孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

アフガニスタン  続く女性権利抑圧 財政難のパキスタンとの関係 内戦時の英特殊部隊の蛮行

2022-07-17 21:59:18 | アフガン・パキスタン
(【7月12日 ヒューマン・ライツ・ウォッチ】 かつての女子中等教育 教育の機会を奪われた少女たちは今・・・)

【続く女性権利抑圧 未だ再開されない女子の中等教育 失われた女性の就業機会】
アフガニスタンのタリバン政権は「イスラム法に反しない範囲」で女性の権利を守ると約束しましたが、その「範囲」はタリバンの解釈次第。特に問題となっているのは、女性が教育を受けにくくなっていること。

一時閉鎖していた大学は再開しましたが、女性には様々な制約があり、共学だったカブール大はいま、男女別学になっています。男女で週3日ずつ通学日を分け、女性は男性講師の授業を原則受けられません。女性講師は圧倒的に少なく、実際問題として女子学生の教育は大きく制約されています。

また、ほとんどの地域で女子の中等教育が閉鎖されたままとなっています。
国際的な批判にもかかわらず、この状況は当分続きそうな状況です。

****女子通学、再開要請せず アフガン大会議が決議****
アフガニスタンのイスラム主義組織タリバン暫定政権がイスラム聖職者や部族長ら全国の指導者を集めた大会議は最終日の2日、国家運営に関する決議を取りまとめ閉幕した。

暫定政権に対し、3月に延期された日本の中学・高校に当たる中等教育の女子通学の全面再開を要請しなかった。女性に対する抑圧的な政策が当面続くことになりそうだ。

首都カブールで開かれた大会議は昨年8月の実権掌握後初めて。決議は暫定政権にイスラム法の範囲内で教育や女性の人権に特に留意するよう要請したが、会議には女性が招かれず、女子教育に関する国内外の要請を半ば無視した形で終了した。【7月2日 共同】
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下記のタリバン最高指導者が出席した会議というのも、上記大会議のことと思われます。

****タリバン最高指導者、カブールを初訪問 集会で演説****
イスラム主義勢力タリバンの最高指導者で、表に出ることの少ないハイバトゥラー・アクンザダ師が、アフガニスタンの首都カブールを初めて訪れた。タリバン当局が1日、明らかにした。
アクンザダ氏は、「国家の結束」を議論するために集められた宗教学者約3000人の大規模集会で、演説をしたとされる。

集会は厳しい警備態勢が敷かれ、タリバンと無関係のジャーナリストは取材を許されなかった。演説は音声が放送された。しかし、アクンザダ氏の映像や写真は公表されていない。音声からは、同氏の出席が発表された際に、大きな歓声が上がったことがわかる。(中略)

アクンザダ氏は演説で、タリバンが昨年、アフガニスタンを支配したことについて、「アフガニスタン人だけでなく、世界中のイスラム教徒にとって誇りの源」だと称賛した。

また、タリバンの女性に対する扱いに対して国際社会から批判が続いていることにも、言及したとみられる。タリバンは、女性に公共の場で顔をベールで覆うよう指示する規則を出すなどしている。

国営バフタル通信によると、アクンザダ氏は、「神のおかげでありがたいことに、私たちは今、独立した国家だ。(外国人は)私たちに命令すべきではない。私たちの制度で、私たちは自分で決める」と述べた。
「私たちは唯一の神に身をささげている。神が好まない他者の命令は受け入れられない」

この集会ではこれまでのところ、女子教育に関する目立った議論はなされていない。アフガニスタンではほとんどの地域で、女子の中等教育が閉鎖されたままとなっている。この集会は、女性の出席を認めていない。

別のタリバン幹部は先に、「女性は私たちの母や姉妹であり、私たちは大いに尊敬している。息子たちが集会に出席すれば、その母親や姉妹もある意味、集会に関わっていることになる」と述べた。

アフガニスタンで女性の権利のために活動する人たちは、怒りと落胆を表明している。
BBCアフガン・サービスが取材した男女たちは、今回の集会を、「(国民を)代表するものではない」と批判。タリバンが自らの支配の正当化を目指すものだとした。

南部ヘルマンド州出身の男性は、「国民の口をふさぐために集まったに過ぎない」とコメント。
カブール在住で、登校を禁じられているバランという名の若い女性は、「似たような考えをもつ人たちの集まりだった。私がそう言っているのではなく(中略)みんながそう思って言っている」と話した。
「女性として、とても残念だ。(タリバンは)私たちを人間として尊重しない」

アフガニスタンでは昨年、タリバンが権力を掌握。外国の開発援助はほぼ打ち切られ、一部の銀行は制裁を科されるなどし、経済と人道の深刻な危機が続いている。

国連や慈善団体を通じた短期的な人道支援は続いているが、アクンザダ氏は「外国資金」に依存すべきではないと主張。アフガニスタン出身の貿易商らに対し、帰国して経済を再建するよう呼びかけた。

集会の会場付近では6月30日、銃声が聞こえた。
タリバンは、武装勢力「イスラム国」と、前政権とつながりのある「抵抗」勢力によるゲリラ攻撃に直面している。
タリバン当局は、今回の銃声事件をささいな出来事だとした。だが、タリバンの治安部隊に殺害された武装集団とされる映像が出回っている。

1日には、アクンザダ氏の演説会場の近くで、何発かのロケット弾が発射されたと報じられた。死傷者は報告されていない。【7月2日 BBC】
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なお、大会議では、停止中の女子中等教育の全面再開を聖職者グループが支持し決議に盛り込む方針でしたが、採決直前に議長の反対で削除されたとの報道も。

****女子通学再開、直前に削除 アフガン大会議で議長反対****
アフガニスタンのイスラム主義組織タリバン暫定政権が首都カブールで開いた全国指導者会議で、停止中の女子中等教育の全面再開を聖職者グループが支持し決議に盛り込む方針を固めたのに、最終日の採決直前、議長の反対に遭い決議案から削除されていたことが15日までに分かった。複数の会議参加者が共同通信の取材に明らかにした。
 
欧米などはタリバンによる女性抑圧の象徴として女子教育の制限を厳しく非難、即時再開を求めている。議長は暫定政権が選任しており、国内外でさらに批判が強まりそうだ。【7月15日 共同】
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上記報道が事実とすれば、タリバン内部にも一定に女子教育再開を容認する考えが少なからず存在するようにも思えます。ただ、「イスラムの教えに反する。外国勢力の圧力に屈してはならない」という“タリバン的正論”を振りかざされると誰もものが言えないというのが、教条主義的体制では通常のことです。戦前日本の軍国主義体制も同様でしょう。

女子教育だけでなく、女性はかおを覆うことが求められる服装の問題、何よりも女性が働く機会が著しく狭められていることなど、女性に対する圧力が続いています。

****【アフガン】髪も抜け落ち… タリバン政権で失業 うつ病に苦しむ女性たち****
イスラム主義勢力タリバンの暫定政権発足後、たくさんの市民が仕事を失っています。特に生活においてさまざまな制限が課されている女性たちが、失業をきっかけにうつ病にかかってしまうケースが増えているといいます。(後略)【7月16日 日テレNEWS】
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【財政難のタリバン政権】
なお、日本メディアによると、昨年8月以降は財政難でタリバン戦闘員のほとんどが無給だとか。転職しようにも他に職はなく、多くは「国のためなら」と耐えているとも。食事はタリバン政権から提供されている模様。

あまり長期に維持できる状況でもないように思われます。やがてこうしたタリバン戦闘員の不満が噴き出す事態も想像されますが、その不満の矛先がどこに向けられるのかが問題のようにも。

【隣国パキスタンもIMF支援で綱渡り状態】
財政難のアフガニスタンということですが、タリバンを生み育てたとされる隣国パキスタンも多くの国同様に経済的苦境に喘いでいます。

****パキスタンの6月インフレ率、13年ぶりの伸び 補助金停止で燃料高****
パキスタンの統計局によると、6月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比21.3%上昇し、5月の13.8%から加速、過去13年で最大の伸びとなった。前月比では6.3%。

財政赤字抑制と国際通貨基金(IMF)の支援再開に向け、政府が燃料補助金を打ち切ったことから、燃料価格は5月末以降90%程度上昇している。

輸送価格は前年比62.2%上昇と最大の伸びとなった。CPI品目の3分の1程度を占める食品価格は25.9%上昇した。

パキスタンはここ数カ月間、高いインフレに悩まされている。カーン前首相は、経済への対応とインフレ率の上昇に対する不満が高まるなか、3月に燃料と電力への補助金を採用。しかし首相は4月に失職、新政権は補助金を廃止していた。

燃料価格はさらに引き上げられており、政府はIMFとの合意により財政赤字削減に向け一段と課税するとみられている。【7月4日 ロイター】
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燃料補助金を打ち切りもあって一応IMFからの追加融資は実務レベル合意しましたが、綱渡り状態にか変わりありません。

****パキスタン、IMFと実務レベルで合意-追加融資12億ドル供与で****
パキスタンは、国際通貨基金(IMF)と実務レベルでの合意に達した。IMFによる12億ドル(約1660億円)の追加融資供与やさらなる支援への道が開かれる重要な節目となりそうだ。

IMFは声明で、2023年6月末までの拡大信用供与措置(EFF)延長を検討する意向も表明。理事会の承認が得られれば、追加融資が可能となり、パキスタンへのEFF融資枠は総額で約70億ドルになるという。

IMFからの支援は、今後のデフォルト(債務不履行)の可能性回避と、他の国際機関や友好国からの追加支援に道を開くことにつながり得る。パキスタンは、外貨準備高が減少する中、今後1年以内に債務返済や輸入代金支払いで少なくとも410億ドルを必要としている。

事情に詳しい政府当局者1人によると、12億ドルの追加融資はIMFからの最終的な承認を経て8月に行われる見込みだ。【7月14日 Bloomberg】
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【パキスタン・アフガニスタンの石炭をめぐる攻防 「タリバンが自己主張を始めた」?】
その苦境のパキスタンが目をつけたのが、隣国アフガニスタンの安価な石炭。
タリバン支援で関係が深い両国ですから、話はスムーズにいくか・・・と思いきや、現実はそう容易ではないようです。

****タリバン、パキスタンの石炭輸入に反発 統治の正統誇示****
アフガニスタンを制圧したイスラム主義組織タリバンは、エネルギー不足の隣国パキスタンに対する石炭の輸出価格をこれまでの2倍以上に引き上げる方針を示した。

ロシアのウクライナ侵攻で化石燃料は世界で逼迫しており、資源高を利用して外貨獲得を目指す。保護を受けてきたパキスタンに強い姿勢をみせることで、アフガン統治の正統性を誇示する狙いもある。

パキスタンは発電用をはじめとする石炭の7割を南アフリカから輸入してきた。しかし、この数カ月間は石炭価格が高騰し、十分に調達できていない。エネルギー不足による停電で市民生活やビジネスが打撃を受けている。天候不順や洪水も起こり、パキスタンの状況は一段と悪化している。

パキスタンのシャリフ首相は6月、品質がよく南アフリカ産よりも安いアフガン産の石炭の輸入を承認した。外貨不足のため、パキスタン通貨建てが条件だ。「アフガン産の石炭を購入すれば、輸入にかかるコストを年22億ドル(約3000億円)以上、節約できる」と、パキスタンの国営ラジオは報じている。

パキスタンの意向に対し、アフガン側は石炭に30%の輸出関税を課し、価格はこれまでの1トン90ドルから同200ドルに引き上げると表明した。

取材に応じたアフガンの鉱業・石油省の報道官は「国際市場での石炭価格は1トンあたり約350ドルだ。アフガンは石炭の輸出に関税をかけ、国際相場(に近い価格)で販売して地下資源を活用する」と説明した。
報道官は、アフガン側が石炭輸出に関するいかなる合意にも署名していないと明かした。

パキスタンはこれまで、公にはタリバンの姿勢への反応を避けてきた。同国のイスマイル財務相は地元メディアに対し、パキスタンはアフガンからの石炭輸入に関心を持つが、それは手ごろな価格で購入できることが前提だと話している。

パキスタンはタリバンに影響力を行使してきたとみられている。タリバンが今回、パキスタンの窮状に手を差し伸べようとしない理由について、専門家には「タリバンが自己主張を始めた」との見方がある。

アフガンが拠点の政治アナリストは「割安なアフガン産の石炭をパキスタン通貨で購入するという同国首相の表明は、タリバンの指導部に対する(国内の)批判を招いた」と分析する。「タリバンは、パキスタンに反発することで、アフガン統治の正統性を確保し、自分たちがパキスタンの代理人だとの一般的な見方を払拭しようとしている」とも話す。【7月14日 日経】
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パキスタンとアフガニスタンの微妙な関係は4月18日ブログ“パキスタン アフガニスタンを空爆 TTPをめぐる微妙な関係”でも取り上げましたが、「タリバンが自己主張を始めた」のかどうか・・・・興味深いところではあります。

【アフガニスタン戦争中の英軍特殊空挺部隊の蛮行 戦場の狂気】
話は変わりますが、アフガニスタン関連で報じられた衝撃的な報道。衝撃的と言うより「やっぱりね・・・」と言うべきか。

****繰り返し違法殺人か=アフガンで英特殊部隊―BBC****
アフガニスタン戦争中の2010〜11年、現地に派遣された英軍特殊空挺(くうてい)部隊(SAS)が、拘束者や非武装の人々の違法な殺害を繰り返した疑いが浮上した。BBC放送が12日、入手した軍の内部資料を基に報じた。半年間の作戦活動中に54人を殺したとみられる部隊も存在するという。
 
BBCは数百ページに及ぶSASの作戦に関する資料を分析。南部ヘルマンド州では「殺すか捕まえるか」と称した奇襲作戦が繰り返され、隊員の証言によると、非武装とみられる拘束者を殺害したり「誰が一番多く殺せるか」競争したりした。現場にAK47自動小銃を置いて、武装した相手を殺したと釈明する工作も行われたという。
 
SAS首脳は「違法な殺人」の報告を受けながら、軍警察に連絡しなかった。極秘メモで、違法な殺人を行う「意図的な方針」があった可能性を指摘した高官もいた。

SAS本部に勤務経験のある高官はBBCに「一晩で殺された人数が多過ぎる。(資料にある)説明も意味を成さない。拘束された者が死ぬことはあってはならない」と批判し、「深い懸念」を表明した。【7月12日 BBC】 
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真偽をめぐり論争もある「百人斬り競争」を連想させるような記事ですが、話は英特殊部隊だけのものではないでしょう。一番多く存在していたのは米軍ですから・・・。

アフガニスタンに限らず戦場では同様の蛮行・狂気が繰り返されますが、いったんは追いやられたタリバンが復活したこと、タリバンが外国の要請を頑なに拒否することの背景には、こういう現地の人間の命をもてあそぶような現実があるのかも。上から目線で人権や民主主義を説教される筋合いはない・・・ということか。

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パキスタン  TTP無期限停戦 シャリフ首相のもとで対米関係改善? 課題は治安と財政・インフレ

2022-06-03 23:05:24 | アフガン・パキスタン
(パキスタン石油ディーラー協会(PPDA)は2021年11月24日、政府が毎月決めるガソリン公定価格では利益が少な過ぎるとして、加盟ガソリンスタンドの全国ストライキを25日から開始すると発表した。これにより、各地のガソリンスタンドは、一部の大手石油流通系スタンドを除いて休業することとなり、ガソリンを求める自動車やバイクで大変な混雑となった。【2021年11月26日 JETRO】)

【TTP 無期限停戦を発表】
パキスタン、アフガニスタンのタリバン、そしてパキスタン国内で反政府武装闘争を行うイスラム武装勢力「パキスタン・タリバン運動(TTP))」の三者の微妙な関係・・・タリバンを生み育てのはパキスタンの軍情報機関であるが最近は利害が衝突することも、タリバンとTTPは同じイスラム原理主義でつながっている、そのTTPとパキスタン軍は激しい敵対関係にある・・・などの関係については、4月18日ブログ“パキスタン アフガニスタンを空爆 TTPをめぐる微妙な関係”でも取り上げました。

そのなかで、タリバンが仲介してのパキスタンとTTPの停戦がなされたこと、しかしその後、停戦が終了したことにも触れましたが、5月に再びタリバン仲介で停戦が実現しています。

****武装勢力が一時停戦表明 パキスタン、タリバン仲介****
パキスタンのイスラム武装勢力「パキスタンのタリバン運動(TTP)」は18日、同国政府との今月30日までの一時停戦を表明した。TTPと関係が深い隣国アフガニスタンのイスラム主義組織タリバン暫定政権が仲介し、和平に向けて協議している。協議が進展するかは不透明。
 
タリバン暫定政権のムジャヒド報道官は、首都カブールでTTPとパキスタン政府の協議が行われたとツイートした。
 
双方は昨年11月にもタリバンの仲介で1カ月の停戦に合意したが、TTPが12月に停戦延長を拒否。戦闘が再燃した。パキスタン政府は今回の停戦について確認していない。【5月18日 共同】
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上記停戦は5月30日期限で成立しましたが、更にTTPは停戦を“無期限延長”すると発表しています。

****「無期限停戦」を宣言 パキスタンのタリバン****
パキスタンのイスラム武装勢力「パキスタン・タリバン運動(TTP)」は2日、アフガニスタンの首都カブールで行われていた和平交渉で「実質的進展」があったとして、パキスタン政府との無期限停戦を宣言した。これまでの停戦合意は5月30日までだった。【6月3日 時事】
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パキスタンでは3~4月に政変が起き、司法を巻き込んだ政治的混乱のなかでカーン前首相が退陣し、ナワズ・シャリフ元首相の弟であるシャバズ・シャリフ氏が首相に選出されています。背景にはカーン前首相とパキスタン政治を左右する軍部との関係が悪化したことが指摘もされています。

****パキスタンで巻き起こる政治的・憲法的危機****
パキスタンは、政治的・憲法的危機に陥っていた。

3月8日、野党がイムラン・カーン首相(当時)に対する不信任動議を提出し、その後の多数派工作により動議可決に必要な過半数の172票を確保したと見られるに至ったが、4月3日、不信任動議で解任されることを嫌うカーンが(過去に任期を全うした首相はいないが、不信任動議で解任された首相もいない)、不信任動議は外国政府の介入によるものだとして動議を却下させ、次いで下院を解散させて選挙に持ち込むことになった。

ところが、4月7日、パキスタンの最高裁判所は5人の裁判官の一致した判断として、カーンに対する不信任投票の却下、下院の解散、および選挙の実施は憲法違反との判決を言い渡した。

これを受けて、下院は――14時間におよぶカーンの党の妨害行動の後――10日の未明に過半数を超える174票をもって不信任案を可決した。
 
次いで、翌11日、カーンの党が退席した下院で、最大野党「パキスタン・ムスリム連盟ナワズ・シャリフ派(PML-N)」のシャバズ・シャリフが首相に選出された。

彼は、かつて3度もパキスタンの首相を務めたナワズ・シャリフの弟である。第二野党「パキスタン人民党(PPP)」のビラワル・ブットー・ザルダリ(元首相ベナジール・ブットーの子息)も当面シャバズ・シャリフに協力する意向のようである。(中略)【4月28日 WEDGE】
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「パキスタン人民党(PPP)」や爆死したブット元首相の名前を久しぶりに目にしましたが、息子が政界で活動しているようです。

【シャリフ新首相 中国との「中国・パキスタン経済回廊」を再生させながら、アメリカとも関係改善を目指す】
カーン前首相がアメリカへの批判的な発言が目立ったのに対し、シャリフ首相は良好な対米関係を築く意向を示しています。同時に、兄のナワズ・シャリフ元首相が始めた中国支援による「中国・パキスタン経済回廊」を推進するのではとも指摘されています。

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70歳のシャバズ・シャリフにカリスマ性はないが、有能な行政官との評はあるようである。軍との関係も悪くない。

彼にとっての緊急の課題は経済の立て直しである。国際通貨基金(IMF)支援プログラムに基づく援助は、カーンが2月にIMFとの事前の了解のないまま燃料と電気の補助金を導入したことで停止されているが、この支援プログラム再生のための交渉も当面の課題である。

中国・パキスタン経済回廊の復活か
中国は今回の成り行きを歓迎しているに違いない。シャバズ・シャリフは「中国・パキスタン経済回廊」を再生させると述べているが――管理の不手際か、それともパキスタンが巨額の債務に怖気づいたのか明らかでないが、カーンの時代に幾つかのプロジェクトが停滞した――このプロジェクトはナワズ・シャリフが首相の時代に始まったものである。
 
ジャバズ・シャリフは、米国との関係を修復すると述べた。少なくともカーン流の過激な反米レトリック(例えば、タリバンがカブールを制圧して米国が支援する政権を倒した日の翌日、カーンは「(アフガン国民は)奴隷の鎖を断ち切った」と述べたことがある)は影を潜めるであろう。しかし、それだけでカーンとの会談を拒んでいたバイデンがシャバズ・シャリフと電話で会談する気になるかは疑わしい。【同上】
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【ウクライナ問題でロシア寄りの前政権からの方針転換】
アメリカとの関係改善はまだよくわかりませんが、ウクライナ支援で前政権とは異なる独自路線を打ち出しています。

****パキスタン新政権 ウクライナに支援物資 前政権との違い鮮明に****
パキスタンで2日、ウクライナに送る人道支援物資の引き渡し式が行われました。前政権がロシア寄りの姿勢を示してきたのに対し、ことし4月に誕生したシャリフ政権は、ウクライナを支援する姿勢を打ち出し、前政権とは違う立場を鮮明にしています。引き渡し式は、パキスタンの首都イスラマバードの近郊ラワルピンディの空軍基地で行われました。

毛布や医薬品などの人道支援物資7.5トンを輸送機に積んで、3日、ウクライナの隣国ポーランドに向けて出発するということです。(中略)

パキスタンはこれまで、カーン前首相がロシアの軍事侵攻直後の2月24日にモスクワでプーチン大統領と会談したほか、3月に開かれた国連総会の緊急特別会合ではロシアを非難する決議案の採決を棄権するなど、ロシア寄りの姿勢を示してきました。

一方、ことし4月に誕生したシャリフ政権は、ウクライナを支援する姿勢を打ち出し、前政権とは違う立場を鮮明にしています。【6月3日 NHK】
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パキスタンは中国との関係が強固なことは周知のところですが、その中国がロシア寄り姿勢を維持しているなかでのパキスタン・シャリフ政権のウクライナ支援はやや意外な感じも受けました。

【国内で続く中国を標的にしたテロ】
その中国に関しては、中国の存在感がパキスタン国内で目立つだけに、反政府活動の標的にもなっています。
(パキスタンにおける中国の存在感を個人的に実感したのは、3年前、北部のフンザに向かうためにカラコルムハイウェイを走っていると、工事区間で中国語の道路標識を目にしたとき。中国企業が工事を行っており、中国人・中国車両が行き来しているためです。)

****パキスタンの中国語教育機関で自爆テロ 4人死亡****
パキスタン南部で26日、中国政府が設置した教育機関の近くで爆発があり、中国人職員3人を含む4人が死亡しました。過激派組織が犯行声明を出しています。

ロイター通信によりますと、南部の最大都市・カラチで26日、大学内に設置された中国語の教育機関「孔子学院」の近くで車両が爆発し、中国人職員3人を含む4人が死亡したということです。

その後、パキスタンの過激派組織「バルチスタン解放軍」が、自爆テロを行ったと犯行声明を出しました。

現地の中国大使館は声明で、「テロ行為を強く非難し、両国の犠牲者に深い哀悼の意を表す」とした上で、パキスタン側には「徹底した調査を行い、犯人を厳罰に処すよう要請した」としています。

中国との結びつきを強めるパキスタンには多くの中国企業も進出していますが、現地の中国人を標的にしたとみられるテロ事件も相次いでいて、中国政府と現地の治安当局が警戒を強めています。【4月27日 日テレNEWS24】
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この事件を受けて、シャリフ首相は弔意を示すメッセージを出し、自ら中国大使館を訪れて追悼の意を表明しました。

シャリフ首相は「パキスタンと中国の戦略的協力パートナーシップに損害を与えようとする敵の邪悪なたくらみは、両国の、鋼のように硬い、兄弟のような関係が揺らぐことはなく、両国の協力関係にも影響を及ぼすことはない」と語っています。【4月27日 レコードチャイナより】
その後も、中国を狙った不穏な動きもあるようです。

****パキスタンのテロ対策部門、中国車列を狙う自爆攻撃を試みた女性を逮捕****
パキスタンARYニュースによりますと、パキスタンのテロ対策部門は16日、バルチスタン州のホシャブ地区を急襲し、中国・パキスタン経済回廊沿いの中国車列を狙った自爆攻撃を試みた女性を逮捕し、爆発装置を発見したとのことです。

パキスタンのテロ対策部門は、「この女性は『バルチスタン解放軍』グループのメンバーで、4月26日に発生したカラチ孔子学院の自爆テロ事件の犯人と同じグループに所属していた」と発表しました。

現在、パキスタンはこのようなテロ攻撃に関与する組織のメンバー逮捕を目的とした捜査活動を展開しています。【5月17日 レコードチャイナ】
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TTPとの停戦が本格化すれば、「バルチスタン解放軍」対策も強化される・・・ということになるのかも。

【難題は財政再建・インフレ抑制 IMF支援とはいうものの】
シャリフ首相にとって治安対策以上の難題は経済・財政の立て直しです。

****南アジアで政情不安 財政難、ウクライナ侵攻で物価高****
(中略)
カーン氏は2018年に首相に就任したが、もともと不安定だった経済は好転せず、野党側が批判を強めていた。物価上昇も続き、3月の消費者物価指数は前年同期比で12・7%上昇した。ロイター通信によると、外貨準備は1日時点で113億ドルと1カ月で約50億ドル減少した。
ロシアのウクライナ侵攻の影響で、原油や食料の国際相場は高値水準が続いている。(後略)【4月13日 産経】
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2019年に決定したIMFからの支援も、一時停滞していましたが、動き出したようです。

****IMF、パキスタンの燃料補助金廃止後に9億ドル支援へ=関係筋****
パキスタンと国際通貨基金(IMF)の支援再開を巡る協議が25日終了し、パキスタンの燃料補助金廃止を条件にIMFから9億ドル超の財政支援を受けるという枠組みで合意した。

カタールの首都ドーハでの協議について直接知るパキスタン関係筋が匿名を条件にロイターに明らかにした。パキスタンのIMF代表はロイターのコメント要請に応じていない。

パキスタンは2019年、IMFから3年にわたり総額60億ドルの財政支援を受けることが決まったが、支援金の約半分をまだ受け取っていない。【5月26日 ロイター】
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パキスタンの実情は知りませんが、一般論で言えば“燃料補助金廃止”というのは市民生活を直撃するだけに大問題になります。国民の不満で政情不安に陥ることも。

公共交通機関の発達していないパキスタンでは、バイクは庶民の足で、ガソリンの高騰はその庶民の懐を直撃します。

シャリフ首相の試練はしばらく続きそうです。
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アフガニスタン  独自の思考を市民に強制するタリバン 女性には顔を隠す服装命令

2022-05-27 23:18:11 | アフガン・パキスタン
(【2019年9月14日 GNV】 タリバンが推奨するブルカ姿の女性 これでは誰が誰かもわかりません。
なお、この写真はタリバン再支配以前の2019年当時のもので、女性が示す指先のインクは投票済みの印。今後はタリバン支配のもとで選挙も行われなくなり、こういう光景も見ることもなくなるのでしょう)

【日本の憂うべき「マスク依存症」】
落ち着く傾向の新型コロナ感染状況、あるいは、感染被害を一定に抑制できる状況になってきたことを受けて海外では各種規制の撤廃、“普通の生活”への回帰が進んでいますが、日本でも5月20日、厚生労働省は新型コロナウイルス対策のマスク着用について、人との距離が2メートル以上あれば、屋内でも屋外でも、多くの場合はマスクを外せるとする基準を公表しました。

欧米ではマスクで顔を隠すことへの違和感が強く、コロナ禍の間もマスク着用義務をめぐる議論・抗議が多くありましたが、日本人はマスクへの抵抗感があまりなく、むしろ顔を隠せることで安心感が得られ、マスク着用が必要になってもマスクを外せない「マスク依存症」的な傾向があるようです。

****マスクなしの素顔が恥ずかしい? 長引くコロナ、子どもに「依存」広がる懸念 専門家「発育妨げる」弊害訴え****
長期の新型コロナウイルス流行でマスク着用が常態化し、素顔を見せることを恥ずかしがる子どもが増えている。専門家は「コミュニケーションの発達や不登校に影響しかねない」と懸念し、子どものマスク着用の弊害を訴える。

◆オンライン授業なのにマスク着用
3月、東京都内の母親(29)は自宅でオンライン授業を受ける小学4年の娘(10)を見て不思議に思った。自宅ではふだんマスクを外し、以前はオンライン授業も素顔で参加していたが、この時はマスクを着けていた。理由を聞くと「みんな着けているから何となく」。画面の子どもの半数がマスク姿だった。
 
母親は「外でマスクを外していいと伝えた時も娘は恥ずかしがった。以前より素顔をさらすのが不安になっている」と心配する。
 
調査会社「日本インフォメーション」が2月、10~60代の会員約1000人を対象にインターネット調査を実施したところ、「コロナ収束後もマスクを使用するか」との質問に対し、10代は男女ともに約5割が「いつも必ず使用」か「できるだけ使用」と答えた。
 
理由は、10代女性では「かわいい、きれい、かっこよく見える」が最も多く、感染対策と関係がなかった。実際、東京・原宿で尋ねると、女子高校生(17)は「素顔を見せられるクラスメートは5人くらい。今さら外せない」と苦笑した。

◆「マスク依存」はコロナ前からある
「マスク依存の子どもが増えている可能性がある」と警告するのは、赤坂診療所(東京都港区)でマスク依存の患者を診てきた精神科医の渡辺登さんだ。従来のマスク依存について「人前に立つことを極度におそれる『社会不安障害』のある方らが、表情を隠すために着用していた」と説明する。依存に陥ると意思疎通が難しく、孤立して不登校や引きこもりになるリスクが増えるという。
 
広島県の男子大学院生(23)はコロナ禍前にマスク依存を経験した。「高校入学時に花粉症対策で着用したら、表情を隠せる安心感で外せなくなった」と振り返る。「コミュニケーションに困る」と悩んだ末、大学進学を機に自力で脱却した。国民のほとんどがマスク姿の現状には「望まずに依存する人が増えないでほしい」と願う。
 
渡辺さんは「子どもは顔にコンプレックスを抱えている場合も多い。感染対策のはずが、素顔を隠すことに利点を持つと、将来マスクを外せなくなりかねない」と強調。「感染リスクがない時はできるだけ外させた方がいい」と指摘した上で、「着用をやめるタイミングを政府が示してほしい」と求める。【5月10日 東京】
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他人の視線を遮断できて安心感が得られる「匿名性」への依存は、子供や女子学生、若者だけでなく会社でも「プレゼンテーションをする際に、マスクを装着していると視線が気にならずに落ち着く」 「苦手な上司と仕事をする時も、マスク越しであれば気持ちが楽になる」などの理由で広がっているようです。

前出【東京】にもあるように、「マスク依存症」的傾向は新型コロナ以前からあり、特に若い女性に“マスク女子”が目立っていました。

話は飛躍するようですが、欧米社会でイスラム教徒女性の顔を覆う服装が問題になる件を取り上げる際に、「匿名性」に隠れず、個人が面と向き合って接触するのが市民社会におけるコミュニケーションの基礎であり、日本の「マスク女子」の傾向は好ましくない風潮だと思っている旨をこれまでも述べてきました。

新型コロナによって、日本人のこの風潮が拡大し強固になったようで案じられます。

「マスク依存症」は市民社会のコミュニケーションを阻害するだけでなく、こういう他人の評価を恐れる「内向きベクトル」は、これまた話が飛躍しますが、日本の「失われた30年」をもたらしたものにも通じるもので、おそらく今後の「失われた数十年」、「沈下する日本」をもたらすメンタリティーだと思っています。

そんなにマスクが好きなら、イスラム教に改宗してニカブかブルカでも被れば?」と言いたくもなりますが・・・。

【タリバン 女性に顔を隠す服装命令 欧米は批判】
そんな日本の話はさておき、イスラム原理主義勢力タリバンが統治するアフガニスタンでは、タリバンがその本来の主張を徐々に露わにしつつあります。

****アフガンのタリバン、女性に顔を隠す服装命令 全身覆うブルカが「最善」****
アフガニスタンのイスラム主義組織タリバン暫定政権の勧善懲悪省は7日、女性が公共の場で、目の部分以外の顔を布で覆わなければならないとの命令を発表した。従わなければ父親などの近親男性が投獄されたり、男性が公務員であれば解職されたりする場合があるとしている。

同省は、最も良いのは全身を覆う青い「ブルカ」だとした。アフガンの女性の大半は髪を隠すスカーフをつけているが、首都カブールなどの都市部では顔は隠していない女性が多い。

公共の場でのブルカの着用はタリバンが1996年から2001年まで政権を掌握した際に女性に強制された。

発表を受けて国連アフガニスタン支援団(UNAMA)は同日、「タリバンが表明してきた女性の人権の尊重と保護と矛盾していることを深く懸念している」との声明を出し、タリバンに即刻協議を求めるほか、他の国際組織と相談するとした。

米国などは既にアフガン開発援助を打ち切り、同国の銀行システムに制裁を科している。【5月9日 ロイター】
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日本の女性(一部男性も)なんかは、こうしたタリバン命令を大歓迎するのでしょうが、欧米基準では女性の人権の尊重に反するものとみなされます。

****米、タリバンが方針転換しなければ圧力拡大 女性の権利巡り****
米国務省のプライス報道官は9日、アフガニスタンのイスラム主義組織タリバン暫定政権が最近決定した女性の権利を制限する方針を転換しなければ、圧力を強める用意があると表明した。

ブリーフィングで「われわれには複数の手段があり、方針が転換されないと感じれば、講じる用意がある」と述べた。具体的な措置の詳細や、タリバンがどのように方針を転換する可能性があるのかには言及しなかった。(中略)

タリバンは女性の就労や女子の通学なども制限している。【5月10日 ロイター】
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****タリバンの女性の権利制限でアフガン孤立化、G7外相が人権尊重訴え**** 
主要7カ国(G7)の外相は12日、アフガニスタンのイスラム主義組織タリバン暫定政権による女性や少女の権利の制限がアフガンを国際社会から孤立化させているという見解を示した。

G7外相と欧州連合(EU)の外交政策トップは、フランスが公表した共同声明で、女性と少女に対する制限を解除し、人権尊重に向けた緊急行動を取るようタリバンに要請した。

タリバン暫定政権の勧善懲悪省は7日、女性が公共の場で、目の部分以外の顔を布で覆わなければならないとの命令を発表。従わなければ父親などの近親男性が投獄される場合があるとした。【5月13日 ロイター】
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【TV女性司会者に対しても同様指示】
一部女性は街で抗議の声をあげています。(タリバン支配の状況でのこの種の抗議は多大な危険を伴います)

****全身覆う衣装着用に抗議=アフガン女性「正義を」と訴え****
アフガニスタンの首都カブールで10日、イスラム主義組織タリバン暫定政権が女性に公共の場で全身を覆う衣装の着用を義務付けたことに対し、十数人の女性が抗議活動を行った。多くが顔を隠さずに、「正義を」とシュプレヒコールを上げた。
 
タリバンは全身を覆うブルカの着用が最適としているが、女性らは「ブルカは私たちのヒジャブ(頭部を覆うスカーフ)ではない」と叫んだ。

女性の一人は「私たちは家の片隅に閉じ込められた動物としてではなく、人間として生きたい」と訴えた。タリバンは外に重要な仕事のない女性に「家にいるよう」命じている。【5月10日 時事】 
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ブルカの問題は単に服装の問題ではなく、女性の就労・教育を否定して「家にいるよう」命じるようなタリバンの歪んだ女性観を示すものでもあります。

更にタリバンは、テレビ局に対し、女性プレゼンターが放送中に顔を覆うことを徹底するよう求めています。

****アフガンのタリバン、女性TV司会者に顔を覆う服装指示****
アフガニスタンのイスラム主義組織タリバン暫定政権は、テレビ局に対し、女性プレゼンターが放送中に顔を覆うことを徹底するよう求めた。勧善懲悪省の報道官が19日明らかにした。

同省は今月、女性が公共の場で目の部分以外の顔を布で覆わなければならないとの命令を発表した。

報道官は、メディア関係者が政権の「助言」を快く受け入れたとロイターに述べ、国民もこの措置を歓迎するとの見方を示した。今月21日までに順守する必要があるとも述べた。

従わなかった場合の措置は明らかにしなかった。【5月20日 ロイター】
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“メディア関係者が政権の「助言」を快く受け入れた”とのことですが、この指示に抵抗する女性司会者も。

****女性司会者、顔覆う命令を拒否 タリバンに「抵抗続ける」*****
アフガニスタンのテレビ局「カブール・ニュース」の報道番組の女性司会者が出演中に目の部分以外の顔を布で覆うよう命じたイスラム主義組織タリバン暫定政権に抵抗し、覆わずにニュースを伝え続けている。タリバン独自のイスラム法解釈で女性抑圧を強めていると批判、「カメラの前で闘い続ける」と語る。
 
この司会者はロマ・アディルさん(26)。暫定政権は7日、女性は公共の場で顔を覆うよう命令した。19日には各テレビ局へ女性司会者に従わせるよう指導したが、アディルさんは取材に「イスラムの教えやアフガンの慣習ではなく、従う理由がない」と指摘した。【5月24日 共同】
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アディルさんは放送中も髪を覆うスカーフは使用しています。

私が観光した国の経験で言えば、同じイスラム教の国であるインドネシアやマレーシアでは、あるいはイランでも、髪を覆うスカーフは一般的ですが、それ以上のニカブ(目だけを出すもの)を見かけるのはまれで、ブルカ(目の部分が網目になっており、顔全体を隠すもの)を見かけることはありません。ブルカはアフガニスタン特有の服装です。

ただ、現実問題としては、こうした抵抗を続けるのは困難でしょう。その後多くの女性司会者はヒジャブやベールで目の周囲以外を覆った姿で出演しているようです。

そうしたなか、タリバン指示に抗議する男性司会者もいるようです。

****女性キャスターの顔覆うよう命じたタリバンに抗議、男性司会者がマスク着用****
アフガニスタンの報道専門チャンネル「トロニュース」の総合司会者、ニサール・ナビル氏は、放送が始まる直前に黒いマスクを着用する。イスラム主義組織タリバンの暫定政権が、女性キャスターにテレビ出演の際は顔を覆うよう命じたことへの抗議だ。

「私たちは女性の同僚を支持している。生放送のニュースや政治番組では、抗議としてマスクをしている」とナビル氏は、首都カブールにあるスタジオでAFPに語った。
 
タリバンは昨年8月の実権掌握以来、さまざまな女性の権利を制限してきた。最高指導者ハイバトゥラ・アクンザダ師は今月、女性に公共の場では顔まで完全に覆うよう義務付け、ブルカの着用が望ましいとした。
勧善懲悪省は、女性キャスターも21日以降は番組出演の際に顔を隠すよう命じた。
 
女性キャスターらは当初この命令に反発したが、22日からはトロニュースのほか、1TV、シャムシャドテレビ、アリアナ・テレビなど各局で、ヒジャブやベールで目の周囲以外を覆った姿で出演している。
 
一方、男性キャスターは命令への抗議運動を開始。黒いマスクを着用してニュース番組に出演するようになった。女性キャスターと共演することもある。
「タリバンは、こうした制限を課すことで報道機関に圧力をかけようとしている。メディアを意のままに操りたいのだ」とナビル氏は指摘する。
 
主要民放局である1TVの編集責任者、イドリース・ファロキ氏は、女性キャスターが顔を覆ったまま3時間も4時間も収録を行うのは難しいとして、「われわれはタリバンが決定を見直し、制限を撤回することを望んでいる」と述べた。
 
だが、タリバンのイナムラ・サマンガニ副報道官は今週、ツイッターへの投稿で、「ネクタイ着用の義務付けが礼儀にかなっているというなら、なぜヒジャブはだめなのか」と主張した。
 
1TVのキャスター、モヒブ・ユースフィ氏は、当局が男性キャスターの服装にも規制をかけるのは時間の問題だとし、「多くの男性キャスターが心配している。私もだ」と述べた。 【5月26日 AFP】
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「ネクタイ着用の義務付けが礼儀にかなっているというなら、なぜヒジャブはだめなのか」とのことですが、タリバンのブルカへのこだわりが単なる服装の問題ではないことは前述のとおりです。

【次第に広がるタリバン的施策】
そうしたタリバンの思考を表す動きも広がっています。

****タリバン、男女一緒の外食・公園利用禁止 西部ヘラート****
アフガニスタンのイスラム主義組織タリバンは西部ヘラートで、男女が一緒に外食したり公園を訪れたりすることを禁止した。当局者が12日、明らかにした。
 
アフガンは極めて保守的で家父長制の根強い国だが、男女が一緒に外食をする光景はよく見られる。特にヘラートは長年、比較的リベラルな都市と考えられていた。
 
だがタリバンは昨年8月の復権以来、イスラム教の厳格な解釈に従って、男女を隔離する規制を強めている。
 
ヘラート勧善懲悪省のリアズーラ・シーラット氏は「飲食店で男女を分けるよう指示している」と語った。この規則は「たとえ夫婦でも」適用される旨を店主らに口頭で伝えているという。
 
匿名でAFPの取材に応じたある女性は、11日にヘラートの飲食店で店長から夫と別々に座るよう告げられたと語った。
 
飲食店経営のサフィウラ氏(アフガンに多い1語のみの名前)は「命令には従わなければならないが、商売には非常にマイナスだ」と言い、男女同席の禁止が続けば従業員を解雇せざるを得なくなると付け加えた。
 
シーラット氏は、ヘラートでは公園の利用についても、曜日ごとに男女別に分ける法令を定めたと明らかにした。女性は木曜、金曜、土曜で、残りが男性だという。
 
指定の曜日以外に運動をしたい女性は「安全な場所を見つけるか、自宅で行うべき」だと語った。 【5月14日 AFP】
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****タリバン、人権委を廃止 「必要ない」、懸念深まる****
アフガニスタンのイスラム主義組織タリバン暫定政権は、昨年8月に崩壊した民主政権下で女性や子どもの権利擁護を監視していた独立人権委員会を廃止した。ロイター通信が17日までに伝えた。暫定政権は女性の権利抑圧を強めており、国際社会の懸念を一層深めそうだ。
 
暫定政権のサマンガニ副報道官は「必要性がないとみなされ、予算も計上されなかったため廃止した」と説明。必要とされれば再開するとした。
 
民主政権下の2020年に設立され、タリバンとの直接交渉に当たった国家和解高等評議会や、憲法の履行状況を監督する委員会も同様の理由で廃止された。【5月17日 共同】
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【危機的食料事情】
アフガニスタンは世界でも最悪レベルの食料事情で、本来は大規模な国際支援が必要ですが、タリバンの人権侵害を強める姿勢が障害となって国際支援も滞りがちです。

****アフガン、食料危機続く WFP「かつてない飢餓」****
世界食糧計画(WFP)などは10日までに、イスラム主義組織タリバンが暫定政権を樹立したアフガニスタンで6月から11月にかけ、人口の45%に当たる1890万人が深刻な食料危機に陥るとの予測を発表した。

小麦の収穫期を迎え3〜5月の1970万人と比べ若干改善するが、「かつてない水準の飢餓が継続する」とみている。
 
アフガンでは5〜8月に小麦の収穫期を迎え、人道支援の拡大も状況改善に寄与した。ただ、降水量の少なさから収穫量は平年を下回る見込み。ロシアによるウクライナ侵攻で国際的な食料や燃料価格も高騰。状況改善の妨げとなった。【5月10日 共同】
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パキスタン  アフガニスタンを空爆 TTPをめぐる微妙な関係

2022-04-18 23:17:16 | アフガン・パキスタン
(パキスタンとアフガニスタンの国境地帯で警備に当たるパキスタン兵士(2021年9月、ロイター)【4月17日 日経】)

【パキスタン TTP掃討でアフガニスタンを爆撃 微妙な両国関係】
後にアフガニスタンのタリバンとなった旧ソ連軍と戦うムジャヒディン(イスラム戦士)を訓練し、その後もタリバンを資金・武器・退避場所などで支援してきたのが隣国パキスタン、特に軍部の中枢にある「軍統合情報局(ISI)」であることは周知の事実です。

現在もパキスタンはアフガニスタン・タリバン政権を支援していますが、両者の関係は後述のように微妙なところもあります。

その“微妙”な部分の大きな原因が、パキスタン国内で反政府テロ活動を行うイスラム武装勢力「パキスタン・タリバン運動(TTP)」の存在。2012年には女子教育の重要性を訴えたマララ・ユスフザイさんを銃撃した組織です。

パキスタン軍はこれまでも長年厳しい掃討作戦を続けていますが、TTPはアフガニスタンのタリバンと思想的にも、組織的にも近しい関係にあります。

TTPのメディア部門であるウマル・メディアは、2021年12月8日に新しいビデオを公開しました。
その映像によれば“(TTP)最高指導者のヌール・ワリ・メスードはTTPをターリバーンの支部であると明言した。また、アフガニスタン軍やアフガニスタン警察の車両を保有している事が確認され、TTPがターリバーンの恩恵を受けている事が明らかになった”【ウィキペディア】とのこと。

TTPのメンバーの多くはパキスタン軍の取り締まりを逃れるため、アフガニスタンとの国境地帯のアフガニスタン側に潜伏しているとされています。

****パキスタン軍がアフガン空爆、女性・子供含む47人死亡…越境テロ巡りタリバンと対立****
AFP通信などによると、パキスタン軍が16日、隣国アフガニスタン領内の国境付近を空爆し、女性や子供を含む少なくとも47人が死亡した。アフガン内に潜伏して越境テロを行う過激派組織を狙ったとみられる。

国内の実権を握るイスラム主義勢力タリバン暫定政権は反発し、緊張が高まっている。
 
空爆はアフガン東部のホスト、クナール両州で行われ、複数の民家が被害を受けた模様だ。タリバン側は、パキスタンの駐アフガン大使を呼び出し、抗議した。ザビフラ・ムジャヒド報道官も「戦争が始まっても、誰の利益にもならないと認識すべきだ」と批判した。
 
アフガンメディアによると、ホスト州などで住民らが大規模な抗議を行った。
 
これに対し、パキスタン外務省は17日に声明を発表し、空爆については触れずに「この数日、パキスタンの治安当局が国境付近でアフガン側から標的にされる事案が増えていた」と主張した。14日には軍兵士7人が犠牲になったという。
 
パキスタンでは、タリバンを支持するイスラム武装勢力「パキスタン・タリバン運動(TTP)」が昨年12月に政府との停戦を解消して以降、治安当局への攻撃を繰り返している。政府はTTPを含めた過激派組織がアフガン側に潜み、テロを行っているとして、タリバン側に対応を要求していた。国際社会も、アフガンが再び国際テロの温床になることを懸念している。【4月18日 読売】
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タリバンとパキスタン軍の“衝突”は今年1月にも報じられています。

****タリバンとパキスタンがまさかの「仲間割れ」、現地の勢力図に大きな変化が****
<パキスタンが設置していた国境の「柵」をめぐり、両軍兵が衝突。互いを必要とするはずの両者は妥協点を見いだせるか>

昨年8月、タリバンがアフガニスタンの首都カブールを制圧すると、隣国パキスタンでは歓喜の声が上がった。なにしろタリバン運動の発祥地だし、アフガニスタンに友好的な政府ができるのは大歓迎。一貫して親米政権を支持してきた天敵インドの影響力低下も必至だ。

しかし、そんな蜜月の終わる兆しが見えてきた。両国の国境、いわゆる「デュアランド線」での不穏な動きだ。
昨年12月19日にはアフガニスタン東部の国境地帯で、パキスタン側の設置した有刺鉄線のフェンスをタリバン兵が実力で撤去した。

年末の30日にも似たような摩擦が南西部であった。フェンスの設置は2014年から、国境紛争と密輸を防ぐためと称してパキスタン側が進めていた。

この2回目の摩擦を受けてタリバン政権は強く反発。国防省の広報官は年頭の1月2日に、パキスタン側には「有刺鉄線で部族を分断する権利はない」と主張した。ここで言う「部族」は、国境の両側で暮らすパシュトゥン人(アフガニスタンでは多数派だ)を指す。別のタリバン広報官は、「デュアランド線は一つの民族を引き裂く」ものだとし、その正当性を否定した。

この国境線は1893年に英領インドとアフガニスタンの合意で成立した。だが1947年にパキスタンが独立して以来、歴代アフガニスタン政権はデュアランド線に異議を唱え続けてきた。

自分たちはパキスタンの代理勢力ではない
ただ、タリバン側の動きには他の思惑もありそうだ。自分たちはパキスタンの代理勢力ではないと、対外的に主張したいのかもしれない。多数派のパシュトゥン人にすり寄るためという見方もできる。

フェンスの存在が国境を越えた人流・物流の妨げになるという現実的な問題もある。タリバン構成員には今も、パキスタン側に家族を残している者が少なからずいる。

年明け早々、パキスタンとタリバンは交渉を通じて国境間の緊張を解くことで合意した。だが容易ではない。パキスタンの外相も「外交的に解決できると信じたい」と、心もとない発言をしている。

消息筋によれば、パキスタン政府はフェンス設置へのタリバンの理解を得つつ、越境往来を増やせるような譲歩をするつもりだという。だが、その程度でタリバンの不満は収まるまい。

それでもパキスタンに対するタリバンの経済的・外交的依存の大きさを考えれば、彼らもこれ以上の関係悪化は避けたいだろう。

パキスタン側にも、早期の事態収拾を図りたい事情がある。タリバンとの緊張が高まれば、最近パキスタン国内でテロ活動を活発化させているテロ組織パキスタン・タリバン運動(TTP)への対処が難しくなるからだ。

タリバンの仲介で、アフガニスタンを拠点とするTTPとパキスタンは昨年11月に停戦1カ月の休戦協定を結んだが、TTPはその延長を拒んでいる。交渉再開にはタリバンの協力が不可欠だ。ただしタリバンも、TTPには強く出られない。国内のTTP基地へのパキスタン軍の攻撃を黙認するという選択肢もない。

パキスタンとタリバンの関係は持ちつ持たれつだ。しかし今のタリバンは、かつてのようにパキスタンの言いなりではない。【1月13日 Newsweek】
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上記記事にタリバンには“(アフガニスタン)国内のTTP基地へのパキスタン軍の攻撃を黙認するという選択肢もない”とありますが、今回その攻撃が行われたことで、タリバンとしては“主権の侵害”とパキスタンに反発しています。

もっともタリバン中枢とパキスタン情報機関ISIはズブズブの関係でしょうから、表面上のやり取りとは違う話が水面下にあることは十分想像できます。

【昨年末 タリバン仲介のパキスタン・TTP停戦は続かず】
なお、タリバンにとっても“身内”あるいは“仲間”のTTPとパキスタン軍の戦闘状態は何かと不都合がありますので、上記記事にもあるように、昨年11月にはタリバンの仲介でTTPとパキスタンの停戦が合意されました。
TTP及びISI双方に近いとされるタリバンのシラジュディン・ハッカーニ暫定内相が中心的役割を果たしたとのこと。

“パキスタン政府、武装勢力と1カ月停戦で合意 タリバンが交渉仲介”【2021年11月9日 毎日】

“タリバンにとっては、TTPとの交渉を仲介することで、事実上の「支援国」であるパキスタンの要請に応えられるほか、国際社会に対してもテロ対策に取り組んでいることをアピールすることができる。”【同上】との思惑が指摘されています。また、下記記事によればタリバンにとってテロを繰り返すTTPは“重荷”になっていたとも。

しかし、結局この停戦は延長されませんでした。

****TTP、パキスタン政府との一時停戦終了を表明 タリバンが仲介****
パキスタンの反政府武装勢力「パキスタン・タリバン運動」(TTP)は9日の声明で、パキスタン政府との間で11月から1カ月間実施していた一時的な停戦を終了することを明らかにした。一時停戦は、TTPと友好関係にあり、パキスタンの軍情報機関とも近いとされるアフガニスタンのイスラム主義組織タリバンが仲介していた。
 
TTPは停戦終了の理由として「政府側が合意を守らなかった」と主張。具体的には、政府側が拘束する100人超のTTP構成員が解放されなかった▽政府側の和平交渉を担うメンバーが(交渉場所に)到着していない▽パキスタン軍がTTPへの攻撃を続けた――ことなどを挙げた。
 
TTPは、パキスタン西部にある部族地域を拠点とする複数の武装組織の連合体。アフガンのタリバンと友好関係にある。2012年には女子教育の重要性を訴えていたマララ・ユスフザイさんを銃撃したほか、軍などを標的としたテロを繰り返している。
 
TTPのメンバーの多くは現在、パキスタン軍の掃討作戦から逃れる形でアフガン東部に潜伏している。

一方、アフガンのタリバン暫定政権の外務省幹部によると、パキスタンでテロを繰り返すTTPの存在は、国際的な承認を目指すタリバンにとって「重荷」となっていた。

ただタリバンにとってTTPは友好関係にあるため、強制的に追い出すこともできず「パキスタン政府と和平合意を結んでもらうのが最善策」と考え、両者の仲介を試みたという。【2021年12月10日 毎日】
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【“揉める”余裕はない両国の事情】
以上のような“微妙”な関係にもあるアフガニスタン・タリバン政権とパキスタンですが、今回のパキスタンの越境攻撃が大きな問題となることはないのでは・・・・。

タリバンにとっては、なんだかんだ言ってもパキスタンは数少ない「支援国」ですし、今は国際承認を求めている状況ですから、“揉め事”は起こしたくないところでしょう。

****タリバンが収入源の麻薬禁止 生産最大、政権承認狙いか****
アフガニスタンのイスラム主義組織タリバン暫定政権は3日、アヘンの原料となるケシの栽培と麻薬の使用を禁止すると発表した。

アフガンはケシの世界最大の生産国で、タリバンの収入源となっていた。タリバンは昨年8月に政権を掌握したが、各国は正式には認めていない。暫定政権には各国の求めに応じる形で麻薬対策に乗り出し、国際承認につなげる狙いがありそうだ。
 
暫定政権のハナフィ副首相は別の作物栽培などに置き換えるための協力を国際社会に求め「世界が安全に過ごせるようにする」と語った。最高指導者アクンザダ師による命令で違反者は取り締まるとしている。【4月3日 共同】
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さんざん資金源に使ってきて、今になって「世界が安全に過ごせるようにする」と言うのも、いいたいどの口が・・・という感はありますが。

パキスタン側も、4月12日ブログで取り上げたように、カーン前首相が失職し、シャリフ新首相に変わりましたが、政変のゴタゴタが続いており、タリバンどころではないのでは。

****インフレや反発議員の大量辞職表明…パキスタン新首相誕生も混乱続く****
(中略)
不信任案可決で失職したイムラン・カーン氏にかわり、新しく首相に就任したのはシャバズ・シャリフ氏。
野党勢力をまとめあげましたが、反発する議員100人以上が辞職を宣言。さらに前職のカーン氏からは反対デモを呼びかけられています。

「経済危機に、外交も難題ばかり。内憂外患の船出」
シャリフ氏は、過去に首相を3度務めたナワズ・シャリフ氏の弟。
新首相にとって急務となるのは、前政権で悪化したインフレの沈静化と、外交面の立て直しですが、いずれも難題です。

前首相のカーン氏は、ロシアによるウクライナ侵攻の直後にプーチン大統領と会談し、国際社会の批判を浴びたほか、アフガニスタンで実権を掌握したイスラム原理主義勢力・タリバンに対する支援を巡り、アメリカとの外交が途絶えるなどしていました。

隣国インドとの関係も悪化しています。

消費者物価指数は、カーン氏の首相就任以来、2桁前後の上昇率で推移。ウクライナ侵攻によるエネルギー価格の上昇も深刻です。

これらの難題に加え、100人以上が議員辞職を表明したことに伴う大規模な補欠選挙や、パキスタンで強い政治力を持つ軍との関係構築など、いろんな難題にも向き合うことになるシャリフ新首相。今後、安定した政権運営ができるかは不透明です。【4月18日 FNNプライムオンライン】
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ただ、パキスタンの話でわかりにくいのは、政府の意図と軍の意向が往々にして異なることがある点で、軍は勝手に動いているように見えることも。
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アフガニスタン  改善しない生活状況、女性の権利侵害 タリバン、「掃討作戦」開始 市民監視目的?

2022-03-18 22:52:24 | アフガン・パキスタン
(タリバンによる「掃討作戦」 捜索対象の住宅の前に集まるタリバンの戦闘員ら (8日、カブール)【3月18日 日経】)

【相変わらずの経済混乱・生活苦、女性への人権侵害】
国際関係ニュースがウクライナ情勢一色になっているなかで、その他の地域のニュースは目にする機会が減っていますが、今回はタリバン支配のアフガニスタンに関するニュースをいくつか。

アフガニスタンについては、2月13日ブログ“アフガニスタン 政治混乱・干ばつ・食糧難・医療崩壊・・・「世界最大の人道危機になりつつある」”でも取り上げましたが、危機的状況は変わっていません。

上記ブログでは“金欠で子ども売る家族”に関する記事も触れましたが、売る子供がいなければ自分の臓器を・・・

****アフガンで広がる貧困 臓器売買も横行 タリバン支配から半年****
アフガニスタンでイスラム原理主義勢力タリバンが首都カブールを制圧して、15日で半年となった。タリバンが政権を奪取して以降、国内経済は事実上破綻状態となり、貧困が急速に拡大している。

農村部では困窮した住民による臓器の売買も横行。「人道的危機と経済的崩壊」が同時に押し寄せ、安定には程遠い状況が続いている。

2400万人に支援必要
「私はやりたくないが、臓器を売って生活をする人も多い」。西部バドギス州のハビビさん(45)は産経新聞通信員の取材に困窮を打ち明けた。

ハビビさんによると、腎臓1つの値段は約1300ドル(約15万円)程度。これまでも臓器売買はあったが、困窮が拡大して臓器を売ろうとする人が絶えず、〝価格〟は下落しているという。複数メディアは、住民が子供を人身売買業者らに売って生活費を得る様子も報じた。

タリバンの政権奪取後、国家予算の8割を占めた海外援助が停止されたことに加え、長年続く干魃(かんばつ)の影響で経済は非常に厳しい状況だ。国連アフガニスタン支援団(UNAMA)は、今年は人口の約6割に当たる2400万人以上に人道支援が必要になるとの見通しを示した。昨年と比べて600万人増えるという。

東部ラグマン州のムルザさん(50)は「(タリバンが政権を握って以降)戦闘は確かに減ったが、貧困をどうすればいいのか」と語る。電気が使えるのは1日のうち3時間程度。警備員だったムルザさんも失業し、家財道具を売りながら糊口をしのいでいる。

女性への人権侵害続く
タリバンは昨年8月15日にカブールを制圧して政権を掌握した。9月には暫定政権を立ち上げ、支配体制を固めている。

ムルザさんが語るように国内の治安には改善がみられる。国連によると、昨年8月19日〜12月31日の間に起きた銃撃戦など治安に関する事件は985件で、前年同期比で91%減少した。タリバンと政府軍の戦闘がなくなったことが影響しているとみられる。

一方、女性に対する人権侵害は依然として深刻だ。タリバンは女性の就学を制限し女性の映画出演を禁止。「男性の親族が同伴しない限り、女性は公共交通機関を利用してはならない」との命令も出している。

政権批判にも神経をとがらせ、ジャーナリストの拘束や暴行も相次ぐ。

これに対し、欧米各国を中心に国際社会は暫定政権への厳しい姿勢を貫く。アフガンの豊富な天然資源に着目する中国を含め、暫定政権を正式な政府として承認した国はない。

アフガンの政治評論家、サミム・カイバル氏は「凍結資産の解除や国際援助の再開はなかなか見込めず、国内の貧困は拡大していくだろう。国際社会は暫定政権を通さずに市民に支援が行きわたる方法も考えていくべきだ。そうしなければ市民の餓死が増えるだけだ」と話した。【2月15日 産経】
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女性の就学については、大学は種々の制約のもとで女性の就学を認めることにはなっていますが、現実問題としては「再開」とは言い難い状況です。

****主要大学再開、女子学生まばら=アフガン****
アフガニスタンで26日、イスラム主義組織タリバンが昨年8月に政権を奪取してから初めて、首都のカブール大学など主要大学が再開された。しかし、タリバンの弾圧を恐れ、登校する女子学生の姿はまばらだった。教員の国外脱出も相次ぎ、講義が成立するかどうかも危ぶまれている。【2月26日 時事】 
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【規制の押しつけ 今はそれほど強制力は表面化していなくても、今後は・・・】
教育を初めとして女性に対する制約が多いのは事実ですが、一方でタリバン側も国際的な視線を気にしてでしょうか、旧政権時代のように“力づくで何が何でも”といった姿勢でもないようです。

下記は、ガニ政権崩壊時に遅ればせながら自衛隊機を派遣したもののいろんな問題から“唯一の退避日本人”となり、それから3カ月後に再びカブールに戻って住み続けると決めた安井浩美氏のリポートの一部です。

****唯一の邦人退避から3カ月、カブールに戻って住み続けると決めた タリバン支配下の生活―安井浩美のアフガニスタン便り(1)****
(中略)
 ▽音楽は禁止、とても多い女性への規則
家事の中で洗濯が一番好きな私。というのもカブールの気候は、乾燥していて気持ちが良いからだ。日本にはない真っ青の青空もいい。アマゾンミュージックで1980年代のポップスをスピーカでつなげて聞きながら洗濯をバルコニーに干すのが日課だった。

宗教音楽以外の楽曲を禁じるタリバン政権になってからはそれもできなくなった。家の中では聞いているが、外では聞くことができない。
 
ほかにも、おしゃれ好きにはつらいことが多い。体の線を隠すためにブルカと呼ばれる頭からすっぽり覆うマント、もしくは、アフガンではヘジャブと呼ぶ黒色の足首まである黒いコートの着用が義務づけられたため、すてきな服を着ても人から見てもらえないのだ。
 
女性に対する規則は挙げればきりがなく、欲求不満になっている自分に気づく。ただ、あれもこれもいろんな規則がある割には、強制力が今のところはあまりなく、今までとあまり変わらぬいでたちで、街を闊歩(かっぽ)している若い女性も見かける。
 
いつまでこの状態が続くのか気が気でない。男性はというと、以前のようにしゃれた服装でいるとタリバンに嫌がらせを受けるので、多くが民族服のペラン・トンボンを着用している。(後略)【3月12日 共同】
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まさに“いつまでこの状態が続くのか気が気でない”というところ。

タリバンに対し声を上げる女性もいるようですが、タリバンからの圧力も厳しく、生命の危機に及ぶことも。

****【現地ルポ】「私たちには夢があった」タリバン政権下で声を上げるアフガニスタンの女性たち****
飛び立つ米軍機にぶら下がる人々の衝撃的な映像で、2021年夏に世界の注目を浴びたアフガニスタン。イスラム主義組織タリバンのカブール制圧と米軍の完全撤退で起きた悲劇を、国際社会はもう過去の出来事として忘れているようだ。

しかし実際には市民の生活は悪化の一途を辿っている。米国内のアフガン資産が凍結されたことなどで経済が崩壊し、国民の半分は飢餓に直面しているのだ。

抵抗勢力の戦闘が近く本格化するとの情報が飛び交い、タリバン暫定政権は大規模な家宅捜索などを実施し、取り締まりを強化している。

女性の権利と自由を求めてタリバンに抗議デモをした10代、20代の女性たちもその標的だ。危険を承知でアフガニスタンに留まり、声を上げる女性たちに会った。

●「通りでよく男たちを殴ってたの」
マリアム(24)がカフェに入ってくると、周りの空気が一瞬、揺れる。くっきりとした眉と長いまつ毛に縁取られた大きな瞳、ブラウン系のリップ、礼儀正しさと人懐こさが混じった微笑み。タリバンがカブールを制圧する前まではモデルクラブに所属していたということも頷ける華やかさがある。ベージュのスカーフは、彼女の黒髪だけでなく、秘めた闘志も巧みに覆っているのだ。

「何年か前までは、通りでよく男たちを殴ってたの」と言う。テコンドーの道場に通っていた18歳ごろのことだ。すれ違い様に手や足に触れる男たちが我慢ならなかった。「ちょっと待って」と呼び止め、殴った男に殴り返され、顔が腫れたこともあった。

「私たちには夢があった」。前政権の汚職にはうんざりしていたが、大学でビジネスを学び、「アフガニスタンのビル・ゲイツ」を目指していた。だからタリバンが復活したあの夏、「未来を奪われた」と感じ、いち早く逃亡したガニ大統領ら政治家に怒りが湧いた。

アフガニスタンは多民族国家で、タリバンの主要な構成民族、パシュトゥン人は女性に関して極めて保守的だ。「タリバンはいい人たち」と語るパシュトゥン女性もいるが、タジク人であるマリアムには行動や教育、職業など女性の行動を厳しく規制するパシュトゥンの慣習はなじめない。

友人のラムジア(22)たちが、女性の自由と権利を求めるデモをすると聞いた時、マリアムは「参加しなくちゃ」と思った。

「デモなんて、あばずれがやるものだ」。父はそう言い、弟たちも反対したが、マリアムは振り切った。「ここは私の国よ。女性たちは互いの力が必要で、私にも責任がある」

自分の可能性を試したいと夢に向かって歩いていたのに突然、道を塞がれて止められ、罰せられたようだった。「私たちの罪は何?」。プラカードにそう書いた。

通りで見ていた男たちは「女がやることか」と嫌な顔をした。タリバン兵士に囲まれ、銃を突きつけられたり、催涙ガスを撒かれたりした。それでも女性たちはデモを何度も実行したのだ。

●「抵抗以外に選択肢がない」
(中略)デモ参加者たちは今、追われる身だ。「タリバンのスパイから尾行されているかもしれないから気をつけて」とラムジアはマリアムに忠告する。米CNNテレビのインタビューを受けたラムジアの親友は1月中旬、武装した男たちに自宅で拘束され、2月中旬に解放されるまで行方不明だった。

地元ジャーナリストが人権活動家の話として語ったところによると、北部マザリシャリフでは、タリバンに拘束された複数の女性がレイプされた。事実だったとしても、家族の名誉を重んじる文化の中では被害が公になることはない。不名誉だとして、被害者が肉親に殺されることもあるのだ。

マリアムとラムジアも、タリバンと名乗る男の声で「お前たちを見つけ出す」と脅迫電話を受けた。ラムジアは毎晩、寝る場所を変えている。デモもしばらく中断を余儀なくされたが、女性たちはこれで終わりにするつもりはないという。

「危険なことは分かっている。でも私たちには他に選択肢がないの」と2人は言う。「この国の未来に責任があると思う。もし国を出なければならなくなっても、国外でアフガニスタンのために働きたい」。(後略)【3月18日 舟越美夏氏 AERAdot.】
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【タリバン、治安維持を目的とした「掃討作戦」開始 市民の反対を抑えるため、監視を強めているとの見方も】
タリバンは治安維持を目的とした「掃討作戦」を展開しています。

****タリバン、アフガン人の出国禁止 治安理由に「掃討作戦」開始****
アフガニスタンのイスラム主義組織タリバンは27日夜、自国民の出国を厳しく制限すると発表した。また、首都カブールなど複数の都市で治安維持を目的とした「掃討作戦」を展開していることも明らかにした。
 
タリバン暫定政権のザビフラ・ムジャヒド報道官は新たな渡航規制について、国外に暮らす多くのアフガン人が「非常に悪い状況にある」とする報告を受けたためだと説明。「政府には国民を保護する責任がある。国民の命が危険にさらされないという保証が得られるまで」出国を制限すると述べた。
 
各国政府や非政府組織の計画したアフガン人の国外退避禁止に加え、自力で出国を試みる家族も「理由」がなければ出入国管理局に止められることになる。また、男性親族を伴わない女性の出国は禁止される。
 
タリバンはまた、カブールなど複数の都市で先週末から「誘拐犯、窃盗犯、強盗犯」を取り締まるため、1軒ずつ民家をしらみつぶしに捜索する「掃討作戦」を開始したと発表。イスラム過激派組織「イスラム国」メンバーの疑いのある6人と誘拐犯9人、窃盗団53人を拘束したとした。
 
カブールの大規模な治安作戦は28日も続いており、欧米が支援していた前政権や米軍をはじめとする駐留軍に協力していた人々は、標的とされることへの警戒を強めている。
 
欧州連合のアンドレアス・フォンブラント駐アフガニスタン大使は、「異なる民族グループや女性に対する脅迫、家宅捜索、逮捕、暴力は犯罪であり、直ちにやめなければならない」「(ウラジミール・)プーチン大統領の戦争があろうが、われわれはあなた方を見ている」とツイッターに投稿した。
 
これに対し、ソーシャルメディアを多用するタリバン当局者のムハンマド・ジャラル氏は、「プーチン氏から欧州を守ることに集中しろ」と返した。 【2月28日 AFP】
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「誘拐犯、窃盗犯、強盗犯」を取り締まるため、1軒ずつ民家をしらみつぶしに捜索する「掃討作戦」・・・深夜突然、武装した大勢に踏み込まれる威圧感は甚だしいものがあります。
“定政権に対する市民の反対を抑えるため、監視を強めているとの見方もある”とのこと。

****アフガン市民をタリバンが監視****
首都で深夜に家宅捜索

アフガニスタンを制圧したイスラム主義組織タリバンが市民の監視を強めている。カブール首都圏では深夜を含め、抜き打ちの家宅捜索を始めた。

女性を対象に、イスラム法に基づく事実上の出国制限の実施を表明した。テロ対策や人材の国外流出の抑止が目的だとみられるが、失業が深刻になるなか、暫定政権への反発が強まっている。

内務省は2月下旬、家宅捜索を始めた。ポーランド出身のジャーナリストの女性によると、カブールの自宅に深夜、自動小銃や対戦車砲で武装した少なくとも20人の要員が突然、押し入った。「家中のものをひっくり返された。一人暮らしで、とても怖かった」という。

女性は後日、タリバンの広報担当がツイッターに投稿した掃討作戦に関する声明を読み、やっと事態をのみこめた。
タリバン側は家宅捜索の目的を、犯罪者の摘発と治安の維持だと説明するが、暫定政権に対する市民の反対を抑えるため、監視を強めているとの見方もある。

住民は不満を募らせている。捜索を受けたカブール市民の一人は、冷蔵庫の上にイスラム教の聖典コーランを乗せていたが、扱いが雑だと要員に叱責された。

別の女性は、家に女性しかいないときに男性ばかりのタリバンの戦闘員が土足で上がり込んできて、食器棚を含め、隅々まで調べた行為に恐怖を覚えたと証言した。

暫定政権は市民の権利を制限している。2月下旬にはタリバンの報道担当が、市民の国外流出を抑える方針を示した。海外に留学する女性は親族の男性と一緒でないと出国できなくなった。イスラム法の解釈が根底にあるとみられる。

報道担当はその後、女性を含めた出国制限は「合法の書類を所持したり招待を受けたりした」人たちには適用しないとツイートした。

タリバン側は、こうした規制が国民を保護するために必要だと主張する。だが、暫定政権の監視下に置かれ、移動の自由も制限された市民の生活は一段と困窮する。国際労働機関(ILO)によると、2021年8月にタリバンがカブールを陥落させた後、50万人以上が職を失った。

暫定政権に抗議する活動に加わる女性は女子校でトルコ語を教えていたが、タリバンの制圧後、失業した。タリバンが女子学生の通学を禁止したためだ。この女性は「タリバンの言うことを聞かないと罰を受ける」と非難する。

「タリバンは私たちの行動、行き先、着る物を含めすべてを統制しようとしている。息が詰まりそうだ」【3月18日 日経】
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旧政権が生まれた内戦の混乱期と異なり、まがりなりも「自由」の空気を経験した現在のカブールなど都市住民、女性に対し「息が詰まる」ようなタリバン支配が受け入れられる余地は小さいように思えますが、そうなるとタリバン側は「力」で・・・ということにも。

そうしたタリバン支配を承認するものではありませんが、危機的な状況に対する人道支援は国際的に行う必要もあります。

****国連、アフガン支援継続を決定 タリバン支配下でも****
国連安全保障理事会は17日、イスラム主義組織タリバンが昨年実権を握ったアフガニスタンで正式な支援活動を継続する決議案を採択した。
 
決議は国連アフガニスタン支援団(UNAMA)の活動期間を1年間更新するもの。活動内容には、女性、子ども、ジャーナリストなど、人道、政治、人権の分野での協力が含まれている。タリバン政権は国際社会で承認されておらず、決議ではタリバンへの言及はなかった。

採決では14か国が賛成し、ロシアが棄権した。
 
決議案を起草したノルウェーのモナ・ユール国連大使は採決後、AFPに対し「UNAMAの新しい任務は、差し迫った人道的・経済的危機に対応するだけではなく、アフガニスタンの平和と安定という包括的目標を達成するために極めて重要だ」と述べた。【3月18日 AFP】
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アフガニスタン  困窮する市民生活 問題が多いタリバン支配 今後に向けて欧米諸国との協議開始

2022-01-24 21:53:37 | アフガン・パキスタン
(アフガニスタンの首都カブールにある虐待被害を受けた女性向けのシェルターで祈る女性(2021年12月11日撮影)【1月22日 AFP】)

【困窮する市民生活 栄養失調で死亡 わが子を売らなければ生きられない】
アフガニスタンではイスラム原理主義勢力タリバンによる支配のもとで社会・経済は混乱し、女性の人権を認めないなどその統治に問題が多いタリバンに対する欧米諸国の経済制裁によって、市民生活は困窮を極めています。

****今年、栄養失調で子供75人死亡=アフガン南部の病院****
アフガニスタンのメディアは17日、南部カンダハルの病院関係者の話として、この病院で今年に入り、子供少なくとも75人が栄養失調で死亡したと報じた。

アフガンでは、イスラム主義組織タリバン暫定政権への制裁などで経済が混乱。0度前後の気温下で人々が十分な食料を得られず、国際機関などが支援を急いでいる。
 
複数の地元報道によると、この病院関係者は、今年に入り子供約1900人が栄養失調で搬送されてきたと証言した。世界食糧計画(WFP)は昨年、アフガン人の95%が十分な食料を得られていないと警告している。【1月17日 時事】
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*****「わが子売れば…」タリバン下で生活困窮 追い詰められるアフガン市民****
アフガニスタンで、イスラム原理主義勢力・タリバンが実権を掌握して5カ月がたった。
人々の生活は厳しさを増し、わが子を売らなければ生きられないほど、追い詰められた家族もいる。

2021年8月、タリバンがアフガニスタンで実権を掌握し、かつての恐怖政治の記憶から、国内は混乱した状況になった。
今も人権侵害などへの懸念から、国際社会は、タリバンによる統治を承認せず、経済制裁を科していて、市民の生活は厳しさを増している。
市民「状況は最悪で、みんな仕事がない」

カブール近郊の町で暮らす、ナーザニンさん(12)。4人姉妹の長女として、家事を手伝うなど、シングルマザーである母親を支えている。
ナーザニンさん「勉強したいができない。生活のために、水や油が必要」

しかし、病気を抱えながら清掃の仕事と子育てをしてきた母親は、雇い主の経済状況が悪化し、職を失った。
誰からも助けを得られず、生きるために、母親は、ナーザニンさんを売ることを決めた。
母・マルジエさん「何もできることがなかった。1人を売れば、自分も病気の治療ができて、3人の子どもを餓死から守れる」

その金額は、日本円でおよそ11万円。ナーザニンさんがその後、どうなるのか、母親は「何も知らない」と答えた。
しかし取材後、支援団体から援助を受けることができたとの報告が。ナーザニンさんは、今も家族と生活することができているという。

アフガニスタン情勢にくわしい東京外国語大学の講師・登利谷正人さんは、「現地では、子どもを売らなければ食べていけない人が増えている。“タリバン政権”を承認できるかは、ひとまず棚上げにしてでも、命を守るため行動しなければならない」と話している。【1月18日 FNNプライムオンライン】
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****アフガン 仕事失った人たちの食糧難深刻化****
イスラム主義勢力タリバンが実権を掌握したアフガニスタンでは、本格的な冬を迎え、仕事を失った人たちの食糧難が深刻化しています。

17日のアフガンの首都カブールの映像には、雪がしんしんと降る中、路上に座っている人がいます。仕事を失い、物乞いをするほか生活のすべがない人たちです。

カブール市民「子どもたちのためのお金をもらうため、ここに座っているしかありません。油、コメ、小麦粉が必要です。できるなら助けてください」

カブール市民「夫が亡くなって30年、私は一人です。この服は人からもらったものです。お茶もパンもなく、神様の助けがなければ食べ物が見つかるまで歩き続けなければなりません」

男性は、雪の寒さを防ぐためか、ビニールをまとっています。

カブール市民「仕事が見つかる日があっても、その後は仕事がありません。私のような労働者はたくさんいます。1日の稼ぎは90円ほどです。それで我慢しなければならないのです」

国連機関によりますと、アフガンでは現在、人口の半数以上にあたる2440万人が人道支援を必要としています。【1月18日 日テレNEWS24】
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【懸念を深める情報が多いタリバン支配の実情】
“タリバン政権を承認できるかは、ひとまず棚上げにしてでも、命を守るため行動しなければならない”・・・それはそうです。実際、国際支援も動いてはいます。

しかし、タリバン支配が容認できるものかどうかで疑念がある状態では支援もフル稼働とはいかないのが現実でしょう。

現地から伝えられる情報は、タリバン支配への疑念を深めるものがほとんどという状況です。

****女性の遠出、男性伴わねば禁止 タリバン****
アフガニスタンで実権を握るイスラム主義組織タリバン暫定政権は26日、近親男性が同伴しない限り女性の遠出を禁止すると発表した。勧善懲悪省がソーシャルメディアに新指針を投稿した。
 
タリバンはさらに、全ての車両所有者に対し、髪をスカーフなどで覆っていない女性の乗車を拒否するよう求めた。車内で音楽をかけることも禁止される。
 
勧善懲悪省の報道官はAFPに対し「女性が45マイル(約72キロ)以上移動する場合、近親者が同伴しなければならない」と説明した。近親者は男性に限るという。女性が移動する場合、「ヒジャブ」の着用が求められるとも述べた。
 
タリバンは8月15日に実権を掌握すると、公的部門で働いていた女性の復職を禁じた。また、大半の女子生徒が中等教育を依然受けられていない。 【12月27日 AFP】
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****タリバン、女性にヒジャブ着用命じるポスター掲示****
アフガニスタンのイスラム主義組織タリバン暫定政権の勧善懲悪省は今週、女性にヒジャブ(頭と首を覆うスカーフ)の着用を命じるポスターを首都カブール各地に掲示した。同省報道官が7日、明らかにした。
 
タリバンは昨年8月に政権に返り咲いて以来、シャリア(イスラム法)の厳格な解釈に基づく統治を強化。特に女性や少女の自由を厳しく制限している。
 
ポスターはカフェなどに張り出された。「シャリアに従い、ムスリム女性はヒジャブを着用しなければならない」と書かれているほか、ブルカ(全身を覆う衣服)も描かれている。
 
宗教警察の役割を担う勧善懲悪省の報道官は7日、同省が命じたとAFPに認めた。「たとえ従わなかったとしても、罰を受けたり殴打されたりするわけではない。ムスリム女性にシャリアに従うよう促しているにすぎない」と述べた。
 
カブールの女性は既に、ヘッドスカーフで髪を覆っている。カブール以外では、タリバンが1990年代の第1次政権時代に着用を義務付けていたブルカが一般的となっている。 【1月8日 AFP】
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ブルカ強制ではなくヒジャブであれば、イスラム諸国においては程度の差こそあれ着用が要請されていますので、タリバンがヒジャブ着用命じること自体は驚きではありません。

「ヒジャブでもなんでも着けるから、生きていくための食べ物が手に入るようにしてくれ!」というのがアフガニスタン女性の現在の叫びでしょう。

上記記事で問題なのは「たとえ従わなかったとしても、罰を受けたり殴打されたりするわけではない。ムスリム女性にシャリアに従うよう促しているにすぎない」という言葉が全く信用できないところです。ムチで人々を抑圧した旧政権時代の勧善懲悪省の姿が蘇ります。

タリバン支配のもとでは、タリバンのやり方に異を唱えることは許されません。

****タリバン批判の教授拘束 アフガン、言論弾圧に市民抗議****
アフガニスタンのイスラム主義組織タリバン暫定政権は9日までに、会員制交流サイト(SNS)でタリバンを批判したとして、大学教授の男性を拘束したと明らかにした。首都カブールでは9日、言論弾圧を懸念する市民らが「教授の声は人々の声だ」と抗議し、釈放を求めた。
 
地元メディアによると、男性はカブール大のファイズラ・ジャラル氏。8日にカブールで治安当局に拘束された。テレビの討論番組にたびたび出演し、圧政や食料不足などを非難してきた。【1月9日 共同】
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【最大のポイントは女性の権利保護】
いろいろ問題があるなかで、食料問題は現実的には国際援助がない限りタリバンに改善能力はないので、そうした国際援助が受けられるようにするための「女性への対応」がポイントでしょう。

欧米諸国が求めるものとタリバン支配の現実には大きな溝があります。

****タリバン政権下で消える女性シェルター 虐待受けても行き場なし****
フェテマさんは7歳の時、曽祖父ほどの年齢の男性と結婚させられた。レイプされ、殴る蹴るの暴行を受け、飢えにも耐え忍んだ末、ついに自らの命を絶とうとした。
10歳の時には壁にたたき付けられたと言う。「頭が釘にぶつかって(中略)もう少しで死ぬところでした」
 
フェテマさんが身を寄せているのは、虐待された女性のためのシェルターだ。イスラム主義組織タリバンが昨年8月に実権を掌握したアフガニスタンで今もなお、女性たちを受け入れている数少ないシェルターの一つだ。だがフェテマさんは、いつここを追われるかもしれないとおびえている。
 
シェルターが閉鎖されれば、フェテマさんには行き場がない。実家との連絡は途絶えているし、嫁ぎ先の家族は名誉を汚したと言って、フェテマさんを殺すと明言している。
 
アフガニスタンでは、フェテマさんのような経験をしている女性が何百万人もいる。家父長制を伝統とするこの国では、貧困と教育の欠如により、女性たちが何十年にもわたって権利を奪われてきた。
 
国連によるとアフガン女性の87%が、何らかの形で肉体的・性的・精神的な暴力を体験したことがある。
 
にもかかわらず、人口3800万人のこの国で、タリバン復権以前に運営されていた女性保護専門のシェルターは、わずか24か所だった。そのほぼすべてが国際組織の資金によるもので、国内では多くの人から冷ややかな目で見られていた。
 
タリバンはイスラム教の聖典コーランの厳格な解釈に基づき、女性の権利を認め保護していると主張するが、現実には公的な場から徐々に女性が締め出されている。

■タリバンの視察
だが、ほのかな希望の光もある。
 
タリバンの最高指導者ハイバトゥラ・アクンザダ師は今月初め、強制結婚を非難する立場を表明した。
またタリバン暫定政権が国連大使に指名したスハイル・シャヒーン氏は、国際人権団体アムネスティ・インターナショナルに対し、暴力の被害を受けた女性は裁判所に訴えることができると語った。
 
タリバン政権はシェルターの今後について何ら公式に発表していない。だがその存在が見過ごされているわけではない。
 
フェテマさん他約20人が身を寄せるシェルターの職員によると、タリバンの戦闘員や幹部が数回にわたりシェルターを訪れた。

「彼らは入って来て各部屋を見て、男性がいないことを確かめていました」とある職員は言う。「そして、女性にとってここは安全な場所ではない、女性の居場所は家庭だと言いました」
 
それでも、希望を感じた女性もいた。職員は「(タリバンの訪問は)思っていたよりもずっと良かったのです」と語った。

■頼る先がない
タリバンが政権を掌握する前でさえ、家庭で虐待されている多数の女性が頼れる先はほとんどなかった。
殺してやると義父に脅されたザキアさんは女性問題省(現在はタリバンによって閉鎖)に問い合わせ、家を逃れる方法について助言を求めた。だが、ザキアさんの状況はそれほど悪くないと言われ、「話も聞いてもらえませんでした」。
 
ミーナさんも7年前、虐待する叔父の元から妹と一緒に逃げ出し、女性問題省に駆け込んだが、同じような扱いを受けた。そして「私が話す内容にうそがあると非難されたのです」。
 
アフガン女性の権利を訴えて長年活動し、シェルターを運営しているマブバ・サラジャさんにとって心配なのは、家庭で虐待を受けていながら、他に行き場のない女性たちだと言う。
 
ザキアさんには、少なくとも今のところシェルターがある。だが、いつまでここにいられるだろう。「実の父にも、おまえのことなんかどうでもいいと言われたのですから」 【1月22日 AFP】
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家庭内での暴力から逃れてきた女性に「女性にとってここは安全な場所ではない、女性の居場所は家庭だ」というのは“悪い冗談”です。

ただ、“女性保護専門のシェルターは、わずか24か所だった。そのほぼすべてが国際組織の資金によるもので、国内では多くの人から冷ややかな目で見られていた。”“タリバンが政権を掌握する前でさえ、家庭で虐待されている多数の女性が頼れる先はほとんどなかった”ということに見られるように、女性の権利を重視しない風潮はタリバンだけでなくアフガニスタン社会全般の問題である点は踏まえて置く必要があります。

そうしたなかにあって、若干の改善も。

****女子中等教育も「解禁」=3月下旬に再開か―タリバン****
フガニスタンの民放トロTVは23日、イスラム主義組織タリバン暫定政権が、3月下旬から中等教育課程以上の学校を女子についても再開するよう指示したと報じた。現在、タリバンは一部を除き女子は初等教育までしか認めておらず、国内外から批判を浴びている。
 
タリバンはこれまで、独自のイスラム法解釈に基づいて女子教育を抑圧してきた経緯があり、実際に再開されるかは不透明だ。【1月24日 時事】 
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【欧米諸国とタリバンの協議開始】
今後に向けて、タリバンと欧米諸国の協議が始まるようです。

****タリバン、オスロで欧米諸国と協議開始 人権や人道危機など焦点****
アフガニスタンを支配する武装勢力タリバンと、欧米各国との対面協議が23日、ノルウェーの首都オスロで始まった。昨年8月にタリバンがアフガニスタンの政権を奪還して以来、代表団が欧州で欧米政府と協議するのは初めて。

一方、タリバンと協議することに反対する抗議集会も、週末にかけて欧州各地で開かれた。

非公開の協議は3日間続く予定で、アフガニスタン国内の人権や人道危機の状況も検討する。
最も重要とされる24日には、タリバンは欧米各国に対して、アメリカの銀行で凍結されている数十億ドルの出金を認めるよう要請する見通し。

タリバン代表団のシャフィウラ・アザム氏はAP通信に対して、「アフガン資産の凍結を解除し、政治対話を理由に一般のアフガニスタンを苦しめることがないよう(欧米に)求める」と話した。
「今は厳しい冬で、飢えが広がっている。国際社会はそろそろ、政治的対立を理由にアフガニスタン人を罰するのではなく、アフガニスタン人を支えるべき時期だと思う」とも、アザム代表は述べた。

タリバンの復権以来、アフガニスタンでは失業と食料価格が急騰する一方、通貨の価値は急落し、金融機関は現金引き出しに上限を設けている。

国連によると、アフガニスタン国民の95%が十分な食事をとれていない。人口の55%が飢えの危険にさらされている状態という。

タリバン代表団は22日夜にオスロに到着。23日には、代表団の一部が人権活動家と面談したものの、話し合った内容は公表されていない。

女性の権利活動家のジャミラ・アフガニさんはAFP通信に対して、代表団は「好意的」な態度だったと述べ、「発言をもとに、実際にどう行動するかを見てみよう」と話した。

「タリバン承認ではない」
欧米側はタリバン代表団に対して、人権尊重と包摂性の高い政権作りを強く求める見通し。

昨年8月の政権奪還以来、タリバンはほとんどの女性について外で働くことを禁止。中学・高校には男子生徒と男性教師しか通うことができなくなった。こうした権利抑圧に抗議する女性たちへの取り締まりも厳しくなり、活動家の中には行方不明になった人たちもいるが、タリバンは関与を否定している。
人権活動家やジャーナリストに対するタリバンの攻撃も悪化している。

これまでのところ、タリバン政権を正統なアフガニスタン政府と承認した国はない。
ノルウェーのアンニケン・ウィットフェルト外相は21日、協議の開催を発表するにあたり、代表団と協議するからといって「タリバンを正当化するわけでも承認するわけでもない」と述べた。
「それでも、国の事実上の当局とは話をしなくてはならない」とも外相は話した。

今回の協議について、国外のアフガニスタン人の意見も割れている。BBCのリーズ・ドゥセット特派員によると、タリバンと関わるのは大事だと指摘する人もいれば、本国で人権侵害を繰り返すタリバンを欧州の首都に招いてはならないという意見もある。

オスロでの協議に反対する人たちが週末にかけて、欧州各地で抗議集会を開いた。オスロで抗議した1人はAFP通信に対して、家族を失ったアフガニスタン人を「面と向かって笑い飛ばす」ようなものだと協議を批判。「テロリストと話し合ってはならない」と述べた。【1月24日 BBC】
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アフガニスタン・タリバンとパキスタンのTTP対応などの“微妙”な関係

2022-01-15 22:17:50 | アフガン・パキスタン
(アフガニスタンとの国境を守るパキスタン兵(2021年9月)【1月13日 Newsweek】)

【アフガニスタン撤退で、アメリカ議会で強まった“戦犯”パキスタン批判 パキスタン「もはやタリバンをコントロールできない」】
パキスタン、特にその諜報機関である三軍統合情報部(ISI)がアフガニスタンのイスラム原理主義勢力タリバンを生み、育ててきたことは周知の事実です。

その目的の最大のものは、隣国アフガニスタンにおいて宿敵インドの影響力が強まるのを防ぐためと言われています。

ただ、パキスタン政府は「我々のアフガンへの影響力は低下している。もはやタリバンをコントロールできない」と繰り返しています。

****タリバン再登場に戦慄するインド・パキスタン****
(中略)
パキスタンはかねてアフガニスタンを「兄弟国」と見なして付き合ってきた。実際、タリバンのメンバーは、アフガニスタンにおける多数派であるパシュトゥーン人が主流。

このパシュトゥーン人は隣国パキスタン西部のペシャワールやマルダンなどに幅広く居住している。平時においてはお互いの行き来も活発だった。

そしてパキスタンの貧困層や地方住民には景気悪化や汚職などに不満を強める人々が多く、程度の差こそあれタリバンへのシンパシーを抱いていることも無視できない。

アメリカとともにソ連のアフガン侵攻に対抗するためタリバンを支援したとされるパキスタンだが、同国の外交官らはかねて「我々のアフガンへの影響力は低下している。もはやタリバンをコントロールできない」と繰り返してきた。

だが、普通に考えればパキスタンの諜報機関である三軍統合情報部(ISI)は今なおタリバン、とりわけ最強硬派の「ハッカニ・ネットワーク」と何らかの接触を維持しているとみていいだろう。

過去20年間、ISIはタリバンのリクルート活動などを黙認あるいは支援してきた、と言われている。パキスタンの手助けや見逃しがなければタリバンの「復活」はあり得なかった、という主張には一定の説得力がある。(後略)【2021年8月30日 山田剛氏 日本経済研究センター】
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当然ながら、タリバンと戦ってきたアメリカには“同盟国”パキスタンの“裏切り的”タリバン支援には長年苛立っていましたが(とは言いつつも、結局パキスタンに対し決定的な対応をとらなかった、あるいは、とれなかった訳でもありますが)、混乱の中のアフガニスタン撤退という屈辱を受けて、改めてパキスタン批判が強まりました。

****米政界で対パキスタン議論 圧力か孤立回避か****
イスラム原理主義勢力タリバンによるアフガニスタン掌握を受け、バイデン米政権が、対テロ戦争の「重要同盟国」と位置付けられてきたパキスタンへの政策見直しを進めている。同国が米国の援助を得る一方で、タリバン支援を続けていたためだ。

議会ではパキスタンへの〝懲罰〟を主張する声が出ているが、専門家らには同国を孤立させれば大規模な地域紛争を招く危険があるとの慎重論が強い。

米下院外交委員会で5日に行われた公聴会では、議員と外交・安全保障の専門家らの間でパキスタン関与のあり方が議論となった。

トランプ前政権で大統領補佐官(国家安全保障問題担当)を務めた証人のマクマスター氏は「パキスタンへの支援を停止して孤立させ、タリバンなどジハード(聖戦)勢力を保護した責任を負わせるべきだ」と述べ、民主、共和両党の一部議員が同調した。

反論したのは、同じく証人として出席したアーミテージ元国務副長官らだ。
アーミテージ氏は、パキスタンの孤立は中国、インドの領有権争いも絡む係争地カシミール地方の不安定化を招くと警告。

駐パ、駐アフガン両大使などを歴任したクロッカー氏も「パキスタンを罰する(外交政策上の)余裕はない。カシミールの暴発は中印パの地域戦争に発展する」と証言した。

こうした議論が熱を帯びるのは、アフガン政策の失敗はパキスタンが原因だとの見方があるためだ。
米国は「テロとの戦い」にパキスタンの協力は欠かせないと判断。米メディアによると2002年以降、計330億ドル(約3兆6700億円)以上の軍事・経済支援を供与してきた。

一方、1990年代のタリバン創設にも関与したパキスタンは、したたかに立ち回った。2001年のタリバン政権崩壊後も自国内に拠点を提供。タリバンを手駒に地域情勢への影響力を強め、対立するインドを牽制(けんせい)するといった狙いがあった。

タリバンが米軍やアフガン政府との戦闘を継続できたのは、パキスタンでの戦闘員徴募や訓練、武器調達が可能だったからだ。

こうした経緯から、タリバンのアフガン掌握で利益を得たのはパキスタンであるようにも見える。だが、事態はさらに複雑だ。

アフガン駐在経験のある外交筋は「勝利したタリバンが制御不能になるのを最も懸念しているのは、実はパキスタンだ」と語る。

同国内には、タリバンの影響で誕生した「パキスタンのタリバン運動」(TTP)などの過激派が存在する。それらが今後、パキスタン政府への攻撃やインドへのテロなどを行うため、アフガン領を安全地帯として利用する恐れは強い。タリバンがパキスタンを利用したのと同じ構図だ。

米政界で対パ非難が強まる中、ブリンケン国務長官は9月、米パ関係を「再評価」すると表明した。だが、パキスタンが孤立感を強めれば、巨大経済圏構想「一帯一路」を通じて域内の影響力を高める中国との関係緊密化を一層促すことにもつながる。

パキスタンのカーン首相の安全保障補佐官を務めるユースフ氏は今月、米外交専門誌フォーリン・アフェアーズへの寄稿で、対パ非難の高まりは米国など西側諸国がアフガン政策失敗を糊塗(こと)するための「スケープゴート」探しだと批判した。【2021年10月13日 産経】
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【タリバンを支援してきたパキスタンにとってもタリバン復権は副作用も】
上記記事にもあるように、タリバンとパキスタンの関係は、カジミール情勢、中国の影響力などもあって複雑な面もありますが、パキスタンとしても(国軍、ISIではなく、少なくともパキスタン“政府”は)自国内のイスラム過激派「パキスタンのタリバン運動」(TTP)の活動活発化やアメリカなどのパキスタン批判を警戒して、タリバンの復権には慎重な面もあるようです。

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旧ガニ政権を手厚く支援してきたインドにとって、タリバンのアフガン全土掌握は大きなダメージだ。これをもってパキスタンに「外交的勝利」が転がり込んできた、といえなくもない。

アフガニスタンはインドに対して大きな外交カードであり優位性となる。パキスタンのイムラン・カーン首相がタリバンの全土制圧を「隷属からの解放」と述べて歓迎した背景はこういう事情があるのだろう。

しかしタリバンの復権はパキスタンにも大きな副反応をもたらす。今後パキスタンがアフガン支援でタリバン寄りの姿勢を見せた場合には、陸軍基地の目と鼻の先でテロ組織アルカイダの頭領オサマ・ビン・ラーデンの潜伏を許すなど数々の失態を大目に見たうえ、借金まみれのパキスタンを見捨てずに付き合ってきた米国との関係が一気に悪化する恐れもある。(中略)

しかし、タリバンの台頭によってパキスタンの過激派が覚醒して再び政府に牙を剥く恐れもある。2014年に北西部ペシャワールで児童ら150人が犠牲となったテロなどをきっかけに同国陸軍は情け容赦ない過激派掃討作戦「ザルベ・アズブ(預言者ムハンマドの剣撃)」を断行、タリバン残党らも含む多くの武装勢力をアフガン側に追いやったが、彼らが再びパキスタンに舞い戻ってくる可能性もある。

パキスタン国内には、本家タリバンと緩やかに連携している「パキスタン・タリバン運動(TTP)」が跋扈する。ノーベル平和賞受賞者であるマララ・ユスフザイさんを襲撃したのも彼らの仕業だった。

パキスタン当局、特に軍はタリバンが再びテロ集団を迎え入れるなど暴走しないよう働きかける一方、指導部に対しては自国の過激派を扇動しないようくぎを刺しておく必要がある。【前出 2021年8月30日 山田剛氏 日本経済研究センター】
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【国境「柵」をめぐるタリバンとパキスタンの対立 かつてのようにパキスタンの言いなりではない今のタリバン】
このように“微妙”な関係にもあるアフガニスタン・タリバンとパキスタンですが、両国国境にパキスタン側が設置した「柵」を巡って対立があるとも報じられています。

****タリバンとパキスタンがまさかの「仲間割れ」、現地の勢力図に大きな変化が****
<パキスタンが設置していた国境の「柵」をめぐり、両軍兵が衝突。互いを必要とするはずの両者は妥協点を見いだせるか>

昨年8月、タリバンがアフガニスタンの首都カブールを制圧すると、隣国パキスタンでは歓喜の声が上がった。なにしろタリバン運動の発祥地だし、アフガニスタンに友好的な政府ができるのは大歓迎。一貫して親米政権を支持してきた天敵インドの影響力低下も必至だ。

しかし、そんな蜜月の終わる兆しが見えてきた。両国の国境、いわゆる「デュアランド線」での不穏な動きだ。
昨年12月19日にはアフガニスタン東部の国境地帯で、パキスタン側の設置した有刺鉄線のフェンスをタリバン兵が実力で撤去した。年末の30日にも似たような摩擦が南西部であった。フェンスの設置は2014年から、国境紛争と密輸を防ぐためと称してパキスタン側が進めていた。

この2回目の摩擦を受けてタリバン政権は強く反発。国防省の広報官は年頭の1月2日に、パキスタン側には「有刺鉄線で部族を分断する権利はない」と主張した。ここで言う「部族」は、国境の両側で暮らすパシュトゥン人(アフガニスタンでは多数派だ)を指す。別のタリバン広報官は、「デュアランド線は一つの民族を引き裂く」ものだとし、その正当性を否定した。

この国境線は1893年に英領インドとアフガニスタンの合意で成立した。だが1947年にパキスタンが独立して以来、歴代アフガニスタン政権はデュアランド線に異議を唱え続けてきた。

自分たちはパキスタンの代理勢力ではない
ただ、タリバン側の動きには他の思惑もありそうだ。自分たちはパキスタンの代理勢力ではないと、対外的に主張したいのかもしれない。多数派のパシュトゥン人にすり寄るためという見方もできる。

フェンスの存在が国境を越えた人流・物流の妨げになるという現実的な問題もある。タリバン構成員には今も、パキスタン側に家族を残している者が少なからずいる。

年明け早々、パキスタンとタリバンは交渉を通じて国境間の緊張を解くことで合意した。だが容易ではない。パキスタンの外相も「外交的に解決できると信じたい」と、心もとない発言をしている。

消息筋によれば、パキスタン政府はフェンス設置へのタリバンの理解を得つつ、越境往来を増やせるような譲歩をするつもりだという。だが、その程度でタリバンの不満は収まるまい。

それでもパキスタンに対するタリバンの経済的・外交的依存の大きさを考えれば、彼らもこれ以上の関係悪化は避けたいだろう。

パキスタン側にも、早期の事態収拾を図りたい事情がある。タリバンとの緊張が高まれば、最近パキスタン国内でテロ活動を活発化させているテロ組織パキスタン・タリバン運動(TTP)への対処が難しくなるからだ。

タリバンの仲介で、アフガニスタンを拠点とするTTPとパキスタンは昨年11月に停戦1カ月の休戦協定を結んだが、TTPはその延長を拒んでいる。交渉再開にはタリバンの協力が不可欠だ。

ただしタリバンも、TTPには強く出られない。国内のTTP基地へのパキスタン軍の攻撃を黙認するという選択肢もない。

パキスタンとタリバンの関係は持ちつ持たれつだ。しかし今のタリバンは、かつてのようにパキスタンの言いなりではない。【1月13日 Newsweek】
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タリバン側に“かつてのようにパキスタンの言いなりではない”という思いがあるとすれば、パキスタン側には“いったい誰のおかげで今のタリバンがあると思っているのか”という本音もあるでしょう。

【パキスタン・タリバン運動(TTP)をめぐるタリバンの“微妙”な対応】
上記のようにタリバンとパキスタンの“微妙”な関係のなかでも、とりわけ微妙なのがタリバンのパキスタン・タリバン運動(TTP)への対応。

パキスタン国内でテロ活動を活発化させているテロ組織パキスタン・タリバン運動(TTP)をパキスタン軍は厳しく掃討してきましたが、タリバンの仲介で一応「停戦」が昨年11月に成立しました。

****パキスタンのイスラム武装勢力「停戦継続は困難」…メンバー釈放巡り政府と対立****
パキスタンのイスラム武装勢力「パキスタン・タリバン運動(TTP)」は9日、政府との間で先月9日から1か月続いた停戦について、「継続は困難」だとして延長しない方針を示した。TTPが挙げるメンバーの釈放が実施されず、軍が掃討を継続した、などと主張した。双方による戦闘が再発する恐れがある。
 
TTPの報道官名で出された声明では、メンバー102人の釈放が9日までに実現せず、双方が和平を話し合う協議会に政府関係者が来ないと批判した。さらに政府側が停戦を破って、掃討作戦やTTP関係者の殺害をこの1か月に何度も行ったと非難した。
 
地元紙ニューズは10日、最高指導者のヌール・ワリ・メスード司令官も音声で停戦延長を拒否する意向を示したと報じた。ニューズによれば、直近1週間で100人近くが釈放されたが、TTPが要求する102人とは異なる可能性がある。
 
停戦は、双方と関係があるアフガニスタンのイスラム主義勢力タリバンの仲介で実現した。政府とシャリーア(イスラム法)に基づく極端な統治を求めるTTPの隔たりは大きい。【12月10日 読売】
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****TTP、パキスタン政府との一時停戦終了を表明 タリバンが仲介****
パキスタンの反政府武装勢力「パキスタン・タリバン運動」(TTP)は9日の声明で、パキスタン政府との間で11月から1カ月間実施していた一時的な停戦を終了することを明らかにした。一時停戦は、TTPと友好関係にあり、パキスタンの軍情報機関とも近いとされるアフガニスタンのイスラム主義組織タリバンが仲介していた。(中略)
 
TTPは、パキスタン西部にある部族地域を拠点とする複数の武装組織の連合体。アフガンのタリバンと友好関係にある。2012年には女子教育の重要性を訴えていたマララ・ユスフザイさんを銃撃したほか、軍などを標的としたテロを繰り返している。

TTPのメンバーの多くは現在、パキスタン軍の掃討作戦から逃れる形でアフガン東部に潜伏している。

一方、アフガンのタリバン暫定政権の外務省幹部によると、パキスタンでテロを繰り返すTTPの存在は、国際的な承認を目指すタリバンにとって「重荷」となっていた。

ただタリバンにとってTTPは友好関係にあるため、強制的に追い出すこともできず「パキスタン政府と和平合意を結んでもらうのが最善策」と考え、両者の仲介を試みたという。【12月10日 毎日】
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“国際的な承認を目指すタリバンにとって「重荷」となっていた”とも指摘されるTTP幹部がアフガニスタン領内で殺害されました。

****イスラム武装勢力の幹部殺害 パキスタンから逃亡****
パキスタン軍関係者などによると、隣国アフガニスタン東部ナンガルハル州で10日、イスラム武装勢力「パキスタンのタリバン運動(TTP)」の幹部が殺害された。殺害の経緯は不明。副指導者に次ぐ立場と指摘され、TTP報道官も務めていた。
 
死亡したのはムハンマド・ホラサニ氏。軍は、ホラサニ氏がパキスタン治安当局へのテロ攻撃を数多く手掛けた後にアフガンへ逃亡し、新たな計画を練っていたと指摘している。
 
パキスタン政府とTTPは昨年11月、1カ月の停戦で合意。TTPが12月に停戦延長を拒否して以降、軍との戦闘が激化していた。【1月11日 共同】
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TTP幹部殺害にタリバン、パキスタンがどのように関与していたのか、関係はないのか・・・想像はいろいろできますが、真相はわかりません。

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アフガニスタン  タリバンに教育の権利を求めた少女 出口が見えない難民の暮らし

2021-12-31 22:05:59 | アフガン・パキスタン
(「私たちには教育を受ける権利がある」、イスラム主義勢力タリバンを前に、アフガニスタンの15歳の少女が声を上げました。【12月30日 日テレNEWS24】)

【アフガンに民主主義はなじまない(タリバン幹部) 選挙管理委員会を解体】
この1年、国際面のニュースで一番印象的だったのはアフガニスタンの政権崩壊とタリバン支配の復活でした。

状況から見て「時間の問題」とは思っていましたし、米軍幹部などの予想にも「そんなに長くは持たないのでは・・・」とも思っていましたが、政権側が抵抗らしい抵抗も出来ずに、これほど劇的に変化するとは・・・

タリバン支配の在り様は、これまでも度たび取り上げてきたところですが、欧米の批判をかわし、国家承認を取り付けたい狙いから、政権幹部からの旧タリバン政権当時に比べると比較的穏健な発言もあるものの、現場から報じられる女性の権利、人権、民主主義、国内融和などに関するその実態は「やはりタリバンに多くを期待するのは無理か・・・」という感は否めません。

最近のタリバン政権の表向きの言動も、「やはり・・・」という懸念を裏付けるようなものとなっています。

****タリバン、選管を解体=民主制への影響懸念―アフガン****
アフガニスタンのイスラム主義組織タリバン暫定政権は25日、選挙管理委員会を解体したと発表した。

報道担当者は「必要があれば再び組織する」と述べたが、タリバンはもともと民主制には懐疑的な立場を取ってきた。女性や少数派の意見を反映した包括的政権実現の可能性がまた一歩遠のいたのではないかと懸念されている。
 
地元民放トロTVによると、暫定政権のカリミ副報道官は25日、記者団に対し「欠員に伴い政府職員を募集中だ。不要のため解体された政府機関の職員は他の職務に充てるべきだ」と選管解体の正当性を主張した。暫定政権への移行後、女性職員の労働が規制され、タリバンの報復を恐れ、出勤を見合わせる旧民主政権職員も多い。
 
暫定政権は他にも議会に関連する省庁などを解体した。カリミ氏は「必要があれば再び組織する」と説明したものの、タリバン幹部は今年8月中旬に政権を掌握後、アフガンに民主主義はなじまないといった発言を繰り返しており、見通しは暗い。
 
トロTVによれば、アフガンの政治評論家サイード・ハールーン・ハーシミー氏は「共和制や民主主義の破壊の第一歩だ」と批判した。
 
アフガンではこのほか、暫定政権下での経済的混乱やタリバンの脅迫などに伴い、報道機関の閉鎖やジャーナリストの失職も続いている。政権についての情報を国民に提供する機会が失われ、危機感が広がっている。
 
国際ジャーナリスト団体「国境なき記者団」(RSF)は今月20日、タリバンの政権掌握後にアフガン全体の6割に当たる6400人以上のジャーナリストが失職したと発表した。特に女性ジャーナリストは8割が職を離れた。その後殺害されるケースも続発している。【12月26日 時事】 
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タリバン支配のもとでの民主的な選挙、報道の自由を期待するのが「無理」というものでしょう。

【女性単独での遠出禁止 車内で音楽禁止 礼拝時間は停車 イスラム支配の現実】
女性の権利についても・・・・

****女性の遠出、男性伴わねば禁止 タリバン****
アフガニスタンで実権を握るイスラム主義組織タリバン暫定政権は26日、近親男性が同伴しない限り女性の遠出を禁止すると発表した。勧善懲悪省がソーシャルメディアに新指針を投稿した。
 
タリバンはさらに、全ての車両所有者に対し、髪をスカーフなどで覆っていない女性の乗車を拒否するよう求めた。車内で音楽をかけることも禁止される。
 
勧善懲悪省の報道官はAFPに対し「女性が45マイル(約72キロ)以上移動する場合、近親者が同伴しなければならない」と説明した。近親者は男性に限るという。女性が移動する場合、「ヒジャブ」の着用が求められるとも述べた。
 
タリバンは8月15日に実権を掌握すると、公的部門で働いていた女性の復職を禁じた。また、大半の女子生徒が中等教育を依然受けられていない。 【12月27日 AFP】
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女性単独での近場の外出を禁止していないだけ、まだましということでしょう。
ただ、遠出であれ近場であれ、女性が外に出ることへ厳しい目が向けられることになります。

音楽・テレビ・映画・サッカー・闘犬・凧あげなど市民生活における「娯楽」も旧タリバン政権では禁じられましたが、再びその兆しが。

****「車内で音楽禁止」「礼拝時間は停車」…タリバンのイスラム教解釈が先鋭化****
(中略)また、暫定政権の勧善懲悪省は、走行中の車内で音楽を聞くことを禁止し、礼拝の時間には停車することを義務づける通達を出した。イスラム教の規範を独自解釈して社会に適用する動きを加速させている。(後略)【12月26日 読売】
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「走行中の車内」に限定したのはどういう思惑か?
運転の妨げになるという“大義名分”で導入しやすい場面から「禁止」を導入し、やがては範囲を拡大しようというものでしょうか?

「礼拝の時間には停車」
以前、マレーシアの東海岸コタバルを観光したことがありますが、この地域はほとんどがイスラム教徒で、イスラム原理主義政党PASが支配する地域。 

広場を多くの屋台が埋める市場を散策していると、礼拝を告げるアザーンが鳴り響き、拡声器を抱えた男性が。 言っていることはわかりませんが、多分「お祈りの時間だ。みんなモスクへ行け」と言っているのでしょう。

大勢の人で賑わっていた市場は、客も売り手もほとんどいなくなりガランとした状態に。

誰も肉を焼いている途中でモスクに行きたいとは思わないでしょう。多分、逆らうと営業出来なくなるのでしょう。
「イスラム支配というのはこういうものか・・・」と実感しました。

【「なぜ女子は学校に行けないのでしょうか? 私たちには教育を受ける権利があります。」】
こうしたタリバン支配の「本音」が次第に明らかになる状況で、女性の教育を受ける権利をタリバンに求めた少女がいるとのこと。

****「教育を」タリバンを前に声を上げた少女****
「私たちには教育を受ける権利がある」、イスラム主義勢力タリバンを前に、アフガニスタンの15歳の少女が声を上げました。タリバンが実権を握り、多くの女子生徒が学校に行けない中、少女の勇気ある行動に、世界的な注目が集まっています。

■「学校に行く権利がある」マララさん届けた少女のメッセージ
2021年12月、ノーベル平和賞の受賞者で人権活動家のマララ・ユスフザイさんは、アメリカのブリンケン国務長官と面会した際、あるアフガンの少女の手紙を読み上げ、女子教育への支援を訴えました。

「学校や大学が女子に閉ざされている時間が長ければ長いほど、私たちの未来への希望は失われていきます。女子教育は、平和と安全を築くための強力なツールです。私たちには、学校に行く権利があるのです」

■少女はタリバンを前に、ある驚きの行動に…
この手紙をマララさんに託したのは、アフガン西部ヘラート州に住む、15歳のソトゥーダ・フォロタンさん。日本の高校1年生にあたります。この2か月前、タリバンの当局者ら200人を前に、ある驚きの行動に出ていました。

イスラム教の預言者ムハンマドの誕生日を祝う行事で、詩を朗読する予定だったソトゥーダさん。壇上に上がると突然、こう訴えました。

「ヘラートは知識と文化の街なのに、なぜ女子は学校に行けないのでしょうか? 私たちには教育を受ける権利があります。女子のために、学校の扉を開けてください」

タリバンの旗がたなびく壇上で「学校に戻りたい」と、自らの思いを語ったのです。地元メディアによりますと、彼女の勇気あるスピーチの動画はSNSでも話題となり、タリバンのメンバーの中にも称賛する声があったといいます。

■少女の訴えは、地元政府を動かした
旧政権下では、女子教育を禁じていたタリバン。21年8月に実権を掌握した後は、女子の通学を小学校については認めたものの、中学・高校についてはいまだに認めていません。

教師の母に育てられたソトゥーダさんは、こうした状況の中で、女子のクラスメートの思いも背負い、教育を受ける権利を求めて声を上げたのです。女性初の外務大臣になりたいという夢が、ソトゥーダさんの勇気の源だといいます。

スピーチからおよそ2週間後、ヘラート州では、中学・高校の女子の通学が認められたのです。

■女子教育の再開…教師らによる粘り強い交渉も
(中略)タリバン暫定政権が正式に中学・高校の女子生徒の通学を認めていない中、なぜヘラート州は女子教育の再開に踏み切ったのでしょうか。ソトゥーダさんの訴え以外にも、現場の教師や保護者らの取り組みが後押ししたといいます。

AP通信によりますと、ヘラート州では、教師や保護者らが地元のタリバン当局者と粘り強く交渉を続けました。暫定政権の許可なしには再開できないとする地元のタリバン当局者に対し、学校では男女が分離されており、女子には女性教師が教えることや、女子はヒジャブを身に着けることなどを徹底すると訴えたのです。その結果、州独自の判断として、女子の通学が認められました。

ヘラート州以外でも一部の地域で、中学・高校への女子の通学が認められています。しかし、あくまで各地域の独自の判断とみられ、首都カブールなど多くの地域では、女子生徒が学校に行けない状態が続いています。

■貧困や治安の悪化で「教育現場は崩壊」の声
また、国民の多くが日々の食事にも困っている中で、学校に子どもを通わせる余裕のある家庭は多くないのが現状です。「教育現場は崩壊している」カーブルの複数の中学や高校で教師をしている女性は、NNNの取材にこう訴えました。

女性は21年11月から教師の仕事に復帰したものの、学校に通えるはずの男子生徒も、貧困や治安の問題で、およそ2割しか通学できていないといいます。

12月には、教えている男子生徒が通学途中に誘拐され、身代金を要求されるという出来事も。家族が身代金を払い解放されたものの、男子生徒は精神的なショックで学校には戻れず、他の生徒や教師にも動揺が広がっているといいます。

また、いまだ学校に行けない女子生徒らは自宅で自習するしかなく、将来に希望を見いだせない状態だといいます。女性の元には「奨学金をもらって海外で勉強したい」という相談も寄せられています。

■高まる“児童婚”のリスク
さらに深刻な問題もあります。ユニセフ(=国連児童基金)は、「10代の女子たちが学校に戻れない状況が続くと、児童婚のリスクが高まる」と警鐘を鳴らします。

ある学校の教師は、イギリスBBCの取材に対し、「タリバンが実権を握って以降、15歳以下の女子生徒少なくとも3人が結婚を余儀なくされた」と証言しました。女子生徒が学校に行けず、家にいるだけの状況に家族が不満を募らせると、こうした児童婚の増加に拍車がかかるのではないかと危惧していました。

■2022年 女子生徒は学校に戻れるか
タリバンを前に、教育を受ける権利を訴えたソトゥーダさん。イギリス・フィナンシャルタイムズ紙の、21年の「最も影響力がある女性25人」にも選ばれました。

しかしその後、脅迫を受けるなどして、学校に行けない状況に逆戻りしてしまったといいます。「彼女はオリに閉じ込められたカナリアのようだ」父親は、ソトゥーダさんの近況について、地元メディアにこう語っています。

また、一部の中学・高校では、女子生徒の通学を再開できても、説明もなく再び禁止されたり、タリバンの戦闘員が通学途中に女子生徒の服装を確認したりするため、多くの女子生徒が恐怖から登校をやめてしまったケースもあるといいます。

タリバン暫定政権は、22年に新たな教育政策が承認されるまで、女子生徒が中学・高校に通うことは許可しないとしています。タリバンが今後、どのような方針を示すのか、国際社会による監視と検証が求められます。【12月30日 日テレNEWS24】
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少女の声に耳を傾けたタリバンも少なくなかったことでもわかるように、タリバンの中にも一定に女子教育の必要性に理解を示す者もいるのでしょうが、「宗教上の正義」を振りかざされたとき、そういう「理解」は抑圧されていまいがちです。

【社会にも受け入れられず、冬を迎え、一層厳しさを増す難民の暮らし】
厳しい状況はアフガニスタン後に暮らす人々だけでなく、様々な脅威から国を離れた難民も同じです。

****冬を迎え厳しさ増すアフガン難民家族の今***
イスラム主義勢力タリバンから逃れるため、アフガニスタンを脱出した大勢の難民たち。食料は不足し、満足な暖房器具もないまま冬を迎えている。あるアフガン難民家族に話を聞くと、故郷を捨て国外に逃れた彼らを待つ過酷な現実が浮き彫りになった。(中略)

■難民の受け入れはわずか、多くは「不法入国者」
イギリスにたどり着くことができた難民は幸運なほうだ。イギリスは約2万人のアフガン難民の受け入れを表明していて、彼らには居住や就労の権利が与えられる。

しかし、国外に逃れた全てのアフガン人がそうした待遇を得られるかというと、そうではない。

私は21年10月にトルコにやってきたアフガニスタン人の取材をした。彼らは密航業者に1人数百ドルの手数料を払い越境してきた「不法入国者」だ。「不法入国者」であるが故に正規の仕事には就けず、学校にも通えず、病院に行くことすらできない。もちろん治安当局に見つかれば拘束されてしまう。冬を迎え、彼らの生活は一層厳しさを増している。

彼らは今どのように暮らしているのか、オンラインで再び顔を合わせた。【取材日2021年12月16日】

■父親がタリバンに殺され…難民家族の今
話を聞いたのは母親(46)、長男(15)、二男(8)の3人家族。軍人だった父はタリバンに連行され、殺害されたという。身の危険を感じ、21年8月にアフガンを脱出、イランとトルコの国境近くにある街にたどり着いた。

寒さが厳しく、冬の最低気温はマイナス10℃近くにもなるという街。密航業者の仲介により、街はずれの民家の一室を借りて暮らしているが、部屋には暖房器具も給湯設備もなく、厳しい生活を送っている。母親は病気で働けないため、長男と二男が飲食店や商店の雑用で毎月日本円にして7000円程度を稼ぎ、生活を支える。

――食べ物は足りていますか?
(母)いいえ、残念ながら十分ではありません。

――家族の健康状態はどうですか?
(母)ここの寒さのせいで、家では二男がインフルエンザにかかり、せきをして熱を出していました。その前には、長男も病気になりました。私自身も腰の骨に問題を抱えていて痛みがあり、働けない上、家でもなかなか動けません。私たちは寒さと病気に悩まされています。

――病気になった場合、どうしていますか?
(母)こちらでは身分証明書を持っていないので、医者に行って診察してもらったり、処方箋をもらったりすることができません。治るまで、あるいは死んでしまうかもしれませんが、ただ家にいることしかできません。誰も私たちに関心を持っていません。そのため、状況は日に日に悪くなっています。

――将来の見通しについて、どう考えていますか?
(母)子どもたちの将来のために、どこかの国で教育を受けさせ、前に進んで行きたいと思っています。しかし、今の私たちにはトルコに滞在するための資格がありません。イスタンブールに移動するためのお金もありません。私たちは苦しんでいます。二男は週に100トルコリラ(約900円)で働いていますが、長男は先日仕事を解雇されてしまいました。

――滞在資格を得るための法的な問題について、サポートをしてくれる人はいますか?
(母)いいえ、法的問題についてサポートしてくれる人はいません。ここには誰も知り合いがいません。

■2人の子どもは学校に通えず生活費を稼ぐ毎日

――トルコで友達はできましたか?
(長男)トルコ語がわからないので友人ができません。私は一人で落ち込んでいます。

――状況は良くなっていますか?
(二男)いいえ、以前よりも状況は悪くなっています。私は仕事をしていますが、失敗をすると殴られ、または罰としてよりきつい仕事をさせられます。私にとっては最悪の状況です。

――今、何を一番望んでいますか?
(二男)自分と家族のために、平穏な日を過ごしたいです。毎日が良い日であってほしい。滞在の資格や身分証明書を得たい。良い人生を過ごしたいです。

(母)私は息子たちに良い未来を望んでいます。彼らが教育を受け、とても良い未来が待っていることを。もちろん、現在の生活で言えば、全てのものが必要です。洗濯機がない、冷蔵庫がない、お湯は出ない、暖房器具もない。私はたくさんの問題を抱えています。この部屋は寒くて、例えば壁に触れられないくらいです。病気にもなってしまいました。

(母)まずはトルコに受け入れてもらえなければなりません。病気になったら、医者に行かなければいけないのに、今私たちは医者に行くこともできません。

取材した家族は未来に全く希望を見いだせない今の状況に涙を流していた。

トルコ政府も難民を受け入れたい思いがないわけではない。しかし、現地の難民収容センターによれば、トルコはすでにおよそ500万人のシリア難民を受け入れていて、さらにアフガニスタンからの難民を受け入れる余裕はないのだという。

アフガニスタン難民の問題はG7、あるいはG20などで議論されている。人数が膨大な上に広い地域に拡散しているため手が回り切らないのが現状だが、引き続き国際社会の中での主要課題として位置づける必要があるだろう。

私が取材した家族のような、アフガン難民を取り巻く環境が、22年は少しでも改善されることを願ってやまない。【12月30日 日テレNEWS24】
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アフガニスタン国内に暮らす人にとっても、国を離れた難民にとっても、2022年がより良い年になるといいのですが・・・。

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アフガニスタン  飢餓の危機に直面するも、支援をためらわせるタリバン統治の実態

2021-12-09 22:37:13 | アフガン・パキスタン
(秘密裏に行われる授業に出席するアフガンの少女たち【11月29日 WSJ】)

【タイムリーな支援がないと最悪の『大惨事』のフェーズに】
「アフガニスタンでは11月以降、人口の半分以上にあたる2280万人以上が深刻な食料不安に陥るおそれがあり、そのうち870万人が飢餓に直面する」(WFP10月25日発表)

タリバン支配のアフガニスタンが干ばつ、経済制裁などによって飢餓の危機に直面していることはこれまでも取り上げてきました。また、(現地住民にとっては「それどころではない」といったところでしょうが)新型コロナ感染も拡大しています。

****「草をとってきて食べている家も」 飢餓の危機に直面するアフガニスタンの窮状、現地NGO職員に聞く****
8月中旬、イスラム主義勢力タリバンが権力を掌握したアフガニスタン。長引く干ばつに海外からの経済制裁などが加わり、国民は深刻な食料危機に見舞われている。

いま、現地の事情はどうなっているのか。緊急食料支援を行うための資金を募るクラウドファンディングを立ち上げた国際NGO「ジェン」(JEN、本部・東京都港区)の現地事務所長が、アフガニスタンの国民が直面している窮状を、オンライン取材で語った。

*  *  *
「国連世界食糧計画(WFP)のリポートによれば、アフガニスタン全34県のうち13県が、食料不安の度合いを示す5段階のうち3番目に厳しい『危機』の状況にあり、21県がさらに厳しい4番目の『緊急事態』のフェーズにあります。

私たちが主に活動しているナンガルハル県はもともと農業県なのですが、干ばつなどによって作物の収穫量が昨年より急減し、11月には『緊急事態』となりました。このままタイムリーな支援がないと最悪の『大惨事』のフェーズに入ってしまうおそれがあります」

アフガニスタン東部、パキスタンと国境を接するナンガルハル県で活動するジェン現地事務所長のムハンマドさん(仮名)はこう語る。

WFPは10月25日、「アフガニスタンでは11月以降、人口の半分以上にあたる2280万人以上が深刻な食料不安に陥るおそれがあり、そのうち870万人が飢餓に直面する」という報告書を発表。「世界最悪の人道危機の一つに陥っている」と警鐘を鳴らした。

ジェンは、2001年からアフガニスタンで学校建設や水衛生環境の改善などの支援活動を実施してきた。タリバン政権掌握後の現在も、28人の現地スタッフがナンガルハル県を中心に支援活動を続けている。(中略)
ムハンマドさんは11月末、首都カブールを訪問したときの驚きをこう話す。

「家財道具を売るための即席の市場ができて、それがどんどん大きくなっていきました。多くの人がここで食料を買うお金を得るために家財道具を売っているのです。道路には物乞いをする子どもの姿もありました」

■「ほとんどの家庭がパンとお茶だけ」
タリバンによる政権掌握後、アフガニスタン中央銀行の米国内資産が凍結されるなどの経済制裁によって経済が停滞。海外からの送金も途絶えた。ムハンマドさんによると、資金不足で国内42のダム建設プロジェクトがすべて止まり、企業、銀行、大学などの規模縮小も相次いでいる。

それに伴い、失業率が増加。さらに深刻な干ばつが追い打ちをかけ、食料などの物価は高騰している。国民は食料を買うお金を得るため、生活に必要な家財まで売る事態に陥っているのだという。

「8月中旬以降、食料価格は高騰しています。例えば、小麦1袋の値段は1500アフガニ(約1760円)から2500アフガニ(約2925円)に高騰しました。

私たちが支援活動をしている地域の家庭を訪問して、食事の様子を見せてもらいましたが、ほとんどの家庭がパンとお茶だけの食生活でした。なかには、ふだん食べないような草をとってきて火を通して食べていた家庭もありました。

農村部には家畜を飼って生活している人もいますが、干ばつで家畜が食べる草もなくなってしまい、家畜を手放さざるを得ない人たちも増えてきました。これまで1頭8万アフガニ(約9万3600円)で売れていたものが5万アフガニ(約5万8500円)でしか売れなくなってしまいました」(ムハンマドさん、以下同)(中略)

500万人の子どもが「栄養失調に陥っている」(国連)といわれるが、ジェンが進める食料支援のプロジェクトは、授乳中の母親をサポートするための栄養補助食タイプのビスケットや粉ミルクなども含む。

■地域医療も崩壊の危機
農村部の医療を支えてきた世界銀行の資金がストップしたため、地域医療も崩壊する危機に瀕している。人びとは現金がないため処方薬も満足に買えない。医師から出された処方箋を薬局に持っていくと、まず聞かれるのが「現金を持っているか」。2週間分の薬を処方されても、1週間分のお金しかなければ売ってもらえないこともあるという。

「8月以降、新型コロナウイルスを気にする余裕もないのが現実ですが、11月中旬ごろから新型コロナの感染が再び拡大しているようです。発熱や体の痛み、頭痛などを訴える声が増えています。コロナ以外にも、干ばつで空気中に土ぼこりが舞っていることや、暖をとるために木材だけでなく古タイヤも燃やしていることも、体調不良に影響していると思われます」

ジェンでは食料のほか、子どもたちたちの就学や学校建設などの支援活動も行っている。就学支援では、地域の「シュラ」という自治組織や若者たちで構成される「ユースシュラ」、宗教指導者と連携して就学を促進し、鉛筆、ノート、ルービックキューブ、定規セットなどが入った就学キットを配っている。

学校建設では校舎、トイレ、太陽光パネルで発電した電気を使って井戸から水をくみ上げる貯水槽などを備えた学校建設などを進める。

「子どもが就学できない理由はたくさんあります。貧困で子どもを学校に行かせる余裕のない家庭が多いこと、学校の建物自体がないこと、女子用トイレが整備されていないこと、学校までの距離が遠いことなどです。

特に教員の数が圧倒的に足りません。ある学校では1人の教員が2クラス160人の生徒を教えている学校もあるほどです」

ムハンマドさんたちはユースシュラの人たちと協議し、地域社会が教員の給料を支払う形で3人、さらにボランティア教員6人を雇用することができたという。

厳しい冬を迎えているアフガニスタン。ムハンマドさんは国際社会、特に日本からの支援に期待していると話す。

「アフガニスタンにとって日本は友好国です。一般の国民も日本にとてもいい印象を持ち、国連などを通じた日本の支援に感謝しています。国連だけでなくNGOなどを通じた支援もぜひお願いしたいと考えています」【12月9日 AERAdot.】
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人権を尊重しないタリバン支配に対する経済制裁を課す国際社会ですが、人道支援については制裁とは別物ということで行うことを表明しています。

****国連 アフガン人道支援を協議 各国が計1200億円余の拠出を表明****
混乱が続くアフガニスタンへの人道支援について話し合う国連の会合が開かれ、これまでに各国から合わせて1200億円余りの資金の拠出が表明されました。

一方で、武装勢力タリバンとの関わり方をめぐっては、各国の立場の違いも表面化しました。
スイス、ジュネーブの国連ヨーロッパ本部では13日、アフガニスタンに対する人道支援について話し合う会合が開かれ、各国の閣僚級の代表が参加しました。

冒頭、グテーレス事務総長が「長年にわたる戦乱と苦しみを経て、アフガニスタンの人々は、今、最も厳しい状況に置かれている。この会合は私たちが何かを与えるためのものではない。責任を果たすためのものだ」と述べ、国際社会に支援の継続を求めました。(中略)

アメリカの代表は、新たに6400万ドル、70億円余りの追加の支援を表明しましたが「タリバンが支援物資の配達を妨げているという報告もある」として、タリバンの支配への不信感ものぞかせました。

これに対して中国の代表は「アフガニスタンの主権を尊重することで、国際社会は国の平和的な再建に貢献できる」と述べ、タリバンを全面的に支援する姿勢を強調し、食料やワクチンなどの物資を送ると表明しました。

一方日本は、新規に6500万ドル、71億円を拠出する用意があると表明しました。

各国とも人道支援の継続では足並みをそろえたものの、タリバンとの関わり方をめぐっては立場に隔たりもあり、アフガニスタンの安定に向け今後国際社会が一致した対応をとれるのかが、問われることになります。(後略)【9月14日 NHK】
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【一定に融和的な発言と裏腹に、抑圧される女性の権利】
しかし、タリバン幹部の表だった融和的な発言の裏で、女性の権利が認められない事例が相次いで報告される事態では、人道支援が結果的にタリバン支援にもなりかねず、各国の支援体制の拡充も難しいのが現実でしょう。

****タリバン、女性尊重を命令 結婚で、国際承認が狙いか****
アフガニスタンで暫定政権を樹立したイスラム主義組織タリバンは3日、アフガン国民が女性の意思を尊重し結婚を強要しないよう周知するために、政府の各機関に対応の徹底を命じた。

アフガンでは部族間対立の解決のためなどに強制婚が行われてきた。女性の権利を重視する姿勢を示し、暫定政権の国際承認などにつなげる狙いがあるとみられる。
 
タリバン旧政権は女性の権利を大幅に制限したため、国際社会の懸念が強い。制裁解除も訴えるタリバンは11月下旬、米政府代表団と中東カタール・ドーハで会談し、女性教育の機会確保に向け国際社会と関わっていく考えを表明した。【12月4日 共同】
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しかし、現実には職業・教育などで女性の権利が侵害される事例も多々報じられています。

****タリバン「恐怖政治」の象徴、勧善懲悪省が女優出演ドラマの放映禁止****
アフガニスタンのイスラム主義組織タリバンの暫定政権は21日、テレビ番組や映画の放送に関する指針を出し、テレビで女優が出演するドラマを放送することを禁じた。またニュース番組などに女性が出演する際は、髪を隠す「ヘジャブ」を着用することも求めた。

指針は、旧タリバン政権下(1996〜2001年)で女性の権利を抑圧したなどとして批判された勧善懲悪省から出された。
 
指針は8項目あり、イスラム法(シャリーア)やアフガンの価値観に反する映画を放送しないこと▽「不道徳」を広める外国文化を紹介する国内外の映画を放送しないこと▽男性出演者が身体を過度に露出しないこと――などを求めた。
 
勧善懲悪省は事実上の宗教警察で、旧タリバン政権下では「恐怖政治」の象徴とされた。01年の旧政権崩壊に伴い廃止されたが、9月に発足した暫定政権下で復活。それまで女性問題省だった建物に、勧善懲悪省が置かれた。
 
タリバンの暫定政権下では、女性の権利制限に対する懸念が広がっている。閣僚に女性が含まれていないほか、地域によっては女子の中等教育も再開されていない。国際社会は、タリバンに対して女性の権利を擁護するよう求めている。【11月23日 毎日】
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女性のテレビドラマ出演を禁止・・・これではドラマも成立しませんので、実質的に娯楽番組も禁止ということにも。

女性をドメスティックバイオレンスから保護する施設も閉鎖されています。

****タリバン、女性保護施設を閉鎖 人権団体「死の危険に直面」****
国際人権団体アムネスティ・インターナショナルは8日までに、アフガニスタンのイスラム主義組織タリバンが、夫からのドメスティックバイオレンス(DV)に遭った女性らを収容する複数のシェルターを閉鎖しており「女性が暴力や死の危険性にさらされている」と発表、シェルターの再開を求めた。
 
2001年に崩壊したタリバン旧政権は女性の権利を大幅に制限したことから国際社会の懸念が強い。暫定政権の承認や制裁解除のためタリバンは権利擁護を主張しており、報道担当シャヒーン氏はアムネスティに対し「女性や少女への暴力は許されず、裁判所が対応する」と答えたという。【12月8日 共同】
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こうした厳しい状況で、女子教育を続ける試みも行われているようです。

****タリバンに抵抗 アフガン女子教育の火を絶やさず****
タリバンがアフガニスタンを制圧してから3カ月が経過したが、首都カブールなどの都市では、6年生より上の女子生徒が公立学校に通うことは許されていない

10代の少女が次々とファウジアさん(56)の自宅に静かに入っていき、靴を脱いで居間に集合した。秘密裏に行われる歴史の授業を受けるためだ。
 
教師のファウジアさん(名前のみの表記を希望)は、アフガニスタンの名高い秘宝(古代バクトリアの黄金の装飾品)や、歴代の王や女王について解説した。彼女はこの新たな極秘任務が不可欠なものだと考えている。
 
イスラム主義組織タリバンは同国を制圧した後、9月に公立学校を再開した。その際、6年生より上の女子の通学を禁止した。それ以降、少数の州で女子の通える中学・高校が再開されたものの、首都カブールをはじめとする大半の地域では閉鎖されたままだ。
 
「少女たちは自宅にいるだけでは、気分が落ち込んだり、携帯電話に依存したりする」とファウジアさんは言う。「いつかまた学校に通えるという希望を与えるべきだ」
 
タリバン指導部は今のところ、1990年代に同国を支配した時と比べ、女性や少女に対して穏健な態度を示している。タリバンの当局者は、適切な男女別学制度が整えば、カブールなどで年長の女子向けの学校が再開されると話している。
 
だが、タリバンの権力掌握から3カ月が経った今、多くのアフガン人はその約束が守られるかどうかを疑問視している。
 
「女子教育をどう思っているかは、過去の行動から明らかだ。教育を通じて女性の地位を高めることは望んでいない。彼らの目標は女性を家庭に閉じ込めることだ」。アクサナ・ソルタンさんはこう語る。

幼少期にタリバン支配下にあった同国を脱出し、現在は米国でアフガン女子教育を推進する非政府組織(NGO)を運営している。
 
5人の子どもを持つファウジアさんは1990年代、長女や他の子どもたちに自宅で勉強を教えていた。現在は10代の少女のために秘密の授業を行っている多くの教師の一人だ。また、年下の生徒に紛れてこっそり授業を受ける10代の少女たちもいる。教師たちはタリバンがこれに気づかないようにと願っている。
 
タリバンが課す事実上の教育禁止令に対し、親や教師、生徒らが抵抗をいとわない現実は、アフガンが過去20年間にどれほど変化したかを浮き彫りにしている。特にカブールのような都市部では、タリバンが過去の厳しい社会規範を復活させれば、強い反発が起きることが予想される。
 
タリバンは1990年代にテレビを禁止したが、現在はアフガン人の大半がインターネットにアクセスでき、オンライン授業も可能だ。また人々の期待も変化してきた。
 
「タリバンが最初に権力を握った20年前、この国の教育水準は非常に低かった。多くの女性は基本的な読み書きを習うだけで満足していた。だが今や、教育水準は高くなっている」。ファウジアさんの娘ファルハットさん(22、名前のみを希望)はこう話す。

母親のファウジアさんが妹を含む10代の少女たちに居間で勉強を教えるのを手伝っている。だが「このような少人数の授業では問題を解決できない」と彼女は言う。「学校を再開しなければならない」

タリバンは、イスラム教の枠組みの中で女性の権利を尊重すると述べている。だがどのように制限するのかは明言していない。多くの店舗では外に掲示された女性の写真が塗りつぶされてしまった。また女性は全ての政府職員を含め、多くの職場から締め出されている。
 
「われわれは少女に教育を受ける権利を与えるべく尽力している。イスラム教はその権利を与えている。ただ、人々の慣習やイスラムの価値観に反する問題がいくつかある。それらが解決されれば、女子の通学を認める」。タリバンが新設した「勧善懲悪」省の報道官はこう述べた。「できる限り早く実現するよう努めている」
 
タリバンは男性教師が女子生徒を教えてはならないとしている。つまり女性教師の採用を増やす必要がある。また、10代の少女を学校に送り届ける交通手段が必要だとしている。だがタリバン暫定政権にはその資金がない。他の公務員と同様、同国の教師の多くは数カ月前から給料を受け取っていない。
 
タリバンがいかに女子教育を行うかは、国際支援の判断基準と見なされている。一方、タリバンは米国が保有する90億ドル(約1兆0230億円)余りのアフガン中央銀行の資産凍結解除を求めている。(後略)【11月29日 WSJ】
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【連行・処刑される元警察官や元兵士らも】
タリバンの言行不一致は、元警察官や元兵士への暴力・処刑でも。

****タリバン100人超殺害か連行 元警察官ら標的、人権団体報告****
国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウオッチ(HRW)は30日、アフガニスタンのイスラム主義組織タリバンが実権を掌握した8月15日から10月末までに、元警察官や元兵士ら100人以上がタリバンによって殺害されたか、連れ去られたとする報告書を出した。
 
アフガン駐留米軍の撤退完了から30日で3カ月。米軍によって20年前に政権の座を追われたタリバンは復権後、全国民に「恩赦」を与えると発表したが、指導部の命令が末端まで行き渡っていない不安定な統治を浮き彫りにした。
 
HRWは「国連による継続した人権監視が必要だ」と訴えた。【11月30日 共同】
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“タリバンの報道官はHRWの報告書を拒絶。(中略)一部の元治安要員が危害を受けた例はあると認めたものの、件数は報告書に挙げられているほど多くないと述べ、原因はタリバンの政策ではなく個人的な恨みだとしている。”【12月1日 CNN】
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アフガニスタン  増大する飢餓の脅威 身売り・強制結婚も 米に替わってテロの標的となる中国

2021-11-12 23:21:38 | アフガン・パキスタン
(アフガニスタン北西部バードギース州に住むアブドゥル・マリクさん(写真左)一家は8人家族。今年8月にイスラム主義勢力タリバンが同国を制圧してから生活が困窮し、9歳の娘パルワナさん(同右)を売らざるを得ない状況に陥った。娘の買い手はコルバン(同中央)という男で、金額は20万アフガニ(約30万円)。【11月6日 日刊ゲンダイ】)

【干ばつ、タリバン統治の混乱で飢餓の危機が深刻化】
イスラム主義武装勢力タリバンが支配するアフガニスタン、そのアフガニスタンでの「紛争や気候変動、新型コロナウイルス感染症によって飢餓に直面する人の数が増えている」という生活困窮・混乱が改めて注目されています。

****4500万人が飢餓の危機に 国連****
国連の世界食糧計画は8日、世界43か国で飢餓の危機に直面している人が、今年初めの4200万人から4500万人に拡大したと発表した。

WFPによると、アフガニスタンについて食料安全保障面から点検した結果、300万人が飢餓に直面していることが判明。このため全体の人数が押し上げられた。

デービッド・ビーズリー事務局長は「紛争や気候変動、新型コロナウイルス感染症によって飢餓に直面する人の数が増えている」と説明した。

WFPはアフガンで約2300万人を対象に支援を行っている。ビーズリー氏は最近、アフガンを訪問していた。

同氏はまた「燃料価格や食料価格が高騰しているのに加え、肥料の価格も上がっている。こうしたことすべてがアフガニスタンで現在起きているような新たな危機や、イエメンやシリアなどでの長期にわたる危機的状況を招いている」と述べた。(後略)【11月8日 AFP】
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気候変動によるものか、干ばつの被害が深刻になっており、タリバン以上の脅威にもなっています。

****タリバンの攻撃より危機的 干ばつ広がるアフガニスタン****
アフガニスタン辺境のバーラーモルガーブでは、あちこちの畑がからからに乾燥し、干ばつが広がっている。この地域で恐れられているのは、電撃的な攻勢で政権を掌握したイスラム主義組織タリバンよりも気候変動だ。

「最後に雨が降ったのは去年です。それも大した量ではありませんでした」。同地域にあるハジラシドカーン村の首長、ムラー・ファテフ氏は言う。
 
西部バドギス州のこの一角では、緩やかな丘陵がどこまでも広がり、点在する泥れんがの家で暮らす人々は必死に命をつないでいる。仏援助団体「ACTED」によると、州の人口60万人のうち90%は畜産か農業で生計を立てている。

「羊を売って食料を買いました。それ以外の羊は水不足で死んでしまいました」とファテフ氏は語った。前回、干ばつに見舞われた2018年には羊を300頭飼っていたが、今回の日照りで20頭にまで減ったという。
 
村に水が必要になると、ファテフ氏は、少年や大人の男性にロバで丸一日かけて水をくみに行かせる。今年は、この丘陵地帯で若い羊飼い2人が水不足から命を落とした。
 
水不足は、家族の絆にも打撃を与えている。
学校も診療所もないハジラシドカーン村では、今年に入ってから、食べ物を買う金銭を工面するために20世帯が幼い娘を売って結婚させた。
 
7人の子どもを持つビビ・イェレさんは、金銭と引き換えに15歳の娘を結婚させた。じきに7歳の娘も同じ運命をたどるだろう。干ばつが続けば、今は2歳と5歳の娘たちも、後に続くことになるとイェレさんは言う。
 
ドイツの環境シンクタンク、ジャーマンウオッチの調査では、二酸化炭素などの温室効果ガス排出によって気候変動の影響を最も受けている国のランキングでアフガニスタンは6位になっている。
 
世界銀行のデータによると、アフガニスタンでは国民1人当たりの年間CO2排出量は0.2トン。同じデータで米国の平均は15トンだ。
 
国連機関は10月25日、アフガニスタンではこの冬、2200万人以上が「深刻な食糧不足」に陥るおそれがあると発表。情勢が不安定な同国は、世界でも最悪レベルの人道的な危機に直面すると警告した。 【11月4日 AFP】
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もともと存在する絶対的貧困、それに加えての上記のような天候不順による被害、そこに更にタリバン政権の機能不全と外国政府からの援助停止が・・・

****アフガニスタンの小児病院で25人が餓死、医師は無給*****
<タリバン政権の機能不全と外国政府からの援助停止が、飢饉寸前のこの国を「破滅」に追い込もうとしている>

アフガニスタンの首都カブールの中核的な小児病院で亡くなる子どもの数は、この国で急速に進行する栄養失調の深刻さを示している。AP通信が報じた。

国連の世界食糧計画(WFP)は11月8日、ほとんど飢饉に近い食糧不足に苦しむアフガニスタン国民の数は870万人に達し、2021年初頭の数字と比較しても300万人増加していると報告した。この週末にアフガニスタンを訪れたWFPのデイビッド・ビーズリー事務局長は、「破滅的な状況だ」と述べた。
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飢饉寸前の食糧不足によって、カブールのインディラ・ガンディー小児病院に運ばれる栄養失調の子どもの数は増える一方だ。

地方の医療センターでも、世界各国からの資金援助が途絶えた結果、限定的な医療サービスしか提供できず、病院そのものが閉鎖を迫られるケースも出てきている。栄養失調に苦しむ子どもを抱える家族が、支援を受けるのも困難になる。

医師のサラフディン・サラーはAP通信の取材に対し、この2カ月間に病院に運ばれてきた子どものうち、少なくとも25人が死亡したと証言した。「病院の職員の大半は、医師や看護師から清掃スタッフに至るまで、3カ月は給料を受け取っていない」

8月にイスラム主義組織タリバンが全土の実権を掌握した後、アメリカをはじめとする西側諸国がアフガニスタンへの財政援助を打ち切ったため、同国の経済状況は急激に悪化している。アフガニスタン政府の外貨準備も、国外に預けられているためタリバンはアクセスできない。多くの職員は給与ももらえず無給で働いている。(中略)

WFPは8日、飢饉の瀬戸際にある人々の数が、世界43カ国で4500万人に達したと発表した。この数字は直近の調査時の4200万人と比べて上昇している。この増加分の大半はアフガニスタンだ。

アフガニスタンの全人口の60%にあたる2400万人が、飢餓に苦しんでいる。さらに、5歳未満の子ども約320万人が年末までに急性の栄養失調に陥るとの予測もある。

2021年に入ってアフガニスタンで発生した深刻な干ばつも、事態を悪化させた。この国では食料を買う金すらない人が増加している。

厳しい冬が近づく中、WFPはアフガニスタンの人々に食料支援を行うため、物資の供給を急いでいるが、援助活動の費用をまかなうにも資金が必要だ。【11月9日 Newsweek】
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【窮地から逃れるための身売り・強制結婚も タリバン統治が助長】
上記のような苦境から逃れるための手段が、(単なる“時間稼ぎ”に過ぎませんが)、上記記事のもある身売りや強制結婚です。

****タリバンによる強制婚、防ぐ手段は知人との結婚****
イスラム主義組織タリバンが8月にアフガニスタンの権力を掌握した1週間後、アフガン新政府の役人になったあるビジネスマンがアイシャさんの家を訪れた。彼はアイシャさんの家族に対し、アイシャさんと彼女の4人の姉妹を引き渡すよう要求した。彼女の兄弟の借金25万ドル(約2850万円)を返済する代わりに、というのがその名目だった。
 
アイシャさんとその姉妹は、この男と彼の息子たちの妻になると伝えられた。アイシャさんによると、この男は彼女の家族に対し「金がないなら、姉妹で払えばいい」と言ったという。アイシャさんの要望により、彼女の家族の姓は明らかにできない。
 
大学でジャーナリズムを学んでいたアイシャさんは現在、支援団体関係者が用意してくれた安全な場所に家族とともに身を隠している。彼女は「タリバンのメンバーとは絶対に結婚しない。捕まれば私たちの未来はなくなる」と語った。

タリバンの指導者らは、彼らがイスラムの適切な枠組みと考える範囲内で、女性の権利を尊重すると主張している。アフガンのタリバン政権が女性の自由を大幅に制限するような法改定に正式に踏み切っていないのは、国際社会の支援と諸外国政府からの承認を得たいためだ。
 
しかし、女性たちや人権団体によれば、実際には女性の権利は急速に侵害されている。タリバンの個々のメンバーに対して、タリバン中枢部の統制力が限られていることがその一因だ。個々のメンバーは、イスラム教徒の適切な行動や伝統的規範と自らみなすものに基づいた見方を押し付ける。
 
女性たちによれば、タリバンのメンバーとの強制「結婚」はしばしば、誘拐と強姦を意味する。そしてそれは、ここ何カ月か、頻繁に起きていることだ。アイシャさんの母親は、娘たちをあのビジネスマンらの妻として差し出すことは、娘たちを「奴隷」として送り出すのと変わりないと語った。

内務省のカリ・サイード・コスティ報道担当者は、女性を自らの意思に反して結婚させることは禁じられていると指摘し、イスラム法によると、脅迫の下でなされたそのような結婚はいかなるものも無効とみなされると述べた。「イスラムでは認められない。そのようなことをすれば、姦通罪に問われる」(後略)【11月4日 WSJ】
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しかし、「女子向けの中等学校の閉鎖や女性の大学での勉学に関する新たな厳しい規制により、タリバンは強制結婚のリスクを著しく高めている」(国際人権団体「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」の女性の権利担当アソシエートディレクターのヘザー・バー氏)というのが実情です。

こうしたアフガニスタンから逃れようととしても、そこには危険な罠が。

****アフガニスタンで女性4人殺害される 渡航名目で誘い出されたか****
アフガニスタンを統治するイスラム主義組織タリバンの報道官は6日、北部マザリシャリフで女性4人が殺害されたと発表した。地元の情報筋によると、うち1人は人権活動家だった。
 
タリバン内務省の報道官によると、4人の遺体はマザリシャリフの住宅で見つかり、容疑者2人が拘束された。
 
地元の情報筋はAFPの取材に対し、被害者の一人は女性人権活動家で、大学講師のフロザン・サフィさんだと語った。
 
情報筋によると、女性らは避難便への搭乗を誘う電話を受け、迎えの車に乗り込んだとみられる。
 
匿名を条件に取材に応じた国際機関の女性職員はサフィさんについて、「市内でよく知られた存在だった」と話した。
この女性職員も3週間前、外国へ安全に渡航できるよう手引きすると装った何者かからの電話を受けた。
 
疑わしいと思った女性は発信者を着信拒否に設定したが、今も恐怖感にさいなまれているという。4人が殺害されたと聞いて強い衝撃を受けたと語った。
 
職員は「すぐさま怖くなった」と話し、「最近は精神状態が不安定で、誰かが私を拉致して撃ち殺すのでは、という恐怖に常にさらされている」と不安を口にした。
 
タリバンは米国の支援を受けたアフガニスタン政府との20年に及ぶ対立の末、今年8月に実権を掌握。旧タリバン政権では公の場での女性の行動が厳しく制限されたこともあり、多くの人権活動家は国外に避難した。

残った女性の一部は、首都カブールで女性の権利の尊重を訴えるデモを行っているほか、女子生徒が高校に出席できるよう求める抗議活動を行っている。 【11月7日 AFP】
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【踊る国際会議 目的は自国影響力拡大】
関係国はアフガニスタン情勢に関する協議を重ねていますが、上記のような苦境にある人々を救済するというよりは、いかにして自国の影響力を強めるかが主眼・・・とも思われます。まあ、それが現実政治です。

****アフガン周辺国会議、インドが主催 ロシアやイランに続く動き****
インド政府は10日、首都ニューデリーにアフガニスタン周辺国の外交・安全保障担当幹部を招き、イスラム主義勢力タリバンが権力を掌握したアフガニスタンの情勢を議論する会議を開いた。ロシアやイラン、中央アジア5カ国が出席し、中国とパキスタンは参加を見送った。
 
地域への影響力拡大を狙うロシアやイラン、パキスタンなど各国がアフガニスタンについての会議を主催するなか、インドはいずれにも招かれていない。自ら会議を開くことで、地域大国としてアフガニスタンに関与していく姿勢を国際社会に示す狙いとみられる。
 
会議では、各国が懸念する治安情勢やタリバンによる統治体制、難民や食糧危機といった人道上の問題が話し合われた模様だ。インドのドバル国家安全保障担当補佐官は「議論がアフガニスタン国民への支援や、我々の集団安全保障の強化につながるだろう」と述べた。
 
タジキスタンは、アフガニスタンとの国境で麻薬の密売やテロのリスクが増しているとの認識を示した。
 
インドメディアによると、中国は日程の調整ができなかったとして欠席した。
 
パキスタンは、対立するインドを念頭に「問題を引き起こす国は平和への貢献者たりえない」(ユスフ国家安全保障担当首相補佐官)として、参加を拒否した。インドのアフガニスタンへの影響力拡大を阻止したい考えがある。
 
一方、インドはタリバンを招待しなかった。
これまでインドは、パキスタンが支援しているとされるタリバンとの交渉を拒否してきた。だが、タリバンが復権し、米国を中心に国際社会が対話を始めており、方針を転換せざるを得なくなった。
 
ただ、ロシアやイランがアフガニスタンの首都カブールに大使館を残しているのに対し、インドは撤退。ウズベキスタンやトルクメニスタンがタリバンと相互の連結性強化について協議を重ねているなか、インドは資金支援の表明もせず、慎重な姿勢を続けている。【11月10日 朝日】
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インド主催の会議には出席しなかったパキスタンは独自に会議を。
こちらには、中国もタリバンも出席しています。

****パキスタンで米中ロ、タリバンと会談=アフガンで存在感誇示****
イスラム主義組織タリバンが暫定政権を樹立し、混乱が続くアフガニスタンをめぐり、米国、中国、ロシア、パキスタンの代表が11日、パキスタンの首都イスラマバードでタリバン幹部と会談した。人道支援問題などが取り上げられた一方、アフガン駐留米軍撤退を受け、各国が存在感を誇示する場にもなったもようだ。(後略)【11月11日 時事】 
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【アメリカに替わってテロの標的となる中国】
タリバンの人権抑圧的体質から欧米は今後もタリバンとの距離を一定に維持すると思われますが、そうした状況で影響力を増すと予測されるのが、内政不干渉の中国。

ただ、中国としては米軍撤退でアメリカが影響力を失うことを喜んでばかりはいられません。中国のタリバン支援は、ウイグル族関連組織などがアフガニスタン国内で活性化し、中国へのテロを企てるようなことがないように、タリバンが国内過激派を十分に統制することが交換条件になります。

“アフガニスタンからのテロの輸出を防いでいた米軍が撤退した以上、中国は自力で自国民の命と利権を守らなければならなくなっている”【11月12日 藤和彦氏 JBpress】というように見ることももできます。

アフガニスタンには(これまではタリバンと連携していた)ウイグル人過激派が多数存在していますが、タリバンが中国からの要請に従ってウイグル人過激派と絶縁し、追放しようとすれば、ウイグル人過激派はタリバンの敵対組織であるより過激なIS系組織と連携して、中国への攻撃を強めることにも。

結果、アメリカに替わって中国がテロの標的とされるようにもなってきています。

****アフガンで再興するイスラム国が、「中国」を次のテロ標的に定めた必然***
<タリバン政権下で加速するウイグル人の取り込みとシーア派への攻撃は過激派組織からのメッセージだ>

10月8日、アフガニスタン北部クンドゥズ州にあるイスラム教シーア派のモスクで自爆テロが発生、礼拝中の少数民族ハザラ人70人以上が死亡、140人以上が負傷した。

間もなく過激派組織「イスラム国」(IS)傘下のグループ「ISホラサン州(IS-K)」がオンラインの声明で犯行を認めた。実行犯は「ムハンマド・アル・ウイグリ」で、中国の要請に応じてウイグル人をアフガニスタンから追放する「ラーフィダ」(シーア派の蔑称)とイスラム主義勢力タリバンの政権を標的にしたという。

IS-Kが宗教的・民族的少数派を攻撃するのは珍しいことではない。(中略)

しかし、アフガニスタンのハザラ人社会を標的にすることを、中国のウイグル問題を引き合いに出して正当化しようとするのは異様で、理解に苦しむ。

今回の自爆テロの分析結果からうかがえるのは、IS-Kが従来あまり挑発的ではないとみられていた対中国戦略をより強硬路線に転換することを検討している可能性だ。

さらにタリバンがウイグル人民兵を追放する意向を表明したことを、自らをウイグル人の新たな庇護者と位置付け、不満を抱くウイグル人民兵を戦力に迎える好機と捉えているようだ。(後略)【11月2日 Newsweek】
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ISのような過激派にとっては「敵」がいないと困ります。
アメリカが撤退した現在、今まで以上に「一帯一路」で存在感を強める中国が目立つようになり、ISにとっては格好の標的となります。

その際、タリバンから縁切りされたウイグル人戦闘員を巻き込んで中国に対しテロ攻撃を・・・というシナリオです。

“中国政府はアフガニスタンの内政には関与せず、ひたすらテロの侵入阻止に注力する姿勢に終始している。だがタリバンの代表と頻繁に接触しても「新疆ウイグル自治区の安全が保たれる」との確信は持てない。タリバンの失政が続けば続くほど、IS-Kの脅威は強まる。「タリバンによる政権奪取は中国にとってリスク以外の何ものでもない」との認識が募るばかりだろう。”【11月12日 藤和彦氏 JBpress】
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