孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

ドイツ  物議を醸す移民規制をめぐる支持率トップ最大野党と極右の連携 総選挙への影響は?連立も?

2025-02-03 23:07:59 | 欧州情勢

(ドイツ下院で発言するキリスト教民主同盟(CDU)のメルツ党首(手前)を見るショルツ首相=29日、ベルリン(ロイター=共同)【1月30日 東京】)

【最大保守野党、「不法移民は追放」動議提出 「極右」連携で可決するも「タブー破り」の批判も】
再三取り上げてきたようにこれまで多くの移民・難民を受け入れてきた欧州では、近年移民・難民に対する反感も強まっています。

特に、2月23日に総選挙を控えたドイツでは、移民が絡んだ事件も多発していることもあり、社会の右傾化の流れに乗って移民排斥を主張する極右政党AfDが支持率で2位につける形にもなっており、移民・難民問題が総選挙の大きな争点になっています。

****ドイツで相次ぐ移民による犯罪****
ドイツはメルケル政権時代の2015年、シリア内戦で難民が欧州に押し寄せた際、「寛容な受け入れ」を主導。移民問題では常に、EUの連携を訴えてきた。だが、移民による犯罪が相次ぎ、世論は変わりつつある。

昨年8月には、西部ゾーリンゲンでシリア人の難民申請者が3人を刺殺。12月には東部マグデブルクのクリスマス市にサウジアラビア人の男が車で突っ込み、6人を死なせた。【1月31日 産経】

ドイツでは22日、南部アシャッフェンブルクの公園でアフガニスタン出身の男性が幼児らを刃物で襲い、2人が死亡する事件が発生した。【1月31日 毎日】
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当然のように各党は移民・難民への反感を強める世論にアピールしようとします。現在支持率でトップを行く保守系最大野党、キリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)はすべての不法移民を「国境で追い返せ」と求める動議を提出し可決されました。

しかし、極右政党「ドイツのための選択肢」(AfD)と連携したことへの「タブー破りだ」(ショルツ首相)といった批判も高まっています。

****ドイツ「不法移民は追放」動議可決 最大保守野党、「極右」連携 メルケル氏が異例の批判****
ドイツ連邦議会は1月28日、すべての不法移民を「国境で追い返せ」と求める動議を採択した。2月の総選挙を前に、保守系最大野党、キリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)が提出。

政界で極右扱いされる「ドイツのための選択肢」(AfD)の支持を得て可決させた。「タブー破り」の右派連携に左派は反発し、CDUのメルケル元首相も異例の批判声明を出した。

CDUのメレツ党首は動議提出にあたり、「外国人、特に難民申請者の犯罪は深刻な問題だ。欧州連合(EU)は機能不全の状態にある」と発言。EUルールより、ドイツの安全確保を優先すべきだと訴えた。

EUは国際条約に沿って、「難民申請しようとする移民を追い返してはならない」という原則をとる。だが、動議は国内の治安にかかわる場合、例外が認められると正当化している。

ドイツでは22日、南部アシャッフェンブルクで難民資格を得られなかったアフガニスタン人の男が、刃物で2人を刺殺する事件が起きたばかり。

メルツ党首は中道左派、社会民主党(SPD)のショルツ首相の移民政策を「生ぬるい」と批判しており、強硬な動議で違いを示そうとした。CDU・CSUは現在、支持率30%で首位に立ち、メルツ氏は次期首相の最有力候補とみなされている。

AfDは移民排斥を訴え、SPD、CDUなど主要政党は連携を拒否してきた。今回の動議に拘束力はないが、連邦議会の決議でAfDが多数派に加わったのは初めて。「包囲網」崩壊への危機感が広がる。

ショルツ首相は、動議提出を「許しがたい行為」と批判。CDU内でも賛否は分かれ、メルケル元首相は声明で、AfDを多数派に引き込むのは「よくない」と明記した。

AfDは「ドイツにとって歴史的な日」と動議成立を歓迎した。

公共放送ARDによると、ベルリンのCDU本部前では30日、約6千人が抗議デモを行った。一方、世論調査では、動議に記されたように、不法移民の入国阻止を支持する意見が6割にのぼっている。(中略)

