談で、「国際情勢が複雑になるほど、グローバルサウス諸国はますます独立自主、団結、協力を堅持し、国際的な公平や正義をともに守る必要がある」と発言した。【9月4日 産経】
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****習主席「運命共同体だ」関税ゼロに200億円の食糧援助…会議にアフリカ50カ国超が参加****
中国が主催し、アフリカの50以上の国の首脳らが参加する会議が北京で開かれ、習近平国家主席が「中国とアフリカは運命共同体だ」とアピールしました。

中国 習近平国家主席 「中国とアフリカの関係は新時代の『全天候型運命共同体』にレベルアップする」

「中国アフリカ協力フォーラム」の開幕式で習主席は貿易や農業など10分野での協力を打ち出しました。
貿易では発展途上国33カ国の製品の関税をゼロにする優遇措置を取るほか、食糧援助として10億元、約200億円を提供するとしています。

また、安全保障分野でも同じく10億元を無償援助し、アフリカの軍人などの育成に協力するとしました。

中国はこれらの援助を通じ、「グローバルサウス」と呼ばれるアフリカ諸国への影響力を高めたい考えです。

アフリカ記者 「中国はウガンダに友好的なローンを提供してくれる。多くのインフラのメガプロジェクトが役に立つ」

会議にはアフリカ各国から多くの記者も招待され、各国に成果を強調する狙いもあります。【9月5日 テレ朝news】
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****対アフリカで7兆円支援へ=「米欧との違い」アピール―中国主席****
中国の習近平国家主席は5日、北京で開催中の「中国アフリカ協力フォーラム」首脳会合で基調演説を行った。アフリカ諸国首脳が一堂に会する中、今後3年間で3600億元(約7兆3000億円)の資金援助を実施することや、軍事協力の強化を表明した。

首脳会合は4〜6日の日程で、中国外務省によると、50以上のアフリカ諸国・機関の首脳らが出席した。習氏は5日の演説で「中国とアフリカの関係は史上最良だ」と強調。

対立する米国を念頭に「西側諸国は近代化の過程で多くの発展途上国に苦難をもたらしたが、中国とアフリカは絶えず歴史の不公平を正そうとしてきた」と述べ、米欧との違いをアピールした。【9月5日 時事】
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また、経済・安全保障だけでなく、医療支援といったイメージアップ活動も行っているあたり、明確な国家戦略が窺えます。

****中国海軍の病院船「平和の方舟」、コンゴ共和国訪問へ****
海外医療支援任務「和諧使命−2024」を遂行中の中国海軍病院船「平和の方舟」が11日、アンゴラでの7日間にわたる友好訪問を終え、同国のルアンダ港を離れて7カ所目の訪問先となるコンゴ共和国に向かった。【9月14日 新華社】
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また、国家レベルの支援だけでなく、人的レベルでの交流も盛んに行われています。

****中国の若者はアフリカ就職を目指す 年々深まるアフリカとの関係 習主席「歴史上もっとも良い」背景に失業率や激しい競争****
近年、中国とますます関係を深めているのがアフリカの諸国です。こうした中、今、国では就職先としてアフリカを目指す若者が増えています。(中略)

中国で始まった中国アフリカ協力フォーラム。習近平国家主席は今後3年間で7兆円を超える規模の資金を拠出すると表明しました。

中国 習近平 国家主席 「中国とアフリカ諸国の関係は現在、歴史上、最も良い時期にある」

習主席が強調するように、中国とアフリカの関係は年々深まっています。現在、中国とアフリカの貿易額は過去最高を記録。ここ10年だけでもおよそ1.5倍に拡大しました。農業やインフラ建設に加え、最近は電気自動車やIT分野での経済的な結びつきが顕著です。

こうした中、今、就職先としてアフリカを目指す中国の若者が増えています。

劉さん 「私は今、ナイロビにいます。このような決断をするとは思っていませんでした」

ケニアの首都・ナイロビで半年前から不動産関連の企業で働く劉さん(23)。なぜ、アフリカで就職しようと思ったのでしょうか?

劉さん 「中国の深センで働いていましたが 仕事は好きではありませんでした。競争が激しく、残業が当たり前で、給料もよくなかったからです」

彼女のように激しい競争を避け、アフリカを目指す若者が、ここ数年、増えているといいます。また、若者の失業率が高いこともアフリカへの就職に拍車をかけていると中国メディアは伝えています。

今ではケニアでの暮らしに満足しているという劉さん。

劉さん 「来る前はアフリカは貧しく、安全ではないという情報ばかりでしたが、来てみたら良かったです。アフリカには、まだ多くのチャンスがあります」

今後、新たな活躍の場を求め、新天地を目指す若者はますます増えそうです。【9月5日 TBS NEWS DIG】
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日本では“アフリカでの就職を目指す”若者・・・まず見ないですね。このあたりが、アフリカに対する姿勢に関する日中の違いでもあります。その姿勢・認識が変わらないと日本がTICADでいくらカネをバラまいても余り効果も上がらないかも。

【中国をはじめ多くの国から“求愛”を受けながらも貧困から脱却できないアフリカ 債務問題と内戦等による人道的危機の問題が重大な制約に】
“グローバルサウス”重視の昨今、中国だけでなく、日本や欧米、更にはインドや中東湾岸諸国をはじめとする多くのミドルパワーがアフリカへの働きかけを強めていますが、“21世紀はアフリカの世紀”と言われつつも、アフリカの現状は芳しくありません。

****<“ミドルパワー”から求愛されるアフリカ>盛んな投資を受けるも貧困から脱却できない複雑な背景****
フィナンシャル・タイムズ紙(FT)の8月30日付社説‘The middle-power competition in Africa’が、アフリカにおいて湾岸諸国等のミドルパワーの影響力争いによりもたらされている成長の機会をアフリカ諸国が無駄にしている、と論じている。要旨は次の通り。

アフリカが世界の主要議題となることはほとんどない。しかし、このような明白な経済的、戦略的影響力の欠如にもかかわらず多くのアフリカ諸国は、トルコ、ブラジル、ロシアなど様々な国から求愛されている。

このような「ミドルパワー」の関心は、アフリカの指導者たちに投資と戦略的パートナーに関する多くの選択肢を提示している。

このような多様な選択の可能性を巧みに利用すれば、各国が貧困から脱却できる機会になるかもしれない。重要なインフラ・プロジェクトに関しより良い取引ができ、一次産品取引に原材料の国内加工を伴うことを主張することもできる。アフリカ大陸自由貿易地域を加速させるべきであり、それだけで分断された経済を魅力的な単一市場に変えることができる。

英、仏といった旧植民地大国は長年にわたり、アフリカ大陸に生産的に関与しようと苦闘してきたが、かえって反発を招いてきた。

米国は、冷戦後、冷淡になった。投資家は、アフリカとの距離と厳しい贈賄防止法によって意欲をそがれた。ワシントンはアフリカをほとんど安全保障の観点からしか見なかったが、バイデン大統領のもとで、戸惑いながらも再関与の兆しを見せている。

米国と欧州の影響力の相対的な低下による空白を最初に埋めたのは中国である。その後にインドや湾岸諸国をはじめとする多くのミドルパワーが加わった、アフリカは国連に人材と票を提供している。

長期的には、アフリカには市場が約束されている。2050年までにアフリカの人口は25億人に達しその半分は25歳以下である。彼らがそこそこの生活水準に達するだけで、それは大量の消費者となる。また、コバルト、リチウム、マンガン、銅などのエネルギー転換鉱物をめぐる競争も激化している。

アフリカから見れば、この新たな関心は選択肢を意味する。タンザニアはドバイが運営する港を、ガーナとニジェールはトルコが建設する空港ターミナルを、中央アフリカとマリはロシアの傭兵を選んだ。

選択肢にはコストが伴う。欧州のアフリカへの投資は、中国にはない国内的な精査を受けることになる。しかし、中国からの借金の累積は、ザンビアからエチオピアに至るまで、債務不履行の波につながっている。

無用の長物のような投資が多すぎるのだ。ケニアに建設された40億ドルの中国鉄道は、経済の生産性向上よりも、政治家の取り巻きのために建設された。

ミドルパワーは、新たな安全保障上の絡みをもたらしている。スーダンの内戦へのアラブ首長国連邦(UAE)の介入は、世界最悪の人道的大惨事を長引かせている。金やダイヤモンドで報酬を得るロシアの傭兵は、経済的、社会的発展の面では何も提供しない。

ケニアの抗議者たちが指摘しているように、アフリカの指導者たちは、国家の発展のためではなく、自分たちの利益のために行動することがあまりにも多い。

アフリカにおける競争は、より多くの成長、より多くの製造業、そしてより多くの雇用の拡大が期待できるが、提供されている新たな関与のパターンによる機会を、今のところ、ほとんどのアフリカの政府が浪費している。

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アフリカの発展へ考慮すべき点
上記の社説の、ミドルパワーのアフリカへの関心を効果的に利用すべきだとの指摘は、現状の一面において的確な指摘ではあるが、アフリカの発展について論ずるのであれば、社説中に簡単に言及のある、債務問題と内戦等による人道的危機の問題が重大な制約となっていることを無視することはできず、これらの面を合わせて考慮しなければバランスが取れない。

8月28日付ニューヨーク・タイムズ(NYT)紙の解説記事によれば、アフリカの対外債務は昨年末で1兆1000億ドル以上に達し、20カ国以上が過剰債務を抱え、外国債権者の数と多様性が従来になく際立ち、解決を困難にしている。

対外債務はナイジェリアで400億ドル、ケニアで350億ドル、ウガンダで120億ドルに達し、債務返済のための増税に反対する大規模な抗議活動やインフレ、極度の貧困の下での反政府デモが頻発している。

これらの国の債務の70~80%は中国が債権者であるが、中国は、債務救済に消極的で、債務不履行に陥ったザンビアは、債務再編まで4年近くかかった。この債務問題は、アフリカから成長の機会を奪い、社会的不安定を煽るものである。

また、人道的危機については、現在、スーダン、マリからナイジェリア北部に至るサヘル地域、中央アフリカ、コンゴ民主共和国東部、ソマリア、リビアといった地域で、内戦や過激派イスラム組織との武力衝突といった状況がある。

特に、スーダンでは、1年以上続く内戦で850万人の避難民が生じており、反乱軍を支援するアラブ首長国連邦が紛争終結の鍵を握るとされている。また、コンゴ民主共和国東部ではルワンダが介入する長年の紛争で730万人が故郷を追われた避難民となっているとされる。(後略)【9月16日 WEDGE】
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9月5日、国連のグテレス事務総長は中国アフリカ協力フォーラム首脳会合でアフリカ諸国について、不十分な債務救済や資源の乏しさが社会不安につながっているとの認識を示し、国際的な金融構造の改革を促しています。

****国連事務総長、不十分な債務救済がアフリカの社会不安の原因と警告****
国連のグテレス事務総長は5日、アフリカ諸国について、不十分な債務救済や資源の乏しさが社会不安につながっているとの認識を示し、国際的な金融構造の改革を促した。

ケニアでは増税に反対するデモ隊と警察が衝突し、ナイジェリアや ウガンダでは生活費を巡り抗議デモが発生した。

アフリカ諸国は20カ国・地域(G20)が提唱した「共通枠組み」を通じた債務再編を模索してきたが、協議は期待通りに進んでいない。

ザンビアは6月、債務不履行から3年以上を経て、このスキームを活用した債務再編に成功した最初の例となった。

グテレス氏は北京で開催された中国アフリカ協力フォーラム首脳会合で、アフリカの債務は「持続不可能で社会不安の原因となっている」と指摘。

「アフリカは効果的な債務救済を受けることができず、資源も乏しく、国民の基本的なニーズに応えるための資金も明らかに不足している」と述べた。

その上で「時代遅れで非効率的な国際金融構造の抜本的改革」の重要性を指摘し、中長期的な解決策を模索しつつ流動性の提供を可能とする政策の必要性を訴えた。【9月5日 ロイター】
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西アフリカ  持ち込まれるロシア・ウクライナの対立 暴力の犠牲となる住民

2024-08-27 22:39:53 | アフリカ

(マリの首都バマコで開かれた親軍事政権・親ロシア集会で、ロシア国旗を振る軍事政権支持者(2024年5月13日撮影)【8月6日 AFP】)

【フランス・アメリカを排除してロシアに接近する西アフリカ軍事政権】
旧フランス領西アフリカのマリ、ブルキナファソ、ニジェールではイスラム過激派の勢力が拡大、治安の悪化から軍事クーデターが起き、過激派に有効に対処できない駐留フランス軍への不満が強まり、軍事政権はロシアに接近、フランス軍は撤退、米軍も撤退・・・という似たような経過をたどっています。

****アフリカ・サヘルの政情不安****
アフリカ大陸の北部サハラ砂漠の南で、半乾燥地域のことをサヘルというが、そこにはセネガル、モーリタニア、マリ、ブルキナファソ、ニジェール、ナイジェリア、チャド、スーダン、南スーダン、エリトリアという国々がある。(中略)

今、このサヘルで旧宗主国のフランスやアメリカに代わって、ロシアがプレゼンスを高めている。

この地域では、国際テロ組織のアルカイダや過激派組織「イスラム国(IS)」などが活動しており、新型コロナウイルス流行で職を失った若者をリクルートして、勢力を拡大してきた。

そのために治安が悪化し、国民の不満が高まったが、民主派政権は過激派テロ組織の鎮圧に失敗し、統治能力の欠如を示した。そこで、軍部がクーデターを起こしたのである。

マリでは2020年8月に軍部が反乱し、民主的に選ばれたケイタ大統領を追放し、ゴイタ大佐が2021年5月に大統領に就任した。
ブルキナファソでは、2022年1月に軍事クーデターでカボレ大統領が失脚した。
ニジェールでは、2023年7月、軍部がクーデターを起こした。首謀者のアブドゥハーマン・チアニ大統領警護隊長は、親欧米派のモハメド・バズム大統領を追放し、憲法を停止し、自ら国のトップに就任した。

これらの軍事クーデターの背後には、ワグネルを軍事政権の傭兵として活動させるロシアの存在がある。ニジェールはウランの有数な産出国であり、EUのウラン輸入の約24%を占める最大の供給国である。また、マリもブルキナファッソも金を産出するなど、資源に恵まれている。ロシアは、その資源も自由に入手する。

これらの国々では、旧宗主国のフランスへの反感が強く、駐留フランス軍の安全が確保できなくなった。そこで、マクロン大統領は、ニジェールから約1500人の仏軍を昨年12月に撤退させた。今年の4月には、約1000人の米軍も全てニジェールから撤退した。米仏に代わってロシアが居座っているのである。(後略)【8月14日 舛添要一氏“「ゼレンスキーは《最悪の選択》をした」 ロシア越境攻撃を仕掛けたウクライナが、「アメリカ・フランスに見放される」運命にある理由” 現代ビジネス】
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この地域では上記記事にあるように、反乱を起こしたプリゴジン氏が創設したロシアの民間軍事会社ワグネルが活動しています。

“昨年、創設者のエフゲニー・プリゴジンがウラジーミル・プーチンに対する反乱の末、飛行機事故で亡くなった後、ロシア政府は新たな準軍事組織「アフリカ軍団」を立ち上げて、ワグネルの部隊を管理下におき、その事業を引き継いでいる。”【7月31日 Newsweek】

【対ロシアの一環としてウクライナがマリ反政府勢力に情報提供 マリはウクライナと断交】
そのワグネルの部隊が7月、マリで少数民族トゥアレグ反乱軍による待ち伏せ攻撃を受け、兵士数十人が死亡しました。

****ワグネル戦闘員84人殺害か マリの反政府武装勢力****
西アフリカ・マリ北部で活動する遊牧民トゥアレグの反政府武装勢力は1日、7月下旬にロシアの民間軍事会社ワグネルの戦闘員らと交戦し、少なくとも84人を殺害したと主張した。ロイター通信が報じた。ワグネルがマリに進出したここ数年で最大の被害とみられる。

マリと隣国のニジェール、ブルキナファソでは近年クーデターが相次いだ。各国の軍事政権は、テロ対策で駐留していた米国やフランスの軍部隊を撤収に追い込みロシアに接近している。

ロイターによると、戦闘は数日間続いた。反政府勢力はマリ軍の兵士47人も死亡し、兵士やワグネル戦闘員の一部を捕虜にしたとしている。【8月2日 共同】
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“アメリカのシンクタンク戦争研究所(ISW)は29日、ロシア国防省はマリでのワグネル部隊の敗北を利用して、ワグネルの傭兵部隊をアフリカ軍団の他の部隊に置き換えていく可能性があると述べた。アフリカ軍団は去年12月の時点で、指揮官を含む構成員のうち、およそ半分がワグネルの元メンバーであることを公表している。”【7月31日 Newsweek】

ロシアのワグネル及びマリ政府軍に損害を与えた少数民族トゥアレグ反乱軍に、ロシアに敵対するウクライナが情報を提供していたということで、国内情勢に加えて、ロシア・ウクライナの対立も反映した状況になっています。

当然ながらマリはウクライナに反発し、断交に至っています。

****西アフリカのマリ、ウクライナと断交 反政府勢力支援関与の疑い****
西アフリカのマリ政府は4日、北部の遊牧民トゥアレグの反政府武装勢力を支援したとして、ウクライナとの外交関係を直ちに打ち切ると発表した。

ウクライナ国防省情報総局(GUR)のユソフ報道官は7月29日、マリ軍兵士とロシア民間軍事会社ワグネルの戦闘員が死亡した北部での戦闘について、マリの反政府勢力がマリ軍やワグネルに対する攻撃を成功させるのに「必要な」情報を受け取っていたと発言した。

トゥアレグの反政府勢力は、数日にわたる激しい北部での戦闘で少なくともワグネル戦闘員84人とマリ人兵士47人を殺害したとしている。ワグネルにとって2年前にマリに進出して以降最大の敗北とみられる。

マリ政府は、ユソフ氏が「マリ国防・治安部隊の隊員を死亡させた武装テロリスト集団による卑怯で危険かつ野蛮な攻撃へのウクライナの関与を認めた」と指摘。「ウクライナ当局の行動はマリの主権を侵害している」と主張した。【8月5日 ロイター】
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マリに同調するニジェールもウクライナと断交を発表しています。

【スウェーデン閣僚「ロシア支持のくせに我々の援助を受け取るな」】
マリ軍事政権と北欧スウェーデンのバトルも。

****スウェーデン大使を追放 マリ、ロ接近批判に反発****
西アフリカ・マリの軍事政権は9日、ロシアに接近するマリをスウェーデンの閣僚が批判したことに反発し、マリ駐在のスウェーデン大使を追放すると発表した。ロイター通信が報じた。

マリは4日、ロシアが侵攻を続けるウクライナとの断交を表明。スウェーデンのフォシェル国際開発協力・貿易相は7日「侵攻を支持しながら、スウェーデンから開発援助を受け取ることはできない」と訴えていた。

近年クーデターが相次いだマリやニジェール、ブルキナファソの軍政は、テロ対策で駐留していた米国やフランスの部隊を撤収に追い込み、欧米離れを鮮明にしている。【8月10日 共同】
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なぜ北欧スウェーデンがこのように西アフリカ・マリを露骨に批判したのか・・・背景には、スウェーデン国内の反イスラム的な世論があるとの指摘が。

****スウェーデン自身のイスラーム嫌悪****
最後に、現在のスウェーデン政府では極右系の発言力が強く、あえて"反イスラーム的"をアピールしやすい(マリ人口の93% はムスリム)ことだ。

スウェーデンでは2022年9月の総選挙により、民主党を中心とする連立政権が発足した。民主党は「スウェーデン人のためのスウェーデン」を標榜する右派政党で、移民制限などを主張している。

その結果、スウェーデンでは2023年、イスラームの聖典コーランを抗議活動のデモンストレーションとして焼却することが合法と認められた。この方針は当然のようにムスリム系市民やイスラーム各国の強い反発を招き、警察が"治安を脅かす"と反対するなかで決定された。

そこでは民主党の支持基盤へのアピール効果が優先されたといえる。【8月14日 六辻彰二氏 Newsweek】
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一方、ウクライナはクレバ外相が8月上旬にアフリカのマラウイ、ザンビア、モーリシャスを訪問し、対ロシアのウクライナへの支持拡大を図っています。

****ウクライナ外相がアフリカ3カ国歴訪、対ロシアで支持取り付けへ****
ウクライナのクレバ外相は、ロシアとの戦争におけるウクライナへの支持を集めるため、今週アフリカ3カ国を歴訪する。外務省が4日明らかにした。
ここ2年間で4回目のアフリカ外遊で、4─8日にマラウイ、ザンビア、モーリシャスを訪問する。

6月にスイスで開かれた「ウクライナ平和サミット」にはアフリカ諸国が多数出席したものの、孤立させようとする西側諸国の取り組みに加わることには消極的な姿勢を示した。ロシアはアフリカ諸国にとってエネルギーや食料などの重要な調達先だ。

外務省によると、クレバ氏は今回の訪問中、ウクライナ産の穀物をアフリカ地域へ供給すること、ウクライナ再建へのアフリカ企業参加についても話し合う。【8月5日 ロイター】
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【悪化する状況の中で、過酷な暴力にさらされる住民】
西アフリカにロシア・ウクライナの対立が持ち込まれ、更にアフリカを舞台にロシア・ウクライナの外交合戦が展開されるという状況ですが、西アフリカにおける悲惨な状況は改善しておらず、その暴力の犠牲となるのは結局地域住民です。

****武装勢力襲撃で百人死亡 アルカイダ系、ブルキナファソ****
軍事政権下の西アフリカ・ブルキナファソ中部の集落で先週末、国際テロ組織アルカイダ系の武装勢力による襲撃があり、住民ら少なくとも100人が死亡した。AP通信が26日報じた。

ブルキナファソでは、アルカイダや過激派組織「イスラム国」(IS)に忠誠を誓う勢力の活動が活発で、対応が課題となっている。

APによると、軍政は全土の半分程度しか掌握できておらず、軍が集落を守るために住民と塹壕を掘っていた際、武装勢力から攻撃を受けたという。武装勢力は攻撃を認め、集落周辺を制圧したと主張している。【8月27日 共同】
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****「ウクライナやガザと同じことが…マリの実態知って、虐殺止めて」現地ジャーナリストが国際社会にSOS****
軍事政権下にある西アフリカのマリで、十数万人の少数民族らが隣国モーリタニアに逃れ、過酷な難民生活を送っている。背景にはロシアの民間軍事会社「ワグネル」の進出に伴う紛争激化がある。長年、現地の少数民族トゥアレグを取材してきたジャーナリスト、デコート豊崎アリサさん(53)に現状を聞いた。(太田理英子)

◆国際機関の支援なし、気温50度近い砂漠で
フランス人と日本人の両親を持つデコートさんは、1997年に初めてアフリカ大陸北部のサハラ砂漠を訪れて以来、砂漠を拠点にするトゥアレグのキャラバンのドキュメンタリー撮影や取材活動をしてきた。「今、民族浄化の危機が迫っている」と訴える。

今年7月には国境近くに点在する難民キャンプを取材。木の棒と布で作ったテントの下に人々は身を寄せていた。昨年10月以降、北部から約12万人が逃げてきたといい、多くはトゥアレグを中心とした少数民族。8割は女性と子どもだ。

国境なき医師団を除き、国際機関の支援は見られない。砂漠地帯で気温は50度近い。「衛生環境が悪く感染病も広がっている」

◆ワグネルの進出で事態がさらに悪化
トゥアレグは、マリやニジェールをまたぐサハラ砂漠の遊牧民だったが、1950~60年代にマリや周辺国が独立。マリでは政府の弾圧に対し、トゥアレグの組織が自治を求め反乱を繰り返した。2012年に独立を宣言したが、混乱に乗じてイスラム過激派組織も勢力を広げ、紛争の様相は複雑化した。

事態がさらに悪化したのは、2021年の軍事政権樹立。駐留仏軍が撤退し、代わってマリ政府に接近したのがロシアだった。ワグネルが進出し、軍事支援や情報工作を展開。2023年にはマリ軍とワグネルが「反テロ対策」としてトゥアレグの組織の拠点地域に侵攻。交戦が続き、トゥアレグや別の少数民族プルの人々も隣国に逃れたという。

◆ロシアがアフリカに近づく狙いは
ワグネルは2017年ごろからアフリカ諸国で現地政府への軍事協力、選挙介入や鉱物採掘などの活動を展開したが、2023年に実質解体された。ロシアの準軍事組織「アフリカ部隊」などに吸収され、従来の活動はロシア政府主導で強化。現在マリ軍と活動しているのもアフリカ部隊とみられる。

ロシアがウクライナ侵攻で欧米と対立する中、アフリカに近づく狙いは何か。
日本エネルギー経済研究所中東研究センターの小林周主任研究員は「ワグネルが築いた現地政府との関係や開発利権を生かして収益源にすると同時に、国連や欧米の影響力、存在感を低下させている」とみる。

◆かつてないほど残酷な虐殺が
政府軍とアフリカ部隊による攻撃に加え、過激派組織のテロなど、住民への脅威は増大している。

デコートさんは「かつてないほど残酷な手段で虐殺が起きている」と話す。キャンプにいた50代女性は、親族が切り刻まれたほか、生きた状態で井戸に投げ込まれた人もいたと証言。「マリ軍などは国境付近に集中し、逃げることさえ危険」と語ったという。

現地に入る報道機関はなく、デコートさんは国際社会に現状が伝わらないことに危機感を募らせる。「ウクライナやパレスチナ自治区ガザと同じことが起きている。マリの実態を知ってもらい、無差別な虐殺を許さない世論を広げたい」【8月25日 東京】
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少数民族の独立運動、イスラム過激派の活発化、軍事クーデター、ロシアの介入、更にウクライナも関与・・・しかし。国際社会からの支援は少なく、悪化する状況の中で住民が犠牲に・・・。
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スーダンの「忘れられた紛争」 国内外への避難民は人口の20%、1000万人超

2024-08-01 23:09:46 | アフリカ

(チャドのスーダン難民は人道支援がなければ生きていけない【6月19日 国連WFP】)

【スーダンで続く「忘れられた紛争」】
2023年4月15日に始まったスーダンでの紛争・・・国軍(SAF)と準軍事組織「即応支援部隊」(RSF)の統合問題を背景に、軍が主導する統治評議会議長のトップ、ブルハン国軍最高司令官と、同副議長でRSF司令官のダガロ氏の権力闘争としての武力衝突が発生・・・は、パレスチナやウクライナでの戦争とは違って、それらの戦争に匹敵する犠牲者を出しながらもあまりメディアに取り上げられることなく続く「忘れられた紛争」となっています。

「忘れられた」かどうかに関係なく、紛争の戦火から逃げまどい、飢えや医療崩壊に苦しむ住民にとっては等しく悲劇・地獄であり、「忘れられた紛争」の場合は人道支援も行き届かないというということでより悲惨な状況にもなります。

死者は推計で1万5千人にのぼるとされていますが、実際にはその10~15倍に上る可能性があるとの見方(バイデン米政権のスーダン特使トム・ペリエロ氏)もあります。

メディア報道があまりないので詳細はわかりませんが、戦闘の方は相変わらず続いているようです。

****スーダン中部の村で虐殺か 準軍事組織が襲撃、「百人」死亡****
国軍と準軍事組織「即応支援部隊(RSF)」の戦闘が続くアフリカ北東部スーダンの活動家団体は5日、中部ジャジーラ州の村をRSFが襲撃し、民間人を虐殺した疑いがあると発表した。2回の襲撃で約100人が殺害されたとしている。

RSFは声明で村周辺への攻撃を認めたものの、民間人殺害には触れなかった。

国軍とRSFの戦闘は昨年4月に始まり、1万5千人以上が死亡。停戦交渉は停滞し、収束の兆しは見えていない。ロイター通信によると、RSFは昨年12月に同州の州都ワドマダニを掌握後、州内で小さな村への襲撃を繰り返している。

団体はワドマダニを中心に活動する「ワドマダニ抵抗委員会」。【6月6日 共同】
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RSFは2000年代にスーダン西部ダルフールで、村々を焼き払い、人々を虐殺・強姦して「最悪の人道危機」と呼ばれる状況をもたらした民兵組織「ジャンジャウィード」が母体となっています。

RSFの集団殺害や略奪に対し、国軍は救援要請に応じなかったとも。【6月6日 時事より】

国連人道問題調整事務所(OCHA)によると、6月7日までに民間人への攻撃は1400件にのぼり、1万5550人が犠牲になったとのことです。

軍トップを狙った攻撃も報じられています。

****スーダン軍首脳暗殺未遂か 基地に攻撃、5人死亡 「即応支援部隊」と交戦中****
アフリカ・スーダンで準軍事組織「即応支援部隊(RSF)」との内戦を続ける国軍は31日、北東部の基地に無人機攻撃があり、5人が死亡したと発表した。

ロイター通信によると、基地では同日、軍トップのブルハン統治評議会議長が出席した式典が行われており、暗殺を狙った可能性がある。ブルハン氏は無事とみられる。

犯行声明は出ていない。RSF関係者はロイターに攻撃を否定した。停戦の仲介を目指す米政府は8月14日からスイスで開く協議に軍とRSFを招待しているが、激しい戦闘が続いており、双方が出席するかどうかは不透明だ。
AP通信によると、攻撃が行われたのは式典終了後だったという。

内戦は昨年4月に始まり、国内外の避難民は1000万人を超えた。国内では食料不足など深刻な人道危機も起きている。【7月31日 産経】
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上記記事によれば、一応今月14日からアメリカ主導の協議は予定されているようです。あまり期待はできないようですが。

【人口の20%に当たる1000万人以上が自宅を追われ国内外に避難】
こうした紛争が長期化するなかで、1万5千人、あるいはその10~15倍の犠牲者だけでなく、国内外に逃れた避難民は1千万人を超えています。

****内戦のスーダン、国民の20%が国内外に避難 食料危機も深刻化*****
国際移住機関(IOM)は16日、スーダンで昨年4月に内戦が始まって以来、人口の20%に当たる1000万人以上が自宅を追われたと明らかにした。世界最大の避難危機が悪化し続けている。

また、人口の半数が内戦で食料危機に直面し、人道支援が必要な状況で、その規模は世界最多だと指摘した。

内戦開始以来、220万人以上が国外に逃れ、約780万人が国内で避難している。このほか、過去の内戦で既に280万人が避難しているという。

国連の専門家らは、支援物資輸送が困難なダルフールを離れる最大の理由が暴力から食料危機に変わっていると指摘。

避難民の半数を占めるダルフールからの難民をチャドで訪問した世界保健機関(WHO)の担当者は「私が会った難民は全員、避難の理由に飢えを挙げた。アドレに到着したばかりの女性は、ダルフールで生産していた食料は全て戦闘員に奪われたと報告した」と述べた。【7月17日 ロイター】
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IOMによれば、避難民の半数は18歳未満の子どもとのことです。

【横行する性暴力】
こうした紛争につきものの性暴力も横行しています。

****スーダン内戦で性暴力横行 9歳から60歳の262人が被害 ヒューマン・ライツ・ウォッチが報告****
国際人権団体「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」は、内戦が続くアフリカ・スーダンで女性に対する性暴力が横行しているとする報告書をまとめました。被害者は9歳から60歳に及びます。

スーダンでは去年4月に、軍と準軍事組織「RSF」との戦闘が始まって以来、これまでに1万5000人以上が死亡し、人口の2割にあたる1000万人以上が避難を強いられています。

「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」は29日、スーダンの医療従事者ら42人の証言をまとめた報告書を公表し、首都ハルツームなどでRSFによる性暴力が横行していると明かしました。

報告書によりますと、性暴力や集団暴行の被害者は9歳から60歳までの少女や女性たちで、戦闘が始まってから今年2月までの間で少なくとも262人にのぼります。

多くの女性が性暴力により深刻なけがを負っていて、少なくとも4人がけがが原因で亡くなったということです。

さらに、家族の前で繰り返し暴行された母子の被害や、性暴力により妊娠しても適切な医療処置が受けられず、人工妊娠中絶が叶わなかったケースなどが多数、報告されています。

ヒューマン・ライツ・ウォッチはRSFに申し立てを行ったものの適切な対応は取られなかったとしていて、「国際社会は、スーダンおよびスーダンからの難民を受け入れている近隣諸国への性暴力対策資金を増額すべきだ」と訴えています。【7月31日 TBS NEWS DIG】
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ノーベル平和賞を受賞したコンゴ民主共和国のデニ・ムクウェゲ医師も指摘しているように、紛争においては「武器」としての性暴力が横行します。

****“戦場の武器”としての性暴力****
取材から浮かび上がってきたのは、個々の女性を痛めつけることに加えて、家庭を破壊し、地域社会を崩壊させる性暴力の卑劣さです。

武装グループは、性的な欲望を満たすこと以上に住民たちに恐怖を与え、屈服させるために女性たちを襲っています。銃や弾薬も使わずに、力を誇示する手段として、性暴力がまさに“戦場の武器”になっているのです。【NHK「“戦場の武器”性暴力の根絶を ノーベル平和賞で世界に訴え」】
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【チャドや南スーダンなど周辺国にも影響】
難民が周辺国に押し寄せることで、周辺国にもその影響が及びます。

****急速に深刻化する飢餓と物価高 スーダン周辺国の難民危機に対する取り組み****
チャド国境の町アドレの難民キャンプでは、祖国スーダンのポピュラーな民族音楽がスピーカーから繰り返し流れる中、アフマットさんが足踏みミシンに青い布を送り込んでいます。小さな木が、灼熱の太陽をかろうじて遮っています。

「このキャンプで私にできるのは仕立ての仕事だけです」曲に合わせて頭を揺らしながらこう話すのは35歳の縫製職人、アフマットさん(安全上の理由から名字は非公開)です。「持ち込まれた布をスーダンの民族衣装や、シャツ、ズボンに仕立てます」

アフマットさんが祖国を揺るがす紛争から逃れてチャドに避難したのは、この20年で2度目です。スーダンに平和が戻ることを願いつつも、当分は難しいのではないかとアフマットさんは考えています。
「私の子どもたちが学校に通えるよう、安定した国に住む必要があります」とアフマットさんは話します。

スーダン危機が長引く中、その影響は近隣諸国にも及んでいます。戦争により国外で暮らすことを余儀なくされた200万人を超えるスーダン避難民の半数以上が、チャドと南スーダンに住んでいますが、これらの国でも既に飢餓が深刻化しています。

この地域は8月まで雨季が続きます。道路がぬかるみ、人道支援物資の輸送が困難になるなど、食料不安のリスクが高まっています。

国連WFPは、拡大する食料不安に対応する中、非常に大きな課題に直面しています。例えばチャドでは、難民を含む200万人以上の人びとに、雨季の緊急支援を提供することを目指しています。しかし、資金が逼迫しており、特に南スーダンでは、最も深刻な飢餓の状態にある人への対応で精一杯の状況です。

国連WFPのチャド事務所代表のエンリコ・ポーシリは「リソースが限られている中、チャドで危機的状況にあるコミュニティー内で緊張が高まらないよう安定を維持するためには、適切な支援を遅滞なく広く届けることが非常に重要です。気候変動の打撃、安全保障、経済危機の影響が複合的に絡み合う中で、増大する人道ニーズを将来的に縮小していくためには、レジリエンスへの大規模な投資も必要です」と言います。

より大きな危機への食料支援
南スーダンではすでに約700万人が急性食料不安かそれ以上の深刻な飢餓の段階に直面しており、このうち70万人近くがスーダンから逃れてきた戦争避難民です。スーダンの東ダルフール州から避難してきたザハラさん一家のように、今も毎週何千人もの人が、飢えとトラウマを抱え、国境を越えて流入しています。

「3度目の空爆の後、避難しようと決めました」4児の母ザハラさんは、1歳2カ月の娘、ムーナちゃんを腕の中であやしながら言います。「国境にたどり着くまで2日かかりました。容器に入れた水と、子どもたちのためのビスケットを持って出ましたが、ようやく到着した時、子どもたちは本当にお腹をすかせていました」

それは幼いムーナちゃんにとって過酷な道のりでした。南スーダンの北西部にあるウェドウェイル難民居住地に着くと、ザハラさんはムーナちゃんを保健所に連れて行きました。そこでムーナちゃんは栄養不良と診断されました。

その後、国連WFPの栄養強化食品により体重が増え、再び遊べるようになりました。しかし、人があふれかえる難民キャンプでは、今後大雨となり、水系感染症が拡大する恐れがあります。

問題はそれだけではありません。スーダンでの戦闘で、南スーダンにとって非常に重要な石油の輸出が中断し、経済を大きく悪化させています。南スーダンポンドが60%急落し、食料や燃料の価格は高騰しています。

国連WFPの予測によると、同国の経済危機により、主食の入手が困難になり、さらに50万人の人びとが中程度から重度の飢餓に追い込まれる可能性があります。

「経済危機が起きる前は、子どもたちは1日2回食事ができていましたが、今は無理な状況です」首都ジュバでは、この町出身のメアリー・イケさんが、何か口にできるものを市場で買いながら、こう言います。「子どもたちは朝起きてから夜まで何も食べるものがありません。状況は悪くなるばかりです。子どもが6人いるので、食べさせるのも大変です」

2023年4月にスーダンの紛争が勃発して以来、国連WFPの南スーダン事務所はこれまでに国境を越えた戦争避難民55万7000人近くに支援を行い、現在も流入する人々の支援を続けています。しかし、多くの状況が重なっており、食料不安が最悪の状態に陥る危険性があります。

「南スーダンではすでに人道危機が長期化しており、状況は急速に悪化しています」国連WFPの南スーダン事務所代表のメアリー=エレン・マクグローティーは言います。「私たちが恐れているのは、スーダンの戦争による壊滅的な影響が続き、すでに急性食料不安の状態にある地域にさらに洪水の危機が迫り、飢餓と栄養不良がかつてない水準となることです」

さらに続けて、「深刻な飢餓と栄養不良の波を食い止めるためには、スーダンの停戦と南スーダンの社会的セーフティーネットの強化が必要です」と話しました。

難民が急増
チャドでも食料不安の危機が高まり、雨季が迫る中、事態はさらに悪化すると見られます。この時期、推定340万人のチャド人や難民が深刻な食料不安に直面すると予想され、気候変動の打撃、食料や燃料費の高騰、そして難民危機によって飢餓が深刻化しています。

この14カ月間に、およそ60万人のスーダン難民がこの乾燥したサヘル地域の国に流入し、既にアフリカで最も多くの難民を受け入れている国の一つであるチャドでは、亡命希望者の数が倍増しています。

そのほとんどは、難民によって形成されたチャド東部の39カ所の難民キャンプに住んでいます。縫製職人のアフマットさんのように、多くの人が飢えとトラウマの重荷を背負っています。

「スーダンでは非常に長い間、戦闘状態が続いています。2023年に勃発した戦闘は特に激しいものでした」と話すアフマットさんは、スーダンの西ダルフールの州都エル・ジェニーナ出身です。20年前、最初のダルフール紛争が勃発した時も、アフマットさんは10代でチャドに避難しました。

その後祖国に戻り、エル・ジェニーナで名を知られる仕立屋となりました。電動ミシンを数台、自家用車、そしてバイクを2台所有していました。ですが、攻撃ですべてを奪われ、工房も家も焼き払われました。

「ほとんどの人が家で襲われ、家財を盗まれました」とアフマットさんはエル・ジェニーナでともに暮らした人びとについて語ります。「チャドに向かう途中で多くの人が殺されました。道は多くの死体で覆い尽くされていました」

アフマットさんをはじめ、チャドに住む難民にとって人道支援は頼みの綱です。国連WFPなどの調査によると、多くの難民、そして受け入れ地域の住民が、食料消費レベルが低い、またはボーダーラインの水準にあります。子どもたちの半数近くが貧血に苦しんでいます。

「ここでの生活は楽ではありません」とアフマットさんは言います。
自分の子どもたち、そしてアフマットさんが仕事場にしている屋外の作業場の周りで遊んでいる子どもたちの将来を心配しています。
「私たちはアッラーの救いを待ち望んでいます」とアフマットさん。「いつか私たちの生活が改善する日が来ることを願います」【6月19日 国連WFP】
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ルワンダ  99%超の得票率で大統領選を勝利したカガメ氏は大虐殺復興の「英雄」か、「独裁者」か

2024-07-29 21:21:06 | アフリカ

(【7月14日 日経】)

【疑惑のベネズエラ・マドゥロ大統領の勝利 注目される今後の展開】
注目されていた南米・ベネズエラの大統領選挙は“予想通り”選挙管理委員会による“疑惑の結果発表”となっています。

****ベネズエラ大統領選、出口調査で野党有利も現職が勝利 周辺国が結果疑問視や抗議****
南米ベネズエラで行われた大統領選挙で、出口調査で野党の勝利が確実視されていたにもかかわらず、現職のマドゥロ大統領が勝利したことに対し、周辺国から懸念の声が上がっています。

ベネズエラで28日に行われた大統領選挙は、現職で反米左派のマドゥロ大統領(61)が得票率51%で勝利したと選挙管理委員会が発表しました。 事実上一騎打ちの相手だった野党のゴンサレス氏(74)は44%にとどまったということです。

一方、ベネズエラの調査会社が出した出口調査ではゴンザレス氏の得票率が65%で、マドゥロ氏は14%と予想されていました。

この選挙結果について周辺国の首脳らが相次いで懸念を示しています。

アメリカのブリンケン国務長官は29日、「国民の意思が反映されていないことを懸念している」と述べ、投票結果の詳細を公表するよう求めました。

また、チリのボリッチ大統領は「検証不可能な集計結果は認めない」と述べたほか、ペルーの外相は「ベネズエラ国民の意思の侵害を容認しない」と非難しています。

CNNによりますと、このほかアルゼンチンやグアテマラア、コスタリカなど複数の国の首脳が結果を疑問視する声を上げているということです。【7月29日 テレ朝news】
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もし、マドゥロ大統領が素直に負けを認めたら“サプライズ”でしたが、そういうサプライズは起きず、ここまでは予想された展開。

問題はここからどうなるのか?という話ですが、野党側の抗議行動、(政権側のコントロール下にあるとはされていますが)軍の反応、アメリカなどの関係国・周辺国の対応が注目されます。

【ジェノサイドを経験したアフリカ・ルワンダでは、復興の立役者カガメ大統領が99%超の得票率で勝利、4期目に】
一方、アフリカのルワンダでは7月15日に大統領選挙が行われ、現職カガメ大統領が99%以上の得票率で当選しています。

****カガメ氏勝利、4期目へ=ルワンダ大統領選****
アフリカ中部ルワンダで15日、大統領選の投票が行われ、16日時点の中間開票で現職カガメ氏(66)が99%以上を得票し、再選されることが確実となった。4期目となる。【7月17日 時事】 
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ルワンダでは1994年に起きた約100日間に及ぶ住民同士の凄惨なジェノサイドによって80万人が犠牲になったとされています。
以前から多数派フツと少数派ツチの対立はありましたが、それでもフツとツチは共存して暮らし、両者間の婚姻も普通に見られました。

しかし、1994年4月6日夜、フツ出身のジュベナール・ハビャリマナ大統領(当時)が乗った航空機が首都キガリ上空で撃墜されました。これをきっかけにフツ強硬派民兵組織などによるツチ大虐殺へとつながっていった・・・とされています。(このあたりの虐殺の実態については異論もあります)

****30年たった今も見つかる2千人の骨、殺りくをあおったラジオの教訓 80万人犠牲のルワンダ大虐殺、今も続く悲しみと希望****
今から30年前、アフリカ中央部の小国ルワンダで悲劇が起きた。この国で多数派を占める民族、フツ人主体の政府軍や民兵が1994年4月から7月までの約100日間で、少数派ツチ人と穏健派フツ人の殺りくを繰り広げたルワンダ大虐殺だ。

当時、権力を巡る争いなどが続いていたルワンダで惨劇の引き金となったのは、フツ人の大統領を乗せた航空機が何者かによって首都キガリで撃墜されたことだった。

国際社会の介入が遅れて被害は拡大し、犠牲者は約80万人に達した。(中略)

 ▽家の下に埋まっていた2千人
虐殺の追悼式典を前に訪れたルワンダ南部フエ。学校で子どもたちが打ち鳴らす太鼓の音色が心地よい丘陵地帯に、空き地がぽっかりと口を開けていた。殺りくの現場だったとは想像できないほど、周囲にはのどかな風景が広がる。そんな場所で虐殺の犠牲者の遺骨が見つかったのは、昨年10月のことだった。

遺骨を見つけたのは、住民に住宅の拡張工事を依頼された建設業者だった。バナナの木が生い茂る約50メートル四方の土地で作業を始めたところ、地中から人骨が出てきたのだ。

近隣住民によると、依頼主の女性は遺骨が埋まっていることを知っていたとみられ、口止めのために業者に金を支払おうとしたという。骨は女性の家の下からも見つかった。バナナの木は隠ぺい目的で植えられた可能性があり、地元警察は女性を含む複数人を逮捕した。女性の親族は虐殺への関与をほのめかしたという。

「言葉にならない。家族がここに埋められたかもしれない」
現場で出会った遺族は30年たってもなお生々しい虐殺の記憶に苦しんでいた。両親ときょうだい計8人の遺骨が見つからず、自らも九死に一生を得た生存者団体のメンバー、アリス・ニラバゲニさん(40)。現場の捜索作業などを統括し、この空き地で2060人の遺骨が発見されたと語った。

自身も捜索に加わったニラバゲニさん。「きっとこの中に家族がいるはず」と祈るような気持ちで掘り、土にまみれた骨を一つ一つ丁寧に洗った。だが身元の特定はほとんど進まず、家族の行方も分からないままだ。
全土で虐殺の嵐が吹き荒れていたとはいえ、なぜこの場所に2千人もの遺体が捨てられたのか。

ニラバゲニさんに問うと、「虐殺が起きた時、現場近くには民族を見分けるために検問所が設けられていた」と明かしてくれた。ツチ人を見つけ出すためにフツ人が作った検問所でツチ人が見とがめられて殺害されるたび、この場所に遺棄されたという。当時、ルワンダ国民の身分証には民族を記載する欄があり、たった1枚の紙切れが運命を分けた。

ニラバゲニさん自身は避難先のモスク(イスラム教礼拝所)に押し寄せた男らに暴行を加えられて気を失い、死んだと勘違いされ助かった。だが胸元に残る傷痕が今も生々しく惨劇を物語る。

一緒だった兄2人がなたで切りつけられて目の前で殺された光景が脳裏から離れず、話しながら嗚咽を漏らした。近隣にある大学で運転手をしていた父、優しかった母…安定した一家の幸せな生活は虐殺で破壊された。

近くにある地区の事務所に足を踏み入れると、薄暗い室内に整然と並ぶ大量の骨が目に飛び込んできた。子どもの骨もあり、鈍器で殴られて穴が開いたとみられる頭蓋骨が凶行を物語る。(中略)

虐殺後に就任したカガメ大統領はトップダウンで和解を推進し、加害者と被害者が同じ地区で暮らすことは珍しくない。30年の月日がたち、カガメ氏が追悼式典の演説で「75%近くの国民は35歳未満だ」と指摘したように、多くのルワンダ人にとって虐殺は直接の記憶ではなくなっている。

だが近年もルワンダ各地で遺骨が相次いで見つかり、当時の出来事が過去のものになったとは言えない状況が続く。

加害者についてどう思うかニラバゲニさんに尋ねると、遠くを見やって少し考えてからつぶやいた。「人間は時に動物のように見境がなくなる。彼らには自分がしたことを正直に話してほしい」(後略)【6月23日  47NEWS】
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国際社会にはこの虐殺を阻止できず傍観することになったことへの反省と悔恨があります。

虐殺開始から30年目となる今年4月7日に行われた式典で、カガメ大統領は「国際社会の蔑視もしくは臆病のため、われわれは皆見捨てられた」と国連など国際社会の対応を痛烈に批判しています。【4月8日 AFPより】

この虐殺の主体となったフツ系民兵組織を武力で一掃して実権を掌握したのが、当時ツチ系の反政府武装勢力を率いていたカガメ氏でした。

その後、カガメ氏は混乱の収束につとめ、ツチ・フツの和解、虐殺からの復興、崩壊した経済の立て直しをリードし、その指導力もあってルワンダは毎年7%ほどの成長を実現し、「アフリカの奇跡」とも称されています。

ただ、上記のような虐殺に関する「通説」とは異なる指摘もあります。
そもそもツチ・フツの緊張関係が高まったのは、カガメ氏率いるツチ系武装勢力による侵攻が起きてからであること、虐殺のきっかけとなったハビャリマナ大統領(当時)搭乗航空機撃墜はそのツチ系武装勢力によるものではなかったのかということ、虐殺はフツによるツチや一部フツに対してだけでなく、ツチ系武装勢力などツチによるフツ虐殺も多かったのではないかということ・・・等々、多くの疑問があります。

そのあたりの話には今回は立ち入りません。

【カガメ大統領 批判を許さず、政権存続のためには手段を選ばないという強権的・冷酷な一面も】
いずれにしても、虐殺を収束させ、復興をリードしてきたカガメ大統領が多くの国民から支持されているのは間違いないでしょうが、「99%超の得票率」と言われると、「そんなことってあり得るのか?」という疑問も。

従前よりカガメ大統領については、ルワンダを復興に導いた政策が大きな評価を得る一方、カガメ批判、政府批判を一切許さず、政権存続のためには手段を選ばないという強権的・冷酷な一面も指摘されています。5年前の下記記事でも・・・

*****大虐殺から25年、ルワンダに蔓延する「新たな恐怖」****
政敵の暗殺、ホームレス一掃…復興の立役者カガメ大統領の黒い噂

約80万人が犠牲になった「ルワンダ虐殺」から25年。復興政策を推し進め、目覚ましい経済発展に尽力したポール・カガメ大統領の手腕は国際的に高く評価されている。だが、その一方で政敵を次々と排除し、権力に固執する態度を危険視する向きもある。

「大虐殺」から「アフリカの奇跡」へ
1994年に起きた「ルワンダ虐殺」から今年で25年が過ぎた。(中略)悲しい歴史から四半世紀をへて、ルワンダは大きく変わった。アフリカのなかでは政情も安定しているほうで、2000年以降は平均7%の経済成長を続けている。この見事な復興は周辺国から「アフリカの奇跡」と称されている。

こうしたルワンダの「変貌」の立役者が2000年に大統領に就任したポール・カガメだ。
虐殺が起きた当時、反政府ゲリラ組織「ルワンダ愛国戦線 (RPF)」の幹部だったカガメは武力でルワンダ全土を制圧し、虐殺を終結させた。

1994年7月に新政権が発足すると、カガメは副大統領兼国防相に就任。身分証明書の民族名の記載を廃止したり、元兵士には民族に関係なく平等に社会復帰支援をしたりといった民族融和政策を積極的に推進した。

2000年には、20年以内に中所得国を目指す経済成長戦略「Vision2020」を掲げ、海外からの投資を積極的に呼び込んだ。近年は、アリババやファーウェイを誘致するなど、中国企業との結びつきを強めている。

貧困、医療、教育の改善にも力をいれるほか、女性の地位向上にも努める。ルワンダは女性議員の占める割合が64%と、世界で最も高い比率を誇る。

このようにルワンダを発展に導いたカガメの手腕は国際的に高く評価されているが、その一方で彼には常に黒い噂もつきまとう。

邪魔者は容赦なく排除
AP通信によれば、カガメは自身の支配体制を盤石のものにするため、厳しいメディア規制と言論統制を敷いているという。体制批判をしたメディアはただちにつぶされ、人権団体も市民グループも社会活動を自由におこなうことができない。

ルワンダを取材するイギリス人作家マイケル・ロングは、「ルワンダでは政権を批判する余地がまったくない。カガメの絶大な権力を受け入れるか、国を去るかのいずれだ」と話す。

ルワンダを美しい、理想的な国にするための強硬策は一般市民にも及んでいる。人権団体「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」によれば、ルワンダではホームレスや屋台を営む人たち(多くが女性だ)が不当に逮捕され、密かに拘留されているという。

カガメは政敵も容赦なく排除する。民族融和を謳いながら、現政権の閣僚は彼と同じツチ系で固められている。

1998年にはカガメを痛烈に批判していた元内相のセス・センダションガが亡命先のナイロビで暗殺された。ルワンダ政府の仕業と見られているが、カガメはこれに対し「謝る気はない」とコメントしている。

2014年には対外情報機関の元トップで、数年前から南アフリカで亡命生活を送っていたパトリック・カレゲヤが、首都ヨハネスブルクのホテルで窒息死した状態で発見された。カガメは政府の関与を否定しているが、「祖国を裏切った者は報い受ける」と警告を発した。

2017年の大統領選でカガメは得票率98%で再選を果たし3期目に突入したが、その選挙の際には有力な対抗馬が投獄されている。カガメは「正当な手続きをしたまで」とコメントしたが、人権団体「アムネスティ・インターナショナル」は、「国民の間にカガメに対する恐怖が蔓延している」と話す。

「罪悪感」で手を出せない西側
カガメのこうした独裁化を知りながらも、西側諸国は見て見ぬふりだ。その理由を、トルコメディア「TRTワールド」は、「西側にはルワンダの虐殺を止められなかった罪悪感があるからだ」と説明する。

当時、国連平和維持軍は国連憲章の制約を受けていたため、虐殺が起きてもただ傍観することしかできなかった。ソマリアの人道的介入で多数の死傷者を出したばかりのアメリカも、軍の派遣には消極的だった。

その結果、歴史的にも類のない規模の殺戮が起きた。罪の意識から、虐殺を制圧し、平和を復活させたカガメを西側は批判することができないというのだ。ルワンダ国民は政府の弾圧に対する恐怖から、声を上げることができない。上げたところで、カガメに変わる指導者がいるわけでもない。

当面、カガメの独裁化を阻むものはない。それどころか2015年に憲法が改正されたせいで、カガメは最長2034年まで大統領の座に君臨し続ける可能性がある。(後略)【2019年4月19日 クーリエ・ジャポン】
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そして5年後の今回も。

****ルワンダの大統領選「カガメ氏が4選」得票率は99%、無敵の大統領は英雄か独裁者か****
<虐殺を終わらせた現職のカガメ大統領が4選。経済成長の裏で民主的な投票ではあり得ない強権支配。ほかの候補者はたいてい失格、毎回、実質的に対抗馬はいない...>

ルワンダの大統領選が7月15日に行われ、現職のポール・カガメ大統領が4度目の当選を果たした。カガメの得票率は99%。対立相手のほとんどは立候補が認められず、事実上、不戦勝だった。

カガメは1994年、ツチ人主体の反政府組織「ルワンダ愛国戦線」を率いてフツ人の過激派に勝利し、ツチ人を中心に80万人以上が殺害されたジェノサイド(集団虐殺)を100日間で終結させた。

その後まもなく副大統領に就任し、2000年、前任者の辞任に伴い、議会によって大統領に選出された。

以来、カガメは選挙で連勝している。前回の17年の大統領選でも得票率は約99%で、これは民主的な投票ではあり得ないとの指摘もある。カガメを声高に批判する候補者はさまざまな理由でたいてい失格となるため、毎回、実質的に対抗馬はいない。

今回の選挙では、緑の党のフランク・ハビネザ党首と、元ジャーナリストで無所属のフィリップ・ンパイマナの2人が立候補を認められたが(両者は前回選挙にも出馬)、政治アナリストによれば、彼らには勝利するための資金と選挙運動手段がない。

ルワンダ国民にとってカガメは、民族分裂を終わらせたビジョナリーであり、独裁者だ。多くの国民は、電気、舗装道路といった重要な公共サービスへのアクセスが拡大するなど、カガメの下で実現した経済変革を称賛している。

カガメは汚職に関与した閣僚を罷免し、結果を出さない者には責任を追及してきた。国際団体トランスペアレンシー・インターナショナルによると、ルワンダはアフリカで最も汚職の少ない国の1つだ。

国民は権威主義を受け入れ、不安定さよりも効率性を求めていると専門家らはみている。ルワンダには報道の自由がなく、人権団体や反政府活動家は、カガメが国外で反体制派の暗殺を組織していると非難する。

ヒューマン・ライツ・ウォッチによると、17年の大統領選以降、少なくとも野党議員5人と反体制派やジャーナリスト4人が死亡、あるいは行方不明になっている。

援助が「テロの輸出」に
他国からの多額の援助にもかかわらず、ルワンダは依然として貧しく、マリやニジェールのような紛争に直面しているサハラ南縁諸国と同レベルだ。

国家予算の40%以上を援助に頼っており、外国援助の少なくとも一部は、近隣諸国への「テロの輸出」に使われているとも指摘されている。

コンゴ(旧ザイール)のフェリックス・チセケディ大統領は、ルワンダはコンゴに逃れた大量虐殺の加害者を捕らえることを口実に、民間人を虐殺し、コンゴの鉱物資源を略奪していると非難している。

アメリカと国連は、ルワンダがコンゴ東部の反政府勢力「M23」を支援していると主張している。国連の専門家による最新の報告書によると、M23を支援するルワンダ兵は3000〜4000人に上る。

安全保障の専門家が懸念するのは、ルワンダとコンゴ間の戦争と、「カガメ後」だ。ルワンダ政府は15年に憲法を改正し、カガメが最長で2034年まで大統領にとどまることを可能にした。

彼の下で民主主義制度が完全に損なわれていることを考えると、ポスト・カガメの時代は不安定さが増す恐れがある。【7月29日 Newsweek】
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おそらくカガメ批判をする候補の出馬を認めても、これまでの実績を考えればカガメ大統領が勝利すると思いますが、なぜそこまで批判封じ込めに走るのか・・・強権支配者の心理は理解しがたいところがあります。

“カガメ大統領は『日本経済新聞』記者による取材に対して「完璧な指導者などいない」「ルワンダにふさわしい統治をしている」と語り、強権的との批判は「気にしない」と述べている。”【ウィキペディア】
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ケニア  財政難対策の増税案で議会突入、死者20人超の混乱 マイクロファイナンスの問題も

2024-07-02 22:39:03 | アフリカ

(ケニア・ナイロビで、増税案に抗議して警察と対峙(たいじ)するデモ参加者(2024年6月25日撮影)【6月26日 AFP】)

【財政難対策の増税案で混乱】
東アフリカのケニアは民主主義政治においても、経済成長においても、“アフリカの優等生”と評されるような順調な状況にありましたが、その評価に綻びが生じたのが2007年の大統領選挙結果をめぐる暴動でした。

不正疑惑を感じさせる集計結果を受けて、候補者の出身部族の対立が絡んだ暴動に発展、1100人を超える死者を出す混乱となりました。

その後も、2017年8月の大統領選挙結果を最高裁が無効にし、やり直し選挙では野党候補がボイコットするなど混乱が続いています。

現大統領のルト氏は2022年選挙で当選しましたが、こときも野党対立候補は、選管委員の半数が疑義を呈しているなどとして、委員長が発表した選挙結果の受け入れを拒否しました。

このように政治的には不安定な面を抱えています。

経済的には、独立以来、資本主義体制を堅持し、東アフリカでは最も経済の発達した国とされています。工業化は他のアフリカ諸国と比べると進んでいる方で、特に製造業の発展が著しいとも。【ウィキペディアより】
2015年には中所得国入りを果たしています。

ただ、コロナの影響も受け、財政赤字額は依然として高いレベルにあり、公的債務の対GDP比は拡大し続けているという問題も。

****ケニア、全方位外交で債務不履行回避 経済・安保の要衝****
ケニアのルト大統領は日本経済新聞のインタビューで「デフォルト(債務不履行)はありえない」と強調した。

積極的な外交活動で知られるルト氏は財政面で依存度の高い中国だけでなく、西側諸国とも関係を構築する「全方位外交」でデフォルトを回避する狙い。ケニアは安全保障上の要衝で、西側諸国も不安定化を避けたい考えだ。

ケニアを巡ってはかねてデフォルトリスクがささやかれていた。国際通貨基金(IMF)は2020年、同国の債務リスクを「高い」に分類した。

ケニア国家統計局によると同国の公的債務は22年に約8兆ケニアシリング(7兆円超)。18年の2倍弱に膨らんだ。国内総生産(GDP)に占める比率は7割に上る。前政権下でのインフラ整備や、新型コロナウイルス禍での経済対策が財政を圧迫している。

高水準にあるエネルギー価格や通貨安、対外債務の増加などにより、足元では多くの新興国でデフォルトのリスクが高まっている。ルト氏は「私たちは他のすべての国と同じような場所にいる」と述べ、財政危機がケニアだけの問題ではないと訴えた。

懸念されているのが中国依存の高さだ。統計局によると、ケニアの2国間債務に占める中国の割合は22年に73%に上る。

首都ナイロビと東アフリカ最大規模の港湾都市モンバサをつなぐ鉄道が象徴的だ。中国から数十億ドルの融資を受けて建設したものの想定ほど利用が伸びなかった。過剰な債務を負わせてインフラの使用権を中国が握る「債務のワナ」だとの指摘が出ている。

1月には中国主導のアジアインフラ投資銀行(AIIB)の加盟を閣議決定した。日本貿易振興機構(ジェトロ)の佐藤丈治ナイロビ事務所長は「デフォルトリスクが意識され資金調達の手段が狭まる中、中国は最後の頼りどころになってしまった」と分析する。

危機感もにじむ。ルト氏は「1つの借入先に依存するのは良くない」と強調する。「資金調達の手段を多様化する必要がある」と繰り返し、様々な国と関係を築く「全方位外交」で財政の立て直しを図る姿勢を示した。

実際にルト氏は22年9月の就任以降、欧米を中心に積極的な外交を展開してきた。ジェトロによると、外遊はこれまでに約50回に上るという。ルト氏は「IMFや世界銀行と素晴らしい関係を築いている」とも語る。

今回の訪日もこうした外交活動の一環だ。滞在中には岸田文雄首相と会談し、円建て債券「サムライ債」に関する覚書を交わした。

IMFによると、23年の実質GDP成長率は5%と比較的高水準にある。農業や観光が回復し前の年より0.2ポイント上昇した。

西側諸国にとってもケニアと中国の接近は避けたいものとみられる。

ルト氏自身が「私たちは多くの国と素晴らしい関係にある」という通り、アフリカの中では比較的民主的なケニアはもともと西側とのつながりが深く、企業のアフリカ進出の足がかりになってきた。欧州やアジアからのアクセスがいいモンバサ港を有すことから「東アフリカの玄関口」とも称され、安全保障上の重要性も高い。

「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」を推進する日本もインド太平洋とアフリカをつなぐ場所あるケニアを重要なパートナーと位置づける。今回の首脳会談で日本とケニアは防衛協力でも合意した。

ケニア情勢に詳しい京都大大学院の高橋基樹教授(アフリカ経済・開発援助)は「イエメンの親イラン武装組織フーシによる紅海での商船攻撃やスーダンの内戦など周辺の情勢が不安定になる中、ケニアの安保上の重要性はさらに増している」と指摘する。【2月11日 日経】
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財政問題に加えて、他国同様に物価高(前年比5%超)も進行しています。

上記のような厳しい財政事情を受けて、ルト大統領は増税案を発表しましたが、これが生活に苦しむ国民の怒りに火をつけました。

****ケニアでデモ隊が議会に突入、10人死亡か 火災発生で議員避難****
ケニアの首都ナイロビで25日、新たな税金を導入する法案に反対する数千人規模のデモ隊が議会に突入し、治安部隊と衝突した。

AP通信などによると、治安部隊は実弾を発砲し、これまでに少なくとも10人が死亡、50人が負傷したとの情報がある。議会の建物は一部で火災が起き、中にいた議員はトンネルを通じて避難したという。

英BBCなどによると、法案は日用品に新たに課税する内容で、当初はパンに16%、料理油に25%――などの税金を課す計画だった。生理用品や子供用のおむつなども値上がりが見込まれており、反発が強まっていた。

抗議デモを受け、議会は25日、パンへの課税を削除した法案を可決したが、デモはおさまっていない。施行にはルト大統領の署名が必要だという。

デモに参加した男性はロイター通信に対し「議会を閉鎖し、議員は全員、辞職するよう求める。新たな政府を樹立すべきだ」と話した。【6月25日 毎日】
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更に混乱は拡大。

****ケニアのデモ、死者23人に 国会突入、治安部隊発砲****
ケニアの首都ナイロビなどで25日に起きた反増税デモで、地元医師会は26日、治安部隊の発砲による死者が少なくとも23人に上り、約30人が負傷したと明らかにした。ロイター通信が報じた。ケニアでは市民が物価高騰にあえぎ、財政改善を目的とする政府の増税策に対する抗議活動が各地に広がった。

ナイロビでは暴徒化した若者が封鎖を突破して国会に突入。敷地内の建物が燃えて議員らが避難を余儀なくされた。抗議活動は、ルト大統領の地盤を含む大半の自治体で起きた。

アフリカでは比較的政情が安定しているケニアでの国会突入は異例。米国を始めとする各国が相次いで懸念を表明した。【6月26日 共同】
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混乱を受けて、ルト大統領は増税案を撤回することを明らかにしています。

****ケニア大統領、抗議拡大で増税法案撤回へ****
ケニアのルト大統領は26日、全国的な抗議活動の拡大を受け、議会で可決された増税法案に署名しないと明らかにした。法案は撤回される見通し。【6月26日 共同】
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ルト大統領が増税法案を撤回した後も混乱はおさまらず、27日も首都ナイロビ近郊ではデモ隊と警察との衝突で少なくとも2人が死亡したほか、ケニア西部ホマベイでは警察がデモ隊に発砲する事態となっています。

その後は混乱のニュースは目にしていませんので、それなりにおさまってきているのでしょう。

【生活苦の若者らを更に追い込むマイクロファイナンスの実態】
この混乱の背景にある若者らの生活苦を、銀行ローンを使えないような貧困層向けの無担保小口融資“マイクロファイナンス”という別視点からとらえたのが下記記事。

****ケニアで若者の怒りが爆発 反増税デモの背景「マイクロファイナンスの闇」とは?****
<貧困層に公正な「成功の機会」を与えるはずのマイクロファイナンスが、民間業者によって短期・高金利の「略奪的な貸し付け」に。若者たちの首を絞めている──>

経済不安に揺れるケニアで6月25日、増税を含む財政法案に抗議して数千人のデモ隊が議会を襲撃。ウィリアム・ルト大統領は法案を撤回した。

しかし、今回の騒動の根本的な原因は、しばらく前からくすぶっていた。ケニアの若者は、自分たちに不利な経済的・金融的インフラの中で生きていくのに必死なのだ。

その顕著な例が、貧困層向けの小口融資であるマイクロファイナンスだ。

ケニア南部の海岸の町ウクンダでは、安定した仕事はなかなか望めない。29歳で独身のサミュエルはボダボダ(バイクタクシー)で勝負しようと決めた。

4カ月をかけて資金をため、2022年7月に中国製バイクを購入した。1058ドルのうち10%の頭金を払い、残りはフィンテック(IT技術を使った金融サービス)業者でローンを組んだ。手数料が170ドル。12カ月払いで月利4%、年利にすると48%。利息だけで450ドルを超えた。

ボダボダの運転手の収入は1日4~8ドル。1年間、休みなしで働いた。週29ドルの返済に加えて、家賃、食費、電話代、ガソリン代、さらには家族への仕送り。何とか食いつないでローンを完済し、バイクは自分のものになった。

サミュエルのように幸運な人は決して多くない。34歳で3児の父のジュマは、23年2月にサミュエルと同じフィンテック業者と契約して同じ種類のバイクを購入した。

生活費がかかるジュマは、月利6.6%、年利79.2%の18カ月ローンを組まざるを得なかった。返済総額はバイクの価格の2倍近くになる。家計が重くのしかかり、すぐに返済が滞りそうになった。

ケニアでは近年、民間業者のマイクロファイナンスが普及しており、貧困者の多くが似たような苦境に直面している。

若者の失業率は67%と高く、このような融資は、生活費を稼ぐために小規模ビジネスに参入する際の、簡単だがリスクの高い手法になっている。

そして、略奪的な貸し付けを含む金融システムに対する不満が、生活費の高騰で大きな打撃を受けている若者をデモへと駆り立てた。

経済の安定を目指すグローバルサウス全域に、こうした融資の罠が張り巡らされている。マイクロファイナンスの慣行は、かつて多くの慈善家や投資家が期待したように個人に力を与えるどころか、略奪的になっていった。

略奪される社会の弱者
1990年代にマイクロファイナンスが広まり始めた当初は、少額を低金利で貸し出す仕組みだった。しかし近年は、広く利用できるマイクロクレジットの大半が、民間のフィンテック業者による短期で高金利の融資だ。

経済的に安定していない個人に融資することで負うリスクにより、貸し手は高い金利を正当化できると主張する。だが、借り手は莫大な利息が上積みされ、返済が追い付かずに破綻してもローンが残る。

これは必然的な結果ではない。ケニア政府も国際社会も、略奪的な貸し付けを取り締まる手段を持っている。適切な政策によって、マイクロファイナンスの本来の目的どおり、公正な成功の機会を与えられれば経済発展の原動力になり得る人々を保護できるはずだ。

グローバルサウスでは多くの民間のマイクロファイナンスが、イタリアの経済学者リサ・クロサトとルチア・ダッラ・ペッレグリナの言う「理不尽な高利貸し」になっている。「高利貸し契約の本質を知らない借り手に、過大な金利を課している」のだ。

ただし、ケニアの貧困者が契約の結末を理解しているとしても、選択肢はほとんどない。全額を前払いすることは不可能だ。

また、ケニアは近隣諸国に比べて金融セクターが発展しているとはいえ、多くの人にとって銀行融資は手が届かない。銀行口座を持っているのは全成人の半数、クレジットカード保有者は6%、デビットカード保有者は22%、住宅ローンを組めるのはわずか11%だ(いずれも推定)。

略奪的な融資に対し、ケニア政府が辛うじて手綱を締めたと言えるのは、22年3月にデジタル融資市場の規制を強化する新しい法律を可決したことだ。業界はケニア中央銀行の管轄下に置かれ、デジタル金融業者とその商品の認可と登録を標準化する枠組みが導入された。

正しい方向に一歩進んだのは確かだが、この法律には金利や手数料の規制がなく、略奪的なデジタル融資の抑制にはつながらなかった。高利貸しの具体的な防止策を導入できなかったのは、個人だけでなく国の中長期的成長と安定にとっても問題だ。

略奪的貸し付けの影響は懐具合を超えて、広範に及ぶ。最低限の生活もままならない状況に借り手を閉じ込め、ひいては教育、結婚、子育ての機会や健康を奪いかねない。

さらにケニア中央銀行は昨年12月、一部の金融業者が新法の抜け穴を悪用し、適切な監督を受けずに無許可で営業していると述べた。そうした業者の中には、バイク用ローンや資産担保融資を提供する大手5社も含まれていた。
民間に代わって融資を行おうと、政府も努力している。

ルトは22年の大統領選で、野心はあるが仕事に恵まれない若者を支援すると公約。大統領に就任すると速やかに、経済を底辺から刺激するという触れ込みで「ハスラー・ファンド」を設立した。今後5年間で約3億8700万ドルを個人や中小企業の経営者に融資するプログラムだ。

ルトの取り組みを一部のアナリストは高く評価し、民間業者は金利の引き下げを迫られるはずだと予想する。一方で若者層にはメリットが少なく、経済刺激策としての効果は限定的だとする声もある。

取り組みがケニア経済に与える影響はまだ見えない。だが返済期間が短く、対象が正式に登録された事業に限られるなどの制約があるため、若者にとってハスラーの小規模事業者向けローンは民間業者の代わりにはなりにくい。

公式サイトによれば、ハスラーの融資実績は約5万4000件の事業に総額およそ138万ドルと伸び悩んでいる。利用者の大半が選ぶのは個人向け融資で、こちらは約4億800万ドルをおよそ2300万人に貸し、借り手は急な出費や生活費に役立てている。

バイクタクシー業を営むサミュエルとジュマにとって、ハスラーの小規模事業者向け融資は選択肢になかった。彼らは多くのケニア人と同様に、金利は格段に高いが返済期間の長い民間業者を利用した。

2人が金を借りたフィンテック企業ワトゥ・クレジットは2015年の創業で、ウェブサイトにはアフリカ7カ国で「融資実績150万件以上」の文字が躍る。ワトゥも、同じくバイク用ローンを提供するモゴも、融資の条件は似たり寄ったりだ。

どちらもケニア中央銀行に名指しで無許可営業を批判された大手。借り手に無理のない借り入れを促すツールやトレーニングを提供しているが、効果の程は不明だ。

求められるのは法整備
マイクロファイナンスには人々に本物のチャンスを与える力がある。金融セクターが未発達のグローバルサウスで個人事業主をサポートするのがマイクロファイナンスのコンセプトであり、政策次第では経済成長の原動力になる。

政府と国際社会は略奪的貸し付けで身動きが取れなくなった人々を保護するために、規制を設ける必要がある。
国内法が功を奏した例もある。アメリカでは45の州と首都ワシントンが反略奪的貸し付け法を導入し、金利に上限を定めた。

国際レベルでは民間の融資が開発目標を損なうのを防ぐため、世界銀行や米国際開発金融公社(DFC)がもっと積極的に動くべきだ。

例えば世界銀行グループの国際金融公社(IFC)はマイクロファイナンスに数十億ドルを拠出してきた。出資先はハイリスクなプロジェクトを支えるマイクロファイナンスだが、そうしたサービスが悪質な融資を行っていないかどうかの確認には一層の努力が求められる。

高利貸しを取り締まる法律は、経済をより持続可能な形で成長させ、より公正で安定した社会を実現するために必要な保護をケニアに与える。

法整備が整わない限り、サミュエルやジュマのような若者は苦境から抜け出せない。彼らは金融業者、つまりは市場に運命を委ねた。政府や国際機関、銀行はそうした人々の信頼にそろそろ行動で応えるベきだろう。
必要なのは貧困層への増税ではなく市民の成功を後押しする公正な環境づくりだ。【7月2日 Newsweek】
*******************

本来、マイクロファイナンスはバングラデシュのユヌス氏(ノーベル賞受賞)がグラミン銀行として広めた取組です。「施しは貧困の解決にはならない」とする同氏は、農村の主婦などに牛を飼ったり、小売り店舗を営む少額資金を貸付けて起業をうながすことで貧困からの脱出を支援しました。

単に貸すだけでなく、経営観念を教え、確実な返済を促し、そのためには連帯責任制度も。

ユヌシ氏のような明確な目的意識がある指導者や組織が行っている状況では、貧困からの脱出手段として機能するマイクロファイナンスですが、仕組みが拡散するなかで、ケニアのような単なる貧困層向けの「理不尽な高利貸し」と化す危険も。

この問題は、以前から、各地で見られる現象で、2012年3月19日ブログ“アフガニスタン 米兵住民殺害事件による情勢流動化 女性教育とマイクロファイナンス”でも取り上げました。

ユヌス氏とは政治的対立もあったバングラデシュのハシナ首相はマイクロファイナンスを「貧困層にカネを貸して潤う吸血鬼」と批判しています。 活かすも殺すも運用・管理次第でしょう。
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南アフリカ 与党過半数を失い白人政党と連立 グローバルサウス外交にも変化が

2024-06-16 23:10:03 | アフリカ

(南アフリカ大統領に再任されて笑顔を見せるシリル・ラマポーザ氏(14日、ケープタウン)【6月15日 BBC】 

【グローバルサウス 大国による紛争を批判 したたかな天秤外交も】
****したたかなグローバルサウスの外交 覇権争い続ける米・中・露に落胆 対立を逆手にとった天秤外交も****
今日、ウクライナや中東では戦争が続き、台湾では依然として軍事的な潜在的脅威が漂っている。しかし、それらをよく見ると、どれでも大国が絡んでいる。

ウクライナではロシアが戦争の当事者となり、米国などがウクライナを背後で支援している。中東ではイスラエルによるガザ地区への容赦のない攻撃が続き、米国はネタニヤフ政権に不満を募らせながらもイスラエル支持に立場を維持している。台湾では米中が紛争の当事者となる可能性が非常に高い。

こういった状況に、ASEANやインド、アフリカや中南米などグローバルサウスの国々はどう感じているのだろうか。

グローバサウスは、本来世界のあらゆる問題でリーダーシップを発揮すべき大国が争い合い、むしろ途上国の経済成長の阻害要因になっていることに強い不満を抱いている。

そういった声は相次いで聞かれる。たとえば、最近シンガポールで開催されたアジア安全保障会議、通称シャングリラ・ダイアローグの席で、インドネシア次期大統領であるプラボウォ国防相は、米中対立など地政学的な緊張の高まりにグローバルサウスは幻滅しており、大国は人類の共通の利益のために責任を持って行動するべきだとの認識を示した。

プラボウォ国防相は昨年の同会議でも、米中対立を皮肉交じりに新冷戦と呼び、大国間対立の激化に強い警戒感を滲ませ、フィリピンのガルベス国防相も昨年のシャングリラ・ダイアローグで同様の見解を示した。

東南アジアの国々だけではない。グローバルサウスの盟主を自認するインドのモディ首相は2022年9月、ウズベキスタンで開催された上海協力機構の会議に合わせてプーチン大統領と会談し、今は戦争する時代ではないとウクライナ侵攻を明確に否定した。

インドは伝統的に全方位外交を展開し、どの陣営とも癒着しない非同盟主義を貫くが、モディ政権もクアッドで日米豪との関係を重視する一方、エネルギー分野などではロシアとの関係を維持している。これも大国間競争とは一線を画す、それに不満を覚えるインドの現状と言えるだろう・

また、ウクライナのゼレンスキー大統領は昨年9月、国連総会の一般教書演説で講演し、諸外国が対ロシアで一致団結する重要性を示したが、グローバルサウスの国々の外交官たちの欠席、空席が目立った。

一昨年、ゼレンスキー大統領はビデオ演説だったが、その時は外交官たちの間でスタンディングオベーションが起きたことから、この1年で“ウクライナ熱”が大きく冷え込んだことが考えられる。

グローバルサウスが大国の争いに強い不満を抱いていることは確かだが、反対にそれを巧みに利用し、実利を得ようとする思惑も見え隠れする。

今日、米中は如何にグローバルサウスを自らの陣営に引き込むかで競争を展開しているが、グローバルサウスからするとそれを天秤にかけることができる。

要は、中国に接近する姿勢を米国に示すことで米国から譲歩や支援を獲得し、反対に米国に接近する姿勢を中国に見せることで見返りを得ようという行動が可能だ。今後、こういった天秤外交を強化するケースがグローバルサウスの中から増えてくる可能性がある。【6月16日 治安太郎氏 まいどなニュース】
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【南ア アパルトヘイト廃止以来国政を担ってきた与党が過半数を失い白人政党と連立】
インドなどとともにグローバルサウスのリーダー国を自認してきた国の一つが南アフリカですが、大きな帰路に立っています。

故マンデラ元大統領の指導でアパルトヘイトを克服し、以来、国民の圧倒的信頼を受けて南アフリカ政治を牽引してきた与党「アフリカ民族会議」(ANC)は、汚職・腐敗、失業、電力不足、治安悪化といった問題を解決できず、その偉大な政治遺産を次第に食いつぶし、5月29日に行われた総選挙ではついに過半数を失いました。

****南ア大統領、主要政党に協力呼びかけ 与党過半数割れで連立協議念頭*****
南アフリカのラマポーザ大統領は、下院総選挙で与党「アフリカ民族会議」(ANC)の過半数議席割れが2日に確定したことを受け、連立協議を念頭に主要政党へ向けて積極的な協力を呼びかけた。

最終的な開票結果によると、ANCの得票率は前回2019年選挙時の57.5%から40.2%に低下し、それに伴って議席数は下院定数400のうち159と、従来の230を大きく減らして過半数に届かなくなる。かつて故マンデラ元大統領に率いられて30年にわたって政権を担ってきた同党としては、最悪の結果となった。

背景には高い失業率や大きな格差、頻発する停電などを巡る国民の怒りや不満があるとみられている。

ANCは第1党の座を維持したものの、政権継続のためには連立相手を探す必要がある。こうした中でラマポーザ氏は「南ア国民は彼らが投票した各政党に対して共通項を見つけ出し、意見の違いを克服して、国民全員のためになるよう協調することを期待している。それが国民の声だ。今こそ政治家全てが国家を第一に考える時だ」と発言した。

選挙結果を踏まえてANCの指導部は4日に会合を開き、今後の基本方針を決める見通し。

外部でラマポーザ氏退任の観測も出ているが、ANC幹部や支持母体の労組は同氏の続投を支持する姿勢を示している。

一方、第2党で白人主体の「民主同盟」(DA)のジョン・スティーンハイセン党首は、他党と政権協議を行うための専門チームを発足させたと明らかにした。

企業や海外投資家らは、ANCとDAの連立政権がより好ましいとの見方をしている。ANCを離脱したズマ前大統領が率いる「民族の槍」(MK)や、急進的な「経済開放の闘士」(EEF)が連立に加われば、政治や経済の混乱が懸念されるためだ。【6月3日 ロイター】
*****************

結局、第2党で白人主体の「民主同盟」(DA)との連立によるラマポーザ大統領続投が決まりました。

*****ラマポーザ大統領が続投、連立政権樹立で合意 南アフリカ*****
南アフリカで5月29日に行われた総選挙で、30年前のアパルトヘイト(人種隔離政策)撤廃以来初めて過半数議席を失った与党「アフリカ民族会議(ANC)」が、野党との連立で合意した。それに伴い、14日の議会投票で、ANCを率いる現職のシリル・ラマポーザ大統領の再任が決まった。

ANCは、第2党となった中道右派「民主同盟(DA)」や複数の小規模政党と連立を組む。

ラマポーザ大統領は勝利演説で、新しい連立政権の誕生を称え、有権者は各指導者が「我が国のすべての人々のために行動し、連携する」ことを期待していると述べた。

先月末の総選挙で、ANCは30年ぶりに議会の過半数を失った。得票率はANCが40%、続いてDAが22%だった。この数週間、ANCがどこと連立を組むのか憶測を呼んでいた。
ANCのフィキレ・ムバルラ幹事長は、連立合意は「注目すべき一歩」だと述べた。

連立政権の樹立によって、2018年の激しい権力闘争の末にジェイコブ・ズマ氏に代わり大統領とANCトップに就任したラマポーザ氏は、権力を維持できることとなった。
ラマポーザ氏は今後、DAのメンバーを含め、閣僚ポストの割り当てを決定する。

複数政党の連立合意には、ANCを離党したメンバーが立ち上げた2政党は参加していない。有権者が求める経済改革を連立政権が実現できなかった場合は、こうした政党への支持が増える見通し。ただ、多くの国民は今回の前例のない大連立が成功することを望んでいると、世論調査は示している。(中略)

前例のない連立
数十年にわたりライバル関係にある、中道右派のDAとANCの連立は前例がない。

マンデラ元大統領のもと、ANCは人種差別的な政策、アパルトヘイトに反対する運動を主導し、南アフリカ初の民主的な選挙で勝利を収めた。

DAに批判的な人々は、DAがアパルトヘイト時代に築き上げた、少数派の白人による経済的特権を守ろうとしていると非難している。DA側はこれを否定している。

DAのジョン・スティーンハイセン党首は、14日遅くにケープタウンで議員を前に演説し、「今日は我が国にとって歴史的な日だ。新たな章の始まりだと、私は思う」と述べた。

国民議会(下院)はANCから議長を任命し、DAは副議長ポストを得た。

連立合意後に演説した党首の中には、2013年にANCを離党して「経済的解放の闘士」(EFF)を立ち上げたジュリアス・マレマ党首も含まれる。

マレマ氏はEFFは「南アフリカ国民の結果と声」を受け入れるとしつつ、「我々は、南アフリカの経済と生産手段に対する白人の独占力を強化するための、この政略的な連立には同意しない」と述べた。【6月15日 BBC】
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「理念」としては、黒人の地位向上を求めてきた黒人政党ANCと、白人の利益を代表するDAが連立して国勢を行うというのは“あるべき姿”と見ることも可能ですが、現実問題としては、依然として大きく残存する人種的な経済格差を前にして、黒人政党と白人政党が一体となって政策を遂行できるのかは、非常に難しいところです。

ただ、その取り組みに失敗すれば、急進的な黒人の地位向上を求めるズマ前大統領の政党「民族の槍」(MK)やマレマ氏の「経済的解放の闘士」(EFF)が更に台頭し、南ア政治・経済は不安定化することが予想されます。

【欧米寄りのDAとの連立で、グローバルサウス外交にも変化が】
連立を組む以上、外交面でもANCはDAに妥協することが必要で、これまで南アがとってきたグローバルサウスのリーダー国という役回りも難しくなるでしょう。

****ロシア包囲網に加わらず中立の南アフリカ、連立政権でグローバル・サウス外交に岐路****
南アフリカ国民議会は14日、シリル・ラマポーザ大統領の続投を決めた。アパルトヘイト(人種隔離政策)と闘った与党アフリカ民族会議(ANC)と、白人らが支持基盤の民主同盟(DA)との初の連立政権が誕生する。
 
(中略)最大野党DAは、ポピュリズムや過激な黒人優遇策を掲げる野党との連立を拒否。ANCは、ビジネス界に支持基盤があり、現実路線のDAとの連立を選んだ。少数政党も加わる見込みだ。
 
連立によって外交政策は転換を余儀なくされそうだ。ロシアのウクライナ侵略を巡っては中立路線を維持し、米欧主導の対露包囲網に加わっていない。

侵略後も中露と軍事演習を行うなど盟友関係を絶たず、新興5か国(BRICS)首脳会議では、中露が米欧への対抗軸として掲げる多国間主義に同調している。

DAはロシアに批判的で、ビジネス環境の向上を重視するため欧米寄りだ。中立路線の維持は難しくなる。
 
アパルトヘイト闘争を経て民主主義を勝ち取った南アに信頼を寄せる国は多く、南アはグローバル・サウス外交で主導的な役割を果たしてきたが外交の表舞台から遠のきそうだ。
 
「白人の任命、リーダーシップに対する反発は根強く、党内の対立は深い」(ノースウェスト大のアンドレ・ドゥベンヘイガー教授)として連立の行方を危惧する声がある。

特にANC内で横行する汚職にDAがメスを入れようとすれば政権内の対立は不可避となる。経済を巡ってもリベラル重視のDAと社会主義的な左派路線が根底にあるANCには隔たりがある。
 
ラマポーザ氏は「我が国の命運にとって歴史的な分岐点だ。我々は団結せねばならない」と強調した。【6月16日 読売】
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ラマポーザ大統領にとっては極めて難しい連立ですが、前述のように失敗すると南アは一気に不安定化する危険があります。
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