孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

韓国  大統領・与党支持が意外に少なくないとの世論調査結果 北朝鮮スパイ疑惑も

2025-01-09 22:53:31 | 東アジア

(弾劾訴追され職務停止となった韓国の尹錫悦大統領の拘束が実現せず、先行き不透明感が増していることで、尹氏の支持者が勇気づけられ、与党「国民の力」の支持に回復の兆しが見られている。大統領支持派のデモ、ソウルの大統領官邸近くで9日撮影。【1月9日 ロイター】)

【大統領公邸を「要塞化」 国家権力同士のにらみあい】
韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領が12月3日夜に一時宣布した「非常戒厳」を巡る大混乱と弾劾決議などに関しては周知のところ。

現在は、伊大統領の拘束をめぐって、抵抗する大統領側が大統領公邸を「要塞化」、大統領警護処と警察等の国家権力同士がにらみ合うという異例の事態となっています。

****尹氏の拘束令状再着手へ調整続く 韓国、対応強化で衝突懸念****
韓国の高官犯罪捜査庁や警察などによる合同捜査本部は9日、尹錫悦大統領の拘束令状執行に再び着手する時期や方法を巡り検討を続けた。

3日の執行失敗を受け、より強力な警察部隊の投入が取り沙汰され、抵抗する大統領警護庁も鉄条網などで公邸を「要塞化」(韓国メディア)。衝突への懸念と緊張が高まる中、尹氏側は正式に逮捕状を取った場合の捜査には応じる考えも示した。

韓国メディアによると、警察は暴力団など犯罪組織の制圧にも当たる「刑事機動隊」の展開を検討。捜査員も前回の倍に当たる約300人を動員する構えだという。対する警護庁は、公邸に通じる道の門に鎖を絡めたり、捜査員の行く手を阻む大型車両の数を増やしたりと防備を固める。

8日にはインターネットメディアが、尹氏とみられる人物が同日午後(日本時間同)、関係者らと公邸敷地内を点検するような場面を捉えたとする映像を公開。尹氏が直々に警護強化を指示するような姿に注目が集まった。大統領府は「軍事上の保護区域を無断で撮影した」として同メディアを告発した。【1月9日 共同】
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【大統領・与党を支持する者も少なくない世論調査結果】
「非常戒厳」宣布からの一連の動向で、伊大統領は国民の信頼を完全に失って孤立し、巷には大統領への怒り・批判の声が溢れている・・・・というイメージも持ちがちですが、最近発表された世論調査をみると、必ずしもそういう話でもなさそうです。

尹大統領の支持率は40%台回復したという調査も。もっとも野党側は調査手法に問題があるとして調査機関を公選法違反の疑いで告発する方針とか。

****韓国・尹大統領の支持率は40%台回復か 一部世論調査報道、野党は手法を問題視し告発へ****
韓国で弾劾訴追された尹錫悦(ユンソンニョル)大統領の支持率を巡り、一部の世論調査で昨年12月3日の「非常戒厳」宣布以降、初めて40%台に達したと、地元メディアが報じた。

保守的な論調で知られる朝鮮日報(電子版)は「1カ月でV字回復」と強調している。一方、革新系最大野党「共に民主党」は、この調査を行った機関を公選法違反の疑いで告発する方針を明らかにした。

朝鮮日報などによると、韓国世論評判研究所(KOPRA)が18歳以上の男女1000人を対象に1月3、4両日行った世論調査で、尹氏を「強く支持する」との答えが31%、「支持する」も9%あった。一方、「全く支持しない」は56%、「支持しない」は4%だった。

一方、政党支持率では「共に民主党」が39%、尹氏が所属する保守系与党「国民の力」は36%で拮抗(きっこう)した。

この調査結果を、共に民主党などは問題視する。
「質問項目の設計などが特定の回答を誘導する形で進められた」 共に民主党の趙承来(チョスンレ)首席報道官は6日、記者団にこう述べ、KOPRAに対し、公選法違反の疑いで告発する方針を明らかにした。

具体的には、捜査機関「高位公職者犯罪捜査処(公捜処)」が執行を目指す尹氏の拘束令状について、違法性が指摘されていることを前置きした上で質問している点などを疑問視しているという。

左派系のハンギョレ新聞は7日配信の記事で、KOPRAの調査結果について「極右勢力と与党『国民の力』の支持層で共有され、世論の流れを歪曲(わいきょく)している」と非難した。

共に民主党の対応に対し、「国民の力」のメディア特別委員会は「『告発脅迫』で世論調査まで手なずけようとする奸悪な試みと見るほかはない」と反論している。【1月7日 産経】
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この調査だけの話なら“特定の回答を誘導する形”云々も「そうなんだ・・・」という話になりますが、大統領・与党側が意を強くするような調査が他にも。

別の調査では、大統領に対する逮捕状執行について、44.5%が反対しているとの結果も・

****4割超が尹大統領逮捕に反対 分断あらわに 韓国世論調査****
韓国の世論調査会社「リアルメーター」は8日、戒厳令を宣布した尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領に対する逮捕状執行について、54・4%が賛成する一方、44・5%が反対しているとの調査結果を発表した。

高官犯罪捜査庁(高捜庁)や警察などで作る合同捜査本部は内乱などの容疑で尹氏に対する2度目の逮捕状執行を試みようとしているが、世論の分裂は捜査当局の判断にも一定の影響を与えそうだ。

調査は7日に18歳以上の男女約500人を対象に行った。逮捕に反対する44・5%には「拘束せずに捜査」を求める12・5%と、「戒厳令は正当だったので逮捕すべきでない」とする31・9%が含まれている。

年代別には40〜50代の約7割が逮捕を支持。一方、60〜70代の半数以上が反対した。男女別で見ると、女性は約6割が逮捕に賛成し、男性は賛成が48・8%、反対が49・2%と拮抗(きっこう)した。

逮捕について賛否が二分する背景には、戒厳令以降の政治的混乱について、尹氏だけでなく、安定化に積極的な役割を果たさない野党にも責任があるとの見方が広がっていることとの関連もありそうだ。政治混乱について「尹氏や与党の責任だ」と回答した人は51・3%で、「野党の責任だ」と答えた人は39・1%だった。【1月9日 毎日】
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「戒厳令は正当だったので逮捕すべきでない」が31・9%・・・保守の岩盤支持層は崩れていないようです。更に政治的混乱への野党責任も加わって・・・といったところ。

また、別調査では与党「国民の力」の支持率が3週間ぶりに6ポイント上昇し、30%台を回復したとのこと。

****大統領が弾劾される政局で韓国与党の支持率が上昇も…“次期大統領”にふさわしい人物は圧倒的に野党・李在明****
韓国の世論調査で与党「国民の力」の支持率が3週間ぶりに6ポイント上昇し、30%台に回復したことが明らかになった。これにより最大野党「共に民主党」との支持率の差が4ポイントまで縮まった。

エンブレインパブリック、KSTATリサーチ、コリアリサーチ、韓国リサーチが1月6日から8日にかけて、全国18歳以上の男女1000人を対象に実施した全国指標調査(NBS)の結果を1月9日に発表した。

それによると、1月第2週の「国民の力」の支持率は32%、「共に民主党」の支持率は36%で、その差は4ポイントだった。「共に民主党」の支持率は前回調査(2024年12月19日実施)より3ポイント低下した。
「祖国革新党」は7%、「改革新党」は3%の支持を得た。

次期大統領にふさわしい人物は?
大統領選挙が今年行われた場合、どの政党の候補に投票するかという質問には、「共に民主党」の候補を選ぶとした回答が41%、「国民の力」の候補を選ぶとした回答が29%だった。

次期大統領として最も適任だと思う人物について尋ねたところ、「共に民主党」の李在明(イ・ジェミョン)代表を選んだ回答者が31%だった。(中略) 「該当者なし」「わからない」、または回答を拒否した人は32%だった。(中略)

また、尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領の弾劾審判について「弾劾を認めて尹大統領を罷免すべきだ」との回答が62%に上った。「弾劾を棄却し、職務に復帰させるべきだ」との回答は33%だった。

尹大統領の弾劾審判に対する対応については、「非常に誤っている」(53%)を含め、「誤っている」と答えた人は65%だった。一方、「うまくやっている」との回答は30%だった。

NBS調査は、携帯電話の仮想番号(100%)を用いた電話インタビューで行われた。標本誤差は95%信頼水準で±3.1ポイント、回答率は22.8%だ。【1月9日 サーチコリア】
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これだけの政治混乱のあとで与野党の支持率の差が4ポイントしかないというのも極めて意外。

また、3人に一人が「弾劾を棄却し、職務に復帰させるべきだ」と考えているのは、前述のように保守岩盤支持層健在(復調)を示すものでしょう。

【大統領拘束失敗で勢いづく保守勢力】
また、大統領拘束の失敗で保守勢力の意気は上がっているようです。

****韓国与党に支持回復の兆し、尹氏拘束失敗で保守層勢いづく****
弾劾訴追され職務停止となった韓国の尹錫悦大統領の拘束が実現せず、先行き不透明感が増していることで、尹氏の支持者が勇気づけられ、与党「国民の力」の支持に回復の兆しが見られている。

9日に発表された全国指標調査(NBS)によれば、回答者の59%が尹氏の拘束を望んでおり、37%は拘束は行き過ぎと答えた。

尹氏の弾劾訴追から数週間を経て、国民の力の支持率が回復している。一部のアナリストは、年内に大統領選が行われる可能性を見据えて保守派が団結する兆候を示していると分析している。

韓国外国語大学のメイソン・リチー教授は、「尹氏を拘束しようとしたことで、保守派が再び活気づいたようだ」と述べた。

与党の支持率回復の背景には、尹氏の戒厳令布告に賛同する岩盤支持層に加え、野党「共に民主党」の李在明代表が大統領になることを懸念する消極的な支持層の存在があるとの見方を示した。

「尹氏が拘束されていたら、保守派は弾劾訴追に続いて2度目の敗北を喫し、復活の勢いはすぐに失われていただろう。拘束の試みが失敗すればするほど、保守派は復活を強く感じるだろう」と語った。

6日に発表されたリアルメーターの世論調査によると、国民の力の支持率は34.4%で、3週連続で上昇した。一方、最大野党の共に民主党の支持率は45.2%だった。

韓国の世論調査機関の大半は、尹氏の弾劾訴追以降、同氏の支持率を公表していないが、一部の調査ではここ数日、尹氏個人の支持率が上昇している。

ユーラシア・グループの北東アジア担当シニアアナリスト、ジェレミー・チャン氏は、尹氏の拘束に向けたさらなる試みは、同氏と与党の支持を「活気づける」だけだろうと述べた。

仁川大学のイ・ジュンハン教授(政治学)は国民の力の復調について、2017年に朴槿恵元大統領が弾劾された後の選挙で保守政党が大敗した経験があるため、保守層の間で危機感が高まっているとの見方を示した。【1月9日 ロイター】
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【「共に民主党」の李在明代表も崖っぷち】
“次期大統領にふさわしい人物”の筆頭にあがっている「共に民主党」の李在明(イ・ジェミョン)代表ですが、伊大統領の罷免・次期大統領選挙を急がないと、自身の事件で大統領選挙にも出馬できない“時間的”事情があるのも周知のところ。

****すでに“大統領気取り”だが、大統領選に出馬さえできない可能性も…李在明代表、側近が控訴審でも有罪****
12月3日の非常戒厳事態を契機に尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領の弾劾審判が開始され、次期大統領選に向けた青信号が灯るかに見えた「共に民主党」李在明(イ・ジェミョン)代表だが、再び暗礁に乗り上げた。

偽証教唆容疑の無罪判決で一息ついた李代表の“司法リスク”が再び浮上してきたからだ。
サンバンウルグループと絡んだ裁判で起訴された李代表の側近であるイ・ファヨン元京畿道平和副知事が、控訴審でも有罪を免れなかった。李代表にも直結するサンバンウルによる違法な北朝鮮への送金の事実関係が、今回も認定された。

目前に迫った公職選挙法違反事件もある。李代表が今年11月、1審で懲役1年、執行猶予2年の判決を受けた事件だ。今後10年間、選挙に出馬できない重い判決だ。

選挙法違反事件では、控訴審が3カ月以内に結論を出すことが義務付けられている。尹大統領の弾劾審判とは別に、李代表が直面する危機の火種は消えていないように見える。【12月20日 サーチコリア】
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【「戒厳令は正当だった」という主張を更に強めそうな北朝鮮スパイ疑惑】
伊大統領及び保守岩盤支持層の「戒厳令は正当だった」という主張を更に強めそうな北朝鮮の介入疑惑に関する情報も明らかになっています。

****韓国最大規模の労組幹部は北朝鮮のスパイ、報告文で「総会長」金正恩氏に忠誠示す****
北朝鮮の対韓国工作機関「文化交流局」が、韓国最大規模の労組幹部だった男らによって秘密裏に結成されたスパイ組織に対して多数の指令文を送っていたことが、韓国・水原地裁の判決で認定された。韓国の労組を通じ、日米韓3か国協力の弱体化を狙う北朝鮮の思惑が見てとれる。

日米韓揺さぶり
「韓国と日本の関係は最悪だ。高揚した反日世論の流れに乗り、『韓米日三角同盟』を破裂させるための活動が必要だ」

北朝鮮は2019年7月から8月に3回にわたって指令文を送った。これに先立ち、日本政府は元徴用工訴訟問題への対応を巡り当時の文在寅ムンジェイン政権が解決に向けた対応を見せない中、対韓輸出管理強化に踏み切っていた。

指令文では「民族の利益を侵害する冒涜ぼうとく行為だと社会に認識させ、文政府が日本に妥協案を出さないよう力を与えろ」と求め、日本大使館を包囲したり、日の丸を破ったりするような過激な反日闘争の強化を促した。この後、韓国内では市民団体などによる日本製品の不買運動が広がった。

また保守の尹錫悦ユンソンニョル政権が発足した直後の22年5月の指令文は、「(尹政権が)従属的な韓米同盟にしがみつき、反北朝鮮対決策動に狂っている」と対北強硬路線への転換に危機感を示し、韓国内での「大衆闘争」で糾弾する必要があると主張した。

米軍基地画像も
スパイ組織に対しては、日米韓の協力強化が「平和と安定を害する」というメッセージの発信につながる記者会見や署名運動、抗議デモを指示。リーダー格の男が局長を務めていた労組「民主労総」は、尹政権発足後、3か国協力反対の活動を積極的に展開している。

水原地裁の判決で「北朝鮮に渡れば攻撃対象になり得るなど、韓国に不利益をもたらす危険性が明白」と強く非難したのが、この男が所持していたデータだ。ソウル南方の京畿道キョンギド平沢ピョンテクの米軍基地のヘリコプターや車両、ミサイル砲台の画像などが収められていた。

北朝鮮の工作機関は19年1月の指令文で「有事に備えた準備を整える」とし、平沢の軍基地や軍港の配置図、「大統領府や主要統治機関をマヒさせるため」として、送電網システムの資料について入手を求めており、判決は北朝鮮の指示に従い、男がこうした情報を収集したと認定した。

「本社」「支社長」
指令文は、北朝鮮の文化交流局を「本社」、韓国のスパイ組織のリーダー格の男を「支社長」、民主労総を「営業1部」と表現。19年8月には「『本社』の指示に従い、『支社長』が『営業1部』を通じ反日感情を高めるための闘争を戦術的によく練っていると評価する」との指令文もあった。流出した場合でも、実態解明を防ぐ隠蔽いんぺい工作とみられる。

メールなどで送られた指令文は、別の文字や画像に内容が埋め込まれる「ステガノグラフィー」と呼ばれる暗号化手法で隠されていた。捜査機関の捜索や押収があってもやりとりが発覚しないよう備えていた。

リーダー格の男は北朝鮮に報告文を送るたび、金正恩キムジョンウン朝鮮労働党総書記を「総会長」との隠語で表現し、「いつも忠実な息子として闘争しています」(20年5月)、「我が民族の自主と平和のために努力されている総会長の領導に感服します」(同6月)とつづるなど、忠誠を示していた。

今回の事件について、韓国に亡命した北朝鮮元工作員の一人は「スパイ活動の氷山の一角が明らかになっただけ」と指摘する。韓国の裁判所では今回の事件以外にも、北朝鮮からの指令文を受け取っていたなどとして国家保安法違反に問われているスパイ事件の公判が3件行われている。【1月9日 読売】
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この事件は韓国メディアは直接には報じておらず、上記【読売】報道を引用する形で多くの韓国メディアが取り上げているとのこと。

そのあたりについても、“「なぜこんな重大なスパイ事件を国内メディアは報道せず、日本のメディアを引用しなければならないのか。一体どれだけ北朝鮮や中国のスパイがメディアに浸透しているのか」といった疑心の反応も少なくなかった。”【1月9日 サーチコリア】という反響も。

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北朝鮮  貨幣改革の噂で混乱する経済 当局はロシア派兵兵士の生還を望んでいない?