2月の総選挙では、CDU・CSUは単独で連邦議会の過半数議席を得られず、SPDか緑の党との連立政権を目指すと予想されている。今回の動議採択で保革の溝は深まり、連立交渉の行方に不安を残した。AfDの支持率は現在20%。SPDや緑の党を押さえ、2位となっている。【1月31日 産経】
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****ドイツ、移民政策厳格化の決議案可決 最大野党の方針転換が物議****
2月下旬に前倒しの総選挙を控えるドイツの連邦議会で29日、移民・難民政策の厳格化を政府に求める決議案が賛成多数で可決された。

(中略)法的拘束力はなく、政府方針への影響はないとみられるが、AfDとの協力を否定してきたCDU・CSUの方針転換が物議を醸している。

(中略)今回、CDU・CSUが提案した決議には、国境の持続的な管理▽入国許可証を持っていない人物の入国拒否▽国外退去の対象者の拘束――などが含まれる。

移民・難民対策の強化を公約に掲げるCDUのメルツ党首は24日、「誰が賛成するかにかかわらず(決議案を)出す」と述べ、AfDとの協力も辞さない姿勢を示していた。

ドイツでは、ナチス政権を生んだ反省から排外主義勢力への警戒感が強い。主要政党はAfDとの連立や政策協力を否定し、CDU・CSUも例外ではなかった。与党の中道左派・社会民主党などはメルツ氏の発言を強く批判し、採決でも反対した。

そもそも、欧州連合(EU)加盟国のドイツが国境管理を恒常化することは、EU域内の自由な移動を可能にする「シェンゲン協定」に反する。このため、今回の決議は実現可能性が低いとも指摘されている。

最近、CDU・CSUは世論調査での支持率が政党間で最も高く、現時点では、2月23日の前倒し総選挙後に第1党となる公算が大きい。メルツ氏は公約の実現に向けた強い姿勢をアピールした形だが、AfDに拒否感を持つ支持者からは不評を買うおそれもある。【1月31日 毎日】
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****メルケル前独首相、極右政党と協力した所属政党党首を批判****
ドイツ最大野党、キリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)が29日、連邦議会(下院)で極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」の支持を得て移民対策厳格化の決議案を通したことについて、ドイツのメルケル前首相は30日、「間違っている」と述べて自身が所属するCDUのメルツ党首を批判した。

決議案は連邦政府に移民対策の厳格化を求めるもの。主要政党がAfDの助けを借りることは長くタブーとされており、ドイツでは抗議の声が広がっている。

メルケル氏が内政に干渉するのは異例。AfDではなく主要政党と組んで議会過半数を目指すと昨年11月に誓ったメルツ氏が、その約束を破ったと指摘した。

メルツ氏は、だれが支持しようが決議案は必要なものだったと述べ、自身がAfDに対する「ファイアーウォール」を破ったとの批判を一蹴した。メルツ氏は2月23日の総選挙を経て首相に就任することが最有力視されている。【1月31日 ロイター】
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【野党提出の移民対策厳格化の決議案 党内造反もあって否決】
移民対策厳格化の決議案が可決された流れを受けて、最大野党の保守、キリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)は移民の流入を規制するための法改正案を提出。

再び極右政党・AfDと同調することで可決されると予想されていましたが、極右勢力との連携に反対する造反者が野党内にも出て、法案は否決されました。

****ドイツ議会で「移民流入を規制する法改正案」否決 最大野党が提出も野党の一部が極右との同調に反対か****
ドイツの議会で野党が提出した移民を規制する法改正案の採決が行われ、否決されました。極右政党との同調に反対した野党の一部が投票しませんでした。

ドイツの連邦議会で先月31日、最大野党の保守「キリスト教民主・社会同盟」が提出した移民流入を規制する法改正案の採決が行われ、反対多数で否決されました。野党側は議席数では勝るものの、極右政党・AfDと同調することに反対した野党の一部が投票しませんでした。

連邦議会では2日前に、法的拘束力はないものの移民政策の厳格化を政府に求める決議案が可決されていて、今回も可決されるとみられていました。

今月23日に総選挙が控える中、移民政策をめぐり混迷を極めています。【2月1日 TBS NEWS DIG】
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CDUのメルツ党首が移民規制に拘るのは、放置すれば保守層をより強硬なAfDにとられてしまう・・・という思いもあって、法案提出で保守層の取り込みを図る狙いでしょう。

こうした議会の動きに対し、AfDと協力し、移民規制の法改正案可決を狙った「タブー破り」に対する抗議デモも行われています。

****ドイツ野党と「極右」協力に抗議 ベルリン、16万人以上がデモ****
3週間後に総選挙を控えるドイツの首都ベルリンで2日、政権復帰を目指す最大野党の保守、キリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)が「極右」と称される右派、ドイツのための選択肢(AfD)と協力し、移民規制の法改正案可決を狙った「タブー破り」に対する抗議デモがあった。16万人以上が集まり「歴史を繰り返すな」と訴えた。

ドイツでは戦後、ナチス・ドイツの過去から極右勢力との協力がタブーとされてきた。

直近の支持率ではCDU・CSUが約30%で首位を走り、移民排斥を掲げるAfDは約20%で2位。CDUのメルツ党首は次期首相の最有力候補とされるが、デモ参加者らは「恥を知れ」「ファシストの協力者はいらない」などのプラカードを掲げ、反発を示した。

CDU・CSUは1月29日、移民政策の厳格化を求める決議をAfDの支持を得て連邦議会(下院)で可決させ、移民規制の法改正案の可決も目指したが、31日否決された。【2月3日 共同】
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主催団体は全土で約70万人が抗議行動に参加したと発表しています。

しかし、CDU・CSUは強気の姿勢を崩していません。

****「極右と協力」に抗議デモ=保守野党、強気崩さず―独****
(中略)一方、CDUは強気の姿勢を崩していない。有力議員のシュパーン氏は2日、時事通信の取材に、不法移民対策の強化を図る党方針について「正しい」と強調。「反対の声はあるが、党にとって問題ではない」と述べた。【2月3日 時事】
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【ショルツ首相 最大野党と極右の連立を警告】
「タブー破り」で極右AfDと連携した最大野党CDU・CSUの移民規制強化の取組が、総選挙で吉と出るのか凶と出るのか・・・選挙後の連立工作において、再びAfDとの関係が問題となると思われます。

社民党ショルツ首相は“総選挙の後、CDUが他党と「形式的な」連立協議を行い、最終的にはAfDに頼る可能性もあり得るとの考えを示した。”

****ドイツ極右AfDが次期政権入りする恐れ ショルツ首相が警告****
ドイツのオラフ・ショルツ首相は1月31日、連邦議会(下院)で最大野党「キリスト教民主同盟(CDU)」が極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」と連携したことを受け、AfDが年内にも次期政権に参加する可能性があると警鐘を鳴らした。

CDUは1月29日、連邦議会でAfDの票の助けを借りて、政府に移民政策の厳格化を求める決議案を可決。他党からは、極右政党とのいかなる協力も禁じるという長年のタブーを破る行為だと非難された。

ショルツ氏は週刊紙ツァイト・オンライン版に対し、こうした策略を受けて、中道右派CDUの党首で、次期首相の最有力候補と目されているフリードリヒ・メルツ党首は「信用できないとの批判にさらされている」と語った。

メルツ氏がこれまで、極右には関わらないと明言してきたことを指摘し、AfDと連立を組むことはないという同氏の誓約にも疑問符が付くと主張。

さらに、オーストリアの政局を引き合いに出した。同国では昨秋の総選挙で極右・自由党(FPOe)が初めて第1党となり、今や保守・国民党(OeVP)と連立政権を組む寸前となっている

ショルツ氏は「OeVPでさえ『FPOe主導の政権は生まれない。FPOeとは連立しない』と主張していた」「(だが)今やFPOeとの連立政権が実現し、FPOe所属の首相さえ誕生するかもしれない」と警告。

ドイツで2月23日の総選挙の後、CDUが他党と「形式的な」連立協議を行い、最終的にはAfDに頼る可能性もあり得るとの考えを示した。

ドイツの選挙では連立協議が長引くのが通例だが、ショルツ氏はCDUとAfDの連立について「例えば10月にも実現する可能性がある」と述べた。

世論調査の政党支持率では、メルツ氏のCDUと姉妹政党の「キリスト教社会同盟(CSU)」による統一会派「キリスト教民主・社会同盟(CDU/CSU)」が約30%で首位。AfDはわずかに数字を伸ばし、約21%で2位につけている。ショルツ首相の中道左派政党「社会民主党(SPD)」は約16%と低迷している。【2月1日 AFP】
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ショルツ首相としては、極右への国民の拒否感をバネにして劣勢を挽回したいところでしょう。

極右ルペン氏をめぐってフランスでも同じような問題がありますが、国民の極右への拒否感は以前ほど強くはなくなっている・・・という現実もあります。
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