孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

韓国  婚外子が増加傾向にあるなかで、ある芸能人の婚外子が話題に

2024-11-29 23:20:03 | 人口問題

(日本の婚外子割合の推移【内閣府HP 男女共同参画局】 韓国は4.7% フランス61.0%、スウェーデン54.5%、イギリス48.2%、アメリカ40.0%、イタ リア35.4%、ドイツ33.3%)

【世界屈指の超少子化国である韓国で出生率増加の予測】
少子化は日本の抱える最も重要な問題のひとつですが、同じように少子化が進む中国など東アジア地域において日本以上に深刻で、世界的にも突出した状態にあり「国が消滅する」とも言われているのが韓国。

その韓国で出生率が9年ぶりに上昇する見込みだとか。

****出生数70万人割れの危機に直面する日本と対照的…韓国の出生率が9年ぶりに回復か、“明るい予測”続く****
世界屈指の超少子化国家として知られる韓国の出生率が、9年ぶりに回復する見通しが立っている。

11月26日、韓国の国会予算政策処に続き、少子高齢社会委員会でも2024年の合計出生率が昨年より上昇し、0.74に達すると予想されている。もし実現すれば、合計出生率は2015年以来、初めて上昇することになる。

少子高齢社会委員会のこのような予測は、チュ・ヒョンファン副委員長が前日、韓国経済人協会主催の「K-ESGアライアンス第10回会議」で行った講演を通じて伝えられた。

チュ副委員長は講演で、「最近の結婚および出生児数の増加傾向が維持されるなら、今年の合計出生率は昨年の0.72より高い、0.74前後になると予想されている」と述べた。統計庁が将来人口推計を通じて予測した2024年の出生率予測値0.68や、2023年の出生率0.72を上回る数字だ。

韓国の出生率は2015年の1.24以降、継続して下落してきた。
それでも韓国統計庁が10月23日に発表した「2024年8月人口動向」によれば、8月の全国出生数は2万98人で、前年同月比1124人(5.9%)増加した。1516人増加した7月に続き、2カ月連続で前年同月比1000人以上の増加となった。

1〜8月の累計では、2023年15万8609人、2024年15万8011人とわずかに減少しているものの、前年超えが現実的とされている。

先立って、国会予算政策処も10月に発表した報告書で「今年の合計出生率は2015年以来、9年ぶりに反騰が予想される」とし、「最近の出産の遅れの回復などの影響により、今年は前年度(0.72)より0.2増加し、2028年まで緩やかに増加すると見込まれる」と、少子高齢社会委員会と同じ予測を示した。

韓国の出生率が、ついに底を打ったという見方が多い。

一方で日本の出生数は、2016年に100万人を割ると、2019年に90万人割れ、2022年に80万人を割った。2024年上半期(1〜6月)の出生数は、前年同期比6.3%減の32万9998人にとどまった。単純計算で今年の出生数が70万人を割る可能性があり、歯止めがかからない状況だ。

それでも日本の出生率は1.20(2023年)で、韓国に比べれば高い。超少子化国家である韓国が予測通り、9年ぶりに出世率を上げることができるのか注目したい。【11月26日 サーチコリア】
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【価値観の変化が根底にある以上、従来の出産・子育て支援策出は十分な効果が期待できない】
韓国にしろ、日本にしろ、少子化の背景には「結婚しなくてもかまわない」といった結婚に関する意識、出産に伴う育児に要する費用といった経済的側面がありますが、特に前者の価値観の変化がある以上、従来の出産・子育て支援策出は十分な効果が期待できないとも言えます。

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一般的に出生率の低下は、経済発展と女性の社会進出拡大の結果と認識されている。つまり、先進国は出生率が低く、発展途上国は出生率が高いとされる。

しかし上記のように少子化傾向は、所得水準に関係なく世界的に見られる。貧困国であるネパールやミャンマーでも2.0以下の出生率を記録しているのが代表例だ。

社会・経済システムの再編が必要
世界的に共通する現象の一つは「結婚回避」だ。自分が重要で、自分の人生を生きることが重要であるため、出産や育児に時間と費用をかけたくないのだ。

「結婚-出産-育児」は当然とされてきたが、今や女性にとって「人生を台無しにするリスク」として考えられており、それを避けることが賢明とされている。

周囲に子供を産まず、結婚をしない人が増え、社会的な学習の機会が減少していることも原因とされる。子供が生まれ育つ姿を目にする機会が減るほど、結婚と出産はさらに急速に減少していく。

結局のところ、少子化は多少の時間差こそあれ、世界的に共通する現象であり、これまでに知られる政策的な手段ではそれを阻止できないことが明らかになりつつある。【11月11日 「世界的な“人口減少”の時代へ…「少子化」は韓国だけの問題だろうか」 サーチコリア】
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【出生率に大きく影響する婚外子と外国人】
そうしたなかで、、婚外子・外国人という別の視点からの指摘も。

****出生率を考える視点****
2021年の出生数は過去最少の81万人、合計特殊出生率も6年連続で低下し1.30になった。コロナ禍での出会いの機会の減少や産み控えによる下振れなどもあり、少子化の趨勢が加速されているようだ。 

国が掲げる目標は「希望出生率1.80」の実現。若い世代における結婚や子どもの数に関する希望がかなうとした場合に想定される出生率である。

欧米主要国の合計特殊出生率(2020年)は、フランス1.82、スウェーデン1.66、アメリカ1.64、イギリス1.58、ドイツ1.53、イタリア1.24である。日本よりも上位の国の平均は1.64である。

また、わが国の場合、女性の未婚率が約2割だから、結婚する約8割の女性が平均2人の子どもを産んだとして1.6程度になる。このあたりが現実的な政策目標になるのかもしれない。 

これらの欧米諸国と日本の比較に当たっては、留意すべきことが二つあるように思う。

一つは外国人の割合。 わが国の約2%に対して、上記の欧米諸国では1割前後が外国人であり、外国人が出生率の改善に寄与しているといわれている。

ちなみに、合計特殊出生率が最上位のフランスでは、「出生数が回復期にあった2000年以降に注目しても、両親がフランス人というカップルから生まれた子は一貫して減少しており、フランス人と外国人のカップル、もしくは外国人同士のカップルから生まれた子が出生率を押し上げた」という(藤波匠『子供が消えゆく国』日経BP、2020年、8頁)。

もう一つは出生に占める婚外子の割合。わが国の2.4%(2020年)に対して、欧米主要国の比率は高く、フランス61.0%、スウェーデン54.5%、イギリス48.2%、アメリカ40.0%、イタ リア35.4%、ドイツ33.3%である(イギリス2017年、その他は2019年)。 

わが国は、外国人労働者は受け入れつつも、公式には永住する外国人としての移民は受け入れていない。また、結婚しなければ子どもを産みにくい国でもある。

移民を積極的に受け入れるかどうか、ひとり親と子に優しい国になれるかどうかは、出生数を増やすという人口政策もからみ、大きな論点になるように思う。 

ただし、社会保障政策としての子育て支援と出生数を増やす人口政策とは区別して考える必要があろう。

合計 特殊出生率が4~5であった戦前と違って、子どもは授かるものではなく、作るものになった。しかも女性の人権の重要な一つとして「リプロダクティブ・ヘルス/ライツ」(性と生殖に関する健康と権利)が謳われ、子どもを産むかどうかの選択について、女性が主導権を持つようになった。

また、「少なく産んでよく育てる」ことを望み、教育等にお金をかけるようになっていることからすれば、子育て支援の成果のかなりの部分は、子どもを増やすことより、よく育てることに向かう可能性があることも承知しておくべきだろう。 

出生数の減少が「有事」として声高に叫ばれるなかで、未婚の人や子どもを持たない人が疎外感を抱き、生きづらくなる風潮が生まれることは避けたい。同調圧力の強い国であるだけに懸念されることだ。 【2022年7月 山崎泰彦氏 年金広報】
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【韓国ではある芸能人の婚外子が政治的にも関心事に】
婚外子(法律上の婚姻関係にない男女の間に生まれた子どものことで、法律上は「非嫡出子」と表現されます)が西欧の30~60%に対し、日本は2%程度と非常に少ないことが特徴ですが、その点はお隣韓国も同じ。儒教文化のせいでしょうか。

その韓国ではある芸能人の婚外“極秘出産”の話題が。

****未婚のイケメン俳優が美人モデルを“極秘出産”させていた…韓国で変化が著しい「婚外子」のイメージ****
人気俳優チョン・ウソン(51)が未婚のモデルを出産させた“極秘出産”が話題になっているなかで、韓国で「婚外子」に注目が集まっている。

というのも、韓国では結婚していない男女の間に生まれた婚外子が3年連続で増えているからだ。
参考になるのは、韓国統計庁が8月に発表した「2023年出生統計」だ。それによると、2023年に生まれた婚外子は、1万900人を記録した。1981年の統計以来、過去最多となっている。

韓国における婚外子の出生数は、2013年には9300人だったが、2020年に6900人まで減少した。しかし以降は2021年7700人、2022年9800人と増加に転じ、昨年は1万人を超えた。

婚外子の出生数は出生数全体(23万人)の4.7%で、経済協力開発機構(OECD)加盟国の平均婚外子の出生率である41.5%と比較すると低い水準だが、着実に上昇している状況だ。

韓国で婚外子が増加傾向にあるのは、婚姻届を提出しないまま一緒に暮らす「事実婚」が増えたからと考えられている。

また、若者世代で「子供を出産するうえで結婚は必須ではない」という意識が広がっている影響も少なくないだろう。

韓国統計庁の発表した「2024年社会調査」によると、20〜29歳において「結婚しなくても子供を持つことはできる」と答えた割合が42.8%に上った。これは10年前の2014年(30.3%)に比べて、12.5%ポイントも増加した数字だ。

特に「全面的に肯定する」という回答者が10年前の5.7%から今回14.2%と3倍近く増えた。また、「強く否定する」回答も34.9%から22.2%に減少しており、20代において「結婚しなくても子供を持つことはできる」と考える人が増えていることになる。

婚外子を見る視線も変化したと考えられる。例えば、韓国芸能界で活動する日本出身のタレント、藤田小百合は、結婚せずに精子の提供を受けて息子を出産した。彼女は一部から「正しい家族観に悪影響を与える」と指摘されたりもしたが、応援の声のほうが多く、現在も各種バラエティ番組で活躍している。

そのため婚外子が発覚したチョン・ウソンも驚きを与えることはあっても、それ自体では大きな批判を浴びる可能性は少ないだろう。「養育方式を相談中」でありながら、別の恋人がいるなどの疑惑が絡めば話は別だが。【11月26日 サーチコリア】
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チョン・ウソンの婚外の“極秘出産”は政治的にも波紋を呼んでいます。

****結婚せずに“極秘出産”していた韓国俳優とモデル、「婚外子」の議論が芸能界を越え韓国政界でも話題に***
俳優チョン・ウソンの「婚外子出産」が韓国芸能界を越え、政界でも話題となっている。
大統領室が「非婚出産児」に対する制度的支援を強化すると発表したなかで、一部では「婚外子出産」を非難する社会的な雰囲気が誤りであるとの指摘も出ている。

大統領室の高位関係者は11月28日、記者たちとの会見で、非婚出産に対する社会的認識改善の方策に関する質問に対し、「社会的差別や様々な制度ではカバーできない部分がある」とし、「すべての生命が差別なく健やかに、幸せに成長できるよう、どのような支援が可能か今後さらに検討する必要がある部分だ」と述べた。

この関係者はさらに、「ひとり親家庭や様々な事情で生まれた子供一人ひとりを国家が積極的に支援し、保護するという姿勢には一貫した政府哲学がある。こうした哲学を実践するために、もし見落としがあれば補完していく」と語った。

また、「現在、児童手当、親給付、育児休暇などの育児支援政策は子供を基準にしており、ほとんどの支援政策は親の婚姻状況とは無関係に実施されている」と補足した。

「非難の対象になるのか」
国会議員としては、共に民主党のイ・ソヨン議員が「チョン・ウソンの婚外子」議論について見解を明らかにした。

イ議員は11月26日、自身のフェイスブックを通じて「子供を産んだ男女が結婚せず、別々に暮らすことが非難の対象になるのか」と反問し、結婚しなければ「正常な家族」にならないわけではないと主張した。(中略)

イ議員は自身の個人的な経験にも触れた。彼女は「皆さんが生まれた子供のことを心配して、ひと言ずつおっしゃっているようだが、『子供のために親が婚姻関係を維持すべき』という考えは『偏見である可能性がある』と思う」と述べ、「私は幼い頃に両親が離婚し、養育の責任どころか父親の顔も覚えずに育った。愛し合っていない両親が離婚せずに暮らしていたならば、はたして私がより幸せだっただろうか。それは他人が簡単に語れる領域ではない」と付け加えた。

さらに「(中略)私たちの人生はその姿がそれぞれ異なる。平凡で似通った基準があるように見えても、実際にはすべて異なる。そうした『違い』が何気なく尊重される社会がより良い社会なのではないか」と強調した。

ただし、政治界の一部では「婚外子出産」が「道徳と倫理の領域」であるとの意見も出されている。

11月27日(現地時間)、イギリスの公共放送BBCは、与党・国民の力所属のある議員がチョン・ウソンの婚外出産の決定を「我々の社会の道徳と伝統では想像すらできないことだ。どれだけ時代が変わっても、韓国の伝統と大衆の情緒は正しく維持されるべきだ」と批判したと報じた。

BBCは「韓国は高圧的なエンターテインメント産業で悪名高い。韓国の芸能人は大衆から過度に高い社会的基準を要求され、しばしば極度の監視に晒されている」とし、「こうした環境の中でチョン・ウソンの今回の発表は、個人的選択と社会的期待が衝突する韓国社会の現状を示している」と記事を締めくくった。(後略)【11月26日 サーチコリア】
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大統領室は「非婚出産児」(婚外子)に対する制度的支援を強化する方針ですが、保守系与党「国民の力」には“韓国の伝統と大衆の情緒は正しく維持されるべき”との声もあるようです。

【2023年の対前年比で、韓国はOECD内でイギリスに次いで高い移民増加率 外国人の年金受給などで不満も】
外国人・・・・移民について言えば、移民者数の前年からの増加率では、OECD加盟国のなかで韓国はイギリスに次いで高い数字となっています。 それにともなって増加する移民への批判も。

****「分別して受け入れろ」日本は前年比7.3%増、“移民者”数の増加率の高さで韓国が世界2位…不満の声も****
先進国への合法的な移民者数が過去最多となる650万人を記録した。
移民者数の増加率が最も高かったのはイギリスで、韓国が2位となっている。

経済協力開発機構(OECD)が最近発表した報告によると、2023年にOECD加盟38カ国に永住権を得て移住した人は650万人に上り、過去最高を記録。2022年の移民数600万人という従来の最高記録をわずか1年で約10%も上回った。

最も多くの移民を受け入れた国はアメリカで、移民者数は118万9800人に達した。前年(104万8700人)に比べ13.4%増加しており、この数はOECD加盟の欧州諸国全体での移民申請件数を上回っている。

興味深いのは、移民者数の前年からの増加率だ。1位は74万6900人を受け入れたイギリスで、前年(48万8400人)から52.9%もの増加を見せた。移民者が最も急増した国といえる。

そのイギリスに次いで、高い増加率を見せたのが韓国だ。2022年に5万7800人だった韓国への移民者数は、2023年は8万7100人に達し、50.9%増加した。

韓国に次ぐ3位はオーストリア(39.7%)となっており、以下はカナダ(7.8%)、日本(7.3%)、ドイツ(3.5%)、フランス(1.1%)の順だった。

先進国への合法的な移民者数が過去最多となったことについて、OECDの国際移住部門長であるジャン・クリストフ・デュモン氏は「移民増加の傾向には、新型コロナ後の力強い経済回復に伴う労働力不足や、人口構造の変化(生産年齢人口の減少)など、様々な要因が反映されている」と述べた。

問題は、移民者増加に反対する世論が各国で少なくないことだ。実際にアメリカでは、不法移民の取り締まりや、アメリカにいる数百万の不法移民を追放することを公約に掲げたドナルド・トランプ元大統領が次期大統領に当選した。

入国規定を強化する国もある。イギリスやカナダ、オーストラリアは、就労関連の移民を制限する措置を導入しており、特にカナダは年間の永住権発行数を大幅に縮小する政策を発表した。

韓国でも移民者急増について懸念の声が多く聞かれる。オンライン上では「移民をなんでも受け入れるのではなく、よく分別して受け入れてほしい」「きちんと義務を果たさず、フリーライドする移民が増えても…」「韓国に住んでいる人は住みたくないといい、世界からは住みたいとやってくる。不思議だ」「韓国の移民者はほとんどが中国人だろう」「韓国の医療保険と福祉が目当て」といった意見が見られた。

今後も韓国への移民者が増え続けるのか、注目が集まる。【11月18日 サーチコリア】
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外国人(最も多いのは中国人)の年金受給者が多いことへの不満も。
“日本人は5年間で2倍に…韓国で外国人の年金受給者が1万人超え、不満の声も「なぜ血税を。国が滅ぶ」”【10月21日 サーチコリア】

上記記事で、“日本人が2倍に”とありますが、絶対数が210人から426人と、中国人・アメリカ人に比べると文字通り“桁違い”に少ないためでもあります。
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少子化  子育て支援策の手本とされてきたフィンランドで進む少子化が示す問題

2024-09-22 23:00:52 | 人口問題

(【2月20日 荒川和久氏 YAHOO!ニュース】)

【子育て支援策の手本とされてきたフィンランドで進む少子化】
今更ではありますが、日本が抱える最大の課題は少子化・人口減少でしょう。

日本の少子化対策の手本とされていたのが北欧フィンランド。2010年頃、日本の合計特殊出生率が1.3~1.4だったのに対し、フィンランドは1.8~1.9の高い数値を示していました。

しかし、その後フィンランドの出生率が急減し、近年では1.26と日本と同レベルとなっています。

****子育てしやすい国、フィンランドで出生率の低下? 要因は「将来への不安」「価値観の変化」 “少子化”どう向き合うか****
「子育てがしやすい国」として知られる、フィンランド。子どもを迎える家族に国から贈られる育児用品などが詰まった「育児パッケージ」や、保健師や助産師が出産前から出産後まで切れ目のない支援を行う「ネウボラ」など、日本の一部自治体で取り入れられている制度も少なくない。

しかし、近年出生率の低下が続いている。北欧各国の出生率は、2010年ごろまで高い水準を維持していたが、近年は各国で低下傾向に。特にフィンランドは1.26と、日本に近い水準にまで低下している。

主な原因について、東洋大学の藪長千乃(やぶなが ちの)教授は「2008年の金融危機に一つは原因があり、経済状況が出生率に影響を与えている部分は否めないだろうと言われている」と説明。

別の要因として考えられているのが「価値観の変化」だといい、「研究の中で、子どもを持つことに対する“新しい文化”が生まれているのではないかと指摘されている。子どもを持つことを絶対ではないのか、子どもを持たないことを肯定する文化が生まれている」と述べた。

必ずしも自分が産んだ子どもでなくてもいいという考え方も広まっており、国際養子縁組で子どもを迎えるカップルもよく見られるという。

出生率低下の改善策はあるのか。藪長教授は「出生率を上げるために何かを変えていくことは、個人の生き方やライフスタイルに政府が介入することになってしまうので、それはできるだけ避ける。個人の意思選択、これが最大限に尊重される社会ではないか」と答えた。

一方で、自ら子どもを持ちたい人を支援するため、育休制度の改正などが進められている。個人の選択を最大限に尊重しながら出生率の低下に対応する難しいかじ取りを迫られているフィンランド。

藪長教授は「出生率を無理に上げることが適切ではないのであれば、人材を他に確保しようと高齢者、特に前期の高齢者たちの能力や労働力として活用する。アクティブエイジング(活動的な高齢化)や、移民を受け入れる方向に転換している」と話す。

こうしたフィンランドの現状や取り組みから、日本はどんなことが学べるのか。「日本はできることがたくさんある。おそらく一番重要なのは労働文化じゃないか。無理なく定時に帰れるような社会が育成できれば変わっていくと思う」との見方を示した。

日本でもフィンランドでも「将来への不安」が子どもを持つことを諦める一因になっていることに、藪長教授は「若者自身がこれから順調に生活を維持していける、そして家族を養うことが可能だと女性も男性も思えるように、そういった将来展望を持てる社会にしていくことが、とても重要なのではないかと思う」と述べた。【9月22日 ABEMA Times】
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【子育て支援では出生数の増加にはつながらない】
このフィンランドの数字が示す事実は、いわゆる子育て支援策(保育所の受け入れ枠拡大、男性の育児休暇取得促進など)の限界です。(意味がないという話ではなく、子供を持とうとする者への助けにはなりますが、それだけでは大きな流れを転換させることはできないということです)

****「フィンランドの出生率1.26へ激減」子育て支援では子どもは生まれなくなった大きな潮目の変化****
子育て支援では出生数の増加にはつながらない。
この話は、もちろん私の感想ではなく、当連載でも何度もお話している通り、統計上の事実であるわけだが、この話は特に政治家にとっては「聞いてはいけない話」なのか、まったく取り上げようとしない。

これも何度も言っているが、子育て支援を否定したいのではない。子育て支援は、少子化だろうとなかろうとやるべきことだが、これを充実化させても新たな出生増にはならないのである。

日本における事実は、2007年少子化担当大臣創設以降、家族関係政府支出のGDP比は右肩上がりに増えているが、予算を増やしているにもかかわらず出生数は逆に激減し続けていることはご存じの通りである。2007年と2019年を対比すれば、この政府支出GDP比は1.5倍に増えたのに、出生数は21%減である。(中略)

家族関係政府支出を増やしても出生数には寄与しないことは韓国でも同様である。

北欧を見習え?
そうすると、「見習うべきは子育て支援が充実している北欧である」という声が出てくるわけだが、その北欧の一角であるフィンランドの出生率が激減している現状をご存じなのだろうか?

フィンランドの合計特殊出生率は、2023年の速報統計で1.26になったという発表があった。過去最低と大騒ぎになった日本の2022年の出生率と同等である。

フィンランドの出生率の推移を見ると、特にここ最近の2010年以降で急降下していることがわかる。
コロナ渦中の2021年だけ異常値が発生しているが(これは欧州全体で発生した)、フィンランドと日本はほぼ同等レベルになったといっていい。むしろ、2018-19年には2年続けてフィンランドの出生率は日本より下だったこともある。

フィンランドには、子どもの成長・発達の支援および家族の心身の健康サポートを行う「ネウボラ」という制度があることで有名である。保育園にも待機することなく無償で通える。また、児童手当および就学前教育等が提供される「幼児教育とケア(ECEC)」制度が展開されるなど、子育て支援は充実していると言われている。

が、そうした最高レベルの子育て支援が用意されていたとしても、それだけでは出生数の増加にならないばかりか、出生数の減少に拍車をかけることになる。

家族支援政策の限界
フィンランドの家族連盟人口研究所のアンナ・ロトキルヒ氏は「フィンランドの家族支援政策は子を持つ家族には効果があったのかもしれないものの、本来の目的である出生率の上昇には結びついていない」と述べており、これは正しい事実認識であるとともに、日本においても同じことが言える。

フィンランドでこれだけ出生率が急降下しているのは、特に20代女性の出生数が激減しているからである。
フィンランド統計より、2010年と2022年の各年代の出生数を比較すると、20-24歳で58%減、25-29歳で43%減である。間違いなく20代の出生が減っていることが全体の出生率を下げていることになる。

20代の出生減とは、言い換えれば20代で第一子が生まれてこない問題と同じである。第一子が産まれなければ第二子も第三子もない。そして、20代とはいわないが、若いうちに出産をしないまま過ごすと、出産が後ろ倒しになるのではなく、「もう子どもを産まなくてもいい」と結果的に無子化になる。

日本の女性の生涯無子率は世界一の27%だが、フィンランドも20%超えである。そして、この20代出生数の減少は日本も韓国も台湾もまったく一緒だ。

逆にいえば、下がっているとはいえかろうじて出生率をそこまで激減させていないフランスは20代の出生数がまだまだ多いからだ。

ジェンダー平等や育休で出生数は増えない
日本の出生率があがらないのは「ジェンダーギャップ指数が125位だから」「男性の育休が進まないから」などという声もあるが、ジェンダーギャップ指数でいえばフィンランドは2023年調査で世界3位である。男性の家事育児参加や育休取得レベルも北欧はいつも日本との比較で出されるくらい多い。それでも出生は減るのである。

ジェンダー平等にしろ、男性の育休にしろ、子育て支援の充実にしろ、それ単体としては進めればよいと思うが、それらを改善すれば出生があがるなんて因果はどこにもないし、別立てで考えるべきである。むしろ、それらを一緒くたにまとめて因果推論をすることが問題の本質をわかりにくくしているのである。

どこにも通用する普遍的な「少子化解決の魔法の処方箋」などあるわけがないが、起きている現象には先進諸国共通のものがある。

ひとつは、ゼロ年代までは通用した家族支援は効果を生まなくなっていること。もうひとつは、「子どもがコスト化し、裕福でなければ、そもそもパートナーも子どもも、そうしようとする意欲すら持てなくなっている」ということである。

そろそろこの問題に向き合わなければならないだろう。日本だけではなく。【2月20日 荒川和久氏 YAHOO!ニュース】
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【経済・雇用環境の改善が少子化に歯止めをかけるために重要】
各国に共通する少子化の原因の一つは子育てが高コスト化する一方で、若い子育て層の経済状況が悪化していることでしょう。

*****「子育て先進国」フィンランドの出生率が急低下のワケ*****
欧州の子育て先進国も政策効果の一巡後は出生率低下に直面している。持続的な向上には、良好な経済・雇用環境も欠かせない。(中略)

政府は、10年代に保育所の受け入れ枠を拡大し、待機児童はおおむね解消した。その後も男性に育児休暇取得を促すなど、子育て支援や少子化対策に注力してきたが、少子化に歯止めはかかっていない。政府は、「こども未来戦略」を策定して児童手当の拡充や保育環境の充実などを図る予定であるが、それらが少子化反転につながるかどうかは予断を許さない。(中略)

大幅低下のフィンランド
欧州には、先進的な少子化対策を導入し、高い合計特殊出生率(TFR)を実現してきた国が少なくない。しかし、少子化対策のモデルとされてきたフランスや北欧諸国で、近年TFRが低下している。一方、少子化対策に後れを取り、以前はTFRが低かった国の中には上昇に転じた国もある。(中略)

少子化対策先進国において、特段政策メニューが変化したわけではないにもかかわらずTFRが低下傾向にある一因に、政策による効用が限界的に逓減していることがある。優れた少子化対策も、それがスタンダードとなった後では、目新しさがなくなり、再び少子化が顕在化したとみられる。

逆にドイツなど、10年にTFRが低かった国の一部には、上昇傾向がみられた国もある。少子化対策に後れを取った国の一部で、先進国で成果が上がったと目される政策を後追いで導入したことが奏功していると考えられる。(中略)

独は賃金・雇用改善に連動
00年以降横ばいであったドイツのTFRは、10年以降は明確に上昇トレンドとなった。ドイツは、10年をはさむリーマン・ショックから欧州債務危機に至る時期の経済・雇用環境が、欧州諸国の中で最も良好に推移した国である。とりわけ失業率の改善は明らかで、その効果は実質賃金に明確に表れている。

ドイツの実質賃金は、10年までの横ばいから一転上昇傾向となった。子育ての中心的な若い世代の経済・雇用環境が急速に改善したことが、TFRの押し上げに寄与したと考えられる。

ドイツにおける経済・雇用環境の好転は、ドイツ人のTFR押し上げに寄与したほか、移民の増加を通じて出生数増ももたらした。1990年代後半に移民容認政策にかじを切ったドイツでは、その後外国籍の親から生まれる子どもが増えた。(中略)

なお、ドイツへの移民といえば難民が注目されがちだが、10年以降の移民の半数以上はEU(欧州連合)内の他国から流入したものである。

しかし、ドイツのTFRが低下に転じた17年と時を同じくして、外国人のTFRが低下に転じた。その背景には、経済要因のほか、10年代中ごろからの移民に対する排斥の動きが広がった影響があるとみられる。

シリアからの難民が急拡大した15年ごろからドイツ国内で移民排斥の動きが顕著となり、そうした社会情勢も、外国人のTFR急低下の一因となったと考えられる。

フィンランドの少子化は、首都ヘルシンキへの人口の集中など、多様な要因が指摘されるが、最も大きな影響を及ぼしたのは、経済・雇用環境の悪化である。ドイツとは正反対に、リーマン・ショック以降失業率は高止まりし、00年代に着実に上昇していた実質賃金も横ばいに転じた。

欧州の少子化対策先進国においても、近年TFRの低下が顕著であるように、保育所の充実など、従来の対策を続けているだけでは、TFRの低下圧力に抗しきれなくなる。保育所整備や男性育休推進などの子育て環境整備を生かすのも、良好な経済・雇用環境あってこそだ。

日本では、春闘において大幅賃上げが実現したものの、実質賃金がプラスとなるにはもうしばらくの時間を要するとみる専門家が多い。

若い世代が将来に向けて豊かになっていくという実感を持つことが、少子化に歯止めをかけるために最も重要な処方箋である。企業や業界団体には、今後さらなる賃上げや処遇改善などに取り組むことが望まれる。【5月16日 藤波匠氏 週刊エコノミストOnline】
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【子供をあまり希望しないという価値観の変化を前提にした政治・経済・社会の仕組み】
少子化が止まらないもうひとつの根本的な問題は、そもそも子供を持ちたいという希望自体が低下していることです。

****フィンランドで理想子ども数ゼロの人が急増:出生率低下の原因か****
(中略)
フィンランドの出生率は急減しており、日本と同じレベルの出生率になっている。その大きな要因は、子どものいない人口(無子)の増加と言われている。

新しい研究によって、まだ子どもがいない男女ともに2割以上の人が理想子ども数を0人と答えている、と報告した。つまり、フィンランドの出生率の減少は、意図して子どもを産まない人の増加が関係していそう。

日本でも同様に、理想子ども数を0人と答える人は増加しているものの、まだ8%と少ない。他国と比べても高い無子割合は、意図したものではなさそう。【2023年9月4日 茂木良平氏 note】
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「子どもを持つことを絶対ではないのか、子どもを持たないことを肯定する文化が生まれている」という「価値観の変化」には子育て支援策はほとんど効果を持ちません。

「夫婦は子供を産むのが当然だ」という伝統的価値観に沿って、産みたくないという国民を政策的に出産へ誘導するのは、、個人の生き方やライフスタイルに政府が介入することにもなります。

であれば、子育て支援策などで一定に緩和はできるものの、基本的に少子化は避けられないという前提にたって、少子化であっても経済・社会が回るような仕組みに政治・経済・社会を適応させていく努力が必要でしょう。

それは、非嫡出子の扱い、同性婚の養子、移民の問題など伝統的価値観とは衝突するところが大きいでしょうが、避けて通ることはできないのではないでしょうか。
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韓国  ソウル市で外国人家事労働者の受入れ始まる 批判・疑問・課題も

2024-09-05 22:28:43 | 人口問題

(3日、韓国人家庭で家事支援を始めたフィリピン人女性=ソウル市提供【9月3日 読売】 
部屋の様子からそれなりの収入のある家庭のように見えます。ひとをフルタイムで雇うということは費用的には相当な額になりますので、誰でも負担できるものではないでしょう)

【ソウル市で外国人家事労働者の受入れ始まる】
周知のように、韓国の昨年の合計特殊出生率(1人の女性が生涯に産む見込みの子どもの数)は0.72と、日本(1.20)と比べても大幅に低く、世界的にも異例の「超少子化」が進んでいます。

その韓国で直近足元で出生数が8年半ぶりに増加したという話もありますが、コロナ禍の影響が大きく、長期的な少子化傾向に変わりはないとも見られています。

****第2四半期の出生数が8年半ぶりに増加****
韓国統計庁が8月28日に発表した「2024年6月の人口動向」によると、2024年第2四半期(4~6月)の出生数が前年同期(5万6,147人)比1.2%増の5万6,838人となった。同期間の合計特殊出生率(注)は0.71で、前年同期と同一の水準だった。同時に発表した6月の出生数は前年同月(1万8,585人)比1.8%減の1万8,242人だった。

「ハンギョレ新聞」(8月28日)は統計庁の見解を次のように紹介している。
出生数が前年同期比で増加したのは、2015年第4四半期(10~12月、前年同期比0.6%増)以来、8年半ぶり。2024年4月(前年同月比2.9%増)と5月(同2.6%増)の出生数の増加が第2四半期の出生数増に大きく寄与した。

新型コロナウイルス感染拡大の影響で延期された婚姻の件数が2022年下半期から2023年上半期にかけて増加したことで、出生数も増加したと考えられる。2024年下半期まで出生数増加が続く可能性がある。

新型コロナ禍の反動による婚姻件数の増加が落ち着けば、合計特殊出生率は再び低下すると予想される。【9月4日 JETRO】
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韓国政府もいろんな対策をとってはいますが・・・その一つが、ソウル市の外国人家事労働者の受入れ。
共働き家庭や一人親家庭での育児負担軽減を図り、少子化に歯止めをかける狙いです。

併せて、少子化による労働者不足の解消も目的としています。

第1陣としてフィリピンから100人が韓国に入り研修を受けていましたが、4週間の研修を終えて各家庭に派遣されています。

****フィリピンの家事労働者 研修終えきょうから各家庭へ派遣=ソウル市****
韓国のソウル市と雇用労働部が推進する「外国人家事管理士試験事業」に参加するフィリピンの家事労働者100人が3日、4週間の研修を終え、各家庭で働き始めた。ソウル市が伝えた。

100人は8月6日に入国し、仕事内容や韓国語、セクハラ予防、安全教育などについて計160時間の研修を受けた。

応募があった計731世帯から157世帯が選定され、最終的に142世帯に家事管理士が派遣されることが決まった。

派遣されるのは、「共働き家庭」が115世帯(81%)、「妊婦がいる家庭」が12世帯(8.5%)、「子どもの多い家庭」が11世帯(7.7%)、「母子・父子家庭」が4世帯(2.8%)となっている。

ソウル市の関係者は「キャンセルが多かったため、申請すれば1カ月からでも利用できる」と話した。12歳以下の子どもがいるソウル市に在住する世帯が対象で、「代理主婦」「トルボムプラス」などのアプリから常時申請を受け付けているという。 

市のガイドラインによると、フィリピンの家事管理士の業務範囲は育児と育児関連の家事などで、サービスを6時間以上利用する場合は、子どもの安全が確保される範囲内で簡単な掃除や親などの衣類の洗濯も可能だ。

高齢者の世話、大人のための調理、雑巾がけ、買い物、冷蔵庫など電化製品の掃除、アイロンかけなどは業務範囲に含まれていない。

育児に関連する範囲内で同居している家族に対する家事業務を「付随的に」遂行できるというのが原則だが、どこまでを付随業務とみなすのか判断が分かれることもありそうだ。

契約時に可能な業務範囲内で希望するサービスを定め、契約後に業務を追加したい場合は、家事管理士に直接指示することはできず、サービス提供事業者と協議して調整しなければならない。

ソウル市の担当者は「フィリピンの家事管理士たちが現場で業務を支障なく遂行するよう支援する」と話した。【9月3日 聯合ニュース】
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【家事労働者の人権・労働環境保護に留意する必要】
一般論で言えば、家庭内の家事労働は通常の外での業務に比べ“外から見えにくい”特質があるため、外国人労働者への差別・虐待・暴力・不当な労働などが横行しやすい危険がありますので、そのことへの配慮が必要になります。

中東でのアジアからの家事労働出稼ぎ者が虐待を受ける事件は多発していますし、アジア内においても同様の事案があります。

****マレーシアの外国人家政婦、3分の1近くが強制労働状態=ILO****
国際労働機関(ILO)は15日、マレーシアの家庭で家事に従事する外国人労働者の約3分の1が強制労働状態にあるという調査結果を発表した。

ILOによると、強制労働の指標は、▽過剰な労働時間▽残業代未払い▽低賃金▽行動制限▽退職妨害ーー。調査は、東南アジアの家事労働者1,201人へのインタビューに基づくもので、マレーシアの家事労働者の29%が強制労働の状態にあると判定された。一方、シンガポールとタイはそれぞれ7%、4%だった。

ILOは、3カ国すべての家事労働者の平均労働時間は他部門の労働時間をはるかに超えており、最低賃金を得ている者はいなかったとし、3カ国に対してILOの「家事労働者と強制労働に関する国条約」を批准し、家事労働を正当に評価し労働者を雇用者に縛りつけない仕組みづくりを行うよう促した。

アジアでは、インドネシア、ミャンマー、フィリピンなどの発展途上国の女性が家政婦として雇用されることが多いが、マレーシアでは近年、インドネシア人の家事労働者が虐待される事件が多発する他、外国人労働者を搾取する企業への非難も起こっている。ILOによると、マレーシアの家事労働者の約80%はインドネシア人。マレーシアとインドネシアは、昨年、家事労働者保護に向けた協定を締結している。

タイの労働省の広報担当者であるワナラット・スリスクサイ氏は通信社「ロイター」の取材に対し、タイでは2012年に導入された家事労働者保護に向けた法律を受けて、同国の家事労働者の待遇は改善されていると述べた。マレーシアとシンガポールの担当者からのコメントは得られなかった。【2023年6月 Asia infonet】
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【不法滞在・犯罪増加を懸念する向きも】
一方で、韓国では外国人労働者受入れ拡大で不法滞在・犯罪増加を懸念する向きもあります。

****少子高齢化進む韓国、外国人労働者の受け入れ拡大…不法滞在や外国人犯罪増加を懸念する声****
韓国政府が外国人労働者の受け入れを拡大している。急速な少子高齢化による働き手不足を背景に、尹錫悦ユンソンニョル政権は外国人労働者の受け入れを進める考えだ。(中略)

韓国政府は2004年、人手不足の製造、建設、サービス、農畜産、水産の5分野で外国人労働者に「非専門就業」の資格を与え、期限付きの単純労働を認める制度を導入した。

家事支援は対象外で、外国人の就労は結婚移住者など一部に限られていたが、韓国政府は今回試験的にフィリピン人の家事支援就労を認めた。試験結果を踏まえ、受け入れ拡大を今後検討する。

韓国は04年の制度導入以降、労働者を送り出すベトナムやフィリピンなど十数か国と協定を結んだ。韓国語教室を開くなど定着支援に力を入れ、受け入れ業種も拡大してきた

非専門就業資格で今年受け入れる外国人労働者は16万5000人を予定しており、コロナ禍前の19年の約3倍に上る見通しだ。現在はこの資格で30万人余りが暮らしており、在留外国人全体の12%を占める。

韓国の昨年の合計特殊出生率(1人の女性が生涯に産む子供の推計人数)は0・72と世界最低水準を記録した。高学歴化が進み、製造業などの担い手は外国人労働者なしでは立ち行かないと指摘されている。工場では管理職だけが韓国人で働き手が外国人というケースは珍しくない。

韓国政府は昨年末、外国人政策を一元的に管理する「出入国・移民管理庁(仮称)」の新設案を公表した。永住する移民の本格的な受け入れを視野に入れている模様だが、不法滞在や外国人犯罪の増加などを懸念する声も出ている。【9月3日 読売】
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【現実的に費用対効果は? そもそも少子化対策としての効果は?】
また、サービスを利用した場合、費用的にかなり高額になりどれだけの世帯がふたんできるかという問題、さらに、そもそも、この取組が少子化の歯止めになるのかという根本的な疑問があるようです。

****世界最低レベルの出生率に悩む韓国...フィリピンからの「切り札」導入も露呈した「根深い問題」とは?****
<出生率低下を食い止めるべく、ソウルで外国人家事労働者の受け入れを開始。共働き家庭や一人親家庭での育児負担軽減を目指したが、数々の疑問の声が──>

試験的事業として、外国人家事労働者を受け入れる──韓国の首都ソウルの呉世勲(オ・セフン)市長が、そんな提案をしたのは2年前のことだ。

外国人労働者の「手頃な」サービスを提供して韓国人女性の育児の負担を軽減し、少子化に歯止めをかけるのが目的で、国内の家事労働者の減少や急速な高齢化に対応する狙いもあった。

シンガポールや香港の政策を参考に、韓国政府とソウル市が進める同事業は本格始動したばかり。家事労働者の国家資格制度があるフィリピンから来た100人が9月3日から約半年間、ソウル市内の家庭に勤務する。派遣先として優先されるのは共働き家庭や一人親家庭だ。

この思い切った事業には、家事労働者の業務範囲や文化の違いへの懸念など、数々の疑問の声が上がっている。最大の問題の1つになっていたのは報酬だ。より正確には、韓国の最低賃金(時給)9860ウォン(約1075円)を支払うべきかという問いだった。

外国人家事労働者の人権を保障するには最低賃金を適用するべきだという考えに対し呉は、「同意しない」と明言。「賃金水準は市場原理に従い、技能や貢献に応じたものであるべきだ」と主張した。

これに対して、韓国女性団体連合は今年3月8日の国際女性デーのイベントで、呉は「ジェンダー平等の障害」で、家事の価値を下げ、外国人労働者差別を助長していると非難。

外交分野でも、駐韓フィリピン大使がILO(国際労働機関)などの基準を引き合いに出し、両国は「同一賃金や無差別を支持する国際条約を批准している」と指摘した。

こうした経緯の末、研修のため8月上旬に来韓したフィリピン人家事労働者らは最低賃金を保証された。週5日間、1日4時間サービスを利用する場合、社会保険料負担などを含めた月額費用はおよそ119万ウォン(約13万円)だ。

だが新たに、大きな疑問が浮上している。フィリピン人家事労働者を雇うのは、韓国人家庭にとって割に合うのか。
若年層の共働き家庭が1日最低8時間、保育のためにサービスを利用したら、月額費用は約238万ウォンに上る。韓国の30代の家計所得中央値は509万ウォン(約55万5000円)。つまり、家計所得のおよそ47%を支払うことになる。

外国の「成功例」の結果は
費用対効果だけではない。もう1つの(そして、おそらく最も)重要な問いは、少子化対策として有効かどうかだ。
韓国の合計特殊出生率は世界最低レベルが続く。昨年の出生率は0.72で、8年連続で過去最低を更新。ソウルでは、国内最下位の0.55だ。

悲惨な状況を考えれば、韓国政府が外国の政策に目を向けたのも無理はない。だが成功例として挙げる「シンガポールモデル」の結果は、宣伝とは裏腹だ。

シンガポールの外国人家事労働者計画が始まったのは1978年。女性の就労を促進したとしても、出生率は低下傾向で、昨年は初めて「1」を下回る0.97を記録した。同じく成功例とされる香港の場合も同様だ。

今回の試験的事業をめぐる批判は、韓国政府の育児観や外国人労働者への見方の現実をあらわにしてみせた。人口減少に効果的に取り組むには、国外に助けを求める前に、ジェンダー不平等や家事・育児の男女格差という国内の根本的課題に向き合うべきだ。

「コリアンドリーム」を追うフィリピン人家事労働者は、少子化問題の救世主ではない。【9月3日 Newsweek】
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同様に少子化に悩むシンガポールや香港の外国人家事労働の果たしている効果・役割については別途検討する必要があります。

両国で少子化が改善されていなくても、もし外国人家事労働がなかったらもっと悪化したかも・・・という可能性もありますので。

少子化対策としての効果は小さくても、労働者不足を補う手段としては有効という見方もあります。

“ジェンダー不平等や家事・育児の男女格差という国内の根本的課題に向き合う”のが一番重要というのは正論ではありますが、なかなか変化しない部分でもあります。であれば、補完策としての外国人家事労働もニーズがあるなら検討してもいいように思いますが、補完策に頼ることで、根本的課題への取組がなおざりにされるというのは困ります。 検討が必要でしょう。

制度の提案者であるソウル市長が、最低賃金適用に反対した・・・というところに、家事・育児の価値を低く見ている、外国人労働者を“安価な労働力”と見なしている・・・そうした基本的な問題があるように思えます。
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韓国  出生率0.72で「地球上で真っ先に消え去る国」に改めて“衝撃”

2024-03-05 23:06:19 | 人口問題

(【2月29日 西日本】)

【「地球上で真っ先に消え去る国」】
日本を含めて東アジア世界は深刻な少子化が進行していますが、その中でもトップを走るのが韓国で、最近の(人口を維持するためには、おおむね2.07を保つ必要があるとされる)合計特殊出生率は0.7程度・・・という話は、これまでも再三取り上げてきました。

ですから、23年の0.72という数値については驚きでも何でもなく予想されていたものではありますが、それでも改めて公式発表されると大きな衝撃があります。

****韓国出生率、23年は0.72で過去最低更新 ソウルは0.55****
韓国統計庁は28日、女性1人が生涯に産む子どもの推定人数を示す合計特殊出生率が2023年に0.72だったと発表した。既に世界最低水準だった22年の0.78から低下し、過去最低を更新した。

人口が4年連続で減少する中、政府は少子化対策に多額の資金を投入してきたが効果は出ていない。

出生率が1を下回るのは経済協力開発機構(OECD)加盟国で韓国のみ。

韓国の主要政党は4月の選挙を前に、人口減少に歯止めをかけるため、公営住宅増設や融資緩和を公約に掲げている。

韓国では子どもは結婚してから持つものという考えが一般的だが、主に経済的負担が大きいことから結婚も減少している。

出生率は首都ソウルが0.55で最も低かった。

韓国は24年の出生率が0.68にさらに低下すると予想している。

日本は22年に過去最低の1.26を記録。中国も過去最低の1.09を付けている。【2月28日 ロイター】
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昨年10〜12月期は0.65・・・今後、更に低下しそうです。

韓国については、以前にイギリスのオックスフォード人口問題研究所が「地球上で真っ先に消え去る国は韓国」と指摘したこともありますが、(あくまでも単純計算の話ですが)このままでは半世紀後には現在の人口(5167万人)が約30%減少し、1000年ほどたてば韓国の人口は消滅する・・・というレベルの数値です。

【出産願望・結婚願望の低下 背景に価値観の変化や住宅・子育ての経済事情】
こうした状況の要因の一つが、女性の出産願望の低下です。更には結婚願望も低下しています。

****韓国の出生率低下問題、働く女性の60%以上が「産みたくない」の理由****
(中略)
こうした状況には多くの要因があるが、その内の1つに女性の出産願望の低下があげられる。
2月27日、『韓国経済新聞』が経済活動をする25〜45歳女性1000人を対象にしたオンラインアンケート(2月5〜20日)の調査・分析結果を発表した。これによると、回答者の62.2%が「これから子供を出産するつもりはない」と答えたことがわかった。

細かく分類すると、未婚女性は66.6%が、既婚女性は59.2%が「出産の意思がない」とのこと。さらに、未婚女性の55%は結婚願望自体がないことが判明したのだ。

その理由としては、「子育てに拘束されたくないから」「経済的に余裕がない」「やりたいことの障害になる」などがあがっている。

女性の社会進出はすばらしいことだが、産休や育児補助制度を充実させなかった結果、「結婚も出産もしたくない」という女性の増加に繋がっているのだろうか…。

こうした疑問に、韓国国内では「産休して無事に会社に戻れる補償がない」「達成感を覚えながらお金を稼ぐのに、子供を産んだらリセットになるので当然だ」「非婚・非出産を主張する女性を韓国男性は強く否定する。人工子宮でも開発してください」など、出生率の低下を“働く女性”のせいにするなという意見が多く上がった。

結婚・出産・仕事。すべてを納得させられる答えを政府は準備しなければならない。【3月3日 サーチコリア】
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長時間労働などによる子育てと仕事の両立の難しさや、子育ての負担の女性への偏りなどは日本でも散々指摘されていることです。

昨年8月の韓国統計庁の調査によれば、結婚に対し「肯定的」な認識を持つ割合は22年時点で36・4%に過ぎないとのことで、「非婚主義」という価値観も広がっています。その背景には、自分の幸福を追求する「ミーイズム」と呼ばれる傾向も。

こうした出産願望・結婚願望の低下の背景には、女性に偏る負担に加えて、昨今の経済事情があるというのは常々指摘されています。住宅は若者の手が届きにくい価格に高騰し、子育てに巨額の資金がかかる・・・

****韓国で“ペットカー”の販売量が“ベビーカー”の販売量を上回ったとのデータも… 出生率過去最低「0.72」の背景に「塾ぐるぐる」と「ミーイズム」?****
去年の出生率が0.72と過去最低を更新し、少子化に歯止めがかからない韓国。その背景を象徴するのが二つの言葉、「塾ぐるぐる」と「ミーイズム」です。

ソウルの散歩道。多くの人が引いていたのは最近、人気となっているペットを乗せたペットカーです。韓国ではペットカーの販売量が、ベビーカーの販売量を上回ったことを示すデータもあります。

「若い人たちは子供を産んで苦労するよりも、犬や猫を育てて楽しく暮らそうという人が増えている」

きのう発表された韓国の去年の合計特殊出生率は「0.72」と過去最低を更新。少子化が進む日本をも大きく下回る水準です。なぜここまで低くなったのか。

「韓国は最低賃金も高くないし、就職も難しい。こんな環境で異性と結婚して子供を持つことができるのか疑問です」

子育てをしづらくする要因の一つが“過酷な競争”。「塾ぐるぐる」と呼ばれるように、受験や就職を勝ち抜くために塾や習い事をいくつも掛け持ちする子供たちが大勢いるのです。親の経済的な負担も大きく、不動産の高騰などで苦しい生活に追い打ちをかけています。

また、専門家は自分の幸福を追求する「ミーイズム」と呼ばれる傾向が広がっていることも背景にあると指摘します。

インハ大学 イウンヒ教授
「若い世代を中心にミーイズムと言って、自分をとても大切に思っています。自分が犠牲になって子供を産んで苦しむよりは、自分が幸せに生きることがもっと重要だと考えるのです」

人口減少による「国家消滅」の危機も指摘されるほどで、少子化対策がいっそう喫緊の課題となっています。【2月29日 TBS NEWS DIG】
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【韓国政府も対応はしてきたものの効果なし】
韓国政府もこれまで、保育所を増やしたり、無償保育や育児休業制度を広げたりといった「少子化対策」を進めてきましたが、出産願望・結婚願望の低下という大きな流れを変えることは出来ず、出生率の低下に歯止めをかけられていません。

****田中秀臣 韓国の「人口消滅」危機 先進国で断トツの〝超々低出生率〟背景に経済不安と歴代政権の失敗 日本にとっては他山の石****
(中略)もちろん人口が減少していても、直接に経済や社会の停滞とイコールではない。景気が良く、1人当たりの所得水準や幸福感が増していればいい。要するに経済対策が少子化の経済を救う。

ところが韓国ではこの経済対策がうまくいっていない。いまから10年前の合計特殊出生率はまだ1・19あった。それが0・72まで急減少した背景には、若い世代の経済不安と歴代政権の少子化対策の失敗がある。

経済不安の象徴は、若い世代の失業率だ。韓国の場合は、通常の失業率では測れない「本当の失業」をみる必要がある。日本でも長期停滞が深刻だったときは、働きたいけれども景気が悪くて働くのを断念した人たちが多かった。「求職意欲喪失者」ともいわれる。

この人たちを含めた「拡張失業率」では、若い世代は20%前後と極めて高い。ちなみに中国は50%近いが、これを公の場で発言することも取り締まりの対象だ。韓国の若い世代の経済不安が、結婚や育児を断念させる直接の原因である。

韓国の歴代政権は若い世代の雇用の改善を目指したが、少子化にストップをかけるほどの効果はなかった。
また少子化対策自体も失敗した。少子化対策が本格化してから日本円で28兆円以上の金額が使われたが、効果は無に等しい。

もちろん韓国の少子化対策の失敗は、日本にとって他山の石でもある。日本の少子化対策の予算規模は、この10年で倍増したが少子化に歯止めはかかっていない。少子化対策の効果の検証もおざなりだ。

そもそも日本は高齢層に経済的支援が厚く、その負担を若い世代が負っている。岸田文雄政権の「異次元の少子化対策」も、働いている世代に負担を強いるものだ。

本来なら年金や医療費などの過剰な増加を抑制し、若い世代の負担を軽くするのがベストだ。もちろん「子育て国債」を発行して、同時に減税も合わせる景気対策もいいだろう。この政治的決断がなければ、少子化の勢いは簡単には止まらない。 【3月5日 夕刊フジ】
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政府は更に取組を強化するとは言っていますが・・・(日本同様)あまり期待はされていないよう。

****韓国の出生率が0.65で過去最低、政府は少子化対策の全面見直しを宣言もネットには「見当違い」の声****
2024年2月29日、韓国・ハンギョレによると、韓国の昨年10〜12月期の合計特殊出生率が0.65で過去最低を記録した中、少子高齢化社会委員会のチュ・ヒョンファン副委員長が28日のインタビューで「これまでの少子化政策は実効性に乏しいとの指摘を受けているため、需要者の立場から全面的に見直す必要がある」とし、「政府省庁と全地方自治体に対し、今月末までに少子化対策の現状について報告するよう要請している」と明らかにした。

記事によると、同委員会は政府の5年単位の「少子高齢化社会基本計画」を審議・確定する人口政策コントロールタワー。チュ副委員長は「全面的に再検討することでこれまでのデパート式(問題解決のためにあらゆる雑多な政策をかき集めた政府の政策を批判する際に使われる表現)の漸進的対策ではなく、実効性のある対策を集中的に迅速に推進していく」と説明した。

韓国政府は同委員会を中心に育児負担の緩和策、家庭と仕事の両立政策、経歴断絶女性(結婚や出産、育児などを理由に仕事を辞めた女性のこと)問題の解決策を打ち出し、段階的に発表する計画。

チュ副委員長は「少子化問題には複合的アプローチが必要だが、『少しずつ』では効果が出ない」とし、「良い職場環境をつくることが最も重要であり、それに並行して未婚者に結婚への意欲を持たせ、出産や育児の負担を一つ一つ改善することが望ましい」と強調したという。

この記事を見た韓国のネットユーザーからは「今さら?」「2年間何をしていたのか。今になって再検討とは」「再検討すると発表するのではなく、再検討した後に『こうします』と発表してほしい」などと指摘する声が上がった。

そのほか、「養育費と私教育費が問題であることに気づいていないの?気づかないふりをしているの?」「職場環境が問題?とんだ見当違いだ。国民は全員、不動産が問題だと分かっている。子どもを育てるのに必要なのは衣食住の安定。今は着るものにも食べるものにも困らないが、住まいに不安があるから子どもを産めない」「良い職場づくりより住居環境を優先するべき」「まずは日に日に上昇する住宅価格と物価を安定させ、それから少子化対策を立ててほしい」などの声が寄せられた。【2月29日 レコードチャイナ】
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【移民政策を推進する保守政権】
やや意外だったのは、少子化による人口減少に対し、保守の尹錫悦政権も移民を推進する立場を明確にしていることです。韓国は日本以上に外国人への抵抗感が大きい国と思っていましたが。それに伊政権はいわゆる保守政権ですし・・・それだけ危機感が強いということでしょう。

****韓国、外国人街を除けば「地方消滅」危機 保守与党も移民推進を加速 出生率0・72の移民国家****
韓国南西部・光州(クァンジュ)市の光山(クァンサン)区は、ロシアによるウクライナ侵略に伴い、朝鮮半島にルーツを持つ「高麗人」のウクライナ住民らが避難先に選んだことで知られる。青少年文化センターを訪ねると、容姿は韓国人と変わらない10人あまりの小学生が、韓国語の授業を受けている最中だった。(中略)

19世紀後半に朝鮮半島を離れ、ロシアを経て中央アジアに移住した人々の子孫は高麗人と呼ばれる。2000年代初頭、韓国の経済発展に伴い「帰国」した高麗人で形成されたのが、光山区の「高麗人村」だった。

首都圏などへの人口流出で空き家が目立った住宅街に3〜4世帯が入居したのに始まり、現在は光山区に住む高麗人が約4800人を記録。高麗人に続いて他の外国人も相次いで流入し、住民登録分だけで1万4千人に達する。

周辺にはロシアやトルコ、中国など各国の飲食店が立ち並び、ゴミ捨て場には韓国語、ロシア語、ベトナム語の注意書きが掲示されている。

「若者活気」唯一の街
韓国ではソウル首都圏への人口一極集中が続く。逆に光州市を含む全羅南道地域では約半世紀の間に人口が393万人から180万人まで半減した。道移民政策課長の劉永珉(ユ・ヨンミン)は「少子高齢化に人口流出問題が加わり、地域社会の深刻さはソウルと比較にならない」と強調する。

そんな中、若者が存在感を示す稀有(けう)な地域が高麗人村のある光山区だ。昨年10月に発表された「地方消滅」の危険性を測る指標では、出産の中心となる20〜39歳の女性数が65歳以上の高齢者数を唯一上回る自治体となった。

15年前から周辺でアパート経営を続ける金正基(キム・ジョンギ)=(77)=の所有物件には、10部屋のうち9部屋で外国人が暮らしている。「若者の活気ある地域経済は、韓国人だけでは全く成り立たない」。金はそう断言する。

外国人拒否感に違い
韓国法務省の統計によると、韓国の在留外国人は2023年、前年比で11・7%増加し、新型コロナウイルス禍以前の250万人を回復。人口全体に占める外国人の割合は4・9%で、過去最高を記録した。
これに対し、日本では国内の在留外国人数が昨年過去最高を更新したが、比率では2・5%にとどまっている。

日韓の移民流入速度の違いには、外国人に対する拒否感の大きさも影響したとみられる。74カ国で実施された「世界価値観調査」(17〜22年)では、「移民や外国人労働者は隣人になってほしくない」との回答(平均21・3%)が、日本の29・1%に対し、韓国は22・0%にとどまった。

日韓の移民政策に詳しい大阪経済法科大アジア太平洋研究センターの宣元錫(ソン・ウォンソク)は「1990年代以降、両国は同じように労働力不足の状況にあったが、日本は世論への配慮から『発展途上国に対する国際貢献』を掲げて技能実習生を受け入れる形を取り、公には移民を認めなかった」と指摘。

一方、韓国は「当初は日本をモデルとした実習生制度を導入したが、(受け入れがスムーズに進まず)2004年以降は『積極的な移民許容』に転じ、流入が活発化した」と解説する。

総選挙次第で移民加速
移民問題の専門家らが「予測していなかった」と口をそろえるのが、保守系で移民政策に後ろ向きとみられていた尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権下での移民推進の加速だ。政府は昨年12月、「出入国·移民管理庁」(移民庁)の新設を柱とした5カ年計画を発表。ビザ発給の大幅な拡大などを進める。

移民関連の学会関係者は「大統領選当時は尹氏陣営に移民政策の質問状を送っても無回答だった」と振り返るが、尹政権発足に伴い法相に就任した韓東勲(ハン・ドンフン)は、就任当日から移民庁設立の検討を表明。「移民政策で完璧に成功した国は地球上にないが、今後体系的な移民政策なしに国家運営に成功できる国もない」などと、移民受け入れの意義を強調してきた。

法相から与党「国民の力」トップに転じた韓が指揮を執る4月の総選挙で勝利を収め、同党が国会運営で主導権を握れば、韓国の移民政策は一気に加速度を増す見通しだ。
しかし、急速な移民流入の拡大は、地域社会にさまざまな影を落とし始めている。=敬称略【3月5日 産経】
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移民の流入が社会にさまざまな影を落とすことは事実でしょうが、(賢明な対応とともに)社会の活力が維持されれば対応も可能です。
一方、無策のまま人口が減り、社会の活力も失われていく状況では、すべての問題は悪化するばかりです。

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少子化  人口減少が止まらない中国 戦後最低の出生数のフランス 多大な資金でも効果なしの韓国

2024-01-19 23:11:37 | 人口問題

(【1月11日 日経】)

【中国 手のひら返しの出産奨励策でも続く人口減少 「強要」ではなく「奨励」とは言うものの・・・】
言うまでもなく「少子化」は日本をはじめ多くの国で深刻な問題であり、このブログでも度々取り上げています。
そうした中で、ここ数日、中国・フランス・韓国の少子化に関する記事を目にしましたので、それらについて取り上げます。

ちなみに、日本は“厚生労働省が(6月)2日発表した2022年の人口動態統計によりますと、女性1人が生涯に産む子どもの推定人数を示す「合計特殊出生率」は、1.26で2005年と並び過去最低でした。出生数は77万747人で、前の年を4万人ほど下回り、統計開始以来初めて80万人を割り込みました。厚労省は新型コロナウイルスの感染拡大により婚姻数が減少したことも影響したとみています。”【2023年6月2日 テレ東BIZ】といった状況です。

先ず中国。人口世界一の座をインドに明け渡した中国ですが、長年の人口抑制策「一人っ子政策」を止めて人口維持・増加政策に舵を切ったものの人口減少に歯止めがかかりません。

2023年の出生数は54万人減って902万人。一方、死亡数は69万人増え1110万人。その結果、総人口は208万人減り、14億967万人となりました。

中国で総人口が減少するのは2年連続で、減少幅は拡大しています。中国では長年続いた一人っ子政策を緩和し、現在、3人までは自由に子どもを産めますが、子どもの数は増えず、少子高齢化が進んでいます。【1月17日 テレ朝newsより】

****中国、止まらない少子化 出生数過去最少、雇用悪化で将来不安か****
中国国家統計局は17日、2023年末の総人口が22年末比208万人減の14億967万人だったと発表した。人口減少は2年連続で、減少幅は22年(85万人)より拡大した。教育費の増加や、若者の雇用環境の悪化などを背景にした少子化に歯止めがかからず、出生数が7年連続で減少したほか、死者数も増加した。

 ◇2年連続人口減、62年ぶり
2年連続の人口減少は毛沢東が主導した食料や鉄の大増産運動「大躍進」が失敗し、大量の餓死者を出した1960〜61年以来62年ぶりとなった。

23年の出生数は、前年比54万人減の902万人で49年の建国以来過去最少を更新した。

中国政府は79年から導入してきた「一人っ子政策」を見直し、21年からは3人目までの出産を容認。地方政府や企業も、複数の子供を育てる世帯を対象に補助金の支給や休暇の義務化を打ち出すなど対策を急ぐが、少子化を食い止められていない。

出生数低下の背景にあるのが、住宅価格や教育費など結婚・子育てにかかる費用の高騰だが、それに加えて若者の雇用環境の悪化による将来不安の影響も大きいようだ。

 ◇経済回復遅れ 若者失業率21%
新型コロナウイルス禍から経済の回復が遅れる中国では、23年6月には、都市部の若者(16〜24歳)の失業率が21・3%と過去最悪を更新。統計局は同8月、「統計の改善」を理由に公表を一時停止して物議を醸した。統計局は今回、公表を再開し、12月は14・9%に改善したとしたが、「学生を含まない」と調査対象を修正した影響などがあり、若者の雇用情勢は依然厳しい。

また65歳以上は2億1676万人と全人口の15・4%(前年比0・5ポイント増)となり高齢化がさらに進行した。中国政府が23年予算で計上した社会保障費(就業支出含む)は、3兆9192億元と、5年前の1・45倍に膨れ上がっており、今後さらにその割合が増加するとみられる。少子高齢化の加速は中長期的に中国の財政や経済成長に深刻な影響をもたらしそうだ。(後略)【1月17日 毎日】
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上記記事にもあるように、中央政府・党の指導のもとで地方政府や企業も対策(あるいは、出産を求める「圧力」)をとってはいますが、従来の強権的な「一人っ子政策」からの手のひら返しに中国女性たちの不信感は強いようです。

また、出産減少の背景には、女性の権利意識拡大があるようです。

****中国の出産圧力、女性が突きつける「ノー」****
政府は「もっと産め」 14億人の人口、2100年には約5億人に落ち込む可能性が高い

中国の女性たちは、もううんざりだと思っている。中国政府はもっと出産せよと要求するが、それに対する彼女たちの反応は「ノー」だ。

政府の嫌がらせに閉口し、子育てのさまざまな犠牲を警戒する若い女性の多くは、政府や家族の希望よりも自分自身を優先しようとする。彼女たちの拒絶によって中国共産党は危機に追い込まれている。高齢化する社会を若返らせるため、共産党は何としても赤ん坊を増やさなくてはならない。

中国では出生数が急減している。2012年に1600万人前後だった新生児の数は2022年に1000万人を割り込み、人口崩壊に向かっている。現在の人口は約14億人だが、複数の予測によると、2100年には5億人程度に落ち込む可能性が高い。女性たちがその責めを負わされている。

昨年10月、習近平国家主席は政府が支援する「中華全国婦女連合会(ACWF)」に対し、「女性分野のリスクを予防し、解決する」ことを促した。

「女性が直面しているリスクに言及したのではなく、女性のことを社会の安定性に対する大きな脅威と見なしているのは明らかだ」。中国政府のプロパガンダを研究するワシントン・アンド・リー大学のクライド・イチェン・ワン助教(政治学)はこう指摘した。(中略)

共産党がいくら「家庭の価値観」を説いてもほとんど効果がなく、それは中国の農村部でも同様だ。
東部・安徽省の全椒県にあるショッピングモールの前にいたヘー・ヤンジンさんは2児の母親だ。地元役人から3人目の出産を促す電話を何度も受けたと話す。だが3人目を産むつもりはない。彼女の息子が通う幼稚園では通園者が少なくなり、教室の数を半分に減らしたという。

中国の若者の多くは低迷する経済と高い失業率に失望し、両親とは異なる生き方の選択肢を求めている。多くの女性は結婚と出産という決まり切った形式を不当な取引だとみなしている。

縮小の一途
政府が35年間続いた一人っ子政策を2015年に廃止すると発表した際、当局者はベビーブームの到来を予想した。だが実際には出生率の落ち込みに見舞われた。(中略)

一人っ子政策は中国の人口動態に大きな影を落とすことになった。若者の数は過去に比べて少なく、出産適齢期の女性は毎年数百万人ずつ減り続ける。彼女たちは結婚や出産にますます消極的となり、人口減少に拍車をかけている。

中国では22年に680万組が婚姻届を出した。13年には1300万組が出していた。22年の合計特殊出生率(1人の女性が生涯に産む子どもの平均的な数)は1.09となり、女性1人が子ども1人を産む水準に近づいた。20年にはこれが1.30だった。人口を安定的に維持するのに必要な2.1を大きく下回っている。

「出産に優しい文化」キャンペーンは、緊急の国家課題の様相を呈し、政府主催のお見合いイベントや軍人家庭の出産を奨励するプログラムが設けられている。

西部・西安市の住民は8月、中国のバレンタインデーにあたる「七夕節」の期間に、政府の番号から自動音声メッセージを受け取ったという。「あなたに甘美な恋と適齢期の結婚が訪れますように。中国の血統をぜひ続けましょう」

このメッセージはソーシャルメディアで反発を巻き起こした。「私の義母は2人目の出産すら勧めない」との書き込みや「次はお見合い結婚が復活するんじゃないかと思う」とのコメントもあった。

政府は一人っ子政策の時代に特徴的だった「強要」ではなく、奨励策に力を入れる。地方政府は2人目・3人目を出産したカップルに現金を支給する。東部・浙江省のある県では25歳までに結婚したカップル全員に137ドル(約2万円)相当のボーナスを出す。

いたちごっこ
政府の方針転換により、子どもを多く産みすぎて処罰されるのを恐れていた女性が、もっと産めと迫られるケースが生じている。

チャンという姓の女性は10年前、2人目の子どもを産むことを決め、当局と追いつ追われつのゲームが始まった。彼女はファーストネームを記事に使わないよう求めた。

チャンさんは妊娠中、当局から人工妊娠中絶を求められるのを恐れ、仕事を辞めて人目に付かないようにしたという。出産後の2014年には親戚の家に1年間滞在した。故郷に戻ると、家族計画担当の役人が彼女とその夫に約1万ドル(約144万円)の罰金を科した。チャンさんによると、妊娠を防ぐために子宮内避妊具(IUD)の埋め込みを強要されたという。当局は彼女に3カ月ごとにIUDの検査を受けるよう義務付けた。

その数カ月後、中国政府は一人っ子政策を廃止すると発表。それでも当局はしばらくの間、チャンさんにIUD検査を要求した。

最近、当局者からはもっと子どもを産むようにと促すメールが届く。チャンさんは怒りに任せてそれを削除している。「私たちを振り回すのはやめてほしい」と彼女は言う。「庶民をそっとしておくべきだ」

妊娠防止の医療処置を行うクリニックの認可は厳しくなっている。一人っ子政策最盛期の1991年には600万件の卵管結紮(けっさつ)術と200万件の精管切除術(パイプカット)が行われた。2020年には卵管結紮術が19万件、精管切除術が2600件になった。

また当局は一人っ子政策時の重要な手段だった人工妊娠中絶を抑制しようとしている。1991年には1400万件を超えたが、2020年には900万件弱へと3分の1以上減少した。それ以降、中国は精管切除術や卵管結紮術、中絶に関するデータ公表を中止している。

圧力を受ける民衆
カリフォルニア大学アーバイン校のワン・フェン教授(社会学)は、中国社会には二つの相反する変化が起きていると指摘する。女性の権利への認識が高まったことと、家父長制を推進する政策の拡大だ

共産党政治局トップ20人余りの中に、この四半世紀で初めて女性が入らなかった。習氏が2012年に権力を握って以降、世界経済フォーラムの「世界ジェンダーギャップ報告書」で中国は順位を38位下げ、2023年には146カ国中107位となっている。

中国政府はフェミニズムを外国勢力が後ろ盾となった邪悪なイデオロギーとみなす。女性の権利を唱える活動家を拘束し、そのソーシャルメディアのアカウントを削除するなど、何年にもわたって取り締まりを続けている。

それでも女性たちは人間関係や家族、仕事に関する自らの経験について、ネット上で以前より声高に発言している。彼女たちの投稿は個人的な形でフェミニズムを表しており、当局がそれを取り締まるのはより難しい。

シモーナ・ダイさん(31)は「オー!ママ」という出産と結婚に関するポッドキャストの配信を始めた。彼女の母親が1990年代初めに妊娠8カ月半で女児を中絶したことを知ったのがきっかけだ。

ダイさんは26歳で結婚したが、夫の男性優位主義的な考え方に耐えなければならず、特に新型コロナウイルス下では家事をめぐって言い争ったという。彼女は両家の家族から圧力は受けたものの、断固として出産したくないと考えるようになった。

それ以来、彼女は結婚生活に終止符を打ちたいと希望している。「離婚しなければ、子どもを産まなければならないかもしれない」と彼女は言う。【1月16日 WSJ】
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中央政府・党は「一人っ子政策」をやめれば人口増加に転じると単純に考えていたと推測されますが、現実はそう簡単ではないようです。

政府からの自動音声メッセージ「あなたに甘美な恋と適齢期の結婚が訪れますように。中国の血統をぜひ続けましょう」・・・・日本では考えられないことですが、中国は中国です。

「強要」ではなく、奨励策に力を入れる・・・とのことですが、この人口減少が続けば、「強制」の色合いが強まるのではないでしょうか。人工中絶なども禁止に近いレベルに規制されるのでは。避妊具購入にも制限がかかるかも。まったくの想像ですが。 なにせ中国ですから。

ただ、無理やり子供を持たせても、その後の生活が保証されなければ政府・党への不満が強まりますので、そこは政府・党としても考えどころです。

【フランス 一時は2を超える出生率 しかし、近年出生数減少で戦後最低に 政権も危機感】
総じて少子化、低出生率に悩む西側先進国にあって、フランスも日本と同様も1993年までは同じく出生率の低下に悩んでいましたが、その後の出産奨励政策が奏功し、2006年には合計特殊出生率がは「2」を超えるまでに回復しました。出生数増加のモデル国とも見なされていました。

しかし、そのフランも近年出生数減少が顕著になっています。

(【2022年11月9日 日経】)

****仏出生数、67万8000人 第2次大戦後最低****
フランスで昨年、出生数が第2次世界大戦以降で最低となった。国立統計経済研究所が16日、発表した。
INSEEによると、2023年の出生数は約67万8000人で、前年比で6.6%減となった。この数字は1946年以降で最も低い。

1人の女性が生涯に産む子どもの推定人数を示す合計特殊出生率は1.68で、前年の1.79から低下した。(後略)【1月17日 AFP】AFPBB News
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この事態にマクロン政権も危機感を強めています。

****仏大統領が育休拡充を約束、出生率急低下で危機感****
フランスでは出生率が第2次世界大戦後の最低水準に落ち込んだことを受け、マクロン大統領が16日、育児休暇制度の拡充を約束した。

欧州ではドイツ、イタリア、スペインなどの出生率が下がった中でも、フランスは長らく高い出生率を保ってきた。これは子育てや医療に関する寛大な税制や潤沢な公的給付の効果とされ、高齢化が社会に及ぼす悪影響を和らげ、長期的な成長期待をもたらしていた。

しかしフランス国立統計経済研究所(INSEE)によると、2023年の合計特殊出生率は平均1.68と22年の1.79を下回り、過去30年で最低を記録した。21年の出生率は1.83と、チェコと並んで欧州連合(EU)で最も高かった。

23年の出生率は、先進諸国で人口を維持する上で必要とされる2.2よりずっと低いだけでなく、マクロン政権が打ち出して猛烈な反対運動が起きた年金改革の前提となっている1.8も下回った形。つまりこれが続けば、年金財政の赤字は予定通り解消されない恐れが出てくる。【1月17日 ロイター】
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仏メディアは出生率の低下の背景について、女性の社会進出に伴う出産の高齢化や経済情勢の悪化、教育費など子育てにかかる費用の高騰、ロシアによるウクライナ侵攻を始めとする不安定な世界情勢や気候危機に関連する将来への不安などを挙げているようです。

政府の出産奨励策に対し、左派からは女性の選択を尊重すべきとの批判も出ています。

【韓国 多大な資金を投じても覆せない少子化】
最後に、「少子化」では世界最先端を行く韓国

(【2023年2月22日 日経】)

****韓国政党、選挙公約で人口減阻止対策 出生率低下止まらず****
韓国の主要政党は18日、4月の選挙を前に、人口減を食い止めるための取り組みとして公営住宅増設や融資を受けやすくするなどの対策を発表した。出生率が低下する中、「国家消滅」への懸念払拭を目指す。

各党が選挙公約で人口問題に焦点を当てたのは、2006年以来360兆ウォン(約2680億ドル)を超える支出を行っても、記録的な少子化を覆すことができなかったことへの警戒感を反映している。

韓国では25年に人口の5分の1以上が65歳を超える「超高齢化社会」に突入するとされており、政府は総人口が22年の5160万人から72年には3620万人にまで減少すると予測している。

野党「共に民主党」の李在明代表は「国家の消滅は遠い将来に起こることではなく、差し迫った課題だ」と述べた。

最新のデータによると、韓国の出生率(1人の女性が産む子どもの平均数)は24年には0.68に低下し、過去最低だった22年の0.78を超えて少子化がさらに進むと見込まれている。【1月19日 ロイター】
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出生率0.68・・・「国家消滅」の現実味が増しています。
大金を投じても少子化を覆すことができない・・・女性の社会的役割とか出産・子育てに関して伝統的価値観・家族観から抜け出した発想の転換が求められているように思います。その点は日本も同じでしょう。

もっと言えば、女性の権利を考えると西側先進国ではもはや少子化は止まらず、このままではかつての人口・経済を維持するのは無理なのでは・・・一方で、人口が増大して貧困に苦しむ国も多い・・・となれば、従来の国家という枠組みを超えた発想も必要なのでは・・・・というのは個人的妄想。
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韓国  止まらない少子化の流れ 「異次元の少子化対策」の日本も同じ轍を踏むのか

2023-02-22 23:23:25 | 人口問題

(【2月22日 東京】)

「異次元の少子化対策」なるものが議論される日本ですが、これまでも取り上げてきたように、日本や中国を含めた東アジア各国が少子化問題を抱えており、とりわけ日本以上に深刻なのが韓国です。

本日、韓国の新たな合計特殊出生率が発表されましたが、「0.78」となかなか驚異的です。今後更に0.70まで低下することも予想されています。(経済予測と異なり、変動要素が少ない人口統計予測はほぼ当たります。)

****22年出生率0.78で最低更新 OECD平均の半分以下=韓国****
韓国統計庁が22日発表した2022年の出生・死亡統計(暫定)によると、昨年の合計特殊出生率(1人の女性が生涯に産む子どもの推定数)は前年より0.03低い0.78で、統計を取り始めた1970年以降で最も低かった。

経済協力開発機構(OECD)加盟国の平均(1.59人)の半分にも満たない。韓国政府が対策に多額の予算を投じてきたにもかかわらず少子化に歯止めがかからず、昨年の出生数は25万人弱と、20年前の半分に落ち込んだ。

◇出生率 OECDで10年連続最低 
韓国の合計特殊出生率は1974年(3.77)に4を下回り、77年が2.99、84年が1.74と低下。2018年には0.98と、1を切った。19年が0.92、20年が0.84、21年が0.81、昨年が0.78と、過去最低を更新している。

OECD加盟国の中では13年から10年連続して最も低い。20年統計の比較でも、1を下回ったのは韓国だけだった。

韓国の22年の合計特殊出生率を広域自治体別にみると、ソウル市が0.59で最も低く、釜山市が0.72、仁川市が0.75と続いた。最も高かったのは世宗市で1.12。

昨年の合計特殊出生率0.78は、統計庁が昨年発表した将来推計人口上の予測(0.77)に近い。政府は、新型コロナウイルス禍による婚姻件数の減少などに伴い合計特殊出生率が24年には0.70まで落ち込むとみている。

◇出生数は20年前の半分 30年前の3分の1
22年の出生数は前年比4.4%減の24万9000人で、過去最少となった。02年(49万7000人)から20年でほぼ半減し、30年前の1992年(73万1000人)の3分の1に減った。(中略)

◇婚姻件数減少に晩婚化 少子化対策の効果も薄く
政府は少子化対策予算として06年から21年までに約280兆ウォン(約29兆円)を投じた。だが対策は総花的で実感できる効果が薄く、少子化の流れを根本から変えることはできなかったと指摘される。

仕事と育児の両立が難しい環境や私教育費の負担などを理由に、子どもを持つことをためらう人が多い。婚姻件数自体が減っている上、晩婚化も少子化に拍車をかけている。

婚姻件数は21年(19万3000件)に初めて20万件を下回り、22年も1000件減の19万2000件で過去最低を更新した。昨年の離婚件数は9万3000件だった。

女性が第1子を生む年齢は平均33.0歳で、前年から0.3歳上がった。韓国はOECD加盟国の中で最も高く、OECD平均(29.3歳)を3.7歳上回っている。

子どもの数にかかわらず、韓国で女性の出産年齢は平均33.5歳だった。前年より0.2歳高い。35歳以上での出産が全体の35.7%を占めた。(後略)【2月22日 聯合ニュース】
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韓国政府も上記記事にもあるように資金を投じた対策は行っていますが、少子化の流れを止める効果は出ていません。

少子化に拍車をかけているとされる晩婚化も進んでいます。

****晩婚化社会突入の韓国で驚きの調査結果…30代女性の結婚数が初めて“20代越え”、その要因は?****
自民党の麻生太郎副総裁は1月15日、福岡県で開かれた講演会で「少子化の最大の原因は晩婚化」との見方を示した。これが物議を醸し、各方面から多大なバッシングを受けている。

そんななか、お隣・韓国では結婚と関連した興味深い統計調査の結果が明らかになった。

国民からも苦言「育児の責任負うの厳しい」
1月10日、韓国統計庁国家統計ポータル(KOSIS)によると、1990年の統計作成開始以降初めて、30代女性の初婚件数が20代女性の初婚件数を追い越したことがわかった。

2021年の年齢別女性初婚は30代が7万6900件(49.1%)と、およそ半分を占める結果となった。
30代以下では20代が7万1263件(45.5%)、40代が6564件(4.2%)、10代が798件(0.5%)と続いた。

これに伴い、女性の出産年齢も平均32歳に上昇した。出産年齢高齢化の要因には子育ての負担増加など分析されている。

実際、韓国の出生児数は2020年に27万2300人、2021年に26万6000人と歴代最低記録を更新し続けている。出生児数平均である合計出産率を見ても、2021年は0.81人とOECD(経済協力開発機構)加盟国38カ国中最下位だった。

この結果を受け、韓国国内では「最近は結婚が早い人のほうがまれだ」「住宅価格が狂ったように上がっている現在、20代で家を持っている人も少ない。そんな状況で子どもを育てる責任を負うのは厳しい」など、自国が抱える経済状況の悪化が原因と分析する声が多く挙がっていた

確かに晩婚化は出生率を低める一因かもしれない。とはいえ、そもそも経済的な厳しさから結婚に踏み切れない人も多いのではないだろうか。日本でも韓国でも政府にはその部分を理解してほしいものだが…。【1月21日 サーチコリア】
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日本も、少子化・晩婚化は韓国同様であり、また、「異次元の少子化対策」なるものには(1)児童手当など経済支援強化、(2)産後ケアや学童保育への支援、(3)子育て関連分野の働き方改革推進などが盛り込まれるものとみられ、主に子育て世帯への支援を中心とする対策という点で韓国と似たような政策方針です。

ということは、少子化が止まらない韓国の状況を見ると、日本の「異次元の少子化対策」なるものの結果もあまり期待できないようにも思えます。

****なぜ、日本より出生率がはるかに下回る韓国と同じ道をたどるのか。岸田総理の「異次元の少子化対策」を不安視する理由****
岸田文雄首相が「異次元の少子化対策」を行うとの発表に声が集まっている。その中心となるのが子育て世帯へのバラマキ。

当然ないよりマシだが、似たような子育て世帯へのバラマキを行って出生率が上がらない国がある。それが隣国、韓国だ。なぜ隣国の失敗と同じ道を選ぶのか。

子育て世帯へのバラマキで出生率は上がるのか?
岸田首相が今月、「異次元の少子化対策」を行うと発言し、大きな議論を呼んでいます。具体的な内容は今後検討され、6月頃に骨太方針2023にてその全貌が見えてくると思われます。

現時点でわかっているのは、異次元の少子化対策は以下の3つが中心となるのではということです。
① 児童手当などの経済支援
② 学童や病児保育を含めた幼児・保育支援の拡充
③ 育児休業強化などの働き方改革

上記3点からわかるとおり、基本的には子育て世帯支援となっています。筆者の意見としては子育て世帯支援は必要と考えていますが、それにより出生率が上がるのか、というと疑問があります。

そう考える理由は2点あり、まず1点目は出生率低下の原因は未婚・晩婚化が大きな理由と考えているから。2点目はお隣の韓国が所得制限なしの給付など子育て世帯支援を行いながらも出生率が上がっていないことから、効果があまり出ないのではないかと考えています。

事実、日本が目指すような子育て世帯支援をすでに行っている韓国の出生率低下は止まっていません。それどころか、2021年の韓国の出生率は0.81となっており、日本を遙かに下回る状況となっています。

2013年から0〜5歳までの保育料は所得に関係なく無償
では、韓国の少子化対策として行われている政策を見てみましょう。まず保育料ですが、2013年3月から所得に関係なく0〜5歳までの保育料は無償となっています。さらに保育園に預けない家庭に対しても補助金を支給しています。(※2022「一般社団法人 平和政策研究所」調べ)

この保育料無償化の意外な結果として、各家庭の教育費支出は倍増しました。理由は、浮いたお金は結局習い事などに回り、家庭の教育費は負担減どころか負担増となったのです。

これは少し考えればシンプルなことです。教育が生み出す人的資本の上乗せとは相対的なものです。周りより優れているから良い大学に入り、より多くの所得を得ることになります。子供は放っておいても育つのは事実ですが、放っておいても多くの所得を稼げるようになるわけではありません。

教育熱心な都市部の人は、自身の経験からそれを理解しているからこそ、子供に対する教育費をたくさん使うのです。つまり所得制限を撤廃し、どの家庭にも給付が行われたとしても多くの家庭がその浮いた資金を教育に使う限り、終わりがありません。

事実、東京の出生率は全国平均より低く、韓国もソウルの出生率は全国平均より低い状態となっています。都市部の場合、浮いたお金は2人目の子供のためではなく、1人目の子供の教育費になる可能性が高いと思われます。

子育て世帯へのバラマキは他にもある
韓国の少子化対策は保育料無償のみではなく、他にも多く実施されています。8歳未満の子供がいる場合に支給される児童手当10万ウォン(日本円で約1万円)に加えて、さらに0〜1歳の期間には乳児手当(2023年から親給与という名称に変更)が支給されます。

導入初年の2022年は月30万ウォンからスタートし、2023年度は月70万ウォン、2024年度は計画通りいけば、月100万ウォンの支給となります。満1歳児は半額支給される予定となっており、親給与は現金支給となっています。

さらに出産時に200万ウォンを支給する制度も2022年に導入され、さらに医療費などに使用できるデビッドカード「国民幸福カード」の限度額も100万ウォンに引き上げ、合計すると300万ウォンの給付となります。

これらの給付額を見れば十分に感じそうなものですが、何度も言うとおり教育費とは相対的に増えていくものです。国が給付をしても使える人は周りより良い教育を与えようとします。

教育から得られるリターンとは不確実ですので、子供の幸せを望む親としてはできる限りの教育を与えてあげたいと思うものでしょう。英語を話せないより話せる方がいいと思うのであれば、お金があれば習わせたいと思うのは普通のことです。

絶対的な満足のいく教育水準など存在しません。大切なことは周りより良い教育を与えることです。だからこそ、どれだけ所得の高い人であっても教育費で大変と言うのです。

子供を望めない所得層を置き去りにする政府
さらに深掘りすると、子育て世帯支援は誰をターゲットにしているのか、という点です。かつて、階級闘争といえば「労働者と資本」でしたが、現在は「都市部エリート層と低所得労働者」の構造もできつつあります。

都市部のハイスペック夫婦は子育て支援の所得制限をなくすことを望んでいますが、一方で子供を産めること自体、贅沢と感じる人たちもいます。格差が広がると対極にいる人が増えるため、見ている世界が異なっていきます。そして、国はどちらをサポートしたいと思っているのかということです。

本当は子供を産みたいと望んでいたが、所得の問題で子供や結婚を諦めた人を想像してみてください。その人からすれば、子供を産める環境にいる人を優遇し、その財源として自分の税金や保険料の一部を利用されるかもしれないということです。これは納得できることなのでしょうか?

住宅ローン控除も同様で、家を買える人間を優遇し、家を買えない人間には何も優遇する制度がないということを気持ちよく思わない人が少なくないということです。

日本は韓国同様、婚外子が少ない社会です。つまり、未婚率を上げない限り出生率は上がらないという指摘は多くの識者がしています。

とはいえ、結婚するかどうかは個人の自由であるという意見がありますので、それよりは万人受けする子育て世帯支援を選ぶ政府の気持ちもわからなくはありません。

異次元の少子化対策をするのはいいですが、韓国のようにならないことを願うばかりです。【2月19日 集英社オンライン】
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仕事と育児の両立が難しい環境、教育費の負担(単に絶対額だけの話ではなく、上記記事のように、とにかく周囲より良い教育を受けさせたいという行動パターン)を改善変更するというのは、「異次元」以上の突っ込んだ「改革」が必要でしょう。そこにメスが入らない限り、いくら子育て支援でバラまいても限界があるということにも。

上記記事でも指定されているように、日本と韓国は出産に関して世界の他の国々と比較したとき「婚外子が少ない」という際立った特徴があります。

「出産=婚姻カップルが行う」というのは、日本の常識ではあっても、世界的には必ずしも常識ではないようになりつつあります。

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日本においては皆婚慣習がなお根強く、婚外子への風当たりも厳しい。このため、非正規労働者など若い貧困層が増えていても、米国とは異なり、結婚する余裕のない者は、男女のカップル形成に至らない、あるいはカップルを形成しても出産しないため、婚外子は少ないままなのだといえる。

もっとも、日本で、皆婚慣習が根強く、婚外子が少ない理由としては、他のアジア諸国と同様に古い家族形態が存続しているためというより、戦後、新しい自由な結婚制度が世界に先駆けて成立したからという見方も成り立つ。

日本国憲法は第24条1項で「婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない」としている。「合意のみ」とは、年齢や健康上の理由、親や親族の意見・強制、あるいは宗教、教会や地域の慣習による制約などは法律上は認めないという意味であり、そうした制約を前提とした一切の法令上の規定は憲法違反となる。

例えば、フランスのような結婚前の血液検査の義務付けなどはもってのほかだ。(中略)
こうして、日本では、役所への届出だけで婚姻が成立し、離婚も協議離婚が容易に認められるという世界でも最も簡便で自由な結婚制度が生まれた。

こうして、事実婚を選択する大きな理由が日本では欠落することになったことが、極端に低い婚外子比率にむすびついている側面もあろう。

そうした意味では、戦前の家制度等による伝統的結婚制度への反動が強かったため成立した世界で最も自由な結婚制度が、現代では、世界で最も遅れているかに見える極端に低い婚外子比率を生んでいることになろう。すなわち、日本は遅れているのではなく、進みすぎていて、未婚のカップルと婚外子が少なくなっているとも言えるのである。【「社会実情データ図録」】
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上記の「世界で最も自由な結婚制度によって日本では事実婚を選択する大きな理由がなく、その結果、極端に低い婚外子比率を生んでいる」という見方は、なんだか誤魔化されたような詭弁にも聞こえます。ごく常識的に、「日本においては皆婚慣習がなお根強く、婚外子への風当たりも厳しいため極端に低い婚外子比率を生んでいる」という方が実態に近いように思えます。

韓国では「非婚主義」も。
文化体育観光省が昨年12月に発表した世論調査では「結婚は必ずしなければならない」と考える人の割合は17・6%で、1996年の36・7%に比べて大きく減少しています。

結婚自体への価値観が大きく変わりつつあるなかで、出生数を増加させようとすれば、シングルマザーや事実婚カップルの出産・子育て支援という方面にも力を注ぐ必要があるのではないでしょうか。

今の日本の政治では「社会が変わってしまう」ということで忌避されそうですが、積極的に社会を変えるような取り組みでなければ、少子化の流れは止まらないようにも。
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世界人口80億人突破という一方で、男性の「精子数減少」の報告も

2022-11-18 22:20:36 | 人口問題

【人口80億時代  評価すべき面の他、懸念される面も】
15日報道によると、世界人口は80億人を突破したようです。増加の中心はアフリカ・インド。
来年にはインドは中国を抜くとも。

****世界の人口 80億人突破へ インドやアフリカなどで増加が顕著に****
国連によりますと、世界の人口が15日、80億人を突破します。人口の増加はインドやアフリカ諸国などで著しく、来年にはインドが中国を抜いて世界で最も人口が多くなるとみられています。

世界の人口は、平均寿命の伸びや母子の死亡率の低下を背景に増加を続けていて、この12年でおよそ10億人増え、国連は15日、80億人を突破するとしています。(中略)

また、今後2050年までに増える世界の人口の半数以上は、アフリカのサハラ砂漠以南の国々になる見通しだということです。

一方で日本を含む61の国や地域では、出生率の低下などから2050年までにそれぞれ人口が1%以上減少すると、予測されています。

世界全体の人口増加のペースも徐々に鈍っていて、2080年代におよそ104億人のピークを迎えたあとは、減少に転じる可能性があるとみられています。

国連の経済社会局は、人口が急速に増加している国では若者の教育や就労機会の確保が必要だとする一方、人口の増加が見込めない国では少子高齢化などに備える必要があると指摘しています。

2050年までに人口が大幅に増加するのは8か国
国連は、今後2050年までに人口が大幅に増加する国として、インド、ナイジェリア、パキスタン、コンゴ民主共和国、エチオピア、エジプト、フィリピン、タンザニアの8か国をあげています。

こうした国々で大幅な人口の増加が見込まれる要因として、国連は平均寿命が伸びる一方で、乳幼児などの死亡率が低下していることをあげています。

一方で急速な人口の増加や高い出生率が続くことについて、国連の経済社会局は、子どもたちへの教育が追いつかず、社会の発展を妨げるおそれがあるとしています。

そのうえで、ジェンダーの平等などを推進することで、高すぎる出生率をより安定したレベルに移行させることが可能になるとしています。

インドの人口増加の背景は
インドの現在の人口はおよそ14億人。政府は1950年代以降、人口を抑制するため、夫婦の子どもを2人までとすることなどを目標にした政策を展開し、避妊手術なども行われましたが、現在は国としての厳格な制限はありません。

人口は最近毎年1%増えていて、背景の1つには衛生環境の改善などによる乳幼児の死亡率の低下があるとみられています。政府の統計によりますと、乳幼児が亡くなる割合は2000年には1000人当たり68人でしたが、2020年には28人へと大幅に減っています。

それに加えて、高い経済成長が続く中、平均寿命も1970年代前半には49.7歳だったのが、2000年代後半には69.7歳へと、20年も長くなっています。

人口構成も、これから子どもを持つことが想定される若年層の割合が高い「釣り鐘型」になっていることなどから、当面は人口の増加が続くとみられていて、2050年には16億人を超えるという推計も出ています。

2050年までには4人に1人がアフリカの人々と予測
人口増加の波はアフリカにも押し寄せていて、国連によりますと2022年のアフリカの人口は14億人余りと、世界全体のおよそ18%ですが、2050年までには24億人を超え、世界の人口の4人に1人がアフリカの人々になると予測されています。

人口急増の背景にあるのが高い出生率で、国連のデータによりますと、サハラ砂漠以南の国々では1人の女性が一生のうちに産む子どもの数の指標は平均して4.5となっていて、世界平均の2.3を大きく上回っています。

さらに、アフリカでは人口が増加するだけでなく、平均年齢も世界全体と比較して若いのが特徴で、市場としての魅力も高く、世界から注目されています。

近年はインターネットの普及を背景に、保健医療や物流、農業などこれまで課題を抱えていた分野で新たなサービスを生み出す現地のスタートアップ企業も多く生まれていることから、世界から投資が集まっていて、日本も官民をあげて投資を増やす動きを活発化させています。

一方で、増え続ける人口に教育や雇用が追いつかず、格差の拡大も大きな問題となっているほか、貧困や飢餓が深刻さを増している国もあり、アフリカの人口問題は世界が取り組むべき課題になっています。

国連機関 声明 ”格差や不平等の解消が重要”
世界の人口が80億人に達することについて、国連人口基金などの国連の機関が共同で声明を発表しました。

声明では、人口増加の背景となっている世界の衛生状況の改善や乳幼児死亡率の低下などを歓迎する一方で、「急激な人口の増加は、貧困、飢餓、栄養失調との闘いや、保健サービスや教育の普及を難しくする」と、人口増加によって生じる課題もあげています。

そのうえで「保健、教育、ジェンダー平等の推進などのSDGs=持続可能な開発目標の達成は、世界人口の増加のペースを遅らせる」として、改めて格差や不平等の解消が重要になると指摘しています。

また「人口増加は世界の最も貧しい国に集中していて、そのほとんどがサハラ以南のアフリカの国々だ。すべての国が、人口の増減にかかわらず国民が質の高い生活を送れるようにするとともに、最も弱い立場の人に配慮しなければならない」として、国際社会が協力して取り組まなければならないと強調しました。

国連人口基金「人口の増減のデータに基づいた政策を」
世界の人口が80億人を突破することについて、日本を訪れていたUNFPA=国連人口基金のコミュニケーション・戦略的パートナーシップ局のイアン・マクファーレン局長はNHKのインタビューに対し「人々が長生きし、女性が出産で命を落とすことが減ったことを、まずは祝福すべきだ。一方で、環境への負荷など世界への影響を懸念する声もあがるだろう」と述べました。

そのうえで、食料不足や格差拡大への懸念については「人口の増減について状況を正確に把握するとともに、人々が平等にサービスを享受でき、社会に貢献できるような法的枠組みも必要だ」と述べ、各国が取り組む課題や責任も生じるとして、人口の増減のデータに基づいた政策を進める必要性を指摘しました。

また「出生率が最も高い国の1つのニジェールでは、女性1人当たりから7人近くの子どもが生まれていて、多くの場合、女性はこれほど多くの子どもを望んでいない」と述べたうえで「女性や少女が保健サービスや避妊方法へのアクセスを保証され、結婚や出産について自分の意思で決める環境をつくることが変化をもたらす」として、女性に教育や選択肢を提供する重要性を強調しました。【11月15日 NHK】
*********************

人口増加を可能にした諸条件・環境の改善という喜ぶべき側面と、急激な人口増加がもたらす貧困、飢餓、栄養失調などの深刻化、教育・雇用機会の不足への不安、女性の権利・教育が十分でなく意図せざる妊娠・出産で増えている側面・・・評価すべき側面と懸念すべき側面の両方が考えられる現実です。

国連報告書は温暖化や食糧不足への懸念も指摘しています。

********************
国連は報告書で人口の急速な増加が「地球温暖化や気候変動など様々な環境劣化を引き起こしている」と指摘し、「化石燃料への過度の依存から脱却する必要がある」と警鐘を鳴らした。

化石燃料の使用などによる二酸化炭素(CO2)の排出量は過去半世紀で倍増した一方、1990年以降、日本の国土の11倍超にあたる面積の森林が消失した。

温暖化の影響として「小さな島国が海面上昇の危機に直面している」と指摘。南太平洋の島国ツバルのナタノ首相は8日、エジプトで開催中の国連気候変動枠組み条約第27回締約国会議(COP27)で「温暖化する海が我々の土地をのみ込み始めている」と訴え、各国に化石燃料の廃止を求めた。

海面は今世紀末で最大55センチ上昇するとの予測もある。平均海抜約2メートルのツバルでは国土消失の危機に直面している。インド洋の島国モルディブも国土の大半が水没する恐れがあり、人工島への住民移住を進めている。

食糧不足
食糧問題も深刻な課題だ。報告書は「人口の増加が見込まれる多くの国が低所得国だ」と指摘し、「飢餓」が増える可能性を指摘した。特にアフリカは、現在の約13億人から約25億人に倍増すると予測される。アフリカではすでに気候変動による干ばつに加え、ロシアのウクライナ侵略による穀物価格の急騰に直面しているが、今後は一層厳しい状況に置かれそうだ。

国連世界食糧計画(WFP)によると昨年、アフリカ諸国を中心に約8億2800万人が飢餓状態となった。特に南スーダンは来年、国民の3分の2にあたる780万人に命の危険が迫る「深刻な飢餓状態」に直面する恐れがあるという。

国連は報告書で、先進国が低所得国に対し、「技術協力や資金援助」する必要性を訴えている。【11月14日 読売】
**********************

【男性の「精子数減少」が進んでいる・・・本当だろうか?】
人口増加・・・という話の一方で、男性の精子の数が激減しておりヒトの妊娠可能性が低下しているという報告も。

****ヒトの精子の減少が加速、70年代から6割減、打つ手見えず****

今から5年前、男性の精子の数が激減しているという研究結果が出され、人類滅亡の危機かと騒がれた。そして今回、新たに発表された研究によって、精子の数はさらに減り、しかもそのスピードが速まっていることが明らかになった。

5年前の研究は、2017年7月25日付けで学術誌「Human Reproduction Update」に発表された。それによると、北米、ヨーロッパ、オーストラリア、ニュージーランドの男性の精子を分析したところ、1回の射精に含まれる精子の数が1973年から2011年までに50%以上減少していたという。

その後、同じ研究者が率いるチームが2014年から2019年までに公開された精子サンプルの研究結果を分析し、これを以前のデータに付け加えた。新たなメタ分析は、世界的な傾向を知るため、中南米、アフリカ、アジアを含め1万4233人分のサンプルを使用した。

すると、精子の総数は70年代に比べて62%減少していたことが判明。そればかりか、1年ごとの減少率は2000年以降2倍になっていた。この結果は、11月15日付けで同じく「Human Reproduction Update」に掲載されている。

「数の減少速度は緩やかになるどころか、激しい落ち込み方です。減り方の程度としては全体的にほぼ同じと言えますが、近年に注目すれば加速していることがわかります」と、米ニューヨーク市にあるマウントサイナイ医科大学の生殖・環境疫学者で、論文の共著者でもあるシャナ・スワン氏はコメントする。

「ある時点で下げ止まるのではないかと期待していたのですが、その反対のことが起こっているようです。このままではほとんどの男性が不妊状態になるところまでいって後戻りできなくなるか、健康面で他の問題が現れてしまうのではないかと懸念しています」と、論文の筆頭著者でイスラエル、ヘブライ大学ハダッサー・ブラウン公衆衛生学部の医学疫学者であるハガイ・レビーン氏は話す。(中略)

世界的な精子数減少の原因は?
2017年と2022年のメタ分析はいずれも、何が精子数の低下を引き起こしているかについては検証していない。しかし、環境や、喫煙や肥満など生活習慣による要因を示唆する研究はある。(中略)

精子の数の減少が、中南米、アフリカ、アジアの男性にも見られたということは、その原因となる生活習慣や環境因子が世界的に存在することを示唆している。

しかし、減少を加速させているものは何かという問いには、誰もはっきりした答えを持っていない。レビーン氏は、原因は一つではなく、いくつもの化学物質が環境中で混じり合い、それぞれのマイナス効果が拡大されてより大きな問題になってしまったのではないかと考えている。または、長い時間をかけて繰り返しさらされたことが影響しているのかもしれないという。

最新のメタ分析には50年分のデータが含まれていることから、スワン氏は何世代にもわたって環境化学物質の影響が蓄積することで問題が加速するのではないかと考えている。

母親が妊娠中にさらされるのと同じ化学物質や生活習慣の要因(不健康な食生活、喫煙、肥満など)に、胎児もさらされる。そして誕生後、これが次の世代へと受け継がれる。また、母親だけでなく父親から受け継がれる可能性もある。母親の子宮内で、父親からの精子のなかにある何かが生殖器の発達を妨げる原因になっているのかもしれない。

これらの環境化学物質や有害な生活習慣にさらされる世代が今後も増え続ければ、その影響は蓄積する一方かもしれない。【11月18日 ナショナル ジオグラフィック日本版】
**********************

本当でしょうか? もし、本当なら「温暖化」などよりはるかに直接的な人類滅亡ぼ脅威かも。
しかし、冒頭のように70年代から右肩上がりに世界人口は増加しており、そのことは上記「人類滅亡の危機」が間違っている証拠・・・・なのかも。

もちろん、上記のような「精子数減少」は、いままでのところ絶対数としては妊娠可能性を大きく阻害するレベルにはいたっておらず、一方で、衛生環境・医学などの改善の結果増加している。しかし、このまま「精子数減少」が進行すればやがては・・・という推論も成り立ちます。

5年前の2017年の報告の際も、その真偽について賛否両論がありました。
その報告によれば、「経済的に豊かな先進国に住む男性の間で、精子の濃度が1973年の1ミリリットル当たり9900万から、2011年に4700万まで減った。精子の総数も3億3750万から1億3750万に減少し、全体で60%近く減った。」とのことでした。

****「精子減少で人類滅亡」のウソ****
<精子の数が減ったからといって即パニックに陥る必要はない>
BBCのタイトルは衝撃的だった。「精子数の減少で人類滅亡の恐れも」
このニュースの根拠は、精子の濃度と総数に関する過去の研究結果を見直し「メタ分析(分析の分析)」をした研究だ。(中略)

それでは、精子の数の減少が原因で人類が滅亡する日は近いのだろうか? 恐らくそんなことはない。

2013年、ニューヨークのプレスバイテリアン病院と米ワイルコーネル医科大学で生殖医学を専門とするハリー・フィッチと彼の同僚は、1992年以降に発表された精子の質に関する35件の研究結果を包括的に分析し、精子の数をめぐるデータのトレンドを調べた。

フィッチらは1万8109人の男性を対象にした8件の研究で、精液の質の低下がみられたと報告した。一方11万2386人を対象にした21件の研究で、精液の質は同じ、もしくは良くなっていた。さらに2万6007人を対象にした6件の研究は、曖昧もしくは矛盾する結果だった。

精子の数はまだ十分
フィッチに言わせれば、要するに「世界中で精子のパラメーター値が下がっているという主張は、まだ科学的に証明されていない」のだ。

フィッチは、研究チームは複合的な原因を考慮しようと努めた割に、肥満の増加やマリファナの服用、座ることの多い生活スタイル、精巣の温度上昇など元に戻すことも可能な要因が精子の減少を引き起こしているかもしれないことを十分に考慮しなかったのではないか、と言う。

世界保健機関(WHO)によれば、正常で受精可能な精子の濃度は1ミリリットル当たり1500万だ。今にも人類が滅亡しそうな印象を与える見出しは、少々大げさだろう。【2017年8月9日 Newsweek】
*********************

一方で、この報告を重視する立場としては、環境保護団体グリーンピースのように、精子数の減少は海洋汚染が原因だと訴えるキャンペーンを行うものなども。

体内にとりこまれるプラスチックが原因だとする説も。
“スカケベックは、もっと決定的な原因を見つけた。それは産業革命に始まり、20世紀における石油化学産業の勃興がもたらしたもの。石油の浪費による二酸化炭素の大量排出は地球の温暖化を招いたが、石油化学産業はプラスチックの微粒子をまき散らし、それを体内に取り込んだ私たちのホルモン(とりわけ女性ホルモンと男性ホルモン)のバランスに深刻な影響を与えていた。”【2018年11月27日 “止まらない精子減少の行方──人類の終わりのはじまり?” GQ】

あるいは、現代の一夫一妻制とセックス頻度の減少が「精子減少」と「睾丸の萎縮」につながっているとの説も。

“文化の発展とともに一夫一妻になり、結婚した女性は配偶者としかセックスをしなくなりました。
すると、どうなるか。精子の競争が生じないため、弱い精子であっても受精できる確率が高くなります。弱い遺伝子を受け継いだ子どもの繁殖力は低い可能性があり、このような状態が続くことで人類全体の繁殖力が低下する(クリストファー・ライアン/カシルダ・ジェタ)【2019年8月16日 「精子が減ってるって本当?〜男性不妊に多い造精機能障害と予防法〜」】

「精子数減少」が本当なのか? もし本当なら、どの程度影響しているのか?  よくわかりません。
2017年報告から、世間があまり大騒ぎしていないことからすれば、さほど気にする必要のないことなのでしょう・・・・多分。
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世界人口80億人突破という一方で、男性の「精子数減少」の報告も

2022-11-18 22:20:36 | 人口問題

【人口80億時代  評価すべき面の他、懸念される面も】
15日報道によると、世界人口は80億人を突破したようです。増加の中心はアフリカ・インド。
来年にはインドは中国を抜くとも。

****世界の人口 80億人突破へ インドやアフリカなどで増加が顕著に****
国連によりますと、世界の人口が15日、80億人を突破します。人口の増加はインドやアフリカ諸国などで著しく、来年にはインドが中国を抜いて世界で最も人口が多くなるとみられています。

世界の人口は、平均寿命の伸びや母子の死亡率の低下を背景に増加を続けていて、この12年でおよそ10億人増え、国連は15日、80億人を突破するとしています。(中略)

また、今後2050年までに増える世界の人口の半数以上は、アフリカのサハラ砂漠以南の国々になる見通しだということです。

一方で日本を含む61の国や地域では、出生率の低下などから2050年までにそれぞれ人口が1%以上減少すると、予測されています。

世界全体の人口増加のペースも徐々に鈍っていて、2080年代におよそ104億人のピークを迎えたあとは、減少に転じる可能性があるとみられています。

国連の経済社会局は、人口が急速に増加している国では若者の教育や就労機会の確保が必要だとする一方、人口の増加が見込めない国では少子高齢化などに備える必要があると指摘しています。

2050年までに人口が大幅に増加するのは8か国
国連は、今後2050年までに人口が大幅に増加する国として、インド、ナイジェリア、パキスタン、コンゴ民主共和国、エチオピア、エジプト、フィリピン、タンザニアの8か国をあげています。

こうした国々で大幅な人口の増加が見込まれる要因として、国連は平均寿命が伸びる一方で、乳幼児などの死亡率が低下していることをあげています。

一方で急速な人口の増加や高い出生率が続くことについて、国連の経済社会局は、子どもたちへの教育が追いつかず、社会の発展を妨げるおそれがあるとしています。

そのうえで、ジェンダーの平等などを推進することで、高すぎる出生率をより安定したレベルに移行させることが可能になるとしています。

インドの人口増加の背景は
インドの現在の人口はおよそ14億人。政府は1950年代以降、人口を抑制するため、夫婦の子どもを2人までとすることなどを目標にした政策を展開し、避妊手術なども行われましたが、現在は国としての厳格な制限はありません。

人口は最近毎年1%増えていて、背景の1つには衛生環境の改善などによる乳幼児の死亡率の低下があるとみられています。政府の統計によりますと、乳幼児が亡くなる割合は2000年には1000人当たり68人でしたが、2020年には28人へと大幅に減っています。

それに加えて、高い経済成長が続く中、平均寿命も1970年代前半には49.7歳だったのが、2000年代後半には69.7歳へと、20年も長くなっています。

人口構成も、これから子どもを持つことが想定される若年層の割合が高い「釣り鐘型」になっていることなどから、当面は人口の増加が続くとみられていて、2050年には16億人を超えるという推計も出ています。

2050年までには4人に1人がアフリカの人々と予測
人口増加の波はアフリカにも押し寄せていて、国連によりますと2022年のアフリカの人口は14億人余りと、世界全体のおよそ18%ですが、2050年までには24億人を超え、世界の人口の4人に1人がアフリカの人々になると予測されています。

人口急増の背景にあるのが高い出生率で、国連のデータによりますと、サハラ砂漠以南の国々では1人の女性が一生のうちに産む子どもの数の指標は平均して4.5となっていて、世界平均の2.3を大きく上回っています。

さらに、アフリカでは人口が増加するだけでなく、平均年齢も世界全体と比較して若いのが特徴で、市場としての魅力も高く、世界から注目されています。

近年はインターネットの普及を背景に、保健医療や物流、農業などこれまで課題を抱えていた分野で新たなサービスを生み出す現地のスタートアップ企業も多く生まれていることから、世界から投資が集まっていて、日本も官民をあげて投資を増やす動きを活発化させています。

一方で、増え続ける人口に教育や雇用が追いつかず、格差の拡大も大きな問題となっているほか、貧困や飢餓が深刻さを増している国もあり、アフリカの人口問題は世界が取り組むべき課題になっています。

国連機関 声明 ”格差や不平等の解消が重要”
世界の人口が80億人に達することについて、国連人口基金などの国連の機関が共同で声明を発表しました。

声明では、人口増加の背景となっている世界の衛生状況の改善や乳幼児死亡率の低下などを歓迎する一方で、「急激な人口の増加は、貧困、飢餓、栄養失調との闘いや、保健サービスや教育の普及を難しくする」と、人口増加によって生じる課題もあげています。

そのうえで「保健、教育、ジェンダー平等の推進などのSDGs=持続可能な開発目標の達成は、世界人口の増加のペースを遅らせる」として、改めて格差や不平等の解消が重要になると指摘しています。

また「人口増加は世界の最も貧しい国に集中していて、そのほとんどがサハラ以南のアフリカの国々だ。すべての国が、人口の増減にかかわらず国民が質の高い生活を送れるようにするとともに、最も弱い立場の人に配慮しなければならない」として、国際社会が協力して取り組まなければならないと強調しました。

国連人口基金「人口の増減のデータに基づいた政策を」
世界の人口が80億人を突破することについて、日本を訪れていたUNFPA=国連人口基金のコミュニケーション・戦略的パートナーシップ局のイアン・マクファーレン局長はNHKのインタビューに対し「人々が長生きし、女性が出産で命を落とすことが減ったことを、まずは祝福すべきだ。一方で、環境への負荷など世界への影響を懸念する声もあがるだろう」と述べました。

そのうえで、食料不足や格差拡大への懸念については「人口の増減について状況を正確に把握するとともに、人々が平等にサービスを享受でき、社会に貢献できるような法的枠組みも必要だ」と述べ、各国が取り組む課題や責任も生じるとして、人口の増減のデータに基づいた政策を進める必要性を指摘しました。

また「出生率が最も高い国の1つのニジェールでは、女性1人当たりから7人近くの子どもが生まれていて、多くの場合、女性はこれほど多くの子どもを望んでいない」と述べたうえで「女性や少女が保健サービスや避妊方法へのアクセスを保証され、結婚や出産について自分の意思で決める環境をつくることが変化をもたらす」として、女性に教育や選択肢を提供する重要性を強調しました。【11月15日 NHK】
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人口増加を可能にした諸条件・環境の改善という喜ぶべき側面と、急激な人口増加がもたらす貧困、飢餓、栄養失調などの深刻化、教育・雇用機会の不足への不安、女性の権利・教育が十分でなく意図せざる妊娠・出産で増えている側面・・・評価すべき側面と懸念すべき側面の両方が考えられる現実です。

国連報告書は温暖化や食糧不足への懸念も指摘しています。

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国連は報告書で人口の急速な増加が「地球温暖化や気候変動など様々な環境劣化を引き起こしている」と指摘し、「化石燃料への過度の依存から脱却する必要がある」と警鐘を鳴らした。

化石燃料の使用などによる二酸化炭素(CO2)の排出量は過去半世紀で倍増した一方、1990年以降、日本の国土の11倍超にあたる面積の森林が消失した。

温暖化の影響として「小さな島国が海面上昇の危機に直面している」と指摘。南太平洋の島国ツバルのナタノ首相は8日、エジプトで開催中の国連気候変動枠組み条約第27回締約国会議(COP27)で「温暖化する海が我々の土地をのみ込み始めている」と訴え、各国に化石燃料の廃止を求めた。

海面は今世紀末で最大55センチ上昇するとの予測もある。平均海抜約2メートルのツバルでは国土消失の危機に直面している。インド洋の島国モルディブも国土の大半が水没する恐れがあり、人工島への住民移住を進めている。

食糧不足
食糧問題も深刻な課題だ。報告書は「人口の増加が見込まれる多くの国が低所得国だ」と指摘し、「飢餓」が増える可能性を指摘した。特にアフリカは、現在の約13億人から約25億人に倍増すると予測される。アフリカではすでに気候変動による干ばつに加え、ロシアのウクライナ侵略による穀物価格の急騰に直面しているが、今後は一層厳しい状況に置かれそうだ。

国連世界食糧計画(WFP)によると昨年、アフリカ諸国を中心に約8億2800万人が飢餓状態となった。特に南スーダンは来年、国民の3分の2にあたる780万人に命の危険が迫る「深刻な飢餓状態」に直面する恐れがあるという。

国連は報告書で、先進国が低所得国に対し、「技術協力や資金援助」する必要性を訴えている。【11月14日 読売】
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【男性の「精子数減少」が進んでいる・・・本当だろうか?】
人口増加・・・という話の一方で、男性の精子の数が激減しておりヒトの妊娠可能性が低下しているという報告も。

****ヒトの精子の減少が加速、70年代から6割減、打つ手見えず****

今から5年前、男性の精子の数が激減しているという研究結果が出され、人類滅亡の危機かと騒がれた。そして今回、新たに発表された研究によって、精子の数はさらに減り、しかもそのスピードが速まっていることが明らかになった。

5年前の研究は、2017年7月25日付けで学術誌「Human Reproduction Update」に発表された。それによると、北米、ヨーロッパ、オーストラリア、ニュージーランドの男性の精子を分析したところ、1回の射精に含まれる精子の数が1973年から2011年までに50%以上減少していたという。

その後、同じ研究者が率いるチームが2014年から2019年までに公開された精子サンプルの研究結果を分析し、これを以前のデータに付け加えた。新たなメタ分析は、世界的な傾向を知るため、中南米、アフリカ、アジアを含め1万4233人分のサンプルを使用した。

すると、精子の総数は70年代に比べて62%減少していたことが判明。そればかりか、1年ごとの減少率は2000年以降2倍になっていた。この結果は、11月15日付けで同じく「Human Reproduction Update」に掲載されている。

「数の減少速度は緩やかになるどころか、激しい落ち込み方です。減り方の程度としては全体的にほぼ同じと言えますが、近年に注目すれば加速していることがわかります」と、米ニューヨーク市にあるマウントサイナイ医科大学の生殖・環境疫学者で、論文の共著者でもあるシャナ・スワン氏はコメントする。

「ある時点で下げ止まるのではないかと期待していたのですが、その反対のことが起こっているようです。このままではほとんどの男性が不妊状態になるところまでいって後戻りできなくなるか、健康面で他の問題が現れてしまうのではないかと懸念しています」と、論文の筆頭著者でイスラエル、ヘブライ大学ハダッサー・ブラウン公衆衛生学部の医学疫学者であるハガイ・レビーン氏は話す。(中略)

世界的な精子数減少の原因は?
2017年と2022年のメタ分析はいずれも、何が精子数の低下を引き起こしているかについては検証していない。しかし、環境や、喫煙や肥満など生活習慣による要因を示唆する研究はある。(中略)

精子の数の減少が、中南米、アフリカ、アジアの男性にも見られたということは、その原因となる生活習慣や環境因子が世界的に存在することを示唆している。

しかし、減少を加速させているものは何かという問いには、誰もはっきりした答えを持っていない。レビーン氏は、原因は一つではなく、いくつもの化学物質が環境中で混じり合い、それぞれのマイナス効果が拡大されてより大きな問題になってしまったのではないかと考えている。または、長い時間をかけて繰り返しさらされたことが影響しているのかもしれないという。

最新のメタ分析には50年分のデータが含まれていることから、スワン氏は何世代にもわたって環境化学物質の影響が蓄積することで問題が加速するのではないかと考えている。

母親が妊娠中にさらされるのと同じ化学物質や生活習慣の要因(不健康な食生活、喫煙、肥満など)に、胎児もさらされる。そして誕生後、これが次の世代へと受け継がれる。また、母親だけでなく父親から受け継がれる可能性もある。母親の子宮内で、父親からの精子のなかにある何かが生殖器の発達を妨げる原因になっているのかもしれない。

これらの環境化学物質や有害な生活習慣にさらされる世代が今後も増え続ければ、その影響は蓄積する一方かもしれない。【11月18日 ナショナル ジオグラフィック日本版】
**********************

本当でしょうか? もし、本当なら「温暖化」などよりはるかに直接的な人類滅亡ぼ脅威かも。
しかし、冒頭のように70年代から右肩上がりに世界人口は増加しており、そのことは上記「人類滅亡の危機」が間違っている証拠・・・・なのかも。

もちろん、上記のような「精子数減少」は、いままでのところ絶対数としては妊娠可能性を大きく阻害するレベルにはいたっておらず、一方で、衛生環境・医学などの改善の結果増加している。しかし、このまま「精子数減少」が進行すればやがては・・・という推論も成り立ちます。

5年前の2017年の報告の際も、その真偽について賛否両論がありました。
その報告によれば、「経済的に豊かな先進国に住む男性の間で、精子の濃度が1973年の1ミリリットル当たり9900万から、2011年に4700万まで減った。精子の総数も3億3750万から1億3750万に減少し、全体で60%近く減った。」とのことでした。

****「精子減少で人類滅亡」のウソ****
<精子の数が減ったからといって即パニックに陥る必要はない>
BBCのタイトルは衝撃的だった。「精子数の減少で人類滅亡の恐れも」
このニュースの根拠は、精子の濃度と総数に関する過去の研究結果を見直し「メタ分析(分析の分析)」をした研究だ。(中略)

それでは、精子の数の減少が原因で人類が滅亡する日は近いのだろうか? 恐らくそんなことはない。

2013年、ニューヨークのプレスバイテリアン病院と米ワイルコーネル医科大学で生殖医学を専門とするハリー・フィッチと彼の同僚は、1992年以降に発表された精子の質に関する35件の研究結果を包括的に分析し、精子の数をめぐるデータのトレンドを調べた。

フィッチらは1万8109人の男性を対象にした8件の研究で、精液の質の低下がみられたと報告した。一方11万2386人を対象にした21件の研究で、精液の質は同じ、もしくは良くなっていた。さらに2万6007人を対象にした6件の研究は、曖昧もしくは矛盾する結果だった。

精子の数はまだ十分
フィッチに言わせれば、要するに「世界中で精子のパラメーター値が下がっているという主張は、まだ科学的に証明されていない」のだ。

フィッチは、研究チームは複合的な原因を考慮しようと努めた割に、肥満の増加やマリファナの服用、座ることの多い生活スタイル、精巣の温度上昇など元に戻すことも可能な要因が精子の減少を引き起こしているかもしれないことを十分に考慮しなかったのではないか、と言う。

世界保健機関(WHO)によれば、正常で受精可能な精子の濃度は1ミリリットル当たり1500万だ。今にも人類が滅亡しそうな印象を与える見出しは、少々大げさだろう。【2017年8月9日 Newsweek】
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一方で、この報告を重視する立場としては、環境保護団体グリーンピースのように、精子数の減少は海洋汚染が原因だと訴えるキャンペーンを行うものなども。

体内にとりこまれるプラスチックが原因だとする説も。
“スカケベックは、もっと決定的な原因を見つけた。それは産業革命に始まり、20世紀における石油化学産業の勃興がもたらしたもの。石油の浪費による二酸化炭素の大量排出は地球の温暖化を招いたが、石油化学産業はプラスチックの微粒子をまき散らし、それを体内に取り込んだ私たちのホルモン(とりわけ女性ホルモンと男性ホルモン)のバランスに深刻な影響を与えていた。”【2018年11月27日 “止まらない精子減少の行方──人類の終わりのはじまり?” GQ】

あるいは、現代の一夫一妻制とセックス頻度の減少が「精子減少」と「睾丸の萎縮」につながっているとの説も。

“文化の発展とともに一夫一妻になり、結婚した女性は配偶者としかセックスをしなくなりました。
すると、どうなるか。精子の競争が生じないため、弱い精子であっても受精できる確率が高くなります。弱い遺伝子を受け継いだ子どもの繁殖力は低い可能性があり、このような状態が続くことで人類全体の繁殖力が低下する(クリストファー・ライアン/カシルダ・ジェタ)【2019年8月16日 「精子が減ってるって本当?〜男性不妊に多い造精機能障害と予防法〜」】

「精子数減少」が本当なのか? もし本当なら、どの程度影響しているのか?  よくわかりません。
2017年報告から、世間があまり大騒ぎしていないことからすれば、さほど気にする必要のないことなのでしょう・・・・多分。
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日本  加速する出生数減少 多様な家族形態を認め、「男は仕事、女は家事」という意識の変革が必要

2022-11-11 23:20:11 | 人口問題
(【11月10日 NHK)】

【出生数 予測より8年早く80万人割れ】
今更の話ではありますが、日本の少子化が止まりません。
年間の出生数は、第1次ベビーブームにあたる1949年には最多の269万超を記録しましたが、2016年には100万人を下回り、今年は80万人を切ると推測されています。

単に減少しているだけでなく、近年の減少速度が国が予測していたペースを遥かに凌ぐものになっています。

****ことしの出生数 初めて80万人下回るか 国の予測より8年早く****
1年間に生まれる子どもの数を示す「出生数」について、大手シンクタンク「日本総研」はことし全国でおよそ77万人と、国の統計開始以降、初めて80万人を下回る見通しになったとする推計をまとめました。

ことし80万人を下回れば国の予測よりも8年早く、少子化が想定を上回るペースで進んでいることになります。
日本総合研究所は厚生労働省が公表していることし1月から8月までに生まれた子どもの数などをもとに、1年間の出生数を推計しました。

それによりますとことしの出生数は全国でおよそ77万人で、前の年から4万人余り、率にして5%程度減少し、国が統計を取り始めた1899年以降で初めて80万人を下回る見通しになったということです。

厚生労働省によりますと、出生数は1970年代半ばから減少傾向が続いていて、ことしも国内で生まれた外国人も含んだ8月までの速報値で52万人余りと、前の年より2万7000人余り減少しています。

国立社会保障・人口問題研究所が2017年に公表した予測では、出生数が80万人を下回るのは8年後の2030年となっていて少子化が想定を上回るペースで進んでいることになります。

推計を行った日本総合研究所は少子化の進行について、新型コロナの感染が拡大する中、結婚の件数がおととし、去年と、減少が続いていることが関係していると分析しています。(中略)

結婚の件数も減少傾向 来年以降も低下局面か
厚生労働省によりますと1年間の結婚の件数も2000年代から減少傾向が続いています。

最近では、2019年はいわゆる「令和婚」で前の年から増加し、59万9007組となりましたが、2020年は前の年と比べて7万3500組減少して52万5507組に、2021年は前の年から2万4369組減少して50万1138組と、戦後、最も少なくなりました。

また、国立社会保障・人口問題研究所が5年に1回程度行っている出生動向基本調査では、コロナ禍の2021年の時点で「一生結婚するつもりがない」と回答した人が18歳から34歳までの世代で男女とも増加していることから、日本総合研究所は結婚の件数が今後も減少していくことが懸念されるとしています。

専門家「今後10年間は対策するうえで特に重要な期間」
 推計を行った日本総合研究所の藤波匠 上席主任研究員は、ことしの出生数が80万人を下回る見通しになったことについて「2015年の出生数は100万人を超えていた中、わずか7年で20%以上減少してしまうことになる。少子化が進むと国内の社会保障の問題や経済成長などにも大きな影響があると考えられ、対策は喫緊の課題だ」と指摘しています。

そのうえで「1990年代の出生数は120万人程度と比較的安定していた時期で、その年代の子どもたちが20代から30代となってちょうど結婚や出産の時期を迎えているので、今後の10年間は少子化対策に取り組むうえで特に重要な期間になるのではないか」と指摘しています。【11月10日 NHK】
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出生数、ひいては人口動向は経済政策、社会保障制度など国の全ての計画の根幹をなすものです。

その予測において、2017年に80万人を切る年を13年後の2030年に予測していたのが、実際には5年後の2022年・・・・現実において想定を超えるものがった面もあるのでしょうが、予測事態が“(異様に)甘い”というか、“(根拠なき)期待”に近いものだったというか、“(政治的に)不都合な現実”から目を背けようとしていたというか・・・そんな面もあったのでは。

結婚や出産の時期にある者の数が比較的安定している今後10年間の対応が重要・・・・昨今の政治情勢を見ると今後10年の間に抜本的改革がなされるとはほとんど期待できません。
その10年を過ぎたら、母数自体がどんどん少なくなっていくので、どうあがいても出生数は回復しないという時期をを迎えます。

【減っていない既婚女性の出生率 出生数減少を止めるためには未婚化・婚外子への対応が必要】
減り続ける出生数の一方で、「出生率」に関して、私的には“以外”な数字も。既婚女性の出生率は変わっていないそうです。

****少子化傾向が続く中でも、結婚した夫婦の出産志向は変わっていない****
<事実婚や未婚での子育ても支援する、多様な家族像に配慮した環境づくりが必要>

少子化の進行が止まらない。コロナ禍はそれに拍車をかけており、出生数は2019年が86万人、2020年が84万人、2021年が81万人と、ガクンガクンと減っている。戦後間もない頃、年間250万人以上の子どもが生まれていた時代とは、隔世の感がある。

だが出生率という指標を計算してみると、あまり知られていない事実が浮かび上がる。全人口ではなく、出産年齢の既婚女性をベースにした出生率だ。総務省の『国勢調査』から25〜44歳の有配偶女性の数を拾うと、1990年では1403万人、2020年では815万人。年間の出生数は順に122万人、84万人(厚労省『人口動態統計』)。割り算で出生率を出すと、以下のようになる。
▼1990年......122/1403 = 8.7%
▼2020年......84/815 = 10.3%

出産年齢の既婚女性をベースとした出生率は、この30年間で上昇している。結婚した夫婦に限って見てみると、出産志向は変わっていないようだ。国の出生数が減っているのは、出産年齢の既婚女性の絶対数が少なくなっていることによる。(中略)

それは、出生順位の統計からもうかがえる。出生児のうち第3子以降の割合は1990年では18.9%、2020年は17.8%で、大きな変化はない(厚労省『人口動態統計』)。既婚の夫婦の中では、子を何人産もうという意向も変わっていないようだ。

少子化の最大の要因は出産年齢の女性の減少だが、その次に大きいのは未婚化だ。これに歯止めをかけようと、各地の自治体は出会いの場を設けるなどして、何とか婚姻を増やそうとしているものの、あまり成果を上げていない。そういう取り組みもいいが、どういうライフスタイルを選ぼうと、子を産み育てられる環境を構築すべきではないだろうか。

日本では、法律婚をした夫婦を前提に育児支援等の制度ができている。(中略)だが、諸外国では違う。<表1>は、出生児のうち婚外子が何%かを国別にみたものだ。

日本は2.3%で韓国に次いで低いが、アメリカは39.6%で、50%を超える国も珍しくない。事実婚で子を授かる人や、未婚で子を産み育てる人もいる。

日本でも未婚の母が増え、配偶者との離別者や死別者と同じく、税の控除を受けられるようになった。性的マイノリティーのパートナーシップを認める自治体も増えてきた。しかし、そうした人たちが子育てをしやすい(できる)環境になっているかというと、そうとは言えないだろう。

結婚と出産を結びつける慣行を見直すこと、多様な家族像に思いを馳せること。今後の少子化対策の上では、常に念頭に置く必要がある。【11月2日 舞田敏彦氏 Newsweek】
*******************

外国では婚外子が多いことはかねてより指摘されている点です。
日本の場合、政府・与党の考える“あるべき家族の姿”あるいは“美しい日本”に馴染まないせいか、婚外子への配慮が薄く、結果的に人口減少という国家衰退の原因ともなっています。

【未婚化が進む背景に「男は仕事、女は家事」という日本のジェンダー意識から生じる結婚生活における女性の負担の大きさが】
“あるべき家族の姿”の中核にあるのが「男は仕事、女は家事」という日本のジェンダー意識です。
先に見たように、日本の出生数減少の大きな要因として「未婚化」がありますが、未婚化が進む背景に「男は仕事、女は家事」という日本のジェンダー意識から生じる結婚生活における女性の負担の大きさがあるようにも。

****家事分担を妨げる「男は仕事、女は家事」という日本のジェンダー意識****
<男性の労働時間が減っても、その分だけ家事をする時間が増えるとは限らない>

先週の記事「日本の男性の家事分担率は、相変わらず先進国で最低」で見たように、日本の男性の家事分担率は国際的に見て低い。

OECDの統計によると、15~64歳男性の1日の家事等の平均時間は41分で、女性は224分(2016年)。男女の合算に占める男性の割合は15.4%でしかない。他国の同じ数値を計算すると、アメリカは37.9%、スウェーデンは43.7%にもなる。

日本の男性は、仕事時間がべらぼうに長いからではないか、という意見もあるだろう。同じくOECDの統計によると、日本の15~64歳男性の1日の平均仕事時間は452分で、アメリカの332分、スウェーデンの313分よりだいぶ長い。家事等の平均時間は順に41分、166分、171分と逆の傾向だ。

以上は3つの国のデータだが、より数を増やして、仕事時間と家事時間の関連を可視化してみる。横軸に仕事時間、縦軸に家事等の時間をとった座標上に、OECD加盟の30カ国のドットを配置すると<図1>のようになる。

日本は仕事時間が長く、家事等の時間は短いので右下にある。対極にあるのは、北欧のデンマークだ。傾向としては、仕事時間が長いほど家事等の時間は短い、両者はトレードオフの関係にあると言えなくもない。

仕事時間が短ければ、自宅にいる時間も長くなり、家事や育児にも勤しむようになる。いたって自然なことだ。政府の『男女共同参画白書』でも、男性が家事・育児・介護等に参画できるよう、長時間労働を是正する必要があると言及されている。
だが、事はそう単純ではない。定時に上がっても、自宅ではなく酒場に足が向く男性もいるだろう。コロナ禍以降、在宅勤務が増えているものの、夫が家事をしないのは相変わらずで、「大きな子どもが1人増えたようだ」という妻の嘆きもSNS上で散見される。仕事時間を減らせば万事解決となるかは分からない。

<図1>は国単位のデータだが、個人単位でみると仕事時間と家事時間の関連はどうなっているか。既婚男性を仕事時間に応じて3つのグループに分け、家事時間の分布を比べてみる。<図2>は、結果をグラフにしたものだ。

男性を見ると、仕事時間の多寡に応じて家事時間が大きく変わる傾向はない。小さな差はあるものの、どのグループも家事時間は週10時間未満が大半だ。

対して女性は、仕事時間に関係なく、家事時間が週20時間以上の人が多い。サンプル数が少ないが、一番右側のグループ(仕事週50時間以上、家事週20時間以上)の負荷は相当なものだろう。

未婚化が止まらないが、結婚生活の負荷を女性が認識し出したこともあるだろう。2021年の国立社会保障・人口問題研究所の『出生動向基本調査』によると、女性が結婚相手に求める条件として最も多いのは「人柄」だが、それに次ぐのは「家事・育児への姿勢」だ。

2015年との比較でいうと、この項目を重視する女性の割合が増えている(57.7%→70.2%)。対して、職業や経済力を重視するという回答は減っている。

女性の社会進出を促し、かつ未婚化・少子化に歯止めをかける上でも、男性の「家庭進出」が求められるが、長時間労働の是正だけでは足りない。意識の啓発も必要になってくる。家庭内での性別役割分業を子どもに見せることは、既存のジェンダー構造を次代にまで持ち越す恐れがあることをしっかりと自覚しなければならない。

また日本では、「男は仕事、女は家事」という性役割分業で社会が形成されてきた経緯があるので、家事に求められるレベルが高くなってしまっている(一汁三菜の食事、洗濯物は綺麗にたたむなど)。外国人が驚くところだ。これなども、男性の家事分担を妨げている。共稼ぎが主流になっている今、見直すべきだろう。【10月26日 舞田敏彦氏 Newsweek】
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上記記事でもスウェーデンなど北欧は、男性の仕事時間が比較的短く、家事労働時間が長く、結果的に男性の家事分担率が高くなっている姿が示されていますが、同様の現象を示すフィンランドに関する記事も。

****フィンランド、労働時間が初めて男女平等に****
フィンランド統計局は10日、国民が家事労働と有償労働に費やした時間の合計が、昨年初めて男女で等しくなったと発表した。

10歳以上の人口の有償労働と家事労働を合わせた1日の総労働時間はこれまで、女性の方が長かった。統計局は、男性の有償労働時間が減少し、家事労働時間が増加したと説明。特に男性が育児に費やす時間が大きく増えたとし、その要因としては文化の変化に加え、男性向け育児休暇制度の拡充があるとした。

ただ、有償労働の時間は依然として男性が女性よりも1日平均30分長かった。 【11月11日 AFP】
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日本の出生数の減少に歯止めをかけようとすれば、前述のような多様な家族形態を認め、婚外子の扱いを変更、そして「男は仕事、女は家事」という日本のジェンダー意識を変えることで女性の結婚生活の負担感を軽減することが必要と思われます。

それでもカバーできない人口減少は、外国人労働者・移民に関して本腰を入れて取り組むことでフォローすることも。

しかし、上記のいずれも政府・与党の考える“あるべき家族の姿”“あるべき社会の姿”には馴染みません。
ということは、日本を待ち受ける未来は・・・。

【日本以上に深刻な韓国の少子化】
日本より深刻なのが韓国。韓国から見ると、日本の現状はまだましなものに見えるようです。
(ただし、下記記事で“日本の出生率が低水準ながら徐々に上昇している”とありますが、これは事実誤認。
確かに日本の合計特殊出生率は2005年の1.26から2015年の1.45まで上昇しましたが、その後はまた減少しています。2021年は1.30)

****韓国を逆転、日本が低出生率の罠を脱出できた理由は?=韓国ネット「子どもなんて生まないほうが賢明」****
2022年11月7日、韓国メディア・韓国経済は「減っていく人口、消滅する韓国」と題したシリーズ記事を掲載し、「日本が低出生率の罠(少子化の罠)を脱出した秘訣(ひけつ)」を分析している。

日本の人口減少が始まったのは11年(国連統計基準)で、前年の1億2813万人から1億2808万人となった。以来、昨年まで減少が続いている。記事は「日本経済が30年間足踏み状態にある理由の一つに人口停滞・減少が挙げられる」と指摘した。

日本の合計特殊出生率は1975年に2.0人を下回ってから下落傾向となり、80年代後半には1.5人台となった。2005年には1.26人まで落ち込んだが、15年に1.45人に上昇。昨年は1.30人を維持した。国連は日本の出生率は小幅に上昇し60年代には1.5人まで回復すると予想している。

対照的に、韓国は出生率が世界的に例を見ないほど下落している。2000年までは1.48人で日本(1.37人)を上回っていたが、18年は0.98人と、世界で初めて1人を割り込んだ。昨年は0.81人で、今年4~6月期は0.75人まで下落した。

日本の出生率が低水準ながら徐々に上昇しているのに比べ、韓国の出生率は下落し続けている理由について、記事は「日本国内では少子化克服政策を長期間、持続的に進めてきた結果だ」と伝えている。

日本は1990年に少子化対策に着手。継続的に予算を投入してきた。今年はこども家庭庁を新設している。一方、韓国は2006年にようやく対策に乗り出したが、権限のない低出産高齢社会委員会という組織が置かれただけとなっている。

記事はこれまでの日本の政策を詳しく説明し、「1990年から初めた少子化対策の効果が2006年から現れている。15年かかったことになる」と指摘している。

韓国のネットユーザーからは
「不動産価格、教育費、経歴断絶問題など社会的環境も、新婚夫婦に好意的ではない。だから若い夫婦が2人以上の子を持とうと思わないんだ」

「結婚と出産は女性1人でするものではない。低賃金、物価高、不動産価格による未来への不安から、男性は結婚を恐れている」

「不動産価格と物価が安定しないと出生率は上がらないと思う」「育児戦争が終わったら教育問題、入試地獄、就職難、住居問題。子どもを育てようなんて思えるわけがない」

「政策だけの問題ではない。共稼ぎなのに家事、育児の負担は女性にばかりある」「経済のせいにするのはどうなのか。1960年代、70年代は経済環境が良かったから出生率が高かったというのか?」

「少子化と非婚は世界的な現象だ。韓国の出生率が特に低いのは婚外出産がほとんどないからだろう。婚外出産に対する認識から変えるべきだ。家族と性に関する考えが昔も変わっていない」「子どもを欲しがっている不妊の夫婦もものすごく多いよ。彼らへの支援を手厚くするべきだ」

「少子化で困ってるのは国だけじゃないか?個人にとっては、だから何?って感じ。コメントを見ていると、子どもなんて生まないほうが賢明だと思うよ」「まずは生まれた子どもたちをしっかり守らないとね」など、さまざまな声が寄せられている。【11月11日 レコードチャイナ】
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問題の立て方が違います。「どうして日本は韓国よりも・・・」ではなく、「どうして日本も韓国も・・・」という問題認識を持つべきでしょう。

韓国は、婚外子への認識、「男は仕事、女は家事」というジェンダー意識など、日本とよく似た社会です。結果、よく似た少子化に苦しむことに。

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日本  止まらない少子化 推計より早いペース テクニカルな対処として「卵子凍結」支援の企業も

2022-06-04 23:18:32 | 人口問題
(【6月3日 毎日】)

【国の推計より早いペースで進む少子化】
長期的に見て日本が抱える最大の課題は中国でも、北朝鮮でもなく、日本自体の少子化、高齢化、それに並行して進む社会の活力の低下でしょう。

その少子化の流れが止まりません。

****昨年出生数、過去最少の81万人=人口自然減は60万人超―厚労省****
厚生労働省は3日、2021年の人口動態統計を公表した。出生数は前年から2万9231人(3.5%)減り、過去最少の81万1604人となった。1人の女性が生涯に産む子どもの推計人数を示す合計特殊出生率は1.30と、前年より0.03ポイント低下。6年連続の減少で、過去4番目の低さだった。
 
死亡数から出生数を引いた人口自然減は、62万8205人と初めて60万人を超えた。婚姻数は前年から2万4391組減り、戦後最少の50万1116組に落ち込んだ。
 
出生数の減少について、厚労省の担当者は「15~49歳の女性の人口が1.8%減った上、20代母の出生率が低下していることが要因」と分析。新型コロナウイルス下で結婚や妊娠を控える傾向にあったことも影響したとみている。【6月3日 時事】
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日本の少子化・人口減少は政府予測を上回るペースで進んでいます。

国立社会保障・人口問題研究所が2017年に公表した将来推計で出生数に関して、政府が将来計画で通常使う予測値(中位)では2021年に86.9万人、予測値(低位)は75.6万人としていました。現実はほぼこの中間ぐらいで進行しています。

また、中位予測では81万人台の前半になるのは2027年と見込んでいましたので、想定より6年早くそのレベルにまで減少しています。また、日本人の人口が1億人を切るのは2049年と想定されていましたが、それも早まりそうです。

****出生数81万人 国力低下を阻む道筋示せ****
令和3年に生まれた子供の数(出生数)が81万1604人と6年連続で過去最少を更新したことが、厚生労働省の人口動態統計(概数)で分かった。80万人を割るのは時間の問題で、事態は深刻の度を増している。

だが、岸田文雄首相から危機感が伝わってこない。首相は夏の参院選で打開への道筋と人口構造に見合う国の在り方を示すべきである。

女性1人が生涯に産む子供の推定人数「合計特殊出生率」も1・3と6年連続で低下した。政府は若い世代が希望通りの数の子供を持てる「希望出生率1・8」を目標に掲げているが、遠ざかるばかりだ。むしろ過去最低である平成17年の1・26に近づいている。

令和24年に高齢者人口がピークを迎える中、社会保障制度の担い手である現役世代の負担が過重になれば、制度の持続性が確保できないばかりか、国力低下に拍車がかかりかねない。

もっとも、出生率が多少上向いたとしても、出産期の女性人口そのものが減少傾向にあるため、出生数が一朝一夕に改善する見込みはない。特効薬はなく、長期戦を覚悟しなければならない。

こうした事態を招いた責任は、社会全体にある。原因として若年世代の未婚化、晩婚化が指摘されるが、その背景には、日本社会を覆う将来の暮らしへの不安があることを忘れてはならない。

第1次ベビーブームの昭和24年の出生数は約270万人で、第2次ブームの48年は約210万人だった。だが、平成に入り長期的な経済停滞に陥った日本社会に、期待された3度目のブームが訪れることはなかった。かつての政府に第3次は来るものと楽観する向きがあったことは否めない。【6月4日 産経】
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まあ、【産経】が憂うのも無理からぬところで、電気自動車大手テスラの最高経営責任者(CEO)のイーロン・マスク氏のSNSも話題になりました。

****イーロン・マスク氏が警鐘「日本はいずれ消滅するだろう」加速する日本の人口減をあやぶむ***
米SNS大手ツイッターの買収で合意した電気自動車大手テスラの最高経営責任者(CEO)のイーロン・マスク氏(50)が、日本の出生率の低下に「いずれ日本は消滅するだろう」とツイートし、加速する日本の人口減に警告を鳴らした。

総務省が先日発表した2021年の人口推移で人口の減少幅が過去最高となり、死者数が出生数を上回ったことを伝える英語の記事について7日、「当たり前のことを言うようだが、出世率が死亡率を超える変化がない限り、日本はいずれ消滅するだろう。それは世界にとって大きな損失となる」とコメントしたもので、このツイートは米金融系ニュースサイトでも「マスク氏が日本に警鐘を鳴らす」と取り上げられている。

マスク氏はこれまでも、「問題は2050年までに世界人口は高齢化と減少することであり、人口過多ではない」と語り、国連の予想は的外れだと非難するなど、人口減少に警鐘を鳴らしてきたことで知られる。2019年のインタビューでは、今後30年ほどで世界人口の年齢構造は逆ピラミッド型になっていくと述べていた。(後略)【5月9日 日刊スポーツ】
***********************

日本人にとってはマスク氏のツイート内容は“今更”のことで、驚きも何もありません。

なお、マスク氏はその後、日本よりもっと危ない国があることに気付いたらしく、“テスラCEO「韓国、世界で最速の人口崩壊」 低い出生率に警鐘”【5月27日 聯合ニュース】と、韓国についてもツイートしています。

世界銀行が各国・地域の「合計特殊出生率」をまとめたランキング表では、韓国の合計特殊出生率0.84人で200位、香港が0.87人で199位です。日本としては「下には下がある」と、ちょっと安心するところも。

韓国の“合計特殊出生率0.84人”も“今更”のもので、私はいつも「日韓はいがみ合っているが、どうせ両国ともそのうち消滅する国家だ」と言っているところです。

ただ、“消滅する”とばかりも言っておられないので、山ほどある少子化についての議論のなかで、比較的最近目にした大前研一氏の指摘をひとつだけあげておきます。

****「人口減少」過去最大に 日本の政治家が少子化問題を解決できない理由****
(中略)政治家が関心を持っているのは、いま目の前の政治アジェンダだけで、そんなことをやっているとあっという間に選挙が来てしまいますから、オリンピックをどうするかとか、新型コロナ対策はどうするかといった話に終始して、本来なら5年10年かけていろいろ準備して進めなければいけない問題に取り組もうというような政治家はいません。今の政治家たちの政策の時間軸というのは、おそらく数か月程度ではないかと思います。
 
しかし、(中略)この問題の根本的な解決なしには日本の“老衰”はいつまで経っても止まりません。

少子化を加速させる4つの要因
もともとこの問題の背景には「未婚・晩婚化」という著しい傾向が出ていることがありますが、未解決のままとなっています。(中略)

もう1つ大きな問題として、配偶者がいる女性の出生率が低下しつつあります。(中略)

これは結局、結婚していない人が増えているということと、もう1つは晩婚化が進んだことによって高齢出産が増え、年齢的に2人目の子供を産むことができなくなっていると考えられます。
 
また、男性の長時間労働が慣行となっているため、夫が育児参加する率が低く、女性の「ワンオペ育児」が問題になっています。(中略)女性のワンオペ育児というのは、育児、家事に加えて共働きで働いているというケースも出てきています。そうなると、とてもじゃないけれどやっていられないということで、子供2人なんてどだい無理だとなってしまいます。
 
3つ目は、出産・育児支援制度の不備が挙げられます。たとえば、OECD平均ではGDPの2.34%を家族問題に使っていますが、日本はその平均を下回っています。加えて待機児童の問題や不妊治療の所得制限などがあって、出産・育児のために国が全面的に支援するという形にはなっていないと言われます。
 
さらに、もう1つ大きな問題が戸籍制度です。結婚していないカップルの場合、子供が生まれても戸籍に入れられずに「非嫡出子」という扱いになる恐れがあって、妊娠しても結婚していないから子供を産めないとか、産んでも父親の戸籍に入れられないから可哀想だということになります。
 
かてて加えて、新型コロナ禍によって、結婚の件数も大幅に減っている上、妊娠の届け出というのが、前年に比べて5.1%減っています(2020年1〜10月)。つまり、新型コロナ禍で感染リスクを懸念して、結婚・妊娠・出産を控える動きが目立ってきているというのが4つ目の要因です。(後略)
※大前研一『経済参謀 日本人の給料を上げる最後の処方箋』(小学館)より一部抜粋・再構成【4月29日 NEWSポストセブン】
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出産・育児支援制度の拡充は最低限の取り組みですが、それだけでは限界があり、基本的には男女の育児・家事に関する意識の改革、「非嫡出子」の制度的・社会的容認といった、すでに実態をなくしている「伝統的家族観」からの脱却を進める必要だと考えています。更に人口減を食い止める移民の容認も。

こういう話に批判的な人は、「そんなことしなくても・・・・」といろいろ言いますが、そういう現実離れした言い逃れの結果が今の状況であり、現状を打破するつもりなら、これまでの社会・意識を抜本的に変える改革が必要とも思っています。

ちなみに、少子化は日本や韓国だけでなく多くの先進国が抱える問題。
“イタリア出生数、昨年は1861年の統一以来最低 12年連続減”【2021年12月15日 ロイター】
“子供10人以上なら「母親英雄」…人口減へ危機感、プーチン氏がソ連時代の制度復活”【6月3日 読売】
人類の栄枯盛衰の歴史の一コマか・・・という達観も・・・。

【増加する「卵子凍結」支援】
そうしたなかで、前述のように日本以上に深刻な韓国では子どもを産む女性が減り、たとえ産む意思がある場合でも、住居費と子どもの教育費が高騰しており、財政的な余裕を確保することが先決だから出産を後回しにする傾向が強まっています。

そうした問題へのテクニカルな対処方法として、卵子を凍結して出産のための時間を稼ぐ選択をする女性が増えているそうです。

卵子凍結に関しては、日本でも支援する企業も増えているとか。

****卵子凍結、企業で支援広がる メルカリやデロイトなど***
将来の妊娠・出産に備える「卵子凍結」を支援する企業が増えている。メルカリは5月に卵子凍結にかかる費用を負担する福利厚生制度を正式に導入した。米IT(情報技術)大手に続いて日本でもコンサルや化粧品メーカーなど業種を問わず支援が進む。女性特有の悩みや不安に向き合う制度を導入し、優秀な人材の獲得や定着を促す狙いがある。

メルカリは採卵や凍結保管などに関わる費用の一部を負担する。不妊治療が必要な社員を対象とした妊活サポートの一環で、上限は200万円だ。社員の配偶者やパートナーも支援対象となる。2021年に試験導入していたが、想定以上の需要があったことから正式導入した。

女性特有の悩み
日本生殖医学会によると、不妊の頻度は25歳~29歳で8.9%だが、35~39歳では21.9%まで上昇する。キャリア形成で重要な時期と妊娠適齢期が重なることは、女性特有の悩みだ。将来、子供を持ちたいと考えていてもパートナーがいなかったり、仕事にまい進したい場合もある。

卵子凍結は妊娠の可能性が高い時期に採卵し、将来の妊娠に備えて液体窒素で凍結保存する仕組みだ。検査から卵子凍結まで1~2カ月かかる。クリニックによってばらつきはあるが、一連の費用は平均30万~100万円、採卵した卵子1個につき保管費用が年1万円程度かかる。35歳までに採卵することが推奨されているものの、20~30代には高額で負担が大きい。

年齢が上がると母体への危険性が高まるのは変わらないが、妊娠しやすい若い頃の卵子を妊娠したいタイミングで使える。

一方で卵子凍結は出産を保証するものではなく、身体的な負担もある。日本生殖医学会は13年に加齢などを理由に卵子凍結を容認したが、日本産科婦人科学会の専門委員会は15年に「推奨しない」との見解を示した。

リスクがあったとしても、女性にとって人生設計の選択肢があることは不安の軽減につながる。メルカリは「選択肢の提供で不安を軽減し、思い切り働ける環境を用意することを重視している」と導入の目的を説明する。(中略)

米企業の導入2割
卵子の凍結支援で先行するのは米国だ。14年に米メタ(旧フェイスブック)が導入して以降、IT企業を中心に普及した。20年時点で従業員2万人以上の米国企業の約2割が、卵子凍結を支援している。国の社会保障制度が手薄な米国では、企業が優秀な人材を確保するために手厚い支援に積極的とされる。

労働政策研究・研修機構の調査によると、会社を選ぶ際に福利厚生を重視したかという質問に、20代の女性55%が重視すると応えた。男性より約8ポイント高い。30代でも同様の傾向が見られ、男性より女性の方が会社選びで福利厚生を重視する傾向にある。女性が福利厚生を重視するのは、現状では育児や出産などで女性の負担が大きいためだ。(中略)

遅れる実態把握
卵子凍結をめぐっては、専門家の意見が分かれている。日本生殖医学会は利用者の広がりを受けて、加齢などを理由にした卵子凍結を容認している。2013年にガイドラインを定め、実施施設の要件や採卵時の年齢に関する指針を示した。凍結保存した卵子の使用年齢について45歳以上は推奨できないとし、18年には採卵時の年齢は「36歳未満が望ましい」と明記した。

一方で、日本産科婦人科学会の専門委員会は15年に身体への負担や、高齢出産を招く可能性があるといった理由で「推奨しない」との立場をとった。厚生労働省も健康な女性の卵子凍結を、「医療行為にあたらず推奨できない」としている。

ただ卵子凍結という医療行為自体は国も認めている。がんなどの治療前に卵子を保存する医療目的の場合は、不妊治療として認めており、助成制度もある。利用者の実態把握に向けて、日本がん・生殖医療学会は凍結保存した患者の情報登録システムの運用を1月から始めた。(中略)
適齢期までにパートナーがいなかったり、子供をもつ準備が整わなかったりする場合に備えた卵子凍結は、プレコンセプションケアの一環と捉える動きもある。実態把握を通じて、官民で多様な選択肢を与える環境を整備することが重要だろう。【5月31日 日経産業新聞】
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コメント
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