孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

原子力関連施設に関する最近の話題から ロシアで事故? イランでは爆発火災 日本・中国では・・・

2020-07-04 23:38:51 | 原発

(事故で損傷したイラン中部ナタンツのウラン濃縮施設にある倉庫とされる建物。イラン原子力庁提供(2020年7月2日公開)【7月3日 AFP】)

【ロシアで事故?】
数日前に報じられた気になるニュース。

****北欧3カ国で平常上回る放射線量を検出、ロシアは原発事故の可能性否定****
北欧のノルウェー、スウェーデン、フィンランド上空で6月前半にかけ、通常を上回る濃度の放射性物質が検出された。これについてロシアは、同国の原子力発電所で放射能漏れは起きていないと強調している。

オランダ国立公衆衛生環境研究所は28日、ノルウェーなど3カ国の上空で、「非常に低い」レベルの人工放射線が観測されたと発表した。環境や人の健康に影響を及ぼす恐れはないとしている。

同研究所は「原子力発電所の燃料関係の異常と考えれば、この放射性物質の組み合わせは説明がつくかもしれない」と述べ、「計算の結果、この放射性物質はロシア西部の方角から来ていることが分かった」と指摘した。ただし、データが不足していることから発生国や発生源は現時点で特定できないとしている。

これに対してロシアは、同国西部にあるレニングラード原発とコラ原発はいずれも事故などの記録はなく、平常通りに稼働していると説明した。

ペスコフ大統領報道官も29日、原発事故の可能性を否定し、「オランダの専門家の報告については、どこが発生源なのか我々には分からない」とコメントしている。

フィンランドの放射線・原子力安全当局は29日、「検出された放射性物質の発生源がフィンランド国内だったとは考えられない」と発表した。

スウェーデン放射線安全当局によれば、「非常に低レベル」のセシウム134、137、ルテニウム103、コバルト60が、6月8〜15日にかけてビスビーで、22〜23日にかけてはストックホルムで見つかった。

ノルウェー放射線・原子力安全当局は、約2週間前の測定で、非常に低いレベルの放射性物質を観測したと伝え、今週中に再度の測定を行うとしている。【6月30日 CNN】 
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ロシアは事故を否定・・・・チェルノブイリでも顕著だったように、旧ソ連時代も、ロシアになってからも、隠蔽体質は変わりませんので、信用できないところも。

その後の続報も目にしませんので、この件はこのままうやむやになるのでしょう。

【イラン 「報復する」とは言っても・・・】
決してうやむやにはしなぞ・・・・と息巻いているのがイラン。

****イラン、核施設へのサイバー攻撃に報復表明 濃縮施設の火災受け****
イランは、2日に中部ナタンズのウラン濃縮施設で発生した事故の原因がサイバー攻撃によるものだったとの疑いを強める中、自国の核関連施設に対するいかなるサイバー攻撃にも報復する姿勢を示した。
 
ナタンズのウラン濃縮施設は国際原子力機関(IAEA)の査察の対象となっている施設の1つで、大部分の施設は地下にある。

イラン原子力庁は2日に同施設で事故が発生したと発表。その後に公表した写真では、地上1階建ての建物の屋根と壁の一部が焼けているほか、ドアが一部吹き飛ばされている様子が確認された。火災と爆発が起きた可能性が指摘されている。
 
イランの保安当局は3日、事故の原因は特定されたとしながらも、「安全上の理由」から適切な時期になるまで公表しないとした。 
 
匿名を条件にロイターの取材に応じたイラン当局者3人は、火災発生の原因はサイバー攻撃だったとの見方を表明。このうち2人はイスラエルが攻撃の背後にいる可能性があると述べた。ただ証拠は示さなかった。 
 
IAEAは3日、火災が起きた場所には核物質は貯蔵されていなかったと明らかにした。【7月4日 ロイター】
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ただ、「火災が起きた建物の一部はサイバー空間に接続していなかった」(イラン関係筋)【7月4日 共同】とも。

また、事故の「数時間前」に、「イラン治安機関内に存在する反体制派」を名乗るグループから犯行を予告する声明があったとも。
 
****イラン核施設で「事故」 汚染なしと発表も「敵国」に警告 攻撃示唆する報道も****
イラン政府は2日、中部ナタンツの核施設で「事故」が起きたものの人的被害や放射能汚染はなかったと発表し、イスラエルなど「敵国」の敵対行為に対して警告した。
 
原子力庁のベフルーズ・カマルバンディ報道官は国営テレビで、事故が起きたのはナタンツの核施設内の倉庫だが「(破損した倉庫内に)核物質はなく、汚染の恐れもない」と発表。事故当時、その場には職員もいなかったと説明した。事故原因は現在調査中としている。
 
ナタンツはイランの主要核施設で、ウラン濃縮施設がある。カマルバンディ氏によると、「濃縮施設の操業は中断していない」「操業ペースも変わっていない」という。
 
この発表の数時間後、国営イラン通信は「もし敵国が、特にシオニスト政権(イスラエル)や米国が、越えてはならないイランの一線をいかなる形であれ越えるならば、新たな状況に立ち向かうイランの戦略は根本的に再考されなければならない」と警告する論説を発表した。
 
イラン原子力庁が公開した事故現場とされる写真には、屋根が破損した平屋の建物が写っている。建物の壁は黒く焼け焦げ、扉は内側から吹き飛ばされたように、ちょうつがいが外れて外側に傾いている。

■原因は不明
IRNAの報道によると、イスラエルの匿名のソーシャルメディア・アカウントが、イスラエル政府による「破壊行為の試み」だと主張している。
 
また、イラン政府が敵対メディアと認識している英BBCペルシャ語放送は、事故の「数時間前」に、「ホームランド・チーターズ」を称するグループから犯行を予告する声明が届いていたと伝えた。

声明は、「イラン治安機関内に存在する反体制派」を名乗り、攻撃があったことを否定できないよう「地下以外」の標的を狙うと述べていたという。
 
イラン原子力庁は現時点までに、事故原因に関する説明を一切行っていない。 【7月3日 AFP】AFPBB News
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もちろん、「ホームランド・チーターズ」を称するグループが実在するのか、誰かがそういうものをでっち上げているのかはわかりません。

イランは2009~10年、イスラエル・アメリカの開発した特定の標的を狙う巧妙なワーム「スタクスネット」によって、核開発が妨害された経験がありますので、今回もまたイスラエルの仕業・・・という話にもなります。

なお、「スタクスネット」は外部ネットワークから遮断された施設にUSBメモリーを介して感染・発症、その後はイラン国外にも拡散したとか。

“2010年にStuxnetは、おそらく誰かのノートパソコン経由で、ナタンズ核施設から流出してしまった。外部のネットワークに接触したこのウイルスは、一般の世界に拡散するという、設計されてない動作を行ったのだ。

Stuxnetは米国を含む他国のマシンに拡散し、これらのマシンにも未知の障害を引き起こす可能性もあったが、作戦は継続された(結果的には、イラン以外では10万台以上のマシンに感染したが、それらのマシンには障害は発生しなかった)。”【2012年6月4日 WIRED】

“自国の核関連施設に対するいかなるサイバー攻撃にも報復する姿勢を示した”とは言っても、相手がわからなくては報復のしようもないかも。

【日本 汚染水処理はどうする?】
原子力施設はミスによる事故も不可避ですし、テロ攻撃の対象ともなります。厄介です。
私の地元の原発も、テロ対策で設置が義務付けられた「特定重大事故等対処施設」(特重施設)の完成が期限までに間に合わないとのことで、1号機が3月に、2号機が5月に作動を停止しています。

福島第一のように災害でトラブルことも。
福島第一の処理は、「一体どうするのか?」という状況ですが、そうしたなかで差し迫ったのが原子炉の冷却に使われた汚染水の処理。

“1000近くのタンクにおよそ117万トンが保管されていて、毎日170トン前後のペースで増えています。”【2019年12月23日 NHK】という“とりあえず”の対応も限界が近づいており、2022年には敷地内の保管場所が限界を迎えると言われています。

政府は、海洋放出したい意向のようですが、地元漁民は強く反対、

****福島第一原発“処理水”海洋放出 地元が猛反発しても国は放出ありき****
「新型コロナウイルス感染拡大で旅館やホテルでの高級魚の需要が減り、ヒラメやスズキは半値以下。今も漁に出られない船が多い。そのうえ、処理水まで海に放出されたら、風評被害で漁業従事者の生活は成り立たなくなる。海洋放出には断固反対です」

宮城県漁業協同組合の奥田一也指導部長は訴える。同漁協は6月15日、東京電力福島第一原発の処理水海洋放出を行わないよう国に求める要望書を、村井嘉浩・宮城県知事へ手渡した。

同原発で発生した汚染水を浄化した処理水は増え続け、現在の貯蔵量は約120万トン。2022年には敷地内の保管場所が限界を迎えると言われる。

経済産業省の小委員会が今年1月、海洋放出か水蒸気放出が最も現実的と示唆する提言をとりまとめ、各方面から反発が高まった。トリチウムは依然として含まれているからだ。

国際環境NGO・FoE Japanの調べでは、岩手、宮城、福島、茨城、千葉、東京の38漁協が放出に反対している。同原発から最も近い漁港がある福島県浪江町でも、議会が全会一致で反対を決議した。

「安易な放出などせず、陸上での保管を続け、その間にトリチウム除去技術の開発を進めるべきです」(発議者の高野武町議)

国連特別報告者も6月9日、「有意義な協議がないまま海洋放出を急ぐ日本政府の姿勢には大変憂慮している」とする声明を出し、放出は「漁業関係者だけでなく、海外の人たちにも深刻な影響を与える」とした。

こうした事態を受け、経産省は一般からの意見募集(パブリックコメント)期間を2度延長し、7月15日までとした。だが、方向性が変わる兆しは見えない。

「今までに集まった2200件以上の意見には海洋放出に反対する内容も多い。ですが、反対が多ければ選択肢を見直すのかと言われると何とも言えません」(同省廃炉・汚染水対策チーム)

脱原発社会の実現を目指す市民団体の原子力市民委員会で委員を務める伴英幸氏は、国は放出ありきの議論をしていると批判する。

「大型タンクでの長期保管やモルタルで固めて半地下で処分するなどいろいろな案が出ているのに、場所がないなどと言って真剣に考えようとしない。このままでは1200兆ベクレルにも上る膨大な放射性物質が環境中に捨てられることになってしまいます」

国は今夏にも処理方法を決めると見られている。【6月26日 AERAdot.】
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“陸上での保管を続け、その間に・・・”とは言っても、保管を続ける限り事故・トラブルの危険性がつきまといます。
海洋放出時のトリチウムについては、科学的危険性というより、漁民の風評被害が問題視されているようです。

とりあえずの汚染水問題の先には、多くの困難な問題がありますが、「一体どうするのか?」

【中国では廃棄物】
処分に困っているのはどこも同じ。中国でも。
しかも、こちらは汚染水ではなく放射性廃棄物。はるかに危険です。

****中国、多くの原発で廃棄物放置 処分体制整わず5年の期限超過****
中国で低レベル放射性廃棄物の処分場が国の計画通りに建設できず、多くの原発で規定を超える長期間にわたり廃棄物が貯蔵されたままになっていることが11日までに分かった。

原発増設を進めているものの、廃棄物処分の体制整備が追い付いていない。
 
中国は1991年に初の原発が浙江省で運転開始し、今年4月末時点では全国で47基が稼働中。

政府は放射性廃棄物を発電所で5年を超えて貯蔵してはならないと定め、各地に中・低レベル放射性廃棄物の処分場を建設する計画だった。

だが専用の処分場が一カ所も建設されず、多くの原発で5年以上、廃棄物を保管したままになっている。【6月11日 共同】
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まあ、こちらは“いよいよ”となれば強権的に処分場建設も可能では・・・とも思いますが、中国といえども、それほど簡単な話でもないのかな?

原子力という技術、目の敵にするつもりもありませんが、いろんなレベルで厄介な未完の技術です。

 

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原発 “安全で割りに合う製品を実現できなかった”ことで“日に日にその魅力を失っている”

2017-07-15 23:16:51 | 原発

(中東ドバイでは最大5GWの太陽光発電所計画があるとか。5GWというと原発5基分です。【http://a-vein.com/2017/03/02/8314/】)

【「原発大国」フランスも原発依存率引き下げ
フランスはアメリカ(104基)に次ぐ「原発大国」(58基)です。(日本は54基)

先のフランス大統領選挙は、フランス最古のフェッセンアイム原発(仏中東部、1977年稼働)の「閉鎖延期」が4月6日に決まったことで、終盤に来て原発問題も争点に浮上しました。

オランド前大統領はフェッセンアイム原発を公約していながら実現できず、フェッセンアイム原発はオランド大統領の「公約違反の象徴」とも言われていました。

結果は周知のようにマクロン氏が勝利しましたが、原発に関してはマクロン氏は、原発エネルギー依存率の「50%削減」を公約し、フェッセンアイム原発の原発に関しても「閉鎖」を主張しています。【4月17日 JB Press 山口 昌子氏“フランスはこのまま「原発大国」であり続けるのか?”】

マクロン政権は原発依存率引き下げ公約に沿って、原子炉廃止を進めるとしています。

****仏、2025年までに原子炉最大17基の廃止も=エコロジー相****
フランスのユロ・エコロジー相は10日、2025年までに原子炉最大17基を廃止する可能性があるとの認識を示した。原発への依存度を引き下げることが狙い。RTLラジオに述べた。

同国のフィリップ首相は、原発への依存度を現在の75%から50%に引き下げるとした前政権の目標を堅持する方針を示している。(後略)【7月10日 ロイター】
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韓国・文在寅も脱原発を掲げています。

***韓国が「脱原発」新規建設中止へ・・・文大統領表明****
韓国の 文在寅 ( ムンジェイン )大統領は19日、南部・ 釜山 ( プサン )の老朽化した 古里 ( コリ )原子力発電所1号機の運転停止宣言式に出席し、国内で新しい原発の建設を白紙化し、再生可能エネルギーへの転換で「脱原発」を進める方針を明らかにした。(中略)
 
脱原発を目指す理由について、文氏は昨年9月に原発に近い南東部・ 慶州 ( キョンジュ )を震源とするマグニチュード5以上の地震が発生し、余震が続いていることを挙げた。古里原発の半径30キロ・メートル以内に人口約380万人が集中していることを踏まえ、「地震による事故は致命的だ」と強調した。【6月19日 読売】
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コスト的優位性を失う原発 “原子力は日に日にその魅力を失っている”】
こうした“脱原発”の論議は、安全性の面から語られることが多いのですが、原発につきまとう安全性・環境への影響や廃棄物処理問題は別にしても、単純に経済的コスト面からしても原発は太陽光発電や天然ガスなどへの優位性を失いつつあります。

世界最多の原発を擁するアメリカでは、そうした経済コストの観点から脱原発が進みそうな様相です。

****原子力、次なる「化石」燃料か***
米フロリダ州最大の発電所「ターキーポイント」の外にある灰色の恐竜像は、廃炉となった火力発電用ボイラー2基を象徴するためのものだが、それはまた、コスト増大で崩壊しつつある原子力産業をも表していると見ることができる。
 
約10年前、ターキーポイントは米国最大級の原子力発電所となること目指していた。地元電力会社フロリダ・パワー・アンド・ライト(FPL)は、エネルギー源の多様化を維持し、爆発的な増加が予想される州人口への電力供給のために原子力発電の増強が必要だと訴え、そして原子力がクリーンなエネルギーであると大々的に宣伝した。
 
だが現在、この発電所ではわずか3基が稼働しているのみだ。1970年代に建設された天然ガスのボイラー1基と原子炉2基だ。州の公益事業委員会に提出された文書によると、さらに原子炉2基を建設する計画が2009年に出されているが、少なくともこの4年間は実質的に保留となったままだ。(中略)

■安全で割りに合う製品を実現できず
FPLはフロリダ州全土において、太陽光システムの設置を拡大し、石炭関連施設の閉鎖を推し進めている。
エネルギーミックスの内訳は天然ガス70%、原子力17%、残りが太陽光、石油、石炭となっている。

専門家らは、天然ガスの価格が下落し続けており、原子力は日に日にその魅力を失っていると語る。
 
バーモント大学ロースクールエネルギー環境研究所の主任研究員マーク・クーパー氏はAFPの取材に「ほとんどの人はターキーポイントの拡張工事は行われないだろうと思っている」と話す。

「結局、環境主義者のせいではなく、裁判のせいでもなかった。単に、安全で割りに合う製品を実現することができなかっただけ。80年代にできず、今日でもできていない」──クーパー氏はそのように述べ、そして「原子力の技術が主役なることは無かった」と続けた。【6月15日 AFP】
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また、トランプ大統領は石炭産業の再興をアピールしていますが、太陽光などの自然エネルギーが主役となりつつある現代にあっては、“パソコンが急速に普及しだした80年代にタイピスト職を保護するくらい無意味なこと”との辛辣な指摘も。

****太陽エネルギーが石炭産業を殺す日****
<パリ協定を離脱して石炭重視を貫くトランプだが、技術革新と低価格化でどのみち自然エネルギーが主流になる>

今の時代に石炭産業を保護する――それは、パソコンが急速に普及しだした80年代にタイピスト職を保護するくらい無意味なことだ。

なぜか。ドナルド・トランプ米大統領がどんなにじだんだを踏んでも、太陽光技術の発展によって石炭・石油産業はいずれ破壊されるからだ。

米半導体メーカー・インテルの創業者の1人であるゴードン・ムーアは65年、「半導体の集積度は18カ月ごとに倍増していく」と予測した。半導体の高集積化と低価格化を進めたこの「ムーアの法則」は、太陽光にも当てはまる。

半導体ほど急速ではないものの、太陽光技術もより安く、より高度に、予想を裏切らず持続可能な方法で発展している。2030年頃までに、太陽光は石炭を含むあらゆる炭素資源の半分以下のコストでの発電を可能にするだろう。

その意味では、地球温暖化対策の枠組みであるパリ協定もほとんど無意味だ。技術が発展し、経済の法則に従えば、おのずと問題は解決されるのだから。

となると、大きな疑問が湧いてくる。世界のどの地域が再生可能エネルギーのシリコンバレーとなり、どの企業がこの業界のインテルやマイクロソフトになるのか? 

