孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

コンゴ  反政府勢力M23の攻勢止まらず 拡大する子供への性暴力・徴兵 鉱物資源をめぐる争い

2025-02-16 23:10:37 | アフリカ

(武力衝突によって、北キブ州のカニャルチニャからゴマへ、6人の子どもを連れて避難してきた母親のマシカさん。「この戦いが終わり、私たち家族が故郷の村へ戻れるように、助けてほしい」と言う(コンゴ民主共和国、2025年2月4日撮影)【2月13日 ユニセフ】)

【ツチ系反政府勢力M23 東部主要都市ゴマを制圧して南下、ブカブ空港も制圧】
アフリカ中部コンゴ(旧ザイール)で政府軍と隣国ルワンダの支援もうけているとされるツチ系反政府勢力「3月23日運動(M23)」の衝突が激化していることは、1月29日ブログ“コンゴ ルワンダ支援の反政府勢力M23の攻勢 注目される米トランプ政権の対応”で取り上げました。

コンゴで内戦が続く背景、豊富な資源の存在がそうした混乱を助長していることなどについては、上記ブログをご覧ください。

前回は、M23が東部の主要都市ゴマに侵攻・制圧したようだ・・・というあたりまででしたが、その後も、世界がトランプだ、ウクライナだ、パレスチナだと大騒ぎしている間にもM23の進撃は続いています。

****コンゴ武装勢力、南へ進軍 大統領は失地回復作戦の意向****
ルワンダが支援するコンゴ民主共和国(旧ザイール)の反政府勢力「M23」は東部最大の都市ゴマを掌握した後、29日には南キブ州の州都ブカブを目指して進軍した。コンゴのチセケディ大統領は同日夜、失地回復作戦を計画していると述べた。

チセケディ氏は国民に向け、外交的解決が望ましいとしながらも、軍事的な反撃に出る意向を示した。

東アフリカ共同体(EAC)は緊急首脳会議を開き、コンゴ東部での即時停戦を呼びかけるとともに、コンゴに対してM23と交渉するよう求めた。チケセディ氏は会議に出席せず、ルワンダのカガメ大統領は出席した。

ゴマでは29日、反政府勢力が掌握を強め、ルワンダとの国境をパトロールしていた。

ゴマ郊外のいくつかの地区では銃声が聞こえ、27日の戦闘による遺体が路上に放置され、病院はパンク状態となり、国連平和維持軍は基地に避難していた。【1月30日 ロイター】
***********************

“国連平和維持軍は基地に避難”・・・・このあたりが国連平和維持活動の限界であり、国連は自分たちを守ってくれないと住民からも信頼されない所以でもあります。

“国連は国の安定化を図るため、長年、PKO部隊を東部地域に派遣していたが、大きな成果を挙げられず、2023年12月に撤退開始。今年12月までに撤退完了する予定だ。”【1月31日 テレ朝news】

かねてより同じツチ系のM23を支援していると見られているルワンダ軍も国境を越えたとも。

****ルワンダ軍、コンゴ越境か 東部州都へ、紛争拡大恐れ****
国連のドゥジャリク事務総長報道官は30日、コンゴ(旧ザイール)の反政府勢力「3月23日運動(M23)」を支援している疑いがある隣国ルワンダの軍部隊が、コンゴ東部南キブ州の州都ブカブを目指して越境したとの報告があると明らかにした。

M23とルワンダ軍はコンゴ東部北キブ州の州都ゴマに既に進出しているとされ、コンゴで長年続く紛争が拡大する恐れが出ている。

ドゥジャリク氏はニューヨークでの記者会見で、ゴマで散発的な戦闘が続く一方、M23もブカブに向けて南進していると説明。情勢が極めて不安定になっており、水や食料の不足から人道危機が悪化する可能性があると指摘した。【1月31日 共同】
**********************

M23は2月4日から人道上の理由で一方的に停戦すると発表。

****コンゴ民主共和国 反政府勢力が停戦を宣言****
コンゴ民主共和国の反政府勢力「M23」は3日、SNSを更新し「人道的な理由で4日から停戦を宣言する」と一方的に声明を出しました。 停戦の期限や政府側の同意が得られているかどうか言及しておらず、実現するかは不透明です。

「M23」は東部にあるブカブを目指して進軍しているとされていますが、声明では「ブカブを占領するつもりはない」としています。(後略)【2月4日 ABEMA Times】
********************

しかし、どういう経緯かはわかりませんが停戦は機能せず、戦闘は継続、被害・犠牲者は拡大、M23は依然として南キブ州の州都ブカブを目指して南下しています。

****コンゴ民主共和国での衝突続く 犠牲者3000人近く 国連人権理事会が実態調査へ****
アフリカ中部のコンゴ民主共和国で、政府軍と反政府武装勢力との衝突が続くなか、国連人権理事会は3000人近くが死亡し、性暴力も増加しているとして、実態調査を行うと発表しました。

コンゴ民主共和国では、政府軍と隣国ルワンダの支援を受けているとされる反政府武装勢力「M23」との衝突が激化しています。

国連人権理事会は7日、緊急会合を開き、先月末以降、3000人近くが死亡し、性暴力が増加するなど最悪の事態が続く可能性があるとして、実態調査を行うと発表しました。

ターク国連人権高等弁務官は「もし何もしなければ、衝突が国境を越えて拡大するおそれがある」として、「悲劇的な状況を終わらせるために、影響力を持つ全ての人々がすぐに行動しなければならない」と警告しました。【2月8日 TBS NEWS DIG】
********************

M23はブカブ後略を開始したようです。

****コンゴ反政府勢力、東部の空港占拠=州都ブカブへ進軍か****
アフリカ中部のコンゴ(旧ザイール)東部で政府軍と衝突している反政府勢力「3月23日運動(M23)」は14日、南キブ州の州都ブカブ近郊の空港を占拠した。治安当局筋などがAFP通信に明らかにした。

M23は先に東部の主要都市ゴマを制圧。その後「人道的理由」から一方的に停戦を宣言したが、実際には進軍を続けているもようだ。占拠された空港は、ブカブ制圧に向けた最後の軍事上の障壁とされていた。【2月15日 時事】 
********************

“占拠された空港は、ブカブ制圧に向けた最後の軍事上の障壁とされていた”とのことですが、実際にはM23は大きな抵抗にあうことなく空港を制圧、政府軍は撤退したとの情報も報じられています。

西ヨーロッパ全体にも匹敵する広大な面積のコンゴの首都キンシャサは国土の西端にあり、政府軍にはアマゾンに次ぐ広さのコンゴ川流域熱帯雨林をはさんで遠く離れた東部地域を死守する士気はないようです。そもそも多くの武装組織が跋扈する東部地域には政府のコントロールが及んでいないと言うべきか。

首都の政権首脳にとっては、どこか遠い世界での出来事にも思えているのかも。それは言い過ぎにしても、自分たちに危害が及ぶような切実感はないかも。

【拡大する住民犠牲 性暴力や徴兵など子どもの被害増加】
戦闘拡大によって住民被害、特に子供達への性暴力や徴兵も深刻になっています。

****コンゴ民主共和国東部の情勢激化性暴力や徴兵など子どもの被害増加*****
ユニセフ(国連児童基金)事務局長のキャサリン・ラッセルは、急激に悪化するコンゴ民主共和国東部の状況を憂慮し、以下の声明を発表しました。

性暴力や徴兵など子どもの被害増加
コンゴ民主共和国東部における暴力の激化と、それが子どもや家族へ及ぼす影響に、強い危機感を抱いています。北キブ州と南キブ州では、紛争当事者が子どもに対する重大な権利侵害を行っているとの恐ろしい報告が寄せられています。性的暴行を含む性暴力は近年で最悪のレベルに達しているとのことです。

ユニセフのパートナーが報告したところによると、2025年1月27日から2月2日までの1週間に、42の保健医療施設で対応した性的暴行の件数は5倍に膨れ上がりました。手当てを受けた人のうち、30%が子どもでした。

被害者の多くが名乗り出ることをためらう傾向にあるため、実際の数ははるかに多いと思われます。 ユニセフのパートナーには、性的暴行によるHIV感染リスクを低減するための薬剤が不足しています。

ある母親は、6人の娘が食料を探している間に、武装した男たちにつかまり、次々と性的暴行を受けたことを、スタッフに語りました。一番下の娘はわずか12歳でした。

戦闘を逃れるために何度も避難
コンゴ民主共和国東部の広範囲にわたって、子どもと家族は容赦ない爆撃や銃撃にさらされ続けています。ここ数カ月の間、避難民キャンプで暮らす何千人もの弱い立場にある子どもたちは、戦闘を逃れるために何度も避難を余儀なくされています。

この混乱の中で多くの子どもが家族と離ればなれになり、武装集団による誘拐、徴兵、徴用、性暴力のリスクにさらされています。ここ2週間だけで、北キブ州と南キブ州でおとなの同伴者のいない子どもが1,100人以上も確認されており、その数は増え続けています。

ユニセフのスタッフは速やかに、おとなの同伴者のいない子どもや家族と離ればなれになった子どもを登録し、一時的な里親に預け、必要な医療や心理社会的ケアを受けられるようにしています。

この地域では、このように危機が深刻になる以前から、武装集団への子どもの徴兵は増え続けていました。 紛争当事者が若き戦士の結集を呼び掛けている今、徴兵はさらに速いペースで行われるでしょう。 

報告によると、12歳という幼い子どもたちが武装集団に徴兵されたり、参加を強要されたりしているとのことです。

紛争当事者は、子どもに対する重大な権利侵害をただちに停止し、その発生を防がなければなりません。また、国際人道法上の義務に従い、民間人と彼らの生存に不可欠なインフラとを保護するための具体的な措置を講じる必要があります。

人道支援を実施するパートナーは、支援を必要とするすべての子どもと家族に安全に、かつ妨げられることなくアクセスできなければなりません。(後略)【2月13日 ユニセフ】
*****************

【国連やアフリカ連合 停戦を求めるも効果なし】
国連人権理事会は【2月8日 TBS NEWS DIG】にあもあるように、7日には実態調査を行うと発表、隣国ルワンダ軍には反政府勢力への軍事支援中止とコンゴ領内からの撤退を求めてはいますが、実効性はありません。

アフリカの周辺国やアフリカ連合(AU)も、停戦を求めるものの、戦闘を止める手だてを講じることが出来ません。

****コンゴ、アフリカ首脳ら停戦要求 共同声明、人道回廊設置も****
鉱物資源が豊富なコンゴ(旧ザイール)東部で続く反政府勢力「3月23日運動(M23)」と政府軍の戦闘を巡り、周辺各国の首脳らは8日、アフリカ東部タンザニアのダルエスサラームで会合を開いた。

共同声明で、即時かつ無条件の停戦と、M23がほぼ掌握したコンゴ東部の主要都市ゴマに支援を届ける人道回廊設置を求めた。

会合にはM23を支援するルワンダのカガメ大統領も出席した。欧米メディアによると、コンゴのチセケディ大統領はオンラインで参加した。

共同声明は関係国やM23による直接協議も要求した。【2月9日 共同】
******************

なぜこうした事態にもかかわらず、コンゴのチセケディ大統領が現地参加しなかったのか・・・知りません。ルワンダのカガメ大統領などとの確執があってのことでしょうか。

*****アフリカ連合、域内紛争対処できず コンゴ民主続く衝突****
アフリカ連合(AU)は15〜16日、エチオピアの首都アディスアベバで首脳会議を開いた。焦点はコンゴ民主共和国の東部で続く政府軍と反政府勢力の戦闘への対応だ。だが、域内で加盟国の利害がぶつかるAUが有効な手立てを打ち出すのは難しく、外交的進展は乏しかった。(後略)【2月16日 日経】
********************

【鉱物資源をめぐる争い】
域内で加盟国の利害がぶつかる・・・・ツチ・フツの民族問題の他、豊富な資源をめぐる利害でしょう。

****コンゴ民主共和国で政府軍と反政府勢力の衝突激化 米中は鉱物獲得の動き****
アフリカのコンゴ民主共和国で、政府軍と反政府勢力の衝突が激化している。豊富な鉱物は武装勢力の資金源になっており、中国とアメリカも資源獲得の動きを見せていて、紛争の拡大が懸念される。

■100以上の武装勢力 危険情報は「レベル4」
(中略)コンゴ民主共和国はアフリカ中部に位置し、かつてはザイール共和国という名前だった。
1960年、ベルギーから独立。面積は、アフリカの国で2番目に大きい234万5000平方キロメートル。これは日本の6倍以上にあたる。南米アマゾンと並び、“地球の片肺”と呼ばれる、コンゴ盆地の広大な熱帯林を抱える。

人口はおよそ9900万人。主な産業は、銅、コバルト、ダイヤモンド、金などの鉱業。隣国のアンゴラ、ザンビアなどにまたがって“カッパーベルト”と呼ばれる銅山地帯が広がっている。

東部地域は政府の統治が行き届いておらず、100以上の武装勢力が存在する。そのため日本の外務省の危険情報では、この地域はレベル4=退避勧告となっている。(中略)

■反政府勢力「M23」にルワンダの影 鉱物が資金源に
そして、この紛争には隣国ルワンダが介入しているとの見方がある。
コンゴ民主側は、M23を隣国ルワンダが支援していると指摘。また、国連のグテーレス事務総長もルワンダ軍に対し、M23の支持をやめることと、コンゴ民主から撤退することを要求した。

コンゴ民主から撤退とはどういうことか。
そもそも、ルワンダ軍は、国境を超えてコンゴ民主国内に入り、M23を支援していると見られている。ただし、ルワンダ側は支援を否定している。

では、ルワンダが支援しているとされる背景には、何があるのか?
紛争が起きている東部地域にも、希少鉱物がある。電子機器部品に使用されるタンタルは、世界の生産量40%がコンゴ民主産。そして、半導体部品などに使用されるタングステン。さらに金とスズもある。

これらの鉱物は、M23など武装勢力の資金源になっている側面がある。鉱物を採るための“入坑税”や“通行税”を徴収するなど、鉱物の採掘・流通・取引に介入しているという。

東京大学大学院教授・遠藤貢さんによると、「国内で採れないはずの鉱物がルワンダの主要な輸出品目になっている」といい、ルワンダがM23を通じて、コンゴ民主内の鉱物資源を手に入れている実態があると指摘している。

■コバルト狙う中国 コンゴ民主側は警戒
なかでも、大争奪戦が起きているとされる鉱物がある。
コンゴ民主は、コバルトという鉱物の一大産地。生産量は世界1位で、国内の埋蔵量は全世界の46%を占めるとみられている。

コバルトは、EV(電気自動車)のバッテリーに使用されるとあって近年、需要が急増。また、スマホのバッテリーにも使われるなど、「重要鉱物」の一つだ。

そんなコンゴ民主のコバルトの争奪戦で、他の国を大きくリードしているのが中国。
南部にある国内最大級のコバルト鉱山「テンケ・フングルーメ鉱山」は、中国企業が株式の80%を取得。ロイター通信は去年、「コンゴ民主共和国の鉱業部門は、中国企業がほぼ支配している」と伝えた。

また、コンゴ民主のチセケディ大統領は、2023年と翌24年に中国を訪問し、習近平国家主席と会談した。23年には、2国間の関係をそれまでより格上げし、「全面的戦略協力パートナーシップ」に位置付けた。

一方で、ロイター通信によると、去年11月に中国企業がコンゴ民主の鉱山会社に買収を提案したところ、コンゴ民主の国営企業も買収を提案し、中国企業の動きを阻止。政府も鉱山会社に「提案を受けないよう通達」したという。コンゴ民主は、重要鉱物の中国支配を警戒しているとみられる。

こうした“中国一辺倒”の状況をアメリカも警戒している。
カッパーベルトで採れた鉱物資源をザンビアからコンゴ民主、アンゴラを鉄道で経由して大西洋まで運ぶ「ロビト回廊」という計画が3カ国の間である。

アメリカのバイデン前大統領は2023年9月、ロビト回廊の開発への支援を表明。日本円で総額およそ6200億円を投資するとした。

さらに去年12月、バイデン前大統領はアンゴラを訪問した際、コンゴ民主のチセケディ大統領と会談し、支援強化を打ち出した。

ただ、新たにトランプ大統領が就任したことで、その関係が今後どうなるのかが注目される。【1月31日 テレ朝news】
*********************

対外援助の90日間凍結を打ち出しているトランプ政権は、遠く離れたアフリカなどには関心はないと思われますが、利権絡みとなれば話は別でしょうか。

「かつて2000年代、小型スマートフォンやゲーム機が普及したときにタンタルを巡る争いが激化し、それが紛争の激化につながった。同じことが今回も起きる可能性がある」(東京大学未来ビジョン研究センターの華井和代氏)

こうした私達の生活を支える「紛争鉱物」に関して私達ができることは?

