孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

男性優位社会で女性に強いられる身体的犠牲「胸アイロン」 男性の性的暴力に関し、女性への責任転嫁も

2017-01-08 22:02:12 | 女性問題

(2011年アフリカにおける“女性器切除(FGM)”分布図 【ウィキペディア】
「胸アイロン」が広く行われるカメルーンは、上図ではFGM実施地域に接してはいますが、北部以外は地域側にあるようです。FGMに加え「胸アイロン」も・・・となると悲惨です。)

男性優位権力に問われる“やる気”】
なんだかんだ言っても、今の世の中が圧倒的に男性優位社会であることは改めて言うまでもないことです。

世界の多くの国々で女性の権利・社会参加は大きく制約されていますが、より直接的・身体的に女性に過度の負担を強いる伝統的慣習も少なくありません。

****生理中で隔離された少女、小屋の中で窒息死 ネパール*****
ネパールの警察当局は19日、ヒンズー教の古い慣習に従って、生理中に小屋に閉じ込められた15歳の少女が死亡したと発表した。
 
一部のヒンズー教徒は生理中の女性を不浄な存在とみなしており、今もネパールのいくつかの地域では、10年以上前から法律で禁止されているにもかかわらず、そうした女性を小屋や牛舎に閉じ込める慣習「チャウパディ(chhaupadi)」が行われている。
 
現地当局の捜査官はAFPの取材に対し、少女は「体を温めようとして付けた火の煙で窒息死した」と話した。
 
チャウパディの慣習では、生理中や出産後の女性は日常の家庭生活から隔離され、家族の男性との接触が遮断される。
 
ネパール政府は2005年にチャウパディを禁止したが、ネパールの国家人権委員会のモハナ・アンサリ氏は、地域の指導者たちが禁止令の実施を強化しなければならないと述べた。【2016年12月21日 AFP】
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生理中の女性を不浄な存在とみなす考え方は、日本を含めて世界共通とも言えるほど広く存在します。まったく理不尽な話です。

“地域の指導者たちが禁止令の実施を強化しなければならない”というのは当然のことですが、要は実際にどれだけ実効ある運用ができるか・・・という話です。

法律的“建前”と地域的・伝統的慣習が乖離していることは、女性問題や児童問題などではしばしば見受けられることです。各国の男性優位の権力がどこまで“やる気”を示すのか・・・。

未だに蔓延する“女性器切除(FGM)”】
女性の身体に対する直接的“暴力”として、アフリカを中心に極めて広範囲で行われている痛ましい習慣が“女性器切除(FGM)”です。日本的な感覚からは想像し難いものがありますが、未だに世界の現実です。

***女性器切除、世界で2億人が被害 ユニセフ報告****
国連児童基金(ユニセフ、UNICEF)は、女性器切除(FGM、女子割礼)を受けた少女や女性が世界全体で少なくとも2億人に上るとする報告書を発表した。うち半数は、エジプト、エチオピア、インドネシアの3か国の女性らだという。
 
報告書は6日の「女性器切除の根絶のための国際デー」を前にまとめられた。ユニセフはFGMを子どもに対する明らかな人権侵害とみなしている。
 
報告書によると、FGMの実施率はソマリアやギニア、ジブチが依然として世界最高の水準にある。ただ、FGMが広く行われている約30か国全体でみると低下している。
 
国連(UN)は昨年9月に加盟国の全会一致で採択した持続可能な開発目標に基づき、2030年までのFGM根絶に取り組んでいる。
 
世界のFGM被害者2億人のうち、4400万人は14歳以下の少女だ。ユニセフによると、FGMの実施率が高い30か国では多くの少女が5歳の誕生日を迎える前にFGMを受けている。【2016年2月5日 AFP】
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FGM実施国数が減少しているというのは、実に喜ばしいことではありますが、未だ多くの女性がFGMを強いられてという現実の方に重いものがあります。

“女性器切除(FGM)”については、各国での根絶に向けた取り組みとか、非衛生的なFGMの結果死亡した事例などに関する記事をときおり目にします。

男性の性的暴力から娘を守るために・・・
一方、初めて目にした言葉が“胸アイロン”というものです。
こちらも、悲惨さ、おぞましさではFGMと同じです。

アフリカ諸国だけでなく、移民が多く流入しているイギリスなど欧州諸国においても、FGM同様に行われているようです。

****少女の乳房を焼き潰す慣習「胸アイロン」──カメルーン出身の被害者語る****
<女性の性にまつわる忌まわしい慣習は性器切除だけではない。被害者が本誌に語った「胸アイロン」という残忍なレイプ回避法>

日曜の教会の帰り、叔母に「お前の胸をどうにかしなくては」と言われたとき、ビクトリン(ビッキー)・ンガムシャは12歳だった。43歳になった今でも、ビッキーは叔母の次の言葉を覚えている。「大きくなりすぎたんだよ。こっちにきなさい」

帰宅すると、叔母はビッキーのシャツを脱がせて座らせた。「あの時は家にいるのは女ばかりだったから、裸になるのは大して気にならなかった」と、西アフリカのカメルーン北西の町、キアン出身のビッキーは振り返る。「叔母は大きなコーヒーの葉っぱを数枚、焼石の上に置いた。そして熱々になった葉っぱを私の胸に押し当てた」

イギリスのバーミンガムに移住して12年になるビッキーは、人生初となったあの日の経験が「ブレスト・アイロン(胸アイロン)」と呼ばれる処置だったことを、今でこそ知っている。熱した石やハンマーなどを、少女の胸に押し当てたりマッサージに使ったりして、胸の成長を止めるのだ。

忌まわしい慣習
カメルーンの女性人権団体RENATAの2006年度の報告書やドイツ国際協力公社(GIZ)の調査によると、カメルーンで胸アイロンの犠牲者になる少女は4人に1人に上る。

米タフツ大学のファインスタイン国際センターは2012年、同様の慣習は、ベニン、チャド、コートジボワール、ギニアビサウ、ギニア、ケニヤ、トーゴ、ジンバブエを含む西アフリカや中央アフリカ諸国の広い範囲で行われているとする調査報告書を発表した。その中でもカメルーンは断トツに被害が多い。

英下院議員のジェイク・ベリーは、胸アイロンは移民を通じてイギリス国内でも広がっているが、公式な記録やデータがないために問題の実態が覆い隠されていると指摘する。

3月8日の国際女性デーを記念して下院で演説をしたベリーは、バーミンガムやロンドンなどイギリスの都市圏に広がる西アフリカ出身者のコミュニティーでは、何千人もの少女が胸アイロンという「忌まわしい」慣習の犠牲になっていると訴えた。

ベリーが全国のあらゆる警察署や行政機関に文書を送り、この問題にどのような対策を講じているか問い合わせた結果、警察署の72%が「胸アイロンの件については未回答、もしくはその言葉自体を聞いたことがない」と回答した。

ビッキーは、イギリスの警察が胸アイロンについて知らなくても驚かない。カメルーンでは、「女性に関する問題」に当局が口出ししないのは当たり前だ。彼女は10歳の時、近所の男にレイプされた。犯人は逮捕されず、何のお咎めも受けなかった。

「コーヒー畑で遊んでいたら、身なりの良い男が近づいてきて、もし言うことをきかなければ妹のように死ぬぞと脅した」。実際、ビッキーは兄弟姉妹のうち6人を栄養失調で失くしていた。「当時は10歳だったから、何も知らなかった。男は私を地面に倒してレイプした」

「その後、脚の間から血を流しながら母のところへ行くと、母は『おてんば娘ね、オレンジの木に登って怪我をしたのだろう』と言った。何が起きたか母に打ち明けると、母の目に涙が溢れた」

ビッキーが子どもの頃に性的暴行の犠牲になったのは、この時だけではない。だがこの時初めて、女性でいる限り安全ではないのだと悟った。そして少女から大人の女性へと体が成長するにつれ、不安に苛まれるようになった。

思春期の少女に対して胸アイロンが行われるのは、多くの場合、男たちの性的対象から遠ざけるためだ。目的は、結婚前の望まない妊娠やレイプ、性的被害に遭わないようにすること。思春期の少女が性的虐待の標的になりつつあるという恐れが生じた段階で、母親か祖母や叔母など女性の親類が処置をする。

性器切除は知られているのに
叔母が教会からビッキーを家に連れて帰り、初めて胸アイロンを押し当てたのは、ビッキーが12歳でちょうど思春期に差し掛かった頃だった。泣いた記憶はないが、熱した葉っぱが素肌に当たり、焼けるように痛かったのを覚えている。「すごく熱かった。でも叔母はこうすれば美しくなれると言った」

ビッキーは自分のレイプ被害が胸アイロンの直接の引き金になったとは言わないが、少なくともその慣習を自己防衛の一種として認めていた。処置は繰り返され、何回だったかは記憶にないという。

「苦労が多くみすぼらしかった」という子ども時代を過ごしたベッキーは、その後結婚し、夫の仕事の都合で12年前にイギリスへ移住した。

だがイギリスでは胸アイロンはいまだ認知されておらず、政府や行政機関による見解はないに等しい。女性器切除(FGM)については昨年7月、初の年次統計が発表され、イングランドで年間5700件のFGM被害が報告されたのとは大きな違いだ。

そうした行為を、単に宗教や文化的な動機に基づく女性への暴力行為として記録する警察当局のやり方は生ぬるいと、ベリーは主張する。イギリスでは1985年以降、FGMには特定の刑事罰を科し、2015年に厳罰化もした。

「下院で演説してからは、主要都市の警察と緊密に連携し問題に取り組んでいる」とベリーは言う。「警察側はその慣習がイギリス国内で行われていることに、手探りながら気づいている」

英内務省は本誌の取材に対し、胸アイロンは児童虐待に該当するため「違法」だと回答した。同省のサラ・ニュートン政務次官は、政治的もしくは文化的な配慮が、この慣習を未然に防ぎ実情を暴くうえでの「妨げになってはいけない」と言った。

女性と少女のための英チャリティ組織で胸アイロンの被害者を支援するCAMEの共同創設者マーガレット・ニューディワラは、主にロンドンやバーミンガムといった都市部で西アフリカ出身者のコミュニティーが拡大していることから、イギリスにおける被害件数が今後も増えそうだとみている。内務省のデータによると、2001〜2015年の間に6972人のカメルーン出身者が、亡命もしくは市民権を得てイギリスへ移住した。

光を当てよ
「痛みとトラウマの両方を一度にもたらす手順は残忍で、大人になっても被害者の人生に悪影響を及ぼす」とニューディワラは言う。「当事者は娘を守るつもりで、良かれと思ってやっている。だがその行為は有害だ。子どもは数カ月にわたり日々の虐待を耐え忍び、英当局は見知らぬ文化に介入するのに及び腰だ。CAMEは英国内で胸アイロンの被害に遭っている少女が1000人規模に上ると推計している」

処置の方法は様々だ。ビッキーが経験したように熱した葉っぱを胸に押し当てたりマッサージに使ったりする場合もあれば、焼いた砥石を使って発育期にある乳腺を潰すケースもある。少女の心理的な傷痕は深く、長い時間を経ても消えない。性に関するコンサルタントでカメルーン人のアワ・マグダレンによると、そうした慣習は「少女がその後の人生で、社会で自己主張するのに必要な自信を奪い去ってしまう」

胸アイロンを失くすための第一歩は、FGMの場合と同様、できるだけ広くその存在を世に知らしめ、理解を広めることだと、ベリーは言う。声に出して話し合わなければ、胸アイロンはまた元の闇に葬られてしまうだろう。【1月5日 Newsweek】
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被害者女性側に責任転化する傾向も
“胸アイロン”という残忍な行為が母親など肉親によって行われるのは、結婚前の望まない妊娠やレイプ、性的被害に遭わないようにすること、要は男性側の性的暴力から娘を守るためとされています。

男性側の性的暴力については、日本など先進国を含め、あらゆる社会において“ごくありふれた”現象ですが、“女性側のふしだらな服装などが、そうした暴力を誘発している”と、被害者側へ批判の矛先が向けられることも珍しくありません。

その“ふしだらな服装”は具体的には“西洋風の服装”という形で、欧米文化に対する民族主義的抵抗感とも結びつくことがしばしばあります。

****性的被害は「西洋風の服装のせい」、州内相の発言に批判殺到 インド****
インド南部のカルナタカ州バンガロールで大みそかに行われた祝賀イベントで、複数の女性に対し集団が性的暴行をはたらいたとみられる事件について、治安を担当する州内相が「西洋人のような」服装をしていた女性たちに非があると発言し、批判が殺到している。(中略)

こうした中、カルナタカ州のジー・パラメシュワラ内相はこの事件について、女性らが西洋風の服装をしていた結果起こった「不幸」な暴行事件だったと発言した。
 
パラメシュワラ内相は現地ニュース専門局タイムズ・ナウに対し、「まるで西洋人のような若者たちが大勢集まっていた」と述べ、「彼らは考え方だけでなく、服装まで西洋人を真似ようとしている。すると騒ぎが起きたり、一部の女性が襲われたりもする。こういうことは起こるものだ」と語った。
 
内相は後に自らの発言が誤って引用されたと釈明したが、大きな批判を浴び、中央政府のキラン・リジジュ内務担当閣外相は一連の発言を「無責任」だと断じた。またインド国家女性委員会(NCW)のラリサ・クマラマンガラム会長は、同内相は引責辞任すべきだと非難した。【1月4日 AFP】
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“地元警察は5日、容疑者4人を拘束したが、警備の甘さや捜査の遅れも指摘された”【1月6日 毎日】とも。

“インドでは2012年、ニューデリーで起きた女子大生の集団強姦殺人事件を機に「女性の安全」を求める抗議デモが広まった。政府は厳罰化などの対応を取ったが、その後も性犯罪が多発。昨年11月には南部ケララ州で日本人女性旅行者が強姦される事件も起きている。”【同上】

“首都ニューデリーの女性権利団体で働くパドマさんは「インドでは、女性に対し『夜間に外出すべきでない』『男性の目を引かない服装をすべきだ』といった考えが根強くあるが、女性にも人権がある。内相は発言を謝罪すべきだ」と批判する”【同上】

男性側の性的暴力に対し、女性の側が負担を強いられたり、責任を転嫁されたりするのはまったく理不尽です。

「胸アイロン」の話にしても、背景に男性側の性的暴力があり、男女間のトラブルを防ぐために何らかの対応が必要だというのであれば、アイロンで潰すべきは少女の胸ではなく、男性の性器でしょう。
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世界中で女性の3分の1以上が暴力被害 先進国における男女格差・女性問題への意識

2015-11-03 22:38:39 | 女性問題

(求婚断り火付けられたパキスタンのビビさん その後亡くなったそうです。【11月3日 AFP】)

あとを絶たない暴力 情報入手で事態改善の希望も
女性を取り巻く環境は改善してきているとは言え、世界の各地で未だ厳しい状況が続いているのも実態です。

これまでもしばしば取り上げてきたように、一部の地域では、男女交際で世間体を失ったと感じた親が娘や交際相手を殺しすことが社会的に一定に認知されている「名誉殺人」、男性の一方的求婚を断るなどで男性のメンツを潰した女性の顔に酸を浴びせるなどの暴力的報復・・・そうした行為が頻発しています。

2013年12月28日ブログ「“変わるインド” “変わらぬインド”」http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20131228
2015年7月13日ブログ「アフガニスタン 親政府民兵組織による人権侵害 対ISでタリバン・アメリカの利害は一致?」http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20150713

パキスタンもそうした事件が多い地域のひとつです。

****求婚断り火付けられた」女性が死亡、パキスタン****
パキスタン中部パンジャブ州で先月、求婚を断った相手の男にガソリンをかけられ、火をつけられて重いやけどを負った女性が3日、入院先の病院で死亡した。

死亡した女性、ソニア・ビビさん(20)の容体について、同州ムルタン地区の村の病院関係者は当初、回復が見込めると話していた。しかし、AFPが取材した医師によれば、ビビさんは感染症にかかり亡くなったという。

入院した当時、ビビさんは警察に対し、元交際相手のラティフ・アフメド容疑者(24)に、求婚を断ったところガソリンをかけられ、火をつけられたと話していた。

ビビさんは体表の約45~50%をやけどする重傷を負った。アフメド容疑者はすでに逮捕されている。【11月3日 AFP】
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隣国アフガニスタンもそうした国のひとつですが、女性蔑視の社会的風潮にタリバンに代表されるイスラム原理主義が加わると、痛ましい事態ともなります。

***駆け落ちで女性のみ投石受け死亡、動画で物議 アフガニスタン****
望まない結婚を強要されたアフガニスタンの女性が、他の男性と駆け落ちしようとしていたところを見とがめられ、イスラム原理主義者たちから繰り返し投石を受けて死亡した。地元当局者が2日、AFPに対し明らかにした。

女性が無残に投石を受ける様子は動画に収められていた。19~21歳とみられるこの女性の名はロクサーナさんと伝えられている。地面に掘った穴の中に入れられたロクサーナさんに対し、複数の男たちが無造作に石を投げつけるたび、石はおぞましい鈍い音を立ててロクサーナさんを直撃した。

地元メディアが放映した約30秒の動画の中で、イスラム教のシャハーダ(信仰告白)を繰り返し唱えるロクサーナさんの声は、かん高さを増していく。地元当局は、この動画が捏造(ねつぞう)されたものでないことを確認した。

事件は1週間ほど前、同国中部ゴール州で発生。同州知事がAFPに語ったところによると、ロクサーナさんは「(同国の旧支配勢力)タリバンや地元の宗教指導者ら、またその場に居合わせた軍閥などによる投石を受けて死亡した」という。

同知事は、アフガニスタンに2人しかいない女性知事の一人。当局の情報として、ロクサーナさんは家族に「自分の意思に反する結婚を強制され、同年齢の男性と駆け落ちしようとしていた」と語った。知事の話では、相手の男性に対しては投石はなかったという。

また同州警察署長はAFPの取材に対し、事件が起こったのはタリバンの支配地域で、このような事件が発生したのは「今年に入ってからは」初めてだと述べた。【11月3日 AFP】
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女性の3分の1以上が暴力の被害を受けたことがあるという国連の報告書も出ています。

****世界中で女性の3分の1以上が暴力被害、国連報告書****
世界中の女性たちは、過去20年で平均寿命が延び、教育レベルも上がっているが、3分の1以上が暴力の被害を受けたことがあるという国連(UN)の報告書が20日、発表された。

5年間に及ぶ調査の報告書「世界の女性」は、成人女性や少女たちの人生に関わる重大な問題の推移について世界の最新データをまとめている。

国連統計局の研究員、フランチェスカ・グラム氏によれば、今回で6回目となる国連の同様の調査の報告書には、20年前には監視さえされていなかった女性の無償労働や、女性への暴力に関する新たなデータも含まれている。

過去最多の調査対象102か国で、女性の3分の1以上がそれまでの人生のうちのどこかで肉体的、または性的な暴力の被害を受けたことがあるという実態が明らかになった。

また世界的に見て、家族に関連した殺人事件の被害者の3分の2は女性だった。

さらに、自身の過酷な体験について誰にも打ち明けようとしない被害者は多く、暴力の発生率の高さは、泣き寝入りをする女性たちの多さとも比例した。

国連の調査チームは、70か国の指標に注目。その結果、自身の体験について誰かに打ち明けようとする被害女性の割合は40%未満で、その場合に想定している相手は、警察やソーシャルサービスの職員ではなく、友人や家族であることが明らかになった。警察に届け出る割合は10%未満だった。

一方で、女性に対する暴力の問題に関する情報が入手できるほぼ全ての国々では、暴力に対する女性たちの態度が変わり始めていることを示す明るいデータもある。【10月21日 AFP】
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パキスタン・アフガニスタン・インドにしろ、中東イスラム諸国にしろ、一昔前とは違い、情報が伝わりやすくなっているのは間違いないところで、今後、女性に対する暴力も減少していく・・・・ことを期待します。
当然ながら、政府・指導者の改革へ向けた真摯な取り組みが重要であることは言うまでもないことですが。

【「サイン、コサイン、タンジェントを女の子に教えて何になる?」】
女性の地位が比較的改善していると思われる先進国における女性問題に関する話題をいくつか。

男女差別を禁じる法的環境の整ったアメリカにあっても、男女の賃金格差は実態として存在していますが、カリフォルニア州ではこの男女の賃金格差を厳しく禁じる法律が成立したとか。

****男女同一賃金」目指す新法成立、米カリフォルニア州****
米カリフォルニア州議会は6日、男女の賃金格差の解消を目指す法案を可決した。同法案は、全米で最も強硬な措置とされ、ハリウッドの映画人からも称賛の声が上がった。

ジェリー・ブラウンカリフォルニア州知事は同法案に署名して法律として成立させた後に声明を発表。「カリフォルニア同一賃金法(California Equal Pay Act)が成立してから66年、いまだに多くの女性は男性と同じ仕事や同等の仕事をしながら、男性より少ない賃金しか得ていない」と述べた。「今回の法律は、根強く残る男女間の賃金格差に終止符を打つための新たな一歩だ」

今回成立した「カリフォルニア公正賃金法(California Fair Pay Act)」は、女性の賃金は男性の約84%でしかないという調査結果を受けてカリフォルニア州議会のハンナ・ベス・ジャクソン上院議員が法案を提出したもので、同一の労働とはいえなくとも同等の仕事に従事している場合に賃金面で不平等を生むことを雇用者に禁じる現行法を基に作られている。

アカデミー賞の受賞スピーチで、男女の賃金の平等を訴えた女優のパトリシア・アークエット(Patricia Arquette)さんは、「この法案が超党派の支持を得たのは、家族を養い、この国の経済を動かしているのは女性だから」とコメントし、同法の成立はカリフォルニアの女性が男性と対等に扱われるようになる上で重要な一歩だと述べた。【10月7日 AFP】
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以前オバマ米大統領が公式の席でカリフォルニア州のカマラ・ハリス司法長官の容姿を「わが国ではずば抜けて美人の司法長官(by far the best-looking attorney general in the country)」とほめたことが物議を醸したように、女性に対する性差別は男性の側からすると「そんなつもりはなかったのに・・・」というようなわかりにくさ(多分に自覚のなさの問題なのでしょうが)もありますが、フランス国営テレビのCMは女性活用をアピールしたつもりが、逆に性差別を批判される結果になったようです。

****女性活用アピールがかえって女性差別に、仏国営テレビCM放映中止****
フランスの国営テレビ局フランス3が放映した自社の女性活用をアピールするテレビCMが、むしろ性差別的な内容だとして批判と嘲笑を浴び、放映中止に追い込まれた。

40秒のテレビCMは、フランス3の女性採用率の高さに注目を集めようと作成されたもの。最後に「フランス3のニュースキャスターは、ほとんどが女性です」との文章が映し出される。

ところが、このCMでは女性の有能さを強調するのに、家事の担い手が不在となり荒れ放題に荒れた家の中を見せるという手法を取ってしまったため、盛大な自殺点を献上する羽目となった。

CMは、料理が入ったまま煙を吐くオーブン、散らかった子ども部屋、アイロンがけの途中で放置されたシャツから炎が噴き出す様子などを次々と映す。そこへ、1970年代にヒットしたフランスのポップソング「Ou sont les femmes(女性たちはどこだ?)」が流れ、女性の役割が放棄された恥ずべき状況に対する視聴者への答えとして、「彼女たちはフランス3にいるのです」とのテロップが表示される。

このCMにはパスカル・ボワタール女性権利相も、マイクロブログのツイッター上で「男女平等を推進する上で最善の方法とは思えない」とコメントしている。【10月8日 AFP】
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「母親・女性は家庭に」という(伝統的・保守的な)意識と、女性の自立を重視する立場は、しばしばバッティングします。
日本でも同様の議論はありますが、以下はドイツの事例です。

****<ドイツ>在宅育児、国を二分…手当支給に違憲判決****
自宅で子供を育てる保護者への支援策とされた「在宅育児手当」について、ドイツの憲法裁判所が先月、違憲判決を出した。

独国内は手当の必要性を訴える保守層と女性の自立を重視する地域との対立が浮き彫りになった。国を二分する議論の末に導入された在宅手当の廃止は、理想の家庭像や女性の社会進出のあり方が、ドイツでも大きく異なることを浮き彫りにした。

在宅手当は保育所などに生後15カ月〜3歳の子供を預けず、自宅で面倒を見た場合に月額150ユーロ(約2万円)が支給される制度。

キリスト教カトリックの影響で母親は家庭にという保守思想が強い南部バイエルン州を基盤とする与党キリスト教社会同盟(CSU)が提唱し、メルケル首相率いる姉妹政党キリスト教民主同盟(CDU)などの協力で法制化。13年から支給が開始された。

ドイツでは15年現在でも約8万5000人分の保育所が不足しているとされ、長年幼児を預けられず在宅で面倒を見る親への支援が問題になっていた。

一方で、法案審議段階から、現在CDU・CSUと連立政権を組む社会民主党を中心に「母親を家庭に縛りつけようとする政策で古臭い家庭観を押しつける」との反発が広がっていた。

憲法裁は7月21日、「在宅手当を行う権限は政府にはない」として違憲と判断した。国と地方の権限が明確に分かれるドイツでは、子育て政策の権限は各自治体にあり、国による一律の手当を違法と判断したのだ。手当の新規受け付けは即座に中止された。

今回憲法裁に提訴していたのは、北部の主要都市ハンブルクだ。社民党率いる同市は女性の社会進出や移民政策にも熱心で、移民同化の一環としても幼児への早期ドイツ語教育は不可欠で、保育所拡充の方が市にとっては重要と訴えていた。

 ◇独自支給継続も
違憲判決により法律は無効になり、現受給者への経過措置を経て手当はなくなる。だが、バイエルン州は判決に強く反発し、今後も州の政策として手当を継続する方針を表明しており、保守的な家庭像を持つ州と多様な価値観を求める地域との対立が鮮明になっている。【8月3日 毎日】
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私の住む鹿児島では伊藤知事が、8月27日に開かれた県の総合教育会議で、女性の高校教育のあり方について、「高校でサイン、コサイン、タンジェントを教えて何になるのか」「それよりもう少し社会の事象とか植物の花や草の名前を教えた方がいいのかなあ」と述べたということで問題となり、その後発言を撤回する騒ぎがありました。
随分と“わかりやすい”差別発言でした。

****大学進学率の男女差が物語る日本の「ジェンダー意識****
この夏、鹿児島県知事が「サイン、コサイン、タンジェントを女の子に教えて何になる?」と発言して猛反発を食らった(知事はその後、発言を撤回)。明治維新では薩摩藩が日本の近代化をリードしたが、残念ながら現在の鹿児島では、「女子に高等教育は必要ない」という封建的な考え方が色濃く残っているようだ。

このような「性差(ジェンダー)」の意識は、大学進学率の男女差からうかがえる。
2015年春の全国の4年制大学進学率(浪人込み)は51.5%だが、性別にみると男子が55.4%、女子が47.4%と、8ポイントの開きがある(進学該当年齢の18歳人口を分母とした進学率)。これは能力差とは考えられないので、「女子に大学教育なんて......」というジェンダー意識の表れだ。(中略)

大学進学率は地域格差が大きく、最高の東京(72.8%)と最低の鹿児島(35.1%)では倍以上開いている。進学率は都市部で高く地方で低い傾向にあるが、これは住民の所得水準や大学の立地状況の違いが影響している。

大学進学率が最も低いのは鹿児島で、その原因は女子の進学率が低いことだ。鹿児島の女子の大学進学率は29.2%で、全国で唯一3割に達していない。

それだけ男女差が大きく、男子の進学率は女子の約1.4倍にもなっている。北海道(ここも男女差は1.4倍)と並んで、大学進学率の性差が最も大きい地域だ。前述の知事の発言がただの「失言」ではないことがわかる。

男女の大学進学率に1.4倍もの差が出るのは、「女子に高等教育は不要」、「女子よりも男子優先」というジェンダー意識が根強いためだろう。

大都市の東京は比較的それが弱いようで、進学率の性差はほとんどない。地方でも徳島のように、男子より女子の進学率の方が高い県もある。このことから見れば、ジェンダー意識は克服できるはずなのだ。

これは国際比較をするとよく分かる。<表2>(省略)は、社会的価値観に関する国際的な調査から「大学教育は、女子よりも男子にとって重要だ」という項目の肯定率を国別に抽出して、高い順に並べたランキング表だ(英仏は調査に回答せず)。

その肯定率が最も高いのは、カースト社会のインドだ。20歳以上の国民の6割が「大学教育は、女子よりも男子にとって重要だ」と考えている。バーレーンやパキスタンなど、イスラム社会の肯定率は総じて高い。女性はあまり外に出るべきでない、という宗教的戒律があるためだろう。

日本の肯定率は22.6%で真ん中より少し下だが、欧米諸国と比べると格段に高い。ドイツは13.6%、アメリカは6.6%、スウェーデンにいたってはわずか2.5%だ。こうしたジェンダー意識の低い国々では大学生の男女比は半々だが、日本では男女比が「6対4」とまだまだ偏っている。東京大学の女子学生比率は18.6%しかない(2015年5月時点)。


「人材」しか資源のない日本にとって、このような事態は見過ごせない。男女を問わず能力を開花させ、社会・経済を活性化させるための意識改革、制度づくりは急務の課題だ。【10月6日 舞田敏彦氏 Newsweek】
*******************

このあたりの意識になると、伝統的・保守的立場に限らず、本音レベルではだいぶ異論もあるのかも。
「女子力」といった言葉が普通に使われる社会にあって、女性の間においてもいろいろな本音があるのでは。

「一億総活躍」社会で求められる女性の活躍とは?
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欧州人権裁判所  フランスの「ブルカ禁止法」を支持

2014-07-10 23:17:35 | 女性問題

(2011年4月11日 ロンドンのフランス大使館前でフランスの「ブルカ禁止法」に抗議するイスラム女性 “flickr”より By sinister dexter https://www.flickr.com/photos/sinister-pictures/5617379810/in/photolist-9yoxj3-2Yr7pc-8MmVvH-aGjnLF-a23VZN-5hPwm5-byzp8e-f1t7Jv-nhFr6t-axYJRS-5dekCb-9VCNcm-dw4AR3-fhoDMS-ew19CV-7XsoLe-dZFB1k-dUqHQY-kUTNcM-bq7L3Y-diGfy4-5Sa4wu-cEBhsq-ek9E8b-anU5aZ-dpeMkP-e27fZb-e21D6F-3n9zJd-arNM1J-fhMB6G-bH4HjH-e1Yyfc-bBsGZD-S4oxd-73YWdH-m5ksfX-eYp6UF-8bqHNi-6YkXFM-dsh1Tp-6dccm6-nHQszc-dshbvm-dk3S45-fxjSiq-9hC3ND-bzGYqB-j6uFp7-a23Vfs)

【「まるでタリバンの女性のようにさせたがっている」】
イスラム女性の髪の毛を覆うスカーフ、目だけを出したニカブ、顔の部分のみを網状にして全身を覆うブルカといった衣装は、このブログでも再三取り上げるように、イスラムを象徴するものとしてしばしば問題になります。

イスラム国家にあっては、スカーフを着けないことが反イスラム的行為として罰せられます。

***スーダン当局、ヒジャブ着用拒否の女性を訴追 有罪ならむち打ち刑****
イスラム教徒が多数を占めるスーダンで、髪を覆うスカーフ「ヒジャブ」の着用を拒否した女性が、「わいせつ」な格好をしたとして訴追された。女性は4日に出廷したが、同事案は今のところ「宙に浮いた」状態となっている。

被告のアミラ・オスマン・ハメドさんは、オマル・ハッサン・アハメド・バシル現大統領が1989年に無血クーデターで実権を掌握した後に施行された、道徳に関する法律に違反したとして訴追され、有罪が確定すれば、むち打ちの刑に処せられる可能性がある。

首都ハルツーム近郊ジュベルアウリヤの裁判所に4日出廷したハメドさんとその弁護人はAFPの取材に、被告側は9月に訴追の取り下げを求めたが、検察側はいまだ検討中だと明かした。

ハメドさんによると、裁判所は、検察側がさらなる審問のための書類を送付するか、起訴見送りとするか決定するのを待っている状況だという。次の出廷日も決められていない。ハメドさんは「(検察は)この件をしばらく終わらせず、都合の良い時に利用するつもりなんでしょう」と話している。

スーダンの法律は、全ての女性にヒジャブで髪を覆うことを義務付けている。だがハメドさんは、スーダン政府が女性たちを「まるでタリバン(Taliban)の女性のようにさせたがっている」として、これを拒否している。
ハメドさんの一件は海外メディアの注目を集め、人権団体や活動家らからは支援の申し出が寄せられている。

ハメドさんは8月、ジュベルアウリヤの政府庁舎を訪れた際、髪を覆うようにとの警察の命令を拒否して訴追されたという。

スーダンでは2009年、女性記者のルブナ・フセインさんがズボンをはいたために罰金を受け、その支払いを拒否した事件が、国際社会の批判を浴びた。

フセインさんは1日収監された後で釈放されたが、フセインさんと共にズボンをはいて飲食店を訪れ逮捕された女性たちは、むち打ち刑を受けている。【2013年11月5日 AFP】
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イランでも、スカーフを着用していない女性の取締りが、そのときどきの社会・政治情勢を反映して強まったり、緩んだりしているようです。

一方、同じイスラム国家でもトルコのように政治世界における世俗主義を掲げてきたような国では、公的な場でのスカーフ着用は以前は認められていませんでした。しかし、最近になってこれが認められるようになったことが、イスラム主義の台頭を象徴するものとして注目されています。

【「この法律は、共生を推進するために作られたのであって、反宗教的な法律ではない」】
一方、イスラム移民が増加している欧州にあっては、イスラム住民との経済的・社会的摩擦を背景として、イスラム的な衣装を着用することを禁じる動きがあります。

「ブルカ」や「ニカブ」といった顔や全身を覆う衣装の公共の場での着用を禁じる法律がフランス、ベルギ、スイス、オランダ、イタリアなどで成立しています。

禁じる立場からは、公的な場に宗教を象徴するものを持ち込む宗教的中立性の問題、顔がわからないことに伴う治安上の問題なども指摘されます。

また、こうした衣装がイスラム世界における女性蔑視を表しているとみなされ、西欧的男女平等の価値観にそぐわないと思われることあります。

もっと素朴なところでは、排外的な風潮が強まるなかで、イスラムに対する嫌悪感の標的となっていることなどもあるようです。

イスラム女性からは、こうした禁止措置は宗教の自由を侵害するものだとの反発もあります。

****仏「ブルカ禁止法」は差別か、欧州人権裁判所で審理始まる****
顔全体を覆うベールの着用を禁じたフランスのいわゆる「ブルカ禁止法」について、信教の自由を侵害する差別的な法律かどうかを問う裁判が(2013年11月)27日、欧州人権裁判所で始まった。

一方この日、フランス首都パリでも偶然、頭を覆うスカーフの勤務中の着用をめぐって解雇されたイスラム教徒の女性に関する控訴審が開かれた。

いずれも、フランスが長年貫いてきた世俗主義の伝統と国内最大の少数派であるイスラム教徒の一部とが対立する、長引く法廷闘争の例だ。

■「共生推進が目的」とフランス政府
欧州人権裁判所での裁判は、英バーミンガムに家族がいるフランス人の大学院生の女性(23)が原告。

英国の弁護団とともに、フランス政府を相手取り、「ブルカ禁止法」は本質的に差別的な法律だとの判断を下すよう欧州人権裁判所に求めている。

女性は「ブルカ禁止法」によって信教の自由、表現の自由、集会の自由を侵害されたと訴え、同法は差別の禁止を定めた法律に反していると主張。

男性に強制されてブルカを着用しているわけではなく、治安上の理由で必要なときは脱いでも構わないと書面で証言し、仏当局がブルカ禁止の最大の理由としている2点に反論した。
告側弁護士の1人は、法廷で「ブルカ着用は過激派のしるしではない」と述べた。

一方、フランス政府側の主任弁護士は、禁止の対象はイスラム教のベールやブルカだけでなく、オートバイのヘルメットや目出し帽など顔面を覆う全ての手段にわたると指摘。「この法律は、共生を推進するために作られたのであって、反宗教的な法律ではない」と主張した。

欧州人権裁判所の判断は来年下される予定だ。

■ベール理由に解雇は不当?
パリでの裁判は、職場でスカーフを着用して働きたいと主張して解雇されたイスラム教徒の女性保育員をめぐる控訴審(第2審)。

この女性保育員は2008年、5年間の出産・育児休暇から職場復帰した際に、スカーフで頭を覆ったまま働きたいと保育所に申し出たが、「職員は価値観や政治的主張、宗教観において中立でなければならない」との規則があることを理由に拒否され、解雇につながった。

第1審では今年3月、女性の解雇は宗教的差別に当たるとの判決が下されたが、パリの控訴裁判所は27日、この判決を覆し、保育所には女性を解雇する権利があるとの判断を示した。

この判決に、世俗教育支持派からは画期的な判断だと歓迎する声が上がった。

しかし、フランスの世俗主義の原則を強調する傾向はイスラム教徒のコミュニティーをやり玉に挙げる手段だとみるイスラム教団体は判決を非難。原告側弁護団も控訴の意思を表明しており、裁判がこのまま決着する可能性は低い。

■違反者には罰金2万円
「ブルカ禁止法」は、2010年にニコラ・サルコジ前大統領の中道右派政権が成立させ、翌11年に施行された法律。社会党の現フランソワ・オランド政権も同法を全面的に支持している。

同法では公共の場で顔を全て隠すベールを着用することを禁じており、違反者には最大150ユーロ(約2万円)の罰金が科される。

だが違反者の取り締まりや逮捕をめぐってもめる事例が相次いでおり、パリ郊外でも今年、取り締まりがきっかけで暴動が起きている。【2013年11月28日 AFP】
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先日、フランス政府の主張を認め、着用禁止は思想・良心・信教の自由を侵害していないとの欧州人権裁判所の判断が示されました。

****ブルカ禁止を支持する意外な判決****
ムスリム女性の顔や全身を覆うブルカを公共の場で着用することを、フランスが全面的に禁じたのは11年。

「女性隷属の象徴」であるブルカを禁じるのは当然で、フランスの政教分離の伝統にのっとった判断だとする賛成派と、ブルカ着用は女性の自発的な選択であり、着用禁止は信教の自由の侵害だと訴える反対派の論争は今も続いている。

そんななか、パキスタン系のフランス人女性が欧州人権裁判所に起こしていた注目の裁判に判決が下された。女性はブルカ禁止法は差別的な法律だと訴え、治安上の理由で必要な場合にのみブルカを脱ぐ用意があるとしていた。

だが同裁判所は先週、ブルカで顔を覆い隠す行為は治安維持や人々の共生を難しくする恐れがあるというフランス政府の主張を認め、着用禁止は思想・良心・信教の自由を侵害していないとの判断を示した。

国際人権団体アムネスティ・インターナショナルは「国家は人々に何を着るべきか指示すべきでなく、個人の選択の自由を認めるべきだ」と反発している。

欧州各国を悩ませる人権と治安維持をめぐるジレンマは、今後も続きそうだ。【7月10日 Newsweek】
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市民社会の理念にそぐわない「ブルカ」「ニカブ」】
髪を覆うスカーフと、顔が見えないニカブやブルカでは、個人的な印象は全く異なります。

イスラム住民が多い国を観光していて、スカーフ姿の女性には殆ど違和感は感じません。
暑いだろうに・・・と思うことはありますが、女性もファッションアイテムの一つとして着用を楽しんでいるようにも見えます。(着用を強制ということになれば、話はまた違ってきますが)

スカートが女性らしさ示す衣装であるのと同じような感じで、スカーフも女性をアピールする衣装となっているのでは・・・とも感じます。

ですから、中国がウイグル族対策で、女性のスカーフ着用を禁じるというのは、正当性を欠いた政治的・文化的横暴にも感じます。

しかし、全身を覆うニカブやブルカ(地域にもよるでしょうが、アジアのイスラム国では見かけることは空港以外では殆どありませんし、エジプトやドバイなどでもあまり見かける機会は多くはありませんでした。女性が表に出てこないせいでしょうか)となると、話は違います。

そもそも市民社会は、自分が何者であるかを明示したうえで発言・行動して互いのコミュニケーションをとることで成立するもので、自分を明示して社会との緊張感を持つなかで、その発言・行動の自由が権利として保障されるもののように思えます。

最近の日本でもマスクを常用する女性が多いように、顔を隠すということは、特に容姿が注目されやすい女性にとっては、気分的に楽にさせる効果があるのでは・・・と思います。

しかし、顔を隠して匿名性の後ろに隠れてしまっては、コミュニケーションをとって市民的つながりを形成することが非常に困難にもなります。(少なくとも、相手にとっては。誰だかわからない人間とは話もできません)

また、匿名性に隠れてしまうことは、社会との緊張関係のなかで保障されてきた発言・行動の自由が形骸化していくようにも思えます。(ネット上の匿名発言が、往々にして無責任で、こんなものは制限したほうがいいのでは・・・とも思わせるように)

女性蔑視云々、治安上の問題云々を別にしても、顔を隠す衣装というのは市民社会の基本的な理念と相いれないように思えます。
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マララさんを敢えて避けたノーベル平和賞 

2013-10-11 21:52:54 | 女性問題

(7月12日 国連で演説するマララさん “flickr”より By Danu Designs http://www.flickr.com/photos/88185239@N04/9643301620/in/photolist-fG9rB3-fUmV28-gwmYsW-gaVzMx-gaUTqT-gaVeN5-g9GRva-guTnm3-gaVMza-gaVMPP-gjxZBY-gaj9zk-g8SdB7-fLWPc1-gbcX8D-ge3xuL-gsQJ4b-fUQePM-gmZwsJ-gmZLGX-gtmNuY-gguehR-g3j4rK-grCZqx-gxmJvG-gxV3xr-guTJr9-gxGApu-fQebDX-gwdmvi-gmRiQf-gswexF-giaDsw-gwJrzu-gs3MDF-fUyFrG-fUxVCv-fV6pQ8-g6cxoA-g68R7j-g6g9mc-ghW5GW-gwqxea-g3ivZQ-gseAVp-fUyRXk-fUyJhd-gxx9CP-gxx9Mr-gxx9Hi-gxx9Rz)

まだプーチン大統領の方が・・・
ノルウェー・ノーベル賞委員会のヤーグラン委員長は11日、化学兵器の禁止・不拡散のための活動を行う化学兵器禁止機関(OPCW、本部オランダ・ハーグ)に2013年のノーベル平和賞を授与すると発表しました。

“近年の平和賞では、「核兵器なき世界」の実現を訴えながらも、まだ具体的実績がなかった09年のオバマ米大統領、債務危機で揺れていた昨年の欧州連合(EU)には「ふさわしくない」と批判もあり、賛否が分かれた”【10月6日 共同】という、何かと問題視されることが多いノーベル平和賞ですが、今回の選択も議論を呼びそうです。

OPCWは、化学兵器を破棄することを目指している1997年に発効した化学兵器禁止条約に基づき設立され、これまで約80カ国の軍事工場などで査察を行っています。
もちろんその活動の意義は小さくありませんが、そうした活動のために作られた組織であり、関係国・機関の判断に従って、その仕事を遂行してきただけ・・・とも言えます。

危険物除去という観点では、命がけで対人地雷やクラスター爆弾の撤去作業を行っている多くの組織もあります。

今回受賞は当然ながら、シリア攻撃を回避する方策ともなったシリアでの化学兵器廃棄作業を後押しする目的のものですが、それにしてもいささか唐突な感があります。
以前ロシア紙が、軍事介入回避に成功したとしてプーチン大統領を「ノーベル平和賞候補に」と書いて笑い話にもなりましたが、シリア問題について言えば、まだプーチン大統領の方が説得的なぐらいです。

シリアの化学兵器廃棄作業はこれからであり、今後難航することも予測されています。
オバマ大統領が平和賞受賞後にシリア攻撃を提唱してプーチン大統領から揶揄されたように、OPCWについてもシリアでの作業が進まないと、何のための受賞だったのか?という話にもなります。

本命候補だったマララさん
今回のノーベル平和賞の本命候補は、イスラム過激派による襲撃で命をおとしかけながらも女子教育の重要性を訴え続けるパキスタン出身の16歳の少女マララ・ユスフザイさんでした。

ここひと月あまりだけでも、多くの国際的賞を授与されています。
オランダ・アムステルダムに本拠を置く児童権利擁護団体「キッズライツ財団」は「国際子ども平和賞」を、
国際人権団体アムネスティ・インターナショナルは、人権擁護活動でその年最も活躍した個人に贈る「良心の大使賞」を、
米東部の名門ハーバード大学は「2013年ピーター・ゴムス人道賞」を、
そして昨日10日に欧州連合(EU)欧州議会は、優れた人権擁護活動をたたえる「サハロフ賞」をマララさんに贈ることを発表しています。

彼女の功績をたたえる国連は、彼女の誕生日を「マララ・デー」と定めました。
マララさんは、7月12日、潘基文(バン・キムン)事務総長や国連世界教育特使のブラウン前英首相が見守る中、ニューヨークの国連本部で以下のようなスピーチを行い、多くの人々の感動を呼んでいます。

****マララさんの国連演説要旨****
「マララ・デー」は、権利を訴える全ての女性や子どもたちの日だ。女性や子どもたちのために、教育を受ける権利を訴えたい。

何千もの人がテロリストに殺され、何百万人もが負傷させられた。私もその1人だ。

その声なき人々のためにも訴えたい。
テロリストは私と友人を銃弾で黙らせようとしたが、私たちは止められない。私の志や希望、夢はなにも変わらない。

私は誰にも敵対はしない。私は誰も憎んでいない。タリバーンやすべての過激派の息子たちや娘たちに教育を受けさせたい。

過激派は本やペンを怖がる。教育の力、女性の声の力を恐れる。世界の多くの地域で、テロリズムや戦争が子どもの教育の機会を妨げている。

全ての政府に無償の義務教育を求める。世界中の姉妹たち、勇敢になって。知識という武器で力をつけよう。連帯することで自らを守ろう。本とペンを手に取ろう。それが一番強い武器。

一人の子ども、先生、そして本とペンが世界を変えるのだ。教育こそがすべてを解決する。【7月13日 朝日】
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彼女が困難な境遇にある女性に送った力強いメッセージ、その国際的反響の大きさなど、これまでの実績はノーベル平和賞に十分値するものです。

マララさん受賞には懸念・不安も
ただ、まだ16歳ということで、今後本当に受賞に値する人物に成長するのか?という疑問、あまりにも大きな重荷をひとりの少女に負わせてしまうことにならないか?という不安、マララさんの国際的影響力に反発を強めるイスラム過激派が再度彼女を襲う危険は?という安全上の懸念などもあります。

****ノーベル平和賞有力候補 16歳「若すぎる」の声も 本命視の少女マララさん**** 
11日に発表される今年のノーベル平和賞の候補として、パキスタン出身の16歳の少女マララ・ユスフザイさんが本命視されている。

女子教育の権利を求めてイスラム過激派に頭を撃たれ、一命を取り留めたマララさんは数々の国際的賞を受賞、「不屈のヒロイン」への称賛は高まる一方だ。

半面、「まだ子ども。受賞には若すぎる」との声も。平和賞をめぐってはこれまでも妥当性についての論争が絶えないだけに、今年も大きな注目が集まりそうだ。

 ▽最年少
女性への教育を否定する「パキスタンのタリバン運動」のテロ行為や女子校の破壊をブログで批判していたマララさんは15歳だった昨年10月、パキスタン北西部で下校中に覆面の男に襲撃され重傷を負った。意識不明のまま英国バーミンガムの病院に搬送され、奇跡的に回復した。

事件直後から犯行への非難とマララさんへの支援の声が世界的に高まり、インターネット上で「ノーベル平和賞を」と署名活動が始まった。
授与されれば32歳だった2011年のタワックル・カルマンさんを抜き最年少の平和賞受賞者となる。

元気になったマララさんは今年3月からバーミンガムで女子校に通学。16歳の誕生日の7月12日には国連で演説、テロや貧困の「唯一の解決策が教育です」としっかりした口調で訴え満場の拍手を浴びた。その後もオランダ人権団体の「国際子ども平和賞」や米ハーバード大学の「ピーター・ゴムス人道賞」など数々の栄誉に輝いている。

しかし国際社会がマララさんを“英雄視”するにつれ、故郷パキスタンで市民の反応が変わり始めた。英字紙ドーンは7月、欧米が襲撃事件を仕組んだのではないかとの批判もあると報じた。(中略)

 ▽品格
「平和賞ウオッチャー」として知られる国際平和研究所(オスロ)のハルプビケン所長は、今年の予想でマララさんをトップに挙げながらも「(受賞すれば)群を抜いて若い。彼女の行く末や、受賞による身の安全への影響に懸念があることは確かだ」と言う。

オバマ氏への授与は「期待先行型だった」と指摘する所長は「受賞者が後に重大な過ちを犯せば、そのまま賞の信頼性にはね返ってくる。マララさんについてもこの先、賞に堪える品格を持ち合わせているかが、ノーベル賞委員会の重要な検討事項になっているだろう」と話した。【10月6日 共同】
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マララさんを襲ったパキスタン・タリバーン運動(TTP)は、「チャンスがあれば、いつでも襲撃する」としています。

****再び襲撃予告、変わらぬ緊張 マララさん銃撃から1年 パキスタン****
パキスタンで女子教育の権利を唱えていた女子学生マララ・ユスフザイさん(16)の銃撃事件は、9日で1年を迎えた。

母国では11日に発表されるノーベル平和賞の受賞候補者として関心が高まる一方、マララさんを撃った武装勢力が再び襲撃を予告するなど緊張が広がっている。

下校途中だったマララさんを銃撃したパキスタン・タリバーン運動(TTP)の報道担当者は7日、AFP通信に対して「チャンスがあれば、いつでも襲撃する」と語った。「彼女を襲撃したのは学校に行っていたからではなく、タリバーンとイスラム教に敵対する発言をしたからだ」と持論を展開した。

国内では、襲撃1年に合わせた集会などは開かれていない。昨年の襲撃直後、大規模な抗議集会を開いた同国北西部ペシャワルのNGO関係者は「治安上の懸念もあり、今回は断念した」と話す。

ペシャワル周辺では、TTP系組織によるとみられる爆弾テロが頻発。過去3週間で130人以上が死亡するなど、緊張はむしろ高まっている。

パキスタンの主要各紙は9日、マララさんが8日に出版した自伝が書店で売り出された写真を1面で掲載。ニューズ紙は社説で「マララさんが平和賞にふさわしいことは疑いない」としつつ、「人々は彼女がまだ少女だということを忘れがちになる。彼女の肩にかかる重さはあまりに大きい」と指摘した。

ドーン紙も、マララさんへのインタビューで「受賞によって普通の生活が奪われませんか」と質問するなど、マララさんの今後を気遣う論調が目立っている。【10月10日 朝日】
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マララさん自身は、「自身はまだ賞に値しない」と語っています。

****マララさん「自分はまだノーベル賞に値しない****
ノーベル平和賞の有力候補に挙げられているマララ・ユスフザイさんが、パキスタンのラジオ局のインタビューで「自身はまだ賞に値しない」と発言した。

マララさんはパキスタンのタリバン勢力を批判したことで、昨年の10月9日に銃撃を受けて頭部に重傷を負った。しかし回復後は、子どもたちが学校に行く権利を世界に向けて訴える伝道師となり、彼女の勇気は世界の指導者や有名人たちに称賛された。

弱冠16歳のマララさんは国連での演説をやり遂げ、今週には自伝も出版。11日には有力候補者として自身も名を連ねるノーベル平和賞受賞者の発表も行われる。

しかし、パキスタンのラジオ局City89 FMとのインタビューで、マララさんは教育を促進する活動にまい進する意欲をかたったものの、まだ自分はノーベル賞の栄誉に浴するには不十分だと感じると述べた。
「ノーベル賞に値するような人々はたくさんおり、私はもっとやるべきことがある。私の考えでは、賞を頂けるほどの功績を成し遂げてはいない」

だが、希望と決意に満ちた彼女のメッセージは、地元であるスワト渓谷の子どもたちを鼓舞している。
12歳のフメラ・カーンさんは、「1年前の銃撃事件は忘れられない。教育は私の生きがいそのもので、マララはそのために声を上げてくれた。だから私は彼女が大好きよ」と話す。「私も大きくなったら教育のために闘いたい」

マララさんが通っていたパキスタンの学校は、銃撃から丸1年を迎えた9日、学校を休校とした。【10月10日 AFP】
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地元パキスタンでは、“人々は報復を恐れ、今も彼女のことを口にできない”という現実もあります。

****マララさん:ノーベル賞期待、住民は報復恐れ沈黙****
女性や子供の教育の必要性を訴えるパキスタンの少女マララ・ユスフザイさん(16)が、下校中に武装勢力の銃撃を受けて9日で1年がたった。

英国で治療後も一貫して教育の重要性を世界に発信してきたマララさんは、11日に発表されるノーベル平和賞の最有力候補で報道も過熱している。

だが、イスラムの教えに反するとして女子教育を認めない立場の武装勢力は7日、再びマララさんを脅迫。地元の人々は報復を恐れ、今も彼女のことを口にできない。

マララさんの出身地、北西部スワート渓谷の中心地ミンゴラ。マララさんの父ジアウディンさんが運営し、銃撃当日まで通学していた学校の周囲や構内では7日、パキスタン軍や情報機関関係者が目を光らせていた。

学校では今も授業が行われているが、毎日新聞の取材に「マララの話は一切聞くな」とくぎを刺し、構内や生徒の写真撮影も許されなかった。学校職員も事件後の状況や「ノーベル賞」の言葉は口にしなかった。

学校から約3キロ離れた街路で、別の学校に通う女子生徒(15)が「マララがノーベル賞を受ければいい」と小声で話し、去っていった。

武装勢力のパキスタン・タリバン運動のシャヒド報道官は7日、改めて「機会があればマララを殺す」と警告。治安当局や住民は、マララさんの受賞がタリバンを刺激する事態を恐れている。マララさんと両親、2人の弟たちは事件後、英国で暮らしている。

一方、マララさんが「おじさん」と慕う親戚で、ミンゴラで別の学校を運営するアフマド・シャー・ユスフザイさん(44)は「マララの勇気のおかげで事件後、学校に通う子たちがスワート渓谷で15%増えた」と話した。

マララさんが7月、国連本部で演説した際にも付き添ったアフマドさんは「ノーベル賞受賞でさらに状況はよくなる」と期待を込める。だが、ある地元記者は「マララや(アフマドさんら)近親者は筋金入りの活動家。だから声を上げられるのだ」と語った。

一方、11日の発表を前に報道は過熱気味。英紙サンデー・タイムズが6日、マララさんの襲撃直後の思いなどを報じたほか、英BBCは7日、30分のドキュメンタリー番組を放送。ほかの英各紙も7日朝刊でマララさんの近況を大きく報じた。【10月9日 毎日】
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今後の安全上の問題、受賞によって呼び起こされる彼女が代弁する形となっている欧米的価値観へのイスラム保守派の反発、あまりに大きな荷を背負わせることへの懸念などを考え合わせると、今回、平和賞を受賞しなかったことは彼女のためには好ましいことなのでしょう。
ノーベル賞委員会もそうした観点から、敢えて彼女を避けたとも思われます。

また、“ノーベル賞委員会が10年に中国の民主活動家、劉暁波(りゅうぎょうは)氏を選出してから、より議論の余地のない団体・個人を選ぶ傾向が強まっている点だ。劉氏を選んだことについては中国政府が猛反発し、中国とノルウェーの2国間関係が悪化した。
今年の有力候補者の中にも、ロシアやトルコの人権・民主活動家の名があった。こうした候補者を選んだ場合、それぞれの政府が反発し、欧州的価値の押しつけという批判が出ることが確実だ。昨年の欧州連合(EU)に続く、国際機関選出の背景にはこうした配慮も働いている可能性がある”【10月11日 毎日】とも指摘されています。

ただ、女性の権利向上、教育の重要性という極めてまっとうなことを主張し続ける少女を、ノーベル平和賞という形で国際社会が支援できない現実に忸怩たる思いも残ります。

****ノーベル平和賞:マララさん受賞逃す…世界の心つかんだ****
化学兵器禁止機関(OPCW)のノーベル平和賞受賞決定を受け、事前に有力候補とされてきたパキスタンの少女マララ・ユスフザイさん(16)について、パキスタンの民放大手ジオ・テレビは11日、「受賞は逃したが、世界の心をつかんだ」と称賛。「候補に挙がっただけでも誇り」(中部ムルタンの10代の女子生徒)との声も聞かれた。

 ◇出身地では複雑感情
だが、マララさんの出身地、北西部スワート渓谷のミンゴラでは、多くの住民は毎日新聞の取材に口をつぐんだ。武装勢力「パキスタン・タリバン運動」報道官が10日、マララさんの暗殺を予告し、8日に発売されたばかりの自伝を売る書店まで攻撃すると警告したのが背景とみられる。

マララさんが昨年10月9日にタリバンの銃撃を受けた当日まで通っていた学校では、11日朝から多数の軍兵士が配置され、住民や生徒が集まることもなかった。

同校卒業の娘を持つ電気技師、ハヤトさん(39)は「多くの住民は受賞できなくてほっとしているかもしれない」と述べ、スワート渓谷で相次ぐタリバンによる住民暗殺への不満をあらわにした。

別の学校の女子生徒(16)は電話取材に、「不当だ。マララは女の子のためにたくさんのことをしたのに」と悔しそうだった。

一方、マララさんについて欧州では、最近の欧米メディアへの極度の露出から、「欧州的価値の代弁者」としての色が付きすぎるとの懸念が出ていた。

マララさんと家族のメディア対応は、米国に本拠を持つ世界最大の独立系広報会社「エデルマン」が「社会貢献」の一環で無報酬で請け負った。

こうした中、英紙インディペンデントのベテラン記者、ブランド氏はノーベル平和賞発表前、「マララさん授賞に反対する理由」と題するコラムの中で、「パキスタンなどではマララさんは欧米的価値の代弁者との冷めた見方がある。平和賞は彼女の純粋なメッセージを汚すことになる」と主張していた。【10月11日 毎日】
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サウジアラビア 女性の地位改善? オバマ米大統領とウルグアイ大統領の女性への失言

2013-04-07 20:06:20 | 女性問題

【4月6日 AFP】http://www.afpbb.com/article/life-culture/religion/2937342/10543012

サウジ:女性の社会進出への賛否
戒律の厳しいイスラム教のワッハーブ派を国教とするサウジアラビアでは、女性一人での外出や車の運転などが禁じられている等、(日本・欧米的価値観では)女性の活動には大きな制約が課せられています。
そんなサウジアラビアの女性にとって、若干の前進でしょうか?

****バギーの運転を楽しむ女性たち、サウジアラビア*****
サウジアラビアの首都リヤド(Riyad)近くのスママ・パークで5日、ATV(全地形対応車)に乗る女性たちの姿が見られた。

地元の報道によると、同国の宗教警察は前週、レクリエーション施設内に限って女性が自転車やバイクに乗ることを認めた。ただし、伝統的なイスラム教徒の衣装を身に付けていること、男性の親族が同伴していることが条件だという(2013年4月5日撮影)。【4月6日 AFP】
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もう少し政治的なところでは、国王による任命制の機関「諮問評議会」(定数150人)に初の女性評議員30人が任命されています。

****サウジで初の女性評議員 アラブの春が後押し、30人任命****
サウジアラビアで、国王による任命制の機関「諮問評議会」(定数150人)に初の女性評議員30人が誕生した。保守派に反発もくすぶるものの、じわりと進んできた女性の社会進出の試金石となりそうだ。

リヤドの王宮で19日、女性30人を含む新任評議員の宣誓式が開かれた。30人はオベイド国連人口基金・前事務局長や王女2人、大学教授、医者らで、欧米への留学経験者や博士号取得者がほとんど。任期は4年で、評議員らは早速、各種委員会のメンバー選びに取りかかる。

 ◆男女別入り口
イスラム教の戒律が非常に厳しいサウジ。近親者以外の男女の同席は禁じられ、レストランや事務所など公の場は「男・女」や「男性・家族連れ」などと区分けされている。評議会でも、議場に女性専用の出入り口と議席が作られた。

評議員になったファドワ元ヌーラ・アブドルラフマン王女大学理学部長は朝日新聞の取材に「家庭内暴力や離婚後の親権など、あまり目を向けられてこなかった女性の問題に取り組みたい」と答えた。

ただ、評議会は法案を出したり、閣僚に質問したりできるが、立法権はない。地元紙バラスメールのヘッサ・エディターも「顔ぶれも高学歴・上流階級の女性ばかりで、社会の底辺が抱える問題を知らない」と距離を置く。

女性評議員の任命とともに、地方議会選挙への女性の立候補容認など、女性の地位向上支援を国王が表明したのは2011年9月。背景には中東で広がった民主化運動「アラブの春」の影響があるとみられる。同年、サウジ東部でも国内少数派のシーア派住民による小規模な抗議行動が起きた。

昨年1月には下着店にサウジ女性店員の配置を義務づける法律が施行され、昨夏のロンドン五輪には女性選手2人が出場した。女性の行動に目を光らせてきた宗教警察すら、女性職員を雇う検討に入ったと報じられている。

 ◆保守派は抗議
だが、そうした女性の進出に対する反発や、権利拡大に逆行する動きも出ている。ロイター通信によると、国王が評議会定数の2割超を女性に割り当てる勅令を出した直後の先月15日、保守派のイスラム法学者ら約50人が国王に「助言をしたい」と約2時間にわたって訴える異例の「抗議行動」が王宮前で発生。

AFP通信によると、パスポートの電子化に伴って、女性の出国時に夫や父ら「保護者」の携帯電話に自動で通知されるシステムが昨年11月に本格導入され、波紋を広げている。【2月20日 朝日】
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上記記事にもあるように、保守派からの反発も出ていますが、改革をもっと進めたいとする声もあるようです。

****民主化へ選挙実施を=サウジ王子****
サウジアラビアの富豪、アルワリード王子は2日夜に放映されたテレビのインタビューで、民主化に向けて議会選挙の実施を呼び掛け、議員に権限を与えるよう訴えた。AFP通信が伝えた。

アブドラ国王は1月、国政の助言機関である諮問評議会に初めて女性30人を任命した。王子はこれについて、十分ではないとの認識を示した上で、「歴史的な動きになるためには、部分的であっても選挙を実施し、権限を与えることが不可欠だ」と述べた。【4月4日 時事】
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サウジアラビアのアルワリード王子と言えば、先日米経済誌フォーブスが発表した世界長者番付で、資産200億ドル(約1兆8400億円)とされ、26位にとどまったことに対し、資産を不当に低く評価されたと抗議したことでも話題になった世界的大富豪です。(従来は“世界第5位の大富豪”とも言われていました)

お金持ちであることは間違いありませんが、一夫多妻制のもとでたくさんの王族がいるサウジアラビアにおいて、どのような政治的位置にあるのかは知りません。

なかなか変わらない男性の意識
話は変わりますが、最近目にした女性に関する記事2件。
ひとつ目は、アメリカ・オバマ大統領の失言。

****米大統領:失言で謝罪「彼女はルックス抜群****
オバマ米大統領が、女性のカリフォルニア州司法長官を「全米でも抜群にルックスが良い司法長官」と形容したことで批判を浴び、本人への謝罪に追い込まれた。カーニー大統領報道官が5日明らかにした。

大統領は4日に同州内で開かれた民主党のイベントで、カマラ・ハリス州司法長官を紹介。その際にハリス氏の容姿を褒めた上で、聴衆に「事実じゃないか。そうだろう」と同意を求めた。
これに対し、女性の成功を容姿と関連づけるのは「男女差別的」ではないかとの批判がメディアなどから上がり、大統領は同日中にハリス氏に電話をかけて謝罪した。【4月6日 毎日】
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“カマラ・ハリス長官を「才気にあふれ、献身的でタフだ」と称賛し、「断トツで最も美人な司法長官だ。事実だろ?」と聴衆に呼びかけた”【4月6日 産経】とのことで、男性の感覚すれば最大限に褒めたつもりだったのですが・・・。

一方、ウルグアイのムヒカ大統領のケースは、明らかにNGです。

****ウルグアイ大統領:隣国大統領を「ばあさん」と侮辱****
南米ウルグアイのムヒカ大統領(77)が4日の記者会見でマイクのスイッチが入っていることに気付かず、隣国アルゼンチンのフェルナンデス大統領(60)を「ばあさん」と呼ぶ侮辱発言をした。アルゼンチン政府は5日までに抗議の声明を発表、ムヒカ氏は火消しに追われている。

ムヒカ氏は記者会見場で、隣の政府高官に小さな声で「片方の目が見えない男より、あのばあさんの方がひどい」「ばあさんは頑固だ」と発言。率直な発言で知られ、国民の人気が高いが、口が過ぎた形。地元紙に「アルゼンチンのことを言ったわけではない」と否定するなど苦しい釈明を続けている。【4月6日 毎日】
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アルゼンチンのフェルナンデス大統領は、未だ国民的人気が絶大な美人政治家エビータに自らのイメージをダブらせようとしている節もあります。そんなフェルナンデス大統領ですから、今後の表向きの発言がどうであろうと、生涯ムヒカ大統領を許すことはないと思われます。

容姿を“売り”にしているタレントなどを除けば、褒めるにせよ、けなすにせよ、本人の能力とは関係のない女性の容姿を取り上げるのはNGということです。
ひと昔前は、“容姿端麗”が雇用条件になっていたりしましたが、男性側は(私を含め)頭の切り替えがまだ完全ではないようです。
女性の側にも“女を売りにする”ような意識があります。

ただ、男と女しかいない世界ですから、どこまでいってもそのあたりは微妙なものが残りそうですし、完全になくなるのがいいのか?という部分もあります。
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イスラム社会の女性  マララさんの自伝出版 シリア難民家族の重苦しい戦いの日々

2013-03-29 23:37:51 | 女性問題

(シリア難民のキャンプ 多少の援助はあるものの、そこでの生活は寒く、不衛生で厳しいものがあります。しかし、キャンプを出て街で暮らすとなると、どのように生計を立てるかという問題に直面します。“flickr”より By muslimhandsuk http://www.flickr.com/photos/muslimhandsuk/8560395122/ ) 

すべての少年少女に学校に通う権利を求める運動の一環になれば
女性が教育を受ける権利を訴え、パキスタンでイスラム武装勢力に頭部を撃たれて重傷を負い、その後イギリスでの治療で奇跡的な回復を見せているマララ・ユスフザイさん(15)が自伝を出版することになったそうです。契約金は300万ドル(約2億8000万円)前後と報じられています。

****マララさん、自伝出版へ 「教育受けられない子たちの物語****
・・・・自伝のタイトルは『I Am Malala(私はマララ)』。
マララさんは「この本が世界中の人の手に渡り、一部の子どもにとって教育を受けることがいかに難しいかを理解してもらえれば」との声明を発表。「自分のことも語りたいけれど、(この本は)教育を受けられない6100万人の子どもの話でもあります。すべての少年少女に学校に通う権利を求める運動の一環になればと思います。これは、子どもたちが持つ基本的な権利です」と自伝に対する思いを語った。

出版元が公開した自伝の抜粋で、マララさんは銃撃された日のことを次のように回想している。「学校が終わり、友達や先生たちと一緒に、スクールバスとして使われていたトラックの荷台のベンチにぎゅうぎゅう詰めに腰掛けていた。荷台の後ろだけ開放されたトラックに窓はなく、ぶ厚いプラスチックの板が両脇に付いていただけで、板は黄ばんで砂埃にまみれ、何も見えなかった。後ろの隙間からほんの少しだけ見えた空に、たこが揚がっているのが見えた。そのたこは私のお気に入りの色、ピンクだった」

マララさんは昨年10月9日、スクールバスに乗っているところをイスラム武装勢力「パキスタンのタリバン運動(TTP)」に銃撃され、英国に渡り治療を受けた。順調に回復し、今月からは英イングランド中部バーミンガムの学校に通っている。【3月29日 AFP】
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父親のジアウディンさんは現在、マララさんが主張する教育の権利を支援する、英国前首相のゴードン・ブラウン国連グローバル教育担当特使の特別顧問を務めており、家族全員でパキスタン人の多いバーミンガムで暮らしています。【3月20日  AFPより】

マララさんの考え・行動には父親の影響も大きいとは思いますが、彼女が伝えるメッセージがパキスタンやアフガニスタン、更には世界の教育機会に恵まれない状況に置かれている女性の社会環境改善の一助となることを期待します。

パキスタンからは、マララさんが経験した悲劇と同様の事件が報じられています。

****パキスタンで女性教師が銃撃され死亡*****
パキスタン北西部で26日、女性教師がオートバイに乗った男らに銃撃されて死亡した。

事件があったのは、パキスタン北西部の都市ペシャワルとアフガニスタンとの国境の間に位置するジャムルド。地元当局によると、教師のシャフナズ・ナジズさん(41)は勤務先の公立女子小学校に向かう途中、学校から200メートル付近でオートバイに乗った男らに撃たれて死亡した。男たちはそのまま逃走した。(後略)【3月28日 AFP】
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難民家族の生計を支える少年
ところで、先日、ヨルダンで暮らすシリア難民家族とその家族を支えて働く少年に関するドクメンタリー「僕らに春は来るのか~シリア難民の子どもたち~」を、番組途中からですがTVで観ました。

番組内容は“泥沼の内戦が続くシリア。隣国・ヨルダンに避難したアンマール君(12歳)は、政府軍に妹を殺され、父は反政府の自由シリア軍に参加した。ヨルダンではシリア難民が急増し、キャンプも飽和状態。困窮するなかで一家を支えるために働く子どもも多い。激化する内戦は、子どもや女性に大きな犠牲を強いている。異国で懸命に生きるシリア難民の子どもたちを7か月間にわたって見つめた。”というものです。

番組の趣旨どおり、一家を支えて懸命に働く少年の姿はけなげとしか言いようがありません。もちろん、番組にふさわしい家族・少年を選んでのことで、難民の子供たちすべて同じという訳ではないでしょうが。

自由シリア軍のシリア内での戦闘が報じられていますが、あらためて、メンバー各自の背後にいる家族はどうのような状況にあるのか・・・という問題も考えされます。

一時的に家族のもとに戻った父親は、再開の喜びもそこそこに仲間からせかされるようにシリアでの戦闘に戻っていきます。
これまで母親・兄弟を支えてきた少年は、シリアに戻らないように父親に哀願します。「家族を養うのが父親の役目じゃないか!」
父親は激しく少年をしかります。「ここは空爆もない。何が不満なんだ! 仲間がシリアで俺を必要としているのだ!」「僕たちだって父さんが必要だよ!」と少年。

ある少年は家族を養うために朝から夜まで働き続け、それでも行き詰る生活に疲れ、家族に「もういやだ。自分たちでなんとかしろよ。俺はシリアに行って自由シリア軍として戦う!」と苛立ちをぶつけます。

弾丸が飛びかい、爆弾がさく裂する戦場。一方、残された家族を支えて働く少年の日々も、出口が見えず、苦しさが募る消耗戦のような戦いです。

働く機会のない女性
観ていて気になったのが女性の立場でした。
日本でも、多くの国々でも、父親が不在、あるいは何らかの事情で働けないというのであれば、子供より先ず母親が何とか経済的手段を探すところですが、番組の中の母親は子供に経済的苦境を訴えるだけで、働きづくめの少年を苛立たせます。
姉は、友人の不幸を聞いて寝込んでしまい、携帯でコーランを聞くだけです。

大根畑に残った大根にかじりつき、その惨めさに嗚咽した後に立ち上がり、神に挑戦するかのように「神よ お聞き下さい。この試練に私は負けません。 家族に二度とひもじい思いはさせません。 生き抜いてみせます! たとえ盗みをし、人を殺してもでも! 神よ 誓います。二度と飢えに泣きません!」と独白するスカーレット・オハラのような女性は登場しません。

もちろん、彼女らが家族の経済的支えとなれないのは彼女らのせいではなく、女性に働く機会を認めていないイスラム社会の問題です。イスラム社会にあっては女性は男性に保護されるべき存在であり、一家を支えて働く存在ではありません。

それを当然のこととして受入れ生きる女性と暮していれば、結果として、男性側も“女性は男性に保護されるべき存在”という社会的価値観に疑いを持つこともなく育ちます。

このような社会システムは、シリア内戦のように成人男性が戦闘に参加した場合、残された家族はどうなるのか?という問題をもたらします。

“女性は男性に保護されるべき存在”という社会から、女性も男性と同様に生きる権利を主張できる社会に変えていくためには、先ずは教育でしょう。
そうした意味で、マララさんのメッセージが更に広く伝わることを期待します。
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女性の権利  パリ女性のズボン インドの女性バンド パキスタンのマララさん

2013-02-05 22:09:43 | 女性問題

(1月3日 イギリス・バーミンガムのクイーン・エリザベス病院を退院するマララ・ユスフザイさん “flickr”より By JoindHands  http://www.flickr.com/photos/joind_hands/8348671099/

1800年、パリジェンヌのズボン禁止令
女性の権利・社会的地位に関する話題としては、女性の社会参加が厳しく制約されており、スカーフ着用など服装に関しても宗教的制約が多いイスラム世界をしばしば取り上げています。
例えば、サウジアラビアで女性の自動車運転が認められていないこととか、インドネシアのある都市で女性がバイクの後部座席にまたがって座ることを禁止したこととか・・・。

当然ながら、こうした女性に課せられた制約はイスラム社会だけでなく、先進国を含め世界全体で見られることであり、日本なども、世界経済フォーラムが社会進出などでの男女平等の度合いを比較したランキングで135カ国中101位という結果に見られるように、国際的には厳しい評価がなされています。

また、日本や欧米社会において現在はあたりまえのこととして見られていることも、過去に遡れば大きな制約が存在していたことも多々あります。

****パリ:女性のズボン「解禁」 1800年の条例無効に****
パリジェンヌのズボン禁止令は無効−−。パリの女性市民にズボンの着用を禁止するとした200年以上前の条例について、フランスのバロベルカセム女性権利相がこのほど、無効であることを正式に確認した。フランスメディアが4日報じた。

条例は、1800年に制定され「女性がズボン着用を希望する場合は、警察署の許可が必要」と定めている。当時、女性の社会進出を阻む狙いがあったとされる。1892年と1909年には、自転車や馬に乗る場合は着用を認めると条件が緩和された。【2月5日 毎日】
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イスラム社会、一部のアジア・アフリカ諸国で見られる厳しい制約も、100年後、200年後には笑い話になる・・・といいのですが。

【「男たちに悪い影響を与えている」】
インドでは、昨年12月16日にニューデリーの女子学生がバス車内で集団レイプされたあげく、バスから突き落とされ、結局死亡した事件を契機に、女性に対する性犯罪の厳罰化を求める動きが社会問題化しています。
世論に動かされる形で、政府も法改正に踏み出したようです。

****インド大統領、レイプの罰則強化-最高刑に死刑****
これによってレイプの最高罰則を死刑とする法律が成立した。同国内務相の広報担当者はウォール・ストリート・ジャーナル紙に対して、「これ(大統領令)は直ちに発効する」と述べた。ただ、2月21日に始まる議会で6週間以内に事後承認を得る必要がある。

インド政府は1日、レイプ事件を防止するための大統領令を提案した。大統領令は議会が休会中に政府が発令する法律。同国では昨年12月16日にニューデリーの女子学生が集団レイプされたあと、レイプに厳格な措置を講じるよう国民の要求が高まっている。この事件の被害者は暴行された時のけががもとで同29日に死亡した。

この事件を受けて国民の激しい抗議と、レイプには死刑を適用するなど女性に対する暴力行為への厳罰化を要求する声が強まったことから、政府は迅速な措置を講じた。同国では通常、法案が議会を通過するまでに何年もかかる。

大統領令には、性犯罪の罰則強化を目的に事件の1週間後に設けられた諮問委員会の提案のほとんどが盛り込まれた。同委員会は3人のメンバーから成り、委員長はJ.S.ベルマ元最高裁長官が務めている。ただ、死刑は同委が勧告しなかったが、政府が盛り込んだ。【2月5日 The Wall Street Journal】
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ただ、今朝のTVニュースでは、諮問委員会の提案にあった夫の妻に対する暴力が大統領令では明記されておらず、また軍の兵士による性犯罪に関する取扱変更も盛り込まれていない・・・といった指摘もなされていました。

そのインドで、10代女性のバンドに対するイスラム教指導者の見解が話題になっています。
****インド:イスラム教指導者、少女バンドに「歌うな****
イスラム教徒が多いインド北部ジャム・カシミール州で、初の「女性ロックバンド」を結成した10代の少女3人に対し、保守的なイスラム教指導者が「(若い女性が)公の場で歌うべきではない」と活動中止を求めるファトワ(宗教見解)を出した。インドメディアが4日、報じた。

インドでは、レイプ事件など女性差別を背景とした犯罪が社会問題化しており、女性の表現の自由を無視した意見に批判の声が上がっている。
ファトワを出したバシルディン師は、インドメディアに「(歌いたければ)家の中で歌えばいい。男たちに悪い影響を与えている」とバンド活動を批判した。【2月4日 毎日】
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イスラム社会では、男性に“悪い影響”を与えた女性に大きな責任が課されることが往々にしてありますが、やはり先ずは“悪い影響”を受けた男性が責任を問われるべき問題であり、男性の問題を無視して女性にだけ制約を求めるのは片手落ちでしょう。

また、性的な問題を“悪い影響”云々として過度に封じ込めようとするのは無理があり、抑えきれない欲望はより陰惨・暴力的な形で噴きだすものです。

全ての少女や子どもが教育を受けられるように尽力したい
パキスタンで女性が教育を受ける権利を訴え、イスラム武装勢力に頭部を撃たれて重傷を負った15歳の少女、マララさんは奇跡的な回復を見せています。
(参考:2012年10月28日ブログ「パキスタン イスラム武装勢力に銃撃された少女、めざましい回復 脅威に口をつぐむ地元住民」http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20121028

****マララさんの頭蓋骨修復手術成功、聴力を回復させる機器も埋め込む*****
パキスタンでイスラム武装勢力に頭部を撃たれて重傷を負い英国の病院に入院していたマララ・ユスフザイさん(15)の頭蓋骨修復手術が成功した。マララさんの手術を担当したイングランド中部バーミンガムのクイーン・エリザベス病院の医師団が3日、明らかにした。

医師団によるとマララさんは2日、チタン製の板を頭部に埋め込む手術に加え、左耳の聴力を回復するための電子機器を埋め込む2つの手術を受けた。計5時間におよんだ手術はいずれも成功し、マララさんは順調に回復しているという。

パキスタンで女性が教育を受ける権利を訴えていたマララさんは昨年10月9日、スワト渓谷でバスで通学中、イスラム武装勢力「パキスタンのタリバン運動(TTP)」に至近距離から頭を撃たれて重傷を負い、左耳は全く聴こえなくなっていた。

医師団によれば、手術で内耳に埋め込んだ機器により、マララさんの聴力は1年半もすれば通常に近いレベルまで回復するという。【2月4日 AFP】
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また、マララさんは4日、事件後初となるビデオ声明を公開し「皆さんの祈りの力で、日々回復している。新しい人生を授けられた」と世界中の人々の支援に感謝の意を示し、「全ての少女や子どもが教育を受けられるように」尽力したいとの今後へ向けた決意を表明しています。

最近何かと批判も多いノーベル平和賞候補にマララさんが推薦されたとも報じられています。
****ノーベル平和賞候補に=パキスタンの少女マララさん****
2013年のノーベル平和賞の候補者に、パキスタンで女性が教育を受ける権利を訴えた結果、イスラム武装勢力タリバンに頭を撃たれ重傷を負ったマララ・ユスフザイさん(15)が推薦された。AFP通信が1日報じた。

平和賞は毎年10月に発表され、12月に授賞式がオスロで行われる。推薦の締め切りは2月1日で、推薦できるのは各国国会議員や政府関係者、過去の受賞者ら。マララさんはフランスとカナダ、ノルウェーの議員がそれぞれ推薦した。候補者の氏名は規則で50年間公表されないが、推薦者は自身が推薦した人物や団体を明らかにできる。【2月1日 時事】
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頭部銃撃の次はノーベル平和賞候補と、15歳少女にはあまりも大きな出来事が続きます。
周囲の声や激変する環境に惑わされることなく、自分が本当にやりたいことに取り組んでいけることを願っています。
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女性の権利に関する問題  インドの名誉殺人 イタリアのDV被害 日本は?

2012-11-04 21:18:34 | 女性問題

(マイクロファイナンスを利用して小商いを始め、経済的、ひいては家庭内・社会的地位の向上を手にしようととしているインド女性 もちろんマイクロファイナンスについては問題も提起されてはいますが。 “flickr”より By mckaysavage http://www.flickr.com/photos/mckaysavage/2229763779/

【「若い女性を誘惑の危険から守るためだ」】
女性の社会的立場・権利状況は各国の文化によって様々ですが、女性の教育を受ける権利をブログで主張した少女がイスラム過激派によって銃撃されたパキスタンの事件のように、日本や欧米の価値基準からするとなかなか受け入れがたいものが多々あります。

そうした現状からすれば、下記の携帯をめぐるインドの事例などはとるに足りない些細なものと言えます。

****誘惑から守る…未婚女性の携帯禁じたインドの村****
インド西部ラジャスタン州の村で先月末、未婚女性の携帯電話の使用が禁じられた。
カーストの違う男女が駆け落ちし、「女性がみだりに男性と連絡を取るのは良くない」と、村の伝統的な自治組織が全会一致で決めた。

カースト間の差別意識が根強いインドでは、親が決めた相手との結婚を拒んだ子女を殺害する「名誉殺人」の風習もあり、女性の行動に特に厳しい目を向ける傾向がある。自治組織の決定に法的拘束力はないが、組織幹部の一人は読売新聞に、「若い女性を誘惑の危険から守るためだ」と語った。

この村では、未婚女性のスカーフ使用についても、「女性であることを隠すもの」と禁じられた。女性自立支援団体は、「インドが遅れた国と世界に知らしめる男尊女卑の恥ずかしい考えだ」と非難している。【11月4日 読売】
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名誉を汚す娘が殺されるのは当然だ
事象としては“とるに足りない”ものではありますが、問題の根っこは深いものがあります。
記事にもあるように、インドでは「名誉殺人」の風習が根強く、年間数百人から一千人ぐらいの女性が殺害されているとも言われています。

これまでも何回か取り上げたことがありますが、「名誉殺人」とは、“女性の婚前・婚外交渉(強姦の被害による処女の喪失も含む)を女性本人のみならず「家族全員の名誉を汚す」ものと見なし、この行為を行った女性の父親や男兄弟が家族の名誉を守るために女性を殺害する風習のこと”【ウィキペディア】です。

インドや、パキスタンなどイスラム圏で多く見られる風習ですが、“アムネスティ・インターナショナルは名誉殺人が行われている国および地域として、バングラデシュ、トルコ、ヨルダン、パキスタン、ウガンダ、モロッコ、アフガニスタン、イエメン、レバノン、エジプト、ヨルダン川西岸、ガザ地区、イスラエル、インド、エクアドル、ブラジル、イタリア、スウェーデン、イギリスを挙げている”【同上】とのことです。

インド国内でも「名誉殺人」の風習が問題視されていない訳ではありません。

****名誉殺人が増加するインド、刑法改正を検討****
インド政府は、刑法を改正して名誉殺人に厳しい罰則を設けることを検討している。名誉殺人の増加傾向に対処するためという。内政省当局者が9日明らかにした。

インド国内における名誉殺人件数の公式データはないが、社会活動家らによると、名誉殺人で殺される男女は毎年数百人にのぼっており、特にパンジャブ州、ハリヤナ州、ウッタルプラデシュ州で多いという。
別のカーストの相手と結婚して共同体全体を「侮辱した」として、家族に殺されたり、自殺に追い込まれたりするケースが目立つという。

9日の同国紙タイムズ・オブ・インディアは、首席法務官のG.E. Vahanvati氏が、名誉殺人に法律で介入することの必要性を政府に助言したと伝えている。【2010年2月10日 AFP】
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インド政府は、上記記事が報じられた2年半ほど前から、名誉殺人の「教唆」に新たに罰則を設ける等の刑法の改正に取り組んでいますが、明確な改正案が出されたとの報道は目にしていませんので、恐らく未だ“取り組み中”なのではないでしょうか。
(なお、パンジャブ州とハリヤナ州では、名誉殺人になりかねない危険性を持つ状況の夫婦を対象にした保護シェルターの設置といった措置はとられているようです。【3月1日 印度扉ニュースより】)

今年6月にも、インド北西部ラジャスタン州の村で、娘(22)の不倫に怒った父親がこの娘の首を剣で斬り落として殺害し、首と剣を持って村の中を練り歩くという事件がありました。
そのときの報道では、“こうした名誉殺人は伝統的な正義として通報されない場合も多く、警察や地元政治家も見て見ぬふりをしているのが実情だ”【6月22日 AFP】とされています。

なお、刑法改正で「教唆」への罰則が検討されているのは、下記記事にあるような、風潮を助長する村の長老グループ「カップ」などの地域住民の存在が念頭に置かれているのではないでしょうか。

****インド、伝統の犠牲「名誉殺人」 家族が阻む異なる身分の恋愛****
インド北部ではカーストが異なる、あるいは同じ村出身の男女の交際や結婚を認めない伝統が強く残り、このしきたりに背く若い恋人たちが、両親や兄弟に殺害される事件が後を絶たない。家族が伝統を守るためのものとして、「名誉殺人」と呼ばれるこうした殺人は、保守的な大人の世代と、自由恋愛など現代的な価値観をもつ子供の世代とのあつれきによって招かれ、急速な発展を遂げるインドの苦悩となっている。(中略)

 ◆同じ村も結婚認めず
「祖先が異なっても、同じ村に住んでいれば、同じ血縁関係にある『ゴートラ』とみなされる。ゴートラでは全員が兄弟、姉妹。だから、同一ゴートラの結婚は認められない」
ジンド地区から車で1時間半ほど。ダンカール村の「カップ」と呼ばれる長老グループのリーダー、ジラ・シン氏(79)は、こう説明する。そして「私の娘がそんな結婚をすれば、伝統を守るために娘を殺す」と言い切る。
カーストが異なっていなくても、ゴートラが同じであれば恋愛や結婚は認められない。ビカスさんのケースは、出身の村が同じであることから、ゴートラの問題も絡んでいた。

カップが、伝統を守ることを恋愛中のカップルの家族に強要しているとの指摘もある。カップ側は「名誉殺人を指示することは絶対にない」と否定しつつも、「古代叙事詩のマハーバーラタの中でも名誉殺人はあり、同一ゴートラの結婚は医学的にも問題があると証明されている」と、カップルの殺害を正当化する。

同州で、性的被害や人身売買にあった女性を保護する非政府組織(NGO)「アプナ・ガル」の創設者、ジャスワンティさんは「人々の考え方は、『村は一つの家族』。村全体のエゴとプライドが個人の命よりも優先されてしまう」と説明する。

 ◆死者は年間1000人?
インド刑法は、名誉殺人を一般の殺人罪と同様に扱う。このため名誉殺人による死者数は不明だが、犠牲者は年間1千人にのぼるとの調査もある。報道によると、9月は7件の名誉殺人で9人が命を落とした。

名誉殺人の問題に取り組む弁護士のラビ・カント氏によると、「名誉殺人の7割は異カースト間で起こっており、うち9割は女性の家族によるもの」という。自分の娘に手をかける家族が多いのは「家族の名誉を引き継ぐのは娘」(カップのシン氏)であり、名誉を汚す娘が殺されるのは当然だとの考えがあるからだ。

だが、男性の親の方は、ハリヤナ州やパンジャブ州などでは、若年層の男性人口が女性を上回っていることから、「結婚相手を見つけられただけでも十分だと思い、大目にみる傾向がある」(ジャスワンティさん)という。

インドでは、親が選んだ相手との結婚が主流だが、若年層の教育レベルの向上や社会の変化に伴い、恋愛する若者が増えている。カント氏によると「結婚をめぐる世代間ギャップも存在する」といい、子供が親の言うことをきかなくなったことも背景にある。

名誉殺人をめぐっては、犯行に及んだ家族だけでなく、カップのように殺人を教唆した地域住民も罪に問えるよう、殺人罪に名誉殺人罪を加えることを求める動きもある。だが、政治の動きは、大票田であるカップへの配慮から、鈍い。【2010年10月3日 産経】
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冒頭で示した名誉殺人が行われている国々のなかにスウェーデンやイギリスが含まれているのは、伝統的にこうした風習を持つ国からの移民の流入によるものではないでしょうか。

【「自分の所有物だと思っていた女性が突然、反抗したり言うことを開かなかったりすると、男性は感情が爆発して暴力に発展する」】
イタリアは・・・どうでしょうか?この国は女性に関しては問題を抱えているようです。

****女性の自立を恐れるイタリア男の横暴****
女性蔑視の国イタリアでは夫や元恋人によるDV殺人が増加の一途

ジュリアナ(仮名)は7月からローマ郊外の女性用シェルターに身を潜めている。夫に刃渡り30惣のナイフで殺されかけたのだ。両手に50針以上縫う傷を負いながらも、彼女の叫び声を聞いた隣人が警察を呼んでくれたため奇跡的に助かった。

46歳のジュリアナの全身が、20年以上に及ぶ地獄を物語る。両腕は火の付いたたばこを押し付けられたやけどの痕だらけ。3回骨折した鼻は曲がっている。
夫に見つかれば今度こそおしまいだと、ジュリアナは不安そうにたばこを吸い続ける。「私を待ち構えているのよ。もう家には帰れない。逃げたことを理由に殺されるわ」

イタリアでは配偶者・恋人間の暴力(DV)を受けた女性の90%が、報復を恐れて刑事告訴をしない。もっとも、ジュリアナは生きているだけ幸運だろう。
今年に入ってからイタリアでは、少なくとも100人の女性が、かつては愛し合っていた男性に殺された。3日に1人が犠牲になっている計算だ。

DV被害女性の支援団体「私たちは共犯者にならない」によると、イタリアの女性殺人事件は過去3年間に年約10%のぺースで増えている。そのうち70%近くが同居男性に、残りの大半は元恋人や元夫に殺された。

女性を自分の所有物と思っている男性は、彼女たちが周囲の強い女性に影響を受けて意識が変わることを恐れていると、文化研究者のジョルジア・セルゲッティは言う。「女性の役割に関する社会の考え方が大きく変わっているのを受けて、この種の暴力が起きる。女性の解放に対する暴力でもある」

法改正も、DV殺人と認定される数が増えている一因だ。イタリアでは96年まで、恋人や夫婦間のレイプは犯罪と見なされなかった。つい5年前まで、嫉妬に駆られて「激情的に」女性を殺した男性の大半が法律的に許され、家庭内の「事故死」として処理されていた国だ。

ただし、DV殺人を訴追しやすくなったからといって、女性の身が守られるわけでは決してない。変わらなければならないのは国全体の意識だ。

3人に1人が耐えている
寝室ではなく取締役会で活躍する女性がメディアで取り上げられる機会が増えるにつれ、男性は自分の妻や恋人、さらには母親が意思を持ち始めることを恐れていると、DVに関するルポ作品のあるローレラ・ザナルドは指摘する。
「女性は従属的で男性より劣る役割だったが、最近は家庭でも組織でも意思決定を担うようになった。女性を尊重して対等な 関係を結び、被女たちの声に耳を傾けろと言われても、男性にとっては容易でない」
 
25年前にガブリエラ・モスカテッリがDV被害者のホットライン「テレフォノ・ローザ」を開設した当初は、電話はほとんど鳴らなかった。「DVは内輪の恥とされていた」と、モスカテッリは言う。
現在テレフォノ・ローザは年間約1200人の女性の相談に乗り、慢性的なDV被害者の安全を確保する支援をしている。

とはいえ、依然としてさまざまな数字が深刻な状況を物語る。イタリアの国立統計研究所によると現在も16~70歳の女性の推定3人に1人が、慢性的なDV被害を受けている。

社会の女性観とプライペートでの女性の扱われ方は直結していると、モスカテッリは言う。社会で優秀な実績を挙げているからこそ、DVで殺害されるような女性もいる。
「自分の所有物だと思っていた女性が突然、反抗したり言うことを開かなかったりすると、男性は感情が爆発して暴力に発展する」と、モスカテッリは言う。「感情の爆発から女性殺害に至るのはあっという間。そうなったときには手遅れだ」【11月7日号 Newsweek日本版】
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大筋においては日本も同様ですが、“つい5年前まで、嫉妬に駆られて「激情的に」女性を殺した男性の大半が法律的に許され、家庭内の「事故死」として処理されていた国だ”というのは意外です。
ベルルスコーニ前首相の女性問題、それでも政治生命が断たれない(さすがに首相復帰は諦めたようですが)あたりも、こうした女性に関する文化的土壌があってのことでしょう。

なお、世界経済フォーラムが10月24日、世界135か国を対象に、社会進出などでの男女平等の度合いを比較したランキングを発表しましたが、イタリアは80位と、北欧・西欧諸国のなかでは低い順位にとどまっています。

日本は更に低く101位。名誉殺人が横行するインドが105位ですからいい勝負です。
このことは、このランキングがどのような視点・基準で作成されたものかということに依拠しますが、たとえどのような“物差し”であったとしても、インド並みということは、日本社会に私たちが普段意識しない大きな問題が横たわっているということを示しているとも言えます。
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硫酸をかけられた女性  パキスタン人女性監督オスカー獲得 イランでは同害報復刑回避

2012-03-02 23:04:23 | 女性問題

(バングラデシュの硫酸被害の子供たちとゲームに興じるイギリス国際開発大臣 バングラデシュでは被害者の4分の1が子供だそうです。 “flickr”より By DFID - UK Department for International Development http://www.flickr.com/photos/dfid/6395601343/

【「変革のために頑張っているパキスタンの女性のみなさん、諦めないで下さい。この賞はあなたたちのものです」】
アメリカ・アカデミー賞の短編ドキュメンタリー部門賞で、男性から硫酸をかけられた女性2人を中心にしたパキスタン人女性映画監督の作品がオスカーを獲得し話題となっています。

****アカデミー賞 パキスタン人、初の受賞 「女性への暴力」に焦点****
第84回米アカデミー賞の短編ドキュメンタリー部門賞に、夫や求婚を断った男性から硫酸をかけられた女性に焦点をあてたパキスタン人女性映画監督の作品「セービング・フェース」が選ばれた。パキスタン人の受賞は初めて。これを機に同国で関心が薄い女性に対する暴力への認識の高まりが期待される。

28日の地元各紙1面は、映画監督シャルミーン・オベイド・チノイさん(33)が受賞した写真を掲載し、快挙を祝った。チノイさんは、受賞のあいさつでパキスタン人女性の勇気と強さをたたえ、「夢をあきらめないで」と呼びかけた。

作品は、男性から硫酸をかけられた女性2人を中心に、彼女たちの奮闘や英国系パキスタン人男性の形成外科医の取り組みを描いた。こうした暴力は多くの場合、家庭内暴力や、求愛、求婚を断られて逆上した男性によるもので、同国だけでなく世界で起きている。

イスラマバードで被害者救済を支援する非政府組織(NGO)の代表バレリー・ハーンさんによると、女性に硫酸をかける暴力はパキスタンでは少なくとも年間200件起きており、拡大傾向にあるという。
犯罪として取り締まる法律は昨年成立したばかりで、被害者救済などの法整備はこれから。ハーンさんは「受賞を機に、法整備に向けた機運が高まることに期待したい」と語った。【2月29日 産経】
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パキスタンでは女性への暴力が許される差別的慣習が残っている地域もあり、司法に訴える被害者は少ないとされています。そうしたなかで昨年、硫酸をかけるなど女性に対して暴力を振るった人を厳罰に処す法が成立するなど、政府もようやく本格的な取り組みを始めています。

女性へ硫酸を浴びせる・・・ということはパキスタンだけでなく各地で見られますが、アフガニスタンでは学校に通う女子学生の顔に、女性教育に反対するタリバン関係者が硫酸を浴びせるといった、いたましい事件もありました。

祝い事の季節になると犠牲者が増える
アフリカのウガンダでも、同様の犯罪行為が多発しているようです。
被害者も女性に限らないようです。

****硫酸による復讐」が急増、遠い法整備 ウガンダ****
ウガンダの首都カンパラにあるムラゴ病院のやけど病棟の外で、ダーリソンさん(24)は注意深くヘッドスカーフの位置を調節する。ひたいから右ほおにかけてまだら模様を作った醜いやけどの跡をこれで隠しているのだ。

同じ病棟には、夫で地方議員のジョセフさんが全身に包帯を巻かれて横たわっている。激痛のため動くこともできない。夫婦は先月、何者かに硫酸を浴びせられた。「故郷の村に構えた小さな店の外で、夫と私は座っていました。すると突然、酸を浴びせられたんです。犯人は逃げました」とダーリソンさん。まだ犯人はつかまっていないが、彼女には心当たりがあるという。「きっと、夫の前妻です」

この国では、硫酸攻撃が急増している。過去10年間で、制裁を加えたり、仕事や私生活での恨みを晴らす手段として、安く入手できる硫酸を浴びせる事件が増えているという。

ムラゴ病院の医師によると、硫酸攻撃の件数は昨年12月のホリデーシーズンに従来の倍以上に増えた。地元メディアは、この期間に40人を超える犠牲者がカンパラ市内の病院に搬送されたと報じた。ある形成外科医は、祝い事の季節になると犠牲者が増えると話す。

■警察や法制度への不信感が背景に
社会学者らは、硫酸攻撃が増えている原因について、紛争処理における警察や法制度への不信感や、都市部への人口流入に伴い伝統的な家族構成が広く崩壊したことを挙げる。

硫酸攻撃の被害者を支援する地元NGO「Acid Survivors Foundation Uganda」の共同創設者で、自らも被害者であるPrudence Komujinya氏は、硫酸を浴びたことによる人生への影響は計り知れないと言う。「身体的にも、社会的にも、経済的にも、心理学的にも、大変な試練が待ち受けています。外観が損なわれると不名誉の烙印を押されることも多いのです」

警察と司法当局は硫酸攻撃に対して以前よりも厳しく対処するようになったが、有害な化学物質を規制する新しい法律の制定を求める市民の声は、実を結んでいないという。【2月4日 AFP】
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【「許しは報復より優れていると神は言った」】
イランでは、やはり硫酸の被害を受け失明した女性の訴えで、加害者男性を同様方法で失明させる「目には目を、歯には歯を」という同害報復刑が一旦は確定したものの、賠償金支払いによって刑の執行直前に中止されたという事件もありました。

****イラン:被害女性の決断で報復刑直前で中止 共感広がる*****
7年前、大学の同級生の男に硫酸を両目にかけられて失明したイラン人女性が、自分が受けた被害と同様の被害を相手に負わせるイスラム法の「同害報復刑(キサース刑)」の適用を求め、刑が確定。男の両目を失明させる刑の執行が7月31日に予定されたが、女性は実行寸前に中止を決断し、報復刑に疑問を抱く人々の間で共感が広がっている。
イスラム法を巡っては欧米を中心に「人権侵害」との批判があるが、今回の出来事にはイラン社会の「変化」が背景にある。

女性はアメネ・バフラミさん。04年11月に同級生のマジド・モハベディ元被告の求婚を拒否し、硫酸を浴びせられた。報復刑は最高裁で2年前に確定した。
イラン学生通信によると、バフラミさんは主治医らから翻意をうながされ、執行当日に「7年間報復ばかり考えてきたが、許しは報復より優れていると神は言った。これで、家族や彼の母親を幸せにできる」と決断。男はバフラミさんの前で号泣し、刑の代替措置として20億リアル(約1800万円)の賠償金を払うことになった。

テヘラン検察トップが「勇気ある決断」と称賛し、インターネット上でも「彼女は許しを与えることで満足を得た」などの声が広がっている。一方で「同様の犯罪を防ぐため権利を行使すべきだった」との意見もある。
 
★同害報復刑 古代メソポタミア文明のハンムラビ法典の「目には目を、歯には歯を」の規定が起源とされ、過剰な報復を防ぐのが狙い。イスラム法に従うサウジアラビアなどで採用されており、殺人など凶悪事件の被害者や遺族が報復か賠償金のいずれかを選ぶ。【11年8月2日 毎日】
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11年5月時点では、被害女性は、加害者男性が200万ユーロ(約2億円)の手術代を肩代わりするならば、刑執行に対する考えを見直す準備があることを明らかにしていました。
200万ユーロ(約2億円)では現実的に加害者側も負担できないこともあって、20億リアル(約1800万円)で決着したようです。
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女性の権利  強姦加害者と結婚するしかない女性 大学教育を受け夫に指を切断された妻

2011-12-20 20:28:29 | 女性問題

(「女は派遣を望んでいる? NO!」。国会近くでのぼりを立て、抗議する「オンナ・ハケンの乱」。派遣切りにあった女性らが、「派遣法を修理しろ~」と替え歌でアピールした=11月29日、東京・永田町、仙波理撮影【12月9日 朝日】)

【「男を逮捕してと政府に請願したけれど、捕らえられたのは私だった」】
世界各国において、女性の基本的人権及び社会的地位が著しく侵害されている現実が今も続いていることは、今更言うまでもないところで、このブログでもそうした話題をしばしば取り上げてきました。

内戦などで社会が混乱・崩壊すれば、女性に限らず生命の維持すら容易ではない状況となり、女性の場合は性的暴行の対象ともなります。
内戦で荒廃したコンゴ民主共和国(旧ザイール)では、“毎日1100人以上”の女性たちがレイプ被害に遭っているとする調査結果もあります。【6月25日ブログ「コンゴ  後を絶たない“集団レイプ”事件  毎日1100人以上の女性たちがレイプ被害」(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20110625)】

そうした極端な事例ではなくとも、多くの社会で、欧米や日本の常識では理解できないようなことが普段に起きています。最近目にしたアフガニスタンとバングラデシュの話題です。

****強姦された女性「加害者と結婚するしかない」、アフガン****
アフガニスタンのグルナスさんは、親類の男に性的暴行を受けて姦通罪で有罪となった後、赦免され釈放された。だがグルナスさんは、兄弟から殺害の脅しを受けており、自分に性的暴行を加えた男と結婚せざるをえなくなっている。

自分の正確な年齢を知らず、20~21歳くらいだというグルナスさんは、青いブルカ(イスラム教徒の女性の顔や体を覆う衣装)を身につけて、静かな口調でAFPの取材に応じた。取材中、グルナスさんの足もとの床では、加害者との間に生まれた娘が遊んでいた。

「私は、彼と結婚しなければならない。子どもの父親が必要です。娘の世話をして、私たちに住むところを与えてくれる人が必要です」と、グルナスさんは語った。
「住むところがありません。私の兄弟たちは、私と私を襲った男と娘を殺すと誓いをたてました」

■性的暴行受け、「道徳上の罪」で有罪に
グルナスさんはいとこの夫に性的暴行を受け、「道徳上の罪」をおかした罪で2年間服役し、13日に釈放された。アフガニスタンのハミド・カルザイ大統領が1日、国際社会からの批判を受けてグルナスさんの赦免を決定したが、実際の釈放までにはそれからさらに2週間がかかった。

グルナスさんは現在、超保守的なアフガニスタン社会で、娘と自分の安全を確保し、家族の名誉を取り戻すために、自分を襲った男と結婚することを余儀なくされている。
グルナスさんを支援する活動家らは、アフガニスタンにありふれているこういった迫害を「(旧支配勢力の)タリバン時代の遺物」と呼び、アフガニスタンの民主化を目指して行われた米軍主導の進攻から10年が過ぎても続く、女性の権利の低さを訴えている。

グルナスさんは、警察に性的暴行を受けたことを申し立て、拘束された。
「男を逮捕してと政府に請願したけれど、捕らえられたのは私だった。私は無実なのにどうして拘束されたの?」と、グルナスさんは語る。

■「加害者と結婚」が唯一の選択肢か
グルナスさんはカブールの刑務所内で赤ちゃんを育てた。釈放後の今も、身の危険をおそれ、非公開の場所にある女性用の避難施設の中での生活を強いられている。
グルナスさんの弁護士を務める米国人のキンバリー・モトリー氏は、「(グルナスさんは)自分自身と娘を守るための最善の方策を模索している」と語る。だが、加害者の男は5年先まで服役中の見通しで、男と結婚して先に進むことも難しい。

「不幸なことに、女性が暴行された被害者だったとしても、自分を襲った男を受け入れて結婚することが、女性が自分の身を守るための最善の方策であると考える文化がある」と、モトリー氏は語る。「残念ながら、このようなタリバン時代の遺物が今もなおアフガニスタン文化に影響力を持っているのだ」

国際NGOオックスファムが10月に発表した報告書によると、アフガニスタン女性の87%が、肉体的・精神的・性的暴力または強制結婚の被害に遭っている。
モトリー氏は、赦免を決定したことで、カルザイ大統領や検察当局は、性的暴行の被害者の女性たちを起訴するべきでないと認識したことになると指摘する。

■「娘を学校に通わせたい」
グルナスさんは、自分の事件に関心が寄せられたことに感謝しているという。多くの女性はそのような幸運に恵まれない。
「私は恐れていません。彼は私を受け入れました。私も彼を受け入れました」と、グルナスさんは語る。
「娘を学校に通わせたい。彼女に医師になってほしい」【12月20日 AFP】
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若干補足すると、加害者との結婚は釈放の条件としてつけられたものです。
“グルナスさんの釈放を求める請願が5000人以上から寄せられたことを受けてカルザイ大統領が会議を開き、その席で司法当局者によって赦免の決定が下されたという。ただし、そのまま釈放すると超保守的なアフガン社会では密通者の烙印を押されてしまう恐れがあるとして、加害者との結婚を条件に付けた。
グルナスさんは、自分の兄弟が加害者の姉妹と結婚することを条件に、これに同意したという。報道官は、自分が強姦されたわけではないとの保証を得たかったのだろうと述べた。” 【12月2日 AFP】

暴行被害者が逮捕されてしまうこと、加害者との結婚が釈放の条件となることなど、よく理解できない話です。
“タリバン時代の遺物”とありますが、女性の権利・活動を著しく制約したタリバンによるものだけでなく、アフガニスタン社会に以前から存在する女性軽視・男性優位の考え方の表れのようにも思えます。

アフガニスタンでは2年前に女性を暴力から守る法律が施行されましたが、国連は、加害者が起訴された例は100件ほどに過ぎないと非難しています。

****求婚を拒んで硫酸をかけられる****
先月27日には、武装組織の元司令官からの求婚を拒んだ17歳の少女が硫酸を浴びせられるという事件も発生している。マスクをかぶった武装集団が深夜、北部クンドゥズ州の少女の自宅に押し入り、少女と姉妹と母親に暴力を振るったのち、少女の顔に硫酸を浴びせたという。少女は重傷で、4人の姉妹と母親もやけどを負った。
内務省によると、ビスメッラ・モハマディ内相が警察に、事件の捜査と犯人の逮捕をじきじきに命じたという。【12月2日 AFP】
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【「右手は切られたけれど、まだ左手が残っている」】
バングラデシュの事件は、おぞましいものがあります。

****大学での学位目指した妻の指を夫が切断、バングラデシュ****
バングラデシュ警察は15日、大学の学位取得のために無断で勉強を始めた妻に腹を立て、妻の指を切断した容疑で、男を逮捕したと発表した。永続的な障害を負わせた容疑で送検する考えだという。

警察当局のモハマド・サラウディン署長によると、アラブ首長国連邦(UAE)で出稼ぎ労働者として働いていたラフィクル・イスラム容疑者(30)は、バングラデシュに帰国して数時間後に、妻のハワ・アクテルさん(21)を縛り付け、口をテープでふさいでから、右手の指5本を切断した容疑が持たれている。
「容疑者は8年間の基礎教育しか受けていなかったが、妻は高等教育を受けるために大学に通っていたため、激昂して犯行に及んだ」と、サラウディン署長はAFPに語った。

イスラム容疑者は、ダッカで逮捕され、容疑を認めているという。警察当局は捜査を終え、イスラム容疑者を送検する準備を進めている。永続的な障害を負わせた罪で起訴されて有罪となれば、最高で終身刑が言い渡される可能性がある。
妻のアクテルさんは、治療を受けて実家に戻っている。アクテルさんは、同国英字紙デーリー・スターに対し、「右手は切られたけれど、まだ左手が残っている」と語り、大学教育を修了したいとの考えを述べた。

イスラム教徒が国民の大半を占めるバングラデシュでは、教育を受けた女性に対する恐ろしい家庭内暴力(DV)事件が次々に発生している。
6月には、無職の夫が、名門ダッカ大学助教授の妻がカナダの大学でさらに高い教育を受けようとしたことが許せず、妻の両目をくりぬくという事件があった。【12月18日 AFP】
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個々の事件の背景には、第三者の窺い知れない事情も多々あると思います。
妻が大学通っていることを、海外出稼ぎ中の夫は知らされていたのか・・・とか、よくわからない部分もあります。

一般論で言えば、男性優位の考え方を疑うことなく受け入れている男性は、多くの場合、自分自身は高い教育を受けておらず、自分の所有物のように見なしていた妻が教育を受けて世界を広げることを、自分の優位性を脅かすものとして嫌い、暴力でその根拠なき優位性を確認しようとすることが多くあります。
今回事件もそうした事例のひとつではないでしょうか。
アフガニスタンで学校に通う女性が、タリバン支持者から酸を浴びせられる・・・といった事例も同様でしょう。

アフガニスタンにしてもバングラデシュにしてもイスラム社会です。
イスラム社会の女性に対する考え方は一様ではなく、その教義の本質とどのように関わるのかは難しい問題でしょうが、どうしても欧米・日本の常識・価値観と相いれない事例が起きやすいことも事実です。
多くの女性はそうした社会的制約を当然のこととして受け入れ、幸せを築いているのでしょうが、従来からの制約に収まらない女性に対しても寛容さを示してほしいものです。

【「孤族の国 女たち」】
毎回言うように、私自身は日本の男性優位社会にどっぷりつかっており、女性の地位・権利について特別の考えも持っていませんが、そんな私でも世界の事例を見聞きすると、いろいろ考えてしまいます。

日本の女性に関する記事では、【朝日】の「孤族の国 女たち」が気になりました。
****単身女性、3人に1人が貧困 母子世帯は57%****
勤労世代(20~64歳)の単身で暮らす女性の3人に1人が「貧困」であることが、国立社会保障・人口問題研究所の分析でわかった。2030年には生涯未婚で過ごす女性が5人に1人になると見込まれ、貧困女性の増加に対応した安全網の整備が急がれる。(後略)【12月9日 朝日】
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