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(北朝鮮・高麗航空のCA制服は、金正恩第1書記が平壌の空港を視察したさい「客室乗務員の服装も時代の要求に基づくべきだ」などとコメントしたこともあって、2013年に写真左からミニスカートの写真右に変更されました。
ただ、1月に発表された英スカイトラックスによる世界の約600の航空会社を対象にした満足度調査で、高麗航空は4年連続で最下位となったとか。改革はなかなか難しいようです。 写真はhttp://history.n.yam.com/gamme/otaku/20131113/20131113892193.html より)
【食糧・経済事情改善で制裁は効きにくくなっている】
“不思議の国”北朝鮮の食糧事情については、はっきりしたところはわかりませんが、餓死なども取りざたされていたひところに比べれば改善しているのでは・・・との見方があります。
****北朝鮮の食糧事情は改善しているのか****
スコット・スナイダー外交問題評議会上級研究員は、2月18日付ナショナル・インタレスト誌に「北朝鮮はもはや飢えていない」と題する論説を掲載し、最近のFAO(国連食糧農業機関)報告等を紹介しつつ、北朝鮮の食糧事情が改善しているようだと論評しています。
すなわち、最近の報告では、北朝鮮の食糧事情が安定していることが示されている。北朝鮮指導部も事態は改善していると考えているだろう。
2月3日、FAOは北朝鮮食糧事情報告を発表した。今回の報告は、従来の報告と違って、現地調査なしで、北朝鮮提供の統計のみによって評価が行われた。(中略)
今年のFAO報告の結論は、2014年の北朝鮮の食糧生産は、594万トンで、「低水準のままだ」としている。更に同報告は、冬の麦収穫は芳しくないだろうと述べ、このため、40.7万トンの穀物輸入が必要になるとしている。
2013-14年度に、北朝鮮は、約31.4万トンの穀物を輸入した。同時期の北朝鮮向け国際食糧援助は、約6.5万トンとなり、従来の水準から激減した。
今年の報告で興味深いことは、2013-14年度に、ロシアが、中国を凌駕し、最大の2国間食糧支援国になったことだ。多国間支援は、約3.6万トンだった。
約100万トンの支援が必要だった2000年代半ばと比べると、北朝鮮の輸入必要量は30万トン台に激減している。更に、北朝鮮は、食糧不足を、国際支援ではなく、商業的な調達で賄い始めていることが分かる。
以上のことは、北朝鮮経済が、近年、生産性の改善を見せ、成長しているとは言えないが、安定していることを示している。
金正恩の農業改革は、経済面で一定の成果を出しつつあるようだ。他方で、問題は、ミサイル・核開発が何の歯止めもなく進んでいるということだ。
北朝鮮の経済がうまく行っているように見えることは、制裁強化論にとっては、制裁が効きにくくなるので、悪いニュースである。そうなると、北朝鮮の経済と核開発を止めることができるものは何もない、と論評しています。(後略)【3月25日 岡崎研究所 WEDGE Infinity】
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細かい数字はともかく、北朝鮮の食糧生産は低水準ながらも安定しており不足は減少している、不足分は支援ではなく商業的に輸入する資力ができている、支援についてはロシアが中国を凌駕している・・・といったことのようです。
北朝鮮の農業改革により、農民は、収穫の3割程度を市場で売ることができるようになり、生産のインセンティブがあがっているとの見方もあるようです。
食糧・経済状態の改善は、脱北者が減少していることでも推察されています。
****金正恩体制移行後に脱北者半減 昨年1396人=韓国****
韓国統一部は9日、昨年1年間に韓国に定住した北朝鮮脱出住民(脱北者)が1396人(暫定集計)で、2011年の2706人から半減したと発表した。
1990年代以降、増加を続けていた脱北者数は2009年の2914人をピークに減少に転じた。特に2011年12月の金正日(キム・ジョンイル)総書記死去に伴う金正恩(キム・ジョンウン)第1書記の権力継承後は急減し、12、13年にはそれぞれ1500人程度まで落ち込んだ。
脱北者減少の背景について中国外務省が主管する外交専門誌「世界知識」最新号は、市場経済の拡大により経済事情が以前よりは相対的に改善し、生活苦による脱北が減ったためと分析する。
その一方、国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウオッチは先月発表した報告書で、北朝鮮が国境の監視を強化したため脱北者が急減したとの見方を示している。【2月9日 聯合ニュース】