パリ協定を離脱したトランプの決定に何か意味があるとすれば、こうした地域や企業がアメリカではないことを確実にした、ということだ。アメリカは、誰も望まない石炭を掘ることにかけては超一流の国になり果てるだろう。

太陽光パネルの開発過程は、マイクロプロセッサのそれと共通の特徴を持つ。ムーアの法則は本質的に、メーカーが小さな面積により多くの機能を詰め込もうとすることを意味する。おかげで、NASAが月面旅行に結集したコンピューターの力の全てが、今では小さなアップルウオッチに組み込まれている。

同様の力学が太陽光パネルをより高度かつ安価に進化させつつある。技術者は太陽電池の薄型化を追求し、1ワット当たりのシリコンを削減し、効率化を上げて製造コストを押し下げる。(中略)

大容量バッテリーも一役
電力会社が大規模なソーラーパネルを砂漠に設置した場合、コストは1ワット当たり1ドル余りにまで下がる。世界経済フォーラム年次総会での発表によれば、昨年後半の時点で、適切な条件下での太陽光発電のコストが石炭火力発電のコストを初めて下回ったという。

「テクノロジーの低価格化と足並みをそろえ、今や太陽光発電コストも下がり続けている」と、米科学者のラメズ・ナームは言う。「他の電力技術やビジネスにとっては破壊的だ」

もちろん、太陽光はクリーンでもある。炭素資源を燃やすことが気候変動につながると分かっている人なら、太陽光を応援したくなるだろう。でもたとえ気候変動を疑う人でも問題なし。彼らも低価格なエネルギーのほうがいいに決まっているからだ。

加えて太陽光は、太陽が死に絶える50億年後まで枯渇する心配がない。太陽光は約5日分で、石油、石炭、天然ガスの総埋蔵量のエネルギーに匹敵する。私たちは膨大なエネルギーのほんの一部を利用するだけでいい。

他方、太陽光発電には信頼性の問題が付きまとう。夜間や悪天のときにはどうなるのか? そこで、バッテリー技術の出番だ。大容量バッテリーもまた、絶えず低価格化を続けている。

結局、政策や条約ではなく技術と経済上の理由から、石炭は遠からず淘汰されるだろう。太陽は輝き続け、太陽光パネルはそれを電力に変換し続け、夜間や曇りの日にも余剰電力はバッテリーに貯蔵され続ける。化石燃料で儲けた大富豪たちが、航空機時代の到来に直面した鉄道王たちのごとき終焉を迎えるのは確実だ。

政府主導で雇用創出を
となると、トランプのパリ協定離脱はどう影響するのか。おそらく自然エネルギー界のシリコンバレーは中国のどこかに誕生するだろう。今年1月、中国国家エネルギー局は20年までに再生可能エネルギーに3600億ドルを投じると発表した。

カネと雇用が自然エネルギー技術に流れていくとするなら、アメリカは既に後れを取っている。なのに米政府は、気にするなと言うばかりだ。(後略)【7月15日 Newsweek】
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トランプ大統領も太陽光発電に関心がない訳ではなく、“メキシコ国境沿いに建設するとしている壁に太陽光パネルを設置することを検討している”そうです!(本気度はわかりませんが)

****成長する太陽光発電市場 米カリフォルニア****
米カリフォルニア州では太陽光発電に切り替える世帯が増えてきている。電気などの節約のためだけでなく、環境問題で同国の先駆者的な存在である同州において自分たちの役割に取り組むためだ。
 
非営利の事業者団体、米太陽エネルギー産業協会によれば、カリフォルニア州では、490万近い世帯が太陽エネルギーを利用しており、この数は今後も増え続ける見通しだという。
 
地球温暖化には懐疑的な立場を表明しているドナルド・トランプ大統領ですら、メキシコ国境沿いに建設するとしている壁に太陽光パネルを設置することを検討している。(中略)
 
こうした広がりを促進している要因の一つは、太陽パネルの価格が急落していることにある。以前は太陽パネルを設置するのは比較的裕福な世帯に限られていた。また、バッテリーの蓄エネルギー技術の向上が進んだことも挙げられる、と専門家らは指摘している。
 
さらにこの10年で太陽パネルの需要が急増したのと同様に、市場に参入する企業の数も増えてきた。
 
太陽光発電は、ニューヨーク州を含め、この分野でカリフォルニア州を手本としている他州でも急速に拡大している。【7月13日 AFP】
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素人の根拠もない想像ですが、今後太陽光発電の効率性・コスパは飛躍的に向上するように思えます。
問題点とされる不安定性についても、蓄電技術の進歩がある程度解決するのではないでしょうか。

後述のような「ギガソーラー」でなくても、将来的には各家庭や企業・工場などでの小規模施設でも相当量の電力をカバーできるようになるのではないでしょうか。

原発の廃棄物処理問題の先が見通せないのとは対照的です。

原発は次第に“過去の技術”、あるいは住民の不安・不満を力で抑えられるようなタイプの国に適した技術になりそうな感も。

太陽光発電:各地で進む大規模プロジェクト
太陽光発電に関しては、「ギガソーラー」などの大規模プロジェクトが各地で進んでいます。
なかでも、インドや中国の取り組みが目につきます。

****インドに世界最大の太陽光発電所が続々誕生****
昨年秋、インドのタミル・ナードゥ州に世界最大の太陽光発電所が誕生した。648メガワットの出力を誇るKamuthi solar plantだけでインド国内の150,000戸の電力がまかなえる。それまでの記録はカリフォルニアのTopaz Solar Farmの500メガワット。大きく発電能力の差を広げている。

だが、Kamuthi solar plantが世界最大である日はそう長く続かない。なんとインド国内に新たに750メガワットの太陽光発電所の完成が控えているのだ。

インドでは現在、この2基の発電所の建設に代表されるように太陽光発電のブームに沸いている。2014年には3ギガワットだった太陽光発電の導入は昨年、その3倍の9ギガワットに達し、今年の予想は10ギガワットを超える。そして風力発電ではすでに世界4位となる29ギガワットの発電能力を持っている。

インドでは気候変動対策のため、2030年までに電力消費量の4割を化石燃料以外のエネルギーでまかなう計画を立てている。だが、その目標の達成は大きく早まり、2027年には使用される電気の56.5%がクリーンで再生可能なエネルギー源から生まれることになるだろう。

トランプ大統領が誕生したアメリカでは、ダコタ・アクセス・パイプラインの建設再開などで石油産業が攻勢を強めているが、多くの国々が確実に脱化石化していることは間違いない。【1月26日 Ecology Online】
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****世界最大・最安「ギガソーラー」、印企業がEPCとO&M受注****
インドのスターリング・アンド・ウィルソン社は6月19日、アラブ首長国連邦(UAE)・アブダビ首長国のスワイハンに建設される出力1177MW(1.177GW)の「ギガソーラー」(大規模太陽光発電所)のEPC(設計・調達・施工)サービスとO&M(運用・保守)の一括契約を受注したと発表した。
 
同ギガソーラーは完成後、中国の850MWのメガソーラー(大規模太陽光発電所)を抜いて、1カ所に建設される太陽光発電所として世界最大になると見込まれている。(後略)【6月23日 メガソーラービジネス】
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****世界最大級の水上太陽光発電所が操業開始 中国****
米国のドナルド・トランプ大統領が地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」からの離脱を表明した一方で、中国では今月初め、同国のクリーンエネルギーへの野心を反映する形で、世界最大級の水上太陽光発電所が操業を開始した。
 
中国安徽省淮南の、炭鉱が崩壊した後に大雨などの影響で形成された湖に建設された水上太陽光発電所には、水に浮かべるフロート式の太陽光パネル16万枚が設置され、その出力は40メガワット。
 
この発電所は中国が進める化石燃料への依存からの脱却を目指す取り組みの一環。中国は世界最大の二酸化炭素(CO2)排出国で、現在も電力のおよそ3分の2を石炭火力発電に頼っている。
 
トランプ大統領が大きな批判を浴びたパリ協定離脱を表明したのと同じ時期に、この水上太陽光発電所は操業を開始した。トランプ大統領の離脱表明により、今後は中国が地球温暖化との闘いにおいて指導者的な役割を引き受けるかどうかが注目される。【6月29日 AFP】
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インド・中国は原発も拡大
もっとも、インドにしても中国にしても、膨大な電力需要増加に対応して、太陽光など自然エネルギーに力を入れる一方で原発も急拡大しています。

****<インド>国産原発10基増設を決定****
インド政府は17日、国産の原発10基を増設することを閣議決定したと発表した。

インドでは東芝の米原発子会社ウェスチングハウス(WH)が最新鋭の「AP1000」6基の建設を計画しているが、同社の経営破綻により不透明感が漂っている。電力需要が急増する中、国産原発も増やすことでエネルギーの確保を急ぐ狙いがあるとみられる。(中略)

インドは温暖化対策として原発増設を進めており、2032年までに原発の発電量を現在の約10倍に拡大する目標を掲げている。現在は22基が稼働中で合計出力は678万キロワット。ほかに計670万キロワット分の原発を建設中で、増設する10基はこれに加わる形となる。政府は原発増設について「気候変動への取り組みを強化するため」としている。
 
インドは原発の有望市場として注目されており、日本も昨年、原発輸出を可能とする日印原子力協定を締結。今月16日には衆院本会議で承認案が可決された。【5月18日 毎日】
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****中国、2026年には世界最大の原子力発電大国に*****
2017年2月2日、中国メディア・快科技は、米メディア・ブルームバーグ・ニュースの報道を引用して、中国は2026年には世界最大の原子力発電大国になると伝えた。

ブルームバーグによると、調査会社ビジネス・モニター・インターナショナル(BMI)の研究報告書では、中国が今後10年以内に原子力発電の発展に力を注ぎ、設備容量は3倍近い1億キロワットにまで激増すると分析している。

中国で、原子力エネルギーの利用は従来の化石エネルギーを代替し、エネルギー危機を解決する最も有効な方法であるとされている。

業界関係者の見方では、石炭による火力発電の比率を抑え、よりクリーンな発電エネルギー源推進を求める声が原子力エネルギー発展の原動力になっているという。

中国の2016年の原子力発電設備容量は3400万キロワットであり、中国政府は2021〜2022年までに運転中の設備容量を5800万キロワットに、2030年には1億5000万キロワットにする計画。また2026年までに、大気を汚染する石炭による火力発電の比率は70%から54%以下へと減少するとみられている。【2月4日 Record china】
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「完全自動運転車」や「空飛ぶタクシー」の時代を支えるエネルギーは、自然エネルギーか原子力か?

2016-10-28 22:18:25 | 原発

(ウーバーの描く「空飛ぶタクシー」【10月28日 Newsweek】

動き始めた変化は、案外早く現実のものとなるのかも
人工知能(AI)を駆使した新技術の研究・開発が急速に進んでいることは今更言うまでもない話で、いろんな場面でのロボット技術や、完全自動運転車などが私たちの生活の中に登場するのも、そう遠くない将来と思われます。

産業イノベーションの起爆剤という点もありますが、先ほどもTVニュースで高齢者ドライバーが運転する車に起因する事故を報じていましたが、今後急速に高齢化が進む日本にあっては、高齢者ドライバー問題をクリアする点でも、完全自動運転車は必要不可欠で、早期の実現が望まれる技術でしょう。

ただ、そうは言うものの、現実世界に暮らす身からすると、そんなに大きな変化がすぐに始まる・・・・という実感も湧かないのが正直なところです。

しかし、動き始めた変化は、私たちが感じているよりも案外早く現実のものとなるのかも。

自動運転車については、自動運転中だったテスラ車がアメリカ・フロリダ州で死亡事故を起こした事例など、今後もこうした事故が不可避で、どの程度現実性があるのだろうか?とも思ってしまいますが、テスラは強気のようです。

****早くも2017年が「完全自動運転」元年に****
今後登場するすべてのテスラ車が完全自動運転に対応  アプリ1つで車が迎えに来てくれる時代に
 
テスラモーターズは先週、移動中のクルマの操作に人間がまったく関与しない「完全自動運転車」の実現に近づきつつあることを明らかにした。今後生産するすべての車に、完全自動運転が将来的に可能となるカメラやセンサーなどの装備を搭載するという。
 
ソフトウエアを段階的に更新することで自動運転が可能な範囲を広げていき、最終的に完全自動運転を実現する予定だとしている。そうなれば専用のスマートフォンアプリを操作するだけで、車が迎えに来てくれる時代が到来する。
 
これでテスラは、自動運転車開発競争の先頭へと一気に躍り出たようだ。「来年末までに、ロサンゼルスからニューヨークまで完全な自動運転で走破できるようにする」と、イーロンーマスクCEOの鼻息も荒い。(後略)【11月1日号 Newsweek日本版】
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2017年が「完全自動運転」元年となるのは、あくまでもハード面の話で、“必要なハードウエアを前もって車に搭載し、実際の自動運転機能はソフトウェアの更新で提供する方法だ。”ということですが、“テスラがソフトウェア更新のボタンを押せば、あっという間に何十万台もの車が自動運転を始めるだろう。まるでハリウッド映画のボットの反乱のように。”という話にもなります。

地上の「完全自動運転車」どころか、空を見上げると、全自動ドローンを使った「空飛ぶタクシー」がビュンビュン飛び回る・・・という日も。

****都会の空を「空飛ぶタクシー」でいっぱいにするウーバーの未来構想****
<タクシー配車サービスのウーバーが、全自動ドローンを使った「空中交通システム」構想を発表。機体メーカーや関係当局を巻き込む野心的な構想だが、その現実味は?>

2030年までには、道路や建物を飛び越えて、客を乗せて目的地まで運ぶ全自動ドローンが都市部の空を飛び回ることになる――もしもウーバーの思い通りになれば、の話だが。

米配車サービス「ウーバー」の製品担当主任ジェフ・ホールデンは今週、垂直離着陸(VTOL)飛行機を使った「空中ネットワーク」の将来構想を、99ページの詳細な白書にまとめて公表した。

最近ウーバーは、タクシーに自動運転車を投入することを発表したが、それすらたいした話ではないように見えてしまう白書だ。

しかしウーバーがVTOL機を製造するわけではない。むしろ、「空中」交通システムがどのようなものになるか、機体メーカーがどうVTOL機の製造に取り組んだら良いかを提示した白書だ。もちろん最終的には、ウーバーが空中ネットワークを商業化して収益を上げるのが目標だ。

十数社が機体を開発中
白書が示した未来構想では、自動車で2時間かかる移動が15分に短縮され、道路や橋、トンネルといった既存の交通インフラは、地上を走る自動車による混雑から解放される。

「最新の技術進歩によって新しいタイプのVTOL飛行機の製造が現実的になった。十数社の企業が、多くの異なった機体デザインをベースに、VTOL機の実用化に熱心に取り組んでいる」と、白書は記している。

今日使われている技術で最もVTOL機に近いのはヘリコプターだが、ホールデンは、ヘリコプターは騒音がひどく、効率性が低く、大気汚染も引き起こすし、費用がかさむと指摘している。

VTOL機を実用化するうえで最大の障害となるのは、法規制やバッテリー技術、信頼性、費用、安全性だ。しかしホールデンは、こうしたすべての障害を克服する解決策が、近い将来見つかるだろうと記している。

「今回の白書は実現に向けた行程のスタートを意味する。ウーバーはこれから、関連企業やインフラ・規制関係当局をはじめ、都市自治体、自動車メーカー、サービス利用を見込める顧客代表、地域コミュニティなどにアプローチして、この都市型空中交通システムの意義を認識し、導入を検討するように働きかけていく」【10月28日 Newsweek】
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「完全自動運転車」よりもはるかに“絵空事”のようにも思えますが、空中には障害物があまりないことを考えると、技術的には地上の「完全自動運転車」よりは簡単かも・・・・。

もっともVTOL機の実用化は、オスプレイで大騒ぎする日本では当分無理そうですが。

アフリカでも進む自然エネルギー活用
こうした‟絵空事”や“夢物語”とは違って、自然エネルギーの活用は地道に進んでいます。

電力事情が悪いアフリカなどは、太陽エネルギーの面では、むしろ他の地域よりも有利な条件下にあります。

****モスクから始まる「エコ」=再生エネ普及の手本に―モロッコ****
北アフリカのモロッコで11月に開かれる国連気候変動枠組み条約第22回締約国会議(COP22)を前に、同国は再生可能エネルギー導入などを通じたモスク(イスラム礼拝所)の「エコ化」を進める方針を決めた。

AFP通信によると、まず主要6都市の64モスクで着手する。イスラム社会で大きな影響力を持つモスクでの取り組みは、専門家からも「再生可能エネルギー普及の手本になるのでは」と注目を集めている。
 
人口の99%がイスラム教徒のモロッコには、約1万5000のモスクがある。省エネルギーは発光ダイオード(LED)照明への切り替えや、太陽光発電、太陽熱を活用した温水システムの整備によって実施。神聖な祈りの場でもあるモスクの外観には影響を及ぼさない。
 
再生可能エネルギー導入を推進するため政府が設立したモロッコ・エネルギー投資会社によると、目標は全モスクのエネルギー費用の4割削減。首都ラバトにあるモスクでは、消費エネルギーを68%も減らせると試算された。

