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(バングラデシュの難民キャンプで暮らすミャンマーからのロヒンギャ難民
ミャンマーはその存在すら否定しており、“共同体”を目指すタイは海上に放置して死に至らしめ、インドネシアも受入れを拒否しています。
“flickr”より By Austcare - World Humanitarian Aid
http://www.flickr.com/photos/austcare/2776551201/)
【15年の“共同体”目指して】
東南アジア諸国連合(ASEAN)の首脳・閣僚会議は、開催国であるタイ国内のタクシン派・反タクシン派の政治抗争、それに伴う政権交代などで延期・変更がなされていましたが、ようやく27日から3月1日までタイ中部のリゾート地フアヒンで開催されています。
今回会議は、08年12月に加盟国の行動規範である「ASEAN憲章」が発効後、初めての会議となります。
ASEANは、15年までに欧州連合(EU)のような、政治安保、経済、社会文化の各共同体で構成される共同体創設という目標を掲げており、今回の会議では、07年に採択した経済統合への行動計画を除く政治・安保、社会・文化統合への行動計画案の採択を目指しています。
政治安保共同体の計画案には、各国が紛争の防止や解決、人権保護などで協力することが盛り込まれています。
喫緊の課題となっている経済問題に関しては、先に開いたASEANと日中韓の財務相会合で、通貨危機に陥った国に外貨を融通する枠組み「チェンマイ・イニシアチブ」の総額を1200億ドルに拡大することで合意していますが、今回の会議には日中韓の首脳が参加していないため、それ以上の対策は出せないと推測されています。
“カンボジアのフン・セン首相も「経済危機対策で(3国に)働きかけができなければ(首脳会議は)時間の無駄だ」と手厳しい”【2月27日 産経】との批判もあるようです。
【骨抜きの“人権機構案”】
また、27日に行われた外相会議では、域内の人権問題を協議する「ASEAN人権機構」の枠組み案が策定されましたが、内政不干渉を前提にした全会一致方式に留まっているため、その実効性には疑問があります。
****ASEAN:人権機構案を策定…強制力、制裁規定なく*****
東南アジア諸国連合(ASEAN)は27日、タイのフアヒンで、加盟10カ国の外相会議などを開き、域内の人権問題を協議する「ASEAN人権機構」の枠組み案を策定した。同案では、人権機構の意思決定方式にもASEANの原則である「全会一致」を維持した。このため、人権問題が指摘された当該国が抵抗すれば強制力を持たず、人権弾圧が続くミャンマーの民主化問題など具体事例に有効に対応するのは当面は困難な見通しだ。
専門部会が外相会議に提出した枠組み案では、少なくとも年2回の会合を開き、意思決定で全会一致に至らない場合は外相会議に対応を委ねる。ASEANが原則とする「内政不干渉」も維持し、加盟各国・地域の特性や文化の違いに配慮するとして、制裁規定も見送った。
ASEANは07年の首脳会議で、ミャンマーの民主化停滞に対する国際社会の批判の高まりを念頭に、人権や基本的自由の促進に関する問題を協議する人権機構の創設に合意。年内の発足を目標に機能や権限を検討しているが、機構に強い権限を持たせることにミャンマーなどが反対し、調整が難航している。【2月27日 毎日】
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全会一致、内政不干渉、制裁規定なし・・・。
確かに、制裁を課して除名・排除すれば鬱憤ばらしにはなっても事態の改善にはつながらない、基本理念が異なる国であっても排除せず、普段に圧力をかけ続けることで何らかの前向きの変化を期待する・・・それもひとつの見識ではあります。
中国のチベット問題のように、他国の人権問題への対応は難しいものがあります。
ある程度、現実的諸問題を見ながらやっていかざるを得ない面もあります。
ただ、“共同体”を称するなら、メンバーに対してもう少し強いメッセージを発することができる枠組みがあってもいいように思えます。
【行き場のないロヒンギャ難民】
こうした事情で、今回会議ではミャンマー国内の人権問題には立ち入った議論はされないようですが、ミャンマー絡みの問題として具体的に議論されたのが“ロヒンギャ難民問題”です。
ミャンマーとバングラデシュの国境付近の少数民族ロヒンギャが、周辺国に多数入国している問題で、今年に入り、船でタイに密入国しようとしたロヒンギャをタイ軍が海上に放置し、死者も出たとの疑惑が浮上しています。
また、インドネシアなどにも多くのロヒンギャが漂着しており、ASEANとして対応を迫られる問題となっています。
****ロヒンギャ問題でミャンマーを批判 ASEAN外相会議****
この日(27日)の外相会議では、ミャンマー(ビルマ)から周辺国に大量流出しているロヒンギャ族問題をASEANの地域問題として正式に位置づけることで合意。域内で解決策を探るとともに4月中旬にインドネシア・バリ島で開かれる移民問題などの国際会議で取りあげ、国際協力を求めることで一致した。
国際会議は「バリ・プロセス」と呼ばれ、不法移民や人身売買を話し合うために開催。これまでの会議には日本など約50カ国が出席しており、タイ政府高官は「域内協議と国際協力の両方から解決の糸口を探る」と話した。
ASEANが15年の創設を目指す「政治安保」「経済」「社会文化」の三つの共同体が実現すれば、難民や移民の取り扱いは必ず浮上する課題。昨年12月に発効したASEAN憲章で域内の人権促進や保護をうたっており、発効後初めての首脳会議となる今回、ASEANがロヒンギャ族問題にどう対処するかが焦点になっている。
タイ筋によると、この問題は26日夜の夕食会でタイ外相が提起。ミャンマーのニャン・ウィン外相が「国内にロヒンギャ族という少数民族は存在しない」と従来の説明を繰り返したため、数カ国から批判が出たという。議論は27日の外相会議でも続き、結局はミャンマーもバリ・プロセスなどで解決策を探ることに合意した
ロヒンギャ族をめぐっては、昨年末にミャンマーから小船で逃れてきた約千人をタイ軍が「不法移民」として保護せずに海に放置。一部はインドネシアなどに流れ着いた。同国も「経済難民」に当たるとして受け入れを拒否し、拘束したうえで対応を協議している。軍事政権に迫害されていることを理由に難民としての受け入れを周辺国に求める人権団体らが、対応の改善を求めている。【2月27日 朝日】
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ミャンマーはロヒンギャ族の存在を否定、タイは海上放置、インドネシアも受け入れ拒否・・・。
結局のところ、タイ、インドネシアの主張は難民のミャンマーへの強制送還でしょうか。
その結果、ミャンマー国内で送還されたロヒンギャ族難民がどう扱われるのか?
ミャンマーが暖かく彼等を迎え入れることはあり得ません。
“共同体”への道のりははてしなく遠いものに思われます。