(パレスチナ自治区ヨルダン川西岸のラマラで会談する、自治政府のマフムード・アッバス議長(右)とエマニュエル・マクロン仏大統領【5月30日 AFP】 マクロン大統領はパレスチナ国家承認を「タブー」ではないとしつつも、自治政府に「改革」を求めています。)
【バイデン停戦案 ハマス・イスラエルの間に深い溝】
パレスチナ・ガザ情勢については、現在のところバイデン大統領の提案が示され、イスラエル・ハマス双方で検討されている状況です。
****バイデン大統領が明らかにした新たな提案****
3段階で構成。第1段階は6週間の戦闘休止で、この期間はイスラエル軍はガザから撤退し、高齢者や女性を含む人質が数百人のパレスチナ囚人と交換される。
第2段階でハマスとイスラエルは敵対行為の恒久的停止の条件について交渉。バイデン大統領によると、交渉が続く限り戦闘休止は継続される。第3段階でガザ地区の大規模な復興計画などを策定する。
バイデン大統領によると、この提案はカタールを通してハマスに伝えられた。
これを受けイスラエル首相府は、政府が交渉担当者にガザ停戦合意を提示する権限を与えたとする声明を発表。同時に「人質全員の帰還とハマスの軍事、政治力の破壊を含む全ての目標が達成されるまで戦争は終結しない」とも表明した。
米当局者によると、この計画では、各段階は42日間続くことになる。【6月1日 ロイターより】
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関係国は、この提案を受け入れるようにイスラエル・ハマス双方に求めています。
“米・エジプト・カタール、ガザ新停戦案への合意をイスラエルとハマスに要請…欧州各国は支持”【6月2日 読売】
しかし、当事者のハマスは恒久的な戦闘終結とイスラエルの撤退を強く求めており、また、イスラエルはハマス壊滅を貫徹すべきとする閣内極右勢力が連立離脱も辞さない構えでネタニヤフ政権に圧力をかけています。
****ハマス指導者、全面停戦を要求 バイデン氏の休戦案に打撃か****
イスラム組織ハマスの最高指導者ハニヤ氏は5日、停戦計画の一環として、パレスチナ自治区ガザでの恒久的な戦闘終結とイスラエルの撤退を要求すると述べた。バイデン米大統領が先週発表した新たな休戦案に打撃になるとみられる。
一方、イスラエルは停戦交渉中の戦闘休止はないとし、ガザ中部で新たな攻撃に乗り出した。
バイデン氏は5月31日、イスラエルがガザを巡り人質解放と引き換えに戦闘休止を提案したと明らかにし、新たな提案に同意するようハマスに呼びかけていた。
ハニヤ氏は「全面的な攻撃終結、完全な撤退と拘束者交換に基づく合意に真剣かつ前向きに取り組む」と述べた。
この発言がバイデン氏に対するハマスの回答かどうかを問うロイターのメッセージに対し、ハマス幹部は親指を立てる絵文字で応じた。
米政府はなお合意に向けた取り組みを続けており、米中央情報局(CIA)のバーンズ長官は5日、仲介役のカタールとエジプトの高官とドーハで会談し、休戦案について協議した。【6月1日 ロイター】
一方、イスラエルは停戦交渉中の戦闘休止はないとし、ガザ中部で新たな攻撃に乗り出した。
バイデン氏は5月31日、イスラエルがガザを巡り人質解放と引き換えに戦闘休止を提案したと明らかにし、新たな提案に同意するようハマスに呼びかけていた。
ハニヤ氏は「全面的な攻撃終結、完全な撤退と拘束者交換に基づく合意に真剣かつ前向きに取り組む」と述べた。
この発言がバイデン氏に対するハマスの回答かどうかを問うロイターのメッセージに対し、ハマス幹部は親指を立てる絵文字で応じた。
米政府はなお合意に向けた取り組みを続けており、米中央情報局(CIA)のバーンズ長官は5日、仲介役のカタールとエジプトの高官とドーハで会談し、休戦案について協議した。【6月1日 ロイター】
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****イスラエル首相を揺さぶる極右政党 連立離脱を警告 ハマスとの停戦合意見通せず****
イスラム原理主義組織ハマスとの戦闘が続くイスラエルで、ネタニヤフ連立政権に参加する極右政党が新たな停戦案に反対し、ハマスとの合意の障害になっている。
極右政党は停戦案を実行すれば連立を離脱し、政権を倒すと警告している。政権維持を目指すネタニヤフ首相は極右の意向に配慮せざるを得ず、停戦の実現は見通せない。
連立に加わる主な極右は「宗教シオニズム」と「ユダヤの力」の2政党。連立与党は定数120の国会で64議席を持つが、極右勢力はそのうち14議席を占めている。離脱すれば、政権は過半数割れとなり、崩壊する見通しだ。
極右勢力を牽引するのは、宗教シオニズムのスモトリッチ財務相とユダヤの力のベングビール国家治安相だ。バイデン米大統領が5月末、イスラエルの提案だとして恒久的停戦を含む新たな停戦案を発表したのを受け、スモトリッチ氏はハマス壊滅と人質全員の救出まで戦闘を続けなければ、連立を離脱すると強調した。ベングビール氏も新提案を「ごまかし」だと批判した。
極右の間ではガザを巡ってハマスの影響力を根絶した上で再占領などを求め、占領地のヨルダン川西岸については併合を主張する意見が多く聞かれる。スモトリッチ氏は過去に「パレスチナ人など存在しない」と主張して物議をかもした。ベングビール氏も反アラブを扇動して有罪判決を受けた経歴があり、過激な言動で知られる。
5日はイスラエルが第3次中東戦争(1967年)でユダヤ教の聖地がある東エルサレムを占領したことを記念する「エルサレムの日」で、ベングビール氏は多くの右派ユダヤ人とエルサレムの旧市街を行進。「すべての勝利は私たちのものだ」と述べ、ハマスとの戦闘継続を訴えた。
ネタニヤフ氏はバイデン氏の新提案発表後、内容が「不正確だ」として米側との立場の違いを示した。連立からの離脱も辞さない極右勢力に配慮を示す狙いだったとの見方も出た。
昨年10月、ハマスの奇襲を許したとして国民の批判を浴びるネタニヤフ氏は、選挙が行われれば首相の座から転落する可能性がある。政権を維持するため極右政党の離反は是が非でも避けたいと考えても不思議はなく、停戦を巡る膠着状態はさらに続く可能性がある。【6月7日 産経】
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なお、ネタニヤフ首相の消極的対応を見越してか、バイデン米大統領はネタニヤフ首相の同意を求めることなく停戦案を公表していたとのこと。
****バイデン氏、ネタニヤフ氏の同意求めずにガザ休戦案公表=関係筋****
バイデン米大統領が、米国とイスラエルが作成しイスラム組織ハマスに提示したパレスチナ自治区ガザを巡る休戦案について、イスラエルのネタニヤフ首相の同意を求めることなく公表していたことが分かった。事情に詳しい米関係者3人が明かした。
関係者によると、一方的に発表するという決定は、米国が友好国に対して講じる措置としては異例だが意図的なものであり、イスラエルやハマスが合意を避ける余地を狭めるという。
米政府高官は匿名で「われわれは休戦案を発表する許可を求めなかった」と指摘。「イスラエルに対し、ガザの状況について演説すると伝えたが、それがどのようなものなのか詳しくは話さなかった」とした。
テキサス大学オースティン校のジェレミー・スリ教授は、バイデン氏が休戦案について「イスラエルが提案した」と位置付けて発表したのは、停戦への期待を高め、ネタニヤフ首相に圧力をかける意図があったと分析。「バイデン氏はネタニヤフ氏に提案を受け入れさせようとしている」と語った。
一方、イスラエル当局者は、バイデン氏の発表はネタニヤフ氏に圧力をかけるための試みだったのかとの質問に対し、イスラエルによるハマス壊滅は誰も阻止できないと強調。「圧力をかけることでイスラエルが国益に反する行動を取るという考えは馬鹿げている。圧力をかけるのはハマスであるべきだ」とした。【6月6日 ロイター】
関係者によると、一方的に発表するという決定は、米国が友好国に対して講じる措置としては異例だが意図的なものであり、イスラエルやハマスが合意を避ける余地を狭めるという。
米政府高官は匿名で「われわれは休戦案を発表する許可を求めなかった」と指摘。「イスラエルに対し、ガザの状況について演説すると伝えたが、それがどのようなものなのか詳しくは話さなかった」とした。
テキサス大学オースティン校のジェレミー・スリ教授は、バイデン氏が休戦案について「イスラエルが提案した」と位置付けて発表したのは、停戦への期待を高め、ネタニヤフ首相に圧力をかける意図があったと分析。「バイデン氏はネタニヤフ氏に提案を受け入れさせようとしている」と語った。
一方、イスラエル当局者は、バイデン氏の発表はネタニヤフ氏に圧力をかけるための試みだったのかとの質問に対し、イスラエルによるハマス壊滅は誰も阻止できないと強調。「圧力をかけることでイスラエルが国益に反する行動を取るという考えは馬鹿げている。圧力をかけるのはハマスであるべきだ」とした。【6月6日 ロイター】
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【紛争後のガザ・パレスチナ統治をどうするのか? 加速するパレスチナ国家承認の流れ】
合意が難しい理由は、上記のような恒久的な戦闘終結とイスラエルの撤退を求めるハマスとハマス壊滅・人質救出を求めるイスラエル側の溝が深いことに加えて、停戦後のガザ地区の統治をどうするのか・・・という点で、パレスチナ自治政府を当事者とする「2国家共存」をベースとするアメリカなど多くの国と、これを否定するネタニヤフ政権の間の不一致が大きいこともあります。
パレスチナについては、イスラエルの意に反して、国際社会は「国家承認」する流れが加速しています。
アイルランド、スペイン、ノルウェーに続いてスロベニアも。
****スロベニアもパレスチナを国家承認****
スロベニアは4日、パレスチナを正式に国家承認した。政府が先週、承認方針を決定した後、この日議会が賛成多数で承認案を可決した。
ゴロブ首相はX(旧ツイッター)で「パレスチナを主権と独立性を備えた国家だと本日認め、ガザとヨルダン川西岸のパレスチナ人たちに希望を送り届ける」と述べた。
5月にはアイルランド、スペイン、ノルウェーが相次いでパレスチナを国家承認。欧州連合(EU)加盟国では既にスウェーデン、キプロス、ハンガリー、チェコ、ポーランド、スロバキア、ルーマニア、ブルガリアの各国が承認しており、マルタも近くこれらに続く見通しだ。【6月5日 ロイター】
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現在、少なくとも140カ国がパレスチナを国家承認していますが、アメリカをはじめG7は承認していません。パレスチナはスペインなど欧州各国の決定を悲願の独立国家樹立や国連正式加盟への追い風にしたい考えです。
一方、イスラエルは、上記のような流れに加えて、“バイデン米政権はイスラエルがガザ最南部ラファで行うとする地上作戦に反対し、兵器供与の停止をちらつかせている。5月には国際刑事裁判所(ICC)の検察官がネタニヤフ氏らの逮捕状を請求したほか、国際司法裁判所(ICJ)は1月に始めた審理でジェノサイド(集団殺害)を防ぐ「あらゆる措置」を取るようイスラエルに求めた。”【5月23日 産経】と、国際的孤立を深めています。
アメリカは、パレスチナ国家は一方的国家承認ではなく、当事者間の直接交渉で実現されるべきという立場です。
****パレスチナ国家は交渉で実現すべきと米****
米国家安全保障会議(NSC)は22日、「バイデン大統領は、パレスチナ国家は一方的な承認ではなく当事者間の直接交渉で実現されるべきだと信じている」との報道官コメントを発表した。【5月22日 共同】
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【自治政府にパレスチナ国家が担えるのか? 疑念も。 自治政府とUAE、罵り合い】
フランスはパレスチナを国家承認するのは「タブー」ではないが、今は適切な時期ではないとの見解です。
****フランスのパレスチナ国家承認、今は適切な時期ではない 外相****
フランスのステファヌ・セジュルネ外相は22日、同国がパレスチナを国家承認するのは「タブー」ではないが、今は適切な時期ではないとの見解を示した。
セジュルネ氏はAFPに対する書簡で、「わが国の立場は明確だ。フランスにとってパレスチナの国家承認はタブーではない」としつつ、「この決定は有益でなければならない。つまり、政治的なレベルで決定的な前進につながるものでなければならない」と述べた。
「フランスはこれまでのところ、そうした条件が整っているとは考えていない」と続けた。(後略)【5月23日 AFP】
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フランスが国家承認を躊躇するのは、パレスチナ国家建設の主体となることも想定されるパレスチナ自治政府が本当にパレスチナ国家を担うことができるのか? という疑念が拭いきれないからでしょう。
自治政府はガザ地区を実効支配できておらず、ハマスとの対立が長年続いているだけでなく、アッバス議長は長く選挙も行っておらず、統治の正統性にも疑問もあります。
選挙ができないのはファタハ・アッバス議長の不人気が背景にありますが、その不人気の原因は自治政府に蔓延する腐敗・汚職であり、無策・無能さであると言われています。
自治政府首相はガザ紛争終結後にハマスとの統一の用意があるとはしていますが・・・これまでも何度も「統一」は話題に上りましたが実現していません。
ハマスの戦力が壊滅的に低下しているというこれまでにない変化はありますが、一方で、ガザ地区よりむしろヨルダン川西岸地区で、イスラエルとの戦闘を行ったハマスの人気が自治政府を担うファタハを凌いで非常に高まっているという現実もあります。
****パレスチナ自治政府、指導部「統一」の用意ある ガザ紛争後見据え****
パレスチナ自治政府のムハンマド・ムスタファ首相は7日、ガザ地区を実効支配するイスラム組織ハマスとイスラエルによるガザ紛争の終結後に、パレスチナ自治区の指導部「統一」を再確立する用意があると述べた。
パレスチナ自治区の指導部は2007年以来分裂しており、マハムード・アッバス議長率いる自治政府の権限はヨルダン川西岸に限定され、ガザ地区はハマスが実効支配している。
イラクの首都バグダッドで同国のフアド・フセイン外相と共同会見を開いたムスタファ氏は「われわれはパレスチナ人として(ガザ紛争が終結した)翌日から、パレスチナ人と指導部の団結を回復させる責任を担う用意がある」と述べた。
さらに同氏は「また(パレスチナ)国家の創設とそれに伴う責任に対しても、十分準備する必要がある」と言い添えた。
スペイン、アイルランド、ノルウェー、スロベニアはこのほど、パレスチナを国家として正式承認したばかりだ。
だが、パレスチナ自治政府のガザ地区での影響力が限定的なことや、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相がパレスチナ国家樹立による2国家解決を拒否していることなどから、ガザ紛争終結後の自治政府の役割は不透明だ。
イスラエル政府内でも、紛争終結後のガザをめぐる計画について意見が割れている。
米国は3月、パレスチナ自治政府の「再生」でヨルダン川西岸とガザ両方の安定に貢献できるとの見解を示した。しかし、ネタニヤフ氏はこれを否定し、パレスチナ自治政府は「テロリズムへ資金供与している」と非難した。 【6月7日 AFP】
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そのパレスチナ自治政府と、本来ならパレスチナを支える立場のアラブ首長国連邦(UAE)が、関係国の前で罵り合いの大げんかをしたとか。
****「アリババと40人の盗賊」UAEがパレスチナを罵倒 激しい口論に****
米ニュースサイト「アクシオス」は6日、4月に開かれた米国とアラブ諸国、パレスチナ自治政府の外相らによる会議の席上、自治政府の改革を巡り、アラブ首長国連邦(UAE)のアブドラ外相と自治政府高官のシェイク氏が激しい口論になったと報じた。
アブドラ氏はイスラム世界に伝わる物語を引き合いに出し、自治政府の指導部を「アリババと40人の盗賊たちだ」と罵倒したという。
自治政府ではガザ地区の戦後を見据え、アッバス議長が3月末、側近のムスタファ新首相のもとで新たな内閣を発足させた。一方、UAEは以前から自治政府には汚職体質があるとして不満を抱いてきた。
報道によると、口論があったのは4月29日にサウジアラビアの首都リヤドで開かれた会議。アブドラ氏は会議終盤、自治政府は目立った改革を実行していないと指摘し、「アリババ」などと罵倒。自治政府の高官は「役立たず」だとして、「人間を入れ替えても結果は同じだ」「なぜUAEが支援しないといけないのか」などと語った。
これに対し、シェイク氏は「自治政府の改革に誰も口出しするな」などと怒鳴り返し、激しい口論になった。憤慨したアブドラ氏は席を立ったという。
会議にはブリンケン米国務長官やサウジ、エジプト、カタールなどの外相も出席していた。【6月7日 毎日】
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自治政府の指導部がどういう理由で「アリババと40人の盗賊たち」になぞらえられるのか・・・よくはわかりませんが、アラブ諸国にも自治政府に対する不満が鬱積しているようです。
ただ、自治政府に代わるべき当事者もいませんので、自治政府の「再生」を期待するしかありませんが・・・