孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

イコール・ペイ・デイ 男女間の賃金格差問題への注意を喚起するための取り組み

2019-03-14 22:45:27 | 女性問題

(米国でのイコール・ペイ・デイのイベントで販売されるレモネード。男女間で値段に差があるのが分かる(2016年4月16日撮影)【2017年11月19日 The Telegraph】

【ドイツ イコール・ペイ・デイに女性の運賃割引 でも、女性であることの確認は?】
男女間の賃金格差問題への注意を喚起するための「イコール・ペイ・デイ」という日があるそうです。

いつに設定されるかは、その国の格差状況によるとのことで、例えば女性が77日間多く働いてようやく男性と同じ賃金になるといった格差がある場合、1月1日から77日目の3月18日が「イコール・ペイ・デイ」ということになります。

上記の77日というのはドイツの事例ですが、欧州にあっては男女格差が大きいドイツでは率にすると21%の差があるとか。そこで・・・・

****ベルリン:男女の賃金格差は21%、だから女性の運賃を21%割引に****
<ドイツはヨーロッパで男女間の賃金格差が最も大きい国の一つ。この格差解消を訴えるキャンペーンの一環として、ベルリン公共交通BVGが施策を発表した>

来る3月18日月曜日はドイツのイコール・ペイ・デイ「同一賃金の日」だ。男女間の賃金格差問題への注意を喚起するのが目的だ。欧州委員会の統計局ユーロスタットの2017年のデータによると、ドイツはヨーロッパで男女間の賃金格差が最も大きい国の一つで、21%の差がある。ドイツより格差が大きいのは、エストニアとチェコのみだ。

格差解消を訴えるキャンペーンの一環として、首都ベルリンではベルリン公共交通BVGが、女性のために通常の1日券より21%安い「女性チケット」を3月18日限定で販売することを公表した。

男女賃金格差を示すイコール・ペイ・デイの日付
イコール・ペイ・デイは世界的に見られるが、その日付は国、そして年によって異なる。これは、その国の男女間の賃金格差によって算出されるもので、差が21%であるドイツでは女性が男性より77日多く働いてやっと同一賃金が達成されるということになり、それが2019年では3月18日というわけだ(2018年1月1日を基準にした時)。

したがって、イコール・ペイ・デイの日付はその国の格差状況を如実に表しているといえる。

BVGはこの象徴的な数字を使用し、この日、通常7ユーロする1日乗車券より約21%安い「女性チケット」を5.5ユーロで販売する。

ベルリンは今年始め、ドイツで初めて3月8日の「国際女性デー」を祝日にすることを決定し、先日さっそく実施したばかりだ。(中略)

首都が一丸となって女性を支援、巷の反応は?
市が有する公共の交通機関であるBVGの今回のキャンペーンにより、ベルリンは市としての女性への支援を連続して前面に押し出す形となった。ポリティコEU版によると、BVGは「ベルリンのほとんどの男性は、今回のアクションを理解しているだけでなく、サポートもしている」と考えている。

だがSNSなどの反応を見ると、巷での評判はいまいちのようだ。「イコール・ペイ」とは本来「同一の仕事に対する同一賃金」を目指すものなので、平均的な21という数字を利用して、職業の区別なく女性にだけ一律にディスカウントを提供するのはおかしいと言う男性もいる。

さらに、BVG は今週14日にストライキを予定していること、バス全線でWi-Fiの使用可能を目指すなど「無駄なコスト」をかけすぎていること、そして時間に正確でないことなどから、今回のキャンペーンを諸問題から市民の目をそらせるためのポーズだと見る向きもある。

また、ドイツ人はこのような形の割引に慣れていないのかもしれない。以前日本に来たドイツ人男性は、日本の居酒屋や旅館などでよくある「女性割引」について、「女性を(子供のように)格下に見ているようで、おかしい」と苦言を呈した。

国ごとの男女賃金格差を如実に表す
しかしながら、大半は「たった1日、イコール・ペイへの注意を喚起するためのアクションに目くじらをたてることもなかろう」という意見のようだ。賛成する者も多い。

「女性チケット」は女性の使用に限られ、男性が使用した場合は、子供やシニアなど通常の割引チケット使用適用外のときと同じように罰金を課される。

つまり、女性であることを身分証明書などで証明する必要があるわけだが、性の定義が複雑になってきた昨今、どのように対処するのか興味深いところだ。

肝心のBVG自体ではイコール・ペイが実現されているようだ。また、現在1万5千人いる従業員のうち約20%が女性だが、これを2022年までに27%に増やすことを目標としているという。

ちなみに今年、スイスのイコール・ペイ・デイは2月22日だった。アメリカでは4月2日が予定されている。日本では昨年、4月6日がイコール・ペイ・デイとされ、各種の催し物が行われたようだが、今年の情報はまだ見当たらない。

男女間の賃金格差ワースト常連国の日本。格差が縮まれば縮まるほどイコール・ペイ・デイの日程は早くなる。いつかイコール・ペイ・デイそのものがなくなることを願う。【3月14日 モーゲンスタン陽子氏 Newsweek】
********************

イコール・ペイ・デイの設定の仕方はいろいろあるようです。

****女性は年末までタダ働き****
EU内での男女間の賃金格差は16%にもなり、丸一年男性と同様に働いても女性は昨日の11月3日分までしかお給料をもらえない計算なるとEU委員会が発表している。

委員会は認知を高めるため、11月3日をイコールペイ・デーとした。

EU委員会の計算では12%の差異があるとなっているスウェーデンでも同様の「16時02分」の指標がある。こちらは毎日8時から17時まで働いても、女性は16時2分まで分しか給与を払ってもらっていないことを表している。【2018年11月4日 https://swelog.miraioffice.com/entry/equal-pay-day
*****************

イコール・ペイ・デイという企画も面白いですが、割引対象となる女性であることを“性の定義が複雑になってきた昨今、どのように対処するのか”という問題が生じるあたりは、更に面白いところです。

“性の定義が複雑になってきた昨今”を如実に示す問題にアメリカ・米軍の対応も揺れています。

****米軍のトランスジェンダー制限、国防総省が新方針発表****
米国防総省は13日、性別適合手術を受けた人やこれから受ける意向の人の軍新規入隊を禁止とし、ほとんどの兵士に出生時に決められた性に基づいて勤務するよう求める新方針を明らかにした。
 
米連邦最高裁判所は今年1月、心と体の性別が一致しないトランスジェンダー(性別越境者)の軍入隊を制限するとしたドナルド・トランプ大統領の措置について、訴訟が結審するまで発効を認めると判断。
 
この措置が発効となる4月12日以降、トランスジェンダーの兵士は出生時に決められた性に基づいて勤務している人のみ、軍にとどまることが認められ、ホルモンの服用や性別適合手術を受けることは禁止される。
 
この動きは自らが認識する性に基づいて軍に勤務することを認めたバラク・オバマ前大統領の方針に逆行するもので、トランプ政権の措置に対しては直ちに民主党や人権団体などから非難の声が上がった。
 
訴訟合戦を経て、現在の国防総省の方針はトランスジェンダーの人々が軍務に就くことを完全に禁止するものではなくなっている。

また、トランスジェンダーの兵士は4月12日の発効期限までホルモンの服用や性別適合手術を受けることができる。
 
しかし発効以降、性別適合手術を受けた人や性別違和と診断された人は入隊できず、すでに出生時に決められた性で入隊している兵士はそのままの性で勤務を続けることが求められ、性別適合治療は断念しなければならなくなる。
 
匿名を条件に取材に応じた国防総省当局者によると、米軍の現役兵130万人のうちトランスジェンダーだと自認する兵士は約9000人おり、すでに性別適合手術を受けた、またこれから受ける意向の兵士は約1000人に上るという。 【3月14日 AFP】
********************

130万人中の9千人・・・多いのか少ないのか?

【アメリカ 大統領を目指す女性の政治塾】
話を男女格差に戻すと、格差は賃金だけでなく、ヒラリー・クリントンが涙した「ガラスの天井」といった、女性の進出を阻む有形無形の壁の問題があります。

しかし、ヒラリーの挑戦も影響したようで、アメリカでは「大統領を目指す女性の政治塾」が大盛況とか。

****私が大統領になる! 若手女性向け政治塾、米国で大盛況****
米国で政治家をめざす女性が増えている。昨年11月の米中間選挙では、過去最多の女性が連邦議員に当選し、ネバダ州議会は米史上初めて女性議員が男性議員の数を上回った。

米国は日本と同様に女性の政治参加は遅れていたが、今では女性対象の「政治塾」は各地で大にぎわいだ。女性躍進を支える現場を歩いた。

「みんなで気合を入れましょう!」。司会者が呼びかけると、大学講堂を埋めた若い女性たちが「頑張るぞ!」「出馬準備完了!」と元気よく応じた。2月9日、南東部ジョージア州アトランタ郊外で、政治家をめざす若い女性を対象にした研修会が開かれていた。

■2040年の大統領選に照準
連邦下院議員を含む現職の女性議員が、なぜ政治家をめざし、どんな活動をしているかを講演。どうやって地域のニーズをくみ取り、立法や政策に反映させるかを具体的に教える講義もあった。

企業幹部など多彩な女性講師陣は、リーダーの心構えを説いた。
「自分が選挙で勝てるはずはないという先入観は捨てて、自信を持って」「男性から『今晩一杯飲みながら打ち合わせよう』と言われたら、『朝8時にコーヒーを飲みながら話しましょう』と返して」といったアドバイスも相次いだ。
 
参加した約200人の多くは大学生だが、高校生もいた。高校生のクレアさん(16)は「教師をめざしているけれど、政治家になって教育問題に取り組もうかな」と目を輝かせた。
 
主催したNPO「イグナイト」によると、こうした研修会を2012年から開いており、ヒラリー・クリントン氏が大統領選に出た16年ごろから申し込みが5倍以上に増えたという。【3月14日 朝日】
*********************

アメリカは人種の問題、経済格差の問題、銃社会の現状等々、いろんな問題を抱えていますが、上記のような動きを聞くと、健全さを回復しようとする力も感じます。

ちなみに、“昨年11月の米中間選挙で改選された第116回連邦議会が(1月)3日、初招集され、下院(定数435)で8年ぶりに多数党となった民主党からナンシー・ペロシ下院議員(78)が下院議長となった。女性議員が初めて100人を超えたほか、初のイスラム教徒(ムスリム)女性議員や初のアメリカ先住民女性議員が初登院し、過去にないほど多様な顔ぶれの議員構成を印象付けた。”【1月4日 BBC】とのこと。

【日本のお寒い状況 韓国の女性蔑視 似た者同士か】
その点、日本は・・・。昨年のイコール・ペイ・デイが非常に遅い4月6日という賃金格差も問題ですが、それ以上に、上記のような意気込みを示す女性が少ないというところがもっと大きな問題のように感じます。

日本において女性の政治進出が遅れていることは毎度国際的に指摘されるところです。
最近は改善ではなく、後退の様相も。

****女性閣僚、188カ国中171位 日本、2年で65位下げる****
世界の国会議員が参加する列国議会同盟(IPU、本部ジュネーブ)と国連のUNウィメンは12日、各国の女性閣僚比率(年初時点)に関する報告書を発表した。日本は188カ国中171位で、2年前より65位下げた。
 
女性活躍を掲げる安倍政権は閣僚19人のうち、女性は片山さつき地方創生・女性活躍担当相のみで、比率は約5.3%。2年前より2人減り、中国やイラン(いずれも164位)を下回った。女性議員比率に関するIPU報告でも日本は193カ国中165位だった。
 
女性閣僚比率の1位はスペインで17閣僚中11人。韓国は83位、米国は88位だった。【3月13日 共同】
****************

政治世界だけでなく、企業においても。
ILO報告によれば、“2018年の時点で管理職に占める女性の割合は世界全体では27.1%と推計され、およそ30年にわたって緩やかな増加傾向が続いていますが、依然として低い水準にとどまっています。
国別に見ますと、G7=先進7か国ではアメリカが39.7%と最も高く、イギリスが35.9%、カナダが35.3%と続き、日本は大きく離され12%で最下位でした。”【3月8日 NHK】

制度的な問題のほかに、男女双方の意識の問題もありそうです。

そのあたりは隣国・韓国も問題を抱えています。

****Kポップ界に広がるセックススキャンダル、まん延する女性差別 韓国****
韓国のKポップ界は、究極に清廉潔白なイメージでスターを売り出してきた。スターたちはその健康的なルックスで世界中にファンを増やしてきたが、このところセックススキャンダルが相次いでいる。

活動家らは、これらのスキャンダルは、韓国社会にまん延する女性への差別と虐待を浮き彫りにしていると指摘する。
 
わずか2日のうちに、男性人気アイドルグループ「BIGBANG(ビッグバン)」のメンバーV.I(本名イ・スンヒョン)さんと、男性人気歌手チョン・ジュニョンさんの2人が、相次いで芸能界からの引退を表明した。(後略)【3月14日 AFP】
*****************

日韓両国に共通する要因としては、儒教社会の残滓でしょうか?
いずれにしても、政治問題では犬猿の仲の両国ですが、男女格差における意識の低さでは似た者同士のようです。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

国際女性デーに「女子力」「(高校野球部)女子マネージャー」を考える

2019-03-09 22:58:46 | 女性問題

(トルコ・イスタンブールのイスティクラル通りで行われた国際女性デーのデモの参加者ら(2019年3月8日撮影)【3月9日 AFP】)

【世界各地で「国際女性デー」に合わせた女性らの取組が】
日本ではあまり大きく取り上げられることはありませんが、今日「3月8日」は「国際女性デー」です。

その由来は“1904年3月8日にアメリカ合衆国のニューヨークで、女性労働者が婦人参政権を要求してデモを起こした。これを受けドイツの社会主義者クララ・ツェトキンが、1910年にコペンハーゲンで行なわれた国際社会主義者会議で「女性の政治的自由と平等のためにたたかう」記念の日とするよう提唱したことから始まった。”【ウィキペディア】とのことです。

****女性の権利向上求め各地でデモ、国際女性デー****
トルコ最大都市イスタンブールの中心部で8日、「国際女性デー」に合わせて女性ら数千人が当局が禁止した抗議デモを行い、女性の権利向上を求め、女性への暴力を非難した。警察はデモ参加者に催涙ガスを使用した。

歩行者専用の目抜き通り、イスティクラル通りの入り口付近では、暴動鎮圧用の装備をした治安部隊が女性らの集団を押し返した。警察がデモ参加者に向かって催涙ガスを発射し、警察犬を使って威嚇すると、多くのデモ参加者が脇道に逃れた。

昨年の国際女性デーの行事は平穏に行われたが、当局は今年、デモが実施される直前にイスティクラル通りでのデモ禁止を発表した。

警察はデモ開始前から市の中心部に多数出動し、タクシム広場の周囲に非常線を張った。多くの商店はこの日の営業を見合わせた。数千人のデモ参加者は、最終的にイスティクラル通りのごく一部での抗議行動を認められた。

トルコの女性活動家らは、女性に対する暴力根絶のための措置が不十分だとして以前からイスラム色の強いレジェプ・タイップ・エルドアン政権を批判している。

一方、スペインでも同日、来月の総選挙の争点になっている女性平等を求めてストライキと大規模なデモ行進が行われた。

国内二大労組の労働者総同盟と労働者委員会は2時間の時限ストライキを実施。UGTによると全国で600万人以上が参加した。他にも、複数の小規模な労組が24時間ストを呼び掛けた。

2時間の時限ストは昨年の国際女性デーに初めて行われ、これを再び実現させようと、マドリードのマヌエラ・カルメナ市長や複数の著名ジャーナリスト、修道女らがデモ参加を表明していた。

北部バスク自治州では、女性議員の大半が議会に出席せず、議会の延期を余儀なくされた。

スペインでは4月28日に解散総選挙が予定されている。左右両派が女性の権利を争点とし、男女の不平等是正を公約に掲げている。 【3月9日 AFP】
**********************

トルコ・イスタンブールのデモについては、“「黙らない」「怖がらない」と連呼する大勢の女性たちのデモに治安部隊が介入、催涙ガスも発射した。”【3月9日 共同】とも。

「黙らない」女性はエルドアン大統領のイスラム主義的価値観に合わないということでしょうか。

一方、強権的なアサド政権支配が強まるシリアでは、女性の要求も切実です。

****国際女性デー シリアで不当拘束の女性解放訴え****
内戦が続くシリアで多くの女性たちがアサド政権に不当に拘束され拷問を受けているとして抗議する集会が、8日、隣国のトルコで開かれ、シリア難民の女性も参加して国際社会に女性たちの解放に向けて行動するよう訴えました。

この集会は、国連が定める3月8日の「国際女性デー」に合わせてトルコの最大都市イスタンブールで開かれ、シリアから逃れてきた難民の女性などおよそ1000人が参加しました。

参加者たちは、シリアではアサド政権によって反政府勢力に協力したなどの疑いをかけられ多くの女性や子どもが不当に拘束されていると訴えていて、スカーフで両手を縛るパフォーマンスをして、女性たちの速やかな解放を求めました。

集会を呼びかけた団体によりますと、アサド政権によって現在も拘束されているとみられる女性は、およそ7000人にのぼるということです。

また国連も、政権側の収容所では、反政府勢力のメンバーの居場所を聞き出すために組織的に女性に性暴力を加えるなどの拷問を行っていると報告していて、内戦が続く中で女性に対する著しい人権侵害への懸念が高まっています。

集会に参加したシリア難民の女性は、「何人もの友人が性暴力の被害にあってきた。シリアで拘束されているすべての女性たちを救い出すために国際社会は行動を起こしてほしい」と話していました。【3月9日 NHK】
*******************

女性に対する性暴力と言う直截的な人権侵害は別にシリアだけでなく、残念ながら世界各地で見られることです。

3月7日、国連人権理事会は、サウジアラビアに10人の活動家の解放と、イスタンブールでサウジアラビア人記者のカショギ氏が殺害された事件に対する国連主導の捜査への協力を求める共同声明を発表しましたが、サウジアラビアでの女性拘束者への暴行・拷問も問題視されています。

