(タンザニアの首都ダルエスサラーム 投票所に列を作る人々【https://www.ft.com/content/24640194-d677-4f24-8a83-d733b35ddfe8】)
【タンザニア 現職大統領・与党圧勝 野党側は不正選挙と批判】
アフリカのタンザニア・・・・名前ぐらいなら聞いたことがあるけど・・・という方も多いかと思います。
東アフリカ、ケニアの南隣、コンゴの東隣に位置して、インド洋に面しています。
自然豊かで、野生動物も多く、面積は日本の約2.5倍であるのに対し人口は1/2以下ですが、動物密度が世界一だとか。
そんなタンザニアにも新型コロナは及んでいますが、マグフリ大統領のコロナ禍への対応のユニークさが話題にもなりました。
*****「神に祈ろう」大統領が外出促す 感染拡大のタンザニア*****
新型コロナウイルスの感染が拡大しているアフリカ東部のタンザニアで、マグフリ大統領が国民に「悪魔のようなコロナウイルスはキリストの体のなかでは生存できない」と教会やモスクで祈るよう呼びかけている。
検査の拡充にも消極的だ。現地の米国大使館は13日、「感染が急拡大している」として、警報を出した。
アフリカでは同日、南部のレソトでコロナウイルスの感染者が判明し、アフリカ全54カ国で感染者が確認された。医療態勢が整っていない国が多く、各国は都市封鎖や外出禁止令など厳しい感染拡大防止策をとっている。
そうしたなか、タンザニアは学校の休校や国際線の運航停止を決めたものの、マグフリ氏は教会やモスクを閉鎖せず、「神に祈ろう」と外出を促している。今月3日には、「ヤギや果物などの検体をひそかに検査したら、一部で陽性反応が出た」と演説。その後、検査機関の所長らを停職処分にした。
人口約5600万人のタンザニアではこれまでに509人の感染者が確認されている。世界保健機関(WHO)は、検査の信頼性を疑うタンザニアの主張に「同意できない」として協議する考えを示している。
現地の記者も取材に対し、「発熱などの症状を訴える患者であふれる医療施設も出てきた。北部の街では、防護服を着た人が数十人の遺体を埋めていた。実際の感染者はもっと多いはずだ」と打ち明けた。【5月19日 朝日】
*********************
感染拡大防止より経済活動維持を重視した似たような対応は、ベラルーシ・ルカシェンコ大統領、ブラジル・ボルソナロ大統領、そしてアメリカ・トランプ大統領などにもみられます。
顔ぶれを眺めると、政治的には、民主的というよりは唯我独尊的なタイプですね。
そのタンザニアで大統領選挙が行われ、マグフリ大統領が再選を目指しました。
下記は選挙直前の記事。
****タンザニアで10月28日に5年ぶりの総選挙 大統領選挙は現職のマグフリ氏が優勢***
現職再選との見方が目立つ大統領選挙
タンザニアで10月28日、5年に1度の総選挙が行われる。大統領、国会議員、地方議会議員を選出するもので、島しょ部のザンジバルを含む全土で行われる。
タンザニアの国会は一院制で、2015年10月に行われた前回の総選挙では、与党・革命党(CCM)が389議席中68%となる264議席を獲得した。
今回の大統領選で、CCMからは、現職のジョン・ボンベ・マグフリ氏が立候補した。2015年の就任以来、強いリーダーシップで内政重視の政策を進め、汚職を厳しく取り締まったマグフリ大統領は、「ブルドーザー」との異名を持つ。1992年の複数政党制への移行後、CCMの大統領が2期10年を務めてきた。現地報道では、今回もマグフリ氏の再選という見方が目立つ。
一方、野党からは過去最大となる14人が立候補した。野党第1党の民主開発党(CHADEMA)は、トゥンドゥ・アンディパス・リッス氏を候補者に擁立した。同氏は3年前に銃撃を受け、ベルギーで療養していた。しかし、(中略)野党連合は成立しなかった(中略)。さらに10月2日には、選挙活動中に扇動的な発言があったとして、リッス氏が選挙管理委員会から7日間の選挙活動停止処分を受けた。このように、野党側には厳しい展開だ(中略)。
新型コロナウイルスの影響も
(中略)世界的な新型コロナウイルス拡大が、今回の総選挙に少なからず影響することも見逃せない。
マグフリ大統領は2020年6月7日、新型コロナウイルスを克服した、と宣言したものの、5月以降の感染者数と死者数などを公式に発表していない。各国の国際選挙監視団は現地で活動せず、選挙の際は、周辺国を中心とした任意の監視チームが組成される見込みだ(中略)。