****「紛争鉱物」とは? 3000人死亡、集団強姦も蔓延するコンゴ民主共和国の一助となるために私たちにできること*****
(中略)
すでに生活に欠かせない電子機器。紛争に関連し、人権侵害が行われているとはいえ、ただちに手放すのは現実的ではない。

華井氏は「『コンゴの鉱物やテクノロジーを使いません』というのではなく、『透明化』していく。そこで何が行われているのかを知り、紛争に関わらないように頑張っている鉱山からはむしろ買う。労働者や地域に利益を還元することによって利益がちゃんと分配される。そういう公正な仕組みを作ろう、仕組みを支えるために消費者として声を上げていく、関心を持っていくことが必要だと思う」と提言した。【2月15日 ABEMA Times】
*************************
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

南アフリカの土地収用新法を白人差別と批判するトランプ大統領 “負の歴史の清算”を求める南ア黒人層

2025-02-06 23:34:38 | アフリカ

(南アフリカ・フリーステイト州のトウモロコシ畑【2018年8月24日 Newsweek】 このような広大な農園のほとんどは未だ白人所有であり、資産の格差は結果的に所得の格差を存続させています)

【トランプ大統領 南アの土地収用に関する新法を白人への人種差別と批難 背後にはマスク氏の存在も】
アメリカ・トランプ大統領は、国際的な面だけでも、不法移民強制送還をめぐってコロンビアなどと、関税問題ではカナダ・メキシコ・中国と、昨日取り上げたパレスチナ・ガザ地区をめぐって中東諸国と、更にはグリーランドをめぐってデンマークと、パナマ運河をめぐってパナマと、NATO負担をめぐって欧州と対立し、ディール(取引)を展開しています。

もちろん、選挙期間中に「24時間で終わらせる」と豪語していたウクライナ・ロシアの問題もあります。イランをめぐる問題、地球温暖化のパリ協議・疾病対策のWHO・国際人道支援といった国際的協調からの離脱もあります。

当然ながら、国内では「革命」とも言えるような大幅・急激な政策転換も行っています。

どんな問題を取り上げても、「トランプ大統領の対応は?」ということが絡んできます。

傍目にはあまりに抱える問題が多すぎるようにも見えますが(ひとつひとつ丁寧に検討する時間はないでしょう。直観勝負でしょうか)、それでも不足しているのか、話題になることは多くありませんが南アフリカとも揉めています。

****トランプ氏、南アへの資金援助を全面的に停止へ 投稿経緯は不明****
トランプ米大統領は2日、「南アフリカが土地を没収し、特定の階層の人々を非常にひどく扱っている」と根拠なく主張し、南アフリカへの資金援助を調査完了まで全て停止すると表明した。

交流サイト(SNS)「トゥルース・ソーシャル」に「米国はこれを容認せず、行動を起こす」と投稿した。

投稿に至った経緯は不明。在ワシントンの南アフリカ大使館からは業務時間外のためコメントを得られていない。

米国政府の統計によると、2023年に米国は南アフリカに対する約4億4000万ドルの援助を義務化した。

南アフリカは現在20カ国・地域(G20)の議長国。米国が議長国を引き継ぐことになっている。

南アフリカのラマポーザ大統領は先月、トランプ政権下での米国との関係について心配していないとの見解を示した。トランプ氏とは昨年11月の大統領選勝利後に祝意とともに、同政権と協力していくことを楽しみにしていると伝えたことを明らかにした。

トランプ氏は第1次政権時代、南アフリカで白人農民の大規模な殺害や土地の暴力的買収が行われているとして調査すると表明。南ア政府は当時、トランプ氏が誤解していると指摘していた。トランプ政権が調査を実施したかどうかは不明だ。

トランプ氏の盟友で実業家のイーロン・マスク氏は南アフリカ生まれ。マスク氏は23年にXで、南アフリカの極左政党が古い反アパルトヘイトの歌「ボーア人を殺せ」を歌っている動画に反応し、「彼らは南アフリカで白人の大量虐殺を公然と推進している」とした上で、ラマポーザ氏に対し「なぜ何も言わないのか?」と訴えた。【2月3日 ロイター】
********************

“経緯は不明”とありますが、トランプ大統領は、公益のために国家が土地を収用しやすくする南アフリカの新法を批判し、同国の白人を念頭に「特定の階級の人がひどい扱いを受けている」とも指摘しています。

そうした批判の背景には南ア出身のマスク氏の存在があります。

****トランプ氏、南アフリカ批判 マスク氏影響か****
トランプ米大統領は2日、公益のために国家が土地を収用しやすくする南アフリカの新法を批判した。同国の白人を念頭に「特定の階級の人がひどい扱いを受けている」とし、南アへの資金援助停止に言及した。

南ア生まれの実業家イーロン・マスク氏が同国で白人が差別されていると主張しており、トランプ氏の批判に影響を与えた可能性がある。南アの新法は先月、ラマポーザ大統領が署名した。

トランプ氏は自身の交流サイト(SNS)で「南アは土地を没収している。ひどい状況だ。大規模な人権侵害が起きている」と根拠を示さず糾弾。調査が終わるまで「南アへの資金援助全て打ち切る」と表明した。

ラマポーザ氏は3日の声明で、誤解を解くために米側と協議したい考えを示した。

南アではアパルトヘイト(人種隔離)で白人が取得した土地の再分配が課題になっている。白人から土地を奪うのが新法の狙いだとの見方があり、マスク氏も同調している。【2月4日 共同】
******************

南アフリカは「いかなる人々の土地も没収していない」と反論し、トランプ政権との協議を求めています。

****「土地没収してない」南ア大統領が反論 トランプ大統領の資金援助停止表明受け****
アメリカのトランプ大統領が南アフリカへの資金援助を全面的に停止する意向を示したことを受け、ラマポーザ大統領が反論し、「トランプ政権と協議の場を持ちたい」と声明を出しました。

トランプ大統領は2日、「南アフリカは特定の階級の人々の土地を没収し非常にひどく扱っている」と主張し、調査が終わるまで資金援助をすべて停止すると表明しました。

これに対してラマポーザ大統領は3日、「南アフリカ政府はいかなる人々の土地も没収していない」と反論しました。

また、「トランプ政権と協議することを楽しみにしている」としたうえで、「この問題に関して共通の理解を得られると確信している」と述べています。

ロイター通信によりますと、トランプ大統領は前回の大統領在任期間中にも南アフリカで多くの白人の農民が殺害されたり、土地が暴力的に買収されているとして調査すると表明していました。

その後のバイデン政権では、2023年に南アフリカに対して約4億4000万ドルの援助を義務化しています。【2月3日 テレ朝news】
*****************

【“人種差別”か“負の歴史の清算”か? 黒人層の苛立ちで“黒いトランプ”の台頭】
問題の根っこは、アパルトヘイトを廃止した南アフリカにおいて、未だに多くの土地を白人が所有しているという現実、それに対する黒人層の苛立ちがあります。

また、南アとしてはアメリカの批判はある程度“想定内”で、アメリカの援助が以前ほどの重要性を持たなくなっている現実もあるようです。

****アメリカが南アフリカ向け援助停止を警告――その理由になった“人種差別”とは何か****
米トランプ政権は「黒人による白人への差別」を理由に、南アフリカ向け支援の停止を警告した。
南アフリカでは1月、補償なしに土地を収用できる法律が成立し、その対象には白人所有地も含まれるとみられている。

ただし、アメリカの強い拒絶反応は南アフリカにとって想定の範囲内で、あえて土地収用法を成立させたと考えられる。

「土地を没収しようとしている」
米トランプ大統領は2月2日、南アフリカ(南ア)向けの開発協力を無期限に停止すると発表した。
その理由は「土地を没収して、特定の人々をとても劣悪に扱っている」からとされた。  ここでいう特定の人々とは南ア白人を指す。

南アでは1月末、「正当で公益に資する場合」、政府は補償なしに私有地を公的管理のもとにおける土地収用法が成立した。

これが白人所有地の収用と黒人への再分配を念頭においたものであることは、もはや国際的な常識に近い。

だからこそトランプのアドバイザー、イーロン・マスクは「なぜ露骨に人種差別的な法律を成立させた?」と批判しているのだ。マスクは南ア出身だ。

国務省によると、アメリカの南ア向け援助額は約3億1800万ドル(2024年)だった。

人種差別か、歴史的清算か
批判に対して、南アのシリル・ラマポーザ大統領は「我が国は民主国家だ。法的手続きに沿ったもので、没収ではない」と反論した。

土地収用法の対象には、以下のような場合も含まれる。
・投機目的で所有されている土地
・賃借人によって実質的に管理されている土地
・放棄された土地
・所有権が不明な都市の建築物

これだけならそれほど大きな問題もないようにみえるが、実際には先述のように白人所有地も例外ではない、とみられている。

それをマスクは“人種差別”と呼ぶわけだが、一方で南アにはこれを“負の歴史の清算”と評価する人も多い。
というのは南アでは人口の9%に過ぎない白人が耕作可能地の72%を所有しているからだ。
これは18世紀以降、白人が黒人を武力で追い払って“私有地”を広げた結果だ。
 
それもあって、現在でも人口の約8割を占める黒人の平均年収は白人の約5%に過ぎない。

土地収用をめぐる対立軸
だからこそ南アでは所得格差の是正が白人所有地の収用と結びつけて語られやすい。

その裏返しでアフリカを植民地支配したヨーロッパや、あるいはやはり先住民族を武力で追い払って白人が広大な土地を“私有地”にした歴史のあるアメリカで、土地収用への拒絶反応が強いこともまた不思議ではない。

とはいえ白人所有地の収用が内外で摩擦や対立が激しくするのは避けられない。
実際、南アの隣国ジンバブエでは2000年、やはり白人所有地を補償なしに収用できる法律が成立した結果、白人の海外脱出を加速させ、かえって深刻な経済危機をもたらした。

そのため南アにも土地収用に反対する人は少なくない。
それにもかかわらず土地収用法が成立した背景にはポピュリズムとヘイトの高まりがある。

人口多数派の黒人の間には人種間格差が改善しないことへの不満が根強く、生活苦の広がりにともない、それまでタブーに近かった白人所有地の収用が2010年代末頃から公然と政治の場で語られるようになっているのだ。

“黒いトランプ”の台頭
その先頭に立つ極左政党“経済的自由のための戦士(EFF)”は、黒人の都市貧困層を主な支持基盤にしている。

EFFのジュリウス・マレマ党首は、白人など「アフリカ的でない者」や周辺アフリカ各国からの不法移民の国外退去を叫ぶ一方、「白人の特権を終わらせる」と主張して白人所有地の収容と黒人への再分配を主導してきた。
その排他的でポピュリスト的な言動は“黒いトランプ”とも呼べる。

これに対して、1994年から政権与党の座を占めてきたアフリカ民族会議(ANC)は白人所有地の収用に消極的だった。

しかし、経済停滞を背景に昨年の議会選挙でANCはかつてない大敗を喫し、単独過半数の議席数を失った。求心力の低下したANCやラマポーザ大統領は、急進的な世論に迎合する格好で、白人所有地の収用に傾いていったのである。

そこにはEFF支持者の取り込みによる求心力回復といった目的もあるとみられるが、EFFは土地収用法を「不十分」と批判している。

ともかく、こうした背景のもとで成立した土地収用法により、南アは約3億ドルの援助がアメリカからこなくなる公算が高まっているのだ。 ただし、アメリカの強硬な反応は南ア政府も織り込み済みだったと思われる。

南アには想定の範囲内?
第二次政権発足直後、トランプはイスラエル向け軍事援助などを除き、すべての国際協力を見直し、凍結すると宣言した。しかし、それ以前から「アメリカ第一」を掲げるトランプが途上国支援に熱心でないことは周知のことだった。

そのなかで南アが標的になりやすいことも、事前にある程度予測されていた。
アメリカでは保守系を中心に、この数年で「南ア支援を削減すべき」という論調が高まっていたからだ。南アが米軍と軍事演習などを行う一方、ウクライナ侵攻やガザ侵攻でアメリカの方針に協力しなかったことがその最大の要因だった。

つまり、南ア政府は「どの道アメリカが支援を減らすなら、逆に今さら遠慮しなくてもいい」と判断しやすかったといえる。

さらにそこに中国の支援があれば、トランプの威嚇に限界があっても不思議ではない。 中国政府は昨年、アフリカ向けに500億ドルの資金協力を約束し、これをラマポーザは「素晴らしい恩恵」と称賛した。

“援助停止”の限界
そのうえ南アを含むアフリカ大陸は、世界全体で見れば貧困国がいまだに多いものの、援助の重要度はかつてより低下している。

かつて援助はアフリカに流入する資金の大半を占めていた。 しかし、近年では海外に移住したアフリカ系移民による送金や海外企業による直接投資の占める割合が増えていて、2021年に限ると送金が935億ドル、海外直接投資が830億ドルで、これに対して援助は728億ドルだった。

とはいえ南ア政府もアメリカとの決定的な対立は避けたいだろう。 また、ジンバブエのように経済破綻に突き進む懸念も拭えない。

だから白人所有地を含む土地の収用を可能にする法律ができても、南ア政府が実際にそれを発動するかは未知数だ。

その一方で、アメリカの強い拒絶反応が目に見えていたのに南アがあえて土地収用法を成立させたとすれば、“援助停止”という脅し文句だけで揺さぶるのが、これまでより難しくなっていることを象徴する。

その意味で、アメリカと南アの対立の今後の展開は、アフリカ全体にも影響を及ぼす可能性が大きいといえるだろう。【2月5日 六辻障二氏 YAHOO!ニュース】
*****************

【南ア開催のG20外相会議をアメリカ欠席】
南アとトランプ政権の対立は南アで今月開催されるG20外相会議にも波及。
ルビオ米国務長官は5日、「南アは非常に悪いことをしている。私有財産を没収している」と非難し、20カ国・地域(G20)外相会合を欠席するとX(旧ツイッター)で明らかにしています。

****米国務長官 南アでのG20会合に欠席表明 トランプ氏・マスク氏の南ア批判など受け****
アメリカのルビオ国務長官が今月、南アフリカで開かれるG20(主要20カ国)の外相会合を欠席すると表明しました。

G20の外相会合は20日から21日の日程で議長国である南アフリカのヨハネスブルクで開催されますが、ルビオ国務長官は5日、南アフリカが「非常に悪いことをしている」として、会合を欠席するとSNSで表明しました。

その理由として、南アフリカが掲げる今年のG20のテーマがトランプ政権が批判するDEIと呼ばれる多様性や公平性の理念や気候変動対策と同じであることや南アフリカで私有財産の没収が行われているからだとしています。

ルビオ長官は「アメリカの国益を推進するため、税金を無駄にしたり、反米主義を助長したりすることはしない」と強調しました。(中略)

G20の会合を欠席するというルビオ長官の判断は、こうした(トランプ大統領やマスク氏の南アへの)批判を受けたものとみられます。【2月6日 テレ朝news】
**********************

“米国務長官がG20外相会合を欠席するのは異例。「米国第一」の外交政策を推し進めるトランプ政権が多国間協力の枠組みを軽視し、国際社会に内向き志向をあらわにした形で各国に波紋を広げそうだ。”【2月6日 時事】 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

コンゴ  ルワンダ支援の反政府勢力M23の攻勢 注目される米トランプ政権の対応

2025-01-29 23:38:58 | アフリカ
(2025年1月26日/コンゴ民主共和国、北キブ州ゴマ、郊外に避難する人々(AP通信)【1月28日 KWP News】)

【ルワンダが支援しているとされるツチ族系反政府勢力M23 コンゴ東部主要都市を掌握】
各メディアで報じられているように、アフリカ中部コンゴの東部で隣国ルワンダの支援を受けているとされる反政府勢力M23(ルワンダのカガメ政権も、コンゴのM23もツチ族系)が攻勢を強め、東部主要都市ゴマ(人口200万人)を掌握したとも。

一方、これに対し首都キンシャサではM23・ルワンダに抗議するデモが激化し、各国大使館が襲撃されるなど緊張が高まっています。

****コンゴ民主共和国 反政府武装勢力が東部の主要都市を掌握 首都にも飛び火****
アフリカ中部コンゴ民主共和国で、反政府武装勢力が東部の主要都市を掌握したと宣言しました。首都ではデモ隊が大使館を襲撃するなど、各地で緊張が高まっています。

コンゴ民主共和国で、隣国ルワンダの支援を受けているとされる反政府武装勢力「M23」は27日、東部の主要都市ゴマを掌握したと宣言しました。

コバルトなど鉱物資源が豊かなコンゴ東部では100を超える武装勢力が乱立し、政府軍とおよそ30年にわたる紛争を続けてきましたが、今月に入り、「M23」が攻勢を強めています。

国連は、今月だけで新たに40万人が避難民になったと報告しています。

「M23」は、コンゴ東部と国境を接するルワンダからの支援を受けていると指摘されていますが、ルワンダ政府はこれを否定しています。

首都キンシャサでは28日、「M23」に対する抗議デモが激化し、ロイター通信によりますと、ルワンダ大使館やアメリカ大使館など、複数の外交施設が襲撃されました。

国連のグテーレス事務総長は声明で、「より広範囲な地域紛争に発展するリスクが高まった」と懸念を示した上で、「M23」に対し攻撃を直ちに停止するよう求めています。【1月29日 TBS NEWS DIG】
************************

【コンゴ 豊富な地下資源と民族問題から混乱と戦争の歴史】
コンゴにおける100を超えるとされる反政府勢力・武装勢力の跋扈は再三取り上げてきました。
更に遡れば、1996年~1997年の第一次コンゴ戦争、1998年~2003年の第二次コンゴ戦争といったように、コンゴでは戦争の混乱が絶え間なく続いています。

アフリカということで世界からはあまり注目されませんが、犠牲者数で言えば、第二次コンゴ戦争の1998年から2007年の間だけでも540万人以上ということで、第二次大戦後に起きた紛争としては世界最多の死者を出しています。

政権の統治能力の欠如と言えばそれまでですが、そうした状況は、“コバルトなど鉱物資源”が戦闘のための各勢力資金源ともなり、また、周辺国の介入を招きやすいという“資源の呪い”の側面があります。 更に、ルワンダの大虐殺の背景ともなったフツ・ツチの対立も絡んでいます。

****世界に知られていない悲劇:コンゴ民主共和国****
アフリカ中部に位置するコンゴ民主共和国。人口は7,800万人に上り、その面積は西ヨーロッパに匹敵する。鉱物資源にも恵まれており、金、ダイヤモンド、銅のほかに、電化製品に欠かせないタンタル、スズ、タングステンなどを産出する。リチウムイオン電池に使用されるコバルトは世界生産量の5割以上を占める。

豊かであるかのように見えるこの国は、実は大きな混乱のなかにある。2年連続で避難民の数は世界第一であり、中東のシリアやイエメンなどの国々よりもひどい状況なのである。

2017年には一日に平均5,500、合計170万もの人々が家を捨てざるを得なかった。世界最大の避難民を生み出す原因は紛争にとどまらず、他にも国内に問題を抱えているコンゴ民主共和国だが、なかなか注目されることがないのだ。

コンゴ民主共和国が歩んできた厳しい道のり
現在のコンゴ民主共和国は、1885年のアフリカ分割に関するベルリン会議においてベルギーの領有が認められ、コンゴ自由国と呼ばれるようになった。

しかし、その実態はベルギー国王レオポルド2世の私有地であり、そのもとでゴム、象牙、土地などをめぐり現地人への過酷な収奪が行われたため、国際的な非難を受け、1908年にはベルギー政府直轄のベルギー領コンゴへと形を変えた。

その後、他のアフリカ諸国と同じように独立運動が始まり、1960年にコンゴ共和国として独立を達成した。しかし、南部カタンガ州の分離運動からコンゴ動乱に突入し、5年にわたる紛争が続いた。

この紛争は、独立を認めたはずのベルギーが、南部の豊かな鉱山地帯であるカタンガ州を分離独立させて影響力を残そうとして兵力を残し、分離独立に肩入れをした。ベルギーとアメリカの後押しを受けた軍部のモブツがクーデターにより当時の首相ルムンバを逮捕し、後にルムンバが殺害されたことで動乱が拡大した。

1965年にモブツが大統領となり軍政を敷き、一応動乱は収拾されたものの、モブツは国名をザイールに変更したのち、アメリカに支えられて独裁体制を強め、国の資源・財源を私物化したため経済成長が止まり、貧困が続いた。モブツの長期政権の中で腐敗が進行しただけでなく、人権抑圧も続き、国家としての機能が退廃した。

1994年の隣国ルワンダのジェノサイドから発生した多くの難民や武装勢力が東ザイールに滞在するようになり、それがきっかけで、ルワンダ、ウガンダなど数カ国による侵攻で1997年にモブツ政権が倒された。そしてローラン・カビラが大統領となりコンゴ民主共和国という国名に改名された。

しかしこの政権への不満を募らせたルワンダは反政府勢力を組織、国内の豊富な天然資源に対する利権も絡み、ウガンダ、ブルンジとともにコンゴ民主共和国に侵攻した。これが2回目の侵攻で、今回は政府側にアンゴラ、ジンバブエなどが応援に入り、合計8カ国による紛争となった。これが「アフリカの第一次世界大戦」とも呼ばれるものである。

カビラが暗殺され息子ジョゼフ・カビラが大統領に就任した後、2003年の和平合意が結ばれ、外国兵の撤退は実現したが、形を変えた武力紛争が部分的に続いた。

鉱物の採掘権や民族間のアイデンティティ対立、隣国の関与などの問題を抱え、武装勢力による襲撃や食料の略奪により、住民たちは不安定な生活を余儀なくされている。

このように続くコンゴ民主共和国の紛争は、1998年から2007年の間に540万人以上もの犠牲者を出しており、1950年代の朝鮮戦争以来世界最大だ。(後略)【2018年3月8日 GLOBAL NEWS VIEW】
************************

