孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

アイルランド  EU政治統合に向けたリスボン条約について再投票

2009-09-30 23:13:52 | 国際情勢

(リスボン条約賛成のポスター 首都ダブリンで “flickr”より By infomatique
http://www.flickr.com/photos/infomatique/3959145179/)

【「ユーロ圏は安定を提供した」】
アイルランドで、EUの新基本条約「リスボン条約(改革条約)」の是非を問う国民投票が、昨年6月の否決を受けて、10月2日再度実施されます。
リスボン条約は、EUが27カ国に拡大したのに伴い、欧州委員数の削減など効率化をはかるとともに、意思決定手続きの簡素化、大統領や外相にあたるポストを創設、外交力の強化を目指すものとされています。
一方で、アイルランドのような“小国”は主権が脅かされるのではないかとの不安もあるようです。
条約発効には全加盟国の批准が必要ですが、アイルランド、ポーランド、チェコが批准を終えていません。

****アイルランド:EU条約批准是非 2日、2度目の国民投票*****
欧州連合(EU、加盟27カ国)の新基本条約「リスボン条約(改革条約)」の是非を問う国民投票が10月2日、アイルランドで実施される。国民投票は、条約批准に「ノー」が突き付けられた昨年6月に続き2度目。再否決ならEUの現状に不信任が突き付けられ、欧州統合の歩みやEUの拡大路線にブレーキがかかる。アイルランド政府やEUは条約への賛成を呼びかける運動に力を入れている。

27日付アイルランド2紙の世論調査によると、条約批准賛成は55~68%で反対の17~27%を上回っているが、「態度未定」もいる。昨年6月の前回投票では反対53.4%、賛成46.6%で否決され、EUの運営を円滑化し、国際発信力を強めるための作業が足踏みを強いられた。
アイルランドの政府や主要政党は前回の取り組み不足を教訓にEUを積極的に売り込む作戦を展開している。カウエン首相は29日、英紙に「ユーロ圏は安定を提供した」と述べ、金融危機を経て世論が条約賛成に傾いているとの見方を示した。
前回、表立った運動を控えたEU機関も今回はバローゾ欧州委員長なども現地入りして賛成派を後押し。欧州委員会はEUの業績と条約の必要性を説明した冊子を地元紙の折り込み広告として配布し、条約反対派からは「大がかりな介入」との批判が出ている。

EUは今年6月、カウエン首相の要請を受け、リスボン条約下でもアイルランドの軍事的中立性や人工妊娠中絶禁止が脅かされないと文書で保証する特例措置を取った。すでに加盟27カ国中24カ国が批准手続きを完了していることから、イタリアのベルルスコーニ首相は批准否決なら「(EUを二つに分け)統合を先導する中核国集団を作る」と圧力をかけている。
投票は2日午前7時から午後10時まで。3日午前9時から開票・集計され、同日午後に結果が発表される。【9月30日 毎日】
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欧州連邦化も視野にいれた04年の「欧州憲法」は、フランス・オランダの国民投票で否決され頓挫。
内容を絞った改訂版のリスボン条約もアイルランドの昨年6月の否決によって瀕死の危機に追い込まれましたが、今回の再投票は“賛成”の見通しが強いように報じられています。

外資導入・移民受入れで経済成長を実現してきたアイルランドですが、昨年の金融危機で状況は一変しました。
それでもユーロ圏のアイルランドはある程度救済され、非ユーロ圏の英国やアイスランドに比べれば被害が軽かったとのことで、「寄らば大樹の陰」というか、国民の「強いEU」への期待感が高まっていることが背景にあるとも言われています。

【チェコ大統領 署名を遅らせる】
人口400万人のアイルランドの判断を、5億人のEUが固唾を呑んで見守っている状況ですが、チェコでもクラウス大統領が消極姿勢を崩していないようです。

****チェコ:「リスボン条約は違憲」上院議員グループ申し立て****
欧州連合(EU)の機能強化を目指す新基本条約「リスボン条約」に批判的なチェコの上院議員グループは29日、「条約は国家の主権を侵害し違憲」として、条約が合憲かどうかの判断を求める申し立てをチェコの憲法裁判所に提出した。
リスボン条約の発効にはEU加盟27カ国すべての批准が必要。チェコ上下院は5月までに承認を終えたが、クラウス大統領は批准手続きに必要な署名をしていない。
大統領はEUへの権限集中を警戒し、憲法裁の判断が出るまで署名しない意向とみられ、アイルランドで10月2日に予定される2回目の国民投票で、賛成多数で可決された場合もチェコでは批准手続きが遅れる可能性が出てきた。【9月30日 毎日】
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【しぶとい取組み】
単一通貨ユーロを導入し、経済統合が急速に進む一方で、加盟国数が27カ国にまで増えたEUは、経済政策をたばねるだけでなく、外交や安全保障、地球環境などグローバル化する諸問題に一体的に対応するため、政治統合も強める必要に迫られていることから、今回のリスボン条約の動きとなっています。

「欧州憲法」の頓挫、前回のアイルランドの否決と、障害は多々ありましたが、個人的な印象としては、“なにがしらかの国家主権制約にもつながる政治統合に向けて、EUは随分しぶとく取り組んでいる・・・”といったところです。
欧州の生き残りをかけた取組み・・・でしょうか。
鳩山政権は“東アジア共同体”構想を提起してアメリカの不興をかっていますが、日本の生き残りをかけた戦略はどこに見出せばよいのでしょうか。

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鳩山首相 温暖化対策で国際公約 国連作業部会で「日本を見習って」

2009-09-29 22:58:19 | 国際情勢

(写真は24日の国連安全保障理事会首脳会合での鳩山首相 “flickr”より By United Nations Photo
http://www.flickr.com/photos/un_photo/3952224938/)

【国際公約 25%削減】
民主党・鳩山政権の誕生で、マニフェストで掲げていた年金・子供手当て・高速道路・ダム建設中止・脱官僚支配・天下り禁止などの諸政策の実現性について国内的には注目されています。
国際的には、かねてからインド洋での給油問題が論議を呼んでいますが、俄かに脚光を浴びているのが温暖化対策です。

22日に開幕した国連気候変動サミットにおいて、鳩山首相は20年までに1990年比25%の温室効果ガス削減の中期目標を「国際公約」として表明、途上国の削減努力への資金援助などの支援体制も示し「鳩山イニシアチブ」として日本の主導的役割をアピールしました。

7月に行われたラクイラ・サミットのG8及び「主要経済国フォーラム(MEF)」に向けて、麻生前首相が6月に発表した「05年比15%減」(90年比8%減)とする日本政府の「中期目標」が、国連の潘基文事務総長が「もっと野心的なものを期待していた」と失望感を表明するなど、国際的に非常に不評だっただけに、今回の鳩山首相の「国際公約」は好意的に受け止められています。

削減比率自体については、日本の数値が突出している訳ではなく、イギリスなどは90年比で34%削減することとしており、7月には、総発電量に占める原子力や風力など低炭素エネルギー発電の割合を2020年までに40%まで引き上げることなどを柱とした計画達成への具体的なロードマップを明らかにしています。
スウェーデンの環境相も7月、2020年までの温室効果ガス排出量の削減目標(1990年比)を従来の「20%」から「30%」に引き上げることを目指す考えを示しています。
これまでの日本の「中期目標」が、国際的に低すぎた面があるようです。

また、ラクイラ・サミットのG8とMEFの首脳宣言にはいずれも「気温上昇2度以内」が盛り込まれていますが、この達成には、20年までの先進国全体の排出量を90年比で25~40%減とする必要があります。
そのため、日本が当時公表した“05年比で15%減(90年比8%減)”では「整合性が取れなくなる」という問題もありました。

【日本の「野心的な目標」で議論を活性化】
日本の国際公約が注目された背景としては、“今回のサミットは、次期枠組み合意の期限とされる12月の国連気候変動枠組み条約第15回締約国会議(COP15)に向けて「各国首脳が合意形成の意思を誓い、共有する舞台」(潘事務総長)と位置づけられている。政権発足間もない鳩山首相を演説者の一人に選んだのも、「野心的な目標」が議論を活性化するとの期待が国連側にある。”【9月22日 毎日】とも。

中国の胡錦濤国家主席は国連気候変動サミットでの演説で、二酸化炭素の排出量を2020年までに国内総生産(GDP)比で05年よりも「大幅に」減らす方針を示しましたが、具体的な数値は触れていません。
温暖化問題で積極策に転じたオバマ米大統領は、「取り返しのつかない破滅的状況」に直面するリスクを回避するため、世界的に地球温暖化防止の行動を取る必要性を訴えましたが、この問題に対処する米国内での新対策は発表しませんでした。

「各国首脳は行動する意向を示したがっている。しかし、だれもがこのチキン・ゲームの中にいる」(ドイツ国際安全保障問題研究所のスサンネ・ドレゲ氏)といった状況で、京都議定書に続く2013年以降の温室効果ガス削減の枠組みを決定する会議として位置づけられる12月の気候変動枠組み条約第15回締約国会議(COP15)における合意形成について危ぶむ声も出てきています。