礼拝前に手足を清める際、太陽熱で温めた湯を使えるようになったり、余裕のできた電力を活用して空調を整備したりし、利用者にも恩恵がある。(中略)

エコ化に必要な技術は、いずれも地元で調達可能で、雇用拡大にもつながると期待されている。取り組みにはドイツ国際開発公社(GIZ)も参加しており、(北アフリカの都市計画史に詳しい筑波大の)松原准教授は「COP22に際し、先進国が途上国を支援する流れに乗っているのではないか」と話した。【10月11日 時事】 
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****アフリカ大陸初の太陽光発電空港、環境や経費に貢献 南ア****
南アフリカ南岸の都市ジョージ(George)には、太陽光発電を利用したアフリカ大陸初の「環境に優しい」空港がある。
 
管制塔やエスカレーター、チェックインカウンター、荷物運搬用コンベヤー、レストラン、ATMなど、ここでのサービスすべてに利用されているのは、数百メートル離れた滑走路に隣接した土地に設置された、小規模な太陽光発電所の電力だ。
 
2000枚の太陽光パネルが作り出す電力は、1日当たり750キロワットで、空港の運営に必要な400キロワットを上回る。(中略)この空港の年間利用者数は約70万人。太陽光を利用して運営される空港としては、インド南部コチン(Cochin)の空港に次いで世界で2例目。
 
こうした意欲的なプロジェクトは、早くも環境面で良い結果をもたらしている。太陽光が主要電力となって以降、この空港の二酸化炭素の排出量は1229トン減少。これは、燃料10万3934リットル分に相当する。
 
また電気料金は年間40%削減されたため、初期費用の1600万ランド(約1億1500万円)分はあと5~10年で採算が取れる見通しだと空港当局者は語っている。【10月14日 AFP】
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****セネガル、太陽光発電施設の運転開始****
再生可能エネルギー事業への参入を目指すセネガルで22日、サハラ以南のアフリカ地域で最大規模の太陽光発電施設が運転を開始した。
 
モーリタニア国境に近いセネガル北部のボクルに建設された太陽光発電施設「Senergy 2」は出力20メガワットで、16万人分の電力を供給する。セネガルは2017年までに電力需要の20%を再生可能エネルギーで賄う目標を掲げており、その達成にも貢献する見込みだ。
 
同国では現在、全世帯の45%で電力が不足している。
総工費2800万ドル(約29億円)のこの施設はセネガル政府の支援を受け、フランスの再生可能エネルギー企業グリーンウィッシュ(GreenWish)によって開発された。また英国とノルウェーから共同開発投資グリーン・アフリカ・パワー(Green Africa Power)を通じて資金援助を受けた。
 
グリーンウィッシュによれば、この施設により毎年、二酸化炭素(CO2)2万3000トンの排出を削減できるという。
 
また、来年1月末までにはさらに2つの太陽光発電施設が運転を開始し、新たに50メガワットが増加される予定だ。国営電力企業セネレックによると、同国の現在の総発電容量850メガワット。
 
ボクルの太陽光発電施設はモロッコや南アフリカに比べるとその規模は小さく見えるが、セネガルは再生可能エネルギーにおいて、アフリカのほかの地域よりも太陽光発電技術の活用で遅れをとっている西アフリカで手本となることを目指している。
 
アフリカ大陸には一年を通して太陽が降り注ぎ、未開発の土地が多いにもかかわらず、サハラ以南のアフリカ地域の電力需要に対する太陽光発電の割合はわずかにとどまっており、同地域の人口、約10億人のうち約6億人に電力が行き届いていない。【10月28日 AFP】
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****ドバイ、1000メガワットの太陽光発電所を建設へ****
アラブ首長国連邦(UAE)のドバイ電力水道公社(DEWA)は今月初め、2030年までに1000メガワット級の太陽光発電所を建設する計画を発表した。DEWAは2030年までに電力需要の25%を再生可能エネルギーで賄うことを目標に掲げている。
 
2021年4月までに、第1段階として集光型太陽光発電(CSP)施設で200メガワットの発電を目指すという。DEWAのサイード・テイヤー(Saeed al-Tayer)最高経営責任者(CEO)は「このプロジェクトは世界最大のCSP施設になる」と述べた。DEWAは現在、発電所を建設・運用し、送電公社に電力を販売する民間企業を探している。
 
バイ首長国は2013年10月に13メガワットの発電所を建設しており、2017年4月からは別の200メガワット級の発電所が操業可能になる見通しとなっている。

原油が豊富な隣のアブダビ首長国と異なり、ドバイ首長国の原油埋蔵量は減少しており、ドバイは貿易や運輸、観光へと経済の多様化を目指している。【6月24日 AFP】
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中国のエネルギー事情
お隣・中国の事情を見ると、“買い取り価格を高額に設定するなど再生可能エネルギーへの優遇策を背景に、中国では過去5年で風力と太陽光の発電能力が予想を超える伸びを見せている。”【10月22日 ロイター】ということで、2016年の再生可能エネルギー事業者に交付する補助金が、600億元(90億ドル)不足する可能性があると明らかにされています。

また、深刻な環境汚染に配慮して、火力発電所30基の建設を中止することを発表し、「世界的にも前例がない規模の措置だ」とも評されています。【10月25日 Record chinaより】

もっとも、“10月25日、世界原子力協会(WNA)は、中国が今後10─15年に、米国を抜き世界最大の原子力発電所保有国となる見通しだと明らかにした。大気汚染対策として、原子力発電所の建設を急いでいることがその理由という。”【10月26日 ロイター】と、原子力発電への転換を急いでいるようです。

現在は問題も大きい再生可能エネルギーではあるが・・・・
再生可能エネルギーの問題点としては、その不安定性が挙げられ、そこが原子力発電を重視する立場の根拠ともなっています。

****オーストラリア南部の州全土が停電、再生エネルギーに過度の依存へ疑問符****
激しい嵐に見舞われ、州全土で大規模な停電が発生した豪サウスオーストラリア州で29日、電気がほぼ復旧した。停電の影響で、資源大手BHPビリトンは操業を停止し、公共交通機関は運休した。

当局によると、29日朝までに州の90%で電気は復旧したが、強風や豪雨が予想されるため、さらなる混乱が起きる可能性があるという。
 
この停電を受け、風力発電の比率が40%という同州の再生可能エネルギーへの過度な依存が、事態を悪化させたのではないかとの疑問が生じている。
 
気候変動に懐疑的なジョイス副首相は29日、「再生可能エネルギーへの過度の依存が問題を悪化させたのではないか、再生可能エネルギーに安定した電力供給能力があるのか、疑問を呈する必要がある」と、オーストラリア放送協会(ABC)ラジオで述べた。
 
石炭火力発電所が主力のオーストラリアは、一人当たりの二酸化炭素排出量が世界で最も多い国の一つ。再生可能エネルギーの比率増加に取り組んでいる。【9月29日 ロイター】
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ただ、漠然とした素人考えですが、これだけ技術進歩が著しい現代ですので、効率的な蓄電技術なども本腰をいれれば可能なのでは・・・・。

また、経済的コストにおける原子力発電の優位性という話は、どこまで廃炉や廃棄物処理、事故時の対応などをシビアに見込んでいるのか・・・いささか怪しい感もあります。

何よりも、事故時の被害の大きさ、廃棄物処理をどうするのかという点で技術的に完成していないといった問題があることは言うまでもありません。

個人的に言えば、原発が立地する場所で“共存”しており、あまり原発を目の敵にするつもりもありませんし、地域経済が原発に大きく依存している面も無視できません。

ただ、再生可能エネルギー利用が進むなかで、厄介な面がぬぐえない原子力発電というのは、いつのまにか、安全性とか将来的負担などはあまり重視しない“途上国タイプ”の“過去の技術”になりつつあるような気もします。(「不要だ」とか「今すぐやめろ」とは言いませんが)

地上を「完全自動運転車」が走り、空を見上げると、全自動ドローンを使った「空飛ぶタクシー」がビュンビュン飛び回る・・・という日には、自然エネルギーが現在抱えている問題は技術的対応が可能になるように思えますが、原発の問題が解消されるとは思えませんので。
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日本からアメリカへプルトニウム搬送 しかし、行き詰まる核燃料サイクルで残存する大量のプルトニウム

2016-03-24 21:26:53 | 原発

(完成が延期され続ける青森県六ケ所村の使用済み核燃料再処理工場【2015年11月16日 Global Energy Policy Research】)

プルトニウム受け入れ先の米南部サウスカロライナ州が輸送停止か行き先変更を要請
核兵器は保有していない日本ですが、その原料となるプルトニウムは大量(48トン)に保有しています。

プルトニウムは核兵器に転用しやすいことから、2014年の核セキュリティーサミットでの日米の合意に基づいて、核兵器にできないように処理するためにアメリカに向けて搬送されています。

ただし全部ではなく、ごく一部、331キロ(原爆40発分に相当するとも)ですが。

危険物の処理に適した広大な無人の荒野を有し、核大国でもある受け入れ先アメリカは、こうしたプルトニウムについてあまり抵抗はないのか・・・と思ったら、やはり事情は日本とあまり変わらないようです。

受入地元には、なんだかんだ言いつつ、一度受け入れるとそのまま最終処分場にされてしまうのでは・・・という懸念があるようです。

****<プルトニウム船>輸送停止か行き先変更を 米州知事****
日本から米国に返還される研究用プルトニウムを積んだ輸送船が茨城県東海村から出港したことに絡み、受け入れ先となる米南部サウスカロライナ州のニッキー・ヘイリー知事は23日、連邦政府に対し、同州がプルトニウムの最終処分場になることに懸念を表明し、輸送停止か行き先を変更するよう要請した。

核兵器保有国で広大な国土を持つ米国でさえ、核物質処分には困難を抱える実態が浮き彫りになった。

毎日新聞が州政府から入手した米エネルギー長官宛ての書簡によると、知事は日本から331キロのプルトニウムが同州に向け輸送中だと指摘し、「同州が核物質の恒久的な廃棄場になるリスクがある」と警戒感を表明。そうした事態は「市民や環境の安全のため、容認できない」とし、「輸送を停止、または行き先を変更」するよう求めた。

輸送中のプルトニウムは純度が極めて高く、核兵器への転用が可能。日米両政府は2014年、核拡散の脅威を減らすため返還で合意していた。

プルトニウムは同州にある米エネルギー省の「サバンナリバー核施設」に搬入され、希釈した後、処分されるとみられる。

オバマ米大統領は今月末からワシントンで開く核安全保障サミットで成果として訴える見通しだ。

ただ、同州はプルトニウムが同施設内に置き去りにされないかを懸念。同省には州外の別の施設に移して処分する計画もあるものの、安全性への配慮から実現できるかが疑問視されている。

サバンナリバー施設には、冷戦終結後の核軍縮で核ミサイルから取り出されたプルトニウムが運び込まれており、ウラン・プルトニウム混合酸化物(MOX)燃料に加工する工場が建設中。

しかし、同省が費用高騰などを理由に建設中止を打ち出し、同施設がプルトニウムの最終処分場にされる恐れが強まったことにも、同州政府や住民らが反発している。

同州政府は今年2月に連邦政府を相手取り、建設継続と核物質の搬入停止を求める訴訟を起こすなど、連邦政府との対立が深まっている。【3月24日 毎日】
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余剰プルトニウムについて高まる国際的懸念
地元反対はあっても、すでに動き出している話ですし、政府間で合意した案件ですから、331キロが宙に浮くようなことはないでしょう。

問題は、日本に残っている大量のプルトニウムです。

****国内外に48トン 日本への国際的懸念なお****
近く米国へ返還 輸送専用船が東海村の港に
核兵器への転用が可能なプルトニウムが近く米国へ返還されることは、日本政府が使い道のない余剰プルトニウムの削減に向け、やっと一歩を踏み出したことを意味する。

しかし返還されるのは331キロ。国内外には約48トンのプルトニウムが残っており、「核武装」を懸念する国際的な批判は依然残りそうだ。

日本の核燃料サイクル政策は、原発から出た使用済み核燃料を再処理し、取り出したプルトニウムをウランと混ぜた混合酸化物(MOX)燃料を原発で使うプルサーマル計画によって、プルトニウムを消費する計画だった。

しかし、原発の再稼働は進んでいない。国内で現在稼働しているのは、プルサーマル発電ではない九州電力川内原発の2基だけ。プルサーマルの予定だった関西電力高浜3、4号機は、今月9日の大津地裁の運転差し止め命令を受けて停止した。同じくプルサーマルの四国電力伊方原発も、再稼働は今夏ごろになる見通しだ。

余剰プルトニウムについては国際的な批判が高まっている。トーマス・カントリーマン米国務次官補は17日の議会公聴会で「すべての国がプルトニウムの再処理から撤退すれば喜ばしいことだ」と指摘した。

オバマ政権内には、日本の核燃料サイクル政策が「核拡散への懸念を強める」として、反対する意見が根強く残る。【3月21日 毎日】
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プルトニウムを含めて、使用済み核燃料をどうするのか?・・・・日本が抱える大きな問題となっており、日本政府のやり方への批判が多々あります。

****田原総一朗:「使用済み核燃料」問題を議論しない原発再稼動は無責任だ****
使用済み核燃料の最終処分をどうするのか
使用済み核燃料とは、原発を燃やした後に残るウラン燃料のことで、プルトニウムを含む。使用済み核燃料は、すでに国内で1万7000トンまで溜まっている。これをどう処理するのか、全く見当がついていない。

小泉純一郎元首相は原発反対を主張していたが、その理由もここにある。彼は2013年8月にフィンランドのオルキルオト島にある使用済み核燃料の最終処分場「オンカロ」を視察した。

オンカロでは、地下400メートルに使用済み核燃料を長期保存する。ただ、これが無害化するのに10万年もの月日を要するという。だが、10万年という長い期間、地層が安定し続けるという保証はない。

そもそも日本には、オンカロのような最終処分場がないが、仮に長期保存できたとしても無害化には気の遠くなる年月が必要だ。小泉さんはこの話を聞いて、「原発は危険だ」と考え、原発反対を主張しだした。

国が打ち出している「核燃料サイクル」という政策に従えば、使用済み核燃料は青森県六ケ所村の核燃料再処理工場で再処理され、燃料として再利用できるはずだった。

だが、日本原燃は昨年11月、使用済み核燃料再処理工場の完成時期を2016年3月から18年度上期に延期することを決めた。これは22回目となる延期だ。ウラン・プルトニウム混合酸化物(MOX)燃料工場については、2017年10月予定を19年度上期に延期した。

相次ぐ延期で「核燃料サイクル」のメドが立っていないというのが実情だ。【3月3日 日経Biz COLLEGE】
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外交カードとしての「プルトニウム」 行き詰まる核燃料サイクル
問題が微妙なのは、日本の「核燃料サイクル」が行き詰っているという現実問題だけでなく、中国などが批判するように「日本は将来の核保有のために余剰プルトニウムを大量に保持している」ということも、あながち完全には否定しきれないものがある・・・という話が絡んでくるためです。

****日本が核武装? 世界が警戒するプルトニウム問題****
「日本が保有する核物質は核弾頭1000発以上に相当する。安全保障と兵器拡散の観点から深刻なリスクを生んでいる」
「日本の原発再稼働と使用済み核燃料再処理工場計画は、世界を安心させるのではなく事態を悪化させる行動だ」
「核兵器を保有すべきだと日本の一部の政治勢力が主張し、核兵器開発を要求している。世界は日本を注意すべきだ」

中国の傅聡軍縮大使は10月20日、国連総会第一委員会(軍縮)で演説し、日本の原子力政策を批判した。

中国の核弾頭の保有数は14年のストックホルム国際研究所の報告によれば、約250発と世界第4位(1位露8000発、2位米7300発、3位仏300発)。そしてアジアの安全保障に脅威を与えている。彼らが日本の原子力政策を批判する資格はない。

しかし言うことにも一理ある。日本の保有する核物質プルトニウムの先行きが、不透明になっている。日本は48トンのプルトニウム(所有名義は各原子力事業者)を保有。

プルトニウムは数キロで核弾頭が作れる。この消費のめどが立たず、世界の安全保障とエネルギーの一部専門家の間で懸念を持って注目されている。

世界は日本を「潜在的核保有国」とみる
そして2018年には、余剰プルトニウムを日本は持たないことを定めた日米原子力協定の期限が切れる。

米国は核兵器を拡散させないために、他国にプルトニウムを持たせない政策を行っている。しかし米国は、日本が同盟国であり高度な核技術を持つため、発電や研究に使うプルトニウムの使用を認めてきた。

ところが日本がプルトニウムを減らせない。米議会や安全保障の研究者の間には、それを懸念する声が出ている。

この協定は一般にそれほど知られていないが、日米の原子力での協力を約束した重要な外交上の取り決めだ。中国が日本のプルトニウムを公の場で責め立てることは、この協定の交渉に揺さぶりをかけ、日米同盟にくさびを打ち込もうとしているのだろう。外交巧者の中国政府は、日本の痛いところを突いてきた。

「日本が核武装する」。日本人の大半はこうした話を荒唐無稽と思うかもしれない。ところが、世界では「日本は潜在的な核保有国だ」と性悪説で見ている。

日本原燃(青森県六ヶ所村)の再処理工場では、ウラン燃料の濃縮施設が稼働し、使用済み核燃料の再処理施設がほぼ完成している。(中略)

原子力の〝裏〟の顔、平和利用
原子力の利用は、〝表〟の原子力発電という平和利用の側面だけではない。軍事利用という〝裏〟と密接に絡み合っている。

日本原燃は民間の株式会社だが、世界の安全保障にも、日本の国策とも関係している。この施設にはIAEA(国際原子力機関)の査察官が常駐している。そして濃縮、再処理の双方で、要求があればいつでも原燃は施設を公開する取り決めだ。
 
濃縮とは、発電用の核燃料のために、高度な技術を使って核分裂反応を起こしやすいウラン(U235)を製錬されたウランの中から集めること。しかし、過度に濃縮するとウラン型原爆の材料になってしまう。そのために、国際機関が監視している。

そして再処理の施設も重要だ。日本は約40年前、「核燃料サイクル」を打ち出した。

使用済み核燃料は、使用後に変成する物質はわずか全体の5%程度だ。その大半を再利用して核燃料として再利用する。そしてプルトニウム、使えない物質を分離する。

取り出したプルトニウムは高速増殖炉の核燃料で使う。高速増殖炉では、使うと化学反応で核物質が増える。その増分を使いさらに発電をすれば、永遠にエネルギー源に困ることはない。無資源国日本のエネルギー問題が解決すると期待された。

こうした核燃料サイクルを持つのは核保有国のみだ。しかし日本は米国や各国との交渉で、平和利用に徹することを宣言して、これを行うことを認められた。

プルトニウムは核兵器の材料になるため、国際的に抑制が求められている。しかし日本はそれを高速炉で使うこと、情報をすべて公開することを前提に、抽出を許されている。

40年前の政府広報や、新聞記事を見ると核燃料サイクルは、「夢のエネルギーシステム」などと、日本中から期待されていた技術体系だった

行き詰まった核燃料サイクル
ところが核燃料サイクルをめぐる状況は暗転する。高速増殖炉もんじゅ(福井県敦賀市)は複雑な構造から運用がうまくいかず、再開はかなり難しい。しかし、ここにつぎ込まれた国費は1兆円とされ、やめるとなれば責任問題が浮上する。

また六ヶ所の再処理工場も停まっている。計画が遅れたが、稼動のメドがついたところで、東日本大震災と福島原発事故が発生した。原子力規制の体制が大幅に見直され、今はその基準作りで竣工は延期された。ここにも、主に電力会社の負担だがすでに約1兆円、建設費用がかかっている。

再処理をすることは、日本の原子力の活用にとってプラスの面がある。ウラン調達の必要は減る。また使用済み核燃料の再加工によって最終的に処分する核のゴミは7分の1以下に小さくなる。量を減らすことは、その最終処分を多少は容易にするだろう。

増えてしまう日本のプルトニウム
ところが、この六ヶ所村の再処理工場が稼働し始めると、年数トンのプルトニウムが抽出されてしまう。それを減らすめどが立っていない。

国は、MOX燃料(ウラン・プルトニウム混合燃料)として既存の原発でプルトニウムを使う予定だ。またMOX燃料を専門に使うJパワーの大間原発(青森県大間町)が、国の支援を一部受けて建設中だ。

しかし、これらの手段を使ったとしても最大限でプルトニウムを年6トン前後しか減らせないという。今ある48トンのプルトニウムはなかなか減らせない。

筆者は六ヶ所村の核燃料再処理工場のほぼ完成した巨大な工場を見て、これを動かさないという選択肢はありえないと、思った。この施設をつぶすと、原燃、また支援者の各電力会社に巨額の負担がのしかかり、結局、金銭的な損害が増えてしまう。

核燃料サイクルをめぐる問題で、対外関係、費用、実効性などの論点すべてを、即座に満足させる答えは、今のところ見当たらない。

外交カード「プルトニウム」の危険な発想
自民党のエネルギー政策に詳しいある国会議員に、核燃料サイクルの行く末を、聞いたことがある。

「六ヶ所再処理工場はできてしまった以上、稼働するべきです。そして情報を公開して核武装の野心はないと世界に示し、プルトニウムを使う高速炉研究を進め、軽水炉でMOX燃料を使って、常識的な先延ばし政策しかないでしょう」と、困っていた。

そして気になることを言った。「現時点で核武装を本気で考える人は自民党内にはなく、政界にも、石原慎太郎さんなど限られた人しかいません。しかし私は反対ですが、本音では『プルトニウムを一定量持ち続け、将来の外交カードとして残しておきたい』という考えを持つ政治家は党内にいるようです。国防の観点から、将来、自衛のための核兵器保有に動ける選択肢を残すということです」。

日本の核武装論は、中国からの安全保障上の脅威が高まる中で、「力には力で」という外交論の上ではありえる考えかもしれない。しかし、原子力の平和利用を誓い、唯一の被爆国である日本の核兵器廃絶の目標に反する。その議論は国際的な懸念も深めてしまう。

筆者は、核燃料サイクルとプルトニウム問題について、国民が関心を向け議論をするべきであると考えている。重要な問題なのに、日常から離れすぎているためか、それほど関心が深まらない。

そしてプルトニウムでは、MOX燃料として既存の原発で使うことを前提に、その削減計画を早急につくることが必要だ。

「李下に冠をたださず」とことわざにいう。日本がこのままでは核兵器の保有の問題で、国際的に「痛くもない腹を探られかねない」のだ。【2015年11月24日 石井孝明氏 Newsweek】
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おそらく、『プルトニウムを一定量持ち続け、将来の外交カードとして残しておきたい』というのは、歴代政権に根強くある考えでしょう。

昨今の東アジアの情勢を考えると、安全保障対策としてあながち否定できない考えではあります。
ただ、それにしても48トンものプルトニウムは必要ないでしょう。国際社会の警戒心を高めるだけです。

『プルトニウムを一定量持ち続け、将来の外交カードとして残しておきたい』という話はさておいても、国際社会が懸念を深めるなかで、余剰プルトニウム削減に道筋をつける必要があります。

しかし「高速増殖炉もんじゅ」は実用化がほぼ断念されており、MOX燃料(ウラン・プルトニウム混合燃料の使用も目途がたたない。
六ヶ所村の再処理工場が稼働し始めると、プルトニウムは更に増えてしまう・・・ということで、有効な策が見いだせないのが現実です。
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急拡大する太陽光発電  固定価格買い取り制度(FIT)見直しの動きも

2014-10-01 22:40:43 | 原発

(昨年11月から稼働している「鹿児島七ツ島メガソーラー発電所」 桜島を望む錦江湾に29万枚の太陽光パネルを敷き詰め、広さは東京ドーム22個分にも及び、発電能力は70メガワット。国内最大規模でしたが、これを上回る規模のものが次々に建設・計画されているようです。 そういう大規模施設が比較的簡単にできてしまうというのも太陽光発電の大きな利点でしょう。写真は【2013年8月26日 NEWSポストセブン】)

太陽光発電急拡大で需要を上回る 問題も露呈 買取中断へ
原発が稼働停止している現在、電力が足りずに停電するかも・・・といった議論がなされていましたが、実際はむしろ余る電力をコストの面も含めてどういたらいいか・・・というのが緊急の課題で、しかもその有り余る電力の原因は、普及が遅れているというイメージがあった太陽光発電の急増にあるとのことです。

個人的には、非常に意外な感じがしたニュースでした。

****九電、再生エネ買い取り事実上中断へ 太陽光発電急増で****
九州電力は、民間業者などが太陽光など再生可能エネルギーで発電した電力の受け入れを一時「保留」として、事実上中断する検討を始めた。九州では太陽光発電が急増し、電力の安定供給に支障が出かねないためだ。九電は7月下旬に一部の離島で受け入れ中断を決めたが、その範囲が九州全域に広がる可能性が出ている。

民間業者や個人が太陽光や風力などで発電した電力は、国の固定価格買い取り制度(FIT)に基づき電力会社が買い取る。自然エネルギー普及のため買い取り価格は比較的高めで、民間業者が相次いで太陽光発電などを導入している。

なかでも土地が安く日照時間が長い九州は、太陽光発電が盛んだ。九電管内の太陽光発電の出力は7月末時点で339万キロワット。九電は2020年度に600万キロワットになると見込むが、足もとではそれを上回るペースで増えている。九電のピーク需要は1500万~1700万キロワット程度で、太陽光発電の割合は今後高まる可能性が高い。【9月20日 朝日】
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この問題は、“土地が安く日照時間が長い”という地域特性ある九州で一番顕著ですが、基本的には他のエリアでも同様の問題があります。
九州以外にも、北海道、東北、四国でも認定された再生可能エネルギーの発電能力が電力消費が少ない期間の最小需要を上回っているとのことです。

****再生エネ、送電網ネック 急増に対応できず 新規契約停止****
太陽光発電などを後押しする固定価格買い取り制度(FIT)の導入から2年余り。課題が一気に噴き出した。

予想を超える太陽光の急増に、電力各社の送電網の能力が対応しきれていない。国も対策に乗り出したが、すぐに打てる手は限られ、混乱は避けられそうにない。

「電力の安定供給に支障が生じる可能性がある」
「大規模な停電になる恐れがある」

30日の経済産業省新エネルギー小委員会。北海道と九州、東北、四国、沖縄の各電力の担当者は、緊急事態であることを口々に訴えた。

沖縄を除く4社は、FITで認定した再生エネの発電能力が管内の電力需要を上回る時期があり、需給のバランスが崩れかねないことに危機感を抱く。

太陽光が急増した背景には、投資対象としての魅力がある。
買い取り価格は、普及を後押しするため費用に一定の利益が上乗せされている。事業者は高値で20年間売り続けることができ、利益を確保しやすい。風力や地熱より環境影響調査などの手続きの手間が少ないことも後押しした。

太陽光の発電量は日照時間や季節で変わる。広大な敷地を、安く確保する必要もある。条件を満たすエリアは大都市圏より地価が安い地方に集まってしまう。

だが、どこで発電をするかは事業者任せ。
経産省は、送電網の能力などに合わせて、再生エネを地域ごとに計画的に普及させる枠組みを設けず、結果的に地域の偏りをつくってしまった。
電力会社も多額の費用がかかることなどから電力会社間の送電網の増強を進めてこなかった。

FITで認定済みの設備がすべて運転を始めると、再生エネは発電電力ベースで10・7%から19・8%に上がり、政府目標の約2割を超える水準に近づくが、このままでは「絵に描いた餅」だ。

 ■容量拡大策を検討
経産省も対策に乗り出した。この日の小委では、電力会社が持つ送電網に、どこまで再生エネを受け入れられるのかを検証する作業部会の設置を決めた。メンバーには、専門知識を持った中立的な専門家5人ほどが選ばれる。

10月中に初回会合を開き、年内に電力各社の再生エネの受け入れ可能な容量を検証し、複数の案を示す方針だ。容量を超えた再生エネの電力を他電力に流して送電網の周波数を安定させる広域連携などの工夫は、すぐに効果が出るため、そうした受け入れ拡大策の効果も話し合う。

電力業界からは「抜本的な解決にはならない」との声もあがる。むしろ、FIT制度自体の見直しが必要だとの認識が広がっている。
このまま、新規契約の中断が続けば、これから申請を予定していた発電事業者とのトラブルになりかねないためだ。

九電では新規契約の中断を発表した24日から3日間で、太陽光発電を計画する業者などから「保留対象かどうか」といった問い合わせが約5900件あったという。

再生エネの買い取りに伴って利用者の負担が増えていく問題もある。
経産省は、再生エネの認定量がすべて稼働した場合、電気代に上乗せされる再生エネの賦課金は、いまの年6500億円から2兆7018億円に増え、1世帯当たりの月額負担は225円から935円になるとの試算をまとめた。

今後、こうした面からの見直し論も本格化する可能性がある。【10月1日 朝日】
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FIT見直し
問題の根幹にあるとされている固定価格買い取り制度(FIT)も見直しの方向です。

****再生エネルギー買い取り制度、年明けにも見直し****
政府は、太陽光や風力などの再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度を年明けにも見直す方針を固めた。

大規模太陽光発電所(メガソーラー)で作った電気の買い取り価格が決まる時期を、現在の「国の事業認定時」から、「事業開始時」に改める方向だ。政府は買い取り価格を年々、安くしており、価格決定時期を先に延ばす。

2014年度は、10キロ・ワット以上の太陽光発電なら1キロ・ワット時あたり約35円で、電力会社が20年間ずっと買い取る仕組みだ。買い取り価格が下がる前の年度末に認定の申し込みが増えて、利用者の負担増大につながっているため、価格を決める時期を見直す必要があると判断した。

電力会社は買い取り費用を家庭や企業の電気代に上乗せして回収している。経済産業省が30日に発表した試算によると、現状の仕組みが続けば、電気代に上乗せされる利用者の負担額は年間2・7兆円、国民1人あたりで約2万円になる。制度を見直せば将来の負担額の上昇を抑えられる。【10月1日 読売】
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太陽光発電のような再生可能エネルギーをどのように位置づけるかは、国のエネルギー戦略の基本であり、本来は民間企業の事情で買取を中断したり、変更したりするようなものでもありません。

ただ、日本の場合、原発再稼働問題に関する国民のコンセンサスがはっきりしない状態で、太陽光発電・FITの扱いもなし崩し的な感もあります。

この太陽光発電などを後押しする固定価格買い取り制度(FIT)のもたらす問題は、脱原発を進めるドイツですでに表面化しています。

おそらく、日本の電力会社や政府も、ドイツのそうした動きを念頭に置いての今回の対応でしょう。
なお、脱原発を進めるドイツでは、今年上半期の総発電量に占める再生可能エネルギーの割合が過去最高の28.5%に達しています。

****脱原発の“不都合な真実”:ドイツの実態に目を向けよ****
偏向した情報を伝える日本の報道、議論すべきは最善のエネルギーミックス

8月1日、ドイツでは、改訂版の再生可能エネルギー法(以下「再エネ法」)が施行された。

昨年12月に第3期メルケル内閣が立ち上がって以来、ガブリエル経済・エネルギー大臣が、わき目もふらずに推し進めていた改訂だった。

現在、ドイツはメルケル首相のCDU(キリスト教民主同盟)とSPD(社民党)の大連立で、SPDの党首ガブリエル大臣は、副首相、そして、経済・エネルギー大臣を務めている。言うまでもなく、再エネ法の早急な改訂は、ドイツ国にとって、危急の重大事項であった。

ドイツが再生可能エネルギー法の改訂を急いだ理由
再エネ法というのは、ドイツの脱原発の一番の要となる法律だ。なぜか? それは、この法律が、再エネ電気の“固定価格20年間全量買い取り(FIT)”を定めているからだ。

再エネ法が制定されたのは2000年。ちょうど、シュレーダー首相の下、SPDと緑の党が政権を握ったときだった。以来、この“固定価格20年間全量買い取り”によって、再エネの発電施設はどんどん増えた。

特に急増したのが太陽光発電の施設で、この14年間で、発電容量は90メガワットから3万6008メガワットと400倍に伸びた。しかし、太陽光発電の稼働率はわずか9.5%なので、実際、全体の発電量に占める割合はまだ5%弱に過ぎない。

また、風力発電も急増し、再エネは、容量だけで見れば、すでにピークの電力需要を上回る巨大施設となっている。純粋に設備を増やすという意味合いから見れば、再エネ法は偉大な功績を果たした。

ただ、今では、再エネ法の欠点も多く露出してきている。欠点が無ければ、もちろん、ガブリエル大臣がこれほど慌てて改訂に走る理由もなかった。(中略)

不都合の1つは、電気代の高騰だ。

「再エネはすでに世界の多くの地域で最もコストの安い発電方法」と言っている人がいるが、これは正確ではない。太陽や風は確かに無料だが、しかし現実には、ドイツ政府は電気代高騰を抑えるため、再エネの拡大にブレーキを掛けなければならなくなっている。(中略)

なぜ、再エネが増えて電気代が高騰したかの理由は、言うまでもなく、再エネに掛かっている“固定価格20年間全量買い取りの補助金”が膨れ上がってしまったからだ。

しかも、今までの再エネ法には施設拡大の上限もなく、いくらでも増やせた。だからこそ再エネは増えたが、しかし、安い電気代からはかけ離れたものになった。

反対に、この補助金なしでは、再エネがこれほど増えることもなかっただろう。再エネは、補助金なしで普及し、市場で競争できるところまで、まだ進化していない。

電気代高騰、滞る送電線建設、増加するCO2・・・
電気代高騰の原因は、太陽光と風力による発電が計画的に制御できないために起こる。太陽光は曇りや雨の日はもちろん、夜は絶対に発電できないし、風には凪がある。

反対に、需要がないのにたくさん電気ができてしまうこともあるが、その場合、蓄電ができない。そうなると、しかたなく捨て値、あるいは持ち出しで、隣国に買ってもらうことになる。

生産者は、電気の卸値が安くても、固定価格で全量を20年間にわたって買い取ってもらえるのでどんどん発電する。その買い取りのお金は、一般消費者の電気代に乗っている。買い取りと卸値の差額は、電気がだぶつくとますます増える。

だから、いずれにしても電気代は上がり、つまり、損をするのは一般国民ということになる。別にむずかしい話ではない。

ただ、この問題は、蓄電ができればある程度片付くはずだ。だから、現在、ドイツはその研究に余念がない。しかし、まだ、大量の電気を蓄電できる採算の取れる技術は確立していない。まもなくできる見込みもない。(中略)

法律の改訂で買い上げ値段を下げても、すでに設置されている施設に対しては既定の額を払い続けなくてはならないから、すぐに電気代は下がらない。

また、送電線の建設がほとんど捗っていないことも、日本ではあまり報じられない。
来年はいよいよ、バイエルン州のグラーフェンラインフェルトの原発が停止される予定だが、その代替となるのは、北部ドイツの風力電力ではなく、近隣の火力電気になる。というのも、北から南に電気を運ぶ送電線の建設が整っていないからだ。

原発は、その後、17年と19年にさらに1基ずつ、21年と22年に3基ずつと、あと8年ですべて停止することになっている。それまでには、再エネの生産量はもっと増えているだろうが、送電線の建設は間に合いそうにない。だから、実際に原発を代替するのは再エネではなく、火力発電になるだろう。

それを見越して、ドイツではこの2年の間に10基の石炭火力発電所が建設される予定だ。すでに今でも、経営が苦しくなってしまった電気会社は、高いガスではなく安い石炭を使っているので、CO2の排出が増えている。

褐炭(石炭よりももっと空気を汚す)の消費は、東西ドイツが統一した1990年と同じ水準まで戻ってしまった。ドイツの脱原発の進捗具合については、こういう全体図を見る必要があるのではないか。(後略)【8月20日 フォーサイト 川口マーン 惠美氏】
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ドイツの法改正は、これまでの固定価格買取の対象となる発電設備を段階的に減らし、「フィードイン・タリフ(FiT)」から「フィードイン・プレミアム(FiP)」と呼ばれる助成方式(簡単にいえば、発電事業者は電力を自ら市場で販売し、その売上に一定の助成金が上乗せされるシステム)に近づけていくというものです。

その評価については、上記記事とは異なる評価もあります。

【「自然エネルギーつぶし」の批判も
また、日本の固定価格買い取り制度(FIT)見直しについては、電力会社・政府の“原発再稼働ありき”の発想に基づく「自然エネルギーつぶし」ではないかとの批判もあります。

****原発偏重 安倍政権下で進む自然エネルギー“つぶし*****
原発再稼働へ向けて、なりふり構わず突き進む安倍政権。経済産業省、電力会社と一体となった「原子力ムラ」連合にとって、太陽光などの再生可能エネルギーは“邪魔者”に過ぎないようだ。

ジャーナリストの桐島瞬の取材で、固定価格買い取り制度(FIT)の見直し論の裏に、「自然エネルギーつぶし」の思惑が浮かび上がってきた──。

太陽光発電は、二酸化炭素排出を減らすため、09年から余剰電力買い取り制度(12年からFITに移行)の名前で電力会社による購入が行われてきた。

当初の買い取り価格は1キロワット時当たり最高48円。現在は最高で37円まで下がったが、太陽光発電が急激に拡大したのはこの制度のおかげだ。

だが、「さらなる電気料金の値上げにつながる」と経済界から見直しを求める声が上がり、経産省は総量規制の導入などを検討しているという。

「買い取る上限を設け、一定量を超えた場合に自由に価格を決められるようになりそうだが、太陽光発電には特に厳しい制限が設けられる見込みです。枠を超えた部分は価格を大幅に引き下げたり、1年に何度も価格改定できるようにすることも検討される」(経産省関係者)

だが、今の時点の総量規制は技術革新を鈍らせると、自然エネルギー財団の大林ミカ氏は言う。
「日本の1キロワット時当たりの買い取り価格が高いのは事実ですが、送電設備の整備が進み、運転開始できていない人たちが市場に参入してくれば、コスト低下も促します。事実、ドイツでは、すでに大規模発電の太陽光で13円まで下がっています」

さらに大林氏は、このタイミングで総量規制の導入論が出ていることについてこう語る。

「初めから落としどころを決めて議論を進めようとしているのではないかと懸念しています。その証拠に、政府の検討委員会では総量規制という議論は出ていないのです」

前出の環境エネルギー政策研究所の飯田哲也氏も言う。

「毎年の市場規模を安定化させるための総量規制であれば良いが、全体の枠を決めるものであれば許されません。もしそうなら原発の再稼働が前提にあると言えるでしょう。大体、電力会社が送電線を持ち、発電をし、売電もする現状では市場原理が働いていない。そこが価格を決めるとしたらおかしな話です」【7月31日 dot】
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再生可能エネルギーにどう対応するかは、原発にどう対応するかということと表裏の関係にもあります。

米クリントン政権時代の副大統領で、気候変動問題への貢献で2007年のノーベル平和賞を受賞したアル・ゴア氏は、朝日新聞のインタビューで原発について以下のように語っています。

「個人的には、原子炉を安全に制御し、使用済み燃料も安全に保管できるようになると信じている。しかし、最大の問題は年々増え続けるコストだ。一方、太陽光発電のコストは下がっている。この先も原発は一定の役割を果たすと思うが、熱狂的な支持者が信じるよりも小さな役割にとどまるはずだ。」【10月1日 朝日】

私個人の考えとしては、原発に関して巨大噴火を持ち出すような安全性議論はややリスクに関する常識的なバランスを欠いているような違和感を感じます。

ただ、使用済み燃料をどうするのかは、特に日本のような世界有数の地震国では難しい問題です。
コスト的にも、そうした膨大な使用済み燃料の保管費用、廃炉費用を考えて検討すべきでしょう。

そのうえで、再生可能エネルギーも重要なエネるギーミックスのひとつであり、せっかく大きくなりかけている芽をつぶさないような、うまく育て活用する方策が望まれます。送電網にしても電力会社の姿勢の問題もあるでしょう。

原発も、再生可能エネルギーもという“いいとこ取り”では答えにならないでしょうが。
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ドイツ 問題も多い「脱原発」政策  「老朽火力」への依存が進む日本 「原発再稼働を進める」白書

2014-06-17 23:26:42 | 原発

(ドイツ東部ブランデンブルク州に広がる褐炭の採掘場=2014年4月9日、篠田航一撮影 【6月17日 毎日】)

【「パラドックス(逆説)だ。結局、褐炭という過去の資源の犠牲になってしまう」】
ドイツでは、福島第1原発事故を受けて国内17基の全原発を22年までに順次停止する「脱原発」を決定しており、再生可能エネルギーの比率を高めていることは周知のところです。

「脱原発」という安全を重視したエネルギー政策の一方で、環境に負荷がかかる石炭・褐炭への依存の高まり、再生可能エネルギーの安定性確保の難しさ、電気料金の高騰といった問題を抱えていることも指摘されています。

****ドイツ:脱原発…進む石炭依存 電気代1.7倍に****
 ◇閣議決定から3年 再生エネ普及、安定送電に影
2011年の東京電力福島第1原発事故を受け、ドイツが22年までに国内17基の全原発を順次停止する「脱原発」を閣議決定してから、今年6月で3年になる。

風力や太陽光発電など再生可能エネルギーの割合は順調に伸びているが、原発停止に伴う電力の供給源確保には不安も残る。

温室効果ガスを排出する石炭や褐炭(水分や不純物が多く低品質の石炭)への依存度はむしろ高まっており、電力供給の不安定化など多くの課題も表面化している。(中略)

ドイツは2013年、総発電量のほぼ4分の1に当たる23.9%を再生エネでまかなった。だが、再生エネは気象条件に左右されやすいため、安定確保が見込める石炭・褐炭への依存も進む。

13年の石炭・褐炭の割合は45.2%と3年連続で上昇。褐炭のみを使った電力生産量も13年は1620億キロワット時に上り、91年以来最大となった。

 ◇削減目標黄信号
だが、石炭・褐炭の活用が進めば、温室効果ガスを90年比で2020年までに40%削減するとの政府目標に黄信号がともる。

野党・緑の党や環境団体は石炭・褐炭の削減を求めるが、「45%もの電源を放棄できない。むしろもっと活用すべきだ」(欧州連合エネルギー担当のエッティンガー欧州委員)との意見も根強い。

加えて、天然ガスに頼れない事情も浮上している。ドイツはガス輸入の約4割をロシアに依存するが、ウクライナ危機の影響で今後は対露依存度を下げる方針。

このため、石炭・褐炭は「消せない選択肢」(独商工会議所幹部)なのだ。ドイツの火力発電所は現在、温室効果ガスの排出を抑制する最新技術の導入などに取り組むが、政府は石炭・褐炭を「当面は不可欠」(与党の連立協定書)と位置付けている。

 ◇「強風は要注意」
再生エネの普及に伴い、送電会社の負担も増えている。発電が天候に左右される分、需給調整に気を配る必要があるからだ。(中略)

センターは、風が弱く風力発電が難しい日には管内の石炭火力発電所などに連絡し、発電ペースを上げてもらう。逆に強風で電力を過剰に生産すると、今度は「発電ストップ」も依頼する。ケーブルに過度な負担がかかり、停電の恐れが高まるためだ。(中略)

12年、発電の増減を依頼した回数は過去最多の年間262日に上った。脱原発決定前年の10年は年間160日だった。職員の負担は増える一方という。(中略)

 ◇地域差も課題に
送電網の整備も遅々として進んでいない。政府は22年までに、風力に恵まれた北部から産業拠点が集中する南部まで、計約2800キロの送電線を整備する計画だ。

だが、大消費地の南部バイエルン州では、自然破壊や健康被害への懸念から高圧送電線建設の反対運動が起き、ゼーホーファー州首相が「建設阻止に全力を挙げる」と建設予定地の住民に約束。同氏はメルケル政権を支える連立与党の実力者のため、「バイエルンの反乱」などと騒がれている。

反対運動はドイツ各地で展開されている。住民側は主に送電線の地下埋設を求めているが、電力会社側はコストの増大を理由に拒否。工事は年間数十キロしか進まず、このままでは22年の脱原発に間に合わない計算だ。

ドイツ経済研究所のクラウディア・ケンフェルト教授は「ドイツ北部は褐炭や風力発電が過剰だが、西部は再生エネが少ない。南部は太陽光は多いが風力が足りない。ドイツの地図を見れば、(エネルギーの需給バランスは)見事にバラバラ」と現状を説明する。

地域差を是正する送電網の整備が急務だ。再生エネ普及のコストは電気代に上乗せされるため、消費者の負担も増加している。標準世帯(3人家族)の電気料金は03年に月額平均50.1ユーロ(約7000円)だったが、10年後の13年には83.8ユーロ(約1万1800円)と約1.7倍に上昇した。

メルケル政権は電気代の上昇抑制策にも頭を悩ませている。【5月10日 毎日】
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13年現在の総発電量に占めるエネルギー別発電割合は▽石炭・褐炭45.2%▽再生可能エネルギー(風力、太陽光など)23.9%▽原子力15.4%となっています。

福島第1原発事故後、原子力の割合が約2ポイント減ったとのことですが、逆に言えば、まだ2ポイントしか減っておらず、今後ゼロに持って行く過程で、前出のような問題が一層深刻になってくることも想像されます。

石炭・褐炭への依存の高まりについては、褐炭採掘場拡張のために多くの住民が立ち退きを迫られ、太陽光発電施設も撤去される・・・という事態も起きています。

****ドイツ:脱原発で「褐炭依存」 低品質−「過去の資源」 採掘場拡張、800人退去対象****
「脱原発」を決めたドイツで、原子力分の穴埋め用エネルギー源として地球温暖化の一因とされる二酸化炭素(CO2)を排出する石炭や褐炭(水分や不純物が多く低品質の石炭)への依存が進んでいる。

急速な再生エネへの転換は難しく、当面は旧来のエネルギー源に頼らざるを得ないためで、褐炭の採掘場拡張のため住人が立ち退きを迫られるなど矛盾も表面化している。

「パラドックス(逆説)だ。私たちは再生エネを成功させようと努力してきたのに、結局、褐炭という過去の資源の犠牲になってしまう」。東部ブランデンブルク州ウェルツォウで、太陽光発電会社を経営するハーゲン・レッシュさん(35)は憤りを隠さない。

地元住民約5000人に太陽光による電力を供給してきたレッシュさんが所有する発電施設は、褐炭採掘のため立ち退きを迫られるからだ。

ドイツは2022年までに国内17基の全原発を停止する。政府は停止する原発分を補完するため太陽光・風力などの再生可能エネルギーの普及を進めているが、急速なエネルギー転換は進んでいない。

州政府は今月3日、電力会社が計画する26年以降の採掘場拡張案を認可。火力発電用に約2000ヘクタールが新たに採掘場として拡張される。

レッシュさんの発電施設のほか、近くの住民約800人が立ち退き対象となった。住民側は反発を強めており提訴も視野に入れている。

同州では、旧東独の社会主義政党の流れをくむ左派党が連立政権の一角を担う。
本来、左派党の党本部はCO2削減を訴える立場だが、褐炭が基幹産業の同州では、褐炭活用に賛成の姿勢を見せる。同党のクリストファーズ州経済相は「褐炭は放棄できない」と州政府の意向を強調する。

ドイツでは1990年代、石炭・褐炭は、総発電量に占めるエネルギー源の60%近くを占めた。その後、徐々に依存を減らし、10年には約41%まで下がった。

だが11年の福島第1原発の事故後、再び割合が増え、13年は約45%まで上昇した。
再生エネは現在、約24%にとどまっており、メルケル政権は石炭・褐炭を「当面は不可欠」(与党の連立協定書)と位置付けている。【6月17日 毎日】
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【「いかなる事情よりも安全性を全てに優先させる前提」のもと・・・・
「脱原発」状態にある日本でも、老朽化した火力発電所に依存する状態となっています。

****40年超「老朽火力」26%、原発再稼働を推進 25年度エネ白書****
政府は17日、平成25年度版のエネルギー白書を閣議決定した。

原子力発電所を持たない沖縄電力を除く大手電力9社の火力発電所のうち、運転開始から40年以上経過した「老朽火力」が25年度に火力全体の4分の1を超えたと指摘。

東日本大震災後に原発の代替電源として老朽火力に頼っている現状が改めて浮き彫りになった形で、燃料コストや二酸化炭素排出量の増加、トラブルによる供給不足などを懸念した。(中略)

大手電力9社の老朽火力のトラブルは25年度に169件と、22年度の101件から増えた。火力発電所の耐用年数は40年程度とされており、低効率の老朽火力をフル稼働することにより、トラブルのリスクが高まっている。

白書では「故障などによる電力供給不足に陥る懸念が依然として残っている」と警戒を示した。

一方、原発については「エネルギー需給構造の安定性に寄与する重要なベースロード電源」と、4月に閣議決定したエネルギー基本計画で定めた位置づけを強調。

その上で、原子力規制委員会が規制基準に適合すると認めれば「再稼働を進める」との方針を改めて明記した。

白書では、電力・ガス事業の制度見直しや、次世代エネルギー資源「メタンハイドレート」の開発状況、米国やカナダの新型天然ガス「シェールガス」の輸入に向けた取り組みなどについても説明した。【6月17日 産経】
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また、同白書は、原発の運転停止で火力発電所をフル稼働させていることや燃料価格が上昇によって、“液化天然ガス(LNG)などの燃料輸入額が13年に約27兆円に達し、東日本大震災前の10年(約17兆円)と比べて約10兆円増えた”【6月17日 読売】ことも指摘しています。

更に、“原発停止により全国の電力会社が出す温室効果ガスが10年度から2年間で約30%増えたことで、日本全体でも約8%増加した”【同上】とも。

そのうえでエネルギー白書は、“「いかなる事情よりも安全性を全てに優先させる前提」のもと、原発の再稼働を進める方針”を強調しています。

実を言えば、私が住んでいる鹿児島県薩摩川内市は全国でもトップを切って再稼働が予想されている原発を抱えています。
毎週金曜日の夕方になると、自宅近くの九州電力支社の前で行われる抗議行動の「再稼働反対!」のシュプレヒコールが聞こえてきます。

大規模自然災害などでいったん暴走し始めたら、それを食い止める有効な手立てがない原発を使用することの問題に反論することは難しいものがありますが、正直なところ「そうそう大規模自然災害が起きるものでもあるまいし・・・。福島の経験で少しは対応・対策もましになるだろうし・・・。危険性云々を言えば、世の中のものすべてがリスクを伴うもので、そうしたリスクを“無視”することで皆が普通に生活しているのが現実ではないか・・・確率的にはリスクはむしろ低い原発だけをことさらに言い立てるのはいかがなものか・・・」という感もあります。

火山の巨大噴火云々に至っては、「そんなこと言い出したら、原発の話は別にしても、鹿児島で生活している人間はどうしろと言うのか?」という感も。

安全性よりは、放射性廃棄物の最終処分方法が確立しなまま原発を使用することの問題の方が気になります。

【「潜在的核保有国」であることを目指す日本の“秘めたる国策”】
核燃料サイクルが機能しない現状で、増え続けるプルトニウム、実用化できない高速増殖炉は日本にとって厄介ものにも思えますが、「潜在的核保有国」であることを目指す日本の“秘めたる国策”“裏の国策”に関係するとの指摘もあります。

****潜在的核保有国・日本」への不信 オバマが安倍から「核」取り上げた****
ギリシャ神話の「地獄の神」プルート。その名を冠したプルトニウムは核爆弾の原料である。

危険極まりないこの核物質は日米の間で「同盟の証」だった。米国は日本にプルトニウムや高濃縮ウランを与え、原子力開発に使わせていた。今になって米国は「引き渡せ」と迫る。一連の交渉に安倍政権への不信が滲む。

安倍首相が引き渡しを表明
オランダ・ハーグで開かれた核安全保障サミットで安倍首相は、茨城県東海村で研究用に使っていたプルトニウム・高濃縮ウランを米国に引き渡すことを表明した。

「テロリストに渡る危険性」を危ぶむ米国の要請とされるが、厳重な管理なら日本でも可能である。米国はそれを許さず、「米国へ移送」にこだわった。

日本は信用できない、と言わんばかりの強い姿勢は、安倍首相が進める「戦後レジームからの脱却」と無関係でなさそうだ。

原子力平和利用を口実に「潜在的核保有国」でありたいとする日本への冷めた眼差しが、親密な日米関係の象徴だった「核物質」を日本から運び出す決断となった。(中略)

日本の秘めた国策
核の扱いは日米間で微妙な問題となっている。日本は「平和利用のための研究に欠かせない」と手元に置く必要性を主張。米国は「テロリストへの流出」を理由に引き渡しを迫るというやり取りだが、いずれも表向きの議論である。

裏に日本は「いつでも核武装できる体制をとることで潜在的核武装国としての地位を確保する」という秘めたる国策がある。(中略)

安倍首相の登場で揺らぐ前提
技術や核管理の根幹は米国が握り、商業生産の現場で日本が力を発揮するという協力関係を築くことで、日米原子力体制は維持されてきた。協力関係といっても「米国が主導権を握り日本が従う」という構図である。

安倍首相の登場で、この前提が微妙になっている。
「ホワイトハウスは安倍に違和感を持っている。これまでの日本の首相と違うキャラクターだと。中曽根もナショナリストではあったが、日米関係の重要性を理解していた。戦後レジームからの脱却という言葉が好きな安倍は少し違う」(中略)

高速増殖炉「もんじゅ」存続の狙い
心情とは異なっても政治家・安倍晋三は妥協せざるを得なかった。だが、これで日本が潜在的核保有国を諦めたわけではない。(中略)

「事故ばかり起こしている『もんじゅ』に政府があれほどこだわるのは、一度でも動かせば核兵器に使える高純度の核物質が手に入るからです」(中略)

今回のエネルギー基本計画で「もんじゅ」は見直され、商業運転を事実上放棄することになった。「核物質の減容化・無害化」を目指す実験炉にする、という方針の変更がなされたが、裏の狙いは「兵器に転用できる高純度核物質の取り出し」にあると小出助教は指摘する。(中略)

「IAEAの査察で最重点に置かれているのが日本です。用途が定かでないプルトニウムや高濃縮ウランをこれほど大量に保有いている国はないからです。兵器転用が疑われているということです」(後略)【3月27日 DIAMOND online】
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“さもありなん”という感もありますが、こうした話が本当なら、突然に「脱原発」を言い出した小泉元首相の背後には・・・・という話にもなります。
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脱原発の道に山積する難題  廃炉、代替エネルギーの確保、コスト問題など

2013-08-25 22:45:50 | 原発

(“米オレゴン州レーニアのコロンビア川沿いにあるトロージャン原発の冷却塔(高さ151メートル)が解体される瞬間。大規模な商業用原発としては米国で初めて廃炉となった。同原発はオレゴン州の電力会社ポートランド・ゼネラル・エレクトリックが建設した(2006年05月21日)”【AFP=時事】(http://www.jiji.com/jc/d4?p=gen300&d=d4_quake&rel=y&g=int) 冷却塔ならこんな大胆な方法でいいのでしょう。日本なら問題もおきそうですが。)

廃炉:初めて経験することが多く、手探りの作業
脱原発か原発再稼働か・・・難しい選択ですが、脱原発には「原発は危ないから・・・」という漠然とした雰囲気・気分ではなく、高度な技術、膨大な資金、そして何よりも多少のリスク・負担はいとわない固い覚悟・国民的合意が必要です。

先ず、現在存在する原発施設の廃炉が必要ですが、想像以上に難しい作業のようです。
イギリスの事例では、1基廃炉するのに90年を要するとか。建設するより難しそうです。

****英国:原発「解体先進国」 稼働26年、廃炉に90年****
世界で最も廃炉作業が進む原子力発電所の一つ、英ウェールズ地方のトロースフィニッド発電所(出力23.5万キロワット、炭酸ガス冷却炉、2基)の作業現場に入った。

1993年の作業開始から20年。責任者は「既に99%の放射性物質を除去した」と説明するが、施設を完全に解体し終えるまでになお70年の歳月を要する。
「想像以上に時間とコストのかかる作業」(作業責任者)を目の当たりにし、日本が今後、直面する道の険しさを思い知らされた。(中略)

65年に運転を開始し、91年に停止した。
原子炉の使用済み核燃料(燃料棒)は95年に取り出されたが、圧力容器周辺や中間貯蔵施設内の低レベル放射性物質の放射線量は依然高い。

このため2026年にいったん作業を中断し、放射線量が下がるのを待って73年に廃棄物の最終処分など廃炉作業の最終段階に着手する。
「初期に建設された原発は将来の廃炉を想定して設計されていない。初めて経験することが多く、手探りの作業だ」とベルショー計画部長は語る。

原子炉建屋に隣接する放射性汚染水浄化装置(長さ33メートル、幅5メートル、高さ6メートル)では除染作業が行われていた。燃料棒冷却や除染作業で発生した汚染水はすでに抜かれている。別室から遠隔操作する工作機(重量5トン)3機が装置内部の汚染された壁をゆっくりと削り取っていく。

被ばくの危険があるため作業員が内部で作業できるのは短時間で、多くは遠隔操作になる。回収された放射性物質は密封され、敷地内の中間貯蔵施設に運び込まれていった。

廃炉作業には稼働時を上回る約800人が携わる。第1段階だけでも30年以上にわたる作業のため、稼働停止後、敷地内に新たにレクリエーション施設なども設けられた。作業の中断、再開を経て全施設が撤去されるのは2083年。廃炉には稼働期間(26年間)よりもはるかに長い時間がかかるのが現実だ。

この発電所は小規模で、稼働中に大きな事故もなく停止後速やかに廃炉作業に移ることができた。それでも廃炉に90年を要し、総費用は約6億ポンド(約900億円)になる。

フィリップス安全担当部長は、事故の処理も終わっていない福島第1原発の廃炉作業について「ここに比べて作業員が動ける範囲が限定されるため、ロボットを多用することになるだろう。想像できないほど困難な作業になるのは間違いない」と話した。【8月19日 毎日】
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初期の原発は、解体を前提とした構造になっていない、古いものは設計図さえ残っていない(!)といった事情で、解体作業が非常に難しいようです。

ましてや、福島のような事故を起こした施設の処理は、いまだ方法も、要する時間・費用もわからないというところでしょう。

容易に廃炉できないというのは、解決策を模索している廃棄物処理の問題と同様に、原発技術が未完成のものであることの証でもあります。

ただ、廃棄物処理については“どの地域の住民がリスクを負担するのか”という、解決策を見いだせない難題があるのに比べれば、廃炉は今後の経験で技術が進歩することも見込めるところがあります。

世界的には、ドイツのような脱原発を進める国もありますが、流れとしては新興国を中心に今後ますます多くの原発が建設・計画されています。

そうした原発推進の国々においても、古い原発施設は一定の年月が経過すれば更新・廃炉が必要になるでしょうから、廃炉技術は早急に確立される必要があるのと同時に、膨大な需要が見込める技術とも言えます。

もし日本が脱原発を進め、本気で廃炉に取り組むのであれば、その過程で蓄積さる廃炉技術は、原発建設技術同様に、世界市場に提供しうる“成長戦略”のひとつにもなるのではないでしょうか。

【「世界がドイツを見ている」】
脱原発で減少するエネルギーをどういう形で補うか、安定的に供給できるのか、コスト的に負担が増えないのか・・・という問題も出てきます。

脱原発を進めるドイツは、“チェルノブイリ原発事故などの影響を受け、2000年に中道左派のシュレーダー政権が20年ごろまでの原発全廃を決めた。これに対し、09年の総選挙で勝利した中道右派のメルケル政権は運転延長を決定。しかし、福島第一原発事故後の11年6月、「脱原発」にかじを切った。”【8月25日 朝日】という経緯があります。

現在、強い脱原発の国民的合意で自然エネルギーを推進していますが、それでも電気代に跳ね返るコストの問題は議論を呼んでいます。

****独、ブレない脱原発 総選挙、与野党とも自然エネ推進 課題は膨らむ電気代****
東京電力福島第一原発の事故を受け、「原発ゼロ」を目指す方針を決めたドイツ。再稼働に向けて動き出した日本とは対照的に、9月の総選挙ではこの目標に争いはなく、与野党ともに自然エネルギーの推進を訴えている。ただ、自然エネの普及に伴って電気料金は値上がりが続いており、対策に苦労している。

ドイツは福島事故後に超党派で「脱原発」を決めた。事故前に17基あった原発のうち8基を閉鎖し、残る9基を2022年までに順次閉鎖。自然エネルギーによる電力の比率を20年までに35%、30年までに50%へ増やす目標を立てた。

自然エネは想定以上のペースで拡大し、事故前の10年に電力の22・4%をまかなっていた原子力の比率は12年に16・1%まで低下。一方、自然エネは16・4%から22・1%まで増えた。
懸念された電力不足も起きず、天気の良い時には自然エネの発電量が火力や原子力などの総発電量を上回る日も出てきた。

メルケル首相は7月、「エネルギー政策の目標を達成できると確信している」と、脱原発の方針を確認。9月22日にある選挙の公約でも、最大与党のキリスト教民主同盟(CDU)が「強い決意でエネルギー政策の大転換を前進させる」、最大野党の社会民主党(SPD)も「世界がドイツを見ている。エネルギー政策の大転換が成功すれば、中国のような新興国にとっても成長モデルとなる」と方向は一致している。(中略)

 ■買い取り制度、見直し策争点
ただ、課題は山積している。最大の問題は電気料金値上がりだ。平均家庭の電気料金は月69・10ユーロ(10年)から83・80ユーロ(13年)へと2千円近く増えた。自然エネの普及を促すための固定価格買い取り制度による、電気料金への上乗せ分が増え続けているためだ。

そのため、メルケル政権のアルトマイヤー環境相(CDU)が買い取り価格の大幅削減を訴えるなど、制度の見直しが議論に上っている。だが、自然エネの普及ペースを減速させる可能性があり、野党は反対している。

SPDは、電気にかかる税金の減税を主張。野党・緑の党は、メルケル政権が進めた固定価格買い取り制度の大企業への優遇拡大をやめ、一般家庭の値上げを抑えるべきだと主張している。現状では、年1ギガワット時以上使う企業の電気料金への上乗せ分は家庭の10%以下に優遇されている。【8月25日 朝日】
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断ち切れない石炭依存
ドイツの場合、原子力エネルギーにかえて自然エネルギーを推進してはいますが、一方で、石炭火力発電所稼働も増加し、2012年の総電力にしめるエネルギー源の内訳でみると、原子力:16.1%、再生可能エネルギー22.1%に対し、石炭:44.8%と、CO2排出で問題が多い石炭に依存する形にもなっています。

****ドイツ:脱原発 増えるCO2 メルケル政権ジレンマ****
・・・2011年3月の東京電力福島第1原発の事故後、22年までの段階的な「脱原発」を決めたドイツ。
発電量に占める原子力の割合は減り、逆に風力や太陽光など再生可能エネルギーの割合が増えている。

だが原発を減らす分の「穴埋め」として、地球温暖化の原因とされるCO2排出増加につながる石炭依存が進むのも事実だ。
欧州連合(EU)によると昨年、加盟27カ国(当時)中23カ国が前年比でCO2排出量を減らしたのに対し、ドイツは逆に約640万トンの増加だった。

国際会議などでアンゲラ・メルケル首相(59)は世界的な「CO2削減」を訴えるが、ドイツ自身が石炭依存を断ち切れない。
米国で新型天然ガス「シェールガス」の生産が拡大していることなどから石炭価格は世界的に下落傾向にあり、「安く買える」利便性も背景にある。

9月22日の連邦議会選(総選挙)では、脱原発に伴うこうした矛盾解消も争点の一つ。特に熱心に対策の必要性を訴えているのが環境政党・緑の党だ。

シュレーダー政権(1998〜2005年)で緑の党は社会民主党と連立与党を組み、02年の脱原発法制化を実現させた実績がある。
ドイツはその後メルケル政権が一度は原発延長に転じたが、福島事故後に再び脱原発に落ち着いた。

だが皮肉なことに、脱原発決定後は緑の党の「存在意義」が有権者に見えにくくなった側面もある。
福島事故直後の11年4月の世論調査で一時28%まで上昇した緑の党の支持率は現在、14%前後止まり。
そこで今、公約に掲げるのが30年までの電源における「脱・石炭」だ。

「野心的だが、再生エネルギーのダイナミックな増加率を見れば可能な案だ。(全発電量に占める)再生エネの割合は数年前はわずか10%台だったが、昨年は25%近くまで上昇している。やがては石炭に代わることができる」。緑の党で環境政策に携わるベルベル・ヘーン議員(61)は、再生エネ普及のペースを上げることで石炭の代替は実現可能と分析する。

一方、メルケル首相率いるキリスト教民主・社会同盟は、選挙公約で石炭削減には踏み込んでいない。「再生エネの不安定性を埋め合わせるため、近代的で効率の良い石炭・ガス発電所は必要」と指摘し、急激な再生エネへの移行を避け、今後も石炭を使う立場だ。

「エネルギー転換は長期戦だ」。ベルリン自由大学のルッツ・メッツ博士(エネルギー政策)は話す。「最近の議論は発電ばかりに目を奪われがちだが、ドイツでは暖房と給湯がエネルギー消費の大部分を占める。まずはこの消費をいかに抑えるか。長期的な省エネやエネルギー効率化が重要だ」

電気料金の高騰や送電網の未整備など多くの課題に直面するドイツ。11年の脱原発決定以降、初となる国政選挙には「長期戦」となるエネルギー政策の次の一手がかかっている。【8月24日 毎日】
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【「市民送電線」】
ドイツが目標通りに自然エネルギーを伸ばすには、風力に適した海岸地帯などから大都市や産業地帯へ送電網を強化する必要があります。
そこで、送電事業者が建設費の一部を予定路線の近くに住む市民からの投資でまかなおうとする試みも行われています。

しかし、電磁波の健康への影響や景観破壊を懸念する市民の反対運動も起きています。

****風力送電網の投資巡り賛否****
・・・・送電事業者テネットは、シュレスビヒホルシュタイン州西海岸を走る新たな送電線約150キロの建設費の一部を、予定路線の近くに住む市民からの投資でまかなおうとしている。

沿線の両側5キロ以内の住民が同社の社債に1万ユーロ(約130万円)まで投資できる。約束された利回りは年3~5%。通常の銀行預金に比べればかなりの高利だ。(中略)

だが、巨大な送電線や鉄塔には、電磁波の健康への影響や景観破壊を懸念する市民の反対運動が各地で起き、建設は遅れている。

「市民送電線」とテネット社が呼ぶ試みは、住民にとって迷惑施設の送電線から利益を提供することで反対を少しでも和らげる狙いだ。ドイツ政府もこの初めての取り組みを「試験的プロジェクト」として注目している。

しかし、狙い通りに行くかどうかは不透明だ。「テネットは住民の賛同を金で買おうとしているが、私たちは自分を売るつもりはない」。フーズム郊外の17世紀の建物でレストランを営むユルゲン・レックさん(56)は送電線の必要性は認めつつも、観光や渡り鳥への悪影響を懸念している。正式に建設が決まれば、裁判を起こすつもりだ。【8月25日 朝日】
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脱原発は容易ではありません。繰り返しになりますが、多少のリスク・負担はいとわない固い覚悟・国民的合意が必要です。
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原発関連の住民反対運動に、中国は即決で建設中止、インドは稼働を強行

2013-07-14 22:13:15 | 原発

(インド、クダンクラム原発稼働に反対する住民運動 “flickr”より By News Agency http://www.flickr.com/photos/44858852@N04/8413968544/in/photolist-dPvMHb

中国:住民反対で異例の建設中止
原発を推進する新興国、中国とインドで、原発施設建設を巡る住民運動と政府の対応に関する話題が2件。

先ず、中国の方は、住民の建設反対運動を受けて、異例の建設中止の判断が下されたというものです。

****核燃工場建設を中止 中国当局「デモの意見、尊重*****
中国広東省の鶴山市で計画中だった原子力発電用の核燃料製造工場の建設が、住民の反対デモを受け、中止になった。市政府が13日発表した。原子力関連の計画が住民の反対で変更されるのは、中国では極めて異例だ。

工場はウラン精製から核燃料ペレット製造まで行い、370億元(約6千億円)が投資される予定だった。中国政府が直接管理する企業グループ「中国核工業集団」が選考を進め、同市が他省の候補地と競争の末に誘致。用地として229万平方メートルを準備した。

市政府は今年3月に計画の概要を公表していたが、「クリーンエネルギーの工業地」としか説明していなかった。今月3日になって核燃料の製造を公表し、意見公募を始めたところ、事故による放射能汚染を恐れる住民の反対が強まった。

12日には建設反対デモがあり、千人近くの市民らが参加。横断幕を掲げて車道を歩いた後、鶴山市を管轄する江門市の政府庁舎前で抗議の声を上げたり、国歌を歌ったりした。参加者によると警察官が数百人出動し、庁舎前を柵で囲んで警備したが、衝突はなかった。横断幕には「反核」「原発は未来を絞め殺す」などと書かれていた。

鶴山市政府は発表の中で「意見公募で社会各界の反対が多かった。デモの意見も十分尊重し、計画立ち上げを(企業に)申請させないと決めた」と説明。市民の反核運動が中止の判断に影響したことを認めた。

中国では環境意識の高まりから、工場建設に反対するデモが頻発しており、昨年は四川省什ホウの金属精錬工場や浙江省寧波の石油化学工場が建設中止に追い込まれた。核関連施設を巡っては、東京電力福島第一原発事故が報道された影響などから、住民の懸念はより一層強かったようだ。

中国政府は原発建設を推進しており、現在8カ所で稼働中。建設中や計画中のものは35カ所にのぼる。建設中止で、今後の原発政策に影響がでる可能性もある。【7月14日 朝日】
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“鶴山市は突然、この計画を発表し、4~13日の予定で住民からの意見募集を実施。しかし、地元住民から反対意見が噴出し、12日に江門市政府前で1000人以上のデモが行われたため、意見募集期間が10日間延長されていた。”【7月13日 時事】というものですが、市当局の中止発表後も、これを信用しない住民の抗議デモが続いたようです。

****3日連続で核燃反対デモ=当局の中止発表信用せず―中国****
13日に核燃料加工場の建設計画取り消しが発表された中国広東省江門市で14日、当局の発表を信用しない市民数百人が再び反対デモを行った。香港のラジオが伝えた。デモは3日連続。

デモ隊は市政府前で「団結は力だ」などと叫び、建設中止を明確にし、別の名目で同様の施設を建設しないよう要求した。これに対して、市共産党委員会の劉海書記が現場で対応、「建設計画は完全に取り消した」と明言したことから、デモ隊は解散した。【7月14日 時事】
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なお、“人口が多い中国東南地方の沿海部でこの種の施設の建設は初めてだった。建設地はマカオから100キロ、香港から120キロに位置し、両地区でも懸念の声が出ていた。”【7月13日 時事】とのことです。

インド 「人々の幸福のために建てられた」 稼働強行
一方、インドでは長年の住民による反対運動で反原発運動の象徴ともなっていた大規模原発について、その稼働が原子力規制委員会によって許可されたとのことです。

****新原発、数日中に稼働か=当初予定から6年、反発必至―インド****
インド原子力規制委員会は12日までに、南部タミルナド州にあるクダンクラム原子力発電所の稼働を許可した。当初の予定から約6年、運転開始が延期され続けてきた原発だが、数日中に運転が始まる可能性が高まった。しかし、環境や生活への影響を懸念する住民や活動家から強い反発を受けるのは必至だ。

地元政治家は時事通信の取材に、加圧水型のクダンクラム原発1号機(1000メガワット)の稼働に関し、規制委から報告を受けたことを認めた。一方、運転開始日時については「まだ聞いていない」としつつも、「早ければ2、3日中に始まるだろう」と語った。

クダンクラム原発は1988年、旧ソ連の支援で建設されることが決まったが、ソ連崩壊に伴う政治的混乱を受け、実際には2002年に着工された。
1号機は07年12月の稼働開始が予定されていたが、住民や活動家の激しい反対運動に遭った上、安全面での欠陥が指摘されるなどして延期された。【7月12日 時事】
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これに先立つ5月6日には、インド最高裁がクダンクラム原子力発電所の試運転を許可しましたが、その際最高裁は同原発について、「人々の幸福のために建てられた」ものであり、「政府は必要な手順を踏んている。原発の開発はインドにとって重要だ。われわれはより大きな利益と経済的必要性の間で、バランスを取らなければならない」と述べています。【5月6日 AFP】
建設地クダンクラムは、インド有数の巡礼地でもあるインド亜大陸最南端カニャクマリから北東へ24kmほど行った場所です。

反対運動の経緯は下記のとおりですが、これまでもインドの原発施設ではたびたび事故が発生していること、建設地は2004年のスマトラ島沖地震に伴うインド洋大津波の被災地であり、近くのマドラス原発では、その際冷却用の取水ポンプが津波で使用不能となる事故を起こしていることなどから、死者を出すほどに反対運動が激しいことにも理由があります。

****反対運動の経緯*****
計画当初から反対運動は行われていたが、2001年に地元出身の元大学教授ウダヤ・クマール氏らによるNGO団体、PMANE(People's Movement Against Nuclear Energy)が設立されることにより更に活性化した。

特に2011年の福島第一原子力発電所事故以降に1号機が試験運転を行ったことでより多くの住民が運動に参加した。8月以降連日1万人以上が参加し、津波と地震に対する安全性評価や、環境影響評価の開示などを求めて、集会、デモ行進、女性たちの道路封鎖、無期限ハンストなどが行われた。

9月22日、ジャヤラリター州首相は「住民の合意があるまで稼働させない」と表明し、シン首相に原発稼働断念を求めた。

しかし、2012年3月19日州首相は方向転換を発表し、稼働を許可、原発周辺地域を武装警官隊で封鎖し、物資の搬入を禁止、メディアの報道規制も行われた上、PMANE幹部への逮捕状を出した。23日にはデモなどを行った住民665人が逮捕された。

その後、高等裁判所が「封鎖解除、物資搬入許可」の緊急判決を下し封鎖は解除されたが、抗議行動は続けられた。
(中略)
2012年9月10日には約1,000人が参加したデモ隊に警官隊が発砲、1人が死亡、9月16日には約200人が警察に拘束されるなど弾圧が強まる中、原子炉に核燃料を入れる作業が9月19日から始まったと報じられた。
(中略)
なおこの海岸地帯は、インドでも12,407人が死亡した2004年のスマトラ島沖地震に伴うインド洋大津波の被災地であり、家を流された住民が現在も500棟の避難住宅で暮らしている。
また、北東約550kmにあるマドラス原発では、その際冷却用の取水ポンプが津波で使用不能となる事故を起こしている【ウィキペディア】
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日本の原発輸出に対する反発も
インドは安倍政権が原発輸出を進めようとしている国でもあります。

****安倍政権の「原発営業」、インドから「NO」の声****
「日本の原発は安全」をセールストークに、原発メーカーの役員を引き連れて世界中に「原発営業」をかけている安倍政権。
政府レベルでは売り込まれたほうも歓迎しているようだが、当然のことながら国民は猛反発している。

インドもまた、原発セールスを積極的に行う安倍政権が有望視している国だ。
5月29にはインドのシン首相と会談、原子力協定を早期妥結することで合意した。

インドではすでに20基の原発が稼動しているが、今後20年で新たに34基の原子炉を造る計画があるという。
そんな日本の「原発輸出」のリスクを訴えるため、6月にインドから来日したカルーナ・ライナ氏はこう語る。

「インド政府は、現在の2.7%から’50年には25%へと原発比率を増やそうとしています。ところが福島の原発事故以降、各地で反原発運動が起き始めました。南部のクダンクラムでは600日以上が経過したいまも激しい抵抗が続き、日本の原発輸出に対する反発も起こっています」

クダンクラムの抗議活動はインドの反原発運動の象徴ともいわれる。現地団体と交流があるノーニュークス・アジアフォーラム・ジャパンの佐藤大介氏は「特に昨年9月のデモ、治安当局による弾圧は激しかった」と言う。

「クダンクラム原発1号機に核燃料が装填されそうになったため、9月9日、3万人もの人々が原発を包囲しました。ところが、翌日数千人の警官が襲いかかり、警棒で殴りつけるなど激しい暴行を加えました。警官は女性や子供にも手加減せず、重軽傷者多数。男性1人が射殺されました。さらには家々を次々と破壊するなどの弾圧ぶりに、インド全土が大きなショックを受けたのです」(佐藤氏)。

インドでは、たびたび起きてきた原発トラブルが原発の不信感に繋がっている。
「’93年にナローラ原発で火災が発生、翌’94年にはカクラパール原発で浸水。同じ年、建設中のカイガ原発では、格納容器を形成するコンクリート150tが高さ75mから崩落し、作業中の14人が負傷しました。過去40年間で数え切れないほど安全性に問題のある事例があるのです」(ライナ氏)

一方、ビジネスとして考えてみても、インドへの原発輸出は他国へ輸出するよりもリスクが大きい。
その理由は厳しい原子力損害賠償責任法の存在だ。これにより、事故が起きればメーカーが汚染の被害を賠償する仕組みになっている。日本のように、国が助けてはくれないのだ。

「もし日本製の原子炉で大事故が起きれば、メーカーに対して莫大な損害賠償が請求されることも十分ありえます。住民の反対、安全性への疑問、事故時の賠償責任等、多くのリスクを背負ってまで日本は原発をインドに輸出したいのでしょうか。ドイツは、インドの再生可能エネルギー開発に向けて10億ドルを拠出しました。日本もそちらの方面に資金を振り向けたほうがよいのでは」(ライナ氏)

福島原発の事故収束もままならぬ中、原発を平然と売り歩く安倍政権及び日本の姿はどう見られているのか?【週刊SPA! 7月9日】
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安倍政権の成長戦略において重要な位置を占める原発輸出ですが、日本国内で安全性への疑問から未だ稼働できていない状態で、他国に売り込むことに関しては、日本国内においても素朴な疑念を感じる向きが多くあります。

このところの猛暑が今後も続けば電力需給がひっ迫し、原発反対の声など消し飛んでしまう・・・と、政権側は高を括っているのでしょうか。まあ、実際その程度のものではありますが。

インド初の100万kwを超える大規模原発という国家プロジェクトと、中国の地方政府の原発施設建設計画を同列で論じることには問題もあるでしょうが、人権侵害国家として悪名高い中国で即決の建設中止、世界最大の民主主義国インドで稼働強行という、対照的な反応が興味深いところです。

中国指導部が住民の直接抗議行動にピリピリ神経をとがらせている感がありますが、これも一党支配体制における中国流民主主義でしょうか。

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シェールガスのもたらすエネルギー事情変化

2013-02-18 23:42:45 | 原発

(欧州ではシェールガス採掘の環境面での問題が強く指摘されています。昨年12月、ロンドンでフラッキング(水圧破砕法)について、「環境汚染が否定できない、予測も規制も不可能なプロセス」と反対をアピールする活動家。イギリスでは、シェールガス生産の一時停止措置を解除し、シェールガス開発を本格化する方針がだされています。 “flickr”より By AdelaNistora http://www.flickr.com/photos/adelanistora/8236858444/

シェール革命で持ち直すアメリカ経済
“2008年のリーマンショックから4年が過ぎ、アメリカの経済には、注目すべき、明るい変化が見られるようになりました。第1に、住宅市場の持ち直し、第2に、製造業の国内回帰、そして第3に、シェール革命という動きです。いずれもアメリカ経済の根本的変化につながる動きです”【1月29日 NHK解説委員室】というように、与野党間で膠着している債務上限問題など、政治が足を引っ張らなければアメリカ経済は今後回復軌道に乗るのでは・・・というのが一般的な見方です。

アメリカ経済回復を支えている大きな要因である、シェールガス・オイルによる“シェール革命”については、このブログでも何回か取り上げてきました。

****シェールガスとは****
泥岩の一種で深さ2000メートル以上の頁岩(けつがん)層から採掘される天然ガス。掘削技術の確立で開発が可能になり、米国などで生産が急拡大。09年ごろから米国の天然ガス価格が下がり「シェールガス革命」と呼ばれる。日本に輸入する場合は液化天然ガス(LNG)にしたりするために費用がかかるが、現行のLNG価格よりも3割程度安く調達できる計算。【1月20日 毎日】
***************

アメリカは、天然ガス生産で3年以内にロシアを上回り、世界最大の生産国の座に着くとも予測されていますが、シェールオイル増産によって、原油においても2017年までにアメリカがサウジアラビアを抜いて世界最大の産油国となるとの見通しが発表されています。

アメリカの原油産出増加は経済問題への影響だけでなく、これまで中東の原油を必要としてきたため、不可避的に政治的・軍事的に中東に関わらざるを得なかった訳ですが、今後はそうした中東の制約がはずれるという意味で、アメリカの世界戦略の大きな転換をもたらす可能性もあります。そのあたりの話は、また別の機会に。

日本への輸入に向けた動き
シェールガスについて、現在日本が利用している液化天然ガス(LNG)と比較すると、「100万BTU(英国熱量単位)」という単位当たりでみたとき、LNGは15ドルほど。これに対し、アメリカのガスは3~4ドル。仮にアメリカのガスを日本に輸入できれば、液化して船で運ぶ費用6ドルを加えても10ドルほどですむ・・・という大きな価格差があります。

したがって、日本にシェールガスを輸入して・・・という話になるのですが、そうした「シェール革命」の日本への影響については、12年11月15日ブログ「アメリカで拡大するシェールガス革命 日本への影響 国際関係・温暖化対策・原発政策にも影響」(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20121115)で取り上げました。

そのなかで事実誤認がありました。
“大阪ガスと中部電力は、米国産シェールガス(岩盤層にある天然ガス)を輸入する契約を米国企業と結んだ、と31日発表した。2017年からそれぞれ最大年220万トンを輸入する。”【12年7月31日 朝日】ということで、“アメリカ産天然ガス輸入が現在全く認められていない訳ではないようです”と書いたのですが、上記契約について、まだアメリカ政府の承認はおりていないようです。

アメリカはLNGを戦略物質とみなし、輸出を個別の許可制にしています。
日本の各社がアメリカのシェールガス開発に相次いで参加していますが、日本への輸出にはアメリカ政府の個別承認が必要となります。その際、アメリカはFTAを締結している国とそれ以外で差をつけており、FTAを結んでいない日本はガス輸入のハードルが高い状況にあります。【12年2月24日 「化学業界の話題」より】

ただ、こうした厳しい状況も改善の動きが出ているようです。
2012年3月、来日したアメリカエネルギー省のチュー長官は、日本へのLNGの輸出について「輸出許可を出すかどうかは報告書が出てから判断したい。」とコメントしていました。
その「報告書」が昨年12月発表され、「シェールガスを含む天然ガスを輸出すればアメリカ経済にとってプラスになる」との内容でした。

こうした動きを受けて、具体的な輸入に向けた交渉が始まっているようです。
****関西電力:米国産シェールガスの輸入交渉開始****
関西電力が米国産の天然ガス「シェールガス」の輸入に向け、米エネルギー企業や国内の商社など複数社と交渉に入ったことが19日、分かった。将来的に米国でのシェールガスの権益取得も検討する。

関電は原発の停止で、火力発電向けの燃料費負担が高まり、4月に値上げに踏み切る。掘削技術の向上によるシェールガスの増産で、米国産天然ガスは低価格化が進んでおり、輸入できれば燃料費の圧縮にもつながりそうだ。

米国は原則、自由貿易協定(FTA)締結国にしか天然ガスの輸出を許可しておらず、非締結国の日本は輸入できない。だが、米エネルギー省は昨年12月、「輸出は米国経済に利益をもたらす」との報告書を公表。
早ければ今年前半にも米政府が天然ガスの日本への輸出を許可するとの見方が強まっており、関電が早期調達に踏み切る可能性もある。

原発停止の影響で火力発電の稼働率が高まっている関電は昨年度、例年より約200万トン多い約740万トンの液化天然ガス(LNG)を輸入。原油の輸入増などもあり、火力発電用の燃料費は約2倍の年約9000億円になり、4月に電気料金の値上げをする方針だ。

安い米国産LNGの輸入比率が上がれば、燃料費の抑制効果が期待できる。関電はシェールガスの権益の獲得や液化委託事業も検討しており、利益の上積みも目指す。北米のほか豪州や欧州からのLNGの権益取得も検討しており、コスト削減を追求する。

また、液化天然ガスの輸入価格は、アジアでは、原油価格に連動する仕組みで、このところ高止まりしている。これに対して、米国産天然ガスは安いだけでなく、原油価格に無関係な値動きをするため、「シェールガスの輸入で燃料調達を多様化させ、財務リスクの抑制と安定調達を進められる」(関電幹部)という。【1月20日 毎日】
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なお、アメリカのエネルギー多消費型の産業界(発電業界、化学、アルミ等)は、LNG輸出により国内ガス価格が上昇するのを懸念し、一定の制限を設けるべきとの主張しています。

エネルギー間、産出・消費国間での競合・調整
LNG取引は個別性の大きい長期契約という特殊性はありますが、仮に、直接のアメリカからのLNG輸入がすぐには進まなくても、安価なシェールガスが大量に産出され続けば、アメリカのシェールガス増産・価格下落でアメリカ国内の発電用石炭が天然ガスに変わり、余った石炭が安値で欧州に輸出され、欧州ではロシアからの高い天然ガス輸入を減らし、ロシアは欧州に変わる天然ガスの販路として日本にアプローチする・・・というように、競合するエネルギー資源、産出国、消費国を巻き込んだ世界規模の価格調整が機能しますので、少なからず日本の利用するLNGにも影響があると思われます。

そうしたすべてが競合関係にある状況でアメリカからのLNG輸入を実現させることは、日本にとっては、調達先の多様化によって、他の国からの輸入においても交渉力を高めることにもなります。

****シェールガスは日本を救うのか 期待高まるも他国頼みの現実****
・・・・このため大阪ガスなどは米国政府の許可が出れば、シェールガスをLNGにして2017年から日本に輸入する計画だ。大阪ガスで年間輸入量の2割超、中部電で2割近くに相当する年間220万トンの天然ガスの液化能力をそれぞれ確保することになる。

シェールガスは従来のLNGと比べて価格が割安で資源量も豊富とされ、米国が輸出を認めると、安価なガスの調達につながると期待が高まる。

その一方、購入費の圧縮という直接的な効果だけが目的ではないという。大阪ガス担当者がこう打ち明ける。
「もちろん競争力の高い安いLNGを期待できるが、もう一つの狙いは調達先の多様化だ」
火力発電への依存度が高くエネルギーの安定供給という重い課題を抱える日本の事情は、LNGなどの買い付け交渉で、圧倒的に売り手側に有利に働いている。そこでカギを握るのが、他とも交渉中だということを示す「見せ札となるカード」(経済アナリスト)を数多く持つことだという。

一方、原発再稼働が進まない中で、火力燃料費の負担急増で厳しい経営状況が続く関西電力。同社は東南アジアや中東を中心にLNGを輸入しているが、シェールガスや南部アフリカなど、新たなLNGの調達先を開拓中だ。

ただ、米国ではまだシェールガスの日本への輸出を政府として正式には判断していない。エネルギーに詳しい在阪大手商社幹部も「米政府が日本向けにどれくらい輸出してくれるか油断できない。政府に日米同盟のさらなる関係強化を働きかけてもらう必要がある」と求める。

「(燃料購入の)交渉中に『悔しいなら原発を動かせ』といわれたこともある」。関電の火力燃料の担当者がこう打ち明けるように、資源がなく、わずか4%という脆弱(ぜいじゃく)なエネルギー自給率の日本にとって、他国頼みのシェールガスなどが完全に補ってくれるのかどうかは未知数だ。

エネルギーがなければ、国は成り立たない。この問題を現実的に解決できるのは、今のところ安全が確認された原発の速やかな再稼働しかないのではないか。【2月17日 産経】
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シェール革命で原発廃炉も
シェールガスによる火力発電と原子力発電も競合関係にあり、実際アメリカでは、安価なシェールガスの出現により相対的にコスト高となった原発が廃炉になるという現象が多く起きています。