“M23は現在、電子機器の製造に不可欠なコルタンの採掘事業を支配している。”【1月27日 SPUTNIK】とも。

【22年末以来のM23の動き ルワンダは関与を否定】
近年では「3月23日運動」(M23、ツチ族系のルワンダ系反政府武装勢力)【外務省 海外安全HP】の攻勢が強まっており、約1年前の2023年12月24日ブログ“コンゴ 20日の大統領選挙、トラブル多発で延長 ルワンダが支援と言われるM23をめぐる動き”でも取り上げました。

ですからM23の攻勢はここ1,2か月のものではありません。更に言えば、M23は2012年にもゴマを制圧したことがあります。

下記は2023年12月24日ブログでも引用した2023年2月の記事です。

****コンゴ東部でM23をめぐる紛争続く****
(2023年)1月26日、M23は北キヴ州マシシ県のキチャンガを制圧した。昨年(2022年)10月末に本格的な攻撃を再開したM23は、ウガンダ国境の街ルチュルからゴマに向けて南下し、コンゴ軍との間で戦闘が続いてきた。

12月初めの虐殺事件を契機に、M23、そしてルワンダへの圧力が高まり、M23は占領地からの撤退を表明したのだが、それ以降ゴマ西方のマシシ方面での軍事的プレゼンスを強めている。コンゴ軍の攻撃に反撃する形で、キチャンガを制圧したと報じられている(3日付ルモンド)。

M23をめぐる紛争については、アンゴラのロウレンソ大統領がアフリカ連合(AU)および南部アフリカ開発共同体(SADC)から委任を受けて仲介役を務めており、同時にケニヤッタ元ケニア大統領が東アフリカ共同体(EAC)のファシリテーターとして調停にあたっている。

昨年(2022年)7月、(アンゴラ大統領)ロウレンソが(コンゴ大統領)チセケディと(ルワンダ大統領)カガメを首都ルアンダに招き、和平に向けた合意を得たが、停戦は続かなかった。9月以降、ケニアのイニシャティブでコンゴ東部にEAC(東アフリカ共同体)軍が展開されたが、抑止力としては機能していない。

この間、コンゴとルワンダの関係は悪化を続けている。M23の攻勢はルワンダの支援によるものだというコンゴ側の主張と、コンゴの国内問題だというルワンダ側の主張が平行線をたどっており、チセケディとカガメは相互に非難を繰り返すだけで、直接対話もできなくなっている。

国際社会のスタンスは、ルワンダにM23への支援を止めるよう求めるものだ。それに対してカガメ大統領は、M23はコンゴ国内の問題であり、問題はコンゴのガバナンスだと繰り返し、国際社会へのいらだちを隠していない。

ルワンダが何らかの形でM23への支援を行っていることは、国連専門家委員会が認めるところである。一方、コンゴ側のガバナンスに深刻な問題があること、そして紛争の中で民兵組織を利用してきたこともまた事実である。

ルワンダを締め上げれば問題が解決するわけではない。こうした状況下、戦闘の意思と能力を持つM23に引きずられる形で、紛争が拡大している。【2023年2月4日 武内進一氏 現代アフリカ地域研究センター】
**********************

【国連平和維持部隊 「第3次内戦」の恐れを警告】
今回の衝突に関しては
“AFP通信によると過去数日間の戦闘で100人以上が死亡し、1000人近くが負傷した。【1月29日 時事】
“国連によりますとゴマやその周辺の病院は戦闘でけがをした人たちであふれ、治療が追いつかなくなっているほか、略奪や性暴力なども横行しているということです。”【1月29日 NHK】
“(28日の)銃撃戦により南アフリカの平和維持部隊員4人が死亡した。”【1月28日 ロイター】
英BBCは26日、M23の攻撃で200人以上の民間人が死亡したと伝えています。

平和維持部隊に関しては、25日までに要員13人が戦闘で死亡したという南アフリカ軍の発表もあります。
政府軍とM23の衝突における平和維持部隊のスタンスはよくわかりませんが、政府軍とともに空港などの維持にあたっていたようです。

今後、衝突は更に拡大する懸念を国連平和維持部隊は警告しています。

****コンゴ、「第3次内戦」の恐れ=東部で衝突激化、国連が警告****
アフリカ中部コンゴ(旧ザイール)で政府軍と反政府勢力「3月23日運動(M23)」の衝突が激化している事態を受け、現地で活動する国連平和維持部隊の幹部は28日、「第3次コンゴ内戦の脅威が差し迫っている」と述べ、戦闘がさらに深刻化する恐れがあると警告した。国連安保理の緊急会合で語った。

M23は隣国ルワンダ軍の支援を受けているとされ、今月に入って攻勢を拡大。東部の主要都市ゴマに侵攻し、AFP通信によると過去数日間の戦闘で100人以上が死亡し、1000人近くが負傷した。

国連コンゴ安定化派遣団(MONUSCO)の幹部はゴマからオンラインで報告を行い、「街では略奪が発生し、多くの避難民を保護しているが、われわれも安全ではない」と強調。ゴマは孤立状態にあるとして、市民の安全な退避や支援物資の搬入を可能にする「人道回廊」を早期に設置するよう国際社会に訴えた。【1月29日 時事】 
*********************

首都キンシャサにおけるデモの参加者からは“「ルワンダと戦うべきだ」との声も上がっていて、混乱が広がる中、周辺国を巻き込んだ地域紛争に発展する懸念が高まっています。”【1月29日 NHK】とも。

M23とルワンダの関係については紆余曲折がありますので省略しますが、ルワンダの大虐殺後、虐殺に関与したフツ族系組織がコンゴで活動、それに対抗するツチ族系組織をルワンダが支援・・・といったあたりが最初のM23前身組織とルワンダ・カガメ政権の関係だと認識しています。

【アメリカ・トランプ政権はどのように対応するのか? ルワンダにはトランプ政権が認めるのではないかとの期待も】
こうした状況でルビオ米国務長官とルワンダのカガメ大統領が会談(おそらく電話会談)を行っています。

****ルワンダ大統領、米国務長官と会談 コンゴ停戦の必要性で一致****
ルワンダのカガメ大統領はルビオ米国務長官と会談し、コンゴ民主共和国(旧ザイール)東部での停戦の必要性について一致したことを29日に明らかにした。

ルワンダが支援するコンゴの反政府勢力「M23」は東部最大の都市ゴマに進軍したが、カガメ大統領はルワンダ軍とM23にゴマからの撤退を求める圧力に屈する姿勢は示さなかった。

カガメ大統領は「ルビオ長官とコンゴ東部の停戦を実現し、紛争の根本原因にきっぱり対処する必要性について生産的な会話をした」とXに投稿。

米国務省は「長官はこの地域の即時停戦を促し、全ての当事者に対し主権国の領土の一体性を尊重するよう呼びかけた」と述べた。

米政府は28日、国連安全保障理事会に対し、M23の攻撃停止に向けた措置を検討するよう要請した。

現地住民によると、ゴマでは数日間にわたって激しい戦闘が続き、店舗などが略奪されていたが、29日は散発的に銃声が聞かれた以外、総じて平穏な状態が続いている。

コンゴと国連の平和維持部隊によると、ルワンダ軍はゴマでM23を支援。ルワンダはコンゴの武装勢力から自国を守っていると主張しているが、コンゴ領内に進軍したかについては直接コメントしていない。【1月29日 ロイター】
*******************

今後に展開についてはルワンダの方針にかかっていますが、“トランプ政権が自分たちの行動を承認するのではという期待がルワンダ側にある”との指摘もあるようです。

****M23がコンゴ東部の主要都市ゴマに侵入****
27日、反政府武装勢力M23は、東部の主要都市ゴマに侵入した。M23やそれと共闘する「コンゴ川同盟」(AFC)はゴマを制圧したと発表したが、27日時点で事態は混乱しており、完全に制圧したわけではなさそうだ。
 
これに先立つ26日、国連安保理で緊急会合が開かれ、グテーレス事務総長は、ルワンダ軍にM23への支持を止め、コンゴから撤退するよう要請した。事務総長がルワンダを名指ししたのは、これまでにないことだった。同会合では、米国、英国、フランスも、ルワンダに撤兵を呼びかけた(27日付ルモンド)。

『名前を知らない戦争』の著者スターンズは26日付ファイナンシャルタイムズ紙に論説を寄せ、紛争終結にはルワンダに圧力をかけるしかないと強調した。

M23は2012年にもゴマを制圧したが、この時は国際社会がルワンダに援助停止などの制裁措置をとり、ルワンダが支援を控えたことでM23の崩壊につながった。今回、欧米諸国はルワンダにコンゴから撤兵するよう呼びかけているが、制裁に向けた動きは今のところない。

この時期にM23がゴマを制圧した理由として、世界の関心がトランプ政権誕生に集まっているうえに、トランプ政権が自分たちの行動を承認するのではという期待がルワンダ側にあるとの指摘もある(27日付ルモンド)。

ルワンダ側のメディアは、コンゴ軍が、民兵組織ワザレンドゥ、ヨーロッパ人傭兵、ブルンジ軍、南部アフリカ共同体軍と協働し、かつてない脅威をルワンダに与えていると強調している(27日付New Times)。

1月に入ってから40万人が避難民となり、戦闘で国連平和維持部隊、南部アフリカ共同体軍にも合わせて13名の犠牲者が出ている。紛争は、大湖地域全域を不安定化させつつある。【1月28日 武内進一氏 現代アフリカ地域研究センター】
*******************

ウクライナに侵攻したロシアも、ガザを破壊したイスラエルも、相手側の脅威をあげて自国この軍事行動を正統化しています。

トランプ大統領はアメリカの利益にならないアフリカの紛争など関心はないでしょうが、こうした紛争・地域混乱にアメリカとしてどういう姿勢で臨むのかも注目されます。

ついでに言えば、国連・欧米諸国はルワンダの大虐殺を止められなかったことで、ルワンダ・カガメ大統領に“負い目”みたいなものがあります。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

アフリカ  政治的権利に目覚めるの若者、デジタル駆使し抗議活動 混乱に終わる危うさも

2025-01-19 22:54:53 | アフリカ

(2024年7月、政府の増税策に対する抗議活動で死亡したデモ参加者を追悼する行事に参加する若者ら。ナイロビで撮影【1月19日 ロイター】)

【ケニア  生活費需品への大衆課税に若者らが反発】
アフリカ東部のケニアでは昨年6~7月、政府の増税案に抗議するデモが激化し混乱しました。

****増税案めぐる政府への抗議デモが激化 39人死亡 ケニア****
ケニアでは、増税案をめぐる政府への抗議デモが広がっていて、2日も首都ナイロビで治安部隊との衝突が起きるなど、混乱が続いています。

ケニアでは、先月25日、政府の増税案に抗議するデモが激化し、首都ナイロビにある議会にデモ隊の一部が突入したことから、死傷者が出る事態となっていました。

これを受けルト大統領は、増税案の撤回を表明しましたが、デモはおさまらず、今度は、大統領の辞任を求めデモが続いているという事です。2日もナイロビではデモ隊と治安部隊の衝突が起きています。

ケニアの人権団体によりますと、治安当局がデモ隊に向け発砲したことなどから、これまでに39人が死亡しているということです。

ルト大統領は、増税案の代わりに、政府の大幅な歳出削減を計画しているとしていますが、辞任を求める声が広がる中で、混乱が続くおそれが高まっています。【2024年7月3日 日テレNEWS】
*****************

ケニアでは、正規の雇用ではなく、身近の様々な品物の転売など自らの知恵や才覚で(ときにドラッグや泥棒、又は買春など様々な犯罪も)生計を立てる若者らをハッスルする者「ハスラー」と呼ぶようです。

政府の増税案は生活費需品への新たな課税であり、こうした「ハスラー」など大衆に負担を課す内容でした。

ケニアのルト大統領は大衆に訴えるポピュリズムの波に乗って大統領になった政治家です。大衆の人気をつかんだはずの大統領が一転して大衆からの抗議の矢面に。

****<820億ドルの債務の責任は誰に?>大衆の支持を得たはずのケニア大統領が抗議暴動にあった理由****
フィナンシャル・タイムズ(FT)紙のアフリカ担当編集長のピリングが、7月18日付けの論説‘Kenya’s populist president has misread the popular mood’で、ケニアのルト大統領の国際的評価が国内問題により損なわれているが、その背景には根深い問題があり、既成の政治体制の改革ができればその評価を回復できるかもしれない、と論じている。要旨は次の通り。

5月、ケニアのルト大統領は、アフリカからの16年振りの国賓としてホワイトハウスでバイデンの歓迎を受けた。しかし7月になると、ルトは、国内で民衆の反乱に直面することになり、全国的な抗議運動は国会を襲撃するまでに至り、彼は内閣を解任し、増税法案を撤回した。

2022年、ルトは、自らの知恵やハードワークで生計をたてる「ハスラー」たちに働きかけることによりポピュリズムのうねりに乗って政権を獲得した。5,600万人の国民のうち300万人しか正規雇用されていないケニアで、インフォーマル経済の大衆に手を差し伸べることは、選挙の起爆剤となった。

ルトは、現職のケニヤッタの支持を得ずに出馬し、大衆に働きかける手法で国政の扉を開け、多くの点で彼の選挙革命は称賛に値する。

ルトは、都市化し十分な情報を持つ有権者にサービスや機会の提供を約束する政府との間の社会契約という現代的な考えを利用した。

しかし、民衆の感情をかき立てたルトは、もはや自らがコントロールできない力を解き放ったのだ。抗議デモにはリーダーはおらず、買収するような大物もいなければ、民族間の対立を煽るものでもない。

彼は、大統領として、正常な状態ではなく破綻しつつある財政状況を引き継いだのだ(彼は前政権で副大統領だった)。ケニヤッタ政権は、膨大な額の借金をし、使い、浪費した。

その多くは、中国が建設した40億ドルを超える鉄道等を含む贅沢なプロジェクトに浪費され、経済的見返りを得ることなくケニアの負債を増大させた。ケニヤッタは当初の220億ドルの負債に510億ドルを追加したとされる。これらの債務返済に歳入の38%が当てられこれでは持続不可能である。

ルトは、巧みな財務政策によってデフォルトを回避した。しかし、国際通貨基金(IMF)お墨付きの増税計画によって自らの支持基盤に打撃を与え、税収を現在の国内総生産(GDP)の15%から最終的には25%に拡大しなければならなかった。

フォーマルセクターの納税者の数があまりにも少なく、インフォーマルセクターの大衆から徴税することは苦痛をもたらし、平均所得が2,000ドルの国民から23億ドルを搾り取るだけでも大変なことだ。その動機が国際的な債権者への返済である場合、それは不可能であることが証明された。

ルトは、ポピュリストにしては、大衆の気持ちを読むのが下手だ。暴力と脅迫によるデモの鎮圧に失敗し、屈服せざるを得なくなった。そして今、彼は自分が属している政治家階級に怒りをぶつけている。

今後は、盗みを減らし行いを改善すると約束した。ルトがその誓約を果たすことができれば、国内外での評判を回復できるかもしれない。
*   *   *
IMFの欠陥
最近のケニアにおける国民の反政府活動が暴動状態に拡大した事態については、いくつかの注目すべき側面がある。

まず、外交的には、ルト大統領は、就任後、国際金融改革や気候変動問題等について先進国に協調的な主張を行い、外国投資受入れや債務再編を避けて財政再建に努力するとの姿勢を示し、IMFや米国から評価されていた。(中略)

次に、暴動の原因であるが、直接的には、ケニアがデフォルトを回避するため、IMFからの融資を受ける条件として大幅な増税法案を成立させたことにあった。820億ドルに達するといわれる債務の二国間ベース最大の貸し手は中国である。

前任のケニヤッタ大統領はそのレガシー作りのために採算を無視して、商業上の借り入れと共に中国マネーを鉄道や高速道路などの巨大なインフラプロジェクトにつぎ込んだ。途上国の政治指導者の資質とそこにつけ込んだ中国の無責任な融資政策に問題があった。

そして、IMFの役割についてである。基礎食料品、燃料、その他の生活必需品に新たな課税を行うことは、ただでさえ貧困とインフラに苦しむ国民大衆の怒りをかうことは目に見えていたように思われる。

IMFは、当初今回の増税法案を称賛したと伝えられるが、これを実施すれば、何が起こるかについてIMF官僚は関心が無いか、理解が及ばなかったのであろうか。

このようにIMFのコンディショナリティを受け入れた結果、国民の反発を招き政情が不安定化した例は過去にも例は多く、IMFの欠陥のようにも思える。途上国に対する融資の場合、貸し手と借り手の立場は対等とは言えず、借り手は無理をしがちであることが考慮されるべきであろう。(後略)【2024年8月9日 WEDGE】
*******************

【モザンビーク 大統領選挙での不正疑惑への抗議】
一方、アフリカ南東部(マダガスカルの対岸)のモザンビークでは昨年10月の大統領選挙で与党候補が勝利したものの、不正があったとして混乱が起きました。

****公式選挙結果発表も、政府と選管への不信は強まる****
モザンビーク選挙管理委員会(CNE)は10月24日、同月9日に投票が実施された大統領・国会・州議会議員選挙の公式集計結果を発表した。

大統領選挙では、与党モザンビーク解放戦線(FRELIMO)が擁立するダニエル・チャポ氏が得票率70.67%(有効得票491万2,762票)で勝利した。「モザンビーク発展のための楽観的な党」(PODEMOS)の後援を受け、無所属候補として立候補したベナンシオ・モンドラーネ氏は得票率20.32%(141万2,517票)で次点となった。(中略)

今回の集計結果について、国内外の市民団体や野党側勢力は疑問を呈している。EU選挙監視団は22日と25日に発表した声明で、票集計の不正や選挙結果の改変を指摘しており、CNEが発表した結果は指摘事項に対する疑念を払拭するものではないとしている。

モンドラーネ氏は24日夜に自身のフェイスブックで行ったライブ演説で、公式結果は不正なものだと述べ、支持者に対し抗議活動の継続を呼びかけた。同氏の配信は大きな注目を集め、最大同時接続数は10万を超えた。

配信翌日の25日午後から26日朝にかけ、モザンビークのほぼ全土において、主に携帯電話会社が提供するインターネット回線が不調、または遮断される事態が発生した。

モザンビークでは、モンドラーネ氏の配信やデモ隊と警察との衝突など、不正選挙への抗議に関連する動画がSNSを通じて多く拡散されており、メディアや一部の市民団体は、政府による意図的な通信制限だと訴えている。【2024年10月30日 JETRO】
*********************

混乱は年末時点でも続いていました。(現状は把握していません)

****モザンビークで大統領選結果への抗議デモ激化…130人以上死亡、刑務所から1530人脱走****
AFP通信によると、モザンビークで大統領選の結果に対する抗議運動が激化し、(昨年12月)23〜25日の3日間で130人以上が死亡した。混乱に乗じて首都マプトの刑務所から約1530人の囚人が脱走した。

10月に行われた大統領選では、与党モザンビーク解放戦線の候補が勝利宣言し、野党は不正があったとして抗議運動を続けている。今月23日、裁判所が選挙結果を確定したことを受け、抗議運動が激化し、マプトなどで暴動に発展した。地元の選挙監視団体によると、10月以降の死者は260人、拘束者は4000人に上る。

大統領選を巡っては、SNSの使用が制限され、記者の拘束も相次ぎ、欧米の人権団体は疑義を訴えている。野党は陣営の弁護士が暗殺されたと主張している。

モザンビークはアフリカ最貧国の一つだが、液化天然ガス(LNG)が豊富で、日本企業が参画するガス開発事業が中断したままになっている。【12月28日 読売】
*********************

【若者らの“愛国心や将来が良くなるとの期待”からの抗議行動】
ケニアでも、モザンビークでも、抗議行動の主体は、自らの権利を認識し、インターネットを通じて改革を訴える力を増している若者世代です。

“人口構成が世界で最も若いアフリカでは、根強い汚職や拙い政治運営、生活費高騰、失業率上昇などに不満を抱える若者が主導する政治活動が広がっている。”とも。

****政治的権利に目覚めるアフリカの若者、デジタル駆使し抗議活動****
ケニアの民主活動家ボニフェース・ムワンギさんは過去何年にもわたって数え切れないほどのデモに参加してきたが、昨年6月と7日に行われた反政府デモはあらゆる期待を超える形になった。

ムワンギさんが目にしたのは、力強く覚醒した若者たちがソーシャルメディアを駆使し、増税が盛り込まれた予算法案への抗議を呼びかけるという今までになかった展開だ。

「デモの動員に最も力を発揮したのはZ世代だった。彼らはTikTok(ティックトック)、インスタグラム、X上に存在し、街頭に出現した人々の大多数は若者だった」とトムソン・ロイター財団に語った。

ムワンギさんは「歴史上初めてケニア人が一つの目的、つまり予算法案撤回に向けて団結した。われわれは自分たちが持つ力に目覚め、説明責任や意義ある改革を要求する活動的な市民となりつつある」と胸を張る。

こうした抗議が実を結び、ルト大統領は評判の悪かった法案を取り下げ、閣僚を更迭したほか、無駄な支出の削減を約束せざるを得なくなった。

人口構成が世界で最も若いアフリカでは、根強い汚職や拙い政治運営、生活費高騰、失業率上昇などに不満を抱える若者が主導する政治活動が広がっている。

ケニアやガーナ、ウガンダ、ナイジェリア、モザンビークなどのZ世代やミレニアル世代が昨年相次いで抗議の声を上げ、今年もそうした活動はさらに強まりそうだ。

インターナショナル・クライシス・グループのアフリカ担当プログラムディレクター、ムリティ・ムティガ氏は、若者らの不満の一因として、食料と燃料の価格を押し上げたコロナ禍やロシアとウクライナの戦争による痛手からアフリカ経済がなかなか立ち直れない点を挙げた。

ムティガ氏によると、次第に自らの権利を認識し、インターネットを通じて改革を訴える力を増している若者世代には、社会全体への恨みのような感情も高まってきている。

同氏は「若者は両親世代よりも多くを求め、受け取る情報も増えている。彼らは政治面でより行動的になり、今年はデモが増加する可能性があると思う」と述べた。

<幻滅感>
アフリカは各大陸の中で最も人口増加率と若者の比率が高い。サハラ砂漠以南(サブサハラ)地域の人口の70%は30歳未満だ。

これらの若者の幻滅を、雇用機会の乏しさが助長している。国際労働機関(ILO)の調査では、サブサハラ地域の若者約5300万人の5人に1人余りは仕事や教育、職業訓練に全く縁がない。

24年にアフリカ13カ国の18歳から25歳までの5600人強を対象に実施した調査によると、回答者の4分の3は仕事を見つけるのが難しいと述べ、3分の2は政府の雇用創出に向けた取り組みに満足していないと訴えた。また5人に4人は汚職に懸念を持っているとも明かした。

こうした中で、若者が政府批判に動き始めるのは不思議ではない、と複数の専門家は話す。

ノルウェーのクリスチャンミケルセン研究所で上席研究員を務めるアスラク・オレ氏は、アフリカの若者はさえない経済成長や少ない雇用、多額の公的債務と緊縮財政に苛立ちを募らせていると指摘。その点から、公益ではなく私利私欲のために働いていると見なす政治家を糾弾していると説明した。

モザンビークでは昨年10月の大統領選で選挙管理委員会が与党モザンビーク解放戦線(FRELIMO)の候補が勝利したと発表すると、その後3カ月余りも49年わたる与党支配で生じた汚職や失業、生活費高騰への抗議デモが続いた。

ガーナでも昨年12月7日の大統領・議会選に先立ち、若者が街頭に集まって同国の債務危機や物価高に抗議した。

ある市民は、大統領選ではビジネスマン出身の新人候補に投票したと明かす。この新人が有力候補だったマハマ前大統領に勝てないと分かっていたが、今の政治にうんざりしており、デジタル経済を雇用創出や国家近代化の手段として考えられる政治家が出てきてほしかったと強調した。

<犠牲あっても>
若者の抗議活動には犠牲も伴う。警官との衝突で何百人もが拘束されたり殺害されたりしたほか、行方不明者も少なくない。

ケニアでは複数の有力人権団体から、当局が警官による殺害事件を隠蔽(いんぺい)し、Z世代のデモ参加者が絡む誘拐や不法拘束について口をつぐんでいるとの非難が出ている。

同国国家人権委員会の記録では、昨年6―12月に起きたデモで消息が分からなくなったのは82人で、29人は今も行方不明、最低でも40人は殺害された。

モザンビークでもデモ隊と警官の衝突で少なくとも278人が殺害され、2000世帯余りは隣国マラウィで難民申請中だ。

それでもナイジェリアの活動家リニュ・オデュアラさんは、若者が立ち上がる動きが衰えることはないと言い切る。

Xで80万人を超えるフォロワーがいるオデュアラさんは「若者による抗議は愛国心や将来が良くなるとの期待から生じていて、犯罪ではない。改革と、私たちの正当な権利への要求だと見てもらう必要がある」と語り、若者の声を無視することは政府にとって大きな政治的リスクになると警告した。【1月19日 ロイター】
*******************

“若者による抗議は愛国心や将来が良くなるとの期待から生じていて、犯罪ではない”にしても、期待どおりの結果をもたらすとも限りません。

かつての「アラブの春」はほとんどの国で強権支配や内戦を惹起する形で終わりました。

“愛国心や将来が良くなるとの期待”からの抗議行動が政治・社会の改善につながるように、これまでの教訓を学ぶ必要があります。

抗議行動を統率する仕組みをどうするのかが一番重要でしょう。現在の抗議行動はSNSなどを駆使し、組織によらない活動が特徴とはなっていますが、単に不満のガス抜きではなく成果につなげるためには何らかのコントロールする仕組みなりリーダーなりが必要でしょう。

国際社会の支援は、現在の中ロとアメリカが対立・硬直した状況ではあまり期待できません。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ウガンダ  「反LGBT法」などムセベニ大統領の超長期支配 難民対策では高い評価も

2024-11-20 23:32:40 | アフリカ

(ウガンダの難民【国連NHCR協会】)

【先進的な難民政策は国際社会から「ウガンダモデル」として評価される】
南スーダンやコンゴに隣接するアフリカ中部の内陸国ウガンダ・・・・周囲に紛争国があるため難民の流入が多く、受け入れている難民は10月末現在、172万人でアフリカ最多となっています。

出身国別では、北隣の南スーダン96万人▽西隣のコンゴ民主共和国55万人▽スーダン6万人――などと紛争が激化する周辺国から集まっています。

後述のようにウガンダに関する情報と言えばLGBTに対する厳しい政策や38年に及ぶムセベニ大統領の超長期支配みたいなもので、そうしたイメージからは非常に意外な感がありますが、難民に関しては移動の自由や就労の権利を認めるほか、居住・耕作用の土地を提供するなど先進的な政策ををとっているそうです。ただ、資金や要員の不足が課題となっているとも。【11月20日 毎日より】

****なぜ難民たちが集まる? 「アフリカの真珠」ウガンダはどんな国****
戦争、迫害、災害、貧困といった窮状にひんして、故郷を追われる人々は世界中で絶えません。アフリカ最大の難民受け入れ国でありながら、ウクライナや中東の紛争のはざまで光の当たらない国があります。ウガンダです。一体どのような国で、なぜ難民たちが集まってくるのでしょうか。

 Q ウガンダってどんな国なの?
 A アフリカ東部の内陸に位置し、面積は本州とほぼ同じ約24・1万平方キロ、人口は約5000万人です。赤道直下ですが、平均海抜は約1200メートルと高く、年間の全国平均気温は24度と快適です。英国のチャーチル元首相は植民地省高官時代にウガンダを訪問した際、豊かな自然を評して「アフリカの真珠」と呼びました。

 Q どんな歴史を持っているの?
 A 19世紀末に英国の保護領となり、1962年に独立しました。その後、クーデターが繰り返され、政情不安が続きました。ゲリラ闘争を率い86年に当時の政権を倒して大統領に就いたムセベニ氏が38年にわたり実権を握り続けています。

 Q アフリカ最大の難民受け入れ国らしいけど、どれぐらいの人が集まっているの?
 A 国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)によると、10月末時点で172万人に上ります。出身国別では、最多が北隣の南スーダンで96万人。次いで、西隣のコンゴ民主共和国55万人▽スーダン6万人――などとなっています。

 南スーダンでは2013年以降、政府軍と反体制勢力が内戦状態に陥り、数十万人が死亡したとされています。南スーダンからの大規模な難民の流入が受け入れ急増の背景にあります。

また、コンゴ民主共和国では産出される鉱物資源を巡り武装勢力による紛争が激化し、食糧不足や感染症など人道危機が深刻化しています。

 Q 難民はどんな生活を送っているの?
 A 大半は、政府が国内に設けた難民居住区と呼ばれる地域で暮らします。公式の認定数としては国内に13カ所あります。居住区は、難民が現地の人たち(ホストコミュニティー)と同じエリアで共生するのが特徴で、政府からは居住と耕作のための土地が提供されます。

原則的に自由な出入りが認められていない難民キャンプとは違い、移動の自由や就労の権利が認められています。居住区に設置された学校や医療施設を利用することもできます。先進的な難民政策は国際社会から「ウガンダモデル」として評価されています。

 Q 課題はないの?
 A 国際社会からの人道支援が減っていることが大きなネックになっています。難民政策を担当するウガンダ政府当局者によると、18年には海外から国連を通じて4億6000万ドルの人道支援が集まっていましたが、直近では1億8000万ドルにまで減少しています。

国際社会が関心を寄せるウクライナや中東での紛争の陰に隠れていることが背景にあるようです。また、大量の難民に比べて、受け入れ側の態勢が追いつかず、十分な支援が行き届きづらくなっていると指摘されています。

 Q 私たちにも何かできることはないかな。
 A ウガンダ首相府難民局のパトリック・オケロ局長は取材に「日本政府と指導者の継続的な支援と、難民に適切に対応するための多くの投資に対して敬意を表したい」と感謝を述べました。その上で「ウガンダのように多くの難民を受け入れている国々への支援を優先してほしい」と訴えています。
回答・郡悠介(社会部大阪グループ)【11月20日 毎日】
***********************

“先進的な難民政策は国際社会から「ウガンダモデル」として評価されています”・・・始めて知りました。

多くの国で、移動や就労を認めない閉鎖的な難民キャンプとなっているのは、それなりの理由があってことです。

難民の出入りを自由にすれば、出身国に対する抵抗運動を行う勢力が国内で活動し、ひいては自国の政府に対する抵抗運動などとも連動しかねないといった、治安や政治問題があります。

また就労を認めると、地域住民の「仕事を難民に奪われる」「難民と就労を競争するため、賃金が低く抑えられる」といった不満を惹起しトラブルを起こすことも。

「ウガンダモデル」がそのあたりの問題をどのようにクリアしているのか知りたいところですが、今のところ情報がありません。

【「反LGBT法」で欧米と対立】
冒頭にも書いたようにウガンダと言えば、38年に及ぶムセベニ大統領の超長期支配です。
強権的支配というのはウガンダだけの話でもなく、むしろ欧米以外では一般的な政治形態かも。アフリカ国々はどこもそうした傾向があります。

そうした中でも近年注目されたのが「反LGBT法」

****ウガンダ、性的少数者の制限法 「重度の同性愛」最高で死刑も****
アフリカ東部ウガンダで、LGBTQ(性的少数者)の行動を大幅に制限する法律が成立した。大統領報道官の29日の発表をロイター通信が伝えた。

エイズウイルス(HIV)感染者の同性と関係を結ぶなどの「重度の同性愛」に対しては最高で死刑を科すなど厳しい内容。

議会が3月に可決した法案にあった、個人がLGBTQと自認すること自体を犯罪とする文言はなくなったが、多くは法案の内容がそのまま残った。同性愛の「促進」行為は禁錮20年と規定。LGBTQの支援団体の活動が取り締まりを受ける恐れがある。

ムセベニ大統領が29日までに法案に署名した。【2023年5月29日 共同】
********************

法律は実際に運用されています。23年8月には“同性と繰り返し性的関係を結ぶような「重度の同性愛」に当たる行為をしたとして、検察当局が20歳の男性を訴追した”【2023年8月29日 共同】といったニュースも

こうした「反LGBT法」に関して、LGBTの権利を擁護する欧米から強い批判があります。一方ウガンダも「欧米諸国がアフリカに同性愛を受け入れるよう強要している」と激しく反発しています。

****欧米、アフリカに同性愛受け入れ「強要」 ウガンダ****
米国が厳格な反同性愛法を理由にウガンダの政府当局者へのビザ発給を停止したのを受け、ウガンダ政府は6日、欧米諸国がアフリカに同性愛を受け入れるよう強要していると非難した。

米政府は4日、反同性愛法がウガンダの「民主化プロセスを損ない」、LGBTQ(性的少数者)コミュニティーを含む国民の人権を侵害しているとして、ウガンダの政府当局者へのビザ発給を停止した。

ウガンダのヘンリー・オリエム・オケロ外務副大臣は6日、「米国と欧州の一部の国々がアフリカ、特にウガンダに対して援助や融資と引き換えに、同性愛を受け入れるよう強要する間違った試みを行っている」とAFPに語った。

米国はウガンダで新たな同性愛法が成立した直後の6月、同国の政府高官に対するビザ発給制限の第1弾を開始。先月には、ウガンダについて、2024年1月からアフリカ成長機会法に基づく優遇措置の対象から除外すると発表した。

だが、オリエム氏は「議会と大統領の指示に従うまでで、援助がなくともわが国の開発計画は変わらない」とし、ウガンダは外国から援助を受けることなく独立したと主張。「渡航や貿易関係について条件を課すことなく、わが国の開発課題を尊重してくれる国際パートナーや国は他にもある」と述べた。

ウガンダで5月に成立した反同性愛法では、「加重同性愛」の刑罰として死刑が定められている。また、合意の上での同性愛行為にも終身刑が科される可能性がある。

米国のジョー・バイデン大統領や欧州連合、国連のアントニオ・グテレス事務総長は、同法を非難。廃止されない限り、外国からウガンダへの援助や投資が引き揚げられる可能性があると警告している。

だが保守色の濃いウガンダで同法は幅広い支持を得ており、議員らは欧米的な不道徳に対する防波堤として必要な措置だと主張している。 【2023年12月7日 AFP】
********************

欧米主導の世界銀行も“(2023年8月)8日、多くの国や国連から非難されているウガンダの「反LGBTQ(性的少数者)法」が世銀の価値観に反するとして、ウガンダ政府への新規融資を停止すると発表した。”【2023年8月9日 ロイター】とのこと。

LGBTの権利擁護が、“世銀の価値観”と言えるほど普遍的なものかどうかは疑問ですが。

私の世代がウガンダに関してネガティブあるいは暗いイメージを持ちがちなのは、ムセベニ大統領以前の時代のことではありますが、強烈なカリスマ性と、「人食い大統領」と呼ばれた凶暴さを併せもっていたウガンダの独裁者アミン元大統領(法学博士の肩書も持つ。身長193cmの巨漢で、東アフリカのボクシングヘビー級チャンピオンになったこともある)の影響もあるのかも。

“「虐殺した政敵の肉を食べた」などの噂を立てられた結果、「人食い大統領」というニックネームもつけられたが、実際のアミンは菜食主義者で、肉は鶏肉しか口にしたことがなかったといわれている”【ウィキペディア】

【ウガンダで暮らすスーダン難民】
話をウガンダで暮らす難民に戻すと、前述のように紛争が続くスーダンからの難民も多くいます。
その一人がネイマットさん(31)

****「強く生きられる気がする」難民172万人 受け入れ国ウガンダで今****
(戦争、迫害、災害、貧困などを理由に故郷を追われる人々は世界中で絶えない。アフリカ最大の難民受け入れ国でありながら、ウクライナや中東の紛争のはざまで光の当たらないウガンダから、難民のいまを報告する。

スーダン「忘れられた紛争」
赤茶けた大地が見渡す限り広がり、居住用の小さなテントが点在する。アフリカ東部の内陸国・ウガンダには、紛争などで周辺の国々を追われた人たちが大量に流入している。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)によると、10月末時点で172万人。アフリカ最大、世界有数の難民受け入れ国として知られる。

10月下旬、ウガンダ中西部のキリヤンドンゴ難民居住区で、スーダンから逃れてきたネイマットさん(31)が沈痛な表情を浮かべた。「あの出来事を思い出すだけでひどく胸が痛む」

ウガンダの北にあるスーダンでは2023年4月、政府軍と、政府系の準軍事組織「即応支援部隊(RSF)」による内戦が勃発。一般国民を巻き込み、UNHCRによると、人口約4600万人中、約1100万人が家を追われた。紛争地のデータ収集を行う米NPO「ACLED」は2万7000人以上が犠牲になったとしている。しかし、ウクライナや中東での戦争に埋もれ、「忘れられた紛争」と呼ばれる。

突然の襲撃 面前で夫殺され
平穏な一家の日常は突然の襲撃で断ち切られた。アフリカ北東部スーダンでは2023年4月に始まった軍事衝突が何ら罪のない一般国民に悲劇をもたらしている。

「親戚と連絡さえ取れず、誰も頼ることができない」。祖国スーダンを逃れ、ウガンダに身を寄せるネイマットさん(31)は嘆く。

10年ごろ、幼なじみでいとこのアダムさんと結婚。誠実で優しく、信心深い性格を愛し、けんかをしたこともなかった。2男2女に恵まれ、夫が営む食料品の小売店は経営が上向き、首都ハルツーム近郊で充実した日々を送っていた。

スーダンでは23年4月15日、政府系の準軍事組織「即応支援部隊(RSF)」が反乱を起こした。RSFは00年代に地方の反政府勢力を攻撃するために作られた民兵組織に由来する。要員や装備を強化して政府軍に準じる役割を任されていたが、近年、政府軍への編入を巡って権力争いが激化していた。

戦闘開始から間もなく、家族での夕食後に突然外から男性の怒声と大勢の足音が聞こえてきた。「アダム、これがお前の最後の日だ」。銃を携えた覆面姿の男たち約20人が敷地の塀を乗り越え押し入ってきた。

