孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

エジプト  ナイル川水資源をめぐる対立 エチオピアのダム建設に“歴史的権利”を振りかざす錯誤

2013-09-30 22:44:54 | 北アフリカ

(2017年完成予定のグランド・エチオピアン・ルネッサンス・ダム  イタリアの国旗が見えますのでイタリア企業が請け負っているのでしょうか。 旧宗主国と旧植民地の関係は未だに強いものがあるのでしょうか。 “flickr”より By News Agency http://www.flickr.com/photos/44858852@N04/8956273110/in/photolist-eDreXU)

【「エジプトは世界が変わっていることに気付くべきだ」】
人間が生きていくうえで必要不可欠なものが“水”。
それだけに、水をめぐる争いは古今東西で絶え間なく起きていますが、人口増加、それを支える農業開発や電力の必要性などから、将来的には水資源をめぐる争いが国際関係において最も主要な問題になるであろうとも予測されています。

現在でも、上流でのダム建設が下流への不利益をもたらすとして、国際河川をめぐる利害対立は世界の各地で起きています。
このブログでもしばしば取り上げたメコン川をめぐる中国とその他流域国、あるいは流域国内での上流国と下流国の対立、ブラマプトラ川を巡る中国・インドの開発競争、ガンジス川をめぐるインドとバングラデシュの対立、ナイル川を巡るエジプトと上流国の対立・・・など。

ナイル川を巡る対立についても、2010年5月20日ブログ「ナイル川の水資源利用に関する上流国と下流国の対立」(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20100520)で取り上げました。

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古代ギリシャの歴史家ヘロドトスは、著書『歴史』のなかで、「エジプトはナイルの賜物」と書いています。現在のエジプトにとっても、ナイル川は貴重な水源です。エジプト国内で一年間に消費される水のうち、86%は青ナイルの水で、14%は白ナイル川の水で賄われています。【「互敬の世界へ」(http://gokei.seesaa.net/article/149919865.html)より】

ただ、ナイルの水が貴重なのはエジプトだけでなく、ナイル上流国も同様です。ナイル川はアフリカ大陸の10カ国を流れる国際河川です。・・・・・【2010年5月20日ブログより】
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具体的に今問題となっているのが、青ナイル上流にエチオピアが建設を進めるグランド・エチオピアン・ルネッサンス・ダムです。

ナイル川の水利用に関する国際協定には、1929年にエジプトと当時東アフリカを植民地としていたイギリスが結んだ協定と、1959年にエジプトとスーダンが結んだ協定の二つが存在します。

59年協定では、ナイル川の水の75%をエジプトが、25%をスーダンが利用できるとし、他の流域国の取り分については、「要求があれば共同で対処する」としています。

また、29年協定では、エジプトは自国の取水に影響が出る上流国でのナイル川関連事業などに対し実質的な拒否権を行使できるとしています。

ただ、当然ながら上流国には不満があります。
2010年に、ナイル側の新たな取水割当量を定める協定がエジプトを含む関係国で協議されましたが、流域国は他国に悪影響を与えない範囲で自由に水を使えるとする新協定に上流国のルワンダ、エチオピア、ウガンダ、タンザニアの4か国は署名したものの、下流の既得権益国エジプト、スーダンは拒否しています。

****エジプトとエチオピア、ダム建設で対立****
「エチオピアは我々を殺す気だ」と、エジプト、カイロの悪名高い渋滞をすり抜けながら、タクシー運転手のアハメド・ホッサムさんは言う。
「エチオピアがダムを建設したら、ナイル川は干上がる。ナイルが干上がったら、エジプトは終わりだ」。

総工費47億ドル、全長1.7キロに及ぶ「グランド・エチオピアン・ルネッサンス・ダム」(Grand Ethiopian Renaissance Dam)の建設計画は、多くの激しい反対に遭っている。しかし、青ナイル川をせき止めるダム計画に大半のエジプト人が抱く不安や怒りは、中でもひときわ激しいものがある。

エチオピアの水力発電プロジェクトは、エジプトの“歴史的権利”を侵害しているという。
すなわち、エジプトがナイル川の水の約4分の3を利用することを取り決めた1959年の協定に違反しており、また、ほかにほとんど水源をもたないエジプトの存亡を脅かすというのがエジプトの主張だ。

対するエチオピアにとって、ダム建設は国家の威信をかけた事業であり、1980~90年代に同国を襲った大飢饉からの再生の象徴だ。

◆水を巡る激しい対立
エチオピアは、ナイル川下流に位置するエジプトとスーダンがダムを懸念する必要はないと主張している。今回の計画は、上流9カ国がほとんど水を使えない従来の不公平な水利用協定を是正するものに過ぎないというのだ。

しかし、このような地域力学の変化は、エジプトにとって承服しがたいものだ。何十年もの間、エジプトは周辺地域への影響力を行使して、貧しい上流の近隣国によるダム建設計画を阻止してきた。
過去には、世界銀行のような国際機関が水力発電事業に出資したこともあるが、このような論争の火種に関わるのを嫌って手を引き、エジプトに事実上の拒否権を与えてきた。

しかしここ数年、「アラブの春」の余波で経済および政治不安が続き、国力が低下している今のエジプトには、再生したエチオピアに対抗する余裕はない。

「エジプトの真水の98%は国外から供給されており、エジプトが有する影響力はきわめて小さい」と、カイロにあるシグネット・インスティテュートの政治経済アナリストであるアンガス・ブレア氏は述べる。「問題の答えは、近隣国との協力にある」。

しかし今のところ、エジプトはおおむね好戦的な態度を貫いている。国営および民間メディアは、エジプト国民のエチオピアに対する激しい反感を煽っており、政治家たちの発言もそれに劣らず攻撃的だ。

「ダム建設は宣戦布告に等しい」と、2013年6月にヌール党幹部は述べ、このままダム建設を継続するなら、エジプトはエチオピア国内のさまざまな分離独立運動を支援してはどうかと提案した。

また、当時のエジプト大統領ムハンマド・モルシも、7月初めに軍のクーデターによって解任される直前、「あらゆる選択肢の可能性がある」と発言し、間接的な圧力をかけていた。

一方、エジプトの南隣にあるスーダンは、それまでの反対姿勢から一転、ダム建設に支持を表面している。「スーダンはダム建設が自国の利益になることを理解している」と、オックスフォード大学でアフリカ政治を教えるハリー・バーホーベン氏は述べる。「ダムができれば、スーダンが切望している安価なエネルギーが輸入できるようになる」。
「エジプトも苦渋の決断を下すべきだ。ダムを危惧するのでなく、自分たちが伝統的に軽んじてきた地域に接近する機会ととらえるべきだ」。

エジプトのホスニ・ムバラク元大統領は、アフリカの近隣諸国を軽視してきたとして非難されることが多く、エジプトはアラブ世界を重視し続けてきたことの代償を今になって支払わされていると見る向きもある。

◆水は確保されるのか
それでも、エジプトの懸念は決して的外れなものではない。エジプトの人口は2050年には現在の倍近い1億 5000万人に増える見込みで、水の需要もそれだけ急増するのに、ダムができれば供給量は制限される。

ダムがエジプトに損害を与えるというのは「非現実的な考え」だとエチオピアは主張するが、少なくとも(ダムが満水になるまでの)数年間は、エジプトとスーダンに流れる水の量が減るのは確実だ。

エジプトは、エチオピアのダムに水がたまることで、自国のナセル湖の貯水量が減少する(ひいては、エジプトのアスワンにある巨大な水力発電所の発電力が低下する)ことを懸念している。「エチオピアがダムを建設すれば、アスワン・ハイ・ダムの発電量は40%近く低下するだろう」と、カイロ大学の農学教授ナデル・ヌーレディン氏は述べる。

エチオピア当局によると、ダムは現在20%完成しており、2017年には完成予定だという。グランド・エチオピアン・ルネッサンス・ダムは、どうやらこのまま建設されそうだ。

しかし建設後のことは、エジプトが環境の変化にいかに適応するかにかかっている。「エジプトは世界が変わっていることに気付くべきだ」とバーホーベン氏は述べている。「これは問題にするべき事柄ではない」。【9月30日 ナショナルジオグラフィック 公式日本語サイト】
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【「エチオピアの内政に干渉する必要がある」】
エジプトの“政治家たちの発言もそれに劣らず攻撃的だ”という件については、モルシ前大統領との“非公開”会議でなされた「妨害工作」に関する発言が、誤ってテレビ生中継されるという珍事も起きています。

****エチオピアへの「妨害工作」、エジプト政治家らがテレビ中継知らずに議論****
エジプトのムハンマド・モルシ大統領の会合に出席した政治家らがテレビで生中継されているのを知らずにエチオピアのダム建設を妨害する方法について議論を交わし、騒動となっている。

大統領補佐官は、政治家らにテレビ中継のことを知らせるのを忘れたと謝罪した。「議題の重要性を考えて、直前に会合を生中継することが決まった。その変更を出席者に伝えるのを忘れた。政治指導者たちに恥ずかしい思いをさせたことを謝罪する」と、大統領政務担当補佐官のパキナム・エルシャルカウィ氏はツイッターで述べた。

モルシ大統領が議長を務めた会合は、エチオピアが巨大ダムを建設するために青ナイル川の迂回路を作る決定を下したことについて、エジプト、スーダン、エチオピアの3国が参加した委員会がまとめた報告書をめぐって議論が進んだ。巨大ダムが建設されれば、下流のエジプトとスーダンに多大な影響を及ぼす恐れがある。大型のテーブルの周りに座り、この会合が非公開であると考えていた政治家たちは、ダム建設計画を阻止する方法について提案を始めた。

■「内政干渉せよ」「うわさを流せ」「反政府勢力支援で圧力を」、飛び交う提案
リベラル政党のガド党のアイマン・ヌール党首は、エジプトが軍用機を購入しているといううわさを流してエチオピアに「圧力」をかけるよう提案した。
さらにヌール氏は、「(エチオピアの)内政に干渉する必要」があると述べ、エチオピアに政治、情報、軍のチームを送るべきだと提案。エジプトをより強く支持しないスーダンの姿勢を「うんざりだ」と非難した。

また、イスラム法の厳格な順守を掲げる光の党のユーネス・マフユーン党首は、ダムが「エジプトに戦略的脅威」をもたらすものであり、エジプト政府がエチオピアの反政府勢力を支援することで「エチオピア政府に圧力をかけることができる」と要求した。

会合は政権と出席した野党政治家に大打撃となった。メディアでは冷笑と怒りの嵐が巻き起こり、出席しなかった政治家までもが国民に謝罪する事態となっている。

人気トーク番組ホストのReem Magued氏は、番組内で会合の一部を放映し、「政府の透明性を要求したのは事実だが、このようにではない。このようなスキャンダルに至るほどではない」と語った。

■エチオピア側、「関係は堅調」
一方、エチオピアのアレマイエフ・テゲヌ水・エネルギー相は、騒動について知らないと語り、エチオピアとエジプトの関係は「堅調」であると述べた。

テゲヌ水・エネルギー相は、ダム建設により水量が影響されることはないと述べ、「迂回路が一部集団にとって悩みの種となっている理由が、私にははっきりわからない。どんな門外漢でも、河川の迂回路が意味することは理解できるはずだ」と語った。

エチオピアは、「グランド・ルネサンス・ダム」として知られる42億ドル(約4200億円)の水力発電プロジェクトを建設するため、青ナイル川を自然の流域から500メートル迂回させる作業を始めている。
建設の第1段階は3年で終わる見通しで、発電容量は700メガワット。ダムが完成した際には発電容量は6000メガワットになる。【6月5日 AFP】
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この問題に関しては、リベラルもイスラム原理主義も関係なく「エチオピアを締め上げろ!」ということで意見が一致しているようです。

ただ、1959年当時の、しかも当事国が参加していない協定を今さら振りかざすのは、やはり時代の流れを無視していると言わざるを得ません。

当時とは情勢が変わったにも関わらず、北アフリカの盟主としての意識から抜け出せないあたりが滑稽でもあり、悲しいものがあります。
こうした錯誤は水資源やエジプトだけの話ではないでしょう。

いずれにしても、過去がどうであったかよりは、将来に向けてどういう関係で共存できるかを考えるべきでしょう。
それが痛みを伴うものであっても、やむをえません。情勢の変化に合わせるしかありません。

氷河時代に蓄えられた“化石水”の5分の4が、わずか一世代ほどの年月で既になくなってしまった
なお、ナイルの水を狙っているのは流域国だけではないようです。
石油はあっても水が足りないサウジアラビアも狙っているとか。
もちろん水をもってくる訳にいかないので、現地の水を利用する農地開発企業が進出して、収穫物をサウジアラビアへ輸出するというものです。

****水不足のサウジ、ナイル川上流を買収****
アラビア半島の大半を占めるサウジアラビアの国土は、その95%が砂漠である。サウジアラビアを飛行機で移動すると、砂漠のあちこちに散在する大規模な牛舎や円形の巨大な農地が目に入ってくる。同国民を養う上で欠かせない施設だ。

灌漑や牛の体温調整に必要な水は、砂漠の地下1キロ以上からくみ上げている。アラビア半島が湿潤だった最後の氷河期に大量の水がたまり、世界最大級の帯水層が生まれたのだ。

◆5分の4が空になったサウジアラビアの地下水
同国は30年以上、このような地下水資源を利用した農業を営んできた。石油から得られる膨大な収益を投入して、食料自給の夢を追い求めたのだ。小麦は国際価格の5倍で政府が買い取り、水はタダ、くみ上げポンプの電気代もほとんど無料だった。

しかし現在、ポンプの多くは沈黙し、蛇口も閉じたままだ。政府は、「2016年までにすべての小麦生産を終了し、水冷式の牛舎もできる限り早期に廃止する」と発表している。

頼りにしていた地下水が枯れ始めたのだ。

農業を始めた40年前、砂漠の地下にはおよそ500立方キロという驚くべき量の水が蓄えられていた。しかし近年、くみ上げられる農業用水は年間で最大20立方キロに達していた。まして、雨はほとんど降らない土地柄で、水は減る一方だった。

2004年にイギリスのロンドン大学が分析したところ、2008年までに少なくとも400立方キロの水が消費されたという。つまり、氷河時代に蓄えられた“化石水”の5分の4が、わずか一世代ほどの年月で既になくなってしまったのだ。

海水の脱塩化は費用がかかるため、淡水確保の代替策にはならない。それでも、サウジアラビアは「食料自給」の夢をまだ捨てていない。自分の土地の水が枯れたら、よそから手に入れればいい。

◆ナイル川の上流を押さえる?
標的になった例が、アフリカ東部、エチオピア最貧地域のガンベラ州だ。ここは世界最長のナイル川の上流域に位置している。

先祖代々の狩場だった森と湿地に突然、サウジの大富豪モハメド・アル・アモウディ氏所有の農地開発企業サウジスター社が進出してきた。

2011年、エチオピア政府は地元住民に対し、「森から出て、政府が用意した村に移るように」と伝えた。表向きには「住民のため」とされたが、アル・アモウディ氏の開発に沿った政策であることは明白だった。当時のエチオピア首相メレス・ゼナウィ氏は、アル・アモウディ氏と友人関係にあり、以前から金銭的支援を受けていたのだ。

今年4月、ついに事件が起きる。反対派住民の武装集団が、ガンベラ州アボボ近郊にあるサウジスター社の事業所を襲撃、作業員5人が死亡し、エチオピア軍が犯人捜索に乗り出した。非営利団体のヒューマン・ライツ・ウォッチによると、その際、兵士によって村が略奪され、男性は一斉検挙と拷問、女性は性的暴行を受けたという。

◆野生生物も危機に
被害を受けたのは人間だけではない。ガンベラ州には、シロミミコーブやナイルリーチュエ、ゾウ、ハシビロコウなど希少な動物が生息しており、1970年代にガンベラ国立公園が設立されている。しかし、公園の保護体制は十分ではなく、敷地のほとんどがサウジスター社に売却された。

サウジアラビアの農業大臣ファハド・ビン・アブドルラフマーン・バルグナイム氏はこの件に関し、「正直に言って、アフリカ側から不満の声を聴いたことはない。“問題が起きている”と騒ぐのは外国人だけ。地元でもノープロブレムだ」とコメントしている。