それだけに、鳩山首相の「野心的な目標」への転換が、議論を活性化させたい国連側の思惑もあって注目を集めています。

****温暖化対策「日本を見習って」 国連作業部会が開幕*****
13年以降の地球温暖化対策の国際枠組み(ポスト京都議定書)を話し合う国連気候変動枠組み条約の作業部会が28日始まった。開会式で途上国側は「日本を見習って他の先進国もさらに削減すべきだ」と指摘。鳩山由紀夫首相が掲げた「90年比25%」という20年までの温室効果ガスの削減目標への支持が相次いだ。
温暖化で深刻な被害を受ける「低開発国グループ」を代表し、南部アフリカのレソトは「削減目標を見直した日本の国民と政府に感謝する」と言及。中国やインドを含む約130カ国でつくる途上国の交渉グループ代表のスーダンは「以前の削減目標に比べると意義のある前進だ」と日本を評価したうえで、「すべての先進国は日本に続いて指導力を発揮してほしい」と注文をつけた。
約180カ国の政府代表が参加する今回の作業部会は10月9日まで。12月の国連の締約国会議(COP15)で合意をめざすポスト京都の原案づくりを急ぐ。先進国の削減目標のほか、途上国の削減計画の定め方、途上国の温暖化対策を支援するための資金や技術移転の方法などが焦点になる。【9月28日 朝日】
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特別作業部会は10月9日までの日程で行われますが、鳩山首相の公約が刺激となって、削減義務をめぐり先進国と発展途上国との間で行き詰まっていた議論が打開に向けて動くか注目されています。

【実現に向けての政策とその負担】
国際的に日本がこれほど賞賛されたのは記憶にありません。
非常に喜ばしいことではありますが、この「国際公約」は実現できるのか、そのためには国民生活の負担はどの程度になるのか、それに対する国民合意が得られるのか・・・等々の不安が伴います。
鳩山首相は、中国、インドなど「すべての主要(排出)国」の参加が日本の国際社会への約束の前提であることを強調してはいますが、これだけ持ち上げられると、“前提”が整わなかったのであれはなかったことに・・・というのも風当たりが強そうです。

実現可能性については、鳩山首相は「政治の意思として国内排出量取引制度や再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度の導入、地球温暖化対策税の検討をはじめとして、あらゆる政策を総動員して実現を目指す決意だ。」と述べています。

従来の「中期目標」達成に必要な主な政策としては
・太陽光発電を、現状(05年)の142万キロワットから、20倍に引き上げ
・ハイブリッド車など次世代自動車の新車販売に占める割合を、現状1%から50%に高め、保有台数の20%に
・新築住宅に占める省エネ住宅の割合を、現状の約40%から約80%に高める
・風力発電を、現状の168万キロワットから500万キロワットに拡大(10万キロワット×34基を新設)
・高効率給湯器を2800万台に
・原子力発電所を9基新設。現状6割の設備利用率を8割に
などが挙げられていました。【6月11日 毎日より】
当然、「90年比25%減」となると、更に強力な政策が必要になります。

また、3月に政府の中期目標検討委員会が公表している削減率の国民生活への影響でみると、25%減では、実質国内総生産(GDP)が20年までの累積で最大6%押し下げられ、失業率も最大年平均1.9%の増加要因になるとしています。また、20年の1世帯当たりの可処分所得は、「7%減」で4万~15万円押し下げられ、「25%減」では22万~77万円押し下げられるとのことです。【3月27日 毎日より】

このあたりの数値はあくまでもモデル試算で、現在の経済危機の影響を考慮しておらず、GDPが年1.3%ずつ増加する成長モデルを前提としているとのことです。
実際の影響は、経済全体の状況と、どういう政策を取るかによっても大きく変わってきます。
いずれにしても、強力な政策誘導と合わせて、負担に関する国民合意が必要になります。

負担については、国際的には先進国と新興国・途上国の間で厳しい対立がありますが、温暖化が人類の活動の結果引き起こされているという立場に立つのであれば、これまで経済活動による便益を集中的に享受してきた先進国側が相当の負担をすべきという主張は筋論ではあります。
その意味で、負担が増えるのはイヤ・・・とは言えないことを含めて、国民的合意が必要でしょう。
その負担を国内でどのように配分するかは、また難しい問題です。

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ミャンマー  軍政との対話、制裁解除の動き 海外企業投資プロジェクトの“闇”

2009-09-28 22:01:49 | 国際情勢

(ヤナダ・天然ガスプロジェクトを主導するフランス石油大手企業トタルへの抗議活動 ロンドンのフランス大使館前 09年5月22日 当然ながら、ミャンマー国内ではこうした活動はできません。“flickr”より By totaloutnow
http://www.flickr.com/photos/totaloutnow/3704713203/)

【不信と恐怖、あきらめ】
ミャンマーで僧侶・市民による軍事政権に対する反政府活動が武力鎮圧されて、もう2年が経過しました。

***ミャンマー、平穏装う街 反政府デモ武力弾圧から2年****
ミャンマー(ビルマ)軍事政権による反政府デモの武力弾圧から26日で2年になるのを前に最大都市ヤンゴンに入った。市民はふだん通りの日々を過ごしているように見えるが、反体制の動きを警戒する軍政が、新たなデモを計画したとして僧侶ら20人以上を拘束するなど水面下では緊張が続く。市民の間には不信と恐怖、あきらめが広がっている。(中略)

軍政は17日に7千人余りの受刑者の恩赦を発表したが、国際社会が釈放を求める政治犯はそのうち100人余りで、デモを先導したとして拘束されている主要な活動家や僧侶らは含まれていない。
情報統制も厳しくなる一方だ。従来の検閲やインターネットの規制などに加え、うわさや情報が口コミで広がる場となる喫茶店の新たな開店許可はこの2年間、凍結されたままだ。
一方で、市民の不満に火をつけないよう物価の抑制には気を配っているようだ。コメや食用油、鶏卵、ガソリンなどの価格は1年前に比べ半分から3分の2程度。「ミャンマーで反政府デモが起きるのは経済政策を誤った時」(外交筋)とされ、2年前のデモも燃料価格の引き上げが引き金になった。軍政はその経験を踏まえ、価格を意図的に抑えていると関係者はみる。

それでも、市民の間には不満と不信が募る。日本製の中古車やバスが走る中、時折見かける新車は、軍政関係者や取り巻きの政商らのものと考えられている。最近、市内に増えている大型スーパーやしゃれたレストランを利用できるのも、わずか数パーセントの金持ちだけだ。広がる一方の格差と軍政の力による抑え込みで、市民には恐怖やあきらめ、無力感が広がる。(中略)
日本語の観光ガイドをしていた男性(26)は2年前のデモ以来、仕事がなくなり、今はたまに倉庫で荷物運びを手伝うだけだ。軍政が主導する来年の総選挙にも期待はしていない。「結局は軍政が形を変えるだけで、孤立は続くだろう。暮らしが良くなり、自由に物が言える日はいつになったら来るのか」【9月23日 朝日】
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【「制裁だけでは期待通りの結果を得られていない」】
こうした膠着状態にあって、敵対勢力との交渉も排除しない方針のアメリカ・オバマ政権は、ミャンマー軍事政権との直接対話に乗り出す方向で政策転換を図っています。

****ミャンマー軍政に対話と制裁の両方を活用=米国務長官*****
クリントン米国務長官は23日、ミャンマーの民主改革実現に向け、対話と制裁の両面から軍事政権に働きかけていくと述べた。
クリントン国務長官は記者団に「われわれは、制裁は引き続き我が国の政策のなかで重要な位置を占めていると考えている。しかし、制裁だけでは期待通りの結果を得られていない。われわれの意見では、対話か制裁かという選択肢は間違っている。われわれは、その両方を活用していく」と語った。
さらに長官は、ミャンマー軍政が民主運動家アウン・サン・スー・チー氏を速やかに解放し、信頼に値する民主改革を実施し、反政府勢力や少数民族との真剣な対話に臨むよう、あらためて求めた。【9月24日 ロイター】
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【スー・チーさんも連動】
こうした動きは、軍事政権と厳しく対峙してきたスー・チーさんの了解を得たもののようです。

****スー・チーさん、オバマ政権の対話路線を歓迎*****
ミャンマーの民主化運動指導者アウン・サン・スー・チーさん(64)は25日、オバマ米政権がミャンマー軍事政権と対話に乗り出すことを歓迎する談話を発表した。
ただ、「米政府は民主化勢力にも関与すべきだ」と述べ、民主化支援が後退しないよう注文をつけた。自宅軟禁中のスー・チーさんと面会した最大野党、国民民主連盟(NLD)のスポークスマンがAP通信などに明らかにした。
来年の総選挙を控え、国際社会からの圧力緩和を狙う軍政側はオバマ政権との対話開始に期待を強めており、18日にはヤンゴンの刑務所からNLD党員やジャーナリストなど160人を釈放したと発表。今回、NLD側の求めに応じてスー・チーさんとの面会を許可するなど、民主化勢力への「配慮」をアピールしている。【9月25日 読売】
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また、スー・チーさんは、タン・シュエ国家平和発展評議会議長に対し、欧米による対ミャンマー経済制裁解除へ向けて協力を申し出る手紙を書いたとも報じられています。

****スー・チーさんが軍政に書簡 交渉に前向きとの見方も****
ヤンゴンからの情報によると、自宅軟禁中のミャンマー(ビルマ)の民主化運動指導者アウン・サン・スー・チーさんは26日、軍政トップのタン・シュエ国家平和発展評議会議長に書簡を送り、欧米諸国による制裁解除に向けた方策などについて自身の考えを伝えた。
スー・チーさん率いる国民民主連盟(NLD)幹部が明らかにした。書簡の詳しい中身は公表されていないが、国際社会による制裁に一貫して賛同してきたスー・チーさんが解除の可能性に言及したことは、来年予定される総選挙に向け、軍政との交渉に応じる可能性を示唆したとの見方が出ている。米オバマ政権が対ミャンマー政策の見直しを決めた直後の動きだけに、軍政側がどのように応じるかも注目される。【9月26日 朝日】
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これまで軍事政権と頑ななまでに対立してきた、また、海外からの投資についても軍事政権を利するものと批判的だったスー・チーさんが、ここにきて柔軟姿勢に転じたようにも見える背景には何があるのでしょうか。
記事には“軍政との交渉に応じる可能性を示唆した”とありますが、彼女自身について言えば、軍事政権側が彼女を来年の総選挙前に自由にすることは考えにくいところです。

ただ、事態が軍事政権主導で進行するなかで、この流れの外に身を置いていては今後の展望も持ち得ないのも事実ですので、これを契機に野党・国民民主連盟(NLD)が総選挙に向けた態勢を整え、選挙の政治状況に一定の発言権を保持する形に持って行くことは、ミャンマーの今後にとってプラスではないかと考えます。

【環境破壊と人権侵害】
ところで、ミャンマーに対する欧米の経済制裁にもかかわらず、欧米海外企業が参画する従前からの大型プロジェクトは継続されてきました。

****石油大手がミャンマー軍政を支えている、人権団体が欧米2社を批判****
仏石油大手トタルと米同業シェブロンがミャンマーで運営するガスパイプライン事業が同国の軍事政権を下支えしているとする報告書を、米人権団体「アースライツ・インターナショナル」が10日、発表した。
同団体がまとめた2つの報告書によると、ミャンマー軍政は両社が行う「ヤダナ・プロジェクト」で2000~08年に得た収益約48億3000万ドル(約4400億円)のほとんどを、国家予算から切り離し、隠し資産としてシンガポールの華僑銀行とDBS銀行(旧シンガポール開発銀行)に蓄えているという。
また、パイプラインを警備するミャンマー軍が行った強制労働や殺人などの虐待行為について、両社が隠ぺいしようとしたとも指摘。国際社会に対し、両社へ圧力をかけるよう求めた。
これに対しシェブロンは、プロジェクトは地元社会において人びとの健康や教育の促進、経済開発などの支援となっていると反論。トタルも、報告書には複数の間違いや誤った解釈があるとして、信ぴょう性に疑問を呈した。【9月11日 AFP】
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「ヤダナ・プロジェクト」は1992年に建設が始まり98年に完成した全長670kmの天然ガス・パイプラインによって、アンダマン海のヤダナ・ガス田からタイのラチャブリ精製所に天然ガスを移送するプロジェクトです。
投資規模は12億ドル(1440億円)で、ミャンマーに対する直接投資としては最大のものです。
ミャンマー側建設地域は、カレン人、ダヴォイ人、モン人など少数民族の住んでいます。

このプロジェクトには、以前から人権団体などから、森林伐採などの環境破壊と少数民族住民の強制労働・強制移住といった人権侵害の両面から厳しい批判がありました。
例えば、秋元由紀氏 「法律家への手紙:アメリカの環境NGOより」
http://www.burmainfo.org/article/article.php?mode=0&articleid=186)など。

アメリカは、ミャンマー軍事政権に対して1997年から制裁措置とっていますが、それ以前から同国と提携する米ユノカル社のミャンマー開発事業は例外として継続され、後にユノカル社を買収したシェブロン社も同様に制裁措置から除外されています。フランス・サルコジ政権も、ミャンマーへの“新規”投資を凍結するという形で、従来からの事業については制裁対象外としています。

【「この世界は民主主義だけで成り立つわけじゃないんだよ。」】
いささか“きな臭い”のは、ライス前国務長官が1991年からブッシュ政権入閣直前までシェブロン社の重役を務めていたとか、パイプライン初期工事にあたったハリバートン社CEOがチェイニー前副大統領であった・・・というところです。
対ミャンマー経済制裁の適用外という特別待遇を受けていることについて、CNN放送番組でチェイニー前副大統領は「この世界は民主主義だけで成り立つわけじゃないんだよ。」と語ったとか。
(暗いニュースリンク http://hiddennews.cocolog-nifty.com/gloomynews/2007/10/post_1db5.html より)

確かに「この世界は民主主義だけで成り立ってはいない」というのは事実ですが、人権・制裁を声高に主張する一方で、政権幹部がかかわる企業が制裁適応を除外され、しかもその収益が軍事政権の隠し資産となっていること、恐らく反政府活動弾圧の武器購入などにも当てられているであろうこと・・・そうしたことはため息を誘います。
ついでに言えば、日本はミャンマーとは歴史的に繋がりが強く、最大の投資国でもありましたので、天然ガスプロジェクトや巨大ダム建設にも、日本企業や政府ODAが関与しています。

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インドネシア・バリ島  芸能・芸術の街ウブドの人々

2009-09-27 16:24:15 | 身辺雑記・その他

(バリ島・ウブド郊外には気持ちのいい田園風景がひろがります。鳥追いの竹を打つカラン・コロンという音などを耳にしながら、椰子のあぜ道を散歩するのが楽しみのひとつです。)

インドネシア・バリ島から今朝帰国しました。
バリの芸能・芸術の中心地ウブドで、12年前に訪れたときの記憶を追いながら、郊外田園のジャラン・ジャラン(散歩)とレゴンやケチャといった民族舞踊、ワヤン・クリッ(影絵芝居)、ガムラン(青銅楽器)やジュゴク(竹楽器)の演奏などを楽しんできました。

ウブドは、西洋人芸術家が持ち込んだ絵画がローカルな地場産業として定着した変わった街でもあります。
街の中心街にはたくさんのギャラリー(きちんとしたものから、観光土産用の絵画屋さんまで)が軒を連ね、郊外の田んぼのあぜ道にも、外国人を狙った絵画屋さんがポツンとあったりします。
田んぼの真ん中で絵を売っているというのは、世界中でもウブドぐらいではないでしょうか。
恐らく職業統計をとると、絵描きやギャラリー従事といった人の数が、相当上位にランクされるのでは・・・と思われるぐらいです。

夜毎に村の集会所や王宮などあちこちで観光客相手にパフォーマンスを披露する村単位で組織された舞踏・芸能グループ、街にあふれる絵画産業など、外国人観光を前提にした特殊構造の街でもあります。
それだけでは、いかにもあざといイメージになりますが、そうしたあざとさを中和してあまりあるのが、生活の隅々まで行き渡ったバリ・ヒンズーの影響です。

民家でも、商店でも、女達はチャルとかチャナンと呼ばれる神様へのお供え物をつくるのに1日の多くの時間を費やしています。
男達は村の宗教的な行事・お祭りを生きがいにしているようにも見えます。
車で遠出すれば、お祭りの行列に必ずと言っていいぐらいに出くわします。
街や田んぼのあそこそこに、魔よけの黒と白のチェック・クロスの布を巻いた石像や神棚に出会います。
舞踏・芸能の収益も、村のお祭りなどの費用にあてられることもあるようです。
観光と伝統・宗教の融和した不思議な生活空間がバリ・ウブドの魅力です。

バリに限った話ではありませんが、チャーターした車のドライバーなど現地の人と話をしていて、「日本まで旅行にお金はいくらかかるのか?」といった話題になります。
彼等が普段手にする金額とは恐らく桁違いの金額でしょう。
いつも答えをためらい「とても高いね」と、適当にごまかします。

もちろん、生活の豊かさをはかる尺度が決して金銭だけでないことは、バリの人々の暮らしぶりを見ていれば理解できるのですが、一方で、ウブドもすっかり車社会に変わったように、そうした社会変化に伴って現金収入を求めて苦労している面があることも事実です。
今回のバリでもそうでしたが、車のドライバーなどは、家族を田舎に残して町で単身で働いているというケースが珍しくありません。

彼等がなかなか手に出来ない金額をわずか数日の物見遊山に使ってしまうということ、恐らく彼等は外の世界など見ることなく人生を送るのであろうこと・・・そうしたことを考えると、容易に超えられないものも感じてしまいます。
考えすぎなのかもしれませんが。

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イラン  新たな核施設の存在をIAEAに報告

2009-09-26 09:24:27 | 国際情勢

(IAEA主催の舞踏会 熾烈な国際政治の場でもあります。 天野新事務総長は大丈夫か?
“flickr”より By Guss
http://www.flickr.com/photos/zooberts/3318161155/)

【「追加制裁などをかわす材料にする狙いがある」】
イランの核開発問題については、昨日も少し触れたように、ロシアの協力も得て追加制裁に向けた6カ国の包囲網が進みつつあります。
6カ国側はイランに「アメ」(対話・支援)と「ムチ」(制裁)の両にらみで臨んできており、昨年7月の協議では「イランがウラン濃縮を停止すれば原子力平和利用に協力し、停止中は追加制裁を実施しない」との見返り案を示しましたが、イランが濃縮停止を拒否。その後もイラン側から停止要求の受け入れを示唆する発言は出ていません。
ジュネーブでの交渉を来月1日に控え、国連総会は「核兵器のない世界」の流れのなかで、欧米首脳がイランに外交圧力を強める場となった感があります。

そして、ここにきてイランが2カ所目となるウラン濃縮施設の存在を認める書簡をIAEAのエルバラダイ事務局長に送っていたことを明らかにしたことで、事態は更に加速しそうな状況です。
IAEAはこの施設について、イランが未申告のまま建設した保障措置協定違反の疑いがあるとして、イランに対し具体的な情報提供と施設立ち入りを要求しています。

****イラン、第2の核施設あった IAEAに書簡で告白*****
国際原子力機関(IAEA)は25日、核開発疑惑が指摘されているイランが21日、同国で2カ所目となるウラン濃縮施設の存在を認める書簡をエルバラダイ事務局長に送っていたことを明らかにした。
イランはこれまでIAEAに対し、同国中部ナタンズの施設以外にウラン濃縮施設は存在しないと報告していた。国際社会から強い反発が起きるのは間違いない。

IAEAによると、新たに判明した核施設は一部建設中か試験運転の段階で、本格的なウラン濃縮活動は始まっていない模様だ。イラン側は「完全な情報は適切な時期に提供する」としている。
IAEAはイランに対し速やかに情報を提供し、査察を受け入れるよう求めている。
AP通信によると、施設はテヘランの南西約160キロに建設され、来年中に3千基の遠心分離器が稼働可能な状態にあるとの情報もある。
イランは現在、ナタンズの核施設で、国連安全保障理事会の決議に反してウラン濃縮活動を継続。IAEAの報告では8月時点で約4600基の遠心分離器を稼働し、これまでに製造された低濃縮ウランの総量は約1.5トンに達した。専門家によれば、高濃縮にすれば核爆弾1個分に相当するとされる。
IAEA内では、イラン核問題を巡り、イランが報告している以外にも核兵器開発を進めている可能性を示す証拠があるとの疑惑が以前から取りざたされていた。
国連安保理常任理事国にドイツを加えた6カ国とイランとの協議が10月1日にジュネーブで開かれる予定で、この時期にイランが新事実を明らかにしたのは、隠し事はしていないという態度を見せることで「追加制裁などをかわす材料にする狙いがある」との観測が外交筋の間で広がっている。
イラン核施設を巡っては今回の施設と別に、同国反体制派が24日、核兵器に必要な高性能爆発物の研究施設と製造施設の存在を指摘している。 【9月25日 朝日】
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【「何も恐れていない」】
オバマ大統領は会見で、イランが数年前からIAEAへの通告なしに建設を進めていたことを重視し、「(ウラン濃縮凍結を求める)国連安保理決議とIAEAの要求に従う意思がないことを示した」と批判しています。また、イランには原子力の平和利用の権利があるとしながらも、「(新たな)施設の規模や構造は平和開発と一致しない」と軍事利用の可能性があることを指摘しています。【9月26日 毎日】

イラン・アフマディネジャド大統領は25日記者会見し、「国際原子力機関(IAEA)の規制の枠内であり、法に従っている」と述べ、建設を秘密裏に進めていたとの非難に反論しています。
****イラン大統領、「核施設は法に従って建設」 批判に反論****
大統領によれば、IAEAの規則上、新たな施設についてはウラン濃縮を始める6カ月前までに報告義務があるが、イランは1年半前に報告したとしている。「もし秘密の施設なら、なぜ規則より1年以上早く報告する必要があるのか」と、IAEAへの協力姿勢を強調した。
新施設の査察に関しては「受けることに関して何の問題もない。何も恐れていない」と語った。【9月26日 朝日】
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IAEA規則についてはわかりませんが、イランはこれまでナタンズの施設以外にウラン濃縮施設は存在しないと報告していただけに、批判と不信感の高まりは止むを得ないところでしょう。

イランでは7月の大統領選不正疑惑を巡り、改革派を中心に国民の間に政権に対する不信と不満が蓄積されたままだ。石油製品などの追加制裁により国内経済が一層悪化すれば、政権への不満が再び噴き出し、反政府運動が活発化する可能性もあります。ガソリン価格値上げ・不足などは国民の生活を直撃します。
もとより、アフマディネジャド大統領に対しては、欧米との危険な対立を煽るような外交ではなく、もっと国内経済問題に専念すべき・・・との批判が、保守派内部からもあったところですので、政権内部の混乱も引き起こしかねません。
“中国はイランの立場に理解を示しているものの、かばいきれなくなる可能性が出てくる。”【9月26日 毎日】とも。

それと、IAEAの対応も注目されるところですが、IAEA事務局長には日本の天野氏が9月14日のIAEA総会での正式承認されており、12月に5代目の事務局長に就任します。任期は4年。
最も厳しい国際的せめぎあいの場のひとつを取り仕切る訳ですが、大丈夫でしょうか?
国連の潘基文事務総長は非常に厳しい評価を突きつけられていますが・・・・。


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中国外交 “責任ある発展途上国の大国”

2009-09-25 17:26:50 | 国際情勢

(今年4月のG20で、オバマ大統領と握手を交わす胡錦濤国家主席
“flickr”より By handshake
http://www.flickr.com/photos/hellooooo/3403879073/)

【途上国に軸足を置いた首脳外交】
23日、中国の胡錦濤国家主席が中国の国家主席として初めて国連総会の一般演説を行いました。
これまで国家主席が国連の場に出てこなかったというのも、自らは赴かず、周辺“属国”が朝貢に中国を訪れてきた中華外交の歴史でしょうか。
そのあたりの事情は下記の記事に。

****中国主席:国連総会で初の一般演説 途上国の立場を強調*****
中国の胡錦濤国家主席が気候変動や核不拡散・核軍縮などニューヨークでの一連のサミットで途上国に軸足を置いた首脳外交を展開している。23日には中国の国家主席として初めて国連総会の一般演説を行い、途上国の立場を強調しながら先進国をけん制した。

「中国は責任ある発展途上国の大国として、ほかの途上国を全力で支援していく」。胡主席が一般演説で、不況に苦しむ発展途上国への債務減免などを表明すると、国連多数派の途上国代表たちから拍手がわき起こった。
歴代の中国国家主席が国連総会での一般演説を見送ってきたのは、地球規模の問題で声高に主張すれば、中国が「国内問題」と位置づける台湾やチベットの問題で揚げ足を取られ、国際問題化することを恐れたからだ。
しかし、台湾で昨年5月、中国との融和路線を訴える馬英九政権が誕生し、中台関係の改善が進んだ。チベットやウイグルなどの少数民族問題はエスカレートしているが、中国批判の急先鋒(せんぽう)だった米国は昨年以来の金融危機に足を取られ、世界一の米国債保有額を誇る中国の協力を必要とするようになった。気候変動や核不拡散、金融危機は「新興国、途上国の協力なしには解決できない問題ばかり」(同行筋)という事情もある。
ピッツバーグに舞台を移して開かれる主要国・地域(G20)の金融サミットでも「新興国、途上国の発言権拡大や最貧国支援を訴え、中国に負担を求める先進国側をけん制していく展開」(北京外交筋)になりそうだ。【9月24日 毎日】
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“責任ある発展途上国の大国”というのは従来からの中国の主張ですが、使い方によっては“都合のいいときだけ発展途上国としての立場を主張する”ということにもなりかねません。
くれぐれも“責任ある”の部分にも最大限に留意してもらいたいものです。

【「核兵器は中国にとって政治的に有用なものをもたらした」】
ところで、胡錦濤国家主席はこの演説で、「核軍縮推進」の必要性を強調していますが、国内には“核途上国”としての主張が根強いようです。

****核軍縮 中国主導に反対の声 国連演説、胡主席は推進強調****
米国とロシアの核軍縮が動き出す中、軍拡を続ける中国の動向が注目されている。胡錦濤国家主席は23日、国連総会で行った一般討論演説で、「核軍縮推進」の必要性を強調してみせた。しかし、共産党機関紙・人民日報系列の国際情報紙「環球時報」は24日、「核兵器は中国にとって政治的に有用なものをもたらした」と指摘、中国が核兵器廃絶に向けたイニシアチブをとることに反対する姿勢を示している。

胡主席は23日の演説で、「核兵器の全面禁止と廃絶、核兵器のない世界をつくることは中国の一貫した主張だ。国際社会は核軍縮推進に向けた確実な措置を進めるべきだ」と表明。4月のプラハ演説で「核兵器のない世界」の実現を提唱したオバマ米大統領と足並みをそろえた。
しかし、中国の核兵器数は米露に比べ圧倒的に少ない。
中国は1950年代から核兵器や、運搬手段である弾道ミサイルの開発を進めてきた。保有する核兵器は400発程度と見積もられてきたが、最近の専門機関の報告では、旧型の退役や通常弾頭型への転換などで配備数約130発、備蓄約70発の計約200発と指摘されている。
これに対し、米露は配備済みの戦略核弾頭だけで2千発を超す。このため、中国では「(廃絶の)責任は主に米露で、中国主導ではない」(環球時報)との立場が一般的だ。
今年5月に訪日した人民解放軍の馬暁天・副総参謀長も、シンポジウムで「中国の核兵器量は少ない。(米露の削減交渉に)中国は参加する資格はない」との見解を述べたとされる。
中国は核兵器の質的向上を続けており、建国60周年の10月1日の国慶節では「国防の重要な支柱」(同紙)として核兵器を大々的に披露する予定だ。
こうしたことから、環球時報は「(核兵器は)中国の政治的影響力の核心的要素のひとつ」で、まずは米露などの核軍縮の行方をみるべきだと強調。「米露など核大国が最後の1発を破棄するときに、中国も全面廃棄すべきだ」と主張している。【9月25日 産経】
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こうした対応は別に中国だけのものではありませんが、“責任ある大国”として、世の中の流れを妨げることのないように願いたいものです。

【今後の中国の対応が焦点】
国際的には、こうした中国の協力が不可欠になっています。
経済問題や温暖化対策もですが、イラン・ミャンマー・北朝鮮といった“問題国”への対応も中国が鍵を握っています。

イランの核問題では、イラン包囲網に向けてロシアの協力を取り付けた形ですが(実際問題となったときロシアがどのように行動するかはまだ不透明ではあるようですが)、包囲網が実効を持つためには中国の協力が欠かせません。

****イラン核問題:追加制裁は中国の出方焦点*****
オバマ米政権はイランの核問題でロシアから追加制裁への同意を取り付け、10月1日にジュネーブで開かれるイランとの核交渉に向けて国際社会の圧力を強めることに成功した。だが、イランに石油製品を輸出しているとされる中国は制裁強化に消極的な姿勢を崩しておらず、制裁論議がイランに軟化を促す「ムチ」として有効に機能するかどうかは中国の出方にかかっている。

交渉は当初、トルコ開催が有力視されていたが、関係国間の調整の末、変更された。イランは協議相手である国連安保理常任理事国(米英仏露中)とドイツの6カ国にあてた文書で対話姿勢を打ち出しながらも、安保理が停止を求めるウラン濃縮活動には触れていない。このため6カ国側はイランに核問題での「真剣な返答」(ミリバンド英外相)を要求する方針だ。
6カ国側はイランに「アメ」(対話・支援)と「ムチ」(制裁)の両にらみで臨む。昨年7月の協議では「イランがウラン濃縮を停止すれば原子力平和利用に協力し、停止中は追加制裁を実施しない」との見返り案を示したが、イランが濃縮停止を拒否した。今年6月の大統領選の混乱が尾を引く中、イラン側から停止要求の受け入れを示唆する発言は出ておらず、交渉は難航が予想される。

交渉を1週間後に控え、国連総会は欧米首脳がイランに外交圧力を強める場となった。サルコジ仏大統領は、イランが国際社会の足並みの乱れを期待して「悲劇的な過ち」を犯さないように警告し、12月を協議打ち切りの期限に設定すべきだとの考えを示した。ブラウン英首相も「さらなる制裁を検討する」用意を強調した。
オバマ米政権が検討中とされる追加制裁は石油製品の取引停止だ。イランは産油国だが、ガソリンなどの石油精製品を輸入している。ロシアは制裁強化に同調姿勢を示したが、中国は「制裁や圧力は問題を解決する方法ではない」(外務省報道官)との立場だ。23日付の英紙フィナンシャル・タイムズは中国の国営企業が第三国を通じた貿易でイランの石油製品輸入の3分の1をまかなっていると報じており、今後の中国の対応が焦点となる。【9月24日 毎日】
********************

中国が“責任ある大国”として国際社会と歩調をそろえてくれると、現在の国際社会の抱える問題の多くが進展するのですが・・・。
そうした発想は“欧米先進国” 的な一方的見方なのでしょうか。

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リビア・カダフィ大佐の国連安保理批判

2009-09-24 18:06:45 | 国際情勢

(国連総会議場 “flickr”より By dawvon
http://www.flickr.com/photos/dawvon/986732698/sizes/m/)

【「今の安保理は正義ではない」】
鳩山首相の外交デビュー、オバマ大統領の「核なき世界」への方向付けや国際協調路線の明確化など、何かと話題も多い国連総会ですが、リビアの最高指導者、カダフィ大佐も彼らしいパフォーマンスです。

****カダフィ大佐:「安保理はテロ理事会だ」国連総会で初演説*****
国連総会の一般討論初日の23日、リビアの最高指導者、カダフィ大佐が演説した。大佐は、安全保障理事会で常任理事国だけに拒否権があることなどを批判し、「安保理はテロ理事会と呼ぶべきだ」と主張した。また、国連憲章の冊子を読み上げながら、憲章の精神が守られていないと冊子を放り投げるなど「カダフィ節」健在だった。

大佐の国連訪問と演説は初めて。オバマ米大統領の演説を、大佐はリビアの席で最後まで聞いた後、総会議長に促されて登壇。気候変動、経済危機、食料危機など現在、国連はさまざまな挑戦に直面していると説明した。その後、国連憲章を読み上げながら、加盟国に同じ権利が保障されているはずなのに一部の国が拒否権を持っていると批判し、憲章の冊子を破ろうとした。
また、大佐は「安保理で各国が同じ権利を有するには全理事国に拒否権を与えなければならない」と述べ、「今の安保理は核兵器を所有する国が特権を持っており、正義ではない」と主張した。
大佐は途中、「国連が認めている武力行使は世界の平和にとって脅威になる場合に限られるのに、過去の世界の戦争のほとんどは1カ国か数カ国のために行われ、国連はそれを止めることもチェックすることもできなかった」と、安保理の機能に不満を示した。【9月24日 毎日】
**********************

ベドウィン出身のカダフィ大佐は、ベドウィン文化に忠実でありたいとして、訪問先ではキャンプに野営しており、ローマ中心部の広場から、パリのエリゼ宮近くの庭園など、ありとあらゆる訪問先で野営地を設営してきており、今回の国連出席でも野営すると伝えられていました。
しかし、先日、スコットランド自治政府が釈放しリビアへ帰国したロッカビー事件(パンアメリカン航空機爆破事件)の受刑者をリビア側が大歓迎したことに対して、大勢の犠牲者遺族を抱えるアメリカは強い反発を示していました。
“フランク・ローテンバーグ米上院議員(民主党)は、米国務省に対し、カダフィ氏が国連施設区域の外へ出ることを禁止し、ニュージャージー州イングルウッド郊外にあるリビア外交施設の敷地内に野営地を設営することを阻止するよう要請した。ニュージャージー州選出のローテンバーグ議員によると、イングルウッドはパンナム航空機爆破事件の犠牲者の遺族が多く暮らしているという。”【8月26日 AFP】
結局、カダフィ大佐の野営問題はどうなったのでしょうか?

【国連安保理改革】
そんなことはともかく、今回のパフォーマンスについては、“(パンアメリカン機爆破事件の張本人である)彼にテロ理事会云々を言われたくない”というのは至極もっともなことです。

ただ、彼が指摘している問題、国連の実質的決定権がかつての戦勝国であり核保有国である安保理常任理事国の拒否権という形に集約されていること、これまで国際関係調停に国連が有効に機能してこなかったことは、多くの者が認めるところでしょう。

“国連なんてそんなものさ”と言ってしまえばそれまでですが、世界の総意を表す場としてはやはり他にはありませんので、なんらかの改善が望まれるところです。
安保理常任理事国の拡大ついても議論されているところですが、拒否権の問題や、候補国とライバル関係にある国の反対などで進んでいません。

****日本の常任理入り支持=仏大統領*****
フランスのサルコジ大統領は23日、国連総会で演説、安全保障理事会の正統性を維持する観点から理事国枠拡大の必要性を訴え、常任理事国候補として日本の国名を挙げて支持を表明した。
同大統領は「日本やドイツは常任理事国のリストから除外されており、これは受け入れ難いことだ」と強調。ブラジル、インドも候補として言及したほか、アフリカ大陸に常任理事国枠が与えられていないことも問題視した。【9月24日 時事】
**********************

【理不尽な世界で、すべての人々が等しく決定権を持つ場】
ただ、こうした安保理改革ではなく、あるべき論で言えば、本来は国連総会が、単なる意見・パフォーマンス披露の場ではなく、世界の総意を決定する最高決議機関であるべきと思われます。
実際には、独立したばかりの人口数十万の小国や、一般の人々は聞いたこともないような国・・・そうした国々がアメリカや日本と同じ1票を行使する国連総会での決議については根深い不信感があります。

思いつきで言えば、そうした弊害をなくすためにも、国連が全世界の人々の総意をあらわすためにも、各国の持ち票は人口にある程度比例したものであるべきではないでしょうか?
単純に人口比例させると、中国は日本の10倍の決定権を持ち、中国とインドの票で総会決議が左右されることにもなります。(世界政府・全人類総会であれば、それもある意味当然のことでしょう。)
人口段階に応じて、100万人以下の国は1票、100万超1000万人以下なら2票、1000万超5000万人以下なら3票、5000万超1億人以下なら4票、1億超5億人以下なら5票、5億以上は6票、10億以上は7票・・・といったものもあるかも。(もう少し小さな刻みにしたほうがいいような・・・、まあ、どっちでもいいことですが)

現在の“国家”を単位とする世界のシステム、国家の参加機関としての国連のシステムとは相容れないものでしょうし、“国連は世界政府じゃないんだから”“中国が日本の10倍なんて・・・”ということで“そんなアホな・・・”ということになるのでしょうが、考えてみると、世界の運命を決めるような場面で、12億の人口の国も100万人の国も同じ1票・・・という方が理不尽です。

人口だけでなく、世界経済への寄与度なども加味してウェイトをつけることができれば、それもひとつの方策でしょうが、それを言い始めると、“文化的寄与度は?フランス文化は世界の文化向上に大いに寄与している”“歴史的寄与度は?ギリシャはヨーロッパ文明の源である”といった意見とか、“植民地支配していた国、戦争に責任を有する国にはペナルティーを与えるべき”とか、いろんな意見が出てきて収拾がつかなくなりそうです。

私たちが暮らす世界はもとより理不尽な世界です。
日本でグルメ番組・大食い競争番組が多く見られる一方で、貧しい国では多くの人が飢えで苦しんでいる。
日本で膨大なコストをかけて延命治療が行われる一方で、多くの国では簡単な治療・医薬品さえつかえず人々が死んでいく。
私は今インドネシア・バリ島を休暇旅行中ですが、普段“金がない”と言いつつ、現地の人には手が届かない金額を遊びに浪費しているのも、またそういった理不尽さの類でしょう。

そうした理不尽な世界に暮らしているのは事実であり、それを前提にして生きている訳ですが、せめて国連総会という場においては、すべての国のすべての人が等しい価値をもつものとして扱われていいのでは・・・と考えた次第です。

この文章を書きながら思いついたことを並べただけの“そんなアホな”話ではありますが、ひとつ言いたかったのは、現在の国連・安保理のシステムもやはり“そんなアホな”類ではないか・・・ということです。


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「核なき世界」は近づくのか? 24日、国連安保理首脳会合

2009-09-23 22:32:56 | 国際情勢

”flickr”より By damian 78
http://www.flickr.com/photos/damian78/726830658/)

【「具体的な対策をとる緊急性」への関心】
オバマ米大統領が主宰して今月24日に開かれる国連安保理の首脳級特別会合で、アメリカが採択を目指す「核なき世界」決議案について、日本を含む15理事国が最終合意したことを明らかにしており、核保有五大国も含め全会一致で採択されることが確実となっています。

“米政府の「コンセプト(概念)ペーパー」によると、安保理首脳会合は、来年開催される核拡散防止条約(NPT)再検討会議を前に、「死活的な安全保障上の問題に焦点を当てる機会」となり、各首脳に核の脅威への「具体的な対策をとる緊急性」への関心を高めてもらう狙いがある。
核拡散の脅威に取り組む責務を世界が共有し、核の危険を減らすため、前向きに前進することを目標としているという。
具体的には、NPT体制の強化のほか、兵器用核分裂物質生産禁止(カットオフ)条約締結に向けた交渉▽国際原子力機関(IAEA)の抜き打ち査察を認める追加議定書▽核実験全面禁止条約(CTBT)批准▽米露核軍縮交渉--などへの支援を確認する。
また、核不拡散のために、核の平和利用に向けた技術支援や核燃料サイクルへの多国間の取り組みなども協議対象になる。さらに、NPTからの脱退を防ぐなど、条約順守も各国に求める。”【9月18日 毎日】

アメリカの思惑は、核拡散への懸念、核兵器や核関連物質がテロリストに渡る危険性、核を維持する財政的な問題、通常兵器での突出した優位性などもあるのでしょうが、いずれにしても「核なき世界」が近づくのであれば、非常に結構なことです。
しかし、問題はパキスタン、北朝鮮やイスラエル、イランといった国々をどのように動かすかという点であり、総論で賛成しているロシア、中国、フランスといった国々も具体的な議論になると異論があるところです。

【イランも核廃絶支持?】
重要なのは具体的施策であり、行動ですが、焦点のひとつであるイランも、言葉のうえでは核兵器を否定しています。

****ハメネイ師「核兵器を根本的に拒否」****
イランの最高指導者ハメネイ師は20日、国営テレビで演説し、「われわれは核兵器を根本的に拒否し、その製造、使用を禁止している」と述べ、イランのウラン濃縮の狙いが核兵器開発にあると懸念する米欧について「それが虚偽の非難であることは、彼ら自身もそれを知っている」と批判した。最高指導者としての同師の発言が宗教的な権威に基づいたファトワ(宗教裁定)に基づいたものかは不明。同師がすでに核兵器を禁じたファトワを出したと説明をする一部のイラン当局者もいるが、ファトワの存在は確認されていない。【9月22日 産経】
******************

宗教的指導者の立場あってここまで明言しながら、もし実際が言っていたことと違ったらどのように説明するのだろうか?そんなことが許されるのか?国益のためなら嘘でもなんでもいいのか?・・・と、首をかしげてしまいます。

イランのモッタキ外相も、岡田外相と22日夕(日本時間23日朝)国連本部で会談した際、岡田外相が「国際社会の信頼を獲得し、疑念を晴らすよう努力すべきだ」と、国連安全保障理事会決議などが求めるウラン濃縮活動停止を要求したのに対し、イランの核活動は平和目的だとして拒否したうえで、「日本とイランは核兵器を地球上からなくすことで協力できる」と述べています。
オバマ米大統領との話し合いを要請したことについては、「米大統領はチェンジのスローガンを掲げているが、言葉だけでなく行動を見極めている」と慎重な姿勢を示しています。

【やはり交渉できなかったカットオフ条約】
「核なき世界」を掲げるオバマ米政権の登場で高まった核軍縮への期待を受けて、これまで実質的な議論ができず空転していた、核軍縮の柱の一つである兵器用核分裂性物質生産禁止条約(カットオフ条約)の交渉開始が5月29日合意されました。

しかし、予想されたことではありますが、交渉は結局、一回も行われませんでした。
“当初は中国が手続き論で引き延ばしを図り、最後はパキスタンが頑強に抵抗したからだ。軍縮会議は全会一致が原則で、一国でも反対すれば前へ進めない。来年は再び、「交渉を行うかどうか」という議論から始まるが、パキスタンはすでに来年もブロックすることを示唆している。
日米などはパキスタンを説得しようとしたが、効果はなかった。一方で、表立って発言をしないものの、パキスタンに陰から声援を送っている国も複数あるとみられている。皮肉なことに、カットオフ条約をめぐるこの4カ月間の動きは、一部の国にとっての「核兵器の魅力」を改めて印象づけ、核開発をあきらめさせるのが非常に困難な仕事だという現実を思い起こさせるものとなった。
ただ、同時に確認できたのは、多くの国が核軍縮の必要性を真剣に考え始めたという、新しい現実だ。今年の軍縮会議は不発に終わったが、オバマ大統領が議長を務める国連安全保障理事会首脳会合(24日)は、新たな流れを作り出す契機になると期待されている。”【9月21日 毎日】

24日の安保理首脳会議がそうした“新しい流れ”をつくる契機となればいいのですが。

【ベルギーの場合】
核をめぐる具体的な提言として、ベルギー議会が、アメリカ議会にあてて核爆弾の撤去を呼びかける書簡を送ったそうです。

****ベルギー:米国に核爆弾撤去要請の書簡 議会*****
北大西洋条約機構(NATO)加盟国として米軍の戦術核兵器が配備されているベルギーの議会が、米議会にあてて核爆弾の撤去を呼びかける書簡を送ったことが22日分かった。書簡は米政府が計画している戦術核爆弾の改良に異を唱え、戦術核を含む米露核軍縮の推進を促している。
毎日新聞が入手した書簡は17日付で、ベルギー上下両院の国防委員長らが署名している。関係者によると、オバマ米大統領が議長を務め、核軍縮を討議する24日の国連安保理首脳会合に先立ち、21日に送付された。

米紙ワシントン・タイムズによると、オバマ政権は欧州における「核の傘」として配備されている古い戦術核爆弾B61を刷新し、性能を向上させるための予算の承認を議会に求めている。これについて、書簡は「現状ではB61が担う抑止の役割は通常軍事手段(通常兵器)によって実現が可能」であり、追加配備は「軍事的な価値はない」「無駄」と指摘している。
また、書簡は欧州配備のB61が米露間の「取引材料」とみなされている点に触れ、「B61の配備継続はロシアに戦術核の配備を続ける口実を与えている」と分析。より効果的な手段として、核兵器の先制不使用協定を含む意欲的な核軍縮の推進を提唱している。その上で、「ベルギーではB61の配備終了が最善との超党派の政治的な総意が形成されている」と強調している。

ベルギーはNATOの本部や欧州連合軍最高司令部を擁し、米科学者連盟(FAS)によると、北部のベルギー空軍クライネ・ブローゲル基地には推定10~20発の米軍のB61が配備されている。ベルギーでは、フィリップ・マウー上院議員が国内での核兵器の製造、貯蔵、移送などを禁止する法案を議会に提出しており、近く審議が始まる。【9月23日 毎日】
**********************

国を二分する民族対立を抱えて組閣すらできない状態が続き、一時は国の分裂さえ懸念されていたベルギーですが、そうした問題とは別に、議論すべきことはきちんと議論しているようです。

【韓国では】
もちろん、隣国に中国・北朝鮮を抱える日本とベルギーでは事情は異なります。
同様のというか、北朝鮮とはより切実な緊張関係にある韓国は、北朝鮮の金正日体制に「安全の保証」を与えることで核放棄を導き出す考えを正式に表明しています。

****北朝鮮に「安全の保証」、核放棄迫る 韓国大統領が講演****
韓国の李明博(イ・ミョンバク)大統領は21日、北朝鮮の金正日(キム・ジョンイル)体制に「安全の保証」を与えることで核放棄を導き出す考えを正式に表明した。この取引に応じることが、体制の存続にとって「最後のチャンス」とも語り、核の放棄と6者協議への復帰を決断するよう求めた。国連総会で訪れた当地での講演で語った。
大統領は北朝鮮が核放棄の意思を見せず、「対話と緊張の繰り返しに終始してきた」と批判。このパターンを打破するため、北朝鮮を除く5者が「明確な行動計画」で合意する必要を強調し、北朝鮮が核兵器開発計画の主要な部分を放棄する見返りに、5者は安全の保証や経済支援をすべきだとの考えを示した。
李大統領は、これを受け入れることが北朝鮮にとって「生き残りを確かなものにする唯一の道」と述べた。(後略)【9月22日 朝日】
*******************

日本でも密約問題が表世界に出されるようですが、単に責任問題に終わらせず、これからの日本・東アジアそして世界の核をどうするのか・・・という議論が期待されます。

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インド  マスメディアで高まる「中国脅威論」

2009-09-22 18:05:40 | 国際情勢

(今年4月、中国と領有を争うアルナチャルプラデシュ州を訪れたインドのプラティバー・パーティル大統領 “flickr”より By ahinsajain
http://www.flickr.com/photos/ahinsajain/3420767662/

【過熱報道】
世界の流れは、いわゆる新興国の影響力が高まる方向に急速に向かっています。

****G20:恒久開催へ 米提案に各国同意 新興国の台頭で*****
主要20カ国・地域(G20)金融サミット(首脳会議)に参加する日米欧と、中国など新興国は、昨秋からの金融危機対応のため、開催してきた同サミットを、今後も定期的に開催していく方針を固めた。世界経済の安定には先進国だけでなく、急速な経済発展を遂げた新興国を含めた議論が不可欠になったことが背景にある。世界の外交の主舞台がG20に移ることで、日米欧露8カ国によるG8サミットを重視していた日本は、存在感の低下が課題になりそうだ。(後略)【9月19日 毎日】
*********************

その新興国を牽引するのが中国とインドである訳ですが、互いに政治・軍事的影響力、資源獲得を争うライバルでもあると同時に、重要な貿易パートナーでもあります。
両者は国境紛争を抱える関係でもありますが、最近インドメディアで「中国脅威論」が高まっており、両国政府を苦慮させているとか。

****印メディアに国境「中国脅威論」 最大の貿易相手、政府は自制要求****
インド政府が、中国との国境沿いの情勢をめぐる過熱報道を自制するよう、印メディアに求める事態になっている。政府にとって、スリランカやパキスタンなどインドの周辺国で存在感を高め根強い不信がある中国は、いまや最大の貿易相手国でもある。それだけに対立は得策ではなく、メディアの“刺激”が続けば「誰かがどこかで冷静さを失い間違った方向に向かうかもしれない」(ナラヤナン国家安全保障顧問)と懸念を強めている。

「インド・チベット国境警察の兵士2人が、2週間前に中国側からの発砲で負傷」。インド紙タイムズ・オブ・インディアは15日付の1面で、情報筋の話として報じた。外務省報道官は「報道は事実に反する」とすぐさま反論。シン首相やカプール陸軍参謀長も「中国首脳とは連絡を取っている」「国境沿いで何ら深刻な事態はない」と、事態の沈静化を図った。同時に、内務省は発砲記事を書いた記者2人を刑事告発し、情報源を明らかにさせる方針だとの報道もある。

今年に入ってインドでは(1)東北部アルナチャルプラデシュ州での水資源開発に対するアジア開発銀行(ADB)の融資を、中国がつぶそうとした(2)8月下旬にシッキム州ナトゥラ峠で両国軍が衝突した-などの報道が相次いだ。政府はいずれも否定するか、沈黙を守っている。クリシュナ外相は「国境は平和だ」と明言し、メディアは「外務省は中国の“侵入”に目をつぶるのか?」とかみついた。

政府がここまで火消しに躍起なのには、いくつか理由がある。
印中両国の2008年の貿易額は、前年比34%増の520億ドルに達する見通しだ。また、世界貿易機関(WTO)や地球温暖化をめぐる問題では、同じ新興国として先進国と対峙(たいじ)するために、中国との連携がインドには欠かせない。西側に緊迫した状況が続くパキスタンとの国境を抱えるだけに、東側の中国との国境問題で必要以上に波風を立てたくないとの思いも強い。
「合意された国境がないこと」(クリシュナ外相)が問題の根源だが、05年以降、両政府による国境問題特別代表者会合が開催されており、インド側はこの場での協議を優先させたい考えだ。インド側による中国側への“国境侵入”もあり、中国側を過度に追及できない弱みもある。
こうした中、チベット仏教最高指導者ダライ・ラマ14世は、アルナチャルプラデシュ州を11月に訪問する計画だ。これまで中国に配慮し訪問を阻止した経緯もあるとされるインド政府は、今回は容認する方針を明確にしている。

サブラマニアン・スワミー元法相は産経新聞に「最近の印中間の緊張はメディアがあおっている。両国間には相互不信があり関係は疎遠になっている。状況改善は可能だが、努力が必要だ」と語る。戦略専門家のP・Nケーラ氏は「両国間の戦争の可能性は低い。経済があらゆる方面に影響を及ぼしており、今以上の経済発展を遂げるには戦争をする余裕はないことを、両国とも痛いほどわかっている」と指摘する。 【9月22日 産経】
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両国の軍が衝突したかどうかはともかく、“越境”については、“インド側が実効支配しているアルナチャルプラデシュ州(中国名・蔵南地区)を中国領と主張しているため、中国軍がこの地域での活動を「越境ではない」と主張するのは当然だ。”【9月22日 産経】とも。
上記記事に “インド側による中国側への“国境侵入”もあり”とあるように、お互い様というところでしょうか。

【「誰かがどこかで冷静さを失い間違った方向に」】
マスメディアの過熱報道の背景に、“軍のタカ派がメディアを通じた世論操作を狙っているとの見方もある。”【9月21日 時事】とも報じられていますが、どうでしょうか?
西にパキスタン国境を抱えて、そんな危険なことをするものでしょうか?

インドメディアの報道に対し、中国国内でも反発が強まっているようです。
“中国国内の反インド感情が高まり、ネットでは「不当に占拠した中国の領土を取り戻せ」「チベット独立に手助けしているインドに報復を」といった書き込みが殺到した。中国政府の対応を「弱腰だ」と批判する声も少なくない”
【9月22日 産経】

少なくとも政府間においては、いくら競合する面があるかといって、軍事衝突をするような愚を犯すほど“お馬鹿”ではないでしょう。
ただ、世論を煽るメディアとか、無責任なネット世論というものは往々にして厄介なものではあります。
特に、民族主義的な論調を帯びると・・・。

間違っても「誰かがどこかで冷静さを失い間違った方向に向かうかもしれない」なんてことのないように、冷静さ保ってほしいものです。
それにしても、ダライ・ラマの件は、ひと悶着ありそうです。


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中東3者会談実施へ、しかし交渉進展は困難

2009-09-21 18:52:11 | 国際情勢

(東エルサレムのイスラエル入植地Har Homa “flickr”より By delayed gratification
http://www.flickr.com/photos/joshhough/315556027/)

【強まる国際的圧力】
パレスチナ問題などの中東情勢が膠着する状況で、一方の当事国であるイスラエルに対する風当たりは厳しくなっているように見えます。
最近、相次いでイスラエルを非難する国際人権理事会の調査団報告と国際原子力機関決議がなされました。

****イスラエルのガザ攻撃は「戦争犯罪」 国連人権理が報告*****
昨年末から約3週間続いたイスラエル軍のパレスチナ自治区ガザ攻撃について調べるため国連人権理事会がつくった調査団が15日、報告書を公表した。一般市民を意図的に攻撃したイスラエル軍の行動は国際人道法違反で、戦争犯罪に当たると批判する一方、軍事行動のきっかけとなったガザの武装勢力によるイスラエルへのロケット弾攻撃も、戦争犯罪などに該当すると認定した。
 報告書は、礼拝中のモスクを爆撃したり、パレスチナ人を「人間の盾」にしたりといったイスラエル軍の行為が戦争犯罪に当たると主張。非人道兵器とされる白リン弾を住宅密集地で使うなどの過剰な軍事行動の実態を指摘した。
さらにイスラエルに対し、公正な独自調査を要求するよう国連安全保障理事会に勧告。同国が十分な対応をしない場合には国際刑事裁判所(ICC)に付託するよう求めた。
報告書は4人の国際法専門家が3カ月をかけてまとめた。ガザを中心に犠牲者ら約200人の関係者から聞き取りをしたが、イスラエルは協力を拒み、同国当局者らへの事情聴取はできなかった。 【9月16日 朝日】
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報告書はイスラエル・パレスチナ双方を「戦争犯罪」を行ったと糾弾していますが、特に、イスラエル側の過度な軍事行動を厳しく非難する内容となっています。
イスラエル政府はただちに、報告書は「一方的な内容」だと非難する声明を出しています。
また、イスラエル外務省は、「わが国は国際法に完全に則った行動をとっている」とした上で、報告書が指摘する「軍の不正行為」を精査する方針を示しています。
なお、ガザ地区を実効支配しているイスラム原理主義組織ハマスも、報告書を「政治的で偏りがある」と非難しています。【9月16日 AFPより】

****IAEA:イスラエルのNPT加盟求める決議*****
国際原子力機関(IAEA)の年次総会は18日、事実上の核兵器保有国、イスラエルに対して懸念を表明、核拡散防止条約(NPT)への加盟を求める決議を採択した。IAEA総会でイスラエルに対し同種の決議が採択されたのは1991年以来。
採決では、アラブ諸国や中国、ロシアなどが賛成、日本や米国、欧州諸国が反対し、小差で採択された。イスラエルは中東でNPTに加盟していない唯一の国で、アラブ諸国やイランは長年、非難を続けている。
イスラエル当局者は採択後「決議について協力はしない」と言明。一方、イランのソルタニエIAEA担当大使は「パレスチナを抑圧する国に対する勝利だ」と述べた。【9月20日 毎日】
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【シャトル外交失敗】
そのイスラエル・ネタニヤフ政権は今月7日、イスラエル占領下のヨルダン川西岸の入植地で住宅455戸の新規建設を正式に承認。9日には、67年に占領後、自国領に併合した東エルサレムでも486戸の増設業者を選定しています。
米ロ、EUと国連が03年に提示した新中東和平案(ロードマップ)は、イスラエルに全入植活動の凍結を要求していますが、イスラエルは入植地人口の「自然増」を理由に拒否。中東和平交渉停滞の焦点の一つになっています。

今回の入植承認は、国際圧力によって「一時凍結」決断を迫られる前に、駆け込み的に入植継続の姿勢を示すことで、入植推進を訴える連立与党内の右派・強硬派を懐柔する狙いがあるとの見方が有力だとも報じられています。【9月12日 毎日より】

アメリカはミッチェル米中東特使をイスラエル・パレスチナ双方に派遣して「シャトル外交」を展開し、事態の打開を図りましたが、イスラエル・パレスチナ自治政府双方の姿勢は固く、交渉は失敗に終わっています。

****イスラエル:米特使仲介失敗 入植地問題で指導力不足露呈****
中東を歴訪していたミッチェル米中東特使は18日、イスラエル占領地の入植地問題についてネタニヤフ同国首相、アッバス・パレスチナ自治政府議長と相次いで会談したが、妥協点を見いだせなかった。特使は停滞する和平交渉の再開に道筋をつけようと、滞在を延長して折衝を続けたが、仲介は不調に終わった。
関係当事者の溝を改めて浮き彫りにしたほか、米国の指導力不足も露呈した形で、こう着状態の打開はますます困難になりそうだ。

ミッチェル特使は18日朝、エルサレムでネタニヤフ首相と今回の訪問で3度目の会談を開催。その後、ヨルダン川西岸ラマラでアッバス議長と会談し、再びネタニヤフ首相を訪ねた。
ロイター通信などによると、入植の「一時凍結」で妥結したいイスラエルは当初「6カ月」の時限凍結を主張したが、これを「9カ月」に延長すると打診。米国は「完全凍結」の要求を「1年間」に下げて、さらなる譲歩を迫った。
これに対し、パレスチナは「完全凍結」に固執。将来の独立国家の首都と位置づける東エルサレムを凍結対象から除外するイスラエルの方針にも反発して、妥協の余地を排除した。
パレスチナ解放機構(PLO)のエラカト交渉局長は「凍結に折衷案はない。ミッチェル特使の『シャトル外交』は合意に至らなかった」と述べた。(後略)【9月19日 毎日】
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【中東3者会談 実施されるものの・・・】
この「シャトル外交」失敗で、国連総会でのオバマ米大統領・イスラエルのネタニヤフ首相・パレスチナ自治政府のアッバス議長による3者会談の実現は危ぶまれていましたが、アメリカが嫌がるアッバス議長を説得する形で実現の運びとなりました。

****中東3者会談実施へ、和平交渉の再開目指す*****
ギブス米大統領報道官は19日、オバマ大統領、イスラエルのネタニヤフ首相、パレスチナ自治政府のアッバス議長が22日、ニューヨークで開催される国連総会の場で3者会談を行うとの声明を発表した。
オバマ政権下での3者会談は初。大統領がパレスチナ和平交渉の再開を念頭に双方に開催を強く働きかけ、土壇場で了承を取り付けたと見られる。
声明によると、大統領は22日、双方と個別会談を行った後、3者会談を主宰する。会談の狙いについて「(和平)交渉再開の土台を築くもの」と説明した。

和平交渉は、昨年12月にイスラエルがパレスチナ自治区ガザを攻撃して以来、中断しており、オバマ政権は、イスラエル、自治政府の代表が国連総会に出席するのに合わせ、3者会談を実現、交渉再開への布石とする構想を描いた。
ミッチェル中東担当特使がシャトル外交を展開、双方に会談を呼びかけ、イスラエルは前向きだったが、自治政府はイスラエルによるヨルダン川西岸への入植活動継続に反発し、18日時点で会談実現は困難と見られた。ミッチェル氏は今回の会談について「大統領の包括和平への深い関与を示すものだ」としており、状況急変の背景として、大統領側がアッバス氏に出席を強く促した可能性が高い。
また、オバマ政権は和平の道筋として、米国などが2003年に示した「ロードマップ」(行程表)を掲げ、その中で明記されたイスラエルの入植活動凍結を支持しており、会談実現のため、米国がパレスチナ側に対し、イスラエルに強い姿勢で臨む意向を伝えたとの見方もある。
だが、会談前後に入植活動凍結の見通しが得られなければ、アッバス氏にとって大きな痛手になるとの見方もある。パレスチナ側は元々、入植活動凍結を和平交渉再開の条件としており、その確約が得られない中で会談に臨んだ場合、アッバス氏が組織内で窮地に陥る恐れがあるというものだ。【9月20日 読売】
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3者会談は交渉再開に向けた「予備協議」との位置づけですが、パレスチナ側は交渉再開の前提条件として、東エルサレムを含めた西岸での入植活動の全面凍結を掲げています。一方、イスラエル側は東エルサレムでの建設規制に応じる構えはなく、西岸でも着工済みの2500戸については建設続行の方針を示しています。
両者の隔たりは大きく、実質的な交渉進展は難しい情勢です。

“ロイター通信によると、米当局者は「3人の指導者が同席し、溝を埋める作業を続ける」としているが、3者会談を行っても交渉再開につながる発表はないだろうとの見通しを示した。オバマ大統領が中東和平の実現に意欲的なのは、イランの核開発問題やアフガニスタン情勢で、アラブ諸国やイスラム社会の協力を得たいためだ。自らが乗り出した調整で成果を出せなければ、逆に失望感が広がる恐れもある。”【9月20日 毎日】

オバマ大統領、アッバス議長ともに指導力を問われる難しい状況での交渉ですが、アメリカがアラブ諸国やイスラム社会の協力を重視する方向を強めている中で、イスラエルは従来のようなアメリカの支援を期待しにくい情勢になっています。
これ以上の国際的孤立はイスラエルにとって得策ではないように思えるのですが。

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