“活動家らは、拘束されている人々のうち、女性は電気ショックや鞭打ち、性的攻撃、その他の拷問にさらされていると訴えている。

サウジの検察当局者は先週、国内紙に対し、報道内容を調査したが、女性への拷問を示す根拠はなく、報道は「誤り」と述べた。”【3月8日 ロイター】

欧米・日本では、さすがにそこまでの人権侵害はありませんが、経済的・社会的な女性差別・格差は多方面で見られます。

****「女性差別だ」米連盟を提訴 サッカー女子W杯Vメンバー****
サッカー女子のワールドカップで、前回優勝したアメリカ代表の選手たちが、男子代表よりも報酬が低いのは差別にあたるとして、国際女性デーにあたる8日、アメリカサッカー連盟に対して訴えを起こした。
訴えを起こしたのは、サッカー女子のアメリカ代表選手28人。

訴状によると、女子代表選手の報酬は男子代表の4割程度で、是正を求めたものの、なんの措置も取られなかったという。

このため、「報酬に格差があるのは、性差別によるもので違法」だとして、アメリカサッカー連盟に対して、男子と同等の報酬の支払いを求めている。

アメリカ女子代表は現在、FIFA(国際サッカー連盟)ランキング1位で、過去3回のワールドカップで優勝している一方、男子代表は25位となっている。【3月9日 FNN PRIME】
*********************

【世界で進む女性管理職・幹部の登用 日本ではほとんど変化なし】
各国・各機関の経済的・社会的差別・格差是正の取り組み・目標設定も報じられています。

****10年で国連職員半数女性に 事務総長「進歩に不可欠」*****
国連のグテレス事務総長は7日、国連の全職員に占める女性の割合を10年以内に50%まで高める方針を表明した上で、女性の地位向上と男女平等の実現は「世界の進歩に欠かせない」と強調した。8日の「国際女性デー」に合わせたビデオメッセージで明らかにした。
 
2018年12月時点で国連職員のうち女性は39%。17年に就任したグテレス氏は女性の幹部登用を積極的に進めており、昨年には幹部職員の女性の割合が50%に達した。

軍縮担当上級代表の中満泉事務次長や防災担当の水鳥真美事務総長特別代表ら日本人女性の幹部就任も続いている。【3月8日 共同】
******************

****仏軍、女性将官増加目指す 22年までに10%****
フランスのパルリ国防相は7日、記者会見し、軍で女性の役割強化を図る「男女共同参加計画」を発表した。士官学校の受験要件緩和や昇進機会の拡大などを通じ、2022年までに女性将官の割合を現在の約7%から10%へ増加させることなどを目指す。
 
男女平等はマクロン政権の重点政策の一つ。女性のパルリ氏は軍人の資質について「性別は関係ない。フランス史を振り返れば分かる」として、15世紀に英国と戦うフランスを救ったジャンヌ・ダルクに触れる一方「(女性を)優遇はしない。地位は全て能力と功績で与えられる」と強調した。【3月8日 共同】
********************

あまり切実に意識されることはありませんが、組織内の幹部・管理職割合が少ないことでは、日本はその後進性では世界的に定評があるところです。

****女性管理職、日本はG7で最下位 18年、世界では3割近くに****
国際労働機関(ILO)は7日、女性の労働に関する報告書を8日の国際女性デーに合わせて発表、2018年に世界で管理職に占める女性の割合は27.1%と3割近くに達した。安倍政権が女性活躍推進を掲げる日本は12%にとどまり、先進7カ国(G7)で最下位。11.1%のアラブ諸国と同水準だった。
 
ILOの統計によると、日本の女性管理職の割合は1991年の8.4%から27年間で3.6ポイントしか上昇していない。
 
世界で管理職に占める女性の割合は91年に24.8%だったが少しずつ上昇。地域別では、アジア・太平洋で約5ポイント上昇し22.5%になった。【3月7日 共同】
*********************

****女性の管理職 世界全体27% 日本は12%****
(中略)2018年の時点で管理職に占める女性の割合は世界全体では27.1%と推計され、およそ30年にわたって緩やかな増加傾向が続いていますが、依然として低い水準にとどまっています。

国別に見ますと、G7=先進7か国ではアメリカが39.7%と最も高く、イギリスが35.9%、カナダが35.3%と続き、日本は大きく離され12%で最下位でした。

また上場企業の役員に占める女性の割合は2016年の時点で、G7ではフランスが37%、イタリアが30%、イギリスとドイツが27%と続き、日本は最下位の3.4%となっていて、日本の水準が先進国の中でもひときわ低くなっている実態が改めて浮き彫りとなりました。

ILOの担当者は「女性の機会や扱いを平等にすることにとどまらず、結果の平等を実現するための積極的な法律や政策が必要だ」と話しています。【3月8日 NHK】
*******************

【女性自身の意識の問題も】
女性の社会進出が日本で遅れている理由は、社会や企業・組織における制度的問題、男性の無理解など要因は多々ありますが、世界で緩やかな変化が続く中で、日本では“27年間で3.6ポイントしか上昇していない”“アラブ諸国と同水準”というのは、女性の地位・役割に関する日本独自の価値観が背景にあってのことでしょう。

そうした女性の地位・役割に関する日本独自の価値観に関しては、社会や男性から“押し付けられている”面も多々ありますが、それだけでは日本の“無変化”は説明できないように思えます。

日本で女性の地位・役割について変化が起きない大きな理由は、そうした現状を女性自身が肯定的、あるいは無自覚に受け入れているという現実があるのではないでしょうか?

例えば、「女子力」といった言葉が女性を含めてごく一般的に使用されている現状も不思議な感があります。
もちろん「フェミニンな魅力」は私も大好きですが、そうした価値尺度で女性を測るような「女子力」といった表現には違和感も感じます。「女性とはかくあるべき」という固定観念みたいなものをベースにしているようにも思えます。

(そもそも「女子」という言葉を「私たち女子は・・・」など女性が抵抗なく使用していることにも違和感があります。学校で男子生徒との対比で使う場合は別として、一般的には「女子」は「男」に対比される“おんなこども”であり、“おとこ”に比べてのネガティブなイメージがあります。)

****サヨナラしたい8つの呪縛:6)お茶の用意は「女性の役割」****
 ■Dear Girls
1月末、プロ野球DeNAの筒香嘉智選手が、子どもの野球環境の改革を提言する記者会見を開き、こう言った。「(中学時代に所属した)堺ビッグボーイズでは、お茶当番の強制などは今は全くしていません」
 
少年野球では監督やコーチを務める父親のため、お茶や弁当を母親が交代で用意し、練習を見守るチームが少なくない。筒香選手は母親が負担を強いられていることも問題視したのだ。
 
小学6年生の息子が東京都内のチームに所属する女性(38)も、違和感を感じている。キャッチボールを教えられないからといって、「ママたちは雑務を」と男性側から言われると「それは違う」と思う。
 
この一年、「お茶どうぞ」はしなかった。「コーチは自分で持って来たらいいじゃないの」。ただ、周囲の母親たちの中には、お茶を用意することに抵抗がないように見える人も少なくない。

 ■固定された意識
マルチタレントの「はましゃか」さん(24)は一昨年末、「サラダ取り分け禁止委員会」の設立を宣言した。飲み会で、女性が大皿のサラダを取り分けたとき、「女子力あるね~」と声がかかるのを何度も聞いたのがきっかけだった。
 
サラダの取り分けは「女子力」なのか――。そんな思いから女性向けネットメディアに記事を書いた。
 
「男女問わず『やりたい人』がやればいい」「気遣いや思いやりに性別なんかない」。ツイッターにはそんな声が多数投稿された。
 
「委員会の本当の目的は、固定的な役割分担意識への問題提起なのです」。はましゃかさんは言う。

 ■「非対称」に疑問
昨年、「『女子』という呪い」という著書を出版した作家の雨宮処凛(かりん)さんは、「男と女を入れ替えて考えてみよう」と呼びかけている。「女性活躍」と言うが、「男性活躍」とは言わない。「女だてらに」と言うが、「男だてらに」とは言わない。
 
いとこの20代の女性が病気で亡くなった時のことだ。娘を亡くした母親や妹を亡くした姉に「ビールもう1本!」などと言っていた親戚の男性に対し、「殺意が芽生えた」と書く。
 
男性にとって都合がいい女性がよしとされる。男が頑張れば評価につながるのに、女性には時に冷ややかな視線が注がれる。

こんな「非対称」な社会に疑問を感じて思いついたのが、この「男女入れ替え」術だ。「必殺! フェミ返し」と命名した。
 
「この社会の変なところを一瞬で男性に気づいてもらういい方法なんです」

 ■価値観、カラフルに
小学1年生の私に親が与えたランドセルの色はピンクだった。交通安全を考えたようだが、案の定クラス中から「男のくせに、なんやこの色」総攻撃。泣きついて黒に買い直してもらった。

あれから半世紀。ランドセルこそずいぶんカラフルになったが、「男は(女は)こうしたもんだ」という決めつけは、どれだけ変わっただろう。ジェンダーを取り巻く価値観も、もっとカラフルであっていい。【3月7日 朝日】
*******************

毎年、夏の甲子園中継などで取り上げられる“女子マネージャー”の裏方的美談にも違和感があります。(一生懸命やられている方には、非常に失礼な言い様ですが・・・)

本来“マネージャー”というのは、組織の内外を調整する管理職的業務ですが、実際に“女子マネージャー”がやっているのは、選手のユニフォームの洗濯であったり、極めて補助的な仕事です。

もちろん、どんな仕事にも“裏方”は必要であり、その仕事は尊重されるべきですが、その“裏方”と“女子”がくっつくと、女性の役割に対する固定観念みたいなもの感じてしまいます。

夫を陰で支える“良妻賢母”的なイメージでしょうか。

そうした“女子マネージャー”の存在を男性選手が当然のように受け入れ、女性自身がそういう立場を嬉々として受け入れているということに対する違和感です。

そんなに野球が好きなら、マネージャーでなく、自分たちでやったら?・・・とも思うのですが。
もちろん、中学で女子野球をやっていたけど、高校ではそういう場がないので・・・といった話もあるのでしょうが・・・。

女性週刊誌の見出しに「女子力アップ」という言葉が躍り、夏の甲子園中継で“女子マネージャー”の裏方美談が語られる限り、日本の“アラブ諸国と同水準”という現状はあまり変わらないのでは・・・とも思えます。

こうした“女性自身の意識”に対する思いは、個人的な体験に根差すのかも。

昔、男女雇用機会均等法が改正されたときに、組織内の女性の位置づけの変更作業に関係しましたが、その際に一番の抵抗となったのは、組織でも、管理職でも、男性でもなく、「男性と待遇で格差があったとしても、これまで以上に働きたくない。今のままでいい。」という女性の存在でした。

もちろん、それは女性が直面している家事・育児の負担という現実的制約によるものではありますが・・・・。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

アイルランド 国民投票で中絶合法化へ アルゼンチンも来月法案採決 アメリカでは禁止法制定の州も

2018-05-28 22:48:18 | 女性問題

(人工妊娠中絶の合法化の是非を問うアイルランドの国民投票で、勝利を喜ぶ賛成派の人たち=26日、ダブリン【5月26日 共同】)

アイルランド 同性婚に続く「静かな革命」】
カトリック国・アイルランドで1983年の住民投票で成立した憲法修正第8条は、まだ生まれていない者の生存権を認め、女性と胎児の生存権は同等としています。

中絶は出産で母親に生命の危険がある場合に限って認められ、性的暴行や胎児の異常が理由であれば違法となります。罰則は最高で禁錮14年。

このために毎年何千人ものアイルランド女性が中絶手術のために英国へ行ったり、中絶ピルを入手したりしているという現実が生じています。(1992年の国民投票で、国外で妊娠中絶の手術を受ける権利や、海外の中絶サービスに関する情報を受け取る権利があることが認められています。)

周知のように、この憲法修正第8条を廃止するかどうかが問われた5月25日の国民投票では、投票直前には反対派の追い上げも報じられ、接戦も予想されていましたが、北部ドニゴール州を除く全ての選挙区で賛成派が勝利。ほとんどの州で性別や年齢に関わらず改正を望む形となりました。

最終集計では賛成が66.4%、反対が33.6%だと、ほぼダブルスコアとなっています。【5月28日 BBCより】

****アイルランドが国民投票で中絶合法化、同性婚に続く「静かな革命」が進行中****
<世界で最も中絶に厳しい国のひとつだった保守的なアイルランド社会が、急速に変わろうとしている>

5月26日に行われたアイルランドの国民投票で、人工妊娠中絶を禁止する憲法修正第8条の撤廃が決まった。カトリック教徒が人口の8割を占め、世界でも最も中絶に厳しかったアイルランドのこの歴史的な国民投票には、数多くの在外有権者も帰国して参加した。

憲法修正第8条は、胎児の生きる権利と母親の生存権を同列に並べ、レイプ被害者の場合や母体に危険がある場合の多くも含め事実上中絶を禁止してきた。その是非は、2015年に同性婚を認め、やはり歴史的と言われた国民投票よりも世論の対立が激しい問題だった。

だが結果は誰も予想しないものだった。

26日午後に発表された開票結果では、中絶合法化に賛成が66.4%、反対が33.6%で、賛成は同性婚賛成の62.1%を上回った。投票率は有権者の64.13%にのぼり、これも同性婚に関する国民投票の投票率(60%)を上回った。

昨年、同国史上で初めて同性愛者であることを公にして首相になったレオ・バラッカー首相は、この結果を賞賛した。「私たちが目にしたのは、過去20年間にわたってアイルランドで起きている静かな革命の最高点だ」(後略)【5月28日 Newsweek】
********************

“出口調査によると女性投票者の7割が賛成。年齢低下と共に賛成支持が高まる傾向にあり18〜34歳の80%以上が賛成を選んだ。”【5月26日 共同】“年齢別で合法化を支持しなかったのは65歳以上の層だけだった”【5月27日 CNN】ということで、ほぼ国民の総意という結果です。

なお、“国民投票は、中絶を禁じた憲法規定を廃止し、妊娠12週未満の中絶を認めることの賛否を問う。法律で中絶が認められるのは日本では妊娠22週未満、英国は24週未満。”【5月26日 産経】とのこと。

北アイルランドの対応にはメイ首相苦慮
アイルランドの「革命」により取り残された形になったのが、中絶を厳しく禁じる法律が現在も残るイギリスの北アイルランド。中絶支持派の次の標的ともなっています。

イギリス・メイ首相は、中絶反対派の地域政党との閣外協力で政権を維持しており、対応に苦慮しそうです。

****北アイルランドはどうなる?****
今回の憲法廃止により、英国とアイルランドで中絶をほぼ全面禁止しているのは北アイルランドだけとなり、テリーザ・メイ英首相は行動を迫られている。

シン・フェイン党のメアリー・ルー・マクドナルド党首とミシェル・オニール副党首は26日、ダブリン城の上で「次は北」と書かれたプラカードを掲げ、北アイルランドでの改革を求めた。
オニール氏は27日、国民投票の結果が「アイルランド全体が変化を本当に求めている」ことの表れだと話した。

しかし、メイ首相と閣外協力する北アイルランドの民主統一党(DUP)は中絶禁止の改正に強く反対しており、メイ首相は厳しい状況に立たされている。【5月28日 BBC】
******************

アルゼンチン 世論調査では大半の国民が合法化法案を支持
アイルランド同様にカトリック教徒が多い南米でも中絶合法化が求められています。

****継父にレイプされ10歳少女が妊娠、中絶合法化の議論白熱 アルゼンチン****
妊娠中絶を合法化する法案の採決を来月に控えて議論が白熱しているアルゼンチンで、10歳の少女が母親の再婚相手にレイプされ妊娠したことが明らかになり、国内に衝撃が走っている。
 
この少女は、腹痛を訴えて受診した病院で妊娠21週と診断された。
 
アルゼンチンの現行法では、レイプによる妊娠や母体の健康に危険がある場合に限って中絶を認めているが、少女の住むサルタ州は保守的な傾向が強く、レイプ被害者については妊娠12週までしか中絶を認めていない。
 
サルタ州当局によると、少女と母親は書面で中絶を拒否したという。しかし、女性の権利活動家でジェンダーに基づく暴力に反対する運動「NiUnaMenos」の創設者でもあるマリアナ・カルバハル氏は、当局の説明には疑いの余地があると指摘している。

「少女の家族はおびえている。当局が母親に妊娠中絶は非常に危険だと告げたからだ。少女自身がどう考えているかは分からない。妊娠中絶はまだ可能だ」とカルバハル氏はAFPに語った。
 
カルバハル氏によると、少女は妊娠12週以内だった2月に病院を受診したが、そのときは便秘と診断されていたという。
 
少女が母親の再婚相手から日常的にレイプされていたことが発覚したのは、2度目の受診のときだった。
 
国連児童基金(ユニセフ)によると、アルゼンチンでは年に2700人もの10〜14歳の少女が出産している。
 
アルゼンチン議会では6月13日に妊娠中絶合法化法案の採決が行われる予定。ローマ・カトリック教会の反対にもかかわらず、世論調査では大半の国民が法案を支持している。【5月22日 AFP】
*******************

中絶禁止に向けて、1973年の最高裁判決を覆すことを目指す大統領・与党
一方、宗教保守派が大きな力を持つアメリカでは中絶合法化は非常に先鋭な政治問題化します。
共和党知事のアイオワ州では、憲法で中絶の権利が認められているにもかかわらず、国内で最も厳しいとされる中絶禁止法が成立しています。

****アイオワ州で中絶禁止法成立****
米中西部アイオワ州のレイノルズ知事(共和党)は4日、胎児の心音が聞こえた時点で人工妊娠中絶を禁止する州法に署名し、法律が成立した。

全米で最も厳しい妊娠中絶規制法となるが、女性団体が「違憲」として提訴する構えで、妊娠中絶をめぐって擁護派(プロチョイス)と反対派(プロライフ)の新たな法廷闘争が始まるとみられる。