2024-12-30 23:03:33 | 東アジア

(ウクライナ軍が公開したドローン映像に捉えられた北朝鮮兵士。【12月27日 中央日報】)

【経済を混乱させている貨幣改革の噂】
北朝鮮については極端な秘密主義のために詳細がわかりませんが、ミサイル・核兵器開発に必死の一方で、経済はガタガタで「餓死」も珍しくない、社会的にも滅茶苦茶で、韓国ドラマを見ただけで処刑というように体制維持に躍起になっている・・・そんな様子も報じられています。(ただ、伝えられるものが“極端なケース”に過ぎないのかどうか、国民一般の生活状況がどんなものかはよくわかりません。)

*****金正恩政権はなぜ崩壊しないのか?*****
(中略)
ちなみに、社会主義経済は、破綻状態になっても経済的問題で体制が崩壊することはなかなかない。北朝鮮でかつて大量餓死者が出ても政権は維持された。

国民が少々飢えた状態にあっても、生きるための最低の条件を満たせば、むしろ政治的統制がしやすい面もある。

北朝鮮の場合は、住民が他の国との比較ができないために、自分たちの生活を普通だと思っていることがある。

また住民たちは朝から晩まで食べ物の事だけしか頭にない状況もあり、国を転覆するなどと言った考えにまで及ばない。むしろそれを政権が狙っている可能性もある。それが北朝鮮の現状だ。(後略)
【6月12日 “北朝鮮の新たな動きをどう読み解くか ―朝鮮半島情勢の行方と日本の対応―” 李 相哲氏(龍谷大学教授) 平和政策研究所】
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そんな北朝鮮の経済問題で甚大な影響をもたらすのが貨幣改革(デノミネーション)。2009年11月にも大混乱を招きましたが、今再びその悪夢の噂が国民にひろがり、経済全般を揺るがしているようです。

****「いまのうちにカネを使い果たせ」混乱深まる北朝鮮経済****
通貨安が恐ろしい勢いで進んでいる。

北朝鮮の平安北道(ピョンアンブクト)の成川(ソンチョン)と殷山(ウンサン)では今月10日、1ドル(約157円)が3万3000北朝鮮ウォンから4万北朝鮮ウォンに達したと、米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)の情報筋が伝えた。今年5月末に8000北朝鮮ウォン台だったので、わずか半年で通貨の価値が4分の1になった計算になる。別の情報筋は、今月1日に2万8000北朝鮮ウォンだったのが、8日には4万1000北朝鮮ウォンになったと伝えた。

レートには地域差があるため、全国的な現象かどうかはわからない。デイリーNKが7日に行った調査では、今月7日の時点で平壌では1ドルが2万1000北朝鮮ウォン、新義州(シニジュ)では2万1300北朝鮮ウォン、恵山(ヘサン)では2万1400北朝鮮ウォンだった。いずれも、先月24日と比べて、3000北朝鮮ウォンくらいウォンが安くなっていることから、通貨安の傾向にあることは間違いない。

そんな中で「再び貨幣改革(デノミネーション)が行われるかもしれない」という噂が駆け巡っている。

多くの人が財産を失い、国中が大混乱に陥った2009年11月の貨幣改革は、北朝鮮の人びとにとってはトラウマだ。資産を持っている人たちは、手持ちの北朝鮮ウォンを使い果たすため、品物を買い占め、品物を持っている人たちは売り惜しみしている。

RFAの咸鏡南道(ハムギョンナムド)端川(タンチョン)の情報筋によると、現地では貨幣改革が行われるとの噂が飛び交い、人々は通貨安と物価高騰の話で持ちきりだという。

資産を持ったトンジュ(金主、ニューリッチ)は、一夜にして全財産が紙くずになった貨幣改革のときのことを思い起こし、手当たり次第に物を買い漁っている。

ナマコを売って一財産築いた情報筋の友人は、あちこちを回って液晶テレビとパソコンを大量に購入している。手元に残す現金はコメ代くらいで、後はすべて物を買うのに注ぎ込んでいる。

自動車に詳しい友人は変速機やタイヤなど、使えそうな自動車部品を買い漁っている。別の商人は、物価高騰が収まるまで、市場には出ないつもりだといって引きこもっているという。

当局もじっとしているわけではない。
咸鏡北道(ハムギョンブクト)の情報筋は、地元当局は「貨幣改革の噂はデタラメ」だと発表して、恐慌状態を収拾しようとしていると伝えた。しかし、お上の言うことを信じる人はいない。

「市場を資本主義の苗場、個人主義(エゴイズム)の温床と考える当局が、市場で収入を得ている人のことを考えてくれるわけがない」(情報筋)

故金正日総書記は、力を持ちすぎた市場を潰す目的で貨幣改革を実施した。民間人が財力を持つと、余計なことをしだすと考えていたようだ。しかし大失敗に終わり、担当幹部を処刑するなどして収拾を図ったが、北朝鮮の人々は今もこのことで金正日氏を深く恨んでいる。

一部の商人は、万が一の事態に備えて、在庫を売り惜しんでいる。
「2009年の貨幣改革の初期、新紙幣は価値があったが、1カ月も経たずに価値が急落し、当局の統制のせいで、対ドルレートは当初の半分以下になった」(情報筋)

当時の記憶がまだ生々しく残っているため、恐怖に襲われた商人たちは、在庫の食用油、砂糖などの食品、木材、ペンキ、自動車やオートバイの部品など、様々な商品を自宅にしまい込んでしまった。

たとえ貨幣改革の噂が、単なる噂に過ぎないと後日わかったとしても、今はともかく何も売らないのがいい方が得と考えているとのことだ。【12月30日 デイリーNKジャパン】
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経済は当局にその気がなくても、多くの国民が不安から一方向に走り出すと、悪循環のスパイラルに陥り、実体経済が麻痺状態になってしまうものです。

2009年11月の貨幣改革がどんなものだったのか・・・「改革」というより国家が国民の資金を収奪し、経済は崩壊・・・といったものでした。

****デノミ失敗で大混乱の北朝鮮経済 「国家による強盗」に高まる不満****
2009年11月、北朝鮮政府は突如としてデノミネーション(貨幣交換)を断行した。その結果、北朝鮮庶民の生活は今、大混乱をきたしている。金正日政権の思惑はどこにあるのか。そして、不安定化する北朝鮮社会はどこへ向かうのだろうか。

ため込んできた財産が一瞬で消失
北朝鮮経済が大混乱に陥っている。結論から述べると、現状はこの10年で最悪、餓死者まで発生している有り様である。原因は、2009年11月30日に電撃的に断行されたデノミ=「貨幣交換」(新ウォンへの通貨切り下げ)措置のためである。あまりに唐突、無茶なデノミ実施によって、北朝鮮国内では物流の麻痺(まひ)、超インフレが起こっているのだ。

金正日政権が断行したデノミの概要は次のとおりだ。(1)旧ウォンを新ウォンに100対1で交換する、(2)交換額の上限を1世帯あたり旧ウォンの現金10万ウォンとする、(3)交換期限は同年12月6日まで、(4)外貨の国内での使用を一切禁ずる、(5)配慮金として新ウォンを1人当たり500ウォン支給する。

この突然のデノミは、一般国民に事前にまったく知らされなかった。また、交換上限の10万ウォンというのは、実勢レートで約2500円程度で、地方都市の中間層のざっと1カ月の生活費に過ぎない(首都平壌はこの2倍程度)。

交換上限以上の金は紙くずになってしまうわけで、庶民から小金をため込んだ比較的余裕のある層まで、大なり小なり打撃を被った。

筆者は長く北朝鮮内部に住む人たちと一緒に取材を続けてきた。彼らが伝えるところによると、何年間もため込んできた財産が一瞬にしてパーになったり、商売の元手にしようと貨幣交換直前に多額の借金をした人が、新ウォンでの返済を求められて借金のかたに家を明け渡す羽目になってホームレスになったり、商品代金や借金の清算を旧ウォンでやるのか新ウォンでやるのかでいさかいが起こったりして、殺人事件や自殺まで発生したという。

一方、最貧層の人たちの中には、この十数年の間に貧富の格差が急に進んで不公平感が募っていたため、金を持っている者たちが途方に暮れている様子を見て、「これであいつら金持ちも私たちも同じ立場だ」と歓迎する人もいたようだ。

しかし、後に触れるが、デノミ実施から間もなくして超インフレが発生し、貧困層は、さらに窮してしまうことになった。

デノミの本当の狙いは何か
では金正日政権は、なぜこの時期にデノミ断行に踏み切ったのだろうか? 北朝鮮当局は、デノミは人民生活向上のためであり、(1)インフレ退治、(2)社会主義原則と秩序に基づく経済管理強化が目的だと説明している(09年12月7日付朝鮮新報など)。

北朝鮮は、国家による計画経済体制と消費物資の国定価格による配給制度を、建前上は放棄していない。だが農業不振が続き、工業生産も、軍需品などの一部工場を除いて、稼働率はざっと20~30%程度。

統制経済がぼろぼろになっていく一方で、一般民衆は生きていくために、違法と知りつつ商売行為を活発化させていった。

こうして1990年代後半からどんどん急拡大していった市場経済は、中国とリンクしつつ、国の実体経済を牛耳るほどに膨張していった。

その半面、インフレもひどく、この10年で消費者物価は20~25倍も上昇していた。北朝鮮当局は、コントロールの利かなくなった市場経済を抑え込んで統制することと、物価の安定を図ることが、デノミ断行の目的だというのである。

それではその結果はどうか? 2010年3月中旬になっても混乱は収まっていないようである。まずは、大変な超インフレの発生である。デノミ実施直後、白米は40ウォン、トウモロコシは20ウォン程度だったのが、3月後半の時点で白米は1000ウォン、トウモロコシは400~500ウォン(いずれも1キロ)に急騰した。

3カ月あまりで約25倍に値上がりしたことになる。中国の人民元の闇交換レートも、1元が15ウォンだったのが約200ウォンに下落した。金正日政権によるデノミは、インフレ退治どころか超インフレを招いてしまったのだ。

新ウォンへの信頼低下がその原因である。
「毎日あれよあれよという間に物価が上がる。売り惜しみが横行して市場にも十分に物が出てこない」
北朝鮮内部の取材パートナーたちの弁だ。

小さな商売や非合法の日雇い労働(北朝鮮では個人が人を雇うことは禁止)で日銭を稼いで暮らしてきた人は、経済が委縮したため、現金収入を大幅に減らしてしまった。

食糧配給もない中、このような貧困層の人たちは金がなくて食べ物にアクセスできなくなり、一部で餓死者が出るような惨状が現れている。

今回のデノミ断行の本当の狙いは何か。筆者の見立ては次のようなものだ。(1)政治的には、増殖する一方の市場経済を縮小再編させ、社会全般の国家統制を立て直すこと、(2)経済的には、国民から資金を強奪すること。

北朝鮮社会は不安定化する
市場経済の増殖は、国民が経済活動の自由領域をどんどん広げていることを意味する。それは、金正日政権の独裁維持の要である人民統制が弱体化するということに他ならない。

実際、この10年ほどの間に、「食べていけるのは政府のおかけでも金正日将軍のおかげでもなく、市場で商売しているから」という意識が当たり前になった。

商売のために人は移動し情報も交換しなければならない。市場経済のこれ以上の増殖は、体制維持にとって脅威だとの判断があって、デノミによって市場に一定の打撃を加える政治的意図があったものと思われる。

だが付言するならば、金正日政権の狙いは単純な「市場つぶし」そのものではないだろう。

経済不振の北朝鮮にあって、今や特権層にとっても、富を手に入れられるのは市場しかない。市場そのものをまったくつぶしてしまっては元も子もないわけだ。市場は「たたいて縮小させ、あらためて権力の都合のいいように再編して復活させる」ということではないか。政府の後続措置を見ないと判断は難しいが、現時点で筆者はそう推測している。(後略)【2010年4月2日 石丸次郎氏 Imidas】
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政権がコントロール出来ない市場経済領域を圧迫し、人民統制の復活強化を目指すというのは現在の金正恩政権が目指しているものでもあります。

【当局はロシア派兵兵士の生還を望んでいない?】
最近北朝鮮関連で多く報じられているのはウクライナとの戦争のためにロシアに派兵された兵士の話題。多大な犠牲者が出ていると報じられています。

****ウクライナ「最前線の北朝鮮軍打撃、水不足が深刻」…3000人死傷説も****
ロシアを支援するために派兵された北朝鮮軍がクルスク戦線で莫大な損失を出し、補給にも困難が生じていると、ウクライナ側が26日(現地時間)主張した。 

AP通信によると、ウクライナ国防省傘下の情報総局(GUR)はこの日、自国軍がロシア西部クルスク州ノボイバノフカ付近で北朝鮮軍の部隊を攻撃し、大きな被害を与えたと明らかにした。

情報総局はその結果、最前線にいる北朝鮮軍は補給問題に直面し、飲み水不足事態が生じていると伝えた。 

ウクライナのゼレンスキー大統領は23日、クルスク地域の戦闘で死亡または負傷した北朝鮮軍の数がすでに3000人を超えたと明らかにした。

北朝鮮はロシアを支援するためクルスク地域に1万-1万2000人を派兵したと推算される。ゼレンスキー大統領の主張通りなら、派兵された北朝鮮兵力の4分の1以上が死傷したということだ。(後略)【12月27日 中央日報】
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****ゼレンスキー氏、ロシアと北朝鮮を批判「北朝鮮兵の生死に全く関心がない」****
米国のジョン・カービー大統領補佐官は27日、ロシア西部クルスク州でウクライナ軍との戦闘に参加している北朝鮮軍の死傷者数が、過去1週間だけで1000人以上に上るとの分析を明らかにした。歩兵による人海戦術に多数が投入され、死傷者が増えているという。

カービー氏は記者団に、「北朝鮮軍は、クルスク州のウクライナ軍陣地に対して大規模な攻撃を仕掛けているが、人海戦術は効果を上げておらず、多大な犠牲が出ている」との見方を示した。

複数の北朝鮮兵が捕虜になることを拒み、自殺したという報告があることも明らかにし、「捕らわれた場合、北朝鮮にいる家族に対する報復を恐れたためだろう」と述べた。

ロシア軍は、ウクライナ軍の越境攻撃で占領された地域の奪還に向けて、北朝鮮兵を投入した攻撃を強めているとみられる。

ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は27日のビデオ演説で、「露軍と北朝鮮の指揮官は北朝鮮兵の生死に全く関心がない」と指摘した。その上で、「戦争を拡大させるべきではないという言葉に誠実であるならば、中国は北朝鮮に適切な圧力をかけなければならない」と訴え、中国に対して北朝鮮に影響力を行使するよう求めた。【12月28日 読売】
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自殺した北朝鮮兵・・・「捕らわれた場合、北朝鮮にいる家族に対する報復を恐れたためだろう」ということなのか、あるいは旧日本軍兵士のように「生きて虜囚の辱めを受けず」と洗脳されている結果なのか・・・

ロシアが北朝鮮兵士を弾除け代わりに“消費”しているという話は以前からあります。

更に言えば、金正恩政権自体が派兵した兵士の帰国を望んでいないとも。

****「1人の生還も望まない」ロシア派兵軍人に金正恩の残忍な仕打ち****
(中略)北朝鮮のロシア派兵が明らかになって間もなく、韓国在住の脱北男性であるチョン氏(仮名)は、韓国デイリーNKに対し次のように語っていた。なお、チョン氏は兵士の身分のままロシアの建設現場に派遣され、労働者として働いた経験がある。

「北朝鮮は、ロシアに派兵した軍人が戦場から1人でも生きて帰ってくることを望まないだろう。彼らが戻ってきて、国民に自分が経験した事実を伝えた場合、体制に対する否定的な世論が生じかねず、体制維持に役立たないからだ」と主張した。

我々はいま、チョン氏が予想したことを現実として目撃しているわけだ。
たしかに、韓流コンテンツを流布した人々に対する極刑執行が繰り返されている中、外国の情報に染まった多数の兵士を迎えるのは、北朝鮮当局にとって負担だろう。

しかし、ロシアで実戦経験を積み生還した兵士を「英雄」として称えれば、国民の中に対ロシア協力に賛成する世論を醸成する余地もあるはずだ。
北朝鮮当局が今後、そのような行動を取る可能性は残されている。

しかし、自軍兵士の処刑などという残忍な行いを経験したり目撃したりした兵士たちは、国家に対する反感を募らせる可能性が高い。北朝鮮当局がそれを警戒するなら、チョン氏の語った通り、生還者を完全に拒絶する行動を強めるかもしれない。

北朝鮮の恐怖政治が、いかに徹底したものであるかを改めて知り、今さらながら戦慄を覚えている。【12月30日 デイリーNKジャパン】
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実際のところ、金正恩政権がどのように考えているのかは知る由もありません。ただ、当局は「生還を望んでいない」といったことが囁かれるのは政権が国民からまったく信頼されていない証でもあります。
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韓国の「非常戒厳」騒動からの印象  「これが同じ分断国家アメリカで起きたら怖いな・・・」

2024-12-04 22:40:07 | 東アジア

(【12月4日 YouTube日テレNEWS】 兵士の銃に掴みかかる女性)

韓国・尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領が突然に「非常戒厳」を宣言したものの、6時間でこれを解除せざるを得ないことになった一連の動き、背景については、あまたの記事がありますので、そちらに任せます。

個人的な印象を少し書くと、革新勢力と保守派の分断が続き、相手側の執拗な攻勢に対し、ついに「非常戒厳」を宣言して一切の活動を停止に追い込もうとした・・・この韓国で起きた出来事が、同じような分断社会となっているアメリカで起きると怖いな・・・と感じた次第。

今回の韓国の動きを伝えるニュースで一番興味深かったのは、国会に配置された自動小銃をもって完全武装した兵士に対し、激しく抗議する女性が兵士の銃の銃身に掴みかかる動きに対し、兵士は後ずさって振りほどく・・・という場面。

これでは「非常戒厳」は実現しないでしょう。発砲しろとは言いませんが(おそらく今回配備された兵士は絶対に発砲しないように命じられているでしょう)、抗議の女性を押し返すぐらいの威圧感がないと・・・もし、やるのであれば。

これが銃社会アメリカ、不審な動きがあればすぐに射殺すべし、そうしないと自分がやられるというアメリカなら、全く違った話になるでしょう。

(韓国ドラマを観ていて思ったのですが、韓国では、日本同様に警官ですら発砲には規制があり、発砲した警官はいろいろ書類を書かないといけないようです。不確かですが、ドラマの会話では、そんな感じでした)

各州には州知事の指揮下にある州兵が存在しますが、分断された各知事がどのような判断をするのか。

分断した国民も、多くが、特に銃規制に反対する保守派の側は、銃を保有しています。直ちに武装自警団みたいな民兵組織がつくられるでしょう。

そうした韓国とアメリカの違いもあって、いったん「非常戒厳」に打って出たアメリカにあっては「内戦」も現実のものとなるかも。決して6時間でおわる茶番劇ではすまないでしょう。

そんなこんなの思いから「これが分断社会となっているトランプ政権下のアメリカで起きたらこわいな・・・でも、起きないとは言いきれいよね・・・」って感じました。

(なお、韓国も民主化以前、例えば朴(お父さんの方)政権の頃は、国内も、対北朝鮮もピリピリした緊張社会で、今回のような動きがあれば決して茶番では済まない社会でした)

ついでにトランプ政権下のアメリカに関して、もうひとつ怖いな・・・と感じたのはトランプ氏とカナダ・トルドー首相の会談。トランプ氏は不法移民の流入などへの対抗措置としてカナダからの輸入品に25%の関税を課すと宣言しています。

****トランプ氏「カナダは米国の51番目の州になるべきだ」 トルドー首相に会談で揺さぶり****
米FOXニュース(電子版)は2日、トランプ次期米大統領が11月29日に会談したカナダのトルドー首相に対し、米国の移民問題や貿易赤字にカナダが対応できないなら米国の新たな州になるべきだと述べたと報じた。

発言は同席者に冗談として受け止められたものの、カナダに揺さぶりをかけているのは明らかだ。トランプ氏は3日、自身の交流サイトにカナダ国旗が掲げられた崖に自身が立つイラストを掲載し「Oh Canada(オーカナダ)!」と書き込み、カナダを巡る世論を喚起した。

トランプ氏は米南部フロリダ州の私邸にトルドー氏を招き、次期政権の閣僚候補らと約3時間にわたる夕食会形式の会談に臨んだ。

トランプ氏は歓迎姿勢を示す一方で、大量の薬物や不法移民がカナダから流入していると指摘。国境問題や貿易赤字を解決できなければ、来年1月の就任初日にカナダからの輸入品に25%の関税を課すと述べた。

トルドー氏は、関税によってカナダ経済が完全に破綻すると再考を求めた。

これにトランプ氏は、米国から巨額の利益をむしり取らなければ生き残れないのかと反論。カナダが「米国の51番目の州」になるべきだと畳み掛けた。

苦笑いのトルドー氏に対し、新しい州の知事よりも「首相」という肩書の方がよいと持ち上げ、対応を促した。カナダ側の同席者はトランプ氏の発言について「冗談」と話している。

ただ、トランプ氏は日本製鉄による米鉄鋼大手USスチール買収の阻止や中東問題などで強硬姿勢を示していて、カナダにも圧力を強めていくとみられる。【12月4日 産経】
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もちろん今は「冗談」でしょう。
ただ、いくら冗談にしても、一国の首相に対し、自国の新たな州になれなんて普通は言わないですけどね。
トランプ氏の「普通」ではない一面でしょう。

「取引」(ディール)とは言っていますが、弱い立場の相手は容赦なく力でねじふせるという交渉スタイルです。

でもって、今は「(悪い)冗談」ですが、前述の分断社会の末に「非常戒厳」を宣言し、反対派を力で一掃する・・・・という場面の関連で、もしそういう事態になれば外交面では、カナダようなアメリカに依存する国には本当に「51番目の州」になるように力の行使がなされるかも。

「(悪い)冗談」を楽しむトランプ氏の頭の片隅には、そんな将来の展開もあるのかも。

今回は、ミャンマーの話を書く予定でしたが、前置きの話が長くなってしまったので、今回はここまで。ミャンマーの話はまた明日にでも。

最近のSNS社会の基準からすれば、毎回異常に長い記事を書いていますので、たまには印象・感想だけの短い記事で。
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台湾  トランプ氏復権で「見捨てられないか心配」 米の防衛協力「信じない」57.2%

2024-11-19 22:47:38 | 東アジア

(「台湾有事」が現実となった場合、日本政府は与那国島など先島諸島5市町村の住民を民間機やフェリーなどで九州・山口の8県に避難させる計画です。その数は12万人 【10月23日 読売】)

【台湾市民 「トランプ氏に見捨てられないか心配です。中国は台湾よりも経済とマーケットの力があるので」】
に続き、トランプ氏復権がもたらしている変化について、今回は台湾。

台湾は政治・経済・軍事の面で中国の「統一」に向けた圧力にさらされていますが、一方で経済的な中台の関係も深く、多くの台湾企業が中国に生産拠点を有しています。

しかしトランプ氏復権で中国製品への60%関税の課税が取り沙汰される状況で、台湾当局は台湾企業が中国から台湾に生産拠点を移すことへの支援を表明しています。

また、アリゾナ州では半導体ファウンドリー(受託製造)世界最大手の台湾積体電路製造(TSMC)が650億ドル以上の投資を行うとしており、同社に最大66億ドルの助成が発表されていいます。しかし、トランプ氏は選挙期間中、台湾が米国の半導体ビジネスを盗んでいると非難しており、復権に伴って補助金が取り消されるなどの変更も想定されています。【11月13日 JETROより】

****台湾、中国からの生産移転を支援へ トランプ氏の関税公約巡り****
台湾の郭智輝経済部長(経済相)は7日、トランプ次期米大統領が中国に関税を課すと公約していることに絡み、影響を受ける可能性がある企業が中国から生産拠点を移転するのを支援すると表明した。

来年1月に就任するトランプ次期大統領は、米国に輸入される中国製品に60%の関税を課すとしている。

台湾企業は過去40年間、低コスト化のため中国に多額の投資を行ってきた。一方で台湾当局は中国からの統一圧力が高まることを警戒し、台湾企業に中国以外への投資を促している。

郭氏は議会で、トランプ氏が中国に関税を課した場合、中国で生産活動を行う台湾企業への影響は「かなり大きい」と指摘。「できるだけ早期に台湾企業が生産拠点を移転できるような支援策を打ち出す」と述べた。詳細には触れなかった。

また、トランプ氏が半導体受託生産世界最大手の台湾積体電路製造(TSMC)に対する補助金を取り消す懸念について議員から質問されると、不測の事態に備えた計画はあり、「TSMCが対米投資を拡大し続けるのはトレンドだ」と答えた。

TSMCは米アリゾナ州の新工場向けに650億ドルを投じている。同社は補助金に関する懸念について今のところコメントしていない。【11月7日 ロイター】
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上記のような経済問題も当面の話としてありますが、台湾の最大の懸念は、もし中国が武力による併合に乗り出したときトランプ政権は台湾を守ってくれるのか?という安全保障上の不安でしょう。

****「トランプに見捨てられないか心配」“アメリカ頼り”の台湾で心配の声 半導体業界からも「台湾企業の宿命」****
台湾では、アメリカ大統領選挙に勝利したトランプ氏が、どのような政策を行うのか注目されています。中国との緊張が高まり、アメリカを頼ってきた台湾だけに、今後を不安視する声も上がっています。

台湾の中心都市・台北市の飲食店。6日、アメリカ大統領選の開票状況を気にする人たちの姿がみられました。

中国との関係が緊張する中、台湾は軍事面などでアメリカを頼りとしてきましたが、市民からはトランプ氏が台湾への関与を弱めるのでは、と心配する声も聞かれます。

市民 「トランプ氏に見捨てられないか心配です。中国は台湾よりも経済とマーケットの力があるので」「驚きと恐れがあります。トランプさんはコントロールできないでしょう?」

半導体業界からも不安の声が。スマートフォンから生成AIまで幅広い用途で使用される半導体ですが、より性能の高い先端半導体の製造については、台湾が国・地域別シェアで68%と世界のトップです。

バイデン政権は国内製造を促進するため、受託製造世界トップシェアの「TSMC」をはじめ、台湾企業がアメリカに工場を建設する場合は、巨額の補助金を支給するとしていますが、台湾のエンジニアは。

台湾の半導体業界で働くエンジニア
「トランプ氏はバイデン政権のように(台湾の半導体産業が)アメリカへ移転するために補助金を使うのではなく、より政治的手段を使ってアメリカへの移転を加速させるだろうと思います」

ブルームバーグ通信などによると、トランプ氏は補助金には否定的で、「我々から半導体事業を奪った」と台湾をけん制。高い関税を課すことを示唆したといいます。

台湾の半導体業界で働くエンジニア
「これは台湾企業の宿命だと思うので(トランプ氏の方針に)協力せざるを得ないと思いますが、私自身はうまくいくとは思っていません」

不安も渦巻く中、トランプ氏はどのような台湾政策を進めるのでしょうか。【11月8日 TBS NEWS DIG】
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“中国は台湾よりも経済とマーケットの力がある”・・・・理念よりも実利的な「ディール(取引)」を好み、常に「自国第一」をアピールしているトランプ氏ですから、仮に関税問題で中国との厳しい対立が起きたとしても、最後は(アメリカと中国にとっての)「ウィン・ウィン」のディールがなされ、そこでは台湾への配慮は捨てさられる・・・・そんなことも十分に想定されます。

【トランプ氏 台湾有事にも関税対応 「台湾は防衛費を払うべきだ。われわれは保険会社のようなもの」】
ましてや、台湾有事の際の軍事介入となると、そんなアメリカにとって“一文の得にもならない”ことへトランプ氏が乗り出すことは考えにくいようにも思えます。

トランプ氏本人が「私が(軍事力を使う)必要はないだろう」と語っています。

****トランプ氏、台湾有事なら「中国に最大200%の関税」 軍事力は使用せず=WSJ****
 米大統領選共和党候補のトランプ前大統領は、中国が「台湾に侵攻」した場合、中国に追加関税を課す意向を示した。18日付の米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が報じた。

WSJのインタビューでトランプ氏は「もしあなたが台湾に侵攻するなら、申し訳ないが、150―200%の関税を課すつもりだと言うだろう」と述べた。

中国による台湾包囲に対して軍事力を使用するかとの質問に対しては、習近平国家主席は自分に敬意を抱いており、そのような事態にはならないと回答。

「私は彼と非常に強い関係を築いていた」と述べ、「彼は私を尊敬しており、私が著しくクレイジーであることも知っているので、私が(軍事力を使う)必要はないだろう」との見方を示した。(後略)【10月20日 ロイター】
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さすが自称「タリフマン(関税男)」、ここでも関税です。
またトランプ氏は、「台湾は防衛費を払うべきだ。われわれは保険会社のようなもの」とも。「保険会社」というよりカネで動く「用心棒」でしょう。

【台湾有事の際の米国の防衛協力を「信じる」:29.8%と過去最適に急落 「信じない」:57.2%】
ただ、中国にとって核心中の核心である台湾問題は、利害損得の範囲外のところがあります。また、習近平国家主席が「仮に台湾侵攻でアメリカとの経済関係が崩壊して経済混乱が起きても、国民は「統一」の方を評価する。トランプ氏もやがては中国の巨大市場を考えて関係修復に動く」と踏んで、武力統一に動く・・・というシナリオもあるでしょう。

台湾世論もトランプ氏の防衛強力をあまり信用していません。

****台湾世論の対米信頼低下=防衛協力「信じる」13ポイント減****
台湾の民間シンクタンク「台湾民意基金会」は19日、トランプ次期米大統領の当選を受けた世論調査結果を公表した。

中国が台湾を侵攻した場合、米国の防衛協力を「信じる」と答えた人の割合は前回の昨年2月調査比で13ポイント減となる29.8%に落ち込んだ。

「信じる」人の割合は2020年9月調査以降で最低。逆に「信じない」と回答した人は10.7ポイント増の57.2%と過半数を占めた。

米歴代政権は台湾防衛を明確にしない「曖昧戦略」を取ってきたが、バイデン大統領は台湾有事に対する軍事介入を繰り返し明言。

一方、トランプ氏は米台の地理的な遠さを指摘し、「台湾は防衛費を払うべきだ。われわれは保険会社のようなもの」などと発言した。台湾社会では米依存への懐疑論や動揺が広がり、米台離間を図る中国に好都合な展開となっている。

調査は20歳以上の約1000人を対象に、米大統領選後の今月11〜13日に実施した。【11月19日 時事】 
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【中国による“日頃から偽情報の流布や選挙介入、台湾軍兵士への接近などの浸透工作” 台湾軍の情報セキュリティーに問題も】
台湾においては、これまで避けてきたような中国の台湾侵攻という問題が映画・ドラマでも真正面から取り上げらるようになってきたことは10月10日ブログ“台湾  中国の圧力・脅威が強まるなかでの変化 中国の台湾侵攻を題材にしたドラマも”でも取り上げました。

****中国の「台湾侵攻」描くドラマ「零日攻撃」、台湾有事に警鐘…中国の浸透工作シナリオに「予告編を見て緊張した」****
台湾で中国による侵攻と浸透工作を描く初のドラマ「零日攻撃(ゼロ・デイ)」(全10話)の撮影が進み、話題を呼んでいる。中国による軍事的威圧が常態化する中、重苦しいテーマに正面から挑む作品で、制作関係者は台湾有事に警鐘を鳴らしたいとしている。

公開中の予告編動画によれば、中国が消息不明になった自軍機を捜索救助する名目で、台湾周辺の海域を封鎖する設定だ。ドラマでは、中国ハッカーによるサイバー攻撃や台湾に潜伏する内通者の反乱が起こるほか、半導体関連の株価は暴落し、在留外国人は脱出を図る。

中国が日頃から偽情報の流布や選挙介入、台湾軍兵士への接近などの浸透工作を図る中で描く有事のシナリオに、制作で助言した台湾の国防安全研究院の蘇紫雲スウズーユン・国防戦略資源研究所長は「予告編を見て私も緊張した」と話す。

制作を手がけるプロデューサー兼脚本総括の鄭心媚さんは、中国の侵攻を「デリケートな話題であり、私たちはいつもその話を避けてきた」と語る。制作の意図について「中台間で戦争が起きたり、台湾が中国の一部になったりすれば、話す機会がなくなるため、今こそ話すべきだ」と訴える。

危機に際して台湾の人びとがどう選択するのか、様々な意見を取り入れようと30〜60歳代の監督9人を起用した。脚本作りには軍事などの専門家が協力した。

制作費2億3000万台湾ドル(約10億9600万円)のうち3割を台湾当局が補助し、軍も制作に協力する。野党は、中国と距離を置く民進党政権のプロパガンダだと批判するが、予告編の動画の再生回数は196万回を超え、反応は上々だ。【11月8日 読売】
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中国による“日頃から偽情報の流布や選挙介入、台湾軍兵士への接近などの浸透工作”については、下記のような話も。

****台湾の親中国政党「中華統一促進党」、当局が解散請求へ…中国から3億5300万円受領し世論工作か****
台湾内政部(内政省)は6日、中国とのつながりが深いとされる政党「中華統一促進党」が組織的に中国のために働き、台湾の治安や社会秩序を破壊しようとしているとして、憲法裁判所にあたる司法院の法廷に解散を請求すると発表した。

2005年成立の同党は、台湾の歴代政権が受け入れを拒んできた「一国二制度」下での中台の統一を目指している。

同党幹部の男と妻は4日、中国から約7400万台湾ドル(約3億5300万円)を受領し、1月の総統選や立法委員(国会議員)選などで世論工作をしようとしたとして台湾の検察に起訴されていた。

内政部によると、同党は選挙妨害や組織暴力など、幅広い犯罪にも関わっているという。10年から今年までに殺人や強盗、国際的な人身売買などの犯罪に関与したとして、党員計134人が摘発された。【11月7日 読売】
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台湾軍及び台湾市民の防衛意識の問題もありそう。台湾住民のスマホ投稿で軍事情報が中国側に筒抜けになっている実態も。

****「スマホ投稿」が暴露した秘密...台湾防衛が中国に筒抜けとなる理由****
<市民がスマホで撮影した画像がネット上にあふれ、対艦ミサイルの位置情報が中国軍に筒抜けに>
それは台湾ではありふれた一日だった。中国がまたもや軍事演習を行ったのだ。

中国軍の艦船と軍用機が台湾周辺を威嚇的に旋回するのは毎度のこと。台湾軍も心得たもので、いつものように各部隊に緊急出動を命じた。

とりわけ重要な任務を担うのは、移動式の地上発射型対艦ミサイルを運用する機動部隊だ。実戦では、これらの部隊が本島各地の秘密の地点からミサイルを発射し、台湾上陸部隊を乗せた中国の艦船を撃沈することになる。

ところが、台湾側が知らないうちに機動部隊の動きはインターネット上にさらされ、秘密のはずのミサイル発射地点を、中国側がピンボイントで狙える状態になっていた。実戦であれば、機動部隊は装備もろともあっという間に吹き飛んでいたところだ。

これは台湾の頼清徳(ライ・チントー)総統の就任式が行われた今年5月20日の数日後に実際に起きた出来事である。(中略)

5月23日の演習では、いつもどおり台湾側もそれに対抗して周辺海域と空域に部隊を派遣したが、実弾は1発も発射されず、程なく中国は演習を終了。台湾政府はあたかも勝利宣言のように防衛体制は万全であり、何の心配もないと市民に保証した。

だがその後6月に中国最大のソーシャルメディアアプリ微信(ウェイシン)に、ある記事が載った。これは中国の防衛関連企業「北京藍徳信息科技」が投稿した記事で、一般公開されている。

記事が主に扱っているのは、地対艦ミサイルを運用する台湾軍の機動部隊が5月の演習時にどう動いたか。これらの機動部隊は「海鋒大隊」に所属している。(中略)

問題の記事は、海鋒大隊の12の基地の地理的位置を正確に伝えている。恒久的なミサイル発射基地は敵に見つかりやすい。台湾軍も自軍の基地が中国軍に知られていることを想定して、機動部隊を使うことにしたのだ。機動部隊は台湾各地に散らばり中国軍の上陸部隊を壊滅させつつ、飛来するミサイルを巧みにかわして任務を全うするはずだ。少なくとも理論上は。

海鋒大隊所属の機動部隊は通常、3〜4台のミサイル発射台と護衛のための数台の支援車両で構成される。台湾島内を自在に動き回り、発射地点で素早く準備し、中国軍の艦隊にミサイルを撃ち込み、反撃されないうちにさっさとその場を去る。「シュート・アンド・スクート(撃って逃げる)」と呼ばれる戦術だ。

政府と軍の「自殺行為」
だが問題の記事を投稿した企業は5月23日、台湾の機動部隊の数カ所の発射地点を正確に突き止めていた。(中略)

この中国企業は台湾軍にスパイを潜入させていたわけでも、最先端のハッキング技術を使ったわけでもない。台湾の人々(ジャーナリストもいるが、多くは一般市民)が移動中の機動部隊を見つけ、スマホなどで撮影し、ソーシャルメディアに投稿したのだ。(中略)

台湾のメディアやネット民は正確な場所までは示していないが、中国側が入手した画像を基にグーグル・マップなどを使って調べれば、簡単に発射地点が分かる。この中国企業は機動部隊の移動ルートや移動にかかった時間まで割り出していた。

ここ数年、スマホとソーシャルメディアの普及に伴い、一般の人たちが目撃した場面を撮影してネットに投稿するようになった。この手のOSINT(オープンソース・インテリジェンス)が軍事的にも利用されることはウクライナ戦争を見れば明らかだ。

ところが、台湾軍の上層部は自軍の機動部隊を中国のミサイルから守るために必要な情報セキュリティーをいまだ採用していない。(中略)

中国の商用リモートセンシング衛星システム・吉林1号は、報道によると昨年には既に138基が軌道上にあり、地球上の任意の地点の最新画像を宇宙から10分おきに撮影できる。軍と国の情報機関は数百基の強力なスパイ衛星群を利用している。

中国は既に台湾のあらゆる場所を常時追跡できる、というのは大げさかもしれない。しかし、今回の微信の投稿が示すとおり、中国の情報関連能力は急速に進化しており、ソーシャルメディア時代に台湾が機密を隠し切れないという現実がそれを助けている。

台湾軍はより慎重かつ柔軟な戦術で活動しなければ、戦争の初期段階で、最も重要な防衛資産を中国にたやすく破壊されかねない。(後略)【11月7日 Newsweek】
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“台湾国防部(国防省に相当)は【8月)30日、中国軍に関する年次報告書を議会に提出した。中国は装備を保有していないため台湾を「完全に」侵攻する能力はないが、先進的な新兵器を投入していると指摘した。また外国の貨物船に対する検査など、台湾を脅かす他の選択肢もあるとの認識を示した。”【8月30日 ロイター】

それならいいけど、台湾軍の防衛能力は?

以前のブログでも触れたように、台湾有事となれば日本も厳しい対応を迫られます。
もしアメリカが軍事的に動くとすれば、その最前線基地は日本にある米軍基地です。日本政府がこの米軍基地使用を認めないように中国は日本に圧力をかけてくる可能性もあります。

台湾周辺の沖縄県先島諸島からは12万人の住民を避難させる計画とか。どうやって?
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緊迫する朝鮮半島情勢  平壌上空で独裁批判ビラが無人機で撒かれたと北朝鮮主張 韓国から飛来か?

2024-10-13 22:29:57 | 東アジア

(6月6日未明、金正恩政権の体制批判ビラを北朝鮮に向けて飛ばす「自由北韓運動連合」のメンバーら【6月6日 東京】)

【緊迫する南北関係】
韓国で北朝鮮に宥和的な文在寅政権から、北朝鮮に強硬な保守・尹錫悦政権に変わって、南北関係はゴミをぶら下げた風船に象徴されるような敵対的な緊張状態にあることは周知のところです。

北朝鮮は憲法上で韓国を統一の対象ではなく「第1の敵対国」と位置付けるとの金正恩総書記の指示もありました。

****北朝鮮 憲法改正議論へ 韓国を「第1の敵対国」と明記の方針****
北朝鮮は来月(10月)7日に最高人民会議を開催し、憲法の改正について議論すると発表しました。韓国を「第1の敵対国」と憲法に明記する方針について話し合うとみられます。

16日付けの北朝鮮の朝鮮労働党機関紙「労働新聞」は、各地の代表を首都ピョンヤンに招集して、来月7日に最高人民会議を開催することが15日決定されたと伝えました。

このなかでは憲法の改正や外国との貿易などに関する法律について議論するとしています。

最高人民会議は国の予算や法律の改正、国家機関の人事などを決定するため、年に1、2回開かれていて、ことし1月以来の開催となります。

前回の会議で演説したキム・ジョンウン(金正恩)総書記は、韓国を「第1の敵対国」と明記するよう憲法の改正を指示し、「平和統一」などの表現を削除すべきだとしていました。

北朝鮮はその後、国歌の歌詞から、朝鮮半島全体を指す「三千里」という単語を削除するなど、韓国を「敵対国」とみなす措置をとっていて、来月の最高人民会議では、キム総書記の方針に沿って憲法の改正について議論されるとみられます。【9月16日 NHK】
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最高人民会議は今月7日、8日に開催されましたが、韓国を「敵対国」と明記する改憲については、今のところ報道はないようです。

秘密主義の北朝鮮のことですので、敢えて公表していないのか、南北関係や国際情勢などを勘案して今回は改憲を見送ったのか・・・そのあたりはわかりません。

“朝鮮中央通信は9日、国会に当たる最高人民会議が7〜8日に平壌で開かれたとも報じたが、2国家論に基づく憲法改正への言及はなかった。金氏も出席しなかった。金氏は1月に韓国を敵国とみなし南北政策を放棄する方針を憲法に反映させるよう、領土に関する条項の追加や「平和統一」といった表現の削除を指示していた。改憲は先送りされた可能性がある。【10月9日 産経】

いずれにしても、極めて緊張した状況にあることは変わりありません。(もっとも、私などの年代は南北関係については朴正熙・韓国大統領時代のピリピリした関係のイメージがありますので、「緊張状態」というのは普通のことのようにも思えますが)

****南も北も互いに首脳を名指し批判、しかも呼び捨て。一触即発の朝鮮半島****
(中略)
韓国・北朝鮮の南北でそれぞれの首脳を名指しで批判し、より緊迫な状況になった。

まずは、北朝鮮からである。2024年10月4日の朝鮮中央通信は、金正恩朝鮮労働党総書記が、北朝鮮は核強国の絶対的力を確保したとし、韓米が北朝鮮の主権を侵害しようとするなら「核兵器を含むあらゆる攻撃力を動員する」と威嚇した。

また、韓国の「国軍の日」(10月1日)記念式典の演説で北朝鮮の核に対し強い警告を発した尹錫悦大統領を「尹錫悦傀儡(かいらい)」と呼び、「核を保有している国の前で軍事力による圧倒的な対応に言及したが、何かまともでない人ではないかという疑いをかけられざるを得ないありさま」と強く非難した。

金正恩氏が尹大統領を名指しで非難したのは2022年7月の「戦勝節」(朝鮮戦争休戦協定の締結日)の演説以来約2年ぶりのことである。当時の演説では、尹大統領を呼び捨てにして「就任前後のさまざまな機会に吐いた妄言と醜態を正確に記憶している」と罵倒していた。

今回のこの金正恩国務委員長の発言は、同月2日に西部地区にある朝鮮人民軍の特殊作戦部隊訓練基地を訪問した際にされたものである。

国軍の日の演説については、傀儡が抱えている安全保障への不安と焦りを表したものとし、「極度の愚鈍さと無謀さに陥った敵が、われわれの度重なる警告を無視して韓米同盟に対する過度な信心にあふれ、ひいては共和国の主権を侵害する武力使用を企めば、容赦なく核兵器を含むあらゆる攻撃力を使用する」と断言した。これまでにない強い警告メッセージである。

一方、この発言を受けて韓国軍合同参謀本部は同日の4日深夜、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党総書記が尹錫悦大統領を名指し非難したことに反発し、記者団に「われわれの戦略的、軍事的目標は北の同胞でなく、ただ金正恩一人に全てが合わされている」とするコメントを表明した。

軍事作戦を遂行する合同参謀本部が北朝鮮の最高指導者を呼び捨てにし、攻撃目標だと明言するのは異例のことである。

北朝鮮は米韓が金氏の排除を狙う「斬首作戦」を準備していると神経をとがらせてきた経緯があり、南北間の緊張が一層高まってきている。一触即発な状況である。【10月8日 宮塚寿美子氏 MAG2NEWS】
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北朝鮮は、韓国とつながる道路と鉄道を遮断し、防御用の構造物を建設して「要塞)化する」と表明しています。

****北朝鮮、韓国との軍事境界線付近を「要塞化」 道路・鉄道を遮断****
北朝鮮の朝鮮人民軍総参謀部は9日、韓国とつながる道路と鉄道を同日から遮断し、防御用の構造物を建設して「要塞(ようさい)化する」と表明した。朝鮮中央通信が伝えた。

北朝鮮は長年にわたる「朝鮮半島統一」の方針を完全に放棄し、北朝鮮と韓国の「2国家」論を主張している。今回の発表でも韓国との「国境を永久に遮断する」としており、壁を建設する動きとみられる。
 
総参謀部は「わが共和国の主権行使の領域と大韓民国の領土を徹底的に分離させるための実質的な軍事的措置を取る」と表明。「第一の敵対国、不変の主敵である大韓民国とつながる南側国境を永久に遮断、封鎖するのは、戦争抑止と(北朝鮮の)安全を守るための自衛的措置だ」と正当化した。「偶発的衝突を避けるため」として9日、米軍に要塞化工事について通知したという。

韓国と北朝鮮を結ぶ鉄道路線や道路は現在、寸断されている。韓国軍合同参謀本部は6月、北朝鮮側でレールの撤去や地雷の埋設などの動きがあると指摘。北朝鮮と韓国の軍事境界線から北に約2キロの4カ所では、防壁とみられるコンクリート製の構造物を確認したと説明していた。【10月9日 毎日】
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【北朝鮮首都に独裁批判ビラが無人機で撒かれる 神経を尖らせる北朝鮮】
こうした緊迫した状況下で、首都平壌ピョンヤン上空に無人機が飛来し、北朝鮮の独裁体制を批判するビラがまかれたと北朝鮮側は主張し、激怒しています。

****北朝鮮首都に独裁批判ビラ、無人機でまかれる…金与正氏「必ず恐ろしい惨事が起きる」と報復示唆****
北朝鮮の首都平壌ピョンヤン上空に3、9、10日に飛来した無人機から北朝鮮の独裁体制を批判するビラがまかれたと北朝鮮が主張する事件を巡り、金与正(キムヨジョン)朝鮮労働党副部長は12日、「再び発見されたら必ず恐ろしい惨事が起きる」と韓国への報復を示唆する談話を出した。

誰が無人機を飛ばしたのか不明な中、南北の摩擦が深まっている。

北朝鮮外務省が無人機の飛来を非難した11日、韓国軍合同参謀本部関係者は「無人機を送ったことはない」としたが、その日のうちに「事実かどうか確認できない」と説明を変えた。

与正氏は12日の声明で韓国の民間団体が無人機を飛ばした可能性にも触れ「(韓国)軍が傍観したのならそれは故意的な黙認、共謀だ」と非難した。

韓国大統領府の申源湜シンウォンシク国家安保室長は13日に出演したKBSテレビの番組で「北朝鮮の話について事実をいちいち話す必要はない」と語った。

この対応ぶりを巡っては「北朝鮮の探りに応じない」(中央日報電子版)、「曖昧にすることで北朝鮮側に混乱をもたらす」(聯合ニュース)との見方がある。北朝鮮もゴミをぶら下げた風船を韓国に飛ばしており、非難する立場にないとの考えもある。

保守、尹錫悦ユンソンニョル政権が民間団体のビラまきを「表現の自由」として容認していることもあり、活動に参加する民間団体は多様化し、使用する機材も高度化している。

韓国の脱北者団体「自由北韓運動連合」や「北韓同胞直接支援運動」は、読売新聞や韓国メディアに対し、今回の無人機に関与していないと語ったが、尹政権が全ての活動を把握しているかどうかは不明だ。

金正恩 キムジョンウン 党総書記や与正氏が、ビラまきや韓国軍による軍事境界線での拡声機放送に神経をとがらせているのは間違いない。韓国に憧れを抱く若い世代の体制離反を招きかねないためだ。特に、権力中枢に近い幹部が集まる平壌が今後も狙われれば何らかの実力行使に出るシナリオも否定できない。【10月13日 読売】
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従来から韓国の脱北者団体は北朝鮮に向けて風船を使ったビラまきをしていますが、最高指導者・国内体制・韓国関する情報などに関して徹底した秘密主義を貫き、強権的な国内統治を行っている北朝鮮権力にすると、金一族に関する情報に関する情報などを含むこうしたビラは極めて厄介で神経を逆撫でするもので、これまでも神経を尖らせてきました。

逆に言えば、脱北者団体や北朝鮮に敵対しようする勢力にとっては、この紙爆弾は極めて有効な手段となります。

****北朝鮮向けビラ****
(中略)
ビラの内容は朝鮮戦争は北朝鮮の南侵だったことなどの真実や金一家の私生活など北朝鮮体制批判、韓国の発展した状況やいわゆるアラブの春で独裁政権が倒れたことなどを文・絵で暴露するものなどが多く、2008年4月からはアメリカドルや人民元や朝鮮民主主義人民共和国ウォン(5000ウォン紙幣)などの現金や、韓国ドラマやK-POPなどの音楽が収録されているUSBメモリやDVDなどを同封している。

団体によってはGPS・ラジオ・靴下・手袋・ボールペンといった生活必需品や、アスピリン・バンドエイドなどの医薬品、やマスクにラーメン、ストッキング、コンドーム、聖書、チョコパイ]を送ることもあるという。

風船を利用する場合、一般的にはタイマー付きのビラを入れた袋を飛ばして設定時間になると袋が破れて一気に放出する装置を使用している。

しかし脱北者などで構成される朝鮮改革解放委員会では幅広い地域にビラをまくため、2023年からコピー機の紙の排出装置と同様の装置を利用し、飛行しながら数分から数時間ごとに約20枚ずつ排出する装置を使用している。

別の団体では風船ではなく米、聖書、紙幣、USBメモリをペットボトル入れ北朝鮮に向けて流すこともある。脱北者団体「社団法人クンセム」によれば2024年に江華島から北朝鮮の黄海道へ向けて500個流したと主張した。

音声メッセージを発信する装置を飛ばしている団体もある。

また、将来的には風の流れで浮遊する従来型の風船に代わりGPSトラッカーや労働党を批判などができる小さな拡声器を搭載した「スマート」風船の開発が進められている。

これにより特定の地域向けにビラをまくことができるほか、飛行距離が数百キロに及び、試験飛行した際には中国まで飛ばすことに成功したと主張している。【ウィキペディア】
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今回の北朝鮮側の主張が正しければ、従来の「風船」が無人機に進化したことになり、そうなると、狙った都市・地域にビラを撒くことができるようになり、北朝鮮にとっては看過できない問題です。

韓国側から無人機を飛ばしたとすると、その無人機が首都平壌上空に到達できたというのは、北朝鮮の防空体制にとっても問題かも。

本当に無人機でのビラ撒きがあったのか? 誰が飛ばしたのか? ・・・そのあたりは分かりませんが、もし韓国側から飛ばしたものであれば、前述のような南北間の緊張状態を考えると、極めてハイリスクな行為でもあります。

なお、韓国にあっては、北朝鮮に対するビラ撒きは表現の自由と北朝鮮刺激の兼ね合いで問題となっており、文在寅政権法律で禁止されていましたが、昨年、最高裁は禁止法を違憲と判断しています。

****北朝鮮への宣伝ビラ散布禁止法は違憲、韓国憲法裁が判断****
 韓国憲法裁判所は26日、北朝鮮への宣伝ビラ散布禁止は違憲とする判断を示し、同国との関係改善に前向きだった文在寅政権時の2020年に可決された法律を無効化した。

同法は言論の自由を侵害しているとして、保守派議員などから激しい批判を浴びていた。

7対2で下された今回の判断は、「南北関係発展法」のビラ散布禁止条項が言論の自由を過度に制限していると認めた。【2023年9月26日 ロイター】
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台湾  中国の圧力・脅威が強まるなかでの変化 中国の台湾侵攻を題材にしたドラマも

2024-10-10 23:15:03 | 東アジア

(【7月27日 阿猴新聞網】 中国の台湾侵攻を題材にした映画「零日攻擊 ZERO DAY」)

【頼清徳総統 敢えて踏み込む「中華民国」の歴史】
台湾と中国の間の緊張関係は相変わらずですが、台湾の建国記念日に相当する「双十節」を前に行われた関連行事での「中華民国」の歴史に言及した頼清徳総統のあいさつが注目されています。

*****「中国は台湾の祖国になり得ない」、記念日行事で頼総統*****
台湾の頼清徳総統は5日、中華人民共和国よりも台湾の方が歴史が長いため、中華人民共和国は台湾の人々の祖国にはなり得ないと述べた。

10月10日の台湾の建国記念日に相当する「双十節」を前に行われた関連行事で頼氏はあいさつし、中華人民共和国が10月1日に建国75周年を迎え、数日後には中華民国(台湾)が建国113周年を迎えることに言及した。

「年数という観点で言えば、中華人民共和国が中華民国の人々の『祖国』になることは絶対に不可能だ」とした上で、「中華人民共和国の75歳以上の人々にとっては、むしろ中華民国が祖国になるかもしれない」と述べた。【10月7日 ロイター】
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上記記事にあるような単なる「年数」の問題にとどまらず、そもそも「中華民国」は大陸における国民党・蒋介石が主導してきたもので、そうした歴史とは距離を置き台湾の独自性を主張する民進党にとってはやや馴染めない概念でもありました。

頼清徳総統が敢えて「中華民国」の歴史に言及したのは、「台湾独立論」にとってのタブーに踏み込んだ、世論統合に向けた現実的な対応とも見られています。

また、野党・国民党の歴史観に敢えて踏み込んだ「変化球」とも評されています。

****台湾の頼総統、あえて「中華民国」前面に 中国の統一圧力に対抗、注目集める「祖国論」****
台湾の頼清徳総統が「中華人民共和国(中国)は、中華民国(台湾)の人々の祖国には絶対になり得ない」と発言し注目を集めている。

与党、民主進歩党の支持層が距離を置く「中華民国」という概念をあえて前面に出し、中国による台湾統一の主張に反論しているのが特徴だ。「台湾独立」論に否定的な中間層を取り込み、世論を団結させて習近平政権の統一圧力に対抗する狙いがあるとみられる。

頼氏は5日の「双十節」(建国記念日に相当)の祝賀イベントで演説。1911年に始まった辛亥革命で誕生した中華民国は、49年に成立した中国共産党の中華人民共和国よりも歴史が長いと指摘し、同国発足以前に生まれた75歳以上の中国人は「中華民国が祖国になり得る」とも述べた。

頼氏の主張は「台湾は祖国の懐にかえるべきだ」と訴える中国側の論理破綻を突いたものだ。一方、中国側が「頑固な台湾独立派」と敵視する頼氏が自ら、旧来の「台湾独立」論を否定した側面もある。

中国共産党と台湾の最大野党、中国国民党に共通する「国共内戦が完全には終結していない」という歴史観は、一つの中国という理念の根拠になっている。

これに対して「台湾独立」派は従来、49年に台湾に逃れてきた外来政権の中華民国を消滅させて台湾共和国を建国し、「一つの中国」という枠組みから明確に離脱する理想を掲げていた。

しかし現実的には、「台湾独立」に向けた憲法改正に必要な有権者の過半数の支持を得るのは困難だ。

台湾の清華大栄誉講座教授、小笠原欣幸氏は「頼氏の現状認識は中国との統一か独立かではなく、台湾の現状を守り切れるか、圧力を強める中国に統一されてしまうかだ」と指摘。

「台湾の世論が割れたままでは中国に隙をつかれるので、国民党の看板である中華民国を利用して統一反対という多数派の世論をまとめ、中国からの圧力をかわすというのが頼政権の狙いではないか」と分析する。

国民党からは批判の声も出ている。同党の馬英九元政権下で対外政策の立案に関わった政治大教授の黄奎博氏は、「中華人民共和国が中華民国の人々の祖国にはなり得ない」という頼氏の主張は「歴史的事実」と認める一方、頼氏が「中華民国と中国大陸との民族、法理、歴史的関係」を切り捨てていると批判した。