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地方の不満が高まり、監視が厳しくなっており、結果的に脱北が難しくなっているとの見方も。
****平壌発展、格差は拡大 暮らし上向き/「地方では餓死者」****
・・・・韓国政府関係者は「全体として住民生活は多少、上向いたかもしれないが、都市と地方、個人間の格差はむしろ拡大した。ショーウィンドーである平壌の発展は、地方の犠牲の上に成り立っている側面もある」と指摘する。
「地方では今年すでに餓死者が出た。不安でいっぱいだ」。先月、商売のため訪中した北朝鮮北部の40代女性は顔を曇らせた。これまでは、慢性的に足りない食糧を主に中国からの輸入で補ってきたが、対中貿易の停滞や、密輸の取り締まり強化が食糧事情に影を落としているという。
また、これまで万単位の北朝鮮労働者を受け入れていた中国は2月以降、単純労働者への就労ビザ発給を制限している。遼寧省の北朝鮮貿易商は「特に若い女性の就職先を見つけられない」と頭を抱える。
北朝鮮高官の側近によると、正恩氏はこうした地方の不満増大を把握し、11月に各地の軍幹部に「国民の監視を強化」するよう指示。中朝の国境管理が強化され、通過するための賄賂の額も跳ね上がり、脱北も難しくなっているという。(後略)【2014年12月17日 朝日】
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実態はよくわかりません。
国連の人道支援予算も近年減少していますが、5歳未満の子どもの28%が慢性的な栄養失調だとも言われています。
****対北朝鮮人道支援 今年132億円が必要=国連****
国連は11日、対北朝鮮人道支援予算として今年は1億1100万ドル(約132億円)が必要だと明らかにした。米国の海外向け放送ボイス・オブ・アメリカ(VOA)が12日報じた。(中略)
国連の北朝鮮支援事業予算は2011年に2億1900万ドル、12年に1億9800万ドル、13年は1億4000万ドル、昨年は1億1500万ドルと年々減っている。
また、12年に寄付金として集まったのは予算の60%、13、14年は42%と年々減少している。
昨年は予算不足で、600万人の子どもを含む730万人の北朝鮮住民に十分な支援ができなかったとしている。
国連によると、現在1800万人の北朝鮮住民が必要な栄養を摂取できていない状態で、5歳未満の子どもの28%が慢性的な栄養失調だという。
国連は毎年、対北朝鮮支援予算の60~70%を食糧支援に、残りを飲料水、衛生、保健、教育事業に割り当てている。【2月12日 聯合ニュース】
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金正恩第1書記は国民の生活向上を重視する姿勢もアピールしています。
****国民の生活向上優先=党会議で金第1書記―北朝鮮****
19日の朝鮮中央通信によると、北朝鮮の平壌で18日、労働党政治局拡大会議が開かれ、金正恩第1書記が「金日成主席と金正日総書記の遺訓のうち、人民の食の問題、着る問題と関連したものをまず執行すべきだ」と演説した。19日の旧正月に合わせ、国民の生活向上を重視する姿勢をアピールした。
金第1書記は「経済指導機関などの少なくない幹部の責任感が足りない」と批判した。(後略)【2月19日 聯合ニュース】
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【冷え込む中朝関係】
前出の“ロシアが、中国を凌駕し、最大の2国間食糧支援国になった”というように、北朝鮮の中国の関係が冷え込み、一方で北朝鮮はロシアへ接近する姿勢を見せています。
そんな中国との関係を如実に物語るニュースも。本当であれば・・・の話ですが。
****中国 北朝鮮のAIIB参加を拒否「金融水準低い」*****
北朝鮮が中国主導の国際金融機関「アジアインフラ投資銀行」(AIIB)への参加を表明したが中国に拒否されたと、米政府系放送局のラジオ自由アジア(RFA)が31日、英メディアを引用して伝えた。
それによると、北朝鮮は2月に特使を派遣し、AIIB臨時事務局の金立群事務局長にAIIBへの参加を表明したが、中国側が拒否した。英インターネットメディアのエマージングマーケットが中国外交筋を引用して報じた。
同筋は「北朝鮮の金融・経済体制が国際機構に参加できる水準に達していないため、拒否された。北朝鮮は中国の拒否に衝撃を受けた」と伝えたという。【3月31日 聯合ニュース】
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本当でしょうか?
ただ、両国関係が依然としてギクシャクしているのは確かなようです。
****北朝鮮 中国大使赴任を短く報道=関係冷え込み続く****
2013年12月の張成沢(チャン・ソンテク)元国防副委員長の処刑以降、中国との関係が冷え込んでいる北朝鮮が、駐北朝鮮中国大使の交代を31日、短く報じた。
朝鮮中央通信は同日、「李進軍・中国特命全権大使が30日、平壌の万寿台議事堂で金永南(キム・ヨンナム)最高人民会議常任委員長に信任状を奉呈した」と伝えた。
北朝鮮は通常、新たに赴任した外国大使の信任状提出のニュースを伝える際、金永南委員長との会談の様子も伝えるが、今回は一切これに言及しなかった。(中略)
13年2月に北朝鮮が3回目の核実験を実施し、同12月に張氏を処刑して以降、冷え込んでいる中朝関係が改善していないことを示している。
北朝鮮メディアは中国に対しては冷ややかな反応を見せる一方、協力強化を進めるロシアについては親密さをアピールするなど、対照的な姿勢を取っている。
北朝鮮は前中国大使が離任する際には沈黙を続け、駐北朝鮮ロシア大使だったアレクサンドル・チモニン氏が昨年末に離任したときはこれを大きく報じた。(後略)【3月31日 聯合ニュース】
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北朝鮮と中国の関係が決定的に悪化したのは、中国とのパイプ役だった張成沢氏の処刑と、それに伴う親中派粛清によりますが、張成沢氏の件については下記のような情報もあります。
ただ、これも本当かどうかはわかりません。
****北朝鮮・張成沢氏処刑は失脚した中国の周永康前政治局常務委員の“密告”?****
「北朝鮮の実力者、張成沢氏が2013年末に処刑された原因は、中国共産党の周永康・前政治局常務委員による北朝鮮への“密告”だった」-。
米国を拠点とする中国語情報サイト、博訊が最近、中朝両国で相次いで失脚した2人の大物政治家の関係を示唆する記事を載せ、中国国内で大きな波紋を広げている。北京の朝鮮半島専門家は「本当であれば中朝関係の修復はほぼ不可能だ」と指摘している。
同サイトが22日に掲載した記事によれば、2012年8月17日、訪中した張氏は、中国の胡錦濤国家主席(当時)と密談した際、北朝鮮の最高指導者、金正恩氏を下ろし正恩氏の兄でマカオなどに住む金正男氏を擁立する可能性などについて約1時間話したが、胡氏は態度を明らかにしなかったという。
2人のやりとりの内容を知った当時の中国最高指導部メンバーの周永康氏が一部始終を北朝鮮側に密告したため正恩氏が激怒し、張氏は処刑され北朝鮮の親中派も一掃された。「血で固められた友誼(ゆうぎ)」といわれた中朝両国の関係はその後、“没交渉”の状態となったとしている。
周氏は14年夏、中国国内の反腐敗一掃キャンペーンの中で失脚した。同記事によれば「周氏は北朝鮮への亡命を一時企てたが失敗した」という。
中国共産党の規律部門が発表した周氏の6つの容疑の中に「党と国家の機密を漏らした」との項目があった。張氏と胡氏の会談内容を北朝鮮に漏らしたことを指している可能性がある。
博訊は、中国の民主化を求める米国在住の中国人団体が運営するサイト。中国政府を批判する記事が多く、中国当局高官のリークで、汚職情報や新しい政策など党内の秘密を暴露することもある。【2月24日 産経】
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“面白すぎる”内容ですが、「本当であれば中朝関係の修復はほぼ不可能だ」ということでしょう。
中国が北朝鮮との関係を見直しているのは、張成沢氏処刑以外にも、北朝鮮が中国の要請を無視して核開発を継続していることもあります。
****北朝鮮の核兵器、2020年までに100発保有も 米専門家****
北朝鮮の核開発は今後5年にわたり拡大を続ける見込みで、同国は2020年までに最多で100発の核爆弾を保有する可能性があるとの分析結果が、米国の専門家チームによって24日、公表された。(後略)【2月25日 AFP】
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【中国より先にロシアを訪問?】
一方、金正恩第1書記は、中国より先に、関係を深めているロシアを訪問すると報じられています。
****ロシア「金正恩、5月の勝戦70周年記念式に出席」****
北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)第1書記が5月9日にロシア・モスクワで開催される第2次世界大戦勝戦70周年記念式に出席すると、ロシア側が17日(現地時間)明らかにした。
この日、勝戦70周年記念行事組織委員会の会議に出席したラブロフ露外相は国内外メディアのインタビューで、「北朝鮮の最高指導者もモスクワ訪問を受け入れた世界の26人の指導者の一人」と明らかにした。ラブロフ外相は中国・キューバ・インド・モンゴル・南アフリカ・ベトナムの指導者に言及し、金第1書記の出席を確認した。
金第1書記がロシアを訪問する場合、2011年の政権継承後初めて国際舞台にデビューすることになる。(中略)
政府の関係者は「伝統的に北の最高指導者が中国を最初に訪問してきた点を考えれば、金第1書記がロシア訪問前に中国訪問が可能かどうか打診する可能性がある」とし「金第1書記の動き自体が極秘事案であり、できるだけ遅く公式立場を明らかにする可能性が高い」と述べた。(後略) 【3月19日 中央日報】
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北朝鮮との関係を強めるロシアの意図については、“ウクライナ危機で大きな圧力に直面しているロシアのプーチン大統領も北朝鮮との関係強化を希望している。これは米国の「重心をアジアに移す戦略」に対応するためだ。”【3月4日 新華ニュース】とも。