中絶反対派の議員が多い共和党は妊娠中絶を合法化した1973年の最高裁判決を覆すことを目指し、法廷闘争に持ち込む構えだ。【5月6日 朝日】
*******************

“「胎児の心音法」とも呼ばれるこの法律は、レイプや近親相姦による妊娠は対象外としているが、胎児の心音が確認できるのは一般的に妊娠6週目ごろとされ、反対派は多くの女性が自身の妊娠に気付いてすらいない段階での中絶を禁じる内容だと批判している。”【5月5日 AFP】

アメリカでは中絶合法化(あるいは移民問題・人種差別・LGBT)のような国論を二分するような問題が司法の場に持ち込まれ、最終的には最高裁の判決で決着します。

大統領の任期は最長で2期8年ですが、最高裁判事は終身制で、自らが引退、もしくは死去するまで判事として務めることができます。

そのため大統領の最も大きな仕事のひとつが、最高裁判事に自らと考えを同じくする人物を送り込むことになっています。(大統領が指名し、上院の過半数で承認されます)

定員9人の最高裁では、2016年2月に保守派だったアントニン・スカリア判事が急死して以来、保守派とリベラル派が4人ずつの拮抗した状態になっていましたが(オバマ前大統領の指名した候補は上院共和党の反対で実現しませんでした)、トランプ大統領は保守色の強いゴーサッチ氏を最高裁判事に据えることに成功し、大きな成果をあげています。

現在のところ、中絶合法化に関してはリベラル5、保守4となっていますが、最高齢のギンズバーグ氏が死去あるいは引退し、トランプ大統領によって保守派判事が任命されれば逆転することにもなります。【2017年03月16日 ハフポスト“大統領より怖い? 9人目の最高裁判事任命”より】
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

女性の権利保護という現代世界の大きな流れ

2018-04-29 22:24:41 | 女性問題

(スペイン北部パンプローナで、18歳女性を集団レイプした男らに強姦罪が適用されなかったことに抗議するデモに参加する人たち(2018年4月28日撮影)。【4月29日 AFP】)

性的暴力厳罰化を求める動き
“第三代台湾総督で「軍神」と呼ばれた乃木希典の母親・寿子は、息子と共に台湾へおもむく際に「台湾の女子は幼いころから纏足を強いられていると聞く。わたしは、その足を自由にしてあげたいのです」と語り、明治天皇を感激させたとの逸話が残っている。”【4月17日 WEDGE】

乃木希典が母と妻を携えて台湾に渡ってから、およそ120年の歳月が流れ、周知のように今の台湾は女性総統だけでなく、官房長官にあたる総統府秘書長に南部の高雄市長を務める陳菊氏(67)を起用する発表があり、総統府の「ツートップ」である総統と秘書長が共に女性となっています。

一方、日本では相撲協会が「女人禁制」で揺れ、福田淳一財務次官のセクハラ問題が国政上の大きな問題ともなっています。

女性を“穢れ”とみなすところから生まれた“伝統”なら、それは“伝統”ではなく“悪弊”と呼ぶべきもので、早急な見直しが必要と、個人的には考えています。

日本が世界第114位の“ジェンダー後進国”であることは4月19日ブログ「注目される“保守的”日本のセクハラ騒動 インドの性暴力 フランスのレイプ実態 スウェーデンでは・・・」でも取り上げましたが、同時に、世界各地で女性への性暴力など、女性の権利保護が未だ不十分な状況であることも併せてとりあげました。

そうした状況にあって、女性の権利保護をもっと進めていこうという動きが、現代世界の大きな流れともなっています。

****集団レイプ、強姦ではなく性的虐待で有罪 各地で抗議デモ スペイン****
スペインで、裁判所が26日に同国北部パンプローナで2年前に開かれた牛追い祭り「サン・フェルミン祭」で18歳の女性を集団レイプした5人の男に対し、強姦(ごうかん)罪ではなく性的虐待の罪で禁錮9年を言い渡したことから、各地で同日から2日間にわたって大規模な抗議デモが行われている。
 
27歳から29歳までの男5人は2016年7月7日、サン・フェルミン祭初日にパンプローナのアパートの入り口で、当時18歳だった女性を集団レイプした罪に問われていた。(中略)

男たちは女性の携帯電話を盗み、女性をその場に放置した。男たちは事件の様子を自分たちのスマートフォンで撮影し、その後、メッセージサービスの「ワッツアップ」で自分たちを「La Manada(「一味、群れ」の意)」と名乗り、犯行について自慢するなどしていたという。
 
裁判所は被告の男5人に対し、本件では「暴力や脅迫」は認められなかったと判断し、強姦罪を含めた性的暴行の罪に関しては無罪とし、さらに、被害者の女性は同意したわけではないが拒絶する意思表示もしなかったとの裁定を下した。
 
セクハラ告発運動「#MeToo(私も)」が世界的に広がる中、今回の判決に対して激しい怒りの声が上がり、判決が言い渡されたパンプローナ裁判所の外では27日、デモに集まった人々が「性的虐待ではない、レイプだ!」と叫んだり、「(ここは)不正の館」と書かれた横断幕を掲げたりした。

女性の人権団体によれば、同市内では28日にも抗議デモが予定されている。デモは他にも、バルセロナやマドリード、さらには男たちの出身地セビリアなどでも行われている。
 
スペイン政府は27日、性犯罪関連法の改正について検討する考えを発表した。【4月28日 AFP】
***************

抗議デモは三日目の28日も続いており、“警察当局によると、パンプローナだけでも28日に女性を中心とする3万2000〜3万5000人が「性的虐待ではない、レイプだ!」をスローガンとする抗議デモに参加した。デモ行進は平和裏に行われたという。このほか、5人に性的虐待での判決を下した判事らの罷免を求めるオンライン署名は、28日までに120万の署名を集めた。”【4月29日 AFP】

4月19日ブログでも取り上げたインドの“8歳少女のレイプ殺人”も、世論の激しい怒りが政治を動かすことにもなっています。

****インド8歳少女のレイプ殺人で、少女への性的暴行を死刑に****
<少女を狙った残虐な事件が相次ぎ世論の怒りは高まっているが、レイプが減る気配はない>

4月21日、インド政府は閣議で12歳未満の女児への性的暴行罪に死刑を適用することを認める政令を承認した。背景には、相次ぐ性的暴行事件に対する世論の激しい怒りがある。

ロイター通信によれば、今回の政令はナレンドラ・モディ首相が招集した緊急閣議で決められた。16歳以下の少女への性的暴行の厳罰化という刑法の修正条項も含まれている。

インドでは8歳の少女が性的暴行された末に殺されるという残虐な事件が起き、社会に衝撃を与えたばかり。

ワシントン・ポストが当局者の話として伝えたところでは、被害者は自分のスカーフで縛られ、男たちに繰り返し暴行されたあげく、頭蓋骨を石で打ち割られていたという。この事件はインドで深刻になりつつある宗教的・民族的分断をも浮き彫りにした。被害者の少女はイスラム教徒で、容疑者の男たちはヒンズー教徒だったのだ。

与党の政治家が関与したとされる事件も
またワシントン・ポストによれば、モディ首相の与党インド人民党(BJP)の政治家も未成年者に対する性的暴行で逮捕・起訴された。これに対してインド全土で抗議運動が起き、モディが女性を守るために十分な対策を採っていないとの批判が多くの人々から上がった。怒りの声は同じ与党内部からも聞かれた。

「BJPはこうした犯罪者たちの弁護役ばかり務めてきた。まったく許されることではない」と、ヤシュワント・シンハ元財務相は同紙に述べた。

国民からの激しい突き上げを受けてモディは「幼い少女への性的暴行というのは本当に胸が締めつけられる事件だ。これほどひどい道の踏み外し方はないと思う。性的暴行は性的暴行だ。娘に対するこんな不正義を許しておくことがどうしてできるだろう」と述べた。

こうした事件から思い出されるのが、12年にデリーのバスの車内で、理学療法を学んでいた23歳の女子学生が6人の男に輪姦された痛ましい事件だ。

世論の怒りにもかかわらず、インドの性的暴行事件が減る気配はない。16年の発生件数は4万件を超え、被害者の40%は子供だったとロイターは伝えている。

地元紙タイムズ・オブ・インディアによれば、政令は承認を得るためラム・ナト・コビンド大統領のもとに送られる。【4月23日 Newsweek】
*********************

もっとも、女性への性暴力がなくならないだけでなく、上記“8歳少女のレイプ殺人”の結末もインド社会の深刻な問題を明らかにしています。

****ヒンズー教徒による8歳女児の集団レイプ殺人、イスラム教徒が離村 印*****
インド北部ジャム・カシミール州で今年1月、8歳になるイスラム教徒の少女がヒンズー教徒の男らに集団レイプされた末に殺害された事件以降、少女の家族が住んでいた村ラサナではイスラム教徒が一切いなくなってしまった。
 
現地警察によると、少女はバカルワルと呼ばれるイスラム教徒の遊牧民出身で、村の多数派を占めるヒンズー教徒たちの一部が、夏季には丘陵地帯で放牧を行うバカルワルの人々を追い出すべく、少女をレイプし殺害したという。
 
その企ては目論み通りになったようにみえる。事件後、少女の家族は警察の保護の下で村から丘陵地帯へ移動し、また他のイスラム教徒およそ100人全員が村を離れた。
 
犠牲となった少女の家族が暮らした家は空き家となり、武装した警官5人が警備に当たっていたものの、その半数は外で椅子に座り眠っていた。
 
警察によると少女はヒンズー教の寺院に5日間監禁され、繰り返しレイプされた末に撲殺された。
 
ジャム・カシミール州はインドで唯一イスラム教徒が多数派を占める州だが、事件が起きた南部ジャム県はヒンズー教徒が多数を占める。ただ当局の文書によると、ラサナではヒンズー教徒とイスラム教徒はしばしば、お互いについて警察に訴え出ることはあったものの、事件までは比較的平和に共存していたという。
 
少女の家族にお金を寄付しようとパンジャブ州からやって来たイスラム教徒グループの男性は、事件がナレンドラ・モディ首相率いるヒンズー至上主義の政権があおったイスラム教徒に対する敵意を反映していると非難。
 
ただ一方で、「インドでは今、この事件を機に考え方が変わりつつある。みんなが病的な考え方に立ち向かっている」と語った。【4月24日 AFP】
*******************

“この事件を機に考え方が変わりつつある”・・・・そうであることを願います。

ウガンダや中国でも女性への暴力・差別が問題視
一方、アフリカの多くの国々では、女性への性暴力はおろか、住民の生命さえいともたやすく奪われるような現実がありますが、そんなアフリカにも多少は女性権利保護の波は及んでいるようです。

****妻は殴れ」発言のウガンダ議員、抗議殺到で謝罪****
アフリカ東部ウガンダで、男性たちに妻を殴って「しつける」よう勧める発言を行った議員に抗議が殺到し、同議員は14日、謝罪に追い込まれた。
 
オネスマス・トゥイナマシコ議員は議会への書簡で、本心では「女性に対するあらゆる形態の暴力を憎んでいる」とし、「議員各位、世間一般の皆様、とりわけ女性の方々に私の心からの率直な謝罪を受け入れてほしい」と陳謝した。
 
トゥイナマシコ議員は8日の「国際女性デー」の翌日、地元テレビ局NTVのインタビューで「男たるもの、妻をしつけなければならない。本気で妻をしっかりさせたければ妻に触れ、組み合い、何なら殴る必要だってある」と発言し、女性たちの怒りを買った。
 
ただ、このような考えはウガンダでは珍しくない。政府が2016年に発表した報告書によると、同国の14〜49歳の女性の5人に1人が過去1年以内に身体的、または性的な暴力を受けたと明かしたという。【3月15日 AFP】
*****************

もっとも、ウガンダでは2013年に同性愛行為に対して最高刑で終身刑を科すと定めた「反同性愛法案」が成立し、人権保護の面では国際的にいつもやり玉にあがる国のひとつです。

人権保護とは縁遠い中国にあっても、大手企業が求人広告などにおける女性差別を国際人権団体から批判され、謝罪する事態に。

****女神」募集・・・・中国アリババなど性差別的な求人広告を謝罪**** 
アリババやテンセントなど中国の大手IT企業数社が、国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)が23日公開した報告書を受け、求人広告に含まれる性差別について謝罪し、問題に対処することを約束した。(中略)

中国のIT大手や政府機関は「男性限定」の求人広告を出す一方、他の広告では女性の応募者に「整って」おり「見た目がよい」ことを求めていた。

電子商取引大手のアリババは今後「より厳格な審査を実施する」とし、ネット大手のテンセントは謝罪した。

アリババは魅力的な女性従業員を雇用するキャンペーンで、ソーシャルメディア上で求める人員の表現に「アリ・ビューティーズ」(アリババの美人の意)や「女神」といった言葉を繰り返し使ったと非難された。

中国で最も一般的なメッセンジャーアプリWeChatを運営するテンセントや同じくネット大手のバイドゥ、中国最大の通信会社ファーウェイなど他の大手企業も、女性従業員の美しさについて広告を出したことで責任を問われた。

HRWは広告が、女性は男性よりも能力が低いとか、家族介護者など中国女性に関する型にはまった役割からくる女性は自らの仕事に全力を傾けないだろうといった「伝統的かつ深く差別的な視点」を反映したものだと指摘した。

アリババの広報担当者は23日、BBCに対し「雇用だけではなく、指導的役割に女性を就かせてきた我々の実績は、自社を物語っている」と語った。

同社は創業者と管理職の3分の1が女性だとの事実を示したものの、「性別に関係なく平等な機会」を提供するという「ポリシーの遵守」の保証を今後より徹底するとも述べた。

テンセントはBBCに、報告書で強調された取り組みは「我々の価値観を反映していない」と話した。
同社の広報担当者は「広告が生まれたことを申し訳なく思う。再びこのようなことが起こらないよう迅速な対応を取る」とした。

CNNによるとバイドゥの広報担当者は「女性従業員が組織全体で果たしている重要な業務を評価しており、我々の求人広告がバイドゥの価値観に沿わなかったというこの事例を深く後悔している」と述べたという。
CNNはまた、バイドゥがHRW報告書の発表前に問題の求人広告を確認し削除したとも報じた。

スマートフォン製造の世界的大手、ファーウェイは、疑惑について再検討し、同社の求人資料が「性平等性に完全に配慮」されることを確実にするよう取り組むと語った。

「男性のみ応募可能――中国の求人広告における性差別」と題された報告書は、公的機関の雇用慣行にも焦点を当てた。

HRWのソフィー・リチャードソン中国部長は、「中国で2018年に出された国家公務員を募る求人広告の5分の1が、『男性限定』または『男性が好ましい』としていた」と話す。

「中国当局は、女性を明白に差別している政府機関や私企業による雇用慣行を終わらせるため、既存の法律をただちに執行する必要がある」

99ページにわたる報告書は、2013年から2018年の間に中国の求人サイトおよび企業サイト、そしてソーシャルメディア上に出された3万6000件以上の求人広告を分析した。【4月24日 BBC】
********************

まあ、問題となった大手企業は外国でも活動をしていることから、こうした批判が事業への悪影響を招くことを警戒して謝罪等を行っているのでしょう。中国国内だけに限れば、そうした問題意識も共有されてはいないのでは。

反作用として、伝統回帰を重視する動きも
女性の権利保護を進める動きが世界で大きな流れに・・・とは言いつつも、何事においても、作用があれば反作用もあります。

カトリックなどの宗教右派には、こうした流れを伝統破壊とみなす考えも根強く、巻き返しの動きも。

****クロアチア首都で大規模デモ、女性への暴力防止条約の批准に反対****
クロアチアの首都ザグレブで24日、女性に対する暴力防止を目指す「イスタンブール条約」の批准に反対するデモが行われ、報道機関の推計で最大1万人が参加した。
 
イスタンブール条約は配偶者による性的暴行から女性器切除まで女性へのさまざまな暴力行為の防止を図る法的拘束力のある取り決めとしては世界初のもの。欧州評議会が策定し、これまでに欧州連合加盟17か国を含む28か国が批准した。

クロアチアでは22日にアンドレイ・プレンコビッチ首相が率いる連立政権が議会に批准を求めていた。
 
この条約をめぐりクロアチアの世論は割れている。カトリック教会が支援する保守派は、中道右派の与党「民主同盟」の強硬派とともに批准反対を表明。

女性の保護を装って伝統的な家族を台無しにする「ジェンダーのイデオロギー」を奨励しているなどと主張している。

批准反対の立場を取るカトリック教会はここ数週間、聖職者がミサの後に抗議するなど激しい活動を展開していた。
 
2013年に最も新しいEU加盟国となったクロアチアは人口約420万人の90%近くをカトリック教徒が占めており、教会が社会で大きな役割を果たしている。【3月25日 AFP】
****************

日本でも“サザエさん一家”に見られるような“伝統的家族観”は根強く、未婚化や少子化を若者の価値観の変化や共働きの弊害だとして“伝統的家族観”への回帰を唱える人々も少なくないようです。

伝統回帰で今後の少子高齢化を乗り切れるのか・・・という問題もありますが、何よりも、そこに生きる人々が幸せになれるのか?という問題でしょう。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

注目される”保守的”日本のセクハラ騒動 インドの性暴力 フランスのレイプ実態 スウェーデンでは・・・

2018-04-19 22:02:02 | 女性問題

(インドのジャム・カシミール州およびウッタルプラデシュ州で起きた女児レイプ殺人事件に抗議し、グジャラート州アーメダバードでろうそくをともして行われたデモの様子(2018年4月16日撮影)。【4月17日 AFP】)

【「ジェンダー後進国」日本は114位 保守的日本社会のセクハラ騒動に世界も注目
世界基準で見た場合、日本が男女格差の大きい「ジェンダー後進国」であることは、常々指摘されているところです。