国民党は頼氏の発言を全面否定するわけにもいかず、対応に苦慮しているもようだ。小笠原氏は「頼氏の『変化球』が狙い通りに中間層の有権者の支持を広げることにつながるのか注目したい」と指摘する。【10月9日 産経】
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10日の双十節の式典では、頼清徳総統は「中華人民共和国(中国)には台湾を代表する権利がない」と表明、蔡英文前総統の「現状維持」路線継続を明言する一方で、蔡氏より強い表現で中台は対等だと主張しています。

****頼総統「中国は台湾代表せず」=併合反対と強調―双十節で演説****
台湾の頼清徳総統は10日、辛亥革命を記念する「双十節」(建国記念日)の式典で演説し、中台関係について「中華人民共和国(中国)には台湾を代表する権利がない」と表明した。また「国家主権を堅持し、侵犯と併合を許さない」と強調した。

「祖国統一」を掲げる中国は頼氏を「台湾独立派」と敵視しており、演説に反発し軍事的威嚇を強める可能性がある。

今年5月に就任した頼氏が双十節で演説するのは初めて。頼氏は、台湾と中国は「互いに隷属しない」と重ねて強調した。

台湾国防部(国防省)によると、中国は10日にロケットを発射し、台湾の防空識別圏(ADIZ)上空を通過する見通し。台湾メディアによれば、頼政権は、演説を受けて中国が台湾周辺で大規模軍事演習を実施することを警戒している。

頼氏は中台関係に関し、蔡英文前総統の「現状維持」路線継続を明言する一方で、蔡氏より強い表現で中台は対等だと主張している。今月5日には「中国は絶対に台湾の祖国になり得ない」と強調。これに対し、中国政府は「対立を激化させようとする邪悪な意図を再び露呈させた」と強く反発した。

式典への出席を予定していた野党・国民党の馬英九元総統は10日朝、「頼総統は台湾独立を追求している」として突如欠席を表明した。【10月10日 時事】
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これに対し、中国外務省の毛寧(もう・ねい)報道官は10日の記者会見で、「頑固で無知な『台湾独立』の立場を再びさらけ出した」と反発、「台湾は中国の領土の不可分の一部だ」と主張して「独立を画策して挑発するのは破滅への道だ」と威圧しています。

【中国の台湾侵攻の話題に踏み込む台湾エンターテインメント】
「タブー」に踏み込んだ現実対応ということでは、台湾のエンターテインメントにもそうした兆しが。
これまで台湾エンターテインメントは中国の台湾侵攻の話題を意図的に避けていた感がありますが、最近、そこに踏み込んだ作品が登場するようになっているようです。

****台湾ではドラマなどでの「タブー破り」が次々に、武力統一への恐怖を反映―香港メディア****
香港メディアの香港01は5日、2025年に放送予定のテレビドラマ「零日攻擊 ZERO DAY」を紹介する記事を発表した。同ドラマは台湾で初めて放送される、中国人民解放軍の台湾侵攻を想定して創作されたフィクションで、米国メディアは「悪夢が業界を刺激してタブーが打破された」と評したという。

「零日攻擊 ZERO DAY」は11月に撮影が終了し、25年に放送される予定だ。出演は高橋一生、連俞涵、杜汶沢など。中国人民解放軍が台湾を軍事攻撃して戦争状態になった場合に、台湾社会が直面する可能性のある事態を描く。

総統選を経て新たな総統の就任日が近づく時期に、中国軍が台湾南東の海域で対潜哨戒機が撃墜されたとして、捜索および救助が必要だという名目で台湾を海上封鎖し、さらに上陸作戦を開始する。台湾の対外航運は完全に途絶し、株価暴落と銀行の取り付け騒ぎが発生する。

ネット配信された「零日攻擊 ZERO DAY」の予告編の再生回数は、すでに100万回を突破した。

香港01記事は、長期にわたり、台湾を訪れる観光客は台湾について、大陸側の脅威に直面していても驚くほど楽観的という印象を持ち続けてきたとする見方を紹介。

さらに、中国政府は台湾に対する主権を主張し、武力行使の可能性を放棄していないにもかかわらず、台湾の娯楽業界は大陸側の台湾侵攻の話題を意図的に避けてきたと主張した。

米紙ウォールストリート・ジャーナルは同作品を、「中国大陸の台湾武力統一の悪夢が、台湾の娯楽産業にタブーを破る作品を作らせた」と評した。

「零日攻擊 ZERO DAY」は制作にあたり、総統府内での撮影を許可され、台湾政府・文化部の資金援助も受けた。そのため、政権党である民進党の支持を獲得するための政治宣伝の作品との批判が出た。しかし李遠文化部長は、政治宣伝映画はこのような恐ろしい光景を描くことはできないと述べて否定した。

李部長はさらに、「自らの最大の恐怖に立ち向かうことができる社会こそ、健全な社会だ」と述べて、台湾の文化産業が論争のあるテーマに触れ始めたことを歓迎する考えを示した。

台湾ではドラマの「零日攻擊 ZERO DAY」以外に、大陸側の台湾侵攻を扱う劇画やゲームも注目されるようになった。例えば劇画「燃える西太平洋」は、在任中のトランプ米大統領が、米軍を派遣して台湾に侵攻した中国軍の撃退を支援する物語だ。

同作品作者の梁紹先氏によると、18年にネット上で連載を開始した際には、反応はあまりなかった。しかし、22年に当時のペロシ米下院議長が台湾を訪問したことを受けて中国軍が台湾を包囲するような方式で軍事演習を行ったことで、状況は一転した。販売数はそれ以前の7倍に達したという。

また、作家の朱悠勲氏は、最近になり自分が審査員を務める一部の作文コンテストでは、応募者である若者が戦争に関する作品を提出することが増えていると説明し、「かつては見たことがなかった」と表現した。朱氏によると、台湾で発表される文学作品でも同様な傾向があり、今後も続くと考えられるという。

「零日攻擊 ZERO DAY」の脚本家兼統括プロデューサーの鄭心媚氏は、大陸による侵攻に関連する新たな創作ブームは台湾の民衆の心理の変化が関係していると述べた。

鄭氏は、台湾の人々は表面上は脅威を感じていないように見えるが、実際には恐怖が存在しているとの見方を示した。

鄭氏はさらに、台湾がますます米国寄りになるにつれて、中国大陸側の北京の台湾に対する態度は一層強硬になっていると指摘。大陸側と台湾の経済の絆はすでに断裂しており、かつては多くの台湾人が中国大陸側との経済の提携に期待を寄せていたが、すでにそのような気持ちはそれほど強くないという。【10月6日 レコードチャイナ】
*******************

頼清徳総統が敢えて「中華民国」の歴史に言及したのも、エンターテインメントが中国の台湾侵攻の話題を正面から取り上げるようになったのも、中国の圧力・脅威が強まるなかでの現実直視の姿勢のあらわれかも。

【今後5年間に中国が台湾を侵攻する可能性は「低い・非常に低い」と回答した人が6割】
なお、最新の世論調査によれば、今後5年間に中国が台湾を侵攻する可能性は「低い・非常に低い」と回答した人が6割に上っています。

この数字が“驚くほど楽観的”なものかどうか、その裏で実際には恐怖が存在しているのかどうか・・・・

****台湾人の6割、今後5年で中国侵攻受ける可能性低いと回答=調査****
台湾国防部傘下のシンクタンク、国防安全研究院(INDSR)が9日公表した世論調査で、今後5年間に中国が台湾を侵攻する可能性は「低い・非常に低い」と回答した人が6割に上った。 調査は先月、約1200人を対象に実施。

INDSRのクリスティーナ・チェン研究員は大半の台湾人が中国の領土的野心を深刻な脅威と見なしているが、これが台湾侵攻につながるとは考えていないと指摘した。

INDSRは、台湾人が脅威を認識しながらも冷静で理性的であり続けていると分析した。

回答者の67%以上は中国が攻めてきたら反撃すると回答。台湾軍に自衛能力があるかにどうかについては意見が二分された。

INDSRの李冠成研究員は、台湾軍が世論の信頼を高めるために防衛能力を強化し続けるべきだと指摘。

世論調査では、米国が台湾の防衛に協力するかどうかについても意見が分かれた。

回答者の約74%が米政府が食料や医療品、兵器を提供することで「間接的に」台湾を助けるだろうとし、米軍が部隊を派遣して介入するとの回答は52%にとどまった。【10月9日 ロイター】
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韓国  研修医職場離脱のその後 政府は秋夕(チュソク)を迎え緊急対応

2024-09-13 23:17:12 | 東アジア


(「秋夕(チュソク=中秋節、今年は9月17日)連休非常救急対応週間」の運営が始まった11日午前、ソウル市内のある大学病院救急医療センター【9月11日 chosun Online】)

【2月に始まった研修医スト 双方譲らず未だ継続】
韓国の主要病院では2月20日、医師不足に対処するため医学部の入学定員を増やす方針(2000人増やし、約5000人にする)を打ち出した政府に反発した研修医らが何千人と職場を放棄し、医療現場に混乱が広がりました。

****************
約1万3000人の研修医が全国221の病院で指導教授のもと医療に従事していたが、4分の3に相当する9900人が退職届を提出し、最終的に7600人余が医療現場を離れた。

研修医は専攻医指導病院で1年間のインターンと3〜4年のレジデントを経て専門医資格を取得する。労働6割、研修4割といわれている研修医は指導病院にとって欠かせない人材だ。

ビッグ5と呼ばれるソウルの5大病院をみるとソウル大学病院は全医師の46.2%を研修医が占めており、セブランス病院も40.2パーセント、サムスンソウル病院は38.0パーセント、ソウル峨山(アサン)病院は34.5パーセント、ソウル聖母病院は33.8パーセントが研修医だ。

彼らの大量離脱でそれまで研修医が補助を担っていた手術や入院患者の受け入れに支障をきたすようになった。【9月12日 佐々木和義氏 Newsweek】
********************

歴代政権にとって、医学部定員増は医療サイドの激しい抵抗で対応に苦慮する問題となってきました。

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2006年から基本的に変わっていない医学部の定員を増やすことは、国民から広く支持されている。韓国の人口1000人当たりの医師数は約2.6人で、経済協力開発機構(OECD)加盟国平均の3.7人を下回る。

入学定員を増やさなければ1万人以上の医師不足に
尹大統領の計画では、医学部入学定員は年間3000人から約5000人に引き上げられることになる。入学定員を増やさなければ、2035年までに韓国の医師数は医療需要に対して1万人以上足りなくなると当局は予測している。

ここ何年かで韓国政府が医師を増やす政策を推進するのは、今回が初めてではない。2020年には文在寅(ムン・ジェイン)政権が、10年間で医学部入学定員を4000人増やす計画を掲げたが、今回と同様の懸念を軸とした医療界からの反発と、医師らによる1カ月にわたるストライキを受けて、計画はお蔵入りとなった。【2月25日 The NewsYork Times 東洋経済online】
********************

離脱研修医側の言い分は・・・

****韓国で「若手研修医の半分以上が辞職」した裏側****
(中略)
足りないのは救急医療の医師
手頃な価格の医療制度を誇る韓国だが、人口当たりの医師数は先進国の中でも最も少ない部類に属する。急速に進む高齢化に伴い、とくに地方と救急医療分野の医師不足が深刻化していると韓国政府は指摘している。

抗議行動を展開しているのは病院の運営に不可欠な研修医らで、彼らによると、医師不足は医療業界全体ではなく、救急医療など特定の専門分野に限ったものだという。こうした専門分野で働く魅力を失わせている、研修医の過酷な労働条件や低賃金といった問題を政府は無視していると、彼らは主張する。

調査によると、研修医は日常的に24時間を超えるシフトを複数こなしており、勤務時間が週に80時間を超える研修医は多い。

ソウルにあるセブランス病院の救急病棟の職を辞した大韓専攻医(研修医)協議会のパク・ダン会長は19日、「医療制度は崩壊して久しい」と語った。「この先5年も10年も、自分が救急で働くことは考えられなかった」。

パク・ダン会長はさらに、現在の保険と政府の支払いシステムでまともに暮らしていけるのは、美容外科など一部の診療科の医師だけだと語った。

抗議している医師らはまた、政府が医師の数を増やして競争を激化させれば、患者の過剰治療につながる危険性があるとも主張している。【同上】
*********************

ただ、少なくとも問題発生当時、世論は研修医や、彼らを煽る医療界の対応には「自分たちの待遇改善のために患者の命を人質にしている」と批判的で、日頃厳しく保守派政府を批判する左派メディア「ハンギョレ」も研修医を批判しています。

*****************
研修医の動きへの国民の支持は広がっていない。韓国ギャラップが16日に発表した世論調査によると、尹政権の医学部定員増加の方針については76%が肯定的な評価を示した。尹政権に厳しい論調の左派系のハンギョレ新聞は社説で「正当な理由なく、国民を人質に脅迫している」と研修医らを批判した。【2月22日 読売】
*****************

前出の表向きの理由はともかく、厳しい受験戦争を勝ち抜いてようやく手にした医師への道が、定員増となれば医療現場の競争も激しくなり、報酬も下がることにもなってしまう・・・・というのが本音ではないか・・・とも勘ぐられます。

また医療界全体が立場の弱い研修医を煽り、自分たちの権益を守ろうとしている・・・とも。

その後も、尹大統領も研修医側も基本線では譲らず、半年以上経過した現在に至っています。(このあたり、伊大統領は世論の批判が強い日韓関係重視でもそうですが、なかなか信念を曲げず強気です。 良くも悪くも、周囲の声を聞いて妥協する“政治家”タイプではありません。)

なお、政府は一時、離脱した研修医の医師免許停止処分とする強硬な計画を示しましたが、これについては現在の医療サービス不足を解消することが「より緊急」だとして、7月8日に取下げています。

【救命救急センターを訪れる患者が増加する秋夕(チュソク)への対応】
そうこうしている間に韓国は、秋夕(チュソク)を迎えます。

*******************
秋夕は旧歴8月15日とその前後に祖先を祀り、墓参りなどをする韓国国民にとってもっとも重要な祝日で、今年は9月14日から18日まで5連休となっている。この時期は多くの企業が休業となり、病院でも外来は休診となることから救命救急センターを訪れる患者が増えると予想されている。【9月12日 佐々木和義氏 Newsweek】
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政府も秋夕に向けて緊急体制を指示しています。

****研修医スト続く韓国、来週の祝日前後を特別医療対応期間に****
韓国政府は12日、来週の「秋夕」の祝日に合わせ、2週間を緊急医療特別対応期間とし、あらゆる資源を活用して医療サービスを確保すると発表した。

韓国では政府の医療制度改革に盛り込まれた医学部増員に反対する研修医らが職場離脱する状態が2月から続いている。

韓悳洙首相はブリーフィングで「医療関係者の献身に少しでも報いる」ため、特別対応期間は医療保険から医療機関に支払う診療報酬を一時的に引き上げると述べた。全国約8000の診療所や病院が祝日期間も診療を行うとした。これは今年の旧正月期間(約3600)を上回るという。

国民には、症状の程度に応じて、大病院でなく地元の診療所の受診を検討するよう呼びかけた。

聯合ニュースは12日、医学教授会の発表として、全国53の病院を調査したところ救急外来の医師数が42%減少しており、7病院が救急外来の一部閉鎖を検討していると報じた。【9月12日 ロイター】
********************

緊急対応として軍医を投入。

****ストで救急センター運営に支障 政府が軍医ら投入へ****
政府が進める大学医学部の定員拡大に反発して、研修医が集団で退職するなど医療界のストライキが続いている影響により、全国の救命救急センターの運営が支障をきたしていることを受け、政府は軍医や、兵役の代わりに保健所などに勤務する公衆保健医師を救急センターに緊急配置することにしました。

保健福祉部は、2日に行ったブリーフィングで、救急センターの運営を円滑化するため、軍医と公衆保健医師など230人あまりを順次、投入すると明らかにしました。(中略)

さらに、今月中旬の中秋の名月にあたる、秋夕(チュソク)の連休中、病院の休業により救急センターに患者が集中し、混乱が増す場合に備え、11日から25日を非常救急対応期間に指定し、救急医療を支援することに決めました。

一方、政府は、「救急センターの99%にあたる406か所は24時間運営中だ」として、救急センターの運営が支障をきたしているのは、一部に過ぎないとしています。

政府によりますと、病床を縮小し運営している救急センターは27か所で、全体の6.6%だということです。

しかし、政府が発表したとおり、ほとんどの救急センターが24時間体制で運営されているのは事実ですが、研修医が医療現場を離れた影響で、救急センターで勤務中の医師は、平時の7割ほどとなっていて、搬送先の見つからない救急患者が増えています。

消防庁の資料によりますと、ことし上半期に発生した救急車の再搬送件数は2645件でしたが、このうちおよそ4割が「医師不足」によるものだったということです。

全国医科大学教授非常対策委員会は2日、声明を発表し、政府の発表とは異なり、すでに多くの救急センターが医師不足により、正常な診療ができておらず、秋夕の連休を起点に診療が制限されたり、運営を中断するところも出てくるだろうと懸念を示しています。【9月3日 KBS News】
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ただ、いきなり救急センターに投入された「軍医」は、うまく対応できなかったとの評価も。

****大型連休控え医療混乱ピークの韓国 病院・研修医・患者が苦境のなか、漁夫の利を得たのは?****
<年に1度の大型連休を控え韓国の医療は危機的状況に陥っているが──>

(中略)
秋夕に向け軍医を病院へ派遣したが......
韓国保健福祉部は、軍医官と公衆保健医を公立病院や民間病院に派遣してきたが、秋夕前後に250人を救命救急センターに派遣することにした。公衆保健医は兵役に代えて公衆衛生にあたる医師免許保持者である。

同部は9月4日、軍医官15人を運営に支障が出ている救命救急センターに派遣し、9日以降、235人の軍医官と公衆保健医を緊急度の高い医療機関に派遣すると明らかにした。

ところがだ。軍医官や公衆保健医の評判はお世辞にも良いとはいえない。ソウル大学病院が行ったアンケート調査で、軍医が「役立った」と答えた教授は30.9パーセントにとどまる一方、31.8%が「役に立たない」と回答した。

未回答者は軍医等が派遣されなかった科目の教授で、派遣を受けた教授の半数以上が「軍医は役に立たない」と回答したのである。「軍医らを救急室に配置すれば、患者未収容がなくなるか」という質問にも教授らは「彼らは重症患者の診療に参加して、責任を負わなければならない状況となることを恐れている」と回答した。

軍医官3人が派遣された梨花女子大学木洞病院は、救急室勤務は適していないとして帰るよう通知した。江原大学病院では派遣された5人のうち実際に勤務できたのは1人だけだった。

保険福祉部が派遣する250人の軍医官と公衆保健医には救急医学の専門医が8人いるが、その専門医でさえ役に立たないという。救急専門医が2人派遣された世宗忠南大学病院は、軍医は診療できないと判断している。【9月12日 佐々木和義氏 Newsweek】
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一方、大韓医師協会のイム・ヒョンデク会長が政府への抗議のハンストを行いましたが、6日目で体調を崩し断念しています。 韓国でよくある政治パフォーマンスですが、対政府というより、医療界の都合に踊らされて人生の岐路にたたされている離脱研修医向けのエクスキューズでしょうか。

****韓国、医学部定員増めぐる問題の混乱続く=韓国医師協会長がハンストに踏み切るも6日目で断念****
(中略)
医師協会の林会長は先月26日、記者会見を開き、「韓国の医療は死の直前まで来ており、国民の命が脅かされている」と訴えた。林会長は、現場ではこれまで離脱せずに踏みとどまっていた医学部教授たちが「燃え尽き症候群」となり、相次いで辞職していると指摘。医療危機を収拾するには大統領と国会が決断するほかないとして、定員増の撤回を求め、この日からハンストを開始した。

今年5月に医師協会長に就任した林会長は、協会内でも激しく政府と対立してきた人物として知られる。今年3月に会長選に当選した際は、政府の医学部定員増員の方針に端を発した医療現場の混乱について「今の状況は研修医や医大生、医大教授らがつくった危機ではなく、政府がつくった危機だ。事態の責任は政府と与党にある」と批判。翌月に控えた韓国総選挙で、議員の落選運動を行うこともちらつかせた。

一方、尹大統領は先月29日に行った国政に関する記者会見で医療改革に言及し「もう医学部の増員が終わった(決まった)ため、改革の本質である地域・必須医療の再生に政策の力量を集中する。2025年度の医学部の定員募集は現在、滞りなく進んでいる」と強調した。(中略)

ハンストを続けていた林会長は、6日目の31日に体調を崩し、病院に搬送された。ハンストは、韓国では政治家らがしばしば行うパフォーマンスだ。昨年8~9月にかけては「共に民主党」のイ・ジェミョン(李在明)代表が、福島第一原発の処理水海洋放出に抗議することなどを目的にハンストを行った。

しかし、国民から多くの支持を得ることはできなかった。今回の林会長によるハンストについて、韓国メディアのマネートゥデイは「今回の断食は、大きな世論化を形成できず、医療界内では『得るものがなかった』との雰囲気が漂っている」と伝えた。【9月3日 WoW!Korea】
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【離脱した研修医の厳しい現実 戻りたくても「裏切り者」扱いが怖い】
すでに来年の医学部定員増員も当初計画よりやや縮小はしたものの実施に移されており、離脱した研修医はこの現実をどのように見ているのか、なぜあきらめて職場復帰しないのか・・・彼らは厳しい状況に置かれています。

****漁夫の利を得たのは......*****
一方で辞職した研修医たちは就職難に直面している。兵役未了者は公衆衛生医を目指すが、服務期間は3月からで、志願者が多いと翌年以降に延ばされる。軍服務が終わった研修医や女性専攻医は一般医として勤務できるが、離脱研修医の急増で給与水準が下がっている。

専門医資格を得た後、専攻医指導病院に残って勤務するフェローの給与は700万ウォン、中小病院で週5日勤務する契約医師は1200万ウォンから2000万ウォンが一般的だが、離脱研修医は300〜400万ウォンでも仕事がないという。

患者と病院、離脱研修医のいずれも良い結果を生まないなか、この状況を歓迎する医療機関もある。美容整形外科と療養型病院だ。ソウルのある美容整形外科が月400万ウォンで求人を出したところ応募が殺到したという。手術は任せられないが看護師並みの給与で医師を採用できるとして「営業拡大」を図る動きもある。

療養型病院は「専門医資格がなければ昼に勤務できる病院が少ないため、夜間の当直を一般医に任せているが、確保が難しい状況だった」といい、「離脱研修医は恵みのようだ」と歓迎する。

一般医は専門医と比べて勤務先が限られるうえ、給与水準も低いが、離脱研修医に対する目は冷ややかで、政府も手を差し伸べる考えはないようだ。【9月12日 佐々木和義氏 Newsweek】
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現場に戻りたくても、戻ると「裏切り者」扱いされ、実名をさらされるという恐怖もあるようです。
救急救命室の医師たちの実名が「医療の混乱を防ぐために努力している方々に感謝」などと揶揄する形で公開されています。

****医療大乱の韓国。救急救命室の医師が「悪意あるリスト」で実名を晒される異常事態****
(中略)
救急救命室のブラックリスト
救急救命室の緊急事態でバーンアウトに耐えながら耐えている救急救命室の医師たちの実名を公開した「ブラックリスト」が出てきて国民の公憤を買っている。救急救命室の危機警報が鳴り、重症患者が救急救命室の「たらい回し」によって死亡する事態まで起きている現実の中で、医師倫理を破った反生命体・反社会的の行動の極致だ。

(中略)医療現場に戻ろうとする心ある専攻医も多いのだろうが、こういう「ブラックリスト攻撃」があるために現場に戻れないでいる医師の卵たちも多いのだ。

医師でありながらこのような反生命・反倫理犯罪を犯すとは。開いた口が塞がらない。自分の稼ぎ(儲け)がn分の一になるからという極めて利己的な理由で政府の医療政策に反対している反社会的医師ら。(後略)【9月13日 MAG2NEWS】
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医師会の対応は相変わらずです。

*****韓国医師協会「政府の態度変化が必要」 医療混乱巡る協議不参加を表明*****
韓国の大韓医師協会(医協)は13日に開いた記者会見で、研修医らの職場離脱による人手不足など医療現場で生じている混乱などについて協議する与野党と政府、医療界の4者による協議体について、政府の態度に変化がない現時点では医療界側は参加しないとの立場を表明した。(後略)【9月13日 聯合ニュース】
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一方、伊大統領は・・・

****尹大統領が国民にメッセージ 「連休中も病院で働く医師らに感謝」****
韓国の尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領は秋夕(チュソク、旧暦8月15日)を控えた13日、映像メッセージで国民へのあいさつを伝えた。

尹大統領は韓国伝統衣装の韓服姿で、中秋の名月のように豊かな時間を過ごすことを願うとし、「連休中も国民のために働いている国軍将兵、警察官、消防官、そして救命救急センターを維持している医療関係者の皆さまに深く感謝する」と述べた。(後略)【9月13日 聯合ニュース】
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日本でもコロナ禍の頃「エッセンシャルワーカーの皆様、ご苦労様です」ってありましたね・・・。
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中朝関係  「消えた足形」や北朝鮮労働者問題など「不協和音」が目立つことも 

2024-09-02 23:21:21 | 東アジア
(かつてあった習近平氏と金正恩氏の足形 大連【8月3日 東京】)

【「唇亡歯寒の血と血で固められた同盟関係」に隠された中朝指導者の本音】
「唇亡歯寒」・・・・もし唇がないとしたら歯が寒いというたとえで、互いに助け合う関係にある一方がなくなると、他の一方の存在も危うくなることをいう。【イミダス】

朝鮮戦争を共に戦った北朝鮮と中国の関係は「唇歯相依の関係」あるいは「唇亡歯寒の血と血で固められた同盟関係」とアピールされることもありますが、実際のところは、上から目線で北朝鮮に指図することが多い一方で、アメリカなどへの配慮から北朝鮮をないがしろにしがちな中国に対し、金正日にしても金正恩にしても北朝鮮指導者は好ましい感情は持っていないとは言われています。 

北朝鮮国内の住民学習会では「日本が100年の敵なら中国は1000年の敵だ」といった表現も使われるほどに北朝鮮当局の中国に対する警戒心は強いとも言われます。

中国からすれば、北朝鮮はいつも勝手なことばかりして中国の足を引っ張る面倒な存在・・ということにも。

【「消えた足形」 北朝鮮労働者の本国送還を中国が要求】
そうした本音はともかく表向きは「唇亡歯寒の血と血で固められた同盟関係」ということで国際社会に対峙するというのが中朝関係です・・・・が、最近不協和音が表に出てくることもしばしば見られます。

最近北朝鮮がロシアに接近していることも影響しているとも。

****「嘘つき」発言に苛立つ習近平…「中朝友好の足形」を埋め、「金正恩」と8カ月間交流なし プーチンと北朝鮮との蜜月も一因か****
習近平中国国家主席と金正恩朝鮮労働党総書記、ロシアのプーチン大統領の三角関係に大きな変化が生じている。プーチン氏が金氏に約1億5千万円ものロシア製最高級車「アウルス」を2台も贈呈するなど両者は蜜月関係であるのに対して、習氏と金氏は今年元旦に新年の祝電交換以来、交流が途絶える一方、習・プーチン間では中国によるウクライナ戦争への消極的な対ロ支持をめぐり、すき間風が吹いている。【相馬勝/ジャーナリスト】
***
消えた中朝友好の「銅の足形」 習近平主席と金正恩総書記の不仲説も
習氏と金氏の不仲説がささやかれるようになったのは、ある出来事が表に出たことがきかっけだった。習氏と金氏が2018年5月に中国東北部の大連市で首脳会談を行った際、両首脳が景勝地の浜辺の道路を並んで歩いて歓談したことを記念した2人の「銅の足跡」がアスファルトで埋め戻されて消えていたのだ。

この大連での首脳会談は、金氏が18年3月、最高指導者就任後初めての外遊となった北京訪問からまだ2カ月も経っていないなか行われたもので、短期間での習氏との2回の首脳会談は習氏が金氏との関係を極めて重視していたことを示しており、「銅の足形」も中国側の提案で造られたものだ。

今年7月に韓国メディアが報じたところによると、付近の住民らは「銅の足形」が消されたのは地方政府当局者の指示で、昨年の秋ごろだったと証言しており、造られて5年以上も経過したあと壊れされたのは、昨年秋までに両者の関係に大きな亀裂が生じたことを暗示している。

金正恩氏「中国はうそつき」とポンペオ米国務長官に発言
それは何だったのか。昨年1月に出版されたマイク・ポンペオ前国務長官の回顧録にそのヒントが書かれていた。そのなかで、ポンペオ氏は18年3月に北朝鮮を極秘裏に訪問した際の金氏と会談内容を記している。

ポンペオ氏が「在韓米軍を撤退させれば金委員長が喜ぶと中国がアメリカにいつも話している」と伝えたところ、金氏は笑ってテーブルを叩きながら、「中国人は嘘つきだ」と述べた。

そして、金氏は「在韓米軍は中国の脅威から自分を守るために必要だ」と述べ、「中国が在韓米軍の撤退を望んでいる理由は、朝鮮半島をチベットや新疆のように扱いたいからだ」と語ったという。

この金氏の発言は習氏にとっては衝撃的だったことは容易に想像できる。「中国人は嘘つき」で、中国が朝鮮半島をチベット自治区や新疆ウイグル自治区のように弾圧するという内容の言葉を米国政府高官に訴えるのは尋常ではない。

習氏は金氏の本心を初めて知ったに違いない。だからこそ、5年以上も保存していた両者の友好の印を破壊させたのではないか。

しかも、金・ポンペオ会談は、初の習・金会談と近い時期に行われていることからも、習氏は金氏の偽善性を強く感じたに違いない。

「朝露軍事同盟」復活に警戒感
その後、習氏は今年の元旦には金氏に祝電を交換するが、習氏はバイデン米大統領とも祝電を交換しており、あくまでも儀礼的なものだ。

習・金両氏の首脳会談は19年6月に習氏が平壌を訪問して以来、実現していない。それは世界的な新型コロナウイルスの流行で北朝鮮が国境を閉鎖していたためともいえるが、流行の終息後、金氏は昨年9月にロシア極東部を訪問したほか、今年6月にはプーチン氏が平壌を訪問し、両者は9カ月間で2回も首脳会談を行っているのに比べて、この間、習・金両氏の首脳会談が1回も行われていないのは極めて不自然だ。

とくに、金氏は6月19日、平壌滞在中のプーチン氏と「包括的戦略パートナーシップ条約」を締結し、いわゆる「軍事同盟」を復活させた。プーチン、金両氏が軍事協力を公然と約し、万一、朝鮮半島で南北間の戦争が起きた場合、ロシアが北朝鮮を助けて軍事介入する可能性が浮上したのだ。

中朝条約の軍事介入条項は死文化したと言われるようになって久しいので、朝露間の新条約により、中朝露3国間の関係は中国に不利な形でバランスが崩れ、これが中国をさらにいら立たせているのは確実だ。

かつて中朝両国は「唇歯相依の関係」あるいは「唇亡歯寒の血と血で固められた同盟関係」ともいわれてきたが、いまでは「唇歯の関係」は朝露両国関係であり、中朝関係は普通以下の関係になってしまった感がある。

北朝鮮労働者の中国派遣に「待った」
これを裏付けるように、韓国の中央日報は中国が7月上旬、北朝鮮に対して、中国内のすべての北朝鮮労働者の本国送還を要求したと報じた。

これを受けて、北朝鮮は中国で外貨を稼ぐ一部の情報技術労働者をロシアに移動させているともいう。

米政府系報道機関「ラジオ・フリー・アジア(RFA)」も、北朝鮮が今年5月ごろから中国国内の北朝鮮大使館などの公館向けに一定年齢以上の労働者らの帰国を急ぐよう指示していたと伝えており、両国間で北朝鮮労働者をめぐる軋轢が生じているのはほぼ間違いないとみられる。

国連安全保障理事会の北朝鮮制裁委員会が3月に発表した報告書によると、北朝鮮は10万人の労働者を海外に送り出すことで、年間7億5,000万ドル(1ドル=約147.77円)から11億ドルを稼いでおり、出稼ぎは北朝鮮にとって極めて重要な外貨源だ。

そのうちの9割は中国に滞在しており、北朝鮮労働者の帰還強要は、習氏の金氏への揺さぶりの一種で、金氏のプーチンとの関係強化に対する不満表明と見てとれよう。

また、習氏はプーチン氏が決めたウクライナ侵攻に対しても、支持を公言するものの、金氏がロシアへの弾薬などの武器供与を積極的に行うなか、習氏は極めて消極的な姿勢を維持しており、習氏とプーチン氏との関係にも異変が生じているようだ。

中国の「洪水避難民救出」提案を拒否
このようななか、7月下旬に中国遼寧省丹東市と国境を接する北朝鮮平安南道新義州市で記録的な豪雨が発生し、鴨緑江の水位が上昇し、新義州の島々に住んでいた北朝鮮住民を中心に1千人以上が死亡する大災害が発生した。それは、実は金氏の判断ミスによる人災との指摘がなされている。

中国側は7月27日、鴨緑江の水位上昇で、下流の北朝鮮の水力発電ダムの水門を開く必要があることが明らかになったとして、北朝鮮側に洪水避難民の救出を申し出たという。

中国の丹東警察当局者は「(北朝鮮の)島の住民を安全に中国に移動させることができる」と語ったが、金氏は「島民が中国に行けば、その後、韓国に逃げてしまう」と語るとともに、「中国による救出や支援は拒否せよ。私が明日、現地に急行する」と指示。

北朝鮮当局はなすすべもなく、ダムの水門を開き、住民が犠牲になるのを見ているほかはなかったという。

金氏が翌28日朝、現地到着したころには多くの住民が流されて、犠牲者が激増してしまった。その失敗を挽回するため、金氏は被災地を回り、急造のテントや食料などの支援を指示し、自身も避難民の中に入り激励したものの、結果的に金氏の判断の遅れで、多くの犠牲者が出る事態となった。

これを糊塗し、住民の反発を招かないよう、金氏は避難民1万3千人を首都平壌に移送し、支援を続けることにしたのだが、いかにも後知恵だ。

北朝鮮では食糧の不足や思想統制強化で、「金王朝」に対する不満が高まっており、金氏自身も「王朝崩壊」への不安を捨てきれないようだ。

このところの中国との関係悪化やロシアとの関係強化も、結局のところ、金氏の中国への猜疑心のなせる業ともいえ、習氏は今後も金氏に悩まされそうだ。【8月23相馬勝氏 デイリー新潮】
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“習氏は金氏の本心を初めて知ったに違いない”・・・それはないでしょう。冒頭にも書いたように、中朝指導者が互いに相手を嫌っているのは昔からの話ですから。

ただ、そうした「本心」をあろうことかアメリカ高官に語り、しかも、それが回顧録として公にされたことに、習近平氏が「あの若造が・・・誰のおかげで「将軍様」でいられると思っているのか」と立腹したのは想像できるところです。

【その後も不協和音が ただし、北朝鮮をめぐる米中などの対応に影響してくるのかどうかは別問題かも】
「消えた足形」「北朝鮮労働者の本国送還」以外にも不協和音が。

****北朝鮮、無線巡り中国に異例反発 局設置計画「違反」と国連へ通告****
中国が北朝鮮との国境近くにFMラジオ放送などに使う無線局の設置を計画していることに対し、北朝鮮が国内の周波数に深刻な干渉を及ぼす恐れがあるとして反対していることが25日分かった。

北朝鮮は事前調整の要請がないとして、国連専門機関に国際規則違反だと通告した。複数の外交筋が明らかにした。中朝間の意見対立が表面化するのは異例。

中朝は今年、国交樹立75年の節目に当たるが、外交筋の間では関係冷え込みが指摘されており、今回の問題にも影響した可能性がある。中国が安全保障分野を含めてロシアに急接近する北朝鮮を快く思っていないとの見方もある。

国際的な周波数管理を担う国際電気通信連合(ITU、本部ジュネーブ)が6月に関係国に公表した情報などによると、中国は自国内に191の無線局の設置を計画している。

外交筋によると、北朝鮮はこのうち中国遼寧省丹東市など国境近くの17無線局を問題視。事前調整がなく、電波の利用方法などを定めた国際ルール「無線通信規則」に抵触すると7月にITUに指摘した。【8月25日 共同】
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****中朝、公用ビザ運用を厳格化 外交免除、北朝鮮側に不満か****
中国と北朝鮮が外交・公用ビザの相互免除制度の運用を厳格化したことが31日分かった。

これまで30日間の滞在期限の超過を黙認している可能性が指摘されていたが、超過に許可申請が必要とする規定を新設した協定が7月下旬に発効した。中国側が協定に言及する一方、北朝鮮メディアは触れておらず、北朝鮮側に不満があるとの見方が出ている。

中国内の北朝鮮人労働者を巡り、中国は滞在期限を守るよう原則的な対応を取っているとされ、厳しい姿勢が外交・公用ビザの免除制度にも反映された形だ。外交筋は、今回の協定が最近、中朝関係をぎくしゃくさせている要素の一つだと分析している。【8月31日 共同】
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こうした“ぎくしゃく”した中朝関係が、北朝鮮をめぐる米中などの対応に影響してくるのか・・・そこはわかりませんが、目立った変化はないかも。

中国にとって北朝鮮・金王朝の存在は、アメリカの影響力が中国国境に及ばないための緩衝地帯ですから、その維持のためには今後とも表面的には「唇亡歯寒の血と血で固められた同盟関係」がアピールされると思われます。
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台湾  「アメリカに防衛費用を支払え!」 トランプ復活で見捨てられるのか?

2024-08-22 22:29:55 | 東アジア
(米ミサイル駆逐艦「ラルフ・ジョンソン」(facebook.com/7thfleetから)【8月22日 フォーカス台湾】)

【緊張が続く台湾海峡】
特に新たな動きがあった訳でもありませんが、台湾をめぐる安全保障に関係する記事を今日いくつか目にしたので、そのあたりの話です。

“新たな動き”ではありませんが、台湾海峡では緊張状態が続いています。

****米駆逐艦、台湾海峡を通過 人民解放軍が監視・警告****
中国人民解放軍は22日、台湾海峡を通過した米駆逐艦を監視し、警告を発したと表明した。

米海軍第7艦隊は駆逐艦ラルフ・ジョンソンが台湾海峡を国際法に従って通過したと発表。通過は「定期的」なものだと表明した。

人民解放軍東部戦区は「法規則に従って(米駆逐艦に)対応」するため海・空軍を派遣したと表明。「東部戦区の部隊は常に厳戒態勢を維持し、国家の主権と安全保障、地域の平和と安定を断固として守る」と述べた。【8月22日 ロイター】
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米軍は“国際法に従って”と、中国側も“法規則に従って”と、互いにその正当性を主張しています。

なお“ドイツ海軍のシュルツ少将は独艦船2隻が来月、台湾海峡を通過する可能性があると明らかにした。命令を待っているという。実行すれば2002年以来となる。”【8月19日 ロイター】とも。

【「アメリカに防衛費用を支払え!」 トランプ氏の台湾軽視発言】
こうした緊張状態にある台湾に関して、「もしトラ」のトランプ前大統領は「台湾はわれわれのチップ・ビジネスを盗んでいる」「台湾は米国に防衛保証の対価を支払うべきだ」と台湾に対し厳しい主張しており、トランプ復活の場合どこまでアメリカが台湾に関与するのか疑問視する見方もあります。

****「アメリカに防衛費用を支払え!」軍事援助の約束を無視したトランプの台湾批判にある危うさ****
トランプが、台湾は米国に防衛の対価を支払うべし、台湾は米国のチップ・ビジネスを盗んでいる等と発言したことにつき、2024年7月17日付の英フィナンシャル・タイムズ紙は、キャスリン・ヒル特派員の解説記事を掲載している。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
トランプ前米大統領は、台湾は米国に防衛保証の対価を支払うべきだと述べた。発言は、台湾に激震を走らせ、アジアにおける米国の同盟国やパートナーにとっての次期大統領選の重要性を浮き彫りにした。

共和党の大統領候補トランプは、ブルームバーグのインタビューで、米軍が提供する暗黙の安全保障に言及しつつ、台湾は「われわれのチップ・ビジネスを盗んで」おり、「(米国に)防衛の費用を支払うべきだ」と述べた。

台湾は武器のほとんどを米国から購入しており、米国の防衛企業にとって最大の市場の一つである。過去1年間、米国議会は軍事援助を認める法案も可決している。

台湾の卓栄泰・行政院長(首相に相当)はこれに対し、台湾と米国は関係をさらに良い方向に発展させることを目指すと述べた。

米国は長年にわたり、台湾の防衛を支援するという曖昧な約束をして、台湾の安全保障の事実上の守護者となってきた。中国は台湾を自国の領土と主張し、台湾が中国の支配に服することを拒否し続ければ攻撃すると脅してきた。

台湾関係法に基づき、米国は、非平和的な手段で台湾の将来を決定しようとするいかなる努力も米国にとって重大な懸念であるとみなし、台湾に防衛兵器を提供し、台湾の安全を脅かす勢力に対抗する米国の能力を維持することを約束している。

バイデン大統領は、米国の台湾防衛へのコミットメントを繰り返し確認し、そのためには軍を派遣するとまで述べた。しかし、トランプは、米国が台湾を中国による攻撃から守るのは「とても、とても難しい」と言った。 

トランプは、台湾のチップ産業が米国のビジネスを犠牲にして繁栄してきたと非難した。トランプは「彼らはわれわれのチップ産業のほぼ100%を奪った。今、われわれは彼らに何十億ドルもの資金を与え、わが国で新しいチップを製造させ、それを彼らの国に持ち帰らせようとしている」と述べた。

米国内で生産をするよう米国から強く求められた台湾積体電路製造(TSMC)は、アリゾナ州に3つの工場を建設するのに650億ドルを投資する。その見返りに、同社は最大66億ドルの補助金と50億ドルの融資を受ける予定だ。

卓行政院長は、軍事費の着実な増加や男子の徴兵制の復活等ここ数年の台湾の自衛力強化の努力を指摘すると同時に、他国からの支援の重要性も強調した。米国の防衛協力と頻繁な支持表明が台湾に「地域の平和と安定に共通の責任を持つ国際社会の一員としての決意をさらに固めさせてきた」とも述べた。
*   *   *
(論評)
米国の「台湾関係法」
(中略)米国政府は台湾との間に外交関係がないにもかかわらず、「台湾関係法」(1979年4月14日)を議会で通過させ、国内法上、実質的に台湾に「防御的性格の武器を供与すること」(第2条)を約束している。

さらには、「台湾関係法」の中には、次のような規定もある。「台湾人民の安全、または社会、経済の制度に危害を与える如何なる武力行使にも対抗しうる合衆国の能力を維持する」(2条B項)。

今日、米国による台湾への武器供与は中台間の軍事バランスを維持する上で不可欠な役割を果たしており、台湾にとって、米国はこの地域の平和と安全を守り、現状を維持する上で不可欠の盟友と言える。また、台湾は主要武器のほとんどを米国から購入している。

武器供与を含む軍事支援の内容については、重要な国家機密に属するため公開されていないものが多い。ただし、はっきりしていることは、米台間で十分な協議が行われた上で価格等も決められるのであり、トランプの言うように、台湾が米国に必要な代価を支払っていないというのは事実に反するのだろう。

防衛へ努力重ねる台湾
台湾は半導体生産の技術大国であるが、トランプは「台湾がもともと米国における半導体技術、生産において、米国の維持していた技術を奪った。今や、台湾は米国の犠牲の上に、拠点工場を米国に移した」と述べて、台湾を非難した。その上で、「台湾は防衛費を支払うべきだ。これではわれわれは保険会社と何ら変わりはない」と不満をぶつけている。

台湾の卓行政院長は、近年台湾は防衛費を増強しており、徴兵制度もそれに見合って変えてきており、台湾政府としてはこれからも台湾防衛のために努力する考えであることに変わりはないと強調した。(中略)

トランプの台湾非難は、米台間の「台湾関係法」以来の歴史を無視した一方的なものと言わざるを得ない。【8月22日 WEDGE】
*********************

台湾の防衛費はGDPの2.45%を占め、GDP成長率を上回る増加となっています。

****台湾25年防衛費は7.7%増、GDP伸び上回る見通し****
台湾の行政院(内閣)は22日、2025年予算案について、防衛費が前年比7.7%増の6470億台湾ドル(202億5000万ドル)になると発表した。域内総生産(GDP)の2.45%を占め、政府の予想する同年のGDP成長率(3.26%)を上回る。

台湾は軍の近代化を重要政策と位置づけており、中国の脅威の高まりに対応し、台湾製潜水艦の開発を含め防衛費を増強する方針を繰り返し示してきた。

25年防衛費には戦闘機の新規購入とミサイル製造増強のための904億台湾ドルの特別予算が含まれる。

25年予算案は、野党が過半数を占める立法院(国会)の承認が必要。

中国は3月、24年国防費を前年比7.2%増の1兆6700億元(2341億ドル)とする方針を示している。今年の経済成長率目標である5%前後を上回る伸びだが、アナリストによると、GDPに占める割合は約1.3%にとどまる。【8月22日 ロイター】
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【ペンス前副大統領のトランプ痛烈批判 一方、トランプ氏のもとで台湾防衛は強化されるとの見方も】
トランプ前大統領の台湾との同盟関係を軽視するような発言に関して、トランプ前政権で副大統領を務め、その後トランプ氏と袂を分かったペンス前副大統領は「危険なほど狭い理解と無知」と痛烈に批判しています。

****ペンス氏、トランプ氏の台湾発言批判 「危険なほど狭い理解と無知」****
米共和党のペンス前副大統領は21日のワシントン・ポスト紙(電子版)に寄稿し、中国が統一圧力を強めている台湾への支援を軽んじるトランプ前大統領の発言について、「世界における米国の役割に対する危険なほどの狭い理解と、米国の離脱がもたらす広範囲にわたる影響への無知を反映している」と酷評した。(中略)

トランプ氏は、米ブルームバーグ通信が7月に公開したインタビューの台湾防衛に関するやりとりの中で、米国と台湾は約1万5290キロ離れているが、中国から台湾は約110キロだと指摘。「我々は保険会社のようなものだ。台湾は我々に防衛費を支払うべきだ」などと不満を示した。

ペンス氏らは寄稿で、「共和党内で台湾やその他の同盟国を見捨てることを主張する、厄介な孤立主義の傾向が表れつつある」と指摘した。

トランプ氏の台湾との距離に関する発言を挙げて批判し、台湾が中国に統一されれば米国の安全保障の約束は「空約束」とみなされ、米国に中国を阻止する能力も意思もなければ多くの国は自国防衛のために核兵器開発に向かうと説明。このため核軍拡競争を引き起こす可能性があるなどと警告した。

そのうえで「米国は台湾を断固として支援しなければならない。それが米国の国益にかなうからだ」と強調。トランプ氏らを念頭に「孤立主義者に惑わされている余裕はない」と訴えた。

ペンス氏はトランプ氏を副大統領として支えたが、2020年大統領選の敗北を覆そうとしたトランプ氏への協力を拒否し、21年1月の連邦議会襲撃事件後にたもとを分かった。【8月22日 毎日】
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トランプ前大統領が同盟関係を軽視しており、台湾を見捨てる・・・との見方に対し、それは誤解であり、むしろ台湾防衛を強化する考えだとの反論も。 ただし、そのような考えはトランプ氏自身ではなく、“トランプ氏に近い外交・安全保障の専門家たち”や“トランプ氏に近いシンクタンク”の考えのようですが。

****対中戦略骨子案に「台湾の独立」トランプ氏に近い外交・安保チームが戦略の柱に 見捨てるどころか防衛強化示す****
わが国は、中国、北朝鮮、ロシアという「3つの核保有国」の脅威に直面している。この脅威に対応するためにも、外交・安全保障、特に米国との関係が極めて重要になる。 厄介なのは、米国の動向についての日本のマスコミ報道は一方的なものが多いということだ。

(中略)日本のマスコミの多くは、民主党ひいきの報道が多い一方、トランプ氏に対しては否定的だ。そのためか、「米国第一」のトランプ氏が再選されると、日米同盟がおかしくなるだけでなく、「台湾などは見捨てられるのではないか」みたいに誤解している人もいる。

だが、トランプ氏に近い外交・安全保障の専門家たちと話をすると、台湾を見捨てるどころか、台湾防衛を強化するつもりだ。

日本では、外交・安全保障政策を官僚たちが作成することが多いが、米国の場合は民間シンクタンクが担当している。トランプ氏に近いシンクタンクの1つが「米国第一政策研究所(AFPI:America First Policy Institute)」だ。このメンバーが今年1月に訪日した際、「中国共産党の悪意の影響に対抗する」と題した10項目の対中戦略骨子案を持参してきた。

戦争が嫌いなトランプ氏らしく、貿易、金融、経済、インテリジェンスなど非軍事手段によって中国に対抗しようとしているが、台湾について以下のように記されている。

《9 台湾人の政治的孤立を解消すること 台湾は、米国の正式な外交関係を持たない唯一の民主主義国家である。われわれは台湾との外交、文化、経済的な結びつきを奨励し、巨大な共産主義国家である隣国の脅威にさらされている、小さくて成功した中国民族の民主主義国家である台湾を支援することの重要性について、米国民を教育すべきである》

米国民の「教育」掲げ
台湾防衛について米軍が関与するためには、米国世論と議会の支持が必要だ。そこで米軍が関与できるよう、米国民に「教育」すべきだとしている点がポイントだ。

《10 台湾の独立を維持するために必要な軍事支援を台湾に提供すること 米国は、台湾の自衛を強化するという公約を守り、台湾が中国共産党の侵略から自国を守るために必要と考えられる防衛装備品や訓練の取得を妨げる制限を撤廃しなければならない》

まず、「台湾の独立(Independence)」と書いている点に注目してほしい。そして、台湾の自衛を強化するため、中国大陸への反撃能力を含む防衛装備品の輸出と軍事訓練の提供を解禁すべきだと主張しているのだ。

要は、「台湾有事」への備えが、トランプ氏に近い外交・安保チームの対中戦略の柱なのだ。日本も台湾に関して思い切った安全保障政策を打ち出さなければならなくなるだろう。【8月22日 江崎道朗氏 夕刊フジ】
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トランプ前大統領がそうした理論的な思考を無視するかのように、直観的行動、取引重視の行動に走りやすいことは前政権でも明らかになったところです。

【懸念される台湾軍人と中国の“緊密”な関係】
台湾自身の防衛努力に関しては、防衛費の伸びの数字などをあげましたが、一方で台湾軍人と中国の間の“緊密”な関係が懸念されています。

****台湾軍人が中国に機密情報売り渡すスパイ組織構築 8人に実刑 軍用ヘリで亡命計画も****
台湾の退役・現役軍人が軍の機密情報を中国側に売り渡すスパイ組織を構築していたとして、台湾高等法院(高裁)は22日、8人の被告に対し最高で懲役13年の実刑判決を言い渡した。このうち陸軍航空部隊の現役中佐は軍用ヘリで中国側に亡命する計画を立てていた。

台湾高等検察署(高検)や台湾メディアによると、スパイ組織は主犯とされる台湾の退役軍人が中心となり2021年以降に構築。10人が収賄罪や軍事秘密交付罪などで起訴され、22日の判決ではうち1人が無罪となった。主犯とされる退役軍人は海外に逃亡し指名手配されている。

懲役9年の判決を言い渡された陸軍航空特戦指揮部の中佐は、大型輸送ヘリ「CH47チヌーク」を操縦して中国に投降するよう教唆され、そのための計画を練っていたという。また別の現役軍人の被告は、指示を受けて「中国人民解放軍に投降したい」と語る動画を撮影していたという。【8月22日 産経】
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以前、「(台湾)軍幹部の9割ほどは退役後、中国に渡る。軍の情報提供を見返りに金稼ぎし、腐敗が常態化している」という日経記事に台湾側が激怒するということもありました。

****「それでも中国が好きだ」 台湾軍に潜む死角****
台湾、知られざる素顔①

「おかげで中国での商売が駄目になった。レストランは閉め、台湾に帰って出直しだ」
台湾人の50代男性、鄭宗賢(仮名)は最近まで中国に脅されていた。2010年代、台湾軍で幹部を務めた鄭。退役後は「軍幹部OBのお決まりのルート」(軍関係者)に乗り、中国で商売を得た。台湾軍の情報を中国側に提供できるうちは商売は順調だった。

だが次第に行き詰まる。軍を離れ、中国に提供できる情報が減ったからだ。同じ台湾軍に入隊した息子に情報を頼ったが、息子は応じなかった。

「用無し」となった鄭に、中国は容赦しない。レストランは当局の嫌がらせで閉鎖に追い込まれた。だが鄭は「それでも中国が好きだ。恨みはない」と振り返る。

台湾統一を掲げる中国が実際に軍事侵攻したら――。向き合う台湾軍の事情は複雑だ。
もともと中国がルーツ。49年、国民党軍は共産党軍に敗れ、台湾に逃れた。中国大陸の奪還を誓ったが、夢に終わる。国民党軍は結局、台湾を守る「台湾軍」として衣替えを余儀なくされた。

その屈辱が軍内に強く残る。「我々こそ中国だと、今なお台湾独立に反対する教育が軍内で盛んだ」(軍事専門家)
17万人を抱える台湾軍では将校などの幹部も依然、中国人を親などに持つ中国ルーツの「外省人」が牛耳る旧習が続く。歴代国防部長(大臣)も外省人がほぼ独占する。

「そんな軍が有事で中国と戦えるはずがない。軍幹部の9割ほどは退役後、中国に渡る。軍の情報提供を見返りに金稼ぎし、腐敗が常態化している」(関係者)。鄭もそんな一人だった。

1月初旬。台湾高等検察署(高検)高雄分署は台湾軍の機密情報を中国側に漏らしたとして、元上校(大佐)と現役将校の計4人を拘束した。

2週間後には元立法委員(国会議員)の羅志明と海軍元少将が、台湾高雄地方検察署(地検)に取り調べを受けたことが判明。中国の統一工作などに便宜を図ったとされた。2021年には国防部ナンバー3の副部長(国防次官)の張哲平まで捜査対象となった。

「いまだに中国に協力するスパイが軍に多いことが台湾最大の問題だ」。ある陸軍OBはこう明かす。米国が長年、台湾への武器売却や支援に慎重だったのも中国への情報流出を恐れたためだ。(後略)【2023年2月28日 日経】
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台湾側はこうした報道内容を否定していますが、記事を裏付けるような事件がたびたび明らかになるのも事実です。
これが実態なら、中国の侵攻阻止なんて絵空事にもなってしまいます。

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韓国  伊大統領、日本植民地支配の韓国近代化への役割を重視する新保守・ニューライト系を重用

2024-08-15 22:59:42 | 東アジア

(光復節に放映された『蝶々夫人』のワンシーン【8月15日 中央日報】 KBS(韓国放送公社)が光復節(解放記念日)を迎えた15日0時から、全編着物が溢れ、「君が代」も登場するオペラ『蝶々夫人』を放映して批判を受けている。)

【伊大統領 「光復節」式典で日本批判なし】
8月15日は日本では終戦記念日ですが、韓国では日本の植民地支配からの解放を記念する「光復節」が祝われます。

韓国では、対日関係を重視し、北朝鮮への強硬な対応を主張する保守・尹錫悦大統領に反発する前政権同様の反日的野党の対立が深まっているのは周知のところですが、「光復節」式典もその分断を象徴するものとなっています。

****韓国大統領演説で日本批判なし 「統一ビジョン」表明 光復節式典で*****
韓国で15日、日本の植民地支配からの解放を記念する「光復節」の式典が政府主催で開かれ、尹錫悦(ユンソンニョル)大統領が演説した。尹氏は南北統一に向けた「ビジョン」を表明し、演説の大半をその説明に充てた。

光復節の大統領演説では、歴史問題などを巡る対日批判を盛り込む例が多かった。だが対日関係を重視する尹氏の演説では昨年に続き、日本批判は皆無。韓国の1人当たり国民総所得(GNI)が2023年に初めて日本を上回ったことなど、経済関連の指標に触れただけだった。光復節の演説で日本に関する考え方に言及しないのは異例。

尹氏は、朝鮮半島に「自由で民主的な統一国家が作られる日に初めて完全な光復が実現する」と強調した。

統一ビジョンの具体策として、北朝鮮住民の間に変化を促すことが重要だと指摘し、外部情報へのアクセス拡大などを推進すると述べた。また、南北当局が緊張緩和などを実務レベルで話し合う「対話協議体」の設置を提案した。

統一実現には国際社会の協力が不可欠だとして「同盟国・友好国との自由の連帯を強固にしながら、統一への共感を形成するために努力する」と述べた。

一方、進歩系の最大野党「共に民主党」や「祖国革新党」など、保守系の尹政権の対日政策に批判的な野党各党は式典を欠席し、別の場所で集会を開催。対日姿勢を巡る韓国国内の分断があらわとなった。共に民主党の朴賛大(パクチャンデ)代表代行は15日、尹政権を「親日売国政権」だと批判した。【8月15日 毎日】
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なお、伊大統領は14日の元慰安婦らを「たたえる」式典にも昨年同様参加せず、メッセージも送っていません。

****韓国で元慰安婦らを「たたえる日」 尹錫悦大統領のメッセージなし、関心は低下傾向****
韓国で元慰安婦らを「たたえる」公式記念日に指定された14日、全国各地で関連行事が開催された。ソウルでは女性家族省主催の式典も開かれたが、尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領は過去2年と同様に不参加で、メッセージも寄せなかった。

元慰安婦支援団体を巡る相次ぐ不祥事もあり、2017年にこの日を国の記念日に制定した文在寅(ムン・ジェイン)前政権時代と比べ、記念日に対する政府や世論の関心は低下傾向にある。【8月14日 産経】
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「光復節」の式典で伊大統領が対日批判に言及していないのは、対日関係を重視しているだけでなく、経済成長によって日本を乗り越えたという「克日」への自信の表れとも指摘されています。

****解放記念日演説で歴史問題に言及せず 対等に競争できる「自信」誇示=尹大統領****
(中略)韓日・韓米日の協力と北朝鮮の政権批判のメッセージが目立った昨年の光復節とは異なり、今年は演説全体を「北の住民の自由を拡大することで統一を成し遂げる」という内容に割き、日本と北の政権に対する直接的な言及はなかった。

韓国は経済成長を通じて日本と対等な力をつけており、韓日関係についてあえて触れないのは日本を乗り越えたという「克日」への自信の表れといえる。

大統領室の関係者は演説について、「韓国が自由価値を基盤に経済成長を成し遂げ、日本と対等に競争できるほど大きくなったという意味が含まれている」と説明した。

また、「わが国の若者と未来世代は日本に旅行して日本の若者と交流し、善意の競争を繰り広げている」として「過去の歴史に対しては堂々と指摘し、改善していかねばならないが、われわれがさらに大きくなり、より大きな未来を見つめながら国際社会の歓迎を受け、日本との協力をけん引していくことが真の克日」と強調した。【8月15日 聯合ニュース】
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過去の歴史に対しては堂々と指摘し、改善していかねばならないが、日本とも協力しつつ、対等な関係で善意の競争を行う・・・「正論」です。

【異例の分裂式典】
ただ一方で、日本の植民地支配を受けた立場として、日本に対し徹底してその責任を追求する・・・というのも(日本からすれば辟易するところもありますが、植民地支配を重視する立場からすれば)また「正論」です。

尹政権の対日政策に批判的な野党各党は政府主催の式典を欠席し、別の場所で集会を開催する異例の「分裂」式典となりました。

****解放記念日式典が異例の「分裂」 与野党が非難の応酬=韓国****
韓国政府は15日、日本の植民地支配からの解放記念日「光復節」を迎え、ソウルの世宗文化会館で記念式典を開催した。式典には独立功労者の遺族や各界の要人、駐韓外交団など約2000人が出席したが、独立運動に関する遺物や資料を保存・展示する独立記念館の館長人事に反発する一部の関連団体と、最大野党「共に民主党」をはじめとする野党関係者は欠席し、独自に式典を開いた。(中略)

(政府主催式典には)政界からは、与党「国民の力」の韓東勲(ハン・ドンフン)代表と秋慶鎬(チュ・ギョンホ)院内代表など与党の国会議員約50人が出席。野党からは「改革新党」の許垠娥(ホ・ウナ)代表のみが出席した。

政府の式典と同時刻に、(独立功労者と遺族でつくる)光復会などの団体は約3.4キロ離れたソウル・孝昌公園内の白凡金九記念館で独自の式典を開いた。

光復会の李鍾贊(イ・ジョンチャン)会長は演説で「近ごろ真実に対する歪曲(わいきょく)と親日史観に染まった低劣な歴史認識が幅をきかせ、韓国社会を混乱に陥れている」と述べ、独立記念館の館長人事に抗議するために式典を政府とは別に開催したと説明した。

式典には光復会の会員や独立運動家の遺族など約350人のほか、最大野党「共に民主党」や野党「祖国革新党」「基本所得党」などの関係者約100人も出席した。

共に民主党の朴贊大(パク・チャンデ)代表職務代行はこの日出した声明で「尹錫悦政権が行っている『歴史クーデター』で独立闘争の歴史が否定され、韓国のアイデンティティーが根本から揺らいでいる」と批判した。

一方、国民の力の首席報道官は論評で、野党関係者が政府の式典を欠席したことについて「対立と分裂を助長する政治的扇動に余念がない」と指摘。消耗的な政争をやめ、統合と和合の道に進むよう促した。【8月15日 聯合ニュース】
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【伊政権が進める独立記念館の館長人事をめぐる対立】
政権・与党と野党の対立、伊大統領の対日政策をめぐる批判は今に始まったことではありませんが、今回の分裂式典の直接の原因となったのは伊政権が進める独立記念館の館長人事です。

独立記念館の館長に任命された金亨錫(キム・ヒョンソク)氏は、批判勢力からは日本による植民地支配を擁護する「ニューライト(新保守)」系の人物と評されています。

****「植民地支配を正当化」と非難浴びる独立記念館長 「魔女狩り」と反論=韓国****
韓国で独立運動に関する遺物や資料を保存・展示する独立記念館(忠清南道天安市)の館長人事を巡り、日本による植民地支配を美化する「ニューライト(新保守)」系の人物が任命されたとして関連団体や野党が強く反発している。

館長に任命された金亨錫(キム・ヒョンソク)氏は12日に記者会見を開き、「私は独立運動家をこき下ろし、植民地支配を擁護する意味で言うニューライトではない」として、「魔女狩りをするように人民裁判を行っている」と反論した。

国家報勲部は6日、独立記念館長に金氏が任命されたと発表した。だが、独立功労者と遺族でつくる団体「光復会」などの関連団体は金氏が「植民地時代に韓国の国民は日本の臣民だった」と発言したほか、李承晩(イ・スンマン)大統領が韓国政府樹立を宣言した1948年を「建国」の起点と主張したとして、植民地支配を正当化したと非難。

金氏の任命撤回を求め、今月15日に開かれる「光復節(植民地支配からの解放記念日)」の政府式典に出席しないと表明する異例の事態に発展した。最大野党「共に民主党」を含む野党も式典に参加しない方針を明らかにしている。

金氏は会見で独立記念館長の面接について、植民地時代の韓国国民の国籍を問う質問に「植民地時代の国籍は日本」とし、「国権を取り戻すため独立運動が行われた」と回答したと説明。光復会などがこの回答を「韓国国民は日本の臣民だったと主張した」とねじ曲げ、植民地支配を正当化したと非難していると指摘した。

また、ニューライト側が主張する48年の政府樹立を記念する「建国節」の制定には反対するとし、「韓国の建国は1919年の臨時政府樹立から始まり、48年の政府樹立で完成した」との見解を示した。

金氏は「光復会が私を(ニューライトだと)罵倒している」として、誹謗(ひぼう)中傷に対する法的対応を検討する考えを明らかにした。 そのうえで、辞任する考えはないと表明した。【8月12日 聯合ニュース】
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独立記念館の人事をめぐっては、以前から館の主旨にそぐわない日本植民統治を擁護するニューライト系の人物が起用されているとの批判がありました。

****「日本植民統治を擁護」した落星垈経済研究所長、独立記念館の新たな理事に*****
韓国の国家報勲部傘下の独立記念館の新任理事に落星垈経済研究所のパク・イテク所長が任命された事実が20日、明らかになった。

落星垈経済研究所は、植民地近代化論を擁護し議論になった本『反日種族主義―日韓危機の根源』の著者などニューライト系を代表する学者たちが布陣した研究団体で、同研究所の所長を独立記念館理事に任命したことは独立記念館のアイデンティティを損なうという批判の声があがっている。(中略)

落星垈経済研究所は1987年、アン・ビョンジ・ソウル大学教授を中心に設立された。1990年代初め、旧ソ連解体後に急激に右傾化の道を歩み、韓国社会でニューライトの思想的、理論的陣地の役割を果たしてきた。

2019年には、日本軍「慰安婦」被害と日本による植民地時代強制動員の強制性を否定し、植民地近代化論を主張する本『反日種族主義』が出版されたが、同書の代表著者であるイ・ヨンフン元ソウル大学教授と共同著者のキム・ナクニョン東国大学教授、イ・ウヨン落星垈経済研究所研究委員などが同研究所に所属しており、批判の対象にもなった。

植民地近代化論は、韓国が日本に強制占領された植民地時代に、日本によって経済が成長し、近代化の土台が設けられた点を認めようという主張だ。同研究所は1980年代後半と2000年代半ば、日本のトヨタ財団の支援を受けて植民地研究も進めたことがある。

韓国経済史を専攻したパク・イテク所長は、同研究所が出した『韓国の長期統計:国民勘定1911~2010』の執筆にも参加した。長期統計で韓国近現代経済史100年をまとめた同書は、植民地時代の近代的経済成長が実現したという点を実証し、植民地近代化論を裏付ける根拠資料にもなった。

このようなことから、落星垈経済研究所出身の人物が日帝に抵抗した独立運動精神を称える独立記念館理事に任命されたのは不適切だと指摘する声もある。

独立運動家の李康年(イ・ガンニョン)将軍の子孫、キム・ガプニョン独立記念館理事は、「パク所長は独立運動の精神と価値を正しく理解しておらず、日本の植民地近代化論を主張する経済学者として知られている。落星垈経済研究所の(活動は)独立記念館の目的と相反するもので、独立運動家の犠牲と献身を無視する行為だ」と批判した。

光復会関係者も「日本の立場で植民地近代化論を説く研究所の所長を独立記念館理事に任命したのはとんでもないことで、直ちに撤回されるべきだ」と語った。

今回の任命は、ニューライト出身の人物を要職に抜擢してきた現政権の理念偏向的な人事方式の流れを受けている。先月任期が終わったハン・シジュン独立記念館館長の後任人選も残っており、パク所長の任命と類似した人事がなされるのではないかという懸念も高まっている。

パク所長は20日夕方、報勲部を通じて「私は韓国人が被支配民族という状況の中でも政治的・産業的啓蒙を成し遂げ、独立国家を樹立し、先進国の一員に浮上する歴史的過程を経済史家として研究してきた」と述べた。【2月21日 ハンギョレ】
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【ニューライト系学者を重用する伊大統領】
韓国における新保守ニューライトの動き、伊大統領と新保守ニューライトの結びつきについて、批判する左派からは以下のようにも指摘されています。

****尹錫悦政権はなぜニューライトをひいきするのか****
国史編纂委員会、韓国学中央研究院、独立記念館、東北アジア歴史財団。この4つの機関の共通点が一つある。尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権によってニューライト系列の学界関係者が機関長に最近任命されたことだ。

独立運動を研究・記念しなければならない独立記念館の館長まで独立運動の意義をあまり認めないニューライトの人物を任命した政府に光復会が強く抗議したのに続き、保守系新聞の「東亜日報」まで政府のこの決定を批判した。尹錫悦政権のニューライトびいきに、多くの保守主義者たちも違和感を覚えているほどだ。 (中略) 

進歩色の強い独立運動を軽視または否定し、日帝強占期における労働者と農民の苦痛よりも、一部の土着エリートの華麗な出世街道と「朝鮮の文明化」を強調することは、ニューライト史観の重要な要旨だ。このようなニューライトを、保守日刊紙の指摘を受けてまで、尹政権がひいきしてきた理由は何だろうか。  

ニューライトの「歴史運動」が結集したのは、盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権時代の2004~2006年だった。本質的にこの運動は、多数の市民の明示的または黙示的な要求によって盧武鉉政権が進めてきた親日(編集者注:附日。日本統治時代に日本帝国に加担・協力した反民族行為)の真相究明に対する保守既得権層の組織的対応と言っても過言ではない。

韓国の既得権勢力の物理的ないし制度的な「先祖」らの相当数は、日帝強占期に総督府に直接加担したか、あるいは少なくとも植民地権力との対立を避けつつ財産を増やし権威を築くのに勤しんだ。

親日の真相究明は族閥メディアや主要財閥、宗教界、学界などに存在する植民地的「根っこ」に対する不都合な質問を投げかけざるを得ず、それだけ韓国の既得権勢力の「大義名分」を脅かした。既得権勢力は大規模な反撃に乗り出すしかなかった。

彼らが望んだのは、親日を問題化するどころか、むしろ美化する新しい論理で、韓国社会全体を取り込むことだった。  

彼らに論理を提供できる学者の中には、悲劇的にも転向した過去のマルキシストが一部含まれていた。今はかなり乗り越えられたが、過去に一部の欧米圏と日本のマルクス主義者たちは西欧中心主義に傾倒し、西欧と日本以外の地域が「アジア的生産様式」で停滞に陥っており、植民化しなければ自ら近代に進むことができなかったと考えた。

(中略)このような見解からすると、基本的な私有財産制度さえ確立していない「停滞に陥った」奴婢王国朝鮮に、近代資本主義を移植し「文明化」させることができた勢力は日本帝国主義勢力以外にはなかった。したがって親日は「祖国文明化のための愛国」へとたやすく姿を変えることができたのだ。  

この史観の世界史版は尹政権にとってさらに利用価値の高いものだ。ニューライトの日帝合理化は、究極的に彼らの近代資本主義と帝国主義に対する肯定一辺倒の態度と結びついている。

日帝だけが正当化されるのではなく、私企業と私有財産に根差した近代資本主義文明そのものが人類にとって「祝福」とみなされるのだ。

一方、私有財産を否定した革命に政権の由来を置き、私企業を国家に服属させる中国や北朝鮮は「文明の敵」とみなされる。

このような二分法と世界体制の覇権国家とその地域的同盟勢力に対する無条件的な美化は、尹錫悦政権の外交的構想と完璧に合致する。尹錫悦政権の北朝鮮に対する超強硬対決路線や、中国からの無理かつ多分に人為的なデカップリング(分離)は、中国と北朝鮮を悪魔化する史観で完璧に合理化される。

さらに、日本と事実上の軍事同盟を結ぼうとする路線と米国に盲従する路線は、米国と日本を「資本主義文明の伝道師」と位置づける史観で正当化される。そのような意味で、ニューライト史観は、尹錫悦政権の国政哲学の「基本精神」に近い。(後略)【8月14日 朴露子氏 ハンギョレ】
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****「竹島は韓国領ではない」「慰安婦はうそ」韓国でニューライト系学者が活躍=韓国ネット「日本より厄介」***
2024年8月15日、韓国・MBC NEWSは「尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権でニューライト(新右派)系の学者が活躍している」と伝えた。

報道によると、落星台経済研究所理事のイ・ヨンフン元ソウル大教授は、朝鮮時代の地図の独島(竹島の韓国名)の位置が現在と違うという理由から「独島は韓国領とはいえない」と主張。その上で「ただし日本領ともいえないため、日韓両国が互いに譲歩しよう」と提案している。(中略)

また、イ元教授が中心となって落星台経済研究所が発刊した「反日種族主義」には、「日本による収奪はなかった」「強制動員や慰安婦はうそだ」などの内容が盛り込まれている。イ元教授は先月に東京で開催された慰安婦問題をめぐる国際シンポジウムでも「慰安婦は売春だった」と主張したという。

その他にも、「反日種族主義」の共著者であるチョン・アンギ氏は「テロリスト金九(キム・グ、朝鮮の独立運動家)」と題する本を出版する。

別の共著者で「日帝(大日本帝国)による米の収奪は輸出だった」と主張するキム・ナクニョン落星台経済研究所理事長は先月、韓国の3大歴史機関とされる韓国学中央研究院の院長に就任した。

「日帝の通信産業が韓国の近代化の土台になった」と主張するパク・イテク落星台経済研究所所長は今年2月に独立記念館の理事に選任されたという。

この記事を見た韓国のネットユーザーからは「韓国に生まれて韓国の教育を受けて育ったのに、なぜそんなことを言うのだろう?同じ民族ではないのか?日本人でもおかしいのに、韓国人がそんな発言をするなんて全く理解できない」「日本よりも厄介なのが親日派」(中略)など批判的な声が多数寄せられている。【8月15日 レコードチャイナ】
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韓国ニューライトは、単に根深い「反日」に対する「逆張り」「アンチ」的なものなのか、「反日」を克服して今後韓国社会を主導する理論となりうるのか・・・?
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