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(南スーダンのマラカールで、内戦により、住む場所を失った人々【6月4日 Catholic Weekly Online】)
【「非妥協的な政治によって和平はいっそう遠のき、内戦は続き、経済を崩壊に向かわせている」】
今年5月、もともとニュージーランドの自治領であった南太平洋の小さな島「ニウエ」を日本政府は国家承認しました。面積は260㎢、人口は約1500人と、日本でいうと町村と同規模のミニ国家です。196番目の国となります。
「ニウエ」以前のもっとも新しい国というと「南スーダン」でした。こちらは日本の1.7倍の国土を持つ国です。
スーダンとの内戦の末、アメリカ等の国際的支援もあって独立を果たし、その将来が期待されていましたが・・・・。
****南スーダン****
人口約1130万人、日本の1.7倍の国土(64万平方キロ)に数十の民族が暮らす。
1955年からの北部スーダンとの内戦を経て、2011年7月に独立。
その後、豊富な石油資源などをめぐり、キール大統領が出たディンカと、マシャル副大統領が出たヌエルの2大民族が対立。
キール氏が13年7月にマシャル氏を解任した後、同年12月に首都ジュバで軍部隊同士の戦闘が始まり、事実上の内戦状態に陥った。現在、日本の自衛隊が国連平和維持活動(PKO)に唯一参加している国でもある。【6月25日 朝日】
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反政府軍との間の内戦については、3月1日ブログ「南スーダン 3度目の停戦合意 本格的和平につながるかは不透明」(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20150301)でも取り上げましたが、懸念されたように戦火は治まっていません。
****保護区「外出れば殺される」****
「この状態が続けば生きていけない」。避難民たちは口々に不満を漏らした。
中部ボル郊外にある「市民保護区」。政府軍と反政府勢力の武力衝突からの保護を求めて国連施設内に逃げ込んだ約2300人が暮らす。
全員が、反政府勢力を率いる前副大統領と同じ民族ヌエルだ。保護区の周辺は、ディンカの大統領が率いる政府軍が掌握する。
保護区は、安全のために門が閉ざされ、有刺鉄線で囲まれている。自由な出入りはできない。
スティーブン・ガティエクさん(40)は首都ジュバ近くの小さな村で、ミルクや砂糖を売る商売をしていた。武力衝突が起き、銃弾が飛び交う中で4日間、道なき道を歩いて逃げた。
連れて来られたのは、子ども10人のうち、末の3人と身重の妻だけだった。後に子どもたちは見つかったが、まだ3人が親類のもとにいて、いつ合流できるかわからない。「問題はどこにも行けないこと。外に出れば殺されてしまう」
保護区内では、避難民のストレスや不安が募り、いざこざが絶えない。けんかも日常茶飯事だという。「将来? 私たちには何の力もない。待つしか・・・」
内戦が続く中、50万人以上が国外に逃れ、約150万人が国内での避難を余儀なくされている。約23万人の子どもが重度の急性栄養不良に苦しみ、約40万人が学校に通う権利を奪われている。【同上】
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国連は5月11日、内戦が続く南スーダンの北部ユニティ州で、戦闘激化により国連機関や非政府援助組織が撤退を余儀なくされたため、30万人を超える民間人が「救命支援」を受けられなくなっていると発表しています。
****南スーダン、子ども25万人が飢餓状態 国連が警鐘****
国連は(6月)16日、約1年半にわたり内戦が続く南スーダンで、25万人の子どもが飢餓に直面していると警鐘を鳴らした。
南スーダンでは2013年12月、リヤク・マシャール前副大統領がクーデターを企てたとしてサルバ・キール大統領が非難したことから両派による内戦が開始。
殺りくの応酬は全土に広がり、陸地に囲まれた貧困国である同国は民族によって分断され、民族対立による虐殺、レイプ、子ども兵の使用なども横行している。
南スーダン経済の崩壊を予測したことで今月に同国政府によって国外に追放された国連南スーダン派遣団(UNMISS)のトビー・ランザー事務総長特別副代表は、援助国に16億3000万ドル(約2000億円)の拠出を訴える報告の中で「南スーダンの半分の地域で、3人に1人の子どもが極度の栄養失調に陥っており、子ども25万人が飢餓に直面している」と指摘。また国連によれば、南スーダン人口1200万人の3分の2が援助を必要としており、450万人が深刻な食料不足に陥っている。
ランザー氏は「われわれは6か月前、衝突や苦しみが峠を越え、和平の兆しが見えたと思ったが、それは誤りだった。非妥協的な政治によって和平はいっそう遠のき、内戦は続き、経済を崩壊に向かわせている」と述べた。【6月16日 AFP】
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【「民間人を殺害、村落で強奪や破壊を繰り広げ、10万人を超える人が避難民となっている」】
悲惨な戦争犯罪行為も報告されています。
****南スーダン軍が「少女をレイプし焼殺」 国連報告****
国連南スーダン派遣団(UNMISS)は30日、南スーダン軍の兵士が、「残虐性と激しさ」を増した最近の軍事作戦中に、自宅にいた少女たちをレイプした上、生きたまま火をつけて殺害した事例があったとの報告書を発表した。(中略)
UNMISSの人権査察団は、以降18か月間にわたって続いている内戦で激戦地となっている北部ユニティ州の被害者や目撃者115人の情報に基づきまとめた報告書の中で、「人権侵害の横行」に警鐘を鳴らしている。
スーダン人民解放軍(SPLA)は4月、反政府武装勢力に対する大規模な攻撃を開始。主要な産油地帯だったユニティ州北部のマヨム郡では激しい戦闘が繰り広げられている。
「これらの攻撃を生き延びた者たちからは、SPLAとそれに同盟するマヨム郡出身の民兵らが、地元住民に対する攻撃を実施し、民間人を殺害、村落で強奪や破壊を繰り広げ、10万人を超える人が避難民となっている」とUNMISSは報告。
「最も憂慮すべき証言の一部は、女性や女児が誘拐、性的虐待されているというもので、中には、自宅にいた際に生きたまま焼かれたという報告もある」と述べた。【6月30日 AFP】
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****ユニセフ事務局長による声明****
「南スーダンでの子どもたちに対する暴力は、かつてないほど残忍性が高まっています。激化する暴力の詳細はあまりにひどく、言語に絶するものです。しかし、我々は声を上げ、現実を伝えなければなりません。
ユニティ州では、5月のわずか3週間の間に、129人の子どもが殺されました。
生存者の証言によると、男の子たちが性器を切り取られ失血死するまで放置されていた、わずか8歳の女の子が集団レイプされて殺された、子どもたちは互いに縛りつけられた状態で喉を切られた、燃える建物の中に投げ込まれた子どもたちもいた・・・と報告されています。
また非常に多くの子どもたちが、敵対する武装グループの双方によって、強引に徴用されています。およそ1万3,000人の子どもが、強制的に武力紛争に参加させられているとみられます。
暴力によって自身が苦しめられただけでなく、暴力によって他者を苦しめた経験が、子どもたちの心身にどれだけの影響を及ぼすか、想像してください。
人道と良識の名のもとに、罪なき子どもたちへの暴力を止めねばなりません」【6月17日 unicef】
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【マシャル前副大統領「罪なき人々を殺害し、混乱を生み出したのはキール氏だ」】
権力争いに部族対立が絡み・・・というのはわかりますが、どうしてここまで争わなければならないのか?
どうして凄惨な行為が横行するのか?
争っている者は、住民被害についてどのように考えているのか?
理解できません。
****大統領の任期延長を批判 反政府勢力リーダー単独会見****
南スーダンで反政府勢力を率いるマシャル前副大統領が、訪問中の南アフリカで朝日新聞の単独会見に応じた。同氏が、海外メディアの単独会見に応じるのは異例。
敵対するキール大統領が、7月に満了する任期を3年延長したことに対し、「明らかな憲法違反。国際社会はキール氏を辞任させるべきだ。さもなければ暴動が起きるだろう」と警告した。
内戦の発端となった13年12月の戦闘について、政府軍側が「マシャル氏によるクーデター未遂」としていることについて、マシャル氏は「私がクーデターを計画したことは一切ない。罪なき人々を殺害し、混乱を生み出したのはキール氏だ」と批判した。
この戦闘で「約7割の陸軍兵士がキール氏から離れた」と述べた。だが、現在の反政府勢力の兵力や支配地域は明言しなかった。
両者の間では数度、停戦合意が交わされたが、実現していない。
マシャル氏は「政府軍が撤退を約束した地域から兵を引かないためだ」と主張。「現在の政府は命令系統や他国との信頼関係を失っている。国民を救わなければならない。我々が内戦状態を終わらせようとしているのはそのためだ」と説明。
国際社会に対しては、「辞任するよう、キール氏に圧力をかけるべきだ。人道面での支援もお願いしたい」と要請した。
日本は、陸上自衛隊の施設部隊を国連平和維持活動(PKO)として首都ジュバに派遣している。マシャル氏は日本に対し、「平和維持の分野で重要な仕事をしており、信頼している」と述べた。【6月25日 朝日】
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上記は反政府勢力側のマシャル前副大統領の言い分ですが、おそらくキール大統領も同様の主張をするのでしょう。
にもかかわらず、戦火は治まらず、残虐行為が横行する・・・・独立時の希望はどこにいったのでしょうか?
【「争いはもう十分だ。私は希望を捨てない」】
愚かしいとしか言いようのない権力者とそれに追随する者ですが、必ずしも皆が憎しみと暴力だけで生きている訳ではありません。
****「祖先は同じ」「争いもう十分」****
紛争は、ディンカとヌエルの対立という単純な構図ではない。さまざまな民族が入り交じる。
北部マヨム出身のニャンアール・ボルさん(24)はヌエルだが、ヌエルが中心とされる反政府勢力に家を燃やされた。ディンカの女性と結婚していたおじは、反政府勢力に加わらなかったために殺されたという。
一度燃え上がった憎しみは、くすぶり続ける。
スーダンとの国境に近い北部アゴクの病院のベッドに、銃の暴発で顔と両腕に負傷した政府軍兵士が横たわっていた。ヌエルのジョージ・マディットさん(24)。幼いころから別の民族のスーダン兵が南下して住民を殺すのを見てきた。「愛国心に燃えて9歳で兵士になった。治ったら、また銃を持つ」。鋭い目で言った。
一方で、各民族が共存する和平を望む人もいる。
ヌエルのピーター・ガットワク・ピートさん(40)は国際NGO「国境なき医師団(MSF)」の現地スタッフとして北部に近いランキエンで働く。親類3人が戦闘に巻き込まれて死亡、17歳のおいは肩を撃たれた。敵対するディンカを許せるか問うと即答した。
「二つの民族は同じ祖先をもつ。僕にはディンカの友人がいたし、学校も一緒に卒業した。銃があふれ、撃ち合っていることが憎い」と一気に話すと、「南スーダンはひとつだ」と祈るように続けた。
ボルにあるセント・アンドロ教会では、修道女など20人以上の女性がヌエルの武装集団に虐殺された。
難を逃れた司祭のジェームス・デン・アキールさん(38)は手厚く弔い、大きな墓を建てた。
「殺戮(さつりく)を二度と繰り返さないためのものだ。争いはもう十分だ。1990年代の内戦時も殺戮があったが、ここで許し合った。私は希望を捨てない」と言う。
「権力者に戦いを仕向けられているように感じる。いつの時代も一番影響を受けるのは一般市民だ」【6月25日 朝日】
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「僕にはディンカの友人がいたし、学校も一緒に卒業した」という極めてまっとうな言葉が、争いに身を投じている人々になんとか届かないものでしょうか。
人間とは所詮争いを好む生き物だと達観するのは、あまりに悲しすぎるので。
【「日本の自衛隊が,当地の国連の活動と南スーダンの復興に大きく貢献していることを日々実感しています。」】
蛇足ながら、今年4月に駐南スーダン日本国大使として着任した紀谷昌彦氏は6月1日「南スーダン通信」(http://www.ss.emb-japan.go.jp/itpr_ja/tsushin_20150601.html)において、「日本の自衛隊が,当地の国連の活動と南スーダンの復興に大きく貢献していることを日々実感しています。」と述べたうえで、その具体的内容として、UNMISSの様々な部隊の活動を支える役割、南スーダンの復興に向けての支援、文化交流を挙げています。
国連PKOの在り方は日本だけの問題ではありませんが、北部内戦地域の惨状と見比べると、同じ国の中の話とは思えません。
“南スーダンの復興に大きく貢献している”国連PKOであるなら、南スーダン政府に即時停戦に取り組むように圧力をかけることはできないのでしょうか?
凄惨な戦闘を続ける国におけるPKOとは何なのか?という問題も。