****世界「男女平等ランキング2017」、日本は114位で昨年より3位後退。北欧諸国が上位 ****
世界経済フォーラム(WEF)は11月2日、各国のジェンダー不平等状況を分析した「世界ジェンダー・ギャップ報告書(Global Gender Gap Report) 2017」を発表し、毎年発表している2017年版「ジェンダー・ギャップ指数(Gender Gap Index:GGI)」を公表した。対象は世界144カ国。

格差が少ない1位から5位までは、アイスランド、ノルウェー、フィンランド、ルワンダ、スウェーデン。日本は114位で昨年111位から3つ下がった。その他では、ドイツ12位、英国15位、米国49位、中国100位でいずれも日本より上。韓国は118位だった。

この指数では、ジェンダー間の経済的参加度および機会、教育達成度、健康と生存、政治的エンパワーメントという4種類の指標を基に格差を算定し、ランキング付けされている。(中略)

日本は、2015年が101位、2016年が111、2017年が114位とどんどん順位を落としている。

日本の評価は、項目ごとに優劣がはっきりしている。読み書き能力、初等教育、中等教育(中学校・高校)、平均余命の分野では、男女間に不平等は見られないという評価で昨年同様世界1位のランク。

一方、労働賃金、政治家・経営管理職、教授・専門職、高等教育(大学・大学院)、国会議員数では、男女間に差が大きいとの評価で世界ランクがいずれも100位以下。その中でも、最も低いのが国会議員数で世界129位。

その他の項目でも50位を超えるランクは一つもない。

全体順位114位という結果は、G7諸国とロシアを含む先進8ヶ国の中で断トツの最下位。(中略)

日本は、厚生労働省が旗を振り、企業も性別ダイバーシティに力を入れているが、毎年順位が落ちていく。一般的な報道では企業の女性管理職比率ばかりが注目されるが、大学や国会議員も同じぐらい足を引っ張っていることを忘れてはいけない。

ダイバーシティ不足を指摘する為政者や専門家こそがまず範を示すべきではないだろうか。【2017年11月2日 SustainableJapan】
*******************

もちろん、特定項目に絞って数値化したものが、どれだけの意味を持つのか・・・という疑問はあるでしょうが、先進国で断トツ最下位という結果になっていること、しかも年々順位を落としていることは、なにかしら改善すべきものがあると認識すべきでしょう。

上記のような日本における女性の社会的地位の状況にリンクするものがあると思われますが、日本では「#MeToo(私も)」運動はあまり大きな社会現象とはなっていません。

そうしたなかで、“まず範を示すべき”立場にある官僚トップのセクハラ問題が大騒動になっているのは周知のところです。

****セクハラ告発の珍しさ注目=財務次官辞任、海外メディアも報道****
女性記者に対するセクハラ疑惑で福田淳一財務事務次官が辞職を表明したことは、海外メディアも相次いで取り上げた。

世界では昨年以降、セクハラ被害を公表する「#MeToo(私も)」運動が活発化。こうした中、海外メディアは、日本では同運動が広がっておらず、セクハラが告発されることは珍しいと注目している。
 
#MeToo運動のきっかけとなったハリウッドの大物プロデューサーによるセクハラ疑惑を昨秋に報じ、今年米ピュリツァー賞を受賞した米紙ニューヨーク・タイムズは18日、#MeToo運動に「日本が参加するかもしれない小さな兆し」と報道。

さらに、「日本ではセクハラ問題や性的暴行に関する国民的な議論は避けられてきており、こうした辞任は珍しい」と指摘した。
 
ロイター通信は「相次ぐスキャンダルで支持率が落ち込む安倍政権への打撃」と報道。また、世界で#MeToo運動が広がる一方、日本では著名人によるセクハラ被害が告発された例がほとんどなかったと指摘。「被害者は自身が責められることを恐れ、公表を控えることが多い」と伝えた。
 
英紙フィナンシャル・タイムズは「日本では珍しい#MeToo例」と報道。英BBC放送も「社会的に保守的な日本社会は#MeToo運動への参加が遅れている」と伝えるとともに、日本では「政治や企業の中に大きなジェンダーギャップ(男女格差)がある」と指摘した。【4月19日 時事】 
********************

重要な問題が山積するときに“こんな問題”で混乱するのは・・・との見方もあり、辞任もそうした声への謝罪の意味合いのようですが、現代社会にあってセクハラが許されないのは北朝鮮からのミサイルが飛んでくる・こないには関係なく自明のことです。
また、国家トップのスキャンダルも「またか・・・」ですまされる“大国”もありますが、それに比べればセクハラ騒動は“健全さ”のあらわれでもあるでしょう。

インドで相次ぐ女性への性的暴力事件
ただ、別に日本の「ジェンダー後進国」の状況、セクハラの実態を弁護するつもりは全くありませんが、世界に目を転じれば、“セクハラ”なんてお上品なものではなく、むき出しの性的暴力が蔓延している国が多々あります。

例えば、コンゴ民主共和国などのアフリカの紛争多発地域における性的暴力は目を覆うものがありますが、この地域では女性への性的暴力に限らず、虐殺・暴行を含めた暴力行為そのものが日常化しているという根本的な問題があります。

そうしたアフリカの混乱地域に比べれば、まだましなのかもしれませんが、“世界最大の民主主義国”インドも、女性への性的暴力が大きな社会問題になっています。

****バス内集団レイプ事件から5年超・・・・警察の対応改善進まず インド****
2012年にインドの首都ニューデリーを走るバスの車内で女子学生のジョティ・シンさん(当時23)が集団による性的暴行を受けて死亡した事件から5年以上が経過する中、同国では女性の地位向上や性的暴行事件への対応改善が声高に叫ばれるようになった。

だがその一方で、助けを求める性暴力の被害者たちに対する警察のハラスメントは今も後を絶たないという。
 
同国では性犯罪に対する取り組み不足に対して反省を求める声が高まり、犯人はもとより、事件を無視したり被害者を侮辱したりする警察官を処罰する法律が強化された。

しかし、警察は今もレイプとみられるケースを事件化しなかったり、被害者に犯人と和解するよう圧力をかけたりしていると、人権団体は訴えている。
 
同国ラジャスタン州で義理の兄弟から暴行を受けたある女性は、家へやってきた警察に「和解案に署名しろ、さもないとお前たちを殴りつける」と言われたと告白。

さらに「賄賂を要求して私たちを脅迫した。警察署を訪れた時はいつも邪険に扱われ、『何も起きていないのにお前はうそをついている』などと言われた」と証言している。
 
また国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウオッチは昨年11月の報告書で、ニューデリーでの事件の余波を受けて、性犯罪の扱いの改善が誓われたものの「十分に実現していない」と指摘。
 
法的サービスの援助を女性たちに提供している慈善団体「Jan Sahas」によると、警察は現在も屈辱的な「処女検査」のため犠牲者を地元の病院に差し向けているという。同団体の一人は「犠牲者がしばしば動物のように扱われている」と述べた。
 
インドでは依然、首都だけでも毎日5件、全土では100件以上の性的暴行事件が記録されている。
 
その一方、首都警察の報道官は、女性たちが「5年前より安全になったと感じている」ことに自信を持っているという。
 
ただ、報道官は2012年以降、パトロールを増やし、女性向けのヘルプラインや護身術講習を導入したとする一方、さらなる対策が必要であることも認めている。【4月3日 AFP】
******************

事態を改善していく役割を担うべき警察そのものに意識の遅れがあるだけでなく、“まず範を示すべき”政治家にも。

****インド警察、国政与党の有力地方議員を少女レイプ容疑で捜査****
インドの警察当局は12日、ナレンドラ・モディ首相率いる国政与党・インド人民党所属の有力地方議員について、少女に対するレイプ容疑で捜査を開始した。

今回の事件により、同国のエリート層が刑罰を免れている実態に改めて厳しい目が向けられている。
 
BJP所属でウッタルプラデシュ州議員のクルディープ・シン・センガル容疑者とその兄弟には、同州ウナオ地区で被害者の少女をレイプした疑いが持たれている。
 
センガル容疑者は同州の有力議員。この拉致およびレイプ事件は昨年6月に発生していたが、11日夜になって州首相が捜査を命じ、連邦捜査当局の手に捜査が委ねられるまで地元警察は対応を拒否していた。
 
州警察の本部長は記者会見で「容疑者の事件は受理され、今後はインド中央捜査局がどのような対応が必要か決定する」と述べた。
 
この事件をめぐっては被害者である少女の父親が先週、警察の拘束下で負ったとされる傷が原因で死亡し、改めて事件に注目が集まった。

また少女は8日、州首相宅前で自身の体に火を付けようとした。少女の話によると、父親は事件を追及しようとしたところ逮捕され、警察によって拷問を受けたという。
 
センガル容疑者は議員に4期選出された一方、無法ぶりでも知られており、容疑を否認しているという。【4月12日 AFP】
*****************

まあ、政治家の下半身に問題が多いのは日米を含めて世界共通のことではありますが、レイプとか、地元警察が対応を拒否といったあたりはやはり問題です。

女性への暴力と、インド特有の宗教対立感情が結びつくと、悲惨な事件をも生みます。

****印ヒンズー教徒グループがイスラム教徒の8歳少女殺害 目的は異教徒「排除」 蛮行に各地で抗議デモ****
インドで8歳のイスラム教徒の少女が、国内最大宗教であるヒンズー教徒のグループに性的暴行を受けて殺害されるなど、女性への暴行事件が相次いでいる。

各地で極端な民族主義や女性差別に抗議するデモに発展。12日深夜には首都ニューデリーでも集会が開催され、参加者は「差別には厳罰を」などと訴えた。
 
8歳の少女が殺害された事件は今年1月に北部ジャム・カシミール州で発生した。印PTI通信などによると、ヒンズー教徒のグループは約1週間にわたり、少女を寺院に監禁して殺害したという。少女には薬物が投与され、遺体は森林に放置された。
 
これまでに元州政府関係者や警察官を含む8人が逮捕された。犯行の残忍さもさることながら、イスラム教徒の一団を「地域から排除するため」脅迫の意味で事件を計画したと供述しており、怒りが広がっている。

国政与党のインド人民党(BJP)所属の政治家が、犯人を擁護する集会に出席したことも反発を招く要因となった。(後略)【4月15日 産経】
******************

上記事件が問題となっているさなか、再び女児への性的暴行事件が。

****インドで7歳女児のレイプ殺人、相次ぐ性犯罪に怒りの声強まる****
インドで17日、レイプされて首を絞められた7歳の女児の遺体が見つかり、女性や少女らへのおぞましい性犯罪が後を絶たないことに対する怒りがますます高まっている。
 
遺体は17日朝、ウッタルプラデシュ州エタ県の建設現場で見つかった。女児はその数時間前に、出席していた結婚式から行方不明になっていた。
 
警察によると、結婚式のためにテントを設置していた近所の男が、隔離された建物に女児をおびき出したと疑われており、身柄を拘束されたという。(中略)
 
同国では北部ジャム・カシミール州で、イスラム教徒の8歳の女児が集団レイプされた上殺害されるという事件が発生しており、ここ数週間、各地で抗議行動が繰り広げられていた。【4月17日 AFP】
*********************

インドでこうした事件が多発する背景としては、インド社会の貧困、教育事情、さらにはカースト制などによる社会的閉塞感といった社会的問題が関係しているのかも。

フランスのレイプ事情 スウェーデンでは「自発的でなければ暴行」】
なお、先述のように、女性への性的暴力は世界各地で見られる現象で、インドに限った話ではありません。
アフリカの紛争地域は別格としても、“先進国”フランスでも。

****女性10人に1人以上がレイプ被害経験 フランス****
フランスの女性の10人に1人以上が少なくとも1回はレイプ被害に遭っていることが、23日に発表された性暴力に関する調査結果で明らかになった。
 
シンクタンクのフォンダシオン・ジャン・ジョレスが仏調査会社Ifopに委託して18歳以上の女性を対象に2月6〜16日に行ったオンライン調査によると、調査に応じた女性2167人の12%が、フランスの法律でレイプと規定される「暴力、強制、不意打ちをもって行われる性的挿入行為」の被害に遭ったことがあると回答した。
 
また回答者の5%は、2回以上被害を受けたと答えた。
 
レイプ被害経験者のうち、31%が夫や恋人などのパートナーから襲われたと答え、19%が知り合いから被害を受けたと回答。見知らぬ他人が加害者だったと答えた人はわずか17%だった。
 
被害経験者の半数が、襲われた当時は子どもか10代だったと述べ、42%が被害に遭った場所は自宅だったと答えた。
 
しかし、加害者を公的に訴えた被害経験者はたった15%だった。一方、25%が自殺を図った経験があると答え、被害者の多くが心の傷(トラウマ)を抱えていることが示された。被害経験者の自殺未遂率は、フランスの女性の一般的水準と比べて4倍も高かった。
 
FJJによると、回答者の中には米ハリウッドの大物プロデューサーだったハーヴェイ・ワインスタイン氏のスキャンダルをきっかけにソーシャルメディアで相次ぐ性暴力の告発に勇気付けられて沈黙を破り、初めて被害経験を明かした人がいる可能性がある。

仏内務省は先月、2017年10〜12月の性暴力被害の報告が前年同期比で31.5%増えたと発表している。【2月26日 AFP】
********************

冒頭の「男女平等ランキング」では、フランスは11位と上位に位置しています。そうなると、このランキングは何を意味しているのか・・・という話にもなりますが、日本が114位にあることの問題を小さく扱うつもりもありません。

一方、ランキング5位のスウェーデンでは、性交渉について「自発的でなければ暴行」と法律で明確化することが検討されているようです。

****スウェーデンのセックスに必要なのは……****
性交前には双方が明確な同意を示さなければならない・・・そんな法律の新設がスウェーデンで進んでいる。議会で可決されれば、7月1日には施行される見込みだ。
 
現行法では強姦で起訴できるのは脅迫、暴力、強要が証明できる場合のみ。ヨハンソン法相は法改正により有罪判決が増えるだろうと言う。「自発的でなければ暴行だと、法律で明確にすることが重要だと思う」
 
法令審査を行う立法顧問院は新法の必要性に疑問を呈し、性交を違法にする行為の明確化を提言。これを受けて政府は「言語や行動などによる」同意が必要との文言を法案に挿入した。
 
それでも法案の原則は変わらないとヨハンソンは言う。「性交が虐待かどうかを決めるのは自発性。暴力、脅迫、強要があったか、または被害者が弱い状況だったかの証明が必要な現行法とは違う」
 
この改正案導入の背景には#MeToo運動や、性犯罪者の起訴を容易にする流れがある。スウェーデンでは性犯罪の厳罰化や外国での買春禁止も検討中だ。【4月3日号 Newsweek日本語版】
********************

性行為の前に相手から同意書をとっておく必要があるかも・・・なんて茶化すのではなく、男性側の身勝手さを反省すべきなのでしょう。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「幸せ」の在り様は様々 所得との関係 文化的特徴 男性に比べ満足度が高い日本女性

2018-01-22 23:04:32 | 女性問題
幸せは金で買えるか?】
毎年末恒例の「世界幸福度調査」(米国の世論調査会社ギャラップ・インターナショナルとWINによる共同調査)によれば、調査対象国55カ国で1位は南太平洋の国フィジーで、2位コロンビア、3位フィリピン、4位メキシコと続いています。

“今回の調査で唯一90ポイント以上を獲得した「フィジー」は、前年も1位、その前が2位、その前は1位。直近の4年間で3回も1位を獲得している幸福先進国です。”【1月6日 ハフィントンポスト】

「幸せ」のとらえ方は個人で千差万別であり、「幸福度」といった形で数量化することには無理があることは、今更言うまでもないことです。

ましてや、国別の「幸福度」指数といった類は、何を基準に数量化するかで全く異なった結果にもなります。

そこは百も承知の上で、あえて「幸福」と「所得」の関係、つまり「幸せは金で買えるか?」という問いに答えようとすると・・・やはり結果は様々のようです。


https://ourworldindata.org/grapher/gdp-vs-happiness?time=2014

上記などは、比較的明瞭な、所得が高いほど幸福感が強まる傾向を示していますが、下記は必ずしも単純ではないことを示しています。

http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/9482.html
確かに所得が高い国は比較的高い幸福度をしめしますが、所得が低い国では大きなバラつきが見られます。

****幸せはお金で買えるか(所得水準と幸福度の国別相関*****
(中略)相関度をあらわすR2値は0.1737(2005年期データであると0.3071)であり、ゆるい相関が認められる。

しかし、相関図を見て、より印象的なのは、所得水準の高い国では幸福度がある一定水準以上に収斂している(不幸と感じている者はそれほど多くない傾向がある)のに対して、所得水準の低い国では、幸福度に大きなばらつきが認められる点である。(中略)

所得水準が高まれば不幸と感じる人の割合が大いに減じるということから、幸せはお金で買えるといえるが、だからといって所得水準の低い国で不幸な者が多いとは限らないのである。

お金持ちでも不幸かも知れないよ、という貧乏人の慰めは、事実に反するが、貧乏でも幸せに暮らそうという態度は十分な合理性を持っているといえよう。

また、経済成長が重要なのは幸福を増すからというより、不幸を減じるからであるということが分かる。【本川 裕氏 「社会実情データ図録」】
********************

所得水準の低い国で幸福度に大きなばらつきが生じる背景として、「国民性」と呼ばれるような文化的要素があると思われます。
なお、所得水準と幸福度の関連については、2013年5月3日ブログ“「お金はあればあるほど幸せ」か? 富・所得と幸福度の関係”でも。

家族や友人、教師との信頼関係を重視するドミニカ
数量化した指数で何かを語ることは難しいにしても、個々の事例を見ていけば、「幸せ」あるいは「不幸」に関する理解について何かの参考も得られるかも。

冒頭のギャラップ調査でもそうですが、この手の調査では総じて中南米諸国は、所得水準は低いながらも「幸福度」では上位にランキングされます。いわゆる「ラテン気質」でしょうか。