****米原発、相次ぎ閉鎖=電力業界、投資慎重に―シェール革命でガス優位****
米国で電力会社が老朽化した原子力発電所の閉鎖を決めるケースが増えている。「シェールガス」と呼ばれる天然ガスの生産拡大に伴い、安価なガスを使った火力発電が急増。原発のコスト競争力が相対的に下がり、電力会社が補修に必要な投資に二の足を踏んでいるためだ。

電力大手デューク・エナジーは5日、フロリダ州の原発を廃炉にすると発表。格納容器に入ったひびの補修に巨額の費用がかかり、採算が取れないと判断した。同じ大手のドミニオンも昨年10月、電力の卸売価格の下落を背景に、「純粋に経済性の観点」(ファレル最高経営責任者=CEO=)から、ウィスコンシン州にある原発の廃炉を決めた。原発で最大手のエクセロンは、ニュージャージー州の原発を10年前倒しで閉鎖する方針だ。

米国内の原発の数は世界最多の104基で日本(50基)の倍。これらの建設認可は全て1979年のスリーマイル島原発事故以前に行われた。原発の運転免許の有効期間は40年で、更新すれば20年の延長が可能。既に7割の原発が更新手続きを終えているが、老朽化に伴う補修費用が将来の利益に見合わなくなれば、原発の閉鎖は今後さらに増えるとみられる。【2月9日 時事】 
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オバマ政権の方針にも変更が見られます。
****米国で原発の廃炉相次ぐ 老朽化やシェール革命で採算悪化****
・・・・オバマ政権は当初、地球温暖化対策として「化石燃料の依存脱却」を旗印に原発推進を強調し、昨年はジョージア州で34年ぶりに原発建設を認可したが、最近は「海外産原油の依存脱却」に“軌道修正”。今年の一般教書演説では「天然ガスブームが米国をエネルギー自給に導いている」と力説したが、原発には言及すらしなかった。
現在米国内に20基以上の原発計画があるが、計画変更など先細りも懸念される状況で、米国の原発産業は岐路に立たされている【2月18日 産経】
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日本の原発に話を戻すと、LNGによる火力発電か原発かの二者択一ではなく、選択肢の範囲は広く持って、原発も稼働させることで、競合するエネルギーとしての安価なLNG獲得も有利になり、ひいては将来的な脱“原発依存”にもつながる・・・と考えるべきではないでしょうか。
エネルギー間の適切な競合によって、コストもエネルギー割合も妥当なところに落ち着くものであり、再稼働を認めないという制約は資源の効率利用を阻害します。

もちろん安全性は極めて重要ですが、空から隕石が降ってくることもある世の中で100%の安全性などあり得ません。福島の経験をオープンに、より安全な原発を実現するためには何を行うべきか・・・という議論を行うことが建設的だと考えます。
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原発をめぐる様々な対応  リトアニア、シンガポール、ドイツ、そして日本

2012-10-17 22:03:05 | 原発

(アメリカ・アリゾナ州で建設中の世界最大規模のメガソーラー 14年完成時には29万キロワットになるそうです。 今後の技術革新でエネルギー変換効率が上がれば、発電規模・コストの問題も改善するかも “flickr”より By 1010uk http://www.flickr.com/photos/tentenuk/8070639358/

【「計画は止めない。設計作業は続けられる」】
“フクシマ”後の原発に対する姿勢は、安全性をどのように考えるか、代替発電の可能性とそのコスト、更には雇用・経済効果の問題などもからんで、それぞれの事情もあって一様ではありません。

一昨日のブログで、バルト三国のひとつリトアニアで14日、議会選挙と併せて日本の日立製作所が受注したビサギナス原発の建設の是非を問う国民投票が行われ、建設反対が約63%と賛成(34%)を大きく上回ったこと、これを受けて、議会選挙における建設反対派躍進と併せて、今後の原発建設計画に大きく影響しそうな状況であることを取り上げました。

しかし、議会選で第1党となった野党・労働党のウスパスキフ党首は、ビサギナス原発の建設計画を当面続行し、判断は先送りする考えを示しています。
“計画を当面継続して原発のコストや経済性を見極め、採算が合わないなら計画を中止し、有益と判断されれば国民投票を再び実施して是非を問う方針”【10月16日 毎日】とのことです。

労働党は今年6月の議会で、日立に建設事業権を与える決議を承認し、選挙前にも党首が国民投票での賛成を表明しています。
労働党との連立政権に加わると見られる野党第2党の社民党は、前政権下の与党時代に原発建設を推進した経緯はありますが、現在は建設反対の姿勢ですので、その意向がどのように反映されるかは不透明です。
なお、今回議会選で与党が劣勢となったのは、緊縮財政策への国民の反発が大きいとのことです。

****リトアニア野党「原発計画続行****
14日に行われたリトアニア議会選(定数141)で、比例代表の得票率で1位になった野党、労働党のウスパスキフ党首が16日、露紙のインタビューに対し、日立製作所が建設を提案している同国北東部のビサギナス原発について、「計画は止めない。設計作業は続けられる」と答えた。議会選と同時に行われ、原発計画への反対が6割以上となった国民投票の結果についても、「これは国民の助言であって命令ではない」との考えを示した。

議会選では議席数71の小選挙区のほとんどで、各候補者が当選に必要な得票率に達せず、今月28日に行われる決選投票で各党の議席数が確定する見込み。次期内閣の連立の枠組みや原発計画をにらみ、今後、政党間の駆け引きが激化していくとみられる。【10月17日 産経】
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【「原子力発電の技術は、国内での利用にいまだ適していない」】
一方、シンガポールでは、原発導入を見送る方針が決められたことが報じられています。

****シンガポール、原発導入見送り リスク大きいと判断****
シンガポール政府は、検討を進めてきた原子力発電の導入を当面は見送る方針を決めた。電力のほぼ全てを火力発電でまかない、燃料を輸入に頼る現状からの脱却を目指していたが、リスクが大きいと判断した。

イスワラン第2貿易産業相が15日、国会で与党議員の質問に「原子力発電の技術は、国内での利用にいまだ適していない」と答えた。リー・シェンロン首相が2010年に「原発は選択肢」と明言し、建設の可能性を探る事前調査を進めたものの、東京電力福島第一原発の事故の後、国内で慎重論が強まっていた。【10月17日 朝日】
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EU原発のストレステスト
EUは、原発の安全評価(ストレステスト)を行いましたが、調査原発すべてに「安全上の欠陥」が見つかったとのことです。

****EU:原発補修に2.5兆円 稼働中134基、安全に問題****
欧州連合(EU)の執行機関・欧州委員会は1日までに、原発の安全評価(ストレステスト)の結果、域内の全原子炉143基のうち稼働中の134基の原発すべてに「安全上の欠陥」が見つかり、福島第1原発並みの事故に対応できるようにするための改善費用が最大で計250億ユーロ(約2兆5000億円)かかるとの最終報告をまとめた。ドイツメディアが一斉に報じた。EU各国は金融・債務危機で財政が逼迫(ひっぱく)しており、安全確保に向け厳しい判断を迫られそうだ。欧州委は3日に最終報告を確認したうえで、18日からの首脳会議に提出する。

ドイツメディアによると、ストレステストで▽スウェーデンやフィンランドの原発で、全電源喪失から過酷事故に至るまでの時間が1時間もない▽フランスの原発の洪水・地震対策が不十分▽ドイツの原発に地震警報システムがない▽移動電源車が半数の国で未配備−−など、即座に閉鎖には至らないが重大な欠陥が「すべての原発」で見つかったという。
欠陥の改善には、1基あたり3000万〜2億ユーロ(約30億〜200億円)が必要で、EU全体で100億〜250億ユーロ(1兆〜2兆5000億円)が必要と試算した。

またチェルノブイリ原発事故(86年)を受けて合意されたはずの安全対策が実行されていない原発があったり、原子力規制当局の独立性が不十分だったりする国もあった。最終報告は、他国の専門家による安全性相互評価(ピアレビュー)の過程で、134基が置かれた68カ所の原発施設のうち24カ所しか調べられなかった限界点も自己批判した。【10月2日 毎日】
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ドイツ:増大する家計負担、しかし、69%が「脱原発は正しい」】
その欧州で脱原発を進めるドイツですが、再生可能エネルギー普及のための賦課金が大幅に引き上げられ、家計の負担が増大することが問題となっています。

****脱原発の独、電気料金値上げへ…再生エネ負担増****
ドイツで、再生可能エネルギー普及のため消費者が負担している賦課金が、来年から約50%引き上げられることになった。
電気代は1世帯あたり年100ユーロ(1万200円)程度増える見通しだ。大幅値上げに野党は強く反発しており、来年秋の連邦議会選挙に向けて脱原発と再生可能エネルギー普及に伴うコスト増問題が争点となりそうだ。

大手送電会社が15日発表したところによると、賦課金額は、これまでの1キロ・ワット時当たり3・59セント(約4円)から5・28セント(約5円)に引き上げられる。年間電力消費量が3500キロ・ワット時の標準世帯の年間の賦課金負担は、125ユーロ(約1万2800円)から185ユーロ(約1万8900円)になる。

DPA通信によると、発電、送電コストにこの賦課金や環境税などを加えると、標準世帯が払う電気料金は、現在の年約900ユーロ(約9万1800円)から約1000ユーロ(約10万2000円)になる。【10月16日 読売】
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今回の賦課金引き上げは、中国企業の参入などで発電パネルの価格が大幅に下落したこともあって自然エネルギーの発電が増大し、11年には全発電量の20%に達し、電力買い取りに必要な費用が拡大したことが背景にあります。

それでもドイツ国民の“脱原発”志向は依然強いものがあるようですが、賦課金の負担を巡る不公平感も強まっているそうです。

****制度見直し論も ****
欧州連合(EU)統計局によると、ドイツの平均電気料金は100キロワット時あたり25.3ユーロで、EU27カ国平均の18.4ユーロを上回り、デンマークに次いで高い。ただ、脱原発と自然エネルギー中心の電力構造への転換に対する国民の支持は高いままで、今月の世論調査でも69%が「脱原発は正しい」と答えている。また、電気料金の値上がりについて、38%が「50ユーロ」、29%が「100ユーロ」を受け入れると答えた。

一方で、賦課金の負担を巡る不公平感も強まっている。自然エネルギー促進にかかる費用を電気利用者がみんなで負担しようというのが本来の趣旨。だが、「国際競争上不利にならないように」との理由で、鉄鋼や化学産業など大量の電気を使う企業への賦課金は割り引かれ、その分を一般家庭や中小企業が肩代わりしているからだ。

さらに、メルケル政権は昨年の脱原発決定後、電気料金上昇に不満をもらす産業界に配慮し、割引の対象となる条件を緩めた。その結果、割引を申請する企業が倍以上の約2千社に急増した。こうした仕組みを「不公正」だとして、返還訴訟を起こした企業もある。【10月16日 朝日】
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【「一般の人に原発反対の候補に投票しなければならないという勢いは感じられない」】
日本では、政府の「エネルギー・環境会議」が9月14日策定した革新的エネルギー・環境戦略では「2030年代の原発稼働ゼロ」を目指すとしていますが、産業界や原発のある自治体、更にはアメリカなどからの批判もあって、9月19日の閣議では、「新戦略を踏まえて、責任ある議論を行い、柔軟性をもって不断の検証と見直しを行いながら、遂行する」との方針を決定したものの、「30年代原発ゼロ」の文言は閣議決定には盛り込まれませんでした。

原発輸出や建設段階に入った新規原発建設の続行などもあって、必ずしもその方針は明快ではありませんが、「閣議決定の文書には入っていないが、(戦略は)閣議でオーソライズされた」(枝野幸男経済産業相)とのことですから、野田・民主党政権としては「脱原発」の方向で行く・・・ということのようです。
原発容認の自民党との違いをアピールしたい思惑もあるのでしょう。

さて、私が住んでいる鹿児島県薩摩川内市も九州電力の原発がすでに2基あり、現在点検停止中です。
3号機の建設計画もストップしています。
市民の考えも、「原発は怖い」という人から、「雇用・経済のために稼働してもらいたい」という人までさまざまですが、表だっては「反原発」「脱原発」の声は大きくなっていないように見えます。
先の県知事選挙でも「再稼働は安全性の確保が前提」とはしながらも、再稼働自体を否定はしていない現職が、反原発を掲げた新人候補を大差で退けました。川内でも、反原発候補が票を伸ばすというようなことはなかったようです。

現在、薩摩川内市を含む衆院鹿児島3区は、松下忠洋前金融相の自殺に伴う補選の真最中です。
4名の候補のうち反原発を掲げるのは、支持が限定される共産党候補のみ。自民党候補は原発容認ですし、民主党からの支援を受ける国民新党も「原発を完全にゼロにしてしまうのは現実的ではない」という立場ですから、有力候補の間では原発問題は争点となっていません。

****総選挙前哨戦、語られぬ原発 衆院鹿児島3区補選告示****
松下忠洋前金融相の死去に伴う衆院鹿児島3区補選が16日告示された。選挙区には九州電力川内(せんだい)原発(薩摩川内市)があり、昨年3月の原発事故後、立地地域では初の国政選挙だ。民主、自民両党は次期衆院選の前哨戦と位置づけるが、争点となるべき原発問題が語られることはない。28日に投開票される。

■民主、地元世論に「葛藤」
16日の野間健候補の出陣式。応援弁士の安住淳民主党幹事長代行は原発問題には一切触れなかった。
民主党は2030年代の「原発ゼロ」を掲げ、次期衆院選での争点化を狙う。だが、安住氏は記者団に「エネルギーの問題は大変難しく、国民が深く考えていただくテーマ。それだけをもってわかりやすい争点化をしようというのは乱暴な議論だ」と強調した。

人口約10万人の薩摩川内市にある川内原発1、2号機は現在停止中。ふだんは従業員や協力会社員ら約1100人が働き、13カ月に1度の2~3カ月間の定期検査には、その倍近くに膨らむ。地元の川内商工会議所は定期検査の経済効果を約6億円と試算。市にとって主力産業の一つだ。

3日には川内商議所が九電に早期再稼働を要請したが、苦情の電話は3件だけ。幹部は「原発は経済的にもかなり貢献しているので、市民に認知されている」という。川内原発の取引業者は「運転停止で売り上げが2割、数百万円落ちた」と再稼働を求める。
7月の鹿児島県知事選では現職が反原発を掲げた候補を破って3選。今回の補選でも有権者に「脱原発」の機運は乏しい。

反原発運動に身を投じた俳優の山本太郎さん(37)は、同日選になった薩摩川内市長選の候補者に推されたが、断った。首長として原発を止められるかもしれないと考えたが、講演会に招かれてこの地を訪れ、「どう転んでも勝てない」と肌身に感じたという。
「多くの方々が原発に関係している仕事をしている。大差で負けると『脱原発』の動きはこの国で終わったとされかねない」

首相官邸前のデモにあわせ、金曜の夕方に薩摩川内市内の九電営業所前で続けている原発反対の抗議行動も、12日の参加者は13人。多いときは40人はいたが最近は徐々に減っている。地元の反原発団体のリーダー鳥原良子さん(63)は「私たちは原発反対の人を支持したいが、一般の人に原発反対の候補に投票しなければならないという勢いは感じられない」と話す。

野間氏を公認した国民新党の自見庄三郎代表は「原発を完全にゼロにしてしまうのは現実的ではない」との立場。民主党は友党に配慮せざるを得ない事情も重なる。閣僚の一人は「民主党として『原発ゼロ』を訴えられないのは厳しい」と危機感を募らせる。

補選で「脱原発」を掲げるのは、4人の候補者のうち共産党公認の大倉野由美子候補だけだ。大倉野候補は16日、「この夏も電力は足りた。原発から再生可能エネルギーに転換を図るべきだ」と訴えた。(後略)【10月17日 朝日】
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“九電営業所前で続けている原発反対の抗議行動”というのは知りませんでした。九電営業所は自宅のすぐそばなのですが・・・・。まあ、原発地元の雰囲気はそんなところです。

太陽光パネル約4600枚を設置し、総出力は約1100キロワット
薩摩川内市では、原発だけでなく、流行りのメガソーラーも完成しました。

****メガソーラー発電所:薩摩川内に完成 300世帯の電力賄う****
南国殖産の子会社「九州おひさま発電」(鹿児島市)が薩摩川内市寄田町に計画していたメガソーラー発電所が完成し、5日、完工式が現地で開かれた。
この寄田発電所は、九州電力川内原発に近い1万8000平方メートルの敷地に太陽光パネル約4600枚を設置し、総出力は約1100キロワットで、約300世帯の電力を賄えるという。

完工式には岩切秀雄・薩摩川内市長らも出席し、送電開始のセレモニーも行われた。同発電所には、太陽光発電システムなどについての屋外説明パネルも設置されており、同発電の社長も務める永山在紀・南国殖産社長は「エネルギー教育の一助になれば」と話していた。【10月6日 毎日】
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そのうち、見学に行きましょう。
ただ、実用性という観点で言えば、1万8000平方メートルの敷地を使って“総出力は約1100キロワット”というのは、あまり効率がよくありません。停止中の原発1,2号機はそれぞれ89万キロワット、計画中の3号機は159万キロワットと桁違いです。再生可能エネルギーの現実的課題です。

なお、アメリカ・アリゾナ州では20万キロワットのメガソーラーが稼働を始めたそうで、14年の完成時には29万キロワットになるそうです。
つい先日、グランドキャニオンなどのアリゾナ州に行ってきましたが、あれだけの広大な未使用地があれば、超特大メガソーラーも可能でしょう。
もっとも、狭い日本でも、岡山の塩田跡地(400ヘクタール)を使った25万キロワットのメガソーラーが計画されているそうです。
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