なお、サウジスター社はコメントを拒否している。

◆外国政府との友好関係
アブドッラー・ビン・アブドルアジーズ国王兼首相が主導する農業海外投資プロジェクトは、2008年の開始以降、海外の土地と水を買収する国内企業にお墨付きを与えている。対象地域はアフリカ西部のセネガル川からニューギニア島インドネシア領にまで至り、契約条件には通常、「水を自由に利用する権利」と「収穫物の50%以上をサウジに輸出する権利」が含まれている。

受け入れ国政府も企業との契約を喜んでいるケースが多い。今年8月に亡くなったエチオピアのゼナウィ前首相は生前、サウジスター社との契約について、「土地を開発すれば自国民も食料が得られる。自然を大切にするのもわかるが、飢え死にしては意味がない」と語っていた。

これに対し、アフリカの最大手銀行である南アフリカ共和国のスタンダード銀行は2012年、ゼナウィ氏の方針を批判し、次のように論じている。「サウジアラビアの投資受け入れは政策ミスで、大陸全体に悪影響を及ぼす。土地や水など、資源の価値を適切に評価する必要がある」。 【2012年12月21日 ナショナルジオグラフィック 公式日本語サイト】
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“氷河時代に蓄えられた“化石水”の5分の4が、わずか一世代ほどの年月で既になくなってしまった”という浪費ぶりには驚かされます。

程度の差はあれ、似たような“浪費”を多くの国が、水資源でも水以外の資源でも、行っているのでしょう。
限られた資源をいかに有効・効率的に使うかという視点が必要です。
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中国  言論、思想への引き締めを強化する習近平指導部

2013-09-29 23:19:16 | 中国

(“flickr”より By Once upon a time http://www.flickr.com/photos/88925006@N00/9679489506/in/photolist-fKkV17-fHnrij-fMHD4K-fKXcuG-fMTtbb-gck7c1-fJ73wB-fKGZ8z-fQkx8P-fVV2DR-fVVb9Y-fVVrP2-fVVb5E-fVVryc-fVVrtx-fVVs4a-fVV7Fd-fVV2Xr-fVV7jb-fTpCQw-fWHp5p-fKaQty-fP3kGd-fSZMm7-fYkwE7)

左派のカリスマ薄熙来を無期懲役に
収賄、横領、職権乱用の罪に問われた中国の薄熙来元重慶市共産党委員会書記(元政治局員、64)に対する判決公判が22日、山東省済南市中級人民法院(地裁)で開かれ、法院は無期懲役の判決を下しました。併せて、政治権利の終身剥奪と全財産没収も言い渡しました。

「天安門事件以来、最大」と言われた政治スキャンダルに対し、習近平政権は中国版ツイッター「微博」による裁判の「実況中継」という大胆な手法を使うことで「密室裁判」との批判を避けながら、国民の一部に人気がある薄元書記のイメージを落とし、11月に控える党中央委員会第3回全体会議(3中全会)に向けて政権基盤を固めようとしています。

一方、薄熙来被告は当局側の裁判公開を逆手に取る形で、容疑を全面否認して抵抗しました。
今後、薄被告は「悲劇の英雄」として、保守派と貧困層の間で影響力が拡大する可能性もあるとのことで、将来、政治的動乱が生じた際に復権することを狙っているとも言われています。

薄元書記の事件は、単なる収賄、横領、職権乱用といったものではなく、中国共産党指導部における権力闘争であり、路線対立を背景にしています。

「改革開放」政策のもとで急激な成長を遂げた中国においては、経済格差が拡大し、腐敗・汚職も蔓延しており、強い民衆の不満が存在します。そうした不満を背景に薄元書記は毛沢東主席をまねた政治手法を展開し、保守派や貧困層などの根強い共感を得たと評されています。

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・・・・薄煕来はその並外れたカリスマ性と政治手腕を駆使して現状を批判し、国家の役割拡大を訴えてきた。

重慶市共産党委員会のトップに君臨した4年半の間に、政治的・財政的資源を動員する巧みな手腕を発揮。 犯罪組織の撲滅という名目を掲げて、自分に従わない官僚や起業家たちをつぶし、統制的な手法で同市の経済を立て直してみせた。

その過程では建国の父・毛沢東へのノスタルジアを巧妙にかき立て、市職員に革命歌を歌わせたりもした。左派すなわち国家統制派に属する薄は、天安門事件後に小平が確立した路線のうち、「改革開放」の側面に批判をぶつけてきた。・・・・【4月25日号 Newsweek日本版】
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【“左”を制しても“右”へは傾かず
国家の役割・格差是正を重視する、いわゆるニューレフト・左派勢力の代表格である薄元書記を潰した習近平国家主席ですが、習主席自身の経歴、政策、政治手法が薄元書記のそれとよく似ていることもしばしば指摘されるところです。

****反体制派の動きを封じ込める習主席****
薄被告をよく知る人々は、彼がひとたび指導部入りすれば、同志を追放し、競争相手のいないリーダーとして突出した地位を築くだろうことを恐れた。

習主席の経歴は驚くほど薄被告と共通点が多く、トップ就任以来の政策も異様なほど薄被告の政策と似ている。
習主席は汚職や不満、党の方針への批判に対する厳しい弾圧を指示してきた。それは、薄被告が重慶市時代に手掛けた暴力団や腐敗一掃の「打黒」運動を強く連想させる。
また習主席は、好んで毛沢東の言葉を引用し、共産党の過去を賛美してきた。

習主席が権威主義に傾斜し、薄被告の政策を模倣するのは、根強く残る同被告の影響力を中和し、党内部から政治的変化を引き起こす可能性があり、党が最大の脅威と見なす反体制派の動きを封じ込めることが狙いだと党幹部は認める。(後略)【9月24日 英フィナンシャル・タイムズ紙】
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習近平指導部による左派封じ込めは、民主化を要求する勢力への助長を意味せず、むしろ左派同様に右派・民主化勢力に対しても厳しい弾圧姿勢をとっています。
要は、左であれ右であれ、党の方針への批判は一切許さない・・・という姿勢にも見えますが、習主席と薄元書記の相似性にみられるように、習指導部は全体的には“左傾的”であるとも指摘されています。

****左”の薄煕来を制圧しても“右”へは傾かず “左傾化”懸念は残る****
・・・しかしながら、“政治の左傾化”(路線闘争)→“新権力の奪還”(権力闘争)を恐れた党指導部が薄煕来氏、及びその支持者を制圧することが、昨今の中国政治に福音をもたらし、健全な方向に導くことにつながるかといえば、少なくとも懐疑的にならざるを得ない。

(中略)習近平国家主席就任後の言動をウォッチする限り、現段階では改革派、保守派、市場派、軍部、大衆などあらゆるプレイヤーに“いい顔”をして足元が若干おぼつかない様相を呈しているが、全体的には“左傾的”であると私は分析している。

習氏は就任後、随時・随所に渡って「社会主義」を強調し、政治体制改革には言及することもなく、党の方針と相反する言論を展開するような進歩的、即ち右傾的な言論人や弁護士、知識人、人権活動家を抑圧・拘束している。

一方で、左傾化を意識的に、あるいは無意識のうちに受け入れる傾向にある一般大衆にアプローチする、「群衆路線」を大々的に展開している。

“左傾化”を恐れる党指導部が、それを進めようとした薄煕来氏を失脚させたが、同じ太子党出身の習近平氏は近年ひとつの潮流として社会に浸透する“左傾化”の流れを断ち切れないどころか、薄煕来氏と手法や程度は違えど、そこに迎合する気配を見せている。

“左傾化”のという潮流は、必然的に保守的で対外強硬的な党員や軍部を勢いづかせ、狭隘で膨張するナショナリズムを増殖させる。今後の中国社会を占う上での不安要素として見るべきだろう。【9月10日 DIAMOND online 加藤嘉一】
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相次ぐ「新公民運動」関係者拘束
習近平政権は言論、思想への引き締めを強化し、法治、人権擁護、民主化などを要求する「新公民運動」にかかわる人物を次々と拘束しています。

****活動家ら200人を拘束=習主席就任後、引き締め強化―「新公民運動」弾圧・中国****
中国で習近平政権が発足して以降、憲法に基づく政治や法治、人権擁護、民主化などを要求し、公安当局に拘束された人権活動家や弁護士、陳情者、企業家、記者らの数が約200人に上ったことが分かった。
政治犯や陳情者の拘束・逮捕に関する詳細な名簿を作成している複数の人権活動家らの集計で19日までに明らかになった。

特に幹部の財産公開や不公平な教育制度の是正など理性的かつ穏当な要求や行動で社会を変えようとする「新公民運動」を推進した人権活動家・許志永氏や企業家・王功権氏らの拘束は、改革派知識人の強い反発を招いた。これに対して習政権はさらに弾圧を続けており、体制維持への危機感の表れとの見方も強い。

米コロンビア大学訪問研究員で、社会活動家の温雲超氏が集計したリストによると、昨年11月の習政権発足後に拘束された政治犯(チベット・ウイグル関係などは除く。釈放も含める)は146人。
一方、別の人権活動家が公安当局に拘束された陳情者を集計した名簿などによれば、5月以降の拘束者は63人に達した。

両リストでは重複して記載された拘束者もいるものの、計200人近くが拘束された計算。両リストは拘束者の氏名や罪名、拘束日などが記されており、正確な情報とみられる。さらに習政権が最近強化しているインターネット上の発言に対する取り締まりも加えると、拘束者がさらに膨らむのは確実だ。【9月19日 時事】 
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****新公民運動」の女性人権活動家を起訴…中国****
中国江西省の著名な女性人権活動家・劉萍氏(49)が、違法に集会を開いた罪など三つの罪で同省新余市の裁判所に起訴されていたことがわかった。

法曹関係者らが28日、読売新聞に明らかにした。劉氏は、憲法を根拠に人権擁護を訴える「新公民運動」に加わっており、同運動の関係者が起訴されたのは初めて。 習近平 ( シージンピン )指導部の同運動への徹底弾圧姿勢を示すものだ。

法曹関係者らによると、劉氏は「違法集会」の容疑で先に逮捕、起訴され、邪教組織を利用して法の支配を妨げた罪と公共秩序を乱した罪でも23日付で起訴された。有罪となれば、十数年間服役する可能性がある。

逮捕容疑は「違法集会」だけで、人権活動家は「当局は複数の罪に問うことで長期間服役させ、劉氏の影響力を失わせようとしている」と指摘した。【9月29日 読売】
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“憲法に基づく政治や法治”を求める「新公民運動」のどこがいけないのか・・・日本的な感覚では理解できませんが、憲法を超えた存在である共産党による恣意的な人治が行われている中国にあっては“反社会的思想”となります。

****中国の毛沢東主義と 社会に蔓延する「7つの危険****
8月19日付New York Times紙にて、Chris Buckley同紙記者は、中国では、経済成長の減速等もあり、経済改革と共に政治改革が必要であるのに対して、共産党幹部は、逆に、民主主義は共産党の敵であるとし、毛沢東主義を復活させるなど、保守化傾向を強めている、と述べています。

すなわち、中国全土で共産党幹部を集めて開催された秘密会議では、中国社会で蔓延している7つの危険を潰さなければ、共産党は権力を失うということが言われた。

その7つの危険とは、習近平お墨付きの「文書第9号」で列挙され、第1は「西側的立憲民主主義」、第2は「普遍的価値」、第3は「市民社会」、第4は市場原理重視の「新自由主義」、第5は「西側的報道の自由」、第6は中国の唱える「歴史への批判」、そして第7は「中国式改革への疑問」である。

このような中国共産党の警告は、習近平の自信に満ちた顔の裏には、経済の減退、汚職への国民の怒り及び政治改革を求める人々に対して、党が脆弱であるとの不安が存在していることを示している。

文書第9号は、共産党中央委員会によって4月に発出されたものだが、それによると、「反中の西側勢力や国内の反体制派は、常に、イデオロギーを浸透させている。」とか、一党体制に反対する者は、「役人の財産を暴露したり、インターネットを活用して汚職や検閲等を批判したりして、党や政府への不満を煽っている。」と書かれている。

文書第9号は、発出されただけではなかった。その後、党の機関紙やウェブサイトでは、立憲主義や市民社会というものが、激しく非難された。また、役人達は、党や政府への批判が書かれたインターネットへのアクセスをブロックするのに力を注いだ。

改革派は、習近平のこのような強硬路線に失望している。彼らは、当初、習近平は、長く停滞していた政治改革を推進してくれるのではないかと期待した。ところが、習近平は、より保守的で、伝統的な左派の立場を取るようになった。そして毛沢東主義を擁護するように、毛沢東がかつて1950年代に党の立て直しに着手した歴史的場所を訪問した。

このような習の運動は、幾つかのリスクも伴う。彼自身、指摘しているように、減速している経済は、より市場主導型の新たな機会を必要とするが、それには、国家の影響力を弱めなければならない。

中国の政界の中では、より西側に近い経済改革を推奨する者は、法の支配やより開放された政治制度の推進者でもあるが、一方、伝統重視派は、経済でも政治でも、より多くの国家による管理を望む。

このような意見の対立は、習近平にとっても良いことではない。失望し不満に思っているリベラル改革派の中には、起業家や知的階層も含まれる。こうなると、党が意図する政治の安定さえ守れなくなるかもしれない、と言われる。

文書第9号の発出以来、共産党系の機関紙には、論評や記事が溢れるようになった。多くは、近年では見られなくなった毛沢東の階級闘争を想起させるものだ。中には、立憲主義やそれに準ずる概念は、ソ連を崩壊させたような西側の策略で、中国も今そのような脅威に直面している、と述べたものもある。

しかし、元気づいた左派も、習政権にとっては問題である。習近平は、市場原理を拡大して、経済改革を推進したいと思っているが、党内のマルクス主義者たちは反対している。
習近平は、今年末、毛沢東の生誕120周年を機会に、そのイデオロギーが試される、と述べています。(後略)【9月26日 WEDGE】
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反腐敗運動と経済改革で現状打開を狙う
“左”も“右”も抑えながら、社会に鬱積する不満をなだめるべく、習近平主席は政治性の比較的薄い「ハエも虎も叩く」反腐敗運動を展開しています。
もっとも“ハエ叩き”はともかく、薄元書記や、現在追及が進んでいる江沢民元国家主席派の大物で前党中央政法委員会書記・政治局常務委員だった周永康氏周辺といった“虎退治”になると、すぐれて政治的な問題となります。

一方、不透明感を強めている経済の打開については李克強首相が主導で改革が進められており、金融や貿易などの分野で規制を大幅に緩和する「上海自由貿易試験区」を設立することが発表されています。
こうした経済改革が「文書第9号」が挙げている市場原理重視の「新自由主義」に当たらないのか・・・よくわかりませんが、おそらく左派からの反発はあるでしょう。

****中国:自由貿易試験区29日設立 李首相手腕問う試金石に****
・・・・習指導部は発足以来、改革の必要性を強調してきたが、公民運動を進める人権活動家やそれを支援する企業家まで拘束するなど政治面では後退している。

中国の政治学者は「手を付けられる改革は経済面しかない。李首相が3月下旬に構想を打ち出してから短期間で実現にこぎ着けたことは、李首相の路線が指導部でも一定の支持は得られていることを示す」と指摘する。

中国政府は、将来的に試験区の成功例を全国に拡大させたい考えだ。だが、香港紙によると、中国銀行業監督管理委員会などは意見聴取の場で、試験区の構想に公然と反対を表明した。
李首相は机をたたいて怒鳴ったといい、規制に守られてきた国有企業など既得権益層の強い抵抗があることを物語っている。

李首相は遼寧省大連で開かれた夏季ダボス会議で経済体制改革の意気込みを問われ、「既得権益とぶつかるかもしれないが、(全体のために果敢に一部を切り捨てる)“壮士断腕”の決心で改革を推進する」と強調した。だが、李首相の改革の第一歩である試験区の成否によっては、党内での立場を弱める可能性も残されている。【9月27日 毎日】
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周永康氏周辺の不正追及、「上海自由貿易試験区」の成り行き次第では、習近平指導部が大きく揺れることもあるかも。
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スリランカ  北部州議会選でタミル人政党圧勝  懸念される自治権拡大を目指す州政府と中央政府の対立

2013-09-28 20:47:04 | 南アジア(インド)

(9月21日 投票所に訪れた地元住民と警備にあたる治安要員 “flickr”より By Vikalpa | Groundviews | CPA http://www.flickr.com/photos/14744574@N03/9859180845/in/photolist-g2dSYD-g2e4CW-g2dXT7-g2e6eG-g2dYtW-g2e1dN-g2dW9s-g2eu8K-g2dXhZ-g2dKVu-g2ecTv-g2e2vY-g2ekYt-fTLFx4-fTLNsf-fTMifM)

スリランカでは、かつて政府軍と少数民族タミル人反政府武装勢力「タミル・イーラム解放のトラ(LTTE)」の間で戦われた7万人以上の犠牲者を出す激しく長い内戦の舞台となった北部州で、9月21日、初の州議会選の投票が行われました。

この選挙、および北部の中核ジャフナの現況などについては、9月20日ブログ「スリランカ タミル人居住エリアの北部州で内戦後初の州議会選挙実施」(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20130920)で取り上げたところです。

同地域は住民の95%がタミル人であり、予想されたように少数派タミル人による政党「タミル国民連合」(TNA)が圧勝しました。

****タミル人政党が圧勝=25年ぶりの北部州議会選―スリランカ****
四半世紀にわたる内戦の舞台となったスリランカ北部州で21日、25年ぶりとなる州議会選挙が行われ、少数派タミル人による政党「タミル国民連合」(TNA)が38議席中30議席を獲得して圧勝した。

2009年の内戦終結後も多数派シンハラ人主体の中央政府の直轄統治下に置かれていた同州で、タミル人が一定の自治権を獲得したのは初めて。
選挙管理委員会によると、投票率は67.5%だった。

TNAは州首相を選出する権利を得たが、大統領に任命される州知事は与党出身で、専門家は「『ねじれ』状態の中、どこまでタミル人の自治が拡大されるかは不透明だ」と話す。【9月22日 時事】 
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“州首相に就任予定のTNAのウィグネスワラン元最高裁判事は記者会見し、タミル人と、国内では多数派のシンハラ人との和解について「われわれは同じ国の市民だ」と述べ、北部州の独立を目指さないことを強調した上で、連邦制の導入を訴えた。”【9月23日 産経】とのことです。

しかし、“TNAは、憲法でうたわれる警察や土地開発、財政権限の州政府への委譲を履行するよう求めている。こうした権限は、国内にタミル人を抱えるインドの圧力で内戦中に憲法に盛り込まれた条項だが、実施は棚上げされてきた。ラジャパクサ政権はタミル人による分離・独立運動の高まりを警戒、憲法修正の動きを見せている。人権問題で欧米やインドの批判を浴びるラジャパクサ政権が、タミル人への権限委譲に逆行する憲法修正を本格化させれば、いっそうの反発を招く可能性がある。”【9月20日 産経】とのことで、今後、シンハラ人主導のラジャパクサ政権と自治権拡大を目指す州政府が激しく対立する恐れも指摘されています。

****内戦終結4年 スリランカで初の北部州議会選 根深い政府不信、和解遠く***
スリランカで政府軍と少数派民族タミル人の反政府武装勢力、タミル・イーラム解放のトラ(LTTE)との内戦が終わって4年余りがたつ。

LTTEがかつて支配した北部州では今月21日、同州創設以来初めての州議会選が行われ、復興を印象づける一里塚となった。

しかし、多数派民族シンハラ人が支配する政府や軍へのタミル人の不信感は強く、和解への道は遠い。

エメラルド色に輝くサンゴ礁の海を望む北部州の州都ジャフナでは、内戦で破壊された建物におびただしい銃弾の痕が残る。アナンディ・サシタランさん(42)はこの町でタミル人野党、タミル国民連合(TNA)から州議会選に立候補して当選し、TNAを勝利に導いた。

夫が元LTTE幹部で、終戦時に行方不明になっているサシタランさんは投票前日の20日、軍やラジャパクサ政権与党支持者に自宅を襲撃されたと訴えた。

軍車両4、5台で乗り付けた約70人の武装集団に取り囲まれ、自身はかろうじて脱出したものの残った支持者らが棒などで殴られたといい、10人が病院に運ばれた。「襲撃犯の多くは顔を知っている与党支持者だった。上着だけ軍服の軍人もいた」と証言する。

弁護士のスガーシ・カナガラトラムさんは「選挙で勝つつもりかと銃で脅され殴られた。国際社会やメディアにこのことを話せば殺すといわれた」と訴えた。

軍は事件への関与を否定するコメントを発表し、真相は判然としない。だが、サシタランさんが「軍は内戦の生き証人である私を殺そうとしているに違いない」と話すように、タミル人の政府や軍への不信感が今も根強いことは確かだ。

 ■軍の監視に恐怖感
実際、北部州の多くのタミル人は、常に軍情報機関の監視の目を恐れている。

内戦当時、非政府組織(NGO)で働いていた40代の男性、Kさんもその一人だ。「タミル人は外国メディアに話をすると、後で情報機関から何を言ったのかと尋問される。にらまれると、車ではねられて死んだり行方不明になったりすることさえある。自由に話もできない」と打ち明けた。

Kさんは政府軍への恨みを忘れていない。内戦の最終局面でつらい目に遭っているからだ。LTTEは2009年5月の政府軍の攻勢で消滅し、内戦の最終段階では多くの市民が巻き添えになって死亡した。

Kさんは妻と子供2人を連れて逃げ回り、政府軍の砲撃で右足を失った。以来、義足を使っている。妻も病院内に避難していたときに政府軍の銃撃を受け、背中を負傷した。

国連の報告はLTTEが市民を「人間の盾」にしたとしている。しかし、Kさんは「私たちはLTTEとともに追い詰められていっただけだ。盾にされたとは思っていない」とLTTEを弁護した。

タミル人は北部州では人口の95%を占める多数派で、Kさんのように政府軍よりLTTEに好感を持ち続けている人は少なくない。

かつてLTTEの武装闘争路線を支持したTNAは州議会選で圧勝し、自治権拡大への期待が高まっている。Kさんも「シンハラ人に何も決められたくない。北部州は独立すべきだ」と話した。

 ■自治権拡大が望み
ただし、TNAが求めているのは独立ではなく、自治権拡大と連邦制だ。憲法にうたわれている警察や土地開発の州政府への権限委譲の履行を重視する。

北部州の警察官の大半はシンハラ人で、タミル人住民からは「言葉が通じず、とりあってくれない」との不満が強い。TNAは「治安維持をタミル人の手で」と主張している。

また、内戦の舞台となった北部州には軍の大規模基地があり、兵士15万人が配置されている。国内避難民は10万人以上に達し、土地を軍に奪われた多くのタミル人が政府に補償を求めている。内戦中には、軍人が多くの女性に暴行したり殺害したりしたといわれる。

州議会選で、TNAの州首相候補として当選したウィグネスワラン元最高裁判事は「軍は土地や女性に手を出した。まずやるべきことは、軍を出てゆかせることだ」と語った。

もっとも、政府は北部州のために何もしなかったわけではない。中国とインドの支援で幹線道路と鉄道が整備され、昨年の北部州の域内総生産(GDP)成長率は前年比22%も伸びた。
逮捕したLTTEの元メンバーのうち約1万2千人に社会復帰教育を施し、釈放したと発表している。

 ■「生活は悪化の一途」
しかし、こうした政策にもタミル人の不満の種がくすぶる。あるビジネスマンは、「タミル人が求めているのは支援による経済開発より、開発の能力を高める教育や制度だ。政府はタミル人に経済力を持たせないようにしている」と話す。

終戦後に逮捕され、社会復帰教育を受けて釈放された30代の元LTTEメンバーの男性も、「職業訓練を受けて仕事を約束されたが、給料は払われなかった。LTTEが支配した時代の方が物価が安く、今は暮らし向きが苦しくなるばかりだ」とこぼした。

LTTEの元メンバーには、政府支持者に転向した人もいる。広報担当者だったダイアマスター氏(57)はLTTEの思想を放棄し、一時は州議会選で与党側からの立候補を目指した。
そんな彼ですら、「シンハラ人中心の軍とタミル人の和解は果たさなければならないことだが、今回の選挙でもたらされることはないだろう」と悲観的な見方を示した。

それどころか、スリランカのラジャパクサ政権は、州議会選で一定の権利を得たタミル人に、独立運動の高揚を警戒して監視網をいっそう厳しくするとの見方が強い。

豊かな観光資源が眠るジャフナ。砂浜で貝を採っていたアルチャナさん(30)は、「終戦で逃げ回らなくてよくなったことはうれしい」と話した。真っ白なビーチが観光客で埋まる日は、いつになれば来るのだろうか。【9月27日 産経】
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軍の主要基地などが置かれ、村の人たちが立ち入れない地域(ハイ・セキュリティ・ゾーン:HSZ)が残されている状況、HSZを正式に政府の土地として接収しする政府方針に対する住民側の反発、復興は進んではいるものの、必ずしも地元住民の暮らしを改善させる状況にないこと・・・などは、前回ブログでも取り上げました。

シンハラ民族主義の傾向が強く、内戦においても国際社会から批判を浴びる強引な作戦を強行したラジャパクサ大統領のこれまでの言動を考えると、タミル人への権限委譲がスムーズに進むとは思えません。
“ジャパクサ政権と自治権拡大を目指す州政府が激しく対立する恐れ”は多分現実の問題となるでしょう。

日本はかつては最大の支援国であり、ラジャパクサ政権の人権侵害を批判する欧米とは一線を画する対応をとってきました。
内戦終結後は、内戦中に影響力を増した中国を意識して、関係強化を目指しています。

****スリランカと関係強化 麻生副総理が大統領と会談*****
麻生太郎副総理兼財務相は2日、訪問先のスリランカでラジャパクサ大統領と会談し、経済協力などの関係強化で一致した。

副総理は内戦が続いたスリランカの国民和解の進展を求めるとともに、同じ海洋国家として沿岸警備隊の能力向上などへの協力を約束した。

地政学上重要な位置にあるスリランカに中国が投資や援助を増加。麻生副総理は会談後、記者団に、「国民和解が進み、治安が安定し、経済成長が続くのであれば、日本として一層の協力をする用意があると伝えた」と話した。

スリランカは2009年の内戦終結後、高い経済成長率を維持し、1人当たりの国内総生産(GDP)は南アジア主要国の中ではトップ。

だが、内戦後も少数民族タミル人への人権侵害があるとして欧米諸国などから批判されている。日本政府は欧米との橋渡しをすると同時に、インフラなど投資環境の整備面で協力する考えだ。【5月2日 共同】
********************

スリランカ北部復興に日本政府・日本企業も、これまで以上にかかわることになると思われます。
その際、“国民和解の進展”にも留意してもらいたいものですが、無理な注文でしょうか。
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イラン・ロウハニ大統領  核問題協議前進に向けて対話ムード演出 注目される今後の進展

2013-09-27 23:15:48 | イラン

(テヘラン、8月26日、ロウハニ大統領(左)と最高指導者ハメネイ師(右) 中央はオマーンのカーブース・ビン=サイード国王  ハメネイ師はロウハニ大統領の外交を支持していると言われています。 【9月17日 ワシントン・ポスト】http://articles.washingtonpost.com/2013-09-17/world/42129429_1_hassan-rouhani-supreme-leader-nuclear-weapons)

【「良い雰囲気の中、活発で実質的な協議をした」】
イランは、“イスラエルによる核施設爆撃”“ホルムズ海峡封鎖”など、なにかと国際関係緊張の火種となってきており、また、シリア・アサド政権やレバノンのイスラム武装組織ヒズボラなどの有力支援国として、中東地域における影響力も大きなものがあります。

したがって、イランと国際社会の緊張が緩和されるかどうかは、中東地域、さらには日本を含めた世界全体の政治的・経済的安定に重要な問題となっています。

核開発問題で経済制裁を受けているイランは国内経済が疲弊し、物価上昇など市民生活に重大な支障が出ているといわれています。
そうした国民の不満を受ける形で、欧米との対話を重視する保守穏健派のロウハニ大統領が誕生しましましたが、その注目される外交が本格始動しています。

26日には、イランの核開発問題を巡る国連安全保障理事会5常任理事国(米英仏中露)にドイツを加えた6カ国とイランのザリフ外相会合が国連本部で開かれ、次回協議を10月15,16両日にジュネーブで行うことで合意しました。
また、この会合後、イランのザリフ外相はケリー米国務長官と個別に会談。両国外相の会談は1980年の国交断絶後初めということです。

「良い雰囲気の中、活発で実質的な協議をした」(EUのアシュトン外務・安全保障政策上級代表)「ザリフ外相が将来の可能性に関してこれまでと違ったトーン、展望で提案をしたことをみなが喜んだ」(ケリー米国務長官)【9月27日 毎日】とのことで、滑り出しは好感触のようです。

****イラン核問題:「試される真剣度」米と外相会談****
ケリー米国務長官とイランのザリフ外相が26日、国連本部で会談した。両国外相の会談は1980年の国交断絶後初めてで、米側がイランの対話姿勢を評価していることの表れと言える。

だが、核問題で国際社会との合意に違反してきたイランへの不信感をぬぐうのは容易ではない。米側は「実質的交渉ができるかで、イランの真剣度が試される」(カーニー米大統領報道官)として、核問題を巡る次回協議の中身を注視する構えだ。

両外相の個別会談に先立ち、ザリフ外相と米英仏中露独6カ国の外相が会合を開き、10月15、16両日にジュネーブで核問題に関する次回協議を開くことで合意した。

米高官によると、ケリー、ザリフ両氏は、書記役を入れずに2人だけで会談した。「イラン外相はいかなる時にも米国務長官とは一緒に座ろうとしなかった」と米高官が述懐するほど両国関係は険悪だっただけに、今回の会談が歴史的な変化であることは確かだ。

海外への軍事介入を極力回避したいオバマ政権にとって、イランの穏健化は核問題解決の好機であるだけでなく、イランが後ろ盾のアサド・シリア政権やイスラム教シーア派民兵組織ヒズボラを外交によって弱体化させる好機と映る。中東における米国の指導力低下の現状を打開する好機でもある。

一方、イランの軍事的脅威を直接受けているイスラエルやサウジアラビアが、イランの穏健化を「核兵器開発の時間稼ぎ」とみて警戒するのは確実だ。

イランのロウハニ大統領は対話姿勢をアピールする一方、26日の国連総会の核軍縮に関する会合で、潜在的な核兵器保有国とされるイスラエルが核拡散防止条約(NPT)に未加盟であることを批判するなど、米国とイスラエルへの揺さぶりも忘れていない。

オバマ大統領は30日にイスラエルのネタニヤフ首相と会談し、対イラン外交のすり合わせを図る考えだが、シリアの化学兵器問題で迷走した「オバマ外交」は同盟国の間で不安視されている。

他方、イラン国内に反米強硬派を抱えるロウハニ大統領にとっても、米国との安易な妥協は政権を不安定にしかねず、米・イラン関係の行方は現時点では見通せない。【9月27日 毎日】
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オバマ大統領との「接触」は、あと一歩も実現せず
ロウハニ大統領とオバマ大統領の「接触」(2人が潘基文国連事務総長が主催する昼食会で顔を合わせて握手するなど)も24日に実現するのでは・・・・との話もありましたが、この「接触」はアメリカの打診をイラン側が断る形で実現しませんでした。

“イラン側が、アメリカに批判的な保守強硬派の存在などの国内事情から時期尚早と判断した”というのがアメリカ側の見方ですが、「(会談実現まで)あと一歩のところだった。(会談する)部屋を選び、飲み水を注文するほどだった」(関係者)と、今一歩のところまでいったこと自体がこれまでとは異なる大きな前進でしょう。

イランの最終的な決定権は大統領ではなく、最高指導者ハメネイ師にありますが、ハメネイ師も対米関係改善を基本的に支持しているとも言われています。

****提案時の効果高める狙い 大幅な制裁緩和、視野****
・・・しかし、イラン政府関係者によると、ハメネイ師も今回、両首脳の接触を支持していたという。
この関係者によると、政権内では直前まで、オバマ氏と会うべきかどうか綿密な検討が行われた。その結果、出した結論はこうだ。

26日に米英独仏中ロの6カ国との核協議が控える。27日からはウィーンで国際原子力機関(IAEA)と、10月にはスイスのジュネーブで6カ国との核協議が予定されている。いまオバマ氏と握手をして融和ムードが広がれば、核交渉で譲歩案を示したときのインパクトが薄れるのではないか――。
この関係者は「肝心なのはオバマ氏と友達になることではなく、経済制裁の緩和だ」とする。

一連の核協議では、IAEAの監視下で、保有するウランを燃料に転用したり、第三国に搬出したりといった思い切った譲歩案を提示し、一気に大幅な制裁の緩和を引き出したい考えだという。

ロハニ師はこれらの協議を乗り切り、経済制裁の緩和が具体的な形をとった後に、オバマ氏と電話で会談することを視野に入れているという。ロハニ師は24日、CNNのインタビューで「米国側と話し合っていたが、実現させるためには時間が不十分だった」と話した。

オバマ氏はケリー国務長官に核問題の解決に向けた外交努力を指示済みで、今回の「見送り」が与える影響は少なそうだ。(ニューヨーク=神田大介、大島隆)【9月26日 朝日】
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随分とイラン側内部の方針に踏み込んだ見方で、「本当かね?」という感もありますが、このシナリオどおり“思い切った譲歩案”が今後示されるのであれば、喜ばしいことです。

ロウハニ大統領は25日の米紙ワシントン・ポスト(電子版)のインタビューで、4月から途絶えている核開発問題の協議が再開されれば「3〜6カ月」での合意を目指すとの、スピードを重視する考えを示しています。

****イラン:ロウハニ師「核協議再開なら3〜6カ月で合意****
・・・・ロウハニ師は「(核問題の解決の期間は)短いほど各国の利益だ」と答え、協議進展の「スピード」を重視すると強調した。

ロイター通信によると、ザリフ・イラン外相も、フランスのファビウス外相との会談後、「短期間での合意を目指し交渉に弾みをつける」と話した。

ただ、ロウハニ大統領は24日の国連での演説で、「国内でウラン濃縮をする権利」を主張するなど、核開発に関しては対欧米強硬姿勢だったアフマディネジャド前政権と同じ論理を展開。演説を聞いた米政府高官は「(核交渉を巡る)イランの基本姿勢は以前から決まっており、驚きではない」と語った。

その上で、前政権との違いとして▽穏健外交を求めるイラン国民によって選ばれた▽経済改善のため、欧米による制裁解除の取り付けが喫緊となっている−−を指摘。「こうした点が交渉姿勢の変化につながるか、(26日の外相会合から)イラン側の出方を試す必要がある」と語った。(後略)【9月26日 毎日】
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経済制裁緩和実現のために誕生したロウハニ大統領ですから、イラン側の意気込みはそれなりのもがあるでしょう。
虎の子の化学兵器廃棄を認めることで(実際に廃棄するかは、これからのことですが)、欧米の交渉を実現しつつあるシリア・アサド政権のこともイラン側の念頭にあるのではないでしょうか。
逆に言えば、ここでつまずけば、ロウハニ大統領の求心力・国内の政治影響力は急速に低下することが予想されます。
6か国側にはイランの譲歩を手繰り寄せる“上手な対応”が求められます。

アメリカ・オバマ大統領も、内向き志向が国内で強まる中で、軍事介入などの強硬手段を使用せずに、長年の懸案事項であるイラン問題で一定の成果を引き出したいところです。

イラン問題で成果を出せれば、結果はそこそこ望ましいものだったが、そこに至るまでに迷走したとの批判もあって評価がすっきりしないシリア・化学兵器使用問題と合わせて、軍事力を行使することなく圧力をかけることで大きな成果を引き出したということで、強くアピールすることができます。

イラン核開発の現況
イランの核開発問題の中心には、ウラン濃縮の問題があります。
核爆弾製造に使用される90%以上の高濃縮ウランに濃縮することが比較的容易とされる20%高濃縮ウランをイランは大量に製造しています。
イラン側は、医療用アイソトープをつくる原子炉の燃料とするためと説明しており、核爆弾の保有は一切否定しています。
アメリカ・イスラエルなどは、その他の証拠などから、核爆弾製造のためのウラン濃縮だと主張しています。

核爆弾は高濃縮ウランだけではなく、プルトニウムを使うタイプもあります。
イランは、使用済み燃料を再処理することで核爆弾製造に転用できるプルトニウムが得られる研究用重水炉を来年にも稼働させるとしており、こちらも疑惑の対象となっています。

そうした疑惑の核開発の現状については、以下のように報じられています。

****イラン:濃縮ウラン貯蔵 ペースが落ちる****
核兵器開発の疑いを持たれているイランが、兵器転用が懸念される濃縮度20%ウランの貯蔵を減速させていることが28日、国際原子力機関(IAEA)の事務局長報告で明らかになった。
ただ、ウラン濃縮能力の高い改良型遠心分離機の増設を進めるなど、引き続き核能力の拡充を図っている。

報告によると、今年5月の前回報告以降、イランは新たに48・5キロの濃縮度20%ウランを製造し、累積量は372・5キロに上った。
だが、これらの一部を兵器転用に不向きな核燃料に転換する作業が加速されたため、貯蔵量自体は前回報告時に比べ3・8キロ増の185・8キロにとどまった。現段階では原爆1個分に及ばないとみられる。

他方、イランは中部ナタンツのウラン濃縮施設に「IR2m型」と呼ばれる改良型遠心分離機を新たに300台あまり導入、総数を約1000台に拡大した。

西部アラクでも重水炉建設を続けているが、当初予定していた2014年第1四半期の試運転開始に遅れが出るとIAEAに報告した。【8月29日 毎日】
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西部アラクの重水炉については、いったん稼働を始めると、これを爆撃破壊することは現実問題としては難しくなるため、稼働を開始するまでがイスラエルによる攻撃のタイムリミットだ・・・といった話もあるようです。
もっとも、6カ国との核協議が進展し始めれば、イスラエルといえども手出しは困難になります。

求められるイスラエルの姿勢転換
そのイスラエルを、ロウハニ大統領は「核兵器を保有していることを認めるべきだ」とけん制しています。

****イスラエルは核兵器を保有していると認めるべき」、イラン大統領****
イランのハサン・ロウハニ大統領は26日、核軍縮に関する国連総会ハイレベル会合で演説し、イスラエルは核兵器を保有していることを認めるべきだと述べた。

ロウハニ氏はまた、自国に向けられている核兵器開発疑惑に関して3~6か月以内に国際社会と何らかの取り決めを結べるはずだという考えを示した。

これに対しイスラエル側は、自国の核開発疑惑から諸外国の注意をそらせようとしているとしてロウハニ大統領を非難した。

国連総会へのイスラエル使節団の代表を務めるユバル・シュタイニッツ戦略担当相はAFPに対し、「(ロウハニ氏は)策士だ」として、「イランが最終的には国連安全保障理事会決議に従うと言う代わりに、イスラエルに注目が集まるようにしようとしている」と述べた。【9月27日 AFP】
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もともと核兵器の問題は、一部の国が大量に保有しながら、その保有国は他国の核兵器保有を認めない・・・という、奇妙なロジックになっています。
そこを言っても仕方ない・・・としても、そうした枠組みを無視して保有したインド・パキスタンにはイランのような制裁は課されていません。
まして、イスラエルは核保有が確実とされながら、その保有を明らかにすることさえしていませんし、核拡散防止条約(NPT)の国際的核管理の枠組みにも参加していません。

****IAEA:イスラエルの核 懸念決議案否決…反対多数で****
国際原子力機関(IAEA)の年次総会は20日、事実上の核兵器保有国イスラエルの核能力に懸念を表明し、同国の核拡散防止条約(NPT)加盟を求める決議案を反対多数で否決した。決議案は2010年以来3年ぶりにアラブ諸国から提出されたが、米国や欧州連合(EU)、日本などが反対した。

決議案提出の背景には、10年のNPT再検討会議で合意された中東非核化国際会議がいまだ実現していないことへの反発があった。

米欧などは▽イスラエルのみを名指しした事実上の非難決議は同国を含む非核化会議実現の障害になる▽非核化に向けた建設的な環境整備を妨げる−−などとしてIAEA加盟国に反対投票を働きかけていた。ただ、イスラエル批判の文言を含まず、全ての中東諸国にNPT加盟を求める中東非核化決議はEUや日本を含む圧倒的多数で採択された。

イスラエルは自国の核兵器保有について否定も肯定もしていない。IAEAの保障措置(核査察)は限定的に受け入れているが、NPT加盟には中東諸国の軍縮や緊張緩和などが不可欠だとしている。【9月20日 毎日】
******************

しかし、イスラエルのこうした姿勢、それを擁護するアメリカなどの姿勢は非常に奇異なものに感じられます。
アメリカのイスラエルへの過度の肩入れは、中東和平の前進を妨げることにもなります。
もし、イランが核開発の公開性を今後高めるのであれば、やはりイスラエルも同様の対応をとるべきでしょう。
ましてや、イラン核施設攻撃というのは論外です。
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シリア内戦  アルカイダ系組織の勢力拡大で反体制派内の対立表面化

2013-09-26 22:22:32 | 中東情勢

(反体制派武装組織「自由シリア軍」の若いメンバー 屈託のない笑顔はイスラム過激思想とは無縁のようにも見えますが・・・・ “flickr”より By Eduard Ghazanchyan http://www.flickr.com/photos/96131145@N04/9740728410/in/photolist-fQKMch-fTP3hf-fTJ7iV-fTEYWo-fTPSqi-fTFRAJ-fTF5wx-fTPWvU-fTL8LC-g9EzTd-fTGCPf-fTR18U-fTRAoE-fTRzWs-fTLxgs-fTRtG2-fTQP8C-fTKmBR-g5dvwU-fTG546-fTFqnd-fTNVbR-fTQcDH-fTM9po-g7iBsQ-fTmXFh-fTHcUA-fN73x4-fN7ao6-fNozvU-fNmDe7-fN68vk-fNkYCw-fNmBhQ-fNkBVS-fN3Ype-fNoiq7-fN6LYx-fNnkQ5-fN6oKt-fNmvdL-fN3UjZ-fN4tVP-fNoxDo-fNmsQq-fN5UTc-fNmnod-fNnbYU-fN6VKe-fNoggC-fNnBRW)

【「アサドかアルカイダか。今や誰もがその二者択一を迫られている」】
シリア内戦は、当初は強権的なアサド政権に対する住民の抵抗という性格があり、欧米各国は民主化支援ということで反体制運動を支援する流れになっています。

その後、衝突が長期化するにつれ、アサド政権側のアラウィー派および政権を支援するシーア派のレバノン・ヒズボラやイランと、スンニ派主体の反体制派およびこれを支援するアラブ・スンニ派諸国という、周辺国を巻き込んだ宗派対立の様相が強まりました。

そして、ここにきて、かねてよりその存在が懸念されていた反体制派内部のアルカイダ系武装勢力などイスラム過激派の勢力伸長が表面化しています。
内戦は反体制派武装組織「自由シリア軍」、イスラム過激派組織・アルカイダ系武装勢力、アサド政権政府軍という三者を軸にした様相を呈してきています。
更に、反体制派もイスラム過激派組織も多くの組織が存在して統一を欠いており、複雑な展開にもなっています。


****シリア、引き裂かれる市民 アルカイダ系伸長、反体制派混迷****
死者が11万人を超えたシリア内戦で、国際テロ組織アルカイダ系の武装勢力が急速に存在感を強めている。反体制派内の抗争が激化する一方、アサド政権は「テロとの戦い」として正当性を訴え、「アサドか、過激派か」との踏み絵を内外に迫る。

(中略)隣国レバノンのシーア派武装組織ヒズボラが政権軍に加勢して参戦。アルカイダ系の台頭や外国勢力の参戦で、内戦は「政権軍対反体制派」の構図に収まらなくなっている。

反体制派のさらなる内部対立をもたらしたのが、イラクを拠点とするアルカイダ系最強硬派組織「イラク・レバント・イスラム国」だ。
今月18日、北部トルコ国境近くで反体制派武装組織「自由シリア軍」の拠点を襲撃。21日には北東部でヌスラ戦線の拠点も襲い、イスラム過激派同士の対立ともなっている。

 ■「住民殺され、連行
英軍事専門誌ジェーン・ディフェンス・ウイークリーによると、反体制派の戦闘員約10万人のうち、アルカイダ系は約1万人、そのほかのイスラム過激派は3万~3万5千人で、合わせて半数近い。

豊富な戦闘経験を持つアフガン人やチェチェン人などが、イラクやヨルダンから重火器とともに流入しているとされる。政権軍からの離反兵中心の自由シリア軍を戦闘能力で上回り、火力でも政権軍と渡り合う。

反体制派の一角として政権軍に対する昨年の攻勢の主力を担ってきたが、目的は「シリアでの民主政権の樹立」ではなく「厳格なイスラム法に基づく国づくり」だ。支配地域では斬首による処刑や改宗の強要、女性のベール着用の強制などが相次いでいるという。

「イスラムに改宗しろと言われ、住民3人が殺されて6人が連れて行かれた」。ヌスラ戦線に一時占拠され、住民約2千人が逃げたダマスカス郊外のキリスト教徒の村マアルーラの高校生ジョージ・カイラニさん(18)はそう語る。
険しい地形で孤立していたためキリスト教が維持されてきたマアルーラは、キリストが話した古語、アラム語が今も使われる言語学的にも貴重な地域だ。

 ■政権「テロとの戦い」
「これは内戦ではない」
アサド大統領は17日、米テレビのインタビューで「反体制派の8~9割はアルカイダ系」と述べ、「テロとの戦い」との立場を強調した。

アサド政権は国内外に広がる過激派への不安を足場固めの好機ととらえる。自警団に武器を与えて訓練し、数万人規模の「国民防衛隊」を組織。反体制派への離反などで十数万人規模に減ったとされる陸軍を補完する形で検問や情報収集を担わせるほか、市街戦の最前線にも送り出す。

また、化学兵器問題をめぐる米軍による攻撃の先送りに成功したことで自信を深めている。自ら停戦に応じる意思を表明するなど、外交面でも主導権を握る構えをみせる。

一方、自由シリア軍を傘下とする反体制派の代表組織「シリア国民連合」はジレンマに苦しむ。
20日には「イスラム国」を「アサド政権と戦わず、反体制派の支配地域で足固めをしようとしている」と非難したが、過激派を排除して政権軍を打倒する道筋は描けない。
一方、過激派の存在自体が、欧米に軍事支援をためらわせる主因となってきた。幹部の辞任も相次ぐ。

地元記者は声を潜めていう。「アサドかアルカイダか。今や誰もがその二者択一を迫られている」【9月25日 朝日】
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進む反体制派の内部分裂
アルカイダ側は最高指導者ザワヒリのメッセージで、自由シリア軍との武力抗争を公然化させています。

****反体制派の内紛激化でアサドが漁夫の利****
泥沼の内戦が続くなか自由シリア軍とアルカイダ系武装勢力の衝突が目立ち始めている
(中略)
9.11同時多発テロ12周年の翌日、アルカイダの最高指導者アイマン・アル・ザワヒリの肉声メッセージなるものがネットで流れた。

アメリカはシリア反体制派の戦士を「欧米と手を組む世俗組織」に合流させようとしているが、「われらが兄弟とシリア国民は結束して聖戦に励み、こうした組織には近づかないように」との警告だった。

ザワヒリの言う「世俗組織」がFSA(自由シリア軍)を指すのは明らかだ。FSAにもイスラム系の部隊はいるか、欧米や湾岸アラブ諸国の支援を受ける彼らをアルカイダは決して許さない。

FSAのアブード(東部戦線司令官)は、「要するにアルカイダは、われわれとの武力抗争を公然化したわけだ。政治の空白がその背景にある」と言う。
さらに、FSAがアルカイダ系組織と共闘したことはなく、「われらの最高軍事評議会は、政権転覆まで身内の争いを避けたかった」が、相手がやってくるなら「戦わざるを得ない」とも語った。(後略)【10月1日号 Newsweek日本版】
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一方、自由シリア軍を傘下とする反体制派の代表組織「シリア国民連合」は、アルカイダ系組織「イラク・レバント・イスラム国(ISIL)」が反政権闘争を妨げていると非難する声明を発表する形で、両者間の対立が深まっています。

****シリア:国民連合がアルカイダ非難 反体制派内で対立激化****
シリア反体制派の主要組織「シリア国民連合」は20日、反体制派に加わっているイラク拠点の国際テロ組織アルカイダ系組織「イラク・レバント・イスラム国(ISIL)」が反政権闘争を妨げていると非難する声明を発表した。

ISILは18日以降、トルコとの国境付近で、国民連合傘下の自由シリア軍を攻撃していた。両者は国家観を巡る意見の相違を背景に対立が激化している。

国民連合は声明で「ISILはアサド政権と戦わず、体制派の支配地域で、独自の統治を始めようとしている」と指摘。「外国の勢力と協力して、シリアの主権を脅かしている。市民を抑圧する姿勢は(アサド政権与党の)バース党の歴史と重なる」と厳しく批判した。

在英組織「シリア人権観測所」によると、ISILは18日以降、トルコ国境近くの自由シリア軍の拠点アザーズを攻撃。AP通信によると、トルコは近くの国境検問所を一時封鎖した。両者は20日までに戦闘で捕虜にした兵士の交換などを条件に停戦が成立したが、対立は各地でくすぶっている。

シリア内戦では、イスラム過激派も反体制派として参戦しており、ISILは最強硬派として知られる。ISILはイスラム教に基づく新国家建設を志向しており、革命を目指す国民連合とは思想が異なっている。【9月21日 毎日】
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国外に拠点を置く政治組織「シリア国民連合」と、シリア国内で戦闘を行う「自由シリア軍」の間にはもとから深い溝がありましたが、アルカイダ系組織の存在感が強まるなかで、イスラム過激派などの「シリア国民連合」からの離反が明確化しています。

そもそも「自由シリア軍」のなかで、イスラム過激派とそうでない組織の間の線引きができるのか?
「シリア国民連合」がコントロールできる実戦部隊がどれほどあるのか?
そこらあたりの状況はよく知りません。

****13組織が離脱声明 シリア反体制派、分裂進む****
反体制派の武装組織「自由シリア軍」傘下の一部有力部隊やイスラム過激派など13の武装組織が25日、反体制派の代表組織「シリア国民連合」を正式な代表と認めないとする共同声明を出した。反体制派の内部分裂が一段と進むことになる。

中東の衛星テレビ局アルジャジーラなどが報じた。声明に参加したのは、アルカイダ系イスラム過激派ヌスラ戦線や、北部アレッポを拠点とする有力部隊など。

声明では、外国に拠点を置く反体制派グループは認められないとし、国民連合や今月14日に選出されたばかりのトーメ暫定首相を「我々を代表していないし、認知もしない」と宣言。
さらに、「シャリア(イスラム法)を唯一の法とするため全ての軍事、民間のグループに結束するよう求める」とした。【9月26日 朝日】
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イスラム過激派・アルカイダ系組織の勢力拡大は欧米諸国に反体制派への武器支援をためらわせています。
“フランスのフランソワ・オランド大統領は19日、「管理された環境下で」、「多数の国が同時にこれを行う」場合に限りFSAへの武器供与を支持すると明言した。米国も反体制派に提供した武器がアルカイダ系組織の手に渡る懸念を繰り返し表明している”【9月21日 AFP】

「アサドかアルカイダか。今や誰もがその二者択一を迫られている」状況では、反体制派「自由シリア軍」の軍事的勝利はこれまで以上に難しくなったように見えます。
仮に、アサド政権を倒すことができたとしても、「政権を倒してからアルカイダを掃討」という当初の目論見は難しいでしょう。
結局、政権が存続するにせよ、崩壊するにせよ、混乱の中でテロの温床となるイスラム過激派・アルカイダ系組織の実効支配地域が拡大することにもなります。

模索される政治解決の道
こうした情勢を受けて、反体制派代表組織「シリア国民連合」も政治解決への道を模索しているようにも見えます。

****シリア反体制派が和平会議参加へ 「用意ある」と表明****
シリア反体制派代表組織「シリア国民連合」のジャルバ議長は22日、内戦の停戦に向けて米ロが開催を目指す和平会議について、条件付きながら「参加する用意がある」と表明した。ロイター通信によると、連合が和平会議への参加を言明するのは初めてという。

連合が国連安全保障理事会に提出した書面の内容として報じた。ジャルバ氏は「(米ロが)ジュネーブで開く会議に参加する意思を再確認する」と表明。一方で、「完全な行政権を持つ移行政府の樹立が会議の目的であることを、全ての関係者が合意しなければならない」と主張した。【9月24日 朝日】
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アサド政権側は、反体制派内部の分裂、化学兵器使用問題でのシリア攻撃回避という流れののなかで、“シリア政府は内戦が膠着状態にあることを認め、反体制派に停戦を呼び掛ける用意がある”【10月1日号 Newsweek日本版】との姿勢で、外交攻勢をかけています。

化学兵器使用問題の方は、一応の筋道が出来つつあるようです。

****シリア:決議案、近く合意…安保理 ロシア譲歩か****
シリアの化学兵器の廃棄を目的とした国連安保理の決議案について、フランスのファビウス外相は25日、5常任理事国(米英仏露中)が一両日にも合意に達するとの見通しを示した。安保理外交筋も同日、毎日新聞の取材に「合意に近づいている」と語った。

決議案をめぐっては、米英仏が国連憲章第7章(平和への脅威)に基づく強制措置を盛り込むことを主張していたが、ロシアが反対しており、最大の焦点になっていた。

AP通信によると、この点に関して、ファビウス外相は講演先のコロンビア大学で、憲章7章に言及することが「(常任理事国に)受け入れられた」と明らかにした。ただ、まだ細部にいくつかの問題点が残っているという。

ロイター通信によると、決議案にはシリアのアサド政権に廃棄履行の過程で違反があった場合、「憲章7章に基づく措置を課す」と明記する。

ただ、ロシアのガチロフ外務次官は「自動的に強制措置を認めるものにはならない」とAP通信に対して述べ、実際にどのような措置を取るかを決めるには新たな決議が必要になるとの見方を強調している。

米露合意では来年前半までにシリアの化学兵器を廃棄することになっており、化学兵器禁止機関(OPCW、本部オランダ・ハーグ)がその作業工程を審議。この決定を受けて、安保理決議案が採択されることになるとみられる。【9月26日 毎日】
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化学兵器使用問題で合意が成立すれば、欧米諸国にとってアサド政権は打倒すべき相手というよりは、化学兵器廃棄の管理者、ひいては今後の交渉の相手ということにもなります。

アサドかアルカイダか。今や誰もがその二者択一を迫られている」状況では、今後の反体制派との和解に向けた条件を課した枠組みのなかでアサドを選択する方が賢明のように思えます。

ただそうした選択は、アサド政権の弾圧に抗して戦ってきた反体制派の多くには受け入れがたいものでもあり、国際社会の政治解決の模索は、戦闘の現場における更なる混乱をまねくことも懸念されます。
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シリアの未来が決まるのは戦場だけではない  困窮する国内外の難民

2013-09-25 21:50:44 | 中東情勢

(“flickr”より By UNHCR UN Refugee Agency  http://www.flickr.com/photos/25857074@N03/9709322380/in/photolist-fMYPh1-cWAhfs-bojbyW-dqdxgc-cWAgzh-eqKrbG-eeNkf9-f45KVn-f46rXn-f467NZ-f43pX6-f45KZv-f454Me-f46rZM-f45mbk-bq78WA-efj4Ja-eeGAUp-dW6bfF-dtyBPA-fc9cTj-eeMTyY-bq7rRq-dCKpsS-e3mzdc-e3mzJc-e3sg7w-e3mzRe-e3sgem-e3sgg9-e3N1mT-aoAR6X-dfNiJL-efpNKS-dSy1zL-dSy2Po-dSxZSN-dSxZt5-dSspjF-dSsq2M-dSsr1e-dSsqdt-dSsqb8-dSsp3k-dSy1D3-dSy245-dSsqnp-dSsqQT-dSsruP-dSspYg-dSxYp5)

シリア難民は200万超・・・現実は更に厳しく
内戦が続くシリアからは200万人を超す難民が国外に脱出したと言われていますが、当然ながら、国外での難民生活は厳しいものがあり、シリア国内へ戻ることを希望する難民も多いようです。

****シリア難民キャンプで見た5つの事実****
アメリカのジョージ・メイソン大学のシンクタンク、「宗教および外交と紛争解決に関する国際研究センター(CRDC)」のディレクターであり、ナショナル ジオグラフィックの探検家でもあるアジズ・アブ・サラ氏は先月、シリア難民の子どもたち数百人のためにサマーキャンプを開催する目的で、現地スタッフとボランティア数人とともに、トルコとシリアの国境沿いで数週間を過ごした。

現地は予想以上に深刻で、一触即発の状況を迎えているという。サラ氏に、その問題点を挙げてもらった。シリア、トルコ、ヨルダンで暮らすシリア難民を訪ねたのはこれで3度目。訪問する度に視野が広がり、現地でしか知り得ない現実がいくつか見えてきた。

◆1. 数に入っていない難民が大勢いる
シリア難民の実際の数は、国連の公式発表よりはるかに多い。隣国で暮らす難民は200万超とされているが、これはシリアの出国時、または亡命先の国に到着した時点で、国連に登録された数に過ぎない。

しかし、筆者はトルコとヨルダンを訪れた際、難民登録を済ませていない多くのシリア人に出会った。国連の統計に含まれない人々だ。
例えば、10日前にシリアのホムスから、トルコ南部、ハタイ県の難民キャンプに到着したばかりの貧しい家族は、ほかの多くの同胞のように、トルコに不法入国している。

◆2. 受入国も危機にある
多数の難民を受け入れる隣国は、インフラ不足に直面している。難民の状況や受入能力の欠如の深刻度は、レバノンの現状が物語っている。

レバノンが受け入れたシリア難民は71万6000人に上り、420万人の人口がわずか12カ月で17%増加した。世界中を見渡しても、この状況に対応できる国はどこにもない。

以前から水に関する大きな問題を抱える隣国ヨルダンも、危機的な状況に陥っている。
難民が殺到してから1年後、14万4000人が集中するザアタリキャンプを訪れた5月には、水くみの長い列ができていた。キャンプ外のヨルダン国民も、水不足に不平を募らせている。

◆3. 子どもの教育が無視されている
難民の半数以上を占める子どもへの対応にも、受け入れ国は苦労している。現地の子どもが通う学校への編入は不可能な上、これだけの人数を収容する施設の新設も極めて難しい。

筆者が訪れた国で出会った子どもの大部分は未就学で、どのような形の教育も受けていない。武力紛争が勃発し、緊急の人道支援が求められる段階では、残念ながら教育は二の次となる。

しかし今、見通しを誤れれば5年後には、教育を受けておらず、おそらく公民権すら奪われ、いつ過激派になってもおかしくない世代に世界は対応を迫られることになるだろう。

◆4. 多くのシリア難民はいまだ自国にとどまっている
シリア国内には、住む場所を失った国民が400万人以上もとどまっている。国境越えの困難さに直面し、対立に巻き込まれ、または祖国を捨て去るべきでないと信じる人々。さらに、未知の世界への恐れもある。

シリア国内の難民キャンプの生活環境は、トルコやレバノン、ヨルダンよりはるかに劣悪だ。食糧や薬、水は明らかに不足しており、しかもキャンプで暮らしているかどうかに関わらず、常に銃弾が飛んでくる危険にさらされている。

◆5. 難民キャンプは監獄に似ている
キャンプに入った難民は、登録後に門とフェンスで囲まれた空間に閉じ込められる。武装警官が警護する中、自由意志の外出は許されず、日常生活も管理される。
働く機会を奪われ生産活動に関われない生活は、一番の精神的ダメージを被る。1日分の食料と水を受け取って、希望もなくただ待つしかない。まるで監獄だ。

このような生活に耐えられず、危険を犯してでもシリアへの帰還を選択する者もいる。
筆者がザアタリ・キャンプを訪れたとき、ヨルダン側の管理事務所の前に100人ほどの列ができていた。危険を知りながら、今すぐキャンプを出てシリアに帰国する許可を求める人々が並ぶ。

シリアの未来が決まるのは戦場だけではない。何百万もの難民、住む場所を失った人々も、戦後の国の行く末を左右することになる。
国際社会は、教育や医療、心的外傷の治療に重点的に取り組むべきだ。
武力紛争の終結後、シリアがより良い未来を築けるかどうかは、こうした人々にかかっている。【9月24日 ナショナルジオグラフィック】
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拡大するシリア国内の食糧危機
国外の難民生活も厳しいものがありますが、国外に出られない、あるいは国内にとどまった人々の生活も、戦禍による生命の危険に加えて、食糧確保などの面でも困難に直面しています。

****WFP:600万人以上の緊急支援必要…シリア担当調整官****
来日中の国連世界食糧計画(WFP)シリア危機担当地域緊急調整官、ムハナド・ハディ氏(47)が20日、東京都内で毎日新聞のインタビューに応じ、シリアで年末までに人口の約3分の1にあたる600万人以上の緊急支援が必要になるとの見通しを示した。ハディ氏は「食糧危機が拡大している」と国際社会の支援を求めた。

ハディ氏によると、シリアでは農作物の収穫が内戦前から半減し、食糧価格は2〜3倍に高騰。国内避難民は500万人を超えた。

WFPスタッフが武装勢力に誘拐されたり、政権側や反体制派に支配地域での活動を拒否されたりするケースもあり、食糧を配布できたのは目標の約8割にとどまっているという。

WFPは現在、毎週3000万ドルの活動資金が必要とされるが、ハディ氏は「来年にはさらに増える可能性がある」と指摘。「紛争を政治的に解決し、直ちに戦闘を終わらせなくてはならない」と訴えた。【9月20日 毎日】
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また、同氏は、「内戦前は女子教育促進のための食料支援を行っていたが、その同じ少女が戦災で家を失い、希望を失い、WFPの食料に頼って生きているのが今のシリアだ」「家を破壊され、女性や子どもが路上生活を余儀なくされている。それさえできなくなり、東西南北シリア中を逃げ回った揚げ句、疲弊し切って周辺国へ押し出されてくる」【9月22日 時事】と、特に子供の窮状を訴えています。

男たちは義憤に駆られ、あるいは犠牲になった家族・友人・仲間の復讐を誓い、銃を手にして銃弾が飛び交う戦場へ出て行きます。
それは命を懸けた決断ですが、一種の高揚感もあります。
しかし、後に残された女性や子供たちは、毎日の暮らしをどうすればいいのかという真綿で首を絞めるような問題に直面します。

将来的な安定を確保するために重要な“教育”】
また、前出【9月24日 ナショナルジオグラフィック】にあるように、混乱の中に捨て置かれ、教育の機会もない子供たちのなかから、数年後、現状を全面的に否定する過激な行動に走る者がうまれてくることは容易に想像できます。

国内外の難民の生活の安定、教育の機会の提供は、現在の人間らしい暮らしを守るうえでも、将来的な安定を確保するうえでも重要です。

****シリア難民の子ども40万人に教育を、マララさんが国連で呼び掛け****
シリア内戦を逃れて国外に避難した約40万人の子どもに教育の機会を与えようと、パキスタンでタリバン勢力に銃撃されて頭部に重傷を負ったマララ・ユスフザイさん(16)らが23日、国連総会で米ニューヨークを訪れた各国首脳らに総額1億7500万ドル(約170億円)の支援金を呼び掛けた。

女性が教育を受ける権利を訴えたマララさんは昨年10月、その権利を否定するタリバン勢力に銃撃されたが、その後、英バーミンガムの病院で治療を受けて回復した。

マララさんと国連教育特使のブラウン前英首相は、プロジェクトの立ち上げに当たり、支援団体から100万ドルの寄付金を受け取った。

国連児童基金(ユニセフ)によると、教育が必要なシリア難民の子どもはレバノンだけで25万7000人に上り、来年には40万人に増える見込み。

ブラウン前首相はこの日、シリア難民の教師が子ども40万人の教育に当たるという英シンクタンクによる計画を発表。レバノンに施設を作り、給食も提供するという。【9月24日 ロイター】
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安倍首相も27日の国連演説で、シリア難民対策などで6千万ドル(約60億円)の追加支援を柱とする人道支援策を表明するそうです。

****シリア難民支援60億円 首相、国連総会で表明へ*****
安倍晋三首相が27日(現地時間26日)に米ニューヨークで行う国連総会での一般討論演説の概要が22日、分かった。シリア問題では、難民対策などで6千万ドル(約60億円)の追加支援を柱とする人道支援策や化学兵器廃棄に向けた技術支援策を表明する。

首相は、演説の半分以上を「女性と人権」のテーマに割く一方、昨年の総会で激論が交わされた対中国・韓国の懸案にはほとんど触れず、「法の支配」の重要性のみを訴える予定だ。

日本はシリア支援をめぐり、6月の主要国(G8)首脳会議(ロックアーン・サミット)で、難民支援策として1千万ドルの緊急無償資金協力を表明。これまでの支援総額は約9500万ドルに達している。

しかし、8月にシリアで化学兵器が使用された後、難民が激増。今月には200万人を超えたとの指摘もある。
日本は難民キャンプの食糧や医薬品など支援策をさらに拡充することで、積極的に人道支援に関与する姿勢を打ち出す考えだ。

また首相は演説で、シリアの化学兵器を国際管理下に置き、2014年半ばまでに廃棄するという米露合意を支持し、支援する意向を表明する。
日本は中国国内に旧日本軍が遺棄したとされる化学兵器を処理する技術と設備を有しており、このノウハウをシリアで活用する考えを示す。(後略)【9月23日 産経】
******************


国連UNHCR協会 シリア特別支援
https://www.japanforunhcr.org/syria/action.html

ユニセフ シリア緊急募金
http://www.unicef.or.jp/kinkyu/syria/?utm_source=googlea&utm_medium=cpc&utm_campaign=syria
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エジプト  ムスリム同胞団の活動禁止 高まるシシ国防相待望論

2013-09-24 21:40:07 | 北アフリカ

(シシ国防相をプリントしたチョコレート 【9月21日 毎日】)

【「イスラム教を隠れみの」にして「国民の権利を侵害した」】
エジプトでは軍・暫定政権によるムスリム同胞団封じ込めが進んでいます。

****エジプト 同胞団の活動、禁止 組織弱体化、抗議行動も困難****
エジプトの首都カイロの裁判所は23日、7月のクーデターで失脚したモルシー前大統領の出身母体であるイスラム原理主義組織ムスリム同胞団と、そのすべての関連団体の活動禁止を命じた。

これにより、同胞団が支持拡大の手段としてきた貧困層への慈善活動や政治活動も不可能になるとみられ、すでに治安当局による大量逮捕で衰弱した組織がさらに弱体化するのは必至だ。

この日の決定では活動禁止のほか、カイロにある本部ビルなどの資産差し押さえも命じられた。軍を後ろ盾とする暫定政権が検討しているとされる同胞団の非合法化に向けた地ならしとなる可能性もある。

地元メディアによると裁判所は決定理由で、同胞団は「イスラム教を隠れみの」にして権力を握り、「国民の権利を侵害した」などとした。同胞団の法的地位をめぐっては同国の司法委員会が今月初め、裁判所に対し、解散を命じるよう勧告を出していた。

決定に対し同胞団側からは強い反発が予想される。ただ、バディーア団長をはじめとする指導部の多くはすでに逮捕されるか地下に潜伏していて組織の動員力は大幅に低下しており、大規模デモなどによる抗議行動は困難とみられる。

その半面、一部団員らによる暴走の恐れもある。中部ミニヤ県やカイロ近郊では最近、治安部隊と武装集団との間での銃撃戦も起きており、武装闘争激化への懸念は強い。【9月24日 産経】
*****************

今回訴訟は左派の国民進歩統一党が起こしたものです。

“同胞団は1928年の創設以来、貧困世帯の支援や無償の医療提供など福祉活動を通じて、社会に根を張ってきた。54年にナセル元大統領の暗殺を謀ったとして非合法化され、歴代政権に何度も弾圧されたが、政治活動を表向きは放棄することで、慈善団体としての活動は黙認されてきた。だが今回の判決によって慈善活動も禁止されるとみられ、国内での組織の存続は極めて難しくなった。”【9月23日 毎日】ということで、これまでムスリム同胞団が国民の広い支持を得る理由ともなっていた慈善活動も禁止する、これまでになく厳しい措置となっています。

また、同胞団・関連団体の資産を凍結(“没収”との報道も)する内容にもなっています。

今回判決では、解散については「裁判所には判断する権限がない」と指摘するにとどめていますが、TV報道によれば、解散をめぐる動きも11月あたりのタイム・テーブルに上っているようです。

シシ国防相待望論
こうしたムスリム同胞団封じ込めの一方で、軍事クーデターを主導したシシ国防相に大統領立候補を求める声も高くなっているとのことです。

****エジプト大統領選:シシ国防相、出馬求める声高く**** 
来年2月ごろに実施されるエジプトの次期大統領選で、軍事クーデターを主導したシシ国防相(58)に対し、立候補を求める署名運動が広がっている。

シシ氏は出馬に否定的だが、反政権デモの広がりを受けてクーデターを起こしたのと同様に「国民の声に応える」という形で、立候補する可能性は残る。エジプト情勢の鍵を握る指導者の実像を追った。

18日夕、カイロ市中心部で、シシ氏の写真をプリントした白地のTシャツを着た約100人のデモ隊が「シシを大統領に」と気勢を上げた。
メンバーが約100枚の署名用紙を配ると、通行人が殺到。2分で紙はなくなった。9月上旬に署名活動を始めた薬局経営のアディール・ガマルさん(40)は「もう100万人分は超えた。シシ氏は私欲がなく、米国とも戦える強い指導者だ」と話した。

1000年以上の歴史があるカイロ旧市街のガマレイヤ地区。石畳の大通りを曲がると、未舗装の路地にゴミが散乱し、無数のハエが舞っていた。
シシ氏は、この地区の6階建てアパートの最上階で生まれ育った。14人兄弟の次男。父は工芸店主だった。信心深い母の影響で、幼いころから1日5回の礼拝を欠かさず、聖典(コーラン)を暗唱した。運動が好きで、今も自宅の地下駐車場をジムに改装して鍛えているという。

「ライオンのようだ。静かに振る舞い、決断したら素早い」。従弟のファタヒ・シシさん(44)はそう評する。年に数回しか降雨がないカイロが珍しく雷雨に見舞われたとき、近所でシシ氏だけが普段通り学校へ登校していたのが印象的だったという。

高校卒業後、軍士官学校に入った。「規律正しい組織が性に合ったようだ」とファタヒさんは話す。一般の知名度は低かったが、軍関係者によると、勤勉かつ清廉で早くから次世代のリーダーと目されていた。英米への留学も経験し、2012年8月に国防相に就いた。

知人らは「物静かで、友人も多くはない。家族を大切にしている」と口をそろえる。7月に国営テレビでモルシ氏の大統領解任を宣言した後に向かったのも、週1回は会うという母親のもとだった。

だが7月以降、周辺は騒がしくなった。英雄扱いされ、街中でシシ氏のポスターを飾る人が増えた。一方で、モルシ氏の支持者が書いた「シシは裏切り者」という落書きも目立つ。

過去に「中東での統治にはイスラム教を考慮すべきだ」との論文を書いたことから「イスラム主義の傾向」を指摘する研究者もいるが、軍関係者や知人は「政教分離の世俗主義者だ」と断言する。

「政治的な野心はない。今が人生のピーク」。7月下旬、大統領選の話題に触れた知人に、シシ氏はそう打ち明けた。8月の米紙のインタビューでも出馬を否定したが「人々に愛されることが重要だ」と、含みを持たせた。

シシ氏は7月下旬に軍を支持するデモを呼びかけ、数十万人が街に出た。当時デモに参加した大学生のアシュラフ・コドブ(22)は期待を込めてこう言う。「今度はシシが国民の声に応える番だ」【9月19日 毎日】
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“シーシー氏待望論が強まるのは、2011年の政変以降の混乱に伴う経済や治安の悪化に疲れた国民に、軍の力を背景とした「安定」を求める心理があるためだとみられる。”【9月15日 産経】
更に言えば、そうした「安定」をもたらしてくれる「英雄」待望論でしょう。

旧体制、警察国家への回帰の懸念も
ただ、強権的なムバラク政権を崩壊させた「アラブの春」は、モルシ政権崩壊の混乱を経て、その振り子を一気にもとの時代へと戻す感もあります。
「安定」をもたらしてくれる「英雄」を望む声が、新たな「独裁者」と旧体制の復活をもたらす懸念も強く指摘されています。

****ムバラク回帰警戒も****
・・・・ただ、エジプトではムバラク政権までの歴代大統領を軍出身者が務め、政財界との結びつきで利権を確保する構造が続いてきた。
シーシー氏や他の軍出身者が大統領選に具体的に意欲を示せば、従来の権力構造への回帰を警戒する民主化勢力などから異論が噴出する可能性もある。【9月15日 産経】
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モルシ前大統領が選ばれた12年の大統領選挙・決選投票でも、軍・旧体制とのつながりが批判された対立候補のシャフィク前首相が48%あまりの票を獲得したように、旧体制を支持する基盤も強固に存在しています。

****エジプト:甘い関係? シシ国防相のチョコ、富裕層に人気****
エジプトの軍事クーデターを主導したシシ国防相(58)をデザインしたチョコレートが富裕層に人気を集めている。軍と富裕層は共にムバラク政権時代からの既得権益を持っており、チョコの人気は両者の蜜月ぶりを表しているようだ。

考案したのはカイロで洋菓子店「カカオ」を経営するバヒラ・ガラルさん(51)。食用インキを使用して、デジタル写真の画像をチョコレートにプリントする製法を2年前に導入。クーデター後の今年8月からシシ氏のチョコを売り始めた。

デザインは10種類以上あり、1日計200個以上が売れる1番人気の商品だという。ベルギー産のチョコレートを使用した1個5〜15エジプトポンド(約72〜216円)の高級品で、主な顧客は富裕層。モルシ前大統領の支持基盤だった貧困層には手が届きにくい。

ガラルさんは「政治のことは分からないけど、父も軍将校だったので、シシ氏には親しみを感じている」と話している。【9月21日 毎日】
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シシ国防相の人気高まり、あるいは過熱を示すエピソードも報じられています。

****エジプトで「ロバ命名事件」 シーシー氏人気過熱の“被害者****
エジプト南部ケナ県で先日、飼っているロバに、7月のクーデターを主導した第1副首相兼国防相と同じ「シーシー」と名付けた男性が逮捕された。
エジプトをはじめとするアラブ世界でロバは、愚鈍なものの代表格とされているから、男性の行為はシーシー氏や軍への侮辱と判断されたようだ。

イスラム原理主義組織ムスリム同胞団出身のモルシー前大統領が放逐されたクーデター以降、シーシー氏の人気はすさまじく、次期大統領に推す声は強い。街では同氏のポスターを張った商店や車を多く見かける。

今回のロバ命名事件の男性にシーシー氏への反発があったのかどうかは分からないが、逮捕はどう考えても行き過ぎだ。過熱したシーシー氏人気の“被害者”といえるだろう。

ただ、こういう事例は決して珍しくはない。ムバラク政権が崩壊した2011年の政変後、同胞団が勢いをつけたときは「にわか団員」が急増し、イスラム教を侮辱したとして逮捕者がたくさん出た。

エジプト人は世の中の「空気」に敏感で熱しやすいところがあり、その時々の強者になびく人が多い。民衆のしたたかな処世術だともいえるが、それが、移ろいやすい世論にそっぽを向かれることを恐れる権力者を、強権行使に向かわせる一因ともなっているように思う。【9月24日 産経】
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今後、封じ込められたムスリム同胞団の過激化・暴発、それに対応する政権側の管理・支配体制の強化という悪循環が懸念されます。
民意と移ろいやすい世論、民主主義と衆愚政治・ポピュリズムは紙一重のところがありますが、大統領選に出る、出ないは別として、シシ国防相が強権支配国家・警察国家の復活という“愚鈍”な選択を行わないことを期待します。
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世界各地でイスラム過激派武装勢力によるテロ  ナイジェリア、ケニア、パキスタン・・・

2013-09-23 21:52:16 | 国際情勢

(ナイジェリアのベニシェイクで、イスラム過激派ボコ・ハラムの襲撃を受けた車 【9月21日 毎日】)

ナイジェリアの「ボコ・ハラム」】
西アフリカのナイジェリアは豊富な石油資源をもとに著しい経済成長を実現し、その市場に海外資本も注目していますが、一方で、成長のから取り残されている多くの貧困層が存在し、南部キリスト教地域と北部イスラム教地域の間では激しい民族対立が続いています。 特に、イスラム過激派武装勢力「ボコ・ハラム」(地元言語で「西洋教育は罪」)は、主にキリスト教徒を狙った残忍なテロを繰り返し行っています。

****ナイジェリア:幹線道路で攻撃相次ぐ 市民159人死亡****
西アフリカ・ナイジェリア北東部で、幹線道路上で武装グループによる通行者への攻撃が相次ぎ、少なくとも159人が死亡した。ロイター通信が報じた。テロ攻撃を強めるイスラム過激派ボコ・ハラムの犯行と見られている。

ボコ・ハラムの拠点マイドゥグリに通じる幹線道路で17日に、ボコ・ハラム戦闘員と見られる男らが通行車両に乗っていた市民143人を殺害。さらに19日にも同様の事件が別の場所で起こり、少なくとも16人が死亡したという。

ナイジェリアでは、ボコ・ハラムがキリスト教会や政府機関などへの攻撃を強め、政府軍の取り締まりも苛烈になっている。今年4月には政府軍とボコ・ハラムの交戦に市民が巻き込まれ、180人以上が死亡する事件も発生した。

ボコ・ハラムは2002年にマイドゥグリで結成されたイスラム過激派組織。全土でシャリア(イスラム法)の導入を目指すなど原理主義的思想で知られ、「ナイジェリアのタリバン」とも呼ばれる。【9月21日 毎日】
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武装集団はボルノ州民だけを標的にし、他の地域の人々は検問所を通過させているとのことで、軍による「ボコ・ハラム」掃討作戦に協力する形で自警団を組織したボルノ州の住民への報復攻撃ではないかとも報じられています。

イスラム過激派武装勢力によるテロは後述のように世界各地で頻発していますが、ナイジェリアの「ボコ・ハラム」の場合、住民が巻き込まれるのを厭わないというより、キリスト系住民や意に沿わない地域の住民など、住民殺害そのものを目的としている点や、7月7日ブログでも取り上げたように、学校を襲撃して、生きたまま焼かれた生徒もいる・・・といったことなど、他のイスラム過激派武装勢力によるテロに比べても残忍なイメージがあります。

ケニアではソマリアの「アルシャバブ」】
東アフリカ・ケニアでは、隣国ソマリアのイスラム過激派武装勢力「アルシャバブ」が首都ナイロビのショッピングモールを襲撃して大勢の死者が出ています。

****ケニア:首都乱射、死者59人…ソマリア過激派が犯行声明****
21日にケニアの首都ナイロビの商業施設で起きた銃乱射事件で、隣国ソマリアのイスラム過激派アルシャバブが同日夜、犯行声明を出し、さらなるケニア国内でのテロ攻撃も示唆した。

ケニア政府によると死者数は59人、負傷者数は175人。国際テロ組織アルカイダの犯行とされる在ナイロビ米大使館爆破事件(1998年8月)以降、最悪のテロ事件となった。
負傷者は300人以上との情報もある。

21日正午ごろ、10〜15人とみられる男らがナイロビ中心部にある商業施設「ウエストゲート・モール」に侵入。銃を乱射し手投げ弾を爆発させた。22日午前現在、襲撃グループは人質を取りモール内に立てこもっている。人質の人数は不明。

女性目撃者の一人は毎日新聞の取材に「襲撃者は、標的は非イスラム教徒と話していた」と語った。襲撃者についてソマリ人がいたと報じられるが、2階で店を営むアブドル・アジズさんは毎日新聞の取材に、襲撃者の一人が「アラブ人に見えた」と語った。その男は黒い布で顔を覆っていたが、その後、布を取って避難する人々の中に紛れ込んだという。

モールは在住外国人や地元富裕層に人気のある高級商業施設。ロイター通信によると、フランス人2人、外交官1人を含むカナダ人2人が犠牲となった。在ナイロビの日本大使館によると、日本人の被害情報はない。

アルシャバブはアルカイダとの統合を宣言した過激派。ソマリア中・南部を制圧したが、2011年10月のケニアの軍事介入などで都市部から放逐され、弱体化が指摘される一方、ソマリア国境に近いケニア北東部などではアルシャバブの犯行とみられるテロ事件が頻発している。【9月22日 毎日】
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上記記事にあるように、事実上の無政府状態にあったソマリアの大部分を実効支配した「アルシャバブ」に対して、その勢力が弱まり始めた時期にケニアは軍事介入(その後にエチオピアも侵攻)し、「アルシャバブ」を都市部から追放する状況になっていますが、そのことへの報復テロとみられています。

なお、“襲撃犯にはソマリア人2人とケニア人1人の他に、米国人3人、カナダ人、フィンランド人、英国人各1人が加わっている。”【9月23日 時事】との報道もあります。

パキスタンの「パキスタンのタリバン運動(TTP)」】
「テロ地獄」とも呼ばれるようにテロが頻発しているパキスタンでも、アメリカの無人機攻撃への報復を主張する「パキスタンのタリバン運動(TTP)」による大規模なテロが起きています。

****キリスト教会で自爆攻撃、78人死亡 パキスタン****
パキスタン北西部ペシャワルで22日、日曜の礼拝中だった教会で自爆攻撃が2回立て続けに発生し、少なくとも78人が死亡した。同国のキリスト教信者を狙ったものとしては過去最多の犠牲者を出した攻撃とみられる。

ペシャワルのあるカイバル・パクトゥンクワ州では近年、イスラム過激派による攻撃が相次いでいる。チョードリー・ニサル・アリ・カーン内相によると、この攻撃で少なくとも78人が死亡し、100人以上が負傷。うち11人が重体となっている。

イスラム武装勢力「パキスタンのタリバン運動(TTP)」が犯行声明を出し、タリバンと国際テロ組織アルカイダに対する米国の無人機攻撃への報復として外国人を殺害するため、「Junood ul-Hifsa」という新たな分派が設立されたとも述べた。
タリバン運動のスポークスマンは「無人機攻撃が中止されるまで、外国人と非イスラム教徒に対する攻撃を続ける」とAFPに電話で語った。

規模が小さく、その多くは貧しいパキスタンのキリスト教信者コミュニティーは、イスラム教徒が圧倒的多数を占める同国で差別を受けているが、爆弾攻撃の標的になることは極めてまれ。【9月23日 AFP】
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イラク、シリアでも
このほか、宗派間対立が再燃しつつあるイラクでも、アルカイダ系のスンニ派武装勢力が関与したのではないかと思われるシーア派住民を狙ったテロで多くの犠牲者が出ています。

****爆弾攻撃で75人死亡=テロ激化のイラク****
イラク各地で21日、自動車爆弾などを使ったテロ攻撃が相次ぎ、現地からの報道によると、22日までに75人以上の犠牲者が確認された。

イラクでは最近テロが激化し、5月や7月の死者は1000人を超えた。AFP通信の集計では、今月の犠牲者も既に540人に達している。

首都バグダッドのイスラム教シーア派居住区サドルシティーでは21日、葬儀会場を狙った車爆弾などを使った自爆攻撃があり、少なくとも65人が死亡した。

バグダッド北方のバイジや北部のニネベ州などでは主に、治安当局者を標的とした事件が発生し、10人以上が命を落とした。【9月22日 時事】
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内戦が続くシリアでは、反体制派に加担するアルカイダ系組織が独自の動きを強めており、反体制派内の対立が表面化しています。

****シリア:国民連合がアルカイダ非難 反体制派内で対立激化****
シリア反体制派の主要組織「シリア国民連合」は20日、反体制派に加わっているイラク拠点の国際テロ組織アルカイダ系組織「イラク・レバント・イスラム国(ISIL)」が反政権闘争を妨げていると非難する声明を発表した。

ISILは18日以降、トルコとの国境付近で、国民連合傘下の自由シリア軍を攻撃していた。両者は国家観を巡る意見の相違を背景に対立が激化している。

国民連合は声明で「ISILはアサド政権と戦わず、体制派の支配地域で、独自の統治を始めようとしている」と指摘。「外国の勢力と協力して、シリアの主権を脅かしている。市民を抑圧する姿勢は(アサド政権与党の)バース党の歴史と重なる」と厳しく批判した。

在英組織「シリア人権観測所」によると、ISILは18日以降、トルコ国境近くの自由シリア軍の拠点アザーズを攻撃。AP通信によると、トルコは近くの国境検問所を一時封鎖した。両者は20日までに戦闘で捕虜にした兵士の交換などを条件に停戦が成立したが、対立は各地でくすぶっている。

シリア内戦では、イスラム過激派も反体制派として参戦しており、ISILは最強硬派として知られる。ISILはイスラム教に基づく新国家建設を志向しており、革命を目指す国民連合とは思想が異なっている。【9月21日 毎日】
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フィリピン南部ミンダナオ島のサンボアンガでは、イスラム武装勢力「モロ民族解放戦線(MNLF)」のメンバー約180人と政府軍との戦闘が、住民を人質に取る形で9日から続いています。現在は、政府軍が状況をコントロールするところとはなっていますが、完全には集結していない模様です。

フィリピンのこの事件はイスラム武装勢力によるものですが、同じイスラム武装勢力「モロ・イスラム解放戦線(MILF)」の進める政府との和平交渉の枠組みから締め出された感があるMNLFが企てた主導権争い的な性格があり、他の地域のイスラム過激派武装勢力によるテロとは異質なものがあります。

イスラム世界の不満
現代の紛争・混乱の主たる要因がイスラム過激派の引き起こすテロによるものであることは、特に「9.11」以降顕著になっていますが、ここ数日の状況を概観すると、上述のように世界各地でイスラム過激派による事件が同時多発しており、あらためてイスラム世界にどのように向き合っていくべきかという問題に直面します。

当然がら大多数のイスラム教徒はテロとは無縁で、むしろ過激派武装勢力の引き起こすテロの被害者ともなっている訳ですが、これだけイスラム過激派武装勢力の活動がイスラム世界に広がる背景には、欧米主導で欧米的価値基準に基づいて作られた現在の世界の枠組みに対して、経済的・政治的に劣後した状況に追いやられているイスラム世界の人々の不満が強く存在していることがあるように思われます。

更に、イスラムの教義の中にジハード(聖戦)に走りやすい面があるのか、イスラム世界で人命に対する考え方で欧米と差があるのか・・・そのあたりはよく知りません。イスラムと欧米社会の衝突に関しては万巻の書が出されていますが・・・。

イスラムにどう向き合うべきか云々も手に余る問題でなんとも言いようがありませんが、イスラム過激派武装勢力によるテロに惹起されてイスラム排斥的動きを強めることは、おそらくイスラム世界全体に存在している不満に火をつける形で、より多くの人々を過激派の方へ追いやる結果となるのでは・・・という感があります。
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インド社会の負の側面  「名誉殺人」、カースト制、そしてレイプ犯罪

2013-09-22 22:09:35 | 南アジア(インド)

(ニューデリーで起きたバス車内集団レイプ事件の犯人に厳正な裁きを求める女性たち 【9月11日 The Voice of Russia】)

州政府首相ら地元の政治家たちは事件について沈黙
家族や一族、地域社会が認めていない交際をした男女や婚前・婚外交渉(強姦の被害による処女の喪失も含む)を行った女性を、一族の名誉と誇りを守るため父親や男兄弟などの親族が殺害する「名誉殺人」と呼ばれる風習は、中東イスラム文化圏やインドなど(バングラデシュ、トルコ、ヨルダン、パキスタン、ウガンダ、モロッコ、アフガニスタン、イエメン、レバノン、エジプト、パレスチナ、イスラエル、インドなど)で広く行われています。

この「名誉殺人」については、これまでも何回かとりあげてきました。
(2012年11月4日ブログ「女性の権利に関する問題  インドの名誉殺人 イタリアのDV被害 日本は?」http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20121104 など)

上記ブログでも触れたインドでは、“「名誉殺人」についてインド最高裁は2010年、インドの野蛮な「汚点」であり犯罪だとみなし、有罪の場合は死刑に処するべきだとの判断を示している。だが、公式の統計はないものの市民団体によれば、インド全土で年間約1000件もの名誉殺人が起きているという。”【9月20日 AFP】とのことで、そうした“年間約1000件”のうちの1件がまた報じられています。

“インド北部ハリヤナ州ロータク県の村で18日、駆け落ちした若いカップルが怒った親族によって殺害される「名誉殺人」事件が起きた。地元警察当局が19日明らかにした。男性(22)は首を切り落とされ、女性(20)は殴り殺されたという”【同上】

年間約1000件行われているとも言われる「名誉殺人」のなかで、今回事件がたまたま報道されたのは、おそらく首を切り落としてさらすという猟奇性のためでしょう。

****インド:逃避行直前の男女、家族が殺害 同氏族の結婚禁止****
インド北部ハリヤナ州ロタック地区の村で18日、恋人同士の女子学生(20)と男子学生(22)が、伝統的な価値観から恋愛結婚を認めない女子学生の父親ら家族に相次いで殺害された。

うち男子学生の遺体は首を切られ、「見せしめ」のために自宅前に放置された。

警察は19日、女子学生の両親とおじを殺人容疑で逮捕したが、父親は「家族の名誉のために正しいことをした。後悔していない」などと話している。

報道によると、村では、村人同士や同じ氏族の出身者同士の結婚が伝統的に禁じられてきた。
殺された男女は同じ氏族の出身で、家族が別れるように強要したが、2人は18日に首都ニューデリーに駆け落ちしようとしたところをバス停で家族に見つけられ、村に戻され殺害されたという。
男子学生の家族は19日に村から逃亡したという。

現場の村はニューデリーから約50キロの首都郊外。
前近代的な「名誉のための殺人」を支持する村人たちについて、民放NDTVは、かつてアフガニスタンで公開処刑を繰り返していた旧支配勢力タリバンになぞらえて、「インドのタリバンだ」などと報じた。

だが、ロタック地区出身のフーダ・州政府首相ら地元の政治家たちは事件について沈黙している。「殺害を非難すれば、伝統的価値観にこだわる住民たちの支持を失いかねないため」(ニューデリーの住民)とみられている。【9月20日 毎日】
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“ニューデリーから約50キロの首都郊外”ということで、そんなに地方の片田舎という訳でもありません。

悪しき風習や狂気にかられる人々というのは、どこにでも存在はしていますが、“州政府首相ら地元の政治家たちは事件について沈黙している。「殺害を非難すれば、伝統的価値観にこだわる住民たちの支持を失いかねないため」(ニューデリーの住民)とみられている”というのが、やりきれないところですし、問題の深刻さを示しています。
これでは、今後の改善もあまり期待できません。

公的機関によるカースト階級別火葬場の設置計画
インドで最も有名な伝統といえばカースト制になります。前記の「名誉殺人」の温床ともなっています。カースト制は公的には、1950年に制定された憲法で全面禁止が明記されています。

身分・職業を規定するといわれる複雑なカースト制を外部の人間がイメージすることは困難です。
また、そもそも論として、こうした社会の根幹をなす伝統的価値観をどのように理解すべきかということは、非情に難しい問題です。

必ずしも、旧弊として頭から否定されるべきものではないのかもしれませんが、現実問題として差別的なネガティブな影響を社会全体にもたらしている側面があります。差別と表裏の関係にある制度であれば、裏だけ取り除くということもできず、全体として廃棄されるべきでしょう。

社会に根深く存在するカースト制の現状については、下記のようにも記されています。

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“カーストが成立した時期には存在しなかった職業などはカーストの影響を受けないと言われる。IT関連産業などは、当然カースト成立時期には存在しなかったので、カーストの影響を受けない。インドでIT関連事業が急速に成長しているのは、カーストを忌避した人々がこの業界に集まってきているからと言われている。

しかし、高等教育を受けることが出来ない下層カースト出身者は高度な仕事が出来ない上に、仮に優秀であったとしても上層カースト出身者で占める幹部が下層カースト出身者を重要なポストに抜擢することはなく、表面的にはカーストの影響を受けないIT関連事業においてもカーストの壁が存在するのが現状である。”

“現在でも、保守的な農村地帯であるパンジャブ州では、国会議員選挙に、大地主と、カースト制度廃止運動家が立候補した場合、大地主が勝ってしまうという。現世で大地主に奉仕すれば、来世ではいいカーストに生まれ変われると信じられているからである。”

“児童労働従事者やストリートチルドレンの大半は下級カースト出身者が圧倒的に多い一方、児童労働雇用者は上級カースト出身で、教育のある富裕層が大半である、と報告される”

“インド国内の刑務所内の受刑者の大半が下級カースト出身者で占められている”
【ウィキペディアより】
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憲法でも禁止されており、インド社会のくびきともなっているカースト制の是正については、公的なセクターにおいてすら鈍いようです。

****カースト差別、火葬場まで=階級別に47カ所設置計画―インド****
インド北部ラジャスタン州で、伝統的な身分制度カースト制に基づいた階級別火葬場を設置する計画が持ち上がり、「憲法違反だ」などと反対の声が上がっている。

発案したのは、州都市開発・住宅省傘下の都市整備機構。パキスタン国境に近い町ジャイサルメールで、予算5000万ルピー(約8000万円)をかけ、「ナイ(美容師)」や「ダルジ(仕立屋)」などカースト名を明示した47カ所の火葬場を建設すると発表した。

地元紙によると、同機構のタンワール会長は「複数のカースト階級を扱う火葬場を嫌う住民がいるため、この計画を進めることを決めた」と説明。「この地域ではカースト別に火葬することは藩王国の時代からあった習慣で、何も不思議ではない」と主張する。

一方、ラジャスタン大学のグプタ教授は「遺体までもカーストに基づいて区別するのは合理性に反しており、完全に憲法違反だ」と批判する。【9月21日 時事】
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司法制度には依然、「やる気のなさ」も
インド社会には女性蔑視、女性の人権が軽んじられる傾向もあり、結果としてレイプ事件の多発を招いていますが、この女性蔑視の風潮については、昨年末に首都ニューデリーで起きたバス車内集団レイプ事件を機に、変化の兆しも見えるようです。
ただ、現実の壁を突き崩せるかどうかは、今後の話です。

ニューデリーの裁判所は13日、犯行グループの被告4人全員に対し、レイプや殺人罪で求刑通り死刑を言い渡し、性犯罪に対する厳罰化を求めていた多くの国民は極刑判決を歓迎しているそうです。
(なお、主犯格とされた男は3月に刑務所で首をつって死亡。事件当時17歳だった少年は、少年矯正施設に3年間収容する決定を受けています。)

****インド集団レイプ殺害事件が破った沈黙の壁*****
インドの裁判所が10日、被告4人に有罪を言い渡した集団レイプ殺害事件は同国全土に大規模な抗議行動を巻き起こし、性犯罪に関する法の厳罰化や警察改革を促したが、女性に対する暴力の波は一向に収まる気配がない。

昨年12月、首都ニューデリーで個人バスに乗り込んだ女子学生(当時23)が、一緒にいた交際相手の男性ともども車内で集団に暴行され、女性は約2週間後、治療を受けていたシンガポールで多臓器不全のため死亡した。

女性人権団体などの活動家らは、この事件をきっかけに性的暴行を受けた被害者の一部が沈黙を破るようになり、長年、レイプに関するどんな議論も封じてきた文化的タブーが解かれたと述べている。

女性の支援や人権擁護活動を行っているニューデリーのNPO「社会研究センター」のランジャナ・クマリ氏は、亡くなるまでのおよそ2週間、女子学生の生き延びるための闘いが、他の被害者たちに声を上げさせたという。「以前だったらレイプという言葉さえ誰も口にしなかったけれど、その沈黙が終わりを告げたのです」

前月ムンバイで女性カメラマンが同じく集団レイプされた事件は、広く報じられたことで、別の女性が7月に同じ容疑者たちに暴行されたことを初めて証言するに至ったとクマリ氏は語る。

しかし司法制度には依然、「やる気のなさ」が漂っているという。
ニューデリーの集団暴行殺害事件の被告4人の裁判は迅速に進められたが、その他のレイプ犯罪の裁判は事件発生から何年もたった今もなお審理開始を待っているありさまで、人権活動家らは裁判官の考え方自体、変えさせる必要があると主張している。

「レイプの都」とまでいわれるニューデリーの警察には今年1~6月で800件のレイプ被害が記録されているが、これは前年同期比で2倍以上となっている。
この増加について、デリー警察の女性と子どものための特別班に所属するスマン・ナルワ氏は、被害者の間で名乗り出ようという意志が高まっている表れだと説明する。

警察の対応に非難の声が向けられたことによって、デリー当局は全警官に対し、2008~11年に展開していた性犯罪に関する意識強化キャンペーンを復活させた。
また電話相談サービスを増設したり、全警察署に女性のための24時間相談窓口を設けた。

ナルワ氏いわく「以前は性暴力は他の犯罪と比べて後回しにされることを余儀なくされていたが、今は最優先とみなされている。最高水準の態勢でそうした犯罪を監視している」という。

政府も強姦(ごうかん)罪の強化という重要な一歩を踏み出した点は、活動家らも認める。
3月の議会で可決した新法には、レイプの被害者が死亡した場合に実行犯の最高刑が死刑となったことや、性的暴行や性的いやがらせに関する記録を怠った警察官に対する懲戒処分の条項などが盛り込まれた。

こうした変化は抗議行動の正当な成果だと、「全インド進歩的女性協会」の運動家、カビタ・クリシュナン氏は評価し、「性的暴力に対する闘いがいかに大きな運動となり得るか、世界もインドの闘いから学べることがたくさんあると思う」と語った。

しかし社会研究センターのクマリ氏のように、インド当局が真剣に性的暴力と闘うのならばもっと根本的な改革が必要だと訴える運動家もいる。
性的暴行の後遺症と向き合うにあたり、被害者が当局から十分な支援を得られることはまれな上、レイプの被害者に無神経に対応する警官や公務員は今も多い。

新法についてクマリ氏は、厳格な懲戒処分の枠組みを示した包括的なものだが十分でないと批判し、「何万件ものレイプ被害が未解決な一方で、有罪となっているのはわずか。これではまったく強いメッセージになっていない」と語った。【9月11日 AFP】
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インドネシア  来年7月の大統領選挙は早くも「当確」?

2013-09-21 23:04:46 | 東南アジア

(下町を視察するジョコ・ウィドド・ジャカルタ特別州知事(中央) 正直なところ風采はいまひとつの感はありますが、そこがまた“庶民派”たる所以でもあるのでしょう。左隣はアメリカ大使のようです。 “flickr”より By U.S. Embassy, Jakarta http://www.flickr.com/photos/39809323@N03/9013009998/in/photolist-eJs2S7-deAwa7-dJsfrC-9EdJoX-eaW9Af-deAxan-deAxRV-deAvpq-deAvc7-deAxwc-deAxkD-ex2wpk-ex5q4s-ex5ELy-ex5JmN-ex2kPM-ex2o7P-9ko9Fe-ex5ziY-ex5CTs-ex5uFh-dCvFpB-ek44Uu-bE8A2J-dJP1bN-bXapm9-b5fv2t-eKbgzX-dwnZwC-dwo1PE-edyPMW-dwo243-djSrYp-e98iRd-e7GhFX-fbdCUe-fLoPPo-fL7dpH-9CaATB-fH4Z95-fH4YZW-e7GhSc-e92DHp-e98isL-e5xvWU-e7MTB3-e6JKQu-e98ib9-dJYZuM-dkEwTt-c2PBMU)

【「既存の政治家とは、あらゆる面で正反対の人物だから」】
インドネシアでは大統領選挙が来年7月に行われますが、早くも「当確」が出ているそうです。

古都ソロの市長を経て昨年9月に首都・ジャカルタ特別州知事に当選したジョコ・ウィドド氏の人気が非常に高く、大きなスキャンダルが今後なければ闘争民主党の大統領候補として選挙にのぞみ、「全く選挙運動をしなくても、120%の確率で大統領に当選する」とも言われています。

****インドネシア:来年大統領選 庶民派候補が早くも「当確****
インドネシアで来年7月に行われる大統領選挙で、国政経験の無い地方政治家が世論調査でも他の立候補予定者に大差をつけてリードしている。クリーンで庶民派として知られ、既存の政治家を嫌う国民の支持が集まっており、専門家は「当選確実」「選挙は終わった」と指摘している。

「大統領当確」とされているのはジャカルタ特別州知事のジョコ・ウィドド氏(52)。中部ジャワのソロ出身で大学卒業後、家業の家具販売などを経て2005年、ソロ市長に就任。2期目途中だった昨年、ジャカルタ特別州知事選に出馬し、現職を破って当選した。

知事就任後、深刻な交通渋滞の原因だった市中心部の大規模市場の撤去に成功するなど実績を重ね、人気を高めた。メディアは連日その行動を追い、注目度はユドヨノ大統領をしのいでいる。ジョコ氏が所属する闘争民主党内では、大統領選の候補者として、すでに決定済みとみられている。

地元有力日刊紙「コンパス」が実施した世論調査では支持率は32・5%と、2位のプラボウォ・スビヤント元陸軍戦略予備軍司令官に倍以上の差をつけた。別の世論調査では支持率が45%を超した。

ジョコ氏の人気の理由について、多くの地元記者は「既存の政治家とは、あらゆる面で正反対の人物だから」と、口をそろえる。初代スカルノから現職のユドヨノ氏まで歴代大統領は全て高級軍人や宗教指導者などエリート出身だった。次期大統領選の有力候補もジョコ氏以外は首脳、閣僚経験者や元軍人で、中には過去に汚職や人権侵害への関与を取りざたされた人物も多い。

一方、ジョコ氏は庶民出身のたたき上げで、公用車は今もトヨタの大衆車。下町の屋台で食事をしながら、気さくに住民と言葉を交わし、市場で買った安価な靴を愛用する。「親しみやすさ」に加え、汚職と無縁で、公約を着実に実行に移す行政手腕は「ユドヨノ氏に代表される口先だけの既存の政治家」(地元記者)に失望した国民から絶大な支持を集める要因となっている。

地元紙の政治担当記者らはジョコ氏が「高い確率で当選する」と見ている。インドネシア政治専門の立命館大の本名純教授は「イスラム教に関する失言や女性スキャンダルなど致命的な失点がなければ、全く選挙運動をしなくても、120%の確率で大統領に当選する」と話す。【9月21日 毎日】
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昨年9月のジャカルタ特別州知事選挙の際は、ジョコ・ウィドド氏とコンビを組んで副知事候補として立候補した華人のバスキ・チャハヤ・プルナマ氏について、これまで「経済を牛耳るが、政治嫌い」とされてきた華人の異例の政治への挑戦であること、現職陣営が「華人に首都を奪われていいのか」と激しい選挙戦を展開したことが国際的には話題となりましたが、知事候補のジョコ・ウィドド氏自身については話題とはなりませんでした。
インドネシア在住のindobaru氏による「インドネシア語・Watch」(http://indobaru.exblog.jp/20970615/)によれば、ジョコ・ウィドド氏の経歴などについては以下のように紹介されています。

****ジャカルタ知事ジョコ・ウィドド氏の経歴*****
正式名:Ir. H. Joko Widodo (H.ジョコ ウィドド:愛称 ジョコウィ)1961年6月21日スラカルタ市で生まれる。現在52歳。ジャカルタ知事第17代目。その以前は、スラカラタ(Solo)市長を二期勤める。

◆幼少期
貧しい家庭で育つ。学用品代や駄菓子代は自分で稼いだ。傘を運んだり、荷担ぎの仕事をしたりした。学友は自転車で通学するが、ジョコは歩いて登校した。

12歳の時、父の大工稼業を受け継いだ。住む家の立ち退きを三回経験した。この経験が、スラカルタ市長に就任時、住民の住居を整備する上で指導力を発揮した。そして今回のジャカルタ市タナアバン地区の整備でも指導力を発揮した。
(著者注記:ジャカルタ知事としての赴任時、政庁へ持ち込んだ事務机・椅子・書類棚、公邸へ持ち込んだ寝具・家具は、自作の木工家具である。大工としての技量は相当なレベルである。)

◆大学時代と事業経営時代
秀でた学力から、ガジャマダ大学林業学部に迎え入れられた。この時、材木に関する構造学、利用方法、加工技術を学んだ。

大学卒業後、国有会社に就職したが間もなく退社し、唯一の自分の家を賃貸する商売を始める。商売が順調に発展した時、外国人事業家に出会う。努力と誠実な性格から各方面から信頼を得た。

ヨーロッパを旅行した時、素晴らしい町並みを見て歩き、帰国後、その良さをソロ市のインフラに採り入れた。

◆スラカルタ(ソロ)市長時代
若い時のさまざまな経験を元に、インフラの悪いソロ市の発展に努力した。市民の反対もあったがそれも解決した。ジョコウィの指導力から、ソロ市は大きく変化させ、国外大学の研究対象にもなった。

ソロ市のインフラ整備に努力した。古物商を、緑地化・環境整備された場所へ移転させた。この時、市民の反対運動は起きなかった。個人商売と市の公共性を共存させる政策を次々と展開した。

ソロ市に「ジャワの心」という宣伝文句を付け、市の発展を更に促進した。2006年に、ソロ市は世界遺産都市メンバーとして承認された。

以後、2004年には王宮内部紛争の調停に乗り出したり、数々の活躍をした結果、2008年に時事雑誌『Tempo』が選ぶ「10人の人物」の一人に選出された。【9月7日 「インドネシア語・Watch」】(http://indobaru.exblog.jp/20970615/
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市場の郊外移転事業
いわゆる庶民派の苦労人のようです。
ソロ市長時代に市民の支持を得たのは、市街地にあったカキリマ(露天商)の市場を、市街地から車で20分以上かかる郊外へ移転させた事業でした。

なんとなく話の雰囲気はわかります。
インドネシア社会は他の東南アジアの国々同様、すさまじい勢いで車社会に変化しています。
しかし、道路・駐車場などのインフラ整備がおいつかず、市内の市場などは車、バイクが溢れており、駐車スペースを確保することも難しい状況ににあります。
市場周辺の混雑が交通渋滞の原因ともなります。
また市場内は狭く、暑く、人混みで息苦しい感じがあります。

そうした市場を整備された郊外の広いスペースに移転させれば、市場内外のカオス的な混雑が緩和されます。
(観光客の目線で言えば、そうしたアジア的カオスはひとつの魅力でもあるのですが・・・住民の立場はまた別でしょう)
市街からは離れますが、どうせ人々の移動は車・バイクが中心になっていますので、さほどの不都合はないと思われます。日本でも市街地から郊外の大型商業施設に移転しているのと同じです。

同氏が住民から支持されたのは、こうした事業の方向性の正しさだけでなく、その手法にもあるようです。
カンプン(下町)など現場を視察し、その場で関係者の声を聞きながら指示を出していくスタイルで、途上国・新興国にありがちな強権的に移転させるというものではないようです。
また、慎重だが始めたら猛スピード。事業後のケアも欠かさない・・・とも。【2012年11月24日 じゃかるた新聞より】
首都ジャカルタにおいても同様事業で支持を高めたようです。
首都ソウルの清渓川復元工事で人気を集め、実行力をアピールして韓国大統領に就任した李明博大統領に似た感じもあります。

汚職に無縁
インドネシアの政治家には珍しく汚職などに無縁なところも支持されている理由のようです。
同氏の“収賄”については、著名なヘビメタバンドから贈られたギターが話題になったぐらいです。

****メタリカからジャカルタ州知事に贈られたベースギター、やっぱり没収****
インドネシア政府は28日、米メタルバンドの大御所「メタリカ(Metallica)」のメンバーが、ヘビーメタル好きで知られるジャカルタ首都特別州のジョコ・ウィドド(ジョコウィ)知事に贈ったベースギターを、汚職の疑いがあるとして没収することを決めたと発表した。

ジョコウィ知事は今月初旬、メタリカのベーシスト、ロバート・トゥルージロさんから贈呈されたという栗色のベースギターをかき鳴らしながら、さっそうとテレビに登場した。
ベースにはトゥルージロさんのサインと共に「クールでファンキーなベースを弾き続けて!」などの言葉が書かれていた。

だがテレビ出演後、ジョコウィ知事は自主的にベースを国の汚職捜査機関「汚職撲滅委員会(KPK)」に提出することになってしまった。KPKは28日、政府高官への贈答の規則に基づいてベースを調べた結果、この楽器を没収することを決定したと発表した。

「KPKは調査の結果、賄賂の授受に発展する可能性のある利害相反を認め、政府がギターを没収することを決めた。ギターは国の所有物となる」と、KPK当局者はAFPの取材に語った。
同当局者は「プロモーターは、(ジョコウィ氏が)メタリカファンであることを知っていた可能性が高い。プロモーターが見返りに何かを期待する可能性がある」と述べた。
さらにベースには、「Giving Back」とも書かれていたことから、「何かの見返りの可能性」が示唆されていると付け加えた。

番組内でジョコウィ知事は、メタリカの大ファンだと公言。他にもレッド・ツェッペリンやディープ・パープル、ナパーム・デスといったハードロックやヘビメタのバンドが好きだと語っていた。【5月30日 AFP】
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汚職捜査機関「汚職撲滅委員会(KPK)」も、もっと他にやるべき仕事があるだろうに・・・という感があります。
もっとも、KPKは汚職摘発に熱心に取り組んでおり、むしろ警察がこれを阻害する形にあるようです。

ハードロックやヘビメタを好み、ジャカルタ知事選では華人を副知事に抜擢するなど、伝統的価値観やイスラム的価値観に縛られない新しさも感じさせます。
所属する闘争民主党自体が、自由主義・中道左派とされ、華人やクリスチャンメンバーが多いようです。

その闘争民主党は、インドネシアの初代大統領スカルノの娘でもあるメガワティ前大統領が率いる野党ですが、党内におけるメガワティ氏との力関係などについては、知りません。

指導力を欠き失速したユドヨノ政権2期目
04年の大統領就任から第1期の5年間を経て、09年に圧倒的な支持を受けて再選を果たしたユドヨノ現大統領ですが、2期目は支持率低迷に苦しんでいます。

****成長の実感ない」 首都市民、スハルト懐古も****
中央ジャカルタのオフィスビル周辺で働く市民にユドヨノ政権の評価を聞くと、連日報道が続く汚職疑惑に対する失望に加え、国際社会での存在感向上につながっている高い経済成長率の実現についても、「庶民は実感できていない」と不満の声が上がった。

「経済成長を実感しているのは上級公務員とか上層の人たちだけで、市民の暮らしは変わらない。むしろスハルト時代の方がお金を稼ぎやすかったって親は言っているよ」と語るのは警備員のアリヤントさん(35)。
給料は月180万ルピア。1年ごとに勤務契約を延長する形式になっており、「アウトソーシング(派遣・請負労働)だよ」と話す。

次の選挙で投票したい人を聞くと、「信頼できる人なんていない。誰でも同じだよ」と嘆いた。

オフィス街の裏手でミー・アヤム(鶏肉入り麺)のカキリマ(移動式屋台)を営むウンコンさん(54)は、収入は月500万―600万ルピアほどだが、「支出も増えていて自転車操業の状態だよ」。「ジョコウィ(ジョコ・ウィドド・ジャカルタ特別州知事)は町を歩いて直接、市民の声を聞くけど、SBY(ユドヨノ大統領)は報告を部下から聞いているだけでしょ」とつぶやく。

証券会社で働くデニー・クルニアントさん(53)の収入は700万―800万ルピア。「経済危機を乗り越えた指導力は評価できる。ただスハルト大統領の方が庶民の生活を考えていた」と主張し、次期大統領選では「スハルト氏に似ているプラボウォ氏に投票したい」という。

収入は千万―1500万ルピアという金融サービス代行会社勤務のハンダイ・ジャヤさん(45)は「しっかりと経済発展しているし、表現の自由も広がった。昔はメディアに発言する勇気はなかったよ」と語る。
アウトソーシングの問題があることは認識しているが、「それでも格差は昔より縮んだはずだ」とユドヨノ政権の功績を評価した。【2012年10月20日 じゃかるた新聞】
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ユドヨノ大統領の支持率低下の原因としては、汚職への取り組みがで指導力を発揮できなかったことがあげられています。
一方で、“庶民の声を聞いて、現実政治に反映させていく実行力を持った政治家”としてジョコ・ウィドド氏の人気が高まっています。
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