経済は緩やかに成長、会社法改正などの動きも
人口増加率が高い水準で推移しているタンザニアでは、潤沢な労働力を活用した産業化が課題になっている。マグフリ大統領は就任翌年の2016年、「第2次国家5カ年開発計画」を策定し、経済の開発を推し進めた。
経済成長は隣国のケニアに比べ緩やかながら、名目GDPが478億8,400万ドル(2015年)から40%増の672億4,100ドル(2020年推定、いずれもIMF)に、1人当たり名目GDPは947.9ドル(2015年)から1,159.3ドル(2020年推定)に拡大した。(中略)
世界銀行は、タンザニアの経済成長を総合的に評価し、2020年7月に、タンザニアを低所得国から低中所得国に格上げすると発表した(7月1日付世界銀行)
政府権限の強化は、企業の関連法制度にも表れている。(中略)世界銀行の「Doing Business2020」(各国ごとの仕事のしやすさを示す報告書)で、タンザニアは190カ国中141位にランクした。ちなみに、ケニアは56位、ルワンダ21位、ウガンダ138位という結果だった。タンザニアでは、経済活動における政府の役割が強化されたことが反映されたともいえそうだ。【10月29日 JETRO】
********************
結果は、予想通り現職マグフリ大統領が圧勝、ただし、敗れた野党側は納得していません。
****タンザニア大統領選、現職マグフリ氏が圧勝 野党候補は非難****
タンザニアで28日に行われた大統領選で、選挙委員会は30日、現職のジョン・マグフリ大統領が得票率84%で圧倒的な勝利を収めたと発表した。しかし、野党の対立候補は、記入済みの投票用紙が詰まった投票箱が見つかるなど不正行為が横行したと非難している。
マグフリ氏の最大の対立候補で野党・民主開発党のトゥンドゥ・リス氏の得票率は13%にとどまった。リス氏は、広範な不正や脅迫、野党に対する抑圧が行われていると非難していた。
有権者数は2900万人以上で、投票率は50.7%。26万票以上が無効だった。
大統領選と同時に行われた議会選の最終結果はまだ発表されていないが、マグフリ氏率いる与党・タンザニア革命党は、全264議席中、確定した約200議席のうち2議席を除いてすべての議席を獲得している。
前回2015年の大統領選でマグフリ氏の得票率は58 %だった。
1961年の独立以来政権を握っているCCMは、マグフリ氏の下で独裁政治に転落したと非難されているが、今回の選挙で圧勝したことで、その影響力をさらに強固にするとみられる。
リス氏は2017年に暗殺未遂で16発の銃弾を浴び、海外で治療を受けて今年7月に帰国していた。同氏は29日、発表される今回の選挙結果は「違法」だと宣言した。
リス氏は支持者らに平和的に抗議行動を行うよう呼び掛ける一方、国際社会には選挙結果を認めないよう求めた。
タンザニアでは大統領選の結果に異議を唱えることはできないが、議会選の結果への異議申し立ては可能。 【10月31日 AFP】
**********************
強権支配的な国家で、政権側が不正を駆使することで、選挙が支配強化の道具として使用される・・・というのは「よくある話」ですが、今回のタンザニアのケーズがどうなのか・・・は知りません。
【マラウイ 「歴史的な再選挙」】
アフリカでは、そんな不正選挙の事例がよくありますが、「そんな国ばかり」と思い込むのも、これまた偏見。
タンザニアの南隣マラウイでは今年6月、大統領選挙に不正があったと認定され、再選挙が行われ、野党候補が勝利するという「歴史的な再選挙」もありました。
****マラウイの歴史的な大統領選再選挙、アフリカ諸国への影響は****
マラウイで6月23日に行われた大統領選挙の再選挙で、野党候補が歴史的な当選を果たしたことを受けて、専門家や歴史家らはこれを機にアフリカの他国でも同様の民主改革が広がる可能性があると指摘している。再選挙は、2019年に行われた大統領選挙で不正行為があったとして実施された。
再選挙では野党第1党、マラウイ会議党のラツルス・チャクウェラ党首が、現職のピーター・ムタリカ大統領に大差をつけて当選した。2019年の大統領選については、裁判所が「広範囲にわたる組織的な」不正行為があったと判断し、無効とされていた。
サハラ以南のアフリカで、大統領選挙の結果が裁判所の判断で覆されたのは2017年のケニアに次いで2例目。ケニアでも再選挙が行われたが、現職大統領が再選挙によって敗北したのは、今回のマラウイがアフリカで初となった。
裁判は6か月に及び、その間市民らの抗議デモは拡大した。2月3日にムタリカ大統領の再選を覆すとの判決を下した憲法裁判所の判事らは、防弾ベストを着て軍の護衛を受けるという異例の対応を取った。
歴史家のポール・ティヤンベ・ゼレザ氏は、「市民らは信用を失って窮地に陥った政府から脅しや抑圧を受けてきたにもかかわらず、彼らの票が盗まれないよう、1年間も大規模デモを我慢強く継続した」と述べた。
さらにゼレザ氏は、再選挙の結果は、権力を振りかざす政権に、組織としてまとまった賢い野党勢力が勝利できることを見せつけたと指摘した。
南アフリカのヨハネスブルクに本拠を置く非政府組織、「アフリカにおける持続可能な民主主義のための選挙研究所」のグラント・マスターソン氏は、「今回の選挙は確実に今後アフリカで行われる選挙に影響を与えるだろう」と述べた。
さらに、マラウイの再選挙は、最も穏やかな国でも市民が我慢の限界に達すれば抗議の声を上げるということを思い出させたと指摘し、「十分な数の市民が立ち上がれば、最終的に変革はもたらされる」と指摘した。 【7月15日 AFP】
********************
【アメリカ 選挙後の市民同士の衝突に銃購入で備える】
アフリカでも事情は様々。民主的な再選挙が行えるマラウイのような事例もあります。
民主的な先進国と言われている国々でも事情は様々・・・あの国の11月3日の選挙は・・・。
アメリカ大統領選挙がどうみてもすんなりとは収まりそうにない、大混乱しそうなことは多くの人々が予想しているところ。
特にコロナ禍のもとで激増した郵便投票をめぐっては、一波乱も二波乱もありそう。
国民は選挙後の混乱に備えて銃で自衛する動きが広まっているとか。
****米の銃器販売、過去最多の水準に 理由はコロナ以外にも****
米国で銃器の売り上げが記録的なペースで急増している。購入のために必要な連邦捜査局(FBI)による身元調査の件数が、1~9月だけで昨年1年間の合計を超えた。
専門家は、新型コロナウイルスの感染拡大のほか、白人警官が黒人を死亡させた事件後に一部の都市で暴動が広がったことや、11月3日に大統領選を控えていることが背景にあると指摘している。
FBIによると、今年は9月末までに2883万件の身元調査を実施。昨年の年間件数(2837万件)を上回り、年間統計を取り始めた1999年以来最多になった。
身元調査は連邦政府の認可を受けたディーラーが、購入者から氏名や犯罪歴などの情報を受けて実施するもので、銃器の販売数と連動している。銃市場の調査会社は、9月末までの実売数は1660万台で、2016年の年間実売数を抜いて過去最多になったと推計した。
調査件数は年々増加傾向にあったが、銃規制に消極的なトランプ大統領が就任した17年は初めて減少に転じ、昨年までおおむね横ばいで推移。ただ、業界団体の推計によると、今年は7月までに約500万人の市民が初めて銃を購入し、販売件数を押し上げる大きな要因になった。
銃の問題に詳しいジョージア州立大のティモシー・リットン教授は「人びとを銃の購入に駆り立てるのは『不安』だ」と指摘。
「新型コロナが国中に広がり、警察や消防、行政府に対する不信感が募った。また、ミネアポリスの黒人男性死亡事件を契機に、過激派組織が秩序を崩壊させる場面を目にし、市民に不安が広がっている」と説明する。
大統領選の年は、新政権が銃規制を強めるのではないかという懸念から、銃器がよく売れる傾向にある。リットン氏は「選挙後に市民同士の衝突があるのではないか、という報道も市民の不安をあおる一因になっている」とも話す。
米国では大統領選を前に緊張が高まっており、小売り大手のウォルマートは、店頭から銃器や弾薬を全て撤去。購入自体は可能だが、広報担当者は取材に、「いくつかの都市で暴動が起きており、従業員やスタッフの安全対策として移動させた」とする声明を出した。【10月31日 朝日】
***********************
「選挙後に市民同士の衝突があるのではないか」と住民が銃を購入する・・・一体どこの独裁国家、後進国の話かと思いますが、世界をリードする立場にあるアメリカの話です