孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

ソマリア沖海賊はいなくなったが、ジブチの拠点機能は拡充の方向

2016-10-20 22:49:29 | ソマリア


今も続くアルシャバーブのテロ活動
最近、あまり見かけなくなったアフリカ東部ソマリアにおけるイスラム過激派「アルシャバーブ」のテロ活動に関する報道ですが、なくなった訳でもないようです。

****ソマリア首都で自爆攻撃、13人死亡 アルシャバーブが犯行声明****
ソマリアの首都モガディシオで26日、国連(UN)とアフリカ連合(AU)の拠点近くで2回の爆発があり、少なくとも13人が死亡した。警察当局が発表した。国際テロ組織アルカイダ系イスラム過激派組織アルシャバーブが自爆攻撃と認める犯行声明を出した。
 
アルシャバーブは国際社会が支援するソマリア政府を打倒すべく戦闘を続けており、ソマリア国内や隣国のケニヤで残忍な攻撃を繰り返している。(中略)

現場近くのモガディシオの空港は普段から厳重な警備が敷かれており、ソマリア中央政府を支援している「アフリカ連合ソマリア・ミッション(AMISOM)」が首都内に置く主要基地に隣接する。AMISOMはアルシャバーブとの戦闘でソマリア政府を支援するため2007年に派遣され、兵士ら2万2000人で構成されている。【7月27日 AFP】
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****爆発で20人死亡=イスラム過激派が犯行声明―ソマリア****
ソマリアからの報道によると、中部ガルカイヨで21日、自動車を使った爆弾テロが発生し、ロイター通信が現地の医療関係者の話として伝えたところでは、20人以上が死亡した。死者はさらに増える恐れがある。
 
AFP通信によれば、イスラム過激派アルシャバーブは通信アプリ「テレグラム」を通じ、「軍人や背教者を少なくとも30人殺害した」と主張した。現場はアルシャバーブが近年活発化している半独立地域プントランドにある。(後略)【8月22日 時事】 
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その後も、ソマリアの首都モガディシオで8月25日夜、レストランが銃で武装した男らに襲われ、市民ら少なくとも7人が死亡、 8月30日には首都モガディシオの大統領公邸の前で爆発物を積んだ車が爆発し、市民や政府軍の兵士など10人が死亡、10月1日には首都モガディシオでレストランの前に止まっていた自動車が爆発し、少なくとも3人が死亡・・・・といった報道がなさています。

こうして並べると、ニュース的にあまり大きく扱われないだけで、結構頻繁にテロは起きているようです。

2014年以降、ほぼ終息したソマリア沖の海賊
一方で、報道だけでなく、実際にもなくなったのが“ソマリア海賊”の活動です。

****東南アジア、アフリカに代わり海賊事件の最多発地域に****
2016年9月19日、環球時報によると、米紙ニューヨーク・タイムズは18日、東南アジアがアフリカに代わり海賊事件の最多発地域になっていると伝えた。

国際海事局(IMB)によると、昨年、東南アジアでは178件の海賊事件が発生したが、かつて同種の事件が頻発していたアデン湾とソマリア付近の海域では、多国籍部隊の活動により1件も起きていない。

東南アジアで起きる海賊事件の多くはフィリピンの過激派組織アブサヤフによるものだ。同組織は身代金目的の誘拐をしている。【9月20日 Record china】
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外務省のサイトで「ソマリア沖・アデン湾における海賊問題の現状と取組 」http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/pirate/africa.htmlを見ると、2009年~2011年には220~240件程度発生していた海賊事案は2014年は11件、2015年は0件、2016年は1軒と激減しています。

乗っ取られた船舶数も、2009年、2010年頃は年間50件弱あったのが、2014年以降は発生していません。
2010年には1000名を超えた拘束された乗員数も、2014年以降はゼロとなっています。

この海域に展開された多国籍部隊の活動の成果でもありましす、アルシャバーブがモガディシオなど都市部から地方やケニアなどに追われ、国内統治がやや安定してきたこと(実際のところ、どういう状態なのかは知りませんが)の結果でしょう。

ソマリア沖の多国籍部隊には日本も艦船・人員を派遣しており、派遣当時は国内でもいろいろ議論があったところです。(2009年には海賊対処法が成立し、海上保安官を同乗させた海上自衛隊の護衛艦が派遣されています。)

この海賊対策のために、アデン湾に面するジブチには拠点が設けられ、P-3C哨戒機も派遣されています。

2014年以降、海賊活動が殆どなくなった事態を受けて、派遣されている自衛隊がどうなるのか・・・8月15日に現地を訪れた稲田防衛相は、「今後も海賊対処を確実に実施することが必要不可欠だ」と述べ、自衛隊派遣を継続する考えを示しています。

****ジブチの自衛隊「今後も不可欠」 防衛相が部隊激励****
稲田朋美防衛相は十五日(日本時間同)、アフリカ東部ジブチを訪問し、同国を拠点にソマリア沖アデン湾で海賊対処活動を展開している自衛隊部隊を激励した。

訓示で「海上交通の安全は依然として予断を許さない。今後も海賊対処を確実に実施することが必要不可欠だ」と述べ、自衛隊派遣を継続する考えを示した。
 
訓示後、記者団に「(活動拠点は)非常に重要な役割を担っている。今後、一層の活用の在り方も検討したい」と述べ、機能強化を図りたいとの認識を示した。
 
稲田氏の外遊は防衛相就任後初めて。訓示で「皆さんの活動は各国から高く評価されている。強い信念と誇りを持ち、開かれ、安定した海洋を守る重要な課題に取り組んでほしい」と強調した。
 
この後、ジブチのゲレ大統領、バードン国防相とそれぞれ会談し、ジブチ軍の能力向上へ自衛隊が協力する考えを伝えた。海上自衛隊のP3C哨戒機に搭乗し、上空からの警戒監視や海自護衛艦の活動を視察。南スーダンの国連平和維持活動(PKO)に派遣された自衛隊部隊の幹部から現地情勢の報告も受けた。
 
アデン湾は欧州・中東と東アジアを結ぶシーレーン(海上交通路)の要所。【8月16日 東京】
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ただ、さすがに海賊のいなくなったソマリア沖に艦船を張り付けておく余裕はないとのことで、艦船は縮小するようです。

****ソマリア沖の海自艦艇を減らし 北朝鮮の警戒任務など強化へ****
動画を再生する防衛省は、アフリカ・ソマリア沖で海賊の事件が減っていることから民間船の護衛などのため現地に派遣している海上自衛隊の艦艇を2隻から1隻に減らし、その分、北朝鮮の警戒任務などの態勢を強化する方向で最終的な調整を進めていることがわかりました。(中略)

防衛省は、年内にも実施したいとしていて、その後は残る護衛艦1隻と哨戒機2機の態勢で海賊の事件が再び増加しないよう対応を続けることにしています。【10月14日 NHK】
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ジブチの拠点の機能を広げて影響力を拡大したい日本政府
しかし、ジブチに設けた拠点はむしろ拡充の方向のようです。

****ジブチの自衛隊拠点、来年度に拡張へ 中国を意識=政府関係者****
防衛省は来年度、アフリカ東部ジブチにある自衛隊唯一の海外拠点を拡張する。紅海の出入り口に位置するジブチは海上交通の要衝で、南シナ海からインド洋、アフリカへと活動を広げる中国軍も基地を建設中。海賊対処活動に自衛隊を駐留させる日本は、拠点の機能を広げて影響力を拡大したい考え。

複数の政府関係者によると、日本は中東やアフリカでテロや災害に巻き込まれた日本人を保護するための拠点として、ジブチを利用することを検討している。今年7月に南スーダンで治安が悪化した際は、現地日本人の退避に備えてジブチに輸送機C−130を待機させたが、日本から派遣した自衛隊機の到着までには3日かかった。

拡張後は自衛隊の輸送機を駐機させることを想定している。避難する日本人の警護にあたる陸上自衛隊の部隊や輸送防護車を駐留させることも検討している。既存拠点の隣接地の借地料は年間1億円程度と見積もっているが、現時点ではジブチ側の要求と開きがあるという。

自衛隊は2009年、ソマリア沖で多発していた海賊対処の国際活動に参加するため部隊を派遣した。11年からはジブチ国際空港の隣に12ヘクタールの土地を借り、自衛隊員180人と哨戒機2機を駐留させてきた。

海賊の活動はすでに沈静化しているものの、南シナ海に進出する中国がインド洋やアフリカへも影響力を強めていることから、日本は派遣部隊を縮小せずにジブチの拠点を拡張したい考え。

昨年も、ジブチ軍の災害救援能力を支援する訓練場所を確保する名目で土地の追加借用を検討したが、予算の制約で実現しなかった。

「中国はインフラ整備に資金を投じるなど、ジブチで存在感を高めている」と、政府関係者の1人は言う。今年2月からは海賊対処活動の参加部隊の補給施設として基地の建設に乗り出しており「日本も影響力を広げる必要がある」と、拠点拡張の狙いを説明する。

稲田朋美防衛相は8月にジブチの自衛隊部隊を視察した際、記者団に対し「(拠点の)今後一層の活用の在り方についても、しっかりと検討していきたいと思っている」と述べていた。

防衛省は、ロイターの取材に対し「既存拠点の東側隣接地を取得する方向で、ジブチ政府と交渉をしている」と回答。隣の土地を他者に確保されると、安全面で支障が出るためとしている。来年度は概算要求に土地の借地料のほか、壁の建設費を計上した。【10月13日 ロイター】
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日本が強く意識する中国の動向については、以下のようにも。

****中国がジブチに海軍基地 「中東に軍事プレゼンス狙う」?欧米安全保障への“挑戦”と警戒論も****
中国がアフリカ東部ジブチで建設を進める中国海軍の「補給施設」について、欧米諸国が人民解放軍初の海外基地として警戒を強めている。南シナ海で軍事拠点化を進める中国が、「ジブチを足がかりに中東周辺でも軍事プレゼンスの展開を狙っている」と一部の専門家は分析している。
 
米紙ウォールストリート・ジャーナルは22日、中国がジブチで「90エーカーの敷地に初の海外軍事基地を建設している」とし、「大国として台頭する中で歴史的な一歩だ」と指摘した。来年に完成予定の基地は「武器庫や艦艇・ヘリの整備施設、海軍陸戦隊(海兵隊)や特殊部隊の拠点」として使用されるとの専門家の見方を紹介。こうした動きは「大戦後の世界秩序を支えてきた欧米の安全保障体制への挑戦となるかもしれない」と警戒感を示した。
 
中国国防省は2月、ジブチの基地について「すでに基礎工事が始まった」と建設を認めた際に、「ソマリア沖アデン湾で海賊対策にあたる部隊や(アフリカの一部地域に派遣している)国連平和維持活動(PKO)部隊の休息や燃料補給」が目的だと説明した。
 
中国共産党機関紙、人民日報系の環球時報(英語版)も今月23日、「米国のように世界中に基地を置き、他国に向けて力を誇示するためではない」との専門家のコメントを掲載し、警戒感の解消に躍起だ。
 
ただ今回の基地建設は、欧州までの経済圏を構築する「一帯一路」構想の一環だと指摘する声もある。ある中国軍事研究者は中国側の目標について「一帯一路の要衝となる中東で軍事プレゼンスを展開し、中国の経済活動の保護と自国に有利なルールづくりを可能にすること」と分析する。
 
さらに今年1月に中東のサウジアラビアがイランと断交したことが、こうした動きを急がせたという。「軍事衝突が起きれば中東は米露のゲームで動くことになる。この地域における軍事力の必要性を中国に再認識させた」
 
ジブチは紅海の入り口にある戦略的要衝で、米国がテロリスト掃討を目的に基地を置いているほか、ジブチ防衛のための旧宗主国フランスの基地や、アデン湾で海賊対処活動を行う自衛隊の拠点もある。現地の外交筋は「ジブチに基地や拠点を置く各国の立場はそれぞれ違うが、中国が大規模な基地をつくる目的が明確でないため、懸念を共有している」と話した。【8月23日 産経】
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各国に基地・拠点を提供するジブチの方針も独特です。

中国に対抗して云々はどうでしょうか?中国に対抗して自衛隊基地を海外につくるような国民合意は得られていないと思います。

“中東やアフリカでテロや災害に巻き込まれた日本人を保護するため・・・・”というのは話としてはわかります。

特に、今後、南スーダンでのPKOに「駆け付け警護」も付与され、現地情勢も安定しないという状況にあっては、遠く離れた日本と現地をつなぐ拠点としてジブチも必要になろうかとは思います。

ただ、本来の筋論で言えば、ソマリア沖の海賊対策として設けられた拠点であり、その海賊が殆どいなくなったということであれば、少なくとも国会等にその旨を報告・総括し、今後のジブチ活用について議論すべきものでしょう。

いつのまにか国民もあまり意識しないうちに、自衛隊の海外基地が恒常化され、拡充される・・・というのは、政治の在り方としてはやはりよろしくなく、ジブチ拠点の今後の活用については“なし崩し”ではなく、しっかりと議論されるべき問題でしょう。(すでに国会できちんと議論されているということであれば結構ですが)
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ソマリアでテロ活動を続けるアル・シャバブ アフリカへの関与を強める方向のアメリカ

2015-07-27 22:37:59 | ソマリア

(ソマリアの首都モガディシオ 海辺で遊ぶ人々 20年以上に及ぶ戦闘と混乱を経て、ようやく平和が訪れたようにも見えますが・・・ “flickr”より By United Nations Photo https://www.flickr.com/photos/un_photo/14829119406/in/photolist-oAp7yw-jQRR8U-bSX8YR-5XSZ9q-bownfP-fptVoK-bwZbQS-ayjThs-bKTUPH-bKTUTK-bwWpSL-bwWpMA-nnpP9c-bKR8k8-pMYh3p-ndYfFd-dNX5KF-ndYdrN-bMLWd4-bwWpK9-fpjq9b-bySgtW-fpjqVw-fp4Z6Z-cF6QL5-uudCRD-rgAtgT-bowoU6-rsrT5A-fpjoqU-ayjT2m-bZvTWf-bySFHS-bMLWet-haFLto-r1e4jb-k5S3Nc-dZJDeZ-ng1G4H-k5S5Sn-nnaR4g-ndXYi7-ndXX7L-ng1kD6-6pzUsG-ng1EdD-qHWb8i-r1oyDt-6pzUw3-r1ewUR

首都モガディシオで自動車爆弾攻撃
アフリカ東部のソマリアは、イスラム原理主義組織が支配し、海賊が跋扈する「無政府状態」にありました。

そのソマリアで中部と南部を支配下に収め、イスラム国家の建設を目指していたイスラム武装組織アル・シャバブですが、2011年にアフリカ連合(AU)やケニア軍・エチオピア軍が介入し、ソマリアの首都モガディシオや南部の港湾都市キスマヨからの撤退を余儀なくされました。

現在は、アフリカ連合ソマリア平和維持部隊AMISOMの支援を受けるソマリア政府軍が拠点都市を奪還し、かつての“暫定政府”は、2012年9月の大統領選挙を経て、正式な政府となっています。

しかし、拠点を失ったアル・シャバブはゲリラ戦に戦術を変えて自爆テロなどを繰り返しており、依然としてその脅威は去っていません。

26日にも首都モガディシオのホテルで自動車爆弾攻撃が起きています。

ちょうど、オバマ米大統領が訪問先の隣国ケニアを離れ、エチオピアに向う中で起きた事件であり、アル・シャバブの勢力を誇示するかのような事件です。
ケニア・エチオピア両国とも、アル・シャバブと戦うアフリカ連合の平和維持部隊への主要な部隊派遣国です。

****ソマリア首都ホテルで自爆攻撃、中国人ら13人死亡****
ソマリアの首都モガディシオで26日、国際テロ組織アルカイダ系のイスラム過激派組織アルシャバーブが、厳重に警備されたホテルに大規模な自動車爆弾攻撃を行い、治安当局者によると少なくとも13人が死亡した。

標的となったのは、中国、カタール、アラブ首長国連邦(UAE)の外交使節団が置かれ、ソマリア政府高官や外国人の人気も高いジャジーラ・パレスホテル。中国政府は27日、中国大使館職員1人が死亡し、3人が軽傷を負ったと発表した。

アルシャバーブは今回の自爆攻撃をソマリア南部にある同組織の基地がエチオピア軍の攻撃を受けた際に死亡した「無実の民間人数十人の殺害への報復」だとしている。(後略)【7月27日 AFP】
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【「あなた方は、まさにここで、今、夢を築くことができる」】
ソマリアで劣勢にあるアル・シャバブは、13年に起きたケニア首都ナイロビのショッピングモール襲撃事件、今年4月に起きた東部ガリッサの大学キャンパス襲撃事件など、ソマリアへ軍事介入した隣国ケニアでの活発なテロ活動を行っています。

そのケニアを訪問したオバマ大統領は、アフリカの「将来の希望」と改善すべき課題について語っています。

****アフリカの「将来の希望」強調=米大統領、ケニアで演説****
アフリカ東部ケニアを訪問したオバマ米大統領は26日、首都ナイロビの競技場で演説を行った。現地からの報道によると、大統領はケニアを含むアフリカの発展ぶりを強調。「あなた方は、まさにここで、今、夢を築くことができる」と述べ、将来への希望を訴えた。

大統領は「今の若いケニア人は、私の祖父や父のように、宗主国の主人に仕えたり、国を去ったりする必要はない」と述べた。

一方で「ケニアは危険と巨大な希望に満ちた十字路にいる」と語り、はびこる汚職などケニアの将来を脅かす問題にも言及。慣習にとらわれず改善するよう呼び掛けた。

大統領はまた、強制結婚など女性の権利侵害の問題にも触れ、「選手の半分が競技に参加しないチームを想像してみよう。ばかげている」と、女性の教育や社会参加の重要性を指摘した。(後略)【7月27日 時事】 
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【「地球最後の巨大市場」を狙うアメリカ
今回のオバマ大統領のケニアとエチオピア歴訪は、中国の影響が強まるアフリカに対するアメリカの影響力回復と経済関係強化を狙ったものと見られています。

****米、アフリカ重視模索 中国の経済進出に対抗 オバマ氏、ケニア・エチオピア歴訪****
オバマ米大統領は24日、父親の出身国であるケニアを訪問し、首都ナイロビで祖母サラさんら親族と面会した。

25日には両国政府が共催する起業家サミットに出席。「アフリカは動いている。世界で最も成長が著しい地域の一つだ」と述べ、経済協力を一層推し進めていく考えを強調した。

その後、ケニヤッタ大統領と会談。イスラム過激派によるテロ対策や汚職撲滅の分野などで、支援を拡大していく方針を確認した。

オバマ米大統領のケニアとエチオピア歴訪は、イスラム過激派の台頭に揺れるアフリカの安全保障や経済関係の強化を目的としている。

オバマ政権はこれまでアフリカを重視してこなかった。中国の台頭でアフリカでの影響力に陰りが見えはじめるなか、米国はアフリカ政策の深化をめざす。

成長が著しいアフリカは「地球最後の巨大市場」とも言われる。援助対象としてだけではなく、経済的な重要性が、米国にとっても無視できなくなったことが訪問の大きな背景だ。

米国は2009年に対アフリカの貿易総額で中国に抜かれた。危機感を抱いたオバマ政権は昨年8月、アフリカ約50カ国の首脳をワシントンに招いて「米・アフリカ首脳会議」を初めて開き、官民合わせて330億ドル規模の投資策を発表。訪問はその1年後の継続対応としてなされている。

アフリカの人口は、50年には倍増し、約20億人に達すると推計される。
NGO「国際危機グループ」のアフリカ専門家エルンスト・ヤン・ホーヘンドルン氏は「人口爆発は(ビジネス)機会にも潜在的な脅威にもなる。職にあぶれた若者は、社会不安や過激派伸長の原因になる。そのため、経済分野の開発は安全保障にも直結する」と話した。【7月26日 朝日】
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直接的な軍事介入は避け、無人機攻撃で
経済関係強化を図る一方で、アメリカはアフリカへの軍事介入には慎重な姿勢を続けています。

アメリカにとってソマリアは、1993年10月に起きた米軍ヘリ「ブラックホーク」の撃墜、及びその後の救出作戦で多くの犠牲者を出し、“トラウマ”ともなっている地であり、そのことがアメリカのアフリカへの消極姿勢の原因ともなってきました。

****軍事介入には慎重****
安全保障は経済と同様、米国の優先事項だ。

ただ、アフリカでの軍事的な関わりは、主に現地軍の訓練といった間接的な活動にとどまり、戦闘部隊の派遣といった直接的な軍事介入には慎重だ。アフリカを担当する「米アフリカ軍」も司令部をドイツに置いている。

米軍が距離を置く理由は、1992年のソマリア内戦への軍事介入での苦い経験にある。撃墜された米軍ヘリの乗組員が市民に引き回された。94年に撤退して以来、アフリカへの軍事的関与は消極的なままだ。

その後、無法状態のソマリアではイスラム過激派「シャバブ」が伸長し、ケニアを含むアフリカ東部地域の脅威になっている。

また、米が独立を後押しした南スーダンも、11年の独立後に内戦状態に突入。米国は有効な手立てを打てていない。

ホーヘンドルン氏は、「過激派対策は若者の政治的、経済的な不満を取り除かなければいけない。時間はかかるが、現地の政府への包括的な支援が必要だ」といい、米の非軍事路線での政策が望ましいとした。

オバマ氏はケニアの後はエチオピアを訪れる。エチオピアは南スーダンの和平に主導的な役割を果たしているほか、シャバブの掃討作戦にも参加している。

オバマ政権はエチオピアを安全保障上の重要な国と位置づけており、オバマ氏が訪問した際に支援を表明するとみられる。【7月26日 朝日】
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もっとも、かつての「ブラックホーク」撃墜事件のようなリスクを伴わない方法・・・無人機攻撃で、アメリカはソマリアへの軍事関与を強めています。

****米軍、ソマリアで過激派掃討の作戦拡大 無人機攻撃を増強****
アルカイダ系のイスラム過激派「シャバブ」と政府軍などの戦闘が続くアフリカ東部のソマリア情勢に関連し、米国防総省当局者は26日までに、シャバブ掃討の米軍の作戦を過去数週間、拡大させていることを明らかにした。

作戦拡大は武装無人機の攻撃増強などから成り、政府軍に肩入れするアフリカ連合(AU)の平和維持軍への直接的な軍事支援を狙っている。シャバブはここに来てAUの平和維持軍への攻撃を強めている。

複数の米国防総省当局者によると、武装無人機はジブチにある米軍関連施設から出動。エチオピアに拠点がある無人機は情報収集や監視などの活動に当たっている。武装無人機などは特に戦線でのシャバブ戦闘員の根絶を狙っている。

平和維持軍には十数カ国が参加しているが、大部分はケニアとエチオピア両国軍兵士が占める。

ソマリアにおける米国の軍事介入はこれまで、空爆や特殊作戦部隊の展開でアルカイダや他のテロ勢力に関わる特定の人物の捕捉(ほそく)や殺害が中心だった。

しかし、ソマリア南部で先月、シャバブが平和維持軍の基地を占拠し、兵士50人を殺害したとする襲撃が無人機の攻撃拡大を促す契機となった。

米国は、この襲撃はシャバブが特定の標的を襲い、奪還する能力を見せ付けたと判断し、無人機の投入拡大はこの種の攻撃を阻止するのが目的ともしている。

過去10日間で実施した無人機攻撃は少なくとも7回で、今後も続く見通し。
7月14日にはケニアの平和維持部隊へのシャバブの襲撃が差し迫っていたとして空爆に踏み切り、地上のAU軍の砲撃などの応戦につなげていた。【7月26日 CNN】
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26日の首都モガディシオのホテル自爆攻撃を受けて、アメリカの無人機攻撃は更に強化されることが予想されます。

過激派対策の根幹は・・・・
ただ、軍事作戦だけでは問題の根本をただすことはできません。
「職にあぶれた若者は、社会不安や過激派伸長の原因になる。そのため、経済分野の開発は安全保障にも直結する」(前出ホーヘンドルン氏)

「将来の希望」を実現できる環境を作り出していく現地政府の努力にかかっています。
国際社会も支援を惜しみませんが、その際の問題は政治の腐敗・汚職です。その点では、あまり楽観的にはなりにくいところがありますが・・・。
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ケニア  大学襲撃事件後も残る緊張・不安 杜撰な治安態勢 ソマリア難民の本国送還の動きも

2015-04-14 23:00:58 | ソマリア

(ケニアのダダーブ難民キャンプに暮らすソマリア難民 “UNHCR UN Refugee Agency” https://www.flickr.com/photos/unhcr/14454904333/in/photolist-o2kasv-qTeSsz-qALPCR-qT9FY5-qAEKKU-pWrSQ2-pWrUd2-qT51g6-qQW9M7-qT9GVq-qADK3S-qT51HD-qADKpU-pEFwoF-pEKJ4d-pobVUg-pCA22h-poeofC-oHPXSu-pobVUX-poh2dJ-poh2hS-pEFwnt-pCA1ZJ-pof52v-pCA1Zd-pof52a-poeofs-poeocG-poh2iy-pWdZGL-pzU6Fn-pzZC2y-pS9VCH-oVxg2G-oVAnep-qALPvX-qALSjc-qT54ax-pWsBW2-qAFiJy-pWewLE-qQWGmQ-pWsr8i-pWsrSK-qT5xZX-q6mJTd-qQWF3h-pWsCvZ-qABYHo

緊張・不安が引き越すパニック
アフリカ東部・ケニアでは、ケニアでは、今月2日に北東部ガリッサでソマリアのイスラム過激派組織「アル・シャバーブ」が大学を襲撃、148人(147人とする報道も そのほとんどが学生)が死亡する大規模テロがありました。

半日以上大学に立てこもった武装集団は、学生にイスラム教の聖典コーランの一節を暗唱させるなどしてイスラム教徒と確認できた学生は見逃し、暗唱できなかったキリスト教徒の学生らは殺害したと報じられています。【4月3日 読売より】

“「おまえはイスラム教徒かキリスト教徒か」。過激派はこう叫びながら、約800人が暮らす学生寮の部屋のドアをたたいて回り、キリスト教徒を選別して殺害していったという。”【4月3日 産経】とも。

なお、ケニアは人口の8割以上がキリスト教徒で、イスラム教徒は1割程度と少数派です。

事件後も残る緊張・恐怖は、新たな事故をも引き起こしています。

****電気爆発を襲撃と勘違い、学生パニックで150人死傷 ケニア****
ケニアのナイロビ大学で12日未明、電気系統の爆発をスラム過激派による襲撃と勘違いした学生らがパニックに陥り、建物から飛び降りるなどして1人が死亡、約150人がけがをした。

同大学の副総長がAFPに語ったところによると、死亡した学生は宿舎の5階部分から飛び降りた。現場では逃げようとした学生が押し合いになる事態も発生。負傷者の大半は軽傷だが、20人が病院で治療を受けている。(後略)【4月13日 AFP】
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2日に悲惨なテロで“地獄”を経験したばかりですので、爆発音でパニックになるのも無理からぬところです。

【「(助ける努力が)少なすぎるし、遅すぎる」】
ケニアは2011年、国家破綻状態の隣国ソマリアに展開するアフリカ連合(AU)の平和維持部隊に部隊を派遣。アル・シャバーブが占領していた町を奪還するなど、ソマリア政府のアル・シャバーブ掃討作戦に協力しています。

このため、2013年には首都ナイロビの高級ショッピングモールをアル・シャバーブが襲撃して立てこもり、買い物客ら60人以上が死亡するなど、アル・シャバーブによる「報復」テロが相次いでいます。

住民の安全に加えて、観光を基幹産業のひとつとすることもあって、ケニアにとって治安の問題は重要課題となっており、2日のテロの前日に大統領が安全宣言を行ったばかりでした。

****安全」アピール、面目失う=アルシャバーブ、テロ拡大の兆候―ケニア****
ケニア東部ガリッサで大学がソマリアのイスラム過激派アルシャバーブの武装集団に襲撃され147人が死亡した事件は、国内の安全をアピールして観光や投資の回復を目指していたケニヤッタ大統領にとっては面目を完全につぶされる痛打となった。治安維持への甘い姿勢が改めて露呈し、内外の批判が強まりそうだ。

AFP通信によれば、大統領は事件前日の1日、ケニアは「世界のいかなる国と比べても同じぐらい安全だ」と豪語したばかりだった。しかし、実態はその言葉とは程遠かった。

ロイター通信によれば、ソマリア国境から150キロしか離れていないガリッサではテロリストと疑われる不審な人物が目撃されており、大学が近いうちに襲われるのではないかと警告する向きもあったという。

それにもかかわらず、英BBC放送によると、大学を警備していたのは校門にいた武装警官2人だった。その2人も犯行グループに直ちに射殺された。

大統領は事件を受け、治安要員の不足を認め、警察官1万人を徴募する方針を示したが、付け焼き刃の感は否めない。【4月3日 時事】
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“事件当時、大学から避難していた女子学生の話では、「大学内で見知らぬ男たちがいる」との不審情報が先月30日ごろから大学当局に寄せられ、学長の判断で臨時休校の措置が取られた。しかし、学内には学期中で学生たちが残っており、今回の事件に巻き込まれたようだ。”【4月3日 産経】とも。

学生たちが学内に残っていたのは、学生寮に居住している訳ですからやむを得ないところでしょう。
問題は当局の警備態勢・事件対応です。

****ケニア大学襲撃、特殊部隊の到着は7時間後 記者らより遅いと批判****
ケニア北東地域ガリッサ(Garissa)で大学が襲撃され学生ら148人が殺害された事件で、ケニア当局の特殊部隊が現場に到着したのは事件発生から既に7時間が経過した後だったと、地元各紙が5日報じた。政府は対応に問題はなかったと主張している。

主要紙デーリー・ネーションによると、首都ナイロビにある精鋭治安部隊「レキ中隊」の本部では、2日未明にガリッサ大学が襲撃されたとの一報が入ると同時に警報が鳴っていた。

ところが、主要部隊がガリッサ大学に到着したのは間もなく午後2時になろうとする頃だった。報道によれば、ナイロビからガリッサへ向かう飛行機の第一便には、ジョゼフ・ヌカイセリ内相と警察幹部が搭乗していたという。

一方、事件一報を聞いてナイロビから365キロの道のりを車でガリッサまで移動したジャーナリストたちの中には、空路を使った特殊部隊より先に現地に到着した記者が何人もいた。

「もはや犯罪レベルの怠慢だ」とデーリー・ネーション紙は5日の社説で指摘。「襲撃犯らは、ゆっくり時間をかけて明らかに楽しみながら大勢の学生たちを射殺していた」との生存者たちの証言を紹介した。

また、英字紙スタンダードは、特殊部隊の隊員が任務中に居眠りしている風刺画を掲載した。風刺画では、いびきをかいて寝ている隊員が「テロの脅威」と書かれたヘビに噛みつかれて飛び起き、その傍らで犬が「(助ける努力が)少なすぎるし、遅すぎる」とほえる様子が描かれている。

アミナ・モハメド外相は4日、AFPの取材に「テロとの戦いはゴールキーパーのようなものだ。100回シュートを防いでも誰も覚えていないが、たった1回の失敗は忘れない」と述べ、政府の対応を擁護した。【4月6日 AFP】
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アミナ・モハメド外相の発言はもっともではありますが、残念ながら“たった1回の失敗”ではないところに問題があります。

2013年のナイロビ・ショッピングモール襲撃事件でも治安部隊の“お粗末さ”が指摘されています。

****ケニア襲撃事件のお粗末な「真相****
市民61人が犠牲になったショッピングモール襲撃事件、ケニア兵士の恥ずべきパフォーマンス

人質を取って立て籠もった武装勢力の制圧は困難を極めたが、治安部隊が4日目に建物に突入。最大15人ほどのテロリストは市民61人を殺害した後、追い詰められて放火し、建物の一部が崩落した──。

これが先月、ケニアの首都ナイロビのショッピングモールを隣国ソマリアのイスラム過激派アルシャバブが襲撃した事件の「公式」な説明だ。

だが実態はかなり違ったようだ。当局は数カ月前から寄せられていたテロ情報を見逃しており、襲撃犯の数はわずか4人だった可能性もある。正規の治安部隊は何時間も現場に現れず、非番の警官が自警団らと協力して市民の救出に当たった。

建物を制圧した治安部隊は店内の商品を略奪し、バーでビールをあおっていた。建物の支柱をロケット弾で破壊して建物を崩壊させたのも彼らだ。瓦礫の下には、行方不明の39人が埋まっているかもしれない。

ケニア政府は犯人グループのうち5人を殺害したとしているが、遺体は見つかっていない。脱出に成功した市民からは、一般人の服を着た襲撃犯が群衆に紛れて逃げたとの証言も出ている。建物の地下駐車場から近くの川に下水管が通じているため、そこから逃亡した可能性もある。【2013年10月15日号 Newsweek】
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襲撃されたショッピングモールにはイスラエル資本が入っており、ナイロビのイスラエル大使館からケニア外務省に対しテロの注意喚起があり、9月が危ないと警告されていたとも、また、複数の閣僚や軍高官が「ナイロビやモンバサで9月にテロが起きる恐れが高まっている」と警告を受けていたとも報じられています。

こうした事前情報についてはすべてに万全を期すことは実際問題としてはむつかしいかとは思いますが、“治安部隊は店内の商品を略奪し、バーでビールをあおっていた”というのは論外でしょう。

過激派がソマリア難民キャンプに浸透・・・副大統領、難民退去を要求
今回4月2日の大学襲撃事件の首謀者が、アル・シャバーブ司令官でソマリア系ケニア人のモハメド・クノ容疑者とされていますが、事件に関与したとして拘束された5人のうち4人はソマリア系ケニア人とみられており、事件はケニア国内のアルシャバブ・ネットワークが主導したとの見方が報じられています。

“ケニア北東部を中心に約250万人のソマリア系ケニア人がおり、多くがスワヒリ語を話す。ソマリアを拠点とするアルシャバブが隣国ケニアのソマリア系にも深く浸透しているとみられる。
アルシャバブはケニア国内で、インド洋沿岸のイスラム教徒が多い地域や首都ナイロビのスラムなどでも戦闘員の勧誘を活発化させている。”【4月5日 毎日】

こうした事情を受けて、国内のソマリア系住民への警戒感が強まっているようです。
度重なる治安当局の失態への批判をそらす狙いでもないでしょうが・・・・。

****ケニア、ソマリア人難民の「退去」要求 3カ月内に****
ケニアのウィリアム・ルト副大統領は11日、国連に対し3カ月内にケニア内にある「ダダーブ難民キャンプ」に身を寄せるソマリア人を本国に移送させることを求めた。

国連が応じなかった場合、ケニアが自力でこの計画を実行するとの強硬姿勢もにじませている。副大統領府の声明は「米国が同時多発テロ後に変わったように、ケニアも東部ガリッサでの大学襲撃テロ後、同様に変わるだろう」などと主張した。

ガリッサで今月2日に発生したテロ事件では計147人が殺害され、隣国ソマリアを拠点とするイスラム過激派「シャバブ」が犯行を認めた。

CNNが入手したケニア政府文書によると、このテロを主謀したシャバブ幹部はケニア内に広範なテロリスト網を築き、同キャンプにも浸透しているとされる。

副大統領によると、ケニア政府はキャンプの今後の処置について国連と協議した。しかし、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)当局者は11日、キャンプ移設についてケニア政府から正式な要請はないと説明した。

UNHCRが運営する同キャンプは世界最大規模の難民受け入れ施設ともされ、ソマリアの内乱の深刻化を受け1991年後半に設置されていた。

UNHCRとケニア、ソマリア両国政府は2013年、ソマリア人難民の本国への移送についてはあくまでも難民自身の自由意思を受けた相互合意や自主的決定を重んじる原則で合意。ルト副大統領の今回の移送計画はこの原則が脱落しているようにもみられる。

難民のソマリア内の移送先も明らかでない。同キャンプには現在、60万人以上が住み、基本的な生活物資の配給も満足すべき状況にないとされる。過去には深刻な干ばつや伝染病などにも襲われていた。

一方でソマリアからキャンプへの移動は容易とされ、CNN記者も過去に抜け道のルートをたどってこれを実証したことがある。同キャンプに忍び込むシャバブ支持者も多いとされる。

ケニア政府はまた、シャバブ構成員の同国への侵入を阻止するため対ソマリア国境で長さ約700キロにわたる壁の建設も進めている。【4月12日 CNN】
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難民キャンプに過激派が入り込む事例は多くありますが、難民を本国へ強制送還するという話になるとまた別の人道問題が生じます。

アル・シャバーブはケニア・エチオピアの軍事介入もあって首都モガディシオから撤退し、次第に勢力を弱めているとは言いますが、未だモガディシオでは日常的にテロが起きています。

今日14日も、首都モガディシオの教育省に、自動車爆弾による大きな爆発の後、武装グループが押し入り、激しい銃撃戦が起きています。警察によると6人が死亡したとのことです。【4月14日 AFPより】

また、地方の中部・南部は依然アル・シャバーブ支配地域になっています。

食糧状態も極めて悪く、多くが飢餓に苦しんでいる国です。
世界最大規模の難民受け入れ施設に暮らす60万人以上の難民をどこへ移送しようというのでしょうか。

ソマリア難民の送還はオランダでも問題になったことがあります。

****オランダで暮らすソマリア難民に忍び寄る危機****
・・・・難民を、強制送還しようという動きがヨーロッパで起きている。デンマーク、ノルウェー、スウェーデン、英国......。とりわけ懸念されるのは、オランダだ。

オランダ政府は、アルカイダと関連があるイスラム武装グループ「アル・シャバブ」が支配する危険地域に、ある一定の人たちは強制送還してもいいという姿勢を打ち出しているのだ。

対象となるのは、最近、その地域からやってきた者だ。アル・シャバブの支配のもとで暮らしてこられたのだから、保護する義務はない、というのが理由だ。

オランダはまた、『ブラック・ホークダウン』の舞台となった首都モガディシュは、もはや暴力のまん延する地域ではないとして、2012年12月に、他国に先駆けてモガディシュへの送還停止を解除した。そして昨年、2件の強制送還を実施した。

そのうちの1人、アーメッド・ セードさん(26歳)は、その3日後に、自爆攻撃に巻き込まれて負傷した。アーメッドさんは20年以上も前に祖国を離れていた。この自爆では、少なくとも6人が亡くなっている。

狙われる市民

特に危険な地域は、アル・シャバブの支配下にある中部や南部だ。アル・シャバブは、新政府軍や他の武装グループ、アル・シャバブ掃討作戦を展開する外国軍との戦闘を繰り広げ、多くの市民が巻き込まれて犠牲となっている。

また、アフリカ連合ソマリア・ミッションの後ろ盾を受けて政府の統制下にあるモガディシュでも、自爆や手榴弾、手製爆弾などで、たびたびゲリラ攻撃を行っている。
さらにアル・シャバブは、スパイ行為を疑って市民そのものを標的とした攻撃も行っている。(中略)

再び襲いかかる飢餓
人道状況も、極めて深刻だ。100万人が飢えで危機的な状況にあり、200万人が食糧支援を必要としている。食糧事情は、干ばつで飢餓に見舞われた2011年より悪化しているが、紛争地では物資が届かない。
そんな国に、帰れというのか。

UNHCRは今年初め、ソマリアにおいて、人びとが迫害される危険性がないと確信できない限り、ソマリア人を強制的に帰還させるべきではないと、ソマリア難民に対する国際的な保護の継続を要請した。

国連事務総長もこの5月、武力紛争から逃れてくるソマリアの人たちを保護しているすべての国に対し、国際法に従って彼らを強制送還しないよう呼びかけた。

国際法は、生命や自由が脅かされかねない場所に難民を追いやることを禁じている。これは、たとえ難民条約に加盟してなくても、すべての国に課された責務だ。生命を危険にさらす強制送還は無責任であるだけでなく、国際法への悪質な違反である。(後略)【2014年11月5日 アムネスティ・インターナショナル日本】
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今回のケニアの場合は、難民の数が桁違いです。その影響も桁違いになります。

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ソマリア  アルシャバブ、再統合、そして「カート」

2014-04-02 22:41:39 | ソマリア

(カート宴会(イエメンでしょうか) 床に散らばっている植物がカート 膨らんだ頬にカートの葉っぱをため込んでいます。 “flickr”より By Phil Marion  https://www.flickr.com/photos/phil_marion/2557822440/in/photolist-4U2vuU-9JqkRu-9JHs4S-dAqan-aGdFip-8oAL5z-asgmjs-bvbwiX-8LkLz5-9fbiZA-2QEbmu-8Wv7n9-8Ws4fX-2QzHb8-dqcKHR-dqeDpm-dqefyj-dpLUtt-dqdd42-dqc9AY-dqcmea-dqck5B-dpLF62-dqdoVR-dqd2xD-dqeyMC-dpLDCv-dqdy2H-dqeCin-dqcMK7-dqevRL-dqdfG7-dqed15-dqddbf-dqd9uz-dpLXUE-dqdodh-dqdvv7-dpMjez-dqd4VY-dqcQ57-dpM2Fh-dqdCkR-dqdnoh-dqdt7t-dpM6e3-dqdKyD-dqe3yZ-dqdzmE-dqdFKB

ケニアで進むソマリア難民への締め付け
東アフリカ・ソマリアでは内戦が続き、隣国ケニアには約50万人の難民が流入していると言われています。
当然ながら、難民と同時に、ソマリアで内戦を戦っているイスラム原理主義勢力アルシャバブの影響もケニア国内に及んできます。
特に、ケニアはアルシャバブ掃討のためにソマリアに軍事介入していますので、アルシャバブによるテロ攻撃の標的ともなります。

アルシャバブによるケニア国内でのテロは、昨年9月に首都ナイロビの高級ショッピングモールで起きたものが世界の注目を集めましたが、それ以降もテロが続いています。

3月23日、ケニア南東部モンバサ近郊で武装集団が教会を襲撃して無差別に発砲、同国警察幹部によると4人が死亡、17人が負傷しています。

3月31日、首都ナイロビで3件の連続爆発があり、少なくとも6人が死亡、20人以上が負傷。現場は隣国のソマリア人が多い地区とされています。

こうした治安悪化に対し、ケニア政府はケニア国内のソマリア難民に対する締め付けを強化しています。

****ケニア:ソマリア難民に「キャンプ」帰還令****
ケニア政府が国内の都市部に居住するソマリア難民に対し、指定された難民キャンプに戻るよう命じる緊急令を発した。「緊急的な治安課題」のためとしている。

ケニアでは、隣国ソマリアのイスラム過激派アルシャバブによるテロ攻撃が増加。難民の集まる場所がテロの温床となるのを政府が懸念したとみられるが、人権団体からは批判の声も上がっている。

 ◇都市部テロを懸念
ソマリアは1991年から内戦が続き、ケニアへこれまで約50万人の難民が流入。ソマリア国境近くのダダーブは世界最大の難民キャンプとされる。さらに、首都ナイロビなどにも難民らが集まる大規模なソマリ人地区が形成されている。

一方、ソマリアの過激派アルシャバブが近年、国境を越えてケニアの地域社会に徐々に浸透。アルシャバブ掃討のためケニア軍がソマリアに軍事介入した2011年10月以降、ケニア各地でアルシャバブによる報復テロが頻発している。アルシャバブは昨年9月、ナイロビ随一の高級商業施設「ウエストゲート・モール」を襲撃し、計67人が死亡した。

緊急令は3月25日に発令されたが、ナイロビで3月31日、爆発で6人が死亡した。現場はソマリ系ケニア人やソマリア難民が多く住むイスリー地区で、同地区ではアルシャバブの犯行と疑われる爆弾テロなどがたびたび起きている。

アルシャバブ戦闘員がソマリ人地区に潜伏している疑いもあり、都市部の貧困層地域で若者を勧誘するケースもある。こうしたことを受けた緊急令だが、国際人権団体「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」(本部・ニューヨーク)は「過密で整備が不十分なキャンプへの強制的な移住計画は再考すべきだ」と反対している。【4月1日 毎日】
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31日のナイロビでの連続爆発テロを受けてケニア警察は、隣国ソマリアを拠点とするイスラム過激派組織アルシャバブが事件に関わった疑いがあるとして、ソマリア人が多く住む地区で600人以上を拘束したとも報じられています。【4月2日 NHK】

ソマリア大統領 再統合へ期待
ソマリアにおけるアルシャバブ及び内戦の状況はよくわかりません。
アルシャバブは首都モガディシオを追われて、勢力を弱体化させてはいますが、なお、地方での抵抗は続いているようです。

2月21日にはソマリアの首都モガディシオにある大統領府で、自爆テロとみられる大きな爆発があったのに続きアルシャバブと見られる武装集団が敷地内に侵入、警備の治安部隊などと激しい戦闘となりました。
この大統領府襲撃で少なくとも14人が死亡しましたが、モハムド大統領は無事でした。

ソマリア政府側は、こうしたアルシャバブの攻撃は、組織弱体化による焦りだとしています。

****存在感示そうと躍起」=イスラム過激派―ソマリア大統領****
来日したソマリアのモハムド大統領は12日、東京都内の日本記者クラブで記者会見し、イスラム過激派アルシャバーブについて「支援者から資金を得るため存在感を示そうと躍起になっている」と強調した。アルシャバーブは2月、首都モガディシオの空港や大統領府を狙いテロ攻撃を相次いで実行している。

世界各地からのアルシャバーブへの資金提供は「これまでも水面下で行われてきた」と大統領は説明。全貌は今も明らかではない。しかし「資金面で支援が細り弱っている」と述べ、アルシャバーブの最近の弱体化は著しいとみている。

過激派や海賊を構成してきたソマリア人の若者について、バーレ政権崩壊でソマリアが無政府状態になる直前の1990年に5歳だった子供は現在29歳になっていると指摘。「こうした子供たちは全く教育を受ける機会がないまま大人になった」と大統領は訴え、職業訓練をはじめ社会復帰のための支援が必要だと訴えた。【3月12日 時事】 
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かつて、ソマリアについては“実質的無政府状態の”という形容が必ずついていました。
2012年9月に大統領選挙を行いモハムド大統領が選出され、同年11月には新内閣も発足しています。

国際的な認知も進んでおり、2013年1月には、アメリカ政府がアフリカ東部のソマリア政府を正式に承認。アメリカがソマリア政府を正式に承認するのは、1991年に同国が内戦に陥って以来初めてです。【2013年1月18日 CNN】
2013年4月には、IMFもソマリア政府を承認しています。

ただ、ソマリアはイスラム過激派アルシャバブの問題だけでなく、内部的には独立を主張する北部のソマリランド、自治政府を主張するプントランド、そして首都モガディシオのある南部のソマリアに3分割されています。

このうち最も治安が良いのは、その独立は国際的には全く承認されていませんが、北部のソマリランドです。
ソマリア政府は、そのソマリランドと再統合の話を進めているとのことです。

****ソマリア:北西部ソマリランドと再統合を モハムド大統領****
内戦状態が続くアフリカ東部ソマリアのハッサン・シェイク・モハムド大統領(58)が12日、東京都内で毎日新聞のインタビューに応じ、1991年の内戦初期に「独立」を宣言した北西部ソマリランドと再統合に向けて交渉していることを明らかにした。大統領は「時間はかかるが多くの進展がある」と述べ、再統合に期待を示した。

ソマリアは91年に社会主義政権が崩壊してから内戦に突入。2012年に正式政府が発足したが、ソマリランドは一方的に独立を宣言してから分断が続いている。

大統領は「ソマリアの国土は分割できない」と独立を承認する考えがないことを強調。「連邦政府に参加するか、自治区になるのかなどは見えていないが、あらゆる可能性を検討している」と述べた。現在は領空の共同管理など「簡単な問題」から話し合いを始めているという。(後略)【3月12日 毎日】
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混乱状態のソマリア・プントランドと一線を画して良好な統治状態を続けてきたソマリランドからすれば、いまさら内戦状態のソマリアと一緒になっても・・・というところでしょうが、ソマリランド等を含めた形でのソマリア政府の国際認知が進むという時代の流れもあります。

プントランドは海岸が海賊、山岳部がイスラム過激派アルシャバブの基地になっていると言われていますが、1月の“大統領”選挙で、ソマリア暫定政府で2011年から約1年首相を務めたアリ氏が当選しています。
プントランドは自治を認めた連邦制での再統合には賛成しています。

あまり情報がないソマリア、ソマリランドなどについては、「謎の独立国家 ソマリランド」(高野秀行著)が面白く読めますが、ソマリア理解のキーワードは“氏族”のようです。

カート 貧困や食料不足、水危機に汚職などの根っこにある問題
イスラム過激派アルシャバブとの内戦、海賊の跋扈、ソマリランド・プントランドなどの再統合・・・いろんな問題を抱える氏族社会ソマリアですが、もうひとつ問題がありそうです。

高野氏の著書にも頻繁に登場する覚醒作用のある植物“カート”の問題です。
高野氏は、“カート宴会”によって本音でのコミュニケーションがとれると好意的にも評価していますが(http://www.webdoku.jp/column/takano/2012/0924_114318.html)、その副作用も大きそうです。

カートは“新鮮な若葉を噛み潰し、頬の片側に噛みくずを貯めながら、汁を飲み下していく”ことで弱い覚醒作用が得られ、“飲酒の禁じられているイスラム世界のうち、特にケニア、ソマリア、エチオピア、イエメンなどアラビア半島から東アフリカにかけての地域においては、酒などの代用として嗜好品として需要が高いが、イスラム世界のほとんどの国ではその特性のため麻薬として非合法となっている”【ウィキペディア】とのことです。

****カート」、イエメンに影 覚醒効果・多幸感生む葉****
中東の最貧国イエメンで、カートと呼ばれる覚醒効果のある葉の過剰消費が、人々と社会をむしばんでいる。

社交の友として親しまれてきたが、長い独裁と「アラブの春」後の社会不安で一段と広まった。他の作物からの転作も相次ぎ、その影響で水や食料も不足。貧困がさらに深まる悪循環が起きている。

 ■社会不安で消費量増加
首都サヌア中心部の葬儀場。大広間でくつろぐ男たち約150人はみなぷっくりと片ほおを膨らませ、もぐもぐと口を動かしていた。かんでいるのは小枝から摘んだカートの新芽だ。

「人付き合いには欠かせないし、元気が湧く。若い頃は毎日9時間はかんでいた」と元電気技師スリマン・バハリシュさん(61)。

イエメンでは葬儀や結婚式はカート抜きでは始まらない。毎夕、あちこちの民家の客間でカートパーティーが開かれ、旧交を温めたり、人脈を広げたり。社交の潤滑油になってきた。仕事中や運転中に眠気覚ましにかみ続ける人も多い。

かむと青汁や抹茶のような青臭い苦みがある。覚醒剤のアンフェタミンに似た成分が含まれ、覚醒効果や多幸感をもたらすという。

産地や品質によって1回分500リアル(約240円)から1万5千リアル(約7200円)ほどと、イエメンの物価からすれば安くはない。運転手アブド・サレハさん(38)は月給の半分以上をカートに費やすが、「くつろげるし、やめられない」と話す。

カートは、イエメンやエチオピア、ケニアなどで数百年前から愛好されてきた。イエメンでは、サレハ前大統領が政権を握った1970年代以降に急速に浸透し、政府の庁舎内にもカートのための部屋がつくられた。

地元環境団体「持続可能な開発と環境保護組織」によると、12年の市場規模は3570億リアル(約1713億円)で、13年前の8倍に膨らんだ。

カート売りのフォージア・マシュダクさん(30)によれば、「社会問題が起きるほど、売り上げも伸びる」。
サレハ氏が退陣に追い込まれた11年の民主化デモや武力衝突で、治安が悪化し経済は低迷するなかで、カートの売り上げは4割増えた。

飲食店員マンスール・フセインさん(24)は、仕事があまりなく「カート以外やることがない」と話す。世界保健機関(WHO)は、成人男性の9割、女性の5割、12歳以下の児童の2割がカートを毎日かむと推測している。

 ■転作相次ぎ水不足拍車
巨岩に立つ別荘「ロックパレス」がそびえるサヌア郊外ワディ・ダハール。かつてはブドウや桃、ザクロだった緑は、今はほとんどがカートの木だ。カート農家ファワズ・ムニフィさん(36)は「年に5回も収穫できるし、手間もかからない。実入りは3倍以上になった」と話す。

政府情報センターによると、高級品「モカマタリ」で有名な輸出作物コーヒーの栽培面積は08~12年にほぼ横ばいだったが、カートは14%増えた。農業部門の国内総生産(GDP)の3分の1を担う大黒柱だ。

だが副作用も出ている。
「昔は川だったんだ。子どもの頃はよく釣りをした」。カート農家アブドラ・マソディさん(55)は車道に視線を落とした。大量の水を使うカート栽培が広がるにつれて、川は干上がり、40年ほど前は30メートル下からくんでいた地下水も、300メートル掘らないと出なくなった。

イエメンは元々、水資源が乏しい。1人が年間に使ってよい水は120立方メートルで、世界平均の2%。年7%もの人口増が続くサヌアでは水不足の危機が叫ばれてきた。カートは地下水の7割を消費しており、世界食糧計画(WFP)は水資源が枯渇する「主犯」と指摘する。

WFPによると、人口の4割に当たる1千万人以上が食料不足に陥り、慢性的な栄養不良の児童の割合は58%とアフガニスタンに次ぐ高さだ。穀物自給率は2割に満たず、輸入に頼る小麦の価格も高値が続く。

外貨を稼ぐコーヒーや空腹を満たす穀物をよそに、カート生産が増え続け、水がますます不足する――そんな構図だ。食欲減退効果のあるカートで空腹を紛らわす家庭も珍しくないという。

 ■国内は合法、国外も鈍い対応
カートへの過度な依存を減らそうと、政府は輸出入を禁止し、栽培や消費も制限しようとしてきた。この3月にも内務省が勤務中の警察官にカート禁止を厳命した。

ただ、カート関連産業は全雇用の15%を占め、抜本的な対策には踏み込めないのが実情だ。農家に他の作物への転換を促すのは容易ではなく、そもそも武装闘争で政府の統治が及ばない地域も多い。

コカインや覚醒剤など国際的な禁止薬物とは異なり、カートはイエメンでは合法の「嗜好(しこう)品」。英国でも合法、米国では違法と対応もまちまちで、国際社会の対応も鈍い。

地元NGO「反カート基金」代表を務めるサヌア大のアデル・シュガ教授(45)は「貧困や食料不足、水危機に汚職などの根っこにある問題と認識して対応すべきだ」と話している。【4月1日 朝日】
******************

事情はソマリアも同じでしょう(ソマリアではカートはエチオピアなどからの輸入が多く、常用者はイエメンよりやや少ないようですが)。

酒と同様にコミュニケーションツールとしては有用ですが、外貨を稼ぐコーヒーや空腹を満たす穀物をよそに、カート生産が増え続け、水がますます不足する。国民は収入の多くをカート購入につぎ込んで、いっときのくつろぎを得る・・・ということでは、やはり社会をむしばむ「麻薬」の弊害と見るべきでしょう。

アルシャバブを駆逐しても、社会全体がカートに依存していては、自立も難しいのではないでしょうか。

もっとも、酒もカートもダメ、更に一部のイスラム原理主義のように音楽やDVDなど娯楽もダメ・・・ということでは、人間は生きていけないとも言えますが。
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ソマリア情勢の2011年の急変とリビア・カダフィ政権崩壊

2013-09-03 22:42:40 | ソマリア

(ソマリアの首都モガディシオ 8月8日のラマダン明け 通りで元気に遊ぶ子供たち 手にはおもちゃのピストル ”flickr”より By AU/UN IST http://www.flickr.com/photos/61765479@N08/9468877223/in/photolist-fqJtiR-fzVLx4-fmzggG-fmk7iH-fmk7LV-fmzgQf-fmzfZE-fmk7LB-fmzgns-fmk7Yp-fzVMdc-fpJ9qj-fDzZh5-fDzWrJ-fDzWpN-fDimaX-fDimjK-fDimnr-fDimeP-fDzWod-foceQz-foccWP-forvgC-focfvi-fochSc-forx2L-fortpf-focgYZ-forwFL-fzVLM6-fERNAo-fEnryE-fERS1Y-fERKMC-fEzcpi-fEzge2-fEzfgB-fEzfZR-fEzfxV-fERPi9-fERQ1U-fEzbZ4-fEzcBB-fHjHHj-fH35ia-fH3ahn-fH3jCp-fH3kt8-fxFmp2-fAb6WE-fxVFoN)

飢饉によってシャバブが弱体化、ケニア・エチオピアの相次ぐ侵攻
“無政府状態が続く”という表現がついてまわるソマリアの情勢については、最近はほとんど記事を目にしませんので、どうなっているのかよくわかりません。

“国際医療支援団体「国境なき医師団(MSF)」は14日、政情が不安定なアフリカ東部ソマリアで1991年以来22年間続けてきた活動を停止し、撤退すると発表した。武装勢力による職員殺害や誘拐などが相次ぎ、活動の継続が難しいと判断した。”【8月15日 時事】とのことですので、相変わらず全土的には“無政府状態”が続いているようです。

かつて、ソマリアではアルカイダともつながるイスラム過激派「アル・シャバブ」がほぼ全土を制圧し、名ばかりの暫定政府を守るアフリカ連合(AU)の「アフリカ連合ソマリア平和維持部隊(AMISOM)」(実際に派兵したのはウガンダとブルンジのみ)は首都モガディシオの大統領府周辺のみに追い込まれていました。

そうした情勢が変化したのが2011年で、ソマリアの干ばつ・飢饉が注目されていた時期です。

****干ばつ・戦闘、続く苦しみ 弱る武装勢力「和平の好機」 ソマリア飢饉****
・・・・一方、飢饉によってシャバブが弱体化し、和平の好機が生まれているとの皮肉な指摘もある。

07年から台頭してきたシャバブの勢いは、ここ数カ月間弱まり、かつてモガディシオでも6割を支配したが、今では3割程度に過ぎない。

「シャバブの資金源の一つは地元住民から徴収する『税金』だが、近年の干ばつで激減した。略奪を始めており、士気も落ちた。今後の戦略をめぐる内部分裂もある。結果的に和平実現の機運が到来している」。暫定政府の治安関係者は、そうした見方を示した。(後略)【2011年7月27日 朝日】
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アル・シャバブの勢力が後退し始めたのが、7月報道で“ここ数カ月間”ということですから、2011年前半ということになります。
2011年8月には、アル・シャバブは首都モガディシオから撤退します。

後退するアル・シャバブを追うように、10月には隣国ケニアが、11月にはもうひとつの隣国エチオピアがソマリアに侵攻し、アル・シャバブを掃討する情勢となりました。

そのあたりの情勢については、下記のように報じられています。

****ソマリア:エチオピア軍侵攻 過激派への包囲網強化****
アフリカ東部ソマリアに隣国エチオピア軍が侵攻し、国際テロ組織アルカイダ系とされるイスラム過激派組織「アルシャバブ」への包囲網が強化されつつある。

アルシャバブは、首都モガディシオでソマリア暫定政府を防衛する「アフリカ連合」(AU)の派遣部隊との戦闘も継続しており、勢力が分散化しだした可能性もある。

ケニア軍は10月中旬、ソマリア南部へと侵攻。今月20日までにエチオピア軍がソマリア中部ベレドウェインなどに進軍した。ロイター通信によると25日、エチオピア政府は越境を認めた。

今月半ばにはケニアとウガンダ、ソマリア暫定政府首脳がケニアの首都ナイロビで非公式会合を開き、アルシャバブ掃討に向けた軍事作戦の協力を確認した。

AU部隊の主体となっているウガンダ、ブルンジなどの首脳は部隊増強に向け、緊急的援助をアフリカ各国へと呼びかけた。AU部隊との戦闘でアルシャバブが弱体化しているのを好機とみたケニア、エチオピア両軍が米国など国際社会の意向を受ける形で相次いで侵攻している可能性もある。

ソマリアは中央政府の崩壊した91年以降、事実上の無政府状態にあり、暫定政府が首都モガディシオの一部を統治しているが中・南部はアルシャバブが実効支配してきた。しかし、ここにきて各地での戦闘でアルシャバブ勢力が分散化し、内部抗争や資金不足に直面しているとの観測も流れ始めている。

一方、AUも資金難に直面しており、アルシャバブ掃討に向けて、AUが一枚岩となれるかは不透明なままだ。

エチオピア軍は06年、米国の支持を受け、イスラム原理主義勢力が首都モガディシオを掌握していたソマリアに軍事介入し、エチオピア軍が支援する暫定政府が全土をほぼ制圧したが治安は悪化し、09年に撤退した経緯がある。【2011年 11月26日 毎日】
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アル・シャバブの勢力後退の背景に、飢饉による資金不足、住民の困窮を無視した強権支配による民意の離反などが挙げられていますが、いまひとつさだかではない感もありました。

ケニア参戦の理由として、頻発したアル・シャバブによる外国人誘拐が挙げられていました。
“ケニア国内から外国人が相次いで誘拐され、ソマリアに連れ去られたことを受け、ケニア政府はソマリア側に軍隊を派遣し、16日に国境を越えた。現地からの報道によると、誘拐に関わった疑いがあるソマリア中南部を支配するイスラム武装勢力シャバブを追うためだという。”【2011年10月16日 朝日】

ただ、外国人が誘拐されたぐらいで、軍事行動を起こすだろうか? アメリカから強い依頼と援助をうけたのだろうか?という印象はありました。

エチオピアは上記記事にもあるように、かつてソマリアに侵攻した経緯もあり、またソマリアとの国境・オガ違法デン地方にはソマリ人が居住してエチオピア政府に対する反政府活動を行っていることなどで、ソマリアに対して強い利害・関心を有しています。

カダフィ政権が倒れるとアル・シャバブは一気に形勢を逆転された
この2011年のソマリア情勢の急変は、リビア・カダフィ政権の崩壊によるものだとの指摘があります。
カダフィ政権は、エリトリアを通じてアル・シャバブを支援していましたが、リビア政変でこの援助が断たれたためにアル・シャバブが勢力を後退させ、これを好機とみたケニア・エチオピアが空白を埋めるように参戦してきた・・・というものです。


****混迷の「アフリカ連合」 「盟主」失い求心力低下****
今年五月、アフリカ連合(AU)は前身のアフリカ統一機構(OAU)設立から五十周年を迎えた。
しかし、カダフィという「盟主」を失ったAUは統制を失うだけでなく、各国が対立し加盟国内での紛争やテロが頻発している。

アフリカ諸国で取材を続ける英国人ジャーナリストはこう語る。
「リビアのカダフィ政権が倒れてから二年が経過し、アフリカ大陸におけるカダフィの存在の大きさが再認識されている」

ソマリアを巡り対立激化カダフィ亡き後、その影響が如実に表れAU崩壊が浮き彫りになっているのが、ソマリアを巡る各国の対立だ。
ソマリアでのイスラム過激派によるテロは七月にも発生し、国連機関が襲撃され死亡者が出ている。

そもそも一九九〇年代から無政府状態となったこの国では、二〇〇七年以降にイスラムテロ組織「アル・シャバブ」が隆盛を誇り、アルカーイダとも手を組んで全土制圧目前まで迫った。

アル・シャバブの勢力拡大に対してAUは「アフリカ連合ソマリア平和維持部隊(AMISOM)」の展開を図ったが、当初兵力提供に応じたのはウガンダとブルンジの二カ国に過ぎなかった。両国はAU各国に対して増援を訴えたが、応じる国はなかった。

一時、両国部隊は、ソマリアの首都モガディシオの一画に追い込まれる有様だったが、リビアのカダフィ政権が倒れた一一年に一転して反撃に出た。

アル・シャバブを物心両面で支援していたのはアフリカ北東部の「破綻国家」エリトリアだった。
しかし「エリトリアには資金も人材もない。周りの国は誰でも知っている」(ハイレマリアム・エチオピア首相)と言われ、同国に資金を与えて間接的にソマリアのイスラム過激派を支援していたのがリビアであることは公然の秘密であった。

結果として、カダフィ政権が倒れるとアル・シャバブは一気に形勢を逆転されたのだ。

しかし、AMISOMが優勢になった途端、ケニアが突如としてソマリアに侵攻した。
その後AU本部があるエチオピアの首都アディスアベバを中心に、ケニアは積極的な「ロビー活動」(外交筋)を展開し、AMISOMの主導権を奪ってしまったのである。

憤懣やるかたないのがウガンダだ。昨年ケニアで発生したウガンダ軍のヘリコプター墜落事故で、ケニア側が「ウガンダ軍のミスが原因」と発表した際には、ウガンダ軍最高司令官が「何があってもケニア軍だけは助けない」と感情的な発言をした。
以来両者の溝は埋まっておらず、絶縁状態が続いている。

現在、ケニアを横目にもう一つの軍事大国エチオピアがソマリアの分割統治を狙っている。
AU本部を首都に戴きながら、エチオピアはAMISOMと一貫して距離を置き続け、断続的にソマリア侵攻を繰り返している。
ハイレマリアム首相は「空白を埋めるのは誰なのか」と発言し、ケニア軍の消耗を待つ構えだ。

カダフィは手前勝手に他国のテロ組織を支援していたに過ぎない。
しかし、結果として当時は周辺国がソマリアに手出しできなかった。カダフィを失ったことで重石がなくなり、パワーバランスが崩れたのである。

これと反対のことが起きたのはマリだろう。今年一月、同国の遊牧民トゥアレグ族がアルカーイダと連携して武装強化しフランス軍の介入を招いたことは記憶に新しい。
カダフィ健在時、リビアはマリ政府を支援する一方でトゥアレグ族を傭兵として養っていた。

政権崩壊前年の一〇年、リビアはアフリカ各国に九百億ドル以上の支援をしている。そこには独裁国家も多く含まれるが、良くも悪くもそれによって紛争が抑え込まれていた。

最近では、アフリカ中部のコンゴ(旧ザイール)で政府と反政府軍との戦闘が激化しているが、同国もリビアから支援を受けてきた国の一つだ。
七月に入って反政府勢力「M23」の兵士が東部の村を襲撃するなど、複数の地域で政府軍と戦闘に入り百人以上の死者が出ており、六万人以上の難民が隣国ウガンダに逃れたという。

国連安全保障理事会は三月に平和維持活動(PKO)に武力部隊の派遣を決めており、南アフリカなど参加国が部隊を送り込んでいるが解決は遠い。

「カダフィが正しいことをしていたとは考えないが、結果を見るとカダフィ健在時のほうがましだった」 前出英国人ジャーナリストはこう語った。(後略)【選択 9月号】
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リビアで政変が始まったのが2011年2月、首都トリポリが陥落してカダフィ政権が崩壊したのが同年8月ですから、確かにちょうどソマリア情勢が急変した時期です。

【「正しくはないが、結果としてはましだった」】
「カダフィが正しいことをしていたとは考えないが、結果を見るとカダフィ健在時のほうがましだった」・・・カダフィは資金力で良くも悪くも紛争を抑え込む状況を保っていました。

エジプトでは軍部を背景とした暫定政権が力でムスリム同胞団を抑え込み、最近ではイスラム主義に限らず反政府・反軍部的な言動を抑え込んでいます。
国民の間に、こうした軍部の力による安定をアラブの春以降の混乱よりはましだ・・・と感じている向きも多々あります。

シリア・アサド政権はこれまでの弾圧、最近の化学兵器使用疑惑で非難を浴びていますが、一方で、アサド後の混乱を考えるとアサド政権の方がましではないか・・・という思いも一部国際社会にはあります。

いろいろな問題はあるが、現実に混乱を抑え込んでくれるなら、混乱よりはましだ・・・「それを言っちゃおしまいよ」という感もあって、なかなか難しい判断です。
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ソマリア  依然続くイスラム過激派“アルシャバブ”のゲリラ活動

2013-05-19 21:38:51 | ソマリア

(5月3日 首都モガディシオにおける警察によるチェック 4月14日の最高裁襲撃以来、こうした警備体制が厳しくなったそうですが・・・ “flickr”より By AU/UN IST http://www.flickr.com/photos/au_unistphotostream/8716371037/)

【「一連の攻撃の最初となる攻撃を行った」】
内戦が続く東アフリカ・ソマリアの状況については、あまり多くの報道は目にしませんが、イスラム過激派“アルシャバブ”を首都モガディシオや拠点都市から追い出したものの、アルシャバブのゲリラ活動が続く状況にあります。

“20年以上内戦が続いているソマリアでは、2011年8月にアフリカ連合部隊とソマリア暫定政府軍がアルシャバブをモガディシオから一掃、昨秋にはケニア軍とソマリア政府軍が南部の主要港湾都市キスマユからもアルシャバブを放逐した。状況の好転が期待されていたが、今回の攻撃は、アルシャバブによる都市部ゲリラ戦の封じ込めの難しさを浮き彫りにするものだ。”【4月15日 毎日】

“今回の攻撃”とは、“4月14日、最高裁の建物に武装した男たちが侵入し、ソマリア軍などと激しく交戦。AP通信によると16人の死者が出た。”【同上】というテロを指しています。(犠牲者は、その後の報道では35人とも報じられています)
この攻撃とほぼ同時刻に空港近くで、トルコの援助物資を運んでいた車列が遠隔操作の自動車爆弾による攻撃を受け、通り掛かった女性2人を含む5人が死亡する事件も起きています。

今月に入っても、首都モガディシオでカタール政府関係者を狙った自爆テロが起きています。

****ソマリアでカタール代表団狙った自爆攻撃、11人死亡****
ソマリアの首都モガディシオ中心部で5日、同国を訪問中のカタール政府関係者らを乗せた車列に、国際テロ組織アルカイダ系イスラム過激派組織アルシャバブの構成員が爆弾を積んだ車で突っ込み、自爆した。
警察によれば「11人前後」が死亡。カタールの代表団4人にけがはなかった。アルシャバブはツイッター(Twitter)を通じ、「一連の攻撃の最初となる攻撃を行った」と発表した。
モガディシオでは死傷者を出す攻撃が頻発している。政権転覆を誓うアルシャバブは同市で、爆弾攻撃やゲリラ型の攻撃を数回にわたり行ってきた。【5月6日 AFP】
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砂糖・木炭取引への関与でアルシャバブは年間数十億円を得ている疑い
“ゲリラ活動”とは言っても、そうした戦闘を続けるためには武器・弾薬・生活物資の補給が必要であり、そのための資金が必要です。
いったいどこからそうした資金が流れ込んでいるのか不思議に感じていたのですが、そのひとつの答えが下記の記事です。

****過激派:国境越え暗躍…ケニア、ソマリア隣接の町****
アフリカでイスラム過激派が勢力を拡大している。過激派が国境を超えて連携し、政府の支配が弱い地域に移動して拠点を作り、地域の不安定化につながっている。
無政府状態が続いたアフリカ東部ソマリアで、拠点都市から追い出され隣国ケニアで活動を広げるイスラム過激派アルシャバブの実態を追った。

 ◇砂糖密輸で年数十億円
ソマリア国境に近いケニア北東州のガリッサ。首都ナイロビから町に近づくにつれ、治安当局の検問が増える。街中は平穏そうだが、最近のテロ続発を受け、夜間外出禁止令が敷かれている。

「もうこのぐらいに」。テロ事件とアルシャバブの関係について記者の取材を受けていた男性が突然、席を立った。男性はソマリ系の敬虔(けいけん)なイスラム教徒。若手リーダーの一人で、地域事情に詳しい。
案内人は、男性が取材を中断させた理由について「下手にアルシャバブに触れれば、彼らの『(暗殺)リスト』に男性が載ってしまうからだ」と声を潜めた。「何に触れると危険なのか」と、立ち去ろうとする男性にそう畳み掛けると、男性が言った。「彼らのネットワークさ」

ガリッサでは昨年から、街中の飲食店やホテルなどを狙った攻撃や爆弾テロが散発的に発生。地元紙によると、100人以上が死亡し、アルシャバブの犯行が疑われている。先月には、「治安関係者がよく集まる場所」(地元公務員男性)といわれる中級ホテルで複数の男が銃を乱射し、9人が死亡した。

「ケニア軍のソマリア介入への報復だろう」。ガリッサ郡のモハメド・マーリム郡長(46)はテロの理由を推測する。地域の有力国ケニアとエチオピアは、アルシャバブ掃討のため2011年秋に相次いで軍事介入し、アルシャバブは撤退を余儀なくされた。

ソマリア国内で弱体化が指摘されているが、アルシャバブの「ネットワーク」はガリッサ住民の恐怖の的だ。その資金源は砂糖の密輸とみられている。
案内人によると、砂糖を入れた袋を積載したトラック20〜30台程度が連日、秘密裏に国境を越えてソマリアからケニアに入る。

ソマリアから来る砂糖は安く、ケニアでは重宝がられるからだ。国連の調査団も、ソマリアから木炭を湾岸諸国に輸出、逆に湾岸経由で砂糖を輸入し、この砂糖をケニアに持ち込む裏ビジネスにアルシャバブが関与していると指摘する。

地元報道などを総合すると、砂糖・木炭取引への関与でアルシャバブは年間数十億円を得ている疑いがある。金は武器購入のほか、非ソマリ系も含めた若者らを戦闘員や協力者にスカウトする際に使われると考えられる。

先月、複数の治安当局者がアルシャバブの砂糖密輸に関わった疑いなどで職務停止処分を受けた。マーリム郡長は「反政府組織の資金源をつぶす」と意欲的だが、当局側にも浸透するネットワークの取り締まりは簡単ではなさそうだ。

さらに、民族と宗教も複雑に絡む。ガリッサにある約30カ所のキリスト教会のうち4教会が襲撃され、礼拝中に14人が死亡するテロ攻撃も起きている。
多数派のソマリ系住民はイスラム教徒であるのに対し、教会の信者は非ソマリ系住民。教会信者の間には「アルシャバブの名前を利用して、地元の人間(ソマリ系)がキリスト教徒を追い出そうとしているのではないか」との疑念も渦巻く。(後略)【5月17日 毎日】
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“砂糖を入れた袋を積載したトラック20〜30台程度が連日、秘密裏に国境を越えてソマリアからケニアに入る”というのは、奇妙な話です。
人が荷物を担いで山越えするというのならともかく、トラックが通れるような道を、荷を満載したトラックが連日20〜30台も“秘密裏”に行き来するなどありえません。

合法経済活動として堂々と行われているか、治安当局と内通した違法活動として行われているかのどちらかでしょう。
ケニア治安当局にその意思があれば、簡単に潰せるように思えるのですが・・・。

26万人が餓死 半数は5歳未満の幼児
こうして得られた資金で内戦が続く結果どうなるのか・・・というのが、次の記事です。

****ソマリア飢饉、2年で約26万人が死亡 半数は幼児****
国連食糧農業機関(FAO)と飢餓早期警報システムネットワーク(FEWS NET)は2日、北アフリカのソマリアで2010~12年に約26万人が飢餓のため死亡したとの報告書を発表した。半数は5歳未満の幼児だという。

2011年にソマリアを襲った干ばつによって起きた飢饉の被害について、科学的手法に基づく統計が出されたのは今回が初。報告書によると「2010年10月~12年4月に、飢饉と食料不足のため約25万8000人が命を落とし、このうち13万3000人が5歳未満の幼児だった」という。

飢饉は2011年7月にソマリア南部のバクールなどで宣言され、すぐに他の地域にも広がっていったが、フィリッペ・ラッツァリーニ国連ソマリア人道問題調整官は、「飢饉宣言の前にもっと援助するべきだったことが、今回の報告書で確認できた。干ばつが起きていることは2010年には既に警告されていたのに、早期の対応が為されなかった」と声明で説明した。

2011年に北アフリカの「アフリカの角(Horn of Africa)」と呼ばれる一帯を襲った干ばつでは、1300万人が被災した。中でも被害が大きかったのがソマリアだ。20年にわたって内戦に揺れるソマリアは、世界でも最も援助を必要とする地域の1つだが、援助団体にとっては世界有数の危険地帯でもある。【5月2日 AFP】
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“干ばつによって起きた飢饉”とありますが、25万8000人もの人々を餓死にまで追いやった原因は干ばつではなく、内戦による無政府状態で干ばつ被害に対する予防・救済策が何もとられなかったことでしょう。
更に、以前にも何回かとりあげたように、国際支援団体が支配地域に入ることをアルシャバブが拒否したことも被害を大きくしています。(結果的には、この無責任な姿勢によって人心を失ったことが、勢力が弱体化する原因ともなりましたが)

個人の生命など一顧だにされない社会が今も世界各地に存在するという、なんともやりきれない現実です。
もっと徹底した国際介入で治安を確立すべきではないか・・・という思いも抱きますが、いったいどの国が犠牲を払って介入するのか?介入した結果アフガニスタンのように泥沼化する事例だってあるし・・・と考えると、よくわからなくなります。
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ソマリア  南部拠点都市からイスラム過激派撤退 ソマリア海賊は各国警備で衰退

2012-09-30 22:20:01 | ソマリア

(9月22日 首都モガディシオの北80kmの地点で、アフリカ連合(AU)ソマリア平和維持部隊(AMISOM)に投降する200名以上のアルシャバブ兵士 AMISOMによれば、多くのアルシャバブ兵士から投降の接触があるそうです。“flickr”より By AU/UN IST http://www.flickr.com/photos/au_unistphotostream/8019356109/

新大統領選出 2日後には自爆テロの標的に
21年にも及ぶ内戦で実質的無政府状態が続き、イスラム過激派と海賊の温床ともなっていた東アフリカ・ソマリアで、「暫定政府」統治が終了し、正式政府発足に向けて動き出したことは、8月20日ブログ「ソマリア 暫定政府が終了し、正式政府発足へ 議員・新大統領選出には遅れが」(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20120820)で取り上げたところです。

その後、9月10日には、アハメド暫定大統領を破ってモハムド新大統領が選出されました。
学者出身で“政治手腕は未知数”とのことです。

****ソマリア:モハムド氏を大統領に選出****
内戦が20年以上続き、全土を支配する中央政府が無い状態のアフリカ東部ソマリアで10日、国会議員の投票による大統領選出投票が行われ、学者出身のハッサン・シェイク・モハムド氏(56)が選ばれた。新政府発足で内戦終結への期待感があるが、反政府組織勢力は依然強く、楽観できない情勢だ。

04年発足の暫定政府の統治期間が8月終了したのを受けた選挙。AP通信などによると議会(定数275)の投票は、決選投票に持ち込まれモハムド氏がシェイク・シャリフ・アハメド暫定大統領を190対79で破った。

モハムド氏はソマリアの大学で工学を学び、卒業後はインドに留学。その後、国連児童基金(ユニセフ)で勤務した。11年に「平和・開発党」を創設し、議長を務めているが、政界経験は短く、政治手腕は未知数だ。

ソマリアでは、91年のバーレ政権崩壊後、軍閥などによる内戦が激化。近年では国際テロ組織アルカイダと連携するイスラム過激派アルシャバブが南部を広範囲に実効支配している。暫定政府軍が昨年8月、アルシャバブを首都モガディシオから一掃したものの、完全掃討と全土の治安回復のめどは立っていない状況だ。【9月11日 毎日】
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首都モガディシオの一部を除く広い範囲を実効支配してきたイスラム過激派・アルシャバブをモガディシオから撤退させ、エチオピア・ケニアの隣国からもアルシャバブ追討の侵攻が行われるという、軍事的状況の変化もあっての新政権発足ですが、アルシャバブは中南部を支配しており、首都モガディシオでも爆弾テロを繰り返していました。
新大統領選出の2日後には、その新大統領が自爆テロに狙われるという事件があり、先行きが案じられていました。

****ソマリア新大統領狙い自爆テロ 警備兵ら4人死亡****
アフリカ東部ソマリアの首都モガディシオで12日、2日前に新大統領に選出されたばかりのハサン・マハムード氏を狙ったと見られる自爆テロがあった。マハムード氏は無事だった。AFP通信などが伝えた。

爆発は空港近くにあるマハムード氏が滞在するホテルの門の前で起きた。ケニアの閣僚らと会合をしていたという。ホテル内の人たちにけがはなかったが、警備兵3人と自爆テロをした1人が死亡した。

ソマリアは内戦が始まった1991年以来、無政府状態が続く。新大統領を選んで21年ぶりの正式政府を発足に動き出したところだった。イスラム武装勢力シャバブが「いわゆる大統領と外交団を狙った」との声明を出し、関与を認めた。
シャバブはソマリア中南部の広い地域を実効支配しており、アフリカ連合(AU)軍が掃討作戦をしている。昨年8月にはモガディシオをシャバブ支配から奪還したが、ゲリラ的な攻撃が頻発している。【9月13日 朝日】
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アルシャバブ掃討に向けた大きな転換
ただ、ここにきてケニア軍を主力とするアフリカ連合(AU)の部隊が、イスラム過激派・アルシャバブを拠点都市・南部キスマユから撤退に追い込むということで、形勢が更に一歩進展したかのように見えます。

****キスマユから撤退=イスラム過激派、拠点都市喪失―ソマリア****
ソマリアからの報道によると、イスラム過激派アルシャバーブは29日、最後の拠点都市だった南部キスマユから撤退したことを明らかにした。
ケニア軍を主力とするアフリカ連合(AU)の部隊が28日、キスマユへの総攻撃を開始していた。AFP通信によれば、アルシャバーブのスポークスマンは「29日午前0時、軍事部門から命令が出た」と撤退を認めた。

キスマユは首都モガディシオの南約500キロにある港湾都市。支配下の都市を相次ぎ失ったアルシャバーブの「最後の要衝」だった。9月に入りキスマユ包囲網を築いたケニア軍は28日、東方の海岸に強襲揚陸作戦を敢行した。
AFP通信によると、アルシャバーブ配下のラジオ局も放送を停止した。住人の一人は同通信に対し「最後の車両が早朝、街を去った。どこへ行ったか分からない」と語った。【9月29日 時事】
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アフリカ連合(AU)ソマリア平和維持部隊(AMISOM)は、“2007年から派遣されているが、長くウガンダ軍とブルンジ軍だけで、増援を求める両国に応える国はなく、モガディシオの数区画を守りアルシャバーブの猛攻に耐えてきた。そこに昨年10月、形勢を読んだケニア軍が参戦。破竹の勢いでアルシャバーブ掃討を続けている”【9月26日 時事】とのことです。
隣国ケニアがソマリアに軍事進攻したのは、アルシャバブによるケニア国内での外国人誘拐事件などが頻発する事態に業を煮やしてのことと言われています。

なお、“キスマユを包囲するAU軍は、ケニア軍とウガンダ軍の仲間割れが伝えられており・・・”【同上】とのことで、AMISOM内部の統制にも問題があるようです。

“キスマヨの港を経由して、イエメンのアルカイダ系組織などから武器や物資が入っていたとの指摘があり、シャバブの最重要都市だった”【9月29日 朝日】“キスマヨは違法な木炭輸出や密輸を通じた活動資金が得られる重要な戦略要衝となっていた”【9月30日 CNN】ということで、南部拠点都市キスマユ攻略は、AMISOMにとってアルシャバブ掃討に向けた大きな転換となると見られています。

ただし、上記CNN報道では“AU軍に加わるケニア軍は29日、シャバブの最後の拠点の1つであるソマリア南部の港湾都市キスマヨの地域半分を制圧したと発表した。ケニア軍の報道官によると、ソマリア軍地上部隊との合同作戦は1日半続き、同市の北部を攻略した。支配地域での足場を固めた後、シャバブが残存する市南部に進攻する計画。北部の奪還作戦でシャバブに甚大な被害を与えたとしている”【9月30日 CNN】となっており、キスマユからアルシャバブが完全撤退した訳ではないように報じられています。

いずれにしても、首都モガディシオ撤退に続き、拠点都市キスマヨ撤退ということで、アルシャバブの退潮傾向は確かなようです。
この背景としては、“ソマリア中南部を支配していたアルシャバーブは、昨年になって(1)大干ばつに対応できず民心が離反した(2)リビアのカダフィ政権が崩壊し支援が途絶えた(3)米無人機の攻撃で幹部が次々暗殺された―ことから急速に弱体化。昨年8月に首都モガディシオから撤退し「拠点」と呼べる都市はキスマユだけになった”【9月26日 時事】と言われています。
“大干ばつに対応できず民心が離反”というのは、干ばつ被害の住民救済を行おうとする国際援助を外国のスパイ活動としてアルシャバブが妨害し、住民の困窮を放置したことを指しています。

【「海賊たちは破産して、避難民のように暮らしている」】
AMISOMによるアルシャバブ掃討が加速して、新政権統治エリアが拡大していけば、船舶拉致・身代金要求で世界各国の頭痛の種となってきたソマリア海賊に対する根本的対策ともなります。
もっとも、ソマリア海賊の方は、日本も含めた欧米・中国・インドなどの海賊掃討作戦が功を奏して、すでに衰退しているとの報道があります。

****借金まみれに転落したソマリア海賊「春の日は去った*****
各国掃討作戦・船舶武装強化で拉致件数急減し、借金だらけの人間へと転落 豪華別荘衰退・遊興産業も沒落
一時期、国際社会の大きな障害だったソマリア海賊たちが、最近はカード遊びやロブスター釣りで日々を過している。各国海軍の取り締まりと船舶自身武装により海賊活動が衰退して、遊興産業に派手に金がばらまかれていたガルカイヨやホビョなどソマリア中部沿岸都市の姿を変化させているとAP通信が25日、報道した。

ヨーロッパ連合海軍によると、ソマリア海賊が拉致した船舶数は2009年46隻、2010年47隻だったが、2011年には25隻にとどまった。特に2011年、ソマリア海賊たちは合計176件の船舶攻撃を敢行し、歴代最高で活発な活動を示したが、拉致の成功は25隻にとどまった。海賊の船舶攻撃の撃退に成功しているという信号だ。今年に入ってからは計5隻の船舶を拉致するのにとどまっている。5月10日、リビア船籍のMVスミルニホを捕捉して26人の船員を拉致・抑留したのが最後だ。

2008年からソマリア沿岸で海賊掃討作業を持続して遂行してきたヨーロッパ連合海軍を中心に、アメリカ、中国、インド、ロシアなどの海軍の取り締まり作戦が決定的だった。今年5月からヨーロッパ連合海軍は任務を強化して、陸上にある海賊武器と装備、燃料などを破壊した。
日本の航空自衛隊まで加勢し、ソマリア沿岸上空を飛行して海賊たちの動向を近くの船舶に伝えていたりもしている。
商船など民間船舶も隣近を巡視中の海軍艦隊と随時交信する一方で、自身の警備を強化した。武装警備兵と海賊たちが船舶に這い上がるのを防ぐ鉄條網と水大砲なども設置した。

海賊たちは船舶と武器、燃料などを用意するために借りた金を返すことができず、逃亡者の身分だ。ガルカイヨで会った海賊のアブデー・リザク・サルレは、かつてはボディーガードと下女を従えながら暮していたが、最近は借金取りを避けて、むさくるしいバラックで暮す。
海賊たちにお金を貸していた金融業者のパルドサ・モハマド・アリは「海賊たちは破産して、避難民のように暮らしており、もうこれ以上、接触しない」と述べた。
国連によると、1045人の海賊が現在21ヶ国で逮捕され司法手続きにかけられている。海上での取り締まりと気象悪化、事故などで死んだ海賊の数は統計さえ出しにくい。

この地域の遊興産業京の景気も撃沈した。海賊ブームが絶頂だった頃はお茶一杯で50セントにまで上がったが、今は5セントに過ぎない。海賊出身のモハマド・アブドー・アデンは、昔の仕事だった町内サッカーコーチに戻ったが、月給が海賊時代のひと晩の遊興費にも満たない。
一晩に1000ドルを取っていた性売買の女性たちも去った。ホビョの市長のアリ・ディユアレ・カヒニは「海賊はインフレと道徳的退廃、治安不在を生んだ主犯なので、彼らがいなければ生活と文化が改善する」と語った。

過去2ヶ月間続いたこの地域のモンスーン後の今年下半期は、ソマリア海賊の衰退が恒久的な段階に入ったのか判断する試金石になると、ヨーロッパ連合海軍側は明らかにした。【9月29日 ハンギョレ・サランバン】(http://blog.livedoor.jp/hangyoreh/archives/1667382.html
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世界最貧国のソマリアで“一晩に1000ドル”というのは、超バブルの様子が推察されますが、それも今は昔のことになったようです。

これで新政権による統治に向けてうまく進むかどうか・・・は、なかなか確信が持てません。
もともと新政権を支える勢力は多くの氏族の寄り合い所帯ですから、仮にアルシャバブを追い込んでも、今度は政権内部での勢力争いが表面化するという事態も懸念されます。
“政治手腕は未知数”のモハムド新大統領に期待します。また、国際支援も引き続き必要とされています。
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ソマリア  暫定政府が終了し、正式政府発足へ 議員・新大統領選出には遅れが

2012-08-20 23:15:24 | ソマリア

(首都モガディシオのビーチの賑わい 100万人を超える難民とは結びつかない平和的光景です。ビーチの賑わいも難民も、ともにソマリアの現実です。“flickr”より By EvolvingPrimates http://www.flickr.com/photos/78850887@N07/7059761929/

議員275人は長老の推薦で決まる
東アフリカのソマリアでは、内戦と実質的無政府状態、更には干ばつ被害のため難民が増え続け、すでに100万人を超えています。

****ソマリア難民100万人突破=10年間で3カ国目―国連****
国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)は17日、アフリカのソマリア難民がこれまでに100万人を突破したと明らかにした。深刻な干ばつや治安悪化により、隣国などに逃れる状況が依然続いている。
難民が100万人を超えたのはこの10年間でアフガニスタン、イラクに次ぎ3カ国目という。【7月17日 時事】
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ソマリアには一応、05年から「暫定政府」が存在しますが、今日20日でその統治期限が終了します。
今年2月23日にロンドンで開催されたソマリアの安定化を協議する国際会議において、暫定政府の権限の延長は行わず、全土を代表する統一政府への移行を実現することで合意しています。
これについては、“「改革へ努力しないと国際社会は手を切る」(日本政府関係者)という暫定政府への通告、との見方もある”【2月25日 朝日】とのことです。

状況は、イスラム武装組織シャバブが首都モガディシオから撤退し、アフリカ連合(AU)平和維持部隊によってモガディシオの大統領府周辺のみがかろうじて守られていた頃に比較すると、若干は改善しています。
ただ、シャバブはソマリア中南部で依然広く影響力を保っており、首都モガディシオにおいても爆弾テロが繰り返されています。
国会議員選出の選挙も行えない状況ですが、とにもかくにも、ソマリアは正式政府発足を目指すことになります。

****ソマリア、希望の一歩 内戦21年、正式政府が発足へ****
21年間にわたって内戦が続き、無政府状態のソマリアで正式政府発足に向けた動きが活発化している。20日に暫定政府の期限が切れるのを前に国会議員の選定など国の形作りが大詰めを迎えている。新政府の成否は、近海の海賊問題の解決やテロ組織の温床化阻止など世界の安全保障にも関わる。

■国会議員の選定進む
8月上旬、首都モガディシオの集会場で、氏族に分かれた血縁集団の各長老が国会議員のリストを持ち寄っていた。議員275人は長老の推薦で決まる。首都などを除き、中南部で広範囲に実効支配するイスラム武装勢力シャバブとの戦闘が続いており、全国での選挙が行えないためだ。

議員の選定規定は学歴などのほか、女性を3分の1にするとある。長老の一人バシルさん(66)は「女性の社会参加はいいことだ。厳選している」と話す。だが選定で長老とのコネや脅し、買収の横行も指摘されており、難航している。

新大統領は議員選定の後に議員の投票で選ばれる。新大統領の下で20日の正式政府発足を目指しているが、議員選定の利害対立で行程がずれ込んでいる。
大統領候補は約50人。大半が欧米などから戻った人々だという。街には大統領候補の陣営が「政治腐敗と戦う」「農漁業の振興を」などと投票を訴えて回る選挙カーの姿も見られた。

一方、新政府発足を巡り、関連会議を狙った自爆テロも発生した。12日には議員選定を取材した記者ら2人が殺害された。シャバブの犯行とみられる。
無政府状態とシャバブの存在は、アデン湾など近海での海賊の隆盛を許した。年間約1万8千隻の商船が航行する海の要所が危険にさらされている。日本の自衛隊や世界各国の海軍が広大な海上で警戒するが、海賊の拠点がある陸地での対策がほぼ手つかずできた。

北西部のソマリランドが91年に一方的に独立を宣言、北東部のプントランドも98年に自治を宣言している。プントランドは新政府に参加する意向だが、ソマリランドは難色を示し、分離する可能性もある。
暫定政府のアフメド大統領は取材に「全土の結束が必要だ。中央政府ができ、秩序を取り戻せばシャバブや海賊が存在できる場所がなくなる」と話した。

■残骸残る海、笑顔戻る
新政府誕生を前に街の雰囲気は変わりつつある。
モガディシオ郊外にあるリドビーチ。白い砂浜とエメラルドグリーンの海が広がる。週末の午前、地元の親子連れや若者ら数百人が海水浴を楽しんでいた。色とりどりの服を着た女性も目立つ。20年以上見られなかった光景だ。内戦で人々は海岸に近寄れなかった。

周辺はかつてホテルやレストランが立ち並び、ヨーロッパ人観光客であふれる国内最大の観光地だった。今、石造りの建物は破壊され、古代遺跡のような残骸をさらしている。カラフルな看板だけが面影を残す。

一帯はシャバブの根城になっていた。
シャバブは自由な服装、海水浴、魚釣りなどを禁じた。違反者は打ち首になった。近くに住む中学生アウィエスさん(20)は、漁に出た漁師が処刑されるのを見た。「恐怖の中に住んでいた。誰も海に近づこうとしなかった」という。自身も学校に行けなくなった。

漁師のアブディさん(30)は半年前に漁を再開した。「ロブスターやサワラ。海には何でもいる」と笑う。以前は常に家の中で過ごし、援助の食糧が来るのを待った。「海があるのに食べ物に困った。馬鹿げていた」

アフリカ連合(AU)軍がシャバブとの戦闘の末にこの地域を奪取したのは昨年8月。ここ数カ月で人々が戻ってきた。ただ、シャバブの脅威は消えていない。治安部隊の装甲車が警戒にあたる中、外国人の姿は皆無だ。
AU軍の掃討作戦にもかかわらず、シャバブはソマリア中南部で広く影響力を保ったままだ。街を去ってもゲリラ的に自爆テロを繰り返している。
アブディさんは、新政府に期待する。「街を再建し、外国人が来られる国にして欲しい」と話した。

■「教育は紛争防ぐ手段」
内戦にたびたび妨げられていた学校教育は一部で元に戻りつつある。
モガディシオ南部のブスタレ小中等学校は激戦で閉鎖を余儀なくされた。シャバブの撤退により昨年11月に再開にこぎ着け、約250人が学んでいる。
多くの子どもがシャバブによってかり出され、約50人は戦闘に加わったとみられる。教員のジャワヒールさん(45)は「子どもは心に傷を負っている。シャバブに言及することは避けている」と話した。

中心街にあるイムラ小中等学校は、AU軍とシャバブが激しく交戦する地域にあった。生徒のアブディさん(18)は「授業中にいきなり戦闘が始まった。通学も銃撃の間を縫うことがあった」と話す。学校がシャバブの基地として使われた時期もあった。AU軍が学校を攻撃しないと見て入り込み、学校から攻撃した。

別の学校の教員フセインさん(45)は、平和を訴える教材を持っていたところ、シャバブの戦闘員に銃を突きつけられ尋問されたことがある。「聖戦はすばらしいと教えるように言われた。人権なんて存在しなかった」と話した。

暫定政府教育省のムーサ局長は「長年、統一された教育がなかった。教育は紛争を防ぐ手段だ。無知が一番恐ろしい」という。
教員養成機関もなければ、学校も足りない。「国民の85%が読み書きができない。国際社会は戦闘だけでなく、教育にも関心を持って欲しい」と話した。【8月19日 朝日】
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モガディシオ郊外のビーチで“週末の午前、地元の親子連れや若者ら数百人が海水浴を楽しんでいた。色とりどりの服を着た女性も目立つ”・・・というのは、これまでのソマリアのイメージからすると、意外な感もありました。

以前のブログでやや懐疑的に取り上げた“(モガディシオのビーチが)「立入危険区域」から「見逃せない観光スポット」に生まれ変わった”“ソマリア政府の広報担当者アブディラマン・オマール・オスマンは楽観的だ。今のモガディシュは、イラクのバグダッドやアフガニスタンのカブールよりは安全になったし、観光客誘致のため観光大臣も任命するかもしれないという。”【6月14日 Newsweek】という“ソマリア・リゾート”も、あながち嘘ではないのかも。

正式政府発足は遅れる見通し
正式政府に向けて、8月1日には暫定憲法案が採択されましたが、会議場近くでは自爆テロも起きています。

****国連、ソマリア暫定憲法案の採択を歓迎****
パン・ギムン国連事務総長は1日声明を発表し、同日、ソマリア全国憲法制定会議で暫定憲法案が採択されたことに歓迎の意を表明すると共に、会場近くで発生した自爆テロを強く非難しました。
憲法制定会議は1日、暫定憲法案について投票を行い、圧倒的多数で承認しました。しかし、投票が始まる前、会場入り口付近で、自爆テロが2回発生し、警察官2名が負傷しています。【8月2日 China Radio Internatinal】
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結局、国会議員・新大統領の選出は、期限切れの20日には間に合いませんでした。
各氏族に分断され対立を繰り返すソマリア社会、これまでの経緯を考えると、正式政府発足まではひと山もふた山もありそうに思えます。

****ソマリア暫定統治期限が終了…政府発足は遅れる****
1991年から内戦状態が続くソマリアで20日、2004年に発足した暫定政府の統治期限が終了した。
当初の予定では、同日までに各部族によって選ばれた国会議員275人が大統領を選出することになっていたが、AP通信によると、汚職疑惑などで国会議員選出が遅れており、新大統領選出も遅れる見通しだ。

事実上の無政府状態が続くソマリアは海賊やイスラム武装勢力の一大拠点となっている。8月1日には、暫定憲法が採択されるなど正式政府発足に向けた進展もあり、国連やアフリカ連合などは「国際社会はこれまでの重要な進展を歓迎する」とする共同声明を19日に発表した。
新大統領候補としては、暫定政府のアハメド大統領やアリ首相、暫定議会のアデン議長らの名前が挙がっている。【8月20日 読売】
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“議員275人は長老の推薦で決まる”とのことですから、コネ・脅し・買収が横行するのはやむを得ないところですが、正式政府発足前からこんな状況で大丈夫だろうか・・・という不安も感じます。

武装した海外の民間警備会社の警備員が日本船籍に乗船
なお、日本はソマリア沖で行っている海賊対策を1年延長して続行しています。
****海自:海賊対策活動を1年延長****
政府は13日午前の安全保障会議と閣議で、23日に期限が切れるアフリカ東部ソマリア沖・アデン湾での海上自衛隊の海賊対策活動を1年間延長することを決定した。森本敏防衛相は記者会見で「海賊事案は昨年より減少しているが引き続き予断を許さない状況だ」と延長理由を述べた。

自衛隊の活動拠点がある隣国ジブチに各国部隊などと活動を調整する現地調整所を新設し、自衛官3人を配置。上空から警戒監視に当たるP3C哨戒機2機、民間船舶を警護する護衛艦2隻の態勢は維持する。

ソマリア沖での海賊対策活動は09年3月、自衛隊法に基づき海上警備行動として開始。同年7月からは根拠法を海賊対処法に切り替えて継続している。同法に基づく活動延長は3回目。【7月13日 毎日】
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しかし、海賊の活動範囲を自衛隊だけでカバーするのは困難なため、武装した海外の民間警備会社の警備員が日本船籍に乗船できるよう法整備を行う方向で検討がなされています。

****ソマリア沖:海賊対策に民間警備員 政府が法整備検討****
政府はアフリカ・ソマリア沖や周辺海域での海賊対策を強化するため、武装した海外の民間警備会社の警備員が日本船籍に乗船できるよう法整備を行う方向で検討に入った。

現在は海賊対処法に基づき、海上自衛隊がソマリア沖のアデン湾に護衛艦などを派遣して民間船舶を護衛している。しかし、海賊行為の発生地域がアラビア海からインド洋まで広がり、自衛隊だけでは対処できないと判断。来年の通常国会への関連法案提出を目指している。(後略)【8月14日 毎日】
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ソマリア  首都モガディシオの観光開発 消えた国産援助

2012-06-16 21:07:01 | ソマリア

(首都モガディシオ 一般庶民の“レストラン” “flickr”より By CDRD project in Somalia http://www.flickr.com/photos/somcdrd/7152445957/ )

【「アルシャバーブのテロ活動が東アフリカの安定と米国の安全保障上の利益を脅かしている」】
アフリカ東部・ソマリアでは依然として実質的無政府状態が続き、イスラム過激組織「アルシャバブ」は首都モガディシオからは撤退したものの、未だ大きな勢力を維持して広いエリアを実効支配しています。
これに対し、直接介入は避けているアメリカが、「アルシャバブ」指導者の居所情報提供に対し最高700万ドルの懸賞金を払うことを発表しています。

****ソマリア過激派司令官に懸賞金=居場所情報に最高5億円超―米*****
米国務省は7日、ソマリアのイスラム過激組織アルシャバーブの創始者アフメド・アブディ・アウ・モハメド司令官(34)の居場所特定につながる情報に懸賞金最高700万ドル(約5億5000万円)、ほか6人の幹部についてそれぞれ300万~500万ドルを提供すると発表した。

国務省がアルシャバーブ幹部を懸賞金制度の対象にするのは初めて。国務省は声明で「アルシャバーブのテロ活動が東アフリカの安定と米国の安全保障上の利益を脅かしている」と指摘した。【6月8日 時事】 
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このアメリカの懸賞金を嘲るように、「アルシャバブ」側も、オバマ大統領とクリントン国務長官の居場所に関する情報提供への報償として「ラクダ」を贈呈すると表明しています。

****米大統領の居所情報に「ラクダ10頭」 ソマリア過激派 ****
アフリカ北東部ソマリアに拠点を築く国際テロ組織アルカイダ系の「シャバブ」を名乗る武装勢力は10日までに、米国のオバマ大統領とクリントン国務長官の居場所に関する情報提供への報償として「ラクダ」を贈呈すると表明した。

イスラム過激派系のウェブサイトに載せた音声の声明で述べた。報償のラクダは、オバマ氏に関する情報提供に対し「10頭」、クリントン氏の場合は「2頭」としている。
米政府が先に、シャバブ幹部の捕そくなどにつながる重要情報の提供に対する報奨金を発表したことをあざけった対抗手段ともみられる。(後略)【6月10日 CNN】
************************

【「今のモガディシュは、イラクのバグダッドやアフガニスタンのカブールよりは安全になった」】
前述のように「アルシャバブ」は首都から撤退し、ひところに比べると暫定政府側も一息ついた状態ですが、その首都モガディシオがリゾート地として蘇りつつあるという、“ウソのような話”があります。

****天国? 地獄? 新しいソマリア・リゾート****
「世界で最も危険な都市」の一つと長年恐れられたソマリアの首都モガディシュが、イメージを一新しようとしている。インド洋の楽園として、だ。

この数カ月間にモガディシュの海岸を訪れた外国人記者たちは、モガディシュの海の美しさや活きのいいロブスターをほめちぎってきた。レストランやホテルを始めた起業家もいる。
モガディシュのある地区は、「立入危険区域」から「見逃せない観光スポット」に生まれ変わったと、この地区の新しいレストランを紹介するAP通信の記事はいう(ただし客はセキュリティ・チェックを受けなければならないし、店内には武装したボディーガードがいる)。

「そばにあるラウンジの長椅子では、海水浴に来た男性が日光浴。全身を覆う水着姿て海に飛び込むイスラム教徒の女性もいる。メニューにはアイスクリームやシーフード、水パイプなどが並び、ないのは政府に禁止されたアルコールだけだ」

アルカイダとつながりのあるイスラム過激派組織「アルシャバブ」は昨年、政府軍とアフリカ連合(AU)軍部隊の反攻でモガディシュから追放された。
数十年もの内戦の間に世界に散ったソマリア難民も帰国し始めた。隣国ケニアに避難していた外国の大使館や国連職員も同様だという。

先週末には、アメリカのアフリカ担当国務次官補ジョニー・カーソンもモガディシュを訪問した。1993年、米軍が戦闘ヘリ2機と18人の兵士を失う大失態を演じ『ブラックホーク・ダウン』という映画にもなった戦闘以来、最も位の高い政権幹部だ。

実際は、外国記者たちが興奮するほどの楽園とはまだ言えない。多くの建物は銃弾でハチの巣にされ、あるいは爆弾で瓦礫と化したままだ。自爆テロもあるし道路脇には爆弾も仕掛けられている。
3月には、閉鎖されていた国立劇場も20年ぶりに再開した。だが数週間後、アルシャバブとつながりのある民兵たちの自爆テロで8人の死者が出た。

だが、ソマリア政府の広報担当者アブディラマン・オマール・オスマンは楽観的だ。今のモガディシュは、イラクのバグダッドやアフガニスタンのカブールよりは安全になったし、観光客誘致のため観光大臣も任命するかもしれないという。【6月14日 Newsweek】
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「アルシャバブ」は首都撤退後はゲリラ戦術を実行しており、3月末の報道では、“モガディシオでは1日平均5回の爆弾テロが起きている。昨年10月には教育省の入り口で爆発があり、80人以上が死亡。今月14日も大統領府近くで多数の死傷者を出す自爆テロが起きた。戦線の拡大とともに広がった防衛線のすき間から潜入を繰り返しているようだ。”【3月25日 朝日】と報じられています。
また、4月4日には首相演説中の自爆テロにより、ソマリア五輪委員会の会長とソマリア・サッカー連盟の会長を含む4人が死亡しています。

“今のモガディシュは、イラクのバグダッドやアフガニスタンのカブールよりは安全になった”・・・・本当でしょうか?

まあ、起業家は数年先を見越して投資する必要がありますので、今後はマガディシオの治安は改善するという予測のうえでの話でしょう。実際そのように改善すれば喜ばしいことです。
4月9日ブログ「ソマリア 8月で暫定政府の権限切れ、新政府樹立をめざす 欧米企業の資源開発打診も」(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20120409)でも取り上げたように、欧米企業が、ソマリアや近海に埋蔵されている可能性がある地下資源の獲得に乗り出し始めているという動きもあります。

ただ、“国連は先月(2月)、ソマリアで飢饉の脱出を宣言した。しかし、大半の地域では、シャバブが国際機関を敵視しているため、依然として200万人に必要な食糧援助が届いていない。国内避難民と海外へ逃れた難民は計約230万人に上る。”【3月25日 朝日】という状況での“インド洋の楽園”の話には、とまどいを感じます。

自爆テロが頻発するような都市に一体誰が観光に訪れるのでしょうか?海外ジャーナリストと国内一部特権階層が対象でしょうか?
銃で守られたリゾートと、その外に暮らす食糧援助も受けられない多くの国民の対比には、めまいすら感じます。

【「どこに金が消えたのか我々も知りたい」】
ソマリア暫定政府には観光開発より重要な課題があります。
****ソマリアへの国際援助金、100億円超消える****
内戦によって20年以上無政府状態が続くソマリアで、過去2年間で主に国際援助からなる1.3億ドル(約104億円)の歳入が暫定政府の会計に計上されず、使途不明になっていることが分かった。世界銀行の調査として米メディア「ボイス・オブ・アメリカ」などが伝えた。

世銀の調査によると、2009年に8300万ドル、10年4800万ドル分の使途が分からない。暫定政府では会計システムが機能せず、透明性が欠如しているとしている。調査担当者は「援助金がしばしば暫定政府の個人に渡されていた。多くが中央銀行に預けられなかった」と指摘する。
暫定政府のアフメド大統領は記者会見で「本当に政府に対して渡された金か、国際社会に調査してもらいたい。どこに金が消えたのか我々も知りたい」と語った。【6月6日 朝日】
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ソマリアだけでなく、アフガニスタンなど内戦状態ある国々に共通した問題です。
“暫定政府の個人”に渡った国債援助金が、政権に近い“起業家”を経由して“インド洋の楽園”になる、あるいは特定勢力の武器となる・・・・といったことのないように、確実な調査を期待したいものです。
こうしたことがクリアできない限り、仮に「アルシャバブ」が撃退されても、第2、第3の「アルシャバブ」が出現するのは必定です。

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ソマリア  8月で暫定政府の権限切れ、新政府樹立をめざす 欧米企業の資源開発打診も

2012-04-09 22:22:41 | ソマリア

(昨年8月4日 首都モガディシオの暫定政府の教育省の建物入り口で起きた自動車爆弾によるテロ現場 70~80人が犠牲になったこのテロについては、イスラム武装組織アルシャバブが犯行声明を出しています。“flickr”より By Pan-African News Wire File Photos http://www.flickr.com/photos/53911892@N00/6213063195/ )

【「改革へ努力しないと国際社会は手を切る」】
実質的無政府状態が続く東アフリカのソマリア情勢については、2月24日ブログ「ソマリア 強化されるアルシャバブ包囲網 安定化に向けて国際会議」(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20120224)でも取り上げたように、ソマリアの支援を考える国際会議が2月23日、ロンドンで開かれました。

会議では、今年8月に国連安全保障理事会から与えられた権限が切れる暫定政府について、権限の延長はしないことで合意し、暫定政府を引き継ぐ新政府の設立を目指すことが決められました。
これについては、「改革へ努力しないと国際社会は手を切る」(日本政府関係者)という、成果があがっていない暫定政府への通告との見方もあるそうです。

****ソマリア、今夏に選挙目指す 支援会議、新政府設立促す****
紛争と飢餓に苦しむ東アフリカのソマリアの支援を考える国際会議が23日、ロンドンで開かれた。南部を支配するイスラム武装組織シャバブの掃討強化を確認。今夏までに選挙をし、国を統一できていない暫定政府を引き継ぐ新政府の設立を目指すことを決めた。

欧米やアラブの国々、国連機関などの55カ国・機関の代表が出席した。主催したキャメロン英首相は、シャバブを排除する軍事作戦を強化すると表明。今年8月に国連安全保障理事会から与えられた権限が切れる暫定政府については、権限の延長はしないことで合意したと述べた。

クリントン米国務長官も記者会見で「ソマリア人自身が憲法を起草し、新しい大統領を選挙で選ぶ」と強調。暫定政府のアリ首相は「できるだけ多くのソマリア人社会を巻き込んだ政府を作る」と述べた。ノルウェーなどが出資して、各地方の行政を支援する基金も作る。6月にはトルコ・イスタンブールで国際会議を開き、新政府設立を促す。

日本の山根隆治外務副大臣は、暫定政府の警察官訓練や人道支援に4500万ドル(約36億円)、国際機関の海賊対策に56万ドル(約4500万円)を新たに拠出すると表明した。

1991年に軍事政権が崩壊したソマリアでは混乱が続き、事実上無政府状態になっている。国際社会の国造り支援や紛争停止の取り組みも十分な成果はなく、今回の会議は「改革へ努力しないと国際社会は手を切る」(日本政府関係者)という暫定政府への通告、との見方もある。【2月25日 朝日】
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暫定政府側が首都周辺で掌握しているのは沿岸部の長さ約20キロ、幅約10キロの範囲にすぎない
戦況の方は、イスラム武装勢力アルシャバブが首都モガディシオから撤退し、首都・暫定政権を防衛するアフリカ連合(AU)軍が支配エリアをやや広げ、隣国のエチオピア、ケニアが侵攻してシャバブ包囲網を形成してはいますが、まだドラスティックな変化はないようです。

この状況で、「ソマリア人自身が憲法を起草し、新しい大統領を選挙で選ぶ」というのは、あまり現実味がないようにも思えます。
新政府樹立にしても、ソマリアでは多くの部族勢力の思惑・権力争いが絡み合っていますので、指導者の首のすげ替えひとつとっても容易ではなさそうです。
ただ、8月の暫定政府の権限が切れますので、国際社会の後押しで何か対策をとるのでしょう。

****治安回復作戦「アフリカ人で解決する」 ソマリア最前線****
ソマリアの暫定政府側がモガディシオ周辺で掌握しているのは沿岸部の長さ約20キロ、幅約10キロの範囲にすぎない。アフリカ連合(AU)軍に参加するウガンダ軍に同行し、装甲車でバカラ市場の北東10キロ近くの町マスラーへ向かった。戦闘の最前線だという。

■武装勢力掃討、町を確保
(中略)・・・・しかしシャバブは町を撤退後、ゲリラ戦術を敷く。モガディシオでは1日平均5回の爆弾テロが起きている。昨年10月には教育省の入り口で爆発があり、80人以上が死亡。今月14日も大統領府近くで多数の死傷者を出す自爆テロが起きた。戦線の拡大とともに広がった防衛線のすき間から潜入を繰り返しているようだ。

ケニア軍とエチオピア軍もそれぞれ南、西側から進軍しているが、解放地域で治安を守る力は圧倒的に不足している。AU軍は、現要員のほぼ倍の約1万8千人に増強されることが決まった。55の国や機関の代表が2月にロンドンに集まった国際会議でも、シャバブ掃討の軍事作戦強化が申し合わされた。

ソマリアの内戦を巡っては20年前、米軍が主導し、「希望回復作戦」と称して侵攻。だが米軍は市民をも威圧した。その反感から、撃墜された米軍ヘリの乗組員は市民に裸で引き回された。米軍は撤退し、作戦は失敗に終わった。以来、国際社会の関心は急速に薄れ、国際テロ組織の温床化と、海賊の隆盛を許した。

今、戦闘を担うのはアフリカ各国の兵士たちだ。ウガンダ軍トップのロケチ司令官は、米軍はアフリカ人の感情を理解していなかったと指摘した。「我々はソマリア人の気持ちを理解しながらやっている。国際社会の援助を受けながらも、アフリカの問題をアフリカ人が解決する初めてのケースになる」と語った。
シャバブに海賊マネーが流入している可能性にも触れ、「陸地での軍事作戦は海賊問題にも関係する。海賊は海に住んでいるわけではない」と話した。

■避難民キャンプにも流れ弾
「未曽有の人道危機」と国連が呼んだソマリアを襲った飢饉(ききん)から8カ月。モガディシオの避難民キャンプでは、干ばつの解消に伴い帰還する人々がいる半面、暫定政府側とシャバブとの戦闘激化によって故郷を追われた人々が続々と集まっている。

モガディシオ北部にあるキャンプは、今年に入り拡大を続けている。約2カ月前は何もなかった更地に数キロにわたってテント群ができた。多くは首都の北約30キロにあるアフゴエ周辺から逃げて来た人々だ。
国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)によると、今年だけで9千世帯、約5万4千人がこのキャンプに逃げてきたという。広がったキャンプは戦線近くにまで達し、流れ弾や迫撃砲が昼夜問わずテントを襲い、死傷者が相次いでいる。記者が訪れた前日にも流れ弾で1人が死亡し、7人が負傷した。

避難民たちは、テントの中を塹壕のように深く掘り、土嚢を積んで自己防衛していた。テント群は小さな防空壕(ごう)の固まりのようだ。穴だけが残る場所もあちこちにある。居住者が死亡し、テントが取り除かれたのだ。
イスマンさん(26)は深夜、寝ていたところ、流れ弾が当たり太ももを貫通した。「いくら深く掘っても落ち着いて寝てられない」
6人の子どもと暮らすラーマさん(30)は、土嚢を高さ1.5メートル以上積んだ。1カ月半前、ロバに家財道具を積み込んでキャンプに来た。街で戦闘が始まると聞き、近所の人たちと逃げてきた。「トイレも水もないが、戻るよりはましだ」

国連は先月、ソマリアで飢饉の脱出を宣言した。しかし、大半の地域では、シャバブが国際機関を敵視しているため、依然として200万人に必要な食糧援助が届いていない。国内避難民と海外へ逃れた難民は計約230万人に上る。
国連安全保障理事会が与えた暫定政府の権限は8月で切れる。ソマリアは正念場を迎えている。【3月25日 朝日】
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アルシャバブはゲリラ戦術・テロで対抗
アルシャバブ側は首都撤退後も“戦線の拡大とともに広がった防衛線のすき間から潜入を繰り返している”ということで、首都モガディシオの国立劇場で今月4日にも自爆テロがあり、ソマリア五輪委員会の会長らが殺害されています。犯行現場には暫定政府首相ら閣僚もいましたが、そちらには被害はなかったようです。

****ソマリア国立劇場で女性による自爆攻撃、五輪委トップら4人死亡****
ソマリアの首都モガディシオの国立劇場で4日、爆発物を体に縛り付けた若い女性による自爆テロが起き、ソマリア五輪委員会の会長とソマリア・サッカー連盟の会長を含む4人が死亡した。

現場に居合わせたAFP通信の記者によると、テロ発生当時、劇場ではソマリアの衛星テレビ放送ネットワークの導入1周年を祝う式典が行われており、アブディウェリ・モハメド・アリ暫定政府首相が約200人を前に演説していた。首相と閣僚7人にけがはなかった。

国際テロ組織アルカイダと関連のあるイスラム過激派組織アルシャバブが犯行声明を出した。2011年8月にモガディシオ市内の拠点を放棄したアルシャバブはゲリラ戦術に立ち戻り、モガディシオで自爆テロや手りゅう弾による攻撃を繰り返している。【4月5日 AFP】
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【「国際支援がなければ、宝の上の死人になる」、ただし「政治腐敗によって石油は呪いにもなる」】
アルシャバブ包囲網が形成されつつあるとは言え、まだ先が明確ではないなか、欧米企業が早くもソマリアの資源開発に乗り出しているそうです。
紛争があることろには、その火種となる資源がある・・・というのが一般的ですが、ソマリアにも手つかずの石油や天然ガスなどの地下資源が豊富に存在しているとか。

欧米各国も、住民保護、あるいはアルカイダ対策や海賊対策だけでソマリアを支援する訳ではないのが現実です。
「たとえそうであっても、市民の生命が助かるのであればよい。開発は自前ではできない。国際支援がなければ、宝の上の死人になる」(暫定政府の水石油鉱物省ハシ局長)というのももっともですが、「政治腐敗によって石油は呪いにもなる。我々は、国民共通利益のために利用する」(暫定政府のアリ首相)ということには、くれぐれも留意してもらいもです。
「石油の呪い」はナイジェリアなど各地で見られることです。

****ソマリア資源に熱視線 手つかずの宝、欧米が開発打診****
今夏の正式政府樹立を目指し、暫定政府とアフリカ連合(AU)軍によるイスラム武装勢力シャバブとの戦闘が激化するソマリアで、欧米が、同国や近海に埋蔵されている可能性がある地下資源の獲得に乗り出し始めた。

20年以上にわたる内戦で無政府状態が続くソマリアには、手つかずの石油や天然ガスなどの地下資源が豊富にあるとされる。暫定政府の水石油鉱物省によると、油田が近海や北部や南部にあり、天然ガスは南部の沿岸地域にあるという。

内戦前の1985~91年、欧米の大手石油会社が調査を進め、埋蔵の可能性を確認。当時の政府と権利に関する契約を交わしたという。しかし、内戦が始まり撤退した。そんな中、今年に入り、カナダ系の石油会社が北部での掘削を本格的に始めた。その後、暫定政府に欧米の各社から打診が相次いでいるという。

同省のハシ局長は資源の埋蔵量は「アフリカ屈指」という。カナダ系企業による掘削は、1998年に一方的に自治を宣言したプントランド内で行われており、暫定政府の影響が及ばない。「シャバブの存在で、首都から10キロ先にも行けない状態で、その是非は言及できない」とした上で、「シャバブが掃討された後には、話し合いの準備がある」と話した。
さらに「20年前、米国が資源確保のために軍を送ったと指摘する声もあった。たとえそうであっても、市民の生命が助かるのであればよい。開発は自前ではできない。国際支援がなければ、宝の上の死人になる」と述べた。
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■「国民利益のために利用」 暫定政府のアリ首相
ソマリア暫定政府のアリ首相が朝日新聞の単独取材に応じ、石油資源をこれからの復興資金にする方針を示した。
アリ首相は「潜在的な油田を持っているが手つかずだ。開発して国の発展に役立てるのはよいことだ。そのためにも投資に関する法律整備が必要だ」とした。

首相は2月に世界の要人が集まったロンドンでのソマリア支援の会議に出席。「ロンドンでは石油の話は誰ともしていない」と断ったものの、内戦前の欧米企業との契約は尊重されるべきだとの見方を示し、国際企業を歓迎した。一方で、アフリカ各国で石油資源を巡る紛争が絶えないことにも触れ、「政治腐敗によって石油は呪いにもなる。我々は、国民共通利益のために利用する」と話した。

石油資源の開発の前提となる、国内の安定化について、首相は「シャバブとの戦闘は確実に勝利に向かっている。勝つだけでなく解放地域を安定化させなければならない。8月までに安定化させる計画だ」とした。さらに、インド洋の海賊について「問題の根源は無政府状態と貧困だ。シャバブと海賊は互いに協力している可能性もある。全土の安定化が解決の鍵となる」とした。【4月6日 朝日】
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