(事故で損傷したイラン中部ナタンツのウラン濃縮施設にある倉庫とされる建物。イラン原子力庁提供(2020年7月2日公開)【7月3日 AFP】)
【ロシアで事故?】
数日前に報じられた気になるニュース。
****北欧3カ国で平常上回る放射線量を検出、ロシアは原発事故の可能性否定****
北欧のノルウェー、スウェーデン、フィンランド上空で6月前半にかけ、通常を上回る濃度の放射性物質が検出された。これについてロシアは、同国の原子力発電所で放射能漏れは起きていないと強調している。
オランダ国立公衆衛生環境研究所は28日、ノルウェーなど3カ国の上空で、「非常に低い」レベルの人工放射線が観測されたと発表した。環境や人の健康に影響を及ぼす恐れはないとしている。
同研究所は「原子力発電所の燃料関係の異常と考えれば、この放射性物質の組み合わせは説明がつくかもしれない」と述べ、「計算の結果、この放射性物質はロシア西部の方角から来ていることが分かった」と指摘した。ただし、データが不足していることから発生国や発生源は現時点で特定できないとしている。
これに対してロシアは、同国西部にあるレニングラード原発とコラ原発はいずれも事故などの記録はなく、平常通りに稼働していると説明した。
ペスコフ大統領報道官も29日、原発事故の可能性を否定し、「オランダの専門家の報告については、どこが発生源なのか我々には分からない」とコメントしている。
フィンランドの放射線・原子力安全当局は29日、「検出された放射性物質の発生源がフィンランド国内だったとは考えられない」と発表した。
スウェーデン放射線安全当局によれば、「非常に低レベル」のセシウム134、137、ルテニウム103、コバルト60が、6月8〜15日にかけてビスビーで、22〜23日にかけてはストックホルムで見つかった。
ノルウェー放射線・原子力安全当局は、約2週間前の測定で、非常に低いレベルの放射性物質を観測したと伝え、今週中に再度の測定を行うとしている。【6月30日 CNN】
*********************
ロシアは事故を否定・・・・チェルノブイリでも顕著だったように、旧ソ連時代も、ロシアになってからも、隠蔽体質は変わりませんので、信用できないところも。
その後の続報も目にしませんので、この件はこのままうやむやになるのでしょう。
【イラン 「報復する」とは言っても・・・】
決してうやむやにはしなぞ・・・・と息巻いているのがイラン。
****イラン、核施設へのサイバー攻撃に報復表明 濃縮施設の火災受け****
イランは、2日に中部ナタンズのウラン濃縮施設で発生した事故の原因がサイバー攻撃によるものだったとの疑いを強める中、自国の核関連施設に対するいかなるサイバー攻撃にも報復する姿勢を示した。
ナタンズのウラン濃縮施設は国際原子力機関(IAEA)の査察の対象となっている施設の1つで、大部分の施設は地下にある。
イラン原子力庁は2日に同施設で事故が発生したと発表。その後に公表した写真では、地上1階建ての建物の屋根と壁の一部が焼けているほか、ドアが一部吹き飛ばされている様子が確認された。火災と爆発が起きた可能性が指摘されている。
イランの保安当局は3日、事故の原因は特定されたとしながらも、「安全上の理由」から適切な時期になるまで公表しないとした。
匿名を条件にロイターの取材に応じたイラン当局者3人は、火災発生の原因はサイバー攻撃だったとの見方を表明。このうち2人はイスラエルが攻撃の背後にいる可能性があると述べた。ただ証拠は示さなかった。
IAEAは3日、火災が起きた場所には核物質は貯蔵されていなかったと明らかにした。【7月4日 ロイター】
*********************
ただ、「火災が起きた建物の一部はサイバー空間に接続していなかった」(イラン関係筋)【7月4日 共同】とも。
また、事故の「数時間前」に、「イラン治安機関内に存在する反体制派」を名乗るグループから犯行を予告する声明があったとも。
****イラン核施設で「事故」 汚染なしと発表も「敵国」に警告 攻撃示唆する報道も****
イラン政府は2日、中部ナタンツの核施設で「事故」が起きたものの人的被害や放射能汚染はなかったと発表し、イスラエルなど「敵国」の敵対行為に対して警告した。
原子力庁のベフルーズ・カマルバンディ報道官は国営テレビで、事故が起きたのはナタンツの核施設内の倉庫だが「(破損した倉庫内に)核物質はなく、汚染の恐れもない」と発表。事故当時、その場には職員もいなかったと説明した。事故原因は現在調査中としている。
ナタンツはイランの主要核施設で、ウラン濃縮施設がある。カマルバンディ氏によると、「濃縮施設の操業は中断していない」「操業ペースも変わっていない」という。
この発表の数時間後、国営イラン通信は「もし敵国が、特にシオニスト政権(イスラエル)や米国が、越えてはならないイランの一線をいかなる形であれ越えるならば、新たな状況に立ち向かうイランの戦略は根本的に再考されなければならない」と警告する論説を発表した。
イラン原子力庁が公開した事故現場とされる写真には、屋根が破損した平屋の建物が写っている。建物の壁は黒く焼け焦げ、扉は内側から吹き飛ばされたように、ちょうつがいが外れて外側に傾いている。
■原因は不明
IRNAの報道によると、イスラエルの匿名のソーシャルメディア・アカウントが、イスラエル政府による「破壊行為の試み」だと主張している。
また、イラン政府が敵対メディアと認識している英BBCペルシャ語放送は、事故の「数時間前」に、「ホームランド・チーターズ」を称するグループから犯行を予告する声明が届いていたと伝えた。
声明は、「イラン治安機関内に存在する反体制派」を名乗り、攻撃があったことを否定できないよう「地下以外」の標的を狙うと述べていたという。
イラン原子力庁は現時点までに、事故原因に関する説明を一切行っていない。 【7月3日 AFP】AFPBB News
******************
もちろん、「ホームランド・チーターズ」を称するグループが実在するのか、誰かがそういうものをでっち上げているのかはわかりません。
イランは2009~10年、イスラエル・アメリカの開発した特定の標的を狙う巧妙なワーム「スタクスネット」によって、核開発が妨害された経験がありますので、今回もまたイスラエルの仕業・・・という話にもなります。
なお、「スタクスネット」は外部ネットワークから遮断された施設にUSBメモリーを介して感染・発症、その後はイラン国外にも拡散したとか。
“2010年にStuxnetは、おそらく誰かのノートパソコン経由で、ナタンズ核施設から流出してしまった。外部のネットワークに接触したこのウイルスは、一般の世界に拡散するという、設計されてない動作を行ったのだ。
Stuxnetは米国を含む他国のマシンに拡散し、これらのマシンにも未知の障害を引き起こす可能性もあったが、作戦は継続された(結果的には、イラン以外では10万台以上のマシンに感染したが、それらのマシンには障害は発生しなかった)。”【2012年6月4日 WIRED】
“自国の核関連施設に対するいかなるサイバー攻撃にも報復する姿勢を示した”とは言っても、相手がわからなくては報復のしようもないかも。
【日本 汚染水処理はどうする?】
原子力施設はミスによる事故も不可避ですし、テロ攻撃の対象ともなります。厄介です。
私の地元の原発も、テロ対策で設置が義務付けられた「特定重大事故等対処施設」(特重施設)の完成が期限までに間に合わないとのことで、1号機が3月に、2号機が5月に作動を停止しています。
福島第一のように災害でトラブルことも。
福島第一の処理は、「一体どうするのか?」という状況ですが、そうしたなかで差し迫ったのが原子炉の冷却に使われた汚染水の処理。
“1000近くのタンクにおよそ117万トンが保管されていて、毎日170トン前後のペースで増えています。”【2019年12月23日 NHK】という“とりあえず”の対応も限界が近づいており、2022年には敷地内の保管場所が限界を迎えると言われています。
政府は、海洋放出したい意向のようですが、地元漁民は強く反対、
****福島第一原発“処理水”海洋放出 地元が猛反発しても国は放出ありき****
「新型コロナウイルス感染拡大で旅館やホテルでの高級魚の需要が減り、ヒラメやスズキは半値以下。今も漁に出られない船が多い。そのうえ、処理水まで海に放出されたら、風評被害で漁業従事者の生活は成り立たなくなる。海洋放出には断固反対です」
宮城県漁業協同組合の奥田一也指導部長は訴える。同漁協は6月15日、東京電力福島第一原発の処理水海洋放出を行わないよう国に求める要望書を、村井嘉浩・宮城県知事へ手渡した。
同原発で発生した汚染水を浄化した処理水は増え続け、現在の貯蔵量は約120万トン。2022年には敷地内の保管場所が限界を迎えると言われる。
経済産業省の小委員会が今年1月、海洋放出か水蒸気放出が最も現実的と示唆する提言をとりまとめ、各方面から反発が高まった。トリチウムは依然として含まれているからだ。
国際環境NGO・FoE Japanの調べでは、岩手、宮城、福島、茨城、千葉、東京の38漁協が放出に反対している。同原発から最も近い漁港がある福島県浪江町でも、議会が全会一致で反対を決議した。
「安易な放出などせず、陸上での保管を続け、その間にトリチウム除去技術の開発を進めるべきです」(発議者の高野武町議)
国連特別報告者も6月9日、「有意義な協議がないまま海洋放出を急ぐ日本政府の姿勢には大変憂慮している」とする声明を出し、放出は「漁業関係者だけでなく、海外の人たちにも深刻な影響を与える」とした。
こうした事態を受け、経産省は一般からの意見募集(パブリックコメント)期間を2度延長し、7月15日までとした。だが、方向性が変わる兆しは見えない。
「今までに集まった2200件以上の意見には海洋放出に反対する内容も多い。ですが、反対が多ければ選択肢を見直すのかと言われると何とも言えません」(同省廃炉・汚染水対策チーム)
脱原発社会の実現を目指す市民団体の原子力市民委員会で委員を務める伴英幸氏は、国は放出ありきの議論をしていると批判する。
「大型タンクでの長期保管やモルタルで固めて半地下で処分するなどいろいろな案が出ているのに、場所がないなどと言って真剣に考えようとしない。このままでは1200兆ベクレルにも上る膨大な放射性物質が環境中に捨てられることになってしまいます」
国は今夏にも処理方法を決めると見られている。【6月26日 AERAdot.】
*******************
“陸上での保管を続け、その間に・・・”とは言っても、保管を続ける限り事故・トラブルの危険性がつきまといます。
海洋放出時のトリチウムについては、科学的危険性というより、漁民の風評被害が問題視されているようです。
とりあえずの汚染水問題の先には、多くの困難な問題がありますが、「一体どうするのか?」
【中国では廃棄物】
処分に困っているのはどこも同じ。中国でも。
しかも、こちらは汚染水ではなく放射性廃棄物。はるかに危険です。
****中国、多くの原発で廃棄物放置 処分体制整わず5年の期限超過****
中国で低レベル放射性廃棄物の処分場が国の計画通りに建設できず、多くの原発で規定を超える長期間にわたり廃棄物が貯蔵されたままになっていることが11日までに分かった。
原発増設を進めているものの、廃棄物処分の体制整備が追い付いていない。
中国は1991年に初の原発が浙江省で運転開始し、今年4月末時点では全国で47基が稼働中。
政府は放射性廃棄物を発電所で5年を超えて貯蔵してはならないと定め、各地に中・低レベル放射性廃棄物の処分場を建設する計画だった。
だが専用の処分場が一カ所も建設されず、多くの原発で5年以上、廃棄物を保管したままになっている。【6月11日 共同】
*******************
まあ、こちらは“いよいよ”となれば強権的に処分場建設も可能では・・・とも思いますが、中国といえども、それほど簡単な話でもないのかな?
原子力という技術、目の敵にするつもりもありませんが、いろんなレベルで厄介な未完の技術です。