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(親ロシア派が占拠するドネツク国際空港を攻撃するウクライナ軍ヘリ “flickr”より By DTN News https://www.flickr.com/photos/dtnnews/14301383891/in/photolist-ntGZuZ-nMLkbk-nM77nR-nve8mn-nMuQx8-nLzpwo-nt6Cfp-nLTxJS-ntH6JG-ntGZpD-nKQz71-nsPS1o/)
【ドネツクでは戦闘激化、空爆・政府軍ヘリ撃墜】
ウクライナ東部ではドネツクを中心にして、親ロシア派武装勢力とウクライナ政府軍の戦闘が続いています。
“暫定政権のヤレマ第1副首相は25日夜、大統領選実施に伴って停止していた東部2州での武装勢力掃討作戦を再開すると表明。これに対し、ドネツク州の親露独立派は州内でのウクライナ部隊一掃を目指し、26日午前零時から「戦闘態勢」に入ったと宣言した。”【5月26日 産経】
“ウクライナ東部のドネツク州では今も、親ロシア派が庁舎の占拠を続けている。武装勢力の多数の車両がロシア側から国境を突破して侵入する事件が相次ぎ、26日未明には、親ロシア派が交通の要所であるドネツク国際空港を制圧。軍が初めて戦闘機で空爆し、親ロシア派に50人を超えるとされる死者を出した。”【5月31日 朝日】
政府軍も、親ロシア派が使用するロシアから流入したと思われる高性能武器により、軍用ヘリが撃墜される被害を出しています。
****OSCE監視員また拘束=ヘリ撃墜、死者20人超―ウクライナ東部****
ウクライナ軍と親ロシア派武装勢力の戦闘が続く東部ルガンスク州で29日夜、欧州安保協力機構(OSCE)監視員4人が武装勢力に拘束され、30日に解放された。親ロ派幹部の話としてインタファクス通信が伝えた。4人は「欧州人」とされるが、国籍は不明。
隣接するドネツク州でも、別のエストニア、スイス、トルコ、デンマーク国籍のOSCE監視員4人が26日から親ロ派に拘束されたままだ。
親欧州連合(EU)派のポロシェンコ氏が勝利した大統領選後、ドネツクの国際空港を占拠した武装勢力への空爆や、市街地での銃撃など戦闘が激化。親ロ派は外国人など部外者の動きに過敏になっているもようだ。
29日にはドネツク州スラビャンスク郊外で軍のヘリコプターが武装勢力に撃墜された。
暫定政権のコワリ国防相は30日の記者会見で、この際の死者が20人以上に上ると述べた。一度の犠牲者としては過去最悪。また「正常な生活に戻るまで(対テロ作戦を)継続する」と主張した。【5月30日 時事】
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アメリカは、武器供与や戦闘員派遣をやめるようにロシアに要求しています。
****ウクライナ:武装勢力支援中止を…米国防長官、露外相に****
ケリー米国務長官はロシアのラブロフ外相と28日に電話協議し、ウクライナにロシア南部チェチェン共和国からの民兵を含む外国人が流入しているとの報告があるとして、ウクライナ東部で活動を続ける親ロシア派武装勢力に対する支援をやめるよう改めて要求した。サキ国務省報道官が29日の定例会見で明らかにした。
親露派は同日、ウクライナの軍用ヘリを撃墜し14人を死亡させており、カーニー米大統領報道官も「高性能武器の入手などで外部の支援を受けていることを示す」と懸念を表明した。
現地からの報道などによると、同共和国のカディロフ首長は戦闘員派遣を否定しているが、ウクライナ東部ドネツクの当局者は「戦闘で負傷したチェチェン人戦闘員が入院している」と述べている。
ウクライナ問題での対露追加制裁や、ポロシェンコ次期大統領が米国に求めているとされる軍事支援についてサキ報道官は「緊張緩和が適切な道だ」と述べ、現時点では実施に消極的な姿勢を示唆した。
カーニー報道官も、25日のウクライナ大統領選挙が「自由で公正」に行われたのは「非常に前向きの展開だ」と語り、当面はロシアの対応を見守る意向を示した。(後略)【5月30日 毎日】
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【ロシア:欧米との対話に向けた動き】
ウクライナ大統領選挙に反発する親ロシアの戦闘行為は過激化していますが、親ロシア派が頼みとするロシアには、事態収束に向けて“落としどころ”を探るような動きが見えます。
ロシアとしても、ウクライナ本土での本格的な戦闘を望んでおらず、これ以上の欧米との対立激化は国際的孤立を深め、新たな制裁措置などによって自国経済への影響が大きくなることが懸念されます。
プーチン大統領は23日、サンクトペテルブルクでの経済フォーラムで、新任大統領を正式承認するかどうかの言及は避けながらも、ウクライナ大統領選の結果を「尊重」し、新任大統領と「協力する」と語っています。
また、国境に集結させていた4万人規模の部隊も撤収を始めており、アメリカもこの動きを確認しています。
****ロシア軍3分の2撤退か ウクライナ国境****
NATO=北大西洋条約機構のラスムセン事務総長は、ウクライナの国境周辺に集結していたロシア軍について、「部隊の3分の2が撤退したようだ」と述べたうえで、これがさらなる撤退につながるかどうか、警戒を緩めない考えを強調しました。(後略)【5月31日 NHK】
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また、ウクライナとロシアの天然ガスをめぐる対立も、ガス停止という最悪事態を回避する方向での話し合いが進んでいます。
****ウクライナ情勢 ガス停止危機 滞納代金一部支払い、継続協議へ****
ロシア産天然ガスのウクライナへの供給問題をめぐり、両国と欧州連合(EU)の3者協議が30日、ベルリンで開かれ、ウクライナ側は滞納しているガス代金の一部として約7億8600万ドル(約800億円)を支払ったことを伝えた。協議は継続され、6月2日に再び協議が行われる。
両国はロシアが引き上げたガス価格や支払い方法などで対立し、露側は6月以降、ガス供給を停止するとも警告。協議では滞納分の一部を先払いした後、ガス価格を交渉するEUの提案が検討されており、大詰めを迎えている。【5月31日 産経】
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こうしたロシア側の柔軟な姿勢を受けて、欧米とロシアの“対話”の動きも出てきています。
****ロシア:NATOと対話再開…6月2日 クリミア編入以来****
北大西洋条約機構(NATO)は6月2日にロシアと対話を再開することを決めた。NATO外交筋が30日、毎日新聞に明らかにした。
双方の対話は、ウクライナ危機を受け、NATOが3月にロシアとの対話を拒絶して以来。
対話再開はロシア側が要請し、NATO理事会が今週、承認した。
25日のウクライナ大統領選でポロシェンコ氏が当選し、ウクライナ国境沿いからロシア軍の大半が撤収したことから、NATO側がロシアの呼びかけに乗った形だ。2日、ブリュッセルのNATO本部で対話の枠組み「NATOロシア理事会」を大使級で開く。
6月には主要7カ国(G7)首脳会議(4〜5日)、ノルマンディー上陸作戦70周年記念式典(6日)など、オバマ米大統領やプーチン露大統領ら関係国首脳が参加する行事が続く。ロシア側はこれを前に理事会で軍事的な緊張をほぐし、西側諸国との関係修復を模索する狙いがあるようだ。
NATO外交筋は「対話再開はあくまで信頼回復への第一歩で、ロシアが緊張緩和に向け、具体的行動を取る必要がある」と話し、一気に緊張緩和するわけではないとの見通しを示した。
NATOはクリミア編入に対するロシアへの報復措置として、大使を除く事務レベルの協議を中止。テロ・海賊対策など実務協力も中止した。【5月31日 毎日】
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【ウクライナ・ポロシェンコ新大統領も対話に向けた姿勢】
親ロシア派との戦闘を継続しているウクライナ・ポロシェンコ新大統領も、ロシアとの対話姿勢を見せています。
****ロシアとの対話姿勢示す ウクライナの新大統領****
ウクライナのポロシェンコ新大統領にとって、ロシアとどうつきあっていくのかは最大のテーマだ。
当選直後の会見で「困難な関係の隣人だが、国の平和も秩序も、ロシアとの対話無しにはあり得ない」と発言。ロシアとまずは対話しようという姿勢を示した。(中略)
天然ガスの問題に加えて、国内の治安を取り戻すうえでも、ロシアとの関係正常化は欠かせない。
一方で、親欧州派の代表格であるポロシェンコ氏の基本路線は、欧州との関係強化。今後、欧州連合(EU)への加入に向けた努力を強めることは確実だ。
ただ、ロシアが最も警戒する北大西洋条約機構(NATO)への加盟については「まず、NATOに対するソ連時代からの先入観を取り除くことが先だ」と語り、微妙なバランスを保とうとしている。
ポロシェンコ氏とプーチン大統領は6月6日、フランスでのノルマンディー上陸作戦70周年式典にともに出席する。世界が注目する初顔合わせになる。【5月31日 朝日】
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ウクライナ暫定政権による親ロシア派に向けた交渉の提案も報じられてはいます。ただ、これについては、親ロシア派側は政府軍の撤収を条件としていますので、実現はすぐには困難なようにも見えます。
****ウクライナ:政権、親露派に交渉提案?****
ウクライナ東部ルガンスク州で「ルガンスク人民共和国」を名乗る親ロシア派勢力の指導者ボロトフ氏は30日、ウクライナ暫定政権の内務省側から「(正常化へ向けた)交渉開始」の提案を受けたと明らかにした。インタファクス通信が伝えた。
◇大統領選経て軟化か
暫定政権側は、東部の親露派勢力を「テロリスト」と呼び、交渉を拒否してきた。ポロシェンコ次期大統領の就任が決まったことで、混乱収拾を目指して暫定政権側が態度を軟化させた可能性がある。
ボロトフ氏は「(暫定政権側が)全ての軍事行動を無条件で停止し、軍・治安部隊を撤収させた後にのみ、我々は交渉に応じる用意がある」と述べた。
暫定政権のコワリ国防相は同日、東部ドネツク州で続けている親露派武装集団の制圧作戦について、「情勢が完全に収束するまで継続する」と述べた。
暫定政権側は、同じ東部のルガンスク州については交渉を呼び掛けているが、親露派武装集団の活動が最も激しいドネツク州について交渉を検討しているかどうかは不明だ。(後略)【5月31日 産経】
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【親ロシア派内部の抗争、背後にロシア?】
こうした収束を模索する動きが出ているなかで、親ロシアは内部の興味深い動きも報じられています。
****ウクライナ:親露派間で対立か 武装集団が活動家拘束****
ウクライナ東部ドネツク州で軍・治安部隊と戦闘を続ける親ロシア派勢力内で、内紛とも見られる動きが起きている。
29日には州都ドネツクで親露派が拠点とする州庁舎を武装集団が包囲し「略奪の容疑」などで十数人を拘束。27日には北部スラビャンスクで親露派の指揮官2人が同様の罪で射殺されており、内部で深刻な対立に発展する可能性もある。
攻勢をかけた部隊には、ロシア南部・チェチェン共和国など外部の民兵が数多く加わり、ロシア政府の一定の影響下にあるとみられている。同共和国はかつて独立派がロシアと戦ったが制圧され、現在のカディロフ首長はプーチン大統領に近い。
現地からの報道によると29日午後、ドネツク中心部の州庁舎前に親露派武装集団の一つ「ボストーク(東)」の部隊がトラックと装甲車で現れた。
部隊は庁舎内の親露派活動家に退去を求め、一部を拘束。部隊のリーダーはインタファクス通信に「彼らは裁判にかけられる。(戦闘のあった)空港近くの大型スーパーなどで略奪行為をしたからだ」と述べた。
この部隊はさらに、庁舎周囲のバリケードの撤去も開始。リーダーは「我々は秩序を与えたい」と言う一方で「(親露派が名乗る)ドネツク人民共和国政府を代えるつもりはない」と、権力奪取の意図は否定した。
ボストークなどを統括する親露派指導者のプシリン氏は「犯罪者の粛清を行った」と表明した。
また、ロシアのペスコフ大統領報道官は29日、ラジオ番組でウクライナ東部情勢に触れ「ロシアとして住民への人道支援はする」と表明。
しかし、親露派活動家が強く求めている軍事支援には「コメントできない。軍に尋ねる必要がある」と口を濁した。プーチン政権として、親露派と距離を置く姿勢を改めて示した。【5月30日 毎日】
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親ロシア派はロシアのコントロールが及ばなくなっていることも報じられているなかで、ロシアの影響下にある部隊がコントロールを回復するための“粛清”に動き出した・・・ということでしょうか?よくわかりません。
“ロシア南部・チェチェン共和国などから実戦経験豊富な民兵が親露派に加わり、抗戦態勢を強化している模様だ”【5月30日 毎日】との報道もあります。
国際的に“落としどころ”を探す動きが顕在化すれば、はしごを外された形にもなる一部親ロシア派が更に暴走・過激化する事態もありえます。
今後に向けては、6月2日期限の天然ガス交渉の行方と、6月6日のフランスでのノルマンディー上陸作戦70周年式典が注目されます。
****プーチン氏と会談の意向=仏で来月実現も―ウクライナ新大統領****
ウクライナ大統領選で勝利した親欧州連合(EU)派のポロシェンコ氏は、親ロシア派が武装蜂起した東部の緊張緩和のため、ロシアのプーチン大統領と会談する意向を表明した。28日のドイツ紙ビルトとのインタビューで語った。
ポロシェンコ氏は、フランスのオランド大統領から6月6日の第2次世界大戦のノルマンディー上陸作戦70周年記念式典に招待された。式典にはプーチン大統領も出席する予定で、フランスで「首脳会談」が実現する可能性もある。【5月29日 時事】
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