(死者を悼む旗が並ぶウクライナ首都キーウの「独立広場」【12月29日 日テレNEWS】)
【「息子のような犠牲者をこれ以上、1人も出さないでほしいんです」「僕はできれば戦争には行きたくない」】
2022年2月24日に始まったロシア軍のウクライナ侵攻・・・まもなく3年が経過します。
ウクライナにとって厳しい戦況、犠牲者を厭わないロシア軍の攻撃、北朝鮮兵士の参戦、来年のトランプ氏復権で加速することも予想される停戦への動き等々・・・取り上げたら切りがありませんが、長引く戦争でウクライナ社会は疲弊の色が濃くなっています。
首都キーウの「独立広場」・・・1本1本が戦死者を表すおびただしい数の旗
「息子のような犠牲者をこれ以上、1人も出さないでほしいんです」と涙ながらに語る母親
「僕はできれば戦争には行きたくない」と話す少年
「こんなことを言うべきではないのはわかっています。でも、やはり息子には戦争に行ってほしくありません」と語る母親
****「僕は戦争に行きたくない」ウクライナが直面する“2つのリスク”****
ロシアによるウクライナ侵攻は、まもなく3年を迎える。北朝鮮が自国の兵士を派遣するなどロシアとの軍事協力を深めるなか、アメリカのトランプ次期政権発足を前に戦闘が激化している。“2つのリスク”に直面するウクライナの今を取材した。
■「ああ、鳴ってるね」…戦争が日常に
2024年12月初旬、ウクライナの首都・キーウで取材していた私は、けたたましいサイレンの音に部屋を走り出た。すれ違った人に「シェルターに行かないんですか!?」と聞くと、「何?」と聞き返された。「ほら、サイレン!」と外を指さすと、「ああ、鳴ってるね」と落ち着き払っている。
「早くシェルターに行かないと!」とあわてふためく私に、彼は窓の外を指さした。見ると、往来を行く人の様子は普段と変わらない。足を速めることもなく、何事もなかったかのように淡々と歩いている。「この国では、もう戦争が日常になっているのだ」と思い知らされる。
ちょうど1年半前に訪れた、町の中心にある「独立広場」。折からの細かいみぞれにそぼぬれながら、無数のウクライナ国旗が寒そうに立っている。旗の1本1本が戦死者を表しているという。前回訪れた時とは比べものにならない本数の旗が所狭しと並ぶ光景に、戦慄(せんりつ)を覚える。
■「勝っても負けても…」母親の涙
手を合わせ、目を閉じていた女性に話を聞いた。スベトラーナさんは、29歳の息子ダニールさんをウクライナ東部ドネツク州の戦場で亡くしたという。ダニールさんは前線から5キロ離れた集落でドローン攻撃によって命を奪われた。
「1日も早く戦争が終わってほしいと願っています。どちらが勝っても負けても、もうそんなことはどうでもいいんです。このおびただしい数の旗を見てください。息子のような犠牲者をこれ以上、1人も出さないでほしいんです」と涙ながらに語った。
■“トランプ2.0”にウクライナは…
25年2月24日には侵攻開始から3年となる。ロシア軍はウクライナ東部への攻勢を強め、対するウクライナ軍もロシア領内を越境攻撃している。
北朝鮮兵士が戦闘に参加し、アメリカ政府はウクライナに提供した長い射程のミサイル「ATACMS」による攻撃を許可。ロシア側は最新型の中距離弾道ミサイル「オレシニク」を発射した。極超音速、多弾頭型で迎撃するのは非常に難しいとされる。とどまるところを知らない戦闘の激化に、ウクライナは疲弊しきっている。
(戦地で両足を失った息子と母親)
なかでも顕著なのが、兵力不足だ。ロシア側は受刑者を釈放したり、外国の志願兵を高収入で雇ったりするほか、北朝鮮兵士の参戦を受け入れた。今後、北朝鮮兵は10万人まで増えるとの予測もでている。
対するウクライナ側の兵力不足は明らかだ。フランスのルモンド紙は、イギリスとフランス両国がウクライナへの派兵を議論していると報じた。北朝鮮の派兵で、NATO=北大西洋条約機構が「強い懸念」を共同声明で発するなど、ヨーロッパは一気に結束した。
ただ、懸念材料となっているのが“またトラ”である。ウクライナにおける戦争を「24時間以内に終わらせる」と選挙中に豪語していたトランプ次期大統領は、ウクライナへの軍事支援には消極的とされる。
ロシア特使に指名されたキース・ケロッグ氏は、現在の戦線に基づいて戦闘を停止させ、ウクライナとロシアを交渉のテーブルにつかせるという考えを示している。
トランプ次期政権発足まで1か月を切った。少しでも停戦を有利な状況に持ち込もうと攻撃を激化させているプーチン氏にどう向き合うのか。
日本の外交筋は「トランプ次期政権が早期の終戦をうたっている以上、25年にはロシアとウクライナとの間で和平協議が始まるのではないか。ただし、ウクライナはNATOへの加入と、ロシアによる侵略が再び起こらないようにすることを主張していて、一方のロシアは現在、占領した地域を手放す気はないことから、そう簡単にはまとまらないだろう」と厳しい見方を示した。
NATO側もロシアとの戦争に巻き込まれたくないと、ウクライナの加入については慎重な意見が根強い。
■「僕は戦争に行きたくない」…親子の祈り
キーウ市内に住む15歳のマキシム君と母親のオリガさんを取材した際、マキシム君は「僕はできれば戦争には行きたくない」と言った。
隣で聞いていた母親は目を真っ赤にして「戦争で夫や息子を亡くした女性をたくさん知っているので、こんなことを言うべきではないのはわかっています。でも、やはり息子には戦争に行ってほしくありません。息子が徴兵年齢を迎えるまでに戦争が終わることを心から願っています」と語った。母親は7時間も続く停電のなか、ろうそくの明かりで息子のためにパスタを作っていた。
戦闘は激化の一途をたどっている。だが、ウクライナ東部や南部のロシア占領地を残したまま停戦するなど、ロシアの意に沿う形になれば、力によるウクライナ領土の占領を認めてしまうことになる。
北朝鮮兵が実戦経験を積み、ロシアから軍事的な協力を得ることになれば、日本を含む東アジアの安全保障にも影響が及びかねない。
一時的な停戦だけでなく、停戦後、ロシアによる侵攻が再び起こらないようにするには一体どうすべきか。トランプ次期政権は、私たちは、親子の祈りにどうこたえるのか。戦争終結に向け、国際社会の知恵と胆力が問われている。【12月29日 日テレNEWS】
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【青白くなった生後一か月の赤ちゃんの遺体を抱く父親「凍えているのがわかりますか?」】
2023年10月7日のハマスのイスラエルへの襲撃に始まったパレスチナ・ガザ地区での戦闘も1年以上が経過し、ガザ地区での犠牲者は4万5000人を超えていますが、イスラエルの激しい攻撃が続いています。
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パレスチナ問題が解決すれば、国交のない隣国との和平への道筋が開かれるが、解決の見込みがない今、イスラエルは「自国を守れるのは自国だけ」という孤立感と焦りに駆り立てられている。それが過剰なまでの軍事行動につながっている。(中略)
残念ながら、当事者の間でパレスチナ問題解決への機運は高まっていない。
「自分たちは未来志向」と常々口にするイスラエル人だが、その多くはハマスがイスラエルを奇襲した23年10月7日で思考が停止し、前に進む勇気はない。
また、ガザ地区を無惨なまでに破壊されたパレスチナ人にとっては、イスラエルを止められない国際社会への失望は深く、2国家解決への希望も失われている。
そんななかでレバノンやシリア情勢の変化によって、パレスチナ問題が再びかすみつつあることに懸念が広がる。(後略)【12月24日 “「パレスチナ問題」は、再び忘れ去られてしまうのか?... 2025年は中東和平の分水嶺になる” Newsweek】
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直接のイスラエルの攻撃に加え、食糧不足・・・更に冬の寒さがガザの住民を襲っています。
****ガザで赤ちゃんの凍死が相次ぐ。0歳の双子も死亡と報道****
(低体温症で亡くなった赤ちゃんの遺体を見つめるガザの子どもたち(2024年12月29日))
イスラエルによる攻撃が続くパレスチナ自治区ガザ地区で、乳児が低体温症で死亡する例が相次いでいる。
アルジャジーラによると、12月30日までの1週間で、少なくとも6人の赤ちゃんが寒さで命を落とした。
ガザ地区では冬の寒さの中、190万人のパレスチナ人が避難を余儀なくされ、多くの避難者が海岸沿いのテントで身を寄せ合っている。
生後1カ月のジョマ・アル・バラトンちゃんは29日、頭が「氷のように冷たく」なった状態で両親に発見された。ジョマちゃんの双子のアリちゃんは、病院の集中治療室に運ばれたが、その後死亡したと報じられている。
父親によると、双子は予定日より1カ月早く生まれ、病院の保育室で過ごしたのはたった1日だった。ガザの他の医療施設と同じく、この病院も部分的にしか機能せず、収容数も限られていたという。
医師らは母親に、赤ちゃんを暖かい状態で保つよう指示したが、避難先のテントでは夜間の気温が10度以下に下がるため、その助言に従うことは不可能だった。
父親は、青白くなったジョマちゃんの遺体を抱き、「寒さでこの顔色になっている。凍えているのがわかりますか?」と訴えた。
ガザ南部ハンユニスのナセル病院のフィダ・アル・ナディ医師はCBSニュースに対し、毎日1、2人の低体温症の患者が入院していると語った。最も危険に晒されているのは、最も幼い子どもたちだという。
「私たちが生活するこのストレスの中で、多くの子どもが未熟児として生まれており、それによって低体温症になりやすくなっている」とナディ医師は指摘する。
ガザ保健省によると2023年10月以降、4万5000人以上のパレスチナ人が殺害され、その半数以上が女性と子どもだった。【12月31日 HUFFPOST】
アルジャジーラによると、12月30日までの1週間で、少なくとも6人の赤ちゃんが寒さで命を落とした。
ガザ地区では冬の寒さの中、190万人のパレスチナ人が避難を余儀なくされ、多くの避難者が海岸沿いのテントで身を寄せ合っている。
生後1カ月のジョマ・アル・バラトンちゃんは29日、頭が「氷のように冷たく」なった状態で両親に発見された。ジョマちゃんの双子のアリちゃんは、病院の集中治療室に運ばれたが、その後死亡したと報じられている。
父親によると、双子は予定日より1カ月早く生まれ、病院の保育室で過ごしたのはたった1日だった。ガザの他の医療施設と同じく、この病院も部分的にしか機能せず、収容数も限られていたという。
医師らは母親に、赤ちゃんを暖かい状態で保つよう指示したが、避難先のテントでは夜間の気温が10度以下に下がるため、その助言に従うことは不可能だった。
父親は、青白くなったジョマちゃんの遺体を抱き、「寒さでこの顔色になっている。凍えているのがわかりますか?」と訴えた。
ガザ南部ハンユニスのナセル病院のフィダ・アル・ナディ医師はCBSニュースに対し、毎日1、2人の低体温症の患者が入院していると語った。最も危険に晒されているのは、最も幼い子どもたちだという。
「私たちが生活するこのストレスの中で、多くの子どもが未熟児として生まれており、それによって低体温症になりやすくなっている」とナディ医師は指摘する。
ガザ保健省によると2023年10月以降、4万5000人以上のパレスチナ人が殺害され、その半数以上が女性と子どもだった。【12月31日 HUFFPOST】
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****ガザ北部唯一の病院が炎上、イスラエル軍がハマス拠点と包囲…WHO「パレスチナ人にとって死」****
パレスチナ自治区ガザの保健当局によると、ガザ北部で唯一機能しているカマル・アドワン病院が27日、イスラエル軍に包囲され、診察室や手術室など建物の一部が炎上した。同軍は病院周辺をイスラム主義組織ハマスの拠点と断定し、軍事作戦を実施していると発表した。
同軍は軍事作戦に伴い、病院内の医療従事者や患者らに退避命令を出した。病院長は当初、「人工呼吸器が必要な患者の移動は彼らを危険にさらす」として命令を拒否したが、状況が悪化したことなどから別の病院に患者を移送し始めた。
世界保健機関(WHO)によると、院内には医療従事者約60人と重篤な患者ら25人がとどまっているという。ガザ保健当局によると、病院長は28日、同軍に拘束された。
WHOは27日の声明で、軍事作戦によって「ガザ北部最後の主要医療施設の機能が停止した。同地域の医療システム解体は何万人ものパレスチナ人にとって死を意味する」と非難した。【12月28日 読売】
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来年が良い年になるといいのですが。