コロンビアとかメキシコなど、所得水準もさることながら、治安の面でも、世界有数の難民国だったり、「麻薬戦争」と言われる状態だったりもします。それでも・・・・

****みんな誰かの宝物だから ドミニカ共和国・メキシコ****
カリブ海の真ん中にあるドミニカ共和国。青い海に囲まれた小さな島国が、世界の15歳に「幸福度」を尋ねた国際機関の調査で1位になった。どんな秘密があるのか。この国で「幸せのかたち」を考えた。
 
「一番すてきで特別な人へ。君は毎日を楽しくしてくれる家族のような存在です。どうか君の全ての夢が実現しますように。愛する人たちに囲まれながら何百年も過ごせますように」
 
首都サントドミンゴの公立中学校。模造紙いっぱいのメッセージを読みながら、16歳の誕生日を翌日に控えたチェルシ・シエラさんは涙を流した。仲の良い友人たちが、休み時間にサプライズの誕生会を開いてくれたのだ。
 
シエラさんは一人一人をぎゅっと抱きしめた。「こんな友人に恵まれてとても幸せ。みんなにすごく感謝している」。企画した男子生徒も「喜んでもらえてうれしい」と満足げだ。
 
この国の子どもたちの「幸福度」は世界1位。経済協力開発機構(OECD)が昨年発表した、2015年の学習到達度調査(PISA)の一環で調べた結果だ。学校に通う15歳の子らに生活の満足度を尋ねると、「十分に満足」と答えた割合が47カ国・地域で最も高かった。
 
コンクリート製の校舎は古く、黒板は穴だらけ。机や椅子の大きさもまちまちだ。だが、今の生活について生徒たちに聞くと、ほとんどが「私は幸せ」と口をそろえた。
 
女子生徒の一人アンジェリ・カブレラさん(15)は「お母さんが毎日、ほおにキスして『大好き』と言ってくれる。それが私の幸せの時間。幸せとは他の人と一緒に過ごす時間のこと」と笑った。教師のロサ・ペレスさん(47)は「多くの子が幸福そうに見えるのは家族や友人、教師との信頼関係が強いことと関係があると思う。ドミニカ人は人間関係が濃密ですから」。(中略)

海に囲まれたドミニカ共和国は観光が主要産業だ。16年は欧米などから観光客600万人が訪れた。経済成長率は6・6%を記録し、3年連続で中南米カリブ地域のトップ。

だが、貧富の格差は激しい。治安も悪化し、17年の世論調査では国民の42%が「3年以内に国を出たい」と答えた。
 
教育政策も行き届いているとは言いがたい。15年のPISAでは、数学と科学部門で72カ国・地域で最下位だった。
 
国連児童基金(ユニセフ)ドミニカ共和国事務所によると、15~17歳の10%は途中で学校をやめ、最初から行かない子も多い。少女の妊娠も問題になっている。37%の女性は17歳前に、12%は15歳前に結婚する。5歳未満の子の12%は出生届すら出されない。65%の親は体罰を容認する。
 
ロサ・エルカルテ所長は「確かにこの国の人々は陽気でよく笑う。でも、それは本当の幸せというより、気分的なものかもしれない」と考えている。
 
国際NGOプラン・インターナショナルのラケル・カサレス氏は「子どもたちが幸せと感じているのは衝撃的」と驚きを隠さない。「弱く危険な立場にありながら、それに気付いていない。安易に『世界一幸せ』とくくるのはとても危険だ」と警鐘を鳴らす。
 
同国の著名な精神科医セサル・メジャ氏は「苦しい生活の中で陽気に踊るドミニカ人の行動はつじつまが合わない。学者たちも十分に解き明かせずにいる」という。だが、こう語った。
 
「幸せとは満足感や精神的な喜びによるもの。物質的な豊かさや所有財産の多寡とは関係ない。ドミニカ人は前向きに楽しむすべを知っている。それが幸福感につながっている」
 
厳しい現実にかかわらず、人々が幸せを感じる土壌が確かに、ここにはあるのかもしれない。(後略)【1月1日 朝日】
*******************

他人の視線を人生の重要な基準にしている韓国
一方、儒教文化という点では日本と比較的似かよっている韓国ですが、近年はもろもろの社会問題から、特に若者の間で「ヘル朝鮮」という自虐的な言葉がよく聞かれます。

****幸せに見られたい」流行語に見る韓国若者の特徴に、ネットがため息****
2018年1月16日、韓国・朝鮮日報によると、昨年流行した新造語から、20〜30代の若者世代が「幸せとは程遠いが幸せに見えていたい」という持続性のない「使い捨ての幸せ」のためにお金や時間を費やしていることが分かった。

昨年、韓国の若者世代に流行した新造語のうち、中でも「イッソビリティー(『イッソボイダ:ありそうに見える』+『アビリティー:能力』=ありそうに見える能力)」が大流行した。

その他に「腹いせで使った費用」という意味の「始発費用」という言葉もあるが、どちらも「幸せに見えていたい欲求」が反映されているとされる。

このような消費行動は30代に最も多いという。非営利研究所の希望製作所が昨年11月に全国の満15歳以上の男女1000人を対象に調査したところ、30代は「現在の暮らしの満足度」「心身の健康」「経済状態」をはじめほぼ全ての項目で平均以下という結果が出たというのだ。(中略)

学者らはこのような韓国人の性向を「自己監視(self monitoring)が過度に強い」ものと解釈する。つまり、韓国社会が表向きには欧米のように個人主義化したように見えても、依然として他人の視線を人生の重要な基準にしているというのだ。

これを受け、ネットユーザーからは「ヘル朝鮮(地獄のような韓国の意)のせい」「李明博(イ・ミョンバク)や朴槿恵(パク・クネ)など元大統領のせいで一番被害に遭ったのが30代」「幼い頃から『一番になれ』『他人の先を行け』と圧迫されたから」など昨今の韓国社会に責任を問うコメントが目立つ。(後略)【1月21日 Record china】
*****************

“表向きには欧米のように個人主義化したように見えても、依然として他人の視線を人生の重要な基準にしている”というのは、日本にもあてはまるところがありますが、最近はそうした生き方から抜け出そうする人々も増えているようにも。

男性に比べて女性の幸福感が際立って高い日本
その日本は、「幸福度ランキング」の類では、大体“中の上”“上の下”といったところで、悪くはないが、それほど高いという訳でもない・・・といったところでしょうか。

ただ、ひとつ日本には際立った特徴があるようです。それは“男性に比べて女性の幸福度が高い”という特徴です。

下記「幸福度の男女差」(世界価値観調査及びISSP調査)で見ると、中央線より右に行くほど女性の幸福感が男性を上回る度合い、左へ行けば男性が上回る度合いを示していますが、女性超過の点で日本は1位が3回、2位が1回、3位が1回、11位が1回と、“世界で一番、女性超過が大きい国”であることを示しています。

****「幸福度の男女差」****

・・・・東アジア諸国はかつての儒教国だという性格を共有し、欧米諸国と比較すると、家庭や社会の中での女性の地位が低いと考えられているが、経済発展と社会の近代化が進んだ高所得国では、幸福度にそれが反映しているわけではなさそうである。

むしろ、女性は、①家族の財産権、相続権の男女平等など近代的な法律上の位置、②家事労働を軽減する家電製品の発達、③子育て、老親の世話の負担を軽減する社会保障の充実、などにより、かつての家への従属・拘束から解放されて自由になったのに、男性の方は、男性の権利ばかりでなく責任も大きかった過去の伝統に引きずられ、自分が家族やまわりを支えなくてはと思いすぎて、幸福度を感じにくくなっているのではと想像される。【本川 裕氏 「社会実情データ図録」】
********************

【“やたらと楽しそうな”日本の女子学生
上記の“男性に比べて女性の幸福度が高い”という日本の特徴を反映した調査がもうひとつ。

高校1年生を対象とする国際学力テストであるOECDのPISA調査によると、日本を含む東アジア儒教圏の生活満足度が他のグループより際立って低いこと(下記図の横軸で見ると、先述のドミニカは最高に対し、韓国は下から二番目)、ほとんどの国が男子学生のほうが満足感が女子学生より高いのに対し、日本だけが女子学生のほうが高いこと(縦軸で見て、日本だけがマイナス)が示されています。

****日本の女子高生がやたらと楽しそうな理由****

世界の高校生は生活満足度の状態で文化圏ごとにグループ分けできる
 
・・・・・(高校1年生を対象とする国際学力テストであるOECDの)PISA調査では、学力テストのほかに、学力の要因を探るため、先生や同級生との学校生活の状態や学習意欲、生活満足度などの意識の状態を、生徒に対する調査票によって調べている。
 
図1には、世界48ヵ国の生徒の生活満足度の状態を示すグラフを掲げた。ここで生活満足度は、0から10までの11段階で回答を求めた結果の平均点で示されている。
 
X軸方向に「生活満足度の高さ」、Y軸方向に「生活満足度の男女差」を取った散布図を描いた。これを見ると、欧米、ラテンアメリカ、イスラム圏、東アジア儒教圏といった文化圏ごとに、ほぼ例外なく、国々がグループ分けできる点が非常に興味深い。
 
また、日本については、東アジア儒教圏の共通の特徴として、X軸方向の全体的な満足度が世界の中でも最低の水準になっているとともに、Y軸方向については、世界では一般に男子生徒の生活満足度が女子生徒を上回っている中で、唯一、女子生徒の方が上回っている点で非常に特徴的だ。(中略)
 
日本だけでなく、儒教の影響がなお残る東アジア諸国では、所得が高くなってもなかなか幸福を感じないようなのだ。(中略)

東アジア諸国の高校生の生活満足度が、世界の中で最も低くなっているのは、上述のように、成人と比較して学生の場合は所得水準との関係が薄く、さらに教育分野では儒教の影響がなお大きいこともあって、成人と同じ理由がダイレクトに働いているためだといえる。(中略)

日本の高校生も、先生や親の期待に十分応えられていないと感じてしまいがちなので、生活満足度が欧米などと比較して低くなってしまっているのであろう。
 
さらに、人生態度に関する、これ以外の文化心理学的な要因も考えられる。
 
幸福感研究の世界的な第一人者、エド・ディーナーとの実験心理学的な研究で知られる大石繁宏氏によれば、社会の流動性が高く、友人を選択する可能性の高い米国では、弱音を吐くと友人から「お荷物になりそうな面倒な奴だ」と思われるプレッシャーがあるという。
 
これに対して、友人を選ぶ余地の小さい島国の日本では、悲しみや苦しみを共有する人間関係が大事だと思われており、「自分が元気すぎると不幸な友人を傷つける場合がある」という配慮が働く。欧米起源のスポーツと異なり、日本の武道や大相撲では、勝者のガッツポーズが控えられているのも同じことだといえる。
 
このため、全体としての満足度を聞くアンケートに答える段階で、欧米では毎日の満足度のうちいい面だけ回顧し、日本では悪い面だけを思い出して回答する傾向があり、結果として毎日の満足度は同じレベルでも、日本人の満足度は低くなるという(大石繁宏「幸せを科学する」p.35〜43)。(中略)

全ての国で、生活満足度の男女差は、「男マイナス女」が成人より高校生の方が大きくなっている点が印象的だ。成人については生活満足度に男女の差があまりないのに対して、高校生については、男子生徒が女子生徒を上回る場合が圧倒的に多いのだ。(中略)

PISA報告書によれば、女子高生の生活満足度が男子より低いのは、一つの可能性として、「思春期の女子の厳しい自己批評を反映しているのではないか」と考えられている。

すなわち、マスメディアが前提にしている「スリムで理想的な体型」や、ソーシャルメディアで共有されている美しいとされる体型の画像の影響にさらされていることが、思春期の女子の自己認識や満足感にネガティブなインパクト与えているとされているのである。(中略)

日本の女子高生がやたらと楽しそうなのは古い道徳からも新しい規範からも自由なため
ここまで考えてくると、日本の女子高生の生活満足度が、世界で唯一、男子より高い理由の一つは、自分の身体イメージへのこだわりについて、欧米のようには強迫観念にまでは至っていないためだと考えられる。(中略)
 
さて、日本の女子高生の生活満足度が世界で唯一、男子より高いことを説明するもう一つの要因は、成人の生活満足度がそもそも女性優位であり、女子高生もそれと同じだと考えられるからである。(中略)

このように、日本の女子高生が男子より楽しそうなのは、男性と比較して、性差に対する旧来の道徳感からの解放が進んでいると同時に、若い女性の身なりや体型はこうあらねばならないという情報社会の新規範からも外国と比較して自由だから、というのがデータから推察されるとりあえずの結論である。【1月17日 本川 裕氏 ダイヤモンド・オンライン】 
*****************

大幅に省略しましたので文脈・論旨が不明瞭になってしまいました。興味のある方は上記リンク先でご覧ください。

ただ、“日本の女子高生がやたらと楽しそうな”理由が、“自分の身体イメージへのこだわりについて、欧米のようには強迫観念にまでは至っていないため”というのは、個人的にはあまり説得的でないように感じています。

自殺にみる男女格差
ついでに男女差に関する、全く別の観点からの数字を。

2017年の日本全国の自殺者は16年よりも757人少ない2万1140人で、8年連続で減少しています。結構なことです。

男女別にみると、男性が1万4693人、女性は6447人で、男性が女性の倍以上になっています。【1月22日 Record china】

*****自殺者の70%は男性 統計データから見る男性の自殺リスク*****
・・・・アメリカの男性自殺率は女性の4.2倍、イギリスは3.6倍とのこと。自殺率の男女格差が日本と同程度かそれ以上に激しい国も、世界には少なくないようです。

WHOの報告によると、英米と同じく旧ソ連・旧共産諸国も自殺率の男女格差が大きく、ロシア、ベラルーシ、ウクライナ、エストニアなどは日本とほぼ同じの約2~3倍程度、リトアニアについては男性自殺率は女性の6倍という驚きの数字です。

興味深いのがイスラム圏と中国で、これらの地域においては女性自殺率が男性自殺率を僅かに上回ります。アフガニスタン、イラク、インドネシア、パキスタン、中国……など。(後略)【小山晃弘氏】
********************

このあたりも興味深いところですが、長くなったので、また別機会に。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「すべての女性が輝く社会」 ニュージーランド首相の産休 ドイツでは異性同僚の給与を知る権利

2018-01-20 22:03:33 | 女性問題

(取材に応じる、ニュージーランドのジャシンダ・アーダーン首相(中央)とパートナーのクラーク・ゲイフォード氏。【1月19日 AFP】)

【「2017年にもなって、最初から女性が子どもか仕事かどちらかを選ぶと決めつけるような質問をすべきではない」】
“「すべての女性が輝く社会づくり本部」が司令塔となり、女性の活躍を阻むあらゆる課題に挑戦し、「すべての女性が輝く社会」を実現します。”【首相官邸HP】ということではありますが、現実問題として、女性が働くうえで最大の障害となっているのが出産・産休の問題でしょう。

出産女性が産休を取ることで、仕事のしわ寄せがくることへの男性などからの不満を含め、日本ではなかなか厳しい現実があります。

そうした日本の状況からすると別世界の話のようにも思えるのが、ニュージーランド首相の産休の話題。

****NZ首相が妊娠、6週間産休へ 副首相が代行務める****
ニュージーランドのアーダーン首相(37)は19日、パートナーの男性との間に子を妊娠し、6月に出産予定と発表した。6週間の産休を取り、その間はピーターズ副首相兼外相が首相代行を務める。

「(妊娠は)予想していなかったが、興奮している」とコメントした。
 
発表によると、アーダーン氏は新首相に就任する13日前の昨年10月13日に妊娠を知った。「多くのカップルと同じように、妊娠初期なので伏せてきた」と説明した。

1月18日にピーターズ氏に妊娠の事実を伝え、首相代行を要請した。「(産休の)6週間の間も必要ならば私はいつも連絡可能だ」としている。
 
アーダーン氏は、テレビの釣り番組の司会者であるパートナーのクラーク・ゲイフォードさんと暮らす。産休が明けた後は、家にいられるゲイフォードさんが主に育児をするという。

「多くの親たちが育児のやりくりに大変だが、私たちはとても幸運だ。私個人として一人の親になることが楽しみだが、首相としての責務にも同等に集中する」とした。
 
アーダーン氏は昨年8月、当時野党だった労働党の党首に就任。9月の総選挙で議席を伸ばし、ピーターズ氏が率いる第3党のニュージーランドファースト党などと協力した連立政権の首相に就いた。
 
党首就任直後にラジオ番組で「多くの女性が子どもか仕事かで悩む。子どもを産むか決めているか」と聞かれ、「2017年にもなって、最初から女性が子どもか仕事かどちらかを選ぶと決めつけるような質問をすべきではない」と答えていた。
 
一国の現役首脳としては、1990年に当時36歳だったパキスタンのブット首相が、女児を出産したケースがある。【1月19日 朝日】
********************

国内の反応については、“ニュージーランド国内では、国民や与野党も祝福していて、地元メディアも初代の女性首相も母親だったなどと好意的に伝えており、首相が一時、職務を離れることを疑問視する声はこれまでのところ上がっていません。”【1月19日 NHK】

実際問題としては、仕事の大部分は組織で動いていますので、数か月首相が官邸にいなかったとしても支障はないでしょう。

いつでも電話等で連絡もできますし、テレビ会議といった方法もあります。必要なら官邸に駆け付けることも可能でしょう。

独立問題で揺れるスペイン・カタルーニャのプチデモン前州首相などは、逃亡先のベルギーにいながら州首相に復権しようとしているぐらいです。(さすがに、これには反対もありますが、反対理由の本音はスペインにいないことというより、独立運動を主導するプチデモン氏を認めないということでしょう)

****プッチダモン氏、復権なるか 独立派過半数、でも議会出席の壁 カタルーニャ州議会初招集****
昨年12月の選挙でスペインからの独立派が過半数を維持した同国カタルーニャ自治州の州議会が17日、初招集された。まず議長ら議会執行部が選ばれた。月末に州首相選びの手続きに入る

独立への一方的な動きで司法当局から反乱罪などの容疑がかけられ、ベルギーに逃れているプッチダモン前州首相が、外国に身をおいたまま返り咲きを目指すという異例の展開だ。(中略)
 
ただし、州首相に選出されるには「議会に出席して施政方針を示すこと」が必要とされる。帰国すれば当局に逮捕されるプッチダモン氏は、ビデオ演説などの手段を探っている。地元メディアは、無料通話システムのサービスをもじって「スカイプ州首相」などと報じている。
 
議会で、そうした手続きが認められるかどうかが今後の焦点だ。また独立派議員のうちプッチダモン氏ら5人はベルギーに滞在して投票に参加できない可能性もあり、州首相の座はなお流動的だ。
 
中央政府のラホイ首相は、外国に居住したままでの州首相就任は認められないとしており、憲法裁判所に提訴したり、自治権の停止を続けたりする構えを見せている。3月末までに州首相が決まらなければ再選挙となる。【1月18日 朝日】
*********************

話を女性の問題に戻すと、“首相が産休をとっても支障はない”というよりは、出産・育児を経験しない男性ばかりが政治のトップを独占している現在の日本の状況の方が“いびつ”だと言うべきでしょう。

世の中の半数は、その多くが出産を経験する女性である以上、出産に伴う社会的問題への対策を政治に反映させ、社会を変革していくためにも、女性首相の出産・産休というのはごく自然な話であり、改善のための好機でもあるでしょう。

そこに踏み込んで、女性が働ける社会をつくっていかない限り、日本の少子化に伴う社会変動には対処できませんし、放置すれば、やがて日本社会は衰退・消滅の危機に直面することにもなります。

未だ大きい男女賃金格差 「ジェンダー後進国」の日本
働く女性が直面しているもうひとつの問題が男女間の賃金格差です。
近年、若干は改善されつつあるとは言え、その格差はまだ大きいものがあります。

****女性の賃金、16年は男性の73% 格差解消なお遠く****

女性の賃金が増加を続け、男性との格差が過去最小を更新した。厚生労働省が22日発表した2016年の調査によると、フルタイムで働く女性の平均賃金は月額24万4600円と3年連続で最高となった。

男性の賃金の73%となり、男女格差はこの20年で10ポイント縮まった。

ただ欧州各国などと比べると格差はなお大きく、男女間の「同一賃金」の実現はまだ遠い。(中略)

男女の賃金格差が縮まってきたとはいえ、日本の水準は国際的にはまだ見劣りする。経済協力開発機構(OECD)の14年の調査では、日本の男女格差は加盟国の中で韓国、エストニアに次いで3番目に大きい。ベルギーやハンガリーの男女格差は数%しかなく、賃金面での日本の「女性活躍」は道半ばだ。
 
女性の賃金を底上げするには、管理職への登用をさらに増やしていくことに加え、子育てを機に離職したり、本人の意に反してフルタイムの仕事を諦めたりすることを防ぐ必要がある。
 
厚労省によると働く女性の6割が最初の子どもの出産後に退職する。政府は17年度末の待機児童解消を掲げ、保育所などの施設整備を急ぐ。

ただ、安倍晋三首相が17日の衆院予算委員会で待機児童の解消について「非常に厳しい状況になっている」と語るなど、目標達成は見通せない。【2017年2月22日 日経】
*****************

****男女の賃金に依然、格差 「ジェンダー後進国」の日本 ダイバーシティ進化論(村上由美子****
世界で最も保守的な国のひとつと言われるサウジアラビアの女性にとって、2017年は歴史的転換の年になるかもしれない。女性の自動車運転の解禁が決まったのだ。

原油依存体質の脱出を目指し、石油以外の産業育成を促進して経済活性化を図るサウジアラビア政府。女性の社会進出は国全体の生産性向上の必須条件だと考えたのであろう。
 
これをきっかけに、サウジアラビアの女性活躍は一気に進むかもしれない。すでに高いレベルの教育を受けているサウジ女性は期待と興奮で胸を高鳴らせているに違いない。
 
思い起こせば約30年前、日本女性も歴史的転換を期待した時期があった。男女雇用機会均等法が施行された1986年だ。それまでは女子学生が基幹職として就職する道はほとんど開かれていなかった。
 
当時大学生だった私は社会が変わると意気込んだ。しかし女性総合職1号で入社した先輩を企業訪問すると、なぜか女性だけが制服を着ていた。

結局私は、ニューヨークで米国企業へ就職することになる。そして数年前に帰国した日本では、女性活躍推進が30年前と同様に叫ばれていた。
 
先日発表された経済協力開発機構(OECD)のジェンダーリポートで、日本は相変わらず「ジェンダー後進国」の位置づけだと指摘された。

政府肝いりの女性活躍推進は一定の成果を生んでいるようにも見えるが、実は日本の動きは国際的にはかなり見劣りする。
 
確かに女性の就業率はOECD加盟国平均並みに向上した。子育て世代の女性の離職率を表すM字カーブも、解消されつつある。しかしいくら多くの女性が働いても、いまだに男性同様の昇進や昇給は困難だ。
 
それは先進国最大レベルの25.7%(15年)という男女賃金格差に表れている。80年代後半に総合職採用された女性は幹部候補となる年齢だが、ほとんどが離職している。企業の女性取締役比率は先進国平均の20%に対し、3.4%(16年)と最低水準だ。
 
女性活躍推進の掛け声は素晴らしい。しかしこのままのスピードでは、すでに2周遅れの感がある人材育成の世界レースから日本は完全に脱落してしまう。いずれ中東のイスラム圏にも抜かれてしまうかもしれない。

女性活躍推進は日本経済の死活問題であるという認識が浸透すれば、スピード感を伴った変革が期待できるのだろうか。【2017年10月21日 村上由美子氏 日経】
********************

個人的には、男女雇用機会均等法が施行された当時、企業内の女性職員の労働条件等の改正に関与したこともあります。

蛇足ながら付け加えれば、働く意欲がある女性に報いるのはそう難しくはありません。当時の経験で一番困ったのは、「男性並みに働く気は全くない。家庭と両立させやすい労働時間で、そこそこの給与がもらえればそれでいい」という意見が女性職員の中に多くあったことです。それを認めることは、女性職員のなかに異なる職種を持ち込むことにもなります。家庭を顧みない男性の“働き方”のほうがおかしい・・・という考えもあるでしょう・・・・。

そのあたりは今も変わっていないでしょう。そうした女性の本音をどのように考えるか・・・難しいものもあります。

賃金格差情報公開を促す動き
格差を是正していくためには、今現在どういう格差があるのかを把握する必要があります。
その面での改革が、ドイツで実施されています。

****独で新法施行、同僚の給与を知る権利 男女の賃金格差是正を目指す****
同僚にいくら稼いでいるかを尋ねることは現代でもタブー視されている事柄の一つだが、男女の賃金格差是正を目的とした新法が施行されたドイツではこれが可能となりそうだ。
 
欧州最大の経済大国ドイツで今月6日に施行された法律は、同様の内容の業務をしている異性の同僚の賃金を知る権利を従業員に与える内容。
 
この法律の制定に向けて尽力してきた社会民主党のカタリナ・バーリー女性相代理は「ドイツではいまだに他人の給与に関する話題はタブーでブラックボックスのままだ」と語った。
 
新法によって賃金体系の透明性が向上し、女性たちの賃金が男性同僚より低いことが判明すれば、女性たちによる賃金引上げ要求の機運が高まり、法的措置への道も開ける可能性がある。
 
しかし、新法の適用対象は従業員数が200人を超える企業で、中小規模の企業で働く女性たちは依然として異性の同僚の賃金を知ることはできない。
 
一方、従業員が500人を超える企業には、定期的に給与体系についての最新状況を公表して、同一労働同一賃金の原則を順守していることを示す義務が課せられる。
 
支持者らは、新法の施行を出発点としてドイツ全土の女性たちが賃金格差の問題を明確にできるようになることを期待している。
 
公式統計によれば、2016年のドイツの女性の賃金は男性の賃金より21%低く、さらに欧州連合(EU)平均の16%よりも低い。【1月14日 AFP】
********************

賃金格差情報公開はイギリスでも実施されています。

“英国では17年4月、250人以上の従業員がいる企業や公的機関に男女の賃金データ公表が義務付けられた。自社と政府のサイトで年に1度、時給やボーナスの男女差などを開示しなければならない。企業は初回の期限が18年4月4日で、これから報告が本格化する。”【1月10日 日経】

また、企業側にも、株主からの提案で同様の取り組みに動く事例も。

****シティ、男女や人種間の賃金格差を公表へ-格差縮小へ昇給実施の方針****
シティグループは3カ国における男女間および米国のマイノリティーとの賃金格差を調査、公表し、格差縮小に向けた措置を講じると発表した。
  
この動きは、ボストンに拠点を置くアルジュナ・キャピタルからの株主提案を受けたもので、米国の大手銀行では初めて。米国と英国、ドイツで実施する。英国では4月からすべての企業に男女別の賃金データ公表が義務付けられる。
  
シティの発表文によると、女性や米国のマイノリティー、その他格差縮小のために昇給が正当化されるならば賃金を引き上げる。3カ国以外の従業員に対しても、同様の分析を行うと約束した。

シティグループの従業員はほぼ半数が女性だが、上級幹部に占める女性の割合は4分の1にすぎない。米国従業員のうちアフリカ系米国人は11%に上るが、上級幹部ではわずか1.6%だ。
  
アルジュナ・キャピタルではシティのほか、JPモルガン・チェースやウェルズ・ファーゴ、バンク・オブ・アメリカ(BofA)、バンク・オブ・ニューヨーク・メロン(BNYメロン)、アアメリカン・エキスプレス、マスターカードなど8社にも男女間の賃金格差縮小のための方針や目標を公表するよう働き掛けている。【1月16日 Bloomberg】
******************

「アルジュナ・キャピタル」は、ESG(環境、社会およびガバナンス)に焦点を当てている資産運用会社で、近年はこうした資産運用会社の性差別やセクハラに関する企業への影響力が強まっているようです。(アメリカでは)

“ESG志向の資産運用会社アルジュナ・キャピタルは2014年、ハイテク企業に対して、男性従業員と女性従業員の賃金格差を開示するよう圧力を掛け始めた。
同社は同じ年にインターネット競売大手イーベイ( EBAY )に対して、男女の賃金格差とそれを縮小するための目標を開示するよう要求する株主提案を提出したが、2015年の株主総会で賛同した株主はわずか8.5%だった。翌年再提出した提案は、51%の賛成をもって承認された。”【2017年11月7日 WSJ】

“世の中の流れ”というべきものでしょう。
アメリカで動き出した波は、やがては日本にも及ぶでしょう。後れを取る企業は痛い目にあうことも・・・。

ニュージーランド首相の産休、ドイツでは異性同僚の給与を知る権利・・・・“すべての女性が輝く社会づくり”というのは、こういうことを言うのでしょう。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

女性への暴力が蔓延するアフリカ 中東では改善の動きも トランプ現象や女性議員の出産など

2017-08-11 22:42:56 | 女性問題

(チュニジアの首都チュニスの国会議事堂前で、裁判所が13歳の少女とその少女を妊娠させた親類の結婚を認める判断を示したことに抗議する女性たち(2016年12月14日撮影)【7月27日 AFP】)

アフリカ レイプ、拉致して自爆犯に、難民キャンプでの性的搾取、子供兵の4割が少女
多くの武装勢力が跋扈するアフリカ・コンゴ、イスラム過激派ボコ・ハラムによる拉致・テロが絶えないナイジェリアなど一部アフリカでは、最低限の人権である人名すらほとんど顧みられない状況ですから、弱者である女性の暴力にいたっては、ごく日常的なものともなっています。

*****アフリカで女性への暴力まん延 国連などが働きかけ強化****
国連の安全保障理事会で、アフリカの平和と安全をテーマにした公開討論が開かれ、避難民キャンプで配給の食糧とひき換えに女性が性的な搾取を受けるなど、女性への暴力の実態が報告され、国連と安保理メンバー国は当事国の政府などへの働きかけを強めることで一致しました。

10日、国連の安全保障理事会で開かれた公開討論には、国連のアミナ・モハメド副事務総長が出席し、先月、視察したアフリカのコンゴ民主共和国とナイジェリアの状況を報告しました。

この中で、アミナ副事務総長は「コンゴでは女性に対する性的暴力が広がり、ナイジェリア北部では誘拐や強制結婚、それに自爆テロが驚くべきほど多い。また、避難民キャンプで配給の食糧とひき換えに女性が性的な搾取を受ける新たな現象が起きている」などと述べ、女性への暴力がまん延している実態を指摘しました。

これに対して、各国からは治安対策の強化や加害者に法的責任をとらせる仕組みの構築など、早急な対策を求める意見が出され、国連と安保理メンバー国は当事国の政府やAU=アフリカ連合への働きかけを強めることで一致しました。

また、日本の川村国連次席大使は今月下旬にモザンビークで日本が主導するTICAD=アフリカ開発会議を開催することを紹介し、日本として女性の権利向上を含め、アフリカの開発を支援する考えを示しました。【8月11日 NHK】
****************

レイプなどの性的暴力だけでなく、ナイジェリアのボコ・ハラムは誘拐した子どもや女性に爆弾を巻き付け、市場など人通りの多い場所で爆発させる手口でテロを続けています。

また、コンゴでは「少年兵」がしばしば話題になりますが、被害は少女にも及んでいます。

****<コンゴ民主>元子供兵 少女も4割…麻薬、洗脳、実情語る****
政府軍と乱立する武装勢力などとの紛争が長年続くアフリカのコンゴ民主共和国では、多くの子供兵が武装勢力に動員されてきた。大半は少年だが、最近の調査では少女も4割を占める。

強制的に戦場へ駆り出されるだけでなく、貧困から抜け出そうと自ら武装勢力に加わる子供も後を絶たない。(中略)

東部ゴマで元子供兵の支援にあたるNGO「PAMI」のアモス・ネグラ氏(35)は「武装勢力は誘拐した子供たちを麻薬を使って洗脳し、家族や隣人を殺させることもある」と語る。洗脳により、組織から逃げられなくしていくのだという。
 
ある少女(18)は13歳から2年間、民兵組織マイマイの構成員として森の中で過ごした。父は他の武装勢力に殺され、母もレイプされた。「民兵と一緒にいれば守ってもらえると思った」。民兵の食事を作ったり、食料を調達したりするのが役目だった。
 
当時の生活について、少女は「何も良いことはなかった」と振り返る。上官の命令に背くことは許されず、何か失敗をすれば容赦なく殴られた。
 
英NGOの調査によると、子供兵の約4割が少女とみられる。今年1〜6月にコンゴ東部の北キブ州で国連児童基金(ユニセフ)に保護された子供兵184人のうち50人が少女だった。

子供兵は戦闘以外に、食事の準備などの雑用や敵対勢力の偵察に使われる。少女の場合、民兵と強制結婚をさせられたり、性的虐待を受けたりすることも珍しくない。
 
別の少女(17)がマイマイに加わったのは「お金がなくて学校を追い出されたから」。紛争下で暮らす住民にとって武装勢力は身近な存在であり、貧しさから抜け出すことを期待してその一員となる子供は多いという。
 
悲劇は武装勢力を抜けてからも続く。「残虐行為に関わった」「民兵と関係を持った」と烙印(らくいん)を押され、親や地域から拒絶されるのだ。家族の元に戻れず仕事もなければ、行き場を失ってしまう。
 
冒頭の17歳の少年は「整備士になりたいけど、だめなら森に戻るしかない」とつぶやいた。
PAMIディレクターのジョアキム・フィキリ氏(54)は「貧しい生活が続くなら、武装勢力にいた方が良かったとなる」と述べ、職業訓練などを通じた社会復帰の支援が欠かせないと指摘した。【8月10日 毎日】
*****************

中東 レイプ犯の結婚による抜け穴をふさぐ動き
中東では、女性の権利が大きく制約される社会風潮があり、多くの国でレイプの加害者が被害者と「結婚」すれば罪を免れることができるといったことが結果的にレイプ犯に被害者女性を差し出すことにもなっています。

そうした中東社会でも、少しずつではありますが改善の動きがあるようです。

****<中東>レイプ加害者の「被害者と結婚で刑事免責」にノー****
レイプの加害者が被害者と「結婚」すれば罪を免れることができるという法律の条項を廃止する動きが中東で加速している。

ヨルダン下院は1日、刑法のこうした条項を廃止すると議決した。人権団体は「結婚による抜け穴は許されない」と評価している。チュニジアでは7月28日に同様の条項が廃止され、レバノンでも廃止を求める運動が起きている。
 
ヨルダン下院が廃止したのは刑法308条。レイプ加害者が被害者と結婚し、5年間離婚しなければ、不起訴になると定めていた。条項の廃止については、上院に加え、国王による承認も得られる見通しだ。
 
ヨルダン下院の決定を受けて、国際人権団体「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」(HRW)はロイター通信に「女性への暴力に終止符を打つためのとても前向きな一歩だ」と語った。
 
中東や北アフリカではレバノンやイラク、シリア、クウェート、バーレーン、パレスチナ自治区、アルジェリアなどで、レイプ加害者の刑事免責を法律に定めており、不本意な結婚をせざるを得ない被害者も少なくない。
 
英オブザーバー紙によると、ヨルダンで条項廃止を求めて運動してきたワファ・ムスタファ議員は、被害者の親族が「一族の名誉」を守るために、加害者との結婚に応じることがしばしばあると指摘したうえで「どんな女性もレイプ加害者に贈り物としてささげられるべきではない」と強調している。
 
モロッコでは、両親や裁判官の勧めでレイプ加害者と結婚した16歳の少女が結婚から数カ月後の2012年に服毒自殺する事件が起きた。これを受けて抗議運動が激化し、14年に加害者の刑事免責を定めた条項が撤廃された。エジプトは1999年に同様の条項を廃止している。【8月11日 毎日】
********************

上記記事あるように、チュニジアでも7月26日、「女性に対する全ての暴力を根絶する」ことを目指し、レイプに関する結婚による抜け穴を防ぐだけでなく、被害を受けた女性に対する法的支援や精神面での援助を強化する法案が可決されました。

“アラブ地域の中では、チュニジアは女性の人権に対して前向きな国とみられているが、人権団体によると今でも女性差別があり、女性の約半数は人生で少なくとも一度は何らかの暴力を受けているという。”【7月27日 AFP】

チュニジアがアラブ地域で女性の人権に対して前向きな国であるのに対し、女性権利に後ろ向きな国の代表がサウジアラビアです。

そのサウジアラビアでも、“公立学校で女子の体育授業解禁へ”【7月13日 毎日】といった改善の兆しはありますが、一方で、“ミニスカで散歩の女性拘束=釈放後も論争続く―サウジ”【7月20日 時事】といった現状もあります。

ネパール 生理中女性の隔離を犯罪化
アジアに目を向けると、暴力ではありませんが、ネパールでは生理中の女性が隔離される風習があり、この隔離中に女性が命を落とす事故が相次いでいました。

この風習を明確に“犯罪”として処罰することになったようで、これも一歩前進でしょう。

****ネパール、生理中の女性を隔離する慣習「チャウパディ」を犯罪化****
ネパール議会は9日、生理中の女性を不浄な存在とみなして屋外の小屋に隔離するヒンズー教の慣習「チャウパディ」を犯罪として規制し、違反者に刑罰を科す法案を全会一致で可決した。
 
ネパールでは今も生理中の女性を汚れているとみなす人々が多く、一部地域では生理の始まった女性は家を追い出され、生理が終わるまで「チャウ・ゴット」と呼ばれる粗末な小屋で寝起きしなければならない。

出産した直後の女性も対象で、女性たちは食べ物や宗教的象徴、牛、男性に触れることを禁じられ、追放生活を強いられる。
 
ネパール最高裁は10年以上前にチャウパディを禁じているが、国内西部の地方部を中心に根強く残っている。
 
今回可決された新法は、チャウパディを女性に強要した者への罰則として、禁錮3か月か罰金3000ルピー(約3200円)、またはその両方を科すと定め、「生理中や出産後の女性を、チャウパディやこれと同様のあらゆる差別、禁忌、非人道的行為に従わせてはならない」と明記している。新法は1年以内に施行される。
 
チャウパディをめぐっては先月、チャウ・ゴットで眠っていた10代少女がヘビにかまれて死亡する事件が発生。2016年にも、寒さのため小屋の中で火をたいて暖をとろうとした女性が煙で窒息死するなど、2人がチャウパディの間に死亡している。【8月10日 AFP】
*****************

アメリカ “トランプ現象”で女性蔑視拡大の懸念
女性の権利では世界の先頭を行くはずのアメリカでは、女性蔑視の言動が目立つトランプ大統領の出現で、逆向きの風潮も懸念されています。

****トランプの罪、米国を汚染し始めた女性蔑視の空気****
・・・・トランプ氏は選挙期間中から女性蔑視の発言を繰り返しながらも、男性のみならず女性有権者からも大きな支持を集めて大統領になった。性的な差別を公然と口にしてもよいという雰囲気がアメリカに広まってしまったと嘆く声は多い。

ますます安全を脅かされる女性たち
トランプ大統領の登場で、アメリカ社会が長年取り組んできた「男女平等」は後退しつつあるのだろうか。そのことを示す数字は見つからないが、筆者の身の回りでは最近「女性蔑視事件」が話題になることが多い。

ある女性はスーパーでレジ待ちをしていたところ、背後にいた白人男性からいきなり罵声を浴びせられたという。
「おい、そこをどけ。おまえら女どもが偉そうに道を塞いでいても許される時代じゃないんだ、もう今は」
男性はニヤニヤしていたが、口調に冗談じみた響きはなかったという。
 
もちろんアメリカ男性のすべてが女性蔑視に傾いているわけではない。ごく一部がトランプ大統領から免罪符を与えられたと思い込んでいるにすぎないだろう。

だが、男性からの険悪なまなざしや言動にさらされる女性たちは気分を悪くしたり、身の危険を感じたりしていると訴えている。(中略)

このところ深刻なスキャンダルが取りざたされているトランプ大統領だが、仮にトランプ氏が政権の座から下りることがあったとしても、アメリカに拡散した「トランプ的価値観」が容易に薄れることはないだろう。(後略)【6月8日 老田 章彦氏 JB Press】
*******************

ニュージーランド 出産意向を問われる女性党首
女性の場合、出産という男性とは決定的に異なる状況に直面します。その後の育児に関しても、女性に負担がかかることが多いのが現実です。

日本でも、女性国会議員の産休がバッシングを受けたことがありますが、同様のことがニュージーランドでも話題になっています。

****NZ女性新党首、メディアに出産の意向問われ反論 性差別と議論に****
ニュージーランドの最大野党・労働党の前党首の辞任に伴い、1日に新党首に就任したジャシンダ・アーダーン氏(37)が2日、メディアから繰り返し子どもを持つ意向を問われ、性差別との議論が湧き起こっている。
 
アーダーン氏はテレビ局TV3のインタビューで、母になるつもりがあるかとの質問を2度にわたって受けた。同氏は最初の質問に対しては、多くの働く女性にとってのジレンマだなどと、明言を避けながら快く回答した。
 
しかし同局の別のインタビューで、首相にふさわしいかどうか判断するためにも国民はアーダーン氏の家族計画を知る権利があると言われると、同氏は反論。

「2017年にもなって職場で女性がそんな質問に答えなければならないなんて全く容認できない」と述べ、女性は子づくりの予定ではなく、能力によって雇用されるべきだと主張した。
 
これを受けてソーシャルメディアでは議論が噴出。多くの評論家が男性はそのような質問を受けることはないと批判した。
 
同国人権委員会メンバーのジャッキー・ブルー氏は、女性にそのような質問をすることは同国の人権法違反に当たると指摘した上で、「率直に言って女性が出産するつもりかどうかなんて、まったく余計なお世話だ」と糾弾した。【8月2日 AFP】
********************
コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「国際女性デー」 世界各地の取り組み・出来事 “女性議員割合193カ国中163位”という日本の現状

2017-03-09 22:30:09 | 女性問題

(国際女性デーにあわせ開かれた「ウィメンズ・マーチ東京」で、プラカードを掲げてデモ行進する女性たち 【3月8日 朝日】)

トランプ大統領 女性に途方もない敬意?】
一昨日ブログ“「国際女性デー」40周年 堀北真希さんの引退報道”http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20170307でも取り上げたように、昨日3月8日は国連が定める「国際女子デー」でした。

女性蔑視的言動が目立つアメリカ・トランプ大統領は「私は女性と、女性たちが社会と経済の仕組みに果たす多くの不可欠な役割に対し、途方もない敬意を抱いている」「国際女性デーに際し、ここ米国と世界中の女性の重大な役割を、共にたたえよう」とのツイートをしたようですが、これらツイートへの反応の大半は、トランプ大統領が進める医療・移民関連の政策が女性や家族に及ぼす影響を批判するものだったとか。【3月9日 AFPより】

全米各地では、トランプ大統領の移民政策への抗議活動「移民のいない1日」をモデルにした「女性のいない1日」と称したデモや集会が開催されています。

****全米各地で「女性のいない日」デモ、トランプ氏の政策に抗議****
全米各地で「国際女性の日」の8日、経済的な不平等やトランプ米大統領の中絶や医療に関する政策に抗議し「女性のいない1日」と称したデモや集会が開かれた。

主催者側によると、全米50郡以上で開催されたこの日のデモは、2月16日に行われたトランプ氏の移民政策への抗議活動「移民のいない1日」がモデルだという。

ニューヨークのセントラルパークでの集会に仕事を休んで参加したトリニダード・トバゴ出身のリラさん(73)は、トランプ氏は「私の大統領ではない」と語り、「彼が言うことは、ごみ」と非難した。

デモや集会は、首都ワシントンやアトランタ、シカゴ、サンフランシスコなどでも行われ、バージニア州やメリーランド州、ノースカロライナ州では少なくとも3つの学区が人員不足で休校となった。(後略)【3月9日 ロイター】
*******************

アメリカ以外でも,女性に対して厳しい現状の変革を訴える多くの取り組みがなされています。

****国際女性デー」全世界の女たちは勇敢に戦った****
<国際女性デーの創設から約一世紀。世界各国の女性たちは未だ平等から程遠い現状を創意豊かに訴えた>

3月8日は国際女性デー。世界で記念行事やイベントが催され盛り上がった。その起源はそもそも1908年、ニューヨークの縫製工場で働く1万5000人の女工たちが公平な労働条件を求め行進したこと。翌年はアメリカの市民団体も参加、これが初の公式な国際女性デーになった。1913年までは2月の最終日曜日を国際女性デー、その後3月8日に移行した。

1917年の3月8日は、サンクトペテルブルクでロシア革命の発端となる女性の行進が行われた日でもある。社会主義や冷戦を連想させるようになった国際女性デーはアメリカでは流行らなくなったが、近年、欧米諸国にもムーブメントが復活。政治的なルーツに回帰した。

ドナルド・トランプ米大統領がホワイトハウスで昼食会を開いたアメリカでは、人権団体「ウィメンズ・マーチ」の呼びかけで、家庭や職場に「女性がいない日」として「料理や子育てなどの無休の仕事や、有給の仕事を休もう」と訴えるストライキやデモが決行された。女性の不在で活躍を実感してもらう主旨だ。全米各地で開催され、ワシントンでは、国会議事堂前に集まったデモ参加者の中に米議会議員の姿もあった。

ロシアでは、フェミニストたちが1917年を真似て、クレムリンに「権力を200年握る男性を打倒せよ!」と書かれた横断幕を掲げ青い発煙筒を焚き、政治から男性を追い出すよう呼びかけた。人権団体によると、この騒動で記者を含む7人が一時拘束された。

ポーランドでは、女性(と男性)が、ますます厳格になった中絶法や、最近アンジェイ・ドゥダ大統領が、家庭内暴力から女性を保護する法律を「余計だ」と決定したことなど、与党による女性の権利の扱いに対する抗議が続いた。

ジョージア(旧グルジア)の首都トビリシでは、女性に立ちはだかる「ガラスの天井」を表して、女性たちがガラス板を下から持ち上げるパフォーマンスが行われた。

アイルランドでは、黒い服に身を包んだ女性たちが、中絶を違法とすることに反対の声を上げた。(母親の命が危険に瀕している場合を除く)

そしてニューヨークの街中には、主催者が着用を呼び掛けたテーマカラーの赤い服を着た1万5000人が集結した。まるで一世紀前を彷彿とさせる光景が広がった。【3月9日 Newsweek】
********************

中絶禁止国へ派遣される妊娠中絶船
中絶の問題は、アメリカでいつも社会を二分する論争になるように、女性問題が先鋭化するテーマでもありますが、最近目にした記事によれば、違法とされている国の沖合の公海上で中絶を行う「妊娠中絶船」などもあるようです。
当然に、現地当局とのトラブルにもなります。

****オランダの「妊娠中絶船」がグアテマラに入港、海軍が活動阻止****
オランダの女性権利団体が所有する「妊娠中絶船」が中米グアテマラの港に到着し、地元キリスト教団体などの激しい反発を招いている。グアテマラ海軍は23日、「中絶船」を監視するため巡視船を派遣した。
 
物議を醸しているのは、オランダの非営利団体(NGO)「ウィメン・オン・ウェーブス(Women on Waves)」が所有する船。

首都グアテマラ市南方のサンホセに入港した船に乗っている活動家らは、中絶が禁止されているグアテマラの女性たちを支援すると宣言。法律違反を回避するため同国沖の公海上で5日間にわたり中絶手術を無料で行うと表明していた。
 
これに対しグアテマラ海軍は、ジミー・モラレス大統領の指示に基づき「この団体が国内で活動することを許可しない」との公式な申し立てを検察当局へ送ったことを明らかにした。
 
一方、ウィメン・オン・ウェーブスは声明で、海軍が同団体の船を不当に拿捕(だほ)したと主張。「グアテマラは自国の女性が安全に中絶する権利を規制している。その規制に対する合法的な抗議を(軍が)妨害している」と非難した。
 
グアテマラでは、母体の命に危険が及んでいる場合を除き、中絶は禁止されている。ウィメン・オン・ウェーブスによると、同国では違法で危険な中絶が毎年およそ6万5000件も行われているという。
 
ウィメン・オン・ウェーブス創設者で中絶医のレベッカ・ゴンペルツ氏はAFPに対し、今回の活動は2012年にモロッコで行った活動以来だと明かした。モロッコでも妊娠中絶は違法かつ社会的タブーとされており、この時も海軍が中絶船の入港を阻止するため港を封鎖するなどした。【2月24日 AFP】
***********************

トルコでは女性らの催しが武装集団に襲撃される
話を「国際女性デー」に戻すと、トルコでは女性らの催しが武装集団に襲撃される事件も起きています。

****女性デー催しに襲撃、学生けが 武装集団が侵入 トルコ****
トルコ・イスタンブールのビルギ大学で8日、国際女性デーを祝うイベントに参加した学生に対し、ナイフで武装した若い男の集団が襲いかかり、少なくとも女子学生1人が顔にけがをした。目撃者によると、襲撃した男たちはアラビア語で「アラー・アクバル(神は偉大なり)」と繰り返し叫んでいたという。
 
複数のトルコメディアが報じた。大学当局の発表によると、15〜20人の男たちが警備を破って許可なくキャンパス内に入り、テントにいた学生たちに襲いかかった。通報を受けて警官が駆けつけ、襲撃者のうち6人を拘束した。
 
トルコメディアによると、負傷した女子学生は同大4年のイレム・エスメルさん。顔を蹴られて右目下に青あざができ、まぶたが切れた。エスメルさんは病院で治療を終えた後、「顔を隠した集団が、聖典コーランの戒律を叫びながら襲いかかってきた。テーブルをひっくり返され、私は地面に倒れたところ、顔を蹴られた」と語ったという。
 
男女格差を数値化した世界経済フォーラムの「ジェンダーギャップ指数」では、トルコは144カ国中130位に低迷している。男女間の格差解消が国の課題だが、その取り組みに保守的な男性の間には反発も強い。【3月9日 朝日】
*******************

カナダ・トルドー首相夫人の提案には反感も
一方、トランプ大統領向こうを張るようなリベラルな難民対応で存在感を示すカナダ・トルドー首相ですが、首相夫人の「国際女性デー」に対する提案には批判も多かったようです。

****国際女性デーは「男性も祝われるべき」加首相夫人の提案に批判集まる****
国連が定める「国際女性デー」を翌日に控えた7日、カナダのジャスティン・トルドー首相の妻であるソフィー夫人が、男性も同じく祝われるべきだと提案したことが、ソーシャルメディア上で波紋を広げている。
 
ソフィー夫人は自身のインスタグラムのアカウントにトルドー首相と手をつないで見つめ合う写真を投稿し、「国際女性デーを迎えるに当たっては、私たちの人生において、私たちが本当の自分でいることを後押しし、敬意を持って女の子や女性たちに接する男の子、男性たちも称賛しよう」というメッセージを添えた。

またソフィー夫人は、女性たちに男性パートナーとの画像を投稿するように呼び掛けたが、この彼女の投稿に対して多くの率直な批判が集まった。
 
バンクーバーのある女性はインターネット上に「(ソフィー氏の主張は)問題があり過ぎて、どこから始めたらいいかわからない」と前置きし、「国際女性デーは、大同してフェミニズムを称賛し、女性たちおよび、女性と自認する人びとが日常的に目の当たりにする女性嫌悪が今も衰えていないということを認識すると同時に、女性たちが平等を求めて歩んできた道のりに感謝する日」であり、「決して男性に関わる日ではない」と投稿した。【3月8日 AFP】
******************

男性と女性を対立的な存在として扱うべきではなく・・・というソフィー夫人の主張はわからないではありませんが、イケメンで、有能で、理解がある、誰しもうらやむような男性と暮らすソフィー夫人と、多くも問題で虐げられ、傷つき、苦しんでいる現実世界の女性たちとでは、取り巻く環境に違いがありすぎる・・・という感も。

日本でも抗議デモ 参加者は約300名・・・
日本の首相夫人も「国際女性デー」の取り組みに参加しています。
参加はしていますが、世間の関心はもっぱら“例の問題”です。昭恵夫人も自虐的にそこに触れ・・・

*****国際女性デーに昭恵夫人*****
安倍総理大臣の妻、昭恵夫人は国際女性デーのきのう、東京都内のイベントに参加しました。

昭恵夫人は総理夫人としての活動について、「私に注目してもらえれば、活動自体が注目される」と話しました。一方、森友学園の問題については何も話しませんでした。

(安倍昭恵 総理夫人)「いい形で放送していただきますよう くれぐれもよろしくお願いいたします」【3月9日 TV東京】
*******************

それはともかく、東京都内では抗議デモも行われたようです。

****女が生きるのまじでつらい」国際女性デー、都内でデモ****
「我慢するのはもう限界!」。国際女性デーの8日、女性が抱えるさまざまな「生きにくさ」を共有しようという「ウィメンズ・マーチ東京」が東京都内で開かれ、約300人の女性らが歩きながら、声をあげた。

女性を蔑視するような発言をしたトランプ米大統領への抗議デモを組織した団体が、国際女性デーに合わせたデモを世界に呼びかけ、賛同した国内の複数の女性団体が企画した。
 
「女が生きるのまじでつらい」「私のしんどさ声に出そう」――。「連帯」を示す赤い服やピンクの毛糸の帽子をかぶった女性らが、ラップ調のコールを繰り返しながら東京・渋谷を歩いた。「女=補助職じゃない!」「セクハラNO」「労働時間の短縮で男も育児に参加して」などのプラカードを掲げた人もいた。
 
ウィメンズ・マーチ実行委員会の濱田すみれさん(32)は「生きにくさを感じてもやもやしている人が、国際女性デーに『生きにくい』ということだけでも声に出せる場にしたいと考えた」。仕事帰りに参加した国分寺市の団体職員、田中麻理さん(29)は「子どもをほしいと思っているが、保育園は足りず、長時間労働で男性の家事・育児参加が進まないので八方ふさがりだと感じる」と話した。
 
この日、グーグルの検索のロゴが「国際女性デー仕様」に変更され、エジプト初の女性パイロットや韓国初の女性弁護士など、様々な女性をスライドショー形式で紹介するデザインになった。【3月8日 朝日】
************************

全国各地で草の根的に地道に活動に取り組んでいる女性は大勢おり、別に派手な抗議デモだけが意思表示方法ではありませんが、「保育園に落ちた 日本死ね」という現状の割には、参加者が約300人というのは、ちょっと寂しい感もあります。

日本の女性は“かわいい文化”にどっぷりつかり、頭の中にあるのはファッションと恋愛だけ、“女子力”アップに精を出す・・・なんてセクハラ・女性蔑視的なことは言いません。言いませんが、どうなんでしょうか・・・。

ちなみに、人権に対する認識が高いとされる北欧のスウェーデンでは、ロシアに対する脅威もあって、最近徴兵制が復活しましたが、徴兵の対象には女性も含まれます。男女平等というのは、そういうことでもあります。

日本の女性問題を凝縮した数字が“女性議員割合193カ国中163位”】
日本女性の女性自身の問題、周囲・社会の問題を凝縮した結果が下記のような数字です。

****女性議員の割合、中国は世界平均上回る、日本は193カ国中163位****
2017年3月8日、世界の国会議員が参加する列国議会同盟(IPU)がこのほどジュネーブで発表した2016年の各国議会(一院制の議会または下院)の女性進出に関する報告書によると、世界全体の女性議員の割合は23.3%で、前年より0.7ポイント増えた。

中国の国会に当たる全人代の女性議員の割合は23.7%で世界平均を上回っている。国際在線が伝えた。

IPUのマーティン・チュンオン事務総長は「中国における女性議員の増加は、世界平均の引き上げに重要な影響を与えている。中国の割合は世界平均を上回る素晴らしいものだが、もっと引き上げることも可能だ。中国政府の男女平等促進への努力に期待している」と語った。

日本メディアによると、日本は193カ国中の163位で、前年の156位から順位を落とした。主要7カ国(G7)では、ドイツ23位、カナダ62位、米国104位などで、日本は最下位だった。1位はアフリカのルワンダで、下院の定数80人のうち女性が49人を占めている。【3月8日 Record China】
*********************
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「国際女性デー」40周年 堀北真希さんの引退報道

2017-03-07 23:16:38 | 女性問題

【2月28日 GLITTY】

古典的女性差別以外にも、社会に根強い差別的対応も
世の中には随分とわかりやすい女性差別もまだ存在するようです。

****女性の報酬は男性よりも少なくすべき」、ポーランド極右議員が差別発言****
欧州議会でポーランドの極右議員が、女性は男性と比べて弱く知性も劣るため報酬を低くすべきだとする「性差別発言」をしたことを受けて同議会は3日、調査を開始した。
 
問題の発言をしたのはポーランドのヤヌシュ・コルビンミッケ議員(74)。同議員は以前にも、人種差別発言やナチス・ドイツのホロコースト(ユダヤ人大量虐殺)をめぐる発言などで、欧州議会から処罰されたことがある。
 
コルビンミッケ議員は今月1日に欧州議会で「女性の報酬を男性よりも少なくするのは当然だ。なぜならば女性は弱く、小さく、知性が劣っているからだ。女性の報酬は少なくすべきだ」と述べた。
 
他の議員からの指摘を受け、アントニオ・タヤーニ議長は「性差別発言」について調査を開始したことを明らかにした。同議員に対し、罰金や議員活動の停止が科される可能性がある。
 
欧州議会は2日夜に発表した声明で「発言についてはすぐに複数の議員からタヤーニ議長へ指摘があった」と述べた上で、同議長はコルビンミッケ議員の発言を映した動画も見たと発表した。
 
コルビンミッケ議員はこれまでにも、ナチスの指導者アドルフ・ヒトラーは「ユダヤ人の虐殺に気付いていなかった」と主張したり、難民を「人間のクズ」と呼んだり、アフリカ系米国人に対して人種差別的な言葉を使ったりするなど物議を醸してきた。【3月6日 AFP】
*******************

ここまで単純明快に差別を公言することはなくても、女性に一定の社会的役割を強制するようなことは普段に見られることかも。

****職場の女性の「ドレスコード」はハイヒールと化粧? 英報告書****
英国では性差別は違法とされているにもかかわらず、一部の職場では、ハイヒールと金髪と化粧といった「ドレスコード」が女性たちに課されている。英議会の調査報告書が25日、発表された。

女性が職場でどのような経験をしてきたかについて、議会の請願委員会 と女性・平等委員会が調査を行うきっかけとなったのは、昨年ロンドンのコンサルタント会社プライスウォーターハウス・クーパース(PwC)に受付係として採用されたニコラ・ソープさんに対してとられた会社側のある行為が問題視された
 
ソープさんは、高さ5~10センチのハイヒールを履いて出社するよう会社側から求められたが、同様の規定が男性には課せられていないとしてこれを拒否したところ、帰宅を命じられ、日給も支払われなかったのだ。
 
この一件を機に、ソープさんは女性に対する職場の服装規定の改正を求めた。この運動には15万を超える署名が集まり、議会委員会の調査にもつながった。
 
発表された報告書には、「多数の女性たちが、職場での長期にわたるハイヒールの着用による痛みや長期的な悪影響について訴えていることが明らかになった。また、髪をブロンドに染めることや、露出度の高い服装の着用、さらには化粧直しを欠かさないよう職場から求められたと話す女性たちもいた」と記された。
 
英国の法律は企業に対し、服装規定を設けることを認めているが、同規定による女性差別は禁じている。【1月25日 AFP】
***********************

ハイヒールが女性差別だというのなら、夏にもスーツとネクタイを着用しなきゃいけない服装規定は、男性への性差別なのか?という反論もあるかと思います。

“女性がヒールと化粧を求められることは、男性がシャツやネクタイの着用を求められるのとは違うと(問題の発端ともなったソープさんは)主張している。ハイヒールが健康を損なう可能性があることに加え、男性のシャツやネクタイとは異なり、ハイヒールは女性を性的な存在とするためのものだからというのがその理由だ。”【2月28日 Newsweek】

トランプ大統領のもとでの「国際女性デー」40周年
明日3月8日は「国際女性デー」ですが、1977年に国連がこの日を定めてから40周年にあたります。
国際女性デーの始まりは、1908年に、ニューヨークで女性たちが婦人参政権を求めるデモ活動を行ったのが起源といわれています。

アメリカでは女性蔑視的言動が目立つトランプ大統領のもとで40周年を迎えます。

****国際女性デー40周年、今年は女性の権利脅かす現状に行動呼び掛け****
1977年に国連(UN)が女性の権利のために「国際女性デー(International Women's Day)」を定めてから40年を迎える今年の3月8日は、男女平等社会を目指す闘いが今またさまざまな問題に直面していることを受け、女性に対する賞賛だけではなく行動への呼び掛けがテーマになると思われる。
 
ポーランドの政治家で「セーブ・ウィメン」委員会代表のバルバラ・ノバカ氏は、「3月8日はサフラジェット(20世紀初頭の婦人参政権活動家)をたたえたり、過去の成功を祝ったりするだけではなく、現状について思いを巡らすための日だ」と語る。
 
国際女性デーに先立ちAFPの取材に応じたノバカ氏は、「労働市場や社会、政治における女性の役割に関しては、取り組むべき課題がまだたくさんある」と主張する。
 
このところの社会情勢でフェミニストたちが懸念を抱いているのは、中絶の権利や賃金平等、ジェンダー(文化・社会的性差)に起因する暴力といった重要な問題だ。
 
1月下旬にドナルド・トランプ氏が米大統領に就任した後に行われた大規模な抗議デモ「女性の行進(Women's March)」でも、性差別主義者の男性たちの態度や考え方によって女性の権利が侵害されることへの懸念が表明された。
 
世界中の都市で行われたデモには女性200万人が参加。中でも米首都ワシントンでは、トランプ氏の政策や、選挙活動中に映像で明らかになった同氏の卑猥な女性蔑視発言に対する抗議が行われた。
 
女性の経済力に関して言えば、男女平等の同一賃金を求める長年の闘いにまだ終わりは見えない。
国際労働機関(ILO)によると、世界全体における女性の収入は男性よりも平均23%少なく、このペースで行けば、格差をなくすのには70年を要するという。

■「私たちは怒っている。でも無力ではない」
統計からは、女性に対する暴力についての悲惨な実態も浮かび上がる。
 
国連によると、全世界の女性の約35%は、身体的あるいは性的暴力の被害者となっている。女性や少女約2億人が女性器切除を受けており、7億人が18歳になる前に結婚している。
 
仏家族計画局で国際問題を担当するクリスティーヌ・モージュ氏は、「(中絶に反対する団体は)団結力が強く、ソーシャルメディアや政治的な影響力も大きい」と述べ、「2017年の今も、男性優位主義は大きな問題の一つだ」と指摘する一方で、「物事を前進させるのは難しいが、後退はさせないように努力している」と語った。
 
ノバカ氏をはじめとする女性の人権活動家らは、自分の権利のために立ち上がることによって女性たちにあるメッセージを示している。それは、「私たちは怒っている。でも、私たちは自分が無力ではないことを知っている」ということだ。【3月7日 AFP】
*******************

アメリカでは、今年はトランプ大統領に対する反発から、フェミニストグループが女性全体に3月8日に女性は仕事も家事もしないというストライキを呼びかけているとか。【2月28日 GLITTYより】

【“一億総活躍社会”と堀北真希さんの引退報道
日本は女性の権利状態に関する国際調査では、女性の社会参加が遅れているということで、いつも低い数字がでます。

一方、安倍政権は“一億総活躍社会”を掲げ、少子高齢化で労働人口が減少することが明らかな状況では、女性の労働力を活用することが求められています。

そうしたなかで、最近の“芸能ネタ”で話題になったのが、女優の堀北真希さんの引退・専業主婦宣言。

********************
この度、これまでやってまいりました お仕事から離れることを決意致しました。
現在私は母になり、 愛する家族と幸せな日々を送っています。
このあたたかで、かけがえのない幸せを全力で守っていきたいと思っています。
夫とも話し合い、私の気持ちを尊重してくれました。これからも2人で力を合わせ、 愛情いっぱいの家庭を築いていきたいと思います。
いつも応援してくださったファンの皆様、お世話になりました関係者の皆様、 素晴らしい14年間を本当にありがとうございました。
2017年2月28日 堀北真希
http://www.sweetpower.jp/comment_horikita_170301.html
********************

どういう人生を選択するかは、当然に個人の自由ですから、その選択をとやかくいうことはありません。

ただ、このメッセージを聞いて、「なんだかんだ言いつつ、日本の女性はやっぱり専業主婦を理想としているのだろうか? 専業主婦を追い求めるなかでの男女平等というのは、現実問題としては難しいかも。」という素朴な疑問を感じたのも事実です。

堀北真希さん自身の選択はともかく、その話題を扱う芸能ニュースの雰囲気が“潔い決断で素晴らしい!”一辺倒なのには違和感も。

世の中には同じような違和感を感じた方もおられるようです。

****堀北真希さんの引退報道で感じた違和感 ****
(中略)
家事や育児のために芸能界を引退するという選択を彼女がしたことは、彼女の自由だし尊重されてしかるべきだと思います。

でも、少しモヤモヤするんですねー
なんでだろう?

マスコミがこぞって『潔い』と称賛していたことに違和感
どのチャンネルにしても、『売れっ子なのに未練なくスパッと引退して潔い』『莫大な収入を捨ててまで家庭に入ることにしたのはとても良い決断だ』と足並みそろえてもれなく絶賛。

誰も異論を唱える人はいません。

目先のお金なんて関係ない、ただただダンナと子どものために尽くして小さな幸せを手に入れるために芸能界を辞めるという決断をした、素晴らしい人なんだよっていう方向に話を持っていっているように見えてしまうのです。

本人の決断はそれでいいんですけど、勝手にカリスマ化しようとしているところに、モヤモヤを感じてしまうのです。

一億総活躍社会とか言ってる一方で・・・・
このご時世、女性も外に出て働け、子どもを産んでも会社を辞めずに頑張れ、って言われてきています。

女性も外に出て働くことが是であり、専業主婦にも働いてほしい、みたいなことを言っているのに、いざ芸能人のような知名度の高い人が仕事を辞めて家に入ることを選んだ時の報道の仕方が、『ダンナや子どものことを考えて一番良い選択をした』っていう風潮になるのに違和感を感じるのです。

あれだけ女性に働けって言ってたやん!
結局、家庭に入った方がいいと思ってるやん!
言ってること全然違うやん!!

完全にダブルスタンダードです。
表向きは女性が社会に出て活躍することを善しとしながらも、本当のところは家庭に入って家事・育児をしっかりしてほしいという願望の現れだ思います。

いろいろな生き方があっていい
結局、専業主婦だろうが働いていようが、その人個人の自由だと思います。

今は少子高齢化が進む中で、少しでも税収を上げたいがために働け働けと言われていますが、自己実現の手段は決して働いてお金を稼ぐことだけじゃないと思うし、日常生活を送る中、社会と関わっていく中で、自分が満足できる生き方を選択できることが大事なんじゃないかな。

社会の意見には裏と表がある。それにいちいち翻弄されてモヤモヤする自分がいる。

色々と考えさせられる一件でした。【「フツーの主婦 あれこれやってみる」http://micantan.hatenablog.jp/entry/women-way-to-live
******************

働く女性の3割が専業主婦を希望
専業主婦を選択するのは個人の自由ですが、それをもって「女性はやっぱり働きたくないんだ」「女性は家庭を守るのが一番、それが女性の幸せなんだ」といった古色蒼然とした価値観が引きずり出されるのは困ります。

働く女性の少なからぬ割合が専業主婦を希望しているのは事実ですが、それは“働きにくさ”の反映でもあり、また、価値観の多様化なども反映していると思われます。

****働く女性の想い、「本当は専業主婦になりたい」は3割強(2016年)****
今や1000万世帯を超えた共働き世帯だが、女性は就業以外に家事の多分に従事する場合が多く、必然的に個人に課せられる負担が多くなる。

他方、就業そのものでも男性と比べ女性は、就業技術には関係なく不利なポジションに置かれている事例が多々あるとの指摘もなされている。

今回はソニー生命保険が2016年3月17日に発表した【女性の活躍に関する調査2016】から、働く女性における就業そのものや世帯への想いに関して確認をしていくことにする。

「女性は働くのに不利」当事者の7割が実感
(中略)今調査対象母集団のうち有職者(未既婚を問わず。よって兼業主婦以外に独身者の就業者も含む)に対し、生活や仕事に関する問いを行い、その内容に対し「非常にそう思う」「ややそう思う」(以上肯定派)「どちらともいえない」(以上中庸・意見留保派)「あまりそう思わない」「全くそう思わない」(以上否定派)のいずれかの選択肢で回答してもらい、そのうち肯定派の値を累積した結果が次のグラフ。

↑ 生活や仕事に関する内容について、そう思うか思わないか(女性回答、有職者限定、思う派、2016年 濃いブルー「非常にそう思う」薄いブルー「ややそう思う」)

有職女性の7割近くが「女性が社会で働くには不利な点が多い」と実感している。これが自分の経験に依るものか、それとも周辺で見聞きしたものを起因としているかまでは問われていないが、多分に実体験によるものと考えた方がよさそうだ。

一方、「現在の生活に満足している」との回答も半数近くに達しており、不平不満に満ちあふれた日々を迎えているわけではないことが分かる(ちなみに否定派は25.0%)。

また、約7割が不利な点が多いとする状況下でも、約1/3の人は「今後(も)キャリアを積み、高みを目指したい」としている。さらに2割近くは管理職への機会があればチャレンジしたいとし、意気盛んであることがうかがえる。

不遇な環境下におかれていることを自覚しながらも、現状に満足し、さらにステップアップしたいとの意向も少なくない就業女性だが、同時に専業主婦になりたい人も3割に届いている。(中略)

なぜ専業主婦になりたいのか
就業女性のうち3割は専業主婦への転身を望んでいる。その理由を尋ねたのが次のグラフ。ほぼ同率で「仕事の人間関係」「専業主婦が向いているとの自覚」「プライベートの時間確保」が並んでおり、この3項目が就業女性における専業主婦への憧れの主要因であることが分かる。

↑ 働く女性が専業主婦になりたいと思う理由(複数回答、専業主婦願望がある有職女性、上位陣、2016年)

「仕事の人間関係」は専業主婦に限らず就業者に係わる調査では必ず上位陣に挙がる「就業が辛い」「辞めたい、転職したい」の理由の一つ。該当者本人だけの力では解決しえないケースも多く、今項目が最上位につくのも仕方がない感はある。

他方、家事や育児との兼ね合わせが難しいなどではなく、個人としての時間を持ちたいがために仕事を辞めたいとの意見も多い状況は、専業・兼業主婦に係わる問題が単純な構造では無いことを示唆している。

中には「専業主婦を体験したい」「仕事が難しそう」「専業主婦の友達かうらやましい」などの意見もあるが、一方で「家事に注力したい」「子育てに注力したい」のような家事と仕事の両立が難しい現状から、専業主婦を望む声も少なからず見受けられる。単純に時間が足りない以外に、就業を始めた時と比べ家事や育児への回答者が感じるウェイトが、より大きなものとなってきた場合もあるのだろう。(後略)【2016年3月28日 ガベージニュース】
*******************

話はここからになりますが、このあたりの話に立ち入ると長くなりますので、また別機会に。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする