(11月19日発行の「南方周末」 共産党宣伝部の検閲のため大幅に縮小されたオバマ大統領へのインタビュー記事のスペースを空白のまま印刷 そこには「不是每個人都可以成為大人物,但是每個人都可以在這裏讀懂中國」
“flickr”より By Willy Lo
http://www.flickr.com/photos/willylo/4130852321/)
【国益を見据えた「自発的な戦略」】
中国が温暖化対策について、国際的な意見を取り入れながら、“中国自身の国益を見据えた「自発的な戦略」”として対応をはかっているという、やや従来のイメージとは異なる記事がありました。
****
日本で報じられない 中国“環境国家戦略”の真実*****
去る11月12日、“The low-carbon road map”と題された報告書が、「環境と開発の国際協力に関する中国委員会(CCICED)」に提出された。
CCICEDとは中国の環境政策に関する勧告を行うことを目的として、各国の科学者らの参加を得て1992年に創設された国際委員会であり、現在は中国の李克強副首相が会長を務めている。
冒頭の報告書は、中国政府が「第12次五ヵ年計画(2011年~2015年)」に盛り込むことを前提に、過去2年に渡って検討が繰り返されてきたものだ。形式上は、CCICEDからの中国政府に対する“プロポーザル”だが、中国側の提示するシナリオをベースにしたものであり、また同国の科学・産業政策関係のキーパーソンも多数参加し低炭素を契機としたエネルギー政策について詳細な分析が加えられていることから、文字通り中国側の“意思”が入ったものと見てとるべきだろう。
この11月中旬という時期は、ちょうどオバマ米大統領の訪中と重なるが、たとえ北京政府側に内心少しはワシントンに対する示威行為の側面があったとしても、それだけで片づけるのは間違いだ。
詳しくは後述するが、そこで示されたシナリオを読めば、12月にコペンハーゲンで開催される気候変動に関する枠組み条約会議(COP15)に向けた内外の議論・合意形成に資するための文書となっていることは明白だ。
端的に言えば、“The low carbon road map”は、中国社会が化石燃料への依存を減らす方向性をはっきりと打ち出しているのである。これは国際社会からの「圧力」軽減を目指したものというよりは、むしろ中国自身の国益を見据えた「自発的な戦略」であると解釈すべきだ。実際、シナリオは、今後の経済発展に備えた現実的で地に足がついたものになっている。(中略)
中国と言えば、巷では、経済成長を優先する地球温暖化対策の抵抗勢力と決めつけられがちだが、真相はこのようにやや異なるのである。
イメージの違いといえば、この報告書のまとめられ方自体がそうだろう。中国は近年ますます世界の英知を各種戦略策定に生かすようになってきているが、国際委員会であるCCICEDからのプロポーザルを重要な五カ年計画に反映させることはまさにその好例だ。ちなみに、今回のロードマップ策定にはスターンレビュー(気候変動が経済にもたらす影響に関する報告書)で知られるニコラス・スターン卿(元世界銀行上級副総裁)も参加している。
周知の通り、12月のCOP15は、排出枠の取り決めを巡って、途上国にも削減目標枠を設けようと主張する先進国とそれに反対する中国・インドなどとの対立で、拘束力ない政治合意で終わる可能性が高まっている。しかし、だからといって、中国=永遠の環境後進国といった認識では、日本は何十年か後、中国の変身ぶりに驚かされるどころか、環境ビジネスで先を行かれることにもなりかねない。【11月25日 DIAMOND online】
************************
戦略の骨子は、国内総生産(GDP)1単位当たりの炭素排出量の概念をもとに、化石燃料の使用を抑制して、クリーンエネルギーと再生可能エネルギーを大幅に導入し、省エネを実現することで、経済成長を続けながらCO2排出は削減していこうというものです。
【CO2排出量の削減目標を初めて明示】
****
中国、GDP当たりCO2排出量を40―45%削減へ*****
中国政府は、二酸化炭素(CO2)排出量を2020年までに、国内総生産(GDP)原単位(一定のGDPを創出する際に排出するCO2の量)で、2005年に比べ40―45%削減する計画。新華社が26日、国務院の話として伝えた。
中国がCO2排出量の削減目標を明確に示したのは、今回が初めて。温家宝首相が12月にコペンハーゲンで開かれる第15回国連気候変動枠組み条約締結国会議(COP15)に出席する際、各国に提示する方針という。
新華社は「これは中国政府が独自の環境に状況に基づいて講じる自主的な措置で、機構異変同問題に対する世界的な取り組みに大きく貢献する」と伝えた。
この排出削減目標は、専門家が予想していたのとほぼ同じ水準。
米国に続いて中国もCO2排出削減に向けた明確な目標を提示したことで、来月のCOP15会合での合意形成に向けた動きが加速するとみられる。【11月26日 ロイター】
******************************
クリーンエネルギー拡大についての記事も目にします。
****
CO2排出量削減に熱心な中国、風力タービンを続々建設*****
中国・雲南省大理。標高3000メートルの山脈の稜線を風力タービンが埋め尽くしている。クリーンかつグリーンなエネルギーをという中国の野望のシンボル的光景だ。
国内最高所にあるこのウィンド・ファームは、41基のタービンで、年間で石炭2万トンを燃焼させた場合と同量のエネルギーを生み出す。
中国は、エネルギーの70%以上を石炭に頼っており、温室効果ガスの世界最大の排出国となっている。中国政府は現在、二酸化炭素排出量の削減に積極的に取り組んでおり、再生可能エネルギーの開発を優先課題に掲げている。再生可能エネルギー(主に風力と水力)が全エネルギーに占める割合を、2020年までに15%へ引き上げるのが目標だ。
雲南省は水力発電が盛んな地域だが、冬季の発電量減少を補おうと、ウィンド・ファームの風力タービンが10月から4月までフル稼働している。
■意欲的な目標値
中国では、ウィンド・ファームの建設がブームとなっており、その設備容量は2008年まで4年連続で倍増ペースで増加している。2008年の総発電量12.2ギガワットは、米国、ドイツ、スペインに次ぐ数字だ。
中国政府も、2020年の風力発電量の目標値を当初の30ギガワットから100ギガワットへ大幅に引き上げている。
北部の甘粛省などには巨大なウィンドファームが存在するが、大理のウィンドファームのような小規模なものも続々建設されている。これらの資金のほとんどは「クリーン開発メカニズム(CDM)」から拠出されている。
クリーン開発メカニズムは、京都議定書に導入されたもので、途上国のクリーンエネルギー開発費用を先進国が温室効果ガス削減努力の一環として負担するものだ。【11月25日 AFP】
****************************
【現実の暗部とその隠ぺい】
ただ、現在の段階では、現在も全発電量の7割を石炭に頼っている世界最大の石炭生産・消費国であり、その安全管理に問題があるのも現実です。
****
中国炭鉱事故 官商結託「安全」置き去り 発電量の7割、高い依存度*****
中国黒竜江省鶴崗市の炭鉱事故は、公式発表で死者が104人(23日現在)に達する惨事となった。中国では、「掘れば掘るほどもうかる」といわれる炭鉱をめぐり官商が結託し暴利をむさぼる一方で、ずさんな安全管理が問題視されている。
国営新華社通信などによると、21日に起きた事故はガス噴出が原因とみられ、炭鉱責任者は更迭された。
中国では経済成長にともない、石炭の需要が急増。「土皇帝」と呼ばれる炭鉱主と地元幹部や警察官らが結びつき、私益を追求する構図となっている。昨年末には最大の石炭生産地、山西省で元副市長が炭鉱の違法操業を故意に見逃し500万元(約6500万円)以上のわいろを受領、懲役14年の判決を受けた。今回も最高人民検察院(最高検)が腐敗を視野に捜査に着手した。
新華社電によると、世界の石炭の約37%を生産する中国での炭鉱事故死者数は、全世界の約70%も占める。生産量100万トン当たりの死亡率は先進国の30~50倍とされる。このため、中央政府は関係幹部の責任を追及する一方、来年秋までに1万4000あまりある小規模鉱山を1万弱に減らし、大型の石炭基地を建設する計画を進めている。
これは、統計に含まれない違法炭鉱を含め安全を軽視する小規模炭鉱を閉鎖し事故犠牲者の数を抑え、エネルギーの石炭依存度も低くする-との方針に基づく。しかし、閉鎖炭鉱をひそかに操業するなど無許可採掘は後を絶たない。
北京でマンションを買い込んだ山西省の炭鉱関係者は「小規模炭鉱でも生産量を偽り操業を続ける例がある。背後には有力なコネと金がある」と言う。山西省の事故では、犠牲者数を隠蔽(いんぺい)するために死者を隠そうとした。地元政府幹部が炭鉱を家族や親戚に経営させることは珍しくない。“腐敗幹部”が石炭で巨万の富を得るかたわら、炭鉱労働者はわずか月2000元弱の収入で、事故の犠牲となっている。
**********************
日本でもかつて炭鉱事故は多発していましたので、事故があることをもって、中国だけが安全を犠牲にしているという話にはなりません。
問題とすべきは、石炭事業者と地方政府の癒着、また、事故犠牲者を隠そうとする“隠ぺい体質”でしょう。
****
中国、メディアにピリピリ 「貧富格差」報道 4紙に処分指示****
中国当局が、中国メディアの報道に過敏な反応を示している。激化する貧富の格差に関する報道を「虚偽」として、4紙に関係者の厳重処分を指示した。民主化や人権問題など政府批判を高めると予想される内容に対しても統制を厳しくしており、社会矛盾をめぐる世論の反応に神経質になっていることがうかがえる。
中国新聞出版総署はこのほど、「国外の研究機関によると、中国の富の70%は人口の0・4%の富豪が握る」との情報を引用した記事を掲載した4紙に、虚偽報道に関する通知に基づく警告を与え、関係者を処分するよう指示した。24日配信の国営新華社通信が伝えた。
新華社によれば、4紙のうち経済紙「上海証券報」は「この虚偽の数字に基づき論評を展開」したうえ、中国人民政治協商会議全国委員会機関紙「人民政協報」は「国外の研究機関」を「中国の権威部門」と言い換えて報道した。当局による処分理由は「社会に良くない影響を与えた」ことだという。
今月に入っても、2003年の新型肺炎(SARS)流行時に当局が感染者の実態を隠蔽(いんぺい)したと暴露するなど、権力批判や社会の暗部に切り込む報道で知られた雑誌「財経」編集長、胡舒立氏が辞職に追い込まれた。胡氏は「中国で最も危険な女」と呼ばれ、当局からの「圧力」が背景にあると関係者は指摘している。
今月のオバマ米大統領の訪中では、大統領に単独インタビューした「南方週末」が19日付の記事の下にほぼ白紙の自社広告を載せ、「誰もがここ(南方週末)で中国を理解できる」としたキャッチコピーを掲載した。当局が検閲し掲載が禁止された内容があることを示唆したとみられる。【11月29日 産経】
*********************
果敢な国家戦略としての温暖化対策推進の一方で、利益優先・地方政府の腐敗、“共産党”の看板を掲げながらの貧富格差、そしてそうした事実を隠そうとする隠ぺい体質・・・明暗両面がありますが、果敢な政策を可能にするのも、陰湿な暗部を生むのも、共産党一党支配という権力集中が根幹にあるように思えます。