アダムさんは両脚を銃で撃ち抜かれ、ネイマットさんは銃で腹部などを激しく殴られた。「なぜそんなことをするんだ」。アダムさんはそう叫んだ瞬間、家族の面前でナイフで首を切られ、大量に出血して絶命した。「彼らには慈悲がなく、神さえ恐れない。人間ではない」と怒りを込める。

「家にある全財産を渡せ」。脅されたネイマットさんは家にある金銭や販売用の商品、身につけていた結婚祝いのネックレスなどをかき集めて渡した。「これで何とか解放される」

しかし、蛮行は終わらず、鎖で手脚を縛られて全裸で寝室に監禁された。飲食物は与えられず、10人を超える男たちに連日暴行を受けた。数日後、意識を失い、気付いた時には病院のベッドの上だった。「ショックで全身の感覚が失われ、声すら出ず、自分が自分でないようだった」と嘆く。

ネイマットさんが後に長男ファリスさん(12)から聞いた話によると、自宅は約20日間占拠された後、男たちが気絶したネイマットさんと、監禁されていた子どもたち、そしてアダムさんの遺体を車で遠く離れた路上に運び、放置したという。ネイマットさんは残虐な手口から男たちがRSF以外にないと考えている。

次男フォウジさん(10)は父親が面前で殺されたショックで家の裏口から飛び出し、今も行方が分からない。ネイマットさんは「あの子のことを考えない日はなく、胸が張り裂けそう。でも今の私にはどうすることもできない」と涙を浮かべる。

絶望の淵で描く夢
安全のため2〜12歳の子ども3人を連れて隣国・南スーダンに逃れた。避難生活を送る中で、「ウガンダなら難民でも安心して暮らせる」といううわさが耳に入った。貨物バスの隙間(すきま)に少額の代金で乗せてもらうなどして、24年7月、ウガンダ中西部のキリヤンドンゴ難民居住区にたどり着いた。

居住区は難民がウガンダの人たち(ホストコミュニティー)と同じ地域で共生できるよう政府が国内各地に設置しており、居住・耕作用の土地が提供される。キリヤンドンゴは地元民約73万人と難民約13万人が暮らす。

「やっと人生をやり直せる」。しかし、翌8月、子どもたちと就寝中、何者かに住まいのテントを切り裂かれた。身の危険を感じて今は隣人のテントの一角で寝泊まりをさせてもらっているが、肩身は狭い。

スーダンの自宅での襲撃の際、銃で殴打された後遺症か、腹部は大きく膨れ上がっている。少し重い物を持つと激痛が走り、水をくんで運ぶこともできない。居住区の医療施設には検査機器がなく、設備の整った私設病院に行こうにも交通費や治療費が払えない。

そんな絶望の淵にあっても、一つの夢がある。少しずつお金をためて食料品の売店を開くことだ。生計を立てる以外に大切な理由があるという。「食料品店は夫がスーダンで営んでいた。夫の思いを継ぐことで、残された子どもたちと、夫を思い出しながら強く生きていける気がするから」【11月20日 毎日】
*****************

【進まない国際社会の停戦に向けての取組】
スーダンでの準軍事組織「即応支援部隊(RSF)」と政府軍の戦闘は今も続いています。国際社会の停戦に向けての取組もままならないようです。

****ロシアが拒否権行使、スーダン内戦の停戦決議案を否決 国連安保理*****
国連安全保障理事会で18日、スーダン内戦における民間人の保護と敵対行為の停止を呼びかける決議案の採決があり、ロシアの拒否権行使で否決された。ロシアは内戦当事者双方と関係を持つ。全15理事国のうち米中を含む14カ国は決議案に賛成していた。

北アフリカのスーダンでは、2023年春から国軍と準軍事組織「即応支援部隊(RSF)」の内戦が続く。国連によると、人口の3割近くにあたる1400万人超が国内外に避難した。全土で人道危機が深刻化し、性暴力などの被害も数多く報告されている。

RSFは、露政府傘下の民間軍事会社ワグネルの支援を受けてきたとされる。露政府は同時に、紅海での軍事拠点確保などを目的として、武器支援を通じてスーダン国軍への影響力も強めている。

今回の決議案は、双方に敵対行為の停止や人道支援の実施へ向けた対話を呼びかける内容で、英国とシエラレオネが提案した。

否決を受けて、議長を務めたラミー英外相は「グローバルサウス(新興・途上国)のパートナーであるかのように振る舞うプーチン(露大統領)は恥を知れ」と非難し、「どれだけのスーダン人が殺され、女性がレイプされ、子どもが飢えなければならないのか」と言葉を強めた。

ロシアのポリャンスキー国連次席大使は会合で「個々の理事国の意見を安保理の決定を通じて押しつけるべきではない」と拒否権行使を正当化した。ロイター通信によると、スーダン外務省はロシアの対応を歓迎する声明を発表した。【11月19日 毎日】
*********************

“スーダン外務省はロシアの対応を歓迎する声明を発表した”・・・このあたりの事情は良く知りません。国際社会による停戦の押しつけには反対するということでしょうか。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

南アフリカ  失業や犯罪の原因として暴力の対象となる近隣諸国からの移民

2024-11-04 23:15:32 | アフリカ

(2017年2月24日、南アフリカのプレトリアで、さまざまな地域の南アフリカ人が不法移民に対して抗議活動を行ったフォーリン・マーチで、デモ参加者と警察が衝突。警察は状況を鎮圧するためにゴム弾とスタン手榴弾を発砲した。【2017年3月20日 HUFFPOST】 

写真は不法移民抗議者と警官の衝突場面ですが、2017年という日時からわかるように、不法移民へ抗議・・・ときに嫌悪・・・ときに暴力は今に始まった話ではありません。)

【違法採掘移民への「兵糧攻め」】
つい先ほど目にしたニュース。

****金やダイヤモンドなど違法採掘する「ザマザマ」、南ア警察が「兵糧攻め」で565人拘束****
南アフリカの警察は3日、金鉱山などの廃坑を乗っ取って違法採掘する移民「ザマザマ」の取り締まりを行い、565人を拘束したと発表した。廃坑の出入り口を封鎖して水や食料の供給を妨げ、脱水症状や飢餓で地上に出てきたところを拘束したという。
 
警察は北東部オークニーの廃坑で数日間かけて取り締まりを行った。坑道に1000人近くがこもっているとみられ、地下生活を1年以上続けている人もいるという。昨年12月以降のザマザマ対策では、1万3600人以上が拘束され、3200万ランド(約2億7700万円)相当の未加工ダイヤモンドを押収した。

南アでは国内総生産(GDP)の2割超を占めていた鉱業が1980年代以降に衰退し、ザマザマが廃坑で違法に採掘するようになった。隣国モザンビークやジンバブエからの不法移民が多く、危険な労働環境で極貧の生活を強いられている。

ザマザマとはズールー語で「幸運への挑戦者」を意味する。治安悪化の要因とされ、今年5月の総選挙ではザマザマ対策が争点となった。

採掘された金の多くは、国際犯罪組織を通じて中東ドバイなどに送られているという。【11月4日 読売】
**********************

違法採掘の問題はさておき、「兵糧攻め」と言えば多少聞こえはいいですが、“廃坑の出入り口を封鎖して水や食料の供給を妨げ、脱水症状や飢餓で地上に出てきたところを拘束”という場合によっては命の危険もある手段です。

こうした方法が許されるのは、一般的に南アフリカの治安は世界的にも極めて悪く、生ぬるいことはやっていられないということもありますが、特に対象がモザンビークやジンバブエからの不法移民が多いとなると、容赦なくなるのかも・・・・想像ですが。

【貧困に苦しむ黒人若者】
南アフリカでは、10月28日ブログ“南アフリカ  総選挙で想定以上に大敗した与党ANCは白人政党と統一政府  根深い人種間の分断も”でも取り上げたように、人種問題が当然ありますが、人種問題は底辺で暮らす黒人の生活が極めて苦しいという問題でもあります。

****「朝起きて盗んでの繰り返し」抜け出せない貧しさに若者が吐き出す怒り 南アフリカ総選挙 政治不信強まる“ボーン・フリー世代”が鍵****
シリーズ「現場から、」です。BRICS=新興5か国の一角として世界から注目される南アフリカで、きょう総選挙が行われます。今回、結果を左右するとされているのが、その多くが格差に苦しめられている若い世代です。

アフリカ有数の経済大国、南アフリカ。ところが、今も国民の6割が貧困ライン以下で暮らしています。

記者  「駅なんですが、数年前まで電車が運行していたんですけれども、レールや電線が盗まれる被害が相次ぎ、今は電車が運行できなくなっています」
新型コロナ以降、貧しさに追い打ちをかけられた市民による略奪が横行しました。

さらに、街を歩くと…
「(Q.何しているの?)食べ物を買うために、お金を稼ごうと思って」
まさに今、建物から鉄を剝がし、盗んできたという集団がいました。

「朝起きてはここに来て、盗んでの繰り返しです。仕事がないから」 「働いたことがないです。(Q.仕事を探そうとはした?)はい。でも見つからなかった」 「(Q.どうやって生計を立てている?)盗みです」

南アフリカの失業率は30%あまり。全員働き盛りの20代にもかかわらず、仕事がなく犯罪を重ねていると自白します。

南アフリカでは30年前、白人が黒人を差別し統治した「アパルトヘイト=人種隔離政策」が撤廃され、マンデラ大統領率いる初の黒人政権が誕生しました。

以来、与党ANCは国民の絶対的な支持のもと、政権を維持してきました。ところが、30年経った今も人口の1割が富の7割を独占するなど格差は解消されないまま。

国民の支持は失われ、今回の選挙でANCは初めて過半数割れする見通しが強まっています。

特にアパルトヘイト撤廃後に生まれた若い世代は、政治的に自由な「ボーン・フリー世代」と呼ばれ人口の半分にのぼりますが、マンデラ氏やANCに恩義を感じたことがなく、政治不信を強めています。

こうした世代から支持を集めるのが、黒人によるポピュリズム政党「経済的解放の闘士」。

経済的解放の闘士 ンドロジ議員 「EFFは抑圧に耐えてきた人たちの味方です」
白人の土地の強制収用など過激な公約を掲げ、世論調査では支持率は最大野党「民主同盟」に続きます。

今回、初めて投票するという若者に話を聞くと…

初めて投票する人 「多くの人が仕事に就けず、寝る場所や食べるものすらない状況です。そんなのはもう終わるべきなんです。(Q.ANCには投票しない?)投票しないです」 「絶対にありえません」

希望の選挙から30年。若者の選択が注目されます。【5月29日 TBS NEWS DIG】
*******************

【失業・犯罪の原因として暴力の対象となる近隣国からの移民】
南アフリカに限った話ではありませんが、こういう“寝る場所や食べるものすらない”という苦境は移民への攻撃になりがちです。「あいつらがいるせいだ」と。

南アでは、人種問題で苦しむ一方で、同じアフリカの外国人に対する嫌悪が非常に強い国です。

*****外国人嫌悪で南アのミスコン辞退、ナイジェリアで再挑戦の大学生****
南アフリカで激しい外国人嫌悪と中傷によってミスコンテストの出場辞退を余儀なくされた女性が今週、ミス・ユニバースのナイジェリア代表に選ばれるかもしれない。

大学で法学を学ぶチディマ・アデッチーナさんは、南アフリカの最大都市ヨハネスブルク郊外のソウェトで、ナイジェリア人の父のもとに生まれた。

だが、アデッチーナさんがミスコンテストに出場すると、インターネットを中心に反外国人感情が露呈。閣僚さえもが騒動に加わり、アデッチーナさんの母親が素性を偽った可能性があるとする政府調査の結果まで発表された。アデッチーナさんは「家族の安全のため」に辞退することになった。

そうした中、ミス・ユニバースのナイジェリア代表選考会の主催者が救いの手を差し伸べた。
ミス・ユニバース・ナイジェリア創設者のガイ・マレーブルース氏はAFPに対し、「世界は人種差別に満ちあふれている」「私たちは互いに争うべきではない。私はアフリカ、黒い大陸の団結を望んでいる」と語った。(後略)【8月28日 AFP】
*********************

ミスコンテストの出場辞退ならまだいいですが、もっとむき出しの暴力も。

****南アフリカ:襲撃に怯えるジンバブエ移民ら****
4月上旬、南アフリカのヨハネスブルグ北部、ディープスルートで自警団による移民襲撃が繰り返され、ジンバブエ人1人が死亡した。当局は、自警団の暴力から移民を保護する対策を強化しなければならない。

数人の移民がアムネスティに語ったところでは、今、多発する犯罪や増加する失業が移民のせいにされており、移民を敵視する自警団にいつ襲われるかもしれない恐怖の中で生活しているという。

自警団は、「移民の排除は地域社会から犯罪をなくすため」と主張する。当局によれば、3つの自警団によって少なくとも7人が殺された。

シリル・ラマポーザ南アフリカ大統領は、移民、特にジンバブエ人が、自警団の襲撃対象になっているという認識を示している。実際、自警団による移民襲撃は、ディープスルートだけでなく、南アフリカ全体に広がりつつある。

ここ数カ月、ヨハネスブルグのソウェトやヒルブロウでも移民を狙った極めて組織的な襲撃事件が起こっている。

襲撃が続いていることは、警察当局の無策と、襲撃に対する政府内の問題意識の欠如を浮き彫りにしている。いずれの事件も、未然に防止することはできたはずだ。

殺害
ヨハネスブルグで7人が殺害された複数の襲撃がきっかけに、反移民の自警団に対する抗議が始まった。

社会不安が広がる最中、ジンバブエの男性が、自警団から要求された身分証明書を見せることができなかったため、焼き殺された。この殺害をめぐり、犯人が逮捕されたかは明らかになっていない。

その後、ラマポーザ大統領は、相次ぐ襲撃事件の対応に警察力を増強すると約束し、また、外国籍の人たちへの暴力や脅しをやめるよう市民に呼びかけた。

「もはや安心して暮らせない」
ジンバブエやモザンビークから来た人たちは、アムネスティに「大変な恐怖の中で暮らしている」と話す。警察や自警団に、理由や権限もなく身分証明書の提示を要求され、日常的に身の危険を感じているという。(中略)

襲撃の被害者を含む移民の人たちは、昨年末に特別在留許可の期限が切れた後、大統領に「身の安全を保障し、ちゃんとした身分証明書を出してほしい」と訴えてきた。

またモザンビークからの移民は、「自警団に犯罪者扱いされるのが辛い。家族のために働いているだけ。祖国を出たのは、国内の状況が厳しかったから」と話す。

移民への襲撃が始まったのは2008年だが、その年だけで60人以上の移民が犠牲になった。以来、移民襲撃は毎年発生してきた。アムネスティは、南アフリカ政府に対し移民への暴力追放に向けた政策を立て、加害者が罪を問われない状況に終止符を打つことを繰り返し求めてきた。

今回、ラマポーザ大統領が、昨今の襲撃殺害事件を強く非難したことは評価したい。今こそ大統領は、自警団の暴力から移民を保護する具体的な対策を実行し、この憎むべき犯罪を起こした者が必ず法の裁きを受けるようにしなければならない。

背景情報
ジンバブエからの移民は、特別在留許可を発給された上で南アフリカに長年暮らし、働いてきた。だが、反移民感情の圧力に屈した政府は昨年末、在留許可の更新を突然取りやめたため、移民は不法滞在の状況に陥った。

移民排除で組織化する自警団は、#PutSouthAfricaFirst(南アフリカ人第一)などのハッシュタグを使い、ジンバブエや他の国から来た人たちで昨年末に特別在留許可の期限が切れた人たちを標的に襲撃してきた。

その後、政府は方針を転換し、ビザ申請により在留資格を取得できるようにするため、今年末までの在留を認めた。とはいえ、正規の身分がないことに変わりなく、移民は襲撃を受けやすくなっている。

今年2月、ヨハネスブルグの南の町ソウェトと、ビジネスの中心地ヒルブローでも襲撃事件があったが、警察はその場にいたにもかかわらず、取るべき対応を取らなかった。【2022年4月22日 アムネスティ国際ニュース】
********************

外国人襲撃の加害者は、刃物や棒など身の回りの品を凶器に集団で暴力を行使するようです。一方、標的となるのはモザンビーク、マラウイ、ジンバブエなど近隣国出身の人々である場合が多く、更に西アフリカからやってきたナイジェリア人も襲撃対象にされることが増えています。

世界銀行の2018年の統計によると、南アフリカの移民数は現在約404万人と推定され、総人口約5800万人の7%近くに達しています。国別ではモザンビーク約68万人、ジンバブエ約36万人、レソト約31万人など近隣国出身者が多数を占めており、その多くが鉱山、プランテーション農場、飲食店、建設現場で働いており、富裕層家庭の庭師やメイドとして働いている人も多くいます。

【自らの失政の責任を移民になすりつける政府・政治家】
移民など外国人への暴力は単に自警団や貧困層によるものではなく、「外国人が仕事を奪っている」などと、そうした外国人嫌悪を煽っている政治家の責任もあります。政府・政治家が自分たちの失政を外国人のせいにしている側面も。

****南アフリカ:外国人嫌悪を助長する政府****
南アフリカではこの数週間、移民、難民、庇護希望者への暴力が多発し、外国人が経営する店舗や事務所が略奪や放火される事態が続いている。

特にヨハネスブルグとプレトリアの2都市では、ナイジェリア人をはじめとする外国籍の人たちが経営する複数の事業所が狙われ、在庫や備品類など数百万ドル(数億円)相当が灰になった。

この1週間では、ヨハネスブルグなど各都市で地元住民と移民らの衝突で、確認されただけでも5人が死亡した。
当局は、こうした事態を予測できなかったわけではない。

移民、難民、庇護希望者は、何年にもわたり「外国人」として敵視されてきた。その背景には、恥知らずな政治家たちが、「外国人が仕事を奪っている」などの悪質な強弁を繰り返し、社会問題を取り上げてはその原因を移民らに転嫁し、移民らを格好のスケープゴートに仕立て上げてきたことがある。

2016年、ヨハネスブルグ市長は、「外国人が町を乗っ取り、犯罪を増やしている」と移民らを犯罪者呼ばわりしたし、昨年には、内務大臣が、医療費の負担増の矛先を移民らに向けた。

2008年、市民と移民らの衝突で、60人余りが亡くなった。移民らに対する大規模な排斥の始まりだった。政府がこの時、憎悪問題の根絶に向けて、加害者を処罰するなど適切な対応を取っていれば、事態は変わっていたはずである。

今日の事態は、移民、難民、庇護希望者に対する犯罪に手を打ってこなかった結果である。犯罪を放置してきたことで、移民ら弱者が、ますます無防備な状況に置かれている。

さらに、政治家らが、犯罪の増加、社会保障費の負担増、違法ビジネスの横行などの原因を移民らに転嫁したことで、外国人嫌悪は深まり、衝突が激化した。

事態の収束に向けて、政治家や関係当局は、政治的理由で問題の矛先を移民らに向け、彼らの排撃に油を注ぐのはやめ、人権と法の支配が根付く国家を目指すべきである。

また、難民、庇護希望者、移民らの安全を保障する政策を実施し、襲撃問題に終止符を打たなければならない。そのためにはまず、過去の憎悪犯罪の容疑者を処罰し、再犯への道を断つことである。【2019年9月11日 アムネスティ国際ニュース】
*********************
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

南アフリカ  総選挙で想定以上に大敗した与党ANCは白人政党と統一政府  根深い人種間の分断も

2024-10-28 22:42:15 | アフリカ

(アパルトヘイト(人種隔離)の歴史を抱える南アで人種間融和の象徴と目されていたコリシ選手(右)とレイチェルさん=2020年2月 【10月28日 共同】)

【人種間対立が根強い南アで人々の希望を集めてきた夫婦が離婚】
“ゴシップネタ”ではありますが、南アフリカにおける根深い人種問題も絡んで“ゴシップ”で終わらないところもある話題が下記。

****南アフリカ黒人主将、離婚に衝撃 ラグビー強豪、人種融和の象徴****
ラグビーの強豪・南アフリカ代表で主将を務める黒人のシヤ・コリシ選手(33)が28日までに、白人の妻との離婚を発表し、同国に衝撃が広がっている。2人はアパルトヘイト(人種隔離)の歴史を抱える南アで人種間融和の象徴と目されていたためだ。

英BBC放送などによると、2人は2016年に結婚した。コリシ選手は長年白人が主体だった代表チームで黒人として初の主将となったトッププレーヤー。南アが19年のワールドカップ(W杯)日本大会で優勝した時も主将だった。

妻のレイチェルさん(34)は女性の活躍や人権問題に取り組む活動家で、2人の間には子どもと養子計4人がいる。

2人は人種隔離撤廃を成し遂げた故マンデラ元大統領が夢見た多人種共存の「虹の国」を体現する存在として、民主化から30年たっても人種間対立が根強い南アで人々の希望を集めてきた。

22日、SNSに連名で「熟考を重ね、結婚生活に終止符を打つことを決めた」と投稿。悲嘆に暮れる一部の国民が離婚阻止の署名活動を訴える事態となった。【10月28日 共同】
*****************

離婚阻止の署名活動・・・・それも無理な話ですが、それだけ“民主化から30年たっても人種間対立が根強い南アで人々の希望を集めてきた”ということでしょう。

【総選挙で想定以上に大敗した黒人主導の政治をリードしてきた与党ANCと白人主体のDAが国民統一政府(GNU)を樹立】
上記は黒人と白人の夫婦ですが、政治で世界でも従前は想像できなかた連立も生まれています。

昨日の日本の総選挙では、選挙前から自民党はある程度の負けは想定されていましたが、その想定を越えて、第1党は維持したものの、自公の与党で過半数を大きく下回る“大敗”となりました。

同様に、ある程度の負けは予想されていたものの、想定以上に負け、過半数を大きく下回ったのが、5月29日に行われた南アフリカ総選挙におけるアフリカ民族会議(ANC)でした。

与党アフリカ民族会議(ANC)は、かつてネルソン・マンデラ氏が率いた名門政党で、アパルトヘイトを終わらせた南アフリカの政治を長年牽引してきました。白人支配を終わらせ、黒人主導の政治を実践してきた政党でもあります。

しかし、長年の“政権与党”の座が腐敗を蔓延させ、貧困・治安は改善されず、ジリジリと国民の信頼を失い、5月末の過半数割れという結果に至っています。

過半数を大きく割ったANCにとっては、5月末の総選挙で台頭した同じく黒人層を基盤とする急進的ポピュリズム政党と組むのか、あるいは、穏健な経済政策をとるものの支持基盤が全く異なる白人政党と組むのか・・・という二つの選択肢がありましたが、ラマポーザ大統領は白人主体で親欧米の野党民主同盟(DA)を含む全10党で構成される国民統一政府(GNU、Government of National Unity)を樹立しました。

****国民統一政府(GNU)への期待と不安****
南アフリカ共和国新政権の展望(1)

南アフリカ共和国では、5月29日に、アパルトヘイト(人種隔離政策)終了後、初の全人種参加による民主的選挙が1994年に行われて以来、7回目となる総選挙(国民議会・州議会選挙)が行われた。

これまで長きにわたって単独政権を担ってきたアフリカ民族会議(ANC)が初めて過半数を割り込み、しかも予想以上に低い得票率にとどまったことで、新政権がどのように樹立されるのか内外の注目を集めた。

このような中、シリル・ラマポーザ大統領は国民統一政府(GNU、Government of National Unity)の樹立を宣言、ANCを含めた全10政党(注)からなる新内閣を発足させた。(中略)

ANCの大敗とGNUの成立
5月29日の総選挙をめぐっては、ANCの過半数割れが予想されたが、得票率は45~50%弱という小幅な負けとの見方が多かった。

しかしふたを開けてみると、ANCの得票率は40.2%にとどまり、最大得票政党は維持したものの予想以上の大敗であった。

前回2019年総選挙で獲得した57.5%からも大きく支持を減らし、国民議会議席数では230議席から71議席を失い、159議席となった。

その他、民主同盟(DA)が得票率21.8%で2位、民族の槍(やり)(M.K.)が14.6%で3位、経済的解放の闘士(EFF)が9.5%で4位、などの順であった。

注目を集めたのは一気に第3政党に躍り出たM.K.で、ジェイコブ・ズマ元大統領が率いる左翼ポピュリスト的とされる政党だ。ズマ氏自身の支持基盤であるクワズールナタール州、ズールー族が支持層として重なり、同州での得票率は過半数に迫る45.9%となった。

ANCの負けが小幅だった場合、ANCは過半数を維持するために、自政党と政策が近く、しかしキャスティングボートを握られないで済む少数政党と連立を組むことが予想された。

しかしこの選挙結果を受け、過半数維持に向けては得票率約10%分を埋めなくてはならなくなり、少数政党の寄せ集めでは困難な状況となる。

ここに至り、ANCがポピュリスト色の強いM.K.やEFFと組み、南ア新政権が市場からの信認を失うのか、それとも経済政策を重視し、主として白人やカラード(混血)が支持母体であるDAと、歴史的な禍根を乗り越えてパートナーシップを組むことができるのかが注目された。

識者や調査会社専門家などの間でも多様な見方が示されたが、ANCという政党の成り立ちや南ア民主化の歴史的経緯に鑑みると、(白人主体の)DAと組むことはハードルが高いとの見方が強かった。

こうした中で、ラマポーザ大統領は6月6日、GNUの発足を目指すと発表、一部政党と議論を開始していることを明らかにした。

個別の政党と政策協定を結ぶ形での連立政権よりもやや緩やかに、GNUの意図表明・原則を確認することを前提に、幅広く政権参加政党を募ることとしたのだ。

どの政党にもGNUへの門戸は閉ざさないとしたものの、ここでも各政党が掲げた公約や主張の違い、これまでの経緯などから、ANCが組むことができる政党は限られるとの向きが多かった。

そうした中の6月14日、ANCとDAがGNU樹立に向けて合意したとの電撃的発表を行う。これにより、同日開幕する総選挙後の第1回国民議会でラマポーザ氏が大統領に選出されることが事実上固まり、続投が決まった。GNUはANC、DAを含む全10党で構成される。(後略)【10月24日 JETRO】
********************

黒人主体の政治を牽引してきたANCと白人主体のDAが組むことも画期的でですが、問題はその政権がうまく機能するのかというところ。

ANCとDAを含む国民統一政府(GNU)の発足後の評価についてはほとんど情報を持っていませんが、やや相反するような下記の報道も。

****南アの「挙国一致」政府に広がる楽観論 連立内に火種も****
南アフリカのラマポーザ大統領は9月に国連総会で演説し、先ごろ発足した「挙国一致政府(GNU)」を南アの「第2の奇跡」と位置付け、異例の連立が長期政権を維持できるという強気の姿勢が広がっていることをうかがわせた。
同氏は大連立を発足させた政治取引について大風呂敷を広げた格好だ。(後略)【10月21日 日経】
*******************

****見えてきた「ラマポーザ政権の南アフリカ」のアイデンティティと国際社会での行動原理****
南アフリカ(南ア)では今年5月末の総選挙(国民議会選挙・400議席)で与党アフリカ民族会議(ANC)の議席が1994年の民主化後初めて過半数を下回り、 シリル・ラマポーザ大統領 はANCを軸に10政党から成る国民統一政府(GNU)を樹立した。

だが、GNU発足からわずか3カ月にして、教育政策を巡ってGNU内の政党間対立が先鋭化し、政権は不安定化している。(後略)【10月18日 新潮社Foresight】
********************

異なる政党ですから対立・不協和音があるのは当然ですが、それを乗り越えて有効な政策を実行できるのかが問われています。

当然ながら、フォーマルな世界での差別がなくなっても、人の心の中にある差別意識はそうそう簡単にはかわりません。

【人種間の緊張を高める事件】
いささかスキャンダラスですが、下記のような事件も。

****白人男性農場主が黒人女性を殺害、豚に食べさせた疑い 南アフリカで怒り渦巻く****
南アフリカで、白人男性農場主らが黒人女性2人を銃で殺害し、豚に食べさせたとみられる事件があり、怒りの声が噴出している。

殺害されたとされるのは、マリア・マクガトさん(45)とルシア・ンドロヴさん(34)。 南アフリカ北部リンポポ州の都市ポロクワネに近い農場で今年8月、食べ物を探していたところ、銃で撃たれたとされる。

その後、2人の遺体は証拠隠滅のため、豚に与えられたとみられている。

この事件で、農場主のザカリア・ヨハネス・オリヴィエ被告(60)、従業員のエイドリアン・デ・ウェット被告(19)、ウィリアム・ムソラ被告(50)の3人の男性が逮捕・起訴された。(中略)

マクガトさんのきょうだいのウォルター・マトホールさんは、この事件で、南アフリカの黒人と白人の間にある人種的な緊張が一段と悪化したとBBCに話した。

南アでは人種差別制度のアパルトヘイト(人種隔離)が30年前に撤廃されたが、人種間の緊張は特に農村部で広く残っている。

女性の夫が逃げ延び通報
事件は8月17日夜に発生した。人々が集団で、農場で売られている作物の中から賞味期限が切れたか、もうすぐ切れるものを手に入れようと、今回の現場に行ったとされる。販売されている農作物で残ったものは、豚に与えられることもあったとされる。

現場の農場には当時、ンドロブさんの夫マブト・ンクベさんもいた。一団は銃撃され、ンクベさんは、はって逃げ出した。その後、どうにか医者に助けを求めたという。

ンクベさんは警察にも通報。数日後、警官が豚舎で、ンドロブさんとマクガトさんの腐敗した遺体を発見したという。

警官が豚舎に入った際には、マクガトさんのきょうだいのマトホールさんも同行。マクガトさんの遺体の一部が豚によって食べられていたのを見たという。

被告3人は殺人に加え、ンクベさんに対する殺人未遂、銃器の無免許所持の罪にも問われている。(中略)

野党「経済的解放の闘士」(EFF)は、この農場の閉鎖を要求。「この農場で生産された製品が販売され続けるのを黙って見ていることはできない。消費者に危険をもたらしている」と主張した。

南アフリカ人権委員会は、この事件を非難するとともに、影響を受けたコミュニティーの間で反人種差別的な対話を行うよう呼びかけている。

農家(多くは白人)を代表する団体は、犯罪率が高い南アにおいて、農業コミュニティーに属する人々は自分たちが狙われていると感じている、と主張している。

ただ、農家がそれ以外の人たちより高いリスクに直面していることを示す証拠はない。

南アで人種間の緊張を高める事件は、最近も2件起きている。

東部ムプマランガ州では8月、農家と警備員が、男性2人を殺害した容疑で逮捕された。羊を盗んだとされる男性2人の遺体は、誰なのか判別できないほど焼かれていた。現在、遺灰のDNA鑑定が進められている。

別の事件では、70歳の白人農家が、自分の農場からオレンジ1個を盗んだとして6歳の少年を車でひき、両足を骨折させた疑いがかけられている。

この農家は殺人未遂2件と危険運転の罪で起訴され、現在、裁判所で保釈の審理が続いている。 これまでの審理では、少年が母親と一緒に食料品を買いに町へ向かう途中、農場の前を通りかかり、地面に落ちていたオレンジを拾ったとの説明がされた。母親は息子が農家に車でひかれるのを、恐怖にかられながら見ていたとされる。【10月12日 BBC】
***********************

【遠い「虹の国」の理想 「国民のために奉仕する政府がいれば、この国はもっと豊かになれる」】
南アフリカにおける「虹の国」の現実については、以下のようにも。

****“自慢の姉”が南アフリカの大女優になっていた アパルトヘイト撤廃から30年 マンデラが掲げた「虹の国」の理想は遠く****
(中略)
今年は、南アフリカにとって初の民主的な選挙が行われてからちょうど30年の節目の年だった。30年間、この国では、マンデラ元大統領が率いた与党ANC(アフリカ民族会議)が、国民の圧倒的な支持のもと政権を維持し続けていた。

ところが長期政権となったANCの内部では汚職が蔓延し、一向に縮まらない経済格差、世界最悪レベルの失業率、国家的災害とも言われる電力危機などから、国民の心はANCから離れつつあった。

5月に行われた総選挙では、与党ANCが初めて過半数を割り、白人主体で親欧米の野党DA(民主同盟)らとの連立政権が発足した。

揺らぐことのなかったマンデラの党・ANCの時代は、一つの終わりを迎えた。
ソウェトで生まれた一人の黒人少女は、差別が撤廃されてからの30年あまりをどう見てきたのか。

「確かに私たちは民主主義を手に入れ、自由になった。投票権を得て、市民として認められるようになった。だけど、今の南アフリカでは毎日のように計画停電が行われ、生活に必要な電気すら手に入らない。政治家や警察は汚職にまみれ、信じることができない。そんな国が、果たして本当に“自由”だと言えるでしょうか?

アパルトヘイトは撤廃され、肌の色による差別はなくなった。でも、この国には“経済的な不平等”が今も根強く残っています」

白人の失業率が9%であるのに対し、黒人は37%。 世界銀行の調査では、いまも人口の1割が富の7割を支配する、「世界で最も不平等な国」だといわれている。

実際に選挙前の取材では、白人排斥をも辞さない過激な主張を行う急進左派政党(EFF=経済的解放の闘士)が若者の熱狂的な支持を集めていた。

縮まらない経済格差から、人種間の分断は再び深まっているように感じられた。 マンデラが掲げた「虹の国」の理念は、失われてしまったのだろうか。

「すべてがダメなわけじゃない。ここからきっと良くしていける。上手くいかなかったのは、いつしか政治家が国民のためではなく私利私欲のために動くようになってしまったから。恵まれない人にチャンスを与え、国民のために奉仕する政府がいれば、この国はもっと豊かになれる」。(後略)【9月29日 TBS NEWS DIG】
********************
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

西アフリカ  武装集団襲撃で600人死亡 国際的にあまり注目されることもない虐殺の現実

2024-10-05 22:38:07 | アフリカ

(マリ 武装組織空港襲撃 大統領専用機燃やす【9月18日 ABEMA】)

【米仏が撤退し、ロシアが勢力拡大という話はよく聞くが・・・】
マリ、ブルキナファソ、ニジェールの西アフリカが国際的に国際関係の面で語られるのは、この地域では軍事クーデターが起き、軍事政権と対立するフランス・アメリカが撤退し、民間軍事会社ワグネルを先陣とするロシアが影響力を拡大しているという話。

****アフリカ・サヘルの政情不安****
アフリカ大陸の北部サハラ砂漠の南で、半乾燥地域のことをサヘルというが、そこにはセネガル、モーリタニア、マリ、ブルキナファソ、ニジェール、ナイジェリア、チャド、スーダン、南スーダン、エリトリアという国々がある。(中略)

今、このサヘルで旧宗主国のフランスやアメリカに代わって、ロシアがプレゼンスを高めている。

この地域では、国際テロ組織のアルカイダや過激派組織「イスラム国(IS)」などが活動しており、新型コロナウイルス流行で職を失った若者をリクルートして、勢力を拡大してきた。

そのために治安が悪化し、国民の不満が高まったが、民主派政権は過激派テロ組織の鎮圧に失敗し、統治能力の欠如を示した。そこで、軍部がクーデターを起こしたのである。

マリでは2020年8月に軍部が反乱し、民主的に選ばれたケイタ大統領を追放し、ゴイタ大佐が2021年5月に大統領に就任した。ブルキナファソでは、2022年1月に軍事クーデターでカボレ大統領が失脚した。

ニジェールでは、2023年7月、軍部がクーデターを起こした。首謀者のアブドゥハーマン・チアニ大統領警護隊長は、親欧米派のモハメド・バズム大統領を追放し、憲法を停止し、自ら国のトップに就任した。

これらの軍事クーデターの背後には、ワグネルを軍事政権の傭兵として活動させるロシアの存在がある。ニジェールはウランの有数な産出国であり、EUのウラン輸入の約24%を占める最大の供給国である。また、マリもブルキナファッソも金を産出するなど、資源に恵まれている。ロシアは、その資源も自由に入手する。

これらの国々では、旧宗主国のフランスへの反感が強く、駐留フランス軍の安全が確保できなくなった。そこで、マクロン大統領は、ニジェールから約1500人の仏軍を昨年12月に撤退させた。今年の4月には、約1000人の米軍も全てニジェールから撤退した。米仏に代わってロシアが居座っているのである。(後略)
【8月15日 現代ビジネス 舛添要一“「ゼレンスキーは《最悪の選択》をした」ロシア越境攻撃を仕掛けたウクライナが、「アメリカ・フランスに見放される」運命にある理由】
************************

【国際的にあまり注目されることもない虐殺の現実】
“国際テロ組織のアルカイダや過激派組織「イスラム国(IS)」などが活動しており、新型コロナウイルス流行で職を失った若者をリクルートして、勢力を拡大してきた”・・・その現実は“勢力を拡大”と簡単に片づけるにはあまりしも悲惨です。

住民を襲う虐殺・暴力はイスラム系過激派のテロだけでなく、少数民族をテロ組織と同一視する政府軍やロシア兵による攻撃もあります。

ウクライナやパレスチナでの犠牲には多くの目が向けられますが、西アフリカにおけるイスラム過激派のテロや政府軍・ロシア兵による攻撃の具体事例はあまり語られることはありません。

****「ウクライナやガザと同じことが…マリの実態知って、虐殺止めて」現地ジャーナリストが国際社会にSOS****
軍事政権下にある西アフリカのマリで、十数万人の少数民族らが隣国モーリタニアに逃れ、過酷な難民生活を送っている。背景にはロシアの民間軍事会社「ワグネル」の進出に伴う紛争激化がある。長年、現地の少数民族トゥアレグを取材してきたジャーナリスト、デコート豊崎アリサさん(53)に現状を聞いた。(太田理英子)

◆国際機関の支援なし、気温50度近い砂漠で
フランス人と日本人の両親を持つデコートさんは、1997年に初めてアフリカ大陸北部のサハラ砂漠を訪れて以来、砂漠を拠点にするトゥアレグのキャラバンのドキュメンタリー撮影や取材活動をしてきた。「今、民族浄化の危機が迫っている」と訴える。

今年7月には国境近くに点在する難民キャンプを取材。木の棒と布で作ったテントの下に人々は身を寄せていた。昨年10月以降、北部から約12万人が逃げてきたといい、多くはトゥアレグを中心とした少数民族。8割は女性と子どもだ。

国境なき医師団を除き、国際機関の支援は見られない。砂漠地帯で気温は50度近い。「衛生環境が悪く感染病も広がっている」

◆ワグネルの進出で事態がさらに悪化
トゥアレグは、マリやニジェールをまたぐサハラ砂漠の遊牧民だったが、1950~60年代にマリや周辺国が独立。マリでは政府の弾圧に対し、トゥアレグの組織が自治を求め反乱を繰り返した。2012年に独立を宣言したが、混乱に乗じてイスラム過激派組織も勢力を広げ、紛争の様相は複雑化した。

事態がさらに悪化したのは、2021年の軍事政権樹立。駐留仏軍が撤退し、代わってマリ政府に接近したのがロシアだった。ワグネルが進出し、軍事支援や情報工作を展開。

2023年にはマリ軍とワグネルが「反テロ対策」としてトゥアレグの組織の拠点地域に侵攻。交戦が続き、トゥアレグや別の少数民族プルの人々も隣国に逃れたという。

◆ロシアがアフリカに近づく狙いは
ワグネルは2017年ごろからアフリカ諸国で現地政府への軍事協力、選挙介入や鉱物採掘などの活動を展開したが、2023年に実質解体された。

ロシアの準軍事組織「アフリカ部隊」などに吸収され、従来の活動はロシア政府主導で強化。現在マリ軍と活動しているのもアフリカ部隊とみられる。

ロシアがウクライナ侵攻で欧米と対立する中、アフリカに近づく狙いは何か。
日本エネルギー経済研究所中東研究センターの小林周主任研究員は「ワグネルが築いた現地政府との関係や開発利権を生かして収益源にすると同時に、国連や欧米の影響力、存在感を低下させている」とみる。

◆かつてないほど残酷な虐殺が
政府軍とアフリカ部隊による攻撃に加え、過激派組織のテロなど、住民への脅威は増大している。

デコートさんは「かつてないほど残酷な手段で虐殺が起きている」と話す。キャンプにいた50代女性は、親族が切り刻まれたほか、生きた状態で井戸に投げ込まれた人もいたと証言。「マリ軍などは国境付近に集中し、逃げることさえ危険」と語ったという。

現地に入る報道機関はなく、デコートさんは国際社会に現状が伝わらないことに危機感を募らせる。「ウクライナやパレスチナ自治区ガザと同じことが起きている。マリの実態を知ってもらい、無差別な虐殺を許さない世論を広げたい」【8月25日 東京】
**********************

そのマリでは9月、首都マリがイスラム過激派の攻撃を受けています。

*****西アフリカのマリ、首都攻撃され70人死亡 アルカイダ系武装組織 数百人死傷の情報も****
ロイター通信は19日、西アフリカ・マリで17日に国際テロ組織アルカイダ系武装組織が首都バマコの空港や警察学校を攻撃し、約70人を殺害したと報じた。外交筋の話としている。

イスラム系などの武装勢力に悩まされるマリの軍事政権はロシアと協力して対策を進めているが、首都を攻撃される異例の事態となった。

ロイターによると、軍政は被害の詳細を明らかにしていない。数百人が死傷したとの情報もある。ゴイタ暫定大統領は攻撃の数日前、ロシアの支援で武装勢力を弱体化させたと主張したばかりだった。

マリでは2020年以降に2度クーデターが起き、権力を掌握した軍政はテロ対策で駐留していたフランスの部隊を撤退に追い込んだ。ロシアとの連携に転換したが、7月下旬には北部でロシアの民間軍事会社ワグネルの戦闘員多数が遊牧民トゥアレグの反政府勢力に殺害された。(共同)【9月20日 産経】
********************

“数百人が死傷したとの情報も”・・・・欧米はもちろん、ウクライナやパレスチナでも大事件ですが、マリの場合は“数百人が死傷したとの情報も”で片づけられてしまします。

ブルキナファソでは

****ブルキナファソの虐殺、死者600人に 仏当局の評価で当初推計から倍増****
西アフリカ・ブルキナファソにある町を国際テロ組織アルカイダとつながる武装グループが8月に襲撃した際、数時間で最大600人が射殺されていたことが分かった。フランス政府による安全保障関連の評価から明らかになった。

当初の報道で引用された死者数から2倍近く増加した。 更新された死者数は、当該の襲撃がこの数十年にアフリカで発生した単独の襲撃事件として最悪の部類に入ることを意味する。 

襲撃に関与したのは、サハラ砂漠南部のサヘル地域を拠点とするアルカイダ系の「イスラム・ムスリムの支援団」(JNIM)。

ソーシャルメディア上にあるJNIM支持のアカウントに投稿された複数の動画によると、8月24日に発生した襲撃では、JNIM所属の戦闘員らがオートバイに乗って同国のバルサロゴ郊外に進入。住民に対し組織的な銃撃を始めた。 

死者の多くは女性と子どもで、動画からは自動小銃の銃声と犠牲者らの叫び声が聞こえる。犠牲者らは、死体のふりをしているところを撃たれているようだ。 

サヘル地域では米軍とフランス軍が主導して治安の確保に取り組んでいるものの、イスラム武装勢力の進入にはなかなか歯止めがかからない。マリ、ブルキナファソ、ニジェールではクーデターが相次ぎ、フランスと米国の軍隊は撤退を余儀なくされた。 

各国の軍事政権はロシアの傭兵(ようへい)を集め支配力強化を図るが、逆に権力の空白地帯が生まれ、イスラム武装勢力の台頭につながっている。

CNNがフランスの安全保障当局者から入手した前出の評価で明らかになった。 国連は当初、バルサロゴでの襲撃の死者数を200人と推計。JNIMは300人近くを殺害したと発表していた。

ロイター通信が引用した米SITEインテリジェンス・グループの翻訳によると、JNIMは軍とつながる民兵組織の構成員を標的とした襲撃であり、市民を狙ったわけではないと主張した。 

フランスの当局者はCNNの取材に答え、ブルキナファソの治安が著しく悪化していると指摘。治安部隊が対処できないため、武装したテロリスト集団がますます自由に振る舞う状況になっているとした。 

今回の報告によれば、バルサロゴでの襲撃の15日前にはタウォリという村で軍の車列が襲われ、兵士150人がイスラム武装勢力に殺害された。 9月17日には隣国マリの首都バマコでも、JNIMの襲撃が発生。空港やその他の重要な建物が狙われ、70人以上が死亡した。【10月4日 CNN】
*********************

映画などのドラマでは、オートバイに乗った武装勢力が村を襲撃して住民を虐殺・・・という場面を見ますが、それはドラマ上の話ではなく、西アフリカの現実です。

アルカイダ系の「イスラム・ムスリムの支援団」(JNIM)は“市民を狙ったわけではないと主張した”とのことですが、死者600人・・・・皆殺しの意図を持ってやらなければあり得ない数字です。

“軍が集落を防衛しようと住民に塹壕を掘らせていた際に襲撃を受けたが、住民を守る措置を取っていなかったため被害が拡大したとの見方がある。報告書は「軍政にテロ対策を担う力はない」と結論付けたという。”【10月5日 産経】

政府軍に加担する村や町はこうなるぞ・・・という見せしめなのでしょう。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

アフリカ  中国をはじめ多くの国から“求愛”を受けながらも貧困から脱却できない事情

2024-09-18 22:56:19 | アフリカ

(6日、アンゴラ・ルアンダで中国海軍病院船「平和の方舟」の中国人医師の診察を待つ患者ら。【9月14日 新華社】)

【習近平主席 「中国とアフリカの関係は新時代の『全天候型運命共同体』にレベルアップする」】
9月3日ブログ“中国 中国・アフリカ協力フォーラムサミット開催 変化するアフリカ向け融資”でも取り上げたように、中国の対アフリカ支援に近年“バラマキ”から“収益性重視”という変化が見られます。

****中国、「ばらまき」から収益性重視か-曲がり角の対アフリカ融資****
中国は10年以上にわたり「一帯一路」構想を通じ1200億ドルを支援
「債務のわな」や搾取、汚職といった批判がつきまとう

中国の習近平国家主席がアフリカ各国の首脳を北京に今週迎える際、習氏はアフリカ側への貸し付け規模を縮小し、中国が引き換えに何を求めているのかをより明確に示すとみられる。つまり、リターンの向上とトラブルの減少だ。(後略)【9月3日 Bloomberg】
****************

****中国の対アフリカ開発融資、最盛期の6分の1 撤退した分野とは?****
中国が2023年にアフリカ諸国向けに決定した開発融資は総額約46億ドル(約6700億円)で、最盛期のおよそ6分の1だった。米ボストン大グローバル開発政策センターの集計で判明した。経済が停滞した新型コロナ禍以降では初めて上昇に転じたが、中国がある分野からは手を引いたことがうかがえるという。

中国は00年代以降、巨大経済圏構想「一帯一路」に沿って、豊富な天然資源を有するアフリカへの進出を強化してきた。エネルギー・資源開発や、道路や空港・港湾といった輸送インフラ整備、防衛、農業など分野は多岐にわたり、ピークの16年には計288億ドル(約4兆2300億円)に達した。

ただコロナ禍では、経済基盤が弱いアフリカ諸国の国家財政は大きな打撃を受け、対外債務の返済が厳しくなるケースが続出。中国も不良債権化を恐れて新規融資を抑えるようになり、22年には融資総額が10億ドル(約1470億円)にまで落ち込んだ。

23年にはこういったコロナ禍のダメージからの回復傾向が見られる。同センターによると中国は23年、ナイジェリアでの鉄道網整備▽マダガスカルでの水力発電所の建設▽アンゴラでのインターネット網整備――など8カ国と13件の融資契約を結んだ。

一方、中国が最近アフリカで融資を行っていないのが、石炭火力発電所計画だ。習近平国家主席は地球規模の気候変動対策の一環として、21年9月の国連総会で「石炭火力発電所の新たな輸出はしない」と発言した。同センターの集計でも、19年以降は新規の石炭火力発電所融資は確認されていない。中国がアフリカでも「脱炭素」にかじを切っていることが読み取れる。

中国の海外開発融資は「外交機密」を理由に詳細が公表されないケースがある。また中国の企業や人材を利用することが前提の「ひも付き」の融資が大半だ。支援を受ける側が返済に窮し、資産などを差し押さえられてしまう「債務のわな」に陥るリスクが高いと国際的に批判されてきた。

同センターによると、中国は近年、アフリカ輸出入銀行(エジプト・カイロ)やアフリカ金融公社(ナイジェリア・ラゴス)といった国際的な開発金融機関を通じた融資にも力を入れている。中国政府が前面に出ることがないため、融資に伴うリスクや批判を回避できるメリットがある。

中国が00〜23年に行ったアフリカ向け融資は、49カ国と七つの開発金融機関などに対して計約1823億ドル(約27兆円)だった。中国は今後、従来の「重厚長大」から「量より質」を重視する路線にかじを切りつつ、アフリカへの影響力を維持・拡大していく狙いとみられる。【平野光芳】
*****************

そうした支援・融資の質・量の変化はあるものの、中国は毛沢東時代から一貫して対アフリカ外交を重視しており、そのことは今も変わりません。

****中国が6年ぶりにアフリカ諸国と首脳会合 グローバルサウスを取り込みへ 北京で6日まで****
中国とアフリカ諸国が参加する「中国アフリカ協力フォーラム」の首脳会合が4日、北京で開幕。2018年以来6年ぶりの開催となる。

習近平国家主席は会合出席のため訪中した各国首脳と相次いで会談し、グローバルサウス(南半球を中心とした新興・途上国)の取り込みを図った。

2000年に発足した同フォーラムには50カ国以上が参加している。6日まで開かれる今回の首脳会合について、中国メディアは「中国が近年主催した外交行事中で最大規模」と強調する。(中略)

習氏は4日までに20カ国以上の首脳と個別に会談し、南アフリカやナイジェリアなどと2国間関係の格上げを宣言した。ロイター通信によると、4日にはタンザニアとザンビアを結ぶ鉄道の改修に向けた合意文書の署名に習氏も立ち会った。

中国としては、米欧との対立激化も念頭にグローバルサウスとの関係強化を進める狙いとみられる。習氏は2日に行った南アフリカのラマポーザ大統領との会談で、「国際情勢が複雑になるほど、グローバルサウス諸国はますます独立自主、団結、協力を堅持し、国際的な公平や正義をともに守る必要がある」と発言した。【9月4日 産経】
*****************

****習主席「運命共同体だ」関税ゼロに200億円の食糧援助…会議にアフリカ50カ国超が参加****
中国が主催し、アフリカの50以上の国の首脳らが参加する会議が北京で開かれ、習近平国家主席が「中国とアフリカは運命共同体だ」とアピールしました。

中国 習近平国家主席 「中国とアフリカの関係は新時代の『全天候型運命共同体』にレベルアップする」

「中国アフリカ協力フォーラム」の開幕式で習主席は貿易や農業など10分野での協力を打ち出しました。
貿易では発展途上国33カ国の製品の関税をゼロにする優遇措置を取るほか、食糧援助として10億元、約200億円を提供するとしています。

また、安全保障分野でも同じく10億元を無償援助し、アフリカの軍人などの育成に協力するとしました。

中国はこれらの援助を通じ、「グローバルサウス」と呼ばれるアフリカ諸国への影響力を高めたい考えです。

アフリカ記者 「中国はウガンダに友好的なローンを提供してくれる。多くのインフラのメガプロジェクトが役に立つ」

会議にはアフリカ各国から多くの記者も招待され、各国に成果を強調する狙いもあります。【9月5日 テレ朝news】
*********************

****対アフリカで7兆円支援へ=「米欧との違い」アピール―中国主席****
中国の習近平国家主席は5日、北京で開催中の「中国アフリカ協力フォーラム」首脳会合で基調演説を行った。アフリカ諸国首脳が一堂に会する中、今後3年間で3600億元(約7兆3000億円)の資金援助を実施することや、軍事協力の強化を表明した。

首脳会合は4〜6日の日程で、中国外務省によると、50以上のアフリカ諸国・機関の首脳らが出席した。習氏は5日の演説で「中国とアフリカの関係は史上最良だ」と強調。

対立する米国を念頭に「西側諸国は近代化の過程で多くの発展途上国に苦難をもたらしたが、中国とアフリカは絶えず歴史の不公平を正そうとしてきた」と述べ、米欧との違いをアピールした。【9月5日 時事】
*****************

また、経済・安全保障だけでなく、医療支援といったイメージアップ活動も行っているあたり、明確な国家戦略が窺えます。

****中国海軍の病院船「平和の方舟」、コンゴ共和国訪問へ****
海外医療支援任務「和諧使命−2024」を遂行中の中国海軍病院船「平和の方舟」が11日、アンゴラでの7日間にわたる友好訪問を終え、同国のルアンダ港を離れて7カ所目の訪問先となるコンゴ共和国に向かった。【9月14日 新華社】
****************

また、国家レベルの支援だけでなく、人的レベルでの交流も盛んに行われています。

****中国の若者はアフリカ就職を目指す 年々深まるアフリカとの関係 習主席「歴史上もっとも良い」背景に失業率や激しい競争****
近年、中国とますます関係を深めているのがアフリカの諸国です。こうした中、今、国では就職先としてアフリカを目指す若者が増えています。(中略)

中国で始まった中国アフリカ協力フォーラム。習近平国家主席は今後3年間で7兆円を超える規模の資金を拠出すると表明しました。

中国 習近平 国家主席 「中国とアフリカ諸国の関係は現在、歴史上、最も良い時期にある」

習主席が強調するように、中国とアフリカの関係は年々深まっています。現在、中国とアフリカの貿易額は過去最高を記録。ここ10年だけでもおよそ1.5倍に拡大しました。農業やインフラ建設に加え、最近は電気自動車やIT分野での経済的な結びつきが顕著です。

こうした中、今、就職先としてアフリカを目指す中国の若者が増えています。

劉さん 「私は今、ナイロビにいます。このような決断をするとは思っていませんでした」

ケニアの首都・ナイロビで半年前から不動産関連の企業で働く劉さん(23)。なぜ、アフリカで就職しようと思ったのでしょうか?

劉さん 「中国の深センで働いていましたが 仕事は好きではありませんでした。競争が激しく、残業が当たり前で、給料もよくなかったからです」

彼女のように激しい競争を避け、アフリカを目指す若者が、ここ数年、増えているといいます。また、若者の失業率が高いこともアフリカへの就職に拍車をかけていると中国メディアは伝えています。

今ではケニアでの暮らしに満足しているという劉さん。

劉さん 「来る前はアフリカは貧しく、安全ではないという情報ばかりでしたが、来てみたら良かったです。アフリカには、まだ多くのチャンスがあります」

今後、新たな活躍の場を求め、新天地を目指す若者はますます増えそうです。【9月5日 TBS NEWS DIG】
*******************

日本では“アフリカでの就職を目指す”若者・・・まず見ないですね。このあたりが、アフリカに対する姿勢に関する日中の違いでもあります。その姿勢・認識が変わらないと日本がTICADでいくらカネをバラまいても余り効果も上がらないかも。

【中国をはじめ多くの国から“求愛”を受けながらも貧困から脱却できないアフリカ 債務問題と内戦等による人道的危機の問題が重大な制約に】
“グローバルサウス”重視の昨今、中国だけでなく、日本や欧米、更にはインドや中東湾岸諸国をはじめとする多くのミドルパワーがアフリカへの働きかけを強めていますが、“21世紀はアフリカの世紀”と言われつつも、アフリカの現状は芳しくありません。

****<“ミドルパワー”から求愛されるアフリカ>盛んな投資を受けるも貧困から脱却できない複雑な背景****
フィナンシャル・タイムズ紙(FT)の8月30日付社説‘The middle-power competition in Africa’が、アフリカにおいて湾岸諸国等のミドルパワーの影響力争いによりもたらされている成長の機会をアフリカ諸国が無駄にしている、と論じている。要旨は次の通り。

アフリカが世界の主要議題となることはほとんどない。しかし、このような明白な経済的、戦略的影響力の欠如にもかかわらず多くのアフリカ諸国は、トルコ、ブラジル、ロシアなど様々な国から求愛されている。

このような「ミドルパワー」の関心は、アフリカの指導者たちに投資と戦略的パートナーに関する多くの選択肢を提示している。

このような多様な選択の可能性を巧みに利用すれば、各国が貧困から脱却できる機会になるかもしれない。重要なインフラ・プロジェクトに関しより良い取引ができ、一次産品取引に原材料の国内加工を伴うことを主張することもできる。アフリカ大陸自由貿易地域を加速させるべきであり、それだけで分断された経済を魅力的な単一市場に変えることができる。

英、仏といった旧植民地大国は長年にわたり、アフリカ大陸に生産的に関与しようと苦闘してきたが、かえって反発を招いてきた。

米国は、冷戦後、冷淡になった。投資家は、アフリカとの距離と厳しい贈賄防止法によって意欲をそがれた。ワシントンはアフリカをほとんど安全保障の観点からしか見なかったが、バイデン大統領のもとで、戸惑いながらも再関与の兆しを見せている。

米国と欧州の影響力の相対的な低下による空白を最初に埋めたのは中国である。その後にインドや湾岸諸国をはじめとする多くのミドルパワーが加わった、アフリカは国連に人材と票を提供している。

長期的には、アフリカには市場が約束されている。2050年までにアフリカの人口は25億人に達しその半分は25歳以下である。彼らがそこそこの生活水準に達するだけで、それは大量の消費者となる。また、コバルト、リチウム、マンガン、銅などのエネルギー転換鉱物をめぐる競争も激化している。

アフリカから見れば、この新たな関心は選択肢を意味する。タンザニアはドバイが運営する港を、ガーナとニジェールはトルコが建設する空港ターミナルを、中央アフリカとマリはロシアの傭兵を選んだ。

選択肢にはコストが伴う。欧州のアフリカへの投資は、中国にはない国内的な精査を受けることになる。しかし、中国からの借金の累積は、ザンビアからエチオピアに至るまで、債務不履行の波につながっている。

無用の長物のような投資が多すぎるのだ。ケニアに建設された40億ドルの中国鉄道は、経済の生産性向上よりも、政治家の取り巻きのために建設された。

ミドルパワーは、新たな安全保障上の絡みをもたらしている。スーダンの内戦へのアラブ首長国連邦(UAE)の介入は、世界最悪の人道的大惨事を長引かせている。金やダイヤモンドで報酬を得るロシアの傭兵は、経済的、社会的発展の面では何も提供しない。

ケニアの抗議者たちが指摘しているように、アフリカの指導者たちは、国家の発展のためではなく、自分たちの利益のために行動することがあまりにも多い。

アフリカにおける競争は、より多くの成長、より多くの製造業、そしてより多くの雇用の拡大が期待できるが、提供されている新たな関与のパターンによる機会を、今のところ、ほとんどのアフリカの政府が浪費している。

*   *   *
アフリカの発展へ考慮すべき点
上記の社説の、ミドルパワーのアフリカへの関心を効果的に利用すべきだとの指摘は、現状の一面において的確な指摘ではあるが、アフリカの発展について論ずるのであれば、社説中に簡単に言及のある、債務問題と内戦等による人道的危機の問題が重大な制約となっていることを無視することはできず、これらの面を合わせて考慮しなければバランスが取れない。

8月28日付ニューヨーク・タイムズ(NYT)紙の解説記事によれば、アフリカの対外債務は昨年末で1兆1000億ドル以上に達し、20カ国以上が過剰債務を抱え、外国債権者の数と多様性が従来になく際立ち、解決を困難にしている。

対外債務はナイジェリアで400億ドル、ケニアで350億ドル、ウガンダで120億ドルに達し、債務返済のための増税に反対する大規模な抗議活動やインフレ、極度の貧困の下での反政府デモが頻発している。

これらの国の債務の70~80%は中国が債権者であるが、中国は、債務救済に消極的で、債務不履行に陥ったザンビアは、債務再編まで4年近くかかった。この債務問題は、アフリカから成長の機会を奪い、社会的不安定を煽るものである。

また、人道的危機については、現在、スーダン、マリからナイジェリア北部に至るサヘル地域、中央アフリカ、コンゴ民主共和国東部、ソマリア、リビアといった地域で、内戦や過激派イスラム組織との武力衝突といった状況がある。

特に、スーダンでは、1年以上続く内戦で850万人の避難民が生じており、反乱軍を支援するアラブ首長国連邦が紛争終結の鍵を握るとされている。また、コンゴ民主共和国東部ではルワンダが介入する長年の紛争で730万人が故郷を追われた避難民となっているとされる。(後略)【9月16日 WEDGE】
*****************

9月5日、国連のグテレス事務総長は中国アフリカ協力フォーラム首脳会合でアフリカ諸国について、不十分な債務救済や資源の乏しさが社会不安につながっているとの認識を示し、国際的な金融構造の改革を促しています。

****国連事務総長、不十分な債務救済がアフリカの社会不安の原因と警告****
国連のグテレス事務総長は5日、アフリカ諸国について、不十分な債務救済や資源の乏しさが社会不安につながっているとの認識を示し、国際的な金融構造の改革を促した。

ケニアでは増税に反対するデモ隊と警察が衝突し、ナイジェリアや ウガンダでは生活費を巡り抗議デモが発生した。

アフリカ諸国は20カ国・地域(G20)が提唱した「共通枠組み」を通じた債務再編を模索してきたが、協議は期待通りに進んでいない。

ザンビアは6月、債務不履行から3年以上を経て、このスキームを活用した債務再編に成功した最初の例となった。

グテレス氏は北京で開催された中国アフリカ協力フォーラム首脳会合で、アフリカの債務は「持続不可能で社会不安の原因となっている」と指摘。

「アフリカは効果的な債務救済を受けることができず、資源も乏しく、国民の基本的なニーズに応えるための資金も明らかに不足している」と述べた。

その上で「時代遅れで非効率的な国際金融構造の抜本的改革」の重要性を指摘し、中長期的な解決策を模索しつつ流動性の提供を可能とする政策の必要性を訴えた。【9月5日 ロイター】
******************

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

西アフリカ  持ち込まれるロシア・ウクライナの対立 暴力の犠牲となる住民

2024-08-27 22:39:53 | アフリカ

(マリの首都バマコで開かれた親軍事政権・親ロシア集会で、ロシア国旗を振る軍事政権支持者(2024年5月13日撮影)【8月6日 AFP】)

【フランス・アメリカを排除してロシアに接近する西アフリカ軍事政権】
旧フランス領西アフリカのマリ、ブルキナファソ、ニジェールではイスラム過激派の勢力が拡大、治安の悪化から軍事クーデターが起き、過激派に有効に対処できない駐留フランス軍への不満が強まり、軍事政権はロシアに接近、フランス軍は撤退、米軍も撤退・・・という似たような経過をたどっています。

****アフリカ・サヘルの政情不安****
アフリカ大陸の北部サハラ砂漠の南で、半乾燥地域のことをサヘルというが、そこにはセネガル、モーリタニア、マリ、ブルキナファソ、ニジェール、ナイジェリア、チャド、スーダン、南スーダン、エリトリアという国々がある。(中略)

今、このサヘルで旧宗主国のフランスやアメリカに代わって、ロシアがプレゼンスを高めている。

この地域では、国際テロ組織のアルカイダや過激派組織「イスラム国(IS)」などが活動しており、新型コロナウイルス流行で職を失った若者をリクルートして、勢力を拡大してきた。

そのために治安が悪化し、国民の不満が高まったが、民主派政権は過激派テロ組織の鎮圧に失敗し、統治能力の欠如を示した。そこで、軍部がクーデターを起こしたのである。

マリでは2020年8月に軍部が反乱し、民主的に選ばれたケイタ大統領を追放し、ゴイタ大佐が2021年5月に大統領に就任した。
ブルキナファソでは、2022年1月に軍事クーデターでカボレ大統領が失脚した。
ニジェールでは、2023年7月、軍部がクーデターを起こした。首謀者のアブドゥハーマン・チアニ大統領警護隊長は、親欧米派のモハメド・バズム大統領を追放し、憲法を停止し、自ら国のトップに就任した。

これらの軍事クーデターの背後には、ワグネルを軍事政権の傭兵として活動させるロシアの存在がある。ニジェールはウランの有数な産出国であり、EUのウラン輸入の約24%を占める最大の供給国である。また、マリもブルキナファッソも金を産出するなど、資源に恵まれている。ロシアは、その資源も自由に入手する。

これらの国々では、旧宗主国のフランスへの反感が強く、駐留フランス軍の安全が確保できなくなった。そこで、マクロン大統領は、ニジェールから約1500人の仏軍を昨年12月に撤退させた。今年の4月には、約1000人の米軍も全てニジェールから撤退した。米仏に代わってロシアが居座っているのである。(後略)【8月14日 舛添要一氏“「ゼレンスキーは《最悪の選択》をした」 ロシア越境攻撃を仕掛けたウクライナが、「アメリカ・フランスに見放される」運命にある理由” 現代ビジネス】
******************

この地域では上記記事にあるように、反乱を起こしたプリゴジン氏が創設したロシアの民間軍事会社ワグネルが活動しています。

“昨年、創設者のエフゲニー・プリゴジンがウラジーミル・プーチンに対する反乱の末、飛行機事故で亡くなった後、ロシア政府は新たな準軍事組織「アフリカ軍団」を立ち上げて、ワグネルの部隊を管理下におき、その事業を引き継いでいる。”【7月31日 Newsweek】

【対ロシアの一環としてウクライナがマリ反政府勢力に情報提供 マリはウクライナと断交】
そのワグネルの部隊が7月、マリで少数民族トゥアレグ反乱軍による待ち伏せ攻撃を受け、兵士数十人が死亡しました。

****ワグネル戦闘員84人殺害か マリの反政府武装勢力****
西アフリカ・マリ北部で活動する遊牧民トゥアレグの反政府武装勢力は1日、7月下旬にロシアの民間軍事会社ワグネルの戦闘員らと交戦し、少なくとも84人を殺害したと主張した。ロイター通信が報じた。ワグネルがマリに進出したここ数年で最大の被害とみられる。

マリと隣国のニジェール、ブルキナファソでは近年クーデターが相次いだ。各国の軍事政権は、テロ対策で駐留していた米国やフランスの軍部隊を撤収に追い込みロシアに接近している。

ロイターによると、戦闘は数日間続いた。反政府勢力はマリ軍の兵士47人も死亡し、兵士やワグネル戦闘員の一部を捕虜にしたとしている。【8月2日 共同】
******************

“アメリカのシンクタンク戦争研究所(ISW)は29日、ロシア国防省はマリでのワグネル部隊の敗北を利用して、ワグネルの傭兵部隊をアフリカ軍団の他の部隊に置き換えていく可能性があると述べた。アフリカ軍団は去年12月の時点で、指揮官を含む構成員のうち、およそ半分がワグネルの元メンバーであることを公表している。”【7月31日 Newsweek】

ロシアのワグネル及びマリ政府軍に損害を与えた少数民族トゥアレグ反乱軍に、ロシアに敵対するウクライナが情報を提供していたということで、国内情勢に加えて、ロシア・ウクライナの対立も反映した状況になっています。

当然ながらマリはウクライナに反発し、断交に至っています。

****西アフリカのマリ、ウクライナと断交 反政府勢力支援関与の疑い****
西アフリカのマリ政府は4日、北部の遊牧民トゥアレグの反政府武装勢力を支援したとして、ウクライナとの外交関係を直ちに打ち切ると発表した。

ウクライナ国防省情報総局(GUR)のユソフ報道官は7月29日、マリ軍兵士とロシア民間軍事会社ワグネルの戦闘員が死亡した北部での戦闘について、マリの反政府勢力がマリ軍やワグネルに対する攻撃を成功させるのに「必要な」情報を受け取っていたと発言した。

トゥアレグの反政府勢力は、数日にわたる激しい北部での戦闘で少なくともワグネル戦闘員84人とマリ人兵士47人を殺害したとしている。ワグネルにとって2年前にマリに進出して以降最大の敗北とみられる。

マリ政府は、ユソフ氏が「マリ国防・治安部隊の隊員を死亡させた武装テロリスト集団による卑怯で危険かつ野蛮な攻撃へのウクライナの関与を認めた」と指摘。「ウクライナ当局の行動はマリの主権を侵害している」と主張した。【8月5日 ロイター】
********************

マリに同調するニジェールもウクライナと断交を発表しています。

【スウェーデン閣僚「ロシア支持のくせに我々の援助を受け取るな」】
マリ軍事政権と北欧スウェーデンのバトルも。

****スウェーデン大使を追放 マリ、ロ接近批判に反発****
西アフリカ・マリの軍事政権は9日、ロシアに接近するマリをスウェーデンの閣僚が批判したことに反発し、マリ駐在のスウェーデン大使を追放すると発表した。ロイター通信が報じた。

マリは4日、ロシアが侵攻を続けるウクライナとの断交を表明。スウェーデンのフォシェル国際開発協力・貿易相は7日「侵攻を支持しながら、スウェーデンから開発援助を受け取ることはできない」と訴えていた。

近年クーデターが相次いだマリやニジェール、ブルキナファソの軍政は、テロ対策で駐留していた米国やフランスの部隊を撤収に追い込み、欧米離れを鮮明にしている。【8月10日 共同】
********************

なぜ北欧スウェーデンがこのように西アフリカ・マリを露骨に批判したのか・・・背景には、スウェーデン国内の反イスラム的な世論があるとの指摘が。

****スウェーデン自身のイスラーム嫌悪****
最後に、現在のスウェーデン政府では極右系の発言力が強く、あえて"反イスラーム的"をアピールしやすい(マリ人口の93% はムスリム)ことだ。

スウェーデンでは2022年9月の総選挙により、民主党を中心とする連立政権が発足した。民主党は「スウェーデン人のためのスウェーデン」を標榜する右派政党で、移民制限などを主張している。

その結果、スウェーデンでは2023年、イスラームの聖典コーランを抗議活動のデモンストレーションとして焼却することが合法と認められた。この方針は当然のようにムスリム系市民やイスラーム各国の強い反発を招き、警察が"治安を脅かす"と反対するなかで決定された。

そこでは民主党の支持基盤へのアピール効果が優先されたといえる。【8月14日 六辻彰二氏 Newsweek】
******************

一方、ウクライナはクレバ外相が8月上旬にアフリカのマラウイ、ザンビア、モーリシャスを訪問し、対ロシアのウクライナへの支持拡大を図っています。

****ウクライナ外相がアフリカ3カ国歴訪、対ロシアで支持取り付けへ****
ウクライナのクレバ外相は、ロシアとの戦争におけるウクライナへの支持を集めるため、今週アフリカ3カ国を歴訪する。外務省が4日明らかにした。
ここ2年間で4回目のアフリカ外遊で、4─8日にマラウイ、ザンビア、モーリシャスを訪問する。

6月にスイスで開かれた「ウクライナ平和サミット」にはアフリカ諸国が多数出席したものの、孤立させようとする西側諸国の取り組みに加わることには消極的な姿勢を示した。ロシアはアフリカ諸国にとってエネルギーや食料などの重要な調達先だ。

外務省によると、クレバ氏は今回の訪問中、ウクライナ産の穀物をアフリカ地域へ供給すること、ウクライナ再建へのアフリカ企業参加についても話し合う。【8月5日 ロイター】
*******************

【悪化する状況の中で、過酷な暴力にさらされる住民】
西アフリカにロシア・ウクライナの対立が持ち込まれ、更にアフリカを舞台にロシア・ウクライナの外交合戦が展開されるという状況ですが、西アフリカにおける悲惨な状況は改善しておらず、その暴力の犠牲となるのは結局地域住民です。

****武装勢力襲撃で百人死亡 アルカイダ系、ブルキナファソ****
軍事政権下の西アフリカ・ブルキナファソ中部の集落で先週末、国際テロ組織アルカイダ系の武装勢力による襲撃があり、住民ら少なくとも100人が死亡した。AP通信が26日報じた。

ブルキナファソでは、アルカイダや過激派組織「イスラム国」(IS)に忠誠を誓う勢力の活動が活発で、対応が課題となっている。

APによると、軍政は全土の半分程度しか掌握できておらず、軍が集落を守るために住民と塹壕を掘っていた際、武装勢力から攻撃を受けたという。武装勢力は攻撃を認め、集落周辺を制圧したと主張している。【8月27日 共同】
*****************

****「ウクライナやガザと同じことが…マリの実態知って、虐殺止めて」現地ジャーナリストが国際社会にSOS****
軍事政権下にある西アフリカのマリで、十数万人の少数民族らが隣国モーリタニアに逃れ、過酷な難民生活を送っている。背景にはロシアの民間軍事会社「ワグネル」の進出に伴う紛争激化がある。長年、現地の少数民族トゥアレグを取材してきたジャーナリスト、デコート豊崎アリサさん(53)に現状を聞いた。(太田理英子)

◆国際機関の支援なし、気温50度近い砂漠で
フランス人と日本人の両親を持つデコートさんは、1997年に初めてアフリカ大陸北部のサハラ砂漠を訪れて以来、砂漠を拠点にするトゥアレグのキャラバンのドキュメンタリー撮影や取材活動をしてきた。「今、民族浄化の危機が迫っている」と訴える。

今年7月には国境近くに点在する難民キャンプを取材。木の棒と布で作ったテントの下に人々は身を寄せていた。昨年10月以降、北部から約12万人が逃げてきたといい、多くはトゥアレグを中心とした少数民族。8割は女性と子どもだ。

国境なき医師団を除き、国際機関の支援は見られない。砂漠地帯で気温は50度近い。「衛生環境が悪く感染病も広がっている」

◆ワグネルの進出で事態がさらに悪化
トゥアレグは、マリやニジェールをまたぐサハラ砂漠の遊牧民だったが、1950~60年代にマリや周辺国が独立。マリでは政府の弾圧に対し、トゥアレグの組織が自治を求め反乱を繰り返した。2012年に独立を宣言したが、混乱に乗じてイスラム過激派組織も勢力を広げ、紛争の様相は複雑化した。

事態がさらに悪化したのは、2021年の軍事政権樹立。駐留仏軍が撤退し、代わってマリ政府に接近したのがロシアだった。ワグネルが進出し、軍事支援や情報工作を展開。2023年にはマリ軍とワグネルが「反テロ対策」としてトゥアレグの組織の拠点地域に侵攻。交戦が続き、トゥアレグや別の少数民族プルの人々も隣国に逃れたという。

◆ロシアがアフリカに近づく狙いは
ワグネルは2017年ごろからアフリカ諸国で現地政府への軍事協力、選挙介入や鉱物採掘などの活動を展開したが、2023年に実質解体された。ロシアの準軍事組織「アフリカ部隊」などに吸収され、従来の活動はロシア政府主導で強化。現在マリ軍と活動しているのもアフリカ部隊とみられる。

ロシアがウクライナ侵攻で欧米と対立する中、アフリカに近づく狙いは何か。
日本エネルギー経済研究所中東研究センターの小林周主任研究員は「ワグネルが築いた現地政府との関係や開発利権を生かして収益源にすると同時に、国連や欧米の影響力、存在感を低下させている」とみる。

◆かつてないほど残酷な虐殺が
政府軍とアフリカ部隊による攻撃に加え、過激派組織のテロなど、住民への脅威は増大している。

デコートさんは「かつてないほど残酷な手段で虐殺が起きている」と話す。キャンプにいた50代女性は、親族が切り刻まれたほか、生きた状態で井戸に投げ込まれた人もいたと証言。「マリ軍などは国境付近に集中し、逃げることさえ危険」と語ったという。

現地に入る報道機関はなく、デコートさんは国際社会に現状が伝わらないことに危機感を募らせる。「ウクライナやパレスチナ自治区ガザと同じことが起きている。マリの実態を知ってもらい、無差別な虐殺を許さない世論を広げたい」【8月25日 東京】
*********************

少数民族の独立運動、イスラム過激派の活発化、軍事クーデター、ロシアの介入、更にウクライナも関与・・・しかし。国際社会からの支援は少なく、悪化する状況の中で住民が犠牲に・・・。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする