孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

台湾・オーストラリア・韓国の“ウィズコロナ”対応

2022-04-28 22:52:42 | 疾病・保健衛生
【台湾 「重症者をゼロに、軽症者を効果的に管理する」】
中国と同様に「ゼロコロナ」を目指し、感染者も抑え込んできた台湾ですが、「ゼロコロナ」に固執する中国と異なり、3月から「重症者をゼロに、軽症者を効果的に管理する」方針に切り替え、感染者増大は一定に想定したうえで入境制限・行動制限の緩和を進めています。

****コロナ対策「優等生」の台湾で感染急拡大…入境制限緩和後に増加****
台湾で新型コロナウイルスの感染者が急増し、14日には過去最多の982人の感染が確認された。中国と同じように「ゼロコロナ」を目指していた台湾は、感染の封じ込めは困難として、重症者を抑える対策を取りながら、経済との両立を図る戦略への転換を始めた。
 
台湾はこれまで、感染者を施設で隔離し、接触者を徹底的に探して感染の広がりを防ぐ対策を取ってきたが、衛生部門は14日、軽症者や無症状者に対して、自宅での隔離も認めた。

蔡英文ツァイインウェン総統は6日、「重症者をゼロに、軽症者を効果的に管理する」との方向性を示しており、今回の措置はその一環だ。労働力不足も問題となっており、海外から台湾への入境についても、経済発展の観点から適切な時期に緩和していく方針を示している。

台湾はコロナ対策の「優等生」として知られ、世界各地でオミクロン株による感染が広がる中、今年に入っても感染者を抑え込むことができていた。

ところが、3月上旬にビジネス目的の入境制限などを緩和して以降、感染者が増加。4月1日には台湾内だけで100人を超え、急速に拡大した。14日の感染者は874人が台湾内で、108人が空港検疫などで確認された。
 
オミクロン株は感染力は高いが、重症化しにくいとされ、台湾でも感染者の99%以上が軽症や無症状のため、社会的な混乱は起きていない。【4月14日 読売】
***********************

感染者数は連日増加していますが、制限緩和で経済との両立を図る戦略は変わっていません。

****台湾、感染者が連日最多を更新 緩和策も推進、中国と違い鮮明****
台湾の陳時中衛生福利部長(衛生相)は26日の記者会見で、新型コロナウイルスの新たな市中感染者が6295人確認されたと発表した。感染者の発表数は今月中旬に千人を超えて以降、連日最多を更新。

ただ、今年の感染者の99%超が無症状か軽症のため、接触者の隔離期間を短縮するなど緩和策も推進し、中国との違いを鮮明にしている。
 
台湾政府は26日から感染者の濃厚接触者らを対象とする自宅隔離の期間を現行の10日間から3日間に短縮した。隔離後の「自主防疫」期間は7日間を4日間とし、抗体検査が陰性の場合は外出が認められる。入境者の隔離期間は10日間のままだ。【4月26日 共同】
******************

****「ロックダウンはしない」感染者“急増”の台湾 接種会場には行列****
台湾では4月中旬から感染が急拡大し、感染者数が連日最多を更新しています。
行政院長は「上海のようなロックダウンはしない」と発言しました。

ただ、衛生当局のトップは、新規感染者数について「1日4万5000人に上る可能性がある」と警戒感をあらわにしています。

接種会場には、慌ててワクチンを打とうとする住民の列ができているものの、接種率を上げることが課題となっています。【4月27日 日テレNEWS24】
*****************

台湾の人口は日本の約2割ですから、「1日4万5000人に上る可能性がある」というのは、日本で言えば10万人弱のレベル、2月上旬の第6波ピーク時レベルに相当します。

実際、前出【4月14日 読売】では982人、【4月26日 共同】では6295人でしたが、27日には1万人を超えています。ただ、感染者ゼロではなく“重症者ゼロ”を目標にしています。(もちろん、感染者数が増大すると、重傷者も一定に増加しますので、感染者数を抑えることは依然として重要ですが)

****台湾 コロナ新規感染者が初の1万人超え****
台湾で新型コロナウイルスの新規感染者数が初めて1万人を超えました。コロナ対策の変更が影響したとみられます。

台湾当局によりますと、27日に確認された市中感染者数は1万1353人で過去最多となりました。1万人を超えるのは初めてです。

台湾では厳格な隔離などを行う“ゼロコロナ政策”が続いていましたが、経済への影響などを考慮し、今年に入って入境制限を緩和したほか、条件を満たせば自宅での隔離を認めるなど、“ウィズコロナ”を意識した防疫対策に変更していて、感染者ゼロではなく“重症者ゼロ”を目標に掲げています。【4月28日 TBS NEWS】
********************

【オーストラリア 旅行者の全面受け入れを2年ぶりに再開】
オーストラリアも同様の“ウィズコロナ”政策を進めています。

****パンミック終了?感染者増加でもコロナ規制をほぼ撤廃し、正常化するオーストラリア****
オーストラリアでは、新型コロナウイルス感染症感染拡大に伴うパンデミック時に適用してきた「バイオセキュリティのための緊急パンデミック対策法」が、4月17日に失効した。(中略)

これに伴い、海外からの旅行者に課してきた「陰性」を証明する渡航前検査が不要となり、パンデミック下で入港を禁止してきたクルーズ船の寄港も可能となった。

オーストラリアの入国に際しては、海外からの渡航者に対するワクチンを2回以上接種した証明書の提出が必要なことを除けば、パンデミックに伴ってこれまで行ってきた様々な規制は、各州政府が独自に規定して残っているもの以外、ほぼ廃止されたといえる。

ところが今もオーストラリアは、連日 4万人前後の感染者を記録。ピーク時よりは減ったとはいえ、1日あたりの感染者数としては、パンデミックが始まって以来、過去最高規模であり、下のグラフ(略)でもわかるように、パンデミックを通じた感染者のほとんどが今年に入ってからとなっている。(中略)

しかし、世界に目を向ければ、オーストラリア同様に感染者が増加、もしくは上げ止まりとなっているのに、ワクチン接種状況を問うことなく、パンデミック以前のように誰でも自由に出入国が可能となっている国が増えているという。オーストラリアがこうした国々に追随して、すべての規制を廃止するのも間近なのかもしれない。(後略)
【4月27日 平野美紀氏 Newsweek】
**********************

【韓国 文在寅大統領「ついに国民が日常を取り戻せるようになった。感無量だ」】
4月17日ブログ“韓国 「ポストオミクロン対応計画」で通常生活を目指す コロナ禍の「終わらせ方」”でも取り上げたように、韓国も同様の流れにあり、4月18日から新型コロナの行動規制がほぼ撤廃され、25日には新型コロナウイルスの等級を最高段階の1級から、インフルエンザや麻疹、水疱瘡レベルの2級に引き下げています。

感染者数は3月中旬の62万人程度をピークに、緩和措置にもかかわらず急速に減少し、4月25日段階で8万人程度となっています。

その点では、文政権の狙いが当たった数字にもなっていますが、緩和を急過ぎ過ぎているとの批判もあります。
そこは「政権交代」時期ということで、今後感染増加などの弊害が出ても「それは新政権の対応が悪かった」と言えるので転換を急いでいる・・・という指摘もあるようです。

****コロナ正常化プロセスに入った韓国、日本は韓国からの旅行者を増やすべきか****
ウィズコロナ路線を鮮明にした退任間近の文政権、次期政権はどうする?

韓国政府は4月25日、新型コロナウイルスの等級を最高段階の1級から、インフルエンザや麻疹、水疱瘡レベルの2級に引き下げた。ウィズコロナの「日常回復」を本格化させる動きで、これから4週間の移行期間に入る。
 
韓国の2級は、日本でいう「感染症法に基づく分類」の5類相当に該当する。日本でも引き下げが検討されているが、他国に倣う日本のこと、日本が実施するにはまだ時間を要することだろう。
 
日本よりも一足先に分類を引き下げた韓国は、新型コロナウイルスがエンデミック(風土化)に向かっていると判断した。
 
保険福祉部の權德喆(クォン・ドクチョル)長官は、4月15日のブリーフィングで、「オミクロン株の登場によって危険度は低くなった反面、小規模な流行は繰り返される可能性が高い」とし、「これを考慮すれば、より日常的な対応する形に防疫と医療対応を転換する必要がある」と、政府の方針転換について説明している。韓国政府はコロナとの共存を選んだということだ。

2級に引き下げられたことによって、韓国では今後、感染時の7日間隔離義務と医療機関への報告義務がなくなる。また、一般医療機関で受診することも可能となった。
 
インフルエンザ同様、かかりつけの医療機関で受診できるようになったことから、感染者の精神的負担は減少することになるだろう。と同時に、隔離義務がなくなったことから、生活費、有休休暇費、治療費の政府負担は原則終了となった。今後、感染者は個人の費用負担で完治させる必要がある。

コロナ前の日常を取り戻しつつある韓国だが……
日本でも大きく報じられているから既にご存じの方も多いと思うが、今回の等級引き下げよりも先に、韓国では4月18日からマスク着用を除くすべての防疫措置が解除された。
 
およそ2年もの間、飲食店の営業時間が短縮され、集会の人数制限が規制されてきた。ストレスの溜まる生活を強いられてきた国民、とりわけ若い世代は、自由を得ようと防疫措置解除後さっそく街に繰り出している。
 
完全回復とまではいかないが、ソウルの繁華街である江南(カンナム)の歩道は人であふれている。このまま順調にいけば、韓国は日本よりも先にコロナ禍以前の生活を取り戻すことになるだろう。
 
文在寅(ムン・ジェイン)大統領は「ついに国民が日常を取り戻せるようになった。感無量だ」とコメントを出した。「新型コロナウイルス危機を乗り越えたのはK防疫などに取り組んだ文政権の成果だ」と言わんばかりだ。ほとんどの規制が緩和された現状を、文政権は最後の功績にしたいようである。

ただ、5月に新大統領に就任する尹錫悦(ユン・ソクヨル)氏率いる次期政権は、「政府が5月末で隔離義務を完全解除すると決定したのは、性急すぎるアプローチだ」と、文政権の防疫措置緩和を批判している。そのため、新政権によるコロナ対策次第では、再び行動規制される日がやってくる可能性も否定できない。
 
文大統領はあと2週間ほどで退任するから、尹政権誕生後に規制緩和が仇となって国民に被害が生じたとしても、「当時は問題がなかった。悪化したのは尹政権の対応が悪いからだ」と責任転嫁すればいい。(後略)【4月26日 羽田 真代氏 JBpress】
***********************

人出が戻った繁華街ではタクシー不足が深刻化しているとか。

****韓国でタクシー争奪戦 帰宅難民続出で1時間待ちも…背景にコロナ禍【ネタプレ国際取材部】****
私がお伝えしたいのは「韓国のタクシー難民問題」です。
約2年ぶりに飲食店の営業時間など、新型コロナに関する規制がほぼ撤廃された韓国。街には多くの人が繰り出し、賑わいを見せています。

一方、長引いたコロナ禍でタクシー運転手が激減した結果、タクシーが足りず深夜の帰宅難民が続出しているんです。(中略)

韓国全国タクシー運送事業組合によると、2022年2月時点の法人タクシーのドライバー数は7万4754人で、コロナ禍前の2019年12月と比べると2万7000人以上減少しています。

約2年にわたって続いた、飲食店の営業時間や人数制限によってタクシーの利用客が減り、収入や待遇が良く需要が増えたデリバリー・宅配業界に人材が流れたとされています。このタクシー不足は首都ソウルで特に深刻で、1時間待ってもタクシーが捕まらず、数時間かけて徒歩で帰宅する人も少なくありません。

ソウル市は、タクシー運転手の営業時間制限を緩和するなどの対策に乗り出した他、深夜バスを増便するなどしていますが、交通手段の供給不足は依然として解消されていません。

韓国のタクシーは初乗り3800ウォン(約380円)と日本に比べ非常に安く、その分運転手の待遇もいいとは言えません。今回の問題を巡っても、運転手の待遇改善がなければ供給不足は解消できないとする声も挙がっています。人出の増加とともに、いずれタクシー業界にも人が戻ってくる可能性はありますが、相当の時間を要すことになると見られます。

コロナ禍前の生活を完全に取り戻すためには、規制緩和を一方的に進めるだけではなく、取り巻く環境整備も並行しておこなっていく必要があります。【4月28日 FNNプライムオンライン】
*******************

規制緩和を一方的に進めるだけではなく、取り巻く環境整備も並行しておこなっていく必要・・・・それも必要ですが、先ずは政府が明確な方針・戦略を示すことが前提になります。

日本の政治・社会はそういうリスクを伴う方向性を示すことに臆病というか非常に慎重です。
「これまで同様用心しましょう」と言っておけば、状況が悪化しても責任を問われない・・・という発想しかないようにも見えます。

そうした慎重姿勢の結果、犠牲が最小ですんだと主張するのでしょうが、転換の遅れにとなう「失われた機会」のコストは一顧だにされまんせん。


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

韓国  「ポストオミクロン対応計画」で通常生活を目指す コロナ禍の「終わらせ方」

2022-04-17 22:55:08 | 疾病・保健衛生
(ソウル市の桜の名所、汝矣島(ヨイド)には花見客があふれた(9日午後)【4月15日 日経】)

【「K防疫」自賛も、オミクロン株の出現で感染爆発】
韓国ではかつて徹底した検査・隔離を行う「K防疫」という言葉がもてはやされたように、新型コロナ対策では世界でも注目される効果をあげていましたが、オミクロン株の出現によって感染者が急増、3月中旬にはPCR検査だけでなく医療機関での抗原検査で陽性と判定されれば、感染者とみなす形に変更されたことや、大統領選挙で候補者の遊説に大勢の人たちが集まったことも影響して、1日の新規感染者が60万人を超える感染爆発(人口規模は日本の約4割)を経験しました。

************************
韓国は一時期、コロナ封じ込めという点では最も厳格な国の一つだった。昨秋、高いワクチン接種率が達成された時点で、保健当局は通常モードの生活に戻ることを検討し始めた。

だがオミクロン株が現れ、冬の間に感染者が急増したことで、それは中断された。当局はソーシャルディスタンス(対人距離)を確保するルールを強化。集まりは4人までに制限し、営業や公共スペース使用は午後9時以降禁止にした。
 
だが結局、韓国はオミクロン株による感染爆発を抑制できなかった。同国で報告された累計のコロナ感染者数は2022年初めには50万人強だったが、3カ月後の現在は1300万人近くに達している。
 
患者数の多さとは裏腹に、病院の空きベッドには余裕がある。29日時点で集中治療室(ICU)の使用率は約68%だった。韓国はこの2カ月間にコロナ患者全員を入院させる方針から、高齢患者や持病を持つ患者のみにする方針へと移行。若年層の無症状患者には14日間ではなく7日間の自宅待機を求めている。
 
韓国が特に力を入れたのは高齢者への追加接種だ。3回目のワクチン接種を受けた人は、人口の約63%を占める(米国は29%)。韓国やニュージーランドなどは、感染者数は多いものの、ワクチン接種率が高く、入院や死亡の割合が抑えられている。一方、香港などはワクチン接種率が低く、高齢者層を含めて死亡率の高さに苦慮している。【4月1日 WSJ「アジア諸国「コロナ共生」へ舵 感染高止まりも」】
**********************

感染爆発の方は3月中旬にピークアウトしたものの、4月に入っても依然高い水準が続いていました。

【「ポストオミクロン対応計画」 コロナ禍からの出口戦略】
いろいろ評価はあるところでしょうが、こうした今年に入ってからの感染爆発にもかかわらず、ワクチン接種率が高く、入院や死亡の割合が抑えられていることもあって、韓国政府は規制緩和による日常生活復帰への強い意思を見せています。

****韓国 爆発的な感染継続でも飲食店さらに規制緩和へ****
韓国では、新型コロナウイルスの爆発的な感染が続く中、飲食店などの規制がさらに緩和される。
韓国が4月1日に発表した新規感染者の数は28万273人で、3月中旬の62万人あまり(62万1187人)をピークに減少傾向だが、依然として高い水準。
また、重症者の数もおよそ1300人(1日発表:1299人)で、過去最多の水準が続いている。

しかし、韓国政府は医療体制に余力があることなどを理由に4月4日から、飲食店の営業時間や人数の制限をさらに緩和し、『午前0時まで(現在は午後11時まで)』『1グループ10人まで(現在は8人まで)』認めることを決めた。

さらに感染状況次第では、4月中旬にも飲食店の営業制限を完全に撤廃する可能性もあるとしている。
また、現在一部の病院に限定されている感染者の対面診療を4月4日から地域のクリニックなどすべての医療機関に拡大するほか、新型コロナの隔離措置も見直しが検討されていて、近い将来、感染者の隔離がなくなる可能性もある。

こうした規制緩和は、『日常回復』に向けた動きを加速させたいものと見られているが、オミクロン株のうち、より感染力が強いBA.2「ステルスオミクロン」への置き換わりが進む中、さらなる感染拡大につながる懸念もある。【4月1日 FNNプライムオンライン】
*********************

感染水準は、4月16日は10万人を切るところまで低下しています。

韓国政府は「パンデミック」収束後の防疫・医療体制戦略となる「ポストオミクロン対応計画」を発表しています。

****新型コロナを「第1級感染症」から除外へ 5月下旬から感染者の隔離免除=韓国政府****
韓国政府は15日、新型コロナウイルスの変異株「オミクロン株」流行収束後の防疫・医療体制を長期的に日常化するための戦略を盛り込んだ「ポストオミクロン対応計画」を発表した。

政府は国内で初めて新型コロナ感染者が確認されてから2年3カ月で「日常医療体制の回復」を公式に宣言し、5月下旬までに新型コロナ以前の水準の防疫・医療体制に復帰するためのロードマップを提示した。

政府は今月25日に、新型コロナを最高レベルの隔離義務が生じる第1級感染症から除外し、第2級感染症に指定する。

結核、はしか、コレラ、水ぼうそうなどと同じ第2級感染症になれば、第1級で適用される7日間の隔離義務や医療機関による患者の申告義務が免除され、感染者はインフルエンザと同じように一般の医療機関を利用することになる。

これまでは新型コロナによる外来・入院医療費は無料だったが、今後は健康保険と患者本人の負担となる。新型コロナの検査・診断は民間医療機関で行い、保健所では60歳以上と療養型病院・施設の従事者など高リスク群のPCR検査のみを行う。

全ての医療機関を自由に利用できるようになるため、「在宅治療(自宅療養)」の概念もなくなる。ただ、感染者は当分の間これまで通り地域の病院・医院で電話による非対面診察や処方を受けることができる。

政府は新型コロナを第2級感染症に指定する今月25日の直前までを「準備期間」、25日から4週間を「移行期間」として段階的に医療体制の転換を準備する。ポストオミクロン戦略の施行準備が完了段階に入れば「安定期」を宣言する方針だ。

感染者の入院治療体制は重症者用病床を中心に改編し、現在の計3万2802床から4191床に減らす。

海外からの入国者に対する検査も簡素化する。入国者は現在、入国当日にPCR検査、6〜7日目に迅速抗原検査を受けているが、6月からは入国当日のPCR検査のみを受けることになる。

金富謙(キム・ブギョム)首相は「政府は日常回復を推進しながらも、新たな変異株や再流行に備えて監視体制を強化し、危機が感知されれば医療リソースを迅速に再稼働する」と述べた。

一方で、医療界からは新規感染者数が依然として1日当たり10万人以上発生しているなか、1カ月という短期間で隔離・入院・病床政策を転換するのは望ましくないとの意見も出ている。【4月15日 聯合ニュース】
*******************

【18日から新型コロナの行動規制がほぼ撤廃】
上記方針に沿って18日から新型コロナの行動規制がほぼ撤廃されます。
当然ながら「急ぎ過ぎ」との批判はありますが。

****韓国で18日から新型コロナの行動規制ほぼ撤廃...撤廃に批判の声も****
韓国ではこの2年間、新型コロナウイルス感染症の行動規制だった「社会的距離の確保」が今月18日に終了する。連合ニュースなど複数の韓国メディアが報じた。  

15日に韓国政府が発表した新型コロナによる防疫規制の調整案によると、私的な集まりの人数や飲食店など大勢の人々が利用する施設で、営業時間の制限も完全に撤廃されることになった。イベントや集会も人数の制限なしに開催できるようになり、映画館や公演場での飲食も可能になる。  

宗教施設と一部の事業所に半月間「運営制限」を勧告する初の行政命令が下された2020年3月22日を開始時点で見ると、社会的距離の確保が解除されるのは757日、約2年1か月ぶりとなる。  

韓国政府が防疫規制の解除を発表したことで、夜間の飲食店にも人々が戻り始めている。  
16日、ニューシスの報道によると、規制解除前の最後の金曜日だった15日、ソウル都心のレストランや居酒屋は、すでに防疫制限が解除されたかのように、夕食を楽しみに来た人々でにぎわった。飲食店の店主らもも、2年ぶりの防疫制限の解除で浮き立っている。  

ソウル市ヨイド(汝矣島)にあるビヤホールには、5~6人の団体客が後を絶たないほど賑わっていた。  殺到する客で休む間もなく動いていた社長の金さん(57)は、「営業制限時間が午前0時に伸びて、暖かくなってきたこともあり、お客さんが前より多くなった」とし、「人手不足なので、店員を追加で採用しなければならなくなった」と賑わいの状況を説明した。  

こうした中で、韓国政府が早急に防疫制限を解除したことに、憂慮する見方も少なくない。  
15日、韓国経済新聞の社説では、今回の措置は韓国政府が防疫の責務を国民に転嫁したも同然だという見方もあると指摘する。  

同紙は一部では「世界で初めてコロナのパンデミック(世界的大流行)からエンデミック(感染病の風土病化)に転換した国家」というタイトルを獲得するために、政府が解除の措置を急いだのではないかという疑念を提起している」と伝えた。  

また「警戒心を緩めず、早期警告システムなどの対応体制を整える必要がある。政府が昨年11月、生半可にウィズコロナ政策を施行して失敗した手痛い経験を忘れてはならない」と忠告した。【4月17日 WoW! Korea】
******************

【世界最初の「エンデミック国」に? コロナ禍の「終わらせ方」】
「世界で初めてコロナのパンデミック(世界的大流行)からエンデミック(感染病の風土病化)に転換した国家」というタイトルを獲得するため・・・云々は、いかにも韓国らしくて笑えますが、政府当局の「パンデミック」収束に向けた強い意思は感じます。

****韓国が世界最初の「エンデミック国」になる? *****
<韓国の新型コロナウイルス感染者が急増する中、金富謙(キム・ブギョム)首相は「韓国はエンデミックに転換する世界最初の国になることを期待する」と述べた......>

2022年4月12日、韓国の新型コロナウイルス感染者が累計1563万5千人余となり、人口5161万人(22年3月推計人口)の30%を突破した。

専門家らが楽観視できない状況だとして警告を発するなか、金富謙(キム・ブギョム)首相が「韓国はエンデミックに転換する世界最初の国になることを期待する」と述べ、マスク着用義務の解除などソーシャル・ディスタンスを緩和する検討をはじめている。

「エンデミックにはendが入っているが、何かが終わる意味はない」
4月1日、米ウォールストリートが「韓国が最初のエンデミック国になるだろう」と報じると、金富謙首相がエンデミックへの移行を期待する発言を行った。

エンデミックは周期的に発生する風土病で、ギリシャ語に由来する。特定地域を意味するエン(en・英語のin) と人々を意味するデム(dem)を組み合わせた語で、特定地域で流行を繰り返す感染症を指している。

エンデミックより広範囲におよぶ感染症をエピデミック、世界的な流行をパンデミックと呼んでいる。マラリアなどがエンデミックとされており、インフルエンザがエピデミックに分類されている。

2020年1月、世界保険機構(WHO)が新型コロナウイルス感染症をエピデミックに分類した後、パンデミックに拡大した。

エンデミックは予測可能な範囲で広がることから社会機能に大きな支障をきたさないとされている。米国や欧州などで新型コロナウイルスが2022年にはパンデミックからエンデミックに移行するという考えが広がる一方、世界保険機構(WHO)は否定的で、慎重な姿勢を崩していない。

韓国でも保健福祉部の班長が「エンデミック宣言ができるかどうかは未知数で、当分は難しい」「エンデミックは予測可能な水準で患者が発生することを意味しており、世界的に新型コロナが小康状態に入らなければならない」などと首相の発言を牽制し、専門家らもエンデミックに移行する期待は時期尚早だと警告する。

対外経済政策研究院のチャン・ヨンウク副研究委員は「エンデミックにはendが入っているが、何かが終わる意味はなく、実際はその反対」といい、「ある病気が消えずに特定地域内で続くか、周期的に発生して土着化する意味」だと指摘する。

エンデミックを念頭に置いた対応へ
しかし、政府は病院や医院の検査・治療体系の拡大、防疫規制の解除予告、隔離期間の短縮など、エンデミックを念頭に置いた動きを見せる。(中略)

「『エンデミック』へ転換する世界初の国になることを期待する」
金首相がエンデミックに言及した直後の4月4日、韓国政府は規制緩和を行った。(中略)

金首相は「重症と死者を減らして医療システムを管理できるようになったら、ソーシャル・ディスタンスなどの防疫措置を改編する」とし、「コロナ患者が市内の病院や医院で不便なく対面診療を受けられる『エンデミック』へ転換する世界初の国になることを期待する」と述べた。

早ければ4月18日にも私的会合の人員制限や飲食店等の営業時間、300人以上の行事や集会の禁止など、あらゆる制限を解除したい考えを示している。また、屋内のマスク着用は「防疫最後の砦」として維持するが、屋外のマスク着用を解除する可能性を示唆した。

世界ランキングや世界初を過度に意識する傾向
韓国の新規感染者は3月17日に60万人台を記録した後、右肩下りとなっている。減少しているといっても、3月には1日あたり20万人以上、4月に入ってからも連日10万人から20万人の新規感染者が確認されている。(中略)

検査を受けるために訪問した病院で感染する可能性がある。韓国は世界ランキングや世界初を過度に意識する傾向が強い。「世界初のエンデミック国」にこだわって対応を誤る可能性は拭い切れない。【4月14日 佐々木和義氏 Newsweek】
********************

「急ぎ過ぎ」への批判はいくらでもできますが、一方で日本の場合、いったいどうする考えなのか全く出口戦略が見えません。ただその時々の感染状況の推移に一喜一憂しているだけ、ひたすら警戒・自粛を呼び掛けるだけ・・・の感も。

コロナ禍の「終わらせ方」のひとつとして韓国の事例は参考になると思われます。

****韓国60万人超の感染爆発で非難殺到も世界初のコロナ勝利宣言!?****
韓国内から「K防疫の勝利」の声は?
3月末のウォール・ストリート・ジャーナルに「新型コロナウイルスが風土病に転換する初の国は韓国になるかもしれない」という記事が載った。

パンデミック(世界的な感染大流行)からエンデミックへ。

現在、これが世界中の共通認識になっているコロナの終わらせ方。つまり、一定地域で季節的に流行を繰り返す風土病に移行することで、新型コロナウイルスは季節性インフルエンザのような存在となる。

韓国がそれを最初に行う国。世界に先がけてコロナ終焉宣言を出すことになるかもしれない。ということなのだが。

他国の評価をやたら気にするお国柄。いつもであれば、韓国のマスコミがこぞって「K防疫の勝利」とか言いながら自画自賛して悦に入りそうな感じなのだが、意外に反響は少なかった。なぜなのだろうか。

「韓国はパンデミックから抜け出せる手段を持っている」
今年3月の段階で人口に対する新規感染者の割合で、韓国は米国の約3倍にもなる感染爆発を起こしていた。
そんな状況で、韓国政府は感染防止措置を撤廃して経済活動を再開させている。

集団免疫を獲得するには、ウイルスの蔓延に目をつぶるしかない。感染力が高いわりに毒性が低いとされるオミクロン株の蔓延は、それに最適ということだろう。不安視する国民は多く“政治防疫賭博”と揶揄されていた。

しかし、韓国ではすでにワクチンを2回接種した人が86.08%と中国に続く世界2位の接種率を誇っている。
3回目の追加接種も64.65%で世界のトップクラス。さらに公衆保健システムも万全で、感染者の死亡率でも3月17日時点で0.14%と他国に比べてかなり低い。

これらの条件からウォール・ストリート・ジャーナルの記事では、「パンデミックから抜け出すことのできる適切な手段を持っている」と、伝染病専門家のコメントを載せて韓国政府の決断は正しいと判断したようだ。

韓国から学ぶコロナの終わらせ方
現実を見てみれば、防疫措置を撤廃後の3月中旬に1日の感染者数が60万人を突破。韓国政府が予測していた1日31〜37万人をはるかに越える数だった。これだけの数が感染すれば、いくら致死率が低いとはいえ、重症者や死者数もそれなりの数になる。

重症患者の激増で医療システムの危機を訴えるニュースが連日のように報道され、大統領や疾病庁に対する批判や謝罪を求める声も多く聞かれた。

外国の新聞が韓国を褒めて、国民がそれを否定して低評価。
韓国では決して見られることのなかった、かなり珍しい事態ではある。それだけ状況が逼迫(ひっぱく)していたのだろう。

しかし、近々の4月8日は感染者数も20万5333人に減少しており、死者数もピーク時の3分の1程度になっている。数字を見れば、韓国政府の判断は正しかったと言える感じになってきた。

今さらながらにウォール・ストリート・ジャーナルの記事を取り上げて、「韓国は世界が認めた最初のコロナ戦勝国」とか、そろそろ韓国マスコミの自画自賛が始まるか。

そうなることが、世界にとっても幸いなことだと思う。コロナの終わらせ方。それを韓国に学んで、日本も方針転換を図る時期なのかもしれない。【4月13日 青山 誠氏 コリアワールドタイムズ】
********************

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

中国  「ゼロコロナ」でも歯止めがかからない感染拡大 上海も封鎖 住民の不満・ストレスも増大

2022-03-28 22:24:33 | 疾病・保健衛生
(翌朝からの封鎖に備え、スーパーマーケットで物資を買い込む人々(上海市 3月27日)【3月28日 HUFFPOST】)

【上海 症状のある新規感染者が1日50人 28日から封鎖】
新型コロナ対応については、世界の流れが「ウィズコロナ」の考えで規制緩和に向かうなかで、中国では厳格な「ゼロコロナ」政策を維持しているものの、各地で感染拡大が起きており、長春などでロックダウンに至っていることは、3月12日ブログ“中国 「ゼロコロナ」政策のもとで感染者増加 上海でも 900万人都市長春ロックダウン”でも取り上げました。

その後も感染拡大が止まっていません。

****新型コロナ、中国本土で新たに1275人感染確認****
中国国家衛生健康委員会は28日、31省・自治区・直轄市と新疆生産建設兵団から27日に報告を受けた新型コロナウイルスの新規感染者(無症状感染者除く)が1275人だったと発表した。
 市中感染症例は1219人(吉林省1086人、上海市50人、中略)で、残り56人は境外(中略)で感染したと思われる輸入症例(中略)だった。(後略)【3月28日 新華社】
********************

26日の“新規感染者(無症状感染者除く)”が1217人、無症状感染者は4333人、合計5550人でした。
27日は上海で無症状感染者が前日より800人ほど増加していますので、合計人数は6千人を超えるかも。
25日も無症状感染者を含めて5600人と5千人を超える水準が続いています。

世界的には比較的感染レベルが低い日本が、27日は43364人ですから、人口13億(日本の10倍)の中国の感染レベルは桁違い(それも二桁ほど)に低いものにとどまっていますが、「ゼロコロナ」政策のもとで実際にもゼロに近いレベルを維持してきた中国としては、パンデミック初期の武漢での感染爆発以来の増加傾向で、当局も対応に苦慮しているようです。

中国のと言うより、今や世界の中核都市である上海でも(中国レベルで言えば)感染が広まっています。

****中国上海、コロナ無症状感染者3450人 過去最多****
中国の上海市で27日に確認された新型コロナウイルス新規感染者は、無症状者が3450人と過去最多を更新し、症状のある人は50人となった。市当局が短文投稿アプリ「微博(ウェイボ)」で28日明らかにした。

前日は無症状者の新規感染者が2631人、症状のある感染者は47人だった。(後略)【3月28日 ロイター】
*******************

上海ではこれまで地区ごとの封鎖が行われていましたが、この事態に都市全体の事実上のロックダウンに入り、全住民(2500万人)のPCR検査を行うことに。(東地区封鎖は28日午前5時からですが、発表は27日夜)

****上海でロックダウン開始、東西に分けて96時間ずつ封鎖…住民2500万人にPCR検査****
中国最大の経済都市・上海市は28日から、新型コロナウイルスの感染急拡大を受け、市内を二つの区域に分けて順番にロックダウン(都市封鎖)を始めた。封鎖中は外出を原則禁止し、地下鉄やバスの運行を止め自家用車も禁止する。

医療従事者や宅配業者など生活に必要な事業以外は出勤できなくなり、経済活動への影響が懸念される。
 
市中心部を流れる黄浦江を境に東西に分け、東部は28日〜4月1日、西部は1〜5日の96時間ずつ封鎖する。
封鎖中に上海市の全住民約2500万人を対象にPCR検査を行う。検査は主に集合住宅地ごとに実施するという。
 
日本外務省によると、上海市の在留邦人数は昨年10月時点で約3万8000人で、日本企業の拠点数は2017年の調査で約1万だった。
 
上海市はこれまで感染者が確認された地域を細かい住所単位で封鎖し、感染拡大を食い止めてきた。だが3月中旬から感染力の強い変異株「オミクロン株」が広がり、27日の新規感染者数は3500人と過去最多を記録した。うち無症状感染者が約9割を占めた。
 
中国全体でも今月は感染が拡大し、深セン市などが都市封鎖した。上海市の場合は経済への影響が大きいため、都市封鎖はせず感染者が見つかった地区ごとに封鎖してきた。だが感染に歯止めがかからず都市封鎖に踏み切った。
【3月28日 読売】
********************

【当局の硬直的対応に住民には不満・ストレス・批判も】
中国の国情でしょうか、有無を言わさずいきなり封鎖して、状況説明もほとんどない・・・ということで、さすがに住民の不満もたまってきています。

下記は、上海におけるこれまでの地区封鎖の状況に関するもの。

****ストレスを溜めながら助け合う住民、ゼロコロナ軟禁生活を上海からレポート****
中国・上海市で3月25日、新型コロナウイルスの市中感染者がついに2269人となった。数週間前に1桁だった市中感染者数が、気づけば1000人になり、23日から2日で2倍となっている。
 
上海市は3月15日の会見で「ロックダウン(都市封鎖)はしない」と表明したが、翌日からエリアごとに48時間封鎖し、住民全員に対し1日1回、計2回のPCRスクリーニング検査を行っている。無症状感染者を洗い出すこのPCRスクリーニング検査によって、日々、新たな感染者が雪だるま式に増えている。
 
昨年(2021年)末には西安が、先ごろには深圳がそれぞれ感染者数の拡大を受けてロックダウンに踏み切っている。一方、上海市はエリアごとに封鎖して全住民へのPCRスクリーニング検査を実施するという、異例の措置を採った。
 
これは、できる限り経済活動に影響を与えず、コストを最小限に抑える防疫政策だとされる。もちろん、中国が掲げる「ゼロコロナ」政策を踏襲するものだ。
 
果たして、中国のゼロコロナ政策はうまくいくのか。上海のマンション敷地内に閉じ込められた、筆者の現在の生活をリポートしよう。

疲れ始めた住民
上海市で実施される封鎖のエリアの単位は「小区」と呼ばれる集合住宅である。筆者が住むマンションがある小区の入り口にはロープが張られ、警備員が監視しているため、敷地内から出ることはできない。住民は軽い“軟禁”状態とも言える。
 
筆者が住む小区の封鎖は今日(3月25日)で8日目。小学校、中学校、高校も閉鎖され、生徒は先週から自宅でオンライン授業を受けている。子供も親もそろそろみんな疲れが出てきている。
 
外に買い物に出ることができないため、宅配に頼るしかない。とりわけ筆者が住むエリアは広範囲にわたる封鎖が同時に行われているため、多くの人が宅配を頼んでいるようだ。配達員不足から、いつアプリを開いても注文ができない状態が続き、これがストレスにもなっている。
 
そうした状況のなか、大型スーパーは小区ごとの宅配サービスを始めた。チャットアプリ「微信(WeChat)」には買い物用のグループチャットが開設され、数日後にはチャットへの参加者が300人を超えた。
 
筆者が住むマンションの近くにある個人経営の八百屋も、宅配をしている。電話一本で配達してくれるのはありがたいのだが、価格は普段の4〜5倍もする。非常事態だから仕方ないだろう。
 
マンションの敷地内で知り合いや友人に会うと、食料をどこで調達しているかについて情報交換をする。SNSでも地域住民の間でそうした情報が飛び交い、みんなで助け合っている。

飛び交う噂
あと何日で封鎖解除になるのか、まったく先が見えないのもかなりのストレスだ。
小区を管理する居民委員会からの連絡事項は、微信のグループチャットか、マンション1階の入り口扉に張り出される「通知」で知ることになる。電話で問い合わせても、「政府当局から封鎖解除の指示が出れば、すぐに通知する」と言われるだけである。

「〇〇の小区で陽性者が出たらしい」「〇棟が封鎖されたらしい。濃厚接触者がいたようだ」――。住民の間では、いろいろな噂が飛び交う。(中略)
 
ただ、中国人の友人らは、「早く封鎖解除になってほしい」「買い物が大変だ」などと言うものの、封鎖を強制する当局に対して文句を言う人はいない。そして“封鎖生活”を少しでも豊かにするため、せっせと生活用品や嗜好品の調達方法を探している。

終わりの見えない「ゼロコロナ」政策
上海市には「上海発布」という微信公式アカウントがあり、このアカウントをフォローしていれば、日々の新規感染者数とどこの小区で感染者が出たのかを知ることができる。
 
市が実施するスクリーニング検査は、もちろん陽性患者の早期発見に効果的だろう。ただ、市内の防疫対策は小区ごとに大きな差があるのも事実だ。
 
たとえば、友人が住む、筆者とは別のエリアの小区は、いまだ封鎖されていない。友人は、職場があるオフィスビルが一時的に封鎖されていたため、その期間は出社できなかったが、オフィスビルの封鎖解除とともに出社が可能になった。
 
上海市は、小区のリスクレベルに基づき、PCRスクリーニング検査の実施規模を小区ごとに差別化することで、医療資源がひっ迫しないようにしているという。この差別化措置が感染者のさらなる拡大につながらないことを祈るしかない。
 
終わりの見えない「ゼロコロナ」に市民は疲れ始めている。筆者が住む小区の対面の小区がきょう封鎖解除となり、「うちの小区はどうなっているんだ」と小区入り口に多くの人が集まっていた。
 
封鎖が解除になった小区の住民は、こぞってスーパーや野菜市場を訪れ、物の買い占めに奔走。多くの人が集まるため陽性者の増加が加速し、封鎖になった場所も少なくない。1カ月後の上海はどうなっているのだろうと思わずにいられない。
 
上海市が採った措置の結果は、中国全体のゼロコロナ政策にも影響しかねない。上海市の責任は重大である。
【3月27日 山田 珠世氏(上海在住コラムニスト) JBpress】
*****************

中国の観光地での経験。ロープーウェイが点検作業でストップ。何の説明もないまま長蛇の列が。それでも中国人民は黙って並んでいました。お上(おかみ)の命令には従順なところがあります。それでもさすがに・・・。

今回、東西に分けて封鎖するということで、食料品などの買い占めといった混乱も生じており、ネット上には政府・当局に対する不満も。

****「外国人を笑えない」上海ロックダウンで不満の声がSNSに...「隠語」を使って中国政府批判も****
中国・上海市は新型コロナウイルスの感染拡大を受け、市を東西に分けての事実上のロックダウン措置に入った。感染を徹底して封じ込める「ゼロコロナ」政策に、ネットユーザーからは不満の声が上がっている。(中略)

アメリカ政府系メディア・RFAなどによると、上海市では(封鎖直前の)27日夜、食料品などの買い占めが起きたという。

先行して封鎖される東側に位置する浦東新区ではこの日、スーパーマーケットなどの営業を深夜0時まで延長。「買い占めで人がごった煮になる。ロックダウンも無駄になるぞ」「さっさと買い占めに行けということか」などと批判的なコメントが相次いだ。

台湾・三立テレビは上海の映像として、空になったスーパーの棚や、物資をめぐってもみ合いになる人たちの様子を伝えている。

中国はこれまで、厳格な水際対策や隔離措置、それに徹底した検査体制を組み合わせた「ゼロコロナ」で感染を抑えてきた。しかし、突然の封鎖措置や経済活動の制限など、市民に負担を強いる側面もあり、ネットユーザーからは不満の声も上がる。

SNS・ウェイボーでは「こんなに人が密集しているのに政府は放置。(感染が爆発的に広まった)香港のようになるぞ。政府が『横たわり(無気力な人などを指す)』をしたいのならば素直に言ってくれれば良いのに」とか「上海市政府の何人が処分されるのだろう」などと苦言するコメントが並ぶ。

これまで中国メディアには、感染が拡大する西側諸国と比較して、中国のゼロコロナ対策が優れているとした評論が掲載されてきた。

これを意識してか「コロナそのものが怖いのか、ゼロコロナ政策が怖いのか時々分からなくなる。上海ではなぜ買い占めが起き、『zf』が物資を提供してくれると信じられないのか。他の国の報道を見ていて、我々はどの視点から外国人を笑えるのだろうか?」と疑問を呈する投稿もあった。

「zf」は中国のネット空間で用いられる隠語で、「政府」を表す。この書き込みはまもなく削除された。【3月28日 HUFFPOST】
******************

なお、当局によると、“上海の空港、鉄道駅、貨物輸送は大規模検査中も通常通り運営される”【3月28日 ロイター】とのこと。

住民感情や事情に配慮しない当局の硬直的対応にも批判が。

****「隔離は御免」、中国ゼロコロナ政策に市民の不満爆発****
中国のSNSでは先週、東北部瀋陽市で群衆が衣料品市場の窓を叩き、新型コロナウイルスの検査義務付けが再開されることに不満を爆発させる動画が拡散された。

地元政府は直ちに、この騒ぎに関する「うわさを拡散」させないようにと人々に通告。しかしインターネット上にはすぐに「隔離は御免だ!」、「大勢の人々が真実に目覚めた」といったコメントがあふれた。

対話アプリ「微信(ウィーチャット)」ではユーザーが「普通の風邪の方が大変。これを続けたがっているのは検査機関だ。ワクチン企業は永遠に接種し続けたいのだ」と怒りを爆発させた。

このコメントは、中国全土で高まる不満を映し出している。当局が感染力の強いオミクロン株の拡大を抑え込むため、あの手この手の「ゼロコロナ」政策を打ち出すことへの不満だ。

感染者数が増える中、絶え間ない検査など「動態(ダイナミック)ゼロコロナ」と呼ばれる政府の政策は複雑さを増す一方で、国民の間ではその有効性に疑問が広がっている。

国家衛生計画生育委員会の王賀勝・副主任は先週の記者説明で、政策の洗練度が上がったことによって、国民の不便は軽減されたと主張。「非常に少数の人々の通常の活動を犠牲にし、非常に小さい地域で移動を制限することと引き換えに、大半の地域と人々の生産と生活が平常通りに保たれている」と述べた。

しかし国民は、政策が透明性と一貫性を欠いていることに怒りを募らせている様子だ。SNSの検閲者は、あふれる不平不満の声を削除するために残業を強いられている。

北京のベッドタウン、河北省燕郊では、厳しいロックダウン(都市封鎖)が敷かれる中で住民が帰宅に苦労している。

オンラインで拡散された複数の画像からは、住民が北京から抜け出すため、激しい雪が降る中で検査結果受け取りの行列に並ぶ様子が見て取れる。こうした投稿には数百件のコメントが付いた。画像の多くは既に削除されている。

中国版ツイッターの「微博(ウェイボー)」には「感染が始まって3年も経つのに、政府の対応は未だにお粗末だ。人々の命や死にまるで無頓着な、怠惰で杓子定規な政府だ」という投稿があった。

経済的な苦境も広がっている。感染拡大が深刻な吉林省長春市で配達の仕事に就くマオさんは、周辺地域は9割方閉鎖され、生活費が稼げないと嘆く。「なすすべがない。街の閉鎖が解除されるのを待つしかない。お手上げだ」

<恣意的なルール執行>
規則が恣意的な上、地域住民の委員会が勝手な裁量でその執行を担っていることに対しても、住民から苦情が出ている。(中略)上海では、集合住宅ごとに検査やロックダウンの基準がばらばらなことに戸惑いの声が聞かれる。

しかしこうした政策は単に生活を不便にするにとどまらない。ネット市民は、ロックダウンが招いた深刻な悲劇についても積極的に意見交換するようになってきた。

ウェイボーに先週アップされ、広く拡散された投稿によると、上海中央病院で化学療法を受けていた患者が病院の隣の宿泊施設に隔離されたまま亡くなった。ネットには、新型コロナ絡みの混乱が原因で愛する人を失ったエピソードも拡散されたが、その後削除された。(後略)【3月26日 ロイター】
******************

【「ゼロコロナ」に固執する背景】
中国政府が「ゼロコロナ」に固執するのは、中国製ワクチンの有効性が低いため感染が広まると、高齢者死亡の増加など収拾がつかない状態になりかねいのを懸念している・・・との指摘もされています。

“(欧米製)mRNAワクチンの入手資金はあるものの、この1年間に欧米製のワクチンに関する偽情報をばらまいてきたため、今さら供給するのは政治的に都合が悪い。国内産mRNAワクチンを開発する動きもあるが、実現はまだ先だ。”【3月25日 Newsweek 「コロナとロックダウン「再襲来」に、爆発寸前の中国の「不満」が政府に向かう」】

「ゼロコロナ」対応が医療逼迫を招いているとの指摘も。

****中国の病院、軽症者で逼迫 ゼロコロナ裏目****
中国全土で新型コロナウイルス患者が病院に殺到し、医療従事者から悲鳴が上がっている。押し寄せているのは重症者ではなく、軽症者だ。
 
中国の病院はこれまで、他国が慣れざるを得なかった病床のひっ迫には見舞われていなかった。唯一の例外は、2020年初頭の数週間にこれを経験した武漢市だ。

中国はむしろ、できる限り早く感染者を排除することを目指し、感染者全員を入院させ、「濃厚接触者」もすべて隔離施設へ送ってきた。濃厚接触者には医師や看護師も含まれる。
 
しかし、中国本土で感染者が急増する中、かつての「成功の方程式」はここにきて大混乱をもたらしつつある。(後略)【3月24日 WSJ】
******************

異例の3期目続投を見据える習近平国家主席は難しい対応を迫られています。
当然ながら、中国が感染爆発で混乱すればサプライチェーンが寸断され、日本も手痛い打撃を受けます。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

新型コロナ 欧米では規制を撤廃し「普通の生活」へ 感染爆発の韓国でも「コロナはもう怖くない」

2022-03-21 23:20:54 | 疾病・保健衛生
(政府が21日から新型コロナウイルスのワクチン接種を完了した海外からの入国者を対象とした自宅隔離を免除し、韓国国内の免税店での購入限度をなくすなどの措置で海外旅行需要が増えている中、仁川国際空港第1ターミナルでは20日午前、空港利用者たちが出国手続きを踏んでいた。【3月21日 朝鮮日報】)

【日本 まん延防止等重点措置解除を概ね妥当とするも、依然強い警戒感】
日本の新型コロナ新規感染者は昨日20日が39658人、10万人を超えた2月初旬のピーク時に比べると約4割ほどに減少していますが、その減少ペースはこれまでになく緩慢です。

周知のように、まん延防止等重点措置は今日21日までの期限で全面解除されることになっています。
世論調査ではこの方向を概ね「妥当」としていますが、今後への警戒感もまだ強いようです。

****まん延防止全面解除「妥当」65% 「延長」大幅に上回る 世論調査****
毎日新聞と社会調査研究センターが19日に実施した全国世論調査では、新型コロナウイルス対策で東京など18都道府県に適用されているまん延防止等重点措置が、21日までの期限で全面解除されることについても質問した。「妥当だ」は65%で、「延長すべきだ」の24%を大幅に上回った。「わからない」は10%だった。(中略)
 
今後の身の回りの新型コロナ対策については、「これからもコロナ対策を心がけたい」が77%だった。「少しずつコロナ前に戻したい」は21%にとどまり、「これまでもコロナ対策はしていない」は1%だった。

年代別で見ると、「これからもコロナ対策を心がけたい」は、30代までは60%台だったが、40~50代は74%、60代以上は86%と、年齢が上がるほど高かった。

まん延防止措置がすべての地域で解除されるのは約2カ月半ぶり。政府は解除基準を緩和するなど、経済活動の拡大に軸足を移そうとしているが、感染防止を重視する世論は根強いようだ。(後略)【3月19日 毎日】
**********************

なお、日本では3回目ワクチン接種が遅れていますが、“ワクチンの3回目の接種率について、14日時点で30・1%となり3割を超えたことを明らかにした。 日本はアメリカの接種率を追い抜き、G7の中で最下位を脱出した形となった。”【3月15日 FNNプライムオンライン】とのこと。

【アメリカ ニューヨーク市長「我々は戦いに勝った」】

3回目の接種率で日本にも追い抜けれたアメリカは、感染状況はピークアウトした状態で通常生活に戻りつつあり、3月4日時点でニューヨーク市長からは“勝利宣言”も。

その後はアメリカのコロナ関連ニュースは目にしていません。インフレやウクライナが問題になるなかで、コロナはもはや“過去の話題”になったような感も。

****米CDC、マスク指針を大幅緩和 国民の大半が着用不要に****
米疾病対策センターは25日、新型コロナウイルス対策のマスク着用指針を大幅に緩和し、国民の大半に対して学校など屋内の公共の場での着用勧告を解除した。
 
CDCのロシェル・ワレンスキ所長は電話会見で、「現在は新型ウイルスから自身とコミュニティーを守る多くの手段があり、国として以前より強い位置にいる」と説明した。
 
CDCは、マスク着用が推奨される地域を判断する基準を改訂。これまでの指針は各地域の新規感染者数に基づいたもので、米国土の95%が感染リスクの高い地域とされ、マスク着用勧告の対象となっていた。
 
だが新たな基準として入院患者数や病院の病床数が追加されたことから、今後は米人口の70%以上が住む地域でマスク着用勧告が解除される。対象地域では学校でも着用勧告が解除されるが、交通機関では引き続き着用が推奨される。 【2月26日 AFP】
*************

****バイデン氏、新たなコロナ対策表明 陽性なら直ちに無料錠剤配布****
バイデン米大統領は1日の一般教書演説で、国民が薬局で新型コロナウイルス検査を受け、陽性であれば直ちに無料で錠剤タイプの抗ウイルス薬を受け取ることができるようにする新たな取り組みを開始したと表明した。

バイデン氏はこれらの薬には世界のどの国よりも多くの注文を出していると述べ、ファイザーが3月に100万錠、4月にはその倍以上の錠剤を米国に提供すると付け加えた。ファイザー製の錠剤は入院に至る可能性を90%減らすという。

ホワイトハウスによると、バイデン政権は2日、新型コロナに対する国家準備計画を発表し、「安全に前進し、よりノーマルな日常に戻る」方策を示すという。

演説では、新型コロナとの闘いで米国が成し遂げた進歩に言及しつつ、米国民は新たな変異株に備えなければならないと警告。「新しい変異株が現れないとは約束できない。しかし、その場合に備えてわれわれが全力を尽くして準備することを約束できる」と述べた。

米国は現在、新しいワクチンを数カ月や数年ではなく、100日以内に展開できる状態だとした。【3月2日 ロイター】
********************

****NY市長「我々は戦いに勝った」「街を再開する時だ」…ワクチン証明提示もマスク着用も原則解除へ****
米最大都市のニューヨーク市は4日、新型コロナウイルスの新規感染者数や入院患者数が減少したことを受け、7日から飲食店や劇場、ジムなどでのワクチン接種証明の提示義務や、公立学校でのマスク着用義務を原則解除すると発表した。

証明の提示義務はなくなるが、飲食店などが独自にルールを定め、利用者に証明提示やマスク着用を求めることもできる。学校では、まだワクチン接種ができない5歳未満の子供がいる教室ではマスク着用が引き続き必要となる。

エリック・アダムス市長は4日の記者会見で、「我々は戦いに勝った。街を再開する時だ」と語り、市民生活の正常化と経済回復に期待を示した。【3月5日 読売】
*******************

【規制をほとんど廃止する独仏】
感染状況が改善しているフランスも、規制のほとんどを撤廃しています。

****フランス 感染状況が改善“コロナ規制”ほぼ撤廃**** 
フランスで新型コロナウイルスの感染状況が改善し、14日から飲食店などでワクチンの接種証明の提示が不要になるなど、規制がほぼすべて撤廃されました。

フランスではこれまで、飲食店や映画館などの利用にワクチン接種の完了を証明する「ワクチンパス」の提示が義務付けられていましたが、運用が終了し、14日から提示は不要となりました。
また、公共交通機関などを除き、屋内でのマスク着用義務もなくなり、規制がほぼすべて撤廃されました。

飲食店の客「非常に良いことで気分が良い」「本当にうれしい。(日本語で)普通の生活、やっと戻った」

フランスの1日あたりの新規感染者数はことし1月には50万人を超える日もありましたが、現在はおよそ6万人まで減少しています。【3月15日 日テレNEWS24】
**********************

ドイツでは感染状況は高止まりしていますが、それでも行動制限の大半を撤廃しています。

****新規感染20万人台の日もあるドイツ、行動制限の大半を撤廃****
ドイツ政府は20日、新型コロナウイルス対策として実施してきた行動制限の大半を撤廃した。飲食店でのワクチン接種証明の提示などが不要となる。公共交通や医療機関でのマスク着用義務などは継続される。
 
18日に改正感染症予防法が成立した。国内16の州の中には、移行期間の4月2日まで制限措置を延長する州もある。
 
新規感染者は20万人台に達する日もあるが、ショルツ政権は医療逼迫ひっぱくは抑えられると判断。2月から未接種者の小売店利用を認めるなど規制を段階的に緩和してきた。【3月21日 読売】
*********************

【韓国 感染爆発でも規制緩和 「コロナはもう怖くない」の空気 賑わい戻る空港】
一方、1日の新規感染者が17日には60万人(日本の人口で考えると140万人超)を超える感染爆発に見舞われた韓国、さすがにピークは過ぎたようです。

****韓国の新規コロナ感染者が約20.9万人に減少 死者は過去2番目の多さ***
韓国の中央防疫対策本部は21日、この日午前0時現在の国内の新型コロナウイルス感染者数は前日午前0時の時点から20万9169人増えたと発表した。前日(33万4708人)より12万5539人少なく、10日ぶりに30万人を下回った。重篤・重症患者は1130人、新たな死者は329人だった。

新規感染者数は17日に62万1281人と最多を記録した後、4日連続で減少している。この日は1週間前の14日(30万9779人)に比べても10万610人少ない。(中略)

だが、21日から来月3日までの2週間、新型コロナ防疫措置の私的な集まりの人数制限が従来の最大6人から最大8人に緩和されることから、感染者数が再び増える可能性もある。

一方、新たに報告された死者は329人で、前日より2人多かった。1日当たりの最多を記録した17日(429人)に次ぎ、過去2番目に多い。死者の累計は1万2757人になった。(後略)【3月21日 聯合ニュース】
******************

上記記事にもあるように、感染爆発状態のさなかに規制緩和の方向に踏み出しています。
そのような政策転換があまり問題にもなっていないのは、国民のコロナへの不安感がかなり薄れていることが根底にあるようです。

****韓国・感染者“世界最悪”1日60万人でも規制緩和 「全く怖くない」の声****
新規感染者数が世界最悪の1日60万人となっている韓国。感染爆発の中でも、21日から更なる規制緩和に踏み切りました。めざまし8が現地で取材すると、聞こえてきたのは「コロナはもう怖くない」という声。

感染者数60万人超え…韓国政府「逆に規制を緩和する」
(中略)100万人当たりの新規感染者数を7日間平均で見てみると7844人で、日本の約20倍に当たります。しかし、それでも韓国政府が発表したのは、「逆に規制を緩和する」という決断でした。

担当者:我々が国民に課してきたソーシャルディスタンスのルールでは限界だ。社会的・経済的負担が大きすぎるし、オミクロン株を抑えられていない。

飲食店の規制緩和をみると、東京は3月22日から滞在は原則2時間以内で1テーブル4人まで、認証ない店は、酒類提供は午後9時まで。一方で、韓国の場合は3月5日から、営業時間は午後11時までになっており、3月21日からは最大8人まで可能になります。

さらに、韓国に入国する時には、3回目のワクチンを接種済みか、2回目接種から14日以上180日以内という人は、これまで必要だった7日間の隔離期間は3月21日から免除される内容もあります。

感染拡大が続いているにも関わらず規制を緩和する韓国。なぜこうした決断に踏み切ったのでしょうか。現地を取材すると、韓国国民の新型コロナに対する意識の変化が見えてきました。
「全く怖くない」現地の人々は“恐れナシ”

ディレクター:きょうは日曜日の午後ですが、休日ということもあって人通りは多いです。
大通りには溢れかえるほどの若者の姿が。ほぼ全員がマスクをしているものの、ソーシャルディスタンスに気をつける様子はありません。人気のピザ店でも。(中略)

韓国に留学中の学生:人も多くて、全然周りも風邪みたいに扱うようになってるので、コロナをそこまで気にしない感じですね。気を使っていてもかかるものだという認識に変わっています。

感染病って感じじゃなくて、風邪という感じ?
韓国に留学中の学生:そうですね。はい。

これは週末の夜に、留学生が撮影した映像。感染者が増加している状況にあっても、人の多さに変化はなかったといいます。(中略)

さらに、3月に新型コロナに感染したという、韓国在住の日本人男性も。
韓国在住の会社員 だいさん:日本にいた時は、感染者増えた時は、みんな出かけるの控えようとかってなってたと思うんですけど。こっちではそんなに変わってないのかなって。

そして、現地の人に聞いてみても。
会社での感染は恐れていない?
男性:まったく怖くないです。

感染への恐怖は?
男性:はい、私はないです。まだ若いから。

感染が爆発している中でも、恐れを感じていないという韓国の人たち。さらに、規制緩和についても。
女性:6人か8人かは、そんなに大きな意味はないと思います。外食で6人はすごく少ないし、結局6人といっても別のテーブルを増やして、それ以上で集まっていますから。

韓国に留学中の学生:私はもう全然いいんじゃないかなと思います。韓国は日本に比べてワクチン接種が早い、早くて打った人も多いってのがあって、重症化する人も少ないってなってるので、周りの意識とかもだいぶ変わってきていいんじゃないかなと思います。(後略)【3月21日 FNNプライムオンライン】
**********************

「ステルスオミクロン」と呼ばれる「BA・2」の割合が急速に高まっていることも不安要素とされています。

****コロナ流行ピークずれ込む可能性も 「ステルスオミクロン」急増=韓国当局****
韓国防疫当局は21日、新型コロナウイルスの変異株「オミクロン株」が主流となっている中、「ステルスオミクロン」と呼ばれる「BA・2」の割合が急速に高まり、流行のピークが予想よりずれ込む可能性があるとの見通しを示した。

鄭銀敬(チョン・ウンギョン)疾病管理庁長はこの日、中央防疫対策本部の定例会見で「オミクロン株のうちBA・2の占める割合が増加し、迅速抗原検査の陽性者を感染者と認めるようになったことで流行のピークまでの期間が長くなり、規模が大きくなる可能性がある」と述べた。

また、感染事例のほとんどがオミクロン株と確認される中、遺伝子分析で感染力がより強いとされるBA・2の検出率が市中感染者で41.4%、海外からの入国者で56.9%に増加したと説明した。(後略)【3月21日 聯合ニュース】
********************

いずれにしても規制緩和の方向に踏み出し、入国時の規制も緩和されたことで、空港などでは賑わいも戻りつつあるようです。

****接種終えた入国者は隔離免除 空港に久々の活気=韓国****
韓国で新型コロナウイルスワクチンの接種を終えた海外からの入国者に対する隔離義務が解除された21日、仁川国際空港では、負担なく海外に行けることを喜ぶ市民らの姿がみられた。

韓国政府は同日から、国内外で新型コロナのワクチン接種を完了して接種歴を登録した海外からの入国者に対し、7日間の隔離義務を免除する。ワクチンの2回目接種(米ヤンセンファーマ製は1回目接種)からの経過日が14日以上かつ180日以内の人と、3回目接種を終えた人を接種完了者と認める。

新婚旅行に向かう30代の夫婦は、「(帰国後)自主隔離をすることになっても受け入れて行くつもりだったが、今回隔離義務が解除され少し楽になり、負担なく旅行に行くことができるようになった」と喜んだ。

海外出張に向かうため空港を訪れた40代の会社員は「以前は隔離期間のために米国出張を取り消したこともあったが、(今回の措置で)多くの負担が確実に減った」と話した。

海外から韓国に戻ってきた人たちも隔離義務を解除した政府の措置に満足げな様子だった。(中略)

空港の出発ロビーは依然として閑散としていた。搭乗手続きカウンターの多くは運営されておらず、順番待ちをする利用者も見当たらなかった。

業界関係者は海外旅行の需要について、次第に増えてはいるものの、コロナ禍以前の水準に戻るには時間がかかるとみている。今月1日から20日までの仁川空港の1日の平均利用者数は1万2565人で、20万〜23万人に達していたコロナ禍以前と比べ5%程度となっている。

燃料価格の上昇や、新型コロナウイルスのオミクロン株の1系統で感染力が強いとされる「BA・2」が一部の国で流行していることも気がかりだ。

海外旅行が本格的に増え始めるのは4〜5月という見方もある。
仁川国際空港公社の関係者は「航空会社も航空機の運営・整備の日程があり、航空便を急に増便するのは難しい」としながら、「早ければ4月第2週からは(増便など)変化があると思う」と話した。【3月21日 聯合ニュース】
*******************

個人的には、迅速なワクチン接種などやるべきことをやらずに、「コロナ、コロナ」と大騒ぎするだけ、自粛一辺倒の日本の風潮・施策には「なんだかな・・・」って感じを持っていますので、「ウィズコロナ」に踏み出している欧米・韓国の状況がうらやましい・・・というのが本音です。

もちろん不安要素はありますし、実際にも今後も感染拡大の場面はあるのでしょうが、「そんなこと言ってたら、いつになっても・・・」って感じも。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

新型コロナ  欧米で加速する規制緩和の流れ 「以前の生活」へ

2022-02-10 23:33:36 | 疾病・保健衛生
(スウェーデンでほぼ全ての新型コロナウイルス制限措置が解除された。事実上のパンデミック(世界的大流行)終息宣言となる。無料のコロナ検査も打ち切られる。写真は9日、制限解除後にナイトクラブに集まる人々。【2月10日 ロイター】)

【世界の感染者4億人超 オミクロン株拡散】
久しぶりに(かな?)新型コロナの話。

感染が急拡大した日本では、東京の新規感染者が昨日・今日と前週の同じ曜日を下回り、ようやく・・・・という雰囲気も。

*****世界コロナ感染者4億人突破、約1カ月で1億人増 オミクロン株拡散で****
ロイターの集計によると、世界の新型コロナウイルス感染者が9日、4億人を突破した。感染力の強いオミクロン変異株の拡散で、感染者数は約1カ月で1億人増加した。死者数も600万人を超えた。

世界感染者は約5カ月で2億人から3億人に達していた。

多くの国で感染者数の増加ペースは鈍化しつつあるものの、1日当たりの新規感染者数はなお平均200万人を超えている。7日平均の死者数も過去5週間で70%急増した。

7日平均で感染者数が最も多かった上位5カ国は米国、フランス、ドイツ、ロシア、ブラジルで、世界の新規感染者数の約37%を占めた。また、世界新規感染者のほぼ半分が欧州諸国で報告されている。

米国は最多で、3日ごとに1日当たり100万人の新規感染者が報告されている。累計の死者は先週末時点で90万人を突破した。

フランスでは1日当たりの新規感染者が7日間平均で21万人超となっている。累計の感染者は先週2000万人を超えた。

インドでは4日時点で、累計の死者が50万人を突破した。

「アワー・ワールド・イン・データ」によると、世界人口の約62%が少なくとも1回目の新型コロナワクチンを済ませている。しかし低所得国で1回目接種を受けた人は11%程度にとどまっている。【2月10日 ロイター】
*********************

日本でも把握されていない無症状感染者が多いのでは・・・という話がありますが、途上国を含めた世界でみると把握されている「4億」という数字より実際ははるかに多いのかも。

感染者数の国別ではアメリカが約7700万人で最多で、インド(約4230万人)、ブラジル(約2670万人)、フランス(約2110万人)、英国(約1800万人)と続いています。

【欧米で加速する規制緩和の流れ 「新型コロナはもはや社会への危険とは見なされない」とも 背景には文化・死生観も】
ただ、感染力は強い一方で、重症化は比較的少ないオミクロン株に変化したこと、ワクチン・治療薬も一定に存在することで、ピークアウトしつつある欧米では、規制を緩和し「ウィズコロナ」の流れを明確に示すようになっています。

**********************
感染者数に関しては、日本を含む各国で急増する一方、昨年12月から爆発的に増加していた欧米諸国では既にピークを越えたとの見方もある。一時は100万人超の新規感染者を出していた米国では、今年1月下旬から減少傾向に転じている。

ワクチン接種が進み、オミクロン株が軽症傾向であることから、欧州では軒並み規制緩和が進められている。英国のジョンソン首相は「ピークを過ぎた」とほとんどの規制撤廃を表明。北欧でも2月上旬から規制緩和が始まり、デンマークは1日からコロナ規制の大半を解除した。【2月9日 時事】 
*********************

上記のようにデンマーク、そしてスウェーデンでは規制をほぼ全面解除しています。

****デンマーク、コロナ規制を全面解除 「以前の生活」復活へ*****
デンマーク政府は26日、新型コロナウイルス関連の国内規制を、来月1日から事実上全面的に解除すると発表した。同国では新規感染者数が過去最多を更新する状況が続いているが、ワクチン接種率が高いことから、感染後の症状が比較的軽度な変異株「オミクロン株」に対応できるとしている。

メッテ・フレデリクセン首相は記者会見で、「私たちは制限に別れを告げ、コロナ以前の生活を歓迎する」と述べた。

AFPの調査によると、欧州でオミクロン株による感染の波が広がる中、国内の規制を解除する欧州連合加盟国はデンマークが初めてになる見通し。

フレデリクセン氏は、ワクチンが「強力な武器」であることが証明され、接種計画の成功によって同国は「今も続く感染に対する強力な防御力を手に入れた」と説明。「このため政府は、コロナウイルスがもはや、社会を脅かす病気とみなされるべきではないと判断した」と述べた。

規制解除後は、ワクチンパスポートの提示、マスク着用、バーやレストランの営業時間短縮などの義務がなくなる。ただし水際対策については、入国者の感染歴などに応じた検査や隔離の義務付けなど一部の措置を4週間継続する予定。 【1月27日 AFP】
*********************

デンマークでは感染自体が収束している訳ではなく、逆に、上記「全面解除」発表のあった1月26日は新規感染者は46747人、日本の人口に置き換えると約100万人(!)という、まさに感染爆発のさなかでした。現在も3.5~4万人のハイペースが続いています。

****スウェーデン、コロナ規制ほぼ全面解除 事実上の終息宣言****
スウェーデンで9日、ほぼ全ての新型コロナウイルス制限措置が解除された。事実上のパンデミック(世界的大流行)終息宣言となる。無料のコロナ検査も打ち切られる。

ハレングレン保健相は「パンデミックは終わっていないが、急速な変化や制限の観点からは終息したと言える」とし、新型コロナをもはや社会への危険とは見なされないと述べた。

9日から、バーやレストランは午後11時以降の営業が許され、収容人数の制限もなくなる。大型屋内施設の入場制限やワクチン接種証明提示義務も撤廃される。

しかし、なお約2200人の新型コロナ患者が国内の病院に入院しており、科学者らはより忍耐強く対応すべきという見方を示している。【2月10日 ロイター】
********************

スウェーデンも1月末にピークを迎え、現在は急速に減少しているものの、新規感染者数自体はハイレベルにあります。

(万事に慎重・過敏な日本と比べると)欧米の対応は、感染症対策としての側面の他、「行動制限」と個人の自由をどのように考えるか、疫病による災難にどのように向き合うか・・・といった文化・死生観を反映したものに思われます。

【仏英米も同様 政治的思惑も?】
英仏など主要国でも同様の流れ。

****フランス 屋外でのマスク着用義務を撤廃****
フランスでは新型コロナウイルスの1日あたりの感染者が30万人を超える中、感染状況は改善しているとして屋外でのマスクの着用義務などが撤廃されました。

フランスでは2日、新型ウイルスの感染状況が改善しているとして、屋外でのマスクの着用やテレワークの義務が撤廃されました。また、劇場やスタジアムなどの人数制限もなくなりました。

市民「私はマスクを着け続けると思います。抵抗はありません」「いつもの癖でマスクを着けていますが、呼吸が楽になるし(撤廃は)いいと思います」

今月16日からは、映画館での飲食やバーでの立ち飲みなども認められる予定です。

フランスの1日あたりの感染者数は、先月25日、50万人を超えて以来、減少傾向にありますが、依然30万人を超えています。【2月3日 日テレNEWS24】
*********************

フランスの50万人、30万人というのも、日本の人口で言えば100万人、60万人のレベルです。
フランスでは、こうした規制緩和の一方で、飲食店で「ワクチンパス」が必要になるワクチン接種を実質義務化する対策も行っており、強い反発も出ています。 マスク着用義務撤廃はそうした反発を緩和する狙いもあるのかも。

****フランス、ワクチン実質義務化=不正に厳罰、各地で抗議デモ―新型コロナ****
フランスで24日、16歳以上に新型コロナウイルスワクチンの接種を実質義務化する「ワクチンパス」導入の法律が発効した。偽の接種証明書を所持するなどの不正行為には最大で禁錮3年と4万5000ユーロ(約580万円)の罰金が科される。

ただ、義務化に反対する声も根強く、発効に先立つ22日、各地で計約4万人が抗議デモを行った。
 
新たな措置では、飲食店などで提示が必要なパスについて、ワクチン接種完了か、6カ月以内に新型コロナが治癒したことの証明を義務付けた。健康上の理由で接種できない人は免除される。これまでは陰性証明だけでもパスを取得できた。【1月24日 時事】
*******************

話が横道にそれますが、欧米におけるワクチン接種義務化反対に見られるように、他人の迷惑になろうが、嫌なものは嫌だ・・・という明確な自己主張は、先日の北京五輪女子ジャンプ「失格問題」で「謝罪」する高梨選手にみられる日本社会のメンタリティーとは全く異質です。

****高梨沙羅の謝罪、海外メディアは驚きをもって報道「他の人々が怒っているのとは…あまりにも対照的」****
(中略)高梨は9日、SNSで「日本チームのメダルのチャンスを奪ってしまった」「皆様を深く失望させる結果となってしまった」と謝罪。「誠に申し訳ありませんでした」「私の失格のせいで皆んなの人生を変えてしまったことは変わりようのない事実です」「深く反省しております」(原文まま)などとつづった。
 
この発信を、英ロイター通信は驚きをもって伝えた。「高梨沙羅が、ジャンプ混合団体で、日本のメダル獲得の望みを打ち砕いたスーツ規定違反を、多くの人々の態度とは反対に謝罪した。他の人々が物議を醸した失格に怒っているのとは、あまりにも対照的だ」(後略)【2月9日 中スポ】
*****************

もっとも、日本社会でも「高梨選手が謝罪する必要はない」との声も出るようにはなっているようです。
ただし、高梨擁護論は高梨選手が謝罪したからであって、もし「私は悪くない」と主張していたらバッシングを受けたかも。化粧すら批判される社会ですから。

話としてはこっちの方が面白いですが、コロナに戻ります。
フランスの次はイギリス。

イギリス政府は、オミクロン株のピークは過ぎたとして、1月27日、屋内でのマスク着用義務やイベント会場でのワクチン接種証明の提示など、ほとんどの規制を撤廃しました。今月11日からはワクチン接種を完了した人の入国後の検査も不要になっています。

更に、感染者の自主隔離も一か月前倒しして、今月中に不要とするとのこと。

****イングランドの自主隔離、今月中に撤廃…感染ピーク過ぎ社会活動正常化へ****
英国のジョンソン首相は9日、ロンドンを含むイングランドで、新型コロナウイルスの患者に義務づけている最短5日間の自主隔離を今月中にも撤廃する方針を示した。英国は変異株「オミクロン株」の感染拡大がピークを過ぎたとみなし、社会活動の正常化を目指している。
 
英議会で表明した。ジョンソン氏は、「現在のデータの傾向を考慮すれば、自主隔離も含めた最後の規制を1か月早く、撤廃できると期待している」と述べた。
 
英国では1月上旬、1日の新規感染者数が20万人を超えたが、足元では5万〜6万人で推移している。既に、入国規制やマスクの着用義務など、多くの規制が撤廃・緩和されている。【2月9日 読売】
*********************

ほぼ、インフルエンザなどと同じような扱いということでしょうか。

ジョンソン首相は、新型コロナ規制下の首相官邸でパーティーが繰り返されていた疑惑や、野党党首に対するデマに基づく批判発言などで、ヨレヨレ状態にあります。
“大手機関ユーガブが1月末に実施した世論調査によると、英国民の63%が首相の辞任を求めた”【2月10日 朝日】

そうした政治状況を抜け出すためにも、コロナ対策で国民受けがいい施策をなるべく早く取りたい・・・という思惑もあるのかも。

もちろん、前述のように基本的には「行動制限」と個人の自由をどのように考えるか、疫病による災難にどのように向き合うか・・・といった文化・死生観を反映しています。

ワクチン接種が他国に先駆けて進んだイギリスでは、昨年7月段階で一度「コロナとの共生」を打ち出していますが、そのときの自己責任を強調し、「さらに死者が出ることを受け入れなければいけない」というジョンソン首相発言にもそうした文化・死生観が明確に出ています。

****英イングランド、マスク義務など解除へ 自己責任のコロナ対策訴え*****
ボリス・ジョンソン英首相は(2021年7月)5日、イングランドで新型コロナウイルス対策として導入されているマスク着用義務やソーシャル・ディスタンシング(対人距離の確保)などの規制の大半を今月(2021年7月)19日に解除すると発表した。政府の命令ではなく、個人の自己責任により感染を防ぐよう訴えた。
 
規制の全面解除は当初6月21日に予定されていたが、感染力の強いデルタ株の感染拡大を受け延期されていた。英国では現在までに、デルタ株が新規感染のほぼすべてを占めるまで拡大。新規感染者が急増し懸念を生んでいる一方で、大規模なワクチン接種が奏功し、入院患者や死者の急増には至っていない。
 
ジョンソン氏は「このパンデミック(世界的な大流行)は終わりには程遠い。19日までに終わることは決してない」と警告。「悲しいことながらも、新型ウイルス感染症によりさらに死者が出ることを受け入れなければいけない」と述べた。(後略)【2021年7月6日 AFP】
************************

岸田首相が「さらに死者が出ることを受け入れなければいけない」と言ったら、叩かれるのでしょうね・・・。

未だハイレベルの感染状況が続くアメリカでも、マスク着用義務が解除されつつあります。

*****米民主党知事州、相次ぎマスク着用義務解除****
米国で新型コロナウイルスの新規感染者の減少を受け、民主党州知事が相次いで学校などでのマスク着用義務を解除すると発表している。ウィズコロナ政策への移行を示唆するものだ。
 
米国では新型コロナ流行当初、マスク着用が政治論争の的となった。民主党知事州の多くが厳しい着用義務を課す一方、テキサスやフロリダなどの共和党知事州は着用義務化を禁止した。
 
カリフォルニア州のギャビン・ニューサム知事は7日夜、屋内公共施設でのマスク着用義務について、ワクチン接種済みを条件に15日に解除すると発表した。一方、未接種者は引き続き屋内でのマスク着用が求められるとして、ワクチン接種を呼び掛けた。
 
ニュージャージー州のフィル・マーフィー知事も、来月7日から学校でのマスク着用義務を解除すると発表した。
コネティカット州のネッド・ラモント知事は、今月28日から学校でのマスク着用を義務解除するよう教育委員会に勧告していると述べた。
 
デラウェア州のジョン・カーニー知事は、マスク着用義務について、屋内公共施設では11日、学校では来月31日に解除すると明らかにした。 
オレゴン州のケート・ブラウン知事も、マスク着用義務を来月31日まで解除すると発表した。
 
ニューヨーク州は、新型コロナ感染対策規制の解除を公式に発表していない。しかし、米紙ニューヨーク・タイムズは関係筋の話として、キャシー・ホークル知事が屋内公共施設でのマスク着用義務を9日に解除する見通しだと伝えている。 【2月9日 AFP】
*****************

ニューヨーク州ホークル知事も9日、今月10日から屋内でのマスク着用義務を解除すると発表しています。

一連の動きは、中間選挙対策の側面もあるようです。

****中間選挙を意識? NY州などがマスク着用義務撤廃へ 有権者の不満背景に「通常への復帰」急ぐ***
(中略)バイデン政権が全米レベルの危機は去っていないとみて安全対策の緩和に慎重な姿勢を保つ中、規制に対する有権者の不満を背景に、一部の州知事は11月8日の中間選挙へ向け「通常への復帰」を急いでいるようだ。

(中略)規制緩和が可能になった要因として、知事たちは州内での新規感染者数の減少やワクチン接種率の向上をあげている。一方で、全員が秋の中間選挙での知事選を控えており、決定の背景に「2年近く続く厳しいコロナ対策にうんざりした世論」への配慮があったと米メディアは指摘した。

他方、英統計専門サイトによると、7日時点の全米の入院者数は9万6947人。8日まで1週間の死者数は1日あたり2481人で米疾病対策センター(CDC)のワレンスキー所長は9日、「入院者も死亡者も多い」と述べ、マスク着用を推奨する指針を維持する意向を示した。【2月10日 産経】
********************

私が暮らす田舎町にも、ようやくPCR検査を安価(2300円)でやってくれる民間施設がJR駅構内にオープンしました。致命的に遅すぎの感もありますが、これで「ウィズコロナ」にもなんとか・・・

でも、感染ピークが過ぎて希望者が減ったら、閉店してしまうかも。まあ、社会が感染を気にしなくなって・・・ということなら、それはそれでいいのですが。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

新型コロナ  新たな戦略で態勢を立て直すべきとき

2022-01-23 21:52:40 | 疾病・保健衛生
(パリで20日、「ブランケール(教育相)はバカンスに、教員はレジスタンス(抗議)に」などとつづった垂れ幕を掲げる教員のデモ参加者=AP。学校の感染対策で批判を受けたブランケール氏は、新学期前日までひそかに地中海のリゾート地で過ごしていたことがわかり、非難を浴びている。【1月23日 朝日】)

【感染急増で社会機能維持重視へ】
土曜日に3回目の追加接種を受けたせいか、体調がイマイチ。(決定的に悪化して寝込むようなことはありませんが)

高熱ではないものの、37.1(朝)~37.9℃(夕方)の微熱 そんなにひどい痛みではないものの、全身の神経がピリピリする感じ  異様な倦怠感という訳ではないが、なんとなく根気が続かず横になりたい  食欲が「ない」とは言わないが、そんなにお腹すかない・・・

手元に解熱剤がなく、雨が降る中買いに行くのも面倒  まあ、明日にはおちつくだろう・・・と希望的観測。

日本でも新型コロナウイルスはほとんどが感染力の強いオミクロン株に置き換わり、全国各地で爆発的な感染増加を見せていることは、耳タコです。

世界各地でもその対応に苦慮しています。
中国のような「ゼロコロナ」に固執する国以外では総じて、感染防止から「社会機能域」に力点を移しつつあります。

****感染急増、人手不足を懸念 社会機能維持、各国が対策 新型コロナ****
新型コロナウイルスの「オミクロン株」による感染者の急増により、各国で社会機能の維持が深刻な課題となっている。病院や学校などでの人手不足を緩和しようと、隔離措置を緩和するなど様々な対策を打ち出しているが、感染拡大の勢いは衰えず、先行きへの不安も高まっている。

 ■米、無症状なら隔離短縮
米国では新型コロナの入院患者数が11日、保健福祉省の集計で約14万6千人と過去最多になり、医療崩壊の危機に直面している。
 
病床に加えて不足が懸念されるのが医療関係者だ。米疾病対策センター(CDC)は昨年12月下旬、医療関係の感染者が無症状なら隔離期間を10日から7日に短縮し、陰性と確認できれば職場復帰できるようにした。
 
連邦政府はスタッフの不足した病院に対し、医師らでつくる約60の支援チームを送る態勢を整えた。カリフォルニア州保健当局も2月1日までの期間限定で、感染したり、濃厚接触者となったりしたが無症状の医療スタッフは、隔離も検査もなしで職場に復帰できることにした。
 
航空業界からも隔離期間の短縮を求める声が続いた。米デルタ航空は昨年12月21日、「10日間の隔離は当社の業務に大きな影響を与える可能性がある」との書簡をCDCに送った。
 
米ユナイテッド航空の従業員約3千人が感染するなど、もともと深刻だった人手不足に拍車がかかった。AP通信によると、航空便の欠航数はクリスマス前は1日あたり数百便だったが、感染者数の増加で、一時は1日1千便を超えた。
 
CDCは12月末、医療スタッフでない感染者についても、無症状なら検査なしで隔離期間を5日にすると、指針を見直した。ただ、米客室乗務員組合は昨年末、体調が回復する前に早期の職場復帰を迫られる可能性があることに対し、懸念を表明している。

 ■仏、軽症医師ら勤務継続
連日30万人以上の感染者が出ているフランスでも今月、隔離規制が緩和され、感染しても軽症や無症状なら医師や看護師らは働き続けることが可能になった。
 
入院患者が増え続けて病院の負担が大きくなる一方、療養や隔離で欠勤するスタッフが多くなっているためで、医療崩壊を防ぐための非常手段と言える。
 
学校では、休校を避けるために政府が設けたルールが大きな混乱を招いた。
 
クラスで感染者が出た場合、すぐに学級全員が薬局などで検査し、陰性なら授業に戻れるとした。しかし新学期が始まると、子どもが感染するたびに全ての親が呼び出され、子どもを薬局に連れていく事態が続出。教員にも感染が広がり学級閉鎖が相次いでいる。
 
11日には新規感染者が過去最悪の約36万8千人に達した。社会機能のマヒを防ごうと対策を緩めては、感染拡大する悪循環に陥っている面もある。
 
オーストラリアでは、最大都市シドニーがあるニューサウスウェールズ州が昨年12月末、ワクチン接種済みの濃厚接触者を対象に7日間の自主隔離の規制を緩和。医療関係者は無症状なら出勤できるようにした。12月までは国内の新規感染を1日2千~3千人に抑えてきたが、今年に入り同10万人を突破。病院では看護師不足が懸念されていた。
 
さらに、農業や物流、小売りなどでも欠勤者が相次ぎ、物不足が深刻になる恐れが出てきた。そのため同州は、こうした分野で働く濃厚接触者は、短時間で判明する迅速抗原検査で陰性なら出勤できるように改め、国も全国的な規制緩和を決めた。
 
英国も1日あたりの新規感染が10万人を超える水準で推移し、人手不足の懸念が強まっている。
BBCによると、今月7日時点で、イングランド全体の8分の1にあたる16の医療機関が「緊急事態」を宣言した。救急医療などで通常通りの対応ができなくなる可能性があるため、他の地域から支援を受けたり、スタッフの配置転換が容易になったりする。軍も先週から人手不足が深刻化するロンドンの病院に軍人200人を派遣している。
 
また、ガーディアン紙によると、教員組合の調査に応じた、イングランドの学校の9%で新学期の初日に2割以上の教員が欠勤したことが判明したという。(後略)【1月14日 朝日】
************************

【フランス 学校での混乱】
ただなかなか感染防止はあきらめて・・・とは言えないので、現場では感染防止対策の検査・隔離なども行われていますが、感染力の強いオミクロン株相手では、できないことを国民に要求し、現場の混乱・疲弊を招く結果になっているようにも。

フランスの学校対策の「右往左往」などはその事例でしょう。

****登校ボイコット、教員はスト コロナ不安で混乱 欧米の学校現場****
新型コロナウイルスのオミクロン株が猛威を振るう欧米で、学校現場が混乱している。感染者増による学級閉鎖や休校だけでなく、感染の不安から生徒が学校をボイコットする動きも。フランスでは教員によるストライキまで起きている。

「授業計画立てられない」嘆く仏の教員
パリの公立小の女性教員(27)は4日朝、男子児童がコロナに感染して欠席すると連絡を受けた。
9時半ごろだった。女性は授業を中断し、残りの26人の児童の親への電話にとりかかった。校長と手分けし「今すぐ迎えに来て下さい」と携帯電話で伝えた。

フランス政府が定めた規則では、クラスに感染者が出たら、学級全員がただちに薬局などで抗原検査を受けると定めていた。それで陰性なら教室に戻れる決まりだ。すぐに休校にせず、「学校はなるべく開け続ける」という政府方針に沿ったルールだった。
 
だが、女性が電話をかけ始めると、職場に着いたばかりの親もいれば、連絡がつかない親もいた。
その日、女性の携帯は親からの折り返し着信音が何度も鳴り響いた。「とても授業どころではなかった」
 
結局、迎えに来られた親は20人ほど。都合がつかない親もいて、4、5人は検査を受けられないまま教室で過ごした。そして、翌日も児童に感染者が出た。
 
政府のマニュアルは、感染者が出た2日後と4日後にも、学級全員が自宅で検査することを求めていた。
ただ、全土で感染が急拡大し、薬局では検査キット不足に。「検査できないから休ませる」と連絡する親もいた。
女性は「こんな調子では授業計画が立てられない」と嘆く。
 
急に呼び出される親にも不満が広がった。各地で学級閉鎖や休校が相次ぎ、13日には全土で教員がストライキに踏み切った。
 
政府はマニュアルの変更に追い込まれ、日中に親は呼び出さず、帰宅後の自宅検査で代用させることにした。
 
教員によるストとデモは20日にも行われ、カステックス首相は同日、「マニュアルが変わり、親や教員に困難をもたらした」と釈明した。マニュアルを担った教育相がひそかに新学期の前日まで地中海のリゾート地イビサ島(スペイン)で過ごしていたことがメディアに暴かれ、野党が辞任を求める騒ぎに発展している。
 
ただ、基準を緩めれば、感染が学校で広がりやすくなるリスクも生む。
教員の労組は、教室に感染者が出たら学級閉鎖、とシンプルな運用にするよう求めている。(後略)【1月23日 朝日】
*********************

【防衛ラインを下げる戦略転換を明示し、態勢を立て直すべき時期】
日本でも、従来のような検査、患者・濃厚接触者の隔離といった対応は破綻しつつあります。

****検査や外来、逼迫に危機感 軽症者急増「戦略変わった」 オミクロン拡大、専門家提言****
オミクロン株による新型コロナウイルス感染が今後さらに拡大した場合、基礎疾患がない若者らは、医療機関を受診して検査を受けるという現在必須の「入り口」部分を必ずしも必要としない、と専門家が政府に提言した。そのまま自宅で療養することになる。

 ■政府「今ではない」
転換を図った背景には、早晩、検査や外来診療がパンクする危機感がある。感染力が高いが軽症者が多いオミクロン株によって、まず若年層を中心に軽症者が急増する。検査や外来に殺到すれば、重症化しやすい患者の診断が遅れ、治療が遅れる。これまでのように重症者で病床が埋まる逼迫(ひっぱく)とは異なる課題だ。
 
一方で、軽症者が多いなら、社会経済を回すことと感染対策を両立できる可能性もある。専門家の一人は「これまでとは戦略が変わった」と話す。専門家たちは感染拡大が先行する沖縄県の状況を分析しながら、検査や外来への負荷を減らす方法を検討してきた。提言案の段階では、時間がかかる検査を省いて逼迫を避け優先度の高い人の治療ルートを守るために「検査をせずに臨床症状のみで診断」と踏み込んだ。

ただ、専門家の間で「特定の症状だけでの診断は難しい」などの意見が出て削除になった。
 
ただ、急変する人が出るおそれは否定できない。政府高官は「検査を受けるなとはいえない。提言は、少なくとも今やるということではない」と強調する。実現の難しさは専門家も承知の上。専門家の一人は「医療が破綻(はたん)するレベルまでいかないと、この提言は通らないかもしれない。それでもそれから議論したのでは遅い」と語気を強める。

今回の議論は厳格な患者の管理が求められる感染症法上の新型コロナの位置づけを事実上緩めることにもつながる。検査を受けなければ陽性者として数えられず、全ての陽性者を保健所に報告する現行の対応からは外れるからだ。

療養期間やその間の行動規制をどうするのかといった課題は残る。行動制限の緩和も修正した。案段階では、政府の新型コロナ対策分科会の尾身茂会長らの主導で、基本的対処方針に明記された人流抑制や県をまたぐ移動制限の必要性は否定した。全国知事会などの反発もあり提言では従来の規制も選択肢としうる方向に修正した。
 
ただ、行政側も揺れている。21日の全国知事会の役員会議では一転、国の基本的対処方針がオミクロン対応に更新されていないことへの批判が相次いだ。オミクロン株の特性を踏まえた感染対策に見直すよう国に申し入れる。
 
首都圏でもすでに発熱外来に患者があふれ始めている。東京都と千葉県内の計三つのクリニックで発熱外来を開く東京ビジネスクリニックでは、患者数は2週間で3倍近くなり、陽性率が30%を超える日もある。内藤祥理事長は「来週には未知の状況に入る」と危機感を募らせる。
 
発熱外来は3機関で19日には312人が受診し、104人が陽性と判明した。昨夏のピークと同じくらいの人数だ。現在は検査が必要とされた全員が抗原検査を受ける。

検査キットを仕入れる一部の会社からは「しばらく出荷数を制限する」と伝えられた。今後、検査に影響が出ることを懸念する。「まだ足りなくはないが、確保しづらい」
 
抗原検査で陰性だった人の一部が追加で受けるPCR検査の結果も遅れが出始めている。通常なら24時間以内に速報が届くが、現在は平均2日かかる。昨夏のピーク時には最大5日かかったこともある。診断が遅れれば治療に影響が出る。

内藤さんは、「来週以降はどこの医療機関も経験したことのないような状況になるだろう」とし、「重症の方だけ診断していくことが必要になるかもしれない」。厚労省によると、発熱外来に訪れた人は12月は多い日に3万~4万人程度だが、1月17日には10万3184人。第5波があった昨年8月を超える水準になってきた。【1月22日 朝日】
***********************

“急変する人が出るおそれは否定できない。政府高官は「検査を受けるなとはいえない。提言は、少なくとも今やるということではない」”・・・要するに何かあったときの責任を追及されるのを避けたいという政治家・役人の発想です。

「混乱・トラブルの責任は全部私が持つので、一歩でも、二歩でも前に進むように」なって言ってくれる政治家は日本にはいないのか。ひたすらリスクばかり考える日本の昨今の「安心・安全」教の弊害でもあります。

「オミクロン株」の特性に鑑みた分類見直しの動きは世界規模でも。

****新型コロナ、インフルと同じ扱いに スペインなど働きかけ****
政府は新型コロナウイルスを、季節性インフルエンザなど他の呼吸器系ウイルスと同等に扱うべきだ──。こうした見方が、スペインを筆頭に一部の国で勢いを得ている。ただ世界保健機関は、このアプローチは時期尚早だと警鐘を鳴らす。

世界各国の政府や国民が新型ウイルスのパンデミック(世界的な大流行)終息を切望する中、流行段階の分類を見直す時期についての議論が活発化している。

スペインのカロリーナ・ダリアス保健相は、「スペインはこの議論を率いたいと考えている。時宜にかなっていて、必要なことだからだ」と説明。スペインが欧州疾病予防管理センターに対し、コロナ対策の「新たな戦略を検討」するよう要請したことを明らかにした。

スペインは、こうした議論を先導しやすい立場にある。国内のワクチン接種率は12歳以上で90.5%と、世界最高水準だ。

だがこの議論は、日常回復を進めたい各国政府と、警戒を怠りたくない医学界との間で意見の相違を引き起こしている。

スペインの左派政権は、新型ウイルスをインフルエンザと同様、人類が共生可能な「エンデミック(一定の地域で一定の罹患〈りかん〉率や季節性を持って起きる流行)」の感染症に指定するよう積極的に働きかけている。

新型ウイルスの流行では現在、感染力の強い変異株「オミクロン株」により感染者が急増している一方で、死亡や入院の割合は減っている。多くの国は規制の解除を進め、隔離期間を短縮したり、入国規制を緩和したりしている。

だが、WHOのテドロス・アダノム・ゲブレイェスス事務局長は18日、パンデミックは「終息には程遠い」との見方を示し、新たな変異株が今後も出現する可能性が高いと警告した。

WHOはまた、エンデミックの深刻さを過小評価することにも警鐘を鳴らしている。

WHOで緊急事態対応を統括するマイケル・ライアン氏は、世界経済フォーラムが主催するオンライン会議「ダボス・アジェンダ」のワクチン公平性に関する円卓会議で、マラリアを例に挙げ、「エンデミックとはそれ自体が良いものではない。永遠にその地に存在することを意味するだけだ」と指摘した。

■「間違った希望」
スペインの疫学者で公衆衛生協会の広報担当を務めるフェルナンド・ガルシア氏も、現段階で新型コロナウイルス感染症をエンデミックの疾病に分類するという議論は「間違った希望を生む」と警告する。

欧州連合の欧州医薬品庁で予防接種戦略の責任者を務めるマルコ・カバレリ氏も、「新型ウイルスがエンデミックの方向に向かっているのは確かだが、すでにその状態に達しているとは言えない」と指摘する。

ウイルスが今後、弱毒性に進化するという見方も、確実な見通しではない。スイス・ジュネーブ大学グローバルヘルス研究所のアントワーヌ・フラオー所長はツイッターへの投稿で、「将来の重症度はまだ分からない。ウイルスの毒性が時間の経過とともに必ず弱まるという法則はない」と指摘。「毒性の進化を予測することは極めて困難だ」との見解を示した。 【1月22日 AFP】
*********************

議論はいろいろありますが、個人的には、“オミクロン株、重症例8分の1 20年のウイルスと比較”【1月20日 共同】“追加接種で入院9割防止 対オミクロン株、米研究”【1月22日 共同】といったあたりに期待して、防衛ラインを「重傷者防止」へ下げることをもっと明確に打ち出す時期ではないか・・・と思っています。

感染予防のフィールドで従来のような対応を引きずっていたのでは、いたずらに混乱・疲弊を招くだけのようにも。

もちろん感染者増加でもろもろの問題、犠牲者増加はおきますが、そこは「仕方ない」「コロナに限らず多くのリスクが溢れる世の中というのはそういうものだ」という決断で。

感染者の推移については、これまでの世界・日本の動きを見ていると、乱暴な言い方をすれば、「感染が拡大するときは何をしても拡大する。やがてピークに達する。減り始めたら、何もしなくても減り続ける。」といった自律的なイメージも。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

オミクロン株  米バイデン政権にとって一時的には「救いの神」 対策にはグローバルな視野も必要

2021-12-01 23:20:41 | 疾病・保健衛生
(原油先物(米WTI)の推移)

【原油価格急落 米バイデン政権にとって「救いの神」となったオミクロン株】
ここ数日、国際情勢関連ニュースも「オミクロン株」関係一色。
感染力は? ワクチンの有効性は? 治療薬の効果は? 現在の感染拡大状況は? 各国の水際対策は? 命名の背景は? 等々。

その脅威についてはまだわからないことばかりですが、その影響は世界経済に直ちに波及しています。

“面白い”と言っては不謹慎ですが、興味深いのは、持ち直しつつあった世界経済がオミクロン株感染拡大で再び冷え込むことが予想され、原油需要も押し下げられることから、数日前まで世界経済にとって懸念材料となっていた原油価格上昇の流れが一気に変化したこと。

****原油先物20年4月以降で最大の下げ、新変異株受け需要減少懸念****
(11月26日)米国時間の原油先物は約10ドル下落した。1日の下落幅としては2020年4月以降で最大。新型コロナウイルスの新たな変異株により経済成長や燃料需要が落ち込むとの見方が強まった。(中略)

米WTI原油先物は10.24ドル(13.1%)安の68.15ドル。週間では約10.4%下落した。(後略)【11月27日 ロイター】
******************

米WTI原油先物は1バレルあたり10ドルほどの急落のあと、一時は66ドル台にまで下がり、ここのところは69ドルあたりで推移しています。

****原油先物下落、オミクロン株に対するワクチンの有効性巡る懸念で****
米国時間の原油先物は下落。米モデルナのバンセル最高経営責任者(CEO)が新型コロナウイルスワクチンについて、新たな変異株「オミクロン」への効果はデルタ株と比べて低下する恐れがあると指摘したことを受け、原油需要を巡る懸念が強まった。(中略)

米WTI原油先物は3.77ドル(5.4%)安の66.18ドル。一時64.43ドルまで下落し、8月以降の安値を更新した。(中略)

ライスタッド・エナジーのアナリストは「石油需要に対する脅威は本物だ。新たにロックダウン(都市封鎖)の波が起これば、2022年第1・四半期には日量で最大300万バレルの石油需要が失われる可能性がある」とした。【12月1日 ロイター】
***********************

11月25日ブログ“原油価格高騰 米バイデン政権は日本など消費国と強調して石油備蓄放出へ 効果は?”でも取り上げたように、ガソリン価格上昇というバイデン政権にとっては非常に危険な事態に対し、アメリカは日本を含めた同盟国と協調して石油備蓄放出という非常手段にでたものの、動員できる量は限られており、また産油国側を逆に刺激したこともあって、その効果は危ぶまれていました。

その意味では、「オミクロン株」による原油価格「急落」は(不謹慎ながら)バイデン政権にとって、現時点に限った話ではありますが、「救いの神」にもなっています。

****オミクロン株に救われた米国 原油価格下落、米国債安定で窮地を脱す****
新型コロナウイルスの変異株「オミクロン株」の出現が、世界の金融市場を大きく揺るがしている。そのひとつとして注目したいのが、原油先物価格の動きだ。高騰が続いていたNY原油先物価格は11月26日に約10%下落した。その後少し戻しはしたが、今後のトレンドはまだ見えてきていない。
 
10月下旬から11月上旬にかけての原油先物価格は新型コロナウイルスのパンデミックが発生する前の高値を更新、1バレル80ドルを超える水準で推移していた。約7年振りの高値を付ける中で急落が起きた。原油先物価格は物価を見通す上で非常に重要な指標である。投資家のみならず、その先行きは非常に気になるところだ。
 
それにしても、急落前、なぜ、上昇していたのだろうか。今後の動きを分析するには、まずその点から整理しておく必要があるだろう。
 
主な要因として考えられるのは、需要拡大見通しである。新型コロナウイルス感染拡大の収束期待が高まることで、グローバル経済が回復に向かう。そうなれば当然、原油の需要は拡大する。その上に、ラニーニャ現象の発生で厳冬となれば、需要は更に上乗せされる。
 
加えて、供給の構造的な鈍化、硬直化など、“需要増加に合わせて柔軟に供給が増えるといった市場メカニズム”が働きにくいことも要因として挙げられよう。
 
環境問題を重視する各国政府は石油開発投資、生産を抑制しようとしている。OPECプラスはそうした動きを警戒、需要の伸びが期待できない以上、価格政策を重視している。

サウジアラビアやロシアなどは政治的な駆け引きに熱心であり、OPECプラスとして柔軟な供給体制が取れないでいる。アメリカの覇権に陰りがみられ、産油国への影響力が弱まっているといった見方もできよう。

インフレが進めば米国債券市場に危機も
原油(先物)価格の上昇で困るのは、日本や欧州の主要国(イギリスを除く)など、非産油国だけではない。足元で物価が上昇、金利の先高懸念の強まっている米国も同様だ。

インフレが手に負えなくなれば、安全資産の頂点にあり、国際金融市場の要ともいえる米国債券市場が危機的状況に陥るリスクがある。
 
バイデン政権にとっては、大統領の支持率低下が深刻となる中で、市民に強い不満を与え、経済的な大混乱を引き起こしかねない原油高は、なんとしても避けたいところでもある。
 
米国は世界最大の産油国であり、シェールオイルの増産能力は十分あるはずだが、バイデン大統領は11月に開かれたCOP26において、各国に対して気候変動対策の強化を訴えたばかりである。トランプ前大統領とは正反対の姿勢だ。

そもそも、石油業界は伝統的に共和党支持者が多い。政治的な要因も加わり、政府主導で増産を呼びかけるわけにはいかないといった事情がありそうだ。
 
バイデン大統領は11月23日、石油の国家備蓄を5000万バレル放出すると発表。日本政府も24日、米国の要請を受けて石油の国家備蓄を放出することを決めた。インドや韓国などもこれに追従する意向である。ちなみに、中国は既に9月の段階で、国家備蓄を放出している。
 
しかし、国際協調の動きがあったにもかかわらず、バイデン大統領が打ち出した切り札ともいえる政策は効かなかった。原油先物価格は22日に一旦底打ちすると、24日には高値79.23ドルまで上昇した。

米国にとっては都合の良い結果
こうした背景で原油先物価格が高騰していたタイミングで、今回の急落が起こった。
 
世界のマスコミは11月26日、新型コロナウイルスの「オミクロン株」の発生を大きく報じ始めた。それによって、金融市場は一変。先週末のグローバル株式市場は急落する一方で、リスクマネーは安全資産としてドルを選好、米国債に資金が流入し、金利は大きく低下した。(中略)

オミクロン株については、感染力、重症度、ワクチンの効果など、まだ不明な点も多い。そうした点が明らかになるまでは、市場のはっきりした方向性が出てこないかもしれない。(後略)【12月1日 田代尚機氏 マネーポストWEB】
***********************

もちろん原油価格が下げたと言っても、現時点での話で、今後のオミクロン株の影響などで流れは決まってきます。
産油国側も模様眺めの様相です。

****OPECプラスが会合延期、新変異株の影響見極めで****
石油輸出国機構(OPEC)と非加盟産油国でつくる「OPECプラス」は、29日と30日に予定していた会合をそれぞれ12月1日と12月2日に延期した。

南アフリカなどで確認された新型コロナウイルスの新変異株(オミクロン株)が原油の需要と価格にどう影響を及ぼすか見極める時間を確保する狙いだ。複数の関係者や関連書類で明らかになった。(中略)

ある関係者は「新変異株がどういうものかを把握し、われわれが過剰に対応するべきかどうか理解するために、もっと時間が必要だ」と述べた。【11月29日 ロイター】
***********************

【今後は実体経済に強く影響】
オミクロン株の影響は、当然ながら実体経済に大きく影響します。
すでにアメリカや日本など各国で先行き不透明感から株価は大きく下げていますが、今後ロックダウンなどの規制強化が必要とされるようになれば実体経済も縮小し、バイデン政権をはじめ各国政府は困難な対応を迫られます。

それ以前の段階でも、各国の入国規制が強化されることで、企業の生産活動、物流は大きく制約されることにもなります。

****オミクロン株に企業警戒感 出国停止検討も****
南アフリカや欧州などで確認された新型コロナウイルスの新たな変異株「オミクロン株」に対し、海外に進出する企業の間で警戒感が広がっている。昨年からコロナ対策に取り組んできた大半の企業はオミクロン株の確認以前から海外出張などには慎重で、大きな混乱は生じていないが、感染拡大が続けば生産活動や物流などに悪影響が出るのは避けられないからだ。

トヨタ自動車は東南アジアのコロナ流行や世界的な半導体不足で部品調達難に陥り、9月に年間の世界生産台数の見通しを当初から30万台減の900万台に引き下げた。オミクロン株が最初に確認された南アフリカでもカローラシリーズなどを生産。社員の出入国については「状況を注視して、日本政府の規制に準じて対応していく」という。

多くの企業はオミクロン株が確認される前から海外出張を原則禁止とするなど慎重な対応を取ってきた。キリンホールディングスも海外出張を控えており、今後の流行状況に応じて出国停止を検討する方針だ。(中略)

コロナ禍で激減した訪日観光客(インバウンド)の回復にも歯止めがかかり、経済同友会の桜田謙悟代表幹事は「影響は間違いなく、それもかなりある」と話す。

政府は1日、日本に到着する全ての国際線の新規予約を当面停止するよう航空各社に要請。国際貨物が好調で旅客便に搭載して運んでいる日本航空の担当者は「貨物で採算が取れていることもあり、基本的には乗客が少なくても既に予約が入っている便は運航する」と説明するが、「長引かなければいいが」と今後の影響に懸念を示す。【12月1日 SankeiBiz】
*******************

【日本 厳しい水際対策実施】
日本も水際対策の強化で、全外国人の入国を禁止。

****日本も外国人の入国原則禁止へ ビジネス目的、留学生も****
新型コロナウイルスの新たな変異株「オミクロン株」の感染拡大を受け、岸田文雄首相は29日、外国人の入国を原則、禁止する方針を発表した。数週間前に厳しい入国規制を緩和したばかりだった。
 
岸田首相は記者団に対し、30日から、入国禁止措置の対象を全世界に拡大すると述べた。ビジネス目的の渡航者や留学生の新規入国も禁止される。 【11月29日 AFP】
*********************

更に、日本政府は国内外の航空会社に対し、日本人帰国者を含めた日本に到着するる全ての国際線の予約停止を要請。

****全ての国際線の予約停止を要請、帰国希望の日本人も対象…「オミクロン株」対策強化****
国土交通省は1日、国内外の航空会社に対し、12月末までの1か月間、日本に到着する全ての国際線について、新規予約を停止するよう要請したことを明らかにした。

新型コロナウイルスの新たな変異株「オミクロン株」の感染拡大を防ぐため、水際対策を強化した。予約の受け付け停止は帰国希望の日本人も対象となるため、予約を取っていない日本人は帰国できなくなる。

国土交通省 要請は11月29日付。日本から出発する国際線は対象外となっている。

要請は、全日本空輸を傘下に持つANAホールディングスや日本航空のほか、日本の空港に路線を持つすべての海外航空会社に対して行った。国土交通省は要請について、「オミクロン株の実態が分かるまで感染拡大を食い止めるための緊急避難的な予防措置だ」としている。

停止日までに受け付けた予約は通常通り搭乗できる。国内空港が乗り継ぎ地点となる便については措置の対象外とした。また、日本からの出国便は引き続き新規予約を受け付ける。ただ、今回の措置により、帰国できなくなる恐れがあるため、事実上、出国希望者の抑制につながるとみられる。
 
政府はオミクロン株への水際対策として、外国人の新規入国を原則停止したり、1日あたりの入国者数の上限を3500人程度に引き下げたりしていたが、一段の対策強化に向け、更なる措置に踏み切った。【12月1日 読売】
********************

日本人帰国者も締め出す今回措置については異論もあるかと思いますが、政府としては、すでにオミクロン株感染者の流入も出ている状況で対策が後手に回ると政権批判が高まることを懸念しての措置でしょう。

【「この株を検出した南アフリカとボツワナは感謝されるべきであり、罰せられるべきではない」】
世界各国が、オミクロン株の感染拡大を公表した南アフリカなどの国からの渡航を制限していることについては、南アフリカやWTO・国連は「この株を検出した南アフリカとボツワナは感謝されるべきであり、罰せられるべきではない」(WHOのテドロス・アダノム事務局長)と各国対応を批判しています。

****オミクロン株拡大めぐる渡航制限 南アフリカ大統領「不当な差別」****
新型コロナウイルスのオミクロン株が見つかった南アフリカのラマポーザ大統領は28日、テレビなどを通じて演説し、一部の国々が南部アフリカからの渡航を制限したことについて「深く失望した」と述べ、「早急に決定を撤回し、渡航禁止措置を解除するよう求める」と訴えた。
 
演説では、渡航制限を実施している欧米諸国や日本などを名指しした上で、「不当であり、我が国と南部アフリカの国を不当に差別している」と批判。「影響を受ける国の経済をさらに悪化させ、感染拡大への対応や回復の能力を損なうだけだ」「科学的ではなく、変異株の拡散防止についても効果的ではない」などとも主張した。
 
一方、南アではワクチン接種を終えた人は総人口の23%超にとどまっており、接種に抵抗感を持つ人々も多い。このため、ラマポーザ氏は国民に向けて「変異株から自身や周囲の人たちの身を守るためにはワクチン接種が最も重要」だと強調し、接種を改めて強く呼びかけた。

また、特定の活動や場所に対してワクチン接種を義務化するためのタスクチームを立ち上げたことも明らかにした。(後略)【11月29日 朝日】
**********************

****オミクロン株検出、WHOテドロス氏「南アとボツワナに感謝を」…渡航制限の各国批判****
新型コロナウイルスの新変異株「オミクロン株」の感染拡大に警戒感が広がる中、米国のバイデン大統領は記者会見を開き、国民に冷静な対応を呼びかけた。世界保健機関(WHO)などからは、アフリカ諸国に対する渡航制限について懸念の声が上がっている。一方、感染は欧州を中心にさらに拡大し、既存ワクチンの追加接種の対象を拡大する動きも出ている。
 
バイデン氏は29日、ホワイトハウスでの記者会見で「懸念材料ではあるが、パニックを引き起こすほどのものではない」と述べた。既存のワクチンの有効性が判明するには「数週間かかるだろう」とした上で、「我々の医療チームはある程度の予防効果があると考えている」と述べ、ワクチン接種や追加接種の重要性を強調した。

また、オミクロン株に対応するワクチンの開発が必要な場合に備え、米製薬大手ファイザーや米バイオ企業モデルナなどと協議を始めていることを明らかにした。
 
米政府は南アフリカや周辺の計8か国を対象に渡航を制限しているが、バイデン氏は現時点では渡航制限の拡大などの新たな措置は必要ないとの認識も示した。
 
一方、WHOのテドロス・アダノム事務局長は29日の総会特別会合で「この株を検出した南アフリカとボツワナは感謝されるべきであり、罰せられるべきではない」と述べ、南アなどアフリカ南部に対し渡航を制限している各国を暗に批判した。
 
オミクロン株についてWHOは、加盟国向け資料で「さらに拡散する可能性が高い」と警告しているが、感染力や重症化の程度については「不確定要素が多い」との記述にとどめている。
 
国連のアントニオ・グテレス事務総長も声明で、南アフリカなどに対する渡航制限について懸念を示した上で、「ワクチン接種率の低さが変異株の出現につながる」とし、ワクチンの公平な普及を訴えた。(後略)【11月30日 読売】
********************

“オミクロン株を最初に発見・報告した南アフリカの当局者は、オランダや英国、カナダ、香港など世界各地で確認されている同株を特定したことで「罰せられている」と述べた。アフリカ南東部マラウイのラザルス・マッカーシー・チャクウェラ大統領は、欧米諸国による渡航制”【11月30日 AFP】

現実問題としては各国の水際対策強化はやむを得ない措置ですが、それによって感染公表国が「罰せられる」ような結果になれば、不公平なだけでなく、今後の世界のコロナ対応にも禍根を残します。南アなどへの何らかの支援が同時に必要でしょう。

更に、そもそも論で言えば、国連のグテレス事務総長も言及しているように、世界にワクチン接種が進まず感染が拡大しやすい国が残る限り、日本を含めたワクチン先進国も常に新たな変異株の脅威にさらされ続け、経済・生活も日常回復はできません。

どうしても国内対策が優先されるのはこれまたやむを得ないところですが、それだけで突き進むのではなく、同時に世界的な視野にたったグローバルな対応も不可欠です。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

天然痘「ヒトが唯一勝利した感染症」 廃棄したはずのウイルスが冷凍庫の中から?

2021-11-19 23:07:03 | 疾病・保健衛生
(天然痘ウイルスの電子顕微鏡写真【11月17日 CNN】)

【冷凍庫の奥から天然痘ウイルス?】
日本の新型コロナ感染は(不思議なくらいに)落ち着いた状況になっていますが、一方で、(未接種が一定に存在するとは言え)一定にワクチン接種が進んだ欧州や韓国で感染が再拡大している事実は、コロナとの戦いが一筋縄ではいかないことを示しています。

そんななかで、ドキッとするニュースが。

****「天然痘ウイルス」と書かれた瓶、研究所の冷凍庫で発見****
疾病対策センター(CDC)は16日、数十年前に根絶された伝染病、天然痘の表記がある複数の小瓶が、東部ペンシルベニア州のワクチン研究施設で見つかったことを明らかにした。

瓶は冷凍状態だった。中身に異常はみられず、だれかが接触した形跡もないという。

CDCによると、研究施設の冷凍庫を片付けていた職員が偶然見つけた。CDCと関係機関、捜査当局が詳しく調べている。

天然痘はかつて年間1500万人が感染し、そのうち約3割が死に至る疫病として恐れられていたが、1980年に世界保健機関(WHO)が根絶を宣言した。米国での感染は47年を最後に報告されていない。

2014年には東部メリーランド州で、国立衛生研究所(NIH)の研究室を移転するための準備作業中、倉庫から天然痘ウイルスのサンプルと書かれた6本の瓶が見つかり、このうち2本から生きたウイルスが検出された。

天然痘ウイルスのサンプルを保管し続けるか、完全に処分するかをめぐっては、各国政府の間で議論が続いている。【11月17日 CNN】
*************************

【「ヒトが唯一勝利した感染症」 ウイルス保有は米ロの施設2か所だけ・・・のはずが・・・】
新型コロナや多くの感染症とヒトとの戦いが続く中で、天然痘は「ヒトが唯一勝利した感染症」とも言われてきました。

****ヒトが唯一勝利した感染症 天然痘****
人類の歴史は、感染症との闘いの連続であったと言っても過言ではありません。

感染症を撲滅するため、先人たちは、下水や上水道の整備、住宅環境の改善、予防接種の普及、抗菌薬の開発など、たゆまぬ努力を続けてきました。その結果、20世紀半ばには結核や肺炎などの感染症で死亡する人は急激に減少しました。1960年代には、専門家が「人類は感染症に勝利した」と錯覚したこともありました。
 
しかし、そう思えたのも、つかの間のことでした。
エイズ、プリオン病、SARS(重症急性呼吸器症候群)、新型インフルエンザ、MERS(中東呼吸器症候群)、エボラウイルス感染症など、たくさんの新たな感染症が出現しています。感染症との闘いは、勝利には程遠い状況と言えるでしょう。
 
これまでに唯一勝利を収めたと言えるのは、天然痘との闘いです。
 
天然痘は、天然痘ウイルスによって引き起こされます。ヒトにしか感染せず、ヒトからヒトへ飛沫(ひまつ)を介して感染します。1~2週間の潜伏期の後、急激な発熱や頭痛、関節痛で発症し、数日たつと発疹が出現します。発疹は水疱(すいほう)性となり、やがて水疱が化膿(かのう)して膿液がたまった膿疱(のうほう)となり、かさぶたへと変化します。助かる場合には2~3週間で回復しますが、死亡率は20~50%に達します。
 
発疹のあとが「あばた」として残るため、江戸時代には「見目定(みめさだ)め(見た目を悪くしてしまうこと)」と言われました。天然痘の流行は古代エジプトでもあったという人もいますが、確証はありません。
 
しかし、少なくとも16世紀のヨーロッパではすでに猛威を振るっていて、当時子供を中心に多くの人々の命をさらっていました。

さらに、流行地のヨーロッパから中南米に持ち込まれると、感染は爆発的に拡大し、人口が激減したとされています。アステカ帝国やインカ帝国が滅んだのは、侵略者との戦いもさることながら、ヨーロッパから持ち込まれた、天然痘などの新しい感染症の影響が大きかったようです。
 
1796年、イギリスの田舎で開業していたジェンナーは、「牛がかかる牛痘に感染した農民は天然痘にかからない」という言い伝えにヒントを得て、ある少年の皮膚に傷をつけて牛痘にかかった農民の発疹の膿(うみ)をすり込みました。その後数十例の症例を重ねて効果を確認し、1797年にその成果を発表しました。
 
実は、「種痘」はジェンナー以前にも農村で行われていたようですが、きちんと検証して世の中に認めさせたのは、やはりジェンナーの功績と言えるでしょう。
 
この種痘に使われた膿は、今でいえばワクチンにあたります。ヒトからヒトへ接種して引き継がれたワクチンは、1848年に日本にもたらされ、全国に普及していきます。
 
1956年以降、日本国内で天然痘の発生はなく、世界的にも77年のソマリア人が最後の感染者になりました。WHOは80年に天然痘撲滅宣言を行いました。
 
種痘は日本や米国、カナダでは実質的には72年に乳児への接種が中止され、その後、日本では80年に法律で廃止されています。【2017年10月6日 弘前大学大学院医学研究科臨床検査医学講座教授 萱場広之氏 朝日】
**********************

ジェンナーの種痘実験は、今の基準で言えば人体実験に近いようなものかも。ただ医学の発達の歴史はそういうものでしょう。

また、「1960 年代、当時普及した Lister 株(主にヨーロッパ)、NYBH 株(主に米国)、池田株(日本)等 6 種類程の牛皮型ワクチン株が使用 されていた。これらのワクチンは副反応が強く特に 神経合併症による種痘後脳炎が社会問題として起き た。日本は 1972 年から Lister 株に変更されたが年度別の脳炎・脳症発生率は 100 万人の初種痘当たり 20 人前後、死亡率は年度により差があるが平均すると 6 人程度と報告されている。」【「種痘廃止して 28 年目の痘瘡抗体保有状況」 武内安恵氏等】といったワクチン副作用リスクは、新型コロナワクチンに比べて小さいものではないようにも思えます。

ワクチンを含め医薬品には必ず副作用・副反応がありますので、悪戯にそうしたリスクを騒ぎ立てるのではなく、ベネフィットとの冷静な比較を行うバランス感覚が重要になります。

日本では1976年(昭和51年)に定期種痘が廃止されていますので、それ以降の世代(40歳代前半より若い世代)は免疫を持っていません。世界でも同様。

免疫のないものが天然痘ウイルスに接触すると罹患率 は 80%近くとなり、発症後の死亡率は 40%を超えると言われていますので、冒頭ニュースにドキッとした次第です。

なお、根絶宣言後もアメリカとロシアは「研究用」に天然痘ウイルスを保有し続けており、これが万一市中に漏れだすと・・・という脅威があります。

****天然痘ウイルスの処分 ****
根絶宣言と前後して WHO は世界各地で研究用と して保管されていた天然痘ウイルスの廃棄に取りかかった。

米露以外の国で持っていたウイルスは 1980 年頃までに廃棄し、残余は米国とロシアの 2 つの研究所に送られた。

WHOの廃棄処分決議にも拘らず、米露 2 カ国は「生物テロ対策」研究用として処分反対し、その後 2 カ国が独占保有して現在に 至っている。

衝撃的なことは旧ソ連の崩壊によって ロシア共和国に保管されていた大量の天然痘ウイル スが 80 年代後半から 90 年代初めにかけて科学者と 共に他国に散逸し、テロ国家の手に渡っている可性が出てきたことである。【同上】
********************

【今回は天然痘ウイルスではなかったものの、リスクは常に存在】
世界で唯一ウイルスを保管している米ロの研究施設(ジョージア州アトランタにあるCDCの施設と、ロシアのコルツォボにある国立ウイルス学・生物工学研究センター)からの流出も(人間のやることにはミスが絶対にあり得ますので)可能性ゼロではありませんが、そうした施設の奥深くからではなく、そこらの冷凍庫の中からひょっこり・・・というのは怖すぎます。

“このほかの施設でも天然痘ウイルスが保管されている可能性はあり、それが誤って、あるいは意図的に流出される可能性が懸念されている。CDCは「そのような事態が起きれば、破壊的な影響がもたらされかねない」と言っている。”【11月18日 Newsweek】

確認の結果、今回は天然痘ウイルスではなかったようです。

****「天然痘」と記載の瓶、中身は天然痘ウイルスではなくワクシニアウイルス 米****
 米ペンシルベニア州のワクチン研究施設で「天然痘」と記載された瓶が複数見つかった件で、米疾病対策センター(CDC)は18日、中身は天然痘を引き起こす天然痘ウイルスではなく、天然痘ワクチンの作成に用いられるワクシニアウイルスと判明したと報告した。

CDCは16日、「天然痘」との記載がある瓶が数個見つかったことを確認していた。
検査の結果、中身は天然痘ウイルス(バリオラウイルス)と近縁のワクシニアウイルスであることが判明した。ワクシニアウイルスは天然痘ワクチンの作成に使われ、「ワクチン」の語源となっている。

CDCは声明で「天然痘の原因となるバリオラウイルスが瓶に含まれている証拠はない」と説明。州や地元保健当局、法執行機関、世界保健機関(WHO)と緊密に連携しているとも述べた。(後略)【11月19日 CNN】
********************

今回は無事にすんだようですが、こんな形で終わったはずの感染症が再び人類を襲う・・・という危険性は、映画・小説の中だけではないようです。

シベリアの永久凍土が温暖化でとけだすと、凍土のなかから太古の未知のウイルスが出現することも、あるいは、人間の活動領域が拡大することで野生動物との接触機会が増えて、新たな感染症が・・・・、あるいは、これまでのありふれたウイルスが変異で強毒化する・・・といった危険も。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

観光再開へ舵を切る東南アジア コロナを極度に恐れる日本 「ゼロコロナ」に固執する中国

2021-11-02 23:03:25 | 疾病・保健衛生
(【11月2日 FNNプライムオンライン】タイ・バンコクの観光客が集まるカオサン界隈)

【観光再開に踏み出すタイなど東南アジア】
“タイでは現在も1日当たりの新規感染者数が1万人近くに上っており、ワクチン接種が完了しているのは全人口の40%余りにとどまる。ただ、バンコクについては接種率は80%近くに達している。”【11月1日 AFP】がという状況ですが、観光が国民経済の基幹産業である観光立国ということもあって、これまでの地域を限定した外国人観光客の受け入れを、日本を含めた低リスク国を対象に本格的に再開しています。

1日以降、条件を満たす旅行者は到着時に受けた検査の結果が出るまで、政府指定のホテルに1晩だけ宿泊する
ことになります。12歳未満の子どもが親と一緒に入国する場合は、ワクチン接種の条件が外されます。【11月2日 CNNより】


****タイ、観光客受け入れ再開 ワクチン接種で隔離なし バンコクなど****
タイは1日、新型コロナウイルスワクチン接種を条件に、1年半ぶりに外国人観光客の受け入れを再開した。首都バンコクとプーケットの空港には、規制緩和後初となる旅行者が到着した。他の都市についても順次受け入れを再開する。
 
バンコクのスワンナプーム国際空港とプーケット国際空港に降り立ったのは欧州からの観光客が大半で、防護服を着用した空港職員に迎えられた。
 
国内の国際空港を運営するタイ空港公社によると、1日には約3万人がスワンナプーム国際空港に到着する見込み。
 
タイ経済は観光業に依存しており、新型コロナのパンデミック(世界的な大流行)で大打撃を受けた。2020年の訪問者数は80%以上減少し、経済活動は1997年のアジア通貨危機以来、最悪の状態にまで落ち込んだ。
 
当局は観光業を再活性化させるため、「低リスク」の60か国以上を対象に、ワクチン接種済みの観光客についてホテルでの隔離免除を決めた。
 
12月に避寒のため訪れる観光客を取り込みたい考えで、低リスク国には欧州各国や米国、中国が含まれる。
 
プラユット・チャンオーチャー首相は10月29日、「政府と私が今、最も重要だと考えていることは、人々の暮らしを正常な状態に戻すことだ」と述べた。
 
観光産業はタイ経済の5分の1を占めており、コロナ禍の影響は飲食から輸送などさまざまな部門に及んでいる。
 
当局は来年には1000万〜1500万人の観光客が戻ってくると見込んでおり、その収益は300億ドル(約3兆4000億円)を超えると予測されている。
 
ピパット・ラッチャキップラカーン 観光相は「観光収入は2023年には2019年の水準にまで近づく見込みだ」と述べた。
 
一方、業界関係者は状況を楽観視していない。タイへの観光客の大部分を送りだす中国が、海外からの帰国者に対し、厳格な隔離措置を実施しているためだ。(後略)【11月2日 AFP】
******************

観光再開を首を長くして待ち望んでいる私としては、非常に気になるニュースなので、タイの状況をもう少し詳しく。

****“眠らない街“タイの復活...隔離も酒も有名スポットも「大幅解禁」で狙う観光客****
タイの観光業復活に向けた動きが急加速した。2021年11月1日(月)、タイ政府は日本を含む63の国と地域からの観光客について、ワクチン接種などを条件に入国後の隔離措置を免除。

人気観光地の一般公開も続々再開させたほか、バンコクなどでは、一部時間や店舗による制限があるものの、店内での飲酒が解禁された。

夜間外出禁止令は前日の10月31日に解除となったばかりだ。ほかにも一部の小学校が対面授業を再開した。「大幅解禁の日」街では人々がかつての日常を取り戻し始めていた。

“眠らない街”復活か
11月1日午前0時、首都バンコクのカオサン通りは地元の若者たちで賑わっていた。前日に夜間外出禁止令(午後11時〜午前4時)が解除されたのだ。スマホのカメラを向けると笑顔で応じる人が多い。日本の渋谷ほどではないが、ハロウィンの仮装姿の人もいる。

小道を入ったところに置かれた赤いクーラーボックスの側に、忙しそうに働く男性がいた。男性はクーラーボックスの陰でコソコソと真っ白のカップに液体を入れ、通りに座る客へ届ける。カップに入れられたそれは遠目からはジュースのように見えるが、酒だ。

この日からバンコクでは店内での飲酒が半年ぶりに解禁されたが、「酒は午後9時までしか売ってはならない」などの制限が付けられている。このため、こうした“違法行為”に手を染める店が多いという。なかには瓶ビールをそのまま売っている店もあった。

警察車両が近づくと人々は一斉に離散するが、車両が通り過ぎるとすぐに元の場所へと戻る。大型のクラブが入る建物には吸い込まれるように多くの若者たちが入っていく。クラブやバーの営業はまだ認められていない。クラブが入るビルの外観だけを見れば、真っ暗だが、開いた扉の奥の方には明かりが見える。私が近づくと、扉は閉められてしまった。

カオサン通りを少し離れた一画には屋台が並んでいた。深夜にも関わらず、白いカップを手にした若者たちが続々と来店し、楽しそうに語り合っていた。

観光大国の復活にかけるタイ
解禁されたのは夜間外出と店内飲酒だけではない。11月1日からタイ政府が指定した63の国と地域からの人々は、ワクチン接種や検査を条件に、入国後の隔離措置が免除となった。

午前7時、バンコク郊外のスワンナプーム国際空港に欧州から到着した人々が姿を現した。機内は空いていたようで、通路の混雑はない。この日、空港には前日のほぼ倍増となる61便が到着し、空港運営会社の幹部職員は「これから来訪者はますます増えると思う」と期待をにじませた。

人気観光地であるタイ王室ゆかりの三大寺院もすべて11月1日の朝から一般公開を再開した。午前8時、「エメラルド寺院」の通称で知られる「ワット・プラ・ケオ」では、衛兵の訓練が行われていた。外のテントには、7カ月ぶりに一般公開が再開されるのを前に、既に多くの来訪者が待機し、午前8時30分、供物の花などを手に続々と入門した。人々とともに奥へ進み、門をくぐると静けさが広がる。

コロナ禍の前は、1日あたり2万2000〜3000人が訪れ、いつも混雑していたが、11月1日は感染対策の人数制限で人が少なく、普段より落ち着いている。(中略)

タイの11月から3月は乾季にあたり、比較的過ごしやすい日が続く。タイ政府観光庁によると「爽やかな青空が広がる日が多く、観光にはぴったりの季節」だ。そんな観光シーズンのスタートに、旅行者は、空港到着後の隔離なしで街へ出て、観光名所の寺院を訪れ、夜は街で酒を飲め、外出規制もない…すべてこのタイミングで解禁したタイ政府の狙いは、観光大国の復活だ。

コロナ禍により激変した街
(中略)
プラユット首相は10月11日テレビ演説で「観光で生計を立てる国民を支えるために、年末年始の旅行者に来てもらうチャンスを逃してはならない」と述べた。この発言の背景には、各国の政策もある。

“競合国”との観光客争奪戦
周辺の国々でも海外からの入国再開の動きが相次いでいる。

2021年11月1日現在、“インド洋の真珠”スリランカは10月7日、全土で隔離なし入国可能に。
インドネシアは10月14日、リゾート地バリ島などで国際線運航を再開(5日間の隔離義務)。

インドは10月15日、段階的な観光ビザの発行を再開し、11月15日からは外国人観光客の受け入れを本格的に再開する方針だ。

シンガポールは10月19日、隔離なしで入国を認める制度に8カ国(北米と欧州)を加え、11月8日からはオーストラリアとスイスを、15日には韓国も加える(日本からの渡航者は依然隔離が必要)。

オーストラリアは11月1日から最大都市のシドニーを含む一部の州や都市で、帰国する自国民や駐在などのために入国を許可された外国人に限り、隔離を免除とした。

マレーシアは11月15日からランカウイ島で外国人観光客を隔離なしで受け入れる方針だ。

これに負けじとタイも一部の観光地、プーケットでは隔離なしの入国を認めてきた。
11月1日は、ワクチン接種率が基準を満たした一部の幼稚園と小学校も、対面授業を再開させ、子どもたちが笑顔で再会を喜び合った。

かつての日常が戻り始めるなか、タイ国内では不安の声も聞こえてくる。このところ、タイの1日当たりの国内新規感染者は1万人程度で推移。国内では、観光業の回復=経済再生へ期待が高まる一方、警戒感が根強く、世論調査では6割が「観光客受け入れは時期尚早」と回答した。

タイ政府はリスクを負って観光客争奪戦への参入に踏み切った形で、タイ政府観光庁は、今後の2カ月間で、毎月約30万人の旅行者がバンコクを訪れると見込んでいる。ウィズコロナで観光大国の復活はなるか。今後に注目したい。【11月2日 FNNプライムオンライン】
****************

【規制緩和したものの、相変わらずコロナ死を極度に恐れる日本】
日本でも“なぜか”感染者が急減し、各種の規制が緩和・撤廃されています。
今日はたまたま地方の田舎から東京に出てきていますが、さきほど(午後10時)ホテルの外に出たとき、近くの飲食店は酒を飲みながら談笑する客でいっぱい。コロナ前の賑わいのようにも。

ただ、日本の場合、「安心・安全」「ゼロリスク」へのこだわりが非常に強く、「ウィズ・コロナ」への発想の切替がなされている訳でもないので、今後感染者が増えれば、すぐにまた規制強化となるのでしょう。

****英国はコロナ感染再拡大でも規制強化せず…日本人には理解できない「死生観」の違い****
規制措置はほぼ全廃
10月25日、新型コロナウイルスの感染拡大防止のための飲食店への営業時間の短縮要請が、首都圏でようやく解除された。東京都などで厳しい行動制限がなくなるのは、昨年11月以来だ。

10月下旬の日本の新規感染者数は1日当たり50人以下と劇的に減少し、「ゼロ・コロナ」に近い状態となっている。だが、「冬にかけて再び感染爆発が起こる可能性がある」と警告する専門家は相変わらず多い。

経済活動の本格回復への期待が高まっているものの、東京商工リサーチが10月に実施した調査によれば、70%強の企業が「緊急事態宣言の発令などに関係なく、忘年会や新年会を今冬は行わない」と回答している。コロナ禍以前の「日常」が戻ってくるかどうかはいまだに見通せない状況だ。
 
日本とはまったく対照的なのは英国だ。
英国では今年7月半ばに、コロナウイルス感染拡大防止のための規制措置はほぼ全廃され、人々は通常の生活に戻りつつある。公共交通機関やスーパーなどでのマスクは義務化されている(違反した場合は100ポンド=約1.5万円が課される)ものの、ほとんどの人がこれに従っていないという。

コロナと共存するやり方
そのせいだろうか、ここにきて新規感染者数が再び急拡大している。
10月下旬の1日当たりの新規感染者数の平均は約4万5000人、今年1月上旬のピーク時(約6万人)に近い水準となっているものの、ワクチン接種などのおかげで過去の感染拡大局面と比べて死者数や入院者数は大幅に減少している。しかし、医療体制は徐々に逼迫してきており、保健当局は22日、「早期に行動すれば厳しい対策を講じる必要性が低下する。在宅勤務など感染拡大を抑制するための措置の再導入に向け準備すべきだ」と提言した。
 
これに対し、ジョンソン首相は規制の強化の必要性を否定した。規制の強化で社会生活や経済を犠牲にするのではなく、あくまでコロナと共生していくやり方だ。その根底にはコロナの被害が一定の範囲に収まったら「収束」とみなし、季節性インフルエンザと同等の扱いをするという決意があるのだろう。政府の方針について国民の間にも強い反発はなく、パニックが起きているわけでもない。

コロナが特別ではない
日本では「収束」に関する具体的な議論が進んでいない。コロナに対する恐怖心が強くなりすぎてしまったことから、「収束」についての具体的な基準を示せば、「経済を回すために少数の人を見殺しにするのか」と、批判が起きることを政府は怖れているのかもしれない。
 
第5波の時に自宅療養者が多数死亡したことが社会問題となった。痛ましい出来事だったが、コロナ禍以前も緊急搬送先が見つからないなどの理由で亡くなる人が少なからず存在していた。コロナだけが特別だったわけではない。
 
日本でのワクチン接種率が7割超えとなった現在、換気が悪い場所でのマスク着用等を続けていれば、感染者の急増で医療体制が逼迫するリスクは格段に低下したと言える。新型コロナウイルスをいつまでも特別視するのではなく、政府はそろそろ「コロナ収束宣言」についての議論を始めるべきではないだろうか。

新たな「医原病」の誕生
近頃、「科学(医学)に基づく政治」が当然視されるようになったことにも、筆者は違和感を覚えている。念頭にあるのはオーストリアの哲学者、イヴァン・イリイチが1970年代に提起した「医原病」という概念だ。

イリイチは、「健康」に関するすべての問題が医療専門家にコントロールされるようになり、人々は常に何らかの健康不安を抱える状態になったことを「医原病」と呼んで問題視した。
 
必要な時期があったとはいえ、感染症の専門家が人々の行動に介入することが当たり前になった日本の現状は、新たな「医原病」が誕生したと言っても過言ではない。
 
諸外国に比べ感染者数や死者数が少ないのに、日本人が新型コロナウイルスを必要以上に恐れている原因を「死生観の欠如」に求める指摘もある。
 
戦後、日本を含め先進国では「死」を日常生活から隔離する風潮が高まり、「死」が近づいている家族や友人に対して積極的に向き合うことができなくなってしまった。

現在、日本の「病院での死」の比率は先進国の中で最も高くなっている。医療現場では、末期の患者に対する延命治療に終始するあまり、家族との別れが満足にできない場合が多いと言われている。地域の人々と行っていた弔いの儀式なども形骸化、喪失してしまった。

日本では「死は敗北」
死生観(死に関する意味づけ)が希薄になった日本では「死は敗北」以外の何ものでもないだろう。日本人は先進国の中で最も「死」を恐れる国民になってしまったのかもしれない。そうだとすれば、パンデミックによる「突然の死」への耐性が低いのは当たり前だ。
 
日本ではあまり知られていないが、英国を始め欧州では「QOD(死の質)が重要である」との考え方が広がっている。その背景には「死を受け入れると残りの日々を幸せに暮らすことができ、人生のクオリテイーが向上する」という社会的コンセンサスがある。
 
英国では「人生の最終段階を支えるケアシステム」が、21世紀初めからすべての総合医療機関や介護施設でスタートした。現場のスタッフが死をタブー視することなく、月に一度「終末期をどうしたいか」を確かめるための面談を行っているという。
 
パンデミック当初、日本の弔いの現場は大きな打撃を受けた。だがコロナが契機となって「看取り」の重要性が再認識され、葬儀のあり方を見直そう動きも始まりつつある。日本で新たな死生観が醸成されることを願うばかりだ。【11月2日 藤和彦氏 デイリー新潮】
********************

【「ゼロコロナ」に固執する中国】
一方、頑なに「ゼロコロナ」「ゼロ寛容」を維持しているのが中国。
最近感染が拡大しているとは言え、他国に比べたら遥かに低いレベル。それでも当局は強力な規制措置をさらに強める構えです。

****中国、コロナ流行「深刻」 封じ込め策さらに強化****
中国・北京市は30日、新型コロナウイルスの「深刻な」感染拡大を完全に封じ込めるため、新たな規制を導入した。北京冬季五輪の開幕まで100日を切る中、感染者ゼロを目指す「ゼロコロナ」を引き続き掲げる市当局は、厳格な封じ込め策を実施している。
 
著名ウイルス学者の鐘南山氏は30日、当局は全国的な感染拡大を1か月以内に封じ込めることが可能だと述べたものの、「流行を短期間で根絶することはできない」と指摘した。
 
少なくとも14省に感染が広がっており、この1週間で数百万人が検査を受けた。
 
国家衛生健康委員会の米鋒報道官は会見で、状況は「深刻かつ複雑」で、感染は「いまだ急速に広がっている」と語った。
 
北京市当局は、天安門広場の西に位置する人口100万人を超える西城区に対し、来月14日まで映画館の閉鎖を命じた。
 
中国では30日、9月半ば以降最多となる59人の新規感染者が確認された。うち北京で報告された2件は、北部で確認された団体旅行客の感染に関連している。
 
1日当たりの新規感染者数は他国に比べれば少ないが、来年2月4日の冬季五輪の開幕を前に当局は、北京市内の感染封じ込めを急いでいる。
 
現在、北京から650キロ離れたモンゴルとの国境の町エレンホトが新たに流行の中心となっている。
 
これまでに感染が確認された各都市で、計約600万人が移動制限の対象となっている。
 
国営新華社通信は30日、感染が確認された地域では、列車の運行を一時停止したり運行本数を制限したりしていると報じた。
 
現在多くの地域では域内に入る際、陰性証明書の提示が求められる。
29日には北京発の航空便の約半数が欠航となった。また、やむを得ない場合を除く市外への移動を控え、結婚式を延期するよう要請している。 【10月31日 AFP】
********************

武漢マラソンも北京マラソンも中止になりました。
甘粛省の省都で人口400万人の蘭州では10月26日、6人の新規感染が確認され、緊急の場合を除いて外出禁止となる都市封鎖が行われています。
北京市は10月29日、ホテルの結婚披露宴や団体旅行を禁じるなど厳しい感染対策を打ち出しました。

北京では来年2月に冬季オリンピックの開催を控え、また、11月には中国共産党中央委員会の年次会議も予定されています。

そうした“敏感な”時期的要因のほかに、中国製ワクチンの効果の問題もあるのでは・・・というのは私個人の邪推です。

中国では人口の約75%に当たる10億人以上がワクチン接種を完了したにもかかわらず、感染が急拡大している状況ですが、中国製ワクチンは欧米製に比べ感染予防効果が低いとも言われていますので、規制を緩めると感染拡大が一気に進む可能性も・・・そういう事態は、中国当局にとっては“世界に恥をさらす”ような受け入れがたい事態でもあるのでは・・・。

“中国、コロナ「ゼロ寛容」政策を長期に維持へ=専門家”【11月2日ロイター】
“世界的にワクチン接種が進んでいるにもかかわらず現在の死亡率が2%となっていることについて、中国では許容できない(2020年初めに中国の対新型コロナ戦略の策定に寄与した呼吸器疾患の専門家、鐘南山氏)”

ただ、そうなるといつになったら普通の生活が戻るのか?
いつまで外の世界から隔離した状態を続けられるのか?
といった問題も。 

世界が「ウィズ・コロナ」に動く流れのなかで、中国だけ隔離状態を続けるのでしょうか?

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

新型コロナ  ワクチン接種証明、接種義務化をめぐる欧米各国・日本の状況

2021-09-19 23:24:10 | 疾病・保健衛生
(ブロードウェーの劇場に入場する前にワクチン接種カードなどを確認する様子=8月4日【9月14日 CNN】)

【ワクチン接種を前提にした「ウィズ・コロナ」の生活】
日本もようやくワクチン接種率が上がって、人口の半数を超えるレベルに。

****国民の50%超が2回接種完了 米国に並び、欧州猛追****
政府は13日、新型コロナウイルスワクチンの2回の接種を完了した人が人口の50.9%に達したとする集計結果を発表した。1回接種は63.0%で米国にほぼ並んだ。月末には2回接種完了が60%を超え、欧州並みになるとみている。

政府は希望者へのワクチン接種が完了する11月ごろをめどに行動制限の緩和を目指している。それまでに地域差を改善し、若者への接種率を上げることが、感染対策と経済を両立させる鍵となる。(後略)【9月13日 共同】
************************

ワクチン接種を前提にした「ウィズ・コロナ」の生活も見えてきますが、そのためには極力ワクチン接種率を高める、あるいは接種を義務化することも前提になりますので、各国で様々な取り組みが行われています。

****接種促進へ、欧米で強制措置 飲食や観戦、証明義務化****
新型コロナウイルスのデルタ株が猛威を振るう中、ワクチン接種促進のため投与歴の証明や接種そのものを義務化する強制措置が世界で広がっている。

イタリアは接種や陰性の証明書保持を全労働者に義務付けることを決定。フランスは飲食店利用時に証明書提示が必要で、医療関係者は接種が必須。

米国は一定規模の企業に接種義務を課す方針だ。日本も証明のデジタル化などを進める。ただ「未接種者への差別を助長する」との懸念も根強く、英国は証明書導入を断念した。
 
イタリアの措置は10月からで、人口約6千万人のうち公務員や民間の2300万人が対象になり違反者は停職処分になる。【9月19日 共同】
***********************

【イタリア 欧州初の全労働者への接種義務化】
まず、「全労働者」にワクチン接種を義務化するイタリア。

****イタリア、労働者の接種義務化へ 10月15日から****
イタリア政府は16日、新型コロナウイルスのワクチン接種や陰性の証明書保持を全ての労働者に義務づけることを決めた。10月15日から。

ワクチン接種を加速させるための措置といい、違反者は停職処分になる。同様の義務化は欧州で初めてとしている。
 
人口約6千万人のうち、公務員や民間企業などの従業員、自営業者ら全ての労働者計約2300万人が対象となる。スペランツァ保健相は記者会見で「職場をより安全な場所にし、ワクチンキャンペーンを強化するのが目的だ」と述べた。
 
イタリアでは既に学校の教職員や大学生が接種や陰性証明書の保持を義務づけられている。【9月17日 共同】
***********************

****伊、全労働者にコロナワクチン接種証明の提示を義務付け 欧州初****
(中略)ロイターが入手した草案によると、有効な証明書を提示できなかった者は無給の停職処分となるが、解雇はされない。違反者には600─1500ユーロ(705─1175ドル)の罰金が科せられる。

他の欧州諸国でも医療従事者にワクチン接種を義務付けた例はあるが、全労働者にグリーンパスの提示を義務付けるのはイタリアが初めて。【9月17日 ロイター】
*******************

無給の停職処分と言われると、さすがに、かけこみ接種が急増しているとか。
“イタリアのワクチン予約が急増、全労働者への接種証明義務化で”【9月18日 ロイター】

なお、イタリアの9月18日時点でのワクチン接種完了者は65.5%、少なくとも1回接種した者は73.3%となっています。【Our World in Dataより】

【フランス 未接種の医療従事者3千人を停職処分】
フランスではワクチン接種または検査の陰性を証明する「ヘルスパス」を提示しなければ、飲食店に入店したり、長距列車に乗車することができません。また約270万人の医療従事者などが9月15日までにワクチンを接種しなかった場合、解雇または無給の停職処分となります。

このあたりの話、および反対する抗議運動については、9月13日ブログ“フランス 「自由の国」での衛生パス反対騒動 ウィズ・コロナの日々における「最適解」は?”でも取り上げました。

****フランスが賭けに出た「ワクチンパス」、義務付けの効果は****
米国のバイデン大統領が発表した新型コロナウイルスワクチンの義務付けに対し、国民の多くが効果に疑問を投げかけている。一方、フランスでは、マクロン大統領が打って出た賭けが功を奏しつつある。

フランスでは供給問題などに足を取られて接種開始が遅れたが、春には態勢が整い、5月までに人口の30%に当たる2000万人に1回目の接種を受けさせるという目標を達成した。

しかし7月になると接種率が頭打ちになって症例数が急増。マクロン大統領は、日常生活の大部分にワクチン接種を義務付けると発表した。

8月1日現在、同国ではワクチン接種または検査の陰性を証明する「ヘルスパス」を提示しなければ、飲食店に入店したり、長距列車に乗車することができない。約270万人の医療従事者などが9月15日までにワクチンを接種しなかった場合、解雇または無給の停職処分となる。

個人の自由を尊重し、政府を信頼しない文化が浸透している国フランス。それがワクチンに対する抵抗の形で顕在化するリスクは、マクロン大統領も計算済みだった。

2019年に実施されたウェルカム・グローバル・モニターの意識調査では、フランス人の3人に1人がワクチンの安全性に異議を唱え、調査対象の144カ国の中で最も多かった。

20年12月にフランスの世論調査機関らが実施した世論調査でも、フランス国民の約60%が、新型コロナのワクチン接種が受けられるようになったとしても、自分は接種しないと回答した。

議会に法案が提出されるとヘルスパスに反対する抗議デモが毎週展開されるようになり、7月31日にはフランス全土で20万人超が参加。ヘルスパスや自由の制限に反対する人、ワクチン接種をためらう人などが加わった。

一方でヘルスパスを支持する国民も多く、フランス保健省によると、この日は53万2000人が接種を受けた。

ワクチン接種の予約はマクロン大統領が7月12日に演説を行った直後から急増し、予約サイト経由で受け付けた予約は24時間で100万件に上った。

ワクチン接種率の増加や、コロナパスに関連した検査数の急増、デルタ変異株が猛威を振るう地域でのマスク着用義務付けなどが奏功してフランスは、欧州や米国を覆った感染拡大の第4波をほぼ免れることができた。

ヘルスパスが導入されてから1カ月たった時点で、保健機関の統計によれば、夏にかけて増えていた病院や集中治療室(ICU)の入院患者数は、全般的に減少した。このまま減少傾向が続くかどうかはまだ見極めている段階だが、専門家の多くは慎重ながらも楽観的な見方を示している。

フランスのワクチン接種率は世界の中でも高い水準にあり、アワ・ワールド・イン・データの統計によると、フランス国民の73%が少なくとも1回の接種を済ませている。

8月30日現在、ヘルスパス法の対象となる接客業などの従業員や利用客は、入場の際にヘルスパスの提示を求められる。フランスで180万人近い労働者がこの対象となる。(後略)【9月16日 CNN】
*************************

フランスの9月15日時点でのワクチン接種完了者は64.2%、少なくとも1回接種した者は74.1%となっています。【Our World in Dataより】

「自由」が尊重される国、ワクチンへの抵抗感が強い国だけに、「強気」の姿勢でリードしないと接種率が頭打ちになる・・・というところでしょうが、もともと少々の抵抗にはひるまない「強気」が特徴のマクロン大統領、今回も「剛腕」をふるっているようです。

****フランスの医療従事者3千人、ワクチン打たず停職処分****
フランスの医療従事者数3000人が、政府が義務付けた新型コロナウイルスのワクチン接種を受けなかったという理由で停職処分となった。オリビエ・ベラン保健相が16日、フランスのラジオ局RTLに明らかにした。

同国の医療従事者は政府が7月に発表した措置に従って、今月15日までに接種を受けることが義務付けられていた。

南部の都市ニースの大学病院はCNNの取材に対し、スタッフ320人が15日付で停職処分となり、さらに100人について状況確認を行っていると説明した。

この方針をめぐって医療従事者十数人が辞表を提出したが、それに伴う混乱は一切起きていないとベラン保健相は強調している。(中略)

停職処分となった医療従事者はサポートスタッフが大半を占めるとベラン保健相は説明。「停職処分の大多数は一時的な措置にすぎない」と述べ、「多くは義務付けが現実だと認識してワクチンを受ける気になった」としている。(中略)

保健機関の統計によると、新型コロナウイルスの7日間の症例は16日、10万人あたりの陽性者が7月18日以来初めて100人を下回った。【9月17日 CNN】
**********************

このような「停職処分」で医療に支障はでないのか?という点については下記のようにも。

****仏医療従事者3千人、ワクチン未接種で無給停職処分****
(中略)一方で、国内の医療従事者は270万人いることから、「医療の継続は保証される」と明言した。
 
ただし、各病院が明らかにしたデータに基づくと、実際の停職処分者数は3000人よりも多い可能性がある。AFPの集計では、停職処分を受けた職員の数は十数か所の病院のみで1500人近くに上っている。(中略)

それでも多くの医療従事者が、安全性や有効性をめぐる懸念を理由に依然接種に応じておらず、職員を処分せざるを得ない施設での業務に支障が出る恐れが生じている。(後略)【9月17日 AFP】
*********************

このあたりの「強引さ」がマクロン大統領の「持ち味」でもあり、「傲慢」「独善的」と批判を受ける所以でもあります。

【アメリカ NY市でテキサスからの旅行者が起こした「分断」を象徴する事件】
アメリカ・バイデン政権の100人超の従業員を抱える企業に対し、従業員に新型コロナウイルスのワクチン接種か、毎週の感染検査を受けさせることを義務化する、また、すべての連邦職員にワクチン接種を義務付ける方針については、9月11日ブログ”アメリカ 感染再拡大で「分断」の最前線となる学校マスク着用、ワクチン接種義務化”で取り上げました。

アメリカの9月18日時点でのワクチン接種完了者は55.2%、少なくとも1回接種した者は64.4%となっています。【Our World in Dataより】

深刻な「分断」によってマスク着用・ワクチン接種が政治問題化しているアメリカでは、接種率が頭打ち状態になっており、欧州から遅れて“日本並み”にもなっていますので、バイデン大統領としては“焦り”もあるようです。

一方、ニューヨーク市では、9月13日から屋内での飲食などにワクチン接種証明書の提示が義務化されていますが、混乱も。

****ワクチン接種証明書を求めたNYのレストラン店員に、3人の旅行客が殴りかかる****
屋内での飲食などに、ワクチン接種証明書の提示が義務化されたニューヨーク市で9月17日、提示を求められた客が店員に暴力を振るう事件が起きた。

ニューヨーク市では9月13日から、屋内の飲食店やスポーツジム、映画館などに対して、利用客にワクチン接種の証明書の提示を求めることが義務づけられた。違反した場合は、1000〜5000ドル(約11万〜55万円)の罰金が科せられる。

被害に遭ったのは、マンハッタンのアッパーウエストサイドにあるイタリアンレストラン「カーマインズ」の店員で、テキサス州からニューヨーク市を訪れていた3人の旅行客に殴打された。

警察によると、店員は拳で何度も殴られて顔、胸や腕を怪我したほか、ネックレスが壊れた。
現地で撮影された動画には、逃れようとする店員に客がつかみかかり、殴りかかろうとする様子が映っている。

容疑者は3人は、暴行などの容疑で起訴された。(後略)【9月18日 HUFFPOST】
*********************

この殴りかかった「旅行者」というのが、新型コロナ対策・中絶問題・銃規制などでバイデン政権の方針との対立を強めている共和党知事のテキサス州からの旅行者だったというのが、「分断」の印象を強める出来事でした。

【イギリス 日本とは真逆の理由でワクチンパスポート提示義務化を見送る】
イギリス・ジョソン政権は、イベント会場などでワクチンパスポート提示を義務付ける方針でしたが、見送ることに。その理由が日本と好対照です。

****英・「提示義務」見送りの背景は 日本も検討「ワクチンパスポート」****
日本で導入が検討されているワクチンパスポートについて、イギリス政府はイベント会場などで提示を義務付ける方針だったが、見送ることを決めた。(中略)

イギリスでは、ワクチンを接種すれば、携帯アプリを通じて簡単な操作で、誰でもワクチンパスポートを提示することができる。

政府は当初、ナイトクラブや大規模イベント会場で、ワクチンパスポートの提示を9月中に義務化する方針だった。
しかし、16歳以上で2回の接種を終えた人の数が80%を超え、死亡者数が11万2,000人以上、感染者数も2,400万人以上減らすことができたとして、政府は現時点での義務化は見送ると14日に発表した。

7月に外出規制を撤廃、経済がようやく動き始めた中で、ワクチンパスポートは経済活動へのブレーキになるとの懸念から、人びとの行動の自由を優先させた形。

ただ、これまでに200以上のイベント会場で、主催者が自主的にワクチンパスの提示を求めるなど、政府の指示がなくても民間で活用される例も多い印象。

「コロナとの共生」を選択したジョンソン首相は、「状況が悪化すれば再び義務化を検討する」としている。
ワクチンパスポートを経済活動再開のアクセルとしたい日本とは好対照なイギリスでは、複雑なかじ取りが続く。【9月16日 FNNプライムオンライン】
************************

イギリスの9月17日時点でのワクチン接種完了者は66.6%、少なくとも1回接種した者は72.8%となっています。【Our World in Dataより】

「ウィズ・コロナ」のもと、個人の自己責任ですでに市民生活が戻り、経済も復調しているイギリスでは、「ワクチンパスポート」導入がその足を引っ張ることになるのを懸念して「象入見送り」

一方、「自粛社会」日本では、「ワクチンパスポート」導入によって、市民生活を取り戻し、経済を回復させるきっかけに・・・という発想。全く逆です。

「専門家」と称する人種も、TVなどのメディアも、「まだ危険」「ここで気を緩めたらダメ」「次の感染拡大に備えて」と悲観的なこと、ネガティブなことしか言わない「安心・安全教」の日本ならではの現象は、「日本の常識、世界の非常識」でもあります。

【日本 観光業界などでは、ワクチン接種証明を活用したサービスも拡大】
その日本では、希望者にワクチンが行き渡る11月以降でしょうか、接種や検査などを条件に飲食店やイベントの制限を緩める政府方針が検討されていますが、例によって「早すぎる」との批判がザクザク。

一方、民間レベルでは、(日本らしく、差別にならないようにとの配慮に悩みながらも)ワクチン接種証明を活用したサービスが広がりつつあります。

****接種済み、優遇サービス続々****
厳しい状況が続く観光業界では、ワクチン接種証明を活用したサービスが広がりつつある。
 
羽田発の航空便の国内旅行などを手がけるビッグホリデー(東京都)は7月から、旅行代金から1人あたり5千円を割り引く「ワクチン接種割引ツアー」の発売を始めた。
 
今月に入り、政府が段階的な行動制限の緩和方針を示したのを機に、予約は導入時の約1・5倍に増加。接種を終えた高齢者層の利用を想定したが、若い世代からの問い合わせも増えてきた。担当者は「今後、もっと旅行者が増えるという手応えを感じる」と話す。
 
「ワクチンを打った人だけのツアーがあれば安心できる」。こうした客の声を受け、ツアー旅行のクラブツーリズム(同)は、2回接種した人だけが参加できるツアーの販売を8月に始めた。
 
ツアーの出発はワクチンがより広く行き渡る10月末以降で、接種証明書のコピーなどで接種歴を確認する。接種済みでも感染の恐れはあるため、マスク着用など感染対策は通常のツアーと同様にする。「未接種者への差別にならないよう配慮した」(同社広報)といい、価格は通常のツアーと同じ設定にしたという。(中略)
 
リーガロイヤルホテル東京は、2回のワクチン接種を終えた利用客を対象に、一部の朝食付き宿泊プランでネット予約の価格を15%割り引く。
 
このプランの販売を始めた6月は予約がゼロだったが、次第に増え、8月には77件の予約があった。9月中旬で既に8月を上回る勢いで、担当者は「ワクチン促進の一助になればと思っている。若い方などまだ打てない人もいるので、来春まで実施する」と話す。【9月19日 朝日】
*************************

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする